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特許7730393燃焼エンジン後処理デバイスの性能を改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】燃焼エンジン後処理デバイスの性能を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20250820BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20250820BHJP
   C10M 139/04 20060101ALN20250820BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20250820BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20250820BHJP
【FI】
C10M169/04
F01N3/00 Z
C10M139/04
C10N30:00 Z
C10N40:25
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024054583
(22)【出願日】2024-03-28
(65)【公開番号】P2024149412
(43)【公開日】2024-10-18
【審査請求日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】18/296,477
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】グプタ、アシュトシュ
(72)【発明者】
【氏名】チアン、ション
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-337788(JP,A)
【文献】特開2021-116426(JP,A)
【文献】国際公開第2020/209370(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0244016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼エンジン用の三元触媒コンバータの性能を改善する方法であって、
潤滑油組成物で前記燃焼エンジンを潤滑し、潤滑されたエンジンにおいて燃料を燃焼させ、燃焼から誘導された煤及び/又は灰粒子を含む排気流を発生させることであって、前記潤滑油組成物が、潤滑粘度の1つ以上の基油と、前記潤滑油組成物に約50~約500ppmのケイ素を提供する少なくとも1つの油溶性ケイ素含有化合物を含む添加剤パッケージと、を含む、発生させることと、
前記三元触媒コンバータを、前記燃焼からの前記煤及び/又は前記灰粒子を含む前記排気流と接触させることと、を含み、
少なくとも約120,000マイルの動作後の前記三元触媒コンバータの前記性能が、約10ppm以下のケイ素を有する潤滑油組成物で潤滑された燃焼エンジンからの前記排気流に曝露された前記三元触媒コンバータと比較して改善される、方法。
【請求項2】
前記三元触媒コンバータの前記性能が、表面積、酸素貯蔵容量、又はライトオフ温度のうちの少なくとも1つによって測定される際に改善される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも約120,000マイルの動作後の前記三元触媒コンバータの前記表面積が、前記三元触媒コンバータの初期表面積と実質的に同じであり、かつ/又は前記少なくとも約120,000マイルの動作後の前記三元触媒コンバータの前記酸素貯蔵容量が、前記三元触媒コンバータの初期酸素貯蔵容量よりも30パーセントを超えて低下せず、かつ/又は前記少なくとも約120,000マイルの動作後の前記三元触媒コンバータのCO T50ライトオフ温度が、前記三元触媒コンバータの初期CO T50ライトオフ温度よりも5パーセントを超えて増加しない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記三元触媒コンバータの前記表面積が、Brunauer-Emmett-Teller(BET)分析に従って測定され、かつ/又は前記三元触媒コンバータのBET表面積が、前記少なくとも約120,000マイルの動作後に約20m2cat -1以上であり、かつ/又は前記少なくとも約120,000マイルの動作後の前記三元触媒コンバータの前記BET表面積の、前記三元触媒コンバータの初期BET表面積に対する減少、約4~約10パーセントの範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの油溶性ケイ素含有化合物が、約150~約250ppmのケイ素を前記潤滑油組成物に提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記油溶性ケイ素含有化合物が、C6~C20ヒドロカルビル鎖を有するオルガノシラン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記オルガノシラン化合物が、C6~C20ヒドロカルビルシリルエーテル化合物であり、かつ/又は前記シリルエーテル化合物が、トリ-アルコキシ(ヒドロカルビル)シランであり、かつ/又は前記シリルエーテル化合物が、C14~C20ヒドロカルビルトリメトキシシランである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記燃焼エンジンが、ガソリンエンジン若しくはディーゼルエンジンであり、かつ/又は前記煤若しくは灰粒子が、約10nm以下の直径を有し、かつ/又は前記煤若しくは灰粒子が、最大200マイクロメートルの直径を有する粒子に凝集し、かつ/又は前記排気流が、高温動作中の微粒子数(PN)によって測定される1×1012~1×1013の煤及び/若しくは灰を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が、0.4~2.0重量パーセントの計算SASH値を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、燃焼エンジン用の後処理デバイスの性能を改善するように構成された潤滑油組成物及びその使用方法に関し、具体的には、燃焼エンジン後処理デバイスの性能を改善するために潤滑油組成物中に油溶性ケイ素含有化合物を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポート燃料噴射(port fuel injection、PFI)ガソリンエンジンは、極めて低い微粒子排出物を有する傾向があるが、より新しいガソリン直接噴射(gasoline direct injection、GDI)エンジン及びディーゼルエンジンは、それらの燃焼技術を考慮すると、より高い微粒子排出物を有する傾向がある。ディーゼルエンジン及びGDIエンジンの両方において微粒子及び他の排気排出物を低減することを支援するために、様々ないわゆる後処理デバイスが導入されている。例えば、微粒子フィルタは、ディーゼル及び/又はGDIエンジンの排気システムとともに一般的に使用されて、微粒子排出物を捕捉及び低減させるような後処理デバイスの1つである。三元触媒は、多くの場合、かかるエンジンからの排気中の部分燃焼及び/又は未燃焼成分を酸化するために使用される別の一般的な後処理デバイスである。しかしながら、微粒子フィルタ及び/又は触媒システムは、100,000マイルを超え得る長い実世界の耐用年数の間、車両排出物を効率的に制御する必要がある。しかしながら、後処理デバイスの性能は、他の問題の中でも、選択されたエンジン油から生じる燃焼副生成物によって影響を受ける可能性がある。
【0003】
後処理デバイスの評価は、様々な性能試験及び/又は物理的特徴付けを通じて算定され得る。性能試験は、例えば、触媒系の酸素貯蔵容量及び/又はライトオフ温度の測定を含み得る。物理的特徴付けは、フィルタ及び/又は触媒表面積の測定を含み得る。
【0004】
酸素貯蔵容量は、概して、リーン条件下で過剰酸素を貯蔵し、リッチ条件下で酸素を放出する三元触媒後処理デバイスの能力を指す。酸素貯蔵及び放出の量は、三元触媒の変換能が低減するにつれて減少する。したがって、耐用年数にわたる三元触媒の酸素貯蔵容量における減少は望ましくなく、後処理デバイスの使用中の耐用年数にわたって維持される高い酸素貯蔵容量が好ましい。
【0005】
ライトオフ温度は、三元触媒の別の有用な性能尺度である。ライトオフ温度は、触媒反応が三元触媒内で開始される排気ガス温度の尺度である。ライトオフ温度は、概して、エンジンの排気流中の不完全燃焼の生成物を酸化するのに必要な最低温度である。このため、デバイスの耐用年数にわたって維持されるより低いライトオフ温度が所望される。
【0006】
フィルタ又は触媒表面積は、経時的なデバイス性能を評価するために使用することができる後処理デバイスの物理的特徴である。燃焼による煤又は灰は、フィルタ又は触媒を詰まらせることによって表面積を低下させる可能性がある。Brunauer-Emmett-Teller(Brunauer-Emmett-Teller、BET)分析は、固体又は多孔性材料の表面積を測定するために使用される1つの方法であり、微粒子フィルタ又は三元触媒などの自動車後処理デバイスの表面積を測定するために有用であり得る。耐用年数にわたって維持される触媒又はフィルタのより高いBET表面積が所望される。
【発明の概要】
【0007】
一態様によれば、燃焼エンジン用の後処理デバイスの性能を改善する方法が、本明細書において説明される。この態様の一実施形態又はアプローチでは、本方法は、潤滑油組成物で燃焼エンジンを潤滑し、潤滑されたエンジンにおいて燃料を燃焼させ、燃焼から誘導された煤及び/又は灰粒子を含む排気流を発生させることであって、潤滑油組成物が、潤滑粘度の1つ以上の基油と、潤滑油組成物に約50~約500ppmのケイ素を提供する少なくとも1つの油溶性ケイ素含有化合物を含む添加剤パッケージと、を含む、発生させることと、後処理デバイスを燃焼からの煤及び/又は灰粒子を含む排気流と接触させることと、を含み、少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスの性能が、約10ppm以下のケイ素を有する潤滑油組成物で潤滑された燃焼エンジンからの排気流に曝露された後処理デバイスと比較して改善される。
【0008】
他のアプローチ又は実施形態では、前段落の方法は、任意の組み合わせで、任意選択的な実施形態、特色、又は方法ステップを含み得る。これらの任意選択的な実施形態、特色、又は方法ステップは、以下のうちの1つ以上を含み得る:後処理デバイスの性能は、表面積、酸素貯蔵容量、若しくはライトオフ温度のうちの少なくとも1つによって測定される際に改善される、並びに/又は少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスの表面積は、後処理デバイスの初期表面積と実質的に同じであり、かつ/又は少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスの酸素貯蔵容量は、後処理デバイスの初期酸素貯蔵容量よりも30パーセントを超えて低下せず、かつ/又は少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスのCO T50ライトオフ温度は、後処理デバイスの初期CO T50ライトオフ温度よりも5パーセントを超えて増加せず、かつ/又は後処理デバイスの表面積は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)分析に従って測定され、かつ/又は後処理デバイスのBEP表面積は、約120,000マイルの動作後に約20m2cat -1以上であり、かつ/又は少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスのBET表面積は、後処理デバイスの初期BET表面積の約4~約10パーセントで維持され、かつ/又は少なくとも1つの油溶性ケイ素含有化合物は、約150~約250ppmのケイ素を潤滑油組成物に提供し、かつ/又は後処理デバイスは、三元触媒コンバータ、微粒子フィルタ、若しくはこれらの組み合わせから選択され、かつ/又は油溶性ケイ素含有化合物は、C6~C20ヒドロカルビル鎖を有するオルガノシラン化合物であり、かつ/又はオルガノシラン化合物は、C6~C20ヒドロカルビルシリルエーテル化合物であり、かつ/又はシリルエーテル化合物は、トリ-アルコキシ(ヒドロカルビル)シランであり、かつ/又はシリルエーテル化合物は、C14~C20ヒドロカルビルトリメトキシシランであり、かつ/又は燃焼エンジンは、ガソリンエンジン若しくはディーゼルエンジンであり、かつ/又は煤若しくは灰粒子は、約10nm以下の直径を有し、かつ/又は煤若しくは灰粒子は、凝集して最大200マイクロメートルの直径を有する粒子になり、かつ/又は排気流は、高温動作中の微粒子数(particulate number、PN)によって測定される1×1012~1×1013の煤及び/若しくは灰を有し、かつ/又は潤滑油組成物は、0.4~2.0重量パーセントの計算SASH値(ASTM 874)を有する。
【0009】
別の態様では、燃焼エンジン用の後処理デバイスの性能を改善するように構成された潤滑油組成物が、本明細書において説明される。更なる態様の実施形態又はアプローチでは、潤滑油組成物は、1つ以上の潤滑粘度の基油と、1つ以上の任意選択的な粘度指数改善剤添加剤と、ホウ素化及び/又は非ホウ素化分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、1つ以上の清浄剤、1つ以上の耐摩耗剤、流動点降下剤、及び消泡剤のうちの1つ以上を含む添加剤パッケージと、約50~約500ppmのケイ素を潤滑油組成物に提供する少なくとも1つの油溶性ケイ素含有化合物と、を含み、後処理デバイスを、潤滑油組成物で潤滑された燃焼エンジンにおける燃料の燃焼からの煤及び/又は灰粒子を含む排気流と接触させた後、少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスの性能が、約10ppm以下のケイ素を有する潤滑油組成物で潤滑された燃焼エンジンからの排気流に曝露された後処理デバイスと比較して改善される。
