(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】リサイクル可能な高性能炭素繊維強化ポリマー
(51)【国際特許分類】
B29B 17/04 20060101AFI20250821BHJP
C08J 11/22 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
B29B17/04 ZAB
C08J11/22
(21)【出願番号】P 2021014673
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2024-01-31
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・イフタイム
(72)【発明者】
【氏名】チュンファ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ウニダト
(72)【発明者】
【氏名】ラフル・パンディ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・ロアーク・ガーナー
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0116511(KR,A)
【文献】特開2019-112613(JP,A)
【文献】特開2006-273949(JP,A)
【文献】特開2006-036883(JP,A)
【文献】特表2016-521295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/04
B09B 3/35
C08J 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化ポリマーをリサイクルする方法であって、
使用済み繊維強化ポリマー材料を粉砕して、粉砕粒子を生成することと、
前記粉砕粒子を官能化して官能化粒子を生成することと、
前記官能化粒子をベース樹脂に分散させることと、
官能化粒子を有する前記樹脂を分注して、連続繊維マットの1つ以上の層にすることと、
官能化粒子を有する前記樹脂及び前記連続繊維マットを所望の部品の形態に成形することと、
前記形態を硬化させて前記部品を生成することと、を含
み、
前記粉砕粒子を官能化することが、硬化エポキシ樹脂上に官能基を生成することと、前記官能基を試薬と反応させることと、を伴う間接プロセスを含む、方法。
【請求項2】
前記使用済み繊維強化ポリマー材料を粉砕することが、連続繊維、不連続繊維、及び粉末繊維のうちの少なくとも1つを含む粉砕繊維複合粒子;ポリマー繊維強化粒子;炭素繊維強化ポリマー;炭素複合粒子;ケブラー;セラミック繊維複合粒子;並びにガラス繊維強化粒子、からなる群から少なくとも1つの材料を粉砕することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記連続繊維マットが、連続炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、及びケブラー繊維マットからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記間接プロセスが、酸性開裂である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
粉砕することが、粉砕、ボールミリング、及び高パワー遊星ボールミリング、からなる群から選択される1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粉砕粒子を提供することが、10nm~10mmの範囲のサイズを有する粉砕粒子を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記官能化粒子を分散させることが、剪断混合、遠心分離混合、レオメーター混合、切断及び折り畳み、圧縮混合、フロー混合、並びに超音波処理分散、からなる群から選択される1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記樹脂が、少なくとも150℃のガラス転移温度を有するエポキシ樹脂、1分子当たり2個を超える官能基を有する樹脂、1分子当たり8個の官能基を有する樹脂、及びノボラック樹脂、からなる群から選択される1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂が、アミノ硬化剤(hardener)、潜在性硬化剤(curing agent)、又は触媒のうちの少なくとも1つを含む速硬化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
官能化粒子を有する前記樹脂を分注して、連続繊維マットの1つ以上の層にすることが、プリプレグマットを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
成形することが、湿式圧縮成形、樹脂転写成形、湿式レイアップ加工、引抜成形、及びプリプレグ加工からなる群のうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
炭素繊維強化ポリマーをリサイクルする方法であって、
使用済み炭素繊維強化ポリマー材料を粉砕して、粉砕粒子を生成することと、
前記粉砕粒子を官能化して官能化粒子を生成することと、
前記官能化粒子をベース樹脂に分散させることと、
