(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】導波路構造を有するレーダセンサ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20250821BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20250821BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
G01S7/03 210
H01P3/12 100
H01P3/12
H01Q23/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021120223
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2024-07-19
(31)【優先権主張番号】10 2020 209 307.5
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・クーグラー
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ヒンメルシュトス
(72)【発明者】
【氏名】コリンヌ・グレベン
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・ツァンダー
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・メンツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ジルバー
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0026567(US,A1)
【文献】特開2013-258783(JP,A)
【文献】国際公開第2019/166064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01P 3/12
H01Q 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)上に配置された高周波部品(14)と、
結合構造(36;36’’)を介して前記高周波部品(14)と結合された導波路構造(22;22’’)とを備え、
前記導波路構造(22;22’’)は、前記基板(10)のうち前記高周波部品(14)を支持する部分の上に成形された成形体(20;20’、20’’)内に形成されて
おり、
前記高周波部品(14)は、前記成形体(20)の材料でオーバモールドされている
ことを特徴とするレーダセンサ。
【請求項2】
前記基板(10)は、プラグ接続部(18)を除いて全体的に前記成形体(20)によってオーバモールドされている、請求項
1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
基板(10)上に配置された高周波部品(14)と、
結合構造(36;36’’)を介して前記高周波部品(14)と結合された導波路構造(22;22’’)とを備え、
前記導波路構造(22;22’’)は、前記基板(10)のうち前記高周波部品(14)を支持する部分の上に成形された成形体(20;20’、20’’)内に形成されており、
前記高周波部品(14)は、前記高周波部品のパッケージ(54)を構成する材料でオーバモールドされ、かつ前記パッケージ(54)も前記成形体(20)の材料でオーバモールドされている
、レーダセンサ。
【請求項4】
前記成形体(20’)が導電性材料から成る、請求項1から
3のいずれか一項に記載のレーダセンサ。
【請求項5】
基板(10)上に配置された高周波部品(14)と、
結合構造(36;36’’)を介して前記高周波部品(14)と結合された導波路構造(22;22’’)とを備え、
前記導波路構造(22;22’’)は、前記基板(10)のうち前記高周波部品(14)を支持する部分の上に成形された成形体(20;20’、20’’)内に形成されており、
前記導波路構造(22;22’’)は、前記成形体(20;20’’)の外面(24;24’’)に向けて開口する中空空間(26)を有し、前記中空空間(26)の内壁は金属被膜(28)を有し、前記中空空間は、前記外面(24;24’’)を被覆するカバー(30;
30’;30’’)によって閉じられ、前記カバー(30;
30’;30’’)は、少なくとも前記成形体(20;20’’)に面した側で金属層を有している
、レーダセンサ。
【請求項6】
