(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】単一細胞遺伝子プロファイリングのための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20250821BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250821BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250821BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20250821BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20250821BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20250821BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20250821BHJP
C12Q 1/6834 20180101ALI20250821BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20250821BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12Q1/02
C12Q1/686 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6834 Z
C12Q1/6813 Z
(21)【出願番号】P 2022542923
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 US2021013042
(87)【国際公開番号】W WO2021146166
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2024-01-04
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】フォンタネス, クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】メルツァー, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シュエ, イー
(72)【発明者】
【氏名】ダマト, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】キアニ, セファー
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522867(JP,A)
【文献】国際公開第2019/139650(WO,A2)
【文献】Analytical Chemistry,2018年07月23日,Vol. 90,p.9813-9820
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
C12M1/00-3/10
C12N15/00
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一細胞分析のための方法であって、前記方法は、
テンプレート粒子と標的細胞とを、第1の流体中で合わせる工程
であって、前記テンプレート粒子の各々は、
複数の第1の捕捉プローブであって、前記第1の捕捉プローブの各々は、ユニバーサルプライマー配列、少なくとも1個の第1のバーコード、ならびにポリTヌクレオチド配列、遺伝子特異的ヌクレオチド配列、およびランダムヌクレオチド配列からなる群から選択される捕捉配列を含む、複数の第1の捕捉プローブと、
複数の第2の捕捉プローブであって、前記第2の捕捉プローブの各々は、テンプレートスイッチングオリゴ(TSO)および少なくとも1個の第2のバーコードを含む、複数の第2の捕捉プローブと
を含む、工程;
第2の流体を前記第1の流体に添加する工程;
前記
第1の流体
および前記第2の流体を剪断して、前記テンプレート粒子のうちのただ1個および前記標的細胞のうちのただ1個を含む複数の単分散性液滴を同時に生成する工程;
前記単分散性液滴内に含まれる単一の標的細胞の各々を溶解して、複数の別個のmRNA分子を放出する工程;ならびに
前記複数の別個のmRNA分子を定量する工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記複数の別個のmRNA分子を定量した後に、前記単一の標的細胞の各々の発現プロフィールを生成する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液滴内部の前記複数の別個のmRNA分子を逆転写する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の流体は、水性流体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の流体は、油を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記
第1の流体
および前記第2の流体を剪断する工程は、ボルテクサーまたはピペットで移す操作のうちの一方を使用する工程を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記テンプレート粒子は、
前記テンプレート粒子内に1またはこれより多くの
内部区画をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1またはこれより多くの
内部区画は、
前記1またはこれより多くの内部区画内に溶解試薬、核酸合成試薬、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される試薬を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸合成試薬は、ポリメラーゼを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試薬は、外部刺激に応じて前記1またはこれより多くの
内部区画から放出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記mRNAは、前記単一の標的細胞からの放出の際に、前記ポリTヌクレオチド配列にハイブリダイズすることによって、前記テンプレート粒子に結合する、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記テンプレート粒子に結合した前記mRNAは、cDNAおよび前記
第1のバーコー
ドを含む第1鎖を生成するために逆転写される、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
PCRによって前記第1鎖を増幅して、アンプリコンを生成する工程を包含する、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記テンプレート粒子に結合した前記mRNAは、
前記TSOを使用して逆転写される、請求項1
1に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の別個のmRNA分子を定量する工程は、前記アンプリコンを配列決定することを包含する、請求項1
3に記載の方法。
【請求項16】
希な細胞タイプは、がん細胞である、請求項1
3に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法における使用のためのキットであって、前記キットは、
前記テンプレート粒子を含むチューブであって、前記テンプレート粒子は、
前記複数の第1および第2の捕捉
プローブ、および
内部区画内に試薬を含む
、前記テンプレート粒子内の内部区画を含む
、チューブ、
を含むキット。
【請求項18】
前記試薬は、逆転写酵素である、請求項1
7に記載のキット。
【請求項19】
前記捕捉配列は、発癌遺伝子から転写されるmRNAに相補的である、請求項1
7に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、単一細胞遺伝子プロファイリングのための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
生物学的系の複雑さは、それらを特徴づけるために多くの実験を必要とする。ハイスループット方法はしばしば、行われる必要がある個々の実験の回数を低減するために実行される。不運なことに、単一細胞のハイスループット分析のため方法は、単一細胞を単離し、ライブラリーを調製することと関連するコストによって制約されている。
【0003】
