(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】家庭ごみから調製されたアレルゲンサンプルの利用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20250821BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
G01N33/53 Q
(21)【出願番号】P 2023178455
(22)【出願日】2023-10-16
【審査請求日】2024-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】507161983
【氏名又は名称】ITEA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阪口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】山野 裕美
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-071553(JP,A)
【文献】特開2008-116306(JP,A)
【文献】特開2000-035428(JP,A)
【文献】特許第7126665(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/092772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/15
G01N 33/50
G01N 33/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭ごみから調製されたアレルゲンサンプル品
(但し、アレルゲンサンプル品が花粉である場合を除く)と緩衝液からなる抽出溶媒とを備えることを特徴とするアレルゲン不活化評価キットであって、前記アレルゲンサンプル品は、目的とするアレルゲンを所定の量で添加して測定干渉物質がELISA測定に影響を与えないかどうかを確認する添加回収試験を経て、その添加回収率が90~110%であるものを選別してなるものである、該アレルゲン不活化評価キット。
【請求項2】
前記アレルゲンサンプル品は、家庭ごみを篩にかけて取り出した細塵からなる請求項1に記載のアレルゲン不活化評価キット。
【請求項3】
前記アレルゲンサンプル品に含有されるアレルゲンが、ダニ
、動物の体毛、動物の排泄物、フケ、カビ、食物残渣、衛生動物由来物質から選ばれた1種または2種以上である、請求項1に記載のアレルゲン不活化評価キット。
【請求項4】
前記抽出溶媒が、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液から選ばれた1種である、請求項1に記載のアレルゲン不活化評価キット。
【請求項5】
前記アレルゲンがダニであるときは前記抽出溶媒がリン酸緩衝液
、前記アレルゲンがコラーゲンを含むものであるときは前記抽出溶媒が酢酸緩衝液である、請求項3に記載のアレルゲン不活化評価キット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載のアレルゲン不活化評価キットを用い、
前記アレルゲンサンプル品に、アレルゲン不活化物質を反応させて試験品を得る反応工程と、
前記反応工程の後に、前記抽出溶媒の添加により抽出した試験品抽出液を得る試験品抽出工程と、
前記アレルゲンサンプル品に、前記アレルゲン不活化物質を作用させることなく対照品とし、前記抽出溶媒の添加により抽出した対照品抽出液を得る対照品抽出工程と、
前記試験品抽出液を含む前記試験品に由来する溶液及び前記対照品抽出液を含む前記対照品に由来する溶液のアレルゲン含有量をELISAによってそれぞれ測定するアレルゲン含有量測定工程と、
前記試験品に由来する溶液のアレルゲン含有量と、前記対照品に由来する溶液のアレルゲン含有量とからアレルゲン不活化率を算出するアレルゲン不活化率算出工程とを含むことを特徴とするアレルゲン不活化物質の評価方法。
【請求項7】
前記試験品抽出工程は、前記試験品抽出液を採取した残渣に対して前記抽出溶媒を添加して、再度上清を採取して試験品上清を得る工程を更に含み、
前記対照品抽出工程は、前記対照品抽出液を採取した残渣に対して前記抽出溶媒を添加して、再度上清を採取して対照品上清を得る工程を更に含み、
前記試験品に由来する溶液は、前記試験品上清を含み、
前記対照品に由来する溶液は、前記対照品上清を含むことを特徴とする請求項6に記載のアレルゲン不活化物質の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲン不活性化評価用測定キット及びアレルゲン不活化物質の評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息を始めとする多くのアレルギー疾患が問題となっている。アレルギー疾患の原因であるアレルゲンの種類には、食物・薬物・室内のゴミやホコリ(ハウスダスト=ペット類の毛やダニなど)・花粉などがあり、アレルギー疾患を患っている人がアレルゲンに接触すると、アレルギー反応が誘発され、じんましん・皮膚炎・喘息・発熱などを発症する。
