(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】PIK3CA変異を標的にするT細胞レセプターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/725 20060101AFI20250820BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250820BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250820BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250820BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250820BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250820BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20250820BHJP
【FI】
C07K14/725 ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
C12N5/0783
(21)【出願番号】P 2021575393
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 US2020038592
(87)【国際公開番号】W WO2020257553
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-06
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クレバノフ, クリストファー エー.
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラン, スミタ エス.
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524372(JP,A)
【文献】Cancers,2019年02月24日,Vol.11, No.2,Article number:266, p.1-14
【文献】PNAS,2007年,Vol.104, No.13,p.5569-5574
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PIK3CAペプチドを特異的に標的にするT細胞レセプター(TCR)であって、前記PIK3CAペプチドが、H1047Lの変異を含み、前記TCRが、配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約93
%同一なアミノ酸配列を含む
α鎖可変領域および配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約95
%同一なアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含
み、前記α鎖可変領域が、α鎖CDR1である配列番号1のアミノ酸配列、α鎖CDR2である配列番号2のアミノ酸配列、およびα鎖CDR3である配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記β鎖可変領域が、β鎖CDR1である配列番号4のアミノ酸配列、β鎖CDR2である配列番号5のアミノ酸配列、およびβ鎖CDR3である配列番号6のアミノ酸配列を含む、T細胞レセプター(TCR)。
【請求項2】
配列番号20に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むα鎖定常領域をさらに含む、請求項1に記載のTCR。
【請求項3】
配列番号21に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むα鎖定常領域をさらに含む、請求項1に記載のTCR。
【請求項4】
配列番号23に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域をさらに含む、請求項1に記載のTCR。
【請求項5】
配列番号45に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域をさらに含む、請求項1に記載のTCR。
【請求項6】
PIK3CAペプチドを特異的に標的にするT細胞レセプター(TCR)であって、前記PIK3CAペプチドが、H1047Lの変異を含み、前記TCRが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む、T細胞レセプター(TCR)。
【請求項7】
配列番号20に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むα鎖定常領域をさらに含む、請求項6に記載のTCR。
【請求項8】
配列番号21に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むα鎖定常領域をさらに含む、請求項6に記載のTCR。
【請求項9】
配列番号23に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域をさらに含む、請求項6に記載のTCR。
【請求項10】
配列番号45に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域をさらに含む、請求項6に記載のTCR。
【請求項11】
前記PIK3CAペプチドが、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号51、または配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、請求項1に記載のTCR。
【請求項12】
PIK3CAペプチドを特異的に標的にするT細胞レセプター(TCR)であって、前記PIK3CAペプチドが、H1047Lの変異を含み、前記TCRが、
a)配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;
b)配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
c)配列番号20または配列番号21に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一であるアミノ酸配列を含むα鎖定常領域;および
d)配列番号45または配列番号23に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約90
%同一なアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域
を含
み、前記α鎖可変領域が、α鎖CDR1である配列番号1のアミノ酸配列、α鎖CDR2である配列番号2のアミノ酸配列、およびα鎖CDR3である配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記β鎖可変領域が、β鎖CDR1である配列番号4のアミノ酸配列、β鎖CDR2である配列番号5のアミノ酸配列、およびβ鎖CDR3である配列番号6のアミノ酸配列を含む、T細胞レセプター(TCR)。
【請求項13】
前記TCRが、組換えで発現される、および/またはベクターから発現される、請求項1~12のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のT細胞レセプター(TCR)をコードする、核酸分子。
【請求項15】
対象におけるがんの処置における使用のための組成物であって、前記組成物が、操作された免疫細胞を含み、前記操作された免疫細胞が、
請求項1~12のいずれか一項に記載のTCR;または
請求項1~12のいずれか一項に記載のTCRをコードする核酸分子
を含む、組成物。
【請求項16】
前記がんが固形腫瘍がんである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記固形腫瘍がんが乳がんである、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月20に出願された米国仮出願第62/864,148号に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に援用され、かつその内容に対して優先権を主張する。
配列表
【0002】
本明細書は、配列表(2020年6月19日に、「0727341093SL.txt」という名称のテキストファイルとして電子的に提出されている)を参照する。このテキストファイルは、2020年6月18日に作成され、サイズは37,623バイトである。この配列表の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0003】
序論
本開示の主題は、がん(例えば、乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、頭頸部がん、結腸がん、多形神経膠芽腫)を処置するための方法および組成物を提供する。これは、変異を含むホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェート3キナーゼ触媒サブユニットα(PIK3CA)を特異的に標的にするT細胞レセプター(TCR)に関連する。本開示の主題は、任意のヒトPIK3CA-変異がん(それらに限定されないが、乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肛門がん、膀胱がん、結腸直腸がん、頭頸部扁平上皮癌、非黒色腫皮膚がん、および唾液腺がんが含まれる)を処置するための、このようなTCRを含む免疫応答細胞、およびこのようなTCRおよびこのような細胞を使用する方法をさらに提供する。
【背景技術】
【0004】
細胞ベースの免疫療法は、がんの処置のための治癒潜在力を有する療法である。T細胞および他の免疫細胞は、選択された抗原に対して特異的なTCRをコードする遺伝物質を導入することによって、腫瘍抗原を標的にするように改変され得る。特異的なTCRを使用する標的化T細胞療法は、血液系腫瘍の処置において、近年、臨床的な成功が示されている。
【0005】
乳がん患者の三分の一は、PIK3CA変異を有し、PIK3CA中のホットスポット変異の位置は、乳がんサブタイプ全体にわたって類似している。さらに、PIK3CAは、乳がんの患者全体にわたって保存されている、限られた数だけのホットスポット変異を有している。これらの特徴によって、PIK3CAの特異的な変異を標的にすることが、乳がん細胞を標的にし、排除するための有望な戦略となる。したがって、変異を含むPIK3CAを標的にするTCRを同定し、生成させるための新たな治療戦略の必要性、ならびに最小限の毒性および免疫原性でがんの根絶を強力に誘導し得る戦略の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の主題は、一般に、PIK3CAペプチドを特異的に標的にするT細胞レセプター(TCR)を提供し、ここで、前記PIK3CAペプチドは、変異を含む。ある特定の実施形態において、前記変異は、H1047Lである。ある特定の実施形態において、前記PIK3CAペプチドは、8-mer、9-mer、または10-merである。ある特定の実施形態において、前記PIK3CAペプチドは、9-merである。ある特定の実施形態において、PIK3CAペプチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号51、または配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる。ある特定の実施形態において、前記PIK3CAペプチドは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる。
【0007】
ある特定の実施形態において、前記PIK3CAペプチドは、HLAクラスI複合体に関連する。ある特定の実施形態において、前記HLAクラスI複合体は、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cから選択される。ある特定の実施形態において、前記HLAクラスI複合体は、HLA-Aである。ある特定の実施形態において、前記HLA-Aは、HLA-A*03スーパーファミリーである。ある特定の実施形態において、前記HLA-A*03スーパーファミリーは、HLA-A*03、HLA-A*11、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*66、HLA-A*68、およびHLA-A*74からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、前記HLA-A*03スーパーファミリーは、HLA-A*03である。
【0008】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、ここで、前記細胞外ドメインは、前記PIK3CAペプチドに結合する。ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、および配列番号6に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3;b)配列番号27に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、および配列番号30に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3;c)配列番号37に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、および配列番号40に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3、を含む。
【0009】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号5に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2;b)配列番号26に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号29に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2;またはc)配列番号36に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号39に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2、を含む。
【0010】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、および配列番号4に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1;b)配列番号25に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、および配列番号28に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1;またはc)配列番号35に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、および配列番号38に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1、を含む。
【0011】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;b)配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;またはc)配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号36に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号37に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3、を含む。
【0012】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3、を含む。
【0013】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;b)配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号29に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号30に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;c)配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3、を含む。
【0014】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;b)配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号29に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号30に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;またはc)配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号36に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号37に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3、を含む。
【0015】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3、を含む。
【0016】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号7、配列番号31、または配列番号41に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、を含む。
【0017】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号7、配列番号31、または配列番号41に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、を含む。ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、を含む。
【0018】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号8、配列番号32、または配列番号42に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域、を含む。
【0019】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号8、配列番号32、または配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域、を含む。ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域、を含む。
【0020】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;b)配列番号31に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号32に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域、またはc)配列番号41に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号42に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域、を含む。
【0021】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;b)配列番号31に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;および配列番号32に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域、またはc)配列番号41に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;および配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域、を含む。ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域、を含む。
【0022】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、a)配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むα鎖;および配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖;b)配列番号33に記載のアミノ酸配列を含むα鎖;および配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖;またはc)配列番号43に記載のアミノ酸配列を含むα鎖;および配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖、を含む。ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むα鎖;および配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖、を含む。
【0023】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、参照TCRまたはその機能性フラグメントとしてヒト変異型PIK3CAペプチド上の同じエピトープに結合し、ここで、前記参照TCRまたはその機能性フラグメントは、a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;b)配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号29に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号30に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;またはc)配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号36に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号37に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3、を含む。
