(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】水洗大便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/24 20060101AFI20250821BHJP
【FI】
E03D1/24
(21)【出願番号】P 2023132411
(22)【出願日】2023-08-16
【審査請求日】2025-06-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】柏村 英明
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大知
(72)【発明者】
【氏名】羽生 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】松中 仁志
(72)【発明者】
【氏名】辰岡 星佳
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-132122(JP,A)
【文献】特開2023-032963(JP,A)
【文献】特開2004-100182(JP,A)
【文献】特開平07-180202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水タンク内に貯留された洗浄水により洗浄を行う水洗大便器装置であって、
ボウル部及びこのボウル部の下部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、
この水洗大便器本体の後部に配置され、上記水洗大便器本体のボウル部を洗浄するための洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、
この洗浄水タンクに設けられた第1の排水口を開閉することにより、上記ボウル部の上縁部に設けられたリム吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替える第1排水弁と、
上記洗浄水タンクに設けられた第2の排水口を開閉することにより、上記ボウル部の下部に設けられたジェット吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替える第2排水弁と、
水道から上記洗浄水タンクに供給される洗浄水の給水圧を利用して、上記第1排水弁又は上記第2排水弁を開弁させる水圧駆動機構と、
を有することを特徴とする水洗大便器装置。
【請求項2】
さらに、遅延機構を有し、上記第1排水弁と上記第2排水弁は、上記遅延機構により、上記ボウル部の洗浄時において、一方に対して他方が遅れて開弁される請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項3】
上記水圧駆動機構は、上記第2排水弁を開弁させるように構成されている請求項2記載の水洗大便器装置。
【請求項4】
上記遅延機構は、上記洗浄水タンク内の水位に連動して作動するボールタップを備え、このボールタップのフロートが所定位置まで低下すると、上記水圧駆動機構に洗浄水が供給される請求項2記載の水洗大便器装置。
【請求項5】
上記遅延機構は、フロートを備えたボールタップと、上記フロートを取り囲むように上記洗浄水タンク内に配置された、排出孔を備えた小タンクと、上記洗浄水タンク内の水位が所定水位まで低下すると、上記小タンクの上記排出孔を開弁させるように構成された逆止弁フロートと、を備え、上記小タンク内の水位が所定水位まで低下すると、上記水圧駆動機構に洗浄水が供給される請求項2記載の水洗大便器装置。
【請求項6】
上記遅延機構は、上記洗浄水タンク内の水位が所定の第1水位まで低下されると上記洗浄水タンク内への給水を開始させる第1ボールタップと、上記洗浄水タンク内の水位が上記第1水位よりも低い所定の第2水位まで低下されると上記水圧駆動機構への洗浄水の供給を開始させる第2ボールタップと、を備える請求項2記載の水洗大便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器装置に関し、特に、洗浄水タンク内に貯留された洗浄水により洗浄を行う水洗大便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なタンク式の水洗大便器装置においては、洗浄水タンクに単一の排水弁が設けられており、洗浄水タンクから排出された洗浄水をリム吐水口とジェット吐水口へ分岐させ、各吐水口から吐水を行っていた。即ち、水洗大便器本体内に形成された導水路が途中で分岐され、リム吐水口及びジェット吐水口に夫々洗浄水を導いていた。
【0003】
また、国際公開第2005/085538号(特許文献1)には、水洗大便器が記載されている。この水洗大便器はタンク式の水洗大便器であり、リム吐水用の洗浄水を貯留するタンク、及びジェット吐水用の洗浄水を貯留するタンクが備えられている。各洗浄水タンクには、リム吐水用とジェット吐水用に夫々排水弁が設けられ、これらの排水弁を開弁させることにより、リム吐水口及びジェット吐水から夫々吐水が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単一の排水弁を備える従来の水洗大便器装置では、リム吐水口及びジェット吐水からほぼ同時に吐水が開始される。このため、必ずしも、適切なタイミングで適切な吐水口から洗浄水が吐水されているとは云えず、使用する洗浄水の一部は洗浄に十分に活用されていなかった。即ち、洗浄に十分に活用できていない洗浄水により、無駄水が発生していた。
【0006】
一方、特許文献1記載の水洗大便器においては、リム吐水用及びジェット吐水用に夫々排水弁が備えられているため、リム吐水口、ジェット吐水口から異なるタイミングで吐水を開始させることが可能である。しかしながら、特許文献1記載の水洗大便器は、操作レバーに接続された玉鎖によって各排水弁が引き上げられる構造であるため、各吐水口からの吐水開始時機を自由に設定することができない。このため、特許文献1記載の水洗大便器においても、十分な無駄水の抑制効果を得ることができない。
【0007】
