(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】積層型熱交換器及び熱交換ユニット
(51)【国際特許分類】
F28F 23/02 20060101AFI20250821BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20250821BHJP
F28D 21/00 20060101ALI20250821BHJP
F25D 3/10 20060101ALN20250821BHJP
【FI】
F28F23/02 A
F28D9/00
F28D21/00 B
F25D3/10 F
(21)【出願番号】P 2022082377
(22)【出願日】2022-05-19
【審査請求日】2024-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋平
(72)【発明者】
【氏名】三輪 泰健
(72)【発明者】
【氏名】東 正高
(72)【発明者】
【氏名】野一色 公二
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166775(JP,A)
【文献】特開2001-116198(JP,A)
【文献】特開平11-051578(JP,A)
【文献】特開2019-178705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0274500(US,A1)
【文献】特開平9-318218(JP,A)
【文献】特開2017-190829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 23/02
F17C 9/02-9/04
F25D 3/10
F28D 21/00
F28D 9/00-9/04
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加温対象流体が導入される低温流路が形成された低温層と、
前記低温層に隣接して積層され、中間媒体が導入される第1高温流路を有する第1高温層と、
前記第1高温層と隣接して積層され、加温媒体が導入される第2高温流路を有する第2高温層とを備え、
前記中間媒体は、前記第1高温流路内において前記加温対象流体及び前記加温媒体と熱交換しても液状態を維持する-80℃以下の凝固点を有するアルコール又はアルコール水溶液からなる、積層型熱交換器。
【請求項2】
前記加温媒体は、前記第2高温流路内において前記加温対象流体及び前記中間媒体と熱交換しても液状態を維持する-80℃以下の凝固点を有するアルコール又はアルコール水溶液からなる、請求項1に記載の積層型熱交換器。
【請求項3】
前記中間媒体と前記加温媒体とは同じ種類の流体からなり、
前記第1高温流路と前記第2高温流路とを互いに連通させる折り返しヘッダを有する、請求項2に記載の積層型熱交換器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の積層型熱交換器と、
前記積層型熱交換器から流出した中間媒体が流れる中間媒体流路と、
前記中間媒体流路を流れる中間媒体から直接的に又は間接的に前記中間媒体の冷熱を回収する熱交換器と、を備えている、熱交換ユニット。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の積層型熱交換器と、
前記積層型熱交換器から前記中間媒体及び前記加温媒体として機能する流体を流出させる流体流路と、
前記流体流路を流れる流体から直接的に又は間接的に前記流体の冷熱を回収する熱交換器と、を備えている、熱交換ユニット。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の積層型熱交換器と、
前記積層型熱交換器から流出した加温媒体が流れる加温媒体流路と、
前記積層型熱交換器から流出した中間媒体が流れる中間媒体流路と、
前記加温媒体流路を流れる加温媒体と前記中間媒体
流路を流れる中間媒体との間で熱交換を行う加熱用熱交換器と、を備え、
