(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】三次元ベランダブリッジ設置工法、及び、ベランダブリッジ
(51)【国際特許分類】
E04G 5/10 20060101AFI20250821BHJP
E04G 5/04 20060101ALI20250821BHJP
E04G 5/06 20060101ALI20250821BHJP
E04G 1/30 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
E04G5/10 A
E04G5/04 J
E04G5/06 A
E04G1/30 A
(21)【出願番号】P 2025090883
(22)【出願日】2025-05-30
【審査請求日】2025-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500182253
【氏名又は名称】藤本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-032276(JP,A)
【文献】登録実用新案第3046767(JP,U)
【文献】特公平07-103677(JP,B2)
【文献】特開2019-099992(JP,A)
【文献】実用新案登録第2501492(JP,Y2)
【文献】実公昭56-003486(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00 - 7/34
E06C 1/00 - 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベランダブリッジの仮設足場への取り付け位置を3軸方向で自在化した三次元ベランダブリッジ設置工法であって、
前記ベランダブリッジが備える渡り板の水平面の高さに応じた自在な高さで、前記仮設足場に直交クランプを用いて、単管を水平に固定するステップと、
水平に固定された前記単管に沿う第1水平方向の自在な位置で、前記ベランダブリッジが備えるフックを結束させるステップと、
前記第1水平方向と直交する第2水平方向であって、前記ベランダブリッジが備える渡り板から
アームを介してせり出して離れる方向へ、前記フックをスライドさせるステップとを含む、
三次元ベランダブリッジ設置工法。
【請求項2】
ベランダブリッジの仮設足場への取り付け位置を3軸方向で自在化した三次元ベランダブリッジであって、
渡り板と、
前記渡り板の水平面の高さに応じた自在な高さで、前記仮設足場に直交クランプを用いて水平に固定される単管と
、前記単管に沿う第1水平方向の自在な位置で結束するフック
が固着されたアームとを備え、
前記フックは、前記単管までの距離に応じて、
前記第1水平方向と直交する第2水平方向である前後方向であって、前記渡り板から
前記アームを介してせり出して離れる方向にスライド可能であることを特徴とする、
ベランダブリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元ベランダブリッジ設置工法、及び、ベランダブリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
外壁塗装等において、マンション等のベランダを備える建築物の外壁を工事する際に、作業者は、仮設足場と建築物が備えるベランダとの間を行き来する必要がある。仮設足場は、建築物の外壁部に沿って仮設される、作業者に利用される足場である。
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3には、仮設足場とベランダを行き来するためのベランダブリッジが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-006286号公報
【文献】特開平9-137600号公報
【文献】特開平11-071895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に開示される従来のベランダブリッジでは、取り付け及び取り外しに困難を伴うため、作業者は、ベランダブリッジの設置を省くことが多い。そのため、マンション改修業界においては、作業者は、ベランダブリッジではなく一般的な脚立を使用したり、飛び移りにより移動をしたりすることが、日常的に行われている。これは、安全上、大きな問題である。
【0006】
ここで、従来のベランダブリッジの取り付けが困難である理由を説明する。仮設足場の階高は、1.7m、1.8m、1.9mと大きく三種類が存在する。これに対し、マンションの階高は、建築法により定められ、一般に、およそ3mである。したがって、仮設足場の通路の床面の高さと、マンションのベランダ又は通路等の床面の高さが、複数の階層にわたって同じになることは殆どない。
【0007】
さらに、仮設足場をマンションの壁面に沿って設置する時、マンションと仮設足場との間の水平間隔は、およそ30cm~50cmとなり、必ずしも一定にはならない。
【0008】
