(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】ガスセンサの校正方法およびその校正を用いたガスの測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/61 20060101AFI20250821BHJP
【FI】
G01N21/61
(21)【出願番号】P 2023544165
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2022051156
(87)【国際公開番号】W WO2022157208
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2024-11-01
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519326828
【氏名又は名称】エリシェンズ
【氏名又は名称原語表記】ELICHENS
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ジャロン ピエール
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0116629(US,A1)
【文献】特開2017-026582(JP,A)
【文献】特開2006-029836(JP,A)
【文献】特開2017-053680(JP,A)
【文献】特開2020-106528(JP,A)
【文献】特開2011-013126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサを校正するための方法であって、前記ガスセンサはガス中のガス種(G
x)の濃度(c
x)を決定することを目的とし、前記ガス種は吸収スペクトルバンド(Δ
x)における光を吸収することができ、前記ガスセンサは以下を含む:
- 前記ガスを収容するように構成されたチャンバ(10);
- 光源(11)、測定光検出器(20)および基準光検出器(20
ref)、ここで、前記光源(11)は入射光ビーム(12)を放射するように構成され、前記入射光ビームは前記チャンバを通って前記測定光検出器(20)および前記基準光検出器(20
ref)に向かって進む;
前記ガスセンサは、以下の通りである、
- 前記光源は、前記光源をある温度値まで上昇させるように、それを通過する供給電流を有するように構成される;
- 前記測定光検出器は、前記吸収スペクトルバンド(Δ
x)を含む測定スペクトルバンド(Δ
mes)において、前記光源によって放射され、前記チャンバ内に含まれる前記ガスを透過した光ビーム(14)の強度(I
mes(t))(測定強度と称される)を測定するように設計されている;
- 前記基準光検出器は、基準スペクトルバンド(Δ
ref)において、前記光源(11)によって放射された基準光ビームの基準強度(I
ref(t))を測定するように設計されている;
前記方法は、以下のステップを含む:
- (i) 非線形である、校正関数(f)を組み込む、ここで、前記校正関数は、前記基準光検出器によって前記基準スペクトルバンドにおいて測定された基準強度(I
ref)から、ガス種が存在しない場合での前記測定光検出器によって前記測定スペクトルバンドで測定された、強度(I
0)を推定することを可能にし、前記校正関数はパラメータ(θ)に依存する;
- (ii) 前記ガス種のゼロ濃度、またはゼロとみなされる濃度を含むガスで前記チャンバを満たす;
- (iii) 前記測定光検出器(20)で前記測定スペクトルバンドにおける測定強度(I
mes(k))を測定し、前記基準光検出器(20
ref)で前記基準スペクトルバンドにおける基準強度(I
ref(k))を測定し、異なる校正時点間でソース供給電流を変更しながら、ステップ(iii)を様々な校正時点(k)で繰り返す;
- (iv) (iii)の測定値から、前記校正関数のパラメータ(θ)を決定する。
【請求項2】
ステップ(iv)が、以下を含む、請求項1に記載の方法:
- iv-3) iv-2)から得られる比較を最小化する前記校正関数のパラメータ(θ)を決定する。
【請求項3】
ステップ(iii)中に、前記供給電流が、公称供給電流の-15%および+15%にそれぞれ対応する2つの極値の間で変化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
- ステップ(iii)が、前記ガスセンサを周囲温度(T