前記加熱用熱交換器で加温媒体によって加熱された中間媒体が前記積層型熱交換器に導入される、熱交換ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型熱交換器及び熱交換ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス等の低温の加温対象流体を気化させる気化装置が知られている。この種の気化装置として、下記特許文献1に開示されているように、中間媒体を介して熱源媒体と加温対象流体との間で熱交換を行って加温対象流体を気化させる中間媒体式の気化装置がある。特許文献1に開示された気化装置では、プロパンからなる中間媒体がケーシング内に収容されており、ケーシング内の下部において、液状の中間媒体が温水等の熱源媒体の熱を受けて気化する。そして、この気化した中間媒体は、ケーシング内の上部において、加温対象流体を気化させて凝縮する。このように中間媒体はケーシング内において気化及び凝縮を繰り返す。中間媒体式の気化装置では、中間媒体の潜熱を利用した熱交換が行なわれるため、高い熱交換効率を有する。したがって、大量の加温対象流体を気化させることができる。また、中間媒体が用いられるため、温水等の熱源媒体が凍結することも抑制されている。さらに、特許文献1に開示された気化装置では、低温で液状の中間媒体の冷熱をケーシングの外部で利用するための循環流路が設けられているため、中間媒体に付与された加温対象流体の冷熱をケーシングの外部で利用することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された中間媒体式の気化装置では、熱源媒体の凍結を抑制しつつ、大量の加温対象流体を気化させることが可能である。その一方で、中間媒体の気化及び凝縮を繰り返させる必要があるため、ガス状の中間媒体を液状の中間媒体に凝縮させるための部位と、液状の中間媒体がガス状の中間媒体に気化させるための部位とが必要となる。したがって、中間媒体を介在させて熱源媒体と加温対象流体との間で熱交換を行うことによって熱源媒体の凍結を抑制するという技術を、低温層と高温層とを有する積層型熱交換器にそのまま適用することはできない。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、積層型熱交換器において、中間媒体を介在させて加温対象流体と加温媒体との間で熱交換できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る積層型熱交換器は、加温対象流体が導入される低温流路が形成された低温層と、前記低温層に隣接して積層され、中間媒体が導入される第1高温流路を有する第1高温層と、前記第1高温層と隣接して積層され、加温媒体が導入される第2高温流路を有する第2高温層とを備える。前記中間媒体は、前記第1高温流路内において前記加温対象流体及び前記加温媒体と熱交換しても液状態を維持する-80℃以下の凝固点を有するアルコール又はアルコール水溶液からなる。
【0007】
本発明に係る積層型熱交換器では、中間媒体として、加温対象流体及び加温媒体と熱交換しても液状態を維持する-80℃以下の凝固点を有するアルコール又はアルコール水溶液が採用されているため、ガス状の中間媒体を液状の中間媒体に凝縮させるための部位も、液状の中間媒体をガス状の中間媒体に気化させるための部位も不要である。しかも、中間媒体が流れる第1高温層が低温層と第2高温層との間に位置しているため、加温対象流体と加温媒体との間で熱交換が行われる際に、第2高温層を流れる加温媒体の凍結を抑制することができる。したがって、積層型熱交換器において、中間媒体を介在させながら加温対象流体と加温媒体との間で熱交換を行うことができる。また、中間媒体の気化及び凝縮を伴いながら熱交換を行う従来の中間媒体式の気化装置のように、中間媒体の気化及び凝縮が行われるようにするための装置設計も必要ない。アルコール又はその水溶液としては、-80℃以下の凝固点を有するアルコール又はその水溶液が採用される。より好ましくは-100℃以下の凝固点を有するアルコール又はその水溶液を採用することができる。これらの凝固点を有する中間媒体ならば、低温においても粘性が低いため,ポンプ動力の削減が期待できる。
【0008】
前記加温媒体は、前記第2高温流路内において前記加温対象流体及び前記中間媒体と熱交換しても液状態を維持する-80℃以下の凝固点を有するアルコール又はアルコール水溶液からなるものでもよい。この態様では、加温媒体が第2高温流路内で液状体を維持するため、加温媒体の凍結を回避できる。
【0009】