これらのことから、ベランダブリッジを架け渡す際に、床面の高さの差、及び、必要とされるベランダブリッジの渡り板の長さは、様々な値をとる。
【0009】
従来のベランダブリッジでは、このような状況に対応することはできず、実質的にベランダブリッジの取り付けを行うことができない。
【0010】
さらに、従来のベランダブリッジは、撤去することにも手間がかかるので、毎日の撤去が行われない恐れがある。つまり、夜間等、作業が中断される時でも、ベランダブリッジが設置されたままとなる恐れがある。これは、防犯の観点からも問題である。
【0011】
監督官庁である労働基準監督署は、査察により不法な渡りが発見されれば、マンション工事を止めざるを得なくなってしまうため、積極的な査察ができないという問題がある。
【0012】
また、建設会社は、作業者の安全を守るために、足場の通路の床面の高さとベランダの床面の高さの乖離に対応することができるベランダブリッジの開発を望んでいる。
【0013】
上述のように、現状、労働安全衛生法に反して、仮設足場とマンションベランダとの間を、作業者は、飛び移りで移動している。これにより、ベランダの手摺が棄損する事故、及び、脚立の転倒による事故が、日常的に多発している。
【0014】
本開示は、作業者がベランダブリッジの設置をより容易に行うことができる三次元ベランダブリッジ設置工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示に係る三次元ベランダブリッジ設置工法の一態様は、ベランダブリッジの仮設足場への取り付け位置を3軸方向で自在化した三次元ベランダブリッジ設置工法であって、前記ベランダブリッジが備える渡り板の水平面の高さに応じた(上下方向の)自在な高さで、前記仮設足場に直交クランプを用いて、単管を水平に固定するステップと、水平に固定された前記単管に沿う第1水平方向(左右方向)の自在な位置で、前記ベランダブリッジが備えるフックを結束させるステップと、前記第1水平方向と直交する第2水平方向(前後方向)であって、前記ベランダブリッジが備える渡り板からアームを介してせり出して離れる方向へ、前記フックをスライドさせるステップとを含む。
【0016】
また、本開示に係るベランダブリッジの一態様は、ベランダブリッジの仮設足場への取り付け位置を3軸方向で自在化した三次元ベランダブリッジであって、渡り板と、前記渡り板の水平面の高さに応じた自在な高さで、前記仮設足場に水平に固定される単管と、前記単管に沿う第1水平方向の自在な位置で結束するフックが固着されたアームとを備え、前記フックは、前記単管までの距離に応じて、前記第1水平方向と直交する第2水平方向である前後方向であって、前記渡り板から前記アームを介してせり出して離れる方向にスライド可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る三次元ベランダブリッジ設置工法によれば、下記の3つの特徴により、ベランダブリッジの仮設足場への取り付け位置を自在化することができる。
【0018】
第1に、ベランダブリッジのフックが結束する部材を単管とする。この単管は、直交クランプを用いて、仮設足場の任意の高さに水平に固定することができる。
【0019】
これにより、取付位置の上下方向の位置決めが自在となる。
【0020】
第2に、ベランダブリッジのフックは、単管と任意の位置で結束することができる。
【0021】
これにより、取付位置の左右方向の位置決めが自在となる。
【0022】
第3に、ベランダブリッジのフックは、渡り板に対して水平方向にスライドすることにより長さを調節することができるアームに固定されている。
【0023】
これにより、取付位置の前後方向の位置決めが自在となる。
【0024】
以上のことから、ベランダブリッジの仮設足場への取り付け位置を、水平方向及び垂直方向に自在とすることができる。
【0025】
したがって、上記三次元ベランダブリッジ設置工法によれば、ベランダの床面と仮設足場との位置関係によらず、ベランダブリッジを設置することが可能になる。
【0026】
よって、作業者は、ベランダブリッジの設置をより容易に行うことができる。
【0027】
さらに、近年、作業者は、落下防止用の安全帯(フルハーネス)を作業中に常に装備しているが、上記ベランダブリッジも同様に、作業者のそれぞれが持ち歩くことにより、安全な工事を進めることが可能になり、人命尊重に寄与することができる。
【0028】
また、上記ベランダブリッジは、従来のベランダブリッジと比較して、部品点数が少なく、かつ、軽量であるため、約2週間のベランダ内施工の期間、作業者は、自らの分身のごとく、上記ベランダブリッジを扱うことが可能である。
【0029】
