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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】検査キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20250821BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 575
G01N21/64 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024566009
(86)(22)【出願日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2024024090
(87)【国際公開番号】W WO2025013724
(87)【国際公開日】2025-01-16
【審査請求日】2024-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2023112292
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523259835
【氏名又は名称】ライフトレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 太
(72)【発明者】
【氏名】梶原 直樹
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-070712(JP,A)
【文献】国際公開第2019/132045(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146694(WO,A1)
【文献】特開2016-191567(JP,A)
【文献】特表2006-525527(JP,A)
【文献】国際公開第2014/007248(WO,A1)
【文献】特開2015-232467(JP,A)
【文献】特表2021-532337(JP,A)
【文献】特開昭61-044350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を吸収させるサンプルパッド、検出標識体が担持されているコンジュゲートパッド、メンブランを具備するクロマト本体、及び試料の逆流を防止する吸収パッドと、
300nm~400nmの光を照射する光源とを具備し、目視により検査結果を確認するための検査キットであって、
上記検出標識体が、300nm~400nmの波長の光を当てると600nm以上の波長の光を発する蛍光物質を有し、上記蛍光物質が、希土類錯体を含み、
上記蛍光物質は、上記希土類錯体が内包されたポリマー粒子であり、
上記ポリマー粒子の混合比は、検出標識体中の検出抗体/粒子(mg/g)で、40~60である、
ことを特徴とする検査キット。
【請求項2】
上記蛍光物質の蛍光輝度は、励起光の輝度を1としたとき0.8以上である請求項1記載の検査キット。
【請求項3】
更に、蛍光色レベル見本を具備し、当該蛍光色レベル見本の色レベルとクロマトの蛍光色とを目視確認することで、定量可能となされている
請求項1記載の検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体、抗原、タンパク質、バイオマーカー、化学分子、核酸等種々の対象物の検出を行う検査キットに関し、さらに詳しくは、検出に煩雑な装置が不必要であり、従来のクロマト利用型の検査キットに比して、より簡便に検出確認を行うことが可能な検査キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗体、抗原、タンパク質、バイオマーカー、化学分子、核酸等種々の対象物の検出を行う検査キットは多数提案されている。中でも、イムノクロマトを利用した検査キットは使いやすさから広く用いられており、種々提案されている。
例えば、特許文献1には、被検出物質の高感度検出と、簡素な試験片の構造という通常相容れがたい項目について、両立を可能とするイムノクロマト法試験片が提案されている。具体的には、被検出物質に結合するリガンドである捕捉物質を固定化したメンブレンを含み、被検出物質に結合するリガンドを結合させた不溶性担体粒子を用い、該不溶性担体粒子をメンブレン上に固定化した捕捉物質に捕捉させることにより集積させ、メンブレンに光を照射して、該不溶性担体粒子が集積した部位または不溶性担体粒子が集積した部位以外の周囲の部位において発する光を検出することにより被検出物質を測定するイムノクロマト試験片であって、メンブレンの光が照射される側とは反対側に光反射材を設けた、イムノクロマト試験片が提案されている。
