(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 30/66 20250101AFI20250820BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250820BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250820BHJP
H10D 8/50 20250101ALI20250820BHJP
H10D 8/60 20250101ALI20250820BHJP
【FI】
H10D30/66 103A
H10D30/66 101T
H10D62/10 101M
H10D62/10 101V
H10D30/66 103B
H10D30/66 201A
H10D84/80 203D
H10D62/10 101G
H10D62/10 101F
H10D8/50 D
H10D8/50 F
H10D8/50 L
H10D8/60 F
H10D8/60 D
(21)【出願番号】P 2022114183
(22)【出願日】2022-07-15
【審査請求日】2024-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永岡 達司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139289(JP,A)
【文献】特開2018-137393(JP,A)
【文献】特開2017-139293(JP,A)
【文献】特開平10-335630(JP,A)
【文献】特開2015-220367(JP,A)
【文献】特開昭50-159679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 30/66
H10D 62/10
H10D 84/80
H10D 8/50
H10D 8/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
素子領域と前記素子領域の周囲に配置された周辺領域とを備える半導体基板であって、前記半導体基板の上面が前記素子領域内で前記周辺領域内よりも突出するように前記周辺領域内の前記半導体基板の前記上面に凹部が設けられている半導体基板と、
前記素子領域内で前記半導体基板の前記上面に接する上部電極と、
前記素子領域内と前記周辺領域内で前記半導体基板の下面に接する下部電極と、
前記凹部の側面と底面を覆う絶縁層と、
前記上部電極から前記周辺領域の上部まで伸びており、前記絶縁層を介して前記凹部の前記側面及び前記底面に対向するフィールドプレート、
を有し、
前記半導体基板が、
前記素子領域から前記周辺領域に跨って分布しており、前記下部電極に接しており、薄板部と厚板部とを有し、前記厚板部の上面が前記薄板部の上面よりも突出しており、前記厚板部が前記素子領域内に配置されており、前記薄板部が前記素子領域と前記周辺領域に跨って分布しているn型の高濃度層と、
前記素子領域内に配置されており、前記厚板部の前記上面に接しており、前記高濃度層よりもn型不純物濃度が低いn型のドリフト層と、
前記素子領域から前記周辺領域に跨って分布しており、前記ドリフト層の側面に接しており、前記薄板部の前記上面に接しており、前記厚板部と前記薄板部の境界に形成されている段差部の側面に接しており、前記凹部の前記側面と前記底面で前記絶縁層に接しており、前記ドリフト層よりもn型不純物濃度が低いn型の低濃度層を有し、
前記ドリフト層が、pn接合とショットキー接合の少なくとも一方を介して前記上部電極に接続されており、
前記下部電極の前記上部電極に対する電位を前記半導体基板内でアバランシェ降伏が生じる電位まで上昇させるときに、前記段差部を垂直に交差する断面において、前記段差部の前記側面、前記段差部の前記側面を前記段差部の高さ分だけ前記周辺領域の側にシフトさせた仮想線、前記薄板部の前記上面、及び、前記薄板部の前記上面を前記高さ分だけ上側にシフトさせた仮想線によって構成される四角形の領域のうちの半分以上の領域が空乏化されない、
半導体装置。
【請求項2】
前記下部電極の前記上部電極に対する電位を前記半導体基板内でアバランシェ降伏が生じる電位まで上昇させるときに、前記低濃度層のうち、前記段差部の上端から前記薄板部の前記上面に向かって45度の角度で伸びる直線よりも下側の領域が空乏化されない、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体装置であって、
