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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】トランス-2-ノネナール臭抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20250820BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250820BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20250820BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250820BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20250820BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20250820BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/37
A61Q15/00
A61K8/33
A61L9/01 J
A61L9/01 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021152245
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044293
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】江口 諒
(72)【発明者】
【氏名】田澤 寿明
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-286428(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085591(WO,A1)
【文献】特開2018-087153(JP,A)
【文献】国際公開第2021/066109(WO,A1)
【文献】特開2018-191694(JP,A)
【文献】特開2015-109832(JP,A)
【文献】特開2021-065323(JP,A)
【文献】特開2021-008687(JP,A)
【文献】国際公開第2019/112041(WO,A1)
【文献】特開2004-262900(JP,A)
【文献】特開平06-179610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0000995(US,A1)
【文献】特開2011-237416(JP,A)
【文献】特開2007-300963(JP,A)
【文献】特開平09-194339(JP,A)
【文献】特開2020-132680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0123392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酪酸メチル及び/又はフェンコール有効成分とする、トランス-2-ノネナール臭抑制剤。
【請求項2】
有効成分として、アネトール、メントール、α-イソメチルイオノン、α-ダマスコン、イチゴアルデヒド、リナロール、ドデカナール、cis-ジャスモン、ネロール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン、ターピネオール、フロロパール、β-イオノン及び酢酸スチラリルから成る群から選ばれる1種もしくは2種以上を更に含む、請求項1に記載のトランス-2-ノネナール臭抑制剤。
【請求項3】
有効成分が、酪酸メチルである、請求項1又は2に記載のトランス-2-ノネナール臭抑制剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のトランス-2-ノネナール臭抑制剤とトランス-2-ノネナールとを接触させる工程を含む、トランス-2-ノネナール臭を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の香料を有効成分とするトランス-2-ノネナール臭抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の生活環境には、極性や分子量が異なる多数の悪臭分子が存在する。多様な悪臭分子を消臭するために、これまで様々な消臭方法が開発されてきた。一般的に消臭方法は、生物的方法、化学的方法、物理的方法、感覚的方法に大別される。悪臭分子の中でもトランス-2-ノネナールを含む不飽和アルデヒド類は、化学反応による消臭が可能である。
【0003】
しかしながら、これら悪臭物質は往々にして閾値が低く化学的消臭方法だけで感知できない濃度まで消臭することが困難であり、効率的に消臭するために感覚的消臭を併用することが多い。感覚的消臭には主に、(1)悪臭より過剰に香料を用いる方法、いわゆるマスキング消臭、及び(2)悪臭とは異なる特徴の強い香料を用いる方法、いわゆるペアリング消臭、及び、(3)悪臭が応答する嗅覚受容体に応答する香料物質を用いて順応させることにより消臭する方法、及び、(4)悪臭が応答する嗅覚受容体の応答を抑制することにより消臭する方法、(5)嗅細胞からの信号を変調または遮断することにより消臭する方法などがある。
【0004】
トランス-2-ノネナールは、天然に存在する不飽和アルデヒドであり、汗や皮脂を原因とする体臭の原因物質の1つであり、閾値が低い。従来よりトランス-2-ノネナールの化学的な消臭剤としてはいくつかの物質が開示されている。