また、特許文献2には、被検出物質の検出感度に優れる検査キットが提案されている。具体的には、基材上に、被検出物質と特異的に結合する結合物質が標識微粒子に固定化された標識試薬を含有する試薬保持部、及び、被検出物質と特異的に結合する試験用捕捉物質が固定化されたテスト部を有し、前記標識微粒子は、貴金属からなる微粒子であり、前記テスト部は、アップコンバージョン材料を含有する検査キットが提案されている。
また、特許文献3には、式A1 - xLn xVO 4 (1 - y ) (PO4 ) y(II)のフォトルミネッセンス無機ナノ粒子をプローブとして使用して、毛細管現象試験によって、液体サンプル中の目的の生物学的または化学的物質を検出および/または定量化する検査キットであって、式中、Lnは、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ツリウム(Tm)、プラセオジム(Pr)、ホルミウム(Ho)、およびそれらの混合物から選択され、Aは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、およびそれらの混合物から選択され、0<x<1、0≦y<1であり、当該方法は、一光子吸収後、ナノ粒子の発光寿命が100ms未満のルミネッセンスを、320nm以下の波長でマトリックスを励起することによって検出する検査キットが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-31610号公報
【文献】特開2017-223616号公報
【文献】特表2021-530700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の各提案にかかる検査キットでは、クロマトの結果を目視で明確に確認することができないため、読み取りのための検出装置を用いる必要があり、煩雑な装置を必要とする点等により簡便に検出確認を行う事ができないという問題があった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、検出に煩雑な装置が不必要であり、従来のクロマト利用型の検査キットに比して、より簡便に検出確認を行うことが可能な検査キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、ユウロピウムの錯体を標的試薬に用いた場合に、特別な装置を用いることなく、紫外線ライト(一般に使用される、いわゆるブラックライトなど)を用いるだけで目視により検出確認を行うことができることを知見し、かかる知見に基づいて更に検討した結果、上記目的を達成し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.試料を吸収させるサンプルパッド、検出標識体が担持されているコンジュゲートパッド、メンブランを具備するクロマト本体、及び試料の逆流を防止する吸収パッドと、
300nm~400nmの光を照射する光源とを具備する検査キットであって、
上記検出標識体が、300nm~400nmの波長の光を当てると600nm以上の波長の光を発する蛍光物質を含む
ことを特徴とする検査キット。
2.上記蛍光物質が、希土類錯体である1記載の検査キット。
3.上記蛍光物質の蛍光輝度は、励起光の輝度を1としたとき0.8以上である1記載の検査キット。
4.更に、蛍光色レベル見本を具備し、当該蛍光色レベル見本の色レベルとクロマトの蛍光色とを目視確認することで、定量可能となされている1記載の検査キット。
5.上記蛍光物質は、上記希土類錯体が内包されたポリマー粒子である、
2記載の検査キット。
6.上記ポリマー粒子の混合比は、検出標識体中の検出抗体/粒子(mg/g)で、20~80である、5記載の検査キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明の検査キットは、検出に煩雑な装置が不必要であり、従来のクロマト利用型の検査キットに比して、より簡便に検出確認を行うことが可能なものである。このため、本発明の検査キットは、コスト面にも優れており、抗体、抗原、タンパク質、バイオマーカー、化学分子、核酸等種々の対象物の検出を行う検査キットとして有用である。
