特許 7730463 水洗大便器装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2025-08-20

(45)【発行日】2025-08-28

(54)【発明の名称】水洗大便器装置

(51)【国際特許分類】

   E03D 1/24 20060101AFI20250821BHJP

   E03D 5/12 20060101ALI20250821BHJP

【ＦＩ】

E03D1/24

E03D5/12

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2023132528

(22)【出願日】2023-08-16

(65)【公開番号】P2025027614

(43)【公開日】2025-02-28

【審査請求日】2025-06-05

【早期審査対象出願】

(73)【特許権者】

【識別番号】000010087

【氏名又は名称】ＴＯＴＯ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100094569

【弁理士】

【氏名又は名称】田中 伸一郎

(74)【代理人】

【識別番号】100103610

【弁理士】

【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦

(74)【代理人】

【識別番号】100109070

【弁理士】

【氏名又は名称】須田 洋之

(74)【代理人】

【識別番号】100088694

【弁理士】

【氏名又は名称】弟子丸 健

(74)【代理人】

【氏名又は名称】倉澤 伊知郎

(74)【代理人】

【識別番号】100130937

【弁理士】

【氏名又は名称】山本 泰史

(74)【代理人】

【識別番号】100144451

【弁理士】

【氏名又は名称】鈴木 博子

(74)【代理人】

【識別番号】100123630

【弁理士】

【氏名又は名称】渡邊 誠

(72)【発明者】

【氏名】柏村 英明

(72)【発明者】

【氏名】岡田 大知

(72)【発明者】

【氏名】羽生 亜矢子

(72)【発明者】

【氏名】松中 仁志

(72)【発明者】

【氏名】辰岡 星佳

【審査官】荒井 良子

(56)【参考文献】

【文献】特開２００６－１３２１２２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２３－０３２９６３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００４－１００１８２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平０７－１８０２０２（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０３Ｄ １／２４

Ｅ０３Ｄ ５／１２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

洗浄水タンク内に貯留された洗浄水により、大洗浄モード及び小洗浄モードの洗浄を行う水洗大便器装置であって、
ボウル部及びこのボウル部の下部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、
この水洗大便器本体の後部に配置され、上記水洗大便器本体のボウル部を洗浄するための洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、
この洗浄水タンクに設けられた第１の排水口を開閉することにより、上記ボウル部の上縁部に設けられたリム吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替える第１排水弁と、
この洗浄水タンクに設けられた第２の排水口を開閉することにより、上記ボウル部の下部に設けられたジェット吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替える第２排水弁と、
大洗浄モードと、この大洗浄モードよりも上記ボウル部に供給する洗浄水の量が少ない小洗浄モードを選択的に実行可能な操作部と、
を有し、
大洗浄モードの実行時においては、上記第１排水弁を開弁させた後、所定時間経過後に上記第２排水弁を開弁させることにより、上記ボウル部に洗浄水を供給し、小洗浄モードの実行時においては、上記第１排水弁と上記第２排水弁を同時に開弁させ、又は上記第１排水弁を開弁させた後、上記所定時間が経過する前に上記第２排水弁を開弁させることを特徴とする水洗大便器装置。

【請求項2】

上記操作部は、大洗浄モードが実行された場合には、上記第１排水弁を開弁させた後、上記第２排水弁を開弁させるように構成され、小洗浄モードが実行された場合には、上記第１排水弁と上記第２排水弁を実質的に同時に開弁させるように構成されている請求項１記載の水洗大便器装置。

【請求項3】

さらに、水道から上記洗浄水タンクに供給される洗浄水の給水圧を利用して、上記第２排水弁を開弁させる水圧駆動機構を有する請求項１記載の水洗大便器装置。

【請求項4】

さらに、上記洗浄水タンク内の水位に連動して作動するフロートを備えたボールタップを有し、このボールタップはフロートが所定位置まで低下すると、上記水圧駆動機構に洗浄水を供給するように構成され、上記操作部により大洗浄モードが実行された場合には、上記洗浄水タンク内の水位の低下に伴って上記フロートが低下して上記水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始され、小洗浄モードが実行された場合には、上記操作部の操作に基づいて上記フロートが強制的に低下されて上記水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始される請求項３記載の水洗大便器装置。

【請求項5】

さらに、上記洗浄水タンク内の水位に連動して作動するフロートを備えたボールタップを有し、このボールタップはフロートが所定位置まで低下すると、上記水圧駆動機構に洗浄水を供給するように構成され、上記操作部により大洗浄モードが実行された場合には、上記洗浄水タンク内の水位の低下に伴って上記フロートが低下して上記水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始され、小洗浄モードが実行された場合には、上記フロートが上記所定位置まで低下する前に、上記操作部の操作に基づいて、強制的に第２排水弁を開弁させる請求項３記載の水洗大便器装置。

【請求項6】

上記操作部はハンドルを備え、このハンドルを第１の方向に回動させると大洗浄モードが実行され、上記ハンドルを上記第１の方向とは反対の第２の方向に回動させると小洗浄モードが実行される請求項２又は４に記載の水洗大便器装置。

【請求項7】

上記操作部は第１ボタン及び第２ボタンを備え、上記第１ボタンが押圧されると大洗浄モードが実行され、上記第２ボタンが押圧されると小洗浄モードが実行される請求項２又は４に記載の水洗大便器装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、水洗大便器装置に関し、特に、洗浄水タンク内に貯留された洗浄水により、大洗浄モード及び小洗浄モードの洗浄を行う水洗大便器装置に関する。

【背景技術】

【0002】

特開２０１８－１００５７５号公報（特許文献１）には、水洗大便器が記載されている。この水洗大便器は、便器本体と、貯水タンクと、この貯水タンクに貯水された洗浄水を加圧して、便器本体に送る加圧ポンプと、水道から供給された洗浄水の供給先を切り替える給水路切替弁と、を備えている。そして、この水洗大便器においては、加圧ポンプ及び給水路切替弁を制御することにより、大洗浄が実行されたときと、小洗浄が実行されたときで、異なる洗浄シーケンスが実行される。これにより、大洗浄及び小洗浄に対して、適切なタイミングで、適切な量の洗浄水を、便器本体の各吐水口から吐出させることができ、少ない洗浄水量で、効果的な便器洗浄を実現している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１８－１００５７５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、特許文献１記載の水洗大便器においては、洗浄に使用される洗浄水の一部が、水道から供給された給水圧により吐出されるので、例えば、給水圧の低い地域に水洗大便器を設置した場合、洗浄水量の不足や、十分な洗浄を行うことができない等の不具合を生じることがある。また、特許文献１記載の水洗大便器においては、大洗浄、小洗浄の洗浄シーケンスを実行するために、加圧ポンプや、切替弁を制御する必要があるため、洗浄装置が複雑化してコスト高になるという問題がある。

【0005】

従って、本発明は、洗浄に使用する洗浄水の全量を洗浄水タンクから供給しながら、大洗浄と小洗浄で異なる洗浄シーケンスを実行し、効果的に便器洗浄を行うことができる水洗大便器装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水タンク内に貯留された洗浄水により、大洗浄モード及び小洗浄モードの洗浄を行う水洗大便器装置であって、ボウル部及びこのボウル部の下部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、この水洗大便器本体の後部に配置され、水洗大便器本体のボウル部を洗浄するための洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、この洗浄水タンクに設けられた第１の排水口を開閉することにより、ボウル部の上縁部に設けられたリム吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替える第１排水弁と、この洗浄水タンクに設けられた第２の排水口を開閉することにより、ボウル部の下部に設けられたジェット吐水口からの洗浄水の吐出、停止を切り替える第２排水弁と、大洗浄モードと、この大洗浄モードよりもボウル部に供給する洗浄水の量が少ない小洗浄モードを選択的に実行可能な操作部と、を有し、大洗浄モードの実行時においては、第１排水弁を開弁させた後、所定時間経過後に第２排水弁を開弁させることにより、ボウル部に洗浄水を供給し、小洗浄モードの実行時においては、第１排水弁と第２排水弁を同時に開弁させ、又は第１排水弁を開弁させた後、所定時間が経過する前に第２排水弁を開弁させることを特徴としている。