従って、本発明は、各排水弁の開弁タイミングを正確に設定することにより、少ない洗浄水で、効果的に洗浄を行うことができる水洗大便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水タンク内に貯留された洗浄水により洗浄を行う水洗大便器装置であって、ボウル部及びこのボウル部の下部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、この水洗大便器本体の後部に配置され、水洗大便器本体のボウル部を洗浄するための洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、この洗浄水タンクに設けられた第1の排水口を開閉することにより、ボウル部の上縁部に設けられたリム吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替える第1排水弁と、洗浄水タンクに設けられた第2の排水口を開閉することにより、ボウル部の下部に設けられたジェット吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替える第2排水弁と、水道から洗浄水タンクに供給される洗浄水の給水圧を利用して、第1排水弁又は第2排水弁を開弁させる水圧駆動機構と、を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、リム吐水口からの洗浄水の吐出、停止が第1排水弁により切り替えられ、ジェット吐水口からの洗浄水の吐出、停止が第2排水弁によって切り替えられるので、リム吐水及びジェット吐水の時機を自由に独立して設定することが可能になり、少ない洗浄水で水洗大便器本体のボウル部を効果的に洗浄することができる。また、第1排水弁又は第2排水弁が、洗浄水の給水圧を利用して、水圧駆動機構により開弁されるので、モータ等の電気的な動力で排水弁を引き上げる必要がなく、排水弁を開弁するための複雑な機構を用いることなく、開弁時機を設定することが可能になる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、遅延機構を有し、第1排水弁と第2排水弁は、遅延機構により、ボウル部の洗浄時において、一方に対して他方が遅れて開弁される。
【0011】
単一の排水弁によりリム吐水口及びジェット吐水口からの吐水を実行する従来の水洗大便器装置では、リム吐水口及びジェット吐水口からほぼ同時に吐水が開始されるため、必ずしも必要ではない時機に吐水が行われ、一部の洗浄水が無駄になる場合があった。上記のように構成された本発明によれば、遅延機構により、第1排水弁と第2排水弁が、一方に対して他方が遅れて開弁されるので、水洗大便器本体の構成に応じて、必要な時機にリム吐水口、ジェット吐水口からの吐水を開始させることができ、洗浄水量を抑制しながら効果的にボウル部を洗浄することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、水圧駆動機構は、第2排水弁を開弁させるように構成されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、水圧駆動機構により第2排水弁が開弁されるので、水圧駆動機構に洗浄水を供給する時機を調節することにより、ジェット吐水口からの吐水を開始させる時機を調節することができ、ジェット吐水の開始時機を自由に設定することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、遅延機構は、洗浄水タンク内の水位に連動して作動するボールタップを備え、このボールタップのフロートが所定位置まで低下すると、水圧駆動機構に洗浄水が供給される。
【0015】
このように構成された本発明によれば、ボールタップのフロートが所定位置まで低下すると、水圧駆動機構に洗浄水が供給されるので、洗浄水タンク内の水位に基づいて適切な時期に水圧駆動機構への洗浄水の供給を開始させ、ジェット吐水口からの吐水を開始させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、遅延機構は、フロートを備えたボールタップと、フロートを取り囲むように洗浄水タンク内に配置された、排出孔を備えた小タンクと、洗浄水タンク内の水位が所定水位まで低下すると、小タンクの排出孔を開弁させるように構成された逆止弁フロートと、を備え、小タンク内の水位が所定水位まで低下すると、水圧駆動機構に洗浄水が供給される。
【0017】
このように構成された本発明によれば、遅延機構が小タンクと逆止弁フロートと、を備え、小タンク内の水位が所定水位まで低下すると、水圧駆動機構に洗浄水が供給される。このため、小タンク等の構成により、水圧駆動機構に洗浄水が供給されるタイミングを自由に設定することができ、洗浄に適するタイミングで吐水を開始させることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、遅延機構は、洗浄水タンク内の水位が所定の第1水位まで低下されると洗浄水タンク内への給水を開始させる第1ボールタップと、洗浄水タンク内の水位が第1水位よりも低い所定の第2水位まで低下されると水圧駆動機構への洗浄水の供給を開始させる第2ボールタップと、を備える。
【0019】
このように構成された本発明によれば、第1水位で洗浄水タンク内への給水を開始させる第1ボールタップと、この第1水位よりも低い第2水位で水圧駆動機構への洗浄水の供給を開始させる第2ボールタップと、を備えている。このため、第2ボールタップの設定により、水圧駆動機構に洗浄水が供給されるタイミングを自由に設定することができ、洗浄に適するタイミングで吐水を開始させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水洗大便器装置によれば、各排水弁の開弁タイミングを正確に設定することにより、少ない洗浄水で、効果的に洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置において、洗浄水タンクに内蔵されているボールタップの構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置において、洗浄水タンクに内蔵されている水圧駆動機構の構造を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置の作用を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置の作用を説明するための模式図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置の作用を説明するための模式図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置の作用を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置の作用を示すタイムチャートである。
【
図10】本発明の第2実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態による水洗大便器装置における洗浄水タンクの作用を説明するための模式図である。
【
図12】本発明の第2実施形態による水洗大便器装置の作用を示すタイムチャートである。
【