また、監督官庁も、このような安全なベランダブリッジが開発されたため、マンションの改修現場への査察を、支障なく行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るベランダブリッジが設置される様子を説明する図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る三次元ベランダブリッジ設置工法を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2のステップS102におけるベランダブリッジの設置状況を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るフックのスライド機構を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るベランダと仮設足場との高低差を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係るベランダブリッジが持ち運ばれる時の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施の形態)
以下、本開示に係る三次元ベランダブリッジ設置工法及びベランダブリッジの実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0032】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0033】
また、本開示における「第1」、「第2」等の序数詞は、特に断りのない限り、構成要素等の数または順序を意味するものではなく、同種の構成要素等の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0034】
また、本開示において、「同じ」等の要素間の関係を示す用語、並びに、数値、及び、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば、数%程度(例えば、5%)の差異をも含むことを意味する表現である。例えば、「水平方向」とは、完全に水平方向である場合だけではなく、製造又は配置の際に生じる数%程度の誤差を含むことを意味する。
【0035】
また、本開示において、「上下方向」とは、鉛直方向を意味する。本開示において、「上」は、鉛直上向きを意味し、「下」は、鉛直下向きを意味する。本開示において、「左右方向」は、水平方向であって、建築物の壁面が延伸する方向を意味する。さらに、本開示において、「前後方向」は、水平方向であって、建築物の壁面に垂直な方向を意味する。「前方向」は、建築物から仮設足場へ向かう方向を意味し、「後方向」は、仮設足場から建築物側へ向かう方向を意味する。
【0036】
[概要]
まず、実施の形態に係るベランダブリッジの概要について説明する。
図1は、実施の形態に係るベランダブリッジ10が設置される様子を説明する図である。
【0037】
図1に示されるように、ベランダブリッジ10は、仮設足場100とベランダ200との間に架け渡される。
【0038】
作業者は、架け渡されたベランダブリッジ10の渡り板20及び梯子部材30の上を歩いて、仮設足場100とベランダ200との間を行き来する。作業者は、例えば、マンションの外壁改修工事を行う塗装工である。
【0039】
ベランダブリッジ10は、渡り板20、梯子部材30、フック40及び手摺部材70を備える。また、ベランダブリッジ10を設置するために、単管50及び直交クランプ60が用いられる。具体的には、ベランダブリッジ10は、仮設足場100に固定された単管50にフック40を結束させることにより架け渡される。ここで、単管50は、直交クランプ60を用いて、仮設足場100のベランダ側の支柱110に取り付けられる。
【0040】
渡り板20は、作業者がその上を通行する面状の部材である。渡り板20は、平面視矩形状に形成されている。渡り板20の寸法は、例えば、幅500mm、奥行500mmであるが、これに限定されない。渡り板20の幅は、作業者の移動に十分な程度に長ければよく、渡り板20の奥行は、仮設足場100とベランダ200との間の距離を埋めるのに十分な程度に長ければよい。
【0041】
渡り板20は、例えば、エキスパンドメタル金網(いわゆる、メッシュ金網)により実現される。これにより、ベランダブリッジ10の軽量化を図るとともに、作業者がベランダブリッジ10を通行する際に、滑りにくくすることができる。渡り板20は、アルミ製の枠にアルミ製のエキスパンドメタル金網を溶接することにより形成される。渡り板20は、手摺部材70を連結するための筒22を備える。
【0042】
梯子部材30は、作業者がその上を通行するタラップである。梯子部材30は、渡り板20のベランダ200の側の端部に連結される。梯子部材30が備える桟の段数は、例えば、3段であるが、これに限定されない。桟の幅は、例えば、5cmである。梯子部材30は、例えば、アルミ合金により形成されている。梯子部材30の長さは、例えば、1.3mである。
【0043】
梯子部材30は、長さを調整することができる脚部31を備える。脚部31は、梯子部材30に収納され、梯子部材30の長手方向に出し入れ可能である。脚部31がせり出すことができる長さの上限は、例えば、350mmである。脚部31は、所望の長さにせり出した状態で固定するためのロック機構を備える。これにより、作業者は、脚部31を用いて、梯子部材30の長さの調節を行うことができる。