【0007】

このように構成された本発明によれば、リム吐水口からの洗浄水の吐出、停止が第１排水弁により切り替えられ、ジェット吐水口からの洗浄水の吐出、停止が第２排水弁によって切り替えられるので、洗浄に使用する洗浄水を全て洗浄水タンクから供給しながら、リム吐水及びジェット吐水の時機を自由に独立して設定することができる。これにより、洗浄水タンクに貯留された洗浄水により、水洗大便器本体のボウル部を効果的に洗浄することができる。ここで、便器洗浄開始時のリム吐水は、主として、ボウル部の汚物受面に付着した汚物を洗い流す機能があり、ジェット吐水は、主として、ボウル部内の汚物及び留水を排水トラップ管路に押し出す機能がある。このため、ボウル部への汚物付着が少ない小洗浄においては、便器洗浄開始時にリム吐水を先行して行う必要性が少ない。上記のように構成された本発明によれば、大洗浄モードの実行時においては、第１排水弁を開弁させた後、所定時間経過後に第２排水弁を開弁させることにより、ボウル部に洗浄水を供給し、小洗浄モードの実行時においては、第１排水弁と第２排水弁を同時に開弁させ、又は第１排水弁を開弁させた後、所定時間が経過する前に第２排水弁を開弁させる。このため、小洗浄モードにおいて必要性の少ないジェット吐水開始前のリム吐水量を減少させることができ、十分な洗浄性能を確保しながら洗浄水量を抑制することができる。

【0008】

本発明において、好ましくは、操作部は、大洗浄モードが実行された場合には、第１排水弁を開弁させた後、第２排水弁を開弁させるように構成され、小洗浄モードが実行された場合には、第１排水弁と第２排水弁を実質的に同時に開弁させるように構成されている。

【0009】

このように構成された本発明によれば、小洗浄モードが実行された場合には、第１排水弁と第２排水弁を実質的に同時に開弁させるので、ジェット吐水開始前のリム吐水量を極めて少なくすることができ、十分な洗浄性能を確保しながら洗浄水量を大幅に抑制することができる。

【0010】

本発明において、好ましくは、さらに、水道から洗浄水タンクに供給される洗浄水の給水圧を利用して、第２排水弁を開弁させる水圧駆動機構を有する。

【0011】

このように構成された本発明によれば、第２排水弁が水圧駆動機構により開弁されるので、モータ等の電気的な動力で排水弁を引き上げることなく、大洗浄モードにおいて、リム吐水が開始された後、所定時間経過後にジェット吐水を開始させることができる。これにより、洗浄水量を抑制しながら、効果的にボウル部を洗浄することができる。

【0012】

本発明において、好ましくは、さらに、洗浄水タンク内の水位に連動して作動するフロートを備えたボールタップを有し、このボールタップはフロートが所定位置まで低下すると、水圧駆動機構に洗浄水を供給するように構成され、操作部により大洗浄モードが実行された場合には、洗浄水タンク内の水位の低下に伴ってフロートが低下して水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始され、小洗浄モードが実行された場合には、操作部の操作に基づいてフロートが強制的に低下されて水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始される。

【0013】

このように構成された本発明によれば、大洗浄モード実行時においては、洗浄水タンク内の水位の低下に伴ってフロートが低下して水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始されるので、洗浄水タンク内の水位が低下した後、ジェット吐水が開始される。一方、小洗浄モード実行時においては、フロートが強制的に低下されて水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始されるので、洗浄水タンク内の水位の低下を待たずにジェット吐水が開始される。これにより、電気的な制御を使用することなく、大洗浄モード及び小洗浄モードの洗浄シーケンスを設定することができる。

【0014】

本発明において、好ましくは、さらに、洗浄水タンク内の水位に連動して作動するフロートを備えたボールタップを有し、このボールタップはフロートが所定位置まで低下すると、水圧駆動機構に洗浄水を供給するように構成され、操作部により大洗浄モードが実行された場合には、洗浄水タンク内の水位の低下に伴ってフロートが低下して水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始され、小洗浄モードが実行された場合には、フロートが所定位置まで低下する前に、操作部の操作に基づいて、強制的に第２排水弁を開弁させる。

【0015】

このように構成された本発明によれば、大洗浄モード実行時においては、洗浄水タンク内の水位の低下に伴ってフロートが低下して水圧駆動機構への洗浄水の供給が開始されるので、洗浄水タンク内の水位が低下した後、ジェット吐水が開始される。一方、小洗浄モード実行時においては、操作部の操作に基づいて、強制的に第２排水弁が開弁されてジェット吐水が開始される。これにより、電気的な制御を使用することなく、大洗浄モード及び小洗浄モードの洗浄シーケンスを設定することができる。

【0016】

本発明において、好ましくは、操作部はハンドルを備え、このハンドルを第１の方向に回動させると大洗浄モードが実行され、ハンドルを第１の方向とは反対の第２の方向に回動させると小洗浄モードが実行される。

【0017】

このように構成された本発明によれば、ハンドルを第１の方向に回動させると大洗浄モードが実行され、第２の方向に回動させると小洗浄モードが実行されるので、簡単な機構で、大洗浄モード及び小洗浄モードの実行を制御することができる。

【0018】

本発明において、好ましくは、操作部は第１ボタン及び第２ボタンを備え、第１ボタンが押圧されると大洗浄モードが実行され、第２ボタンが押圧されると小洗浄モードが実行される。

【0019】

このように構成された本発明によれば、第１ボタンが押圧されると大洗浄モードが実行され、第２ボタンが押圧されると小洗浄モードが実行されるので、簡単な機構で、大洗浄モード及び小洗浄モードの実行を制御することができる。

【発明の効果】

【0020】

本発明の水洗大便器装置によれば、洗浄に使用する洗浄水の全量を洗浄水タンクから供給しながら、大洗浄と小洗浄で異なる洗浄シーケンスを実行し、効果的に便器洗浄を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【0021】

【図1】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置を示すブロック図である。

【図2】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。

【図3】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンクに備えられている操作部を取り出して、その概略構成を示した模式図である。

【図4】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置において、洗浄水タンクに内蔵されているボールタップの構造を示す断面図である。

【図5】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置において、洗浄水タンクに内蔵されている水圧駆動機構の構造を示す断面図である。

【図6】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により大洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。

【図7】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により大洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。

【図8】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により大洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。

【図9】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により大洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。

【図10】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により大洗浄モードが実行された場合の作用を示すタイムチャートである。

【図11】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により小洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。

【図12】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により小洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。

【図13】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により小洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。

【図14】本発明の第１実施形態による水洗大便器装置により小洗浄モードが実行された場合の作用を示すタイムチャートである。

【図15】本発明の第２実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。

【図16】本発明の第２実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンクに備えられている操作部を取り出して、その概略構成を示した模式図である。

【発明を実施するための形態】

【0022】

次に、添付図面を参照して、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置を説明する。
図１は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置を示すブロック図である。図２は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。図３は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンクに備えられている操作部を取り出して、その概略構成を示した模式図である。図４は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置において、洗浄水タンクに内蔵されているボールタップの構造を示す断面図である。図５は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置において、洗浄水タンクに内蔵されている水圧駆動機構の構造を示す断面図である。

【0023】

図１に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器装置１は、水洗便器である水洗大便器本体２と、この水洗大便器本体２の後部に配置された洗浄水タンク４から構成されている。本実施形態の水洗大便器装置１は、使用後に、洗浄水タンク４に設けられたレバーハンドル５ａを操作することにより、洗浄が行われるように構成されている。なお、変形例として、リモコン装置（図示せず）からの制御信号や、人感センサ（図示せず）からの検出信号に基づいて洗浄が行われるように本発明を構成することもできる。

【0024】

水洗大便器本体２は、ボウル部２ａと、このボウル部２ａの下部から延びる排水トラップ管路２ｃを備えている。また、ボウル部２ａの上縁部にはリム吐水口２ｄが設けられ、ボウル部２ａの下部にはジェット吐水口２ｅが設けられている。便器洗浄時においては、これらのリム吐水口２ｄ及びジェット吐水口２ｅから所定のタイミングで洗浄水が夫々吐出され、ボウル部２ａの汚物受け面が洗浄されると共に、ボウル部２ａ内の汚物及び洗浄水が排水トラップ管路２ｃへ排出される。排水トラップ管路２ｃへ排出された汚物及び洗浄水は、排水ソケット（図示せず）を通って下水配管（図示せず）に排出される。