図13】本発明の第3実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態による水洗大便器装置の作用を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置を示すブロック図である。
図2は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。
図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置において、洗浄水タンクに内蔵されているボールタップの構造を示す断面図である。
図4は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置において、洗浄水タンクに内蔵されている水圧駆動機構の構造を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器装置1は、水洗便器である水洗大便器本体2と、この水洗大便器本体2の後部に配置された洗浄水タンク4から構成されている。本実施形態の水洗大便器装置1は、使用後に、洗浄水タンク4に設けられたレバーハンドル4aを操作することにより、洗浄が行われるように構成されている。なお、変形例として、リモコン装置(図示せず)からの制御信号や、人感センサ(図示せず)からの検出信号に基づいて洗浄が行われるように本発明を構成することもできる。
【0024】
水洗大便器本体2は、ボウル部2aと、このボウル部2aの下部から延びる排水トラップ管路2cを備えている。また、ボウル部2aの上縁部にはリム吐水口2dが設けられ、ボウル部2aの下部にはジェット吐水口2eが設けられている。便器洗浄時においては、これらのリム吐水口2d及びジェット吐水口2eから所定のタイミングで洗浄水が夫々吐出され、ボウル部2aの汚物受け面が洗浄されると共に、ボウル部2a内の汚物及び洗浄水が排水トラップ管路2cへ排出される。排水トラップ管路2cへ排出された汚物及び洗浄水は、排水ソケット(図示せず)を通って下水配管(図示せず)に排出される。
【0025】
洗浄水タンク4には、水道等の給水源6から、止水栓8を介して洗浄水が供給され、供給された洗浄水は、洗浄水タンク4の中に所定の水位まで貯留される。止水栓8は、メンテナンス時等に洗浄水タンク4への洗浄水の供給を停止するために設けられており、通常時は「開」の状態にされている。また、洗浄水タンク4には、第1排水弁10及び第2排水弁12が内蔵され、洗浄水タンク4の底部に設けられた第1の排水口4b及び第2の排水口4cを夫々開閉するように構成されている。
【0026】
第1の排水口4bから流出した洗浄水は、水洗大便器本体2の内部に形成されたリム導水路2fを通って、リム吐水口2dから吐出される。従って、第1排水弁10は、洗浄水タンク4に設けられた第1の排水口4bを開閉することにより、リム吐水口2dからの洗浄水の吐出、停止を切り替える。また、第2の排水口4cから流出した洗浄水は、水洗大便器本体2の内部に形成されたジェット導水路2gを通って、ジェット吐水口2eから吐出される。従って、第2排水弁12は、洗浄水タンク4に設けられた第2の排水口4cを開閉することにより、ジェット吐水口2eからの洗浄水の吐出、停止を切り替える。
【0027】
次に、
図2を参照して、洗浄水タンク4の内部構造を説明する。
図2に示すように、洗浄水タンク4は、第1の排水口4bを開閉する第1排水弁10と、第2の排水口4cを開閉する第2排水弁12と、遅延機構であるボールタップ14と、水圧駆動機構16と、を有する。
【0028】
洗浄水タンク4は、水洗大便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗大便器本体2へ排出するための第1の排水口4b及び第2の排水口4cが形成されている。
【0029】
第1排水弁10は、第1の排水口4bを開閉するように配置された弁体であり、第1排水弁10が上方に引き上げられることにより第1の排水口4bが開弁される。これにより、洗浄水タンク4内の洗浄水が水洗大便器本体2のリム導水路2f(
図1)に排出されて、リム吐水口2dから吐出される。
【0030】
本実施形態においては、使用者が洗浄水タンク4に設けられたレバーハンドル4aを回転操作することにより第1排水弁10に連結された玉鎖10a(
図2に模式的に図示)が引かれ、第1排水弁10が引き上げられる。また、本実施形態において、第1排水弁10は浮き球10bを備えた弁体であり、第1の排水口4bから引き上げられて開弁された後は、洗浄水タンク4内の水位低下に伴って緩やかに下降し、所定水位まで低下したとき閉弁されるように構成されている。
【0031】
第2排水弁12は、第2の排水口4cを開閉するように配置された弁体であり、第2排水弁12が上方に引き上げられることにより第2の排水口4cが開弁される。これにより、洗浄水タンク4内の洗浄水が水洗大便器本体2のジェット導水路2g(
図1)に排出されて、ジェット吐水口2eから吐出される。
【0032】
本実施形態において、第2排水弁12は、水圧駆動機構16によって第2の排水口4cから引き上げられるように構成されている。第2排水弁12は、上方に向けて延びる弁軸12aと、浮き球12bを備えた弁体であり、水圧駆動機構16によって弁軸12aが引き上げられる。そして、所定の高さまで引き上げられると、水圧駆動機構16から切り離され、洗浄水タンク4内の水位低下に伴って緩やかに下降して第2の排水口4cを閉弁させる。
【0033】
また、本実施形態において、第2排水弁12の浮き球12bは、第1排水弁10の浮き球10bよりも高い位置に取り付けられているため、洗浄水タンク4内の水位が比較的高い状態で第2の排水口4cに着座し、これを閉弁させる。即ち、第1排水弁10及び第2排水弁12が、洗浄水タンク4内の水位低下に伴って下降すると、第2排水弁12が先に第2の排水口4cに着座して、閉弁される。
【0034】
遅延機構であるボールタップ14は、給水源6から供給された洗浄水が流入管14aを通って流入するように構成され、このボールタップ14の作用により、本実施形態においては、第1排水弁10よりも遅れて第2排水弁12が開弁される。
【0035】
次に、
図3を参照して、ボールタップ14の構成を説明する。
図3に示すように、ボールタップ14は、流入管14a及び流出管14bが接続された本体部18と、この本体部18の中に配置された主弁体20と、この主弁体20が着座する弁座22と、フロート24によって回動されるアーム部26と、このアーム部26の回動によって移動されるパイロット弁28と、を有する。即ち、ボールタップ14は、洗浄水タンク4内の水位に連動して作動するフロート24を備えており、フロート24が所定位置まで低下すると、水圧駆動機構16に洗浄水を供給するように構成されている。
【0036】