前記中間媒体と前記加温媒体とは同じ種類の流体でもよい。この場合、前記積層型熱交換器は、前記第1高温流路と前記第2高温流路とを互いに連通させる折り返しヘッダを有してもよい。
【0010】
この態様では、加温媒体と中間媒体が同じ流体によって構成されるため、加温媒体のための設備(例えば加温媒体を循環させるための設備、加温媒体を供給するための設備等)及び中間媒体のための設備(例えば中間媒体を循環させるための設備、中間媒体を供給するための設備等)のそれぞれを別個に備える必要がなく、共通化できる。また、第1高温流路と第2高温流路とに別々の供給源から流体を供給しなくて済むため、加温媒体及び中間媒体としての流体供給量を全体として減らすことができる。
【0011】
本発明に係る熱交換ユニットは、前記積層型熱交換器と、前記積層型熱交換器から流出した中間媒体が流れる中間媒体流路と、前記中間媒体流路を流れる中間媒体から直接的に又は間接的に前記中間媒体の冷熱を回収する熱交換器と、を備えている。この態様では、加温対象流体によって冷却された中間媒体の冷熱を、熱交換器において回収することができる。
【0012】
本発明に係る熱交換ユニットは、前記積層型熱交換器と、前記積層型熱交換器から前記中間媒体及び前記加温媒体として機能する流体を流出させる流体流路と、前記流体流路を流れる流体から直接的に又は間接的に前記流体の冷熱を回収する熱交換器と、を備えている。この態様では、加温対象流体によって冷却された中間媒体として機能する流体の冷熱を、熱交換器において回収することができる。
【0013】
本発明に係る熱交換ユニットは、前記積層型熱交換器と、前記積層型熱交換器から流出した加温媒体が流れる加温媒体流路と、前記積層型熱交換器から流出した中間媒体が流れる中間媒体流路と、前記加温媒体流路を流れる加温媒体と前記中間媒体流路を流れる中間媒体との間で熱交換を行う加熱用熱交換器と、を備え、前記加熱用熱交換器で加温媒体によって加熱された中間媒体が前記積層型熱交換器に導入される。
【0014】
この態様では、加熱用熱交換器において、加温媒体によって中間媒体を加熱し、この加熱された中間媒体が積層型熱交換器に導入される。したがって、積層型熱交換器内での中間媒体の温度が高くなるため、積層型熱交換器内での加温媒体の凍結リスクをさらに低減できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、積層型熱交換器において、中間媒体を介在させて加温対象流体と加温媒体との間で熱交換させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る熱交換ユニットの概略図である。
【
図2】前記熱交換ユニットに設けられた積層型熱交換器の概略図である。
【
図3】前記積層型熱交換器の中の積層体の構成を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態の変形例に係る熱交換ユニットの概略図である。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る熱交換ユニットの概略図である。
【
図6】第2実施形態に係る熱交換ユニットの概略図である。
【
図7】第2実施形態に係る積層型熱交換器の中の積層体の構成を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る熱交換ユニットの概略図である。
【
図9】第2実施形態の変形例に係る熱交換ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る熱交換ユニット10は、積層型熱交換器12と、積層型熱交換器12に接続され、加温対象流体が流れる加温対象流体流路14と、積層型熱交換器12に接続され、加温媒体が流れる加温媒体流路16と、積層型熱交換器12に接続され、中間媒体が流れる中間媒体流路18と、を備えている。積層型熱交換器12は、後述するように、中間媒体を介在させつつ加温媒体と加温対象流体との間で熱交換させるように構成されている。
【0019】
加温対象流体流路14は、積層型熱交換器12に加温対象流体を流入させる流入流路14aと、積層型熱交換器12から熱交換後の加温対象流体を流出させる流出流路14bと、を含む。
【0020】