【0025】

洗浄水タンク４には、水道等の給水源７から、止水栓８を介して洗浄水が供給され、供給された洗浄水は、洗浄水タンク４の中に所定の水位まで貯留される。止水栓８は、メンテナンス時等に洗浄水タンク４への洗浄水の供給を停止するために設けられており、通常時は「開」の状態にされている。また、洗浄水タンク４には、第１排水弁１０及び第２排水弁１２が内蔵され、洗浄水タンク４の底部に設けられた第１の排水口４ｂ及び第２の排水口４ｃを夫々開閉するように構成されている。

【0026】

第１の排水口４ｂから流出した洗浄水は、水洗大便器本体２の内部に形成されたリム導水路２ｆを通って、リム吐水口２ｄから吐出される。従って、第１排水弁１０は、洗浄水タンク４に設けられた第１の排水口４ｂを開閉することにより、リム吐水口２ｄからの洗浄水の吐出、停止を切り替える。また、第２の排水口４ｃから流出した洗浄水は、水洗大便器本体２の内部に形成されたジェット導水路２ｇを通って、ジェット吐水口２ｅから吐出される。従って、第２排水弁１２は、洗浄水タンク４に設けられた第２の排水口４ｃを開閉することにより、ジェット吐水口２ｅからの洗浄水の吐出、停止を切り替える。

【0027】

次に、図２を参照して、洗浄水タンク４の内部構造を説明する。
図２に示すように、洗浄水タンク４は、第１の排水口４ｂを開閉する第１排水弁１０と、第２の排水口４ｃを開閉する第２排水弁１２と、遅延機構であるボールタップ１４と、水圧駆動機構１６と、を有する。

【0028】

洗浄水タンク４は、水洗大便器本体２に供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗大便器本体２へ排出するための第１の排水口４ｂ及び第２の排水口４ｃが形成されている。さらに、洗浄水タンク４の内部には仕切壁６が設けられており、洗浄水タンク４を、第１の排水口４ｂが設けられた第１タンク部６ａと、第１の排水口４ｂが設けられた第２タンク部６ｂに仕切っている。

【0029】

第１排水弁１０は、第１の排水口４ｂを開閉するように配置された弁体であり、第１排水弁１０が上方に引き上げられることにより第１の排水口４ｂが開弁される。これにより、洗浄水タンク４の第１タンク部６ａ内の洗浄水が水洗大便器本体２のリム導水路２ｆ（図１）に排出されて、リム吐水口２ｄから吐出される。また、本実施形態において、第１排水弁１０は浮き球１０ｂを備えた弁体であり、第１の排水口４ｂから引き上げられて開弁された後は、第１タンク部６ａ内の水位低下に伴って緩やかに下降するように構成されている。

【0030】

本実施形態においては、使用者が洗浄水タンク４に設けられたレバーハンドル５ａを回転操作することにより、第１排水弁１０が引き上げられ、第１排水弁１０が開弁される。また、本実施形態においては、レバーハンドル５ａを回転させる方向により、大洗浄モードと、小洗浄モードを選択的に実行することができる。なお、レバーハンドル５ａは、操作部５の一部を構成しており、この操作部５により、大洗浄モードと、この大洗浄モードよりもボウル部２ａに供給する洗浄水の量が少なく、大洗浄モードとは異なる洗浄シーケンスを実行する小洗浄モードが選択的に実行される。操作部５の構成については後述する。

【0031】

第２排水弁１２は、第２の排水口４ｃを開閉するように配置された弁体であり、第２排水弁１２が上方に引き上げられることにより第２の排水口４ｃが開弁される。これにより、洗浄水タンク４の第２タンク部６ｂ内の洗浄水が水洗大便器本体２のジェット導水路２ｇ（図１）に排出されて、ジェット吐水口２ｅから吐出される。

【0032】

本実施形態において、第２排水弁１２は、水圧駆動機構１６によって第２の排水口４ｃから引き上げられるように構成されている。第２排水弁１２は、上方に向けて延びる弁軸１２ａと、浮き球１２ｂを備えた弁体であり、水圧駆動機構１６によって弁軸１２ａが引き上げられる。そして、所定の高さまで引き上げられると、水圧駆動機構１６から切り離され、第２タンク部６ｂ内の水位低下に伴って緩やかに下降して第２の排水口４ｃを閉弁させる。

【0033】

遅延機構であるボールタップ１４は、給水源７から供給された洗浄水が流入管１４ａを通って流入するように構成され、このボールタップ１４の作用により、大洗浄時においては、第１排水弁１０よりも遅れて第２排水弁１２が開弁される。

【0034】

次に、図３を参照して、操作部５の構成を説明する。
図３に示すように、操作部５は、洗浄水タンク４の側面に設けられたハンドルであるレバーハンドル５ａと、このレバーハンドル５ａにより回動されるシャフト５ｂと、このシャフトに取り付けられた第１アーム５ｃ及び第２アーム５ｄと、第１アーム５ｃと第１排水弁１０を連結する大洗浄用玉鎖５ｅと、第２アーム５ｄと第１排水弁１０を連結する小洗浄用玉鎖５ｆと、を有する。

【0035】

レバーハンドル５ａは、洗浄水タンク４の側面に設けられたレバーであり、水洗大便器装置１の前方側及び後方側に回動可能に構成され、回動させる方向により、大洗浄モードと小洗浄モードを選択的に実行することができる。

【0036】

シャフト５ｂは、レバーハンドル５ａに固定され、洗浄水タンク４上部の中で、水洗大便器装置１の幅方向に、水平に延びる棒状の部材である。このシャフト５ｂは、洗浄水タンク４に対して回動可能に支持され、レバーハンドル５ａを回転操作することにより、レバーハンドル５ａと共に回動される。

【0037】

第１アーム５ｃは、シャフト５ｂに対して直交する方向に固定された細長い部材であり、水洗大便器装置１の前方に向けて水平に延びている。第１アーム５ｃの先端には、大洗浄用玉鎖５ｅの一端が取り付けられており、この大洗浄用玉鎖５ｅの他端は、第１排水弁１０に固定されている。この構成により、レバーハンドル５ａを第１の方向である矢印Ｄ１の方向に回動させると、第１アーム５ｃの先端が上方に移動する。これにより、大洗浄用玉鎖５ｅが上方に引かれ、第１排水弁１０が引き上げられて、第１排水弁１０が開弁される。

【0038】

第２アーム５ｄは、シャフト５ｂに対して直交する方向に固定された細長い部材であり、水洗大便器装置１の前方及び後方に向けて水平に延びている。第２アーム５ｄの後方側の端部には、小洗浄用玉鎖５ｆの一端が取り付けられており、この小洗浄用玉鎖５ｆの他端は、第１排水弁１０に固定されている。一方、第２アーム５ｄの前方側の端部には、下方に向けて突出した突出部５ｇが設けられており、この突出部５ｇは、ボールタップ１４のフロート２４（図４）の上方、近傍に位置している。

【0039】

この構成により、レバーハンドル５ａを第２の方向である矢印Ｄ２の方向に回動させると、第２アーム５ｄの後端が上方に移動する。これにより、小洗浄用玉鎖５ｆが上方に引かれ、第１排水弁１０が引き上げられて、第１排水弁１０が開弁される。また、同時に、第２アーム５ｄ前端の突出部５ｇは下方に移動され、ボールタップ１４に備えられたフロート２４を下方に向けて押し下げる。これにより、ボールタップ１４に備えられた主弁体２０（図４）が開弁され、水圧駆動機構１６への給水が開始される。ボールタップ１４の構成、作用については後述する。