前記成形体(20’’)の前記外面(24’’)は、互いに非平行の部分面(24a、24b)を有し、前記部分面(24a、24b)は、アンダーカットのないレリーフを形成し、前記カバー(30’’)は、一体的に形成された成形部材を備えており、前記成形部材が、前記外面(24’’)に対して相補的な金属表面を有している、請求項
5に記載のレーダセンサ。
【請求項7】
前記カバー(30’)はプラスチックから成る成形体であり、前記成形体が少なくとも片側に金属被膜(60)を有している、請求項
5または6に記載のレーダセンサ。
【請求項8】
前記カバー(30’)の前記成形体は前記レーダセンサのレーダドームである、請求項
7に記載のレーダセンサ。
【請求項9】
前記カバー(32’)の前記成形体は、金属被膜をもたない側にレリーフ(70;72)を有している、請求項
7または
8に記載のレーダセンサ。
【請求項10】
前記レリーフ(70)は吸収体構造である、請求項
9に記載のレーダセンサ。
【請求項11】
前記レリーフ(72)は、吸収体構造をもつ全体的に湾曲した表面、または吸収体構造をもたない全体的に湾曲した表面を有している、請求項
9または
10に記載のレーダセンサ。
【請求項12】
レーダドームヒータ(74)の少なくとも一部は、前記カバー(32’)の前記成形体に組み込まれている、請求項
8から
11のいずれか一項に記載のレーダセンサ。
【請求項13】
前記導波路構造(22;22’’)は、少なくとも1つの導波路アンテナを形成している、請求項1から12のいずれか一項に記載のレーダセンサ。
【請求項14】
前記導波路構造(22)は、前記高周波部品(14)をレーダアンテナに結合するための分配構造を形成している、請求項1から13のいずれか一項に記載のレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配置された高周波部品と、この高周波部品と結合構造を介して結合された導波路構造とを有するレーダセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
DE102014208389A1では、導波路構造を導波路アンテナアレイとするタイプのレーダセンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、簡単に小さな製造公差で製造でき、かつ周囲からの影響に対してロバスト性のあるレーダセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、導波路構造が、基板のうち高周波部品を支持する部分の上に成形された成形体内に形成されることによって解決される。
【0006】
基板上に成形体を成形する際に、基板と、成形体を形成するために用いられるモールド(金型)との精密な位置合わせにより、導波路構造を、狭い寸法公差で高周波部品に対して位置決めして形成できることが達成され得る。同時に、成形体と基板との間の材料接合により、製品に事後的な歪みを生じさせ得る追加的な固定手段の使用を回避することができる。成形体と基板との間の腐食しやすい接合部の発生も避けられる。
【0007】
本発明の有利な変形例および形態は従属請求項に提示されている。
【0008】
一実施形態では、高周波部品、または場合によっては複数の高周波部品を有する構成体は、基板のうち導波路構造と同じ側に配置されており、その単数または複数の高周波部品も成形体の材料でオーバモールドされている。ただし、高周波部品と導波路構造が基板の互いに対向する側に存在しており、結合構造が基板を通り抜ける貫通部を含んでいる実施形態も考えられる。基板が両側で成形体の材料でオーバモールドされていることも考えられる。この場合には、導波路構造が基板の両側に存在し得る。
【0009】
導波路構造は、1つの導波路アンテナ、もしくは複数の導波路アンテナからなるアレイ、および/または、複数のアンテナを複数の高周波部品と信号接続する分配ネットワークを形成し得る。選択的に、導波路構造が複数層の導波路を有してもよい。この場合には、射出成形の際に、連続的なステップで複数の異なる層が形成され得る。
【0010】
成形体は、非導電性材料、例えば熱可塑性または熱硬化性のプラスチックによって形成することができ、この成形体の場合、導波路の壁だけが導電性コーティングを有する。別の一実施形態では、成形体は、全体的に導電性材料から、例えばある程度の含有量の導電性粒子を有するプラスチックから成ることができ、当該導電性粒子が材料を全体的に導電性にする。これに関し、導電性粒子の材料含有量および粒径は、表皮効果の考慮下でも十分な導電性が達成されるように選択される。