加温媒体流路16は、積層型熱交換器12に加温媒体を流入させる流入流路16aと、積層型熱交換器12から熱交換後の加温媒体を流出させる流出流路16bと、を含む。加温媒体流路16には、加温媒体を流通させるためのポンプ20が配置されている。なお、加温媒体流路16が後述するように閉ループを構成する場合には、ポンプ20は、流入流路16a及び流出流路16bの少なくとも一方に設けられていればよい。
【0021】
加温媒体流路16の流入流路16a及び流出流路16bが加温媒体の貯留部(加温媒体貯留部22)に接続されて、加温媒体流路16が加温媒体貯留部22と積層型熱交換器12との間で加温媒体を循環させる閉ループを構成していてもよい。ただし、加温媒体流路16は、閉ループを構成していなくてもよい。つまり、流入流路16a及び流出流路16bが互いに連通していなくてもよい。
【0022】
中間媒体流路18は、積層型熱交換器12に中間媒体を流入させる流入流路18aと、積層型熱交換器12から熱交換後の中間媒体を流出させる流出流路18bと、を含む。
【0023】
中間媒体流路18の流入流路18a及び流出流路18bが中間媒体の貯留部(中間媒体貯留部26)に接続されて、中間媒体流路18が中間媒体貯留部26と積層型熱交換器12との間で中間媒体を循環させる閉ループを構成していてもよい。中間媒体流路18には、中間媒体を流通させるためのポンプ24が配置されている。なお、中間媒体流路18が閉ループとなっているため、ポンプ24は、流入流路18a及び流出流路18bの少なくても一方に配置されていればよい。ただし、中間媒体流路18は、閉ループを構成せずに、流入流路18a及び流出流路18bが互いに連通しない構成としてもよい。
【0024】
加温対象流体としては、液化天然ガス(LNG)、液化窒素(LN2)、液体アンモニア、液体水素(LH2)等の極低温の液化ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス等の低温ガスを例示できる。加温媒体としては、水蒸気、温水等を例示できる。中間媒体は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールまたはブタノール等のアルコール又はその水溶液を例示できる。アルコール又はその水溶液としては、-80℃以下の凝固点を有するアルコール又はその水溶液が採用される。なお、-100℃以下の凝固点を有するアルコール又はその水溶液を採用することもできる。これらのアルコールはグリコールよりも粘性が低いため、グリコールを用いる場合に比べ、圧力損失を低減(ポンプ動力の削減)できる。
【0025】
熱交換ユニット10には、中間媒体の冷熱を回収する熱交換器30が設けられている。熱交換器30は、中間媒体貯留部26に両端部が接続された回収路32に接続されている。回収路32には、ポンプ34が設けられている。ポンプ34が作動すると、中間媒体貯留部26に貯留された中間媒体は、回収路32を流れ、熱交換器30において、他の流体と熱交換する。これにより、中間媒体の冷熱により他の媒体が冷却される。すなわち、熱交換器30は、中間媒体流路18を流れる中間媒体から間接的に中間媒体の冷熱を回収する。熱交換器30を通過した中間媒体は中間媒体貯留部26に戻される。他の媒体は、例えば、室内を冷却するための空気であってもよい。
【0026】
積層型熱交換器12は、いわゆるマイクロチャネル熱交換器によって構成されている。すなわち、積層型熱交換器12は、
図2及び
図3に示すように、低温層37と第1高温層38と第2高温層39とを含む積層体36と、積層体36に固定されたヘッダ41~46とを備えている。低温層37には、加温対象流体が導入される複数の低温流路37aが形成されている。第1高温層38には、中間媒体が導入される複数の第1高温流路38aが形成されている。第2高温層39には、加温媒体が導入される複数の第2高温流路39aが形成されている。
【0027】
ヘッダ41~46には、複数の低温流路37aに加温対象媒体を分配する低温供給ヘッダ41と、複数の第1高温流路38aに中間媒体を分配する第1供給ヘッダ42と、複数の第2高温流路39aに加温媒体を分配する第2供給ヘッダ43と、複数の低温流路37aを流れた加温対象媒体を合流させる低温集合ヘッダ44と、複数の第1高温流路38aを流れた中間媒体を合流させる第1集合ヘッダ45と、複数の第2高温流路39aを流れた加温媒体を合流させる第2集合ヘッダ46と、が含まれている。低温供給ヘッダ41は、加温対象流体流路14における流入流路14aに接続され、低温集合ヘッダ44は、加温対象流体流路14における流出流路14bに接続されている。第1供給ヘッダ42は、中間媒体流路18における流入流路18aに接続され、第1集合ヘッダ45は、中間媒体流路18における流出流路18bに接続されている。第2供給ヘッダ43は、加温媒体流路16における流入流路16aに接続され、第2集合ヘッダ46は、加温媒体流路16における流出流路16bに接続されている。
