(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250821BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 646
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
H01L21/304 645C
(21)【出願番号】P 2021030212
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西出 基
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀一
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-241390(JP,A)
【文献】特開2005-072559(JP,A)
【文献】特開2020-184590(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
基板の側方を把持するチャック状態と、前記基板を前記チャック状態から開放しつつ前記基板の下面を支持する支持状態とを切り替えることができる複数のチャックピンを有する基板把持機構を備え、前記複数のチャックピンの各々は、
前記チャック状態において前記基板の縁に接し、前記支持状態において前記基板から離れ、導電性材料からなる導電性部材と、
前記導電性部材に固定され、前記支持状態において前記基板の前記下面を支持し、前記導電性材料に比して低い導電性を有する非導電性材料からなる非導電性部材と、
を有し、前記基板処理装置はさらに、
前記支持状態にある前記基板把持機構によって支持された前記基板の上面へプラズマを照射するプラズマ源と、
前記チャック状態にある前記基板把持機構によって把持された前記基板の前記上面へ液を供給するノズルと、
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板
処理装置であって、
前記支持状態において、前記導電性部材の、前記基板よりも上方に位置する部分は、平面視において前記基板と重ならない、基板
処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板
処理装置であって、
前記支持状態において、前記非導電性部材は、平面視において前記基板の中心の外に配置される、基板
処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板
処理装置であって、
前記導電性材料は、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンのいずれかを含み、カーボンファイバーが分散されている、基板
処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の基板
処理装置であって、
前記非導電性材料は、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリクロロトリフルオロエチレンの少なくともいずれかを含む、基板
処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の基板
処理装置であって、
前記導電性材料は、1×10
6Ω・cmより小さい体積抵抗率を有している、基板
処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の基板
処理装置であって、
前記非導電性材料は、1×10
6Ω・cmより大きい体積抵抗率を有している、基板
処理装置。
【請求項8】
基板処理装置であって、
基板の側方を把持するチャック状態と、前記基板を前記チャック状態から開放した非チャック状態とを切り替えることができる複数のチャックピンを備え、前記複数のチャックピンは、
前記チャック状態において前記基板の縁に接し、前記非チャック状態において前記基板から離れ、導電性材料からなる導電性チャックピンと、
前記チャック状態において前記基板の前記縁に接し、前記非チャック状態において前記基板から離れ、前記導電性材料に比して低い導電性を有する非導電性材料からなる非導電性チャックピンと、
を含み、前記基板処理装置はさらに、
前記非導電性チャックピンにより前記チャック状態とされ、前記導電性チャックピンにより前記非チャック状態とされているときに、前記基板の上面へプラズマを照射するプラズマ源と、
前記導電性チャックピンにより前記チャック状態とされているときに、前記基板の前記上面へ液を供給するノズルと、
を備える、基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記導電性チャックピンは、
前記導電性チャックピンの前記チャック状態において前記基板の前記縁に接し、前記導電性チャックピンの前記非チャック状態において前記基板から離れ、導電性材料からなる第1の本体部を含み、
前記非導電性チャックピンは、
前記非導電性チャックピンの前記チャック状態において前記基板の前記縁に接し、前記非導電性チャックピンの前記非チャック状態において前記基板から離れ、非導電性材料からなる第2の本体部を含む、基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
前記導電性チャックピンは、前記第1の本体部の上面上に固定され、非導電性材料からなる第1の支持部を含み、
前記非導電性チャックピンは、前記第2の本体部の上面上に固定され、非導電性材料からなる第2の支持部を含み、
