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  • 特許-ポリオレフィン系縦一軸延伸フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系縦一軸延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20250821BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250821BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/18 C
B65D65/40 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021137139
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2023031571
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-07-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004107
【氏名又は名称】弁理士法人Kighs
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 加奈子
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205500(JP,A)
【文献】特開2018-099842(JP,A)
【文献】特開2001-287325(JP,A)
【文献】特開2020-192811(JP,A)
【文献】特開2006-070131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層の一面側にヒートシール層が積層された少なくとも二層よりなり、
前記基材層又は前記ヒートシール層のどちらか一方に防曇剤を含むとともに、
ロール間延伸により縦方向に延伸され、
前記ヒートシール層にコロナ処理が施されて該ヒートシール層表面のぬれ張力が32mN/m以上であるポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムであって、
前記ヒートシール層は、直鎖状低密度ポリエチレン(A)を少なくとも50重量%以上と、ポリプロピレン系樹脂(B)とを含み、
前記直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1~10g/10minであり、密度が0.860~0.935g/cm3であり、
前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、融点が135℃未満のプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレンーブテンランダム共重合体の少なくとも1種、あるいはプロピレン-エチレンブロック共重合体から選択され、
前記ヒートシール層同士のヒートシール開始温度が155℃以下である
ことを特徴とするポリオレフィン系縦一軸延伸フィルム。
【請求項2】
前記基材層の他面側に表面層が積層される請求項1に記載のポリオレフィン系縦一軸延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系フィルムに関し、特にヒートシール層に防曇性のためのコロナ処理が施されたポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品をはじめとする各種の物品の包装では、自動包装機によりフィルムと物品が同時に供給され、充填、包装、封止が連続して行われる。この種の物品の包装に使用されるフィルムとして、延伸フィルムが用いられる場合があり、加工や流通に耐え得る強度や、ヒートシール性、易カット性等、包装袋として好適に使用するための各種の性能が求められる。
【0003】
また、食品の包装袋として使用する場合、食品から発散される水分によって袋内に水滴が付着することがあることから、フィルムに防曇剤が添加されることがある。その際、フィルムのヒートシール面に防曇性を発現させるために、コロナ処理により防曇剤のブリードを促進させることが行われる。しかしながら、ヒートシール面にコロナ処理を施すと、コロナ処理前と同じ温度でヒートシールできなくなって、より高い温度でのヒートシールをしなければならなくなるという問題が生じる。
【0004】
上記の問題を解決する技術として、例えば、ヒートシール層と基材層から構成され、ヒートシール層がプロピレン系重合体とプロピレン・1-ブテン共重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、1-ブテンと炭素数3または炭素数5~20のα-オレフィンとの共重合体からなる群から選ばれる二種以上の共重合体からなる積層フィルムが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、二つ以上の層を有し、少なくとも一方の表層が、α-オレフィンに由来する単量体単位の含有量が1~5重量%であるプロピレン系共重合体成分とα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量が20~40重量%であるプロピレン系共重合体成分とを含むプロピレン系共重合体と、エチレンに由来する単量体単位の含有量が6~20重量%であるプロピレン-エチレン共重合体からなる多層フィルムが知られている(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1,2に記載のフィルムは、いずれも二軸延伸フィルムである。二軸延伸フィルムは、ロールの速度差によって延伸するロール間延伸による縦延伸後、テンターオーブンにより横延伸と熱セットが行われて形成される。この種のフィルムにおいて、ヒートシール開始温度を下げるためには熱セット温度を上げればよいが、二軸延伸フィルムではテンターオーブンによって十分な熱量を与えることができるため、ヒートシール開始温度を適切に下げることができる。したがって、ヒートシール面にコロナ処理を施しても低いヒートシール開始温度を維持することが可能となる。