a)の異なる値にすることによって実行される;
- ステップ(iv)が、各周囲温度値に対応する校正関数(f
Ta)を得るために、各温度値について(iii)から得られる測定値を組み込んで実行される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
- ステップ(iii)が、前記ガスセンサを異なる周囲温度値にすることによって実行される;
- ステップ(iv)が、すべての前記周囲温度値に共通する校正関数を得るために、すべての前記温度値について、(iii)から得られる測定値を組み込んで実行される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記校正関数の1つのパラメータが、前記基準強度(I
ref)に適用される指数(α)を形成し、前記パラメータが、ステップ(iv)中に推定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
【請求項8】
前記校正関数が、以下のような分母に対する分子の比を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記分子が、前記基準強度に適用される第1の乗算パラメータを含む;
- 前記分母が、前記基準強度に適用される第2の乗算パラメータを含む;
- 前記第1の乗算パラメータおよび前記第2の乗算パラメータが、ステップ(iv)中に推定される。
【請求項9】
ガス中に存在するガス種(G
x)の量(c
x)を測定する方法であって、前記ガス種は、吸収スペクトルバンド(Δ
x)における光を吸収することができ、以下のステップを含む方法:
- a) 光源(11)と測定光検出器(20)との間にガスを配置し、前記光源(11)は入射光ビーム(12)を放射するように構成され、前記入射光ビームは前記ガスを通って前記測定光検出器(20)に向かって移動し、前記光源をある温度値まで上昇させるために、前記光源に供給電流を通過させる;
- b) 前記光源(11)を用いてガス(G)を照明する;
- c) 前記測定光検出器(20)で、前記吸収スペクトルバンド(Δ
x)を含む測定スペクトルバンド(Δ
mes)において、前記ガスを透過した光ビーム(14)の強度(I
mes(t))(測定強度と称される)を測定する;
- d) 基準光検出器(20
ref)で、基準スペクトルバンド(Δ
ref)において前記光源(11)によって放射される基準光ビームである、基準光ビーム(12
ref)の強度I
ref(t)(基準強度と称される)を測定する;
ステップb)~d)を測定時点(t)において実行し、
前記方法は、各測定時点において、以下を含む:
- f) ステップe)中に推定された前記強度と、ステップc)中に測定された前記測定強度とから、前記ガス種(G
x)の量(c
x(t))を推定する;
前記校正関数は、校正フェーズ中に確立されることを特徴とし、前記校正フェーズは、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法のステップ(i)~(iv)を実施することによって実行される。
【請求項10】
前記校正関数が、次のような方法で確立される、請求項9に記載の方法:
- ステップ(iii)が、前記ガスセンサを異なる値の周囲温度値にすることによって実行される;
- ステップ(iv)が、各周囲温度値に関連する校正関数を得るために、各温度値について(iii)から得られる測定値を組み込んで実行される;
【請求項11】
ガス中のガス種の濃度を決定することを目的とするガスセンサであって、前記ガス種は吸収スペクトルバンド(Δ
x)における光を吸収することができ、前記センサは以下を含む:
- 前記ガスを収容するように構成されたチャンバ(10);
- 光源(11)、測定光検出器(20)および基準光検出器(20
ref)、ここで、前記光源(11)は入射光ビーム(12)を放射するように構成され、前記入射光ビームは前記チャンバを通って前記測定光検出器(20)および前記基準光検出器(20
ref)に向かって進む;
前記ガスセンサは、以下の通りである、
- 前記光源をある温度値まで上昇させるために、供給電流が前記光源を通過する;
- 前記測定光検出器は、前記吸収スペクトルバンド(Δ
x)を含む測定スペクトルバンドにおいて、前記光源(11)によって放射され、前記チャンバ内に含まれるガスを透過した光ビーム(14)の強度(測定強度と称される)を測定するように設計されている;