前記第1の支持部および前記第2の支持部は、前記導電性チャックピンおよび前記非導電性チャックピンの両方が前記非チャック状態とされたときに、前記基板の下面を支持する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2017-228582号公報(特許文献1)は基板処理装置を開示している。前記基板処理装置は、基板を水平に挟むことにより水平な姿勢で保持する複数のチャック部材と、前記チャック部材を支持する支持部材と、前記チャック部材を前記支持部材に締結する締結部材と、チャック開閉機構とを備える。前記チャック開閉機構は、前記複数のチャック部材が前記基板の外周部に押し付けられる閉状態と、前記基板に対する前記複数のチャック部材の押付が解除される開状態と、の間で前記複数のチャック部材を切り替える。前記複数のチャック部材の少なくとも一つは、導電性部材と、芯材と、通電部材とを含む。前記導電性部材は、前記基板の外周部に押し付けられる基板接触部を含み、導電性を有する。前記芯材は、前記導電性部材を支持しており、前記締結部材によって前記支持部材に締結される。前記通電部材は、前記芯材を通らずに前記基板接触部から前記締結部材に延びる接地経路の一部を形成しており、前記接地経路を介して前記基板を接地する。
【0003】
上記構成によれば、チャック部材の芯材が締結部材によって支持部材に締結されており、チャック部材の導電性部材が芯材に支持されている。チャック開閉機構が複数のチャック部材を閉状態に切り替えると、導電性部材の基板接触部が基板の外周部に押し付けられ、基板が水平な姿勢で保持される。このとき、基板は、基板接触部から締結部材に延びる接地経路を介して接地される。これにより、基板の帯電を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載の技術によれば、基板処理装置による基板処理において、基板が接地されていることによって、基板の帯電を防止することができる。これにより、帯電に起因した放電が基板へダメージを与えることが防止される。この効果は、特に、基板処理が液処理(基板上へ液を付与する処理)の場合に有用である。
【0006】
しかしながら、基板処理の種類によっては、基板が接地されていることが好ましくないことがある。特に、基板処理がプラズマ処理(基板上へプラズマを照射する処理)の場合、基板が接地されていると、高電圧を有するプラズマ源から基板へ放電が生じやすく、その結果、基板へダメージが与えられることがある。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その一の目的は、基板処理において接地状態と非接地状態とを選択することができ、かつ、プラズマ処理においては基板を非接地状態とすることができる、基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基板把持機構は、基板の側方を把持するチャック状態と、前記基板を前記チャック状態から開放しつつ前記基板の下面を支持する支持状態とを切り替えることができる複数のチャックピンを備える。前記複数のチャックピンの各々は、前記チャック状態において前記基板の前記縁に接し、前記支持状態において前記基板から離れ、導電性材料からなる導電性部材と、前記導電性部材に固定され、前記支持状態において前記基板の前記下面を支持し、前記導電性材料に比して低い導電性を有する非導電性材料からなる非導電性部材と、を備える。
【0009】
第2態様は、第1態様の基板把持機構であって、前記支持状態において、前記導電性部材の、前記基板よりも上方に位置する部分は、平面視において前記基板と重ならない。
【0010】
第3態様は、第1または第2態様の基板把持機構であって、前記支持状態において、前記非導電性部材は、平面視において前記基板の中心の外に配置される。
【0011】
第4態様は、第1から第3態様のいずれかの基板把持機構であって、前記導電性材料は、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンのいずれかを含み、カーボンファイバーが分散されている。
【0012】
第5態様は、第1から第4態様のいずれかの基板把持機構であって、前記非導電性材料は、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリクロロトリフルオロエチレンの少なくともいずれかを含む。
【0013】
第6態様は、第1から5態様のいずれかの基板把持機構であって、前記導電性材料は、1×106Ω・cmより小さい体積抵抗率を有している。
【0014】
第7態様は、第1から第6態様のいずれかの基板把持機構であって、前記非導電性材料は、1×106Ω・cmより大きい体積抵抗率を有している。
【0015】
第8態様は、基板処理装置であって、第1から第7態様のいずれかの基板把持機構と、前記支持状態にある前記基板把持機構によって支持された前記基板の上面へプラズマを照射するプラズマ源と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
上記各態様によれば、基板について接地状態と非接地状態とを切り替えることができる。特に第2態様によれば、支持状態にある基板把持機構によって支持された基板の上面への基板処理が行われる際に、導電性部材が基板処理の妨げとなることが避けられる。特に第8態様によれば、基板処理において接地状態と非接地状態とを選択することができ、かつ、プラズマ処理においては基板を非接地状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態にかかる基板処理システムの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1における制御部の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図1における処理ユニット(基板処理装置)の構成の一例を基板と共に概略的に示す断面図である。
【
図4】
図3における基板把持機構の構成を、チャック状態にある基板と共に概略的に示す断面図である。
【
図5】
図3における基板把持機構の構成を、支持状態にある基板と共に概略的に示す断面図である。