【0040】

このように、レバーハンドル５ａを矢印Ｄ１の方向に回動させると、大洗浄用玉鎖５ｅが上方に引かれ、第１排水弁１０が引き上げられて大洗浄モードが実行される。また、レバーハンドル５ａを矢印Ｄ１とは反対の矢印Ｄ２の方向に回動させると、小洗浄用玉鎖５ｆが上方に引かれ、第１排水弁１０が引き上げられて小洗浄モードが実行される。ここで、本実施形態においては、大洗浄用玉鎖５ｅは小洗浄用玉鎖５ｆよりも短く（弛みが少なく）構成されている。このため、第１排水弁１０は、大洗浄用玉鎖５ｅによって引き上げられた場合には、小洗浄用玉鎖５ｆによって引き上げられた場合よりも高い位置まで引き上げられる。この結果、大洗浄モードが実行された場合には、小洗浄モードが実行された場合よりも第１排水弁１０が開弁されている時間が長くなり、リム吐水口２ｄから吐出される洗浄水量も多くなる。

【0041】

次に、図４を参照して、ボールタップ１４の構成を説明する。
図４に示すように、ボールタップ１４は、流入管１４ａ及び流出管１４ｂが接続された本体部１８と、この本体部１８の中に配置された主弁体２０と、この主弁体２０が着座する弁座２２と、フロート２４によって回動されるアーム部２６と、このアーム部２６の回動によって移動されるパイロット弁２８と、を有する。即ち、ボールタップ１４は、洗浄水タンク４内の水位に連動して作動するフロート２４を備えており、フロート２４が所定位置まで低下すると、水圧駆動機構１６に洗浄水を供給するように構成されている。

【0042】

本体部１８は、下部に流入管１４ａの接続部、一側に流出管１４ｂの接続部が設けられた部材である。また、本体部１８の内部には、弁座２２が形成されており、この弁座２２は、接続部に接続された流出管１４ｂに連通するようになっている。さらに、本体部１８の内部には、弁座２２を開閉するように主弁体２０が配置されており、開弁時においては、流入管１４ａから流入した水道水が、弁座２２を通って、流出管１４ｂに流出するように構成されている。そして、流出管１４ｂは、水圧駆動機構１６に接続されている。

【0043】

主弁体２０は、概ね円板状のダイヤフラム式の弁体であり、弁座２２に対して着座、離座できるように、本体部１８の中に取り付けられている。また、主弁体２０の周縁部にはブリード穴２０ａが設けられている。また、本体部１８内には、主弁体２０に対して、弁座２２の反対側（図４において左側）に、圧力室１８ａが形成されている。即ち、圧力室１８ａは、本体部１８の内壁面と主弁体２０によって画定され、この圧力室１８ａ内の圧力が高くなると、この圧力によって主弁体２０が弁座２２に押しつけられて、弁座２２に着座する。

【0044】

さらに、本体部１８内に設けられた圧力室１８ａには、これに連通するように、圧力通路１８ｂが上方に向けて延びており、この圧力通路１８ｂの上端には、パイロット弁口２８ａが設けられている。このパイロット弁口２８ａは、上方に向けて開口しており、パイロット弁２８によって開閉されるように構成されている。

【0045】

一方、フロート２４はアーム部２６によって支持されており、このアーム部２６は、支持軸２６ａにより回動可能に支持されている。さらに、アーム部２６にはパイロット弁２８が連結されており、アーム部２６の回動と共にパイロット弁２８が上下方向に移動されるように構成されている。これにより、洗浄水タンク４の第１タンク部６ａ内の水位が所定の設定水位Ｌ₁以上に上昇している状態ではフロート２４が上方に押し上げられ、これに伴いパイロット弁２８が下方に移動され、パイロット弁口２８ａに着座して、これを閉弁させる。一方、第１タンク部６ａ内の洗浄水が排水され、第１タンク部６ａ内の水位が低下すると、フロート２４が下方に下がり、パイロット弁２８が上方に移動して、パイロット弁口２８ａが開弁される。このため、第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁よりも高くなっている便器洗浄の待機時においては、本体部１８のパイロット弁口２８ａは閉弁状態となっている。

【0046】

また、流入管１４ａから本体部１８内に流入した水道水は、弁座２２の周囲の環状の空間に流入し、ここから主弁体２０のブリード穴２０ａを通って圧力室１８ａ内に流入する。ここで、パイロット弁口２８ａがパイロット弁２８によって閉弁されている状態では、ブリード穴２０ａから圧力室１８ａに流入した水道水が流出する経路がなく、圧力室１８ａ内の圧力が上昇する。このように圧力室１８ａ内の圧力が上昇すると、この圧力により主弁体２０が弁座２２に向けて（図３における右側に）押圧され、主弁体２０により弁座２２が閉弁される。

【0047】

一方、洗浄操作により第１排水弁１０が開弁され、洗浄水タンク４の第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁よりも低くなると、フロート２４が下方に下がり、パイロット弁２８が上方に移動して、パイロット弁口２８ａが開弁される。パイロット弁口２８ａが開弁されると、圧力室１８ａ内の水がパイロット弁口２８ａから流出して、圧力室１８ａ内の圧力が低下する。これにより、主弁体２０が弁座２２から引き離されるように（図４における左側に）移動され、弁座２２が開弁される。このように、パイロット弁口２８ａが開弁されている状態では、圧力室１８ａ内の圧力が上昇することはないため、弁座２２は開弁された状態になる。

【0048】

以上のように、ボールタップ１４は、洗浄水タンク４内の水位に連動してフロート２４が上下動し、フロート２４が所定位置まで低下すると、主弁体２０が開弁され、水圧駆動機構１６に洗浄水を供給するように構成されている。しかしながら、上記のように、フロート２４の上方、近傍には、操作部５の突出部５ｇ（図３）が位置している。そして、レバーハンドル５ａを操作することにより、突出部５ｇが下方に移動されると、ボールタップ１４のフロート２４が押し下げられる。これにより、洗浄水タンク４内の水位に関わらず、フロート２４は強制的に押し下げられ、主弁体２０が開弁される。このように、操作部５の操作に基づいてフロート２４が強制的に低下された場合には、洗浄水タンク４内の水位に関わらず、水圧駆動機構１６への洗浄水の供給が開始される。

【0049】

次に、図５を参照して、水圧駆動機構１６の構成を説明する。
水圧駆動機構１６は、水道から洗浄水タンクに供給された洗浄水の給水圧を利用して、第２排水弁１２を駆動するように構成されている。具体的には、水圧駆動機構１６は、ボールタップ１４から供給された水が流入するシリンダ１６ａと、このシリンダ１６ａ内に摺動可能に配置されたピストン１６ｂと、シリンダ１６ａの下端から突出して第２排水弁１２を駆動するロッド３０と、を有する。さらに、シリンダ１６ａの内部にはスプリング１６ｃが配置されており、ピストン１６ｂを下方に向けて付勢していると共に、ピストン１６ｂにはパッキンが取り付けられ、シリンダ１６ａの内壁面とピストン１６ｂの間の水密性が確保されている。また、ロッド３０下端には、クラッチ機構３２が設けられており、このクラッチ機構３２により、ロッド３０と第２排水弁１２の弁軸１２ａは、連結／切り離しされる。

【0050】

シリンダ１６ａは円筒形の部材であり、その軸線を鉛直方向に向けて配置されると共に、内部にピストン１６ｂを摺動可能に受け入れている。また、シリンダ１６ａの下端部には、ボールタップ１４から延びる流出管１４ｂが接続されており、ボールタップ１４から流出した洗浄水がシリンダ１６ａ内に流入するようになっている。このため、シリンダ１６ａ内のピストン１６ｂは、シリンダ１６ａに流入した水により、スプリング１６ｃの付勢力に抗して押し上げられる。

【0051】

一方、シリンダ１６ａの上端部には流出孔が設けられ、給水管３４は、この流出孔を介してシリンダ１６ａの内部と連通している。従って、シリンダ１６ａ下部に接続された流出管１４ｂからシリンダ１６ａ内に水が流入すると、ピストン１６ｂは、シリンダ１６ａの下部から上方へ押し上げられる。そして、ピストン１６ｂが、流出孔よりも上方の位置まで押し上げられると、シリンダ１６ａに流入した水は流出孔から給水管３４へ流出する。また、給水管３４に流入した洗浄水は洗浄水タンク４の第２タンク部６ｂの中に落下し、洗浄水タンク４に洗浄水を供給する。