素子領域と前記素子領域の周囲に配置された周辺領域とを備える半導体基板であって、前記半導体基板の上面が前記素子領域内で前記周辺領域内よりも突出するように前記半導体基板の前記上面に凹部が設けられている半導体基板と、
前記素子領域内で前記半導体基板の前記上面に接する上部電極と、
前記素子領域内と前記周辺領域内で前記半導体基板の下面に接する下部電極と、
前記凹部の側面と底面を覆う絶縁層と、
前記上部電極から前記周辺領域の上部まで伸びており、前記絶縁層を介して前記凹部の前記側面及び前記底面に対向するフィールドプレート、
を有し、
前記半導体基板が、
前記素子領域から前記周辺領域に跨って分布しており、前記下部電極に接しており、薄板部と厚板部とを有し、前記厚板部の上面が前記薄板部の上面よりも突出しており、前記厚板部が前記素子領域内に配置されており、前記薄板部が前記素子領域と前記周辺領域に跨って分布しているn型の高濃度層と、
前記素子領域内に配置されており、前記厚板部の前記上面に接しており、前記高濃度層よりもn型不純物濃度が低いn型のドリフト層と、
前記素子領域から前記周辺領域に跨って分布しており、前記ドリフト層の側面に接しており、前記薄板部の前記上面に接しており、前記凹部の前記側面と前記底面で前記絶縁層に接しており、前記ドリフト層よりもn型不純物濃度が低いn型の低濃度層を有し、
前記ドリフト層が、pn接合とショットキー接合の少なくとも一方を介して前記上部電極に接続されており、
前記厚板部と前記薄板部の境界に、前記高濃度層の上面が前記厚板部から前記薄板部に向かうに従って徐々に下側に変位している変位部が形成されており、
前記低濃度層が、前記変位部内で前記高濃度層の前記上面に接している、
半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁層が、
前記凹部の前記底面に接する第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に配置されており、前記第1絶縁層の誘電率とは異なる誘電率を有する第2絶縁層、
を有し、
前記フィールドプレートと前記凹部の前記底面の間に、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層が配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁層の誘電率が前記第2絶縁層の誘電率よりも高く、
前記第2絶縁層の絶縁破壊電圧が前記第1絶縁層の絶縁破壊電圧よりも高い、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記フィールドプレートと前記凹部の前記側面の間の前記絶縁層が、前記第1絶縁層または前記第2絶縁層の単層によって構成されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記フィールドプレートと前記凹部の前記側面の間の前記絶縁層が、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層のうちの誘電率が高い方によって構成されている請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置に関する。
【0002】
特許文献1に開示の半導体装置では、半導体基板が素子領域と周辺領域を有している。周辺領域内の半導体基板の上面に凹部が設けられている。このため、素子領域内では周辺領域内よりも半導体基板の上面が突出している。半導体装置は、上部電極、下部電極、絶縁層、及び、フィールドプレートを有している。上部電極は、素子領域内で半導体基板の上面に接している。下部電極は、素子領域内と周辺領域内で半導体基板の下面に接している。絶縁層は、凹部の側面と底面を覆っている。フィールドプレートは、上部電極から周辺領域の上部まで伸びており、絶縁層を介して凹部の側面及び底面に対向している。半導体基板は、n型の高濃度層、n型のドリフト層、及び、n型の低濃度層を有している。高濃度層は、素子領域から周辺領域に跨って分布しており、下部電極に接している。高濃度層は、薄板部と厚板部とを有する。厚板部の上面が薄板部の上面よりも突出している。厚板部が素子領域内に配置されている。薄板部は、素子領域と周辺領域に跨って分布している。