(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】静電チャック及び半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250821BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20250821BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2021153433
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2024-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021050177
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 瑛人
(72)【発明者】
【氏名】上藤 淳平
(72)【発明者】
【氏名】梅津 智樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 達也
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-518125(JP,A)
【文献】特開平7-130828(JP,A)
【文献】特開平1-298721(JP,A)
【文献】特開2005-136104(JP,A)
【文献】特開2008-263241(JP,A)
【文献】特開平7-45693(JP,A)
【文献】特開2018-182290(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112017935(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において円形のセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、
を備え、
前記セラミック誘電体基板は、処理対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面から前記第2主面に向かって窪む溝部と、前記溝部と前記第2主面との間を貫通し冷却ガスが通過可能に設けられた複数の冷却ガス用孔と、を有し、
前記溝部は、周方向に延びる第1周方向溝と、周方向に延び少なくとも一部が径方向において前記第1周方向溝と隣り合う第2周方向溝と、
周方向に延び少なくとも一部が径方向において前記第2周方向溝と隣り合う第3周方向溝と、径方向に延び前記第1周方向溝と交差する第1径方向溝と、径方向に延び前記第2周方向溝と交差する第2径方向溝と、を有し、
前記複数の冷却ガス用孔は、平面視において前記第1径方向溝と重なる第1孔と、平面視において前記第2径方向溝と重なる第2孔と、を有し、
前記ベースプレートは、前記第1孔及び前記第2孔に前記冷却ガスを供給するガス導入路を有し、
前記第1周方向溝は、周方向の一端側に位置する第1端部と、周方向の他端側に位置する第2端部と、を有し、
前記第2周方向溝は、周方向の前記一端側に位置する第3端部と、周方向の前記他端側に位置する第4端部と、を有し、
前記第3周方向溝は、周方向の前記一端側に位置する第5端部と、周方向の前記他端側に位置する第6端部と、を有し、
前記第3端部及び前記第4端部は、それぞれ、径方向において前記第1端部と重なら
ず、前記第5端部及び前記第6端部は、それぞれ、径方向において前記第3端部と重ならないことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
平面視において円形のセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、
を備え、
前記セラミック誘電体基板は、処理対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面から前記第2主面に向かって窪む溝部と、前記溝部と前記第2主面との間を貫通し冷却ガスが通過可能に設けられた複数の冷却ガス用孔と、を有し、
前記溝部は、周方向に延びる第1周方向溝と、周方向に延び少なくとも一部が径方向において前記第1周方向溝と隣り合う第2周方向溝と、
周方向に延び少なくとも一部が径方向において前記第2周方向溝と隣り合う第3周方向溝と、径方向に延び前記第1周方向溝と交差する第1径方向溝と、径方向に延び前記第2周方向溝と交差する第2径方向溝と、を有し、
前記複数の冷却ガス用孔は、平面視において前記第1周方向溝と重なる第1孔と、平面視において前記第2周方向溝と重なる第2孔と、を有し、
前記ベースプレートは、前記第1孔及び前記第2孔に前記冷却ガスを供給するガス導入路を有し、
前記第1周方向溝は、周方向の一端側に位置する第1端部と、周方向の他端側に位置する第2端部と、を有し、
前記第2周方向溝は、周方向の前記一端側に位置する第3端部と、周方向の前記他端側に位置する第4端部と、を有し、
前記第3周方向溝は、周方向の前記一端側に位置する第5端部と、周方向の前記他端側に位置する第6端部と、を有し、
前記第3端部及び前記第4端部は、それぞれ、径方向において前記第1端部と重なら
ず、前記第5端部及び前記第6端部は、それぞれ、径方向において前記第3端部と重ならないことを特徴とする静電チャック。
【請求項3】
前記第1径方向溝と前記第1周方向溝との交点から前記第1孔までの距離は、前記第2径方向溝と前記第2周方向溝との交点から前記第2孔までの距離と等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第3端部及び前記第4端部は、それぞれ、径方向において前記第2端部と重ならないことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項5】
前記第1周方向溝は、周方向における中央を含む中央領域を有し、
前記第3端部は、径方向において前記中央領域と重なることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項6】
前記第3端部は、前記第1周方向溝の周方向における前記中央よりも周方向の前記他端側に位置することを特徴とする請求項5記載の静電チャック。
【請求項7】
前記第4端部は、前記第2端部よりも周方向の前記他端側に位置することを特徴とする請求項6記載の静電チャック。
【請求項8】
前記セラミック誘電体基板を加熱するヒータをさらに備えたことを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の静電チャックと、
前記ガス導入路を介して前記第1孔及び前記第2孔に前記冷却ガスを供給するガス供給部と、
を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、静電チャック及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオン注入、アッシングなどを行うプラズマ処理チャンバ内では、半導体ウェーハやガラス基板などの処理対象物を吸着保持する手段として、静電チャックが用いられている。静電チャックは、内蔵する電極に静電吸着用電力を印加し、シリコンウェーハ等の基板を静電力によって吸着するものである。
【0003】
近年の半導体素子の微細化に伴い、エッチングなどによるウェーハの加工精度のより一層の向上が求められている。ウェーハの加工精度は、加工時のウェーハの温度に依存することが知られている。そのため、ウェーハの加工精度を高めるために、静電チャックの表面温度を均一に制御することが求められている。
【0004】