【
図6】実施の形態にかかる基板処理方法の一例を示すフロー図である。
【
図7】
図6における、液膜を形成する工程を概略的に示す断面図である。
【
図8】
図7における基板把持機構の近傍の拡大図である。
【
図9】
図6における、プラズマを照射する工程を概略的に示す断面図である。
【
図10】
図9における基板把持機構の近傍の拡大図である。
【
図11】変形例における基板把持機構を、接地状態とされている基板と共に概略的に示す上面図である。
【
図12】
図11の基板把持機構が有する導電性チャックピンの構成を、液膜が形成された基板と共に概略的に示す断面図である。
【
図13】
図11の基板把持機構が有する非導電性チャックピンの構成を、液膜が形成された基板と共に概略的に示す断面図である。
【
図14】変形例における基板把持機構を、非接地状態とされている基板と共に概略的に示す上面図である。
【
図15】
図14の基板把持機構が有する非導電性チャックピンの構成を、液膜が形成された基板と共に概略的に示す断面図である。
【
図16】
図14の基板把持機構が有する導電性チャックピンの構成を、液膜が形成された基板と共に概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0019】
<基板処理システム100の全体構成>
図1は、実施の形態にかかる基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理システム100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0020】
基板Wは例えば半導体基板であり、円板形状を有する。なお、基板Wには、半導体基板の他、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板および光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。また基板の形状も円板形状に限らず、例えば矩形の板状形状など種々の形状を採用できる。
【0021】
基板処理システム100はロードポート101とインデクサロボット110と主搬送ロボット120と複数の処理ユニット130と制御部90とを含む。
【0022】
複数のロードポート101は水平な一方向に沿って並んで配置される。各ロードポート101は、基板Wを基板処理システム100に搬出入するためのインターフェース部である。各ロードポート101には、複数の基板Wを収納したキャリアCが外部から搬入される。各ロードポート101は、搬入されたキャリアCを保持する。キャリアCとしては、例えば、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、または、基板Wを外気にさらすOC(Open Cassette)が採用される。
【0023】
インデクサロボット110は、各ロードポート101に保持されたキャリアCと、主搬送ロボット120との間で基板Wを搬送する搬送ロボットである。インデクサロボット110はロードポート101が並ぶ方向に沿って移動可能であり、各キャリアCと対面する位置で停止可能である。インデクサロボット110は、各キャリアCから基板Wを取り出す動作と、各キャリアCに基板Wを受け渡す動作とを行うことができる。
【0024】
主搬送ロボット120は、インデクサロボット110と各処理ユニット130との間で基板Wを搬送する搬送ロボットである。主搬送ロボット120はインデクサロボット110から基板Wを受け取る動作と、インデクサロボット110に基板Wを受け渡す動作とを行うことができる。また、主搬送ロボット120は各処理ユニット130に基板Wを搬入する動作と、各処理ユニット130から基板Wを搬出する動作とを行うことができる。
【0025】
基板処理システム100には、例えば12個の処理ユニット130が配置される。具体的には、鉛直方向に積層された3個の処理ユニット130を含むタワーの4つが、主搬送ロボット120の周囲を取り囲むようにして設けられる。
図1では、3段に重ねられた処理ユニット130の1つが概略的に示されている。なお、基板処理システム100における処理ユニット130の数は、12個に限定されるものではなく、適宜に変更されてもよい。
【0026】
主搬送ロボット120は、4つのタワーによって囲まれるように設けられている。主搬送ロボット120は、インデクサロボット110から受け取る未処理の基板Wを各処理ユニット130内に搬入する。各処理ユニット130は基板Wを処理する。また、主搬送ロボット120は、各処理ユニット130から処理済みの基板Wを搬出してインデクサロボット110に渡す。
【0027】
制御部90は、基板処理システム100の各構成要素の動作を制御する。
図2は、制御部90の構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶媒体92を有している。
図2の具体例では、データ処理部91と記憶媒体92とはバス93を介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体92は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)921および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶媒体921には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部90がプログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90の機能の一部または全部がハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0028】