ドリフト層は、素子領域内に配置されており、厚板部の上面に接している。ドリフト層は、上部電極にショットキー接触している。なお、ドリフト層は、p層を介して上部電極に接続されていてもよい。ドリフト層と上部電極の間に、ダイオード(例えば、ショットキーバリアダイオード、pnダイオード等)が形成されている。低濃度層は、ドリフト層の側面に接しており、薄板部の上面に接しており、厚板部と薄板部の境界に形成されている段差部の側面に接している。この半導体装置では、フィールドプレートと低濃度層によって周辺領域内の電界集中が抑制される。また、この半導体装置では、高濃度層が周辺領域内において薄板部を有しており、これによって薄板部の上部の低濃度層の厚みが確保されている。これによって、周辺領域の耐圧が向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、特許文献1の半導体装置では、高濃度層が厚板部と薄板部を有しており、厚板部と薄板部の境界に段差部が形成されている。特許文献1の半導体装置では、ドリフト層と低濃度層が空乏化したときに、段差部の上端周辺で電界が集中し易いという問題があった。本明細書では、半導体基板の内部における電界集中を効果的に抑制できる半導体装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する第1の半導体装置は、半導体基板、上部電極、下部電極、絶縁層、及び、フィールドプレートを有する。前記半導体基板は、素子領域と前記素子領域の周囲に配置された周辺領域とを備える。前記半導体基板の上面が前記素子領域内で前記周辺領域内よりも突出するように前記周辺領域内の前記半導体基板の前記上面に凹部が設けられている。前記上部電極は、前記素子領域内で前記半導体基板の前記上面に接している。前記下部電極は、前記素子領域内と前記周辺領域内で前記半導体基板の下面に接している。前記絶縁層は、前記凹部の側面と底面を覆っている。前記フィールドプレートは、前記上部電極から前記周辺領域の上部まで伸びており、前記絶縁層を介して前記凹部の前記側面及び前記底面に対向している。前記半導体基板が、高濃度層と、ドリフト層と、低濃度層を有する。前記高濃度層は、前記素子領域から前記周辺領域に跨って分布しており、前記下部電極に接しており、薄板部と厚板部とを有し、前記厚板部の上面が前記薄板部の上面よりも突出しており、前記厚板部が前記素子領域内に配置されており、前記薄板部が前記素子領域と前記周辺領域に跨って分布しているn型層である。前記ドリフト層は、前記素子領域内に配置されており、前記厚板部の前記上面に接しており、前記高濃度層よりもn型不純物濃度が低いn型層である。前記低濃度層は、前記素子領域から前記周辺領域に跨って分布しており、前記ドリフト層の側面に接しており、前記薄板部の前記上面に接しており、前記厚板部と前記薄板部の境界に形成されている段差部の側面に接しており、前記凹部の前記側面と前記底面で前記絶縁層に接しており、前記ドリフト層よりもn型不純物濃度が低いn型層である。前記ドリフト層が、pn接合とショットキー接合の少なくとも一方を介して前記上部電極に接続されている。前記下部電極の前記上部電極に対する電位を前記半導体基板内でアバランシェ降伏が生じる電位まで上昇させるときに、前記段差部を垂直に交差する断面において、前記段差部の前記側面、前記段差部の前記側面を前記段差部の高さ分だけ前記周辺領域の側にシフトさせた仮想線、前記薄板部の前記上面、及び、前記薄板部の前記上面を前記高さ分だけ上側にシフトさせた仮想線によって構成される四角形の領域のうちの半分以上の領域が空乏化されない。
【0006】
この半導体装置では、高電圧が印加されたときに上記四角形の領域のうちの半分以上の領域が空乏化されないので、段差部の上端周辺における電界集中が抑制される。この構造によれば、半導体基板の内部における電界集中を効果的に抑制でき、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図2に対応する断面において空乏層の分布を示す断面図。
【
図4】
図3のA-A線とB-B線における電界分布を示すグラフ。
【
図5】段差部21周辺の空乏層の分布を示す断面図。
【
図6】比較例において、段差部21周辺の空乏層の分布を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記第1の半導体装置では、前記下部電極の前記上部電極に対する電位を前記半導体基板内でアバランシェ降伏が生じる電位まで上昇させるときに、前記低濃度層のうち、前記段差部の上端から前記薄板部の前記上面に向かって45度の角度で伸びる直線よりも下側の領域が空乏化されなくてもよい。