静電チャックの表面温度を制御する手段として、静電チャック(セラミック誘電体基板)の表面に冷却ガスを供給する冷却ガス用孔と連通する溝を設け、この溝を介して冷却ガスを静電チャックの表面にいきわたらせることが知られている。例えば、特許文献1では、周方向に延びる周方向溝を同心円状に複数配置し、さらに、これらの周方向溝を径方向に延びる径方向溝と接続することで、静電チャックの表面に冷却ガスをいきわたらせる溝パターンが開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の溝パターンでは、各周方向溝は途中で途切れており、各周方向溝の端部が径方向において直線状に揃っている。そのため、特許文献1の溝パターンでは、各周方向溝の端部が集まる領域において冷却ガスがいきわたりにくくなり、周方向における冷却ガス分布の均一性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる静電チャック及び半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、平面視において円形のセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、前記セラミック誘電体基板は、処理対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面から前記第2主面に向かって窪む溝部と、前記溝部と前記第2主面との間を貫通し冷却ガスが通過可能に設けられた複数の冷却ガス用孔と、を有し、前記溝部は、周方向に延びる第1周方向溝と、周方向に延び少なくとも一部が径方向において前記第1周方向溝と隣り合う第2周方向溝と、径方向に延び前記第1周方向溝と交差する第1径方向溝と、径方向に延び前記第2周方向溝と交差する第2径方向溝と、を有し、前記複数の冷却ガス用孔は、平面視において前記第1径方向溝と重なる第1孔と、平面視において前記第2径方向溝と重なる第2孔と、を有し、前記ベースプレートは、前記第1孔及び前記第2孔に前記冷却ガスを供給するガス導入路を有し、前記第1周方向溝は、周方向の一端側に位置する第1端部と、周方向の他端側に位置する第2端部と、を有し、前記第2周方向溝は、周方向の前記一端側に位置する第3端部と、周方向の前記他端側に位置する第4端部と、を有し、前記第3端部及び前記第4端部は、それぞれ、径方向において前記第1端部と重ならないことを特徴とする静電チャックである。
【0009】
この静電チャックによれば、第2周方向溝の第3端部及び第4端部がそれぞれ径方向において第1周方向溝の第1端部と重ならないように配置されることで、第1周方向溝の端部と第2周方向溝の端部とが径方向において直線状に揃うことを抑制できる。これにより、冷却ガスがいきわたりにくい領域が生じることを抑制でき、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる。また、近年、加工精度を向上させるために、セラミック誘電体基板の構造が複雑化しており、複数の冷却ガス用孔を同一円周上に配置できない場合がある。複数の冷却ガス用孔が同一円周上に配置されていない場合、溝パターンの形状によっては、周方向における冷却ガス分布の均一性が低下するおそれがある。これに対し、この静電チャックによれば、複数の冷却ガス用孔が同一円周上に配置されていない場合であっても、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0010】
第2の発明は、平面視において円形のセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、前記セラミック誘電体基板は、処理対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面から前記第2主面に向かって窪む溝部と、前記溝部と前記第2主面との間を貫通し冷却ガスが通過可能に設けられた複数の冷却ガス用孔と、を有し、前記溝部は、周方向に延びる第1周方向溝と、周方向に延び少なくとも一部が径方向において前記第1周方向溝と隣り合う第2周方向溝と、径方向に延び前記第1周方向溝と交差する第1径方向溝と、径方向に延び前記第2周方向溝と交差する第2径方向溝と、を有し、前記複数の冷却ガス用孔は、平面視において前記第1周方向溝と重なる第1孔と、平面視において前記第2周方向溝と重なる第2孔と、を有し、前記ベースプレートは、前記第1孔及び前記第2孔に前記冷却ガスを供給するガス導入路を有し、前記第1周方向溝は、周方向の一端側に位置する第1端部と、周方向の他端側に位置する第2端部と、を有し、前記第2周方向溝は、周方向の前記一端側に位置する第3端部と、周方向の前記他端側に位置する第4端部と、を有し、前記第3端部及び前記第4端部は、それぞれ、径方向において前記第1端部と重ならないことを特徴とする静電チャックである。
【0011】
この静電チャックによれば、第2周方向溝の第3端部及び第4端部がそれぞれ径方向において第1周方向溝の第1端部と重ならないように配置されることで、第1周方向溝の端部と第2周方向溝の端部とが径方向において直線状に揃うことを抑制できる。これにより、冷却ガスがいきわたりにくい領域が生じることを抑制でき、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる。また、この静電チャックによれば、複数の冷却ガス用孔が同一円周上に配置されていない場合であっても、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1径方向溝と前記第1周方向溝との交点から前記第1孔までの距離は、前記第2径方向溝と前記第2周方向溝との交点から前記第2孔までの距離と等しいことを特徴とする静電チャックである。
【0013】
この静電チャックによれば、第1径方向溝と第1周方向溝との交点から第1孔までの距離を、第2径方向溝と第2周方向溝との交点から第2孔までの距離と等しくすることで、第1孔と第2孔とが同一円周上に配置されていない場合であっても、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0014】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記第3端部及び前記第4端部は、それぞれ、径方向において前記第2端部と重ならないことを特徴とする静電チャックである。
【0015】
この静電チャックによれば、第2周方向溝の第3端部及び第4端部がそれぞれ径方向において第1周方向溝の第2端部と重ならないように配置されることで、第1周方向溝の端部と第2周方向溝の端部とが径方向において直線状に揃うことを抑制できる。これにより、冷却ガスがいきわたりにくい領域が生じることをさらに抑制でき、周方向における冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0016】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記第1周方向溝は、周方向における中央を含む中央領域を有し、前記第3端部は、径方向において前記中央領域と重なることを特徴とする静電チャックである。
【0017】
この静電チャックによれば、第2周方向溝の第3端部が径方向において第1周方向溝の中央領域と重なるように配置されることで、周方向における冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、前記第3端部は、前記第1周方向溝の周方向における前記中央よりも周方向の前記他端側に位置することを特徴とする静電チャックである。
【0019】
この静電チャックによれば、第2周方向溝の第3端部が第1周方向溝の周方向における中央よりも周方向の他端側に位置することで、周方向における冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0020】
第7の発明は、第6の発明において、前記第4端部は、前記第2端部よりも周方向の前記他端側に位置することを特徴とする静電チャックである。
【0021】
この静電チャックによれば、第2周方向溝の第4端部が第1周方向溝の第2端部よりも周方向の他端側に位置することで、周方向における冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0022】