更に、本発明の検査キットは、特定波長の光を照射して初めて確認できるものであるため秘匿性に優れたものである。また、従来のイムノクロマトに比して高感度に検出を行うことが可能である。具体的には、蛍光色素であるユウロピウム等を使用することで、ブラックライトの励起光波長(360~370nm) とかけ離れた蛍光波長(615nm)で検出できるため、従来の金コロイド等のラベルに比べ、Signal/Noise(S/N)比が高く高感度に検出を行うことができる(ストークシフトによる背景光の低減)。また、暗室など外部の光がない条件や光を遮蔽する条件では、さらに高感度が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の検査キットの全体構成を模式的に示す概要図である。
図2図2は、図1に示す検査キットの使用態様を模式的に示す説明図である。
図3図3は、実施例の検出キットの使用時を示す写真(図面代用写真)である。
図4図4は、実施例2の検出キットの使用結果を示す写真(図面代用写真)である。
図5図5は、実施例2の検出キットの使用時を他の態様にて示す写真(図面代用写真)である。
図6図6は、実施例2の検出キットの使用結果を示すチャートであり、(a)は検出抗体/粒子の蛍光強度との関係を、(b)は粒子量と蛍光強度との関係を示すチャートである。
図7図7は、実施例3の検出キットの使用結果を示す写真(図面代用写真)である。
図8図8は、実施例3の検出キットの使用時を他の態様にて示す写真(図面代用写真)である。
図9図9は、実施例3の検出キットの使用結果を示すチャートであり、(a)は検出抗体/粒子の蛍光強度との関係を、(b)は粒子量と蛍光強度との関係を示すチャートである。
【符号の説明】
【0009】
1 検査キット、10 クロマト本体、11 サンプルパッド、13 コンジュゲートパッド、15 メンブラン、17、吸収パッド、20 光源
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の一実施形態としての検査キット1は、図1に示すように、試料を吸収させるサンプルパッド11、検出標識体が担持されているコンジュゲートパッド13、泳動された試料を吸い上げ、逆流を防止する吸収パッド17及びメンブラン15を具備するクロマト本体10と、300nm~400nmの光を照射する光源20とを具備する。
ここで、「検出標識体」とは、検出抗体と蛍光物質との混合物(検出抗体と蛍光物質とが結合したもの、結合していないものの両方を含む)である。
以下更に詳述する。
【0011】
〔検出対象〕
本実施形態の検出キットにおける検出対象は、抗体、抗原、タンパク質、核酸、及びこれらの他のバイオマーカーとして検査対象になりうるもの、その他の化合物、などが挙げられる。
〔クロマト本体〕
上記クロマト本体10は、クロマトの主機能である成分の分離及び可視化を行うための部材であるメンブラン15と、その長手方向両端部にそれぞれ載置された、検出標識体30(図2参照)が付設されたコンジュゲートパッド13及び余分な液体を吸収するための吸収パッド17と、コンジュゲートパッド13の端部上に載置されたサンプルパッド11とを具備する。また、メンブラン15にはテストライン15aとコントロールライン15bとが常法に従って設けられている。これらの部材の形状及び厚みは、通常のイムノクロマトに用いられる部材と同様に形成することができる。本実施形態においてはすべて長方形状であり、厚みは、通常採用しうる厚みを特に制限なく採用することができる。
これらの部材を形成する材料は、通常、この種のクロマトに用いられるものを特に制限なく用いることができ、本実施形態においては、メンブラン15はポリエステル不織布等の不織布により形成されており、コンジュゲートパッド13、吸収パッド17及びサンプルパッド11はセルロース繊維からなる不織布により形成されている。なおコンジュゲートパッドはガラス繊維で形成されていてもよい。
また、本実施形態のクロマト本体には、特に図示しないが、上述の部材を覆うケースまたはカバー等を設けてもよい。また、蛍光フィルター、バンドパスフィルター等の目視に有利になる部材を設けても良い。
なお、本実施形態においては、ラインを2種のもので示したが、これに制限されず、3種以上のラインを設けることもできる。
また、本実施形態のように長方形状でなく、円形状等種々形状を採用することができる。
メンブランの形成材料としては、上述の不織布の他、金属製など通常この種のメンブランを形成する材料は特に制限なく用いることができる。
【0012】
〔検出標識体〕
本実施形態において、コンジュゲートパッド13に担持されている検出標識体は、300nm~400nmの波長の光(以下「吸収光」という場合がある)を当てると600nm以上の波長の光、好ましくは 500~700nmの波長の光(以下「蛍光」という場合がある)を発する蛍光物質を含有する。すなわち、検出標識体は、検出抗体と蛍光物質とを含む混合物である。このような蛍光物質を含む検出標識体を用いることにより、特別な検出装置などを用いることなく、後述するように市販の蛍光ランプ等の光源を用いることで目視により検出することが可能となる。