【0010】
他の実施形態では、前段落の潤滑油組成物は、任意の組み合わせで、1つ以上の任意選択的な特色又は実施形態を含み得る。これらの任意選択的な特色又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:少なくとも1つの油溶性ケイ素含有化合物が、潤滑油組成物に約150~約250ppmのケイ素を提供し、かつ/又は油溶性ケイ素含有化合物が、C6~C20ヒドロカルビル鎖を有するオルガノシラン化合物であり、かつ/又はオルガノシラン化合物が、C6~C20ヒドロカルビルシリルエーテル化合物であり、かつ/又はシリルエーテル化合物が、トリ-アルコキシ(ヒドロカルビル)シランであり、かつ/又はシリルエーテル化合物が、C14~C20ヒドロカルビルトリメトキシシランである。
【0011】
更に他の実施形態では、本概要の潤滑油組成物又は方法の任意の実施形態の使用はまた、燃焼エンジンのための後処理デバイスの性能を改善するために説明され、後処理デバイスの改善された性能は、表面積、酸素貯蔵容量、若しくはライトオフ温度のうちの少なくとも1つによって測定され、かつ/又は使用は、後処理デバイスの初期表面積と実質的に同じ、少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスの表面積を達成し、かつ/又は使用は、後処理デバイスの初期酸素貯蔵容量の30パーセントを超えて低下しない、少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスの酸素貯蔵容量を達成し、かつ/又は使用は、後処理デバイスの初期CO T50ライトオフ温度よりも5パーセントを超えて増加しない、少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスのCO T50ライトオフ温度を達成し、かつ/又は後処理デバイスの表面積は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)分析に従って測定され、かつ/又は後処理デバイスのBET表面積は、少なくとも約120,000マイルの動作後に約20m2cat -1以上であり、かつ/又は少なくとも約120,000マイルの動作後の後処理デバイスのBET表面積が、後処理デバイスの初期BET表面積の約4~約10パーセントで維持される。
【0012】
本開示の追加の詳細及び利点は、以下の説明に部分的に記載され、かつ/又は本開示の実施によって習得され得る。本開示の詳細及び利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成し得る。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明が、両方とも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書で使用される例示的な駆動サイクルに関する速度対時間チャートである。
図2】BET表面積のグラフである。
図3】酸素貯蔵容量のグラフである。
図4】ライトオフ温度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、潤滑油組成物に約50~約500ppmのケイ素を提供する少なくとも1つの油溶性ケイ素含有化合物を有する添加剤パッケージと、を含む潤滑油組成物を使用することによって、その耐用年数にわたって、微粒子フィルタ及び/又は三元触媒システムなどの燃焼エンジン後処理デバイスの性能を改善する方法を提供する。驚くべきことに、潤滑油組成物中のより多量のケイ素は、ケイ素がより高い灰分をもたらす可能性があるにもかかわらず、後処理デバイスの改善された性能をもたらした。
【0015】
本明細書におけるアプローチ又は実施形態では、方法は、燃焼エンジンを、増加したレベルのケイ素を有する潤滑油組成物で潤滑することと、潤滑されたエンジンにおいて燃料を燃焼させ、燃焼から誘導された煤及び/又は灰粒子を含む排気流を発生させることと、を含む。次いで、後処理デバイスは、燃焼からの煤及び/又は灰粒子を含む排気流と接触し、後処理デバイスの性能は、(約10ppm以下のケイ素などの)ごくわずかなレベルのケイ素を有する潤滑油組成物で潤滑された燃焼エンジンからの排気流に曝露された後処理デバイスと比較して改善される。本明細書において考察されるように、後処理デバイスの性能は、限定されないが、EPA Federal Test Procedure(例えば、FTP-75)、Common Artemis Driving Cycle(CADC)、又は他の好適な駆動サイクルなどの好適な駆動サイクルに従って、少なくとも約120,000マイル(好ましくは、約少なくとも約125,000マイル)のエンジン動作の後に測定される。後処理デバイスの性能は、酸素貯蔵容量、ライトオフ温度、及び/又はBET表面積のうちの1つ以上を使用して測定される場合に改善され、驚くべきことに、エンジン油潤滑剤中のより高いレベルのケイ素は、より低いレベルのケイ素を有するエンジン油と比較して、フィルタ又は触媒の性能を改善した。
【0016】
ケイ素はエンジン内で燃焼されない無機材料であるので、エンジン油中のより高いレベルのケイ素は、耐用年数にわたって後処理デバイスの酸素貯蔵容量、ライトオフ温度、及び/又は表面積を低下させるより高いレベルの灰を形成することによって、後処理デバイスの性能に悪影響を及ぼすことが予想されていた。しかしながら、一方で、エンジン油中の油溶性ケイ素含有化合物からのより高い量のケイ素は、後処理デバイスの初期性能と比較して後処理の性能を実際に維持若しくは改善するか、又は少なくともごくわずかなレベルのケイ素(すなわち、約10ppm以下)を有するエンジン油と比較してより良好な性能をもたらすことが本明細書において発見された。本明細書の潤滑油組成物は、ASTM D874に従って測定される際、約0.4~約2.0重量パーセント、又は約0.4~約1.0、又は約0.4~約0.8重量パーセントの計算SASH値を有し得る。
【0017】
燃焼エンジン排気流の微粒子排出物は、概して、煤粒子及び灰粒子を含み、これらは凝集して、より大きな凝集粒子を形成する可能性がある。本明細書におけるいくつかのアプローチ及び実施形態では、排気流の一次煤及び灰粒子は、典型的には、約10nm未満の直径を有する。他の実施形態では、凝集体粒子は、存在する場合、約7nm~約60nmの平均一次粒径を有することができる。なお更なる実施形態では、一次粒子はまた、いくつかの状況において、例えば、「Gasoline Particulate Filter(GPF):How can the GPF cut emissions of ultrafine particles from gasoline engines.」と題されたAssociation for Emissions Control by Catalyst(AECC)による2017年刊行物に従って、会合して、最大約200nm又は更にはそれを超える直径を有し得る凝集体を形成し得る。なお更なるアプローチでは、本明細書における排気流は、複数の粒子を含み得、複数の粒子の各粒子は、約0.01マイクロメートル~約200マイクロメートルの直径を有する。他のアプローチでは、複数の粒子中の各粒子は、約0.05マイクロメートル~約95マイクロメートル、約0.10マイクロメートル~約90マイクロメートル、約0.15マイクロメートル~約85マイクロメートル、又は約0.20マイクロメートル~約80マイクロメートルの直径を有する。いくつかのアプローチでは、複数の粒子中の少なくとも99%の粒子は、上記で特定された平均直径を有する。他のアプローチでは、複数の粒子中の少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、又は少なくとも95%の粒子が、本明細書において指定される平均直径を有する。いくつかのアプローチでは、5%以下の粒子が、200マイクロメートル超の平均直径を有する。いくつかのアプローチでは、5%以下の粒子が、0.01マイクロメートル未満の平均直径を有する。更に他のアプローチでは、燃焼排気流は、高温動作中の微粒子数(PN)によって測定される約1×1012~約1×1013の煤及び/又は灰粒子を有し得る。
【0018】
油溶性ケイ素含有化合物
アプローチ又は実施形態では、後処理デバイスの性能を改善するために本明細書における潤滑油組成物に有用な油溶性ケイ素含有化合物は、C6~C20ヒドロカルビル鎖を有する1つ以上のヒドロカルビルシリルエーテル化合物などの、1つ以上のオルガノシランであり得る。例えば、ヒドロカルビルシリルエーテルは、C10~C20ヒドロカルビルトリメトキシ生理食塩水などのトリ-アルコキシ(ヒドロカルビル)シラン、又はより好ましくは、C14~C20ヒドロカルビルトリメトキシシラン、及び最も好ましくは、ヘキサデシルトリメトキシシランであり得る。
【0019】
他のアプローチ又は実施形態では、本開示の油溶性ケイ素含有化合物は、式Iの構造を有し得、
【0020】
【化1】
式中、Rは、2~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基(好ましくは、炭素数6~20、炭素数10~20、又は炭素数16~18のアルキル基)であり、R、R及びRは、各々独立して、炭素数1~10を有するヒドロカルビル基(好ましくは、炭素数1~3のアルキル基、より好ましくは、メチル基)から選択される。任意選択的に、Rは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクチルデシル、ノナデシル、及びエイコシルから選択されるアルキル基であってもよく、R、R、及びRは、独立して、メチル、エチル、及びプロピルから選択されるアルキル基であり得る。好ましくは、Rは、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクチルデシルから選択されるアルキル基であり、R、R及びRは、メチル基である。
【0021】
更に他のアプローチでは、本開示の油溶性ケイ素含有化合物は、GPCによって測定される際、100~400g/モルの平均数分子量を有し得る。かかる油溶性ケイ素含有化合物の好適な例は、限定されないが、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、ウンデシル-トリエトキシシラン、及びテトラデシルトリエトキシシランであり得る。好ましくは、本開示の油溶性ケイ素含有化合物は、ウンデシル-トリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、及びヘキサデシルトリメトキシシランから選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、好適なオルガノシランは、1つの有機置換基及び3つの加水分解性置換基を含む。更に他の実施形態では、例示的なオルガノシランには、限定されないが、以下の化合物が含まれ得る:[2-(3-シクロヘキセニル)エチル]トリメトキシシラン、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、イソオクチルトリメトキシ-シラン、N-(3-トリエトキシ-シリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカーバメート、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカーバメート、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、-9-3-(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリスイソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペンオキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタメチル(2-lトリス(2-メトキシエトキシ)シリルエチルlトリシロキサン(米国特許出願公開第2003/0220204号に記載)ポリジメチルシロキサン、例えば、置換及び非置換アリールシランを含むアリールシラン、メトキシ及びヒドロキシ置換アルキルシランを含む置換及び非置換アルキルシランを含むアルキルシラン、並びに/又は上記化合物のうちの2つ以上の組み合わせ。
【0023】
アプローチ又は実施形態では、油溶性ケイ素含有化合物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約50ppm~約500ppmのケイ素、他のアプローチでは、約100ppm~約500ppmのケイ素、約150ppm~約250ppmのケイ素、又は更に他のアプローチでは、約180ppm~約220ppmのケイ素を潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する。
【0024】
