(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20250821BHJP
F42B 3/12 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
B60R21/264
F42B3/12
(21)【出願番号】P 2021194864
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2024-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 彬
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】水田 成海
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-088653(JP,A)
【文献】特開2005-238948(JP,A)
【文献】特開2006-284151(JP,A)
【文献】特表2011-509861(JP,A)
【文献】特開2020-006919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0062757(US,A1)
【文献】国際公開第2017/183626(WO,A1)
【文献】米国特許第08602452(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
F42B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火器と、前記点火器を取り囲んだ状態で保持する筒状の点火器保持部と、前記点火器を前記点火器保持部に対して固定する樹脂製の固定部とを有する点火装置と、
前記点火装置の作動により燃焼するガス発生剤を収容する有底筒状のケースであって、基端側が前記固定部に接続される側壁部と、先端側を閉塞する閉塞端部とを有する樹脂製のケースと、
を備え、
前記閉塞端部は、前記ガス発生剤が発生させる燃焼生成物により開口する脆弱部を含み、
前記脆弱部の周囲は、前記脆弱部よりも厚みが大きく、
前記ケースの内側に、前記側壁部の所定の位置から前記脆弱部にかけて環状傾斜部が形成されている、
ガス発生器。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記ケースの閉塞端部における径方向中央部に形成されており、
前記脆弱部は、前記環状傾斜部の先端部の延長上に位置する
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記環状傾斜部の先端部に形成された平面部である、
請求項1または2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記脆弱部は、前記ケースの閉塞端面の外側に形成された凹部である、
請求項1から3の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記ケースの縦断面において、前記環状傾斜部と前記側壁部の境界部における前記ケースの内周面の輪郭が曲線になっている
請求項1から4の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記ケースは、柱状形状を有し、前記ガス発生器の取り付け対象の筒状部に嵌合する
請求項1から5の何れか一項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カップ形状の受容部分と、受容部分を閉じるカバーとを有する外部ハウジングを備えるガス発生器が提案されている(例えば、特許文献1)。本技術では、受容部およびカバーは樹脂製であり、湿気の侵入から保護される気密ハウジングを形成する。本技術のガス発生器は、作動時にカバー内のガス発生剤が燃焼することでカバー内の圧力が上昇し、カバーの一部が開裂することでガスを排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2002/0062757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス発生器において、ガス発生剤を収容するケースを樹脂製とする場合、一般的に樹脂は破断強度が金属よりも小さいため、ケース開裂時にその破片が飛散する可能性が高くなる。上記の特許文献1には、ケース開裂時の破片の飛散を抑制する構成などについては何ら開示されていない。
【0005】
本開示は、樹脂製のケースを用いる場合に、開裂時のケースの飛散を抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示では、以下の構成を採用する。
点火器と、前記点火器を取り囲んだ状態で保持する筒状の点火器保持部と、前記点火器を前記点火器保持部に対して固定する樹脂製の固定部とを有する点火装置と、
前記点火装置の作動により燃焼するガス発生剤を収容する有底筒状のケースであって、基端側が前記固定部に接続される側壁部と、先端側を閉塞する閉塞端部とを有する樹脂製のケースと、
を備え、
前記閉塞端部は、前記ガス発生剤が発生させる燃焼生成物により開口する脆弱部を含み、
前記脆弱部の周囲は、前記脆弱部よりも厚みが大きく、
前記ケースの内側に、前記側壁部の所定の位置から前記脆弱部にかけて環状傾斜部が形成されている、