【0003】
特に、ダニは生活環境に普通に存在する布団等の寝具や、床材などに生息するが、生体のみならず、死骸片、排泄物もアレルゲンになることが知られている。
【0004】
アレルギー疾患やその他のアレルギー症状への対策の1つとして、原因となるアレルゲンを不活化させる薬剤の開発が試みられている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、タンニン酸で環境を処理することを特徴とする環境からアレルゲンを除去する方法の発明が開示されている。そして、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)を含有する家の塵や、牧草オオアワガエリ(Phleum pratense)や雑草オオバコ(Plantago lanceolata)などからの抽出物を、1%タンニン酸水溶液で処理すると、皮膚反応試験でのアレルゲン性を低減することができると記載されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品に、人体への安全性の高いタンニン酸を、架橋剤を介して結合させることにより、洗濯を繰り返してもタンニン酸によるアレルゲン不活化活性能の低下を防ぐことができると記載されている。
【0007】
一方、上記のタンニン酸以外にも、各種物質の有効性が示唆されている。例えば、下記特許文献3には、分子中に少なくとも1個のカチオン性基としてのグアニジノ基を有し、かつ界面活性能を有する化合物又はその塩の利用について記載されている。また、下記特許文献4には、水および親水性溶媒から選ばれる少なくとも一種からなる溶媒によるザクロの葉の抽出物の利用について記載されている。また、下記特許文献5には、銀、亜鉛等の抗アレルゲン性金属成分の利用について記載されている。また、下記特許文献6には、スチレンスルホン酸単位を有する高分子化合物の利用について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭61-44821号公報
【文献】特開2007-107149号公報
【文献】特開平9-157152号公報
【文献】特開2002-370996号公報
【文献】特開2006-241431号公報
【文献】特開2009-155453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、アレルゲン不活化剤の開発において、その不活化能が期待される薬剤を評価するには、アレルゲンと反応させてみて、反応後の溶液中のアレルゲン含有量をELISAなどで測定することが行われている。しかしながら、アレルゲン不活化剤に反応させるアレルゲンのサンプル品として食物残渣や動物の毛、ダニ死骸や花粉を用いる場合、免疫原性を有するアレルゲン物質がそれらのアレルゲンサンプル品の内部に留まり、アレルゲン含有量を正確に測定することができず、その結果として、被検薬剤の不活化能を精度よく評価することができないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、アレルゲン不活化剤の不活化能について、より精度の高い評価を行うことを可能にする、アレルゲン不活性化評価用測定キット及びアレルゲン不活化物質の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のアレルゲン不活性化評価キットは、家庭ごみから調製されたアレルゲンサンプル品と緩衝液からなる抽出溶媒とを備えるものである。
【0013】
本発明のアレルゲン不活性化評価キットにおいては、前記アレルゲンサンプル品は、家庭ごみを篩にかけて取り出した細塵からなることが好ましい。
【0014】
また、前記アレルゲンサンプル品に含有されるアレルゲンは、ダニ、花粉、動物の体毛、動物の排泄物、フケ、カビ、食物残渣、衛生動物由来物質から選ばれた1種または2種以上であることが好ましい。
【0015】
また、前記抽出溶媒は、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液から選ばれた1種であることが好ましい。
【0016】
また、前記アレルゲンがダニであるときは前記抽出溶媒がリン酸緩衝液、前記アレルゲンが花粉であるときは前記抽出溶媒が炭酸緩衝液、前記アレルゲンがコラーゲンを含むものであるときは前記抽出溶媒が酢酸緩衝液であることが好ましい。
【0017】
さらに、前記アレルゲンサンプル品は、目的とするアレルゲンを所定の量で添加して測定干渉物質がELISA測定に影響を与えないかどうかを確認する添加回収試験を経て選別されたものであることが好ましい。