【0009】
この構成によれば、半導体装置の耐圧をより向上させることができる。
【0010】
また、本明細書が開示する第2の半導体装置は、半導体基板、上部電極、下部電極、絶縁層、及び、フィールドプレートを有する。前記半導体基板は、素子領域と前記素子領域の周囲に配置された周辺領域とを備える。前記半導体基板の上面が前記素子領域内で前記周辺領域内よりも突出するように前記半導体基板の前記上面に凹部が設けられている。前記上部電極は、前記素子領域内で前記半導体基板の前記上面に接している。前記下部電極は、前記素子領域内と前記周辺領域内で前記半導体基板の下面に接している。前記絶縁層は、前記凹部の側面と底面を覆っている。前記フィールドプレートは、前記上部電極から前記周辺領域の上部まで伸びており、前記絶縁層を介して前記凹部の前記側面及び前記底面に対向している。前記半導体基板が、高濃度層と、ドリフト層と、低濃度層を有している。前記高濃度層は、前記素子領域から前記周辺領域に跨って分布しており、前記下部電極に接しており、薄板部と厚板部とを有し、前記厚板部の上面が前記薄板部の上面よりも突出しており、前記厚板部が前記素子領域内に配置されており、前記薄板部が前記素子領域と前記周辺領域に跨って分布しているn型層である。前記ドリフト層は、前記素子領域内に配置されており、前記厚板部の前記上面に接しており、前記高濃度層よりもn型不純物濃度が低いn型層である。前記低濃度層は、前記素子領域から前記周辺領域に跨って分布しており、前記ドリフト層の側面に接しており、前記薄板部の前記上面に接しており、前記凹部の前記側面と前記底面で前記絶縁層に接しており、前記ドリフト層よりもn型不純物濃度が低いn型層である。前記ドリフト層が、pn接合とショットキー接合の少なくとも一方を介して前記上部電極に接続されている。前記厚板部と前記薄板部の境界に、前記高濃度層の上面が前記厚板部から前記薄板部に向かうに従って徐々に下側に変位している変位部が形成されている。前記低濃度層が、前記変位部内で前記高濃度層の前記上面に接している。
【0011】
この半導体装置では、高電圧が印加されたときに厚板部と薄板部の境界(すなわち、変位部)において空乏層が高濃度層の上面に沿ってなだらかに分布する。このため、厚板部と薄板部の境界近傍における電界集中が抑制される。この構造によれば、半導体基板の内部における電界集中を効果的に抑制でき、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0012】
上記第1または第2の半導体装置では、前記絶縁層が、前記凹部の前記底面に接する第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に配置されており、前記第1絶縁層の誘電率とは異なる誘電率を有する第2絶縁層、を有していてもよい。前記フィールドプレートと前記凹部の前記底面の間に、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層が配置されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、2層の絶縁層によってフィールドプレートと半導体基板の間の間隔を広くすることができる。これによって、低濃度層内における電界集中を抑制できる。また、一方の絶縁層の誘電率を高くできるので、その絶縁層中における電界集中を抑制できる。
【0014】
前記第1絶縁層の誘電率が前記第2絶縁層の誘電率よりも高く、前記第2絶縁層の絶縁破壊電圧が前記第1絶縁層の絶縁破壊電圧よりも高くてもよい。
【0015】
この構成によれば、フィールドプレートに近い第2絶縁層の絶縁破壊電圧が高いので、フィールドプレートの端部における電界集中による絶縁層の絶縁破壊を抑制できる。
【0016】
前記フィールドプレートと前記凹部の前記側面の間の前記絶縁層が、前記第1絶縁層または前記第2絶縁層の単層によって構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、素子領域の外周部における電界集中を緩和できる。
【0018】