官能化粒子を有する前記樹脂を分注して、炭素繊維マットの1つ以上の層にすることと、
官能化粒子を有する前記樹脂及び前記炭素繊維マットを所望の部品の形態に成形することと、
前記形態を硬化させて前記部品を生成することと、を含
み、
前記粉砕粒子を官能化することが、硬化エポキシ樹脂上に官能基を生成することと、前記官能基を試薬と反応させることと、を伴う間接プロセスを含む、方法。
【請求項13】
成形することが、湿式圧縮成形、樹脂転写成形、湿式レイアップ加工、引抜成形、及びプリプレグ加工、からなる群のうちの1つを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
ガラス繊維強化ポリマーをリサイクルする方法であって、
使用済みガラス繊維強化ポリマー材料を粉砕して、粉砕粒子を生成することと、
前記粉砕粒子を官能化して官能化粒子を生成することと、
前記官能化粒子をベース樹脂に分散させることと、
官能化粒子を有する前記樹脂を分注して、繊維ガラスマットの1つ以上の層にすることと、
官能化粒子を有する前記樹脂及び前記繊維ガラスマットを所望の部品の形態に成形することと、
前記形態を硬化させて前記部品を生成することと、を含
み、
前記粉砕粒子を官能化することが、硬化エポキシ樹脂上に官能基を生成することと、前記官能基を試薬と反応させることと、を伴う間接プロセスを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月21日に出願された米国仮出願第62/979,513号に対する優先権及び該仮出願の利益を主張するものであり、該仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、繊維強化ポリマー(fiber reinforced polymer、FRP)に関し、より具体的にはリサイクル可能なFRPに関する。
【背景技術】
【0003】
車両の軽量化は、より良好な燃料効率及び取り扱いを達成するために、より軽量な車両及びトラックを構築することを伴う。世界中の多くの政府及び自動車製造業者は、それを最優先にしてきた。主な利益は、車両の改善された燃費、及び温室ガス放出の低減である。それらの高い比強度、剛性、及び優れた耐食性のために、炭素繊維強化ポリマー(carbon fiber reinforced polymer、CFRP)は、車両本体パネルの重量を約70%減少させる可能性が最も高く、少なくとも40%より重いアルミニウム、及び少なくとも45%より重い多材料を含む、代替的なより低いリスクの方策よりもはるかに優れている。
【0004】
しかしながら、様々な鋼及びアルミニウムと比較したときの今日のCFRPの費用は、自動車産業の実行可能な経済的手法とするには高すぎる。自動車の重量測定は、多くの場合、ホワイトボディ(body-in-white、BIW)段階で行われ、BIWは、塗装前、及びモーター、シャシーアセンブリ及びトリムの組み立て前の、車体構成要素が接合された段階を意味する。最近のテクノ経済分析では、平均的なセダン型自動車のBIWをCFRPで置換することにより、その重量が717ポンドから344ポンドに52%低減され得ることが示されている。しかしながら、これは、BIW費用を$1287~$6546増大させる[A.Mascarin et al.Vehicle Lightweighting:Mass Reduction Spectrum Analysis and Process CostModeling(2016)]。これは、1ポンドの質量削減当たり約14.00ドルの、質量削減に関連する費用増大を表す。質量削減の目標費用は、1ポンドの質量削減当たり約5.00ドルであり、これは、重量減少によって可能となった車両の寿命にわたる燃料削減によって相殺される。現在のCFRPは、この目標を達成することができない。
【0005】
低費用には、部品当たり3分未満の高速サイクル時間が必要であり、これは、今日の材料及び製造方法では達成が困難である。加えて、その環境負荷を低減するために、寿命の終わりにCFRP部品をリサイクルする必要性により、他の困難なタスクが生じる。また、多くの場合、新たな材料での重量及び目標費用の低減を達成するだけでなく、製造された部品の使用を可能にするのに十分な要件を達成することも必要である。例えば、フード、屋根パネル、及び他のパネルを含む自動車の可視部品は、最高度の表面外観要件を満たす必要があり、これは、CFRPに関する現在の課題となっている。CFRPは、成形後にプリントスルー欠陥を示し、この要件を満たすことの妨げとなる。この課題は、今日、高費用の成形後加工ステップによって解決されている。別の問題は、塗装に必要な高温での寸法安定性の損失である。同様の課題が、航空宇宙、用具製造、スポーツ用品、及び他の特殊商品を含む、CFRPを使用する他の産業に当てはまる。
【0006】
自動車産業によるCFRPの採用に対する主な障壁は、炭素繊維(carbon fiber、CF)及び部品製造の費用である。低費用の繊維前駆体原料の使用を伴う炭素繊維の費用を低減するための現行の手法が広く調査されているが、進行は比較的遅い。1ポンドの削減当たり5.00ドル未満の費用の増加という目標は、依然として約$12.5/lbである現在のCFでは実現することができない。
【0007】
第2の手法は、CFRP部品の製造費用を低減することに関する。CFRP部品の業界最大の製造プロセスは、高圧樹脂転写成形(high-pressure resin transfer molding、HP-RTR)である。それは、低粘度樹脂の非常に厳しい要件を有し、比較的遅い。また、このプロセスは、樹脂を炭素繊維布地にポンプ圧送するための高価な高圧装置を必要とする。したがって、CFRP製造費用は約$11/lbと、依然として高い。