【0018】
一方、本発明のアレルゲン不活化物質の評価方法は、上記のアレルゲン不活性化評価用キットを用い、前記アレルゲンサンプル品に、アレルゲン不活化物質を反応させて試験品を得る反応工程と、前記反応工程の後に、前記抽出溶媒の添加により抽出した試験品抽出液を得る試験品抽出工程と、前記アレルゲンサンプル品に、前記アレルゲン不活化物質を作用させることなく対照品とし、前記抽出溶媒の添加により抽出した対照品抽出液を得る対照品抽出工程と、前記試験品抽出液を含む前記試験品に由来する溶液及び前記対照品抽出液を含む前記対照品に由来する溶液のアレルゲン含有量をELISAによってそれぞれ測定するアレルゲン含有量測定工程と、前記試験品に由来する溶液のアレルゲン含有量と、前記対照品に由来する溶液のアレルゲン含有量とからアレルゲン不活化率を算出するアレルゲン不活化率算出工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明のアレルゲン不活化物質の評価方法においては、前記試験品抽出工程は、前記試験品抽出液を採取した残渣に対して前記抽出溶媒を添加して、再度上清を採取して試験品上清を得る工程を更に含み、前記対照品抽出工程は、前記対照品抽出液を採取した残渣に対して前記抽出溶媒を添加して、再度上清を採取して対照品上清を得る工程を更に含み、前記試験品に由来する溶液は、前記試験品上清を含み、前記対照品に由来する溶液は、前記対照品上清を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、より高い精度で評価を行うことができる、アレルゲン不活性化評価用測定キット及びアレルゲン不活化物質の評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明方法の試験手順を示した模式図である。
【
図2】
図2はアレルゲン不活化物質が溶液として使用される場合の、アレルゲン不活化物質の評価方法の試験手順を示した模式図である。
【
図3】
図3はアレルゲン不活化物質がナノサイズの帯電微粒子水などの空気中の物質である場合の、アレルゲン不活化物質の評価方法の試験手順を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、任意のアレルゲン不活化物質について、その不活化物質がアレルゲンに対してどの程度の不活化能を有するのかについて評価するための評価キット及び評価方法を提供するものである。
【0023】
ここで「アレルゲン不活化物質」とは、評価者が評価したい任意の物質等であってよく、アレルゲン抑制作用を有する成分として公知の物質、例えば、アレルゲン物質を抑制する極性部位を化学構造として有するもの等であってよい。そのようなアレルゲン不活性化物質としては、例えば、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子、あるいは、アニオン系界面活性剤、水酸基を有する化合物または高分子、金属塩等を無機担体に担持した微粒子等を挙げることができる。より具体的には、柿渋等の天然抽出物、タンニン酸、カテキンおよびメチル化カテキン、ジヒドロキシ安息香酸や2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸系化合物またはその塩、パラヒドロキシポリスチレンやポリスチレンスルホン酸塩等のポリスチレン系化合物、非水溶性亜鉛化合物あるいは非水溶性亜鉛・金属酸化物の複合粒子、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、光触媒酸化チタン、カルシウム塩やストロンチウム塩等の無機塩系化合物などであり得る。あるいは、例えば、空気中の水に高電圧を加えることで生成されるOHラジカルを含むナノサイズの帯電微粒子水、プラズマ放電により発生させた酸素・水分子の安定イオン化物、食塩水を電気分解することで生成させた次亜塩素酸水溶液の微粒子化物など、空間除菌や除ウイルス、除染、脱臭等に効果のある物質について、そのアレルゲン不活化能を評価す場合に適用されてもよい。
【0024】
また、「不活化能」とは、ヒト又は動物にアレルギーを引き起こすことが知られるアレルゲンに対して、これを不活化する能力を意味する。
【0025】
本発明のアレルゲン不活性化評価キットは、家庭ごみから調製されたアレルゲンサンプル品と、緩衝液からなる抽出溶媒とを備えるものである。本発明のアレルゲン不活化評価キットによれば、より精度よくアレルゲン不活化物質の不活化能を評価することができる。
【0026】
上記アレルゲンサンプル品は、家庭ごみから調製されたものであり、典型的には一般家庭の室内塵から調製されたものである。この場合、その家庭ごみを篩にかけて取り出した細塵からなることが好ましい。篩にかけた細塵とすることにより、家庭ごみに含まれる大きなごみを取り除き、アレルゲン含有量の多いアレルゲンサンプル品を調製することができる。