【0011】
一実施形態では、導波路構造は、成形体の外面に向けて開口する中空空間を有する。この場合、この中空空間は、少なくとも成形体に面した側では導電性層を有するカバーによって閉じられる。導波路アンテナの場合には、カバーは、レーダ信号の放射および受信のための、適切な寸法と形状をもつ開口部を有し得る。
【0012】
カバーは、全体的に金属板から成り得、または少なくとも片側に金属膜を形成されたプラスチックから成り得る。後者の場合には、カバーは、レーダドームが組み込まれた、および/または、不要なマイクロ波反射を抑制するためのレリーフを有するさらなる成形体であり得る。
【0013】
これらの特徴は、請求項1の特徴から独立してはいるが利点であり得る。したがって、基体内に形成されており、基体の外面に向けて開口する中空空間によって導波路が形成されている導波路アンテナと、中空空間を完全にまたは部分的に導電性層によって閉じるカバーとを備えたレーダセンサも開示されており、このカバーは、レーダドームが組み込まれたおよび/または外側の表面がレリーフを有する成形体によって形成されている。
【0014】
その代わりにまたはそれに加えて、この成形体内に、レーダドーム用ヒータが、または外部のレーダドームヒータを接続するための少なくとも1つの差込コネクタが組み込まれていてもよい。
【0015】
成形体のうち導波路構造が形成されている外面もレリーフを有することができ、これにより、例えば多面アンテナアレイまたはコンフォーマルアンテナアレイが形成される(つまりアンテナ素子の放射面が、互いに傾いた面内にあるか、または湾曲面の部分である)。外面のこのレリーフにアンダーカットがない場合、カバーは、レリーフに対して相補的な表面を有する一体的な成形体であり得る。
【0016】
以下に、図面に基づいて例示的実施形態をより詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるレーダセンサの概略断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態の様々なバリエーションの1つの断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態の様々なバリエーションの1つの断面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態の様々なバリエーションの1つの断面図である。
【
図5】本発明によるレーダセンサで使用可能な高周波部品の概略断面図である。
【
図6】本発明によるレーダセンサで使用可能な高周波部品の概略断面図である。
【
図7】本発明によるレーダセンサで使用可能な高周波部品の概略断面図である。
【
図8】本発明のさらなる例示的実施形態によるレーダセンサの断面図である。
【
図9】本発明のさらなる例示的実施形態によるレーダセンサの断面図である。
【
図10】本発明のさらなる例示的実施形態によるレーダセンサの断面図である。
【
図11】本発明のさらなる例示的実施形態によるレーダセンサの断面図である。
【
図12】カバーで閉じられた導波路構造を有するレーダセンサの分解断面図である。
【
図13】カバーの様々な実施形態の1つの断面図である。
【
図14】カバーの様々な実施形態の1つの断面図である。
【
図15】カバーの様々な実施形態の1つの断面図である。
【
図16】カバーの様々な実施形態の1つの断面図である。
【
図17】本発明のさらなる例示的実施形態によるレーダセンサの断面図である。
【
図18】本発明のさらなる例示的実施形態によるレーダセンサの断面図である。
【
図19】本発明のさらなる例示的実施形態によるレーダセンサの透視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に断面で示したレーダセンサは、高周波対応のキャリア基材12を上面に備えた基板10を有し、かつ高周波部品14を備えている。高周波部品14は、例えばMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)パッケージ(プラスチックハウジングを備えたモノリシックマイクロ波集積回路)であり得る。基板10は下面に、さらなる電子部品16(例えば、IC、SMD(Surface Mounted Devices:表面実装部品))と、接続プラグ用のコンタクトユニット18とを既知の方法で搭載している。基板10は、その上に配置された部品(コンタクトユニット18の一部を除く)を含めた全体が、非導電性プラスチックにより、好ましくは熱硬化性プラスチックであるが、選択的に熱可塑性プラスチックにより成る成形体20によって、オーバモールドされている。