本明細書における潤滑組成物中のケイ素のかかる高い処理率は、驚くべきことに、少なくとも約120,000マイルの有用ファイル後の後処理デバイスのBrunauer-Emmett-Teller(BET)分析を使用して測定された表面積を提供し、これは、後処理デバイスの初期測定表面積と実質的に同じである。本明細書で使用される場合、BETフィルタ表面積の文脈において実質的に同じとは、Brunauer-Emmett-Teller(BET)分析に従って測定される場合、後処理デバイスの初期表面積(又は実施例に記載されるような脱グリーン化表面積)の約10パーセント以内、約8パーセント以内、又は約5パーセント以内であると考えられる。他のアプローチでは、後処理デバイスのBET表面積は、少なくとも120,000マイル後に約20mcat -1以上である(好ましくは、約20~約25mcat -1)。更に他のアプローチでは、120,000マイルの動作後の後処理デバイスのBET表面積は、後処理デバイスの初期又は脱グリーン化BET表面積の約4~約10パーセントで維持される。驚くべきことに、潤滑組成物中のケイ素含有化合物の量が少ないほど、実際には、少なくとも約120,000マイル後のBET表面積が小さくなり、これは、約10ppm以下のケイ素を有する潤滑油組成物などのケイ素濃度が低い組成物でエンジンを潤滑したとき、後処理デバイスの細孔がより多く塞がれることを意味する。比較すると、本明細書の実施例に示されるように、ごくわずかなレベルのケイ素(例えば、約10ppm以下)を有する比較潤滑剤を使用するエンジンからの排気ガスに曝露されたフィルタのBET表面積は、少なくとも約120,000マイルの動作後に10.4mcat -1のはるかに低い表面積を有した。
【0025】
かかる高いケイ素処理率はまた、驚くべきことに、ごくわずかなレベルのケイ素(例えば、10ppm以下)を有する潤滑剤と比較して、少なくとも約120,000マイルの有用ファイル後に、三元触媒の低いライトオフ温度を維持する。上述したように、ライトオフ温度は、CO及びCなどの不完全燃焼の生成物を酸化するのに必要な排気ガス温度の尺度であり、一般的に、T50又はT90温度で報告される(ここで、T50は、CO又はCの50%が変換される摂氏温度を指し、T90は、CO又はCの90%が変換される摂氏温度を指す)。
【0026】
高いケイ素処理率を有する本明細書の潤滑剤は、少なくとも約120,000マイルのエンジン運転後のライトオフ温度における任意の増加を最小限に抑える。例えば、以下の実施例に示されるように、より高いレベルのケイ素を有する本明細書の潤滑組成物を使用する場合、少なくとも約120,000マイルの動作後に、COT50及びT90ライトオフ温度は、約3~約5パーセント増加しただけであり、C50及びT90ライト温度は、約9~約18パーセント増加しただけである。対照的に、以下の実施例に示されるように、ごくわずかなレベルのケイ素(例えば、約10ppm以下)を有する比較潤滑剤は、COT50及びT90温度において約9パーセント以上の増加、並びにC50及びT90ライトオフ温度において25パーセント以上の増加を有した。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも約120,000マイル後、本明細書における潤滑剤のCO T50測定ライトオフ温度は、約208℃~約212℃であり、本明細書における潤滑剤のCO T90測定ライトオフ温度は、約210℃~約218℃であり、本明細書における潤滑剤のC50測定ライトオフ温度は、約388℃~約395℃であり、本明細書における潤滑剤のC90測定ライトオフ温度は、約475℃~約485℃であった。
【0027】
ケイ素の高い処理率はまた、驚くべきことに、少なくとも約120,000マイルの有用ファイル後に、三元触媒の高いレベルの酸素貯蔵容量を維持する。上記のように、酸素貯蔵容量は、エンジンからの排気中の部分燃焼及び/又は未燃焼成分を酸化する触媒の能力であり、一般的に、触媒1グラム当たりの酸素のモル数で報告される。触媒の耐用年数にわたって高い酸素貯蔵容量を維持することが所望され、ケイ素の高い処理率を有する本明細書における潤滑組成物は、酸素貯蔵容量の低下を最小限に抑えた。実施例に示されるように、本明細書における潤滑剤は、少なくとも約120,000マイルの動作後に、約30パーセント未満の酸素貯蔵容量における減少を有したが、ごくわずかなレベルのケイ素(例えば、約10ppm以下)を有する潤滑剤は、酸素貯蔵容量において35パーセントを超える減少を有した。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも約120,000マイル後に、本明細書における潤滑剤は、約0.000180モル酸素/gcat~約0.000190モル酸素/gcatの測定酸素貯蔵容量を達成した。一方、ごくわずかなレベルのケイ素(例えば、約10ppm以下)を有する比較潤滑剤は、0.000161モル酸素/gcatのより低い酸素貯蔵容量を有した。
【0028】
本明細書の実施例に示されるように、ケイ素が、フィルタ又は触媒の性能を低下させると予想されていた、より高いレベルの灰をもたらす可能性が高いので、より高いレベルのケイ素を有する潤滑剤を使用した場合の後処理デバイスの性能における改善は予想外であった。
【0029】
炭化水素燃料
本方法に好適な燃料は、ディーゼルエンジン、ジェットエンジン、又はガソリンエンジンの動作に適用可能であり得る。エンジンとしては、定置型エンジン(例えば、発電設備、ポンプ場などで使用されるエンジン)、及び移動式エンジン(例えば、自動車、トラック、道路を均す機器、軍用車両の原動機として使用されるエンジン)の両方を挙げることができる。例えば、燃料は、ありとあらゆる中間留分燃料、ディーゼル燃料、バイオ再生可能燃料、バイオディーゼル燃料、脂肪酸アルキルエステル、ガス液化(gas-to-liquid、GTL)燃料、ガソリン、ジェット燃料、アルコール、エーテル、灯油、低硫黄燃料、フィッシャー・トロプシュ燃料、液体石油ガス、バンカー重油、石炭液化(coal to liquid、CTL)燃料、バイオマス液化(biomass to liquid、BTL)燃料、高アスファルテン燃料、石炭由来の燃料(天然炭、浄化炭、及びペットコークス)、遺伝子操作されたバイオ燃料及び作物、及びそれらからの抽出物などの合成燃料、並びに天然ガスを挙げることができる。本明細書で使用される「バイオ再生可能燃料」は、石油以外の資源から誘導される任意の燃料を意味すると理解される。このような資源としては、限定されないが、トウモロコシ、メイズ、ダイズ及び他の作物;スイッチグラス、ススキ、及びハイブリッドグラスなどのグラス;藻類、海草、植物油;天然脂肪;及びそれらの混合物が挙げられる。一態様では、バイオ再生可能燃料は、1~約5個の炭素原子を含むものなどのモノヒドロキシアルコールを含むことができる。好適なモノヒドロキシアルコールの非限定的な例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブチルアルコール、アミルアルコール、及びイソアミルアルコールが挙げられる。本明細書における方法に好ましい燃料としては、ガソリン又はディーゼル燃料が挙げられる。
【0030】
本開示の燃料は、1つ以上の添加剤を含み得る。例えば、燃料は、燃料のタイプに適するように、従来の量のセタン価改善剤、オクタン価改善剤、腐食防止剤、低温流動性改善剤(CFPP添加剤)、流動点降下剤、溶媒、解乳化剤、潤滑性添加剤、摩擦調整剤、アミン安定剤、燃焼改善剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性改善剤、金属不活性化剤、マーカー染料、有機ニトラートライトオフ促進剤、環式芳香族マンガントリカルボニル化合物、担体流体などを含有し得る。同様に、燃料は、メタノール、エタノール、ジアルキルエーテル、2-エチルヘキサノールなどの好適な量の従来の燃料ブレンド成分を含んでもよい。
【0031】
いくつかのアプローチでは、脂肪族又は脂環式基が飽和している脂肪族又は脂環式ニトラートを含み、最大約12個の炭素を含有する有機ニトラート着火促進剤を使用し得る。使用され得る有機ニトラート着火促進剤の例は、硝酸メチル、硝酸エチル、硝酸プロピル、硝酸イソプロピル、硝酸アリル、硝酸ブチル、硝酸イソブチル、硝酸sec-ブチル、硝酸tert-ブチル、硝酸アミル、硝酸イソアミル、硝酸2-アミル、硝酸3-アミル、硝酸ヘキシル、硝酸ヘプチル、硝酸2-ヘプチル、硝酸オクチル、硝酸イソオクチル、硝酸2-エチルヘキシル、硝酸ノニル、硝酸デシル、硝酸ウンデシル、硝酸ドデシル、硝酸シクロペンチル、硝酸シクロヘキシル、硝酸メチルシクロヘキシル、硝酸シクロドデシル、硝酸2-エトキシエチル、2-(2-エトキシエトキシ)硝酸エチル、硝酸テトラヒドロフラニルなどである。かかる材料の混合物もまた、使用してもよい。
【0032】
本出願の組成物に有用な好適な任意選択的な金属不活性化剤の例は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,482,357号に開示される。かかる金属不活性化剤としては、例えば、サリチリデン-o-アミノフェノール、ジサリチリデンエチレンジアミン、ジサリチリデンプロピレンジアミン、及びN,N’-ジサリチリデン-1,2-ジアミノプロパンが挙げられる。
【0033】
本出願の組成物に用いられ得る好適な任意選択的な環式芳香族マンガントリカルボニル化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、インデニルマンガントリカルボニル、及びエチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニルが挙げられる。好適な環式芳香族マンガントリカルボニル化合物の更に他の例は、米国特許第5,575,823号及び同第3,015,668号に開示され、これらの開示の両方が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
市販の清浄剤が、本明細書の燃料において使用され得る。かかる清浄剤としては、限定されないが、米国特許出願第13/450,638号に概して記載のスクシンイミド、マンニッヒ塩基清浄剤、PIBアミン、四級アンモニウム塩清浄剤、ビス-アミノトリアゾール清浄剤、及びヒドロカルビル置換ジカルボン酸又は無水物とアミノグアニジンとの反応生成物が挙げられ、米国特許出願第13/240,233号及び同第13/454,697号に概して記載の反応生成物が、1分子当たり1当量未満のアミノトリアゾール基を有する。
【0035】
本明細書における燃料はまた、特定の用途のために必要とされる他の任意選択的な添加剤を含み得、必要とされる1つ以上の解乳化剤、腐食防止剤、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、帯電防止添加剤、曇り除去剤、アンチノック添加剤、潤滑添加剤、及び/又は燃焼改良剤を含み得る。
【0036】
潤滑組成物の基油又は基油ブレンド:
本明細書における潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性ケイ素含有化合物を含む添加剤パッケージと組み合わせた基油又は基油のブレンドを含む。本明細書における基油は、潤滑粘度の1つ以上の油であり得、米国石油協会(AmericanPetroleumInstitute、API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に規定されているAPIグループI~Vの基油のうちのいずれかから選択され得る。いくつかの実施形態では、いくつかのアプローチ又は実施形態において潤滑剤を生成するための任意の選択された基油を含む本明細書における基油ブレンドは、約2~約20cSt、他のアプローチでは、約5~約15cSt、約8~約15cSt、更に他のアプローチでは、約10~約15cStのKV100(ASTM D445)を有する。周知のように、5つの基油グループは、概して、以下の表1に示すとおりである。
【0037】
【表1】
【0038】
グループI、グループII、及びグループIIIは、鉱油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有している。多くのグループVの基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然油であってもよい。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、産業において合成流体と称され得る。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0039】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油ブレンドは、鉱油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド、又はそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。
【0040】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源から誘導されるものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得るか、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0041】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって追加的に処理される。
【0042】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られた油を含み得る。例えば、そのような油には、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、大豆油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合パラフィン-ナフテン型の溶媒処理又は酸処理された鉱物潤滑油が含まれてもよいが、これらに限定されることはない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導された油もまた、有用であり得る。