【0044】
渡り板20と梯子部材30とは、折り畳み可能に連結されている。ベランダブリッジ10は、渡り板20と梯子部材30とが成す角度が最大まで広げられた状態で固定する機構を備える。当該最大角度は、例えば、115度である。ベランダブリッジ10は、渡り板20と梯子部材30とがなす角度が固定された状態で、設置され、使用される。
【0045】
フック40は、ベランダブリッジ10を仮設足場100に固定するための部材である。フック40は、例えば、鋼材により形成されている。フック40は、仮設足場100のベランダ側の支柱110に固定されている単管50と結束する。フック40は、渡り板20の仮設足場100の側の端部に、スライド可能に連結される。つまり、フック40は、前後方向に、せり出し長さを調節することができる。
【0046】
フック40は、仮設足場100のベランダ側の支柱110に固定されている単管50と結束する。
【0047】
フック40は、その先端に湾曲部を有し、単管50をその湾曲部の内側に引っ掛けることによって、ベランダブリッジ10を単管50に係止する。また、フック40は、鉛直下側に、外れ止めを有し、外れ止めを単管50の下側に突出させることによって、フック40が誤って単管50から外れることを抑制する。また、このようなフック40は、単管50と容易に結束させることができる。
【0048】
また、フック40は、単管50と結束した状態で、水平方向(単管50が伸びる方向)にフック40を移動させることによって、結束位置を調整することができる。
【0049】
単管50は、仮設足場100のベランダ側に固定される単管である。より具体的には、単管50は、仮設足場100の少なくとも2本のベランダ側の支柱110に直交クランプ60を用いて水平に固定される。単管50は、例えば、アルミ合金により形成される。単管50の長さは、例えば、2mである。単管50は、ベランダブリッジ10を設置することを目的として用意される部材である。
【0050】
直交クランプ60は、単管と単管とを直角に緊結して固定する部品である。つまり、直交クランプ60は、単管の交差角度を90度に保持することができる。直交クランプ60は、ベランダ側の支柱110と単管50とを直角に緊結して固定する。
【0051】
図1に示されるように、単管50の長さは、隣り合うベランダ側の支柱110の間の距離よりも長く、単管50は、直交クランプ60により固定された状態で、せり出し部分を有する。
【0052】
手摺部材70は、ベランダブリッジ10から作業者が落下することを抑制する手摺りである。手摺部材70は、例えば、アルミ合金により形成される。手摺部材70の形状は、例えば、中桟を備えるコの字型である。手摺部材70がベランダブリッジ10に備え付けられた際、手摺部材70の上端の渡り板20の床面からの高さは、例えば、90cmであり、手摺部材70の中桟の当該高さは、45cmである。手摺部材70の中桟は、ベランダブリッジ10から作業者が落下することをより抑制することができ、安全性の向上に寄与する。手摺部材70は、渡り板20の右側と左側に1つずつ備えられる。
【0053】
手摺部材70は、渡り板20に着脱可能に連結される。例えば、手摺部材70は、渡り板20が備える筒22に手摺部材70の端部を嵌め入れることにより連結される。手摺部材70と、渡り板20又は梯子部材30との間の連結の方法は、着脱可能であれば、特に限定されない。
【0054】
上述の通り、ベランダブリッジ10の渡り板20、梯子部材30、及び、手摺部材70は、アルミ合金により形成される。これにより、ベランダブリッジ10の重量は、例えば、10kg以下で実現可能である。より具体的には、ベランダブリッジ10の重量は、7kg以下で実現可能である。これは、従来のベランダブリッジ10と比較して極めて軽量であるため、作業者は、ベランダブリッジ10の取り回しが容易になり、ベランダブリッジ10の運搬容易性、及び、設置容易性が向上する。
【0055】
仮設足場100は、建築物の外壁部に沿って仮設される足場である。仮設足場の種類は、特に限定されず、ビケ足場であってもよいし、枠足場であってもよいし、次世代足場であってもよい。実施の形態に係る仮設足場100は、ベランダ側の支柱110、外側の支柱120、第1桟材130、第2桟材131、足場板140、筋交い150、及び、腕木160を備える。適宜、連結させることによって、仮設される。
【0056】
仮設足場100を構成するベランダ側の支柱110、外側の支柱120、第1桟材130、第2桟材131、足場板140、筋交い150、及び、腕木160は、例えば、鋼材により形成される。
【0057】
仮設足場100は、上記構成部材を適宜、連結させることによって、仮設される。例えば、