【0052】

ロッド３０は、ピストン１６ｂの下面に接続された棒状の部材であり、シリンダ１６ａの底面に形成された貫通孔を通って、シリンダ１６ａの中から下方に突出するように延びている。また、ロッド３０の下端には、クラッチ機構３２を介して第２排水弁１２の弁軸１２ａが接続されており、ロッド３０は、ピストン１６ｂと第２排水弁１２を連結している。このため、シリンダ１６ａに水が流入してピストン１６ｂが押し上げられると、ピストン１６ｂに接続されたロッド３０が第２排水弁１２を上方に吊り上げ、第２排水弁１２が開弁される。

【0053】

また、シリンダ１６ａの下方から突出するロッド３０と、シリンダ１６ａの貫通孔の内壁との間には、隙間が設けられ、シリンダ１６ａに流入した水の一部は、この隙間から流出する。隙間から流出した水は、第２タンク部６ｂ内に流入する。なお、この隙間は比較的狭く、流路抵抗が大きいため、隙間から水が流出する状態であっても、流出管１４ｂからシリンダ１６ａに流入する水によりシリンダ１６ａ内の圧力が上昇し、スプリング１６ｃの付勢力に抗してピストン１６ｂが押し上げられる。

【0054】

さらに、クラッチ機構３２は、ロッド３０と第２排水弁１２を着脱自在に連結している。第２排水弁１２がロッド３０と共に所定距離吊り上げられると、クラッチ機構３２は、ロッド３０から第２排水弁１２の弁軸１２ａを切り離すように構成されている。クラッチ機構３２が切り離された状態では、第２排水弁１２は、ピストン１６ｂ及びロッド３０の上部の動きに連動しなくなり、第２排水弁１２は、洗浄水タンク４の第２タンク部６ｂ内の水位低下と伴に降下する。

【0055】

次に、図６乃至図１４を新たに参照して、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置１の作用を説明する。
図６乃至図９は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置１により大洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。図１０は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置１により大洗浄モードが実行された場合の作用を示すタイムチャートである。図１１乃至図１３は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置１により小洗浄モードが実行された場合の作用を説明するための模式図である。図１４は、本発明の第１実施形態による水洗大便器装置１により小洗浄モードが実行された場合の作用を示すタイムチャートである。

【0056】

まず、上記のように便器洗浄の待機状態においては、図２に示すように、洗浄水タンク４の第１の排水口４ｂ及び第２の排水口４ｃは、第１排水弁１０及び第２排水弁１２によって夫々閉弁されている。また、洗浄水タンク４の第２タンク部６ｂは満水（水位が仕切壁６の上端と同一）にされている。一方、第１タンク部６ａ内の初期水位Ｌ₂は、所定の設定水位Ｌ₁よりも高くなっている（初期水位Ｌ₂が設定水位Ｌ₁よりも高い理由については後述する）。これにより、ボールタップ１４の本体部１８（図４）のパイロット弁口２８ａは閉弁状態となり、弁座２２は主弁体２０によって閉弁されている。

【0057】

次に、図１０の時刻ｔ１において、使用者が大洗浄モードの便器洗浄を行うべく、洗浄水タンク４のレバーハンドル５ａを回転操作すると、大洗浄用玉鎖５ｅが第１排水弁１０を引き上げる。これにより、図６に示すように、第１排水弁１０が第１の排水口４ｂから引き離され、第１の排水口４ｂが開弁される。第１の排水口４ｂが開弁されると、洗浄水タンク４の第１タンク部６ａ内に貯留されていた洗浄水は、第１の排水口４ｂからリム導水路２ｆ（図１）に流入し、リム吐水口２ｄから吐出される。リム吐水口２ｄからのリム吐水により、ボウル部２ａの汚物受け面上に旋回流が形成され、汚物受け面が洗浄される。なお、洗浄水の排出により、第１タンク部６ａ内の水位は低下する。

【0058】

洗浄水が第１の排水口４ｂから排出されることにより、第１タンク部６ａ内の水位は低下する。そして、図１０の時刻ｔ２において、第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁よりも低くなると、ボールタップ１４のフロート２４が低下して、パイロット弁２８（図４）が開弁される。これにより、圧力室１８ａ内の圧力が低下して主弁体２０が開弁され、図７に示すように、水圧駆動機構１６への給水が開始される。

【0059】

水圧駆動機構１６に洗浄水が給水されると、シリンダ１６ａ（図５）内に流入した洗浄水がスプリング１６ｃの付勢力に抗してピストン１６ｂを押し上げる。これにより、ピストン１６ｂに連結されたロッド３０が、第２排水弁１２の弁軸１２ａを引き上げ、第２の排水口４ｃが開弁される。即ち、第２排水弁１２は、ボールタップ１４を介して給水された水道水の給水圧により駆動され、開弁される。このように、大洗浄モードにおいては、時刻ｔ１において第１排水弁１０が開弁され、所定時間経過後の時刻ｔ２において第２排水弁１２が開弁される。

【0060】

第２の排水口４ｃが開弁されると、洗浄水タンク４の第２タンク部６ｂ内に貯留されていた洗浄水は、第２の排水口４ｃからジェット導水路２ｇ（図１）に流入し、ジェット吐水口２ｅから吐出される。ジェット吐水口２ｅからのジェット吐水により、排水トラップ管路２ｃ内が満水にされ、サイフォン作用が誘発される。サイフォン作用の発生により、ボウル部２ａ内の留水及び汚物が排水トラップ管路２ｃの中に吸引され、下水配管（図示せず）に排出される。

【0061】

水圧駆動機構１６のピストン１６ｂと共に第２排水弁１２が所定の高さまで引き上げられると、クラッチ機構３２（図５）により、第２排水弁１２の弁軸１２ａがロッド３０から切り離される。これにより、第２排水弁１２は、第２の排水口４ｃに向けて降下する。そして、図１０の時刻ｔ３において、図８に示すように、第２排水弁１２が第２の排水口４ｃに着座し、第２の排水口４ｃが閉弁される。これにより、ジェット吐水口２ｅからのジェット吐水が停止される。なお、第２の排水口４ｃ及びこれに連なるジェット導水路２ｇは流路抵抗が低いため、ジェット吐水口２ｅからは大流量で洗浄水が吐出される。この結果、第２タンク部６ｂ内の水位は急激に低下して、第２排水弁１２は第１排水弁１０よりも早く閉弁される。

【0062】

図８に示す状態においては、ボールタップ１４の主弁体２０は開弁された状態であるため、給水源７（水道）から供給された洗浄水は、ボールタップ１４を介して水圧駆動機構１６に供給され、シリンダ１６ａに接続された給水管３４から第２タンク部６ｂの中に流入する。一方、第１排水弁１０は依然として開弁された状態であるため、第１タンク部６ａ内の洗浄水は第１の排水口４ｂから流出し、リム吐水口２ｄから吐出される。図１０の時刻ｔ３においてジェット吐水が停止された後、リム吐水口２ｄから吐出される洗浄水は、ボウル部２ａ内の水位を待機状態における留水水位に復帰させるためのリフィル水として利用される。

【0063】

次いで、図１０の時刻ｔ４において、洗浄水タンク４の第２タンク部６ｂ内の水位が死水水位ＤＷＬまで低下すると、図９に示すように、第１排水弁１０が第１の排水口４ｂに着座し、第１排水弁１０が閉弁される。これにより、リム吐水口２ｄからのリム吐水が停止される。

【0064】

さらに、第１排水弁１０が閉弁された後も、ボールタップ１４の主弁体２０は開弁された状態に維持されるため、給水源７（水道）から供給された洗浄水は、ボールタップ１４、水圧駆動機構１６を介して給水管３４から洗浄水タンク４の第２タンク部６ｂの中に流入する。そして、第２タンク部６ｂ内の水位が、仕切壁６の高さよりも高くなると、仕切壁６を越えて洗浄水が第２タンク部６ｂから第１タンク部６ａに流入する。これにより、第１タンク部６ａ内の水位が上昇する。そして、図１０の時刻ｔ５において、第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁まで上昇すると、ボールタップ１４のフロート２４が上昇して、パイロット弁２８（図４）が閉弁される。