【0027】
上記篩は、目開き0.3mm以下であることが好ましい。この目開きの篩を使用することにより、ダニ死骸といったアレルゲンとなり得る比較的小さな塵を残しながら、アレルゲンとならない比較的大きな塵を取り除くことができる。
【0028】
また、上記アレルゲンサンプル品は、家庭ごみを篩にかけて取り出した細塵を、さらにビーズ等の公知の方法を用いて破砕し、更に篩にかけて取り出した微細塵であってもよい。微細塵を得る方法としては、家庭ごみを目開き0.3mmの篩にかけて細塵を取り出し、破砕した後、更に目開き0.18mmの篩にかけて微細塵を取り出すことができる。
【0029】
アレルゲン不活化評価キットを用いて試験するアレルゲン不活化物質が、例えば、上述した帯電微粒子水、酸素・水分子の安定イオン化物、次亜塩素酸水溶液の微粒子化物など、空間除菌や除ウイルス、除染、脱臭等に効果のある物質である場合には、アレルゲンサンプル品は、上記の微細塵であることが好ましい。
【0030】
上記アレルゲンサンプル品はアレルゲンを含有するものであり、含有されるアレルゲンは、ダニ、花粉、動物の体毛、動物の排泄物、フケ、カビ、食物残渣、衛生動物由来物質から選ばれた1種または2種以上であることが好ましく、2種以上であることがより好ましい。複数種類のアレルゲンを含有することにより、1つのアレルゲンサンプル品を、様々なアレルゲンに対する不活化能試験に用いることができる。
【0031】
上記ダニとしては、ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、アシブトコナダニ、ケナガコナダニ、サヤアシニクダニ等を挙げることができ、ヤケヒョウヒダニ又はコナヒョウヒダニであることが好ましい。
【0032】
上記花粉としては、スギ科、ヒノキ科、カバノキ科、イネ科、及びキク科の植物の花粉を挙げることができ、スギ科又はヒノキ科の植物の花粉であることが好ましい。
【0033】
上記動物の体毛及び動物の排泄物の由来となる動物としては、イヌ、ネコ、鳥、ウサギ等を挙げることができる。
【0034】
上記カビとしては、アルテルナリア(ススカビ)、アスペルギルス(コウジカビ)、ペニシリウム(アオカビ)、クラドスポリウム(クロカビ)等を挙げることができる。
【0035】
上記食物残渣の由来となる食物としては、小麦、そば、卵、乳、落花生、えび、かに、あわび、いか、いくら、カシューナッツ、キウイフルーツ、オレンジ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン等を挙げることができる。その場合、上記の食物が粉状に加工された、例えば小麦粉、そば粉、粉乳、大豆粉等であり得る。
【0036】
上記衛生動物としては、虫及びネズミ等を挙げることができる。
【0037】
上記アレルゲンサンプル品に、適宜、適当なアレルゲンを含有させる方法としては、例えば、ダニ及びカビの繁殖に適した高温多湿の場所から家庭ごみを採取する、花粉の飛散量の多い春先に家庭ごみを採取する、ペットを飼育している家庭から家庭ごみを採取するなど、目的とするアレルゲンが含有されやすい特徴をもつ場所から家庭ごみを採取する方法を挙げることができる。また、異なる特徴をもつ複数の場所から採取した家庭ごみを混合してもよい。
【0038】
家庭ごみを採取する方法としては、一般家庭の室内に存在する室内塵を、掃除機を用いて吸引する方法、ワイパーシートを用いて拭き取りをする方法等を挙げることができる。更に、上記アレルゲンサンプル品は、ダニ、カビ、衛生動物を培養して得られる培養物、植物から直接採取した花粉、及び市販のアレルゲン抽出物等を、上記家庭ごみに加えて更に含有してもよい。
【0039】
上記のアレルゲンがアレルゲンサンプル品に含有されているかどうかは、既知の抗原抗体反応に基づく検出方法により確認することができる。該検出方法としては、例えば、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorvent Assay)、サンドイッチ免疫測定法、イムノブロット法、免疫沈降法、イムノクロマト法、Immunocap法等を挙げることができる。
【0040】
ELISA測定は、アレルゲン活性を高精度に定量する方法であり、酵素免疫法とも呼ばれる。使用するアレルゲンに応じてELISAキットが市販されており、これらの市販品を使用して、アレルゲン活性を測定することができる。そして、測定されたアレルゲン活性により、試料に含有されているアレルゲン量を測定することができる。
【0041】
ただし、上記アレルゲンサンプル品は、目的とするアレルゲンを所定の量で添加して、測定干渉物質がELISA測定に影響を与えないかどうかを確認する添加回収試験を経て選別されたものであることが好ましい。
【0042】