【0024】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、組換えで発現されるか、またはベクターから発現される。ある特定の実施形態において、前記TCRは、野生型PIK3CAペプチドを標的にしない。
【0025】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、改変α鎖定常領域および/または改変β鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態において、前記改変α鎖定常領域は、配列番号20または配列番号21に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、前記改変α鎖定常領域は、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、前記改変β鎖定常領域は、配列番号22、配列番号23、または配列番号45に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、前記改変β鎖定常領域は、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む。
【0026】
前記本開示の主題は、本明細書に開示されている前記TCRを含む免疫応答細胞をさらに提供する。ある特定の実施形態において、前記免疫応答細胞は、前記TCRで形質導入されている。ある特定の実施形態において、前記TCRは、前記免疫応答細胞の表面上に構成的に発現される。ある特定の実施形態において、前記免疫応答細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ヒト胚性幹細胞、リンパ系前駆細胞、T細胞前駆体細胞、およびそこからリンパ系細胞が分化し得る多能性幹細胞からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、前記免疫応答細胞は、T細胞である。ある特定の実施形態において、前記T細胞は、細胞傷害性T細胞(CTL)、制御性T細胞、およびセントラルメモリーT細胞からなる群から選択される。
【0027】
本開示の主題は、本明細書に開示されている前記免疫応答細胞を含む組成物をさらに提供する。ある特定の実施形態において、前記組成物は、薬学的に許容され得るキャリアーをさらに含む医薬組成物である。
【0028】
本開示の主題は、本明細書に開示されている単離された核酸分子を含むベクターをさらに提供する。ある特定の実施形態において、前記ベクターは、γレトロウイルスベクターである。
【0029】
本開示の主題は、本明細書に開示されている前記T細胞レセプター(TCR)をコードする核酸分子をさらに提供する。本開示の主題は、免疫応答細胞内に、本明細書に開示されている前記TCRをコードする核酸分子または前記核酸分子を含むベクターに導入することを含む、ヒト変異型PIK3CAペプチドに結合する免疫応答細胞を作製するための方法をさらに提供する。
【0030】
本開示の主題は、本明細書に開示されている前記核酸分子を含む宿主細胞をさらに提供する。ある特定の実施形態において、前記宿主細胞は、T細胞である。
【0031】
本開示の主題は、対象における、PIK3CA変異を含む新生物を処置および/または予防する方法をさらに提供する。本開示の主題は、対象における、PIK3CA変異を含む新生物の処置および/または予防における本明細書に開示されている前記免疫応答細胞または組成物の使用をさらに提供する。ある特定の実施形態において、前記PIK3CA変異は、H1047Lを含むか、またはH1047Lからなる。ある特定の実施形態において、前記方法は、有効量の本明細書に開示されている前記免疫応答細胞または組成物を、前記対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、前記新生物は、乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肛門がん、膀胱がん、結腸直腸がん、頭頸部扁平上皮癌、非黒色腫皮膚がん、および唾液腺がんからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、前記新生物は、乳がんである。ある特定の実施形態において、前記方法は、前記対象における腫瘍負荷を減少または根絶させる。ある特定の実施形態において、前記対象は、ヒトである。
【0032】
本開示の主題は、新生物を処置および/または予防するためのキットをさらに提供する。ある特定の実施形態において、前記キットは、本明細書に開示されている前記免疫応答細胞、本明細書に開示されている前記核酸分子、または本明細書に開示されている前記ベクターを含む。ある特定の実施形態において、前記キットは、新生物を有する対象を処置するために、前記免疫応答細胞、核酸分子、またはベクターを使用するための、書面による指示をさらに含む。
【0033】
以下の詳細な説明(例として示されているが、記載されている特定の実施形態に本発明を限定することを意図するものではない)は、添付の図面と組み合わせて理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、質量分析法による、変異型PIK3CAの最小エピトープ配列の取得の概略図を示す。COS-7は、1)ヒトHLA分子を欠き、かつ2)エレクトロポレーションに適する、サル由来細胞系である。COS-7細胞は、HLA-A*03:01をコードするRNAおよび変異PIK3CAで共エレクトロポレーションされる。HLA-A*03:01を有する野生型PIK3CA、および無関係なHLA(HLA-A*69:01)を有する変異PIK3CAが、アッセイ対照として含められる。汎抗MHCクラスI抗体を使用して、全てのクラスIペプチド-MHC複合体が、トランスフェクトされたCOS-7細胞の表面から酸溶出される。溶出されたペプチドの配列およびサイズは、次いで、LC/MS/MSによって得られる。
【0035】
【
図2】
図2は、質量分析法による、前記最小エピトープの配列の解析を図示する。上段のパネルは、変異PIK3CAとHLA-A*03:01の組み合わせでエレクトロポレーションしたトランスフェクタント群における富化したシグナルを示すスカイライン解析を示す。2つの対照群においては、シグナルは検出されなかった。下段のパネルは、変異PIK3CA+HLA-A*03:01群において検出された富化したシグナルのペプチド断片化スペクトルの結果を示す。断片化パターンに基づき、前記ペプチド配列は、「ALHGGWTTK」[配列番号11]と決定された。野生型ペプチドは、AHHGGWTTK[配列番号46]によって示される配列からなる。
【0036】
【
図3】
図3は、HLA-A*03:01と野生型または変異PIK3CA最小ペプチドの間の相互作用の相対的安定性を決定するように設計された示差走査蛍光測定の結果を示す。各群について、2回の技術的な反復実験を行った。この技法において、熱的に誘導されたタンパク質変性をモニターするためのリアルタイムPCR技術を使用した。これにより、不安定なタンパク質アンフォールドとして露出している疎水性残基(hydrophobic resides)に優先的に結合する色素の蛍光シグナルの変化を検出した。データにより、54度を超える高温においてもなお保持されていたHLA-A*03:01分子上の変異ペプチド(mutated peptide)に対する安定的な結合が示された。これに対し、前記野生型エピトープは、HLA-A*03:01対してあまり安定ではなく、36度という低い融解温度を有していた。変異型ペプチド(mutant peptide)は、ALHGGWTTK[配列番号11]によって示される配列からなる。野生型ペプチドは、AHHGGWTTK[配列番号46]によって示される配列からなる。
【0037】
【
図4】
図4は、変異または野生型PIK3CAペプチドのいずれかと複合体を形成した組換えHLA-A*03:01の結晶構造を図示する。右側のX線結晶構造は、HLA-A*03:01のαヘリックスドメイン(緑および青)内に含まれる変異ペプチド配列(赤)のトポグラフィーを示す。
【0038】
【
図5】
図5は、PIK3CA変異特異的TCR(21LT2-2)についての制限エレメントとしてのHLA-A3の同定を図示する。21LT2-2 TCRは、非特異的な健常ドナーT細胞のゲノム内にレトロウイルスの方法で(retrovirally)組み込まれた。形質導入後4~6日目において、T細胞は、1つのクラスI HLAアレルと、野生型または変異バージョンのいずれかのPIK3CAで共エレクトロポレーションされたサル由来抗原提示細胞と共にインキュベートした。変異バージョンは、位置1047において、ヒスチジンからロイシンへの置換(H1047L)を有していた。細胞は、CD8
+TCR
+発現でゲートした。炎症性サイトカイン(TNF-α)の産生の変化を、正しいHLAアレルに関して、変異特異的反応性の存在を示すために使用した。データにより、21LT2-2は、HLA-A*03:01に関して、変異H1047Lを認識できることが示された。
【0039】
【
図6】
図6は、PIK3CA変異体特異的TCR(21LT2-2)が、内因的にプロセシングされた抗原および最小ペプチドを認識したことを図示する。21LT2-2 TCRは、健常ドナーT細胞のゲノム内に、レトロウイルスの方法で組み込まれた。形質導入後4~6日目において、T細胞は、HLA-A*03:01をコードするRNAと、(左)野生型または変異PIK3CA RNAのいずれかでエレクトロポレーションされたサル由来抗原提示細胞と共にインキュベートし、または(右)野生型または変異PIK3CA 最小9アミノ酸ペプチド(1ug/mL)でパルスした。細胞は、CD8
+TCR
+発現でゲートした。CD107AとTNFαの産生の変化を、HLA-A*03:01に関して、変異特異的反応性の存在を示すために使用した。データにより、21LT2-2が、内因的にプロセシングおよび提示された変異抗原(左)、ならびに、受動的にパルスされた変異最小ペプチド(右)の両方を認識できることが示された。
【0040】
【
図7】
図7は、PIK3CA変異体特異的TCR(21LT2-2)が、コレセプター非依存性であることを図示する。21LT2-2 TCRは、健常ドナーT細胞のゲノム内に、レトロウイルスの方法で組み込まれた。形質導入後4~6日目において、T細胞は、HLA-A*03:01をコードするRNAと、(左)野生型または変異PIK3CA RNAのいずれかでエレクトロポレーションされたサル由来抗原提示細胞と共にインキュベートし、または(右)前記最小9アミノ酸ペプチド(1ug/mL)でパルスした。細胞は、CD4
+TCR
+発現でゲートした。CD107AとTNFαの産生の変化を、HLA-A*03:01に関して、変異特異的反応性の存在を示すために使用した。データにより、21LT2-2は、また、CD4
+T細胞バックボーン内においても機能性であり、変異H1047Lを認識するためにCD8コレセプターの存在を必要としないことが示された。
【0041】
【
図8-1】
図8は、P4を除く全ての位置が、pMHC:TCR相互作用に不可欠であることを示すアラニン置換を図示する。21LT2-2 TCRは、健常ドナーT細胞のゲノム内に、レトロウイルスの方法で組み込まれた。形質導入後4~6日目において、T細胞は、HLA-A*03:01をコードするRNAをエレクトロポレーションされたサル由来抗原提示細胞と共にインキュベートし、およびアラニン置換ペプチド(10μg/mL)でパルスした。細胞は、CD8
+TCR
+発現でゲートした。アラニン置換ペプチドでパルスした場合に、非改変9アミノ酸変異配列(表;P2における変異)と比較して、認識が>50%低下していることは、TCR認識のために、その位置のネイティブアミノ酸が重要であることを示しているであろう。ここで示したデータは、位置4のグリシン残基を除いて、この9アミノ酸配列中の全てのアミノ酸が、pMHC-TCR相互作用に重要と考えられることを実証している。これらのペプチド配列は、左から右に、それぞれ配列番号11~19である。
【0042】
【
図9】
図9は、21LT2-2についての潜在的な交差反応性に関するヒトプロテオームのスキャンを図示する。
【0043】
【
図10】
図10は、HLA-A*03:01によって制限された変異PIK3CAを認識する、追加のユニークなT細胞レセプターの同定を図示する。
【0044】
【
図11】
図11は、HLA-A*03:01によって制限された変異PIK3CAを認識することができる、複数のユニークなT細胞レセプターを図示する。細胞は、CD8
+TCR
+細胞でゲートした。
【0045】
【
図12】
図12は、変異PIK3CA特異的T細胞レセプターの、コレセプター依存性を図示する。細胞は、CD4
+TCR
+細胞でゲートした。
【0046】
【
図13】
図13は、PIK3CAネオ抗原特異的レセプターが、細胞溶解能を示したことを示す。細胞は、CD8
+TCR
+細胞でゲートした。
【0047】
【
図14-1】
図14A~14Cは、異なるTCR-HLA/ペプチド相互作用プロファイルを示したアラニン置換ペプチドを図示する。
図14Aは、P2~P5に関し;
図14Bは、P6~P9に関し;ならびに
図14Cは、ネイティブの野生型PIK3CAペプチドおよび変異PIK3CA P1ペプチドに関する。P1ペプチドは、配列番号11(ALHGGWTTK)に記載のアミノ酸配列からなる。P2ペプチドは、配列番号12(AAHGGWTTK)に記載のアミノ酸配列からなる。P3ペプチドは、配列番号13(ALAGGWTTK)に記載のアミノ酸配列からなる。P4ペプチドは、配列番号14(ALHAGWTTK)に記載のアミノ酸配列からなる。P5ペプチドは、配列番号15(ALHGAWTTK)に記載のアミノ酸配列からなる。P6ペプチドは、配列番号16(ALHGGATTK)に記載のアミノ酸配列からなる。P7ペプチドは、配列番号17(ALHGGWATK)に記載のアミノ酸配列からなる。P8ペプチドは、配列番号18(ALHGGWTAK)に記載のアミノ酸配列からなる。P9ペプチドは、配列番号19(ALHGGWTTA)に記載のアミノ酸配列からなる。野生型PIK3CAペプチドは、配列番号46(AHHGGWTTK)に記載のアミノ酸配列からなる。
【0048】
【
図15】
図15は、TCR認識および交差反応性決定のために重要な残基を確定するために割り当てられたモチーフを図示する。点線は、最大の反応性の50%を示す。これに基づき、潜在的な交差反応性を決定するためのモチーフが、右側に示されている。「x」は、TCR認識のために重要ではない残基を示す。位置1は、この位置のネイティブアミノ酸がアラニンであり、したがってこの試験に適用できないため、デフォルトとして「x」が割り当てられている。XLHXGWTTKは、配列番号48であり;XXXXGWTTKは、配列番号49であり、およびXLHGGWTTKは、配列番号50である。
【0049】
【
図16-1】
図16Aおよび16Bは、潜在的な交差反応性に関するヒトプロテオームのスキャンニングを図示する。
図16は、TCR 21LT2-2および1022T8に関して、交差反応性エピトープが検出されなかったことを示す。TCR 0606T1-2に関して、1つの潜在的に交差反応性のエピトープ(ivfmGWTTK)が検出された。
図16Bは、潜在的に交差反応性のエピトープでパルスされたHLA*A03:01+標的細胞が、0606T1-2をトリガーしなかったことを示す。変異PIK3CAペプチドを、対照として使用した。ALHGGWTTKは、配列番号11である。ivfmGWTTKは、配列番号47である。
【0050】
【
図17】
図17は、PIK3CA変異体特異的TCRが、別の長さの変異ペプチドを認識することができることを図示する。変異PIK3CA特異的TCRは、健常ドナーT細胞のゲノム内にレトロウイルスの方法で組み込まれた。形質導入後4~6日目において、T細胞は、HLA-A*03:01+抗原提示細胞と共にインキュベートし、8-merおよび10-merの変異PIK3CAペプチドプール(1ug/mL)でパルスした。野生型および9-merペプチドを、対照として使用した。細胞は、CD8
+TCR
+発現でゲートした。TNFα産生における変異型ペプチド特異的なアップレギュレーションは、異なるペプチド長が認識されることを示す。野生型9-merは、配列番号46(AHHGGWTTK)に記載のアミノ酸配列からなる。変異型9-merは、ALHGGWTTK(配列番号11)によって示されるアミノ酸配列からなる。変異体プールは、LHGGWTTK(配列番号51)によって示されるアミノ酸配列からなる8-merペプチド、およびDALHGGWTTK(配列番号52)によって示されるアミノ酸配列からなる10-merペプチドを含む。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本開示の主題は、変異を含むPIK3CA(例えば、ヒトPIK3CA)を標的にするTCRを提供し、例えば、変異は、H1047Lを含むか、またはH1047Lからなる。
【0052】
本開示の主題は、また、PIK3CA標的化TCRを含む免疫応答細胞(例えば、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞(CTL)、制御性T細胞、セントラルメモリーT細胞など)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ヒト胚性幹細胞、リンパ系前駆細胞、T細胞前駆体細胞、およびそこからリンパ系細胞が分化し得る多能性幹細胞、および新生物(例えば、乳がん)を処置するための、このような免疫応答細胞の使用方法も提供する。
I.定義
【0053】
別段の定めがない限り、本明細書において使用されている全ての技術的および化学的用語は、本発明が属する分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。以下の参考文献は、当業者に対して、本発明で使用されている多くの用語の一般的な定義を提供する:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編、1988);The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Riegerら(編),Springer Verlag(1991);およびHale&Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者によって決定される特定の値について許容できる誤差範囲内であることを意味し、その値がどのようにして測定または決定されるか、すなわち、測定システムの制約に部分的に依存する。例えば、「約」は、当該技術分野のプラクティスによって、3標準偏差内、または3標準偏差超を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値に対して、20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、さらに好ましくは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的なシステムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値について、一桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「細胞集団」は、類似の表現型または異なる表現型を発現する、少なくとも2つの細胞の群を指す。非限定的な例において、細胞集団は、類似の表現型または異なる表現型を発現する、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000の細胞を含み得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、任意の遺伝的エレメント、例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどを指し、適切な制御エレメントを伴う場合、複製することができ、遺伝子配列を細胞内に移送することができる。よって、この用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターおよびプラスミドベクターを含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「発現ベクター」は、所望のコード配列、および、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切な核酸配列を含む、組換え核酸配列(例えば、組換えDNA分子)を指す。原核生物における発現に必要な核酸配列は、通常、プロモーター、オペレーター(必要に応じた)、およびリボソーム結合部位を(多くの場合、他の配列と共に)含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終止シグナルおよびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0058】
本明細書で使用される場合、「CDR」は、TCRの相補性決定領域アミノ酸配列と定義され、これらは、TCRα鎖およびTCRβ鎖の超可変領域である。一般に、TCRは、α鎖可変領域内に少なくとも3つのCDR、およびβ鎖可変領域内に少なくとも3つのCDRを含む。CDRは、TCRの抗原またはエピトープに対する結合のための接触残基の大半を提供する。CDR領域は、Kabatシステム(Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)、Chothiaナンバリングシステム(Chothiaら、J Mol Biol.(1987)196:901-17)、AbMナンバリングシステム(Abhinandanら、Mol.Immunol.2008,45,3832-3839)、またはIMGTナンバリングシステム(http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/IMGTIGVLsuperfamily.html、http://www.imgt.org/IMGTindex/numbering.phpでアクセスできる)を使用することによって描写することができる。ある特定の実施形態において、CDR領域は、IMGTナンバリングシステムを使用して描写される。
【0059】
本開示の主題において有用な核酸分子には、ポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする任意の核酸分子が含まれる。ある特定の実施形態において、本開示の主題において有用な核酸分子には、TCRまたはその標的結合部位をコードする核酸分子が含まれる。このような核酸分子は、内在の核酸配列と100%同一である必要はなく、典型的には、実質的同一性を示す。内在性配列と「実質的相同性」または「実質的同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズする」は、種々のストリンジェンシー条件下で、相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載されている遺伝子)、またはその部分との間で、ペアが二本鎖分子を形成することを意図している。(例えば、Wahl,G.M.およびS.L.Berger(1987)Methods Enzymol.152:399;Kimmel,A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507を参照のこと)。