単一細胞を単離するための方法は一般に、使用するには複雑でかつ操作するには高価な微小流体デバイスを要求する。さらに、細胞が個々に処理されることから、微小流体デバイスは、所定の実験においてアッセイされ得る細胞数に関して本質的に制限を受ける。そしてこのようなことから、ハイスループット単一細胞システムは、多くの臨床施設および研究施設では利用不能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本開示は、微小流体デバイスなしに、標的細胞の単一細胞分析(単一細胞トランスクリプトーム分析を含む)のための方法およびシステムを提供する。本発明の方法およびシステムは、個々の標的細胞を単分散性液滴へと分離するために、テンプレート粒子を有するエマルジョンを生成する。核酸分子は、単分散性液滴の内部で上記標的細胞から放出され、上記標的細胞の各々に関する発現プロフィールを生成するために定量される。このアプローチは、単一ライブラリー調製に伴って、数百万の単一細胞の発現プロフィールを確認するために、安価でかつスケール調整可能な大規模並行分析ワークフローを提供する。
【0005】
本発明の方法およびシステムは、テンプレート粒子を使用して、単分散性液滴の形成をテンプレートとし、遺伝子プロファイリングのために標的細胞を単離する。方法は、テンプレート粒子と標的細胞とを第1の流体中で合わせる工程、第2の流体を上記第1の流体に添加する工程、上記流体を剪断して、複数の単分散性液滴を同時に生成する工程であって、ここで上記単分散性液滴の各々は、上記テンプレート粒子のうちのただ1個および上記標的細胞のうちのただ1個を含む工程を包含する。方法は、上記単分散性液滴内の上記標的細胞を溶解して、複数の別個のmRNA分子を放出する工程、および上記複数の別個のmRNA分子を定量する工程をさらに包含する。上記mRNAを定量することによって生成されるデータは、上記標的細胞の各々に関する発現を作成するために使用される。方法はさらに、上記発現プロフィールを処理して、例えば、診断を行う、予後を予測するか、または薬物有効性を決定するために使用され得る上記標的細胞の特性を同定する工程を包含する。
【0006】
本発明の方法およびシステムは、標的細胞の遺伝子発現を定量するための方法を提供する。上記方法は、単分散性液滴の内部で標的細胞からmRNAを放出する工程を包含する。上記mRNAは、cDNAへと逆転写され得、同時にバーコード付与され得る。上記バーコード付与されたcDNAは、複数のバーコード付与されたアンプリコンを生成するために増幅される。上記アンプリコンは、次世代シーケンシング法によって配列決定され得、バーコードが原因で、各配列リードは、上記標的細胞に戻ってトレースされ得る。上記配列リードは、上記標的細胞に関して発現プロフィールを生成するためにある特定のコンピューターアルゴリズムによって処理される。
【0007】
発現プロフィールを標的細胞から得た後で、上記プロフィールは、上記プロフィールと参照またはコントロールプロフィールとを比較して、標的細胞についての情報を確認することによって分析され得る。他の場合には、標的細胞のプロフィールは、標的細胞が、上記表現型の細胞の特性を共有するか否かを決定するために、ある種の表現型を有する細胞に由来するプロフィールと比較され得る。
【0008】
1つの局面において、本発明の方法およびシステムは、不均一細胞集団における希な細胞の存在を同定するための方法を提供する。上記方法は、標的細胞と複数のテンプレート粒子とを第1の流体中で合わせ、上記第1の流体と非混和性の第2の流体を添加し、そして上記流体を剪断して、標的細胞および単一テンプレート粒子を含む単分散性液滴を含むエマルジョンを生成することによって、複数の標的細胞を単離する工程を包含する。方法はさらに、上記標的細胞を含む液滴の内部で複数のmRNA分子を放出する工程、および上記複数のmRNA分子を定量する工程を包含する。定量する工程は、上記mRNAを、バーコード付与されているcDNAへと逆転写する工程を包含し得る。上記バーコード付与されたcDNAは、上記標的細胞に戻ってトレースされ得る複数のバーコード付与されたアンプリコンを生成するために増幅され得る。場合によっては、方法は、配列リードを生成するために、例えば、次世代シーケンシング法によって複数のバーコード付与されたアンプリコンを配列決定する工程を包含し得る。方法は、上記配列リードを処理して、各標的細胞に関する発現プロフィールを生成する工程、および例えば、遺伝子クラスター化分析を行って、上記標的細胞の中で1もしくはこれより多くの細胞タイプまたは細胞状態を同定することによって、上記データを使用する工程をさらに包含し得る。
【0009】
別の局面において、本開示の方法およびシステムは、被験体から採取される不均一腫瘍生検物を分析するための方法を提供する。上記方法は、患者から生検物を得る工程、および上記生検物から細胞の集団を単離する工程を包含する。上記方法はさらに、上記細胞の集団および複数のテンプレート粒子、水性流体の混合物を作製し、油を添加し、上記混合物をボルテックスして、各々が上記細胞の集団のうちのただ1個およびテンプレート粒子を含む液滴を含むエマルジョンを生成することによって、上記細胞の集団を液滴へと分離する工程を包含する。方法はさらに、mRNAを、液滴の内部で上記細胞のうちの各1個から放出する工程、および1またはこれより多くの遺伝子に対してトランスクリプトーム分析を行う工程を包含する。1またはこれより多くの遺伝子の分析は、がんの1またはこれより多くの特性を同定するために使用され得る。がんの特性は、がんと関連する1またはこれより多くの遺伝子転写物の存在または非存在であり得る。本明細書で開示される方法は、がんを有する被験体を診断し、処置プランを考案するために上記特徴を使用する工程をさらに包含し得る。
【0010】
いくつかの局面において、本発明の方法およびシステムは、治療剤の潜在的有効性を決定するための方法を提供する。上記方法は、病的な細胞の第1の集団を、テンプレート粒子を有する液滴へと分離する工程、および上記病的な細胞のうちの少なくとも1個からの遺伝子発現を決定し、それによって、疾患状態の発現シグナチャーを生成する工程を包含する。上記方法はさらに、疾患状態の細胞の第2の集団を薬剤へと曝す工程、および細胞の第2の集団の遺伝子発現を決定する工程、および上記遺伝子発現と上記疾患状態の発現シグナチャーとを比較して、1またはこれより多くの遺伝子の発現のレベルの上昇または抑制に基づいて、上記疾患に対する上記薬剤の有効性を確認する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記治療剤は、上記液滴の内部で細胞の第2の集団に送達され得る。例えば、上記薬剤は、上記テンプレート粒子の外側表面に上記薬剤を繋留するか、または上記テンプレート粒子の区画の内部に上記薬剤をパッケージし、上記液滴の内部で上記テンプレート粒子から上記薬剤を放出することによって、上記テンプレート粒子と会合され得る。
【0011】
ある特定の局面において、本発明の方法およびシステムは、細胞を液滴へと分離するための方法を提供する。上記液滴は、エマルジョンとして、例えば、非混和性相キャリア流体(例えば、フルオロカーボン油、シリコーン油、または炭化水素油)の中に分散された水性相流体として調製され得るか、または逆もまた同様である。概して、上記液滴は、2つの液相を剪断することによって形成される。剪断する工程は、溶液を混合するために、ボルテックスする、振盪する、弾く(flicking)、撹拌する(stirring)、ピペットで移す、または任意の他の類似の方法のうちのいずれか1つを包含し得る。本発明の方法は、細胞とテンプレート粒子とを第1の流体中で合わせる工程、第2の流体を添加する工程、および上記第1のおよび第2の流体を剪断またはかき混ぜる工程を包含する。好ましくは、上記第1の流体は、水性相流体であり、いくつかの実施形態において、例えば、緩衝液、水、溶解性酵素(例えば、プロテイナーゼk)および/または他の溶解試薬(例えば、Triton X-100、Tween(登録商標)-20、IGEPAL、またはこれらの組み合わせ)、核酸合成試薬(例えば、核酸増幅試薬または逆転写ミックス、またはこれらの組み合わせ)から選択される試薬を含み得る。
【0012】
本発明の方法およびシステムは、単分散性液滴の形成をテンプレートとし、標的細胞を単離するために、テンプレート粒子を使用する。本発明の局面に従うテンプレート粒子は、例えば、アガロース、アルギネート、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド(PAA)、アクリレート、アクリルアミド/ビスアクリルアミドコポリマーマトリクス、アジド改変PEG、ポリリジン、ポリエチレンイミン、およびこれらの組み合わせから選択されるヒドロゲルを含み得る。ある特定の場合には、テンプレート粒子は、標的細胞に対して増強された親和性を提供するような形状にされ得る。例えば、上記テンプレート粒子は、概して球状であり得るが、その形状は、テンプレート粒子の形状が上記標的細胞を含む液滴をテンプレート化する確率を増大させるように、上記標的細胞との会合を促進する球状の形状における、平らな表面、クレーター(crater)、溝、突出部、および他の不規則性のような外形を含み得る。