本体部18は、下部に流入管14aの接続部、一側に流出管14bの接続部が設けられた部材である。また、本体部18の内部には、弁座22が形成されており、この弁座22は、接続部に接続された流出管14bに連通するようになっている。さらに、本体部18の内部には、弁座22を開閉するように主弁体20が配置されており、開弁時においては、流入管14aから流入した水道水が、弁座22を通って、流出管14bに流出するように構成されている。そして、流出管14bは、水圧駆動機構16に接続されている。
【0037】
主弁体20は、概ね円板状のダイヤフラム式の弁体であり、弁座22に対して着座、離座できるように、本体部18の中に取り付けられている。また、主弁体20の周縁部にはブリード穴20aが設けられている。また、本体部18内には、主弁体20に対して、弁座22の反対側(
図3において左側)に、圧力室18aが形成されている。即ち、圧力室18aは、本体部18の内壁面と主弁体20によって画定され、この圧力室18a内の圧力が高くなると、この圧力によって主弁体20が弁座22に押しつけられて、弁座22に着座する。
【0038】
さらに、本体部18内に設けられた圧力室18aには、これに連通するように、圧力通路18bが上方に向けて延びており、この圧力通路18bの上端には、パイロット弁口28aが設けられている。このパイロット弁口28aは、上方に向けて開口しており、パイロット弁28によって開閉されるように構成されている。
【0039】
一方、フロート24はアーム部26によって支持されており、このアーム部26は、支持軸26aにより回動可能に支持されている。さらに、アーム部26にはパイロット弁28が連結されており、アーム部26の回動と共にパイロット弁28が上下方向に移動されるように構成されている。これにより、洗浄水タンク4内の水位が所定の設定水位L1以上に上昇している状態ではフロート24が上方に押し上げられ、これに伴いパイロット弁28が下方に移動され、パイロット弁口28aに着座して、これを閉弁させる。一方、洗浄水タンク4内の洗浄水が排水され、洗浄水タンク4内の水位が低下すると、フロート24が下方に下がり、パイロット弁28が上方に移動して、パイロット弁口28aが開弁される。このため、洗浄水タンク4内の水位が設定水位L1よりも高くなっている便器洗浄の待機時においては、本体部18のパイロット弁口28aは閉弁状態となっている。
【0040】
また、流入管14aから本体部18内に流入した水道水は、弁座22の周囲の環状の空間に流入し、ここから主弁体20のブリード穴20aを通って圧力室18a内に流入する。ここで、パイロット弁口28aがパイロット弁28によって閉弁されている状態では、ブリード穴20aから圧力室18aに流入した水道水が流出する経路がなく、圧力室18a内の圧力が上昇する。このように圧力室18a内の圧力が上昇すると、この圧力により主弁体20が弁座22に向けて(
図3における右側に)押圧され、主弁体20により弁座22が閉弁される。
【0041】
一方、洗浄操作により第1排水弁10が開弁され、洗浄水タンク4内の水位が設定水位L
1よりも低くなると、フロート24が下方に下がり、パイロット弁28が上方に移動して、パイロット弁口28aが開弁される。パイロット弁口28aが開弁されると、圧力室18a内の水がパイロット弁口28aから流出して、圧力室18a内の圧力が低下する。これにより、主弁体20が弁座22から引き離されるように(
図3における左側に)移動され、弁座22が開弁される。このように、パイロット弁口28aが開弁されている状態では、圧力室18a内の圧力が上昇することはないため、弁座22は開弁された状態になる。
【0042】
次に、
図4を参照して、水圧駆動機構16の構成を説明する。
水圧駆動機構16は、水道から洗浄水タンクに供給された洗浄水の給水圧を利用して、第2排水弁12を駆動するように構成されている。具体的には、水圧駆動機構16は、ボールタップ14から供給された水が流入するシリンダ16aと、このシリンダ16a内に摺動可能に配置されたピストン16bと、シリンダ16aの下端から突出して第2排水弁12を駆動するロッド30と、を有する。さらに、シリンダ16aの内部にはスプリング16cが配置されており、ピストン16bを下方に向けて付勢していると共に、ピストン16bにはパッキンが取り付けられ、シリンダ16aの内壁面とピストン16bの間の水密性が確保されている。また、ロッド30下端には、クラッチ機構32が設けられており、このクラッチ機構32により、ロッド30と第2排水弁12の弁軸12aは、連結/切り離しされる。
【0043】
シリンダ16aは円筒形の部材であり、その軸線を鉛直方向に向けて配置されると共に、内部にピストン16bを摺動可能に受け入れている。また、シリンダ16aの下端部には、ボールタップ14から延びる流出管14bが接続されており、ボールタップ14から流出した洗浄水がシリンダ16a内に流入するようになっている。このため、シリンダ16a内のピストン16bは、シリンダ16aに流入した水により、スプリング16cの付勢力に抗して押し上げられる。
【0044】
一方、シリンダ16aの上端部には流出孔が設けられ、給水管34は、この流出孔を介してシリンダ16aの内部と連通している。従って、シリンダ16a下部に接続された流出管14bからシリンダ16a内に水が流入すると、ピストン16bは、シリンダ16aの下部から上方へ押し上げられる。そして、ピストン16bが、流出孔よりも上方の位置まで押し上げられると、シリンダ16aに流入した水は流出孔から給水管34へ流出する。また、給水管34に流入した洗浄水は洗浄水タンク4内に落下し、洗浄水タンク4に洗浄水を供給する。
【0045】
ロッド30は、ピストン16bの下面に接続された棒状の部材であり、シリンダ16aの底面に形成された貫通孔を通って、シリンダ16aの中から下方に突出するように延びている。また、ロッド30の下端には、クラッチ機構32を介して第2排水弁12の弁軸12aが接続されており、ロッド30は、ピストン16bと第2排水弁12を連結している。このため、シリンダ16aに水が流入してピストン16bが押し上げられると、ピストン16bに接続されたロッド30が第2排水弁12を上方に吊り上げ、第2排水弁12が開弁される。
【0046】
また、シリンダ16aの下方から突出するロッド30と、シリンダ16aの貫通孔の内壁との間には、隙間が設けられ、シリンダ16aに流入した水の一部は、この隙間から流出する。隙間から流出した水は、洗浄水タンク4内に流入する。なお、この隙間は比較的狭く、流路抵抗が大きいため、隙間から水が流出する状態であっても、流出管14bからシリンダ16aに流入する水によりシリンダ16a内の圧力が上昇し、スプリング16cの付勢力に抗してピストン16bが押し上げられる。
【0047】