【0065】

このように、パイロット弁２８が閉弁されると、ボールタップ１４の主弁体２０に設けられたブリード穴２０ａから圧力室１８ａに流入した洗浄水が流出できなくなり、圧力室１８ａ内の圧力が上昇する。そして、図１０の時刻ｔ６において、圧力室１８ａ内の圧力により主弁体２０が押圧されて弁座２２に着座し、主弁体２０が閉弁される。これにより、ボールタップ１４介した給水源７から水圧駆動機構１６への給水が停止され、洗浄水タンク４内への洗浄水の供給が停止される。

【0066】

水圧駆動機構１６への給水が停止されると、給水により押し上げられていたシリンダ１６ａ内のピストン１６ｂ（図５）が、スプリング１６ｃの付勢力により押し下げられる。これに伴いピストン１６ｂに取り付けられているロッド３０も低下する。ロッド３０が所定位置まで低下すると、クラッチ機構３２により、ロッド３０は第２排水弁１２の弁軸１２ａと再び連結される。以上により、一回の便器洗浄が終了し、水洗大便器装置１は、図２に示す便器洗浄の待機状態に復帰する。

【0067】

このように、洗浄水タンク４の第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁まで上昇してパイロット弁２８が閉弁されるタイミング（図１０の時刻ｔ５）と、ボールタップ１４の主弁体２０が閉弁されるタイミング（図１０の時刻ｔ６）の間には所定のタイムラグが存在する。そして、時刻ｔ５からｔ６の間は、主弁体２０が開弁されているため洗浄水の供給が継続され、時刻ｔ６において主弁体２０が閉弁される時点では、第１タンク部６ａ内の水位は設定水位Ｌ₁よりも高い初期水位Ｌ₂となる。

【0068】

この結果、水洗大便器装置１の待機状態における第１タンク部６ａ内の初期水位Ｌ₂は、パイロット弁２８が閉弁される所定の設定水位Ｌ₁よりも高くなる。このため、待機状態において、使用者がレバーハンドル５ａを操作した時点（図１０の時刻ｔ１）では、第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁よりも高く、ボールタップ１４の主弁体２０は開弁されない。そして、時刻ｔ１～ｔ２の間に、第１の排水口４ｂから所定量の洗浄水がリム吐水として排出され、第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁まで低下すると、パイロット弁２８が開弁され、ボールタップ１４の主弁体２０も開弁される。これにより、時刻ｔ２において、水圧駆動機構１６への給水が開始されて、水圧駆動機構１６により第２排水弁１２が開弁され、ジェット吐水が開始される。

【0069】

次に、図１１乃至図１４を参照して、小洗浄モードによる便器洗浄を説明する。
まず、図１４の時刻ｔ１１において、使用者が小洗浄モードの便器洗浄を行うべく、洗浄水タンク４のレバーハンドル５ａを回転操作すると、小洗浄用玉鎖５ｆが第１排水弁１０を引き上げる。これにより、図１１に示すように、第１排水弁１０が第１の排水口４ｂから引き離され、第１の排水口４ｂが開弁される。また同時に、レバーハンドル５ａを回転操作することにより、操作部５の突出部５ｇ（図３）が下方に移動され、ボールタップ１４のフロート２４を強制的に低下させる。

【0070】

フロート２４が低下されると、パイロット弁２８（図４）が開弁される。これにより、圧力室１８ａ内の圧力が低下して主弁体２０が開弁され、図１１に示すように、水圧駆動機構１６への給水が開始される。水圧駆動機構１６に洗浄水が給水されると、第２排水弁１２が引き上げられ、第２の排水口４ｃが開弁される。

【0071】

このように、小洗浄モードが実行された場合には、第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁まで低下するのを待つことなく、強制的にフロート２４が押し下げられ、水圧駆動機構１６への給水が開始される。これにより、小洗浄モードにおいては、第１排水弁１０と第２排水弁１２が実質的に同時に、即ち、第１排水弁１０が開弁された後、所定時間（図１０の時刻ｔ１～ｔ２の間）が経過する前に第２排水弁１２が開弁される。これにより、小洗浄モードにおいては、図１４の時刻ｔ１１において、リム吐水及びジェット吐水がほぼ同時に開始される。

【0072】

さらに、水圧駆動機構１６により第２排水弁１２が所定の高さまで引き上げられると、クラッチ機構３２（図５）により、第２排水弁１２の弁軸１２ａがロッド３０から切り離される。これにより、第２排水弁１２は、第２の排水口４ｃに向けて降下する。そして、図１４の時刻ｔ１２において、図１２に示すように、第２排水弁１２が第２の排水口４ｃに着座し、第２の排水口４ｃが閉弁される。これにより、ジェット吐水口２ｅからのジェット吐水が停止される。上述したように、ジェット吐水口２ｅからは大流量で洗浄水が吐出されため、第２タンク部６ｂ内の水位は急激に低下して、第２排水弁１２は第１排水弁１０よりも早く閉弁される。

【0073】

図１２に示す状態においては、ボールタップ１４の主弁体２０は開弁された状態であるため、給水源７（水道）から供給された洗浄水は、ボールタップ１４を介して水圧駆動機構１６に供給され、シリンダ１６ａに接続された給水管３４から第２タンク部６ｂの中に流入する。一方、第１排水弁１０は依然として開弁された状態であるため、第１タンク部６ａ内の洗浄水は第１の排水口４ｂから流出し、リム吐水口２ｄから吐出される。

【0074】

次いで、図１４の時刻ｔ１３において、洗浄水タンク４の第２タンク部６ｂ内の水位が死水水位ＤＷＬまで低下すると、図１３に示すように、第１排水弁１０が第１の排水口４ｂに着座し、第１排水弁１０が閉弁される。これにより、リム吐水口２ｄからのリム吐水が停止される。

【0075】

ここで、小洗浄モード実行時の図１４の時刻ｔ１１において操作部５の小洗浄用玉鎖５ｆにより引き上げられる第１排水弁１０の高さは、上述したように、大洗浄モードにおいて引き上げられる第１排水弁１０の高さよりも低くされている。このため、小洗浄モードにおいて第１排水弁１０が開弁された後、閉弁されるまでの期間（図１４の時刻ｔ１１～ｔ１３の期間）は、大洗浄モードにおける第１排水弁１０の開弁期間（図１０の時刻ｔ１～ｔ４の期間）よりも短くなる。これにより、小洗浄モードにおいてリム吐水口２ｄから吐出される洗浄水の量は、大洗浄モードにおいてリム吐水口２ｄから吐出される洗浄水の量よりも少なく、図１３（小洗浄モード）における死水水位ＤＷＬは、図９（大洗浄モード）における死水水位ＤＷＬよりも高くなる。

【0076】

さらに、図１４の時刻ｔ１３においてリム吐水が停止された後、時刻ｔ１４において、洗浄水タンク４の第１タンク部６ａ内の水位が設定水位Ｌ₁まで上昇してパイロット弁２８が閉弁される。さらに、時刻ｔ１５において、ボールタップ１４の主弁体２０が閉弁され、水洗大便器装置１は待機状態に復帰する。時刻ｔ１３の後、水洗大便器装置１が待機状態に復帰するまでの作用は、大洗浄モードと同一であるため、説明を省略する。

【0077】

なお、本実施形態においては、小洗浄モードにおいて、第１排水弁１０と、第２排水弁１２がほぼ同時に開弁されているが、変形例として、第１排水弁１０を開弁させた後、所定時間（図１０の時刻ｔ１～ｔ２の間）が経過する前に第２排水弁１２を開弁させるように本発明を構成することもできる。この場合においては、例えば、操作部５の突出部５ｇ（図３）と、ボールタップ１４のフロート２４の間に適当な隙間を設けておく。これにより、シャフト５ｂが矢印Ｄ２の方向に回動されたとき、小洗浄用玉鎖５ｆにより第１排水弁１０が引き上げられた後、少し遅れて（所定時間が経過する前に）突出部５ｇがフロート２４を強制的に押し下げ、水圧駆動機構１６への給水が開始されて第２排水弁１２が引き上げられる。