- 前記基準光検出器は、基準スペクトルバンド(Δ
ref)において前記光源(11)によって放射された基準光ビームの基準強度(I
ref(t))を測定するように設計されている;
- 前記センサは、請求項1~8のいずれか一項に記載の確立された非線形校正関数を記憶し、前記測定光検出器によって測定された前記基準強度に前記校正関数を適用するようにプログラムされた処理ユニット(30)を含む。
【請求項12】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、黒色体または灰色体タイプの光源を用いて、光源から放射される(emit)光ビーム(light beam)の吸収を測定することによって、ガスを分析する光学的方法である。
【背景技術】
【0002】
ガスを分析するために光学的方法に頼ることは一般的である。センサは、ガスを構成する種が互いに異なるスペクトル吸収特性を有することに基づいて、ガスの組成を決定する(determine)ことができる。したがって、ガス種の吸収スペクトルバンドを知ることによって、その濃度は、Beer-Lambertの法則を用いて、ガスを通過する光の吸収を推定することによって決定することができる。この原理は、ガス中に存在するガス種の濃度を推定することを可能にする。
【0003】
最新の方法によると、分析されるガスは、光源と光検出器(測定光検出器と称される)との間に広がり、後者は、分析されるガスによって透過される光ビームを測定することを意図しており、光ビームはこのガスによって部分的に吸収される。光源は、通常、赤外線で放射される源(source)であり、使用される方法は、通常、NDIR検出と呼ばれ、NDIRは非分散赤外線を意味する。このような原理は、しばしば使用され、例えば、文献、米国特許第5026992号明細書、または国際公開第2007/064370号に記載されている。
【0004】
通常の方法は、一般に、光源によって放出される、基準光ビームと呼ばれる光ビームを測定することを含み、前記基準光ビームは、分析対象のガスによって吸収されないか、または無視できる程度にしか吸収されない。基準光ビームを測定することは、前記源によって放出される光ビームの強度を推定すること、または分析対象のガスによって吸収されない場合に測定光検出器によって検出される光ビームを推定することを可能にする。この技術は“ダブルビーム”と呼ばれる。ガスが存在する光ビームと、ガスが存在しない光ビームとを比較することで、ガスの吸収を特性化する(characterize)ことができる。これには、例えば、NDIR吸収分光法と呼ばれる技術を使用して、ガス中のガス種の量を決定することが含まれる。基準光ビームは、基準光検出器によって測定される。これは、測定光検出器とは異なる共振光検出器(resonance photodetector)であってもよく、光源に面して配置されるように設計され、基準光検出器は、基準光フィルタに関連付けられる。基準光フィルタは、分析対象のガスが顕著な吸収を示さない基準スペクトルバンドを定義する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、分析されるガスによる吸収がない場合に測定光検出器によって検出されるであろう光ビームを推定するための基準光ビームの使用が、重大な不確実性の源であることを証明できることを発見した。本発明者は、測定の精度を改善するような方法でこの不利益を克服できる方法を提案している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の主題は、ガスセンサを校正する(calibrate)ための方法であって、前記ガスセンサは、ガス中のガス種の濃度を決定することを目的としており、前記ガス種は吸収スペクトルバンドにおける光を吸収することができ、前記ガスセンサは、以下を含む:
- 前記ガスを含むように構成されたチャンバ;
- 光源、測定光検出器及び基準光検出器、ここで、前記光源は入射光ビームを放射するように構成され、前記入射光ビームは前記チャンバを通って前記測定光検出器及び前記基準光検出器に向かって進む(travel);
前記ガスセンサは、以下の通りである、
- 前記光源は、前記光源をある温度値(a temperature value)まで上昇させるように、供給電流が流れるように構成される;
- 前記測定光検出器は、前記吸収スペクトルバンドを含む測定スペクトルバンドにおいて、前記チャンバ内に含まれるガスによって伝達され、前記光源によって放射される光ビームの強度(測定強度と呼ばれる)を測定するように設計されている;