【0013】
いくつかの局面において、本発明の方法およびシステムは、1またはこれより多くの内部区画を含むテンプレート粒子を提供する。上記内部区画は、外部刺激に際して放出可能である試薬または化合物を含み得る。上記テンプレート粒子によって含まれる試薬としては、例えば、細胞溶解試薬または核酸合成試薬(例えば、ポリメラーゼ)が挙げられ得る。上記外部刺激は、熱、浸透圧、浸透圧、または酵素であり得る。例えば、場合によっては、本発明の方法は、mRNAを含む液滴の内部で直接、逆転写酵素を放出する工程を包含する。
【0014】
いくつかの局面において、本発明の方法およびシステムは、単一細胞のトランスクリプトームを分析するためのライブラリー調製法を提供する。方法は、液滴の内部に含まれる単一標的細胞からmRNAを放出する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記放出されたmRNAは、相補的塩基対合を介してテンプレート粒子に結合されたバーコード付与された捕捉プローブのポリT配列に結合する。あるいは、上記放出されたRNAは、上記バーコード付与された捕捉プローブの遺伝子特異的配列に結合する。上記mRNA分子と上記捕捉プローブとの結合の後に、逆転写酵素は、cDNAを合成し、それによって、cDNAおよび上記捕捉プローブ配列を含む第1鎖を作製する。次いで、上記mRNA分子第1鎖ハイブリッドは、当該分野で公知の任意の方法(例えば、変性する温度への曝露)を使用して変性される。次の工程では、ランダムヘキサマー配列を含む第2鎖プライマーは、上記第1鎖とアニールして、DNA-プライマーハイブリッドを形成する。DNAポリメラーゼは、相補的な第2鎖を合成する。場合によっては、上記第2鎖は、複数のアンプリコンを生成するために、例えば、PCRによって増幅される。上記アンプリコンは、上記単一細胞の発現プロフィールを確認するために分析される。
【0015】
ある特定の局面において、本開示は、本発明の方法に従う単一細胞プロファイリングのためのキットを提供する。上記キットは、1またはこれより多くの目的の遺伝子に対して特異的な複数の捕捉配列を含むテンプレート粒子を含む。上記キットによって提供される説明書に従う研究者は、テンプレート粒子を使用して、目的の具体的遺伝子(例えば、発癌遺伝子)の単一細胞発現をアッセイし得る。上記キットは、本開示全体を通じて(例えば、
図1において)記載される方法に従う単一細胞プロファイリングを可能にし得る。テンプレート粒子は、ユーザーの具体的なニーズのために特注で設計され得る(例えば、ある特定の目的の遺伝子(例えば、発癌遺伝子)に対して特異的な捕捉プローブ配列を含むように設計され得る)。上記テンプレート粒子は、サンプル調製チューブ、またはサンプル収集チューブ(例えば、血液回収チューブ)の内部で輸送され得る。上記テンプレート粒子は、好ましくは、乾燥した形式にあり得る。上記キットは、試薬(例えば、細胞溶解試薬、および核酸合成試薬)をさらに含み得る。
【0016】
他の局面において、本発明の方法およびシステムは、単一細胞のトランスクリプトームに関するデータを収集する方法を提供する。上記方法は、単分散性液滴の内部で単一細胞から複数の別個のmRNA分子を放出する工程、および上記単一細胞のトランスクリプトームに関するデータを収集する工程、および上記データをコンピューターに送る工程を包含する。コンピューターは、配列決定装置に接続され得る。上記トランスクリプトームに対応するデータはさらに、送った後に保存され得、例えば、上記データは、コンピューターから取り出され得るコンピューター可読媒体上に保存され得る。データは、例えば、インターネットを介して、コンピューターから遠隔地へと伝送され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、単一細胞プロファイリングのための方法を図で示す。
【
図2】
図2は、本発明の1つの局面に従う液滴を図示する。
【
図3】
図3は、標的細胞の溶解後の液滴を図示する。
【
図5】
図5は、第1鎖を形成するためのcDNAの合成を図示する。
【
図6】
図6は、アンプリコンを生成するための第1鎖の増幅を図示する。
【
図7】
図7は、mRNAの配列特異的捕捉のための方法を図示する。
【
図8】
図8は、第1鎖を形成するためのcDNAの合成を図示する。
【
図9】
図9は、アンプリコンを生成するための第1鎖の増幅を図示する。
【
図10】
図10は、TSO実施形態に従うmRNAの捕捉を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本開示は、テンプレート粒子を使用して、単一細胞を分離するための単分散性液滴を形成し、そのライブラリー調製物を調製して、上記単一細胞の発現をプロファイリングするシステムおよび方法を提供する。本開示の方法は、単分散性液滴の形成をテンプレートとして、単一標的細胞を被包の中に概して捕捉する、複数の別個のRNAを上記単一標的細胞から得る、および細胞に対してトレースされ得る核酸のライブラリーを調製する(上記細胞から、核酸のライブラリーが得られる)、および別個のRNAを定量して、上記単一標的細胞の発現プロフィールを生成するために、テンプレート粒子の使用を包含する。本発明の方法は、単一の反応チューブから、例えば、少なくとも100個の細胞、少なくとも1000個の細胞、少なくとも1,000,000個の細胞、少なくとも2,000,000個の細胞、またはこれより多くの細胞の単一細胞分析のためのライブラリーを調製するために使用され得る。
【0019】
図1は、単一細胞プロファイリングのための方法101を図で示す。方法101は、テンプレート粒子と標的細胞とを第1の流体中で合わせる工程109、および上記第1の流体と非混和性の第2の流体を上記混合物に添加する工程を包含する。上記第1の流体は、好ましくは、水性流体である。任意の適切な順序が使用され得るが、場合によっては、チューブは、上記テンプレート粒子を含めて提供され得る。上記チューブは、任意のタイプのチューブ(例えば、商品名Eppendorfの下で販売されているサンプル調製チューブ、または商品名Vacutainerの下で販売されている血液回収チューブ)であり得る。テンプレート粒子は、乾燥された形式にあり得る。合わせる工程109は、ピペットを使用して、細胞を含むサンプルおよび例えば、上記水性流体を、テンプレート粒子を含むチューブの中へとピペットで移す工程、ならびに次いで、非混和性である第2の流体(例えば、油)を添加する工程を包含し得る。
【0020】
方法101は、次いで、上記流体を剪断して115、単分散性液滴(すなわち、液滴)を生成する工程を包含する。好ましくは、剪断する工程は、上記チューブをボルテクサー上で押しつけることによって、上記流体を含むチューブをボルテックスすることを包含する。ボルテックスル工程115の後に、複数(例えば、数千、数万、数十万、百万、二百万、一千万、またはより多く)の水性仕切りが、本質的に同時に形成される。ボルテックスする工程は、上記流体が複数の単分散性液滴へと仕切られることを引き起こす。液滴の実質的な部分は、単一のテンプレート粒子および単一標的細胞を含む。テンプレート粒子または標的細胞を1より多くを含むかまたは全く含まない液滴は、除去され得るか、破壊され得るか、または別の方法で無視され得る。
【0021】
方法101の次の工程は、上記標的細胞を溶解すること123である。細胞溶解123は、例えば、溶解試薬、界面活性剤、または酵素のような刺激によって誘導され得る。細胞融解を誘導する試薬は、内部区画を介して上記テンプレート粒子によって提供され得る。いくつかの実施形態において、溶解する工程123は、上記単分散性液滴を、上記テンプレート粒子の内部に含まれる溶解試薬を上記単分散性液滴へと放出するために十分な温度へと加熱する工程を包含する。このことは、上記標的細胞の細胞溶解123を達成し、それによって、上記標的細胞を含む液滴の内部にmRNAを放出する。
【0022】
上記液滴の内部で標的細胞を溶解する工程123の後に、mRNAは、放出され、引き続いて定量される131。上記mRNAを定量する工程131は、cDNAを合成して、バーコード配列を有するcDNAを含むライブラリーを生成し、各ライブラリー配列が、上記mRNAが得られた単一細胞に戻ってトレースされることを可能にする工程を概して必要とする。好ましい実施形態において、上記mRNAとともに単離されたテンプレート粒子は、標的mRNAとハイブリダイズする複数のバーコード付与された捕捉配列を含む。ハイブリダイゼーション後、cDNAは、逆転写によって合成される。逆転写のための試薬は、種々の形式において種々の方法で提供され得る。場合によっては、試薬および逆転写酵素は、テンプレート粒子によって提供される。バーコード付与されたcDNAを含むライブラリーがいったん生成されると、上記cDNAは、配列決定のためのアンプリコンを生成するために、例えば、PCRによって増幅され得る。配列リードは、mRNAの定量131を達成するために、本明細書で記載される方法に従って処理される。