ガス発生器。
【0007】
上記のガス発生器では、前記脆弱部は、前記ケースの閉塞端部における径方向中央部に形成されており、
前記脆弱部は、前記環状傾斜部の先端部の延長上に位置してもよい。
【0008】
また上記のガス発生器では、前記脆弱部は、前記環状傾斜部の先端部に形成された平面部であってもよい。
【0009】
さらに上記のガス発生器では、前記脆弱部は、前記ケースの閉塞端面の外側に形成され
た凹部であってもよい。
【0010】
さらに上記のガス発生器では、前記ケースの縦断面において、前記環状傾斜部と前記側壁部の境界部における前記ケースの内周面の輪郭が曲線になっていてもよい。
【0011】
さらに上記のガス発生器では、前記ケースは、柱状形状を有し、前記ガス発生器の取り付け対象の筒状部に嵌合してもよい。
【0012】
上述した構成は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせたり削除したりすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、樹脂製のケースを用いる場合に、開裂時のケースの飛散を抑制するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るガス発生器の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る取付対象に取り付けられたガス発生器の一例を示す軸方向の概略断面図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係るガス発生器の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、比較例に係るガス発生器の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0016】
<実施形態1>
図1は、ガス発生器の一例を示す斜視図である。
図2は、取付対象に取り付けられたガス発生器の一例を示す軸方向の概略断面図である。ガス発生器1は、作動すると内部のガス発生剤を燃焼させ、生成された燃焼ガスを外部に放出する。
図2に示すように、ガス発生器1は、例えば自動車のシートベルトリトラクター(プリテンショナー)10に組み込まれ、自動車の衝突時にシートベルトを巻き取るために用いられる。また、ガス発生器1は、点火装置2と、ケース3とを備え、内部にガス発生剤4を収容する。
【0017】
<点火装置>
点火装置2は、点火電流により着火する点火器21と、点火器21を支持する点火器保持部22と、点火器21及び点火器保持部22の間に介装される固定部23とを含む。
【0018】
点火器21は、例えば一端が開口した有底筒状のカップ体211と、絶縁層212と、カップ体211の開口部を閉塞する封止部材213と、カップ体211及び封止部材213によって形成される点火室に収容される点火薬214と、外部から電流の供給を受けるための2つの導電ピン215とを有する。なお、本実施形態では、便宜上、カップ体211側を上、導電ピン215側を下として説明する。2つの導電ピン215は、点火室内においてブリッジワイヤー(図示せず)を介して接続されている。導電ピン215が外部から電流の供給を受けると、抵抗体であるブリッジワイヤーが発熱して点火薬214を燃焼させる。なお、点火薬214は、一般的なガス発生器に用いられる既存のものを採用することができる。カップ体211は、例えば樹脂製の絶縁層212で覆われた金属製の部材
である。また、封止部材213も例えば金属製であり、2つの導電ピン215の間は絶縁されているものとする。カップ体211は、上面に例えば放射状のノッチ(図示せず)を有し、点火器21の作動時においては、点火薬214の燃焼生成物により開裂して上方へ火炎や燃焼ガス等の燃焼生成物が放出される。
【0019】
点火器保持部22は、例えば点火器21の側方を支持する金属製カラーである。すなわち、点火器保持部22は、筒状に形成された金属製の部材であり、その内側に点火器21を保持する。なお、点火器保持部22に対する固定部23の周方向の回転を抑制するために、固定部23と接触する点火器保持部22の内周面には凹凸が設けられていてもよい。また、点火器保持部22は、例えばシートベルトリトラクター本体である取付対象の筒状部100に対してかしめによって固定される。筒状部100は、ガス発生器1のケース3を挿入可能な筒状の部材である。
【0020】
固定部23は、点火器21と点火器保持部22との間に射出成形にて介装され、点火器保持部22に対して点火器21を固定する樹脂製の接続部である。固定部23の材料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を好適に利用することができる。
図2の例では、固定部23は、上側に位置し点火器21のカップ体211等を固定する第1固定部231と、下側に位置し主として導電ピン215を取り囲む第2固定部232とを含む。固定部23は、例えばカップ体211または絶縁層212の一部が固定部23から露出した状態となるように、点火器21の側方の周囲を覆う。なお、固定部23によってカップ体211または絶縁層212の全体がオーバーモールドされていてもよい。また、固定部23は、点火器保持部22の内側と係合することで、点火器保持部22に対して点火器21を固定する。また、第2固定部232は、点火器保持部22の内側に、導電ピン215に外部電源からの電力を供給するためのコネクタ5を導電ピン215と接続した状態で固定するようにしてもよい。