従来のイムノクロマトにおいては、発光の感度に重点が置かれており、蛍光物質を用いる研究報告等においても高感度化を目的としたものばかりで、蛍光におけるストークスシフト(励起極大波長と発光(蛍光物質から発せられる光)極大波長との差)に着目した報告はなかった。本発明者らは、このストークスシフトが狭いとバックグラウンドが発生し、目視での確認が困難となることを知見し、ストークスシフトを広くとることで、特別な装置を用いなくても十分に目視による検出及び確認が可能にあることを見出したものである。そのため、上述の吸収光の波長と発光の波長とが重要であり、ストークスシフトの広い蛍光物質を用いることが重要である。
上記蛍光物質の蛍光輝度(発する蛍光の波長における輝度)は励起光(励起極大波長における光)の輝度を1としたとき0.8以上であるのが好ましく、更に0.9~1.5の範囲であるのが蛍光物質からの光を目視で確認する上で好ましい。
【0013】
上記蛍光物質は、具体的には、希土類蛍光性錯体等を挙げることができ、該希土類錯体としてはユウロピウム錯体、テルビウム錯体、サマリウム錯体、ディスプロシウム錯体等を挙げることができる。中でも特にユウロピウム錯体、テルビウム錯体、サマリウム錯体、ディスプロシウム錯体からなる群より選択される1種以上の化合物を上記蛍光物質として好ましく用いることができる。これら中でも、ユウロピウム錯体が、本発明の所望の効果を得る点で好ましく、ユウロピウム錯体としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
[4’-(4’-アミノ-4-ビフェニルイル)-2,2’:6’,2”-テルピリジン-6,6”-ジイルビス(メチルイミノジアセタート)]ユウロピウム酸(III)ナトリウム(ATBTA-Eu 3+),
-(p-イソチオシアナトベンジル)-エチレンジアミン四酢酸のEu ?3+錯体(SCN-Ph-EDTA-Eu 3+)、
?N-(p-イソチオシアナトベンジル)-ジエチレントリアミン-N,N,N,N-四酢酸のEu ?3+錯体(SCN-Ph-DTTA-Eu 3+
Eu( β-NTA)(TOPO)(10 -14?Mレベルの検出限界) β-NTA-TOPO-トリトンX-100を含むいわゆる蛍光増強溶液を加える必要がある。
4,7-ビス(クロロスルホフェニル)-1,10-フェナントロリン-2,9-ジカルボン酸のEu 3+錯体(BCPDA-Eu 3+)を標識剤として用いる
クロロスルホニル化4座β-ジケトン化合物4,4’-ビス(1”,1”,1”,2”,2”,3”,3”-ヘプタフルオロ-4”,6”-ヘキサンジオン-6”-イル)クロロスルホ-o-テルフェニル(BHHCT) BHHCT-Eu 3+
錯体EDTA-Tb 3+とサリチル酸誘導体との三元錯体
2種の蛍光ラベル剤トリス ビピリジンクリプテート-Eu 3+(蛍光エネルギー移動のドナー色素、TBP-Eu 3+と略す)とアロフィコシアニン(蛍光エネルギー移 動のアクセプター色素、cross-linked allophycocyanin、分子量104 kDの色素タンパク、蛍光発光極大波長665nm、蛍光量子収率約0.7、XL665と略す)の併用
BCPDA-Eu 3+標識ポリビニルアミンービオチンーストレプトアビジン複合体
poly(Glu:Lys)-ストレプトアビジン複合体およびユウロピウム蛍光錯体標識poly(Glu:Lys)-BSA-ストレプトアビジン複合体の併用
4-[2-(4-イソチオシアナトフェニル)エチニル]-2,6-ビス{[N,N-ビス(カルボキシメチル)アミノ]メチル}ピリジン{4-[2-(4-isothiocyanatophenyl)ethynyl]-2,6-bis{[N,N- bis(carboxymethyl)amino]methyl}pyridine}とEu 3+との錯体
粒子に内包等された状態のもの、例えばユウロピウム蛍光錯体を含むポリスチレンラッテクスナノ微粒子
等を挙げることができる。
また、以下の市販品を用いることもできる。
Estapor〔登録商標〕ユーロピウムマイクロスフェアシリーズ(Merck社製)
Europium Conjugation Kit (ab269889, アブカム社製)
FS Eu beads(多摩川精機社製)等。
【0014】