【0043】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンの三量体若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと称される)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0044】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製され得る。
【0045】
潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得るが、基油の主要な量は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得るが、基油の主要量は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。
【0046】
存在する潤滑粘度の油の量は、100重量%から、粘度指数改善剤及び/又は流動点降下剤及び/又は他のトップ処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を減算した後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「主要量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、又は約90重量%超であり得る。
【0047】
本明細書において概して使用される場合、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、及び「潤滑物」という用語は、同義であり、完全に相互交換可能な用語であると考えられ、上記のブレンド量を有する主要量の基油成分に加えて、少量の清浄剤、及び好ましくは、API GF-6可能である他の任意選択的な成分を含む乗用車モータ油潤滑生成物を指す。
【0048】
潤滑組成物の任意選択的な添加剤:
本明細書における潤滑組成物はまた、性能基準を満たすために、油溶性ケイ素含有化合物に加えて、いくつかの任意選択的な添加剤を含み得る。それらの任意選択的な添加剤は、以下の段落で説明する。
【0049】
分散剤:潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の他の分散剤又はそれらの混合物を含み得る。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰型の分散剤と呼ばれている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合していることを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCによって測定される、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びその調製は、例えば、米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製され得る。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0050】
好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシルアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(tetraethylene pentamine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(triethylene tetramine、TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(pentaethylamine hexamine、PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。
【0051】
好適な重質ポリアミンは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7つ以上の窒素原子を含有し、分子当たり2つ以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%を超える(例えば、>32重量%)の総窒素と、1g当量当たり120~160グラムの当量の重量の一級アミン基と、を含む。
【0052】
いくつかのアプローチでは、好適なポリアミンは、一般的にPAMとして知られており、TEPA及びペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が、ポリアミンの主要部分であり、通常約80%未満である、エチレンアミンの混合物を含有する。
【0053】
典型的には、PAMは、1g当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112gの当量)及び約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6個より多い窒素原子及びより広範な分岐を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成してもよい。
【0054】
ある実施形態では、本開示は、GPCにより判定される場合に、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンに由来する少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を更に含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンが含まれる場合、そのポリイソブチレンは、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有し得る。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより判定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0056】
GPCにより判定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であり得る。このようなHR-PIBは、市販されているか、又はBoerzel,et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau,et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。HR-PIBが上記熱エン反応で使用されるとき、そのHR-PIBは、反応性の増加に起因して、反応中のより高い転化率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0057】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(polyisobutylene succinic anhydride、「PIBSA」)に由来した少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有し得る。
【0058】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の有効成分%は、クロマトグラフィ技術を使用して判定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に記載されている。
【0059】
ポリオレフィンの転化パーセントは、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄の式を用いて、有効成分%から算出される。
【0060】
別途明記しない限り、全てのパーセンテージは、重量パーセントであり、全ての分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)により判定される数平均分子量である。
【0061】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(polyalphaolefin、PAO)無水コハク酸に由来し得る。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーに由来し得る。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。一実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物に由来し得る。
【0062】
好適な種類の窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(olefin copolymer、OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤に由来し得る。官能化OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、及び同第5,075,383号に記載されており、かつ/又は市販されている。
【0063】
好適な分散剤の1つのクラスはまた、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0064】
好適なクラスの分散剤はまた、高分子量エステル又は半エステルアミドであり得る。好適な分散剤はまた、従来の方法により様々な薬剤のうちのいずれかとの反応によって後処理され得る。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
カーボネート及びホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善又は付与するように設計された様々な後処理により後処理、又は更に後処理され得る。このような後処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の欄27~29に要約されたものを含む。そのような処理には、以下による処理が含まれる。無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許第3,403,102号及び同第4,648,980号);有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号);五硫化リン;既に上記したようなホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663及び同第4,652,387号);カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び同第4,948,386号);エポキシドポリエポキシエート又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び同第5,026,495号);アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号);二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号);グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号);尿素、チオ尿素、又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、及び英国特許第1,065,595号);有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第2,140,811号);シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号及び同第3,366,569号);ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号);ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号);アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号);1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号);アルコキシル化アルコール又はフェノールのスルフェート(例えば、米国特許第3,954,639号);環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、及び同第4,971,711号);環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号);窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,140,811号);ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号);ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号);環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、及び同第4,670,170号);窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,440,811号);ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号);ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号);環状カルバメート、環状チオカルバメート、又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び同第4,666,459号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