前記フィールドプレートと前記凹部の前記側面の間の前記絶縁層が、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層のうちの誘電率が高い方によって構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、素子領域の外周部における電界集中をより緩和できる。
【実施例1】
【0020】
図1に示す実施例1の半導体装置10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、例えば、Si、SiC、GaN、Ga
2O
3などの半導体材料により構成されている。半導体基板12を上から見たときに、半導体基板12の中央部に素子領域30が設けられており、素子領域30の周囲に周辺領域40が設けられている。素子領域30は、ダイオード、スイッチング素子等の半導体素子が設けられている領域である。周辺領域40は素子領域30の周囲において耐圧を確保するための領域である。
図2に示すように、半導体基板12の上面12aには、凹部42が設けられている。凹部42は、上面12aのうちの周辺領域40全体に設けられている。凹部42は、素子領域30に隣接する位置から半導体基板12の外周端面12cまで分布している。このため、素子領域30内の上面12aは、周辺領域40内の上面12a(すなわち、凹部42の底面42a)よりも上側に突出している。
【0021】
半導体基板12の下部には、下部電極60が設けられている。下部電極60は、半導体基板12の下面12bのほぼ全域を覆っている。すなわち、下部電極60は、素子領域30から周辺領域40に跨る範囲で下面12bに接している。
【0022】
半導体基板12の上部には、上部電極62、周辺絶縁層64、フィールドプレート66、及び、保護絶縁層68が設けられている。
【0023】
上部電極62は、第1金属層62aと第2金属層62bを有している。第1金属層62aは、素子領域30内で半導体基板12の上面12aに接している。第2金属層62bは、第1金属層62aとは異なる金属により構成されている。第2金属層62bは、第1金属層62aの上面を覆っている。
【0024】
周辺絶縁層64は、凹部42の底面42aと側面42bを覆っている。また、周辺絶縁層64は、素子領域30内の上面12aの外周部を覆っている。実施例1では、周辺絶縁層64は酸化シリコンによって構成されている。
【0025】
フィールドプレート66は、上部電極62の第2金属層62bを周辺領域40の上部まで延ばした部分である。フィールドプレート66は、上部電極62から周辺絶縁層64の表面に沿って凹部42の上部まで延びている。フィールドプレート66は、周辺絶縁層64を介して凹部42の底面42aと側面42bに対向している。
【0026】
保護絶縁層68は、上部電極62の外周部、フィールドプレート66、及び、周辺絶縁層64の外周部を覆っている。
【0027】
半導体基板12は、カソード層20、ドリフト層22、アノード層24、及び、高比抵抗層26を有している。
【0028】
カソード層20は、高いn型不純物濃度を有するn型層である。カソード層20は、下面12bの全域を含む範囲に分布している。すなわち、カソード層20は、素子領域30から周辺領域40に跨って分布している。カソード層20は、素子領域30から周辺領域40に跨る範囲で下部電極60に対してオーミック接触している。カソード層20は、厚板部20aと薄板部20bを有している。厚板部20aは、素子領域30の中央部に配置されている。薄板部20bは、素子領域30の外周部と周辺領域40に跨って分布している。厚板部20aの上面は、薄板部20bの上面よりも上側に突出している。このため、厚板部20aの上面と薄板部20bの上面の間に、段差部21が存在している。段差部21は、厚板部20aと薄板部20bの境界に位置している。
図1に示すように、段差部21は、半導体基板12の外周端面12cと平行に、素子領域30の中央の周囲を一巡するように伸びている。
図1においてII-II線で示されているように、
図2の断面は、段差部21を垂直に交差する断面である。
【0029】
ドリフト層22は、カソード層20よりも低いn型不純物濃度を有するn型層である。ドリフト層22は、素子領域30内に配置されている。ドリフト層22は、厚板部20aの上部に配置されており、厚板部20aの上面に接している。
【0030】