【0008】
別の手法では、CFRPの機械的特性が、炭素繊維材料又は加工を変更することなく樹脂によって増大する、樹脂強化CFRPを使用する。以前の試みにより、負の効果である-10%から27%へのCFRP改善を含む入り混じった結果が明らかになった。これらは、高価なカーボンナノチューブ及びグラフェンの両方で実現されており、CFRP材料又は低費用有機粘土に大幅な費用を加え、それらは炭素よりも高い密度を有し、CFRPリサイクルを困難にする。また、これらのCFRPは、低温硬化剤で作製され、低ガラス転移温度樹脂は120℃の範囲で作製され、高温を維持することができず、欠陥が生じやすい。これは、成形後にプリントスルー欠陥を表示するCFRPによる現在の課題を表す。複合材料産業において周知であるように、CFRP製造のための強化/充填樹脂の使用、例えば上記のようなナノ充填エポキシを使用することにより、寸法安定性及び収縮性を向上させることができる。収縮によって課される通常の力に起因して収縮するときに、エポキシが収縮する際に通常増大する炭素繊維エポキシ界面を保持する摩擦を低減する問題がある。したがって、典型的な強化/充填樹脂は、より大きな寸法安定性を有し得るが、その後、高温又は高応力で剥離しやすい場合がある。
【0009】
繊維強化プラスチック、材料を含む繊維強化ポリマー(FRP)の環境への影響を低減するために、廃棄物FRPのリサイクルが必要とされる。これは、非常に困難なタスクである。リサイクルプロセス全体にわたって変化する表面化学的及び形態により、CFRPの性能に劇的に影響を与える、リサイクルされた連続炭素繊維の性能(機械的特性など)は、元の炭素繊維よりも低く、今日では、元の材料よりも劇的に低い性能を必要とする用途にのみ使用することができる。ここまで、CFRPをリサイクルする全てのプロセスは、CFRP中の有機部品、ポリマーの除去、及び無機炭素繊維の回収、及び使用を通じて行われる。CFRPをリサイクルのために全体として直接使用する方法は存在しない。廃棄物FRP、特にCFRPをアップサイクルする手法、すなわち、リサイクルされた材料が固有の特性を提供する用途でそれらを使用するための手法が必要であり、高い値及び高性能材料が必要とされる。
【発明の概要】
【0010】
使用済み繊維強化ポリマー材料を粉砕して粉砕粒子を生成することと、粉砕粒子を官能化して官能化粒子を生成することと、官能化粒子をベース樹脂に分散させることと、を含む、繊維強化ポリマーをリサイクルする方法であって、
【0011】
官能化粒子を有する樹脂を分注して、連続繊維マットの1つ以上の層にすることと、官能化粒子を有する樹脂及び連続繊維マットを所望の部品の形態に成形することと、その形態を硬化させて部品を生成することと、を含む、方法。
【0012】
本明細書に示す態様によれば、使用済み炭素繊維強化ポリマー材料を粉砕して粉砕粒子を生成することと、粉砕粒子を官能化して官能化粒子を生成することと、官能化粒子をベース樹脂に分散させることと、官能化粒子を有する樹脂を分注して、炭素繊維マットの1つ以上の層にすることと、官能化粒子を有する樹脂及び炭素繊維マットを所望の部品の形態に成形することと、その形態を硬化させて部品を製造することと、を含む、炭素繊維強化ポリマーをリサイクルする方法が提供される。
【0013】
本明細書に示される態様によれば、使用済みガラス繊維強化ポリマー材料を粉砕して粉砕粒子を生成することと、粉砕粒子を官能化して官能化粒子を生成することと、官能化粒子をベース樹脂に分散させることと、官能化粒子を有する樹脂を分注して、繊維ガラスマットの1つ以上の層にすることと、官能化粒子を有する樹脂及び繊維ガラスマットを所望の部品の形態に成形することと、その形態を硬化させて部品を生成することと、を含む、ガラス繊維強化ポリマーをリサイクルする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】リサイクルされた炭素繊維強化ポリマー粒子を用いた部品の製造方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【0015】
【
図2】
図2A及び
図2Bは、炭素繊維強化ポリマーを使用して部品を成形するためのプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載の実施形態は、鋼屋根と比較したときに70%以上の重量を軽減する最高度の表面仕上げにより、かつ、1ポンド当たり$5.00未満を削減する許容可能な費用増大、軽量化によって有効化された燃料削減によるオフセットにより、寿命終了時のCFRPのリサイクルを可能にしながら、軽量で塗装可能なCFRP部品の製造を可能にする。CFRP部品はまた、繊維強化プラスチックを含む他のリサイクルされた繊維強化ポリマー(FRP)から作製されてもよい。
【0017】
本明細書に記載の実施形態は、硬化後に高ガラス転移エポキシ樹脂を組み込んだ複合樹脂配合物を含み、これは、150℃を超えるガラス転移温度を有することを意味する。配合物は、エポキシ樹脂と同様であるか、又は相溶性がある、硬化時にエポキシ樹脂と反応する官能基を有する官能化リサイクルCFRP粒子を含む。これにより、硬化樹脂内に分散された化学的に結合したCFRP粒子のネットワークを有する架橋構造を生成する。
【0018】
実施形態は、商業用樹脂の代わりに上記複合樹脂で作製された炭素繊維強化ポリマー構造体を含む。