【0007】
ところで、包装袋では、容易に開封可能とする観点から、易カット性に優れた一軸延伸フィルムが好ましく使用される。一軸延伸フィルムには、縦延伸だけの縦一軸延伸フィルムと横延伸だけの横一軸延伸フィルムがある。縦一軸延伸フィルムは、ロール間延伸による縦延伸後、加熱ロールによる熱セットが行われて形成される。縦一軸延伸フィルムにおいてヒートシール開始温度を下げようとする場合、加熱ロールによる熱セット温度を高くする必要がある。しかしながら、加熱ロールによる加熱では、フィルムが高温の加熱ロールに接触するため、フィルムが溶けて加熱ロールに貼り付き、剥離痕が生じて外観不良となる問題がある。
【0008】
そこで、熱セットによるフィルムの外観不良を回避するには、フィルムが溶けない程度の温度域で熱セットを行う必要があるが、フィルムに十分な熱量を与えることができない。そのため、縦一軸延伸フィルムは二軸延伸フィルムと比較して、ヒートシール温度が高くなることが避けられなかった。また、縦一軸延伸フィルムのヒートシール面にコロナ処理を施した場合、ヒートシール温度がさらに高い温度となることも問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2016/027885号公報
【文献】特開2017-205909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、防曇剤が添加された縦一軸延伸フィルムにおいて、ヒートシール面に防曇性を発現させるコロナ処理を施しても実用性のあるヒートシール性を備えるポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項の発明は、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層の一面側にヒートシール層が積層された少なくとも二層よりなり、前記基材層又は前記ヒートシール層のどちらか一方に防曇剤を含むとともに、ロール間延伸により縦方向に延伸され、前記ヒートシール層にコロナ処理が施されて該ヒートシール層表面のぬれ張力が32mN/m以上であるポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムであって、前記ヒートシール層は、直鎖状低密度ポリエチレン(A)を少なくとも50重量%以上と、ポリプロピレン系樹脂(B)とを含み、前記直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1~10g/10minであり、密度が0.860~0.935g/cmであり、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、融点が135℃未満のプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレンーブテンランダム共重合体の少なくとも1種、あるいはプロピレン-エチレンブロック共重合体から選択され、前記ヒートシール層同士のヒートシール開始温度が155℃以下であることを特徴とするポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムに係る。
【0014】
請求項の発明は、前記基材層の他面側に表面層が積層される請求項1に記載のポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムに係る。
【発明の効果】
【0016】
請求項の発明に係るポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムによると、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層の一面側にヒートシール層が積層された少なくとも二層よりなり、前記基材層又は前記ヒートシール層のどちらか一方に防曇剤を含むとともに、ロール間延伸により縦方向に延伸され、前記ヒートシール層にコロナ処理が施されて該ヒートシール層表面のぬれ張力が32mN/m以上であるポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムであって、前記ヒートシール層は、直鎖状低密度ポリエチレン(A)を少なくとも50重量%以上と、ポリプロピレン系樹脂(B)とを含み、前記直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1~10g/10minであり、密度が0.860~0.935g/cmであり、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、融点が135℃未満のプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレンーブテンランダム共重合体の少なくとも1種、あるいはプロピレン-エチレンブロック共重合体から選択され、前記ヒートシール層同士のヒートシール開始温度が155℃以下であるため、ヒートシール面にコロナ処理を施してもヒートシール開始温度の高温化を適切に抑制することができて剥離痕による外観不良の発生を抑制することができるとともに、良好な防曇性を得ることができ、実用性のあるヒートシール性を備えるポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムが得られる。また、基材層とヒートシール層との層間剥離の発生を効果的に抑制することができる。また、ヒートシール層同士のヒートシール開始温度が155℃以下であるため、ヒートシールしやすく実用性に優れる。
