IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コクヨ株式会社の特許一覧 ▶ タカノ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-21
(45)【発行日】2025-08-29
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/46 20060101AFI20250822BHJP
【FI】
A47C7/46
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021141896
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023035229
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】黒尾 智也
(72)【発明者】
【氏名】村上 将太
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-184626(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001943(WO,A1)
【文献】特開平11-196973(JP,A)
【文献】特開2016-123729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/66
A47C 7/40-48
F16B 12/00-60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に長手をなす貫通孔が設けられた第一部品と、第一姿勢と当該第一姿勢とは異なる第二姿勢とを採り得るものであり前記第二姿勢において前記第一部品に対する装着状態が保持される第二部品とを備えた椅子であって、
前記第二部品が、前記第一姿勢を採る場合にのみ前記貫通孔を通過し得る通過可能部と、前記貫通孔を通過できない通過不能部と、前記通過可能部と前記通過不能部との間に介設され少なくとも一部が前記貫通孔内に配設される連結軸部とを備えたものであり、
前記貫通孔に前記通過可能部を通過させた後に、前記第二部品を前記連結軸部の軸心回りに回転させて前記第一姿勢から前記第二姿勢に姿勢変更することにより、当該第二部品が前記第一部品に対して装着されているものであり、
前記第一部品及び前記第二部品が、着座者の腰部を直接又は他の部材を介して間接的に支持し得るランバーサポートを構成するものであって、
前記第一部品が、背凭れを構成する部品又は背凭れに取り付けられた部品により構成されたランバーベースであり、
前記第二部品が、前記第一部品に対して左右方向にスライド移動可能に装着された複数のランバーパッドであり、
前記複数のランバーパッドは、別個独立に前記ランバーベースに対して左右方向にスライド移動可能なものとなっている椅子。
【請求項2】
所定方向に長手をなす貫通孔が設けられた第一部品と、第一姿勢と当該第一姿勢とは異なる第二姿勢とを採り得るものであり前記第二姿勢において前記第一部品に対する装着状態が保持される第二部品とを備えた椅子であって、
前記第二部品が、前記第一姿勢を採る場合にのみ前記貫通孔を通過し得る通過可能部と、前記貫通孔を通過できない通過不能部と、前記通過可能部と前記通過不能部との間に介設され少なくとも一部が前記貫通孔内に配設される連結軸部とを備えたものであり、
前記貫通孔に前記通過可能部を通過させた後に、前記第二部品を前記連結軸部の軸心回りに回転させて前記第一姿勢から前記第二姿勢に姿勢変更することにより、当該第二部品が前記第一部品に対して装着されているものであり、
前記第一部品及び前記第二部品が、着座者の腰部を直接又は他の部材を介して間接的に支持し得るランバーサポートを構成するものであって、前記第一部品が、背凭れを構成する部品又は背凭れに取り付けられた部品により構成されたランバーベースであり、前記第二部品が、前記第一部品に対して左右方向にスライド移動可能に装着された単数又は複数のランバーパッドであり、
前記背凭れが、左右の側枠材間にメッシュ状の張り部材が張設されたものであり、
前記ランバーベースが、前記左右の側枠材間に架設されたものであり、
前記ランバーパッドが、前記張り部材と前記ランバーベースとの間に配設され前記張り部材を後側から押圧し得る前記通過不能部であるパッド本体と、前記ランバーベースの背面側に位置し使用者が把持可能な前記通過可能部である操作体とを備えている椅子。
【請求項3】
前記貫通孔が、左右方向に長手をなし前後方向に貫通したものであり、且つ、上下幅寸法が略一定に設定されたものである請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記第二姿勢が、前記第一姿勢に対して約90°の角度で前記連結軸部における軸心回りに回転したものである請求項1、2又は記載の椅子。