第8の発明は、第1~第7のいずれか1つの発明において、前記セラミック誘電体基板を加熱するヒータをさらに備えたことを特徴とする静電チャックである。
【0023】
この静電チャックによれば、ヒータが設けられている場合でも、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0024】
第9の発明は、第1~第8のいずれか1つの発明の静電チャックと、前記ガス導入路を介して前記第1孔及び前記第2孔に前記冷却ガスを供給するガス供給部と、を備えたことを特徴とする半導体製造装置である。
【0025】
この半導体製造装置によれば、静電チャックの表面温度をより均一に制御することができ、エッチングなどによるウェーハの加工精度を向上できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の態様によれば、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる静電チャック及び半導体製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る静電チャックを模式的に表す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るセラミック誘電体基板の一部を模式的に表す平面図である。
【
図4】第1実施形態の変形例に係るセラミック誘電体基板の一部を模式的に表す平面図である。
【
図5】第2実施形態に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
【
図6】第2実施形態に係るセラミック誘電体基板の一部を模式的に表す平面図である。
【
図7】第2実施形態の変形例に係るセラミック誘電体基板の一部を模式的に表す平面図である。
【
図8】第3実施形態に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
【
図9】第3実施形態の変形例に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
【
図10】第4実施形態系に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
【
図11】第4実施形態系に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
【
図12】第1実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
【
図13】第1実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
【
図14】第1実施形態の変形例に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0029】
図1は、第1実施形態に係る静電チャックを模式的に表す断面図である。
図1に表したように、第1実施形態に係る静電チャック100は、セラミック誘電体基板10と、ベースプレート20と、ヒータ30と、を備える。
【0030】
セラミック誘電体基板10は、例えば、多結晶セラミック焼結体による平板状の基材である。セラミック誘電体基板10に含まれる結晶の材料としては、例えばAl2O3、Y2O3及びYAGなどが挙げられる。このような材料を用いることで、セラミック誘電体基板10における赤外線透過性、絶縁耐性及びプラズマ耐久性を高めることができる。
【0031】
セラミック誘電体基板10は、第1主面11と、第2主面12と、溝部13と、複数の冷却ガス用孔14と、を有する。第1主面11は、外部に露出し、半導体ウェーハ等の処理対象物Wが載置される面である。第2主面12は、第1主面11とは反対側の面である。溝部13は、第1主面11から第2主面12に向かって窪む凹部である。複数の冷却ガス用孔14は、溝部13と第2主面12との間を貫通する。複数の冷却ガス用孔14は、冷却ガスが通過可能に設けられている。複数の冷却ガス用孔14は、溝部13と連通する。これにより、溝部13は、複数の冷却ガス用孔14から供給された冷却ガスを第1主面11に拡散させる。溝部13及び複数の冷却ガス用孔14については、後述する。
【0032】
本願明細書では、第1主面11に対して垂直な方向をZ方向とする。Z方向は、換言すれば、第1主面11と第2主面12とを結ぶ方向である。また、Z方向と直交する方向の1つをX方向、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。本願明細書において、「面内」とは、例えばX-Y平面内である。また、本願明細書において、「平面視」とは、Z方向に沿って見た状態を示す。
【0033】
第1主面11は、例えば、平面部11aと、突起部11bと、を有する。平面部11aは、例えば、第2主面12に対して平行な面である。突起部11bは、平面部11aから第2主面12とは反対側に向かって突出する。処理対象物Wは、突起部11bの上に載置され、突起部11bにより支持される。突起部11bは、処理対象物Wの裏面と接する。突起部11bを設けることで、静電チャック100に載置された処理対象物Wの裏面と平面部11aとの間に空間を形成することができる。突起部11bの高さ、数、突起部11bの面積比率、形状などを適宜選択することで、例えば、処理対象物Wに付着するパーティクルを好ましい状態にすることができる。
【0034】
セラミック誘電体基板10の内部には、電極層15が設けられている。電極層15は、第1主面11と、第2主面12と、の間に介設されている。すなわち、電極層15は、セラミック誘電体基板10の中に挿入されるように形成されている。電極層15は、セラミック誘電体基板10に一体焼結されている。なお、電極層15は、第1主面11と、第2主面12と、の間に介設されていることに限定されず、第2主面12に付設されていてもよい。
【0035】
電極層15には、セラミック誘電体基板10の第2主面12側に延びる接続部16が設けられている。接続部16は、電極層15と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)、もしくは金属端子をロウ付けなどの適切な方法で接続したものである。
【0036】
静電チャック100は、吸着用電源505から電極層15に電圧(吸着用電圧)を印加することによって、電極層15の第1主面11側に電荷を発生させ、静電力によって処理対象物Wを吸着保持する。
【0037】
電極層15は、第1主面11及び第2主面12に沿って設けられている。電極層15は、処理対象物Wを吸着保持するための吸着電極である。電極層15は、単極型でも双極型でもよい。また、電極層15は、三極型やその他の多極型であってもよい。電極層15の数や電極層15の配置は、適宜選択される。
【0038】
ベースプレート20は、セラミック誘電体基板10の第2主面12側に設けられ、セラミック誘電体基板10を支持する。ベースプレート20は、例えば、アルミニウムなどの金属製である。
【0039】
ベースプレート20は、例えば、上部20aと下部20bとに分けられている。上部20aと下部20bとの間には、連通路25が設けられている。連通路25は、一端側が入力路21に接続され、他端側が出力路22に接続されている。
【0040】
ベースプレート20は、静電チャック100の温度調整を行う役目も果たす。例えば、静電チャック100を冷却する場合には、入力路21からヘリウムガスなどの冷却媒体を流入し、連通路25を通過させ、出力路22から流出させる。これにより、冷却媒体によってベースプレート20の熱を吸収し、その上に取り付けられたセラミック誘電体基板10を冷却することができる。一方、静電チャック100を保温する場合には、連通路25内に保温媒体を入れることも可能である。
【0041】