【0018】
請求項の発明に係るポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムによると、請求項1の発明において、前記基材層の他面側に表面層が積層されるため、包装袋等の製品としての実用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムの概略断面図である。
図2】ロール間延伸工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系縦一軸延伸フィルム10であって、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層20の一面側にヒートシール層30が積層された少なくとも二層よりなる。図示の縦一軸延伸フィルム10は、基材層20の他面側に表面層40が積層された三層で構成される。縦一軸延伸フィルム10は、二層や三層に限定されるものではなく、適宜の多層フィルムとすることが可能である。この縦一軸延伸フィルム10は、例えば食品、日用品、部品等の種々の物品の包装用資材として好適に使用される。
【0021】
本発明の縦一軸延伸フィルム10は、基材層20又はヒートシール層30のどちらか一方に防曇剤を含むとともに、ロール間延伸により縦方向に延伸される。ロール間延伸は、ロール間の速度差によってフィルムを一軸方向に延伸させるものである。ロール間延伸による延伸倍率は、2~15倍が好ましく、より好ましくは3~10倍、さらに好ましくは3~6倍である。延伸倍率が低すぎる場合は延伸ムラが生じやすくなり、延伸倍率が高すぎる場合は延伸工程で破断が生じるおそれがある。
【0022】
実施形態では、図2に示すように、Tダイ等のフィルム成形機50から共押出しされたフィルムFが複数のロールRを介して巻き取られながら、フィルムFを予熱する予熱部51を経て、低速回転するロールR1と高速回転するロールR2とから構成される延伸部52にてその速度差によりフィルムFを巻き取り方向(MD)に縦一軸延伸させた後、熱セット部53にて延伸後のフィルムF1が所定温度に加熱される。図2において、符号FrはフィルムFが巻き取られたフィルムロールである。
【0023】
また、この縦一軸延伸フィルム10では、ヒートシール層30にコロナ処理が施されて該ヒートシール層30表面のぬれ張力が32mN/m以上に構成される。ヒートシール層30のコロナ処理は、基材層20又はヒートシール層30に含まれる防曇剤のブリードを促進させて、ヒートシール面に防曇性を発現させるための処理である。ヒートシール層30表面のぬれ張力が32mN/m未満の場合、コロナ処理が不十分で防曇剤のブリードが不十分となるおそれがあるため好ましくない。
【0024】
ヒートシール層30表面のぬれ張力は、コロナ処理の投入電力に比例して上昇又は飽和点まで上昇する。そこで、ぬれ張力のパラメータとして、放電量(W・min/m2)が用いられる。放電量は単位時間、単位面積当たりの投入電力であり、下記式(i)に基づいて求められる。放電量の計算式において、P(W)は放電電力、L(m)は放電電極長、v(m/min)はフィルム速度である。
【0025】
【数1】
【0026】
基材層20は、ポリプロピレン系樹脂を主体として構成され、縦一軸延伸フィルム10に占める層の厚さが他の層に対して比較的厚く形成されて、フィルムのコシの強さ(剛性)を付与して製袋適性を得る層である。基材層20を構成するポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0027】
ヒートシール層30は、縦一軸延伸フィルム10が包装袋として製袋される際に内面側となって、ヒートシール層同士で熱融着される層である。ヒートシール層30では、ヒートシール層同士のヒートシール開始温度が155℃以下であることが好ましい。ヒートシール開始温度が155℃より高くなると、製袋等に際して高温でヒートシールしなければならなくなり、実用的ではない。
【0028】
第1実施形態の縦一軸延伸フィルム10において、ヒートシール層30は、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレート(MFR)が1~10g/10minであり、密度が0.860~0.935g/cm3である直鎖状低密度ポリエチレンからなる。直鎖状低密度ポリエチレンのMFRが低すぎる場合は外観不良や成形性の悪化につながるおそれがあり、高すぎる場合はコロナ処理後のヒートシール開始温度の高温化やブロッキング、成形性の悪化につながるおそれがある。直鎖状低密度ポリエチレンの密度が低すぎる場合は融点の低下からブロッキングが生じやすくなる恐れがあり、高すぎる場合は融点の上昇からコロナ処理後のヒートシール開始温度の高温化や防曇性の低下につながるおそれがある。
【0029】
第2実施形態の縦一軸延伸フィルム10において、ヒートシール層30は、直鎖状低密度ポリエチレン(A)を少なくとも50重量%以上と、ポリプロピレン系樹脂(B)とを含むように構成される。