さらに、クラッチ機構32は、ロッド30と第2排水弁12を着脱自在に連結している。第2排水弁12がロッド30と共に所定距離吊り上げられると、クラッチ機構32は、ロッド30から第2排水弁12の弁軸12aを切り離すように構成されている。クラッチ機構32が切り離された状態では、第2排水弁12は、ピストン16b及びロッド30の上部の動きに連動しなくなり、第2排水弁12は、洗浄水タンク4内の水位低下と伴に降下する。
【0048】
次に、
図5乃至
図9を新たに参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1の作用を説明する。
図5乃至
図8は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1の作用を説明するための模式図である。
図9は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1の作用を示すタイムチャートである。
【0049】
まず、上記のように便器洗浄の待機状態においては、
図2に示すように、洗浄水タンク4の第1の排水口4b及び第2の排水口4cは、第1排水弁10及び第2排水弁12によって夫々閉弁されている。また、待機状態においては、洗浄水タンク4内の初期水位L
2は、所定の設定水位L
1よりも高くなっている(初期水位L
2が設定水位L
1よりも高い理由については後述する)。これにより、ボールタップ14の本体部18(
図3)のパイロット弁口28aは閉弁状態となり、弁座22は主弁体20によって閉弁されている。
【0050】
次に、
図9の時刻t1において、使用者が便器洗浄を行うべく、洗浄水タンク4のレバーハンドル4aを回転操作すると、これに接続された玉鎖10aが第1排水弁10を引き上げる。これにより、
図5に示すように、第1排水弁10が第1の排水口4bから引き離され、第1の排水口4bが開弁される。第1の排水口4bが開弁されると、洗浄水タンク4内に貯留されていた洗浄水は、第1の排水口4bからリム導水路2f(
図1)に流入し、リム吐水口2dから吐出される。リム吐水口2dからのリム吐水により、ボウル部2aの汚物受け面上に旋回流が形成され、汚物受け面が洗浄される。
【0051】
洗浄水が第1の排水口4bから排出されることにより、洗浄水タンク4内の水位は低下する。そして、
図9の時刻t2において、洗浄水タンク4内の水位が設定水位L
1よりも低くなると、ボールタップ14のフロート24が低下して、パイロット弁28(
図3)が開弁される。これにより、圧力室18a内の圧力が低下して主弁体20が開弁され、
図6に示すように、水圧駆動機構16への給水が開始される。
【0052】
水圧駆動機構16に洗浄水が給水されると、シリンダ16a(
図4)内に流入した洗浄水がスプリング16cの付勢力に抗してピストン16bを押し上げる。これにより、ピストン16bに連結されたロッド30が、第2排水弁12の弁軸12aを引き上げ、第2の排水口4cが開弁される。即ち、第2排水弁12は、ボールタップ14を介して給水された水道水の給水圧により駆動され、開弁される。
【0053】
第2の排水口4cが開弁されると、洗浄水タンク4内に貯留されていた洗浄水は、第2の排水口4cからジェット導水路2g(
図1)に流入し、ジェット吐水口2eから吐出される。ジェット吐水口2eからのジェット吐水により、排水トラップ管路2c内が満水にされ、サイフォン作用が誘発される。サイフォン作用の発生により、ボウル部2a内の留水及び汚物が排水トラップ管路2cの中に吸引され、下水配管(図示せず)に排出される。
【0054】
水圧駆動機構16のピストン16bと共に第2排水弁12が所定の高さまで引き上げられると、クラッチ機構32(
図4)により、第2排水弁12の弁軸12aがロッド30から切り離される。これにより、第2排水弁12は、第2の排水口4cに向けて降下する。そして、
図9の時刻t3において、
図7に示すように、第2排水弁12が第2の排水口4cに着座し、第2の排水口4cが閉弁される。これにより、ジェット吐水口2eからのジェット吐水が停止される。なお、上述したように、第2排水弁12の浮き球12bは比較的高い位置に取り付けられているため、第2排水弁12は、第1排水弁10よりも早く第2の排水口4cに着座する。
【0055】
図7に示す状態においては、ボールタップ14の主弁体20は開弁された状態であるため、給水源6(水道)から供給された洗浄水は、ボールタップ14を介して水圧駆動機構16に供給され、シリンダ16aに接続された給水管34から洗浄水タンク4の中に流入する。一方、第1排水弁10は依然として開弁された状態であるため、洗浄水タンク4内の洗浄水は第1の排水口4bから流出し、リム吐水口2dから吐出される。
図9の時刻t3においてジェット吐水が停止された後、リム吐水口2dから吐出される洗浄水は、ボウル部2a内の水位を待機状態における留水水位に復帰させるためのリフィル水として利用される。
【0056】
ここで、第1の排水口4bから流出する洗浄水の流量は、給水管34から洗浄水タンク4の中に流入する洗浄水の流量よりも多いため、
図7に示す状態では、洗浄水タンク4内の水位は低下し、これに伴って第1排水弁10も降下する。そして、
図9の時刻t4において、洗浄水タンク4内の水位が死水水位DWLまで低下すると、
図8に示すように、第1排水弁10が第1の排水口4bに着座し、第1排水弁10が閉弁される。これにより、リム吐水口2dからのリム吐水が停止される。
【0057】
さらに、第1排水弁10が閉弁された後も、ボールタップ14の主弁体20は開弁された状態に維持されるため、給水源6(水道)から供給された洗浄水は、ボールタップ14、水圧駆動機構16を介して給水管34から洗浄水タンク4の中に流入する。これにより、洗浄水タンク4内の水位が上昇する。そして、
図9の時刻t5において、洗浄水タンク4内の水位が設定水位L
1まで上昇すると、ボールタップ14のフロート24が上昇して、パイロット弁28(
図3)が閉弁される。
【0058】
このように、パイロット弁28が閉弁されると、ボールタップ14の主弁体20に設けられたブリード穴20aから圧力室18aに流入した洗浄水が流出できなくなり、圧力室18a内の圧力が上昇する。そして、
図9の時刻t6において、圧力室18a内の圧力により主弁体20が押圧されて弁座22に着座し、主弁体20が閉弁される。これにより、ボールタップ14介した給水源6から水圧駆動機構16への給水が停止され、洗浄水タンク4内への洗浄水の供給が停止される。
【0059】
水圧駆動機構16への給水が停止されると、給水により押し上げられていたシリンダ16a内のピストン16b(
図4)が、スプリング16cの付勢力により押し下げられる。これに伴いピストン16bに取り付けられているロッド30も低下する。ロッド30が所定位置まで低下すると、クラッチ機構32により、ロッド30は第2排水弁12の弁軸12aと再び連結される。以上により、一回の便器洗浄が終了し、水洗大便器装置1は、