また、ベースプレート20には、少なくとも1つのガス導入路23が設けられる。この例では、ベースプレート20には、複数のガス導入路23が設けられている。各ガス導入路23は、例えば、Z方向においてベースプレート20を貫通するように設けられている。複数のガス導入路23は、それぞれ、セラミック誘電体基板10の複数の冷却ガス用孔14と連通する。これにより、ベースプレート20のガス導入路23から導入された冷却ガスが、セラミック誘電体基板10の冷却ガス用孔14を通り、冷却ガス用孔14と連通する溝部13に沿って、第1主面11に拡散される。ガス導入路23は、後述するように、ベースプレート20の内部で分岐していてもよい(
図14参照)。
【0042】
冷却ガス用孔14には、ガス供給部24から冷却ガスが供給される(
図13、
図14参照)。ガス供給部24は、ガス導入路23に接続され、ガス導入路23を介して、冷却ガス用孔14に冷却ガスを供給する。ガス供給部24は、例えば、供給する冷却ガスの圧力や冷却ガスの供給開始及び供給停止を制御する。
【0043】
この例では、複数のガス導入路23が1つのガス供給部24に接続されている。すなわち、この例では、1つのガス供給部24から複数のガス導入路23を介して、複数の冷却ガス用孔14に冷却ガスが供給されている。言い換えれば、この例では、複数の冷却ガス用孔14は、1つのガス供給部24によって制御されている。各冷却ガス用孔14に供給される冷却ガスの圧力は、例えば、それぞれ同じである。
【0044】
実施形態においては、1つのガス導入路23が複数の冷却ガス用孔14と接続(連通)していてもよい。この場合も、この1つのガス導入路23に接続された複数の冷却ガス用孔14は、1つのガス供給部24によって制御される。
【0045】
この例では、ガス導入路23と冷却ガス用孔14との接続部に、第1多孔質部41と、第2多孔質部42と、が設けられている。第1多孔質部41は、冷却ガス用孔14の内部に設けられている。第2多孔質部42は、ガス導入路23の内部に設けられている。第1多孔質部41及び第2多孔質部42は、Z方向において、互いに対向している。
【0046】
第1多孔質部41及び第2多孔質部42の材料は、例えば、絶縁性を有するセラミックスとすることができる。第1多孔質部41及び第2多孔質部42は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)及び酸化イットリウム(Y2O3)の少なくともいずれかを含む。なお、第1多孔質部41及び第2多孔質部42は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0047】
ヒータ30は、セラミック誘電体基板10を加熱する。ヒータ30は、セラミック誘電体基板10を加熱することで、セラミック誘電体基板10を介して処理対象物Wを加熱する。この例では、ヒータ30は、セラミック誘電体基板10と別体であり、セラミック誘電体基板10とベースプレート20との間に設けられている。ヒータ30は、例えば、接着層を介してベースプレート20に接着されている。ヒータ30は、例えば、接着層を介してセラミック誘電体基板10に接着されている。
【0048】
なお、ヒータ30は、セラミック誘電体基板10の中に挿入されるように形成されてもよい。言い換えれば、ヒータ30は、セラミック誘電体基板10に内蔵されていてもよい。ヒータ30は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0049】
図2は、第1実施形態に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
図3は、第1実施形態に係るセラミック誘電体基板の一部を模式的に表す平面図である。
図2及び
図3は、第1主面11側からセラミック誘電体基板10を見たときの平面図である。
図3は、
図2に示した領域R1の拡大図である。
図2及び
図3に表したように、セラミック誘電体基板10は、平面視において円形である。
【0050】
セラミック誘電体基板10の第1主面11側には、溝部13が設けられている。溝部13は、周方向溝部60と、径方向溝部70と、を有する。周方向溝部60は、周方向Dcに延び径方向Drに並ぶ複数の周方向溝を有する。径方向溝部70は、径方向Drに延び周方向Dcに並ぶ複数の径方向溝を有する。複数の径方向溝の少なくとも一部は、複数の周方向溝の少なくとも一部と交差する。周方向Dcとは、セラミック誘電体基板10の中心CTを中心とする円の円周に沿う方向である。径方向Drとは、セラミック誘電体基板10の中心CTからセラミック誘電体基板10の外縁10aに向かう方向である。
【0051】
この例では、周方向溝部60は、径方向Drにおいて並ぶ複数の周方向溝60a~60eを有する。各周方向溝60a~60eは、径方向Drにおいて、最外周から中心CTに向かって、周方向溝60a、周方向溝60b、周方向溝60c、周方向溝60d、周方向溝60eの順に並んでいる。各周方向溝60a~60eは、中心CTを中心とし異なる半径を有する同心円の円周上に設けられている。各周方向溝60a~60eは、径方向Drにおいて、等間隔に設けられている。これらの周方向溝60a~60eのうち、径方向Drにおいて互いに隣り合う2つを、第1周方向溝61及び第2周方向溝62とする。
【0052】
以下では、周方向溝60bを第1周方向溝61、第1周方向溝61よりも径方向Drの内側に位置し第1周方向溝61と隣り合う周方向溝60cを第2周方向溝62として説明するが、第1周方向溝61及び第2周方向溝62は、これらに限定されない。第1周方向溝61及び第2周方向溝62は、径方向Drにおいて互いに隣り合ういずれか2つの周方向溝であればよい。つまり、例えば、周方向溝60cが第1周方向溝61であり、周方向溝60dが第2周方向溝62であってもよい。また、第2周方向溝62は、第1周方向溝61よりも径方向Drの外側に位置し第1周方向溝61と隣り合う周方向溝であってもよい。つまり、例えば、周方向溝60cが第1周方向溝61であり、周方向溝60bが第2周方向溝62であってもよい。
【0053】
第2周方向溝62の少なくとも一部は、径方向Drにおいて、第1周方向溝61と重なる。第2周方向溝62の全部が径方向Drにおいて第1周方向溝61と重なってもよいし、第2周方向溝62の一部のみが径方向Drにおいて第1周方向溝61と重なっていてもよい。つまり、第2周方向溝62の一部は、径方向Drにおいて第1周方向溝61と重ならなくてもよい。この例では、第2周方向溝62の一部のみが径方向Drにおいて第1周方向溝61と重なっている。
【0054】
なお、径方向Drにおいて並ぶ複数の周方向溝の数は、5に限定されず、2以上であればよい。また、径方向Drにおいて並ぶ複数の周方向溝の間の間隔は、等間隔でなくてもよい。
【0055】
また、この例では、各周の周方向溝は、同一円周上において不連続に複数設けられている。より具体的には、周方向溝60aは、同一円周上において不連続に2個設けられている。同一円周上に設けられた各周方向溝60aの周方向Dcにおける長さは、同一である。また、周方向溝60bは、同一円周上において不連続に5個設けられている。同一円周上に設けられた各周方向溝60bの周方向Dcにおける長さは、同一である。また、周方向溝60cは、同一円周上において不連続に5個設けられている。同一円周上に設けられた各周方向溝60cの周方向Dcにおける長さは、同一である。周方向溝60dは、同一円周上において不連続に5個設けられている。同一円周上に設けられた各周方向溝60dの周方向Dcにおける長さは、同一である。周方向溝60eは、同一円周上において不連続に10個設けられている。同一円周上に設けられた各周方向溝60eの周方向Dcにおける長さは、同一である。同一円周上に設けられる周方向溝の数は、例えば、2以上であることが好ましい。
【0056】
この例では、径方向溝部70は、周方向Dcにおいて並ぶ複数の径方向溝70a~70jを有する。各径方向溝70a~70jは、周方向Dcにおいて、時計回りに、径方向溝70a、径方向溝70b、径方向溝70c、径方向溝70d、径方向溝70e、径方向溝70f、径方向溝70g、径方向溝70h、径方向溝70i、径方向溝70jの順に並んでいる。各径方向溝70a~70jは、周方向Dcにおいて、等間隔に設けられている。これらの径方向溝70a~70jのうち、第1周方向溝61と交差する1つを第1径方向溝71とし、第2周方向溝62と交差する1つを第2径方向溝72とする。また、第1径方向溝71と第1周方向溝61との交点を交点P1とし、第2径方向溝72と第2周方向溝62との交点を交点P2とする。第1径方向溝71及び第2径方向溝72は、例えば、周方向Dcにおいて互いに隣り合う。この例では、径方向溝70aが第1径方向溝71であり、径方向溝70jが第2径方向溝72である。