- 前記基準光検出器は、基準スペクトルバンドにおいて前記光源によって放射される基準光ビームの基準強度を測定するように設計されている;
前記方法は、以下のステップを含む:
- (i) 好ましくは非線形である校正関数を組み込む、ここで、前記校正関数は、ガス種の非存在下で前記測定光検出器によって前記測定スペクトルバンドにおいて測定された強度を、前記基準光検出器によって前記基準スペクトルバンドにおいて測定された基準強度から推定することを可能にし、前記校正関数はパラメータに依存する;
- (ii) ゼロ濃度、またはゼロとみなされる濃度の前記ガス種を含むガスで、前記チャンバを満たす;
- (iii) 前記測定光検出器に前記測定スペクトルバンド内の測定強度を測定させ、前記基準光検出器に前記基準スペクトルバンド内の基準強度を測定させ、異なる(different)校正時点(校正瞬間)(calibration instant)間でソース供給電流(source supply current)を変更しながら、ステップ(iii)を種々の校正時点で繰り返す;
- (iv) (iii)から得られる測定値(measurement)から、前記校正関数のパラメータを決定する。
【0007】
ステップ(i)は、前記校正関数の非線形パラメトリックモデル(nonlinear parametric model)を組み込むことを含んでいてもよい。前記パラメトリックモデルは、ステップ(iv)中に決定されるパラメータに依存する。
【0008】
ステップ(iv)は、以下を含んでいてもよい。
- iv-1) 各校正時点に測定された各基準強度から、前記校正関数を用いて前記測定光検出器から得られる測定強度を推定する;
- iv-2) 各供給電流値について、iv-1)中に推定された測定強度と、前記測定光検出器によって測定された測定強度とを比較する;
- iv-3) iv-2)から得られる前記比較(comparison)を最小化する前記校正関数のパラメータを決定する。
【0009】
ステップ(iii)中に、前記供給電流は、公称供給電流(nominal supply current)のそれぞれ-15%と+15%に対応する2つの極値の間で変化してもよい。
【0010】
一実施形態によれば、
- ステップ(iii)は、前記ガスセンサを周囲温度の異なる値にすることによって実行される;
- ステップ(iv)は、各周囲温度値に関連する校正関数を得るために、各温度値について、(iii)から得られた測定値を組み込んで実行される。
【0011】
一実施形態によれば、
- ステップ(iii)は、ガスセンサを異なる周囲温度値にすることによって実行される;
- ステップ(iv)は、すべての周囲温度値に共通の校正関数を得るために、すべての温度値について、(iii)から得られる測定値を組み込んで実行される。
【0012】
一実施形態によれば、校正関数の1つのパラメータは、前記基準強度に適用される指数を形成し、前記パラメータは、ステップ(iv)中に推定される。
【0013】
一実施形態によれば、前記校正関数の1つのパラメータは、ガス種が存在しない場合の測定スペクトルバンドにおける推定強度と、前記指数が適用される基準強度との間の比例関係を定義する比例パラメータであり、前記比例パラメータは、ステップ(iv)中に推定される。
【0014】
一実施形態によれば、前記校正関数は、以下のような分母に対する分子の比率を含む。
- 前記分子は、前記基準強度に適用される第1の乗算パラメータ(multiplicative parameter)を含む;
- 前記分母は、前記基準強度に適用される第2の乗算パラメータを含む;
- 前記第1の乗算パラメータ及び第2の乗算パラメータは、ステップ(iv)中に推定される。
【0015】
本発明の第2の主題は、ガス中に存在するガス種の量を測定するための方法であって、前記ガス種は吸収スペクトルバンドにおける光を吸収することができ、前記方法は、以下のステップを含む:
- a) 光源と測定光検出器との間にガスを配置し、光源は入射光ビームを放射するように構成され、前記入射光ビームはガスを通って前記測定光検出器に向かって進み、供給電流は前記光源をある温度値まで上昇させるように前記光源を通過する。
- b) 前記光源を用いてガスを照明する(illuminate);
- c) 前記測定光検出器に、吸収スペクトルバンドを含む測定スペクトルバンドにおいて、ガスによって透過される光ビームの強度(測定強度と呼ばれる)を測定させる;