制御部90は主制御部と複数のローカル制御部とを有していてもよい。主制御部は基板処理システム100の全体を統括し、ローカル制御部は処理ユニット130ごとに設けられる。ローカル制御部は主制御部と通信可能に設けられ、主制御部からの指示に基づいて処理ユニット130内の各種構成(後述)を制御する。主制御部およびローカル制御部の各々は、
図2と同様に、データ処理部91および記憶媒体92を有していてもよい。
【0029】
<処理ユニット130(基板処理装置)>
図3は、
図1における処理ユニット130(基板処理装置)の構成の一例を基板Wと共に概略的に示す断面図である。なお、基板処理システム100(
図1)に属する全ての処理ユニット130が
図3に示された構成を有している必要はなく、少なくとも一つの処理ユニット130が当該構成を有していればよい。
【0030】
図3に例示される処理ユニット130は、プラズマ処理を基板Wに対して行う装置である。プラズマ処理は、例えば有機物除去処理である。有機物除去処理とは、基板Wの主面に形成された有機物を除去する処理である。有機物がレジストである場合、有機物除去処理はレジスト除去処理である。以下では、プラズマ処理の例として、レジスト除去処理について詳述する。基板Wは、例えば、半導体基板であり、円板形状を有する。基板Wのサイズは特に制限されないものの、その直径は例えば約300mmである。
【0031】
処理ユニット130は、基板保持部2と、ノズル3と、プラズマ源6と、移動機構51,52と、を含む。
図3に例示されるように、処理ユニット130はチャンバ1を含んでいてもよい。チャンバ1は箱形の形状を有しており、その内部空間において基板Wに対する処理が行われる。チャンバ1の内部空間には、基板保持部2、ノズル3、プラズマ源6および移動機構51,52が設けられる。
【0032】
<基板保持部2>
基板保持部2はチャンバ1内に設けられており、基板Wを水平姿勢で保持する。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。
図3の例では、基板保持部2はステージ21と基板把持機構200とを含む。ステージ21は円板形状を有し、基板Wよりも鉛直下方に設けられる。ステージ21は、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。
【0033】
図4および
図5の各々は、基板把持機構200の構成を基板Wと共に概略的に示す断面図である。基板把持機構200は複数のチャックピン210を含む。チャックピン210はステージ21(
図3)の上面に立設されている。複数のチャックピン210は、基板Wの側方を把持するチャック状態(
図4)と、基板Wをチャック状態から開放しつつ基板Wの下面を支持する支持状態(
図5)とを、基板Wに対して相対的に変位することによって切り替えることができる。この変位は、変位機構215によって行われる。変位機構215はモータを含んでよく、その場合、モータの駆動力によって複数のチャックピン210を変位させてよい。あるいは、変位機構215は、各チャックピン210に連結された第1固定磁石と、当該第1固定磁石に対して相対的に移動する第2可動磁石とを含んでよく、その場合、第2可動磁石の位置によって複数のチャックピン210を変位させてよい。
【0034】
チャック状態(
図4)においては、複数のチャックピン210が基板Wの周縁に押し付けられることによって、基板Wがチャックピン210に固定される。支持状態(
図5)においては、複数のチャックピン210から基板Wの周縁が離れ、代わって、複数のチャックピン210上に基板Wが支持される。チャック状態とは異なり支持状態においては、基板Wは、チャックピン210に分離不能には固定されておらず、単にチャックピン210上に載せられている。よって支持状態は、非チャック状態、すなわち解放状態、である。よって、基板把持機構200へ基板Wが搬入されるとき、および、基板把持機構200から基板Wが搬出されるときは、複数のチャックピン210は非チャック状態とされる。
【0035】
複数のチャックピン210の各々は、導電性材料からなる導電性部材211と、導電性材料に比して低い導電性を有する非導電性材料からなる非導電性部材212と、を含む。非導電性部材212は、導電性部材211に固定されており、図示された例においては導電性部材211の上面上に固定されている。導電性部材211と非導電性部材212とによって、チャックピン210としての、一体の部材が構成されている。
【0036】
導電性材料は、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンのいずれかを含んでよく、カーボンファイバーが分散されていてよい。非導電性材料は、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンであってよい。導電性材料は、1×106Ω・cmより小さい体積抵抗率を有していることが好ましい。非導電性材料は、1×106Ω・cmより大きい体積抵抗率を有していることが好ましい。
【0037】
導電性部材211は、チャック状態(
図4)において基板Wの縁に接し、支持状態(
図5)において基板Wから離れる。非導電性部材212は、チャック状態(
図4)において基板Wから離れ、支持状態(
図5)において基板Wの下面を支持する。よって、チャック状態においては基板Wが導電性部材211を介して接地状態とされ、支持状態においては基板Wが非接地状態(フローティング状態)とされる。非導電性部材212が有する、基板Wを支持する面は、
図5に示されているように、平坦面であってよい。支持状態において、導電性部材211の、基板Wよりも上方に位置する部分は、平面視において基板Wの外に配置されていることが好ましい。支持状態において、非導電性部材212は、平面視において基板Wの中心の外に配置されていることが好ましい。
【0038】
図3の例では、基板保持部2は回転機構23をさらに含んでおり、回転軸線Q1のまわりで基板Wを回転させる。回転に起因して基板Wが基板把持機構200から外れることを避けるためには、複数のチャックピン210はチャック状態(