【0057】
第2径方向溝72の少なくとも一部は、周方向Dcにおいて、第1径方向溝71と重なることが好ましい。この例では、径方向溝70a~70jの全てが、周方向溝60aから周方向溝60eまで延びている。つまり、この例では、第2径方向溝72の全部が、周方向Dcにおいて、第1径方向溝71と重なっている。
【0058】
なお、周方向Dcにおいて並ぶ複数の径方向溝の数は、10に限定されず、2以上であればよい。周方向Dcにおいて並ぶ複数の径方向溝の数は、例えば、同一円周上に設けられる第1周方向溝61の数と、同一円周上に設けられる第2周方向溝62の数と、の合計に等しい。また、周方向Dcにおいて並ぶ複数の径方向溝の間の間隔は、等間隔でなくてもよい。
【0059】
図3に表したように、第1周方向溝61は、第1端部61aと、第2端部61bと、を有する。第1端部61aは、第1周方向溝61の周方向Dcの一端側に位置する。第2端部61bは、第1周方向溝61の周方向Dcの他端側に位置する。第2周方向溝62は、第3端部62aと、第4端部62bと、を有する。第3端部62aは、第2周方向溝62の周方向Dcの一端側に位置する。第4端部62bは、第2周方向溝62の周方向Dcの他端側に位置する。なお、この例では、時計回りの方向の端部を一端側、反時計回りの方向の端部を他端側としているが、一端側と他端側とは、逆でもよい。
【0060】
第2周方向溝62の第3端部62aは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第1端部61aと重ならない。つまり、第3端部62aと中心CTとを結ぶ仮想直線IL3は、第1端部61aと中心CTとを結ぶ仮想直線IL1と交差する。また、第2周方向溝62の第4端部62bは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第1端部61aと重ならない。つまり、第4端部62bと中心CTとを結ぶ仮想直線IL4は、仮想直線IL1と交差する。
【0061】
第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第1周方向溝61の第1端部61aと重ならないように配置されることで、第1周方向溝61の端部と第2周方向溝62の端部とが径方向Drにおいて直線状に揃うことを抑制できる。これにより、冷却ガスがいきわたりにくい領域が生じることを抑制でき、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0062】
また、近年、加工精度を向上させるために、セラミック誘電体基板10の構造が複雑化しており、複数の冷却ガス用孔14を同一円周上に配置できない場合がある。例えば、セラミック誘電体基板10の中にヒータ30が設けられる場合には、ヒータ30を避けるように複数の冷却ガス用孔14を設けた結果、複数の冷却ガス用孔14を同一円周上に配置できなくなる場合がある。複数の冷却ガス用孔14が同一円周上に配置されていない場合、溝パターンの形状によっては、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性が低下するおそれがある。これに対し、この静電チャック100によれば、複数の冷却ガス用孔14が同一円周上に配置されていない場合であっても、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。例えば、ヒータ30が設けられた静電チャック100においても、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0063】
さらに、この例では、第2周方向溝62の第3端部62aは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第2端部61bと重ならない。つまり、この例では、仮想直線IL3は、第2端部61bと中心CTとを結ぶ仮想直線IL2と交差する。また、この例では、第2周方向溝62の第4端部62bは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第2端部61bと重ならない。つまり、この例では、仮想直線IL4は、仮想直線IL2と交差する。
【0064】
第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第1周方向溝61の第2端部61bと重ならないように配置されることで、第1周方向溝61の端部と第2周方向溝62の端部とが径方向Drにおいて直線状に揃うことを抑制できる。これにより、冷却ガスがいきわたりにくい領域が生じることをさらに抑制でき、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0065】
なお、第3端部62aは、径方向Drにおいて、第2端部61bと重なっていてもよい。つまり、仮想直線IL3は、仮想直線IL2と同一直線上に位置していてもよい。また、第4端部62bは、径方向Drにおいて、第2端部61bと重なっていてもよい。つまり、仮想直線IL4は、仮想直線IL2と同一直線上に位置していてもよい。
【0066】
この例では、複数の冷却ガス用孔14は、平面視において、径方向溝70a~70jと重なる位置に設けられている。複数の冷却ガス用孔14は、平面視において第1径方向溝71と重なる第1孔14aと、平面視において第2径方向溝72と重なる第2孔14bと、を有する。第1孔14aは、第1径方向溝71と連通している。第2孔14bは、第2径方向溝72と連通している。この例では、第1孔14a及び第2孔14bを含む複数の冷却ガス用孔14は、中心CTを中心とする同一円周上に配置されている。
【0067】
第1孔14a及び第2孔14bは、1つのガス導入路23に接続される。つまり、第1孔14a及び第2孔14bは、同じガス導入路23に接続される。言い換えれば、第1孔14a及び第2孔14bは、1つのガス供給部24に接続される。言い換えれば、第1孔14a及び第2孔14bは、1つのガス供給部24により制御される。第1孔14aに供給される冷却ガスの圧力は、例えば、第2孔14bに供給される冷却ガスの圧力と同じである。この例では、第1孔14a及び第2孔14bを含む全ての冷却ガス用孔14は、1つのガス供給部24に接続されている。
【0068】
また、第1径方向溝71と第1周方向溝61との交点P1から第1孔14aまでの距離D1は、第2径方向溝72と第2周方向溝62との交点P2から第2孔14bまでの距離D2と等しい。距離D1を距離D2と等しくすることで、第1孔14aと第2孔14bとが同一円周上に配置されていない場合であっても、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0069】
なお、距離D1及び距離D2は、それぞれ異なっていてもよい。また、距離D1及び距離D2は、それぞれ、0であってもよい。つまり、第1孔14aは、交点P1と重なる位置に設けられていてもよく、第2孔14bは、交点P2と重なる位置に設けられていてもよい。このような例については、
図8及び
図9で説明する。
【0070】
また、第2周方向溝62の少なくとも一部は、径方向Drにおいて、第1周方向溝61と重なる。つまり、第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bの少なくともいずれかは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61と重なる。この例では、第2周方向溝62の第3端部62aは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61と重なっており、第2周方向溝62の第4端部62bは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61と重なっていない。つまり、第2周方向溝62の一部は、径方向Drにおいて第1周方向溝61と重なり、第2周方向溝62の別の一部は、径方向Drにおいて第1周方向溝61と重ならない。言い換えれば、第2周方向溝62は、径方向Drにおいて、第1周方向溝61とずらして配置されている。