【0021】
<ケース>
ケース3は、点火装置2の上部を取り囲むようにして基端側(点火装置2側)から先端側(上側)に向かって延在する有底筒状の部材である。ケース3の材料は樹脂であり、例えば固定部23と同一の樹脂であってもよい。ケース3は、上下に延在する筒状の側壁部31と、上端を閉塞する閉塞端部32とを含む。また、ケース3と点火器21との間には、ガス発生剤4を収容する燃焼室6が形成される。ガス発生剤4は、点火器21の作動により着火され、燃焼して燃焼ガス等の燃焼生成物を発生させる。
【0022】
側壁部31は、その内径及び外径が一定又はほぼ一定の筒状部である。また、側壁部31の基端側は、例えば全周溶接により、固定部23に接続される。全周溶接とは、周方向に連続した環状の溶接であり、溶接対象の2つの部材間を隙間なく閉塞させることをいう。
図2の例では、レーザー溶接により溶着される部分を黒丸で示す。
【0023】
閉塞端部32は、ケース3の軸方向に直交する方向の断面形状が長円状又は角丸長方形状に形成されている。閉塞端部32は、例えばケース3の内圧の上昇により、又はガス発生剤4の燃焼により生じる燃焼生成物の温度により開裂する脆弱部321と、脆弱部321よりも厚さが大きい肉厚部322とを含む。
図2に示すように、閉塞端部32の外面はその中央付近に所定形状の凹部を有し、凹部の底が脆弱部321である。また、閉塞端部32の内面には、筒の断面積が先端に向かって次第に小さくなる環状傾斜部323が形成され、環状傾斜部323の先端は脆弱部321の裏面に位置する頂点324に収束する。すなわち、ケース3の内部空間は、その先端部が円錐状の空洞になっている。よって、ケース3の内圧が上昇した場合に、頂点324に応力が集中するようになっている。また、環状傾斜部323の基端側は、屈曲部325を介して側壁部31の内面と接続される。なお、屈曲部325は、ケース3の内圧が上昇した場合に応力が集中しないように、環状傾
斜部323から側壁部31にかけて(環状傾斜部323と側壁部31との境界部が)曲面状に形成されていてもよい。
【0024】
また、ケース3の側面の外側は、取付対象の筒状部100の内側に沿った形状になっている。すなわち、側壁部31は、筒状部100のうち断面の内周が正円又はほぼ正円の部分に収容されている。また、閉塞端部32は、筒状部100のうち断面の内周が長穴状又は角丸長方形状の部分に収容されている。ケース3の側面は取付対象の筒状部100によって全周にわたり包囲されており、取付対象の内面はケース3の側面に対応する形状になっているため、ケース3の内圧が上昇した場合であってもケース3の側面は開裂が抑止される。また、長穴状又は角丸長方形状の部分の内径は、正円又はほぼ正円の部分の内径よりも所定方向に小さくなっている。ケース3の外径が基端側よりも先端側が小さくなった部分が平面部としてケース3の閉塞端部32の側に相対して2カ所形成され、筒状部100もその平面部に補完的に対向しているため、ケース3の内圧が上昇した場合にケース3の全体が上方に射出されることが抑止される。よって、ケース3の内圧が上昇した場合、又はガス発生剤4の燃焼により生じる燃焼生成物の温度によりケース3が溶融する場合には、まず閉塞端部32の脆弱部321が開裂し開口が形成される。また筒状部100内でガス発生器1が回転することも防止される。
【0025】
<ガス発生剤>
ガス発生剤4には、所定のガス発生剤が用いられる。ガス発生剤4の燃焼温度は、例えば1000~1700℃である。ガス発生剤4は、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物によって形成される。ガス発生剤4の個々の形状は、単孔円柱状のものを用いることができる。但し、ガス発生剤4は、上記に限定されず、ニトロセルロース系の組成を使用することもできる。
【0026】
<動作>
ガス発生器1が例えば自動車のシートベルトリトラクター10に組み付けられた状態では、コネクタ5が2つの導電ピン215と接続されており、点火器21に対して給電可能になっている。この状態で、自動車等に搭載されたセンサ(図示せず)が衝撃を感知すると、導電ピン215に着火電流が供給され、点火器21が作動する。点火器21は、カップ体211内の点火薬214を燃焼させ、その燃焼生成物をカップ体211の外部に放出させる。また、点火薬214の燃焼生成物である火炎や燃焼ガスにより、燃焼室6に充填されたガス発生剤4が着火する。ガス発生剤4は、燃焼することで燃焼生成物として燃焼ガス等を生成する。
【0027】
ケース3の側面は取付対象の筒状部100によって全周にわたり包囲されており、取付対象の内面はケース3の側面に対応する形状になっているため、ケース3の内圧が上昇した場合であってもケース3の側面は開裂が抑止される。また、ケース3の外径が基端側よりも先端側が小さくなった部分を含むため、ケース3の内圧が上昇した場合にケース3の全体が上方に射出されることが抑止される。よって、ケース3の内圧が上昇した場合、又はガス発生剤4の燃焼により生じる燃焼生成物の温度によりケース3が溶融する場合には、専ら閉塞端部32の脆弱部321が開裂し開口が形成される。このとき、ケース3のうち脆弱部321以外の部分が小片となって飛散することは抑止される。また、開裂する脆弱部321は閉塞端部32の断面にくらべ十分に小さく、破片が生じるとしてもガス発生剤4の燃焼生成物により燃やし尽くされるため、取付対象の内部にケース3の破片が侵入することは抑制される。