- d) 基準光検出器に、基準スペクトルバンドにおいて、光源によって放射される基準光ビームの強度(基準強度と呼ばれる)を測定させる;
ステップb)~d)を測定時点で実行し、前記方法は、各測定時点で以下を含む:
- e) 前記基準光検出器によって測定された前記基準強度から、ガス種が存在しない場合の前記測定光検出器によって測定スペクトルバンドにおいて検出される光ビーム強度を推定するために、校正関数を組み込む;
- f) ステップe)中に推定された強度のステップc)中に測定された測定強度からガス種の量を推定する;
前記方法は、前記校正関数が、校正フェーズ中に確立されることを特徴とし、前記校正フェーズは、本発明の第1の主題に係る方法のステップ(i)~(iv)を実施することによって実行される。
【0016】
前記校正関数は、以下のような方法で確立してもよい:
- ステップ(iii)は、前記ガスセンサを異なる周囲温度値にすることによって実行される;
- ステップ(iv)は、各周囲温度値に関連する校正関数を得るために、各温度値について、(iii)から得られる測定値を組み込んで実行される。
- ステップe)は、以下を含む:
・ 前記ガスセンサの周囲における周囲温度を組み込む;
・ 前記周囲温度の関数として、前記校正関数を選択する。
【0017】
本発明の第3の主題は、ガス中のガス種の濃度を決定することを目的としたガスセンサであって、前記ガス種は吸収スペクトルバンドにおける光を吸収することができ、前記センサは以下を含む:
- 前記ガスを含むように構成されたチャンバ;
- 光源、測定光検出器及び基準光検出器、ここで、前記光源は入射光ビームを放射するように構成され、前記入射光ビームは前記チャンバを通って、前記測定光検出器及び前記基準光検出器に向かって移動する;
前記ガスセンサは、以下の通りである:
- 前記光源をある温度値まで上昇させるために、供給電流が前記光源を通過する;
- 前記測定光検出器は、吸収スペクトルバンドを含む測定スペクトルバンドにおいて、前記チャンバ内に含まれるガスによって透過され、光源によって放射される光ビームの強度(測定強度と呼ばれる)を測定するように設計されている;
- 前記基準光検出器は、基準スペクトルバンドにおいて光源によって放射される基準光ビームの基準強度を測定するように設計されている;
- 前記センサは、本発明の第1の主題によって確立された、好ましくは非線形である校正関数を記憶し(store)、前記測定光検出器によって測定された基準強度に前記校正関数を適用するようにプログラムされた処理ユニットを含む。
【0018】
一実施形態によれば、前記ガスセンサは、測定時点での周囲温度を測定するように構成された温度センサを含み、前記処理ユニットは、それぞれ異なる周囲温度に関連付けられた複数の校正関数の中から、前記周囲温度の関数として校正関数を選択するようにプログラムされている。
【0019】
本発明は、以下に列挙する図に関連して、本明細書の残りの部分に記載された実施形態の説明を読むことからよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、本発明を実施するために使用できるガスセンサの一例を示す。
【
図1B】
図1Bは、黒色体タイプの光源の発光スペクトルを概略的に示す。
【
図2A】
図2A及び
図2Bはそれぞれ、CO
2濃度及びCH
4濃度の測定における誤差を、測定光検出器に到達する光ビームの推定における誤差の関数として示す。
【
図2B】
図2A及び
図2Bはそれぞれ、CO
2濃度及びCH
4濃度の測定における誤差を、測定光検出器に到達する光ビームの推定における誤差の関数として示す。
【
図3】
図3は、ガスセンサを校正及び使用する方法における主なステップを示す。
【
図4A】
図4Aは、校正中に行われた、測定スペクトルバンドにおいて、測定光検出器に到達する光ビームの強度を、異なる校正時点で測定した測定値を示す。
図4Aはまた、基準光検出器によって基準スペクトルバンドにおいて測定された強度の関数として、各校正時点で、測定スペクトルバンドにおいて、測定された強度の推定値を示す。
【
図4B】
図4Bは、異なるガスセンサについて、異なる校正関数を組み込んだ、測定センサに到達する光ビームの強度の推定値と測定値との間の平均二乗誤差を示す。
【
図5A】
図5Aは、校正中に行われた、異なる校正時点での測定スペクトルバンドにおけるイメージセンサに到達する光ビームの強度の測定値を示す。