【0060】
用語「実質的に相同」または「実質的に同一」は、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載されているアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載されている核酸配列のいずれか1つ)に対して、少なくとも50%の相同性または同一性を示すポリペプチドまたは核酸分子を意味する。例えば、このような配列は、比較に使用される配列と、アミノ酸レベルまたは核酸で、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または、さらには約99%相同または同一である。
【0061】
配列相同性または配列同一性は、典型的には、配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,Wis.53705、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOX programs)を使用して測定される。このようなソフトウェアは、種々の置換、欠失、および/または他の改変に対して、類似性の度合いを割り当てることによって、同一または類似の配列をマッチさせる。同一性の度合いを決定するための例示的なアプローチにおいて、BLASTプログラムを使用することができ、e-3~e-100の確率スコアは、配列の関連性が高いことを示す。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「アナログ」は、参照ポリペプチドまたは核酸分子の機能を有する、構造的に関連するポリペプチドまたは核酸分子を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「リガンド」は、レセプターに結合する分子を指す。特に、リガンドは、別の細胞上のレセプターに結合し、細胞間認識および/または相互作用を可能にする。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「疾患」は、細胞、組織、または器官の正常な機能を阻害または妨害する、任意の状態または障害を指す。疾患の例としては、新生物、または細胞の病原体感染があげられる。
【0065】
「有効量」(または「治療有効量」)は、処置の際に、有益または所望の臨床結果をもたらすために十分な量である。有効量は、対象に対して、1またはそれを超える用量で投与され得る。処置に関して、有効量は、疾患(例えば、新生物)を緩和する、改善する、安定化する、反転させる、もしくは疾患(例えば、新生物)の進行を遅らせるか、または疾患(例えば、新生物)の病理学的結果をその他の方法で減少させるために十分な量である。有効量は、一般に、医師によってケースバイケースで決定され、当該技術分野の技術の範囲内である。有効量を達成するために適切な投与量を決定する場合、典型的には、いくつかの因子が考慮される。これらの因子としては、対象の年齢、性別、および体重、処置される状態、状態の重篤度、ならびに投与される免疫応答細胞の形態および有効濃度があげられる。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「新生物」は、細胞または組織の病的な増殖、およびそれに続く他の組織または器官への移動または浸潤によって特徴付けられる疾患を指す。新生物の成長は、典型的には、制御されずかつ進行性であり、ならびに、正常な細胞の増殖を誘発しないであろう、または停止させるであろう条件下で起こる。新生物は、種々の細胞タイプ、組織、または器官(それらに限定されないが、膀胱、結腸、骨、脳、乳房、軟骨、グリア、食道、卵管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、胸膜、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、睾丸、胸腺、甲状腺、気管、泌尿生殖路、尿管、尿道、子宮、および膣からなる群から選択される器官、またはその組織もしくは細胞タイプが含まれる)に影響を及ぼし得る。新生物には、がん、例えば、肉腫、癌、または形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)が含まれる。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「異種核酸分子またはポリペプチド」は、細胞や細胞から得たサンプル中に通常存在しない核酸分子(例えば、cDNA分子、DNA分子、またはRNA分子)またはポリペプチドを指す。この核酸は、別の生物由来であってもよく、または、例えば、細胞またはサンプル中で通常発現されないmRNA分子であってもよい。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「免疫応答細胞」は、免疫応答において機能する細胞、またはそのプロジェニター、またはその子孫を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「モジュレートする」は、ポジティブに、またはネガティブに変えることを指す。例示的なモジュレーションには、約1%、約2%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、または約100%の変化が含まれる。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「増加させる」は、ポジティブに、少なくとも約5%変えることを指し、それらに限定されないが、ポジティブに、約5%、約10%、約25%、約30%、約50%、約75%、または約100%変えることが含まれる。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「減少させる」は、ネガティブに、少なくとも約5%変えることを指し、それらに限定されないが、ネガティブに、約5%、約10%、約25%、約30%、約50%、約75%、または約100%変えることが含まれる。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「単離細胞」は、細胞に天然に付随する分子成分および/または細胞成分から分離された細胞を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」は、天然状態において見られるように、ある物質に通常付随する成分を、様々な程度で含まないその物質を指す。「単離」は、元になる原料または環境からの分離の程度を意味する。「精製」は、単離よりも高度な分離の程度を意味する。「精製された」または「生物学的に純粋な」タンパク質は、いかなる不純物も、タンパク質の生物学的な特性に実質的に影響せず、他の有害な結果を引き起こさない程度に、他の物質を含まない。すなわち、本開示の主題の核酸またはポリペプチドは、組換えDNA技術によって生成された場合には細胞性の物質、ウイルス性の物質、や培養培地を実質的に含まず、化学的に合成された場合には化学的前駆体や他の化学物質を実質的に含まない場合、精製されている。純度および均一性は、典型的には、分析化学的技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを使用して決定される。用語「精製された」は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲル中に、本質的に1本のバンドを生じさせることを意味し得る。改変(例えば、リン酸化またはグリコシル化)を受け得るタンパク質について、異なる改変は、異なる単離タンパク質(これらは別々に精製され得る)を生じ得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「分泌された」は、小胞体、ゴルジ装置を通る分泌経路によって、および細胞形質膜で一時的に融合し、タンパク質を細胞の外部に放出するベシクルとして、細胞から放出されるポリペプチドを意図している。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「特異的に結合する」または「に特異的に結合する」または「特異的に標的にする」は、目的の生体分子(例えば、ポリペプチド)を認識および結合するが、サンプル(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチドを含むか、または発現する、生物学的サンプル)中の他の分子を実質的に認識および結合しない、ポリペプチドまたはそのフラグメントを意図している。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」または「処置」は、処置される個体または細胞の疾患経過を変更する試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理学的な過程の間に実施することができる。処置の治療効果には、限定されないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の防止、疾患進行速度の低減、病態の改善または緩和、および予後の寛解または改善が含まれる。疾患または障害の進行を防止することによって、処置は、罹患したもしくは診断された対象、または障害を有する疑いがある対象における、障害に起因する増悪を防止することができるが、処置は、また、障害のリスクがあるか、または障害を有する疑いがある対象における、障害の発生または障害の症状を防止し得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、任意の動物(例えば、哺乳動物)を指し、それらに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類など(例えば、特定の処置のレシピエントになるか、またはそこから細胞が収集される)が含まれる。
II.PIK3CA
【0078】
ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェート3キナーゼ触媒サブユニットα(PIK3CA;遺伝子ID:5290(MCM、CWS5、MCAP、PI3K、CLOVE、MCMTC、PI3K-アルファ、およびp110-アルファとしても知られる))は、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(ATPを使用してPtdIns、PtdIns4P、およびPtdIns(4,5)P2をリン酸化する)の触媒サブユニットをコードする遺伝子である。PIK3CAは、腫瘍形成性であることがわかっており、乳がんおよび子宮頸がんと関連付けられている。
III.T細胞レセプター(TCR)
【0079】
TCRは、不変CD3鎖分子との複合体の部分として発現される2つの可変鎖からなる、ジスルフィドで結合したヘテロダイマータンパク質である。TCRは、T細胞表面に見出され、主要組織適合複合体(MHC)分子に結合するペプチドとしての抗原の認識に関与する。ある特定の実施形態において、TCRは、α鎖とβ鎖(それぞれ、TRAとTRBによってコードされる)を含む。ある特定の実施形態において、TCRは、γ鎖とδ鎖を含む(それぞれ、TRGとTRDによってコードされる)。
【0080】
TCRのそれぞれの鎖は、2つの細胞外ドメイン、すなわち可変領域と定常領域を含む。定常領域は、細胞膜に近く、膜貫通ドメインおよび短い細胞質側末端(すなわち、細胞内ドメイン)が続いている。可変領域は、ペプチド/MHC複合体に結合する。両方の鎖の可変領域は、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR)を有している。
【0081】
ある特定の実施形態において、TCRは、3つのダイマー性シグナル伝達モジュール CD3δ/ε、CD3γ/ε、およびCD247ζ/ζまたはζ/ηと、レセプター複合体を形成し得る。TCR複合体がその抗原およびMHC(ペプチド/MHC)と結合した場合、そのTCR複合体を発現するT細胞が活性化する。
【0082】
ある特定の実施形態において、本開示の主題は、組換えTCRを提供する。ある特定の実施形態において、前記TCRは、天然に存在しないTCRである。ある特定の実施形態において、前記TCRは、任意の天然に存在するTCRと、少なくとも1つのアミノ酸残基が異なる。ある特定の実施形態において、前記TCRは、任意の天然に存在するTCRと、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれを超えるアミノ酸残基が異なる。ある特定の実施形態において、前記TCRは、天然に存在するTCRから、少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されている。ある特定の実施形態において、前記TCRは、天然に存在するTCRから、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれを超えるアミノ酸残基が改変されている。
【0083】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、PIK3CAペプチドを特異的に標的にし、ここで、前記PIK3CAペプチドは、変異を含むか、または変異からなる(「変異型PIK3CAペプチド」)。ある特定の実施形態において、前記変異は、H1047R、E545K、E542K、N345K、H1047L、E726K、C420R、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、前記変異は、H1047RまたはH1047Lである。ある特定の実施形態において、前記変異は、H1047Lである。ある特定の実施形態において、前記PIK3CAペプチドは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる変異H1047Lからなる。ある特定の実施形態において、前記TCRは、野生型PIK3CAペプチドを標的にしない。ある特定の実施形態において、前記野生型PIK3CAペプチドは、配列番号46に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドである。配列番号46を以下に示す。
【化1】
【0084】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、
図8および
図14A~14Cに列挙されているPIK3CAペプチドを特異的に標的にする。ある特定の実施形態において、PIK3CAペプチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号51、または配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる。配列番号11~19、51、および52を以下に示す。
【化2】
【0085】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなるPIK3CAペプチドを特異的に標的にする。ある特定の実施形態において、前記TCRは、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなるPIK3CAペプチドを特異的に標的にする。
【0086】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、HLAクラスI複合体(例えば、HLA-A、HLA-B、およびHLA-C)と結合するPIK3CAペプチドを特異的に標的にする。ある特定の実施形態において、前記TCRは、HLAクラスII複合体(例えば、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DO、HLA-DQ、およびHLA-DR)と結合するPIK3CAペプチドを特異的に標的にする。
【0087】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、HLA-A*03スーパーファミリーと(例えば、HLA-A*03スーパーファミリー依存的な様式で)結合するPIK3CAペプチドを特異的に標的にする。ある特定の実施形態において、前記HLA*A03スーパーファミリーメンバーは、それらに限定されないが、HLA-A*03、HLA-A*11、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*66、HLA-A*68、およびHLA-A*74中のアレルおよびサブアレルを含む。
TCRクローン型
【0088】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むα鎖を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む。配列番号9および配列番号10を表1に示す。
【0089】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。配列番号7および8を表1に示す。
【0090】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、ヒトTCRであり、変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に特異的に結合し、21LT2-2と呼ばれる。
【0091】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、ヒトTCRであり、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むα鎖および/または配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む。
【0092】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、α鎖可変領域と、β鎖可変領域、または表1から選択されるCDRを含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。例えば、TCRの細胞外ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。例えば、TCRの細胞外ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一を含むであるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。
【0093】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号2に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3を含む。配列番号1~3を表1に示す。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号6に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。配列番号4~6を表1に示す。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号2に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、配列番号4に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号6に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。
表1.(21LT2-2)
【表1-1】
【表1-2】
【0094】
ある特定の実施形態において、上述(表1を含む)の前記CDR領域は、IMGTナンバリングシステム(http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/ Numbering/IMGTIGVLsuperfamily.html,http://www.imgt.org/IMGTindex/numbering.phpでアクセスできる)を使用することによって描写される。
【0095】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、配列番号33に記載のアミノ酸配列を含むα鎖を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRは、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む。配列番号33および配列番号34を表2に示す。
【0096】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号31に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号32に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。配列番号31および配列番号32を表2に示す。
【0097】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、ヒトTCRであり、変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に特異的に結合し、0606T1-2と呼ばれる。
【0098】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、ヒトTCRであり、配列番号33に記載のアミノ酸配列を含むα鎖および/または配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む。
【0099】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、α鎖可変領域とβ鎖可変領域、または表2から選択されるCDRを含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号31に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。例えば、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号31に記載のアミノ酸配列に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号31に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号32に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。例えば、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号32に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号32に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号31に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号32に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号31に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号32に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。