上記蛍光物質の混合量は、検出対象に応じて任意であるが、検出対象1個に対して、上記蛍光物質が1~20、特に好ましくは8~12の範囲になるように量を調整して使用するのが好ましい。この調整は予想される検出対象量(検体の採取量に対して予測される検出対象の含有率から算出される)に応じて決定される。
また、上記蛍光物質は、上述の錯体などをそのまま使用することができる。更に、上述の錯体が粒子に内包等された状態のものを使用するのが、メンブランへの分散性、蛍光の目視での視認性の観点から好ましい。例えば、上述の市販品Estapor〔登録商標〕ユーロピウムマイクロスフェアシリーズ(Merck社製、実施例参照)を用いることが好ましい。
上記検出抗体と上記蛍光物質との混合比は、特に制限されないが、上記の錯体を内包した粒子(ポリマー粒子等)を使用する場合、検出抗体/粒子(mg/g)で、20~80とするのが好ましく、40~80とするのが更に好ましく、40~60とするのが最も好ましい。
【0015】
検出標識体に用いられる上記検出抗体としては、通常この種のイムノクロマトにおける検出標識体に用いられるものを特に制限なく用いることができる。
例えば、Anti-H5 HA monoclonal antibody (5H7)等を挙げることができる。
【0016】
〔光源〕
本実施形態において用いられる上記光源は、300nm~400nmの波長の光を照射できるものであれば、特に制限なく、市販品などを用いることができる。
具体的には、いわゆる365nmUVLED又は375nmUVLEDとして市販されているものを特に制限なく用いることができ、具体的には以下のものなどを挙げることができる。
Alonefire社製、商品名「SV16 小型 5W 紫外線 ブラックライト波長365nm USB充電式 UV LED ライト」;
光るオリジナルパズル用 携帯小型ブラックライトキーホルダー(UV-LED375-nano)日亜化学社製、商品名「1灯式LEDブラックライト」等
【0017】
〔他の部材〕
本発明の検出キットは、上述のクロマト本体及び光源の他に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々他の部材を組み合わせて用いることができる。
〔蛍光色レベル見本〕
上記の他の部材としては、例えば、蛍光色レベル見本を備えることができる。当該蛍光色レベル見本は、本実施形態の検出キットが定性分析のみでなく、定量分析も可能とするためのものである。この蛍光色レベル見本は、検出対象の複数の濃度に応じてそれぞれクロマト蛍光させて、それらの蛍光したメンブラン(蛍光強度が濃度に応じて異なるもの)を揃えて、複数の濃度に応じた蛍光色見本を作成し、それらをまとめることで構成されている。すなわち、蛍光色レベル見本は、複数の検出対象の濃度に応じた蛍光色見本(濃度に応じた蛍光強度の異なる、複数の色見本)を具備するものである。複数の濃度は、どの程度の濃度差にて何種類揃えるかは検出対象により任意であるが、通常は10~20種程度揃えるのが定量的な判断に資するので好ましい。
このように蛍光色レベル見本を具備することにより、当該蛍光色レベル見本の色レベルとクロマトの蛍光色とを目視確認して最もクロマトの蛍光色に近い色レベルの蛍光色レベル見本の濃度を確認することで、定量可能であり、定量可能な検出キットを構成することができる。
上述のように本発明は、発光する物質ではなく、蛍光を生じる物質、好ましくは特定の波長の光を吸収して他の可視範囲の波長の光を発する蛍光物質を用いることで、「目視」による「定量化」を実現できるものである。
【0018】
〔製造方法〕
本実施形態の検出キットは、クロマト本体と光源とを用意することで得られる。
そして、本実施形態のクロマト本体は以下のようにして得ることができる。
サンプルパッド、コンジュゲートパッド、メンブラン及び吸収パッドを常法に従って形成し、図1に示す態様に重ね合わせる。
次に、検出用の抗体をメンブレンにライン状に塗布し乾燥させてテストライン15a及びコントロールライン15bを形成する。なお、上記抗体としては、抗体SARS-CoV-2 Nucleoprotein抗体、抗HA抗体および抗マウス抗体等の通常この種のクロマトで検出可能な抗体は特に制限なく検出対象とすることができる。また、上記抗体以外の他の検出用の物質も使用可能である。
その後、ユウロピウム錯体等の蛍光物質を結合させた検出抗体を含む検出標識体をコンジュゲートパッドに塗布し、乾燥させて、蛍光物質が担持されたコンジュゲートパッドを形成し、クロマト本体を形成することができる。
更に、このクロマト本体を複数用意し、複数の濃度に調整した試料溶液を、各クロマト本体に滴下して、イムノクロマトを実行する。そして、所定時間(10~30分)経過後に光源により光の照射を行い、その際の発光を写真撮影することで複数の発光の撮影を行い、かかる複数の発光の写真を集合させて、蛍光色レベル見本を作成することができる。