成形体20の上面には導波路構造22が形成されており、この導波路構造22は、成形体の外面24に向けて開口する幾つかの中空空間26を有しており、この中空空間26の壁が金属被膜28で導電性にされている。外面24には、何らかの既知の接合技術、例えば溶接または接着により、カバー30が取り付けられており、カバー30は、すべての中空空間26を被覆し、かつ中空空間26の金属被膜28と電気的に接触しており、これにより中空空間26が導波路として機能し得る。中空空間26の幾つかの領域ではカバー30が開口部32を有しており、この開口部32によりマイクロ波を放射および/または受信することができるので、それに関する中空空間は導波路アンテナの機能を有している。導波路構造22の残りの導波路は分配ネットワークを形成しており、この分配ネットワークを介して、高周波部品14内で生成されたレーダ信号が導波路アンテナに伝えられ、かつ/または導波路アンテナで受信されたレーダ信号が高周波部品14に伝えられる。高周波部品14を導波路構造22と信号結合するために、キャリア基材12上に、例えばマイクロストリップ線路などの高周波線路34が形成され、結合構造36を介して導波路の1つと結合している。レーダセンサが、それぞれ関連する分配ネットワークを介して導波路アンテナと結合する複数の高周波部品14を同じ基板10上に備え得ることは自明なことである。
【0019】
レーダセンサの製造では、最初に、基板10に、高周波部品および残りの電子コンポーネントならびにコンタクトユニット18が搭載され、その後、成形体20によってオーバモールドされ、その際、図示されない位置合わせマークにより、基板に対するモールド(金型)の精密な位置合わせに注意が払われる。離型の後、中空空間26の壁(結合構造36の自由端を除く)に金属被膜28が設けられ、最後に中空空間がカバー30によって閉じられる。
【0020】
図示した例では、カバー30は、単純に金属板で形成されている。しかしながら他の実施形態では、このカバーが、金属膜を形成されたプラスチック板または金属膜を形成されたプラスチック製の成形体であってもよい。
【0021】
図2は、1つの変形された例示的実施形態を示しており、この例示的実施形態では、高周波部品14は、パッケージ化されていない半導体チップ(ベアチップ)の形態でのMMICであり、このMMICは、再配線面38上に配置され、かつパッケージ40によってオーバモールドされており、このパッケージ40は同時に結合構造36の一部を構成している。この場合には、結合構造36との結合のための高周波線路34が再分配面38に形成されているので、基板10用の高価な高周波対応の基材(
図1での基材12)をなくすことができる。これは同時に、電子(NF)部品16を高周波部品14と一緒に基板の上面に配置してもよいという利点を有する。パッケージ40は半導体チップおよび再配線面と共に、いわゆる一次パッケージを構成しており、この一次パッケージは様々な方法で、例えばeWLB(embedded Wafer-Level Ball Grid Array)によってまたはインターポーザ上のフリップチップとして実現され得る。このような一次パッケージの場合、成形体20は高周波部品の半導体材料と接触しないので、成形体20に使用される材料がイオンフリーである必要はない。
【0022】
図3および
図4は、
図2による例示的実施形態の可能な変形例を示している。
図3では、再配線面38およびマイクロ波線路34がパッケージの上部に形成されており、かつパッケージがボンディングワイヤ42によって接触している。
図4では、再配線面38がパッケージの下部に存在しており、接触が(例えばBGA(ボールグリッドアレイ)の形態での)はんだボール44によって行われている。高周波線路34は、パッケージの上面に存在し、いわゆるパッドオンパッケージアンテナによって形成されている。その代わりに、パッケージは、ここではeWLBまたはインターポーザ上のフリップチップを備えたCSP(Chip Size Package:チップサイズパッケージ)であってもよい。
【0023】
もう1つのさらなる実施形態では、高周波部品14が、AoPパッケージ(Antenna on Package:アンテナオンパッケージ)として構成されている。このようなパッケージの様々な例を
図5~
図7に示している。
【0024】
図5では、MMIC(ベアチップ)によって形成された高周波部品14が、多層インターポーザ46の下面に取り付けられており、多層インターポーザ46はその上面で複数のアンテナ48を支持しており、これらのアンテナ48は、導波路構造22との結合に役立ち、かつ、ビアという金属被膜をもつ貫通孔50を介して半導体チップと結合している。