例えば、特許文献1には、ノネナールなどの加齢臭のマスキング効果に優れる成分として、アルモアズ油、バージル油、ガルバナム油、ゼラニウム油、スペアミント油、イランイラン油、カルダモン油、エレミ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ナツメグ油、カモミル油、ユーカリプタス油、ローズマリー油、アリルアミルグリコレート、1,1-ジメトキシ-2-フェニルエタン、2,4-ジメチル-4- フェニルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、2,6-ジメチル-7- オクテン-2- オール、1,2-ジエトキシ-3,7- ジメチル-2,6- オクタジエン、フェニルアセトアルデヒド、ローズオキサイド及びエチル-2- メチルペンタノエートが、ハーモナージュ効果に優れる成分としてラバンジン油、レモン油、ライム油、オレンジ油、プチグレン油、ベルガモット油、クラリー・セージ油、コリアンダー油、シプレス油、ジャスミンアブソリュート、ローズ油、ローズアブソリュート、1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエン-1イル)-2-ブテン-1- オン、エチルバニリン、2,6-ジメチル-2- オクテノールと3,7-ジメチル-2- オクテノールとの混合物、第3級ブチルシクロヘキシルアセテート、アニシルアセテート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、クマリン、エチルアセトアセテート、4-フェニル-2,4,6- トリメチル-1,3- ジオキサン、エチルアセトアセテートエチレングリコールケタール、4-メチレン-3,5,6,6- テトラメチル-2- ヘプタノン、エチルテトラヒドロサフラネート、ゲラニルニトリル、シス-3- ヘキセン-1- オール、シス-3- ヘキセニルアセテート、シス-3- ヘキセニルメチルカーボネート、2,6-ジメチル-5- ヘプテン-1- アール、4-( トリシクロ[5,2,1,02,6]デシリデン- 8-ブタナール、5-(2,2,3- トリメチル-3- シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、p-第3 級ブチル- α- メチルヒドロシンナミックアルデヒド、エチル[5,2,1,02,6]トリシクロデカンカルボキシレート、シトロネロール及びシトラールについて開示されている。
【0005】
特許文献2には、1,4-シネオール、又は1,8-シネオールを主原料とする消臭剤が、特許文献3には1,3-ブチレングリコールなど2価又は3価のC2~C6アルコールを有効成分として含有する消臭剤がノネナールに対する消臭効果を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-286428号公報
【文献】特開2017-113354号公報
【文献】WO2012/108494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、新規なトランス-2-ノネナール臭抑制剤等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
悪臭等の匂い分子を認識する嗅覚受容体は複雑であり、公知の香料成分が必ずしもトランス-2-ノネナール臭等の悪臭を抑制することはなく、寧ろ悪臭を増大させる場合もある。本発明者は、特定の香料成分がトランス-2-ノネナール臭を抑制することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
アネトール、メントール、α-イソメチルイオノン、α-ダマスコン、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、イチゴアルデヒド、リナロール、ドデカナール、cis-ジャスモン、ネロール、酪酸メチル、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン、ターピネオール、フロロパール、β-イオノン、酢酸スチラリル及びフェンコール
から成る群から選ばれる1種もしくは2種以上を有効成分とする、トランス-2-ノネナール臭抑制剤を提供するものである。
【0010】
また、上記トランス-2-ノネナール臭抑制剤とトランス-2-ノネナールとを接触させる工程を含む、トランス-2-ノネナール臭を抑制する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により提供されるトランス-2-ノネナール臭抑制剤は、既存のものと同等か、それを遥かに上回るトランス-2-ノネナール臭抑制効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、アネトール、メントール、α-イソメチルイオノン、α-ダマスコン、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、イチゴアルデヒド、リナロール、ドデカナール、cis-ジャスモン、ネロール、酪酸メチル、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン、ターピネオール、フロロパール、β-イオノン、酢酸スチラリル及びフェンコールから成る群から選ばれる1種もしくは2種以上を有効成分とする。
【0013】
上記化合物群のうち、アネトール、メントール、α-イソメチルイオノン、α-ダマスコン、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、イチゴアルデヒド、リナロール、ドデカナール、cis-ジャスモン、ネロール、酪酸メチル、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンの化合物が好ましい。中でも、αーダマスコン、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、イチゴアルデヒド、リナロール、cis-ジャスモン、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン、ターピネオールは香料としての強度が低いためより好ましい。これらの化合物のうち、α-ダマスコン及びリナロールがより好ましい。
【0014】
各化合物は単独で使用してもよいし、トランス-2-ノネナール臭の抑制効果を損なわない限り、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。さらに、これらの化合物に別の香料成分を加えて調合香料を調製して使用してもよい。そのような別の香料成分はトランス-2-ノネナール臭の抑制効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、麝香、霊猫香、竜延香等の動物性香料、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、バジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油、ローズマリー油、ユーカリ油、アニス油、ラベンダー油、クミン油、シナモン油、ヒバ油等の植物性香料等の香料を挙げることができる。また、香料として、合成香料又は抽出香料等の人工香料を用いることもでき、例えば、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、ゲラニオール、シトロネロール、エチルリナロール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料、オイゲノール等のフェノール系香料、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ-ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料等が挙げられる。