【請求項5】
前記連結軸部が、前記貫通孔の短手寸法と略合致する値に設定された寸法部分を有した略角柱状のものである請求項1、2、3又は記載の椅子。
【請求項6】
前記第一部品が、前記貫通孔が形成された板状部分を備えたものであり、
前記板状部分は、少なくとも、前記第二部品が回転する際に前記連結軸部に押圧されて一時的に弾性変形し得るものであり、
前記第二部品は、前記板状部分の一時的な弾性変形によって、前記第一姿勢から前記第二姿勢への姿勢変更が許容されている請求項記載の椅子。
【請求項7】
前記第一部品と前記第二部品との間に、前記第二部品における前記第二姿勢から前記第一姿勢への逆戻りを抑制する逆戻り抑制手段が設けられている請求項1、2、3、4、5又は記載の椅子。
【請求項8】
前記通過可能部が、前記第一姿勢において前記貫通孔を前側から後側に向かって通過し得るものである請求項1、2、3、4、5、6又は記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、背凭れに着座者の腰部を支持し得るランバーサポートを設けた椅子が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
ランバーサポートを複数の部品により構成する場合には、一方の部品に対して他方の部品をねじ等の止着具を用いて装着するようにしているのが通常である。
【0004】
しかしながら、かかる構成のものは、一方の部品に対して他方の部品を装着するために止着具等の別部品が欠かせないものとなるため、装着作業を容易に実行し得る設計の自由度が制限されるだけでなく、作業工数や部品点数を抑制し難いものとなっていた。
【0005】
なお、以上の事情は、ランバーサポートに関連する部品間に限られるものではなく、椅子を構成する他の部品間においても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-084336号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、第一部品に対して第二部品を容易に取り付ける設計の自由度に優れた椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、所定方向に長手をなす貫通孔が設けられた第一部品と、第一姿勢と当該第一姿勢とは異なる第二姿勢とを採り得るものであり前記第二姿勢において前記第一部品に対する装着状態が保持される第二部品とを備えた椅子であって、前記第二部品が、前記第一姿勢を採る場合にのみ前記貫通孔を通過し得る通過可能部と、前記貫通孔を通過できない通過不能部と、前記通過可能部と前記通過不能部との間に介設され少なくとも一部が前記貫通孔内に配設される連結軸部とを備えたものであり、前記貫通孔に前記通過可能部を通過させた後に、前記第二部品を前記連結軸部の軸心回りに回転させて前記第一姿勢から前記第二姿勢に姿勢変更することにより、当該第二部品が前記第一部品に対して装着されているものであり、前記第一部品及び前記第二部品が、着座者の腰部を直接又は他の部材を介して間接的に支持し得るランバーサポートを構成するものであって、前記第一部品が、背凭れを構成する部品又は背凭れに取り付けられた部品により構成されたランバーベースであり、前記第二部品が、前記第一部品に対して左右方向にスライド移動可能に装着された複数のランバーパッドであり、前記複数のランバーパッドは、別個独立に前記ランバーベースに対して左右方向にスライド移動可能なものとなっている椅子である。
請求項2に記載の発明は、所定方向に長手をなす貫通孔が設けられた第一部品と、第一姿勢と当該第一姿勢とは異なる第二姿勢とを採り得るものであり前記第二姿勢において前記第一部品に対する装着状態が保持される第二部品とを備えた椅子であって、前記第二部品が、前記第一姿勢を採る場合にのみ前記貫通孔を通過し得る通過可能部と、前記貫通孔を通過できない通過不能部と、前記通過可能部と前記通過不能部との間に介設され少なくとも一部が前記貫通孔内に配設される連結軸部とを備えたものであり、前記貫通孔に前記通過可能部を通過させた後に、前記第二部品を前記連結軸部の軸心回りに回転させて前記第一姿勢から前記第二姿勢に姿勢変更することにより、当該第二部品が前記第一部品に対して装着されているものであり、前記第一部品及び前記第二部品が、着座者の腰部を直接又は他の部材を介して間接的に支持し得るランバーサポートを構成するものであって、前記第一部品が、背凭れを構成する部品又は背凭れに取り付けられた部品により構成されたランバーベースであり、前記第二部品が、前記第一部品に対して左右方向にスライド移動可能に装着された単数又は複数のランバーパッドであり、前記背凭れが、左右の側枠材間にメッシュ状の張り部材が張設されたものであり、前記ランバーベースが、前記左右の側枠材間に架設されたものであり、前記ランバーパッドが、前記張り部材と前記ランバーベースとの間に配設され前記張り部材を後側から押圧し得る前記通過不能部であるパッド本体と、前記ランバーベースの背面側に位置し使用者が把持可能な前記通過可能部である操作体とを備えている椅子である。