【0025】
図6では、アンテナ48およびMMICがインターポーザ46の上面に存在している。
【0026】
図7では、インターポーザ46上に配置されたMMICがパッケージ52とともに形成されており、パッケージ52の上面にアンテナ48が存在している。アンテナの高周波部品14との結合は、この場合には、パッケージ52を通り抜ける貫通孔53、いわゆるスルーモールドビアおよびインターポーザ46を介して行われる。
【0027】
パッケージの接触は、それぞれはんだボール44を介して行われる。
【0028】
図8は、プラスチックによる高周波部品14のオーバモールドが2つのステップで行われる点が、
図1による例示的実施形態とは異なる例示的実施形態を示している。第1のステップで、基板10上に実装された高周波部品14がパッケージ54によってオーバモールドされ、その後、第2のステップで成形体20が射出成形される。この成形体20は、基板10およびパッケージ54を収容し、かつ導波路構造22を形成する。2段階の射出成形ステップを有するこの製造方法は、高周波部品をフリップチップMMICまたはワイヤボンディングで接触されたMMICとする実施形態でも同様に適用され得る。後者の場合にはその後、ボンディングワイヤがパッケージ54に埋め込まれる。
【0029】
図9は、高周波部品14(例えばベアチップMMIC)が、例えば導電性でイオンフリーのエポキシ系熱硬化性樹脂などの導電性成形材料から成る成形体20’によって、オーバモールドされる点が、
図1による例示的実施形態とは異なる1つの例示的実施形態を示している。この場合、導波路構造22の壁の金属被膜28をなくすことができる。
【0030】
図10は、高周波部品14または複数の高周波部品を備えた基板10と、カバー30を備えた成形体20とが、レーダセンサの高周波部のみを形成するモジュールを構成しており、その一方で残りの(NF)部品16は主基板56上に配置され、この場合に主基板56に高周波モジュールが搭載されるという例示的実施形態を示している。
【0031】
図11は、例えばMMICなどの高周波部品14がパッケージ内で基板10の下面に配置されている例示的実施形態を示している。この場合には、導波路構造22との結合は同軸インピーダンス変成器58を介して行われ、同軸インピーダンス変成器58は、基板を貫通して基板の上部表面に通じており、このとき、基板の上面に形成された高周波線路34を介して間接的に、または結合構造36を介して直接的に、導波路構造22と結合している。
【0032】
図12は、高周波部品14が基板の上面にボンディングされたMMICであり、このMMICが
図8と同様にパッケージ54でオーバモールドされ、このときにパッケージ54も成形体20内に埋め込まれているレーダセンサを示す図である。これまで説明してきた実施形態での金属板で形成されたカバー30に代わるカバー30’が、ここでは成形体20から離して図示されている。カバー30’は、プラスチックから成る板状の成形体であり、この成形体は下面に金属被膜60を有しており、金属被膜60は、マイクロ波用の放射開口部を形成するための窓62によって幾つかの箇所で遮断されている。ただしこのカバーのプラスチック体は、当該開口部62で孔を開けているのではなく、比較的薄い膜64に形成されているだけであり、膜64は、当該カバー62を外側から閉じるものである。こうすることでカバー30’が同時にレーダドームになり、つまりマイクロ波放射を実質的に減衰させずに通過させるが、導波路構造内への汚れや腐食性媒体の侵入を阻止するカバーになっている。
【0033】
カバー30’の変形例を
図13~
図16に示している。
図13では、カバーがプラスチックから成る板状のコア部66を有しており、このコア部66はその外面全体に金属被膜60を有している。導波路アンテナ用の放射開口部は、カバーの互いに対向する面上の金属被膜における互いに一直線上に並んだ窓62によって形成されている。
【0034】
図14は、レーダドームが組み込まれたさらなる1つのバリエーションを示している。ただしここでは膜64は、プラスチック板の上面に存在し、かつ開口部68を被覆しており、この開口部68は、断面で下面にのみ形成された金属被膜60の窓62に向けて先細りしている。
【0035】