【0015】
トランス-2-ノネナール臭抑制剤は、汗、体臭等に含まれるトランス-2-ノネナール臭の消臭や脱臭に使用することができる。トランス-2-ノネナール臭抑制剤はトランス-2-ノネナール臭の発生源に直接適用することができる。
【0016】
トランス-2-ノネナール臭抑制剤は、各種消臭剤、各種芳香剤、身体用又は顔用洗浄剤、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、化粧料及びフレグランス製品中に配合することが想定される。トランス-2-ノネナール臭抑制剤は、限定しないが、液剤、繊維等の担体に担持されたシート状体、ゲル剤等などに揮発可能な状態で配合される。
【0017】
トランス-2-ノネナール臭抑制剤又はそれらを調合した調合香料をそのまま、もしくは適当な揮発性有機溶媒に混合し、揮散体を用いて揮散させるオイルタイプの芳香消臭剤や、トランス-2-ノネナール臭抑制剤又はそれらを調合した調合香料を界面活性剤等を用いて水に可溶化させた水溶液ものを揮散体を用いて揮散させる水性タイプの芳香消臭剤、またはこれらをゲル化剤を用いてゲル化させたゲル状の芳香消臭剤、高吸水性樹脂に吸収させた芳香消臭剤などがあげられる。
【0018】
揮発性有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、揮発性アルコール又は揮発性グリコールエーテルが挙げられる。このうち、揮発性アルコールとしてはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコールが挙げられる、また、揮発性グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等を挙げることができる。
【0019】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤の1種または2種以上を混合して用いることができる。
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、第3級アミンオキサイド等が挙げられる。このポリオキシエチレンアルキルエーテルはポリオキシエチレン鎖が3から18、好ましくは7から12であり、アルキル鎖は直鎖又は分岐のどちらでも良く、アルキル鎖長は8~22、好ましくは12~14である。また、前記脂肪酸アルカノールアミドは、椰子油脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸のモノエタノールアミド、ジエタノールアミド等が挙げられ、第3級アミンオキサイドとしては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、椰子油脂肪酸ジメチルアミンオキサイド、ラウロイルアミノプロピルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0020】
アニオン系界面活性剤としては例えば、高級脂肪酸石けん、石けん用素地、金属石けん、N-アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ-アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
カチオン系界面活性剤としては、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の1又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
ゲル化剤としては、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドガム、アルギン酸ソーダ、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体等従来公知のものが例示される。
【0024】
吸水性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸塩架橋体等のポリアクリル酸又はその塩を含むもの、部分中和ポリアクリル酸塩、アクリル酸及び/又はその塩-アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合物架橋体、デンプン-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン-アクリル酸エステル共重合体の(部分)中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物及び部分ケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、ポリビニルアルコール変性物等が挙げられる。
【0025】
トランス-2-ノネナール臭抑制剤には、有効成分の効果を損なわない限りで消臭効果を有する他の成分、又は消臭剤や防臭剤に使用される任意の成分を、その目的に応じて適宜含有していてもよい。そのような消臭効果を有する他の成分としては、公知の消臭剤が何れも使用できるが、例えば、植物の葉、葉柄、実、茎、根、樹皮等の各部位から抽出された消臭有効成分(例えば、緑茶抽出物);乳酸、グルコン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸等の有機酸、各種アミノ酸およびこれらの塩、グリオキサール、酸化剤、フラボノイド類、カテキン類、ポリフェノール類;活性炭、ゼオライトなどの多孔性物質;シクロデキストリン類などの包接剤;光触媒;各種マスキング剤、等が挙げられる。
【0026】