【0019】
実施形態は、改良され改善された湿式圧縮成形プロセスによってCFRP部を製造するためのプロセスを含む。
【0020】
実施形態は、リサイクル可能なCFRPを処理し、それらをエポキシ樹脂中の性能向上充填剤として使用するためのプロセスを含む。
【0021】
PARCは、化学的に結合した粒子ネットワーク複合材料プラットフォームを開発しており、最大50%の高荷重エポキシ相溶性分散性官能化粒子は、ベース樹脂よりも最大5倍高い、非常に高い機械的特性を達成する可撓性ポリマーリンカーによって互いに化学的に結合される。
【0022】
これらの実施形態からのCFRP粒子系樹脂の使用の重要な利点は、寿命終了時にCFRP部品の完全なリサイクルを可能にすることである。カーボンナノチューブ、グラフェン、又は粘土などの無機粒子を組み込んだCFRP複合材料は、それらの組成が制御できないため、不均質な新しいCFRP複合材料をもたらすであろう。一方、これらの実施形態における複合樹脂は、従来のCFRPの組成に厳密に一致する、厳密に同一の主要成分(炭素繊維+エポキシ樹脂)を有するCFRP粒子を組み込む。これらの実施形態からCFRP粒子で作製されたリサイクル廃棄物CFRPは、一貫した制御可能な組成物を有する新しいCFRPオブジェクトの製造を可能にする新しいCFRP粒子を生成する。強化粒子がCFRP以外の材料である場合、これは不可能である。生リサイクルCFRP粒子は、CFRP部の粉砕によって生成される。樹脂強化材としてのリサイクルされた粒子の更なる利点は、非常に低費用であり、約$0.25/kgであることである。比較すると、リサイクル(炭素繊維のような炭素材料であるため)の目的にはより好適であり得るグラフェン及びカーボンナノチューブは、約$1000/kgの費用であり得る。
【0023】
樹脂で製造されたCFRPに関しては、CFRPの機械的特性(強度、弾性率)は、樹脂の特性が、60MPaを超える強度、及び3GPa未満の弾性率で、数桁低いため、CF単独で判定されることが従来知られている。複合樹脂の機械的特性は十分に高く、約110MPaの概算強度、最大10GPaの弾性率、及び最大2%の破断伸びを有し、樹脂が炭素繊維(CF)単独で可能なものを超えるCFRPの機械的特性を増大させることができる。
【0024】
本明細書に記載の実施形態は、複数の方法で、高温での寸法安定性を可能にする。これらには、高い架橋密度によって達成される高ガラス転移温度(Tg)エポキシ樹脂ベースシステムが挙げられ、硬化樹脂は、熱膨張係数(CTE)が著しく低く、低CTE炭素繊維との不整合を最小化する。例えば、Hexionから市販されているEPON樹脂164は、従来のRTM樹脂よりも3倍低い、17-22×10-6m/(m K)のみのCTEを有する。
【0025】
別の有効な態様は、CFRP粒子充填剤に存在し、これは、主に樹脂の弾性率を増大させることによって剥離する可能性を更に減少させ、より寸法安定性を高め、CTE不整合を最小化することに更に寄与する。
【0026】
別の有効な態様は、化学的に結合された粒子ネットワーク内にある。エポキシ樹脂を介した粒子の化学結合は、基本的な強化効果を超えて、複合材料の弾性率を更に増大させ、かつ、追加的な架橋によって、高温での剥離を更に防止することができる。例えば、2019年6月27日に公開されたWei Junhuaらによる米国特許出願公開第2019/0194417号は、化学結合粒子を組み込んだ材料が、同じ非結合粒子と比較して、著しく増大した弾性率及び強度を有することが示されている。
【0027】
実施形態は、強化/粒子充填樹脂を含むいくつかの方法で最高度表面を可能にするものであり、最高度表面を作製するために従来は使用されていない。最高度表面を得る際の主な問題は、エポキシ樹脂中のほとんどの充填剤粒子の分散性の悪さから生じる。これらの提案される実施形態からの複合樹脂材料は、最高度表面を達成し、同時にCFRPの機械的特性を増大させる。実施形態からの複合樹脂の固有及び本来の特徴は、樹脂ベース材料との相溶性に優れた官能化CFRP粒子の優れた分散である。これは、望ましくない粗さをもたらす大きな凝集体を形成し得る他の従来の粒子とは異なる。
【0028】
別の実施可能な要素は、繊維プリントスルーによる効果を最小限に抑えることにある。プリントスルーの主な理由は、炭素繊維が収縮していない間の樹脂の収縮である。本実施形態の複合樹脂は、高ガラス転移樹脂が、密な架橋によって達成される本質的に低い自由体積を有し、粒子の化学的結合が樹脂マトリックスを更に強化し、高転移温度樹脂の効果を超える体積収縮を更に低減し得るため、この問題に対する優れた解決策である。これは、従来のRTM又はプレーン樹脂システムで達成することができない、我々の材料の別の明確な特徴である。
【0029】
本明細書に記載の実施形態は、以前に同時に利用可能ではない固有の利点を提供する。これらには、化学的に結合した粒子ネットワークによって可能となる、部品当たりのCFRPの量を減少させることによって達成されるCFRPオブジェクトの25%CFRP重量低減及び約40%の費用低減が含まれる。別の利点は、市販の速硬化剤、並びに湿式圧縮成形(WCM)及び原位置含浸成形プロセスによって可能となる3分以下の短いサイクル時間であり、これは、製造費用をおよそ$8/lb~$5/lb削減する可能性がある。別の利点は、粉砕によって廃棄CFRPをリサイクルして、$0.25/lbを超える新たな低費用CFRP粒子を生成することにある。
【0030】