すなわち、一般にELISA測定においては、アレルゲンサンプル品に含有されている、目的とするアレルゲン以外の未知の物質が、分析に干渉することがある。この未知の物質が、上記測定干渉物質である。測定干渉物質が分析に干渉することにより、アレルゲン活性の測定が不正確な結果となる。この現象は、マトリックス干渉とも呼ばれる。
【0043】
添加回収試験とは、上記マトリックス干渉の有無を調べる試験である。具体的には、以下のようにして行うことができる。アレルゲンサンプル品を2分割し、一方には目的とするアレルゲンを所定の量添加する(以下、添加サンプルと称する)。他方には何も添加せず(以下、無添加サンプルと称する)、両サンプルのアレルゲン量をELISA測定により測定する。無添加サンプルのアレルゲン量を添加サンプルのアレルゲン量から減算し、更に添加サンプルに添加したアレルゲン量で除算した後、100倍することにより、添加回収率(%)を算出する。
【0044】
マトリックス干渉が全く無い場合には、添加回収率は100%であり、マトリックス干渉の影響が大きいほど、添加回収率の100%からの乖離が大きくなる。したがって、算出された添加回収率によってアレルゲンサンプル品を選別することにより、ELISA測定をより精度良く行うことができる。本発明におけるアレルゲンサンプル品としては、その添加回収率が90~110%であることが好ましい。
【0045】
上記抽出溶媒は、アレルゲンサンプル品からアレルゲン物質を抽出するために用いられる、緩衝液からなる溶媒である。該抽出溶媒をアレルゲンサンプル品に添加することにより、アレルゲンサンプル品からアレルゲン物質が抽出されるので、より精度良くアレルゲン物質含有量を測定することができ、アレルゲン不活化物質のアレルゲン不活化能をより精度良く評価することができる。
【0046】
上記抽出溶媒に用いる緩衝液としては、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液等を挙げることができ、中でも、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液から選ばれた1種であることが好ましい。リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液から選ばれた1種の緩衝液を使用することにより、よりアレルゲン物質を抽出しやすい。
【0047】
更に、アレルゲンサンプル品に含有されるアレルゲンがダニであるときは抽出溶媒がリン酸緩衝液、アレルゲンが花粉であるときは抽出溶媒が炭酸緩衝液、アレルゲンがコラーゲンを含むものであるときは抽出溶媒が酢酸緩衝液であることが好ましい。
【0048】
ここで、「コラーゲンを含むもの」とは、動物の皮膚等を含むものを意味し、例えば、動物の体毛、フケ、衛生動物由来物質等が含まれる。
【0049】
ダニに対してリン酸緩衝液、花粉に対して炭酸緩衝液、コラーゲンを含むものに対して酢酸緩衝液を用いると、更にアレルゲン物質を抽出しやすい。
【0050】
本発明のアレルゲン不活性化評価キットは、上記アレルゲンサンプル品及び上記抽出溶媒を最小構成要素として、他の要素を含んでいてもよい。例えば、ELISA測定に用いるELISAキット、アレルゲン不活化物質を反応させるための試験管やシャーレ等の試験容器、アレルゲン物質の吸着を防ぐ界面活性剤等を挙げることができ、また、本明細書に記載のない要素を含んでいてもよい。
【0051】
次に、本発明によるアレルゲン不活化物質の評価方法について説明する。本発明のアレルゲン不活化物質の評価方法は、
図1に記載されているように、上記のアレルゲン不活化評価キットを用い、アレルゲンサンプル品に、アレルゲン不活化物質を反応させて試験品を得る反応工程と、反応工程の後に、抽出溶媒の添加により抽出した試験品抽出液を得る試験品抽出工程と、アレルゲンサンプル品に、アレルゲン不活化物質を作用させることなく対照品とし、抽出溶媒の添加により抽出した対照品抽出液を得る対照品抽出工程と、試験品抽出液を含む試験品に由来する溶液及び対照品抽出液を含む対照品に由来する溶液のアレルゲン含有量をELISAによってそれぞれ測定するアレルゲン含有量測定工程と、試験品に由来する溶液のアレルゲン含有量と、対照品に由来する溶液のアレルゲン含有量とからアレルゲン不活化率を算出するアレルゲン不活化率算出工程とを含むものである。
【0052】
本発明によるアレルゲン不活化物質の評価方法によれば、より精度良くアレルゲン不活化物質の不活化能を評価することができる。
【0053】
(反応工程)
アレルゲンサンプル品にアレルゲン不活性化物質を添加し、試験品を得る。アレルゲンサンプル品にアレルゲン不活性化物質を添加する方法としては、特に制限されず、例えば、アレルゲン不活化物質が溶液の状態で使用される場合には、試験管やシャーレ等の試験容器にアレルゲンサンプル品を入れ、次いでアレルゲン不活化物質を加える方法や、フェルト生地にアレルゲンサンプル品を均一に散布し付着させ、次いでアレルゲン不活化物質をスプレーする方法を挙げることができ、アレルゲン不活化物質がナノサイズの帯電微粒子水などの空気中の物質である場合には、シャーレに静電気防止処理を施した後にアレルゲンサンプル品を入れ、更にシャーレを振動させてアレルゲンサンプル品を均一に塗布し、次いでアレルゲン不活化物質をシャーレに散布する方法を挙げることができる。