【0100】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号25に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号26に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号27に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3を含む。表2に開示されているとおりの配列番号25~27。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号28に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号29に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号30に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号29に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号30に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。表2に開示される通りの配列番号28~30。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号25に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号26に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、配列番号27に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、配列番号28に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号29に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号30に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3、配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号29に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号30に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。
表2.(0606T1-2)
【表2-1】
【表2-2】
【0101】
ある特定の実施形態において、上述(表2を含む)の前記CDR領域は、IMGTナンバリングシステム(http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/ Numbering/IMGTIGVLsuperfamily.html,http://www.imgt.org/IMGTindex/numbering.phpでアクセスできる)を使用することによって描写される。
【0102】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、配列番号43に記載のアミノ酸配列を含むα鎖を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRは、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む。配列番号43および44を表2に開示する。
【0103】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号41に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。配列番号41および42を表3に開示する。
【0104】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、ヒトTCRであり、変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に特異的に結合し、1022T8と呼ばれる。
【0105】
ある特定の実施形態において、前記TCRは、ヒトTCRであり、配列番号43に記載のアミノ酸配列を含むα鎖および/または配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む。
【0106】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、α鎖可変領域とβ鎖可変領域、または表3から選択されるCDRを含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号41に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。例えば、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号41に記載のアミノ酸配列に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号41に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号42に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。例えば、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号42に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号41に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号42に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号41に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む。
【0107】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号35に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号36に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号37に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3を含む。配列番号35~37を表3に開示する。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号36に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号37に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号38に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号39に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号40に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。配列番号38~40を表3に開示する。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号35に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号36に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、配列番号37に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、配列番号38に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号39に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号40に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1、配列番号36に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2、配列番号37に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3、配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1、配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2、および配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。
表3.(1022T8)
【表3】
【0108】
ある特定の実施形態において、上述(表3を含む)の前記CDR領域は、IMGTナンバリングシステム(http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/ Numbering/IMGTIGVLsuperfamily.html,http://www.imgt.org/IMGTindex/numbering.phpでアクセスできる)を使用することによって描写される。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「保存的配列改変」は、前記アミノ酸配列を含む、本開示のTCRの結合特性に有意に影響を及ぼさず、変化もさせない、アミノ酸改変を指す。保存的改変は、アミノ酸の置換、付加、および欠失を含み得る。アミノ酸は、電荷および極性などの物理化学的特性によってグループに分類することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同じグループ内のアミノ酸で置き換えられるものである。例えば、アミノ酸は、電荷によって分類することができ、正電荷アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジンを含み、負電荷アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸を含み、中性電荷アミノ酸は、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンを含む。さらに、アミノ酸は、極性によって分類することができ、極性アミノ酸は、アルギニン(塩基性極性)、アスパラギン、アスパラギン酸(酸性極性)、グルタミン酸(酸性極性)、グルタミン、ヒスチジン(塩基性極性)、リジン(塩基性極性)、セリン、スレオニン、およびチロシンを含み;非極性アミノ酸は、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、およびバリンを含む。よって、CDR領域内の1つまたはそれを超えるアミノ酸残基は、同じクループからの他のアミノ酸残基で置き換えられ得、この変化させたTCRは、保持する機能(すなわち、上記の(c)~(l)に記載されている機能)について、本明細書に記載されている機能アッセイを使用して試験することができる。ある特定の実施形態において、特定の配列またはCDR領域内の、1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下の残基が変更される。
【0110】
ある特定の実施形態において、前記α鎖可変領域および/またはβ鎖可変領域のアミノ酸配列は、特定の配列(例えば、配列番号7、8、31、32、41、および42)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%(例えば、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%)の相同性または同一性を有し、前記特定の配列(単数または複数)に対する置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を限定することなく含む改変を含むが、変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、このような改変は、前記可変領域のCDRドメイン内にはない。
【0111】
ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に特異的に結合するが、対応する野生型ペプチド配列には結合しない。
【0112】
ある特定の実施形態において、配列番号7、配列番号8、配列番号31、配列番号32、配列番号41、または配列番号42において、合計で1~10個のアミノ酸が、置換され、挿入され、および/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、前記細胞外ドメインのCDRの外側の領域で起こる。ある特定の実施形態において、前記細胞外ドメインは、配列番号7、8、31、32、41、および42からなる群から選択されるα鎖可変領域および/またはβ鎖可変領域配列を含み、その配列(配列番号7、配列番号8、配列番号31、配列番号32、配列番号41、または配列番号42)の翻訳後修飾を含む。
【0113】
本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸配列の間のパーセント相同性は、それら2つの配列の間のパーセント同一性と等価である。2つの配列の間のパーセント同一性は、ギャップの数、および各ギャップの長さ(それら2つの配列の最適なアライメントのために取り入れる必要がある)を考慮した、その配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、%相同性=同一位置の数/位置の総数×100)。配列の比較、および2つの配列の間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。
【0114】
2つのアミノ酸配列の間のパーセント相同性は、PAM120重み付け残基表、ギャップ長ペナルティーとして12、およびギャップペナルティーとして4を使用し、E.MeyersとW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.,4:11-17(1988))(これは、ALIGNアルゴリズム(バージョン2.0)に組み込まれている)を使用して決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列の間のパーセント相同性は、Blossum62行列またはPAM250行列のいずれか、ギャップ重みとして16、14、12、10、8、6、または4、および長さ重みとして1、2、3、4、5、または6を使用し、NeedlemanとWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.48:444-453(1970))(これは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで利用可能)中のGAPプログラムに組み込まれている)を使用して決定することができる。
【0115】
それに加えて、または代えて、本開示の主題のアミノ酸配列は、さらに、例えば関連する配列を同定するために、公開されているデータベースに対して検索を行うための「問い合わせ配列」としても使用することができる。このような検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行い、本明細書に開示されている特定の配列と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップありアライメントを行うために、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されているように、ギャップありBLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップありBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。
【0116】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、参照TCRとしての変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)またはその機能性フラグメント上の同じエピトープに結合する。例えば、本開示のTCRの前記細胞外ドメインは、例えば、本開示のTCRのいずれか1つの、α鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列およびβ鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、参照TCRとしての変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)またはその機能性フラグメント上の同じエピトープに結合する。ある特定の実施形態において、本開示のTCRの前記細胞外ドメインは、例えば、本開示のTCRのいずれか1つの、α鎖可変領域配列とβ鎖可変領域配列を含む、参照TCRとしての変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)またはその機能性フラグメント上の同じエピトープに結合する。
【0117】
CDR3ドメインは、CDR1および/またはCDR2ドメイン(単数または複数)とは独立して、単独で、同族抗原に対するTCRまたはその機能性フラグメントの結合特異性を決定することができること、および、同じ結合特異性を有する複数のTCRを、共通のCDR3配列に基づいて、予測通りに作製することができることが、当該技術分野においてよく知られている。
【0118】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3;および配列番号6に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号2に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号5に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2をさらに含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1;および配列番号4に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1をさらに含む。
【0119】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号27に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3;および配列番号30に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号26に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号29に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2をさらに含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号25に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1;および配列番号28に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1をさらに含む。
【0120】
ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号37に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3;および配列番号40に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3を含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号36に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号39に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2をさらに含む。ある特定の実施形態において、前記TCRの細胞外ドメインは、配列番号35に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1;および配列番号38に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1をさらに含む。
【0121】
ある特定の実施形態において、前記本開示の主題のTCRは、ヒト細胞において核酸配列を発現させるための、誘導性プロモーターをさらに含む。TCR遺伝子の発現に使用するためのプロモーターは、構成的プロモーター(例えばユビキチンC(UbiC)プロモーター)であり得る。
【0122】
本開示の主題は、また、本明細書に記載されている変異型PIK3CA標的化TCRをコードする核酸分子も提供する。ある特定の実施形態において、前記核酸分子は、本開示のTCRのα鎖とβ鎖の両方をコードする。ある特定の実施形態において、前記α鎖と前記β鎖は、自己切断ペプチド(例えば、2A-ペプチド)によって分離される。ある特定の実施形態において、前記α鎖と前記β鎖は、フューリン2Aペプチドによって分離される。ある特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む。
【化3】
【0123】
ある特定の実施形態において、前記核酸分子は、本開示の変異型PIK3CA標的化TCRの機能性部位/フラグメントをコードする。本明細書で使用される場合、用語「機能性部位」または「機能性フラグメント」は、本開示の変異型PIK3CA標的化TCRの任意の部位、部分、またはフラグメントを指し、この部位、部分、またはフラグメントは、変異型PIK3CA標的化TCR(親TCR)の生物学的活性を保持している。例えば、機能性部位は、親TCRに対して、類似する程度、同じ程度、さらには上回る程度に、標的細胞を認識し、疾患(例えば、乳がん)を処置する能力を保持する、本開示の変異型PIK3CA標的化TCRの部位、部分、またはフラグメントを包含する。ある特定の実施形態において、本開示の変異型PIK3CA標的化TCRの機能性部位をコードする前記核酸分子は、親TCRの、例えば、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、および約95%、または約95%超を含むタンパク質をコードする。