塗装可能な最高度表面は、熱膨張係数が低い180℃超の高架橋エポキシレジンの高ガラス転移温度及び樹脂弾性率の増大により生じる。これらは、高温での部品の寸法安定性を高め、樹脂収縮に関連するプリントスルー問題を排除する。エポキシ官能化リサイクルCFRP粒子ネットワークによる炭素繊維の化学結合は、化学物質による強化樹脂と炭素繊維との間の界面強度を増大させる。これにより、樹脂収縮が低減されることにより、剥離が防止され、摩擦の損失が相殺される。
【0031】
CFRPは、架橋ポリマー構造から作製された複合熱硬化性材料であるため、溶融せず、その結果、溶融可能なプラスチックに適用される方法によって単純にリサイクルすることができない。熱可塑性材料は、新たな部品を作製するために潜在的に使用することができる清潔な炭素繊維を残すために、単に溶融及び再回収によって除去することができる。本明細書に記載の実施形態は、寿命終了時の廃棄物などのCFRPを粉砕することによって提供されるCFRP粒子を使用する。粒子を粉砕するためのプロセスが知られている。[Vo Dong et al.,Economic and environmental assessment of recovery and disposal pathways for CFRP waste management.Resources,Conservation and Recycling,133.63-75(2018)]。これらは、2種類のCFRP粒子を提供することができ、その表面上に以前の硬化エポキシの一部を含有する粒子、複合粒子、又は純粋な炭素繊維粒子のいずれかを提供することができ、エポキシは粒子の表面から除去されている。
【0032】
図1は、CFRP部品の製造方法のフローチャートを示す。10において、一実施形態では、FRP構造体又は他の形成されたオブジェクトを使用して、官能化CFRP粒子の製造のための出発材料として使用される粉砕FRP粒子に粉砕する。これらのCFRP粒子は、それらに付着した有意な残留エポキシを有する又は有さない、粉砕又は細断された炭素繊維粒子からなり得る。粒子は、100nm~5mmの範囲の最大寸法を有してもよい。主要な設計規則は、官能化CFRP粒子が末端エポキシ官能基を有することである。これは、粒子の樹脂への相溶性及び分散性を高めるために必要とされる。このようにして、エポキシ樹脂ベースへの高濃度の粒子を達成することができ、これは、機械的特性の向上、収縮の低減などの複合樹脂を達成するための重要な要件である。
【0033】
粉砕又は細断されたガラス繊維複合粒子(GFRP)、ポリマー繊維強化粒子(PFRP)、金属、例えばアルミナ及びチタニアなどのセラミックなどの代替的な原料は、分散性粒子を得るために同様の又は類似の方法で官能化することができることに留意されたい。これらの場合、機械的特性、寸法安定性、収縮低減などの同様のゲインは、得られる充填樹脂中の粒子官能化、分散、及び濃度を調整することによって達成することができる。使用される粒子は、本明細書ではCFRPを包含するFRPと称される。
【0034】
これらの代替的な実施形態では、得られるCFRPの強化は、依然として車両用途の軽量化を達成することができるが、リサイクルされたCFRP粒子で作製されたものとしてリサイクル可能でなくてもよい。これらの実施形態では、得られたFRPは、ケブラーFRP部品を製造するための細断若しくは粉砕されたケブラー繊維複合粒子を使用すること、又は、ガラスFRP部品を製造するための、本明細書では繊維ガラスと称される細断若しくは粉砕されたガラス繊維複合粒子を使用することなど、最終複合部品を目的とする繊維と同じ材料を有するFRP粒子を使用することによってリサイクル可能に作製されてもよい。
【0035】
様々な種類の原材料粒子の官能化のための特定の方法は、Iftime他による米国特許第10,138,317号及び、Iftime他による米国特許第9,718,914号に開示されており、これらの両方は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
炭素系材料の官能化のための更なる特定の方法もまた、Wei Junhua他による、2019年6月27日公開の米国特許出願公開第2019/0194417号に開示されている。純粋な炭素繊維粒子を含有する官能化CFRPは、上記のものを含むエポキシ官能基で終端された粒子を生成する任意の方法によって製造することができる。
【0037】
多くの場合、リサイクルされた炭素繊維粒子は、一部の官能基を含有してもよく、連続繊維の初期製造中にいわゆるサイジングプロセスからの残留物を含有してもよい。エポキシ系サイジング材料については、炭素繊維の表面粗さを被覆しながら、エポキシによる炭素繊維の湿潤を促進する目的で、COR、C=O及びCOORのような基が生成される。[J.Moosburgger Will et al./Applied Surface Science 439(2018)305-312]。12において、プロセスは粒子を官能化する。いくつかの粒子は、本明細書で複合粒子と呼ばれる、その表面上に、以前の硬化エポキシの一部を含有してもよい。この場合、官能化は、粒子の表面上への新たなエポキシ末端材料の付着を意味する官能化は、上記に開示した方法のうちの1つによって炭素材料の表面上に、又は硬化エポキシの表面上に、新しい基を結合する反応のいずれかによって達成することができる。
【0038】