【0054】
アレルゲンサンプル品にアレルゲン不活性化物質を添加した後、一定時間放置して前記アレルゲン不活性化物質の反応を促進させる工程を実施してもよい。反応のための反応温度は特に限定されるものではなく、タンパク質が変性する温度以下であればよく、例えば5℃~30℃、好ましく10℃~25℃の範囲で調整すればよい。反応時間も特に限定されるものではなく、例えば5分から24時間の間で調整すればよい。反応時間を長く設定する場合には、試験品中の水分が揮発または蒸発によって減少し、試験品中のアレルゲン物質濃度が変化するおそれがあるため、試験容器を密閉しておくことが好ましい。
【0055】
(試験品抽出工程)
上記反応工程で得られた試験品に抽出溶媒を添加して、試験品からアレルゲン物質を抽出し、試験品抽出液を得る。試験品抽出液は、試験品に抽出溶媒を添加し、液体を回収した後、遠心分離して得られた上清であることが好ましい。アレルゲン不活化物質が溶液の状態で使用された場合には、試験品を遠心分離して得られた上清をピペット等で回収した後に、抽出溶媒を添加してもよく、上清を回収せずに抽出溶媒を添加してもよい。上清を回収する場合には、上清を回収した残渣に対して抽出溶媒を添加した後、撹拌、静置し、同様に遠心分離して行うことができる。
【0056】
また、試験品抽出工程は、上記反応工程をフェルト生地にアレルゲン不活化物質をスプレーすることにより行った場合には、該フェルト生地を抽出溶媒に浸漬することにより行うことができ、アレルゲン不活化物質がナノサイズの帯電微粒子水などの空気中の物質であって、上記反応工程をシャーレへの散布により行った場合には、シャーレを抽出溶媒ですすぎ、その溶液を回収、遠心分離することにより行うことができる。
【0057】
添加する抽出溶媒の量は、特に限定されないが、アレルゲンサンプル品の質量に対して10~1000倍の質量であることが好ましく、50~750倍の質量であることがより好ましい。抽出溶媒を添加した後、ローテーター等の撹拌機を用いて撹拌し、一定時間放置してアレルゲン不活化物質の反応及びアレルゲン物質の抽出を促進してもよい。放置時間中の温度は、反応工程と同様に調整することができ、試験容器を密閉することが好ましい。また、試験品抽出液を得るにあたっては、一定時間放置した後、冷却することにより、アレルゲン不活化物質の反応を停止させてもよい。
【0058】
試験品抽出工程は、上記試験品抽出液を採取した残渣に対して抽出溶媒を添加して、再度上清を採取して試験品上清を得る工程を更に含むことが好ましい。再度上清を採取する工程は、試験品抽出液を採取した残渣に対して抽出溶媒を添加した後、撹拌、静置し、同様に遠心分離して行うことができる。再度上清を採取する工程を更に含むことにより、アレルゲン物質をより多く抽出することができ、より精度良くアレルゲン不活化物質の不活化能を評価することができる。
【0059】
(対照品抽出工程)
アレルゲンサンプル品にアレルゲン不活化物質を作用させることなく対照品とし、上記試験品抽出工程と同様にして、アレルゲンサンプル品からアレルゲン物質を抽出し、対照品抽出液を得る。上記対照品は、上記反応工程で添加したアレルゲン不活化物質と同量の蒸留水又は抽出溶媒を上記反応工程と同様にしてアレルゲンサンプル品に添加することにより得られてもよい。また、対照品に抽出溶媒を添加する際には、対照品を遠心分離して得られた上清をピペット等で回収した後に、抽出溶媒を添加してもよく、上清を回収せずに抽出溶媒を添加してもよい。上清を回収する方法は、上記試験品抽出工程と同様にして行うことができる。
【0060】
対象品抽出工程は、対照品抽出液を採取した残渣に対して抽出溶媒を添加して、再度上清を採取して対照品上清を得る工程を更に含むことが好ましい。再度上清を採取する工程は、試験品抽出工程と同様にして行うことができる。再度上清を採取する工程を更に含むことにより、アレルゲン物質をより多く抽出することができ、より精度良くアレルゲン不活化物質の不活化能を評価することができる。
【0061】
(アレルゲン含有量測定工程)
上記試験品抽出液を含む上記試験品に由来する溶液及び上記対照品抽出液を含む上記対照品に由来する溶液を回収して、ELISA法にてアレルゲン活性を評価する。測定されたアレルゲン活性(抗原性)により、各溶液に含有されているアレルゲン量を算定することができる。該試験品に由来する溶液は、上記試験品抽出液を含み、上記試験品抽出工程において試験品を遠心分離して上清を回収した場合には、該上清を含む。また、該対照品に由来する溶液は、上記対照品抽出液を含み、上記対照品抽出工程において対照品を遠心分離して上清を回収した場合には、該上清を含む。更に、該試験品に由来する溶液及び該対照品に由来する溶液は、試験品抽出液又は対照品抽出液を採取した残渣に対して抽出溶媒を添加して得られた上清を含むことが好ましい。ELISA法による評価にあたっては、目的とするアレルゲンに応じて、市販されているELISAキットを使用することができる。試験方法は公知の手法に従えばよい。