【0010】
請求項に記載の発明は、前記貫通孔が、左右方向に長手をなし前後方向に貫通したものであり、且つ、上下幅寸法が略一定に設定されたものである請求項1又は2記載の椅子である。
【0011】
請求項に記載の発明は、前記第二姿勢が、前記第一姿勢に対して約90°の角度で前記連結軸部における軸心回りに回転したものである請求項1、2又は記載の椅子である。
【0012】
請求項に記載の発明は、前記連結軸部が、前記貫通孔の短手寸法と略合致する値に設定された寸法部分を有した略角柱状のものである請求項1、2、3又は記載の椅子である。
【0013】
請求項に記載の発明は、前記第一部品が、前記貫通孔が形成された板状部分を備えたものであり、前記板状部分は、少なくとも、前記第二部品が回転する際に前記連結軸部に押圧されて一時的に弾性変形し得るものであり、前記第二部品は、前記板状部分の一時的な弾性変形によって、前記第一姿勢から前記第二姿勢への姿勢変更が許容されている請求項記載の椅子である。
【0014】
請求項に記載の発明は、前記第一部品と前記第二部品との間に、前記第二部品における前記第二姿勢から前記第一姿勢への逆戻りを抑制する逆戻り抑制手段が設けられている請求項1、2、3、4、5又は記載の椅子である。
【0015】
請求項に記載の発明は、前記通過可能部が、前記第一姿勢において前記貫通孔を前側から後側に向かって通過し得るものである請求項1、2、3、4、5、6又は記載の椅子である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、第一部品に対して第二部品を容易に取り付ける設計の自由度に優れた椅子を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における正面図。
図3】同実施形態における背面図。
図4】同実施形態における右側面図。
図5】同実施形態における平面図。
図6】同実施形態における正面図。
図7】同実施形態における右側面図。
図8】同実施形態における部分拡大左側面図。
図9図7におけるA-A線断面図。
図10図7におけるB-B線断面図。
図11】同実施形態における正面図。
図12】同実施形態における背面図。
図13】同実施形態における右側面図。
図14】同実施形態における平面図。
図15】同実施形態における背面側から見た斜視図。
図16図15におけるC-C線断面図。
図17】同実施形態における正面図。
図18】同実施形態における背面図。
図19】同実施形態における平面図。
図20】同実施形態における右側面図。
図21図21におけるD-D線断面図。
図22】同実施形態における背面側から見た斜視図。
図23】同実施形態における斜視図。
図24】同実施形態における背面側から見た分解斜視図。
図25】同実施形態における背面側から見た斜視図。
図26】同実施形態における背面側から見た斜視図。
図27】同実施形態におけるランバーパッドの取り付けを説明するための正面図。
図28】同実施形態における斜視図。
図29】同実施形態における正面図。
図30図30におけるE方向矢視図。
図31】同実施形態におけるランバーサポートの動きを説明するための正面図。
図32】同実施形態におけるランバーサポートの動きを説明するための正面図。
図33】同実施形態におけるランバーサポートの動きを説明するための正面図。
図34】同実施形態におけるランバーサポートの動きを説明するための正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図1~34を参照して説明する。
【0021】
この実施形態は、本発明を、オフィス等において好適に使用される事務用の回転椅子(以下、単に「椅子」という。)に適用したものである。
【0022】
椅子は、脚Aと、脚Aに対して旋回可能に支持された支持基部Bと、支持基部Bの上に配された座Cと、支持基部Bに対して背支持体(図示せず)を介して後傾動作可能に支持された背凭れEと、背凭れEに対して取り付けられたランバーサポートRを備えたものである。
【0023】
<<脚A>>
脚Aは、先端にキャスタa11を有した複数本の脚羽根a1と、脚羽根a1の基端部に立設された脚支柱a2とを備えたものである。
【0024】
<<支持基部B>>
支持基部Bは、座C及び背凭れEを支持するものである。支持基部Bは、合成樹脂の一体成型品である支持基部本体1を主体に構成されている。支持基部本体1は、脚支柱a2の上端部に連結されている。