図2に示す便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0060】
このように、洗浄水タンク4内の水位が設定水位L
1まで上昇してパイロット弁28が閉弁されるタイミング(
図9の時刻t5)と、ボールタップ14の主弁体20が閉弁されるタイミング(
図9の時刻t6)の間には所定のタイムラグが存在する。そして、時刻t5からt6の間は、主弁体20が開弁されているため洗浄水の供給が継続され、時刻t6において主弁体20が閉弁される時点では、洗浄水タンク4内の水位は設定水位L
1よりも高い初期水位L
2となる。
【0061】
この結果、水洗大便器装置1の待機状態における洗浄水タンク4内の初期水位L
2は、パイロット弁28が閉弁される所定の設定水位L
1よりも高くなる。このため、待機状態において、使用者がレバーハンドル4aを操作した時点(
図9の時刻t1)では、洗浄水タンク4内の水位が設定水位L
1よりも高く、ボールタップ14の主弁体20は開弁されない。そして、時刻t1~t2の間に、第1の排水口4bから所定量の洗浄水がリム吐水として排出され、洗浄水タンク4内の水位が設定水位L
1まで低下すると、パイロット弁28が開弁され、ボールタップ14の主弁体20も開弁される。これにより、時刻t2において、水圧駆動機構16への給水が開始されて、水圧駆動機構16により第2排水弁12が開弁され、ジェット吐水が開始される。
【0062】
本発明の第1実施形態の水洗大便器装置によれば、リム吐水口2dからの洗浄水の吐出、停止が第1排水弁10により切り替えられ、ジェット吐水口2eからの洗浄水の吐出、停止が第2排水弁12によって切り替えられるので、リム吐水及びジェット吐水の時機を自由に独立して設定することが可能になり、少ない洗浄水で水洗大便器本体2のボウル部2aを効果的に洗浄することができる(
図1)。また、第2排水弁12が、洗浄水の給水圧を利用して、水圧駆動機構16により開弁されるので、モータ等の電気的な動力で排水弁を引き上げる必要がなく、排水弁を開弁するための複雑な機構を用いることなく、開弁時機を設定することが可能になる。
【0063】
また、本実施形態の水洗大便器装置によれば、遅延機構であるボールタップ14により、第2排水弁12が第1排水弁10に対して遅れて開弁される(
図9)ので、水洗大便器本体2の構成に応じて、必要な時機にリム吐水口2d、ジェット吐水口2eからの吐水を開始させることができ、洗浄水量を抑制しながら効果的にボウル部2aを洗浄することができる。
【0064】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、水圧駆動機構16により第2排水弁12が開弁されるので、水圧駆動機構16に洗浄水を供給する時機(
図9における時刻t2)を調節することにより、ジェット吐水口2eからの吐水を開始させる時機を調節することができ、ジェット吐水の開始時機を自由に設定することができる。
【0065】
また、本実施形態の水洗大便器装置によれば、ボールタップ14のフロート24が所定位置まで低下すると、水圧駆動機構16に洗浄水が供給されるので、洗浄水タンク4内の水位に基づいて適切な時期に水圧駆動機構16への洗浄水の供給を開始させ、ジェット吐水口2eからの吐水を開始させることができる。
【0066】
次に、
図10乃至
図12を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態の水洗大便器装置は、洗浄水タンク内に備えられている遅延機構の構成が上述した第1実施形態とは異なっている。従って、以下では、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる構成及び作用のみを説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
図10は、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。
図11は、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置における洗浄水タンクの作用を説明するための模式図である。
図12は、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置の作用を示すタイムチャートである。
【0068】
図10に示すように、本実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク4は、第1排水弁10と、第2排水弁12と、ボールタップ14と、水圧駆動機構16と、を有する。また、上述した第1実施形態と同様に、ボールタップ14はフロート24を有し、このフロート24によりパイロット弁が開閉され、ボールタップ14の主弁体が開閉される点も第1実施形態と同様である。ここで、本実施形態においては、遅延機構として、ボールタップ14の他、ボールタップ14のフロート24を取り囲むように配置された小タンク40が備えられている。
【0069】
この小タンク40は、フロート24を取り囲むように洗浄水タンク4の中に配置された小型のタンクであり、フロート24は小タンク40内の水位に応じて上下に移動される。また、
図10に示す水洗大便器装置の待機状態においては、全体が水没した状態で洗浄水タンク4内に配置されている。即ち、小タンク40は、フロート24を上方から受け入れるように、上方が開放した箱形に形成されており、その上端は、洗浄水タンク4内の初期水位L
2よりも低い位置に配置されている。このため、
図10に示す待機状態においては、小タンク40全体が洗浄水タンク4内の洗浄水に水没し、小タンク40内には洗浄水が満たされている。
【0070】
さらに、小タンク40の底面には、排出孔40aが設けられており、この排出孔40aは、小タンク40の底面に設けられた逆止弁フロート42によって開閉されるように構成されている。この逆止弁フロート42は、洗浄水タンク4内の洗浄水により浮力を受けるフロート部と、排出孔40aを閉弁するためのパッキンを備えている。そして、逆止弁フロート42は、排出孔40aを開閉するように、上下動可能に小タンク40の底面に取り付けられている。
【0071】
即ち、逆止弁フロート42は、フロート部が受ける浮力により上方に押し上げられるように構成されている。このため、洗浄水タンク4内の洗浄水の水位が小タンク40の底面よりも高い状態では、逆止弁フロート42のパッキンが浮力により小タンク40底面の排出孔40aに押しつけられ、排出孔40aが閉弁される。一方、洗浄水タンク4内の水位が低下すると、逆止弁フロート42も自重により低下し、排出孔40aが開弁され、小タンク40の洗浄水は洗浄水タンク4の中に排出される。