図5Aはまた、基準スペクトルバンドにおいて測定された強度の関数として、各校正時点での測定スペクトルバンドにおいて測定された強度の推定値を示す。
【
図5B】
図5Bは、異なるガスセンサについて、異なる校正関数を組み込んだ、測定センサに到達する光ビームの強度の推定値と測定値との間の平均二乗誤差を示す。
【
図6A】
図6Aおよび
図6Bは、本発明を実施した場合または実施しない場合のセンサに関する試験の例を示す。
【
図6B】
図6Aおよび
図6Bは、本発明の実施した場合または実施しない場合のセンサに関する試験の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特定の実施形態の概要
図1Aは、ガスG用のセンサ1の一例である。ガスGは、測定時点tでの量c
x(t)、例えば、濃度を求めるガス種G
xを含む。このガス種は、吸収スペクトルバンドΔ
xにおいて測定可能な割合の光を吸収する。
【0022】
ガスセンサ1は、内部空間を画定するチャンバ10を含み、その内部には、次のものが存在する:
- 光源11は、入射光ビームと呼ばれる光ビーム12を放射し、内部空間に広がるガスGを照明することができる。入射光ビーム12は、照明スペクトルバンド(illumination spectral band)Δ12にわたって広がる(extend over)。
- 光検出器20は、測定光検出器と呼ばれ、入射光ビーム12によるガスG(the latter)の照明効果の下で、ガスGによって透過される光ビーム14を検出するように構成されている。光ビーム14は、測定光ビームという用語で示される。それは、測定光検出器20により、ガス種Gxの吸収スペクトルバンドΔxの関数として定義される測定スペクトルバンドΔmesで検出される。
- 基準光検出器20refは、基準スペクトルバンドΔrefにおいて基準光ビームと呼ばれる光ビーム12refを検出するように構成されている。基準スペクトルバンドΔrefは、ガスGによる光ビーム12の吸収が無視できるとみなせるスペクトルバンドである。
【0023】
基準スペクトルバンドΔrefは、測定スペクトルバンドΔmesとは異なる。
【0024】
光ビーム11は、照明スペクトルバンドΔ12にわたって(across)入射光ビーム12を放射するように構成され、照明スペクトルバンドΔ12(the latter)は、近紫外~中赤外の間、例えば、200nm~10μmの間、通常は、1μm~10μmの間に広がることができる。分析されるガス種Gxに対する吸収スペクトルバンドΔxは、照明スペクトルバンドΔ12内に含まれる。光源11は、特にパルスビームであってよく、入射光ビーム12は、通常、100ms~1sの間の持続時間のパルスである。光源11は、特に、400℃~800℃の間の温度に加熱された懸垂フィラメントタイプ(suspended filament type)の光源であってよい。その発光スペクトルは、照明スペクトルバンドΔ12において、黒色体の発光スペクトルに対応する。
【0025】
測定光検出器20は、好ましくは、ガス種の吸収スペクトルバンドΔxの全部または一部を包含する測定スペクトルバンドΔmesを規定する光学フィルタ18と関連している。
【0026】
考慮された例では、測定光検出器20は、サーモパイルであり、検出された光ビームの強度に依存する信号を伝達することができる。あるいは、測定光検出器は、フォトダイオードまたは他のタイプの光検出器であってもよい。
【0027】
基準光検出器20refは、測定光検出器20の隣に配置され、同じ種類のものである。これは、基準光フィルタ18refと呼ばれる光学フィルタに関連付けられている。基準光フィルタ18refは、考慮されるガス種によって吸収されない波長の範囲に対応する基準スペクトルバンドΔrefを定義する。基準通過バンド(reference passband)Δrefは、例えば波長λref=3.91μm付近を中心とする。
【0028】
測定光検出器20によって検出され、測定強度と呼ばれる、測定時点tにおける光ビーム14の強度I
mes(t)は、以下のBeer-Lambertの関係に従って、測定時点の濃度c
x(t)に依存する:
【数1】
ここで、
- att
mesは、ガス種G
xの単位濃度に対するチャンバ10内のスペクトルバンドΔ
mesにおける光ビームの減衰に対応する定数である。この定数は、光源と測定光検出器との間のセンサ内の光路のプロット及び吸収ガスの吸収係数に基づいて計算できる。それは、校正によって決定してもよい。
- c
x(t)は、時点tでのガス種G
xの濃度である:
- I