直接プロセス及び間接プロセスの両方は、直接プロセス及び間接プロセスの両方によって達成することができる硬化エポキシの表面上への官能化を達成することができる。直接プロセスは、m-cpbaなどの試薬による、新たなエポキシ基への、硬化エポキシ中に存在する他の化学基の変換を伴う。間接プロセスは、硬化エポキシ樹脂上に官能基を生成することを伴い、この官能基は、少なくともエポキシ基を含有する新たな試薬と更に反応して、硬化エポキシの表面上に最終的に反応性官能基を有する。これは、一般に、別の小分子を付着させる必要がある。例えば、エーテルの酸性開裂を使用して硬化エポキシを処理することにより、ヒドロキシル基を生成することができる。
【0039】
更なる反応は、1分子当たり2個のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂である。エポキシのうちの1つは、酸性開裂から得られたアルコールと反応して表面をエポキシ官能化し、この粒子が樹脂充填剤として使用されるとき、第2のエポキシが樹脂ベースからエポキシと化学的に架橋するために利用可能である。
【0040】
粒子のサイズは、粉砕装置、従来のボールミリング、高パワー遊星ボールミリング、又は他の方法を含むことができる粉砕方法によって制御される。ボール媒体としては、ステンレス鋼、アルミナ、ジルコニア、イットリウムジルコニア酸化物、炭化タングステン、及び炭素繊維よりも硬い任意の他の媒体を含んでもよい。
【0041】
少なくとも1つの寸法における粒径は、CFRP粉砕実験プロセスパラメータに応じて、10nm~10mmの範囲であり得る。一般に、より高いエネルギー入力、より長い加工時間、及びより小さいミリングボールは、より小さいサイズのCFRP粒子を生成する。
【0042】
官能化度、すなわち粒子の表面上への組み込まれた官能性有機材料の量を意味する官能化度は、官能化法又は官能性有機分子に応じて0.05%~60%又は更にはより多くの範囲であってもよい。
【0043】
図1に戻ると、プロセスは、次いで官能化されたFRP粒子を14でベース樹脂に分散させる。プロセスは、一般に、官能化FRP粒子のベース樹脂への分散を必要とする。高品質分散は、遠心分離混合、レオメーター混合、スクリューバレル型押出機内の切断及び折り畳み機構、圧縮混合、フロー混合、ポリマー配合などに使用される他の混合方法などの剪断混合を含むがそれに限定されない任意の混合方法によって、又は超音波処理分散のようなエネルギー分散法によって達成される。
【0044】
14において粒子が樹脂に分散された後、粒子を有する樹脂は、15で連続繊維マットの1つ以上の層に分散される。繊維マットは、連続炭素繊維、繊維ガラス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al2O2)、及びケブラー繊維のうちの1つを含んでもよい。マットの1つ以上の層への分散後、粒子を有する樹脂及びマットは、16において所望の部品の形態に成形され、次いで、18で硬化される。
【0045】
分散プロセスは、最終CFRP部品を作製するための下流加工方法に応じて、バッチ、半連続的又は連続的な加工で行われてもよい。分散した官能化粒子は、樹脂と反応させるために使用され得るエポキシ基又は基を既に有し得る。
【0046】
従来の樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が低い硬化エポキシを生成する。例えば、塗装のために、又は他の部品に封止するために加熱されると、樹脂は軟化し、その結果、CFRPオブジェクトは寸法安定性を失う。高ガラス転移温度(Tg)エポキシ樹脂は、この効果を最小限に抑える。これらは、一般に、高い架橋密度によって、又はより長い若しくはより嵩高なモノマーを有することによって、180℃超の高いガラス転移温度を達成する。硬化樹脂は、著しく低い熱膨張係数(CTE)を有し、低CTE炭素繊維との不整合を最小化する。例えば、EPON樹脂164は、従来のRTM樹脂よりも約3倍低い、17-22×10-6m/(m K)のみのCTEを有する。
【0047】
従来の低Tgエポキシは、低Tgを有する硬化樹脂を生成する樹脂分子当たり2個のエポキシ基を含有する。高Tgは、例えば、高密度の架橋構造を生成する2.5~6以上など、1分子当たり2個を超える官能基を有する樹脂により達成される。
【0048】
樹脂1分子当たり2個を超えるエポキシ基を意味する、高い架橋密度を有する好適な樹脂の例としては、以下に示す一般化学構造を有するエポキシノボラック樹脂、又は他の多官能性樹脂が含まれる。
【化1】
【0049】
これらの樹脂の一部は、例えば、Hexionで市販されている。例えば、Epon樹脂SU-8(Tg 195-230;1分子当たり8エポキシのエポキシ官能性)、Epon樹脂1031(Tg 195-230℃)C;エポキシ官能性3.5)、Epon樹脂164(Tg 200-240℃)C;エポキシ官能性4.1)。他の高Tg樹脂は、MasterbondにおいてEP13、EP121CL及びEP46HT-1、又はDIC株式会社にて、EPICLON HP-4710、Tgが350℃の超高耐熱エポキシ樹脂などが入手可能である。
【0050】
速硬化剤は、CFRPオブジェクトの製造中に、速いサイクル時間、理想的には1部品当たり3分未満の速いサイクル時間を達成するために必要である。それらは、一般に、100℃を超える温度で、1-3分間で高速硬化する。一般に、使用可能な硬化温度は、100℃~250℃の範囲であり得る。一般に、硬化温度が高くなるほど、硬化時間が更に低減し、硬化樹脂の機械的特性が増大する。
【0051】