CDR内に改変を有するTCR
【0124】
ある特定の実施形態において、本開示のTCR(またはその機能性フラグメント)は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含むα鎖可変領域、およびCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含むβ鎖可変領域を含み、ここで、これらの1つまたはそれを超えるCDR配列は、本明細書に記載されているTCR(またはその機能性フラグメント)(表1~3を参照のこと)に基づく特定のアミノ酸配列、またはその改変を含み、また、ここで、前記TCR(またはその機能性フラグメント)は、本開示の主題の前記変異型PIK3CAペプチド特異的TCR(またはその機能性フラグメント)の所望の機能的特性を保持している。
【0125】
ある特定の実施形態において、本開示のTCR(またはその機能性フラグメント)は、α鎖定常領域およびβ鎖定常領域を含み、ここで、前記定常領域の少なくとも1つは、本明細書に記載されているTCR(またはその機能性フラグメント)(表1~3を参照のこと)に基づく特定のアミノ酸配列、またはその改変を含み、また、ここで、前記TCR(またはその機能性フラグメント)は、本開示の主題の前記変異型PIK3CAペプチド特異的TCR(またはその機能性フラグメント)の所望の機能的特性を保持している。
【0126】
ある特定の実施形態において、このような改変は、前記アミノ酸配列を含む前記TCRの結合特性に有意に影響を及ぼさず、変化もさせない。このような改変の非限定的な例は、アミノ酸の置換、付加、および欠失を含む。改変は、本開示のTCRまたはその機能性フラグメント中に、当該技術分野において知られている標準的な技術(例えば部位特異的変異誘発およびPCRを利用した変異誘発)によって導入することができる。
【0127】
前記改変は、保存的改変、非保存的改変、または保存的改変と非保存的改変の組み合わせであり得る。上記で論じたように、保存的アミノ酸置換は、前記アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。例示的な保存的アミノ酸置換を表4に示す。ある特定の実施形態において、アミノ酸置換を目的のTCR中に導入し、その産物を、所望の活性(例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、またはADCCもしくはCDCの改善)についてスクリーニングしてもよい。
表4
【表4】
【0128】
アミノ酸は、共通する側鎖特性によってグループ分けすることができる:
・疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
・中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
・酸性:Asp、Glu;
・塩基性:His、Lys、Arg;
・鎖の向きに影響する残基:Gly、Pro;
・芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0129】
ある特定の実施形態において、CDR領域内の1つまたはそれを超えるアミノ酸残基を同じグループからの他のアミノ酸残基で置き換えもよく、この変化させたTCRを、本明細書に記載されている機能的アッセイを使用して試験してもよい。
【0130】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、他のクラスに交換することを必然的に伴う。
【0131】
ある特定の実施形態において、特定の配列またはCDR領域内の、1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下の残基が変更される。
【0132】
ある特定の実施形態において、TCRの定常領域内の1つまたはそれを超えるアミノ酸残基は、安定性および/または前記TCRの細胞表面発現を増強するために、改変してもよい。ある特定の実施形態において、特定の配列または定常領域内の1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下の残基が変更される。ある特定の実施形態において、前記改変は、それらに限定されないが、マウス化、システイン改変、および膜貫通改変(Cohenら、Enhanced antitumor activity of murine-human hybrid T-cell receptor(TCR)in human lymphocytes is associated with improved pairing and TCR/CD3 stability,Cancer Res.2006;66(17):8878-8886;Cohenら、Enhanced antitumor activity of T cells engineered to express T-cell receptors with a second disulfide bond,Cancer Res.2007;67(8):3898-3903;Kuballら、Facilitating matched pairing and expression of TCR chains introduced into human T cells,Blood 2007;109(6):2331-2338;Haga-Friedmanら、Incorporation of transmembrane hydrophobic mutations in the TCR enhance its surface expression and T cell functional avidity,Journal of immunology 2012;188(11):5538-5546(これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される))を含む。
【0133】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示されているTCRは、配列番号20または配列番号21に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含む、改変TCRα鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態において、前記改変TCRα鎖定常領域は、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、前記改変TCRα鎖定常領域は、配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む。
【0134】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示されているTCRは、配列番号22、配列番号23、配列番号45に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含む改変TCRβ鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態において、前記改変TCRβ鎖定常領域は、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、前記改変TCRβ鎖定常領域は、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、前記改変TCRβ鎖定常領域は、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む。
【0135】
ヒトα鎖定常領域:
【化4】
マウスα鎖定常領域:(膜貫通ドメインにおけるシステイン改変およびLVL改変に下線を引いている)
【化5】
ヒトβ鎖定常領域:
【化6】
マウスβ鎖定常領域:(システイン改変に下線を引いている)
【化7】
ヒトβ鎖定常領域:
【化8】
V.免疫応答細胞
【0136】
本開示の主題は、変異型PIK3CAペプチドを標的にするTCR(例えば、本明細書に開示されているTCR)を含む細胞を提供する。このような細胞は、新生物(例えば、乳がん)を処置および/または予防するために、それを必要とするヒト対象に投与される。ある特定の実施形態において、前記細胞は、免疫応答細胞である。
【0137】
本開示の主題は、上述の変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に特異的に結合するTCRを含む免疫応答細胞を提供する。
【0138】
前記免疫応答細胞は、本開示のTCRで、細胞が前記TCRを発現するように形質導入され得る。本開示の主題は、また、このような細胞を、新生物(例えば、乳がん)の処置のために使用する方法も提供する。
【0139】
本開示の主題の前記免疫応答細胞は、リンパ系統の細胞であり得る。前記リンパ系統(B細胞、T細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる)は、TCRの産生、細胞免疫系の調節、血液中の外来因子の検出、宿主にとって外来の細胞の検出などを提供する。前記リンパ系統の免疫応答細胞の非限定的な例は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、胚性幹細胞、および多能性幹細胞(例えば、そこからリンパ系細胞が分化し得るもの)を含む。T細胞は、胸腺で成熟し、主に細胞媒介免疫に重要なリンパ球であり得る。T細胞は、適応免疫系に関与する。本開示の主題のT細胞は、任意の種類のT細胞(それらに限定されないが、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞(セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞(または幹様メモリーT細胞(stem-like memory T cell))、および2種類のエフェクターメモリーT細胞(例えば、TEM細胞およびTEMRA細胞)、制御性T細胞(サプレッサーT細胞としても知られる)、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞、およびγδT細胞が含まれる)であり得る。細胞傷害性T細胞(CTLまたはキラーT細胞)は、感染した体細胞または腫瘍細胞の死を誘導することができるTリンパ球のサブセットである。ある特定の実施形態において、前記TCR発現T細胞は、Foxp3を発現し、T制御性表現型を達成および維持する。
【0140】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、細胞媒介免疫の一部であり、自然免疫応答の間に働くリンパ球であり得る。NK細胞は、標的細胞に対する細胞毒性効果を発揮するために、事前の活性化を必要としない。
【0141】
本開示の主題の免疫応答細胞は、がん(例えば、乳がん)を処置するための、変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に特異的に結合するTCRを発現することができる。このような免疫応答細胞は、がん(例えば、乳がん)の処置のために、それを必要とする対象(例えば、ヒト対象)に投与され得る。ある特定の実施形態において、前記免疫応答細胞は、T細胞である。前記T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞であり得る。ある特定の実施形態において、前記T細胞は、CD4+T細胞である。ある特定の実施形態において、前記T細胞は、CD8+T細胞である。
【0142】
本開示の免疫応答細胞は、少なくとも1つの組換えまたは外来性共刺激リガンドをさらに含み得る。例えば、本開示の免疫応答細胞は、前記免疫応答細胞が、PIK3CA標的化TCRと少なくとも1つの共刺激リガンドを共発現するか、または共発現するように誘導されるように、少なくとも1つの共刺激リガンドでさらに形質導入され得る。前記PIK3CA標的化TCRと少なくとも1つの共刺激リガンドの間の相互作用は、免疫応答細胞(例えば、T細胞)の完全な活性化のために重要な非抗原特異的シグナルをもたらす。共刺激リガンドは、それらに限定されないが、腫瘍壊死因子(TNF(tumor necrosis factor))スーパーファミリーリガンド、および免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーリガンドのメンバーを含む。TNFは、全身性炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激する。その主要な役割は、免疫細胞の調節におけるものである。TNFスーパーファミリーのメンバーは、多くの共通する特徴を共有している。TNFスーパーファミリーのメンバーの大半は、短い細胞質内セグメントと、比較的長い細胞外領域とを含むII型膜貫通タンパク質(細胞外C末端)として合成される。TNFスーパーファミリーのメンバーは、限定されないが、神経成長因子(NGF)、CD40L(CD40L)/CD154、CD137L/4-1BBL、TNF-α、CD134L/OX40L/CD252、CD27L/CD70、Fasリガンド(FasL)、CD30L/CD153、腫瘍壊死因子β(TNFβ)/リンホトキシンα(LTα)、リンホトキシンβ(LTβ)、CD257/B細胞活性化因子(BAFF)/Blys/THANK/Tall-1、グルココルチコイド誘導性TNFレセプターリガンド(GITRL)、およびTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、LIGHT(TNFSF14)を含む。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーは、細胞の認識プロセス、結合プロセス、または付着プロセスに関与する、細胞表面の可溶性タンパク質の大きなグループである。これらのタンパク質は、免疫グロブリンと構造的な特徴を共有し、これらは免疫グロブリンドメイン(フォールド)を有している。免疫グロブリンスーパーファミリーリガンドは、それらに限定されないが、CD80およびCD86(両方ともCD28のリガンドである)、PD-L1/(B7-H1)(PD-1のリガンドである)を含む。ある特定の実施形態において、前記少なくとも1つの共刺激リガンドは、4-1BBL、CD80、CD86、CD70、OX40L、CD48、TNFRSF14、PD-L1、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、前記免疫応答細胞は、4-1BBLである、1つの組換え共刺激リガンドを含む。ある特定の実施形態において、前記免疫応答細胞は、4-1BBLおよびCD80である、2つの組換え共刺激リガンドを含む。
【0143】
さらに、本開示の免疫応答細胞は、少なくとも1つの外来性サイトカインを含み得る。例えば、本開示の免疫応答細胞は、その免疫応答細胞が、変異型PIK3CA標的化TCRを発現するだけでなく、少なくとも1つのサイトカインを分泌するように、前記少なくとも1つのサイトカインでさらに形質導入され得る。ある特定の実施形態において、前記少なくとも1つのサイトカインは、IL-2、IL-3、IL-6、IL-7、IL-11、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、およびIL-21からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、前記サイトカインは、IL-12である。
【0144】
前記変異型PIK3CAペプチド特異的または変異型PIK3CA標的化ヒトリンパ球は、末梢ドナーリンパ球(例えば、Sadelain,M.ら、2003 Nat Rev Cancer 3:35-45(TCRを発現するように遺伝子改変された末梢ドナーリンパ球を開示している)に開示されているもの、Morgan,R.A.ら、2006 Science 314:126-129(αβヘテロダイマーを含む腫瘍抗原認識T細胞レセプター複合体の完全長を発現するように遺伝子改変された末梢ドナーリンパ球を開示している)に開示されているもの、Panelli,M.C.ら、2000 J Immunol 164:495-504;Panelliら、2000 J Immunol 164:4382-4392(腫瘍バイオプシーにおける腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に由来するリンパ球培養物を開示している)に開示されているもの、およびDupont,J.ら、2005 Cancer Res 65:5417-5427;Papanicolaou,G.A.ら、2003 Blood 102:2498-2505(人工抗原提示細胞(AAPC)またはパルスされた樹状細胞を利用してin vitroで選択的に増殖された抗原特異的末梢血白血球を開示している)に開示されているもの)において使用され得る。前記免疫応答細胞(例えば、T細胞)は、自家であるか、非自家(例えば、同種異系)であるか、または操作された前駆または幹細胞からin vitroで誘導され得る。
【0145】
CTLの未精製の原料は、当該技術分野で知られているいずれでもよく、例えば、骨髄、胎児、新生児、もしくは成体、または他の造血細胞源(例えば、胎児肝臓、末梢血、または臍帯血)であってもよい。種々の技術が、細胞を分離するために採用され得る。例えば、ネガティブ選択方法によって、最初に非CTLを除去し得る。
【0146】
最終分化した細胞の大部分は、まず、比較的大まかな分離によって除去され得る。例えば、まず、多くの無関係な細胞を除去するために、磁気ビーズ分離を使用し得る。好ましくは、細胞単離に先立って、全造血細胞の少なくとも約80%、通常少なくとも約70%が除去される。
【0147】
分離のための手順は、それらに限定されないが、密度勾配遠心分離;リセッティング;細胞密度を改変する粒子へのカップリング;TCR被覆磁気ビーズによる磁気分離;アフィニティークロマトグラフィー;mAbと結合させた、または併用する細胞傷害性薬剤(それらに限定されないが、補体および細胞毒が含まれる);および固体マトリックス(例えば、プレート、チップ)に結合させたTCRによるパニング、エルトリエーション、または任意の他の都合のよい技術、を含む。
【0148】
分離および分析のための技術は、それらに限定されないが、フローサイトメトリー(様々な程度の精巧化(例えば、複数のカラーチャンネル、低角度で鈍角の光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネル)を有し得る)を含む。
【0149】
前記細胞は、死細胞に関連する色素(ヨウ化プロピジウム(PI)など)を利用することによって、死細胞と対比して選択され得る。好ましくは、前記細胞は、2%ウシ胎児血清(FCS)もしくは0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む培地、または任意の他の適切な、好ましくは無菌の、等張培地中で収集される。
VI.ベクター
【0150】
免疫応答細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の遺伝子改変は、実質的に均質な細胞組成物を組換えDNAまたはRNAコンストラクトで形質導入することによって達成し得る。前記ベクターは、レトロウイルスベクター(例えば、ガンマレトロウイルス)であり得、DNAまたはRNAコンストラクトを宿主細胞ゲノムに導入するために利用される。例えば、変異型PIK3CA標的化TCRをコードするポリヌクレオチドをレトロウイルスベクター中にクローニングすることができ、発現は、その内在的プロモーターから、レトロウイルスの長末端反復から、または代替的な内部プロモーターから駆動され得る。
【0151】
非ウイルスベクターまたはRNAも、同様に使用され得る。ランダム染色体組込み、または標的化組込み(例えば、ヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、および/またはクラスター化した規則的な散在性の短い回文配列リピート(CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)を使用する、または導入遺伝子発現(例えば、天然または化学改変RNAを使用する)が使用され得る。
【0152】
変異型PIK3CA標的化TCR発現細胞を提供するための最初の細胞の遺伝子改変のために、レトロウイルスベクターが、一般に形質導入のために利用されるが、任意の他の適切なウイルス性ベクターまたは非ウイルス性送達システムを使用することができる。少なくとも2つの共刺激リガンドを含む抗原提示複合体を含む細胞を提供するための次の細胞の遺伝子改変のために、レトロウイルス性遺伝子導入(形質導入)が同様に有効であることが分かっている。レトロウイルスベクターと適切なパッケージングラインの組み合わせもまた適しており、この場合、ヒト細胞への感染のために、カプシドタンパク質が機能する。種々のアンホトロピックウイルス産生細胞系が知られており、それらに限定されないが、PA12(Millerら、(1985)Mol.Cell.Biol.5:431-437);PA317(Millerら(1986)Mol.Cell.Biol.6:2895-2902);およびCRIP(Danosら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460-6464)が含まれる。非アンホトロピックな粒子(例えば、VSVG、RD114、またはGALVエンベロープでシュードタイプ化された粒子、および当該技術分野で知られている任意の他の粒子)もまた適切である。
【0153】
形質導入のあり得る方法には、また、前記細胞と産生細胞の直接的な共培養(例えば、Bregniら(1992)Blood 80:1418-1422の方法による)、または、適切な成長因子およびポリカチオンの存在下または非存在下で、ウイルス上清単独、または濃縮ベクターストックと共に培養すること(Xuら(1994)Exp.Hemat.22:223-230;およびHughesら(1992)J.Clin.Invest.89:1817の方法による)も含まれる。
【0154】