【0023】
いくつかの局面において、上記標的細胞は、例えば、患者のサンプル(体液という組織)から得られる生細胞を含み得る。上記サンプルは、上記患者からの微細なニードル吸引物、生検物、または体液を含み得る。上記サンプルから単離する際に、上記細胞は、例えば、適切な溶液で単一細胞懸濁物を生成することによって処理され得る。このような溶液は一般に、平衡化塩類溶液(例えば、通常生理食塩水、PBS、ハンクス平衡化塩類溶液など)であり、ある特定の場合には、ウシ胎仔血清または他の天然に存在する因子が、低濃度(対して5~25mM)で受容可能な緩衝液とともに補充されている。都合のよい緩衝液としては、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、ホスフェート緩衝液、ラクテート緩衝液などが挙げられる。分離した細胞は、細胞の生存能を維持し、通常は、収集チューブの底に血清のクッションを有する任意の適切な培地中に集められ得る。種々の培地が市販されており、細胞の性質に応じて使用され得る(ダルベッコ改変イーグル培地(dMEM)、ハンクス平衡化塩類溶液(HBSS)、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(dPBS)、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、イスコフ培地などが挙げられ、頻繁に、ウシ胎仔血清が補充される)。
【0024】
本発明の方法およびシステムは、テンプレート粒子を使用して、単分散性液滴の形成をテンプレートとし、単一標的細胞を単離する。本開示のテンプレート粒子およびその標的化されたライブラリー調製のための方法は、Hatoriら, Anal. Chem., 2018 (90):9813-9820(これは、参考として援用される)に以前に記載された粒子テンプレート化乳化技術を利用する。本質的には、ミクロンスケールのビーズ(例えば、ヒドロゲル)または「テンプレート粒子(template particle)」は、非混和性の仕切っている流体によって囲まれ、温度非感受性界面活性剤によって安定化される単離された流体容積を規定するために使用される。
【0025】
本開示のテンプレート粒子は、当該分野で公知の任意の方法を使用して調製され得る。一般には、上記テンプレート粒子は、ヒドロゲル物質(例えば、アガロース、アルギネート、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド(PAA)、アクリレート、アクリルアミド/ビスアクリルアミドコポリマーマトリクス、およびこれらの組み合わせ)を合わせることによって調製される。上記テンプレート粒子の形成後に、それらは、所望の直径へとサイズ調整される。いくつかの実施形態において、上記テンプレート粒子のサイズ調整は、非混和性の油相への微小流体並行流(microfluidic co-flow)によって行われる。
【0026】
上記テンプレート粒子のいくつかの実施形態において、上記テンプレート粒子の直径または最大直径におけるバリエーションは、上記テンプレート粒子の少なくとも50%もしくはこれより大きい、例えば、60%もしくはこれより大きい、70%もしくはこれより大きい、80%もしくはこれより大きい、90%もしくはこれより大きい、95%もしくはこれより大きい、または99%もしくはこれより大きく、10倍未満、例えば、5倍未満、4倍未満、3倍未満、2倍未満、1.5倍未満、1.4倍未満、1.3倍未満、1.2倍未満、1.1倍未満、1.05倍未満、または1.01倍未満程度、直径または最大直径において変動する。
【0027】
テンプレート粒子は、多孔性であっても非多孔性であってもよい。本明細書中の任意の適切な実施形態において、テンプレート粒子は、微小区画(本明細書では「内部区画(internal compartment)」ともいわれる)を含んでいてもよく、これらは、さらなる構成要素および/または試薬(例えば、本明細書で記載されるとおりの単分散性液滴へと放出可能であり得るさらなる構成要素および/または試薬)を含み得る。テンプレート粒子は、ポリマー、例えば、ヒドロゲルを含み得る。テンプレート粒子は概して、直径または最大直径が約0.1~約1000μmの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、テンプレート粒子は、約1.0μm~1000μm(両端を含む)(例えば、1.0μm~750μm、1.0μm~500μm、1.0μm~250μm、1.0μm~200μm、1.0μm~150μm、1.0μm~100μm、1.0μm~10μm、or 1.0μm~5μm(両端を含む))の直径または最大直径を有する。いくつかの実施形態において、テンプレート粒子は、約10μm~約200μm、例えば、約10μm~約150μm、約10μm~約125μm、または約10μm~約100μmの直径または最大直径を有する。
【0028】
本明細書で記載されるとおりの方法を実施するにあたって、上記テンプレート粒子の組成および性質は、変動し得る。例えば、ある特定の局面において、上記テンプレート粒子は、ゲルマトリクスのミクロンスケールの球状物であるマイクロゲル粒子であり得る。いくつかの実施形態において、上記マイクロゲルは、水の中で溶ける親水性ポリマー(アルギネートまたはアガロースが挙げられる)から構成される。他の実施形態において、上記マイクロゲルは、親油性マイクロゲルから構成される。
【0029】
他の局面において、上記テンプレート粒子は、ヒドロゲルであり得る。ある特定の実施形態において、上記ヒドロゲルは、天然に由来する物質、合成由来の物質およびこれらの組み合わせから選択される。ヒドロゲルの例としては、コラーゲン、ヒアルロナン、キトサン、フィブリン、ゼラチン、アルギネート、アガロース、コンドロイチン硫酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリルアミド/ビスアクリルアミドコポリマーマトリクス、ポリアクリルアミド/ポリ(アクリル酸)(PAA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)、およびポリ無水物、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
いくつかの実施形態において、本開示のテンプレート粒子はさらに、正の表面電荷、または増大した正の表面電荷を有する上記テンプレート粒子を提供する物質を含む。このような物質は、ポリリジンもしくはポリエチレンイミン、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。これは、上記テンプレート粒子と、例えば、一般には、大部分が負に荷電した膜を有する細胞との間の会合の機会を増大させ得る。
【0031】
他のストラテジーは、テンプレート粒子-標的細胞会合の機会を増大させるために使用され得、これは、特異的テンプレート粒子幾何形状の作製を含む。例えば、いくつかの実施形態において、上記テンプレート粒子は、概して球状の形状を有し得るが、その形状は、外形(球状の形状における例えば、平らな表面、クレーター、溝、突出部、および他の不規則性)を含み得る。
【0032】
上記のストラテジーおよび方法のうちのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせは、その標的化されたライブラリー調製のために、本開示のテンプレート粒子および方法の実施において使用され得る。テンプレート粒子の生成のための方法、およびテンプレート粒子ベースの被包化は、国際特許公報WO 2019/139650(これは、本明細書に参考として援用される)に記載された。
【0033】
単一細胞発現プロファイリングのためのテンプレート粒子ベースの被包化の作製は、標的細胞と複数のテンプレート粒子とを第1の流体中で合わせて、反応チューブ中に混合物を提供する工程を包含する。上記混合物は、上記複数の上記テンプレート粒子と標的細胞との会合を可能にするためにインキュベートされ得る。上記複数のテンプレート粒子の一部は、上記標的細胞と会合した状態になり得る。次いで、上記混合物は、上記第1の流体と非混和性である第2の流体と合わせられる。次いで、上記流体および上記混合物は、複数の単分散性液滴が上記反応チューブ中で生成されるように、剪断される。上記生成される単分散性液滴は、(i)上記混合物のうちの少なくとも一部、(ii)単一テンプレート粒子、および(iii)単一標的粒子を含む。注記すべきことに、本開示によって提供される本発明の方法を実施するにあたって、上記生成される単分散性液滴の実質的な数が、単一テンプレート粒子および単一標的粒子を含むが、場合によっては、上記単分散性液滴のうちの一部は、テンプレート粒子または標的細胞を全く含まないか、または1個より多く含むこともある。