図4)とされる。ただし、十分に低い回転速度であれば、支持状態(
図5)においても基板Wの回転は可能である。回転軸線Q1は基板Wの中心部を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。例えば回転機構23はシャフト24およびモータ25を含む。シャフト24の上端はステージ21の下面に連結され、ステージ21の下面から回転軸線Q1に沿って延在する。モータ25はシャフト24を回転軸線Q1のまわりで回転させて、ステージ21および複数のチャックピン210を一体に回転させる。これにより、複数のチャックピン210によって保持された基板Wが回転軸線Q1のまわりで回転する。このような基板保持部2はスピンチャックとも呼ばれ得る。以下では、回転軸線Q1についての径方向および周方向を、それぞれ単に径方向および周方向と呼ぶ。
【0039】
<ノズル3>
ノズル3はチャンバ1内に設けられ、基板Wの主面への処理液の供給に用いられる。ノズル3は供給管31を介して処理液供給源34に接続される。つまり、供給管31の下流端がノズル3に接続され、供給管31の上流端が処理液供給源34に接続される。処理液供給源34は、例えば、処理液を貯留するタンク(不図示)を含み、供給管31に処理液を供給する。ここで、処理液としては硫酸が想定されるが、例えば、硫酸塩、ペルオキソ硫酸およびペルオキソ硫酸塩の少なくともいずれかを含む液、または、過酸化水素を含む液などの薬液であってもよい。
【0040】
図3の例では、供給管31には、バルブ32および流量調整部33が介装されている。バルブ32が開くことにより、処理液供給源34からの処理液が供給管31を通じてノズル3に供給され、ノズル3の吐出口3aから吐出される。吐出口3aは例えばノズル3の下端面に形成される。流量調整部33は、供給管31を流れる処理液の流量を調整する。流量調整部33は例えばマスフローコントローラである。
【0041】
図3の例では、ノズル3は移動機構51によって移動可能に設けられる。移動機構51は、ノズル3をノズル処理位置とノズル待機位置との間で移動させる。ノズル処理位置とは、ノズル3が基板Wの主面(ここでは上面)に向けて処理液を吐出する位置である。ノズル処理位置は、例えば、基板Wよりも鉛直上方であって、基板Wの中心部と鉛直方向において対向する位置である(後述の
図7も参照)。ノズル待機位置とは、ノズル3が基板Wの主面に向けて処理液を吐出しない位置であり、ノズル処理位置よりも基板Wから離れた位置である。ノズル待機位置は、基板Wの搬出入時において、ノズル3が主搬送ロボット120および基板Wと干渉しない位置でもある。具体的な一例として、ノズル待機位置は、基板Wの周縁よりも径方向外側の位置である。
図3の例では、ノズル待機位置で停止するノズル3が示されている。
【0042】
移動機構51は、例えば、ボールねじ機構またはアーム旋回機構を有する。アーム旋回機構は、いずれも不図示のアームと支持柱とモータとを含む。アームは水平に延在する棒状形状を有し、アームの先端にはノズル3が連結され、アームの基端が支持柱に連結される。支持柱は鉛直方向に沿って延びており、その中心軸のまわりで回転可能に設けられる。モータが支持柱を回転させることにより、アームが旋回し、ノズル3が中心軸のまわりで周方向に沿って移動する。このノズル3の移動経路上にノズル処理位置とノズル待機位置とが位置するように、支持柱が設けられる。
【0043】
ノズル3がノズル処理位置に位置する状態(図
7参照)において、基板保持部2が基板Wを回転させながらバルブ32が開くと、ノズル3から基板Wの上面に向かって処理液が吐出される。処理液は基板Wの上面に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面を広がって基板Wの周縁から外側に飛散する。これにより、基板Wの上面には処理液の液膜F(
図7参照)が形成される。基板Wの上面に処理液の液膜Fが形成されると、バルブ32が閉じ、移動機構51がノズル3をノズル待機位置へと移動させる。
【0044】
<ガード5>
処理ユニット130には、基板Wの周縁から飛散する処理液を受け止めるガード5が設けられている。ガード5は、基板保持部2によって保持された基板Wを取り囲む筒状の形状を有している。基板Wの周縁から飛散した処理液はガード5の内周面にあたり、内周面に沿って鉛直下方に流れる。処理液は、例えば、不図示の回収配管を流れて処理液供給源34のタンクに回収される。これによれば、処理液を再利用することができる。
【0045】
なお、
図3では図示省略しているものの、処理ユニット130は、複数種類の処理液を基板Wに供給する構成を有していてもよい。例えば、ノズル3は複数の処理液供給源に接続されていてもよい。あるいは、処理ユニット130はノズル3とは別のノズルを含んでいてもよい。当該別のノズルは処理液供給源34とは別の処理液供給源に接続される。複数種類の処理液としては、例えば硫酸等の薬液の他、純水、オゾン水、炭酸水、および、イソプロピルアルコール等のリンス液を採用できる。ここでは、ノズル3が複数の処理液供給源に接続されており、複数種類の処理液を基板Wに個別に供給可能であるものとする。
【0046】
<プラズマ源6>
プラズマ源6(プラズマリアクタ)は、基板Wの上面へプラズマを照射するために、プラズマを発生させる装置である。具体的には、プラズマ源6は、支持状態(
図5)にある基板把持機構200によって支持された基板Wの上面へプラズマを照射する(
図9参照)。
【0047】
プラズマ源6はチャンバ1内において、基板保持部2によって保持された基板Wの主面(例えば上面)と鉛直方向において対向する位置に設けられる。プラズマ源6は電源8に電気的に接続されており、電源8からの電力を受け取って周囲のガスをプラズマ化させる。なお、ここでは一例として、プラズマ源6は大気圧下でプラズマを発生させる。ここでいう大気圧とは、例えば、標準気圧の80%以上、かつ、標準気圧の120%以下である。