【0030】
直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1~10g/10minであり、密度が0.860~0.935g/cm3である。一方、ポリプロピレン系樹脂(B)は、融点が135℃未満のプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレンーブテンランダム共重合体の少なくとも1種、あるいはプロピレン-エチレンブロック共重合体から選択される。直鎖状低密度ポリエチレン(A)にポリプロピレン系樹脂(B)を加えることにより、ヒートシール開始温度が低下しすぎることを抑制することができる。そのため、ポリプロピレン系樹脂(B)の配合割合によって、ヒートシール開始温度を調整することが可能となる。また、ポリプロピレン系樹脂(B)は、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層20と同種の樹脂組成物であることから、より効果的に層間剥離の発生を抑制することができる。
【0031】
表面層40は、基材層20の他面側、すなわちヒートシール層30が積層された面の反対側の面に積層される層であって、ポリプロピレン系樹脂を主体として構成される。表面層40は、縦一軸延伸フィルム10が包装袋として製袋される際に外面側となる。表面層40では、適宜の印刷を施して印刷層として機能させることが可能であり、包装袋等の製品としての実用性を高めることができる。この表面層40では、必要に応じて表面にコロナ処理等の表面処理を施して、フィルム表面の印刷性能を高めてもよい。表面層40を構成するポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体や、プロピレンとエチレンやブテン等の他のオレフィンとの共重合体等のプロピレンを主体とする重合体から選択される。
【0032】
本発明の縦一軸延伸フィルム10では、環境配慮型の製品とするために、基材層20、ヒートシール層30、表面層40のいずれか又は複数の層に、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル等のリサイクル原料やバイオマス由来のポリオレフィン樹脂が含まれてもよい。バイオマス由来のポリオレフィン樹脂としては、例えば植物原料を加工して得られたポリエチレン系樹脂等が挙げられる。具体的には、サトウキビ等の植物原料から抽出された糖液から酵母によるアルコール発酵を経てエタノールを生成してエチレン化した後、公知の樹脂化の工程で製造された直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂である。バイオマス由来ポリオレフィン樹脂の重量配合割合が多いほど、環境負荷の低減への寄与が高められる。
【実施例
【0033】
[ポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムの作製]
後述の各材料を配合して溶融、混練して、共押出Tダイフィルム成形機を用いたTダイ法により2層(基材層とヒートシール層)又は3層(表面層と基材層とヒートシール層)に共押出ししてシートを作製し、ロール間延伸機により巻き取り方向(MD)に縦一軸延伸して、ヒートシール層にコロナ処理を施して試作例1~30のポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムを得た。
【0034】
各試作例1~30において、樹脂の配合割合は、各層ごとに100重量%となるように配合した。試作例1~8,11~30はシート厚さを250μmで作製して縦一軸の延伸倍率を5倍、試作例9はシート厚さを150μmで作製して縦一軸の延伸倍率を3倍、試作例10はシート厚さを300μmで作製して縦一軸の延伸倍率を6倍として、各試作例1~30のフィルム厚さを50μmとした。コロナ処理の放電量は試作例20を5W・min/m2、試作例21を40W・min/m2とし、それ以外の試作例1~19,22~30は20W・min/m2として、ぬれ張力が32mN/m以上となるように調整した。なお、作製した各フィルムの厚さは、JIS K 7130(1999)に準拠するフィルム厚さ測定方法に基づいて測定した。
【0035】
[使用材料]
表面層、基材層、ヒートシール層の樹脂組成物として、以下の樹脂を使用した。各樹脂の特性として、メルトフローレート(MFR)はJIS K 7210(2014)に準拠する230℃、2.16kg荷重又は190℃、2.16kg荷重で測定された値、密度はJIS K 7112(1999)に準拠して測定した値である。なお、防曇剤は、東邦化学工業株式会社製:「アンステックスSA-300F」を使用した。
【0036】
・樹脂A1:直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製:「SP2040」、MFR(190℃、2.16kg荷重):3.8g/10min、密度0.918g/cm3、融点116℃
・樹脂A2:直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製:「KS340T」、MFR(190℃、2.16kg荷重):3.5g/10min、密度0.88g/cm3、融点60℃
・樹脂A3:直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製:「SP2540」、MFR(190℃、2.16kg荷重):3.8g/10min、密度0.924g/cm3、融点120℃