【0078】

本発明の第１実施形態の水洗大便器装置１によれば、リム吐水口２ｄからの洗浄水の吐出、停止が第１排水弁１０により切り替えられ、ジェット吐水口２ｅからの洗浄水の吐出、停止が第２排水弁１２によって切り替えられる（図２）ので、洗浄に使用する洗浄水を全て洗浄水タンク４から供給しながら、リム吐水及びジェット吐水の時機を自由に独立して設定することができる。これにより、洗浄水タンク４に貯留された洗浄水により、水洗大便器本体２のボウル部２ａを効果的に洗浄することができる。また、本発明の第１実施形態の水洗大便器装置１によれば、大洗浄モード（図１０）の実行時においては、第１排水弁１０を開弁させた後、所定時間経過後に第２排水弁１２を開弁させることにより、ボウル部２ａに洗浄水を供給し、小洗浄モード（図１４）の実行時においては、第１排水弁１０と第２排水弁１２を実質的に同時に開弁させる。このため、小洗浄モードにおいて必要性の少ないジェット吐水開始前のリム吐水量を減少させることができ、十分な洗浄性能を確保しながら洗浄水量を抑制することができる。

【0079】

また、本実施形態の水洗大便器装置１によれば、第２排水弁１２が水圧駆動機構１６により開弁されるので、モータ等の電気的な動力で排水弁を引き上げることなく、大洗浄モードにおいて、リム吐水が開始された後、所定時間経過後にジェット吐水を開始させることができる。これにより、洗浄水量を抑制しながら、効果的にボウル部２ａを洗浄することができる。

【0080】

さらに、本実施形態の水洗大便器装置１によれば、大洗浄モード実行時においては、洗浄水タンク４内の水位の低下に伴ってフロート２４が低下して水圧駆動機構１６への洗浄水の供給が開始されるので、洗浄水タンク４内の水位が低下した後、ジェット吐水が開始される。一方、小洗浄モード実行時においては、フロート２４が強制的に低下されて水圧駆動機構１６への洗浄水の供給が開始されるので、洗浄水タンク４内の水位の低下を待たずにジェット吐水が開始される。これにより、電気的な制御を使用することなく、大洗浄モード及び小洗浄モードの洗浄シーケンスを設定することができる。

【0081】

また、本実施形態の水洗大便器装置１によれば、レバーハンドル５ａを第１の方向に回動させると大洗浄モードが実行され、第２の方向に回動させると小洗浄モードが実行されるので、簡単な機構で、大洗浄モード及び小洗浄モードの実行を制御することができる。

【0082】

次に、図１４及び図１５を参照して、本発明の第２実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態の水洗大便器装置は、大洗浄モードと小洗浄モードを実行するための操作部の構成が上述した第１実施形態とは異なる。従って、以下では、本発明の第２実施形態の、第１実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成については、第１実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。

【0083】

図１５は、本発明の第２実施形態による水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの概略構成を示す断面図である。図１６は、本発明の第２実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンクに備えられている操作部を取り出して、その概略構成を示した模式図である。

【0084】

図１５に示すように、本実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク４は、第１排水弁１０と、第２排水弁１２と、ボールタップ１４と、水圧駆動機構１６と、を有する。また、上述した第１実施形態と同様に、洗浄水タンク４の底面には、第１排水弁１０によって開閉される第１の排水口４ｂと、第２排水弁１２によって開閉される第２の排水口４ｃが設けられている。さらに、洗浄水タンク４には仕切壁６が設けられ、洗浄水タンク４の中が、第１の排水口４ｂが設けられた第１タンク部６ａと、第２の排水口４ｃが設けられた第２タンク部６ｂに仕切られている。

【0085】

そして、本実施形態において、第１排水弁１０には、操作部（図１６には図示せず）に備えられている大洗浄用玉鎖４０ａ、及び小洗浄用玉鎖４０ｂが接続され、第２排水弁１２には小洗浄用玉鎖４０ｃが接続されている。

【0086】

次に、図１６に示すように、操作部４０は、大洗浄用の第１ボタン４２ａと、小洗浄用の第２ボタン４２ｂと、これらの押しボタンにより押圧されるレバー４４と、レバー４４に取り付けられたシャフト４６と、このシャフト４６に取り付けられた第１アーム４８ａ及び第２アーム４８ｂと、を有する。

【0087】

第１ボタン４２ａ及び第２ボタン４２ｂは、洗浄水タンク４の上面に設けられた押しボタンであり、使用者がこれらのボタンを押圧することにより、大洗浄モード又は小洗浄モードを実行することができる。また、これらの第１ボタン４２ａ、第２ボタン４２ｂは、使用者に押圧されることにより、上下方向に移動可能に、洗浄水タンク４によって支持されている。さらに、これら第１ボタン４２ａ、第２ボタン４２ｂは、使用者が押圧した後は、バネ（図示せず）により、元の状態に復帰するように構成されている。なお、第１ボタン４２ａ、第２ボタン４２ｂは、それらの上端部のみが洗浄水タンク４の上面から露出しており、下部は、洗浄水タンク４の上面のカバー（図示せず）によって覆われている。

【0088】

レバー４４は、水洗大便器装置の前後方向に延びるように、略水平に向けられた棒状の部材であり、第１ボタン４２ａ及び第２ボタン４２ｂの下方に配置されている。

【0089】

シャフト４６は、洗浄水タンク４上部の中で、水洗大便器装置１の幅方向に、水平に延びる棒状の部材である。このシャフト４６は、洗浄水タンク４に対して回動可能に支持されると共に、中間部には、シャフト４６と直交するようにレバー４４が固定されている。そして、第１ボタン４２ａ又は第２ボタン４２ｂが押圧されると、レバー４４と共にシャフト４６が回動される。即ち、第１ボタン４２ａはレバー４４の後方側の端部上方に配置されており、第１ボタン４２ａが押圧されると、レバー４４に固定されたシャフト４６が矢印Ｄ１の方向に回動される。一方、第２ボタン４２ｂはレバー４４の前方側の端部上方に配置されており、第２ボタン４２ｂが押圧されると、レバー４４に固定されたシャフト４６が矢印Ｄ２の方向に回動される。

【0090】

第１アーム４８ａは、シャフト４６に対して直交する方向に固定された細長い部材であり、水洗大便器装置１の前方及び後方に向けて水平に延びている。第１アーム４８ａの前方側の先端には、大洗浄用玉鎖４０ａの一端が取り付けられており、この大洗浄用玉鎖４０ａの他端は、第１排水弁１０に固定されている。一方、第１アーム４８ａの後方側の先端には、小洗浄用玉鎖４０ｂの一端が取り付けられており、この小洗浄用玉鎖４０ｂの他端も、第１排水弁１０に固定されている。

【0091】

第２アーム４８ｂは、シャフト４６に対して直交する方向に固定された細長い部材であり、水洗大便器装置１の後方に向けて水平に延びている。第２アーム４８ｂの後方側の端部には、小洗浄用玉鎖４０ｃの一端が取り付けられており、この小洗浄用玉鎖４０ｃの他端は、第２排水弁１２に固定されている。

【0092】

この構成により、大洗浄用の第１ボタン４２ａが押圧され、シャフト４６が第１の方向である矢印Ｄ１の方向に回動されると、第１アーム４８ａの先端が上方に移動する。これにより、大洗浄用玉鎖４０ａが上方に引かれ、第１排水弁１０が引き上げられて、第１排水弁１０が開弁される。

【0093】

一方、小洗浄用の第２ボタン４２ｂが押圧され、シャフト４６が第２の方向である矢印Ｄ２の方向に回動されると、第１アーム４８ａ、第２アーム４８ｂの後端が上方に移動する。これにより、小洗浄用玉鎖４０ｂが上方に引かれ、第１排水弁１０が引き上げられて、第１排水弁１０が開弁される。また、同時に、第２アーム４８ｂ後端に取り付けられた小洗浄用玉鎖４０ｃも上方に引かれ、第２排水弁１２が引き上げられて、第２排水弁１２が開弁される。