これらの実施形態の目的に好適な2種類の硬化剤が存在する。第1のタイプは、急速硬化型アミノ硬化剤を使用する。これらはA+B系で使用され、A成分はエポキシ樹脂であり、B成分はアミン硬化剤である。それらは、使用直前に予混合され、直ちに適用される。高速硬化性アミン硬化剤の好適な例としては、Huntsmanで入手可能なAradur(登録商標)3475及びHardener XB 3458、又はHexionで入手可能な速硬化剤が含まれる。第2の種類の硬化剤は、本実施形態の複合樹脂を含むエポキシベース樹脂と混合したとき、室温で硬化しない安定した溶液を提供する、いわゆる潜在性硬化剤である。これらは、1液型樹脂系として使用される。これらは、120℃を超える温度で加熱したときに迅速に硬化する。一般に、より高い硬化温度は、アミノ硬化剤と比較して潜在性硬化剤を必要とする。潜在性硬化剤の好適な例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、2-エチル-4-メチルイミダゾール、ジシアニジアミド(DICY)などのイオン性液体が含まれる。これらは、多くの場合、促進剤及び第三級アミンなどの触媒と共に使用される。
【0052】
本実施形態からの強化樹脂系は、CFRP部品を製造するための一般的な周知の方法と適合するように設計される。これらは、とりわけ、湿式圧縮成形、樹脂転写成形、湿式レイアップ加工、引抜成形、及びプリプレグ加工のうちのいずれかを含むことができる。
図2は、官能化粒子を用いて樹脂を成形するプロセスの一例を示す。これは、理解を容易にするための例を含み、任意の特定のタイプの成形にいかなる実施形態も限定するものではない。
【0053】
図2は、第1の実施形態によるプロセスを示す。リサイクルされたFRPは、FRP材料及び製品粒子を得るために、いくらかの種類のグラインダー、シュレッダー、又は両方の20に入れられる。次いで、これらの粒子は、別々に、又は分散によってベース樹脂中に22で官能化される。
【0054】
分注ヘッド26は、画定された体積の液体樹脂20を分注して、複数層の炭素繊維マット24の単一層又は積層体28のいずれかにし、最上層にほぼ均一なフィルムを形成する。炭素繊維マットは、炭素繊維織布、一軸配向又は二軸配向繊維マットからなってもよい。配向された繊維マットの積層体を構築する際、各積層体間のマットの相対的配向は、得られる部品の意図される機械的特性に応じて設定され得る。
【0055】
目標は、圧縮成形ステップ中に樹脂を大幅に広げる必要性を最小限に抑えるために、マットのほぼ完全な横方向領域を被覆する、十分に画定された量の液体樹脂を分注することである。これは、現在行われているように、低粘度樹脂の場合に適用可能な繊維マットの中央の単一点分注によって、又は低粘度樹脂と高粘度樹脂の両方に適用可能な、より大きな面積にわたって均一な体積を適用するために、スロット付きダイ26を通して樹脂を押出することによって行うことができる。得られる樹脂フィルムは、部品を完全に浸潤させるのに十分な樹脂体積を含有し、約20~60%樹脂の最終体積分率をもたらすので、得られる樹脂フィルムは、100ミクロンほど低い厚さを有し得るが、より厚い可能性が高い(1~10ミリメートル)。樹脂は、主に第1の布地層の上に含まれるが、布地メッシュがより大きく、樹脂が十分に低い粘度を有する場合にはいくらかのレベルの浸潤が生じ得ることが予想される。
【0056】
強化樹脂は充填剤を含有するため、マルチミクロン~ナノメートルの範囲のサイズを有するリサイクルされたCFRP粒子は、典型的には100センチポイズ以下の低粘度、典型的には100センチポイズ以下で容易に分注され得る一般に使用される非充填樹脂よりも粘稠であることが予想される。強化樹脂は、このよりも大きい粘度を有してもよく、少なくとも100センチポイズよりも大きく、正確な体積の迅速な押出のためにより大きな圧力低下を必要とする。流体を分注するためのこのようなハードウェアとしては、圧力増倍器、水圧式ピストンベースの力増倍器、又は、分注前に樹脂を薄く剪断し得るスクリュー及びバレル型押出機システムを備えた空気圧駆動流体システムを含んでもよい。これらは、当業者に既知の他のハードウェア要素を含んでもよい。
【0057】
この可能性の高い用途では、単一の炭素繊維(CF)マット又はいくつかのCFマットの積層体の上に、正確な体積を有する樹脂の単層が分注される。これに対する他の変形例としては、単一のCFマット又はいくつかのCFマットの積層体の上に複数の樹脂層を押出して、正しい樹脂体積を得ることが含まれてもよい。ある方法ではまた、積層体に組み立てられる前に、各CFマットの上に樹脂体積を押出することを選択して、マットを通る樹脂の浸潤時間を低減することもできる。他の方法では、2つのマット層の間に挟まれた、CFマットの積層体の中央に樹脂を配置して、その浸透を強化することができる。
【0058】
分注ステップの後、現在湿潤状態のCFマット又はCFマットの湿式積層体を、圧縮鋳型の下半部32に、上半部30と共に使用される高温圧縮成形用に配置する。マット配置は手動であってもよく、又は、予想された適用において、必要とされる配置の時間を最小限にするために自動化されてもよい。圧縮成形では、鋳型の2つの半体を閉じて、湿潤したCFマット又はCFマットの湿式積層体の周りにほぼ閉じた容積を形成して、アセンブリを所望の部品形状に成形する。成形工具は、部品をベース樹脂の硬化温度に完全に加熱するために必要な時間を最小限に抑えるために、十分に高温に予熱される。
【0059】