【0048】
プラズマ源6には、プラズマ用の電源8によって電圧が印加される。電源8は例えばインバータ回路等のスイッチング電源回路を有しており、スイッチング電源回路がプラズマ用の電圧を出力する。より具体的な一例として、電源8はプラズマ用の電圧として高周波電圧を出力する。例えば、数十kVかつ数十kHzの高周波電圧が用いられる。
【0049】
処理ユニット130には遮断部材7が設けられてもよい。遮断部材7は板状形状を有しており、プラズマ源6よりも鉛直上方において、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。遮断部材7は例えば平面視において円形状を有する。遮断部材7はプラズマ源6よりも広くてもよい。つまり、遮断部材7の側面はプラズマ源6よりも径方向外側に位置していてもよい。
【0050】
移動機構52はプラズマ源6を鉛直方向に沿って基板保持部2に対して相対的に移動させる。移動機構52は昇降機構であるともいえる。ここでは一例として、移動機構52はプラズマ源6および遮断部材7を一体に移動させる。言い換えれば、プラズマ源6は遮断部材7に固定される。例えばプラズマ源6は不図示の連結部材によって遮断部材7に固定される。移動機構52がプラズマ源6および遮断部材7を一体に移動させる場合には、プラズマ源6および遮断部材7を互いに独立に移動させる2つの移動部材が設けられる場合に比べて、処理ユニット130の構成を簡易にでき、製造コストを低減させることができる。
【0051】
以下では、プラズマ源6および遮断部材7の位置を、代表的にプラズマ源6の位置で説明する。移動機構52は、プラズマ源6をプラズマ処理位置とプラズマ待機位置との間で往復移動させる。
【0052】
プラズマ処理位置とは、プラズマ源6によるプラズマを用いて基板Wを処理するときの位置である。プラズマ待機位置とは、プラズマを用いた処理を基板Wに対して行わないときの位置であり、プラズマ処理位置よりも基板Wから離れた位置である。プラズマ待機位置は、基板Wの搬出入時において、プラズマ源6が主搬送ロボット120および基板Wと干渉しない位置でもある。具体的な一例として、プラズマ待機位置はプラズマ処理位置よりも鉛直上方の位置である。
図3の例では、プラズマ待機位置で停止するプラズマ源6が示されている。移動機構52は、例えば、ボールねじ機構またはエアシリンダなどの移動機構を有する。
【0053】
プラズマ源6は、例えば、ノズル3がノズル待機位置に退避した状態で、プラズマ待機位置からプラズマ処理位置へと移動することができる。例えば、ノズル処理位置でのノズル3からの処理液の吐出によって基板Wの上面に処理液の液膜F(
図7参照)が形成されると、バルブ32が閉じたうえで、移動機構51がノズル3をノズル処理位置からノズル待機位置に移動させる。その後、移動機構52がプラズマ源6をプラズマ待機位置からプラズマ処理位置へと移動させる(
図9参照)。これによれば、基板Wの直上にはノズル3が存在しないので、プラズマ源6を基板Wの上面により近づけることができる。言い換えれば、プラズマ処理位置をより基板Wの近くに設定することができる。
【0054】
そして、プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置する状態において、電源8がプラズマ源6に電圧を出力する。これにより、プラズマ源6は周囲のガスをプラズマ化させる。このプラズマの発生に伴って種々の活性種が生じる。例えば、空気がプラズマ化することにより、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカルおよびオゾンガス等の種々の活性種が生じ得る。これらの活性種は基板Wの上面の処理液(ここでは硫酸)の液膜Fに作用する。逆に言えば、プラズマ処理位置は、活性種が基板W上の液膜Fに作用できる程度の位置に設定される。活性種が処理液に作用することにより、処理液の処理性能が高まる。具体的には、活性種と硫酸との反応により、処理性能(ここでは酸化力)の高いカロ酸が生成される。カロ酸はペルオキソ一硫酸とも呼ばれる。当該カロ酸が基板Wのレジストに作用することで、レジストを酸化除去することができる。
【0055】
<ガス供給部10>
ガス供給部10は、基板保持部2によって保持された基板Wとプラズマ源6との間に処理ガスを供給する。処理ガスは、プラズマが処理ガスに作用することにより活性種を生成するガスであり、例えば、酸素を含む酸素含有ガスである。酸素含有ガスは、例えば、酸素ガス、オゾンガス、二酸化炭素ガス、空気、または、これらの少なくとも二つの混合ガスを含む。ガス供給部10は、さらにキャリアガスも供給してもよい。キャリアガスは、アルゴンガス等の希ガスおよび窒素ガスの少なくともいずれかを含む。
【0056】
ガス供給部10はガスを吐出する給気口11aを有しており、
図3の例では、給気口11aは、プラズマ源6と基板Wとの間の空間に対して、径方向外側に位置している。
図3の例では、複数の給気口11aが設けられている。複数の給気口11aは例えばプラズマ源6と基板Wとの間の空間に対して径方向外側において、周方向で等間隔に設けられる。
【0057】
給気口11aは給気管11の下流端に形成されており、給気管11の上流端はガス供給源14に接続される。
図3の例では、給気管11は複数の分岐管111と共通管112とを含む。各分岐管111の下流端が給気口11aに相当し、各分岐管111の上流端は共通して共通管112の下流端に接続される。共通管112の上流端はガス供給源14に接続される。ガス供給源14は処理ガスを給気管11の上流端(具体的には共通管112の上流端)に供給する。給気管11(より具体的には共通管112)にはバルブ12および流量調整部13が介装されている。バルブ12が開くことにより、ガス供給源14からの処理ガスが給気管11を流れて各給気口11aから流出する。流量調整部13は、給気管11を流れる処理ガスの流量を調整する。流量調整部13は例えばマスフローコントローラである。