【0094】

このように、第１ボタン４２ａが押圧され、シャフト４６が矢印Ｄ１の方向に回動されると、大洗浄用玉鎖４０ａが上方に引かれ、第１排水弁１０が引き上げられて大洗浄モードが実行される。また、第２ボタン４２ｂが押圧され、シャフト４６が矢印Ｄ１とは反対の矢印Ｄ２の方向に回動されると、小洗浄用玉鎖４０ｂ、４０ｃが上方に引かれ、第１排水弁１０及び第２排水弁１２が引き上げられて小洗浄モードが実行される。ここで、本実施形態においては、大洗浄用玉鎖４０ａは小洗浄用玉鎖４０ｂよりも短く（弛みが少なく）構成されている。このため、第１排水弁１０は、大洗浄用玉鎖４０ａによって引き上げられた場合には、小洗浄用玉鎖４０ｂによって引き上げられた場合よりも高い位置まで引き上げられる。この結果、大洗浄モードが実行された場合には、小洗浄モードが実行された場合よりも第１排水弁１０が開弁されている時間が長くなり、リム吐水口２ｄから吐出される洗浄水量も多くなる。

【0095】

次に、本発明の第２実施形態による水洗大便器装置の作用を説明する。
まず、使用者が、大洗浄用の第１ボタン４２ａを押圧すると、大洗浄用玉鎖４０ａにより第１排水弁１０が引き上げられ、リム吐水口２ｄからのリム吐水が行われる。第１排水弁１０が引き上げられ、洗浄水が排出されることにより、第１タンク部６ａ内の水位が初期水位Ｌ₂から設定水位Ｌ₁へ低下すると、ボールタップ１４のフロート２４が低下して、パイロット弁２８が開弁される。

【0096】

これにより、ボールタップ１４の主弁体２０が開弁され、水圧駆動機構１６への給水が開始される。水圧駆動機構１６への給水が開始されると、水圧駆動機構１６により第２排水弁１２が開弁され、ジェット吐水口２ｅからのジェット吐水が行われる。即ち、第１ボタン４２ａの押圧により開始される大洗浄モードにおいては、リム吐水口２ｄからのリム吐水の後、所定時間（第１実施形態における図１０の時刻ｔ１～ｔ２に相当）経過後にジェット吐水が開始される。なお、大洗浄モードにおける、ジェット吐水が開始された後の作用は、上述した第１実施形態と同様であるため説明を省略する。

【0097】

次に、使用者が、小洗浄用の第２ボタン４２ｂを押圧した場合には、小洗浄用玉鎖４０ｂ及び小洗浄用玉鎖４０ｃがほぼ同時に引かれ、第１排水弁１０及び第２排水弁１２が引き上げられる。これにより、リム吐水口２ｄからのリム吐水、及びジェット吐水口２ｅからのジェット吐水が実質的に同時に開始される。即ち、小洗浄モード実行時においては、操作部４０の操作に基づいて、強制的に第２排水弁１２が開弁されてジェット吐水が開始される。次いで、第１タンク部６ａ内の水位が初期水位Ｌ₂から設定水位Ｌ₁へ低下すると、ボールタップ１４のフロート２４が低下して、パイロット弁２８が開弁される。

【0098】

これにより、ボールタップ１４の主弁体２０が開弁され、水圧駆動機構１６への給水が開始される。即ち、小洗浄モードにおいては、小洗浄用玉鎖４０ｃにより第２排水弁１２が引き上げられた後で、水圧駆動機構１６への給水が開始される。水圧駆動機構１６に供給された洗浄水は、給水管３４を通って第２タンク部６ｂの中に流入する。なお、小洗浄モードにおける、水圧駆動機構１６への給水が開始された後の作用は、上述した第１実施形態と同様であるため説明を省略する。

【0099】

なお、本実施形態においては、小洗浄モードにおいて、第１排水弁１０と、第２排水弁１２がほぼ同時に開弁されているが、変形例として、第１排水弁１０を開弁させた後、所定時間が経過する前に第２排水弁１２を開弁させるように本発明を構成することもできる。この場合においては、例えば、小洗浄用玉鎖４０ｃを小洗浄用玉鎖４０ｂよりも少し長く（弛ませて）構成しておく。これにより、シャフト４６が矢印Ｄ２の方向に回動されたとき、小洗浄用玉鎖４０ｂにより第１排水弁１０が引き上げられた後、少し遅れて（所定時間が経過する前に）小洗浄用玉鎖４０ｃにより第２排水弁１２が引き上げられる。

【0100】

本発明の第２実施形態の水洗大便器装置によれば、大洗浄モード実行時においては、洗浄水タンク４の第１タンク部６ａ内の水位の低下に伴ってフロート２４が低下して水圧駆動機構１６への洗浄水の供給が開始されるので、洗浄水タンク４内の水位が低下した後、ジェット吐水が開始される。一方、小洗浄モード実行時においては、操作部４０の操作に基づいて、強制的に第２排水弁１２が開弁されてジェット吐水が開始される。これにより、電気的な制御を使用することなく、大洗浄モード及び小洗浄モードの洗浄シーケンスを設定することができる。

【0101】

また、本実施形態の水洗大便器装置によれば、第１ボタン４２ａが押圧されると大洗浄モードが実行され、第２ボタン４２ｂが押圧されると小洗浄モードが実行されるので、簡単な機構で、大洗浄モード及び小洗浄モードの実行を制御することができる。

【0102】

以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した第１実施形態においては、操作部としてレバーハンドルが備えられ、第２実施形態においては、操作部として第１、第２ボタンが備えられていたが、他の任意の操作部により、大洗浄モードと小洗浄モードを選択的に実行できるように本発明を構成することもできる。また、第１、第２ボタンを本発明の第１実施形態に適用し、レバーハンドルを本発明の第２実施形態に適用することもできる。

【0103】

さらに、上述した実施形態においては、洗浄水タンクに仕切壁が設けられ、第１タンク部、第２タンク部に第１の排水口、第２の排水口が夫々設けられていたが、洗浄水タンクの仕切壁を省略することもできる。この場合において、第１の排水口、第２の排水口は、上面視において互いに重なるように構成されていても良い。この場合には、例えば、第１の排水口と第２の排水口を同心円状に設けておき、内側の排水口を円形の排水弁によって開閉し、外側の排水口をドーナツ板状の排水弁によって開閉するように本発明を構成することができる。

【符号の説明】

【0104】

１ 水洗大便器装置
２ 水洗大便器本体
２ａ ボウル部
２ｃ 排水トラップ管路
２ｄ リム吐水口
２ｅ ジェット吐水口
２ｆ リム導水路
２ｇ ジェット導水路
４ 洗浄水タンク
４ｂ 第１の排水口
４ｃ 第２の排水口
５ 操作部
５ａ レバーハンドル（ハンドル）
５ｂ シャフト
５ｃ 第１アーム
５ｄ 第２アーム
５ｅ 大洗浄用玉鎖
５ｆ 小洗浄用玉鎖
５ｇ 突出部
６ 仕切壁
６ａ 第１タンク部
６ｂ 第２タンク部
７ 給水源
８ 止水栓
１０ 第１排水弁
１０ａ 玉鎖
１０ｂ 浮き球
１２ 第２排水弁
１２ａ 弁軸
１２ｂ 浮き球
１４ ボールタップ（遅延機構）
１４ａ 流入管
１４ｂ 流出管
１６ 水圧駆動機構
１６ａ シリンダ
１６ｂ ピストン
１６ｃ スプリング
１８ 本体部
１８ａ 圧力室
２０ 主弁体
２０ａ ブリード穴
２２ 弁座
２４ フロート
２６ アーム部
２６ａ 支持軸
２８ パイロット弁
２８ａ パイロット弁口
３０ ロッド
３２ クラッチ機構
３４ 給水管
４０ 操作部
４０ａ 大洗浄用玉鎖
４０ｂ 小洗浄用玉鎖
４０ｃ 小洗浄用玉鎖
４２ａ 第１ボタン
４２ｂ 第２ボタン
４４ レバー
４６ シャフト
４８ａ 第１アーム
４８ｂ 第２アーム

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】