【0019】
〔使用方法、効果〕
本実施形態の検出キットは、図2に示すようにして使用することができる。なお、図2においては、蛍光物質30を模式的に示すとともに、試料、検出対象を模式的に示して説明する。
図2に示すように、本実施形態の検出キット1を使用するには、まず、試料31をサンプルパッド11に滴下する。試料31は毛細管現象によりコンジュゲートパッド13からメンブラン15へと移行する。この際、試料31中の検出対象33がコンジュゲートパッド13に担持された蛍光物質30が検出抗体に結合した検出標識体(図の簡略化のため図示せず)と反応し、検出標識体に結合した状態でメンブラン15へと移行する。
そして、蛍光物質30と検出対象33との結合物がテストライン15aを構成する抗体と反応して、テストライン15aでとどまる。
そして、光源20から所定の波長の光を照射することで検出を行うことができる。
また、この際、蛍光色レベル見本を用意しておき、当該蛍光色レベル見本の色と見比べることで、検出対象33の濃度を目視により測ることが可能である。
この検出作業に際しては、暗箱を利用する等暗所にて作業を行う(本発明の検出キットを使用する)ことで、より本発明の所望の効果を効果的に得ることができる。
【0020】
本実施形態の検出キットは、上述のように構成されているので、光源からの光照射によって、目視により検出が可能である。更に、ストークスシフトが広く、バックグラウンドの影響がなく、目視により判定しやすいものであり、更には検出対象が少量でも十分に判定可能な程度に判別できるため、感度が向上していると言え、感染早期など検出対象物質が少ない時でも検出可能である。また、特定の波長の光を照射しないと確認できないものであるため、秘匿性が高く、必要な時にだけ確認できることでプライバシーを保護することもできる。したがって、単に感染症の検査検出(感染症の診断薬)のみではなく、妊娠検査薬、アレルギー物質や薬物の検査にも有用である。
【0021】
なお、本発明は上述の実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【実施例
【0022】
〔実施例1〕
Estapor〔登録商標〕マイクロスフェア(K1-050, F1-Eu-010)を蛍光物質として用いて、上述の製造方法に準じて図1に示す検出キットを得た。
用いた原材料及び光源を以下に示す。
サンプルパッド:商品名「CF4」(Cytiva社製)
コンジュゲートパッド:商品名「33glass」(Cytiva社製)
メンブラン:商品名「FF80 HP」(Cytiva社製)
吸収パッド:商品名「シュアウィック(登録商標)」セルロースサンプルパッド(C083タイプ,Merck社製)
マイクロスフェア濃度;検出抗体(Anti-H5 HA monoclonal antibody(5H7)):粒子=1:10、粒子換算0.025%、10μL
光源:Alonefire社製商品名「SV16 小型 5W 紫外線 ブラックライト波長365nm」
得られた検出キットを用いて、H5亜型鳥インフルエンザ抗原(ヘマグルチニン)の検出を行った。
検出は、抗原溶液を濃度で0,1,10,100,1000(単位ng/mL)の5種調製し、各検査キットに0.1mL滴下し(図には実際の使用量を示す)試験を行った。
その結果を図3に示す。また、図3には単に着色したものをサンプルとして用意し、合わせて示す。
図3に示す結果から明らかなように、本発明の検出キットは、抗原溶液濃度1ng/mLと、低濃度でも十分に検知でき、高感度であることがわかる。また、光源から光を照射するとテストライン上に発光(赤い発光)が見られ、目視でも容易に判別でき、検出を実行することができる。図示していないが、光源から光を照射しなければ何らの表示もされないので、秘匿性の高い場合でも簡易に利用できる。また、抗原溶液における抗原濃度に応じて発光レベルも相違するので、レベル見本と見比べることで簡易的ではあるものの定量的に検出を行うことも可能である。
【0023】
〔実施例2〕
Estapor〔登録商標〕マイクロスフェア(品番「F1-Eu-030」)を蛍光物質として用いて、下記する原材料を用い、下記方法に準じた以外は実施例1と同様にして、図1に示す構成の検出キットを得た。
〔原材料〕
サンプルパッド:商品名「CF3」(Cytiva社製)
コンジュゲートパッド:商品名「33glass」(Cytiva社製)
メンブラン:商品名「Hi-Flow Plus HF12002」(MERCK社製)