【0071】
第1周方向溝61は、中央領域61cと、第1端領域61dと、第2端領域61eと、を有する。第1端領域61dは、周方向Dcの一端側に位置し、第1端部61aを含む領域である。第2端領域61eは、周方向Dcの他端側に位置し、第2端部61bを含む領域である。中央領域61cは、周方向Dcにおいて、第1端領域61dと第2端領域61eとの間に位置する領域である。中央領域61cは、第1周方向溝61の周方向Dcにおける中央を含む。
図3では、第1周方向溝61の周方向Dcにおける中央を通り、径方向Drに延びる中央線CLを一点鎖線で表している。この例では、第1周方向溝61の周方向Dcにおける中央は、交点P1と一致している。例えば、第1周方向溝61を周方向Dcにおいて3つの領域に等分した場合、最も一端側に位置する領域を第1端領域61d、最も他端側に位置する領域を第2端領域61e、中央に位置する領域を中央領域61cとみなすことができる。
【0072】
第2周方向溝62の第3端部62aは、例えば、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の中央領域61cと重なる。第2周方向溝62の第3端部62aが径方向Drにおいて第1周方向溝61の中央領域61cと重なるように配置されることで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0073】
また、この場合、第2周方向溝62の第3端部62aは、第1周方向溝61の周方向Dcにおける中央(中央線CL)よりも周方向Dcの他端側に位置することが好ましい。つまり、第2周方向溝62は、平面視において、中央線CLと重ならないことが好ましい。第2周方向溝62の第3端部62aが第1周方向溝61の周方向Dcにおける中央(中央線CL)よりも周方向Dcの他端側に位置することで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0074】
また、この場合、第2周方向溝62の第4端部62bは、第1周方向溝61の第2端部61bよりも周方向Dcの他端側に位置することが好ましい。つまり、第2周方向溝62の第4端部62bは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61と重ならないことが好ましい。第2周方向溝62の第4端部62bが第1周方向溝61の第2端部61bよりも周方向Dcの他端側に位置することで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0075】
なお、第2周方向溝62の第3端部62aは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第1端領域61dと重なっていてもよいし、第1周方向溝61の第2端領域61eと重なっていてもよい。また、第2周方向溝62の第3端部62aは、第1周方向溝61の周方向Dcにおける中央(中央線CL)よりも周方向Dcの一端側に位置していてもよい。つまり、第2周方向溝62は、平面視において、中央線CLと重なっていてもよい。また、第2周方向溝62の第4端部62bは、第1周方向溝61の第2端部61bよりも周方向Dcの一端側に位置していてもよい。つまり、第2周方向溝62の第4端部62bは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61と重なっていてもよい。
【0076】
また、この例では、周方向溝60dの周方向Dcの一端側の端部は、径方向Drにおいて、周方向溝60b(第1周方向溝61)の周方向Dcの一端側の端部(第1端部61a)と重なっている。また、周方向溝60dの周方向Dcの他端側の端部は、径方向Drにおいて、周方向溝60b(第1周方向溝61)の周方向Dcの他端側の端部(第2端部61b)と重なっている。このように、2つの周方向溝の間に他の周方向溝が配置されている場合(すなわち、2つの周方向溝が互いに隣り合わない場合)には、この2つの周方向溝の端部は、径方向Drにおいて重なっていてもよい。
【0077】
図4は、第1実施形態の変形例に係るセラミック誘電体基板の一部を模式的に表す平面図である。
図4は、第1主面11側からセラミック誘電体基板10Aを見たときの平面図である。
図4は、
図2に示した領域R1に相当する領域の拡大図である。
図4に表したように、この例では、第1孔14a及び第2孔14bは、同一円周上に配置されていない。それ以外は、
図2及び
図3に示した第1実施形態に係るセラミック誘電体基板10と同じである。
【0078】
この例でも、第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第1周方向溝61の第1端部61aや第2端部61bと重ならないように配置されることで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0079】
また、この例でも、第1径方向溝71と第1周方向溝61との交点P1から第1孔14aまでの距離D1は、第2径方向溝72と第2周方向溝62との交点P2から第2孔14bまでの距離D2と等しい。距離D1を距離D2と等しくすることで、第1孔14aと第2孔14bとが同一円周上に配置されていない場合であっても、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0080】
図5は、第2実施形態に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
図6は、第2実施形態に係るセラミック誘電体基板の一部を模式的に表す平面図である。
図5及び
図6は、第1主面11側からセラミック誘電体基板10Bを見たときの平面図である。
図5は、
図6に示した領域R2の拡大図である。
図5及び
図6に表したように、この例では、複数の冷却ガス用孔14は、平面視において、周方向溝60a、60bと重なる位置に設けられている。複数の冷却ガス用孔14は、平面視において第1周方向溝61と重なる第1孔14aと、平面視において第2周方向溝62と重なる第2孔14bと、を有する。第1孔14aは、第1周方向溝61と連通している。第2孔14bは、第2周方向溝62と連通している。それ以外は、
図2及び
図3に示した第1実施形態に係るセラミック誘電体基板10と同じである。
【0081】
この例でも、第2周方向溝62の第3端部62aは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第1端部61aと重ならない。また、第2周方向溝62の第4端部62bは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第1端部61aと重ならない。また、第2周方向溝62の第3端部62aは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第2端部61bと重ならない。また、第2周方向溝62の第4端部62bは、径方向Drにおいて、第1周方向溝61の第2端部61bと重ならない。
【0082】
第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第1周方向溝61の第1端部61aや第2端部61bと重ならないように配置されることで、第1周方向溝61の端部と第2周方向溝62の端部とが径方向Drにおいて直線状に揃うことを抑制できる。これにより、冷却ガスがいきわたりにくい領域が生じることを抑制でき、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。また、冷却ガス用孔14が同一円周上に配置されていない場合であっても、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0083】