0(t)は、時点tでの入射光ビームの強度であり、チャンバ内に吸収ガスがない場合に測定光検出器20に到達する測定スペクトルバンドΔ
mesにおける光ビームの強度に対応する。
【0029】
【0030】
式(1)は、測定時点tでの入射光ビーム12の強度I0(t)の制御を想定している。
【0031】
図1Bは、以下のプランクの法則に従う、黒色体タイプの光源11の発光スペクトルを示す:
【数2】
【0032】
光源11の発光スペクトルSは、光源が温度Tに達したときの、λの関数として、輝度L(λ、T)の変化に対応する。通常、温度Tは、400℃~800℃の間に含まれる。
【0033】
図1Bは、光源11の照明スペクトルバンドΔ
12を示しており、1μm~10μmの間に広がっている。基準波長λ
refおよび測定波長λ
mesも破線で示している。
【0034】
このタイプの光源は、光源の温度Tを変調する(modulate)だけで照明スペクトルSを変調できるため、特に有利である。したがって、各温度Tに対して、関連する照明スペクトルSがある。
【0035】
黒色体または灰色体タイプの光源の放射率は、時間の経過とともに変化する可能性があることが知られている。光源11の放射の時間的変化は、基準光検出器20refによって考慮される。基準光検出器20refは、光源11によって放射される入射光ビーム12を示す基準光ビーム12refを検出するように設計されている。基準光ビーム12refは、ガスGと相互作用することなく、またはガスGと大きな相互作用をすることなく、基準光検出器20refに到達する。
【0036】
【0037】
【0038】
式(1)を使用すると、次式のように、c
x(t)が得られる。
【数4】
【0039】
【0040】
- λ
ref=3.91μmのとき、及びλ
mes,x=4.26μmのとき、CO
2の吸収波長に対応する:
図2Aを参照;
- λ
ref=3.91μmのとき、及びλ
mes,x=3.25μmのとき、CH
4の吸収波長に対応する:
図2B参照。
【0041】
【0042】
(2)を考慮し、I
ref(t)及びI
0(t)は、各時点tについて、次の式で表すことができる。
【数5】
ここで、
- I(t)は、時点tでの光源によって放射される光の強度である;
- T(t)は、時点tでの光源の温度である;
- a
ref及びaは、光源、測定光検出器および基準光検出器の相対的な配置に依存する;
- μは式(2)に関連して定義される定数である。
【0043】
【0044】
【0045】
図3は、本発明の実施における主なステップを示す。校正フェーズ90において、校正関数が定義される。校正フェーズは、ステップ91~ステップ93を含む。次に、校正フェーズから得られた校正関数は、ガスセンサを使用するフェーズ:ステップ100~160中に使用される。
【0046】
【0047】
このステップでは、校正関数の分析モデルが定義される。分析モデルは、1つ以上のパラメータθによって定義される。量θは、モデルのパラメータまたはモデルのすべてのパラメータに対応する。
【0048】
【0049】
Zは正の実数係数である。このモデルによると、θ=Zである。
【0050】
【0051】
このモデルは次のとおりである:
【数7】
ここで、Z及びαは、正の実数である。
【0052】
このモデルは、式(6)と(7)を単純化することによって得られる。
【数8】
これにより、次の式が得られる:
【数9】
【0053】
【0054】
(10)と(11)とを組み合わせると、以下のようになる:
【数11】
【0055】
式(9)のモデルによると、θ=(Z,α)であり、
αは、予め決定されてもよいし、校正の過程で決定されてもよい。
【0056】
第3の分析モデルは、次のようなものであってもよい:
【数12】
【0057】
第3の分析モデルは、次の量を考慮して得られる:
【数13】
及び
k=0は、任意に選択された基準時点(reference instant)を指定する。通常、選択される時点は、ソースが公称電圧で電力供給される時点である。
【0058】
(10)、(15)および(16)から、
【数14】
【0059】
(17)から、T(k)は次のように表すことができる:
【数15】
【0060】
【0061】
(18)を使用すると、次のようになる:
【数17】
【0062】
【0063】
(21)と(22)とを組み合わせると、次のようになる:
【数19】
【0064】
波長λ
ref及びλmesについてそれぞれ広がるスペクトルバンドの幅を説明するために、式(23)は次のように一般化できる:
【数20】
【0065】
式(23)から得られるモデルを考慮する場合、式(13)または(24)、θ=(Z,γ,ξ,σ)またはθ=(Z,ξ,σ)のモデルに従う。Z,γ,ξ,σは正の実数である。
【0066】
【0067】
このモデルによると、θ=(Z,β)である。
・ステップ91:校正測定
【0068】
このステップの間、ガスセンサは、ガス種Gxを含まない、または無視できる量を含むガスにさらされる。したがって、各測定中に、Imes(k)=I0(k)である。Iref(k)及びImes(k)の測定は、異なる校正時点kで実施される。
【0069】
異なる校正時点の間に、光源11に供給される供給電流が変更される。したがって、光源11の端子間の電圧が変更される。これにより、光源を異なる温度レベルに上昇させることができる。電流の1つの同じ値に対して、Imes(k)及びIref(k)の異なる測定が行われる。
【0070】
通常、光源は、電流強度または電圧のいずれの観点で定義されるかに関係なく、公称電流値に関連付けられる。好ましくは、校正中に、供給電流は、それぞれ公称値の-15%から+15%の間で構成される2つの極値の間で変化する。
・ステップ92:パラメータθの推定
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
図4Aは21種類の異なる光源電源電流値からのセンサの校正測定結果を示す。供給電流値は、光源の公称電流値のそれぞれ-15%と+15%に対応する2つの極値の間で変化させた。センサは、EP3593119に記述された通りであった。毎秒1回の測定で4000回の測定を行い、測定されたガス種はCO
2であった。各校正時点kに、I
mes(k)及びI
ref(k)の測定を行った。すべての測定値から、校正関数のパラメータθを、式(8)、(9)、(23)及び(25)でそれぞれ説明したパラメトリックモデルを考慮して推定した。
図4Aは、時間(横軸(単位は秒))の関数として、次のことを示している:
【0075】
【0076】
図4Aに関連して記述された校正を14の異なるセンサで実施した。
図4Bは、各センサ(横軸)について、平均二乗誤差(縦軸上のMSE)を示し、MSEは、次の式を使用して得られる:
【数22】
【0077】
図4Bの曲線aおよびbは、それぞれ式(9)および(23)で確立されたパラメトリックモデルに対応する。曲線c)は、Z=1.11977の事前に確立された線形モデル(式(8))に対応する。モデルa)及びモデルb)が特に関連していることがわかる。
【0078】
光源供給電流の変動を低減することにより新しい校正を行った。供給電流値は公称光源電流値のそれぞれ5%と+5%に対応する2つの極値の間で変化させた。この間隔で、7つの異なる光源供給電流値を考慮した。
【0079】
1050の測定を毎秒1測定で行った。各校正時点kで、I
mes(k)及びI
ref(k)の測定を行った。すべての測定値から、式(8)、(9)、(23)及び(25)でそれぞれ説明したパラメトリックモデルを考慮して、校正関数のパラメータθを推定した。
図5Aは、時間(横軸-単位:秒)の関数として、次のことを示している:
【0080】
【0081】
図5Aに関連して説明されているような校正を14の異なるセンサで実施した。
図5Bは、各センサ(横軸)について、式(31)に従って得られたMSEである、平均二乗誤差(縦軸上のMSE)を示す。
図5Bにおいて、曲線a、bおよびcは、それぞれ式(8)、(9)、(23)に従って確立されたパラメトリックモデルに対応する。曲線dは、Z=1.11977の事前に確立された線形モデル(式(8))に対応する。モデルb)及びモデルc)が特に関連していることが分かる。
【0082】
次に、
図3に関連して、上述の校正関数を用いたガスセンサの使用について説明する。
ステップ100:測定時点tにおけるガスの照明;
ステップ110:基準光検出器20
refによる基準スペクトルバンドΔ
refにおける基準強度I
ref(t)の測定。
ステップ120:測定光検出器20による測定スペクトルバンドΔ
mesにおけるガスにより透過される放射線(radiation)14の強度I(t)の測定。
【数23】
ステップ150:前記吸収から、式(1)を適用した比率から、ガス種G
xの量c
x(k)の推定。
ステップ160:ステップ100~150を繰り返し、測定時点tをインクリメントするか、または、アルゴリズムを終了する。
【0083】
【0084】
【0085】