【0034】
いくつかの実施形態において、被包化(例えば、1個のテンプレート粒子および1個の標的細胞を含む単分散性液滴)を生成する機会を増大させるために、上記テンプレート粒子および標的細胞は、一定の比で合わせられ、ここで標的細胞より多くのテンプレート粒子が存在する。例えば、上記のとおりの混合物中で合わせられるテンプレート粒子 対 標的細胞213の比は、それぞれ、5:1~1,000:1の範囲にあり得る。他の実施形態において、上記テンプレート粒子および標的細胞は、それぞれ、10:1の比で合わせられる。他の実施形態において、上記テンプレート粒子および標的細胞は、それぞれ、100:1の比で合わせられる。他の実施形態において、上記テンプレート粒子および標的細胞は、それぞれ、1000:1の比で合わせられる。
【0035】
単分散性エマルジョンを生成するために、本開示の方法は、標的粒子および標的細胞を含む第1の混合物、上記第1の混合物と非混和性の第2の流体とを合わせることによって提供される第2の混合物を剪断する工程を包含する。任意の適切な方法または技術は、十分な剪断力を上記第2の混合物に適用するために利用され得る。例えば、上記第2の混合物は、上記第2の混合物を、ピペットチップを経て流れさせることによって剪断され得る。他の方法としては、上記第2の混合物を、ホモジナイザー(例えば、ボルテクサー)で振盪させるか、または上記第2の混合物をビーズビーター(bead beater)で振盪することが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ボルテックスは、例えば、30秒間、または30秒~5分間の範囲で行われ得る。十分な剪断力の適用は、上記第2の混合物を、複数のテンプレート粒子のうちの1個を被包する単分散性液滴へとくずす。
【0036】
いくつかの局面において、上記テンプレート粒子ベースの単分散性液滴を生成することは、2つの液相を剪断することを要する。上記混合物は、水相であり、いくつかの実施形態において、例えば、緩衝液、塩、溶解酵素(例えば、プロテイナーゼk)および/または他の溶解試薬(例えば、Triton X-100、Tween-20、IGEPAL、bm 135、またはこれらの組み合わせ)、核酸合成試薬(例えば、核酸増幅試薬もしくは逆転写ミックス、またはこれらの組み合わせ)から選択される試薬を含む。上記流体は、連続相であり、非混和性の油(例えば、フルオロカーボン油、シリコーン油、もしくは炭化水素油、またはこれらの組み合わせ)であり得る。いくつかの実施形態において、上記流体は、界面活性剤(例えば、オクチルフェノールエトキシレートおよび/またはオクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、還元剤(例えば、DTT、βメルカプトエタノールまたはこれらの組み合わせ)のような試薬を含み得る。
【0037】
本明細書で記載される方法を実施するにあたって、上記単分散性液滴(例えば、単一エマルジョンおよび多重エマルジョン液滴)の組成および性質は、変動し得る。上で言及されるように、ある特定の局面において、界面活性剤は、上記液滴を安定化するために使用され得る。本明細書で記載される単分散性液滴は、エマルジョンとして、例えば、非混和性相キャリア流体(例えば、フルオロカーボン油、シリコーン油、または炭化水素油)中に分散された水性相流体として調製され得るか、または逆もまた同様である。よって、液滴は、表面安定化エマルジョン、例えば、界面活性剤安定化単一エマルジョンまたは界面活性剤安定化二重エマルジョンを含み得る。上記液滴において行われるべき所望の反応を可能にする任意の都合のよい界面活性剤が、使用されてもよい。他の局面において、単分散性液滴は、界面活性剤によって安定化されない。
【0038】
図2は、本発明の1つの局面に従う液滴201を図示する。その示される液滴201は、本発明の方法に従って混合物を剪断することによって生成される複数の単分散性液滴のうちのただ1個である。上記液滴201は、テンプレート粒子207および単一標的細胞213を含む。図示されるテンプレート粒子207は、単一細胞213の捕捉を容易にするために、クレーター様の凹み231を含む。上記テンプレート粒子231は、刺激の際に1またはこれより多くの試薬を上記液滴201に送達するために、内部区画211をさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記テンプレート粒子は、多数の内部区画を含む。上記テンプレート粒子の内部区画は、所望の化合物(例えば、酵素反応の基質)を放出するかまたはある特定の結果(例えば、会合した標的細胞の溶解)を誘導するように誘発され得る試薬を被包するために、使用され得る。上記テンプレート粒子の区画の中に被包される試薬は、緩衝液、塩、溶解酵素(例えば、プロテイナーゼk)、他の溶解試薬(例えば、Triton X-100、Tween-20、IGEPAL、bm 135)、核酸合成試薬、またはこれらの組み合わせから選択される試薬であり得るが、これらに限定されない。
【0040】
単一標的細胞の溶解は、上記単分散性液滴内で起こり、熱、浸透圧、溶解試薬(例えば、DTT、β-メルカプトエタノール)、界面活性剤(例えば、SDS、Triton X-100、Tween-20)、酵素(例えば、プロテイナーゼk)、またはこれらの組み合わせのような刺激によって誘導され得る。いくつかの実施形態において、上記試薬のうちの1またはこれより多く(例えば、溶解試薬、界面活性剤、酵素)は、上記テンプレート粒子内で仕切られる。他の実施形態において、上記試薬のうちの1またはこれより多くは、上記混合物に存在する。いくつかの他の実施形態において、上記試薬のうちの1またはこれより多くは、望ましい場合、上記単分散性液滴を含む溶液に添加される。
【0041】
図3は、標的細胞の溶解後の液滴201を図示する。その示される液滴201は、テンプレート粒子207および放出されたmRNA 301を含む。本発明の方法は、その放出されたmRNAs 301の増幅生成物を、好ましくは、配列決定によって定量する。
【0042】
好ましい実施形態において、テンプレート粒子は、複数の捕捉プローブを含む。一般に、本開示の捕捉プローブは、オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、上記捕捉プローブは、上記テンプレート粒子の物質(例えば、ヒドロゲル物質)に、共有結合であるアクリル結合を介して結合される。いくつかの実施形態において、上記捕捉プローブは、それらの5’末端(リンカー領域)上でアクリダイト改変される(acrydite-modified)。一般に、アクリダイト改変されたオリゴヌクレオチドは、化学量論的に、ヒドロゲル(例えば、ポリアクリルアミド)へと、標準的なフリーラジカル重合化学現象を使用して組み込まれ得、ここでアクリダイト基における二重結合は、他の活性化された二重結合を含む化合物(例えば、アクリルアミド)と反応する。具体的には、架橋剤(例えば、N,N’-メチレンビス)を含む、上記アクリダイト改変された捕捉プローブとアクリルアミドとの共重合は、共有結合された捕捉プローブを含む架橋ゲル物質を生じる。いくつかの他の実施形態において、上記捕捉プローブは、アクリレート末端化炭化水素リンカーを含み、上記捕捉プローブとテンプレート粒子とを合わせると、上記テンプレート粒子へのそれらの結合が引き起こされる。
【0043】
図4~6は、本開示のある特定の局面に従うmRNAの非特異的増幅のための例示的方法を示す。特に、上記方法は、mRNAの非特異的捕捉のために、mRNA3’末端のポリAテールの存在に依拠する。
【0044】
図4は、mRNA 301の捕捉を図示する。破線の曲線によって模式的に図示される複数の捕捉プローブ401を含むテンプレート粒子201が示される。その捕捉プローブ401のうちの1つは、より大きなスケールでかつ詳細に特徴が示されている。上記捕捉プローブ401は、好ましくは、5’末端から3’末端へと、上記テンプレート粒子201との共有結合を可能に得るリンカー領域、ユニバーサルプライマーヌクレオチド配列を含むPR1 471ヌクレオチド配列領域、インデックス475ヌクレオチド配列インデックスを含み得る少なくとも1個のバーコード領域B1 473、および/またはUMIを含み、捕捉プローブ201は、ポリTヌクレオチド配列を含む捕捉ヌクレオチド配列をさらに含む。放出される核酸、すなわち、ポリA配列を含むmRNA分子301は、上記捕捉プローブのポリT配列22に、相補的な塩基対合を介して結合する。上記mRNA分子301および上記捕捉プローブ401のハイブリダイゼーション後、逆転写酵素は、逆転写反応を行って、cDNAを合成するために使用され、それによって、上記cDNAおよび上記捕捉プローブ配列を含む第1鎖が作製される。
【0045】