また、この例でも、第1径方向溝71と第1周方向溝61との交点P1から第1孔14aまでの距離D1は、第2径方向溝72と第2周方向溝62との交点P2から第2孔14bまでの距離D2と等しい。距離D1を距離D2と等しくすることで、第1孔14aと第2孔14bとが同一円周上に配置されていない場合であっても、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0084】
図7は、第2実施形態の変形例に係るセラミック誘電体基板の一部を模式的に表す平面図である。
図7は、第1主面11側からセラミック誘電体基板10Cを見たときの平面図である。
図7は、
図5に示した領域R2に相当する領域の拡大図である。
図7に表したように、この例では、第1孔14a及び第2孔14bは、径方向Drにおいて、重なる位置に設けられている。それ以外は、
図5及び
図6に示した第2実施形態に係るセラミック誘電体基板10Bと同じである。
【0085】
この例でも、第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第1周方向溝61の第1端部61aや第2端部61bと重ならないように配置されることで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0086】
また、この例でも、第1径方向溝71と第1周方向溝61との交点P1から第1孔14aまでの距離D1は、第2径方向溝72と第2周方向溝62との交点P2から第2孔14bまでの距離D2と等しい。距離D1を距離D2と等しくすることで、第1孔14a及び第2孔14bが径方向Drにおいて重なる位置に設けられている場合であっても、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0087】
図8は、第3実施形態に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
図8は、第1主面11側からセラミック誘電体基板10Dを見たときの平面図である。
図8に表したように、この例では、第1孔14aは、交点P1と重なる位置に設けられている。また、第2孔14bは、交点P2と重なる位置に設けられている。それ以外は、
図2及び
図3に示した第1実施形態に係るセラミック誘電体基板10と同じである。
【0088】
この例でも、第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第1周方向溝61の第1端部61aや第2端部61bと重ならないように配置されることで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0089】
このように、冷却ガス用孔14は、周方向溝(第1周方向溝61や第2周方向溝62)と重なる位置に設けられていてもよいし、径方向溝(第1径方向溝71や第2径方向溝72)と重なる位置に設けられていてもよいし、周方向溝と径方向溝との交点(交点P1や交点P2)と重なる位置に設けられていてもよい。
【0090】
図9は、第3実施形態の変形例に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
図9は、第1主面11側からセラミック誘電体基板10Eを見たときの平面図である。
図9に表したように、この例では、
図8に示した第3実施形態に係るセラミック誘電体基板10Dにおいて設けられた冷却ガス用孔14に加えて、周方向溝と径方向溝との他の交点の一部と重なる位置にも冷却ガス用孔14が設けられている。これらの他の交点と重なる位置に設けられる冷却ガス用孔14は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0091】
この例でも、第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第1周方向溝61の第1端部61aや第2端部61bと重ならないように配置されることで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0092】
図10及び
図11は、第4実施形態に係るセラミック誘電体基板を模式的に表す平面図である。
図10及び
図11は、第1主面11側からセラミック誘電体基板10Fを見たときの平面図である。
図10及び
図11に表したように、この例では、セラミック誘電体基板10Fは、第1ゾーン210と、第2ゾーン220と、を有する。それ以外は、
図4に示した第1実施形態の変形例に係るセラミック誘電体基板10Aと同じである。
【0093】
この例では、第1ゾーン210及び第2ゾーン220は、径方向Drにおいて並んでいる。第2ゾーン220は、径方向Drにおいて、第1ゾーン210の内側に位置する。この例では、二点鎖線の外側が第1ゾーン210であり、二点鎖線の内側が第2ゾーン220である。第1ゾーン210は、例えば、外縁10aを含む。第2ゾーン220は、例えば、中心CTを含む。
【0094】
図10に表したように、第1ゾーン210及び第2ゾーン220は、それぞれ、溝部13(周方向溝部60及び径方向溝部70)と、複数の冷却ガス用孔14と、を有する。第1ゾーン210の溝部13と第2ゾーン220の溝部13とは、互いに連通しない。
【0095】
第1ゾーン210は、平面視において第1径方向溝71と重なる第1孔14aと、平面視において第2径方向溝72と重なる第2孔14bと、を有する。この例では、第1孔14a及び第2孔14bは、同一円周上に配置されていない。第1孔14a及び第2孔14bは、同一円周上に配置されていてもよい。また、第1孔14a及び第2孔14bは、平面視において周方向溝部60と重なる位置に配置されていてもよいし、周方向溝部60と径方向溝部70との交点と重なる位置に配置されていてもよい。
【0096】
この例では、周方向溝部60は、第1ゾーン210に設けられた周方向溝60a~60eに加えて、第2ゾーン220に設けられた周方向溝60f~60hを有する。各周方向溝60f~60hは、径方向Drにおいて、外周側から中心CTに向かって、周方向溝60f、周方向溝60g、周方向溝60hの順に並んでいる。各周方向溝60f~60hは、中心CTを中心とし異なる半径を有する同心円の円周上に設けられている。各周方向溝60f~60hは、径方向Drにおいて、等間隔に設けられている。これらの周方向溝60f~60hのうち、径方向Drにおいて互いに隣り合う2つを、第3周方向溝63及び第4周方向溝64とする。
【0097】
第2ゾーン220における第3周方向溝63及び第4周方向溝64は、それぞれ、第1ゾーン210における第1周方向溝61及び第2周方向溝62に対応する。例えば、上述の第1周方向溝61と第2周方向溝62との間の関係は、第3周方向溝63と第4周方向溝64との間の関係にも適用される。
【0098】
この例では、径方向溝部70は、第1ゾーン210に設けられた径方向溝70a~70jに加えて、第2ゾーン220に設けられた径方向溝70k~70rを有する。各径方向溝70k~70rは、周方向Dcにおいて、時計回りに、径方向溝70k、径方向溝70m、径方向溝70n、径方向溝70p、径方向溝70q、径方向溝70rの順に並んでいる。各径方向溝70k~70rは、周方向Dcにおいて、等間隔に設けられている。これらの径方向溝70k~70rのうち、第3周方向溝63と交差する1つを第3径方向溝73とし、第4周方向溝64と交差する1つを第4径方向溝74とする。
【0099】
第2ゾーン220における第3径方向溝73及び第4径方向溝74は、それぞれ、第1ゾーン210における第1方向溝71及び第2径方向溝72に対応する。例えば、上述の第1径方向溝71と第2径方向溝72との間の関係は、第3径方向溝73と第4径方向溝74との間の関係にも適用される。
【0100】