・樹脂A4:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:「3540F」、MFR(190℃、2.16kg荷重):4.0g/10min、密度0.931g/cm3、融点123℃
・樹脂A5:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:「4040F」、MFR(190℃、2.16kg荷重):4.0g/10min、密度0.938g/cm3、融点126℃
・樹脂A6:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:「4540F」、MFR(190℃、2.16kg荷重):4.0g/10min、密度0.944g/cm3、融点128℃
・樹脂A7:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:「1520F」、MFR(190℃、2.16kg荷重):2.0g/10min、密度0.913g/cm3、融点114℃
・樹脂A8:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:「715FT」、MFR(190℃、2.16kg荷重):4.0g/10min、密度0.913g/cm3、融点113℃
・樹脂A9:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:「022GS」、MFR(190℃、2.16kg荷重):8.0g/10min、密度0.904g/cm3、融点102℃
・樹脂A10:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:「015AN」、MFR(190℃、2.16kg荷重):14.0g/10min、密度0.911g/cm3、融点103℃
【0037】
・樹脂B1:低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:「F222」、MFR(190℃、2.16kg荷重):2.0g/10min、密度0.922g/cm3、融点110℃
【0038】
・樹脂C1:高密度ポリエチレン(京葉ポリエチレン株式会社製:「M8500」、MFR(190℃、2.16kg荷重):5.0g/10min、密度0.962g/cm3、融点135℃
【0039】
・樹脂D1:プロピレン-エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製:「WFW4M」、MFR(230℃、2.16kg荷重):7.0g/10min、融点135℃
・樹脂D2:プロピレン-エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製:「WFX4M」、MFR(230℃、2.16kg荷重):7.0g/10min、融点125℃
【0040】
・樹脂E1:プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製:「FW4BT」、MFR(230℃、2.16kg荷重):7.0g/10min、融点139℃
・樹脂E2:プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製:「FX4G」、MFR(230℃、2.16kg荷重):5.0g/10min、融点126℃
・樹脂E3:プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製:「FX4E」、MFR(230℃、2.16kg荷重):5.0g/10min、融点132℃
【0041】
・樹脂F1:プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製:「FL203D」、MFR(230℃、2.16kg荷重):3.0g/10min、密度0.90g/cm3
・樹脂F2:プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製:「FY6」、MFR(230℃、2.16kg荷重):2.4g/10min、融点160℃
【0042】
・樹脂G1:プロピレン-エチレンブロック共重合体(日本ポリプロ株式会社製:「BC6DRF」、MFR(230℃、2.16kg荷重):2.5g/10min、融点165℃
【0043】
[試作例1]
試作例1のフィルムは、層の厚さの比が7:1となる基材層とヒートシール層の2層からなり、基材層が樹脂F1を99.5重量%と防曇剤0.5重量%、ヒートシール層が樹脂A1を70重量%と樹脂D2を30重量%でそれぞれ構成した。
【0044】
[試作例2]
試作例2のフィルムは、層の厚さの比が1:6:1となる表面層と基材層とヒートシール層の3層からなり、表面層が樹脂F1を100重量%、基材層が樹脂F1を99.5重量%と防曇剤0.5重量%、ヒートシール層が樹脂A1を100重量%でそれぞれ構成した。
【0045】
[試作例3]
試作例3のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A1を85重量%と樹脂D2を15重量%とし、それ以外は試作例2のフィルムと同一とした。
【0046】
[試作例4]
試作例4のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A1を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例2のフィルムと同一とした。
【0047】
[試作例5]
試作例5のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A1を50重量%と樹脂D2を50重量%とし、それ以外は試作例2のフィルムと同一とした。