号);酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号);五硫化リン及びポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号);カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号);ヒドラジン及び二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号);アルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号);アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号);ホルムアルデヒド及びフェノール、並びにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸と、それに次ぐジイソシアネートとの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号);リンの無機酸若しくは無水物又はその部分的若しくは全体的硫黄類似体及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号);有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、及びそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択的にそれに続くホウ素化合物、並びにそれに次ぐグルコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号);アルデヒド及びトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号);アルデヒド及びトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号);環状ラクトン及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び同第4,971,711号)。ここで、先に言及した特許は、それらの全体が組み込まれる。
【0066】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油を含まない基準で約10~約65mg KOH/gであり得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0067】
更に他の実施形態では、任意選択的な分散添加剤は、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤であり得る。いくつかのアプローチでは、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させたヒドロカルビル置換アシル化剤に由来し得るが、スクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCによって測定される約250~約5,000の数平均分子量を有する線状又は分岐状ヒドロカルビル基である。
【0068】
いくつかのアプローチでは、分散剤を形成するために使用されるポリアルキレンポリアミンは、以下の式を有し、
【0069】
【化2】
式中、各R及びR’は、独立して、二価C1~C6アルキレンリンカーであり、各R及びRは、独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素原子とともに、1つ以上の芳香環若しくは非芳香環と任意選択的に融合した5員環若しくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。他のアプローチでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0070】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用され得る分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1~約15重量%、又は約0.1~約10重量%、約0.1~8重量%、又は約1~約10重量%、又は約1~約8重量%、又は約1~約6重量%であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。単一の種類又は任意の所望の比の2つ以上の種類の分散剤の混合物が使用され得る。
【0071】
他の酸化防止剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は既知であり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0072】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えばBASFから入手可能なIrganox(登録商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含み得、アルキル基は、約1個~約18個、又は約2個~約12個、又は約2個~約8個、又は約2個~約6個、又は約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、SI Groupから入手可能なEthanox(商標)4716を含んでいてもよい。
【0073】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミン及び高分子量フェノールを含み得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有し得るため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0074】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0075】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、ダイズ油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0076】
別の代替的な実施形態では、酸化防止剤組成物は、上で考察されるフェノール性及び/又はアミン性酸化防止剤に加えて、モリブデン含有酸化防止剤も含有する。これらの3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノールとアミンとモリブデン含有成分の処理率の比は、(0~3):(0~3):(0~3)である。
【0077】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0078】
耐摩耗剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の耐摩耗剤を含有してもよい。好適な耐摩耗剤の例としては、限定されないが、チオリン酸金属;ジアルキルジチオリン酸金属;リン酸エステル又はその塩;リン酸エステル;ホスファイト;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はアミド;硫化オレフィン;例えば、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなどの、チオカルバメート含有化合物;並びにそれらの混合物、が挙げられる。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により完全に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、又は亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであり得る。
【0079】
好適な耐摩耗剤の更なる例としては、チタン化合物、タータラート、タルトリミド(tartrimide)、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。タータラート又はタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有し得るが、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であり得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。
【0080】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0~約15重量%、又は約0.01~約10重量%、又は約0.05~約5重量%、又は約0.1~約3重量%を含む範囲で存在し得る。
【0081】
ホウ素含有化合物:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上のホウ素含有化合物を含有してもよい。ホウ素含有化合物の例としては、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸エポキシド、ホウ酸化清浄剤、及び例えばホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤が挙げられる。ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑油組成物の最大約8重量%、約0.01~約7重量%、約0.05~約5重量%、又は約0.1~約3重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0082】
清浄剤:潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の中性清浄剤、低塩基性清浄剤、又は過塩基性清浄剤、及びこれらの混合物を更に含んでもよい。好適な清浄剤基質としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な清浄剤及びその調製方法は、米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。
【0083】
清浄剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属で塩化され得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、バリウムを含まない。いくつかの実施形態では、清浄剤は、マグネシウム又はカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、又は10ppm以下などの量で含有し得る。好適な清浄剤としては、石油スルホン酸及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルである長鎖モノ-又はジ-アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が挙げられ得る。好適な清浄剤の例としては、カルシウムフェネート、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0084】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基質及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0085】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホネート、カルボキシレート、及びフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「標準塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。標準塩又は中性塩では、金属比(MR)は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。それらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、又はフェノールの塩であり得る。
【0086】
潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mgKOH/g以上、又は更なる例として、約250mgKOH/g以上、若しくは約350mgKOH/g以上、若しくは約375mgKOH/g以上、若しくは約400mgKOH/g以上の総塩基価(total base number、TBN)を有し得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定されている。
【0087】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ-及び/又はジ-チオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ-及び/又はジ-チオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0088】
過塩基性カルシウムフェネート清浄剤は、全てASTM D2896の方法によって測定される、少なくとも約150mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g、少なくとも約225~約400mgKOH/g、少なくとも約225~約350mgKOH/g、又は約230~約350mgKOH/gの総塩基価を有する。かかる清浄剤組成物が、不活性希釈剤、例えば、プロセス油、多くの場合、鉱油中で形成されるとき、総塩基価は、希釈剤、及び清浄剤組成物に含まれ得る任意の他の材料(例えば、促進剤など)を含む全体組成物の塩基性を反映する。