【0062】
(アレルゲン不活化率算出工程)
上記アレルゲン含有量測定工程において算定された試験品に由来する溶液のアレルゲン含有量及び対照品に由来する溶液のアレルゲン含有量から、アレルゲン不活化率を算出する。アレルゲン不活化率は、例えば、下記式によって求めることができる。
不活化率(%)=100-(試験品に由来する溶液のアレルゲン含有量/対照品に由来する溶液のアレルゲン含有量)×100
【0063】
アレルゲン不活化物質の不活化能の有無を判定する方法としては、上記不活化率が95%以上の場合を不活化能が有ると判定し、95%未満の場合を不活化能がないと判定するなどである。不活化能を肯定するための不活化率の閾値としては90%以上であってよく、80%以上であってよい。また、不活化能を否定するための不活化率の閾値としては50%以下であってよく、25%以下であってよい。
【0064】
反応工程からアレルゲン不活化率算出工程までのアレルゲン不活化物質の評価方法の試験手順の例を、
図2及び3を用いて説明する。
【0065】
まず、アレルゲン不活化物質が溶液として使用される場合を、
図2を用いて説明する。
【0066】
反応工程として、一本の試験管に所定の量のアレルゲンサンプル品1とアレルゲン不活化物質(溶液)2とを入れ、撹拌、放置して試験品11を得る。試験品抽出工程として、試験品11を遠心分離し、上清12を回収した後、上清12を回収した残渣13に抽出溶媒3を添加し、撹拌、放置する。更に遠心分離し、上清である試験品抽出液14を回収する。また、対照品抽出工程として、別の試験管に所定の量のアレルゲンサンプル品1と蒸留水とを入れ、撹拌、放置して対照品21を得る。次いで、対照品21を遠心分離し、上清22を回収した後、上清22を回収した残渣23に抽出溶媒3を添加し、撹拌、放置し、更に遠心分離して、上清である対照品抽出液24を回収する。
【0067】
アレルゲン含有量測定工程として、上清12、試験品抽出液14、上清22、対照品抽出液24のアレルゲン含有量をELISAによってそれぞれ測定する。ここで、上清12及び試験品抽出液14が、試験品11に由来する溶液であり、上清22及び対照品抽出液24が、対照品21に由来する溶液である。次いで、アレルゲン不活化率算出工程として、上清12、試験品抽出液14、上清22、対照品抽出液24のアレルゲン含有量から、下記式によって不活化率を求める。
不活化率(%)=100-(上清12及び試験品抽出液14のアレルゲン含有量の合計量/上清22及び対照品抽出液24のアレルゲン含有量の合計量)×100
【0068】
以上のようにして、アレルゲン不活化物質が溶液として使用される場合に、アレルゲン不活化物質の評価方法を行うことができる。
【0069】
また、アレルゲン不活化物質がナノサイズの帯電微粒子水などの空気中の物質である場合を、
図3を用いて説明する。
【0070】
2つのシャーレに静電気防止処理を施した後、アレルゲンサンプル品1を入れ、更にシャーレを振動させてアレルゲンサンプル品1を均一に塗布する。反応工程として、一方のシャーレに所定の量のアレルゲン不活化物質2を散布し、放置して試験品11を得る。試験品抽出工程として、試験品11に抽出溶媒3を添加し、シャーレをすすぐようにして、溶液15を回収する。溶液15を遠心分離し、上清である試験品抽出液14を回収する。また、対照品抽出工程として、もう一方のシャーレに抽出溶媒3を添加し、シャーレをすすぐようにして、溶液25を回収する。溶液25を遠心分離して、上清である対照品抽出液24を回収する。
【0071】
アレルゲン含有量測定工程として、試験品抽出液14、対照品抽出液24のアレルゲン含有量をELISAによってそれぞれ測定する。ここで、試験品抽出液14が試験品11に由来する溶液であり、対照品抽出液24が対照品21に由来する溶液である。次いで、アレルゲン不活化率算出工程として、試験品抽出液14と対照品抽出液24とのアレルゲン含有量から、下記式によって不活化率を求める。
不活化率(%)=100-(試験品抽出液14のアレルゲン含有量/対照品抽出液24のアレルゲン含有量)×100
【0072】
以上のようにして、アレルゲン不活化物質がナノサイズの帯電微粒子水などの空気中の物質である場合に、アレルゲン不活化物質の評価方法を行うことができる。
【0073】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示の範囲による各種の組合せ、変形による実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0074】