【0048】
[試作例6]
試作例6のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A1を30重量%と樹脂D2を70重量%とし、それ以外は試作例2のフィルムと同一とした。
【0049】
[試作例7]
試作例7のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A1を15重量%と樹脂D2を85重量%とし、それ以外は試作例2のフィルムと同一とした。
【0050】
[試作例8]
試作例8のフィルムは、ヒートシール層が樹脂D2を100重量%とし、それ以外は試作例2のフィルムと同一とした。
【0051】
[試作例9]
試作例9のフィルムは、縦一軸の延伸倍率を3倍とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0052】
[試作例10]
試作例10のフィルムは、縦一軸の延伸倍率を6倍とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0053】
[試作例11]
試作例11のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A2を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0054】
[試作例12]
試作例12のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A3を60重量%と樹脂D2を40重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0055】
[試作例13]
試作例13のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A4を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0056】
[試作例14]
試作例14のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A5を85重量%と樹脂D2を15重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0057】
[試作例15]
試作例15のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A6を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0058】
[試作例16]
試作例16のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A7を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0059】
[試作例17]
試作例17のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A8を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0060】
[試作例18]
試作例18のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A9を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0061】
[試作例19]
試作例19のフィルムは、ヒートシール層が樹脂A10を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0062】
[試作例20]
試作例20のフィルムは、コロナ処理の放電量を5W・min/m2とし、それ以外は試作例16のフィルムと同一とした。
【0063】
[試作例21]
試作例21のフィルムは、コロナ処理の放電量を40W・min/m2とし、それ以外は試作例16のフィルムと同一とした。
【0064】
[試作例22]
試作例22のフィルムは、ヒートシール層が樹脂B1を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0065】
[試作例23]
試作例23のフィルムは、ヒートシール層が樹脂C1を70重量%と樹脂D2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0066】
[試作例24]
試作例24のフィルムは、ヒートシール層の樹脂D2の代わりに樹脂D1を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0067】
[試作例25]
試作例25のフィルムは、ヒートシール層の樹脂D2の代わりに樹脂E1を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0068】
[試作例26]
試作例26のフィルムは、ヒートシール層の樹脂D2の代わりに樹脂E2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0069】
[試作例27]
試作例27のフィルムは、ヒートシール層の樹脂D2の代わりに樹脂E3を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0070】
[試作例28]