高比抵抗層26は、ドリフト層22よりも低いn型不純物濃度を有するn型層である。高比抵抗層26がドリフト層22よりも低いn型不純物濃度を有するので、高比抵抗層26はドリフト層22よりも高い比抵抗を有する。高比抵抗層26は、素子領域30の外周部と周辺領域40に跨って分布している。高比抵抗層26は、薄板部20bの上部に配置されており、薄板部20bの上面に接している。高比抵抗層26は、段差部21の側面に接している。高比抵抗層26は、ドリフト層22の側面に接している。高比抵抗層26は、凹部42の底面42a及び側面42bにおいて、周辺絶縁層64に接している。
【0031】
アノード層24は、p型層である。アノード層24は、素子領域30内に配置されている。アノード層24は、素子領域30内の上面12aの全域を含む範囲に分布している。アノード層24は、ドリフト層22の上面と素子領域30内の高比抵抗層26の上面に接している。アノード層24の中央部は、上部電極62の第1金属層62aにオーミック接触している。このため、ドリフト層22は、pn接合(すなわち、ドリフト層22とアノード層24の間のpn接合)を介して上部電極62に接続されている。アノード層24の外周部は、周辺絶縁層64に覆われており、周辺絶縁層64を介してフィールドプレート66に対向している。
【0032】
素子領域30内のアノード層24、ドリフト層22、及び、カソード層20によって、PINダイオードが形成されている。上部電極62の電位を下部電極60の電位よりも高くすると、PINダイオードがオンし、上部電極62からアノード層24、ドリフト層22、及び、カソード層20を介して下部電極60へ電流が流れる。
【0033】
下部電極60の電位を上部電極62の電位よりも高くすると、pn接合に逆電圧が印加される。その結果、pn接合からドリフト層22と高比抵抗層26に空乏層が伸びる。
図3の破線70は、下部電極60に上部電極62の電位よりも高い所定電位を印加したときにおける空乏層の分布範囲を示している。高比抵抗層26のn型不純物濃度が低いので、高比抵抗層26内に空乏層が広がり易い。また、フィールドプレート66によって、高比抵抗層26内で横方向に電位差が生じることが抑制される。その結果、高比抵抗層26内において横方向への空乏層の進展が促進される。その結果、凹部42の側面42b周辺における電界集中が抑制される。また、
図3の破線72は、破線70の場合よりも下部電極60の電位を上昇させたときにおける空乏層の分布範囲を示している。破線72に示すように、下部電極60の電位を高くすると、空乏層の分布範囲が広がる。破線72の状態では、空乏層がカソード層20にほぼ達している。このため、破線72の状態からさらに下部電極60の電位を高くすると、半導体基板12内でアバランシェ降伏が生じる。
【0034】
図4は、破線72のように空乏層が分布している状態にける、
図3のA-A線、及び、B-B線の位置の電界分布を示している。
図4のグラフAはA-A線の位置における電界分布であり、グラフAの原点はpn接合の位置である。
図4のグラフBはB-B線の位置における電界分布であり、グラフBの原点は凹部42の底面42aの位置である。A-A線の位置(すなわち、ドリフト層22内)では、空乏層内に存在する固定電荷の影響により、ドリフト層22の上端から下端に向かうに従って電界が最大電界Ecから徐々に低下する。高比抵抗層26のn型不純物濃度が低いので、高比抵抗層26内に存在する固定電荷は極めて少ない。このため、B-B線の位置(すなわち、高比抵抗層26内)では、高比抵抗層26の上端から下端まで最大電界Ecと略等しい電界が生じている。
図4のグラフA、Bの斜線部の面積S1、S2は、ドリフト層22及び高比抵抗層26で保持される電圧に相当する。
図4から明らかなように、ドリフト層22で保持可能な電圧はグラフAにより規定される三角形の領域の面積S1であり、高比抵抗層26で保持可能な電圧はグラフBにより規定される略矩形の領域の面積S2である。ドリフト層22の厚みをT1としたときに、面積S1はS1≒T1・Ec/2の関係を満たす。高比抵抗層26の厚みをT2としたときに、面積S2はS2≒T2・Ecの関係を満たす。したがって、厚みT2が厚みT1の半分よりも大きければ、高比抵抗層26でドリフト層22よりも高い電圧を保持することが可能となる。本実施例では、段差部21が設けられているので、高比抵抗層26の厚みT2がドリフト層22の厚みT1の半分よりも大きい。このため、高比抵抗層26でドリフト層22よりも高い電圧を保持することができる。したがって、