【0089】
過塩基性清浄剤は、1.1:1以上、又は2:1以上、又は4:1以上、又は5:1以上、又は7:1以上、又は10:1以上の金属対基質比を有し得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、エンジン、又はトランスミッション若しくはギアなどの他の自動車部品内の錆を低減又は防止するのに有効である。清浄剤は、潤滑組成物中に、約0~約10重量%、又は約0.1~約8重量%、又は約1~約4重量%、又は約4重量%超~約8重量%で存在し得る。
【0090】
極圧剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の極圧剤を含有してもよい。油に可溶性である極圧(Extreme Pressure、EP)剤は、硫黄及びクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、並びにリンEP剤を含む。このようなEP剤の例としては、塩素化ワックス;ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、及び硫化ディールス・アルダー付加物などの有機スルフィド及びポリスルフィド;硫化リンとテルペンチン又はオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;ジヒドロカルビル及びトリヒドロカルビルホスファイト、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイトなどのリン酸エステル;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、及びポリプロピレン置換フェニルホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメート及びバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0091】
摩擦調整剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の摩擦調整剤を含有してもよい。好適な摩擦調整剤には、金属を含有する及び金属を含まない摩擦調整剤が含まれ得るが、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル又は部分エステルなどが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0092】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有し得るが、飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、又はジ-エステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0093】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれ得る。かかる摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されたエステルを含み得、概して、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate、GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載される。
【0094】
アミン性摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含み得る。そのような化合物は、線状の、飽和若しくは不飽和又はそれらの混合物のいずれかであるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、線状の、飽和、不飽和、又はそれらの混合物のいずれかのヒドロカルビル基を有し得る。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0095】
アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に記載される。
【0096】
摩擦調整剤は、任意選択的に、約0~約10重量%、又は約0.01~約8重量%、又は約0.1~約4重量%などの範囲内で存在し得る。
【0097】
モリブデン含有成分:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上のモリブデン含有化合物を含有してもよい。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的性能を有し得る。油溶性モリブデン化合物には、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィナート、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンタート、モリブデンチオキサンタート、モリブデンスルフィド、モリブデンカルボキシレート、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物が含まれ得る。硫化モリブデンとしては、二硫化モリブデンが挙げられる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態にあり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデン化合物のアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。
【0098】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.製のMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000、Molyvan(登録商標)855、Molyvan(登録商標)1055、及びMolyvan(登録商標)3000など、並びにAdeka Corporationから入手可能なAdeka Sakura-Lube(登録商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商標名で販売されている市販の材料、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、米国特許第5,650,381号、米国再発行特許第37,363(E1)号、同第38,929(E1)号、及び同第40,595(E1)号に記載されており、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブレート、ナトリウムモリブレート、カリウムモリブレート、並びに他のアルカリ金属モリブレート及び他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブレート、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン又は類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、及び同第4,259,194号、並びに国際公開第94/06897号に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができ、前述の特許文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、例えば、式Moの化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、化合物を油に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変化し、Qは、中性電子供与性化合物、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルの群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。少なくとも21個の総炭素原子、例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が、全ての配位子の有機基の間に存在し得る。追加の好適なモリブデン化合物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0101】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5~約2000ppm、約1~約700ppm、約1~約550ppm、約5~約300ppm、又は約20~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0102】
遷移金属含有化合物:別の実施形態では、油溶性化合物は、遷移金属含有化合物又は半金属であってもよい。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されることはない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0103】
ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、又はこれらの機能のうちの2つ以上として機能し得る。ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であり得る。本開示の技術の油溶性材料の調製において使用され得るか、又はそのために使用され得るチタン含有化合物の中には、酸化チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物;硫化チタン(IV);硝酸チタン(IV);チタン(IV)アルコキシド、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド;及び他のチタン化合物又は錯体、例えば、限定されないが、チタンフェネート;チタンカルボキシレート、例えばチタン(IV)2-エチル-1,3-ヘキサンジオエート又はチタンシトレート又はチタンオレエート;及びチタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシドが挙げられる。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)及びチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、又は一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸材料との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、及びグリコールに由来し得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体又はオリゴマー形態でも存在し得る。そのようなチタン材料は、市販されているか、又は当業者に明白である適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に依存して、固体又は液体として室温で存在し得る。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供され得る。
【0104】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。そのような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(又はアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製され得る。得られたチタネート-スクシネート中間体は、直接使用され得るか、又は(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤;(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわち、アルケニル(若しくはアルキル)無水コハク酸及びポリアミン;(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、若しくはそれらの混合物との反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤などのいくつかの材料のうちのいずれかと反応され得る。代替的に、チタネート-スクシネート中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール若しくはポリオール、又は脂肪酸などの他の薬剤と反応され得るが、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用され得るか、又は上述のようにコハク酸分散剤と更に反応され得る。例として、チタン変性分散剤又は中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応され得る。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸及びポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤と更に反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成し得る。
【0105】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドとC~C25カルボン酸との反応生成物であり得る。反応生成物は、以下の式:
【0106】
【化3】