ウイルスベクターの形質導入は、免疫応答細胞において、共刺激リガンドを発現、および/またはサイトカイン(例えば、4-1BBLおよび/またはIL-12)を分泌するために使用し得る。好ましくは、選択したベクターは、高い感染効率、ならびに安定した組込みおよび発現を示す(例えば、Cayouetteら、Human Gene Therapy 8:423-430,1997;Kidoら、Current Eye Research 15:833-844,1996;Bloomerら、Journal of Virology 71:6641-6649,1997;Naldiniら、Science 272:263 267,1996;およびMiyoshiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:10319,1997を参照のこと)。使用することができる他のウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、またはEpstein-Barrウイルスなどのヘルペスウイルスがあげられる(例えば、Miller,Human Gene Therapy 15-14,1990;Friedman,Science 244:1275-1281,1989;Eglitisら、BioTechniques 6:608-614,1988;Tolstoshevら、Current Opinion in Biotechnology 1:55-61,1990;Sharp,The Lancet 337:1277-1278,1991;Cornettaら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322,1987;Anderson,Science 226:401-409,1984;Moen,Blood Cells 17:407-416,1991;Millerら、Biotechnology 7:980-990,1989;Le Gal La Salleら、Science 259:988-990,1993;およびJohnson,Chest 107:77S-83S,1995のベクターも参照のこと)。レトロウイルスベクターは、特に開発が進んでおり、臨床実践場面で使用されている(Rosenbergら、N.Engl.J.Med 323:370,1990;Andersonら、米国特許第5,399,346号)。
【0155】
ある特定の非限定的な実施形態において、本開示の変異型PIK3CA標的化TCRを発現するベクターは、レトロウイルスベクター(例えば、オンコレトロウイルスベクター)である。
【0156】
非ウイルス的なアプローチもまた、細胞におけるタンパク質の発現のために利用し得る。例えば、核酸分子は、細胞内に、リポフェクション(Feignerら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.U.S.A.84:7413,1987;Onoら、Neuroscience Letters 17:259,1990;Brighamら、Am.J.Med.Sci.298:278,1989;Staubingerら、Methods in Enzymology 101:512,1983)、アシアロオロソムコイド-ポリリジンコンジュゲーション(Wuら、Journal of Biological Chemistry 263:14621,1988;Wuら、Journal of Biological Chemistry 264:16985,1989)の存在下で核酸を投与することによって、または外科的条件下のマイクロインジェクション(Wolffら、Science 247:1465,1990)によって導入することができる。遺伝子導入のための他の非ウイルス的な方法には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、およびプロトプラスト融合を使用したin vitroのトランスフェクションが含まれる。リポソームもまた、細胞内へのDNAの送達のために潜在的に有益であり得る。対象の冒された組織内への正常遺伝子の移植は、また、正常核酸を、培養可能な細胞タイプ内に、ex vivo(例えば、自家細胞もしくは異種性初代細胞、またはその子孫)で導入し、その後、その細胞(またはその子孫)を、標的組織に注入するか、または全身的に注入することによって達成することもできる。組換えレセプターは、また、トランスポザーゼまたは標的化ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、またはTALEヌクレアーゼ)を使用することによって誘導する、または取得することもできる。一過性の発現は、RNAエレクトロポレーションによって行うことができる。
【0157】
ポリヌクレオチド治療方法に使用するためのcDNA発現は、任意の適切なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、またはメタロチオネインプロモーター)から指示され得、任意の適切な哺乳類の調節エレメントまたはイントロン(例えば、伸長因子1αエンハンサー/プロモーター/イントロン構造)によって調節され得る。例えば、所望の場合、特定の細胞タイプにおいて優先的に遺伝子発現を指示することが知られているエンハンサーを、核酸の発現を指示するために使用することができる。使用されるエンハンサーには、限定されないが、組織特異的エンハンサーまたは細胞特異的エンハンサーとして特徴付けられるものが含まれ得る。あるいは、ゲノムクローンが治療用コンストラクトとして使用される場合、調節は、同族の調節配列によって、または、所望の場合、異種供給源由来の調節配列(上述の任意のプロモーターまたは調節エレメントが含まれる)によって媒介され得る。
【0158】
得られた細胞は、改変されていない細胞の場合と同様の条件下で成長させることができ、それによって改変された細胞を増殖させ、種々の目的のために使用することができる。
VII.免疫応答細胞へのゲノム組込み
【0159】
ある特定の実施形態において、本開示のTCRは、免疫応答細胞のゲノムの選択された遺伝子座の中に組み込まれ得る。任意の標的化ゲノム編集方法を、免疫応答細胞のゲノムの選択された遺伝子座にTCRを組み込むために使用し得る。ある特定の実施形態において、前記TCRの発現は、前記遺伝子座の中または近傍の内在性プロモーター/エンハンサーによって駆動される。ある特定の実施形態において、前記TCRの発現は、前記遺伝子座の中に組み込まれた外来性プロモーターによって駆動される。前記TCRが組み込まれる遺伝子座は、前記遺伝子座内の前記遺伝子の発現レベル、および前記遺伝子座内の前記遺伝子の遺伝子発現のタイミングに基づいて選択される。前記発現レベルおよびタイミングは、種々の細胞分化のステージおよびマイトジェン/サイトカイン微小環境(これらは、選択を行う場合に考慮される因子に含まれる)において異なり得る。
【0160】
ある特定の実施形態において、CRISPRシステムが、免疫応答細胞のゲノムの選択された遺伝子座の中に前記TCRを組み込むために使用される。クラスター化した規則的な散在性の短い回文配列リピート(CRISPR(clustered regularly-interspaced short palindromic repeats))システムは、原核細胞中で発見されたゲノム編集ツールである。ゲノム編集のために利用される場合、このシステムは、Cas9(crRNAをそれのガイドとして利用してDNAを改変することができるタンパク質)、CRISPR RNA(crRNA、Cas9と活性な複合体を形成するtracrRNA(通常、ヘアピンループ形態)に結合する領域と共に、ホストDNAの正しいセクションにガイドするためにCas9によって使用されるRNAを含む)、トランス活性化型crRNA(tracrRNA、crRNAに結合し、またCas9と活性な複合体を形成する)、および必要に応じた部分であるDNA修復テンプレート(特定のDNA配列の挿入を可能にする、細胞の修復プロセスをガイドするDNA)を含む。CRISPR/Cas9は、標的細胞をトランスフェクトするために、プラスミドを利用することが多い。crRNAは、Cas9が細胞中の標的DNAを識別し直接結合するために使用する配列であるため、適用ごとに設計する必要がある。TCR発現カセットを有する修復テンプレートもまた、切断のいずれかのサイドの配列とオーバーラップし、かつ挿入配列をコードしていなければならないため、適用ごとに設計する必要がある。複数のcrRNAと前記tracrRNAをひとまとめにして、シングルガイドRNA(sgRNA)を形成してもよい。このsgRNAは、Cas9遺伝子と結合し、細胞内にトランスフェクトするためにプラスミドにされ得る。CRISPRシステムの使用方法は、例えば、WO2014093661A2、WO2015123339A1、およびWO2015089354A1(これらは、参照によりその全体が援用される)に記載されている。
【0161】
ある特定の実施形態において、ジンクフィンガーヌクレアーゼが、免疫応答細胞のゲノムの選択された遺伝子座の中に前記TCRを組み込むために使用される。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインと組み合わせることによって生成される人工制限酵素である。ジンクフィンガードメインは、特定のDNA配列を標的化するように設計することができ、それによって、ジンクフィンガーヌクレアーゼが、ゲノム内の所望の配列を標的化することが可能になる。個別のZFNのDNA結合ドメインは、典型的には、複数の個別のジンクフィンガーリピートを含み、それぞれが複数の塩基対を認識することができる。新たなジンクフィンガードメインを生成するための最も一般的な方法は、特異性が分かっているより小さいジンクフィンガードメインを組み合わせることである。ZFNにおける最も一般的な切断ドメインは、IIs型の制限酵素FokIに由来する非特異的な切断ドメインである。内在性相同組換え(HR(homologous recombination))機構と、TCR発現カセットを有する相同DNAテンプレートを使用して、ZFNは、TCR発現カセットをゲノム内に挿入するために使用することができる。標的配列がZFNによって切断される場合、前記HR機構は、損傷を受けた染色体と前記相同DNAテンプレートの間の相同性を検索し、次いで、前記染色体の2つの切断端の間に前記テンプレートの配列を複製し、それによって前記相同DNAテンプレートは、前記ゲノム内に組み込まれる。ZFNシステムを使用する方法は、例えば、WO2009146179A1、WO2008060510A2、およびCN102174576A(これらは、参照によりその全体が援用される)に記載されている。
【0162】
ある特定の実施形態において、前記TALENシステムは、前記TCRを、免疫応答細胞のゲノムの選択された遺伝子座の中に組み込むために使用される。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、DNAの特定の配列を切断するように設計され得る制限酵素である。TALENシステムは、ZFNとほぼ同じ原理によって機能する。それらは、転写活性化因子様エフェクターのDNA結合ドメインを、DNA切断ドメインと組み合わせることによって生成される。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、特定のヌクレオチドに対する強力な認識性を有する2つの可変部位を有する33~34アミノ酸繰り返しモチーフから構成されている。これらのTALEのアレイを構築することによって、前記TALE DNA結合ドメインは、所望のDNA配列に結合し、それによって前記ヌクレアーゼがゲノム内の特定の場所を切断するようにガイドするように設計することができる。TALENシステムを使用する方法は、WO2014134412A1、WO2013163628A2、およびWO2014040370A1(これらは、参照によりその全体が援用される)に記載されている。
【0163】
前記ゲノム編集剤を送達するための方法は、必要に応じて異なり得る。ある特定の実施形態において、選択されたゲノム編集方法のコンポーネントは、1つまたはそれを超えるプラスミド中のDNAコンストラクトとして送達される。ある特定の実施形態において、前記コンポーネントは、ウイルスベクターによって送達される。一般的な送達方法としては、それらに限定されないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、インペルフェクション、静水圧、持続注入、超音波処理、マグネトフェクション、アデノ随伴ウイルス、ウイルスベクターのエンベロープタンパク質シュードタイピング、複製コンピテントベクターシスおよびトランス作用性エレメント、単純ヘルペスウイルス、および化学的ビヒクル(例えば、オリゴヌクレオチド、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、無機ナノ粒子、および細胞透過性ペプチド)があげられる。
【0164】
改変は、選択された遺伝子座内のどこの場所にも、または前記組込まれたTCRの遺伝子発現に影響を及ぼし得るどこの場所にも行うことができる。ある特定の実施形態において、前記改変は、前記組込まれたTCRの転写開始点の上流に導入される。ある特定の実施形態において、前記改変は、組込まれたTCRの転写開始部位とタンパク質コード領域の間に導入される)ある特定の実施形態において、前記改変は、前記組込まれたTCRのタンパク質コード領域の下流に導入される。
VIII.ポリペプチドおよびアナログおよびポリヌクレオチド
【0165】
また、本開示の主題において、変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に特異的に結合するTCR、またはその機能性フラグメント、および免疫応答細胞内で発現された場合にその抗腫瘍活性を増強するような様式で改変された、前記TCRをコードするポリヌクレオチドがあげられる。本開示の主題は、配列内に変更を生じさせることによって、アミノ酸配列または核酸配列を最適化する方法を提供する。このような変更は、ある特定の変異、欠失、挿入、または翻訳後修飾を含み得る。本開示の主題は、本開示の主題の任意の天然に存在するポリペプチドのアナログをさらに含む。アナログは、本開示の主題の天然に存在するポリペプチドと、アミノ酸配列の相異によって異なり得、翻訳後修飾によって異なり得、またはその両方によって異なり得る。本開示の主題のアナログは、一般に、本開示の主題の天然に存在するアミノ酸配列の全部または一部と、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれを超える同一性または相同性を示し得る。配列比較の長さは、少なくとも約5、約10、約15、約20、約25、約50、約75、約100またはそれを超えるアミノ酸残基である。再び、同一性の度合いを決定するための例示的なアプローチにおいて、BLASTプログラムを使用することができ、e-3~e-100の確率スコアは、配列の関連性が高いことを示す。改変は、ポリペプチドのin vivoおよびin vitro化学的誘導体化(例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、またはグリコシル化)を含む;このような改変は、ポリペプチド合成またはプロセシングの間、または単離された修飾酵素による処理の後に行い得る。アナログは、また、本開示の主題の天然に存在するポリペプチドと、一次配列内の変更によって異なり得る。これらには、天然と誘導の両方の、遺伝的バリアントが含まれる(例えば、放射線照射、もしくはエタンメチルサルフェート(ethanemethylsulfate)への曝露による、またはSambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.),CSH Press,1989、またはAusubelら(上記))に記載されている部位特異的変異誘発による、ランダム変異誘発によって得られる)。また、L-アミノ酸以外の残基(例えば、D-アミノ酸、または天然に存在しないまたは合成のアミノ酸(例えば、ベータ(β)またはガンマ(γ)アミノ酸))を含む環化ペプチド、分子、およびアナログも含まれる。
【0166】
完全長ポリペプチドに加えて、本開示の主題は、また、本開示の主題のポリペプチドまたはペプチドドメインのいずれか1つのフラグメントも提供する。フラグメントは、少なくとも約5、約10、約13、または約15アミノ酸であり得る。いくつかの実施形態において、フラグメントは、少なくとも約20の連続したアミノ酸、少なくとも約30の連続したアミノ酸、または少なくとも約50の連続したアミノ酸である。いくつかの実施形態において、フラグメントは、少なくとも約60~約80、約100、約200、約300またはそれを超える連続したアミノ酸である。本開示の主題のフラグメントは、当業者に知られている方法によって作製することができ、または通常のタンパク質プロセシング(例えば、新生ポリペプチドからの生物学的活性に必要ではないアミノ酸の除去、または選択的mRNAスプライシングもしくは選択的タンパク質プロセシングイベントによるアミノ酸の除去)の結果であり得る。
【0167】
非タンパク質アナログは、本発明のタンパク質の機能活性を模倣するように設計された化学構造を有する。このようなアナログは、本開示の主題の方法に従って投与される。このようなアナログは、元になったポリペプチドの生理活性を上回り得る。アナログ設計の方法は、当該技術分野においてよく知られており、アナログの合成は、そのような方法に従って、得られたアナログが、免疫応答細胞において発現された場合に、元になったポリペプチドの抗新生物活性を増加させるように、化学構造を改変することによって行われ得る。これらの化学的改変は、それらに限定されないが、代替のR基を置換し、参照ポリペプチドの特定の炭素原子における飽和度を変えることを含む。タンパク質アナログは、in vivo分解に対して比較的抵抗性であり得、投与した場合に、より長期間の治療効果をもたらし得る。機能活性を測定するためのアッセイには、それらに限定されないが、以下の実施例に記載されているものが含まれる。
【0168】
本開示の主題に従って、変異型PIK3CAペプチド(例えば、ヒト変異型PIK3CAペプチド)に特異的に結合する細胞外ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドは、コドン最適化によって改変され得る。コドン最適化は、任意の与えられた発現システムにおける可能な最高レベルの生産性を達成するために、天然に存在するおよび組換え遺伝子配列の両方を変更することができる。タンパク質発現の様々なステージに関与する因子には、コドン適応性、mRNA構造、ならびに転写および翻訳における種々のシスエレメントが含まれる。当業者に知られている任意の適切なコドン最適化方法または技術(それらに限定されないが、OptimumGene(商標)、Encor optimization、およびBlue Heronが含まれる)を、本開示の主題のポリヌクレオチドを改変するために使用することができる。
X.投与
【0169】
本開示のPIK3CA標的化TCRおよびそれを含む免疫応答細胞は、新生物を処置および/または予防するために、対象に対して、全身的にまたは直接的に提供され得る。ある特定の実施形態において、本開示の変異型PIK3CA標的化TCRおよびそれを含む免疫応答細胞は、興味対象となる器官(例えば、新生物に冒された器官)の中に直接的に注入される。それに代えて、または加えて、本開示の変異型PIK3CA標的化TCRおよびそれを含む免疫応答細胞は、目的の器官に、間接的に(例えば、循環系(例えば、腫瘍脈管構造)内への投与によって)提供される。増殖剤および分化剤を、in vitroまたはin vivoにおけるT細胞生成を増加させるために、細胞および組成物の投与に先立って、投与の間に、または投与の後に提供してもよい。
【0170】
本開示の主題の変異型PIK3CA標的化TCRおよびそれを含む免疫応答細胞は、任意の生理学的に供与され得るビヒクルで、通常血管内に、投与することができるが、また、骨へと、または前記細胞が再生および分化するために適切な部位を見いだし得る他の好都合な部位(例えば、胸腺)の中に導入することもできる。ある特定の実施形態において、少なくとも約1×105個の細胞(最終的には約1×1010に達するか、またはそれを超える)を投与し得る。ある特定の実施形態において、少なくとも約1×106個の細胞を投与し得る。変異型PIK3CA標的化TCRを含む免疫応答細胞を含む細胞集団は、細胞の精製された集団を含み得る。当業者は、種々のよく知られている方法(例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS))を使用して、細胞集団内の免疫応答細胞の割合を容易に決定することができる。変異型PIK3CAペプチド特異的TCRを含む遺伝的に改変された免疫応答細胞を含む細胞集団における純度の範囲は、約50%~約55%、約55%~約60%、約65%~約70%、約70%~約75%、約75%~約80%、約80%~約85%;約85%~約90%、約90%~約95%、または約95~約100%であり得る。投薬量は、当業者によって、容易に調整され得る(例えば、純度が低下すると、投薬量の増量が必要になり得る)。免疫応答細胞は、注射、カテーテルなどによって投与され得る。所望の場合、それらに限定されないが、インターロイキン、例えばIL-2、IL-3、IL 6、IL-11、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、ならびに他のインターロイキン、コロニー刺激因子、例えばG-、M-、およびGM-CSF、インターフェロン(例えば、γ-インターフェロン)もまた含められ得る。
【0171】
本開示の主題は、変異型PIK3CA標的化TCRを含む本開示の免疫応答細胞を含む組成物をさらに提供する。ある特定の実施形態において、前記組成物は、薬学的に許容され得るキャリアーをさらに含む医薬組成物である。投与は、自家であってもよく、非自家であってもよい。例えば、変異型PIK3CA標的化TCRを含む免疫応答細胞、およびそれを含む組成物は、ある対象から取得し、その同じ対象、または異なる適合性の対象に投与することができる。本開示の主題の末梢血由来のT細胞、またはその子孫(例えば、in vivo、ex vivo、またはin vitro由来)は、局所注射(カテーテル投与を含む)、全身性注射、局所注射、静脈注射、または非経口投与によって投与され得る。本開示の主題の医薬組成物(例えば、変異型PIK3CA標的化TCRを含む免疫応答細胞を含む医薬組成物)を投与する場合、注射可能な単位投与形態(液剤、懸濁剤、乳剤)に製剤化され得る。
XI.製剤化
【0172】
本開示の変異型PIK3CA標的化TCRを含む本開示の免疫応答細胞、およびそれを含む組成物は、無菌液体調製物(例えば、等張水性液剤、懸濁剤、乳剤、分散液剤、または粘稠性組成物)(これらは、選択されたpHに緩衝化され得る)として便利に提供され得る。液体調製物は、通常、ゲル剤、その他の粘稠性組成物、および固体組成物よりも、調製が容易である。さらに、液体組成物は、(特に、注射による)投与に、ある程度、より使いやすい。これに対して、粘稠性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供するために、適切な粘度範囲内に製剤化し得る。液体または粘稠性組成物は、キャリアーを含んでいてもよく、このキャリアーは、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。
【0173】
無菌注射用溶液は、本開示の主題の組成物(例えば、本開示の変異型PIK3CA標的化TCRを含む免疫応答細胞を含む組成物)を、必要な量の適切な溶媒中に、所望のとおり様々な量の他の成分と共に、混和することによって調製することができる。このような組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの、適切なキャリアー、希釈剤、または賦形剤と混合されていてもよい。前記組成物は、また、凍結乾燥され得る。前記組成物は、投与経路および所望の製剤に応じて、例えば湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化添加剤または増粘添加剤、保存料、着香料、色素などの補助的な物質を含んでいてもよい。適切な製剤を調製するために、過度の実験を行うことなく、標準的なテキスト、例えば「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE」,17th edition,1985(参照により本明細書に援用される)を参照し得る。