鋳型は、CFマット(複数可)を介して樹脂の浸潤を強制するのに十分な静水圧を供給する。これは、正しい鋳型の形状を設計し、圧縮中に正しい圧力を加えることによって、当該技術分野において既知の方法によって達成することができる。このプロセスは、所望の形状を有する完全に硬化した又はほぼ完全に硬化した固体CFRP部分の形成をもたらし、樹脂は、完全にCFマット層を浸潤し、樹脂中に空隙がほとんどなく、部品34を生成する。目標用途では、プロセスはまた、後処理を最小限に抑えて商業自動車用途に適切な美的価値を有する最高度表面を得る。
【0060】
いくつかの用途では、鋳型半体30及び32は、CFRP部品のより良好な空隙制御のためにチャンバ内に真空を生成する封止及びポンプバルブを有する。
【0061】
図2に見られるように、最高度表面の分解図は、樹脂中の36などのCFRP粒子を含む。CFRP粒子は、ベースエポキシと反応することができる反応性基で官能化されるため、それらは、炭素繊維にも化学的に結合された、得られる熱硬化性ネットワークに共有結合することが期待される。この化学的に結合された濾過共有結合ネットワークの存在は、提案される樹脂を使用するときの機械的特性の増大に関与する。これらのCFRP粒子は、36に示されるように、樹脂全体に十分に分散していることを意図しており、場合によっては、CF表面に対する整列又は配向も示し得ることが意図される。この相対的な整列は望ましい場合があり、機械的特性の増大に寄与することができる。
【0062】
分注成形及び圧縮成形の2つのプロセスの組み合わせは、サイクル時間が3分未満で行われ得ることが予想される。鋳型内のより長い保持時間などの可能な修正は、このサイクル時間を増大させることができるが、より良好な実施部品にもつながり得る。提案される樹脂系はまた、同様の又はより長いサイクル時間を有し得る他のCFRP処理方法にも使用され得るが、他の特性において利点をもたらし得る。例えば、実施形態の強化樹脂はまた、乾燥繊維マットが所望の形状の鋳型内に配置され、樹脂分注が、例えば1つ以上の湯口を介して鋳型内で行われる、樹脂転写成形プロセスにおいて使用されてもよい。
【0063】
RTM(樹脂転写成形)の場合、樹脂転写時間は、サイクル時間に最大の影響を有し得る。樹脂転写時間とは、樹脂が鋳型の周囲に広がり、部品にわたって、マット(複数可)の隙間を通って広がるのに必要な時間を意味する。これは、樹脂粘度並びに部品サイズ及び形状に応じて、30~60分であってもよい。高圧RTMの方法はまた、当該技術分野において既知であり、1~10分間などのより短いサイクル時間をもたらし、湿式圧縮成形のための分注ステップで言及されているもの、及び当該技術分野において既知のものなどのより高い圧力分注システムを必要とし得る。提案された液体樹脂系はまた、プリプレグ型手法に使用することができ、ここでは、CFマット(複数可)の樹脂浸潤積層体のプリプレグが、高温で形成されて、プリプレグを所望の部品形状に成形する。
【0064】
プリプレグの場合、粒子を含有する強化樹脂系を、プリプレグの製造に使用する。これらの製造方法としては、液体樹脂のバットに繊維マットを浸漬すること、及び、必要な保持条件温度の後に繊維マットをバットから引き出す湿式延伸プロセスを含み得る。本方法は、樹脂浸潤のための保持時間、繊維マット上への樹脂体積上のスロットコーティング分注、最終硬化及び/又は凝固を伴わずに、CFマット又は引抜成形型プロセス上に樹脂をスプレー塗布することを含み得る。得られたプリプレグは、親エポキシの非硬化凝固プロセスに応じて、湿潤、半湿潤又は半固体であってもよい。プリプレグの場合又は平坦マットの例のいずれかにおいて、粒子を有する樹脂を分注して、本明細書では樹脂マットと呼ばれるマットにする。
【0065】
プリプレグ製造プロセスの選択は、強化樹脂系の実際の特性に応じて利点を有し得る。湿式延伸又は引抜成形型プロセスは、プリプレグ製造における一般的かつ確立されたプロセスであるが、分散充填剤の割合を考慮して樹脂組成物の上に厳格な制御を提供しない。しかしながら、これらのプロセスは、ほぼ任意の粘度の樹脂に作用し得る。樹脂のCFマット(複数可)へのスロットコーティング及びスプレータイプの塗布は、樹脂組成物のより良好な制御をもたらすが、粘度が制限され、非常に高い粘度の樹脂には機能しない可能性がある。
【0066】
製造プロセスとは無関係に、鋳型から取り出した後、部品は、鋳型内の硬化が不完全であった場合に部品の硬化を完了させるために有益であり得る追加の加熱に供されてもよい。これは、部分的に硬化された又は低温硬化した組成物と比較して、改善された特性を有するCFRP部品を提供する。離型後の更なる加熱は、成形温度よりも低い温度、同じ温度、又はより高い温度で行うことができる。後硬化時間は、材料及び目標の機械的性能に応じて、<1分~最大24時間の範囲であり得る。
【0067】
指定されるように、CFRP粒子強化樹脂の使用は、弾性率、引張強度、伸び、及び他の特性を含むCFRPの機械的特性を増大させる。改善は、同じ樹脂基材で作製されたCFRPと比較したときに少なくとも1%であり得るが、組み込まれた官能化リサイクルCFRP粒子を含まない。他の場合には、それは、少なくとも10%又は25%以上であり得る。他のFRP(ケブラー、ガラスなど)を樹脂充填剤として使用する他の実施形態では、最終的なFRP樹脂充填材の官能化度及び最終FRP部品におけるその充填度に応じて、最終的に得られるFRP機械的特性において同様の改善が期待され得る。
【0068】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは理解されるであろう。現在予想又は予測されてないそこでの様々な代替物、修正物、変形物、又は改善物は、その後に当業者によって行われてもよい。