【0072】
この構成により、洗浄水タンク4内の水位の低下時において、小タンク40内の水位は、洗浄水タンク4内の水位よりも遅れて低下する。この小タンク40内の水位に連動して、ボールタップ14のフロート24が低下するため、ボールタップ14の主弁体は、洗浄水タンク4内の水位の低下よりも遅れて開弁される。この作用により、水圧駆動機構16への洗浄水の供給、第2排水弁12の開弁が遅延される。
【0073】
次に、
図11及び
図12を新たに参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置の作用を説明する。
まず、
図12の時刻t11において、使用者が洗浄水タンク4のレバーハンドル4aを回転操作すると、これに接続された玉鎖10aが第1排水弁10を引き上げる。これにより、第1の排水口4bが開弁され、洗浄水タンク4内の洗浄水がリム吐水口から吐出される。
【0074】
洗浄水が第1の排水口4bから排出されることにより、洗浄水タンク4内の水位は低下する。しかしながら、洗浄水タンク4内の水位が小タンク40の底面よりも高い状態では、小タンク40の排出孔40aが逆止弁フロート42により閉弁されているため、小タンク40内の水位は変化しない。このため、小タンク40の中のフロート24も低下せず、ボールタップ14の主弁体は閉弁状態に維持される。
【0075】
洗浄水タンク4内の水位がさらに低下し、小タンク40の底面よりも低くなると、小タンク40の逆止弁フロート42が開弁され、小タンク40内の洗浄水も排出孔40aから流出し始める。そして、
図12の時刻t12において、小タンク40内の水位が所定の設定水位L
3よりも低くなると、
図11に示すように、ボールタップ14のフロート24が低下して、パイロット弁が開弁される。これにより、ボールタップ14の主弁体20が開弁され、水圧駆動機構16への給水が開始される。水圧駆動機構16への給水が行われると、水圧駆動機構16により第2排水弁12が引き上げられ、ジェット吐水口2eからの吐水が開始される。
【0076】
時刻t12においてジェット吐水口2eからの吐水が開始された後、時刻t13において第2排水弁12が閉弁される作用、時刻t14において第1排水弁10が閉弁される作用は、上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。時刻t14において第1排水弁10が閉弁された後、洗浄水タンク4内の水位は上昇する。そして、洗浄水タンク4内の水位が小タンク40の底面よりも高くなった状態においても、逆止弁フロート42に働く浮力により、小タンク40の排出孔40aが閉弁されるため、小タンク40内の水位は上昇しない。さらに洗浄水タンク4内の水位が上昇し、洗浄水タンク4内の水位が小タンク40の上端よりも高くなると、小タンク40の中に洗浄水が流入するようになり、小タンク40内の水位も上昇する。
【0077】
そして、時刻t15において、小タンク40内の水位が所定の設定水位L
3よりも高くなると、パイロット弁が閉弁される。さらに、時刻t16において、ボールタップ14の主弁体が閉弁され、水圧駆動機構16への給水が停止される。これにより、水圧駆動機構16のピストン16bから延びるロッドが低下し、クラッチ機構32により、ロッドは第2排水弁12の弁軸と再び連結される。以上により、一回の便器洗浄が終了し、水洗大便器装置は、
図10に示す便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0078】
本発明の第2実施形態の水洗大便器装置によれば、遅延機構が小タンク40と逆止弁フロート42と、を備え、小タンク40内の水位が所定の設定水位L
3よりも低下すると、水圧駆動機構16に洗浄水が供給される(
図11)。このため、小タンク40等の構成により、水圧駆動機構16に洗浄水が供給されるタイミングを自由に設定することができ、洗浄に適するタイミングで吐水を開始させることができる。
【0079】
次に、
図13及び
図14を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態の水洗大便器装置は、洗浄水タンク内に備えられている遅延機構の構成が上述した第1実施形態とは異なっている。従って、以下では、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる構成及び作用のみを説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
図13は、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。
図14は、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置の作用を示すタイムチャートである。
【0081】
図13に示すように、本実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク4は、第1排水弁10と、第2排水弁12と、第1ボールタップ50と、第2ボールタップ52と、水圧駆動機構16と、を有する。
【0082】
また、第1ボールタップ50は、上述した第1実施形態におけるボールタップ14と同様に、洗浄水タンク4内の水位に連動して作動して、洗浄水タンク内への給水を開始させるように構成されている。即ち、第1ボールタップ50は、フロート24を有し、このフロート24が洗浄水タンク4内の水位に連動して上下し、これによりパイロット弁が開閉され、第1ボールタップ50の主弁体が開閉される。さらに、本実施形態においては、遅延機構として、第1ボールタップ50の他、第2ボールタップ52が備えられている。
【0083】
第2ボールタップ52は、第1ボールタップ50の下流側、且つ水圧駆動機構16の上流側に設けられ、第1ボールタップ50の主弁体が開弁されると、第2ボールタップ52への洗浄水の供給が開始される。第2ボールタップ52は、フロート56を備えており、洗浄水タンク4内の水位に連動して、内蔵された主弁体を開閉させるように構成されている。即ち、第2ボールタップ52の構造も、上述した第1実施形態におけるボールタップ14の構造と同様である。また、第1ボールタップ50と第2ボールタップ52の間の管路には、給水口58が設けられている。そして、第1ボールタップ50が開弁され、第2ボールタップ52が閉弁されている状態では、第1ボールタップ50から流出した洗浄水の全量が給水口58から吐出されて、洗浄水タンク4の中に流入する。
【0084】