【0028】
また、開口からは、燃焼ガスが、例えば取付対象であるシートベルトリトラクターの内部へ排出される。そして、排出された燃焼ガスは、シートベルトリトラクターが有する所定の機構を動作させる。なお、シートベルトリトラクターは既存の構成を採用することが
できる。例えば、ガス発生器1はシートベルトリトラクターの一部であるパイプの一端に接続され、燃焼ガスの圧力によりパイプ内の鋼球を移動させる。また、移動する鋼球によってギアを回転させ、ギアの回転を動力にしてシートベルトを巻き取ることでシートベルトリトラクターはシートベルトにプリテンションをかける。このとき、ガス発生器1は閉塞端部32の中央に1つの脆弱部321を有するため、パイプが延在する方向に排出するガスの流れる方向を集中させることができ、効率的にシートベルトリトラクターへ力を伝達させることができる。
【0029】
<実施形態2>
図3は、第2の実施形態に係るガス発生器の一例を示す概略断面図である。なお、上述した第1の実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0030】
本実施形態に係るケース3の脆弱部321Aは、ケース3の内側に設けられた環状傾斜部323の先端の延長上に形成され、周囲の肉厚部322よりも薄肉化されている点で第1の実施形態と共通する。ただし、ケース3の内部空間は、その先端部が円錐台状の空洞になっており、環状傾斜部323の先端326は面状である。また、ケース3の閉塞端部32の外側は面一になっている。
【0031】
なお、
図3の例ではケース3の側面外周も面一になっているが、
図1及び
図2に示すように、ケース3の先端部の断面は、その径が所定方向に小さい長円状又は角丸長方形状であってもよい。
【0032】
このようなガス発生器1も、ケース3の側面は取付対象の筒状部100によって全周にわたり包囲されており、取付対象の内面はケース3の側面に対応する形状になっているため、ケース3の内圧が上昇した場合であってもケース3の側面は開裂が抑止される。よって、ケース3の内圧が上昇した場合、又はガス発生剤4の燃焼により生じる燃焼生成物の温度によりケース3が溶融する場合には、専ら閉塞端部32の脆弱部321Aが開裂し開口が形成される。このとき、ケース3のうち脆弱部321以外の部分が小片となって飛散することは抑止される。また、開裂する脆弱部321Aは閉塞端部32の断面にくらべ十分に小さく、ガス発生剤4の燃焼生成物により燃やし尽くされ、取付対象の内部にケース3の破片が侵入することは抑制される。
【0033】
<比較例>
図4は、比較例に係るガス発生器の一例を示す概略断面図である。なお、上述した第1、第2の実施形態における構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0034】
図4の例では、環状傾斜部323を有しておらず、ケース3の内部空間は、全長にわたり円柱状になっている。また、閉塞端部32の内側の中央には凹部が形成され、凹部の先端326は、周囲の肉厚部322よりも薄肉化された脆弱部321Bを形成する。ケース3は、環状傾斜部323を有しない場合、側壁部31と閉塞端部32との間に形成される屈曲部325Bにも応力が集中する。よって、脆弱部321Bが開裂するだけでなく、閉塞端部32は脆弱部321Bから放射状に裂け、屈曲部325Bを中心に閉塞端部32が90度程度外側に展開しやすくなる。また、閉塞端部32が90度程度外側に開いた場合、さらに屈曲部325Bが裂け、閉塞端部32の破片が飛散する可能性がある。
【0035】
一方、第1の実施形態や第2の実施形態に示した環状傾斜部323は、ケース3の内圧が上昇した場合に、ケース3の先端方向よりもケース3の側方を向く力を受ける。しかしながら、ケース3の側方を包囲する取付対象の筒状部100が、屈曲部325を中心とし
た閉塞端部32の展開を抑止するため、閉塞端部32が破片となって飛散することを抑制できる。
【0036】
<その他>
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。例えば、第1の実施形態において、環状傾斜部323の先端は、第2の実施形態に示したような端面であってもよい。また、第2の実施形態において、閉塞端部32の外側にも、第1の実施形態に示したような凹部をさらに設けるようにしてもよい。また、第2の実施形態において、環状傾斜部323の先端326は、第1の実施形態に示したような頂点324であってもよい。また上記の実施形態において、ガス発生器1の縦断面における環状傾斜部323の輪郭は直線でなくてもよく、肉厚部322が確保されれば多少曲線が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1、1B:ガス発生器
2:点火装置
21:点火器
211:カップ体
212:絶縁層
213:封止部材
214:点火薬
215:導電ピン
22:点火器保持部
23:固定部
231:第1固定部
232:第2固定部
3:ケース
31:側壁部
32:閉塞端部
321、321A:脆弱部
322:肉厚部
323:環状傾斜部
324:頂点
325:屈曲部
326:先端
4:ガス発生剤
5:コネクタ
6:燃焼室
10:シートベルトリトラクター
100:筒状部(取付対象)