(式中、nは、2、3、及び4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である)によって表され得るか、又は以下の式:
【0107】
【化4】
(式中、m+n=4であり、nは、1~3の範囲であり、Rは、1~8の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R及びRは、同一若しくは異なり、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される)によって表され得るか、又は、チタン化合物は、以下の式:
【0108】
【化5】
(式中、xは、0~3の範囲であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R、及びRは、同一若しくは異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、Rは、H、C~C25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される)によって表され得る。
【0109】
好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0110】
一実施形態では、油溶性チタン化合物は、0~3000重量ppmのチタン、又は25~約1500重量ppmのチタン、又は約35重量ppm~約500重量ppmのチタン、又は約50重量ppm~約300重量ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0111】
粘度指数改善剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の粘度指数改善剤を含有してもよい。好適な粘度指数改良剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改善剤は星型ポリマーを含み得、好適な例は米国特許出願公開第20120101017(A1)号に記載されている。
【0112】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、粘度指数改良剤に加えて、又は粘度指数改良剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改良剤も含有し得る。好適な粘度指数改良剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0113】
粘度指数改善剤及び/又は分散性粘度指数改善剤の総量は、潤滑油組成物の約0~約20重量%、約0.1~約15重量%、約0.1~約12重量%、又は約0.5~約10重量%であり得る。
【0114】
他の任意選択的な添加剤:他の添加剤は、潤滑流体に必要とされる1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。
【0115】
本開示に従う潤滑油組成物は、任意選択的に他の性能添加剤を含み得る。他の性能添加剤は、本開示の特定の添加剤に対する追加であり得るが、かつ/又は金属不活性化剤、粘度指数改善剤、清浄剤、無灰TBNブースタ、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散性粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有することになる。
【0116】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択的に酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0117】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0118】
好適な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物を含み得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0119】
好適な防錆剤は、鉄金属表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用なタイプの酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な防錆剤は、高分子量の有機酸である。
【0120】
防錆剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0~約5重量%、約0.01~約3重量%、約0.1~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0121】
一般的に言えば、本明細書における清浄剤金属を含む好適な潤滑剤は、以下の表に列挙する範囲の添加剤成分を含み得る。
【0122】
【表2】
【0123】
上記各成分のパーセンテージは、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残りは、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。完全配合潤滑剤は、その配合物において必要とされる特徴を供給する分散剤/抑制剤パッケージ又はDIパッケージと本明細書で称される添加剤パッケージを慣用的に含有する。
【0124】
定義
本開示の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従って識別される。追加的に、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausolito:1999、及び「March’s Advanced Organic Chemistry」,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
本明細書に記載されるように、化合物は、上で概して例解されるように、又は特定のクラス、サブクラス、及び本開示の種によって例示されるように、1つ以上の置換基で任意選択的に置換され得る。
【0126】
その内容から特に明らかでない限り、「多量」という用語は、組成物の総重量に対して、50重量パーセント以上、例えば、約80~約98重量パーセントの量を意味すると理解される。また、本明細書で使用される場合、「少量」という用語は、組成物の総重量に対して50重量パーセント未満の量を意味すると理解される。
【0127】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル基」又は「ヒドロカルビル」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主として炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)置換基、脂環族(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、及び芳香族置換、脂肪族置換、並びに脂環族置換された芳香族置換基、並びに環が、分子の別の部分を介して完成する(例えば、2つの置換基が一緒になって脂環族ラジカルを形成する)環状置換基;(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本明細書の説明の文脈において、主に炭化水素置換基を変化させない非炭化水素基(例えば、ハロ(特に、クロロ及びフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノ、及びスルホキシ)を含有する置換基;(3)ヘテロ置換基、すなわち、本説明の文脈において、主に炭化水素の特性を有する一方で、環又は鎖中に炭素以外のものを含有し、それ以外は炭素原子から構成された置換基、が挙げられる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、及び窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニル、及びイミダゾリルなどの置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個毎に2個以下、又は更なる例として、ただ1個の非炭化水素置換基が存在し、いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は、存在しないであろう。
【0128】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルという用語を包含し、それらの各々は、以下に記載されるように任意選択的に置換されている。
【0129】
本明細書で使用される場合、「アルキル」基は、1~12個(例えば、1~8個、1~6個、又は1~4個)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直線状又は分岐状であり得る。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、又は2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、又はヘテロ脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロシクロ脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、又はヒドロキシで、置換され(すなわち、任意選択的に置換され)得る。限定するものではないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、及びアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキル、又はハロアルキルが挙げられる。
【0130】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6、又は2~4個)の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基を指す。アルキル基のように、アルケニル基は、直線状又は分岐状であり得る。アルケニル基の例としては、限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニル、及び2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、ヘテロ脂環式アミノ、又は脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO-、脂環式-SO-、又はアリール-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、又はヒドロキシで任意選択的に置換され得る。限定するものではないが、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニル、又はハロアルケニルが挙げられる。
【0131】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」基は、2~8個(例えば、2~12、2~6、又は2~4)の炭素原子を含有し、少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基を指す。アルキニル基は、直線状又は分岐状であり得る。アルキニル基の例としては、限定されないが、プロパルギル及びブチニルが挙げられる。アルキニル基は、1つ以上の置換基で、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニル又は脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニル又は脂環式スルフィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-、脂肪族アミノ-SO-、又は脂環式-SO-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(脂環式)カルボニル又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ、又は(ヘテロアリール)アルコキシで任意選択的に置換することができる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「アミノ」基とは、-NRを指し、式中、R及びRの各々は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(アルキル)カルボニル、(シクロアルキル)カルボニル、((シクロアルキル)アルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(アラルキル)カルボニル、(ヘテロシクロアルキル)カルボニル、((ヘテロシクロアルキル)アルキル)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、又は(ヘテロアラルキル)カルボニルであり、それらの各々は、本明細書に定義されており、任意選択的に置換されている。アミノ基の例には、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はアリールアミノが挙げられる。「アミノ」という用語が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではない場合、それは-NR-によって表される。Rは、上記で定義されたものと同義である。