そして、第1ボールタップ50は、洗浄水タンク4内の水位が所定の第1水位L4まで低下すると主弁体が開弁され、第2ボールタップ52は、洗浄水タンク4内の水位が、第1水位L4よりも低い所定の第2水位L5まで低下すると主弁体が開弁されるように構成されている。従って、第2ボールタップ52は、第1排水弁10が開弁されて第1タンク部54a内の水位が低下し始めた後、遅れて開弁されるように構成されている。そして、第2ボールタップ52が開弁されると、水圧駆動機構16への給水が開始される。
【0085】
次に、
図14を新たに参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置の作用を説明する。
まず、
図14の時刻t21において、使用者が洗浄水タンク4のレバーハンドル4aを回転操作すると、これに接続された玉鎖10aが第1排水弁10を引き上げる。これにより、第1の排水口4bが開弁され、洗浄水タンク4内の洗浄水がリム吐水口から吐出される。
【0086】
洗浄水が第1の排水口4bから排出されることにより、洗浄水タンク4内の水位は低下する。そして、洗浄水タンク4内の水位が所定の第1水位L4まで低下すると、第1ボールタップ50の主弁体が開弁される。この状態においては、第2ボールタップ52の主弁体は開弁されていないため、給水源から供給され、第1ボールタップ50を通過した洗浄水は、全量が、給水口58から洗浄水タンク4の中に流入する。ここで、第1の排水口4bから排出される洗浄水の流量は、給水口58から洗浄水タンク4に流入する流量よりも多いため、第1ボールタップ50が開弁された後も洗浄水タンク4内の水位は低下する。
【0087】
洗浄水タンク4内の水位がさらに低下し、所定の第2水位L
5まで低下すると、第2ボールタップ52の主弁体も開弁される。これにより、
図14の時刻t22において、水圧駆動機構16への給水が開始される。水圧駆動機構16への給水が行われると、水圧駆動機構16により第2排水弁12が引き上げられ、ジェット吐水口2eからの吐水が開始される。また、水圧駆動機構16に供給された洗浄水は、水圧駆動機構16のシリンダを通って、洗浄水タンク4の中に流入する。なお、第1ボールタップ50の主弁体及び第2ボールタップ52の主弁体が開弁された状態では、洗浄水タンク4に供給された洗浄水の一部が給水口58から洗浄水タンク4の中に流入し、残りの洗浄水が水圧駆動機構16のシリンダを通って、洗浄水タンク4の中に流入する。
【0088】
時刻t22の後、第2排水弁12が所定の高さまで引き上げられると、クラッチ機構32により、水圧駆動機構16のロッドから第2排水弁12が切り離され、第2排水弁12が降下し始める。そして、
図14の時刻t23において、第2排水弁12が第2の排水口4cに着座し、ジェット吐水口2eからの吐水が停止される。第2排水弁12が閉弁された後も、第1ボールタップ50及び第2ボールタップ52は開弁状態が維持されるため、給水口58及び水圧駆動機構16からの洗浄水タンク4内への洗浄水の流入は継続される。
【0089】
第2排水弁12が閉弁された後も、第1排水弁10は開弁されているため、洗浄水が洗浄水タンク4内に流入しても、第1タンク部54a内の水位は低下する。そして、
図14の時刻t24において、洗浄水タンク4内の水位が、所定の死水水位まで低下すると、第1排水弁10が第1の排水口4bに着座し、リム吐水口2dからの吐水が停止される。第1排水弁10が閉弁されることにより、洗浄水タンク4内の水位は上昇し始める。
【0090】
そして、時刻t25において、洗浄水タンク4内の水位が第2水位L5を超えると、第2ボールタップ52の主弁体が閉弁される。これにより、給水源から供給された洗浄水は、全量が給水口58から洗浄水タンク4に流入するようになる。また、第2ボールタップ52から水圧駆動機構16への洗浄水の供給が停止されると、水圧駆動機構16のピストン16bから延びるロッドが低下し、クラッチ機構32により、ロッドは第2排水弁12の弁軸と再び連結される。
【0091】
さらに、時刻t26において、洗浄水タンク4内の水位が第1水位L
4を超えると、第1ボールタップ50の主弁体が閉弁され、洗浄水タンク4への洗浄水の供給も停止される。これにより、給水源から洗浄水タンク4内への洗浄水の供給が停止される。以上により、一回の便器洗浄が終了し、水洗大便器装置は、
図13に示す便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0092】
本発明の第3実施形態の水洗大便器装置によれば、第1水位L
4で洗浄水タンク4内への給水を開始(
図14の時刻t21)させる第1ボールタップ50と、この第1水位L
4よりも低い第2水位L
5で水圧駆動機構16への洗浄水の供給を開始(
図14の時刻t22)させる第2ボールタップ52と、を備えている。このため、第2ボールタップ52のフロート56の設定により、水圧駆動機構16に洗浄水が供給されるタイミングを自由に設定することができ、洗浄に適するタイミングで吐水を開始させることができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、リム吐水が開始された後、遅れてジェット吐水が開始されていたが、ジェット吐水が開始された後、リム吐水が開始されるように本発明を構成することもできる。この場合においては、水圧駆動機構により、リム吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替えるための第1排水弁を開弁させるように、本発明を構成すれば良い。
【0094】
また、上述した実施形態においては、洗浄水タンクの第1の排水口及び第2の排水口が別々に設けられていたが、これらの排水口は、上面視において互いに重なるように構成されていても良い。この場合には、例えば、第1の排水口と第2の排水口を同心円状に設けておき、内側の排水口を円形の排水弁によって開閉し、外側の排水口をドーナツ板状の排水弁によって開閉するように本発明を構成することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 水洗大便器装置
2 水洗大便器本体
2a ボウル部
2c 排水トラップ管路
2d リム吐水口
2e ジェット吐水口
2f リム導水路
2g ジェット導水路
4 洗浄水タンク
4a レバーハンドル
4b 第1の排水口
4c 第2の排水口
6 給水源
8 止水栓
10 第1排水弁
10a 玉鎖
10b 浮き球
12 第2排水弁
12a 弁軸
12b 浮き球
14 ボールタップ(遅延機構)
14a 流入管
14b 流出管
16 水圧駆動機構
16a シリンダ
16b ピストン
16c スプリング
18 本体部
18a 圧力室
20 主弁体
20a ブリード穴
22 弁座
24 フロート
26 アーム部
26a 支持軸
28 パイロット弁
28a パイロット弁口
30 ロッド
32 クラッチ機構
34 給水管
40 小タンク
40a 排出孔
42 逆止弁フロート
50 第1ボールタップ
52 第2ボールタップ
56 フロート
58 給水口