図3の破線72の状態からさらに下部電極60の電位を高くすると、ドリフト層22内でアバランシェ降伏が生じる。ドリフト層22の上部全体に上部電極62が設けられているので、ドリフト層22内でアバランシェ降伏が生じると、アバランシェ電流が速やかに上部電極62へ排出される。これによって、アバランシェ電流により半導体装置10に加わるストレスが軽減される。
【0035】
図5は、破線72のように空乏層が分布している状態(すなわち、アバランシェ降伏が生じる瞬間の状態)における段差部21の拡大図を示している。なお、
図5は、段差部21を垂直に交差する断面を示している。また、
図5の仮想線80は、段差部21の側面を段差部21の高さH1と同じ距離だけ周辺領域40の側にシフトさせた線である。また、
図5の仮想線82は、薄板部20bの上面を段差部21の高さH1と同じ距離だけ上側にシフトさせた線(言い換えると、厚板部20aの上面の延長線)である。また、
図5の領域Xは、段差部21の側面、薄板部20bの上面、仮想線80、及び、仮想線82によって囲まれた四角形の領域である。また、
図5の仮想線84は、段差部21の上端から薄板部20bの上面に向かって45度の角度で伸びる直線(言い換えると、四角形の領域Xの対角線)である。
図5の破線72に示すように、アバランシェ降伏が生じる瞬間において、領域Xの半分以上の領域が空乏化されない。特に、仮想線84よりも下側の領域は空乏化されない。
【0036】
図6は、比較例の半導体装置における空乏層の分布を示している。
図6では、破線72が仮想線84よりも下側まで進入しており、領域Xのうちの半分以上の領域が空乏化されている。このように空乏層が領域Xに深く入り込むと、段差部21の上端が空乏層内へ突き出した状態となり、段差部21の上端周辺で電界集中が生じる。これに対し、
図5のように空乏層が領域Xに入り込むことが抑制されると、段差部21の上端近傍における電界集中が抑制される。本実施例では、ドリフト層22の厚み及びn型不純物濃度、高比抵抗層26の厚み及びn型不純物濃度、及び、段差部21の高さ等が適切に設定されることにより、アバランシェ降伏が生じるまでに領域Xの半分以上が空乏化しないようになっている。これにより、段差部21の上端における電界集中が抑制され、半導体装置10の耐圧が向上されている。以上に説明したように、実施例1の半導体装置10によれば、段差部21によって高比抵抗層26の厚みを確保できるとともに、段差部21の上端における電界集中を抑制できる。
【0037】
なお、上述した実施例1では、ドリフト層22がpn接合を介して上部電極62に接続されていた。しかしながら、
図7に示すように、半導体基板12がアノード層24を有しておらず、ドリフト層22がショットキー接合によって上部電極62に接続されていてもよい。この場合、素子領域30がショットキーバリアダイオード(以下、SBDという)として動作する。
図7の半導体装置では、SBDに逆電圧が印加されたときに、ショットキー接合(すなわち、上部電極62とドリフト層22の界面)からドリフト層22と高比抵抗層26に空乏層が広がる。
図7の半導体装置でも、
図5のように空乏層を分布させることで、耐圧を向上させることができる。また、
図8に示すように、素子領域30内の上面12aに面する範囲に部分的にアノード層24が設けられており、アノード層24が設けられていない範囲でドリフト層22が上部電極62にショットキー接合されていてもよい。また、素子領域30内に設けられている半導体素子が、MOSFET等のスイッチング素子であってもよい。同様に、後述する実施例2、3でも、素子領域30内に任意の半導体素子を設けることができる。
【実施例2】
【0038】
図9に示す実施例2の半導体装置100では、厚板部20aと薄板部20bの境界に、段差部21ではなく変位部21xが形成されている。実施例2の半導体装置100のその他の構成は、実施例1の半導体装置10と等しい。
【0039】
図9に示すように、変位部21xでは、カソード層20の上面が厚板部20aから薄板部20bに向かうに従って徐々に下側に変位している。このため、厚板部20aの上面と薄板部20bの上面が変位部21xによって滑らかに接続されている。変位部21xの範囲内では、高比抵抗層26がカソード層20の上面に接している。
図9の破線72は、アバランシェ降伏が生じる直前における空乏層の分布を示している。破線72に示すように、実施例2の半導体装置100では、空乏層の下端が変位部21xに沿って分布する。これにより、