図1に示されるように、ベランダ側の支柱110及び外側の支柱120は、垂直に立てられる。ベランダ側の支柱110及び外側の支柱120は、例えば、直径4.86cm或いは直径4.27cmの管材により実現される。隣り合うベランダ側の支柱110及び外側の支柱120は、腕木160により連結される。足場板140は、掴み金具を具備し、当該掴み金具を用いて腕木160を結束することによって、連結される。足場板140は、仮設足場100の通路の床面となる。筋交い150は、隣り合うベランダ側の支柱110同士又は隣り合う外側の支柱120同士でX字状に係止されることにより仮設足場100の強度を向上させる。
【0058】
隣り合うベランダ側の支柱110の間の距離は、例えば、1.8mである。腕木160の長さは、例えば、0.6mである。
【0059】
第1桟材130は、隣り合うベランダ側の支柱110の間で略水平に固定される単管である。第1桟材130は、例えば、足場板140からの高さが0.9mの位置に固定される。第1桟材130は、例えば、クランプを用いて固定される。
【0060】
第2桟材131は、隣り合うベランダ側の支柱110の間で略水平に固定される単管である。第2桟材131は、例えば、足場板140からの高さが0.45mの位置に固定される。第2桟材131は、例えば、クランプを用いて固定される。
【0061】
第1桟材130及び第2桟材131により、仮設足場100からの落下事故の発生を抑制することができる。
【0062】
ベランダ200は、建築物が複数備える屋外空間である。例えば、建築物がマンションである場合には、マンションが備える複数の住戸のそれぞれに、少なくとも1以上のベランダ200が設けられることがある。ベランダ200は、床面210及び柵220を備える。
【0063】
床面210は、略水平に形成される面である。柵220は、ベランダ200から住人が転落することを予防するための柵である。柵220の床面210からの高さは、例えば、1.1mであるが、1.2mであってもよいし、1.3mであってもよい。柵220の幅は、およそ12cm~18cmである。
【0064】
仮設足場100は、仮設足場100とベランダ200の間の距離(より具体的には、ベランダ側の支柱110と柵220の外側の面との間の距離)が、およそ0.3m~0.5mになるように仮設される。
【0065】
作業者は、架け渡されたベランダブリッジ10を用いて、仮設足場100とベランダ200との間を行き来する。より具体的には、作業者は、ベランダブリッジ10を用いて、足場板140と床面210との間を行き来する。
【0066】
[三次元ベランダブリッジ設置工法]
実施の形態に係る三次元ベランダブリッジ設置工法について説明する。
図2は、実施の形態に係る三次元ベランダブリッジ設置工法を説明するフローチャートである。
【0067】
まず、単管50を固定する高さを決定する(S101)。作業者は、単管50を固定する高さを、渡り板20を設置しようとする高さと同じ高さに決定する。作業者は、単管50を固定する高さを、渡り板20の水平面に応じた自在な高さに決定する。
【0068】
これにより、ベランダブリッジ10の取付位置の上下方向の位置決めが自在となる。
【0069】
なお、渡り板20を設置しようとする高さは、ベランダ200の床面210の高さに基づいて定められてもよく、例えば、床面210から鉛直上方向に、1.3mの高さを渡り板20が設置される高さとしてもよい。
【0070】
また、ベランダブリッジ10の梯子部材30の長さは、脚部31のせり出し長さを変更することによって調整することができる。作業者は、梯子部材30の長さを調整することによって、渡り板20及びフック40が設置される高さ、つまり、単管50を固定する高さを脚部31のせり出し長さが許容する範囲で調整することができる。
【0071】
次に、決定した高さに直交クランプ60を用いて単管50を水平に固定する(S102)。具体的には、作業者は、ベランダブリッジ10が備える渡り板20の水平面の高さに応じた自在な高さで、仮設足場100に直交クランプ60を用いて、単管50を水平に固定する。
【0072】
より具体的には、まず、作業者は、ステップS101で決定された高さに単管50を固定することができるように、少なくとも2つのベランダ側の支柱110に直交クランプ60を固定する。この時、単管50が、ベランダ側の支柱110のベランダ側に連結されるように直交クランプ60を固定する。これにより、仮設足場100内のスペースを保つことができる。次に、作業者は、単管50をベランダ側の支柱110に固定された直交クランプ60に固定する。
図3は、
図2のステップS102におけるベランダブリッジ10の設置状況を説明する図である。
図3に示されるように、単管50は、仮設足場100のベランダ側の支柱110に、直交クランプ60を用いて固定されている。
図3に示されるように、単管50は、仮設足場100のベランダ側の支柱110に対して、その高さ方向の自在な位置で固定することができる。
【0073】
図4は、直交クランプ60を示す図である。
図4に示されるように、直交クランプ60は、2つのクランプ(クランプ61及びクランプ62)を備える。クランプ61の中心軸とクランプ62の中心軸は、互いに直交している。クランプ61は、ナット63を緩めることによって、開口させることができ、ナット63を締めることによって、ベランダ側の支柱110を固定することができる。クランプ62は、ナット64を緩めることによって、開口させることができ、ナット64を締めることによって、単管50を固定することができる。