試作例28のフィルムは、ヒートシール層の樹脂D2の代わりに樹脂D2を15重量%と樹脂E2を15重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0071】
[試作例29]
試作例29のフィルムは、ヒートシール層の樹脂D2の代わりに樹脂F2を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0072】
[試作例30]
試作例30のフィルムは、ヒートシール層の樹脂D2の代わりに樹脂G1を30重量%とし、それ以外は試作例4のフィルムと同一とした。
【0073】
試作例1~30の縦一軸延伸フィルムに関し、各層の樹脂組成、シートの厚さ、延伸倍率、フィルムの厚さ、層の厚さの比(層比)、コロナ処理の放電量について表1~5に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
試作例1~30の縦一軸延伸フィルムの性能評価として、ぬれ張力、ヒートシール開始温度を測定し、防曇性について評価した。
【0080】
[ぬれ張力の測定]
ぬれ張力(mN/m)の測定では、JIS K 6768(1999)に準拠したぬれ張力試験方法を用いた。
【0081】
[ヒートシール開始温度の測定]
ヒートシール開始温度(℃)の測定では、JIS Z 1713(2009)に準拠するヒートシール開始温度試験を使用し、試作例1~30の縦一軸延伸フィルムのコロナ処理後のヒートシール開始温度を測定した。まず各試作例1~30のフィルムから幅50mm×長さ250mmの試験片を裁断し、2枚の試験片のヒートシール層同士を重ねてヒートシール試験機(株式会社東洋精機製作所製;熱傾斜試験機)を用いてヒートシール圧力を0.34MPa、ヒートシール時間を1.0secとし、5℃ずつ温度を傾斜(昇温)させる条件でヒートシールを行った。ヒートシール後、試験片を15mm幅で切り出し、ヒートシールにより融着した試験片を180°に開いて、引張試験機(株式会社島津製作所製;EZ-SX)のチャックに未シール部分を挟み、200mm/minの引張速度によりシール部分を剥離して、ヒートシール強度が3Nに到達した時点の温度をヒートシール開始温度として求めた。測定結果が155℃以下となるものを「良(〇)」とし、155℃を超えたものを「不可(×)」とした。
【0082】
[防曇性の評価]
防曇性の評価では、まず常温の蒸留水を100mlのビーカーに50ml注ぎ、100mm×100mmに切った試験片をビーカーにかぶせて、5℃雰囲気下で60分保管した。保管後、文字が印刷された紙の上にビーカーを置いて、その時の文字の見え方からビーカーにかぶせたフィルム内部の曇りの程度を評価した。防曇性の評価に際して、フィルムに水滴がなくクリアに文字が認識できた場合を「優良(◎)」、フィルムに水滴の付着が見られたが文字が認識できた場合を「良(〇)」、フィルムに水滴が付着して文字が認識できなかった場合を「不可(×)」とした。
【0083】
試作例1~30の縦一軸延伸フィルムの測定結果について、表6~10に示した。表6~10において、総合評価では、各測定の判定がすべて良(〇)以上の場合を「良(〇)」とし、1つでも不可(×)があった場合を「不可(×)」とした。
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
[結果と考察]
表6~10に示すように、ぬれ張力は試作例1~30のいずれも32mN/m以上で良好であった。また、総合評価では、試作例1~5,9~13,16~18,20,21,26~28,30が「良(〇)」となり、試作例6~8,14,15,19,22~25,29が「不可(×)」となった。
【0090】
まず、試作例2~8の3層の縦一軸延伸フィルムは、ヒートシール層の直鎖状低密度ポリエチレン(樹脂A1)の配合割合を100重量%から0重量%に変化させた例である。樹脂A1の配合割合が100重量%の試作例2では、ヒートシール開始温度と防曇性のいずれも極めて良好であった。一方、ヒートシール層にプロピレン-エチレンランダム共重合体(樹脂D2)が添加された試作例3~8では、樹脂A1の配合割合が50重量%以上(試作例3,4,5)の場合にはヒートシール開始温度の高温化が適切に抑制され、樹脂A1の配合割合が50重量%未満(試作例6,7,8)の場合にはヒートシール開始温度の高温化を十分に抑制することができなかった。
【0091】
試作例9,10の縦一軸延伸フィルムは、良品の試作例4に対して延伸倍率を変化させた例である。試作例4より延伸倍率を小さくした(試作例9)場合と大きくした(試作例10)場合のいずれもヒートシール開始温度と防曇性が良好であった。
【0092】
試作例11~19の縦一軸延伸フィルムは、良品の試作例4に対してヒートシール層の樹脂A1の代わりに樹脂A2~樹脂A10を使用した例である。樹脂A5を使用した試作例14と樹脂A6を使用した試作例15では、十分な防曇性が得られなかった。また、樹脂A10を使用した試作例19では、ヒートシール開始温度の高温化を十分に抑制することができなかった。
【0093】
ヒートシール開始温度と防曇性のいずれも良好であった試作例4,11~13,16~18と試作例14,15とを比較すると、試作例14,15に使用された樹脂A5,A6は、試作例4,11~13,16~18に使用された樹脂A1~樹脂A4,樹脂A7~樹脂A9より密度が高かった。また、試作例4,11~13,16~18と試作例19とを比較すると、試作例19に使用された樹脂A10は、試作例4,11~13,16~18に使用された樹脂A1~樹脂A4,樹脂A7~樹脂A9よりMFRが高かった。
【0094】