図6のように空乏層が分布することが防止される。このため、実施例2の構成によれば、厚板部20aと薄板部20bの境界における電界集中を抑制できる。このように、実施例2の半導体装置100では、変位部21xによって高比抵抗層26の厚みを確保できるとともに、厚板部20aと薄板部20bの境界における電界集中を抑制できる。
【実施例3】
【0040】
図10に示す実施例3の半導体装置200では、周辺絶縁層64が、第1絶縁層64aと第2絶縁層64bを有する。第1絶縁層64aは、酸化ハフニウムにより構成されている。第1絶縁層64aは、凹部42の底面42a、凹部42の側面42b、及び、素子領域30内の上面12aの外周部を覆っている。第2絶縁層64bは、酸化シリコンにより構成されている。酸化シリコンの誘電率は、酸化ハフニウムの誘電率よりも低い。また、酸化シリコンの絶縁破壊電圧は、酸化ハフニウムの絶縁破壊電圧よりも高い。第2絶縁層64bは、第1絶縁層64a上に配置されている。第2絶縁層64bの上面は、フィールドプレート66によって覆われている。したがって、フィールドプレート66と凹部42の底面42aの間に、第1絶縁層64aと第2絶縁層64bが配置されている。第2絶縁層64b上にフィールドプレート66の外周端66xが配置されている。フィールドプレート66と凹部42の側面42bの間の周辺絶縁層64は、第1絶縁層64aの単層によって構成されている。
【0041】
フィールドプレート66の外周端66xの近傍では電界が集中し易い。実施例3の構成によれば、フィールドプレート66と凹部42の底面42aの間に二層の絶縁層(すなわち、第1絶縁層64aと第2絶縁層64b)を設けられているので、フィールドプレート66と底面42aの間の間隔を広くすることができる。このため、電界集中が生じ易いフィールドプレート66の外周端66xを高比抵抗層26から遠ざけることができる。これにより、高比抵抗層26内で高い電界が生じることを抑制できる。また、周辺絶縁層64の一部が第1絶縁層64a(すなわち、誘電率が高い酸化ハフニウム)によって構成されていることで、第1絶縁層64aの内部の電界を緩和することができる。また、電界集中が生じ易いフィールドプレート66の外周端66xに接する位置では、周辺絶縁層64が第2絶縁層64b(すなわち、絶縁破壊電圧が高い酸化シリコン)によって構成されているので、フィールドプレート66の外周端66x近傍の周辺絶縁層64中で絶縁破壊が生じることを抑制できる。
【0042】
また、フィールドプレート66と凹部42の側面42bの間の周辺絶縁層64が、第1絶縁層64aの単層によって構成されている。このため、フィールドプレート66を側面42b(すなわち、素子領域30の外周部)の近くに配置することができる。素子領域30の外周部では電界集中が生じ易いが、フィールドプレート66を素子領域30の外周部近傍に配置することで、素子領域30の外周部における電界集中を抑制できる。また、フィールドプレート66と側面42bの間の周辺絶縁層64が第1絶縁層64a(すなわち、誘電率が高い酸化ハフニウム)によって構成されていることで、素子領域30の外周部における電界集中をより効果的に抑制できる。
【0043】
なお、実施例3の周辺絶縁層64の構造を、実施例2の半導体装置100に適用してもよい。
【0044】
また、実施例3では、第1絶縁層64aが第2絶縁層64bよりも高い誘電率を有していたが、第2絶縁層64bが第1絶縁層64aよりも高い誘電率を有していてもよい。
【0045】
また、上述した実施例1~3では、周辺領域40(すなわち、凹部42)が半導体基板12の外周部に設けられていた。しかしながら、周辺領域40の少なくとも一部が、素子領域30と他の領域の間に設けられていてもよい。例えば、
図11に示すように、周辺領域40の一部が、ダイオードが設けられた素子領域30とスイッチング素子が設けられた領域90の間に設けられていてもよい。
【0046】
実施例のカソード層20は、高濃度層の一例である。実施例の高比抵抗層は、低濃度層の一例である。
【0047】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0048】
10:半導体装置、12:半導体基板、20:カソード層、20a:厚板部、20b:薄板部、21:段差部、22:ドリフト層、26:高比抵抗層、30:素子領域、40:周辺領域、42:凹部、64:周辺絶縁層、66:フィールドプレート