【0028】
積層体36は、熱伝導性の高い金属材で構成されている。
図3に示すように、積層体36においては、低温層37に第1高温層38が隣接し、第1高温層38に第2高温層39が隣接し、第2高温層39に別の第1高温層38が隣接し、この別の第1高温層38に別の低温層37が隣接し、この別の低温層37にさらに別の第1高温層38が隣接している。つまり、第1高温層38が低温層37と第2高温層39とによって挟まれるように、低温層37、第1高温層38及び第2高温層39が積層されている。
【0029】
低温層37は、扁平な領域であり、複数の低温流路37aが並ぶように形成されている。第1高温層38も扁平な領域であり、複数の第1高温流路38aが並ぶように形成されている。第2高温層39も扁平な領域であり、複数の第2高温流路39aが並ぶように形成されている。
【0030】
積層型熱交換器12では、加温対象流体が低温供給ヘッダ41を通して各低温流路37aに流入し、中間媒体が第1供給ヘッダ42を通して各第1高温流路38aに流入し、加温媒体が第2供給ヘッダ43を通して各第2高温流路39aに流入する。そして、積層体36において、低温流路37aを流れる液状の加温対象流体が、第2高温流路39aを流れる加温媒体の熱を受けて加熱される。このとき、加温対象流体が液状であれば気化するが、加温媒体と加温対象流体との熱交換が中間媒体を介して行われることになるため、加温媒体が凝固することが抑制されている。また、中間媒体は、加温対象流体によって冷却されるが、凝固せず、また、加温媒体によって加熱されるが、蒸発しない。したがって、中間媒体は、液状のまま第1高温流路38aを流れる。
【0031】
各低温流路37aを流れた加温対象流体は、低温集合ヘッダ44を通して合流し、加温対象流体流路14における流出流路14bに排出される。各第1高温流路38aを流れた中間媒体は、第1集合ヘッダ45を通して合流し、中間媒体流路18における流出流路18bに排出される。各第2高温流路39aを流れた加温媒体は、第2集合ヘッダ46を通して合流し、加温媒体流路16における流出流路16bに排出される。
【0032】
なお、加温媒体貯留部22に貯留される加温媒体の温度、加温媒体流路16における流出流路16bを流れる加温媒体の温度及び加温媒体流路16における加温媒体の流量を測定してもよい。この場合において、加温媒体の温度が低下した場合、すなわち凍結リスクが高くなったときに、加温媒体を加熱する、又は加温媒体の流量を増やすなどの制御を付加してもよい。この場合、加温媒体の凍結リスクをより一層低減することができる。
【0033】
また、中間媒体貯留部26に貯留される中間媒体の温度、中間媒体流路18における流出流路18bを流れる中間媒体の温度、中間媒体流路18における中間媒体の流量を測定してもよい。この場合において、中間媒体の温度が低下した場合,すなわち凍結リスクが高くなったときには、中間媒体を加熱する(例えば,熱交換器30おいて他の媒体と熱交換する)、又は中間媒体の流量を増やすなどの制御を付加してもよい。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の積層型熱交換器12では、中間媒体として、加温対象流体及び加温媒体と熱交換しても液状態を維持する-80℃以下の凝固点を有するアルコール又はアルコール水溶液が採用されている。このため、ガス状の中間媒体を液状の中間媒体に凝縮させるための部位も、液状の中間媒体をガス状の中間媒体に気化させるための部位も不要である。しかも、中間媒体が流れる第1高温層38が低温層37と第2高温層39との間に位置しているため、加温対象流体と加温媒体との間で熱交換が行われる際に、第2高温層39を流れる加温媒体の凍結を抑制することができる。したがって、積層型熱交換器12において、中間媒体を介在させながら加温対象流体と加温媒体との間で熱交換を行うことができる。また、中間媒体の気化及び凝縮を伴いながら熱交換を行う従来の中間媒体式の気化装置のように、中間媒体の気化及び凝縮が行われるようにするための装置設計も必要ない。