【0074】
つまり、クランプ61は、ベランダ側の支柱110を着脱可能に保持し、クランプ62は、単管50を着脱可能に保持する。このように、直交クランプ60は、単管50とベランダ側の支柱110を直交させベランダ側の支柱110と単管50とを直角に緊結して固定することができる。ベランダ側の支柱110は、垂直方向に立設しているため、単管50を水平に固定することができる。
【0075】
単管50を固定した後、単管50において、フック40を結束する位置を決定する(S103)。具体的には、作業者は、水平に固定された単管50の水平方向の自在な位置で、フック40を結束する位置を決定する。
【0076】
これにより、ベランダブリッジ10の取付位置の左右方向の位置決めが自在となる。
【0077】
次に、フック40のせり出し長さを決定する(S104)。渡り板20とフック40とは、前後方向にスライドをさせることができる。作業者は、単管50までの距離に応じて、当該スライドの量を調節することにより、フック40のせり出し長さを決定する。作業者は、決定したフック40のせり出し長さまで、フック40をせり出させた状態にスライドさせる。これにより、フック40は、水平方向であって、ベランダブリッジ10が備える渡り板20から離れる方向へスライドされる。
【0078】
図5は、実施の形態に係るフック40のスライド機構を説明する図である。
【0079】
図5に示されるように、フック40は、アーム41に溶接などによって固着されている。アーム41は、鋼材により形成されている。アーム41は、渡り板20の枠に出し入れ可能に収納されている。つまり、アーム41を出し入れすることにより、ベランダブリッジ10の前後方向の長さを調節することができる。フック40のせり出し長さの上限は、例えば、150mmである。
【0080】
図5に示されるように、渡り板20の枠の外側の側面には、スリット21が設けられている。アーム41には、事前に2箇所にボルト42が固定されている。アーム41に事前に固定された2つのボルト42は、スリット21から飛び出している。ボルト42がスリット21から飛び出していることにより、フック40のせり出し長さの上限が決定され、かつ、アーム41と渡り板20とが分離することを規制することができる。
【0081】
ボルト42が固定される2箇所の間隔は、例えば、100mmである。このように、2箇所でボルト42を固定することにより、鉛直荷重に強くすることができる。
【0082】
作業者は、メガネレンチを用いて、ボルト42とナット及びワッシャー43とを結束する。これにより、アーム41のせり出し長さが固定される。作業者は、右側のアーム41のせり出し長さと、左側のアーム41のせり出し長さとを、個別に固定する。
【0083】
これにより、ベランダブリッジ10の取り付け位置の前後方向の位置決めが自在となる。
【0084】
最後に、S103において決定した位置にフック40を結束する(S105)。これにより、ベランダブリッジ10が設置される。 以上のような三次元ベランダブリッジ設置工法によれば、ベランダの床面210と仮設足場100との位置関係によらず、ベランダブリッジ10を設置することができるので、作業者は、ベランダブリッジ10の設置をより容易に行うことができる。
【0085】
この時、ベランダブリッジ10は、ステップS104において決定されたフック40のせり出し長さの分だけ、単管50と渡り板20とが離れた状態で、設置される。つまり、渡り板20は、渡り板20から単管50の方向へフック40が飛び出した(せり出すようにスライドした)状態で固定される。ベランダブリッジ10は、このように渡り板20の全体が単管50よりもベランダ側にある状態が維持されるので、仮設足場100の通路内部に飛び出して、作業員の通行を阻害することはない。
【0086】
また、これにより、渡り板20の前後方向の長さが、仮設足場100までの距離よりも短い場合にも、ベランダブリッジ10を設置することができるようになる。したがって、渡り板20の前後方向の長さを、より短くすることが可能になるため、ベランダブリッジ10の小型化、及び、軽量化に寄与する。
【0087】
[その他の特徴]
上述したように、実施の形態に係るベランダブリッジ10の取り付け位置は、自在である。また、仮設足場100の足場板140の高さとベランダの床面210の高さが、複数の階層にわたって同じになることは殆どない。
【0088】
実施の形態に係るベランダブリッジ10は、足場板140の高さとベランダの床面210の高低差がどのような場合であっても、作業者が安全に渡ることができるように設置することができる。
図6は、実施の形態に係るベランダ200と仮設足場100との高低差を示す模式図である。