次に実施例を示して本発明方法をより具体的に説明する。
[アレルゲンサンプル品の作成]
一般家庭の室内塵を掃除機で吸引して採取し、該室内塵を目開き0.3mmの篩にかけて細塵を回収し、アレルゲンサンプル品とした。
【0075】
[試験例1.抽出溶媒の種類によるアレルゲンタンパク質抽出量比較]
(ア)アレルゲンサンプル品20mgを試験管に入れ、0.02MのPBS-T(リン酸緩衝液)を1mL添加した後、ローテーターを用いて撹拌し、室温で30分間、試験管を密閉して放置した。その後、試験管を4℃に冷却し、8000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離して得られた上清をピペットで取り出し、上清Aとした。
(イ)アレルゲンサンプル品20mgを試験管に入れ、蒸留水を1mL添加した後、ローテーターを用いて撹拌し、室温で30分間、試験管を密閉して放置した。その後、試験管を4℃に冷却し、8000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離して得られた上清をピペットで取り出し、上清Bとした。
(ウ)上清A,Bについて、ELISA法にてアレルゲン活性を測定し、各上清に含有されているアレルゲン量(ng)を算定した。測定には、ダニアレルゲン(Der f 1)ELISAキット(製品No.10205、ITEA製)を用いた。結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
表1に示されるように、抽出溶媒として緩衝液を使用した上清Aは、抽出溶媒として蒸留水を使用した上清Bに比べて、より多くのアレルゲンを含有していることがわかった。したがって、抽出溶媒として緩衝液を使用すると、より多くのアレルゲン物質を抽出でき、不活化能の評価にあたり有用であることがわかった。
【0078】
[試験例2.次亜塩素酸水溶液のアレルゲン不活化試験]
図2で説明した試験手順に沿って、以下のように試験を行った。
(ア)アレルゲンサンプル品20mgを試験管に入れ、次亜塩素酸水溶液15mLを添加した後、ローテーターを用いて撹拌し、30℃で30分間、試験管を密閉して放置した。その後、試験管を4℃に冷却し、8000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離して得られた上清をピペットで取り出し、上清Aとした。この上清Aは、
図2における上清12に相当する。
(イ)上清Aを取り出した残渣に0.02MのPBS-Tを15mL添加し、ローテーターを用いて撹拌し、室温で60分間、試験管を密閉して放置した。その後、試験管を4℃に冷却し、8000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離して得られた上清をピペットで取り出し、上清Bとした。この上清Bは、
図2における試験品抽出液14に相当する。
(ウ)アレルゲンサンプル品20mgを試験管に入れ、蒸留水15mLを添加した後、ローテーターを用いて撹拌し、30℃で30分間、試験管を密閉して放置した。その後、試験管を4℃に冷却し、8000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離して得られた上清をピペットで取り出し、上清Cとした。この上清Cは、
図2における上清22に相当する。
(エ)上清Cを取り出した残渣に0.02MのPBS-Tを15mL添加し、ローテーターを用いて撹拌し、室温で60分間、試験管を密閉して放置した。その後、試験管を4℃に冷却し、8000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離して得られた上清をピペットで取り出し、上清Dとした。この上清Dは、
図2における対照品抽出液24に相当する。
(オ)上清A~Dについて、試験例1と同様にしてELISA法にてアレルゲン活性を測定し、各上清に含有されているアレルゲン量(ng)を算定した。結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
上清A及びBが試験品に由来する溶液であり、上清C及びDが対照品に由来する溶液である。したがって、表2に示された各上清のアレルゲン量から不活化率を算出すると、不活化率=100-(上清A+上清B/上清C+上清D)×100=100-(1.79+1.76/73.8+16.7)×100=96.1%であった。不活化率が95%以上であることから、次亜塩素酸水溶液はアレルゲン不活化能を有することが確認できた。したがって、家庭ごみから調製されたアレルゲンサンプル品と緩衝液からなる抽出溶媒とを備えた本発明のキットは、アレルゲン不活化評価キットとして用いることができることがわかった。
【符号の説明】
【0081】
1 アレルゲンサンプル品
2 アレルゲン不活化物質
3 抽出溶媒
11 試験品
14 試験品抽出液
21 対照品
24 対照品抽出液