【0174】
組成物の安定性および無菌性を向上させる種々の添加剤(抗菌性保存料、抗酸化剤、キレート剤、およびバッファーを含む)を加えてもよい。種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって、微生物の活動の阻害を確実にすることができる。注射可能な医薬形態の吸収期間の延長は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、alum inurnモノステアレートおよびゼラチン)を使用することによってもたらされ得る。しかしながら、本開示の主題に従って、使用されるいかなるビヒクル、希釈剤、または添加剤も、本開示の主題の(一般に)変異型PIK3CA標的化TCRを含む免疫応答細胞と適合性でなければならない。
【0175】
前記組成物は、等張であり得る。すなわち、血液および涙液と同じ浸透圧を有し得る。本開示の主題の組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、または他の薬学的に許容され得る剤(例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、または他の無機溶質または有機溶質)を使用することによって達成され得る。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含むバッファーのために特に好ましい。
【0176】
前記組成物の粘度は、所望の場合、薬学的に許容され得る増粘剤を使用して、選択されたレベルに維持され得る。たやすく経済的に利用でき、かつ取扱いが容易であるため、メチルセルロースが使用され得る。他の適切な増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどがあげられる。増粘剤の濃度は、選択された剤に依存し得る。重要な点は、選んだ粘度を達成する量を使用することである。言うまでもないが、適切なキャリアーおよび他の添加剤の選択は、厳密な投与経路および特定の剤形(例えば、液体剤形)の性質(例えば、組成物が、液剤、懸濁剤、ゲル剤、または別の液体形態(例えば徐放性形態または液体封入形態など)に製剤化されるかどうか)に依存する。
【0177】
当業者は、組成物の成分は、化学的に不活性であるように選択されるべきであり、本開示の主題に記載されているような免疫応答細胞の生存能および有効性に影響しないことを認識する。このことは、化学および医薬原理の当業者にとって問題にならないし、または問題は、本開示および本明細書で引用されている文献から、標準的なテキストを参照することによって、もしくは単純な実験(過度な実験を含まない)によって回避されうる。
【0178】
本開示の主題の免疫応答細胞の治療用途に関して考慮すべきことの1つは、最適な効果を達成するために必要な細胞の数である。投与される細胞の数は、処置を受けている対象に応じて変わる。ある特定の実施形態において、約104~約1010、約105~約109、または約106~約108の本開示の主題の免疫応答細胞が、対象に投与される。より有効な細胞は、さらに少数で投与され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも約1×108、約2×108、約3×108、約4×108、および約5×108の本開示の主題の免疫応答細胞が、ヒト対象に投与される。何を有効量と考えるかについての厳密な決定は、各対象に固有の因子(その対象のサイズ、年齢、性別、体重、およびその特定の対象の状態を含む)に基づき得る。投薬量は、本開示および当該技術分野の知見に基づいて、容易に把握することができる。
【0179】
当業者は、組成物中および本開示の主題の方法において投与される細胞、ならびに必要に応じた添加剤、ビヒクル、および/またはキャリアーの量は、当業者が容易に決定することができる。典型的には、任意の添加剤(活性な細胞(単数または複数)および/または活性剤(単数または複数)に加えて)は、リン酸緩衝食塩水中に約0.001重量%~約50重量%)溶液の量で存在し、活性成分は、マイクログラムからミリグラムのオーダー(例えば、約0.0001重量%~約5重量%、約0.0001重量%~約1重量%、約0.0001重量%~約0.05重量%、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.05重量%~約5重量%)で存在する。動物またはヒトに投与される任意の組成物について、および投与の任意の特定の方法について、毒性は、例えば適切な動物モデル(例えば,マウスなどのげっ歯類)における致死量(LD)およびLD50;および適切な反応を誘発する、組成物(単数または複数)の投薬量、その中の成分の濃度、および組成物(単数または複数)の投与のタイミングを決定することによって決定すべきである。このような決定は、当業者の知見、本開示、および本明細書で引用されている文献に基づき、過度の実験を必要としない。また、連続的な投与の時間は、過度の実験なしで確かめることができる。
XII.処置方法
【0180】
本明細書において、対象において新生物を処置する方法が提供される。本方法は、本開示の免疫応答細胞を、所望の効果(それが既存の状態の軽減であっても、再発の防止であっても)を達成するために十分な量で投与することを含む。処置のために、投与される量は、所望の効果を生じさせるために有効な量である。有効量は、1回または一連の投与で提供され得る。有効量は、ボーラスで、または連続的な灌流によって提供することができる。
【0181】
抗原特異的T細胞を使用した養子免疫療法のために、典型的には、約106~約1010(例えば、約109または約106)の細胞用量が注入される。対象への免疫応答細胞の投与およびそれに続く分化の際、1つの特定の抗原(例えば、変異型PIK3CAペプチド)に向けられた免疫応答細胞が誘導される。T細胞の「誘導」には、抗原特異的T細胞の(例えば、欠失またはアネルギーによる)不活性化が含まれ得る。不活性化は、自己免疫障害などの、寛容の確立または再確立のために特に有用である。本開示の主題の免疫応答細胞は、当技術分野において知られている任意の方法(それらに限定されないが、胸膜投与、静脈内投与、皮下投与、結節内投与、腫瘍内投与、髄腔内投与、胸膜内投与、腹腔内投与、および胸腺に対する直接投与が含まれる)によって投与され得る。ある特定の実施形態において、前記免疫応答細胞およびそれを含む組成物は、必要とする対象に、静脈内投与される。
【0182】
本開示の主題は、変異型PIK3CA標的化TCRを含む免疫応答細胞(例えば、T細胞)を使用する種々の方法を提供する。例えば、本開示の主題は、対象における腫瘍負荷を減少させる方法を提供する。ある特定の実施形態において、腫瘍負荷を減少させる方法は、有効量の本開示の免疫応答細胞を、対象に投与することを含む。本開示の免疫応答細胞は、腫瘍の数を減少させることができ、腫瘍サイズを減少させることができ、および/または対象における腫瘍を根絶することができる。
【0183】
本開示の主題は、また、新生物を有する対象の生存期間を増加または延長する方法も提供する。ある特定の実施形態において、新生物を有する対象の生存期間を増加または延長する前記方法は、有効量の本開示の免疫応答細胞を、対象に投与することを含む。
【0184】
本開示の主題の免疫応答細胞を使用して成長が阻害されるがんは、免疫療法に対して典型的に反応するがんを含む。処置のためのがんの非限定的な例は、PIK3CA変異がん(それらに限定されないが、乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肛門がん、膀胱がん、結腸直腸がん、頭頸部扁平上皮癌、非黒色腫皮膚がん、および唾液腺がんを含む)を含む。ある特定の実施形態において、前記がんは、乳がんである。
【0185】
さらに、本開示の主題は、対象におけるがん細胞に応答する免疫活性化サイトカイン産生を増加させる方法を提供する。ある特定の実施形態において、前記方法は、本開示の免疫応答細胞を、対象に投与することを含む。前記免疫活性化サイトカインは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-3、IL-6、IL-11、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、IL-18、インターフェロン調節因子7(IRF7)、およびその組み合わせであり得る。ある特定の実施形態において、本開示の主題の変異型PIK3CAペプチド特異的TCRを含む免疫応答細胞は、GM-CSF、IFN-γ、および/またはTNF-αの産生を増加させる。
【0186】
療法に適したヒト対象は、典型的には、臨床基準によって識別され得る2つの処置グループを含む。「進行性疾患」または「抗腫瘍負荷」を有する対象は、臨床的に測定可能な腫瘍(例えば、乳がん)を有する対象である。臨床的に測定可能な腫瘍は、腫瘍量に基づいて(例えば、触診、CTスキャン、ソノグラム、マンモグラム、またはX線によって;腫瘍自体の生化学的または組織病理学的なポジティブマーカーは、この集団を同定するためには不十分である)検出可能な腫瘍である。本開示の主題において具体化される医薬組成物は、これらの対象に対して、その状態を緩和する目的で、抗腫瘍反応を誘発するために投与される。理想的には、その結果として腫瘍量の減少が起こるが、任意の臨床的改善が利益になる。臨床的改善は、腫瘍(例えば、乳がん)の増悪のリスクもしくは速度の低下、または病理学的帰結の軽減を含む。
【0187】
適切な対象の第2のグループは、当該技術分野において、「アジュバントグループ」として知られている。これらは、新生物(例えば、乳がん)の病歴を有するが、別の治療方法に応答性であった個体である。前の治療には、それらに限定されないが、外科的切除、放射線療法、および従来の化学療法が含まれ得る。その結果、これらの個体は、臨床的に測定可能な腫瘍を有していない。しかしながら、元の腫瘍部位の近傍に、または転移による、当該疾患の増悪のリスクがあると疑われる。このグループは、高リスクグループと低リスクグループにさらに細分化され得る。この細分化は、最初の処置の前、または後に観察される特徴に基づいて行われる。これらの特徴は、臨床分野で知られており、種々の新生物のそれぞれについて適切に定義される。ハイリスクサブグループに特有の特徴は、腫瘍(例えば、乳がん)が隣接する組織に浸潤しているか、リンパ節への侵襲がみられることである。別のグループは、新生物(例えば、乳がん)の遺伝的素因を有するが、まだ新生物(例えば、乳がん)の臨床徴候が表れていない。例えば、乳がんに関与する遺伝的変異について検査でポジティブとされたが、まだ出産可能な年齢である女性は、予防的手術を行うことが適切になるまで、新生物の発生を防止するための予防的処置において、本明細書に記載されている1つまたはそれを超えるTCRの投与を希望することがあり得る。
【0188】
対象は、進行した状態の疾患(例えば、乳がん)を有する場合があり、その場合、処置の目的は、疾患進行の緩和もしくは逆転、および/または副作用の改善を含み得る。前記対象は、そのような状態の病歴を有し、その状態について既に処置を受けていてもよく、その場合、治療の目的は、典型的には、再発リスクの低減または遅延を含む。
XIII.キット
【0189】
本開示の主題は、新生物(例えば、乳がん)の処置および/または予防のためのキットを提供する。ある特定の実施形態において、キットは、有効量の変異型PIK3CA標的化TCRを含む免疫応答細胞を含む治療または予防組成物を、単位剤形の形態で含む。特定の実施形態において、細胞は、少なくとも1つの共刺激リガンドをさらに発現する。
【0190】
所望の場合、前記免疫応答細胞は、新生物(例えば、乳がん)を有するか、または発症するリスクがある対象に、前記細胞を投与するための指示と共に提供され得る。前記指示は、一般に、新生物(例えば、乳がん)の処置または予防のための組成物の使用についての情報を含む。他の実施形態において、前記指示は、以下のうちの少なくとも1つを含む:新生物(例えば、乳がん)またはその症状の処置または予防のための投薬スケジュールおよび投与;使用上の注意;警告;適応症;禁忌症;過剰投与情報;有害反応;動物薬理学;臨床試験;および/または参考文献。前記指示は、容器(もしあれば)に直接、または容器に付けられたラベルとして印刷されていてもよく;または容器内または容器と共に提供される独立したシート、パンフレット、カード、またはフォルダーであってもよい。
【実施例】
【0191】
本発明の実施には、別段の指定がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の通常の技術(これらは、十分に、当業者の認識範囲内である)を利用する。このような技術は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,second edition(Sambrook,1989);「Oligonucleotide Synthesis」(Gait,1984);「Animal Cell Culture」(Freshney,1987);「Methods in Enzymology」「Handbook of Experimental Immunology」(Weir,1996);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(MillerおよびCalos、1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel,1987);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」,(Mullis,1994);「Current Protocols in Immunology」(Coligan,1991)などの文献中に十分に説明されている。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの作製に利用可能であり、また、そうであるから、本発明の完成および実施において考慮され得る。特定の実施形態のために特に有用な技術は、以下のセクションで論じる。
【0192】
以下の実施例は、当業者に対して、本発明の組成物の作製および使用方法、ならびにアッセイ、スクリーニング、および治療方法の完全な開示および説明を提供するために記載されており、本発明者らが発明と考えているものの範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1
【0193】
PIK3CAの天然にプロセシングおよび提示されたエピトープを同定するために、本発明者らは、ヒトHLA-A*03:01を、野生型(WT)または変異型PIK3CAのいずれかと、COS-7サル細胞系に共エレクトロポレーションすることによって、一過性のトランスフェクタントを作製した。
図1を参照のこと。細胞表面ペプチド-MHC複合体は、次いで、抗クラスI抗体によって結合させ、細胞表面から剥離し、かつ溶離されたペプチドを、精製し、LC/MS/MSによって配列決定した。
【0194】
図2(上段のパネル)に示すように、スカイライン解析によって、変異PIK3CAとHLA-A*03:01の組み合わせによってエレクトロポレーションされたトランスフェクタント群における富化されたシグナルが示される。WT+PIK3CAと変異PIK3CA+HLA-A*69:01のいずれにおいても、シグナルは検出されなかった。
図2(下段のパネル)に示すように、変異PIK3CA+HLA-A*03:01群において検出された富化されたシグナルのペプチド断片化スペクトルによって、富化されたペプチドの配列は、配列「ALHGGWTTK」(配列番号11)を有する9アミノ酸ペプチドであることが示された。前記ペプチドにおけるアミノ酸は、P2位において、ヒスチジンからロイシンに置換されている。
【0195】
HLA-A*03:01にロードされた最小エピトープの配列情報に基づいて、野生型および変異型ペプチドのHLA-A*03:01に対する生物物理学的相互作用の安定性を決定するために、示差走査蛍光測定アッセイを実施した。結果を
図3に示す。
図3に示すように、変異ペプチドの結合は、野生型ペプチドと比較して、熱的に有意に、より安定であった。さらに、野生型および変異ペプチドの両方について、
図4に示すように、ペプチド-MHC複合体の結晶構造を作製した。in vitroにおける健常ドナーPBMCの変異PIK3CAによる感作によって、変異特異的CD8
+T細胞クローン(21LT2-2)が同定および単離された。そのTCR配列は、10xゲノミクス配列決定によって得られ、その配列を、レトロウイルスベクター中にクローニングし、同種異系(allogeneic)ドナーPBMCに形質導入した。
【0196】
単離されたTCRの反応性および制限エレメントを試験するために、COS-7細胞を、個別のクラスI HLA分子と、野生型または変異PIK3CAのいずれかでエレクトロポレーションし、21LT2-2 TCRで形質導入されたドナーT細胞と共培養した。
図5を参照のこと。21LT2-2 TCR反応性は、HLA-A*03:01に関して、炎症性サイトカイン(TNF-α)のアップレギュレーションからわかるように、変異型H1047L PIK3CAの組み合わせに特異的であることが示された。
【0197】
次に、もともとはCD8
+T細胞から単離された21LT2-2 TCRが、CD4
+T細胞内でも機能的であるかを判定するための試験を、CD8
+コレセプター存在下で行った。TCR
+CD8およびCD4サブセットを分離し、i)プロセシングおよび提示された抗原、またはii)受動的にパルスされた最小ペプチドの2種類の標的と共に共培養した。単離されたTCRは、CD107aとTNF-αの変異特異的アップレギュレーションからわかるように、CD8
+(
図6を参照のこと)およびCD4
+(
図7を参照のこと)T細胞サブセットの両方において機能することから、CD8コレセプター非依存性であることが示された。コレセプター依存性がないことは、一般に、高親和性TCR相互作用に関連する。さらに、21LT2-2 TCRは、プロセシングおよび提示された抗原、ならびに受動的にパルスされた最小エピトープの両方を認識できることが示された。
【0198】
次に、pMHC-TCR相互作用および認識に重要であった最小エピトープ内に含まれるアミノ酸残基を決定するための試験を行った(
図8を参照のこと)。アラニンペプチド置換を、9アミノ酸配列にわたって各位置に生じさせ、無置換の変異型配列と比較した場合の認識の喪失を調査した。データは、P4のグリシンを除き、全ての位置がpMHC-TCR相互作用および認識に重要であることを示す。ここで観察されたように、重要な残基が大半を占めていることによって、21LT2-2 TCRに結合し、トリガーすることができる交差反応性ペプチドの数が潜在的に制限されている。
図9に示すように、配列をマッチングするためのヒトプロテオームをスキャンするScanPrositeツールを使用した検索によって、いかなるヒットも得られなかった。
実施例2
【0199】
本発明者らは、臨床開発のための最適な候補を同定するための、特有の免疫学的属性を有するHLA-A*03:01変異型PIK3CA特異的TCRのライブラリーを確立することを目指していた。21LT2-2による知見に基づいて、HLA-A*03:01と複合体を形成した変異PIK3CAペプチドの注文のデキストラマー試薬(フルオロフォアにコンジュゲートしたペプチド-MHC複合体の高次構造)を作製した。
図10は、同定された変異型PIK3CA特異的TCRでレトロウイルスの方法で形質導入され、CD8
+TCR
+T細胞でゲートされたドナーT細胞のデキストラマー染色プロファイルを示す。3つのTCR 21LT2-2、0606T1-2、1022T8は、3人のユニークな健常ドナー由来であった。これらは、全てデキストラマーでポジティブに染色された。1022T8の染色プロファイルは、21LT2-2および0606T1-2と異なっており、より低親和性のTCRであることを示していた可能性がある。
【0200】
PIK3CAネオ抗原特異的TCR 21LT2-2、0606T1-2、1022T8は、健常ドナーT細胞のゲノム内にレトロウイルスの方法で組み込まれた。形質導入後4~6日目において、T細胞は、野生型または変異PIK3CA RNAのいずれかを有するHLA-A*03:01をコードするRNAをエレクトロポレーションされた人工抗原提示細胞(aAPC)と共に共培養する。変異特異的反応性の存在を、炎症性サイトカイン(TNF-α)の産生によって評価した。結果を
図11および12に示す。
図11に示す細胞は、CD8
+TCR
+細胞でゲートし、
図12に示す細胞は、CD4
+TCR
+細胞でゲートした。
図11に示すように、21LT2-2に加えて、0606T1-2と1022T8の両方が、HLA-A*03:01によって提示される、内因的にプロセシングおよび提示された変異抗原を認識できる。
図12に示すように、21LT2-2と同様に、0606T1-2は、コレセプター非依存性であり、CD4
+T細胞において機能することができた;1022-T8は、コレセプター依存性TCRであった(このことは、21LT2-2および0606T1-2と比較して、より低いアフィニティーを有していた可能性があることを示唆している)。
【0201】
さらに、CD107a(細胞溶解能と関連するプロトタイプマーカー)の発現を測定した。
図13に示すように、HLA-A*03:01と変異PIK3CAの共発現に応答して、TCR形質導入細胞は、CD107aの発現をアップレギュレートした。
【0202】
変異PIK3CA特異的TCRは、健常ドナーT細胞のゲノム内にレトロウイルスの方法で組み込まれた。形質導入後4~6日目において、T細胞は、HLA-A*03:01を発現する標的細胞と共にインキュベートし、アラニン置換ペプチド(10μg/mL)でパルスした。野生型およびネイティブ変異型PIK3CA 9-merペプチドを個別のTCRそれぞれについての反応性の範囲を確立するために、対照として使用した。細胞は、CD8
+TCR
+でゲートした。アラニン置換ペプチドでパルスした場合に、非改変9アミノ酸変異配列(表;P2における変異)と比較して、認識が>50%低下していることは、TCRの認識のために、その位置のネイティブアミノ酸が重要であることを示している。結果を
図14A~14Cに示す。
図14A~14Cに示すように、21LT2-2について、位置4のグリシン残基を除いて、この9アミノ酸配列中の全てのアミノ酸が、pMHC-TCR相互作用に重要であると考えられた。さらに、
図14A~14Cに示すように、0606T1-2について、P2置換、P3置換、およびP4置換は、TCRの機能に対して許容されると考えられた。さらに、
図14A~14Cに示すように、1022T8について、あらゆる位置におけるアラニン置換が、機能の>50%の低下をもたらすことから、全ての位置が、TCRの機能に重要であると考えられた。
【0203】
本発明者らは、TCRの反応性の低下に基づいて位置モチーフを得て、TCR認識および交差反応性のために重要な残基を確定した。
図14A~14Cからのデータを、グラフ形式で