第2ゾーン220は、平面視において第3径方向溝73と重なる第3孔14cと、平面視において第4径方向溝74と重なる第4孔14dと、を有する。この例では、第3孔14c及び第4孔14dは、同一円周上に配置されていない。第3孔14c及び第4孔14dは、同一円周上に配置されていてもよい。また、第3孔14c及び第4孔14dは、平面視において周方向溝部60と重なる位置に配置されていてもよいし、周方向溝部60と径方向溝部70との交点と重なる位置に配置されていてもよい。
【0101】
図11に表したように、この例では、ガス導入路23は、第1ガス導入路23aと、第2ガス導入路23bと、を有する。
図11では、第1ガス導入路23a及び第2ガス導入路23bの平面視における位置を、二点鎖線で表している。
【0102】
第1ガス導入路23aは、第1ゾーン210に設けられ、第1ゾーン210に設けられた冷却ガス用孔14に接続される。第1孔14a及び第2孔14bは、第1ガス導入路23aに接続されている。
【0103】
第2ガス導入路23bは、第2ゾーン220に設けられ、第2ゾーン220に設けられた冷却ガス用孔14に接続される。第3孔14c及び第4孔14dは、第2ガス導入路23bに接続されている。
【0104】
第1ガス導入路23a及び第2ガス導入路23bは、それぞれ、平面視において、略環状に設けられている。第2ガス導入路23bは、例えば、平面視において、第1ガス導入路23aに対して径方向Drの内側に位置する。
【0105】
第1ガス導入路23a及び第2ガス導入路23bは、例えば、それぞれ異なるガス供給部24に接続される。つまり、第3孔14c及び第4孔14dに冷却ガスを供給するガス供給部24は、例えば、第1孔14a及び第2孔14bに冷却ガスを供給するガス供給部24とは異なる。第2ゾーン220に設けられた冷却ガス用孔14(第3孔14c及び第4孔14d)は、例えば、第1ゾーン210に設けられた冷却ガス用孔14(第1孔14a及び第2孔14b)とは異なるガス供給部24により制御される。これにより、例えば、第1ゾーン210に設けられた冷却ガス用孔14(第1孔14a及び第2孔14b)と第2ゾーン220に設けられた冷却ガス用孔14(第3孔14c及び第4孔14d)とを別々に制御可能とすることができる。第3孔14c及び第4孔14dに供給される冷却ガスの圧力は、例えば、第1孔14a及び第2孔14bに供給される冷却ガスの圧力と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0106】
この例でも、第1ゾーン210において、第2周方向溝62の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第1周方向溝61の第1端部61aや第2端部61bと重ならないように配置されることで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。さらに、第2ゾーン220において、第4周方向溝64の第3端部62a及び第4端部62bがそれぞれ径方向Drにおいて第3周方向溝63の第1端部61aや第2端部61bと重ならないように配置されることで、周方向Dcにおける冷却ガス分布の均一性を向上できる。
【0107】
また、第1ゾーン210に設けられた冷却ガス用孔14(第1孔14a及び第2孔14b)と第2ゾーン220に設けられた冷却ガス用孔14(第3孔14c及び第4孔14d)とを別々に制御可能とすることで、面内の冷却ガス分布の均一性をさらに向上できる。
【0108】
図12は、実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図12に表したように、ウェーハ処理装置500は、処理容器501と、高周波電源504と、吸着用電源505と、上部電極510と、静電チャック100と、を備えている。処理容器501の天井には、処理ガスを内部に導入するための処理ガス導入口502、及び、上部電極510が設けられている。処理容器501の底板には、内部を減圧排気するための排気口503が設けられている。静電チャック100は、処理容器501の内部において、上部電極510の下に配置されている。静電チャック100のベースプレート20及び上部電極510は、高周波電源504と接続されている。静電チャック100の電極層15は、吸着用電源505と接続されている。
【0109】
ベースプレート20と上部電極510とは、互いに所定の間隔を隔てて略平行に設けられている。処理対象物Wは、ベースプレート20と上部電極510との間に位置する第1主面11に載置される。
【0110】
高周波電源504からベースプレート20及び上部電極510に電圧(高周波電圧)が印加されると、高周波放電が起こり処理容器501内に導入された処理ガスがプラズマにより励起、活性化されて、処理対象物Wが処理される。
【0111】
吸着用電源505から電極層15に電圧(吸着用電圧)が印加されると、電極層15の第1主面11側に電荷が発生し、静電力によって処理対象物Wが静電チャック100に吸着保持される。
【0112】
図13は、第1実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図13に表したように、この例では、複数のガス導入路23は、1つのガス供給部24に接続されている。ガス供給部24から供給された冷却ガスは、各ガス導入路23を通って、各冷却ガス用孔14に供給される。これにより、複数の冷却ガス用孔14は、1つのガス供給部24によって制御されている。
【0113】
図14は、第1実施形態の変形例に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図14に表したように、この例では、ガス導入路23は、ベースプレート20の内部で分岐している。ガス導入路23は、各冷却ガス用孔14に連通する複数の第1部分26a(ガス流出路)と、横方向に延びて複数の第1部分26aを集約する第2部分26b(ガス横断路)と、第2部分26bからベースプレート20裏面まで延びる第3部分26c(ガス流入路)と、を有する。
【0114】
第3部分26cは、ガス供給部24に接続されている。ガス供給部24から供給された冷却ガスは、第3部分26c、第2部分26b、及び各第1部分26aを通って、各冷却ガス用孔14に供給される。これにより、複数の冷却ガス用孔14は、1つのガス供給部24によって制御されている。
【0115】
以上のように、実施形態によれば、周方向における冷却ガス分布の均一性を向上できる静電チャック及び半導体製造装置が提供される。
【0116】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、静電チャックが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0117】
10、10A~10F セラミック誘電体基板、 10a 外縁、 11 第1主面、 11a 平面部、 11b 突起部、 12 第2主面、 13 溝部、 14 冷却ガス用孔、 14a~14d 第1~第4孔、 15 電極層(吸着電極)、 16 接続部、 20 ベースプレート、 20a 上部、 20b 下部、 21 入力路、 22 出力路、 23 ガス導入路、 24 ガス供給部、 23a、23b 第1、第2ガス導入路、 25 連通路、 30 ヒータ、 41、42 第1、第2多孔質部、 60 周方向溝部、 26a~26c 第1~第3部分、 60a~60h 周方向溝、 61 第1周方向溝、 61a、61b 第1、第2端部、 61c 中央領域、 61d、61e 第1、第2端領域、 62 第2周方向溝、 62a、62b 第3、第4端部、 63、64 第3、第4周方向溝、 70 径方向溝部、 70a~70r 径方向溝、 71~74 第1~第4径方向溝、 100 静電チャック、 210、220 第1、第2ゾーン、 500 半導体製造装置、 501 処理容器、 502 処理ガス導入口、 503 排気口、 504 高周波電源、 505 吸着用電源、 510 上部電極、 CL 中央線、 CT 中心、 D1、D2 距離、 Dc 周方向、 Dr 径方向、 IL1~IL4 仮想直線、 P1、P2 交点、 R1、R2 領域、 W 処理対象物