【0035】
なお、本実施形態では、中間媒体を貯留する中間媒体貯留部26は、
図1に示すように1つのタンクで構成されているが、これに限られない。例えば、中間媒体貯留部26は、中間媒体流路18の流入流路18aに設けられた第1タンクと、中間媒体流路18の流出流路18bに設けられた第2タンクと分けられてもよい。この場合、回収路32における上流端が第1タンクに接続され、回収路32における下流端が第2タンクに接続される。つまり、第1タンクには、積層型熱交換器12から流出し、熱交換器30において他の媒体と熱交換する前の低温の中間媒体が貯留され、第2タンクには、熱交換器30において他の媒体と熱交換した後の中間媒体が貯留される。
【0036】
中間媒体貯留部26が第1タンクと第2タンクに分けられる場合には、運用の自由度を上げることができる。したがって、冷熱の需給変動が大きく、起動停止が多いような用途に好適である。なお、第1タンクの容量と第2タンクの容量は必ずしも一致しなくてもよい。
【0037】
図1に示す構成では、熱交換器30が回収路32に接続されているがこの構成に限られない。例えば、
図4に示すように、熱交換器30は、中間媒体流路18の流出流路18bに接続されていてもよい。この場合の熱交換器30は、中間媒体流路18を流れる中間媒体から直接的に中間媒体の冷熱を回収する。
【0038】
この場合、積層型熱交換器12において冷熱を受け取った中間媒体から中間媒体貯留部26に戻る前に冷熱を回収できる。このため、中間媒体貯留部26において、熱交換器30における熱交換後の中間媒体との混合による温度上昇前に冷熱を回収できるため、より低い温度の冷熱を回収することができる。
【0039】
図1の熱交換ユニット10には、中間媒体から冷熱を回収するための熱交換器30が設けられているが、冷熱需要がない場合には、この熱交換器30を省略することができる。一方で、
図5に示すように、中間媒体を加熱するための加熱用熱交換器50を設けることが可能である。加熱用熱交換器50は、中間媒体流路18の流出流路18bと、加温媒体流路16の流出流路16bとに接続されており、加熱用熱交換器50において、加温媒体によって中間媒体を加熱する。これにより、中間媒体貯留部26に貯留される中間媒体及び積層型熱交換器12に導入される中間媒体の温度を高めることができる。すなわち、加熱用熱交換器50では、加温対象流体が存在しない状態で加温媒体と中間媒体との間で熱交換が行われるため、温度域の高い状態での熱交換となり、また、相変化を伴わない熱交換である。このため、中間媒体を効果的に昇温させることができる。したがって、積層型熱交換器12内での中間媒体の温度も高くなるため、積層型熱交換器12内での加温媒体の凍結リスクをさらに低減できる。なお、加熱用熱交換器50は、積層型熱交換器12と一体的に形成されていてもよい。
【0040】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、第2実施形態の熱交換ユニット10では、加温媒体流路16が省略されており、積層型熱交換器12には、加温対象流体流路14と中間媒体流路18が接続されている。一方で、積層型熱交換器12の積層体36は、第1実施形態と同様に、低温層37と第1高温層38と第2高温層39とを有する。
【0042】
低温層37の複数の低温流路37aには、加温対象流体が加温対象流体流路14の流入流路14aから流入する。複数の低温流路37aを流れた加温対象流体は、加温対象流体流路14の流出流路14bに流出する。
【0043】
第2高温層39の複数の第2高温流路39aには、中間媒体が中間媒体流路18の流入流路18aから流入する。第1高温層38の複数の第1高温流路38aには、
図7に示すように、第2高温流路39aを流れた中間媒体が折り返しヘッダ52を経由して流入する。折り返しヘッダ52は、複数の第2高温流路39aと複数の第1高温流路38aとを互いに連通させるように設けられたヘッダである。複数の第1高温流路38aを流れた中間媒体は、中間媒体流路18の流出流路18bに流出する。すなわち、中間媒体流路18の流出流路18bは、積層型熱交換器12から中間媒体及び加温媒体として機能する流体を流出させる流体流路として機能する。したがって、第2実施形態の積層型熱交換器12では、第2高温流路39aを流れる中間媒体が加温媒体としての役割を果たしている。この形態では、第1実施形態に比べ、第2高温層39を流れる流体の温度が低くなるが、第2高温流路39aにおける凍結を抑制できる。