【0133】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」基は、3~10個(例えば、5~10個)の炭素原子の飽和炭素環式単環式又は二環式(融合又は架橋)環を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュービル、オクタヒドロインデニル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、又は((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0134】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員の単環式又は二環式(融合又は架橋)(例えば、5~10員の単環式又は二環式)飽和環構造を指し、環原子のうちの1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、又はそれらの組み合わせ)である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、及び2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.0]ノニルが、挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロアリール類として分類されるであろうテトラヒドロイソキノリンのような構造を形成するためにフェニル部分と融合させることができる。
【0135】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」基は、単環式、二環式又は4~15個の環原子を有する三環式環系を指し、1個以上の環原子がヘテロ原子であり(例えば、N、O、S、又はそれらの組み合わせ)、単環式環系は香族であるか、又は二環式若しくは三環式環系中の環のうちの少なくとも1つは芳香族である。ヘテロアリール基は、2~3の環を有するベンゾ融合環系を含む。例えば、ベンゾ融合基は、1又は2個の4~8員複素脂環式部分(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル又はイソキノリニル)と縮合したベンゾを含む。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾリル、又は1,8-ナフチリジルである。
【0136】
限定するものではないが、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、又は1,3,5-トリアジルが挙げられる。単環式ヘテロアリール類は、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0137】
二環式ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジル、又はプテリジル(pteridyl)が挙げられる。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0138】
本明細書で使用される場合、「処理率」という用語は、最終潤滑剤又は乗用車モータ油中の成分の重量パーセントを指す。
【0139】
重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)及び数平均分子量(number average molecular weight、Mn)は、Watersから得られるゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)機器又は同様の機器と、Waters Empower Software又は同様のソフトウェアとを用いて判定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択的な機器)が提供され得る。GPCの作動条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒径5μ、及び細孔径の範囲100~10000Å)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、960~1,568,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリ(メチルメタクリレート)(poly(methyl methacrylate)、PMMA)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPMMA標準を、THFに溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、追加的に、分子量分布情報を提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0140】
以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供される。
【0141】
本明細書で使用されるとき、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、及び「潤滑剤」という用語は、同義の完全に互換的な用語と考えられ、主要量の基油と少量の添加剤組成物とを含む完成した潤滑生成物を指す。
【0142】
本明細書で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、及び「添加剤組成物」という用語は、主要量の基油ストック混合物を除外する潤滑油組成物の一部分を指す、同義の完全に互換性のある用語であると考えられる。
【0143】
「過塩基性」という用語は、別段の指定がない限り、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホネート、カルボキシレート、サリチレート、及び/又はフェネートの金属塩などの金属塩を指す。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「標準塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。標準塩又は中性塩では、金属比(MR)は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチレート、スルホネート、及び/又はフェノールの塩であってもよい。
【0144】
「アルカリ土類金属」という用語は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、及びストロンチウムに関し、「アルカリ金属」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを指す。
【0145】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「ヒドロカルビル」又は「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基から独立して選択され、置換炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個毎に存在する。いくつかの実施形態では、ヒドロカルビルは、「アルキル」という用語を含む。本明細書で用いられるような「アルキル」という用語は、別段の指定がない限り、約1~約100個の炭素原子の直線状、分岐状、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。本明細書で用いられるような「アルケニル」という用語は、約3~約10個の炭素原子の直線状、分岐状、環状、及び/又は置換不飽和鎖部分を指す。本明細書で用いられるような「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又は限定されないが、窒素、酸素、及び硫黄を含むヘテロ原子を含むことができる単環式及び多環式の芳香族化合物を指す。
【0146】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「ヒドロカルビレン置換基」又は「ヒドロカルビレン基」という用語は、当業者に周知であるその通常の意味で使用される。具体的には、分子の2つの場所で炭素原子によって分子の残りの部分に直接結合し、主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビレン基は、二価炭化水素置換基から独立して選択され、置換二価炭化水素置換基は、ハロ基、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビレン基中の炭素原子10個毎に存在する。
【0147】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」という用語は、他に明確に述べられていない限り、記載された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0148】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤が可溶性、溶解性、混和性、又は油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0149】
本明細書で用いられるような「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される場合、総塩基価をmg KOH/gで示すために使用される。
【実施例
【0150】
本開示及びその多くの利点のより良い理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は例解的なものであり、範囲又は趣旨のいずれにおいてもそれを限定するものではない。当業者であれば、これらの実施例に記載されている構成要素、方法、ステップ、及びデバイスの変形形態を使用することができることを容易に理解するであろう。特に明記しない限り、又は以下の実施例及び本開示を通して考察の文脈から明らかでない限り、本開示に記載する全てのパーセンテージ、比、及び部は、重量基準である。本明細書において、KV100は、ASTM D445に従って測定された。
【0151】
実施例1
本発明の潤滑剤及び比較潤滑剤を使用して、図1の速度対時間のグラフに例示された駆動サイクルに概して従って、約125,000マイルの車両動作後の三元触媒の性能を評価した。本発明の潤滑剤及び比較潤滑剤を、L4-1.4Lターボエンジンを有する2018年モデルのChevy Cruzにおいて使用した。評価を通して、各本発明の潤滑剤又は比較潤滑剤を、試験中、5000マイル毎に変更し、新しい本発明の潤滑剤又は比較潤滑剤と交換した。
【0152】
比較潤滑剤は、基油ブレンド、DIパッケージ、並びに分散剤、ホウ酸化分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、清浄剤、摩耗防止剤、流動点降下剤、及び消泡剤を含む乗用車モータ油として配合された粘度指数改善剤を含んでいた。比較潤滑剤は、約6ppmでごくわずかなレベルのケイ素を有した。本発明の潤滑剤は、比較潤滑剤と同一であったが、本発明の潤滑剤に約200ppmのケイ素を提供する約0.27重量パーセントのヘキサデシルトリメトキシシランでトップ処理された。
【0153】
実施例2
初期BET表面積を、脱グリーン化三元触媒について測定し(およそ7,000マイルの実世界動作)、特定の駆動サイクルを使用する125,000マイルの動作後に、本発明の潤滑剤又は比較潤滑剤のいずれかで潤滑された燃焼エンジンからの排気ガスに曝露した後の、実施例1の本発明の車両及び比較車両からの使用済み触媒のBET表面積と比較した。表面積は、Southwest Research Instituteで測定した。結果を、以下の表3及び図2において提供される。
【0154】
【表3】
表面積の低減%は、初期(又は脱グリーン化)表面積に対する試験終了時の表面積である。
【0155】
実施例3
酸素貯蔵容量を、脱グリーン化三元触媒に関して測定し(およそ7,000マイルの実世界動作)、125,000マイルの動作後の本発明の潤滑剤又は比較潤滑剤のいずれかを使用する実施例1の本発明の車両及び比較車両からの触媒の酸素貯蔵容量と比較した。酸素貯蔵容量は、Southwest Research Instituteで測定された。結果は、以下の表4及び図3において提供される。
【0156】
【表4】
酸素貯蔵容量(oxygen storage capacity、OSC)の低減%は、初期(又は脱グリーン化)OSCに対する試験終了時OSCである。
【0157】
実施例4
ライトオフ温度を、脱グリーン化三元触媒に関して測定し(およそ7,000マイルの実世界動作)、125,000マイルの動作後の本発明の潤滑剤又は比較潤滑剤のいずれかを使用する実施例1の本発明の車両及び比較車両からの触媒のライトオフ温度と比較した。ライトオフ温度は、Southwest Research Instituteで測定した。結果は、以下の表5及び図4に提供される。
【0158】
【表5】
温度変化%は、初期(又は脱グリーン化)温度に対する試験終了温度である。
【0159】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0160】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0161】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0162】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0163】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0164】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0165】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4