吸収パッド:商品名「シュアウィック(登録商標)」セルロースサンプルパッド(C083タイプ,Merck社製)
固相化抗体;Anti-H5 HA monoclonal antibody (8C1), Anti-mouse IgG
検出標識体;蛍光物質「F1-Eu-030」、検出抗体Anti-H5 HA monoclonal antibody(5H7)
展開液;50mM Tris-HCl, 0.05% Tween20, 0.5% Casein-Na, 10mMGuanidine
抗原;Influenza A H5N1 (A/Anhui/1/2005) HA Protein, His Tag (Sino Biological)
〔他の材料〕
Activation/Coupling Buffer (50 mM MES, pH 6.0)
EDC (F024810, Wako) Sulfo NHS (24510, Thermo Scientific) Ethanolamine (411000, Sigma) Blocking Buffer (10 mM Tris, pH 8.0+2% (w/v) BSA)
Micro BCA〔登録商標〕 Protein Assay Kit (23235, Thermo Scientific)
〔光源〕Alonefire社製商品名「SV16 小型 5W 紫外線 ブラックライト波長365nm」
〔方法〕
MERCK社のApplication Note (Microsphere Coupling Two-step EDC/Sulfo NHS Covalent Coupling Procedure for Estapor〔登録商標〕Carboxyl-modified Dyed Microspheres)に準て、検出抗体/粒子(蛍光物質としての粒子)を0,20,40,60,80,100(mg/g)検出抗体に蛍光物質としての粒子を結合させて6種の検出標識体を得た。各検出標識体において、粒子0.1mg当たりに結合した検出抗体量は、検出抗体と蛍光物質の結合反応後に上清中に残った検出抗体量をBCA法にて定量し、添加した検出抗体量から差し引いて算出した。検出標識体の各データについて表1に示す。なお、表1においては検出抗体を単に「抗体」として示す。表2においても同じである。
メンブレンのテストラインとコントロールラインに、固相化抗体をそれぞれ塗布し、その後にブロッキングした。得られた検出標識体を粒子量として0.5~4μg/padでコンジュゲートパッドに塗布し、乾燥させ、図1に示す検査キットを作成した。そして、滴下前の写真を撮影した(SV16ラックライト使用、iPhone〔登録商標〕、カメラアリ、x5)。そこに、80μLの展開液(展開液中に抗原のあるものが抗原(+)、ないものが抗原(-)である、抗原量は1.25ng/mL)を滴下し、30分後に光源から光を当てて、蛍光を写真撮影した。その結果を図4に示す。また、蛍光強度を図6(a)に示す。検出標識体の蛍光、メンブレンのBackgroundを確認した。図4に示す結果から明らかなように、100においては、バックグラウンドが強い蛍光を発して目視での視認性に劣る点、及び濃度を高くした以上の見やすさなどの利点が得られない(図6(a)参照)点で経済的観点からあまり好ましくないことがわかる。また、20は、抗原(+)において目視でのテストラインの視認性に劣り、80は、うっすらではあるがバックグラウンドが蛍光を発して目視での視認性に劣り、さらにはラインの蛍光がボヤける点で劣る。
また、検出標識体の濃度を検出抗体/粒子(蛍光物質としての粒子)=80(mg/g)とし、粒子の量を0.5、1、2、4として蛍光物質としての粒子の量と蛍光との関係を確認した。その結果を図5に示す。また、蛍光強度について図6(b)に示す。図6(b)に示すように量を多くすると蛍光強度は向上するものの、図5に示すように、量を多くするとバックグラウンドが蛍光を発して目視での視認性に劣ることがわかる。
【0024】
【表1】
【0025】
〔実施例3〕
蛍光物質をEstapor〔登録商標〕マイクロスフェア(F1-Eu-050)とした以外は、実施例2と同様にして抗原の検出を行った。
その結果を〔表2〕、図7~9に示す。
図7に示す結果から明らかなように、20~80が良好であり、特に40~60が(-)及び(+)のいずれでも良好であることがわかる。また、粒子の量についても実施例2と同様に、量を多くすると蛍光強度は向上するものの、量を多くするとバックグラウンドが蛍光を発して目視での視認性に劣ることがわかる。
【0026】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9