試作例20,21の縦一軸延伸フィルムは、良品の試作例16に対してコロナ処理の放電量を変化させた例である。試作例16よりコロナ処理の放電量を少なくした(試作例20)場合と多くした(試作例21)場合のいずれもヒートシール開始温度と防曇性が良好であった。
【0095】
試作例22,23の縦一軸延伸フィルムは、良品の試作例4に対してヒートシール層の樹脂A1(直鎖状低密度ポリエチレン)の代わりに樹脂B1(低密度ポリエチレン)又は樹脂C1(高密度ポリエチレン)を使用した例である。試作例22では、ヒートシール開始温度の測定においてヒートシール強度が3Nに到達せず、測定不能であった。試作例23では、ヒートシール開始温度の高温化を抑制することができず、防曇性も不十分であった。
【0096】
試作例24の縦一軸延伸フィルムは、良品の試作例4に対してヒートシール層の樹脂D2(プロピレン-エチレンランダム共重合体)の代わりに樹脂D1(樹脂D2と異なるプロピレン-エチレンランダム共重合体)を使用した例である。樹脂D1を使用した試作例24では、ヒートシール開始温度の高温化を十分に抑制することができなかった。試作例4と試作例24とを比較すると、試作例24に使用された樹脂D1は、試作例4に使用された樹脂D2より融点が高いプロピレン-エチレンランダム共重合体であった。
【0097】
試作例25,26,27の縦一軸延伸フィルムは、良品の試作例4に対してヒートシール層の樹脂D2(プロピレン-エチレンランダム共重合体)の代わりに樹脂E1,樹脂E2,樹脂E3(プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体)のいずれかを使用した例である。樹脂E1を使用した試作例25では十分な防曇性が得られなかったが、試作例26,27はヒートシール開始温度と防曇性のいずれも良好であった。試作例26,27と試作例25とを比較すると、試作例25に使用された樹脂E1は、試作例26,27に使用された樹脂E2,E3より融点が高いプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体であった。
【0098】
試作例28の縦一軸延伸フィルムは、良品の試作例4に対してヒートシール層の樹脂D2(プロピレン-エチレンランダム共重合体)の代わりに樹脂D2と樹脂E2を使用した例である。試作例28はヒートシール開始温度と防曇性のいずれも良好であった。
【0099】
試作例29,30の縦一軸延伸フィルムは、良品の試作例4に対してヒートシール層の樹脂D2(プロピレン-エチレンランダム共重合体)の代わりに樹脂F2(プロピレン単独重合体),樹脂G1(プロピレン-エチレンブロック共重合体)のいずれかを使用した例である。樹脂F2を使用した試作例29では、ヒートシール開始温度の高温化を抑制することができず、防曇性も不十分であった。樹脂G1を使用した試作例30では、ヒートシール開始温度と防曇性のいずれも良好であった。
【0100】
試作例2~10,22,23から理解されるように、ヒートシール層の樹脂の好ましい配合割合は、直鎖状低密度ポリエチレン100重量%を含めて、少なくとも直鎖状低密度ポリエチレン50重量%以上であると考えられる。また、ヒートシール層が直鎖状低密度ポリエチレン100重量%でない場合にヒートシール層を構成する他の樹脂は、試作例24~30から理解されるように、融点が135℃未満のプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレンーブテンランダム共重合体の少なくとも1種、あるいはプロピレン-エチレンブロック共重合体から選択することが好ましいと考えられる。
【0101】
また、試作例11~21から理解されるように、ヒートシール層に使用される直鎖状低密度ポリエチレンの好ましい条件は、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレート(MFR)が1~10g/10min、密度が0.860~0.935g/cm3であると考えられる。
【0102】
なお、試作例1の縦一軸延伸フィルムは、基材層とヒートシール層の2層からなり、表面層を有していないこと以外は試作例4と同様に構成されている。試作例1では、ヒートシール開始温度と防曇性の性能が試作例4と同一であるから、基材層とヒートシール層の構成が同様の構成であれば、2層のフィルムと3層のフィルムのヒートシール開始温度と防曇性の性能は同一になると考えられる。
【0103】
以上説明したように、本発明の縦一軸延伸フィルムは、ヒートシール面に防曇性のためのコロナ処理を施してもヒートシール開始温度の高温化を適切に抑制することができるため、加熱ロールによる熱セットを行う場合でも加熱ロールにフィルムが溶けて張り付くことを回避して剥離痕による外観不良の発生を抑制することができる。また、本発明の縦一軸延伸フィルムでは、良好な防曇性を得ることができる。したがって、ヒートシール面に防曇性を発現させるコロナ処理を施しても実用性のあるヒートシール性を備えるポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のとおり、本発明のポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムは、ヒートシール開始温度の高温化が適切に抑制されるとともに、防曇性が良好である。そのため、実用性に優れており、従来のポリオレフィン系縦一軸延伸フィルムの代替品として有望である。
【符号の説明】
【0105】
10 ポリオレフィン系縦一軸延伸フィルム
20 基材層
30 ヒートシール層
40 表面層
50 フィルム成形機
51 予熱部
52 延伸部
53 熱セット部
F,F1 フィルム
Fr フィルムロール
R,R1,R2 ロール
図1
図2