図5は、第1鎖23を形成するためのcDNAの合成を図示する。逆転写酵素(示さず)は、捕捉プローブ401のポリT配列にハイブリダイズされるmRNAからcDNAを合成する。合成後、第1鎖23が形成され、ここでその第1鎖23は、cDNAおよび捕捉プローブ401配列を含む。合成後、上記mRNA分子301-第1鎖23のハイブリッドは、当該分野で旧来からある任意の方法(例えば、変性する温度への曝露)を使用して変性され得る(示さず)。
【0046】
図6は、アンプリコンを生成するための第1鎖の増幅を図示する。特に、第1鎖23の形成後に、ランダム配列(例えば、ランダムヘキサマー)を含む第2鎖プライマー24は、上記第1鎖23とアニールして、DNA-プライマーハイブリッドを形成する。DNAポリメラーゼは、相補的な第2鎖25、すなわち、アンプリコンを合成するために使用される。図示される実施形態において、上記第2鎖プライマー24は、第1鎖23とハイブリダイズしない「テール(tail)」領域を含む。いくつかの実施形態において、上記テール領域は、第2のユニバーサルプライマー配列を含む。上記第2鎖25は、複数のアンプリコンを生成するためにPCRによってさらに増幅され得、DNA配列決定によって定量され得る。
【0047】
増幅または核酸合成とは一般に、本明細書で使用される場合、サーマルサイクリングを使用して、反応物を加熱および冷却の反復サイクルに曝露し、異なる温度依存性反応を可能にすることによって(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって)、核酸のコピーを作製するための方法をいう。当該分野で公知の任意の適切なPCR法は、以前に記載された方法に関連して使用され得る。PCR反応の非限定的な例としては、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、マルチプルPCR、定量的PCR、TS-PCR、またはタッチダウンPCRが挙げられる。
【0048】
用語「核酸増幅試薬」または「逆転写ミックス」とは、dNTP(ヌクレオチドdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPのミックス)、緩衝液、界面活性剤、または必要とされる場合には、溶媒、および適切な酵素(例えば、ポリメラーゼまたは逆転写酵素)を含むが、これらに限定されない。本開示の標的化されたライブラリー調製法において使用されるポリメラーゼは、DNAポリメラーゼであり得、Taq DNAポリメラーゼ、Phusionポリメラーゼ、またはQ5ポリメラーゼから選択され得るが、これらに限定されない。本開示の標的化されたライブラリー調製法において使用される逆転写酵素は、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素、またはmaxima逆転写酵素であり得る。いくつかの実施形態において、逆転写反応の一般的パラメーターは、25度で約15分間のインキュベーションおよびその後、52度で約90分間のインキュベーションを含む。核酸増幅試薬は市販されており、例えば、New England Biolabs(Ipswich, MA, USA)またはClonetechから購入され得る。
【0049】
図7~9は、本開示のある特定の局面に従うmRNAの配列特異的増幅のための方法を図示する。
【0050】
図7は、mRNA 301の配列特異的捕捉のための方法を図示する。上記テンプレート粒子201は、破線の曲線によって模式的に図示される複数の捕捉プローブ401を含む。特徴が示された捕捉プローブ401は、5’末端から3’末端へと、上記テンプレート粒子201との共有結合を可能に得るリンカー領域、ユニバーサルプライマーヌクレオチド配列を含むPR1”領域、インデックス配列を含み得る少なくとも1個のバーコード領域B1、および/またはUMIを含み、上記捕捉プローブ401は、遺伝子特異的配列26を含む捕捉配列をさらに含む。単分散性液滴の内部で放出され、上記遺伝子特異的配列26に相補的な標的配列481を含むmRNA 301の分子は、捕捉プローブの遺伝子特異的配列26に、相補的な塩基対合を介して結合する。上記遺伝子特異的配列は、任意の目的の配列、例えば、発癌遺伝子に相当する配列を含み得る。
【0051】
例えば、場合によっては、本発明の局面に従うテンプレート粒子201は、目的の遺伝子(例えば、発癌遺伝子)に特異的なある特定の配列を有する捕捉プローブを含み得る。アッセイされ得る目的の遺伝子のいくつかの非限定的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない: BAX、BCL2L1、CASP8、CDK4、ELK1、ETS1、HGF、JAK2、JUNB、JUND、KIT、KITLG、MCL1、MET、MOS、MYB、NFKBIA、EGFR、Myc、EpCAM、NRAS、PIK3CA、PML、PRKCA、RAF1、RARA、REL、ROS1、RUNX1、SRC、STAT3、CD45、サイトケラチン、CEA、CD133、HER2、CD44、CD49f、CD146、MUC1/2、ABL1、AKT1、APC、ATM、BRAF、CDH1、CDKN2A、CTNNB1、EGFR、ERBB2、ERBB4、EZH2、FBXW7、FGFR2、FGFR3、FLT3、GNAS、GNAQ、GNA11、HNF1A、HRAS、IDH1、IDH2、JAK2、JAK3、KDR、KIT、KRAS、MET、MLH1、NOTCH1、NPM1、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PTEN、PTPN11、RB1、RET、SMAD4、STK11、TP53、VHL、およびZHX2。
【0052】
図8は、第1鎖23を形成するためのcDNAの合成を図示する。逆転写酵素(示さず)は、cDNAを、捕捉プローブ12の遺伝子特異的配列にハイブリダイズされるmRNAから合成する。上記標的mRNA分子301および上記捕捉プローブ12のハイブリダイゼーション後に、cDNAを合成し、第1鎖23を作製するために逆転写反応が行われる。上記第1鎖23は、合成されたcDNAおよび上記捕捉プローブ401の配列を含む。上記標的mRNA分子-第1鎖ハイブリッドは、次いで、当該分野で旧来からある方法を使用して変性され(示さず)、ランダムヘキサマー配列を含む第2鎖プライマー24は、上記第1鎖23の相補的配列とアニールして、DNA-プライマーハイブリッドを形成する。
【0053】
図9は、アンプリコン25を生成するための第1鎖23の増幅を図示する。特に、第1鎖23の形成後に、ランダム配列(例えば、ランダムヘキサマー)を含む第2鎖プライマー24は、上記第1鎖23とアニールして、DNA-プライマーハイブリッドを形成する。DNAポリメラーゼは、相補的な第2鎖25、すなわち、アンプリコン25を合成するために使用される。図示される実施形態において、上記第2鎖プライマー24は、上記第1鎖23とハイブリダイズしない「テール」領域を含む。いくつかの実施形態において、上記テール領域は、第2のユニバーサルプライマー配列を含む。
【0054】
本開示の局面によれば、用語「ユニバーサルプライマー配列(universal primer sequence)」とは概して、プライマー結合部位、例えば、相補的な配列の1またはこれより多くの位置(あるとすれば)にハイブリダイズ(塩基対合)し、核酸フラグメントに対してプライミングすると予測されるプライマー配列に言及する。いくつかの実施形態において、本発明の方法に関連して使用されるユニバーサルプライマー配列は、P5およびP7である。
【0055】
用語バーコード領域は、任意の数のバーコード、インデックスまたはインデックス配列、UMI(これは、特有である、すなわち、他のバーコード配列、またはインデックス配列、UMI配列から区別可能である)を含み得る。上記配列は、上記バーコード配列、またはインデックス配列を、他のバーコード配列から区別するために十分な任意の適切な長さのものであり得る。バーコード配列またはインデックス配列は、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個のヌクレオチド、またはこれより多くのヌクレオチドの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、上記バーコードまたはインデックスは、予め定義されており、ランダムで選択される。
【0056】
本発明のいくつかの方法において、バーコード配列は、特有の分子識別子(UMI)を含み得る。UMIは、そのバーコードと一緒に、各核酸分子を特有またはほぼ特有にするためにサンプルに提供され得るバーコードのタイプである。これは、1またはこれより多くのUMIを、本発明の1またはこれより多くの捕捉プローブに付加することによって達成され得る。適切な数のUMIを選択することによって、サンプル中のあらゆる核酸分子が、そのUMIと一緒になって、特有またはほぼ特有になる。
【0057】