消臭剤や防臭剤に使用される任意の成分の例としては、香料、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、植物抽出物、漢方成分、高級アルコール類、低級アルコール類、エステル類、長鎖脂肪酸、界面活性剤(非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等)、ステロール類、多価アルコール類、保湿剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、皮膜剤、殺菌剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保留剤、冷感剤、温感剤、刺激剤、金属イオン封鎖剤、糖分、アミノ酸類、有機アミン類、合成樹脂エマルジョン、pH調製剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、油分、粉体、カプセル類、キレート剤、無機塩、有機塩色素、増粘剤、殺菌剤、防腐剤、防カビ剤、着色剤、消泡剤、増量剤、変調剤、有機酸、ポリマー、ポリマー分散剤、酵素、酵素安定剤、等が挙げられる。
【0027】
第二の実施態様において、トランス-2-ノネナール臭抑制剤とトランス-2-ノネナールとを接触させる工程を含む、トランス-2-ノネナール臭を抑制する方法、が提供される。
【0028】
トランス-2-ノネナール臭の発生源の例として、ヒトや非ヒト動物、特にその首周りに由来する体臭が挙げられる。そのため、衣類や枕等の寝具、人が密集する屋内領域(例えば、会議室、エレベーター等)もトランス-2-ノネナール臭の発生源となり得る。本明細書で使用する場合、トランス-2-ノネナール臭抑制剤が直接適用される発生源に人体の部位は含まれない。
【0029】
接触は、トランス-2-ノネナール又はトランス-2-ノネナール臭の発生源にトランス-2-ノネナール臭抑制剤を適用して行うこともできる。適用方法としては散布、噴霧、又は塗布等があり、トランス-2-ノネナール臭抑制剤の剤形によって適宜当業者が決定することができる。また、公知のトランス-2-ノネナール臭抑制方法と組み合わせてもよい。
【0030】
適用のタイミングは特に限定されず、トランス-2-ノネナール臭が知覚された時点で適宜行うことができる。予防的な観点でトランス-2-ノネナール臭が発生すると予想される箇所に事前にトランス-2-ノネナール臭抑制剤を適用してもよい。
【実施例
【0031】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されない。
【0032】
<官能試験>
(試験サンプル)
以下の試験サンプルを使用し、トランス-2-ノネナール臭の消臭効果を試験した。
【表1】
【0033】
(マスターバッチの調製)
トランス-2-ノネナールをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し(0.001ppm、0.01ppm、0.1ppm、1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm、10000ppm)の溶液を準備し、それぞれ5gをひだ付きろ紙(直径185mm)に染み込ませ、500mlのビーカー内に入れた。ビーカーを10リットルのバック内に封入し、無臭空気で満たし、24時間室温で静置し6種のマスターバッチバックを調製した。
【0034】
(悪臭袋の調製)
6種類のマスターバッチバックから、表2の量の空気をシリンジで分取し、無臭空気で満たした3リットルの匂い袋に注入し、悪臭袋1から8を準備した。
【表2】
【0035】
(芳香袋の調製)
表1の香料をそれぞれ、ひだ付きろ紙(直径90mm)に1g染み込ませ500mlのビーカーに入れた。ビーカーを10リットルのバックに封入し無臭空気で満たし25℃で30分静置し芳香袋を調製した。
【0036】
(サンプル袋の調製)
上記悪臭袋1から8をもう1セット作成し、上記芳香袋内の空気200mlを分取し、それぞれに注入し、順にサンプル袋1から8とした。
【0037】
(かおりの快・不快、嗜好性)
芳香袋から200ml分取し、無臭空気で満たした3リットルのバックについて、下記基準にて、各香料の快度又は不快度及び強度を評価した。値は、臭気判定士試験の嗅覚試験法(T&Tオルファクトメーター法)に合格して臭覚が正常であると確認された4名のパネラーの平均値を示す。結果を表3に示す。
【0038】
(快・不快度)
-4:極端に不快
-3:非常に不快
-2:不快
-1:やや不快
0:快でも不快でもない
+1:やや快
+2:快
+3:非常に快
+4:極端に快
【0039】
(強度)
-3:とても弱い
-2:弱い
-1:やや弱い
0:ちょうどよい
+1:やや強い
+2:強い
+3:とても強い
【0040】
(香料による悪臭の知覚試験)
上記で調製した悪臭袋を濃度の高いほうから順にパネラーに嗅いでもらい、トランス-2-ノネナールの臭気だと判定できたものを〇、できなかったものを×として、認知できた悪臭袋番号をトランス-2-ノネナール臭気の閾値とした。
【0041】
次いで香料の入ったサンプル袋を同様に悪臭濃度の高いほうから順にパネラーに嗅いでもらい、同様にトランス-2-ノネナールの臭気だと判定できたものを〇、できなかったものを×として、認知できた悪臭袋番号を香料混合空気のトランス-2-ノネナール臭気の閾値とした。値は4名のパネラーの平均値とする。結果を表3に示す。悪臭のみを嗅いだ時に感じる濃度(閾値)より、同様の袋に香料を添加した場合の閾値の方が高かった場合、香料が消臭(悪臭の認識)に寄与していると判断した。具体的には、臭気抑制機能として悪臭のみの閾値より2以上高かったものを◎、1以上高かったものを〇、1未満0以上を△、0未満を×とした。悪臭のみのものはコントロールのため臭気抑制機能を評価していない。
【0042】
【表3】
【0043】
以上の結果より、香料番号1~17の香料はいずれもトランス-2-ノネナールの臭気を感じにくくさせていることがわかる。特に、閾値の差があった香料番号1~12については、著しくトランス-2-ノネナールの臭気を感じにくくさせていることがわかる。また、強度の高い香料は用途が限定されるが、強度が低く、臭気抑制効果が高いα-ダマスコン、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、イチゴアルデヒド、リナロール、cis-ジャスモン、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン、ターピネオールは特に好ましいトランス-2-ノネナール臭抑制剤といえ、種々の用途で使用することが期待される。