図6に示されるように、建築物300階層1つ分の高さ(つまり、ベランダ200aの床面210aの高さとベランダ200bの床面210bの高さの差)と、仮設足場100の階層1つ分の高さ(つまり、足場板140aの高さと足場板140bの高さの差)は、異なる。したがって、ベランダの床面と足場板の高低差は、様々な値をとることになる。
【0089】
例えば、
図6に示される足場板140a及びベランダの床面210aのような高低差である場合を考える。このような場合には、ステップS102の工程において単管50が固定される高さと足場板140aの高さとの高低差は大きなものとなる。このような場合には、作業者は、仮設足場100の1つ上の階層から出入りをすることによって、安全に渡ることができる。
【0090】
さらに、
図6に示される足場板140bとベランダの床面210bのような高低差である場合を考える。このような場合には、ステップS101の工程において決定された単管50が固定される高さに既に第1桟材130b又は第2桟材131bが固定されている場合がある。このような場合には、作業者は、単管50を固定することなく、既に固定されている第1桟材130b又は第2桟材131bを用いて、ベランダブリッジ10を設置することができる。
【0091】
また、実施の形態に係るベランダブリッジ10は、容易に運搬することができる。
図7は、実施の形態に係るベランダブリッジ10が持ち運ばれる時の状態を説明する図である。
【0092】
図7の(a)に示されるように、ベランダブリッジ10は、持ち運ばれる時、つまり、設置がされていない時、渡り板20と梯子部材30との連結部分を起点に折り畳むことが可能である。このように折り畳むことによって、ベランダブリッジ本体の運搬容易性が向上する。
【0093】
このように、ベランダブリッジ本体が折り畳まれて運搬される場合には、上記三次元ベランダブリッジ設置工法は、さらに、折り畳まれた渡り板20及び梯子部材30を広げるステップを含む。当該ステップが行われるタイミングは、特に限定されない。
【0094】
図7の(b)に示されるように、手摺部材70は、持ち運ばれる時、つまり、設置されていない時、ベランダブリッジ10から取り外すことが可能である。このように手摺部材70をベランダブリッジ本体から取り外すことによって、手摺部材70の運搬容易性が向上する。
【0095】
また、手摺部材70がこのように取り外されて運搬される場合には、上記三次元ベランダブリッジ設置工法は、さらに、渡り板20及び梯子部材30の少なくとも一方に手摺部材70を連結するステップを含む。当該ステップが行われるタイミングは、特に限定されない。
【0096】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る三次元ベランダブリッジ設置工法及びベランダブリッジについて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0097】
例えば、上記実施の形態において、ベランダブリッジは、仮設足場とベランダとの間を行き来するために用いられたが、ベランダブリッジは、仮設足場と建築物の外廊下との間を行き来するために用いられてもよい。ベランダブリッジは、仮設足場と建築物の屋外空間との間を行き来するために用いることができる。
【0098】
また、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示に係る三次元ベランダブリッジ設置工法は、マンションの補修工事等において、ベランダと仮設足場との間にベランダブリッジを設置する業務に利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 ベランダブリッジ
20 渡り板
21 スリット
30 梯子部材
31 脚部
40 フック
41 アーム
42 ボルト
43 ナット及びワッシャー
50 単管
60 直交クランプ
61、62 クランプ
63、64 ナット
70 手摺部材
100 仮設足場
110 ベランダ側の支柱
120 外側の支柱
130、130a、130b 第1桟材
131、131a、131b 第2桟材
140、140a、140b 足場板
150 筋交い
160 腕木
200、200a、200b ベランダ
210、210a、210b 床面
220 柵
300 建築物
【要約】
【課題】作業者がベランダブリッジをベランダと仮設足場との位置関係によらず設置することができるベランダ設置工法を提供する。
【解決手段】三次元ベランダブリッジ設置工法は、ベランダブリッジ10が備える渡り板20の水平面の高さに応じた自在な高さ(上下方向)で、仮設足場100に直交クランプ60を用いて、単管50を水平に固定するステップを含む。さらに、三次元ベランダブリッジ設置工法は、水平に固定された単管50の水平方向(左右方向)の自在な位置で、ベランダブリッジ10が備えるフック40を結束させるステップを含む。さらに、ベランダブリッジ10の渡り板20とフック40とは、単管50までの距離に応じて、前後方向にスライド可能である。これにより、三次元ベランダブリッジ設置工法は、ベランダブリッジ10の仮設足場100への取り付け位置を3軸方向で自在化することができる。
【選択図】
図1