UMIは、これらが増幅中に引き起こされるエラー(例えば、増幅バイアスまたは増幅中の不正確な塩基対合)を矯正するために使用され得るという点で有利である。例えば、UMIを使用する場合、サンプル中のあらゆる核酸分子がそのUMIと一緒になって、特有またはほぼ特有になることから、増幅および配列決定後に、同一の配列を有する分子は、同じ出発核酸分子に言及し、それによって、増幅バイアスを低減すると考えられ得る。UMIを使用するエラー矯正のための方法は、Karlssonら, 2016, Counting Molecules in cell-free DNA and single cells RNA」, Karolinska Institutet, Stockholm Sweden(本明細書に参考として援用される)に記載される。
【0058】
ある特定の局面において、本発明の方法は、テンプレート粒子と標的細胞とを第1の流体中で合わせる工程、第2の流体を上記第1の流体に添加する工程、上記流体を剪断して、上記テンプレート粒子のうちのただ1個および上記標的細胞のうちのただ1個を含む複数の単分散性液滴を同時に生成する工程であって、ここで上記テンプレート粒子は、好ましくは、テンプレートスイッチングオリゴ(TSO)実施形態において有用な1またはこれより多くのオリゴを含む工程を包含する。上記方法はまた、好ましくは、上記単分散性液滴内に含まれる上記単一標的細胞の各々を溶解して、複数の別個のmRNA分子を放出する工程;および上記複数の別個のmRNA分子を、例えば、米国特許第5,962,272号(これは、本明細書に参考として援用される)において考察されるように、テンプレートスイッチングPCR(TS-PCR)を使用することによって定量する工程を包含する。TS-PCRは、ポリアデニル化部位(ポリ(A)テールとしても公知)において天然のPCRプライマー配列に依拠し、マウス白血病ウイルス逆転写酵素の活性を通じて第2のプライマーを付加する逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅の方法である。この方法は、完全なcDNA配列を読み取ることを可能にし、10~30ピコグラムのmRNAを含む単一細胞ですら、単一の供給源から高い収量をもたらし得る。
【0059】
TS-PCRは概して、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素の固有の特性および特有のTSOの使用に依拠する。第1鎖合成の間に、上記mRNAテンプレートの5’末端に達したら、MMLV逆転写酵素の末端トランスフェラーゼ活性は、数個のさらなるヌクレオチド(大部分はデオキシシチジン)をその新たに合成されたcDNA鎖の3’末端に付加する。これらの塩基は、TSO繋留部位として機能し得る。TSOと付加されたデオキシシチジンストレッチとの間の塩基対合後に、上記逆転写酵素は、細胞RNAからTSOへとテンプレート鎖を「スイッチ」し、TSOの5’末端への複製を継続する。そうすることによって、その得られたcDNAは、転写物の完全な5’末端を含み、選択したユニバーサル配列は、逆転写生成物へと付加される。このアプローチは、全長転写物プール全体を、完全に配列非依存性の様式で効率的に増幅することを可能にする。
【0060】
図10は、TSO実施形態に従うmRNA 301の捕捉を図示する。上記TSO 1009は、逆転写の間に逆転写酵素によって付加される非テンプレート化Cヌクレオチドへとハイブリダイズするオリゴである。上記TSOは、例えば、共通する5’配列を、下流のcDNA増幅に使用される全長cDNAへと付加し得る。第1の捕捉プローブ401を含むテンプレート粒子201、および第2の捕捉プローブ403が示される。上記第1の捕捉プローブ401は、好ましくは、5’末端から3’末端へと、上記テンプレート粒子201との共有結合を可能にするリンカー領域、ユニバーサルプライマーヌクレオチド配列を含むP5 511ヌクレオチド配列領域、少なくとも1個のバーコード33、およびポリTヌクレオチド配列を含む捕捉ヌクレオチド配列22を含む。上記第2の捕捉プローブ403は、好ましくは、TSO 1009、UMI 531、第2のバーコード541、ユニバーサルプライマーヌクレオチド配列を含むP7 543ヌクレオチド配列領域を含む。放出された核酸、すなわち、ポリA配列を含むmRNA分子301は、上記第1の捕捉プローブ401のポリT配列22に、相補的な塩基対合を介して結合する。上記mRNA分子301および上記捕捉プローブ401のハイブリダイゼーションの後に、TS-PCRは、cDNAを合成し、それによって、第1鎖を作製するために、逆転写酵素、すなわち、マウス白血病ウイルス逆転写酵素を使用して行われる。TS-PCR増幅の間に、上記mRNAテンプレートの5’末端に達したら、上記逆転写酵素の末端トランスフェラーゼ活性は、数個のさらなるヌクレオチド(大部分はデオキシシチジン)をその新しい第1鎖の3’末端に付加する。
【0061】
図11は、TS-PCR増幅後の第1鎖23を示す。上記第1鎖23は、TSO繋留部位34として機能し得るさらなるヌクレオチドを含む。上記TSO繋留部位34は、TSO 1009とハイブリダイズし得、上記TSOと上記TSO繋留部位34との間の塩基対合後、上記逆転写酵素は、細胞RNAからTSOへとテンプレート鎖を「スイッチ」し、TSOの5’末端への複製を継続する。そうすることによって、その得られたcDNAは、転写物の完全な5’末端および上記第2の捕捉プローブ403に由来する配列を含み、上記第1鎖23の合成後、捕捉プローブ401、403を含む第1鎖23は、上記捕捉プローブ401、403を上記テンプレート粒子201の表面に結合する共有結合を切断するか、または上記テンプレート粒子201を、例えば、熱によって溶解するかのいずれかによって、放出され得る。
【0062】
当業者は、上記テンプレート粒子実施形態、捕捉プローブ、プライマープローブ、第2鎖プライマー、ユニバーサル増幅プライマー、バーコード、UMI、TSOのうちのいずれか1つ、および本開示の標的化されたライブラリー調製法の実施形態の内のいずれか1つに記載されるその方法が、本発明の方法の種々の組み合わせ、または実施形態において使用され得ることを認識する。例えば、ここで記載される第2鎖プライマー、またはプライマープローブのうちのいずれか1つは、本開示の第1鎖のうちのいずれか1つをプライミングして、DNA合成反応がアンプリコンを生成することを可能にするために使用され得る。
【0063】
好ましい実施形態において、放出されたmRNAを定量する工程は、配列決定することを包含し、これは、当該分野で公知の方法によって行われ得る。例えば、一般に、Quailら, 2012, A tale of three next generation sequencing platforms: comparison of Ion Torrent, Pacific Biosciences and Illumina MiSeq sequencers, BMC Genomics 13:341を参照のこと。核酸配列決定技術は、標識されたターミネーターまたはプライマーを使用する旧来のジデオキシ配列決定反応(Sanger法)、およびスラブまたはキャピラリーでのゲル分離、または好ましくは、次世代シーケンシング法を含む。例えば、配列決定は、米国特許公開第2011/0009278号、同第2007/0114362号、同第2006/0024681号、同第2006/0292611号、米国特許第7,960,120号、同第7,835,871号、同第7,232,656号、同第7,598,035号、同第6,306,597号、同第6,210,891号、同第6,828,100号、同第6,833,246号、および同第6,911,345号(各々参考として援用される)に記載される技術に従って行われ得る。
【0064】
配列決定データを処置するための従来のパイプラインとしては、次世代シーケンシングプラットフォームから配列決定されるリードを含むFASTQ形式ファイルを生成する工程、これらのリードを註釈付きの参照ゲノムに対して整列させる工程、および遺伝子の発現を定量する工程を含む。これらの工程は、当業者が認識し、本発明の実行工程のために使用され得る既知のコンピューターアルゴリズムを使用して慣用的に行われる。例えば、Kukurba, Cold Spring Harb Protoc, 2015 (11):951-969(参考として援用される)を参照のこと。
【0065】
発現プロフィールを単一細胞から得た後、上記発現プロフィールは、例えば、上記プロフィールと参照またはコントロールプロフィールとを比較して、上記単一標的細胞についての情報を確認することによって、分析され得る。例えば、一般には、Efroni, Genome Biology, 2015;およびStahlberg, Nucleic Acids Research, 2011, 39(4)e24(これらの各々は、参考として援用される)を参照のこと。
【0066】