図15に示す。点線は、最大の反応性の50%を示す。これに基づき、潜在的な交差反応性を決定するためのモチーフが、右側に示されている。「x」は、TCR認識のために重要ではない残基を示す。位置1は、この位置のネイティブアミノ酸がアラニンであり、したがってこの試験に適用できないため、デフォルトとして「x」が割り当てられている。
【0204】
最小ペプチド配列における重要な残基を決定した後、本発明者らは、ScanPrositeツールを使用して、ヒトプロテオームにおける、21T2-2についてはモチーフx-L-H-x-G-W-T-T-K[配列番号48]、0606T1-2についてはモチーフx-x-x-x-G-W-T-T-K[配列番号49]、および1022T8についてはモチーフx-L-H-G-G-W-T-T-K[配列番号50]を含むタンパク質について、全てのUniProtKB/Swiss-Prot(10-Apr-19のリリース2019_03:559,634エントリー)データベース配列を検索した。
図16Aを参照のこと。21LT2-2および1022T8について、ヒトプロテオームにおける潜在的交差反応配列にマッチするヒットは検出されなかった。0606T1-2について、膜貫通タンパク質87B(ivfmGWTTK[配列番号47])に由来する1つのヒットが得られた。
図16Bを参照のこと。本発明者らは、このペプチドを合成し、HLA-A*03:01+標的細胞にパルスした。ネイティブ変異型9-merペプチド(ALHGGWTTK[配列番号11])を対照として使用した。0606T1-2 TCRによって、交差反応ペプチドは認識されなかった。
【0205】
さらに、本発明者らは、PIK3CA変異型特異的TCRが、別の長さの変異ペプチドを認識できるかどうかを研究した。変異PIK3CA特異的TCRは、健常ドナーT細胞のゲノム内にレトロウイルスの方法で組み込まれた。形質導入後4~6日目において、T細胞は、HLA-A*03:01
+抗原提示細胞と共にインキュベートし、8-merおよび10-mer変異PIK3CAペプチドプール(1μg/mL)でパルスした。野生型および配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる9-merペプチドを対照として使用した。細胞は、CD8
+TCR
+発現でゲートした。TNFα産生における変異型ペプチド特異的なアップレギュレーションは、代わりのペプチド長が認識されることを示す。8-mer変異PIK3CAペプチドは、LHGGWTTK[配列番号51]に記載のアミノ酸配列からなる。10-mer変異PIK3CAペプチドは、DALHGGWTTK[配列番号52]に記載のアミノ酸配列からなる。結果を
図17に示す。
図17に示すように、3種のTCRは、全て8-merおよび10-mer変異PIK3CAペプチドの両方を認識することができる。
【0206】
上記の説明から、本明細書に記載されている発明に対して、種々の用途および条件に適合させるために、変形や変更を行い得ることが明らかである。このような実施形態もまた、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0207】
全ての特許、刊行物、および受託番号または参照番号によって引用されている配列は、個別の特許および刊行物、ならびに配列が、それぞれ具体的かつ個別に参照により援用されるべきものと示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
PIK3CAペプチドを特異的に標的にするT細胞レセプター(TCR)であって、前記PIK3CAペプチドが、H1047Lの変異を含む、T細胞レセプター(TCR)。
(項目2)
前記PIK3CAペプチドが、8-mer、9-mer、または10-merである、項目1に記載のTCR。
(項目3)
前記PIK3CAペプチドが、9-merである、項目1または2に記載のTCR。
(項目4)
前記PIK3CAペプチドが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号51、または配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、項目1~3のいずれか一項に記載のTCR。
(項目5)
前記PIK3CAペプチドが、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、項目1~4のいずれか一項に記載のTCR。
前記PIK3CAペプチドが、HLAクラスI複合体に関連する、項目1~4のいずれか一項に記載のTCR。
(項目6)
前記HLAクラスI複合体が、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cから選択される、項目5に記載のTCR。
(項目7)
前記HLAクラスI複合体が、HLA-Aである、項目5または6に記載のTCR。
(項目8)
前記HLA-Aが、HLA-A*03スーパーファミリーである、項目6または7に記載のTCR。
(項目9)
前記HLA-A*03スーパーファミリーが、HLA-A*03、HLA-A*11、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*66、HLA-A*68、およびHLA-A*74からなる群から選択される、項目8に記載のTCR。
(項目10)
前記HLA-A*03スーパーファミリーが、HLA-A*03である、項目8または9に記載のTCR。
(項目11)
細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、前記細胞外ドメインが、前記PIK3CAペプチドに結合する、項目1~10のいずれか一項に記載のTCR。
(項目12)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号3に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、および配列番号6に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3;
b)配列番号27に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、および配列番号30に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3;または
c)配列番号37に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR3、および配列番号40に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR3
を含む、項目1~11のいずれか一項に記載のTCR。
(項目13)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号5に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2;
b)配列番号26に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号29に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2;または
c)配列番号36に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR2、および配列番号39に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR2
を含む、項目12に記載のTCR。
(項目14)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、および配列番号4に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1;
b)配列番号25に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、および配列番号28に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1;または
c)配列番号35に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むα鎖可変領域CDR1、および配列番号38に記載のアミノ酸配列またはその保存的改変を含むβ鎖可変領域CDR1
を含む、項目12または13に記載のTCR。
(項目15)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;
b)配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;または
c)配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号36に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;および配列番号37に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3
を含む、項目1~14のいずれか一項に記載のTCR。
(項目16)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;
b)配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号29に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号30に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;または
c)配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3
を含む、項目1~15のいずれか一項に記載のTCR。
(項目17)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;
b)配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号29に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号30に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;または
c)配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号36に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号37に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3
を含む、項目1~16のいずれか一項に記載のTCR。
(項目18)
前記細胞外ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3を含む、項目1~17のいずれか一項に記載のTCR。
(項目19)
前記細胞外ドメインが、配列番号7、配列番号31、または配列番号41に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む、項目1~18のいずれか一項に記載のTCR。
(項目20)
前記細胞外ドメインが、配列番号7、配列番号31、または配列番号41に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む、項目19のTCR。
(項目21)
前記細胞外ドメインが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域を含む、項目20に記載のTCR。
(項目22)
前記細胞外ドメインが、配列番号8、配列番号32、または配列番号42に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一なアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む、項目1~21のいずれか一項に記載のTCR。
(項目23)
前記細胞外ドメインが、配列番号8、配列番号32、または配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む、項目22に記載のTCR。
(項目24)
前記細胞外ドメインが、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む、項目23に記載のTCR。
(項目25)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
b)配列番号31に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号32に記載のアミノ酸配列に対し
て少なくとも約80%相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;または
c)配列番号41に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号42に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%相同または同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域
を含む、項目1~24のいずれか一項に記載のTCR。
(項目26)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
b)配列番号31に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号32に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
c)配列番号41に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域
を含む、項目1~25のいずれか一項に記載のTCR。
(項目27)
前記細胞外ドメインが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含む、項目26に記載のTCR。
(項目28)
前記細胞外ドメインが、
a)配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むα鎖、および配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖;
b)配列番号33に記載のアミノ酸配列を含むα鎖、および配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖;または
c)配列番号43に記載のアミノ酸配列を含むα鎖、および配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖
を含む、項目1~27のいずれか一項に記載のTCR。
(項目29)
前記細胞外ドメインが、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むα鎖、および配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む、項目28に記載のTCR。
(項目30)
前記細胞外ドメインが、参照TCRまたはその機能性フラグメントとしてヒト変異型PIK3CAポリペプチド上の同じエピトープに結合し、ここで、前記参照TCRまたはその機能性フラグメントが、
a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;
b)配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号28に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号29に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号30に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3;または
c)配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR1;配列番号36に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR2;配列番号37に記載のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域CDR3;配列番号38に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR1;配列番号39に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR2;および配列番号40に記載のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域CDR3
を含む、項目1~29のいずれか一項に記載のTCR。
(項目31)
前記TCRが、組換えで発現される、および/またはベクターから発現される、項目1~30のいずれか一項に記載のTCR。
(項目32)
前記TCRが、野生型PIK3CAペプチドを標的にしない、項目1~31のいずれか一項に記載のTCR。
(項目33)
前記TCRが、改変α鎖定常領域および/または改変β鎖定常領域を含む、項目1~32のいずれか一項に記載のTCR。
(項目34)
前記改変α鎖定常領域が、配列番号20または配列番号21に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含む、項目33に記載のTCR。
(項目35)
前記改変α鎖定常領域が、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む、項目34に記載のTCR。
(項目36)
前記改変β鎖定常領域が、配列番号22、配列番号23、または配列番号45に記載のアミノ酸配列に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相同または同一であるアミノ酸配列を含む、項目35に記載のTCR。
(項目37)
前記改変β鎖定常領域が、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む、項目36に記載のTCR。
(項目38)
項目1~37のいずれか一項に記載のTCRを含む、免疫応答細胞。
(項目39)
前記免疫応答細胞が、前記TCRで形質導入される、項目38に記載の免疫応答細胞。
(項目40)
前記TCRが、前記免疫応答細胞の表面上に構成的に発現される、項目38または39に記載の免疫応答細胞。
(項目41)
前記免疫応答細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ヒト胚性幹細胞、リンパ系前駆細胞、T細胞前駆体細胞、およびそこからリンパ系細胞が分化し得る多能性幹細胞からなる群から選択される、項目38~40のいずれか一項に記載の免疫応答細胞。
(項目42)
前記免疫応答細胞が、T細胞である、項目41に記載の免疫応答細胞。
(項目43)
前記T細胞が、細胞傷害性T細胞(CTL)、制御性T細胞、およびセントラルメモリーT細胞からなる群から選択される、項目42に記載の免疫応答細胞。
(項目44)
項目38~43のいずれか一項に記載の免疫応答細胞を含む、組成物。
(項目45)
薬学的に許容され得るキャリアーをさらに含む医薬組成物である、項目44に記載の組成物。
(項目46)
項目1~37のいずれか一項に記載のT細胞レセプター(TCR)をコードする、核酸分子。
(項目47)
項目46に記載の核酸分子を含む、ベクター。
(項目48)
前記ベクターが、γレトロウイルスベクターである、項目47に記載のベクター。
(項目49)
項目46に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
(項目50)
前記宿主細胞が、T細胞である、項目49に記載の宿主細胞。
(項目51)
免疫応答細胞内に、項目1~37のいずれか一項に記載のTCRをコードする核酸分子もしくは項目46に記載の核酸分子、または項目47または48に記載のベクターを導入することを含む、ヒト変異型PIK3CAペプチドに結合する免疫応答細胞を作製するための方法。
(項目52)
有効量の項目38~43のいずれか一項に記載の免疫応答細胞または項目44もしくは45に記載の組成物を対象に投与することを含む、前記対象における、PIK3CA変異を含む新生物を処置および/または予防する方法。
(項目53)
前記PIK3CA変異が、H1047Lを含む、またはそれからなる、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記新生物が、乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肛門がん、膀胱がん、結腸直腸がん、頭頸部扁平上皮癌、非黒色腫皮膚がん、および唾液腺がんからなる群から選択される、項目52または53に記載の方法。
(項目55)
前記新生物が、乳がんである、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記方法が、前記対象における腫瘍負荷を減少または根絶させる、項目52~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記対象が、ヒトである、項目52~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
対象における、PIK3CA変異を含む新生物の処置および/または予防に使用するための、項目38~43のいずれか一項に記載の免疫応答細胞または項目37または38に記載の組成物。
(項目59)
前記PIK3CA変異が、H1047Lを含む、またはそれからなる、項目58に記載の使用のための細胞または組成物。
(項目60)
前記新生物が、乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肛門がん、膀胱がん、結腸直腸がん、頭頸部扁平上皮癌、非黒色腫皮膚がん、および唾液腺がんからなる群から選択される、項目58または59に記載の使用のための細胞または組成物。
(項目61)
前記新生物が、乳がんである、項目60に記載の使用のための細胞または組成物。
(項目62)
前記対象が、ヒトである、項目58~61のいずれか一項に記載の使用のための細胞または組成物。
(項目63)
項目38~43のいずれか一項に記載の免疫応答細胞、項目46に記載の核酸分子、または項目47または48に記載のベクターを含む、PIK3CA変異を含む新生物を
処置および/または予防するためのキット。
(項目64)
前記新生物を有する対象を処置するための前記免疫応答細胞、核酸分子、またはベクターを使用するための書面による指示をさらに含む、項目63に記載のキット。
(項目65)
前記新生物が、乳がん、乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肛門がん、膀胱がん、結腸直腸がん、頭頸部扁平上皮癌、非黒色腫皮膚がん、および唾液腺がんからなる群から選択される、項目64に記載のキット。
(項目66)
前記新生物が、乳がんである、項目65に記載のキット。
【配列表】