【0044】
図7に示す積層体36(積層型熱交換器12)では、1つの第2高温層39に含まれる複数の第2高温流路39aから、その両側に隣接する2つの第1高温層38に含まれる複数の第1高温流路38aに中間媒体が導入される。この場合、各第2高温流路39aの断面積と各第1高温流路38aの断面積とが同じであれば、第2高温流路39aにおける中間媒体の流速が第1高温流路38aにおける中間媒体の流速の2倍になる。したがって、流速の増加による熱伝達率の上昇により凍結リスクが低減される一方で、圧力損失が増加する。この場合において、圧力損失に制限がある場合は,第2高温流路39aの本数を多くしたり、第2高温流路39aの断面積を大きくする等の対処をすればよい。なお、第1高温流路38a内での中間媒体の凍結リスクが生じないように、第1高温流路38aにおける中間媒体の流速が低下しないようにすることが好ましい。
【0045】
なお、
図7の形態では、中間媒体流路18の流入流路18aから流入した中間媒体が複数の第2高温流路39aに流入し、その後折り返しヘッダ52を通過する構成であるが、この構成に限られない。すなわち、中間媒体流路18の流入流路18aから流入した中間媒体が複数の第1高温流路38aに流入し、第1高温流路38aを流れた中間媒体が、折り返しヘッダ52を通して複数の第2高温流路39aに流入する接続構造としてもよい。この場合も、中間媒体流路18の流出流路18bが、積層型熱交換器12から中間媒体及び加温媒体として機能する流体を流出させる流体流路として機能する。
【0046】
図6に戻る。同図に示すように、中間媒体流路18の流出流路18bには、他の媒体と中間媒体とを熱交換させ、中間媒体の冷熱を回収するための熱交換器30が設けられている。すなわち、熱交換器30は、中間媒体流路18を流れる中間媒体から直接的に中間媒体の冷熱を回収する。
【0047】
この形態では、熱交換器30における熱交換前の他の媒体の温度、熱交換器30における熱交換後の他の媒体の温度、他の媒体の流量を測定し、他の媒体の温度が低下した場合、すなわち凍結リスクが高くなった場合に、他の媒体を加熱する、または他の媒体の流量を増やすなどの制御を付加してもよい。これにより、他の媒体の凍結リスクを低減できる。
【0048】
また、中間媒体貯留部26の温度,熱交換器30における熱交換前の中間媒体の温度、中間媒体の流量を測定し、中間媒体の温度が低下した場合、すなわち凍結リスクが高くなった場合に、中間媒体を加熱する(この場合、冷熱回収用の媒体と熱交換する)、または中間媒体の流量を増やすなどの制御を付加してもよい。これにより、中間媒体の凍結リスクを低減することができる。
【0049】
第2実施形態では、中間媒体が積層型熱交換器12に導入される一方で、加温媒体は積層型熱交換器12に導入されない。このため、
図8に示すように、加温対象流体と熱交換した中間媒体を加熱する加熱器54が設けられてもよい。例えば、中間媒体貯留部26には、両端部が接続された回収路32が設けられている。加熱器54はこの回収路32に設けられている。加熱器54には、熱源媒体が流れる熱源媒体流路56が接続されており、加熱器54では、中間媒体と熱源媒体との間で熱交換が行われ、中間媒体が加熱される。すなわち、加熱器54は、中間媒体流路18を流れる中間媒体から間接的に中間媒体の冷熱を回収する熱交換器30としても機能する。
【0050】
加熱器54は、
図9に示すように、中間媒体流路18の流出流路18bに設けられてもよい。この加熱器54は、中間媒体流路18を流れる中間媒体から直接的に中間媒体の冷熱を回収する熱交換器30としても機能する。
【0051】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0052】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 :熱交換ユニット
12 :積層型熱交換器
16 :加温媒体流路
18 :中間媒体流路
30 :熱交換器
37 :低温層
37a :低温流路
38 :第1高温層
38a :第1高温流路
39 :第2高温層
39a :第2高温流路
50 :加熱用熱交換器
52 :折り返しヘッダ