1つの局面において、本発明の方法およびシステムは、不均一細胞集団から希な細胞を同定するための方法を提供する。上記方法は、上記不均一細胞と複数のテンプレート粒子とを第1の流体中で合わせ、上記第1の流体と非混和性の第2の流体を添加し、上記流体を剪断して、単一標的細胞および単一テンプレート粒子を各々含む単分散性液滴を含むエマルジョンを生成することによって、複数の単一標的細胞を上記不均一細胞集団から単離する工程を包含する。方法は、上記単分散性液滴内に含まれる単一標的細胞の各々から複数のmRNA分子を放出する工程、および上記複数のmRNA分子を定量する工程をさらに包含する。定量する工程は、上記mRNA分子の複数のアンプリコンを生成することを包含し得、ここで上記アンプリコンの各々は、上記mRNA分子が得られた細胞に特有のバーコードまたはインデックス配列を含む。場合によっては、方法は、複数のバーコード付与されたアンプリコンを、上記アンプリコンの各々に関する配列リードを生成するために、例えば、次世代シーケンシング法によって配列決定する工程を包含し得る。方法はさらに、上記不均一細胞集団の単一細胞と関連する配列リードを処理して、上記単一細胞の各々に関する発現プロフィールを生成する工程、および例えば、遺伝子クラスター化分析を行って、1またはこれより多くの細胞タイプまたは細胞状態を同定することによって、上記データを使用する工程を包含し得る。
【0067】
別の局面において、本開示の方法およびシステムは、被験体から採取した不均一な腫瘍生検物を分析するための方法を提供する。上記方法は、患者から生検物を得る工程、および上記生検物から細胞の集団を単離する工程を包含する。上記方法はさらに、上記細胞の集団と複数のテンプレート粒子とを第1の流体中で合わせ、上記第1の流体と非混和性の第2の流体を添加する工程、および上記流体を剪断して、上記細胞の集団のうちのただ1個および単一テンプレート粒子を各々含む単分散性液滴を含むエマルジョンを生成することによって、生検物から採取した細胞の集団を、液滴へと分離する工程を包含する。方法はさらに、複数のmRNA分子を、上記単分散性液滴内に含まれる分離した単一細胞のうちの各1個から放出する工程、および上記単一細胞の1またはこれより多くの遺伝子に対してトランスクリプトーム分析を行う工程、および上記トランスクリプトームデータを使用して、上記腫瘍の1またはこれより多くの特性を同定する工程をさらに包含する。同定された特性は、がんと関連する1またはこれより多くの遺伝子転写物の存在または非存在であり得る。本明細書で開示される方法は、がんを有する被験体を診断するか、もしくはがんのステージを診断するために、または処置プランを考案するために、上記特性を使用する工程をさらに包含する。
【0068】
いくつかの局面において、本発明の方法およびシステムは、治療剤の潜在的有効性を決定するための方法を提供する。上記方法は、病的な細胞の第1の集団を、テンプレート粒子を有する単分散性液滴へと分離する工程、および上記病的な細胞のうちの少なくとも1個から少なくとも1個の核酸の発現レベルを決定し、それによって、疾患状態発現シグナチャーを生成する工程を包含する。上記方法は、疾患状態細胞の第2の集団を薬剤に曝す工程、および上記第2の集団からの個々の細胞のうちの少なくとも1個からの少なくとも1個の核酸の発現レベルを決定する工程、および上記第2の集団からの個々の細胞からの上記発現レベルと、上記疾患状態発現シグナチャーとを比較して、それによって、上記疾患に対する薬剤の有効性を決定する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記治療剤は、単分散性液滴の内部で細胞の第2の集団に送達され得る。例えば、上記薬剤は、上記テンプレート粒子の外側表面に上記薬剤を繋ぐか、または上記テンプレート粒子の区画の内部に上記薬剤をパッケージすることによって、上記テンプレート粒子と会合され得、その結果、上記薬剤は、上記単分散性液滴の内部に含まれる細胞に送達され得る。
【0069】
本開示の標的化されたライブラリー調製法の実施形態のうちのいずれか1つにおいて、上記テンプレート粒子は、捕捉部分をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記捕捉部分は、特異的標的粒子、例えば、細胞の特異的タイプを捕捉するように作用する。いくつかの実施形態において、上記捕捉部分は、ビオチン末端を有するアクリレート末端化炭化水素リンカーを含む。いくつかの実施形態において、上記捕捉部分は、標的特異的捕捉エレメントに結合される。いくつかの実施形態において、上記標的特異的捕捉エレメントは、アプタマーおよび抗体から選択される。上記捕捉部分およびその方法の実施形態は、国際出願WO2020069298A1(本明細書に参考として援用される)において開示される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
単一細胞分析のための方法であって、前記方法は、
テンプレート粒子と標的細胞とを、第1の流体中で合わせる工程;
第2の流体を前記第1の流体に添加する工程;
前記流体を剪断して、前記テンプレート粒子のうちのただ1個および前記標的細胞のうちのただ1個を含む複数の単分散性液滴を同時に生成する工程;
前記単分散性液滴内に含まれる単一の標的細胞の各々を溶解して、複数の別個のmRNA分子を放出する工程;ならびに
前記複数の別個のmRNA分子を定量する工程、
を包含する方法。
(項目2)
前記複数の別個のmRNA分子を定量した後に、前記単一の標的細胞の各々の発現プロフィールを生成する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記液滴内部の前記複数の別個のmRNA分子を逆転写する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記第1の流体は、水性流体である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記第2の流体は、油を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記流体を剪断する工程は、ボルテクサーまたはピペットで移す操作のうちの一方を使用する工程を包含する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記テンプレート粒子は、1またはこれより多くの区画をさらに含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記1またはこれより多くの区画は、溶解試薬、核酸合成試薬、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される試薬を含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記核酸合成試薬は、ポリメラーゼを含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記試薬は、外部刺激に応じて前記1またはこれより多くの区画から放出される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記テンプレート粒子は、複数の捕捉プローブを含み、前記捕捉プローブは、
ユニバーサルプライマー配列;
少なくとも1個のバーコード;および
捕捉配列、
を含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記捕捉配列は、ポリTヌクレオチド配列、遺伝子特異的ヌクレオチド配列、またはランダムヌクレオチド配列のうちの1つから選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記mRNAは、前記単一の標的細胞からの放出の際に、前記ポリTヌクレオチド配列にハイブリダイズすることによって、前記テンプレート粒子に結合する、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記テンプレート粒子に結合した前記mRNAは、cDNAおよび前記バーコード配列を
含む第1鎖を生成するために逆転写される、項目13に記載の方法。
(項目15)
PCRによって前記第1鎖を増幅して、アンプリコンを生成する工程を包含する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記テンプレート粒子に結合した前記mRNAは、TSOを使用して逆転写される、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記複数の別個のmRNA分子を定量する工程は、前記アンプリコンを配列決定することを包含する、項目15に記載の方法。
(項目18)
希な細胞タイプは、がん細胞である、項目15に記載の方法。
(項目19)
単一細胞プロファイリングのためのキットであって、前記キットは、
テンプレート粒子を含むチューブであって、前記テンプレート粒子は、捕捉配列、および試薬を含む内部区画を含むチューブ、
を含むキット。
(項目20)
前記試薬は、逆転写酵素である、項目19に記載のキット。
(項目21)
前記捕捉配列は、発癌遺伝子から転写されるmRNAに相補的である、項目19に記載のキット。