図15では、開口部68は、上面(外面)で開口し、かつ膜64に向けて先細りしており、膜64は、ここではプラスチックブロック(プラスチック成形体)の下面に形成され、かつ金属被膜の窓62を被覆している。この実施形態では、放射開口部を除くカバーの外側表面全体がレリーフ70を形成しており、このレリーフ70は、複数の円錐形突起部を格子状に配列した形態で吸収体(アブソーバ)構造70を形成しており、これらの突起部が、レーダドームの表面での望ましくない反射を抑制することになる。
【0036】
最後に
図16は、レーダドームが組み込まれたカバー32’の1つのバリエーションを示しており、このバリエーションは、
図15によるバリエーションとは、なかでも、カバーの外側の表面が、より広範囲で湾曲面をもつレリーフ72を形成している点が異なる。この手段も、不要な反射を抑制したり、無害の方向に偏向・散乱させたりする役割を果たす。選択的に、湾曲面でのレリーフ72がさらに微細な吸収体構造を形成していてもよい。
【0037】
図16によるカバーのさらなる特殊性は、プラスチック体内部に、レーダドーム用ヒータ74をなす電熱線が埋め込まれていることにある。このような組み込まれたヒータにより、レーダドーム上での雪または氷から成る外被の形成、ひいてはレーダセンサのブラインドネスに対処できる。
【0038】
図17および
図18は、成形体20内において、基板10の互いに対向する側に導波路構造22の構成部分が形成されている例示的実施形態を示している。こうしてより複雑な分配ネットワークのために成形体20の両側が利用され得る。選択的に、導波路アンテナも成形体の両側に形成できるので、レーダ波が互いに対向する方向に放射され得る。
【0039】
基板10の互いに対向する側にある導波路構造22の構成部分間の相互接続は、様々な方法で、例えば基板10を迂回する結合導波路76によってまたは基板を通り抜ける貫通孔78を使って形成され得る。
【0040】
ここで示した例では、基板10が両面に高周波部品14を搭載しており、これらの高周波部品14は、同軸インピーダンス変成器58および/または平面型高周波線路34を介して分配ネットワークへと結合されている。
【0041】
図17では分配ネットワークが、電子部品16の幾つかの間をブリッジし得る分配ブリッジ80も含んでいる。分配ブリッジ80をなす中空空間は、成形体20の射出成形の際に形成され、かつ導波路構造の残りの部分と同様に金属被膜28を有し、このとき成形体20の両側ではカバー30によって閉じられている。
【0042】
図18に示した例示的実施形態は導波路分配構造80’、82を有している。これら導波路分配構造80’、82は、成形体20の射出成形の際に形成されるのではなく、別個の導波路要素として形成されており、当該導波路要素が基板10に搭載され、その後、当該導波路要素と基板10とは、高周波部品14とともに成形体20の材料でオーバモールドされる。分配構造80’は、
図17のブリッジ分配器80に類似したブリッジ分配器であり、その一方で分配構造82は、基板10に直接接する分配チャンバであり、この分配チャンバは、この例では同軸インピーダンス変成器58を介して基板の上部の導波路の1つと結合している。
【0043】
図17によるレーダセンサが、2つの互いに平行な面に(基板10の互いに対向する側で)導波路アンテナを備えている一方で、導波路アンテナが、互いに非平行な複数の面に形成され、かつ多面アンテナを構成する実施形態も可能である。簡単な一例を
図19に示している。基板10の片面にて成形体20’’が成形するように射出成形されており、成形体20’’は、ここでは見えない高周波部品を完全に被覆し、かつ導波路構造22’’を形成している。この導波路構造は分配ネットワークを形成しており、この分配ネットワークは、結合構造36’’を介して高周波部品と結合し、かつ導波路アンテナの2つの部分アレイ84、86に通じている。導波路アンテナおよび分配構造は、成形体20’’の外面24’’に向けて開放されている。この外面24’’は、互いに非平行な2つの部分面24a、24bを含んでおり、部分面24a、24bは、互いに角度をなして隣接し、かつそれぞれ部分アレイ84、86の一方を含む。導波路構造22’’は、プラスチック材料から一体的に射出成形されたカバー30’’によって補完され、このカバー30’’は、外面24’’に対して相補的な形状を有し、かつ下面に金属被膜60’’を有しており、この金属被膜60’’は、導波路アンテナの放射開口部のところだけが開放されている。
【符号の説明】
【0044】
10 基板
12 キャリア基材
14 高周波部品
16 電子部品
26 中空空間
32 開口部
42 ボンディングワイヤ
44 はんだボール
46 インターポーザ
48 アンテナ
56 主基板
58 同軸インピーダンス変成器
66 コア部
76 結合導波路
78 貫通孔