【0058】
図3の例では、給気管11は遮断部材7に取り付けられている。
図3の例では、遮断部材7はカバー部71と垂下部72とを含む。カバー部71はプラズマ源6よりも鉛直上方に設けられている。カバー部71は例えば円板形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。カバー部71の側面はプラズマ源6よりも径方向外側に位置している。垂下部72はカバー部71の周縁から鉛直下方に延在し、その先端部がプラズマ源6よりも鉛直下方に位置する。
図3の例では、給気管11の下流部分は遮断部材7の垂下部72の先端部を径方向に貫通する。給気口11aは例えば垂下部72の内側面に形成される。
【0059】
垂下部72はカバー部71の周縁の全周に立設されていてもよく、あるいは、給気口11aを形成する周方向部分のみに設けられていてもよい。後者の場合、複数の垂下部72が周方向において間隔を空けて設けられる。
【0060】
プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置する状態で、ガス供給部10が処理ガスをプラズマ源6と基板Wとの間の処理空間に供給することにより、処理空間において、酸素ラジカル等の活性種を効果的に発生させることができる。また、この処理ガスの流量が大きいほど、酸素ラジカル等の活性種の発生量を増加させることができる。
【0061】
<ガス供給部10の変形例>
ガスがプラズマ源6を鉛直方向に通過することができる場合、プラズマ源6よりも鉛直上方において、プラズマ源6と鉛直方向に対向する位置に、ガス供給部10の給気口11aが配置されてもよい。例えば給気口11aは遮断部材7のカバー部71の下面に配置されていてもよい。なお、ガス供給部10の構成は、前述した実施の形態および本変形例に限定されるものではなく、任意である。
【0062】
<処理ユニットの動作例>
図6は、実施の形態にかかる、処理ユニット130による基板処理方法の一例を示すフロー図である。まず、基板保持部2が基板Wを保持する(ステップST10:保持工程)。具体的には、主搬送ロボット120(
図1)が未処理の基板Wを処理ユニット130に搬入する。基板保持部2は、非チャック状態(開放状態)で基板Wを受け入れる。ここでは、基板Wの上面にレジストが形成されている。
【0063】
次に、基板Wの上面に処理液の液膜Fを形成する(ステップST20:液膜形成工程)。
図7は、液膜形成工程における処理ユニット130の様子の一例を概略的に示す図である。
図8は、
図7における基板把持機構200の近傍の拡大図である。
図8に示すように、液膜形成工程においては、チャックピン210がチャック状態とされる。よって、基板W上に処理液が供給される際に、基板Wは接地状態とされる。
【0064】
液膜形成工程においては、まず、移動機構51がノズル3をノズル待機位置からノズル処理位置に移動させる。ここでは、ノズル処理位置は基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置である。そして、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1まわりで回転させ、バルブ32が開く。バルブ32が開くと、ノズル3から処理液が基板Wの上面の中心部に向けて吐出される。処理液は基板Wの上面の中央部に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面を広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。これにより、基板Wの上面に処理液の液膜Fが形成される。
【0065】
基板W上に液膜Fが形成されると、バルブ32が閉じて、処理液の供給が停止する。液膜Fの形成後には、基板保持部2は基板Wの回転を停止させてもよく、あるいは、基板Wの回転を継続してもよい。基板Wの回転を継続する場合、基板保持部2は液膜形成工程における回転速度より低い回転速度で基板Wを回転させるとよい。これにより、基板Wの周縁から流れ落ちる処理液の量を低減させることができ、液膜Fをより確実に維持することができる。言い換えれば、基板保持部2は液膜Fを維持できる程度の回転速度で基板Wを回転させればよい。より具体的には、基板保持部2は基板Wの周縁から処理液が流れ落ちない程度の回転速度で基板Wを回転させてもよい。このように処理液の供給を停止しつつ基板Wの上面に液膜Fを維持する処理は、パドル処理とも呼ばれる。液膜Fが形成された後、移動機構51はノズル3をノズル待機位置に移動させる。
【0066】
次に、移動機構52はプラズマ源6をプラズマ処理位置に移動させる。そしてプラズマ源6が基板Wの上面へプラズマを照射する(ステップST30:プラズマ工程)。
図9は、プラズマ工程における処理ユニット130の様子の一例を概略的に示す図である。プラズマ工程において、電源8はプラズマ源6に電力を供給する。これにより、プラズマ源6の周囲のガスがプラズマ化する。このプラズマ化に伴って種々の活性種が生成される。例えば、空気がプラズマ化することにより、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカルおよびオゾンガス等の種々の活性種が生じ得る。
【0067】
図10は、プラズマ工程における基板把持機構200の近傍の拡大図である。
図10に示すように、プラズマ工程においては、チャックピン210が支持状態とされる。よって、プラズマ源6から基板Wの上面へプラズマPLが照射される際に、基板Wは非接地状態とされる。
【0068】
プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置する状態でプラズマ源6が周囲のガスをプラズマ化させることにより、活性種が基板Wの上面の液膜Fに作用する。具体的には、プラズマ源6と基板Wとの間で生じた活性種が液膜Fに作用する。これにより、処理液の処理性能が高まる。具体的な一例として、活性種と硫酸との反応により、処理性能(ここでは酸化力)の高いカロ酸が生成される。当該カロ酸が基板Wのレジストに作用することで、レジストを速やかに酸化除去することができる。
【0069】
上述の例では、プラズマ源6は平面視において広い範囲でプラズマを発生させることができるので、基板Wの上面に対して広い範囲で活性種を供給することができる。したがって、基板Wの上面のレジストをより均一に除去することができる。プラズマ源6は平面視において、基板Wの上面と同程度、もしくは、基板Wの上面よりも広い範囲でプラズマを発生させるとよい。
【0070】
基板Wの上面のレジストが十分に除去されると、移動機構52はプラズマ源6および遮断部材7をプラズマ処理位置からプラズマ待機位置へ一体に移動させ、また、電源8がプラズマ源6への電力供給を停止する。
【0071】
次に、処理ユニット130は基板Wの上面に対するリンス処理を行う(ステップST40:リンス工程)。具体的には、処理ユニット130はリンス液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面の処理液をリンス液に置換する。リンス工程においては、チャックピン210がチャック状態とされる。よって、基板W上にリンス液が供給される際に、基板Wは接地状態とされる。
【0072】
次に、処理ユニット130は基板Wに対する乾燥処理を行う(ステップST50:乾燥工程)。例えば基板保持部2が液膜形成工程よりも高い回転速度で基板Wを回転させることにより、基板Wを乾燥させる(いわゆるスピンドライ)。乾燥工程においては、チャックピン210がチャック状態とされる。次に、チャックピン210が支持状態(すなわち解放状態)とされた後、主搬送ロボット120(
図1)が処理済みの基板Wを処理ユニット130から搬出する。
【0073】
以後、未処理の基板Wが順次に処理ユニット130に搬入され、その都度、ステップST10~ST50(
図6)が行われる。
【0074】
<効果>
本実施の形態の基板把持機構200によれば、基板Wについて接地状態と非接地状態とを切り替えることができる。本実施の形態の処理ユニット130によれば、基板処理において接地状態と非接地状態とを選択することができ、かつ、プラズマ処理においては基板Wを非接地状態とすることができる。好ましくは、支持状態において、導電性部材211の、基板Wよりも上方に位置する部分は、平面視において基板Wと重ならない。これにより、支持状態にある基板把持機構200によって支持された基板Wの上面への基板処理、特にプラズマ処理、が行われる際に、導電性部材211が基板処理の妨げとなることが避けられる。
【0075】
<基板把持機構の変形例>
図11は、基板把持機構200(
図3)の変形例の構成を示す上面図である。変形例の基板把持機構は、複数の導電性チャックピン1210と、複数の非導電性チャックピン2210とを有している。
図12および
図13のそれぞれは、
図11における導電性チャックピン1210および非導電性チャックピン2210の様子を示す断面図である。
図11においては、複数の導電性チャックピン1210がチャック状態とされており、これにより基板Wは接地状態とされる。この状態を、前述した本実施の形態におけるチャック状態の代わりに用いることができる。
【0076】
なお、接地状態において、非導電性チャックピン2210は、
図11および
図13に示されているように非チャック状態とされていてよく、あるいはチャック状態とされていてもよい。
【0077】
導電性チャックピン1210は、基板Wをチャックする際に基板Wに接触する部分であって導電性材料からなる本体部1211と、導電性チャックピン1210および非導電性チャックピン2210の両方が非チャック状態とされたときに基板Wを支持する支持部1212と、を含んでよい。支持部1212は、本体部1211に固定されており、図示された例においては本体部1211の上面上に固定されている。本体部1211と支持部1212とによって、導電性チャックピン1210としての、一体の部材が構成されている。なお支持部1212の材料は任意であり、導電性材料および非導電性材料のいずれかであってよい。
【0078】
非導電性チャックピン2210は、基板Wをチャックする際に基板Wに接触する部分であって非導電性材料からなる本体部2211と、導電性チャックピン1210および非導電性チャックピン2210の両方が非チャック状態とされたときに基板Wを支持する支持部2212と、を含んでよい。支持部2212は、本体部2211に固定されており、図示された例においては本体部2211の上面上に固定されている。本体部2211と支持部2212とによって、非導電性チャックピン2210としての、一体の部材が構成されている。なお支持部2212の材料は任意であり、導電性材料および非導電性材料のいずれかであってよい。
【0079】
図14は、本変形例の基板把持機構が、前述した接地状態から非接地状態へ切り替えられた様子を示す上面図である。
図15および
図16のそれぞれは、
図14における非導電性チャックピン2210および導電性チャックピン1210の様子を示す断面図である。
図14においては、複数の非導電性チャックピン2210がチャック状態とされており、かつ、すべての導電性チャックピン1210が非チャック状態とされている。これにより基板Wは非接地状態とされる。この非接地状態を用いることによって、プラズマPLによる基板処理をフローティング状態で行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
6 :プラズマ源
130 :処理ユニット(基板処理装置)
200 :基板把持機構
210 :チャックピン
211 :導電性部材
212 :非導電性部材
215 :変位機構
W :基板