【0025】
<<座C>>
座Cは、着座者が着座する座面を有したものである。座Cは、支持基部Bの上に配されている。座Cは、アウターシェルとも称される座受c1と、座面を有し座受c1上に設けられた座本体c2とを備えたものである。座Cは、図示しない座支持機構を介して支持基部Bに支持されている。
【0026】
<<背支持体(図示せず)>>
背支持体は、図示しない主軸を介して支持基部Bに対して回転可能に支持されている。背支持体は、支持基部Bと背凭れEの間、及び、支持基部Bと座Cとの間に介設されている。
【0027】
<<背凭れE>>
背凭れEは、背支持体に対して取り付けられた背フレームMと、背フレームMに張り設けられたメッシュ状の張り部材Pとを備えてなる。
【0028】
背凭れEは、メッシュ状の生地を主体にして構成された張り部材Pにより、着座者の背中を後方から受け止める背凭れ面pmが構成されたものとなっている。
【0029】
この実施形態では、背凭れEにおける左右の側枠材2に対して、着座者の腰部を後側から支持し得るランバーサポートRが架設されている。ランバーサポートRは、背凭れEに対して後付け的に装着する場合であっても、背凭れEから離脱させる場合であっても、ねじ等の止着具を使わずにランバーサポートRを一時的に撓ませてランバーサポート保持部Nに対して被保持部r1を係脱することのみにより実行できるようになっている。
【0030】
<背フレームM>
背フレームMは、外側方に開口した張り部材取付溝mzを有した左右の側枠材2と、上方に開口した張り部材取付溝mzを有し左右の側枠材2の上部間を連結する上枠材3と、左右の側枠材2の下部間を連結する下枠材4と、下方に開口した張り部材取付溝mzを有し上枠材3との間に上の空洞saを形成するとともに下枠材4との間に下の空洞sbを形成した状態で左右の側枠材2同士を連結する中間連結枠材5とを有したものである。
【0031】
この実施形態では、背フレームMを構成する左右の側枠材2、上枠材3、下枠材4、及び、中間連結枠材5が、合成樹脂により一体に成型されたものとなっている。
【0032】
背フレームMは、左右の側枠材2と上枠材3と中間連結枠材5とによって内部に上の空洞saを形成した上の枠状部waと、左右の側枠材2と下枠材4と中間連結枠材5とによって内部に下の空洞sbを形成した下の枠状部wbとを備えている。
【0033】
背凭れEは、背フレームMに設けられた上の枠状部waに対してのみ背凭れ面pmを構成し得る張り部材Pが張設されたものとなっている。一方で、下の枠状部wbには、張り部材Pが張設されていないものとなっている。
【0034】
[左右の側枠材2]
左右の側枠材2は、上下方向に延びてなるものである。左右の側枠材2は、上下方向中間部に屈曲部23を有し、側面視において略「く」の字状をなしている。
【0035】
左右の側枠材2の外側面には、当該側枠材2の上端から中間連結枠材5の下縁に略対応する高さ位置まで連続する張り部材取付溝mzが形成されている。上下方向に延びてなる左右の側枠材2間には、張り部材Pが張設されている。
【0036】
左右の側枠材2は、外側方に開放された張り部材取付溝mzを有する外枠部分21と、外枠部分21の内側に位置し前部を外枠部分21における前部よりも後方に位置させた内枠部分22とを備えている。
【0037】
着座者の腰部に対応する高さ位置である左右の側枠材2における上下方向中間部、より具体的に言えば、左右の側枠材2における内枠部分22の上下方向中間部には、ランバーサポートRを上下位置変更可能に保持し得るランバーサポート保持部Nが設けられている。
【0038】
ランバーサポート保持部Nは、左右の側枠材2における側面視において前方に凸をなすように屈曲した部位(側面視においてくの字状をなし前方に迫り出すように曲がった部位)である屈曲部23の近傍に設けられている。
【0039】
左右の側枠材2における内枠部分22には、前方に突出したものであり上下方向に延びてなるレール部n1と、背凭れEの左右方向中央部側に向かって開放され上下方向に延びてなる溝部n2と、溝部n2よりも前部に設けられており背凭れEの左右方向中央部側に向かって開放され上下方向に延びてなるガイド溝n3が設けられている。
【0040】
レール部n1、溝部n2、及び、ガイド溝n3は、それぞれ左右の側枠材2における内枠部分22に成型のみにより出現しているものである。つまり、レール部n1、溝部n2、及び、ガイド溝n3は、左右の側枠材2に対して別個独立した他の部品を取り付けることなく形成されている。
【0041】
レール部n1は、前方を向く前向面n11と、外枠部分21側を向く外向面n12と、外向面n12の反対側すなわち背凭れEの左右方向中央部側を向く内向面n13とを備えている。
【0042】
レール部n1における前向面n11と外向面n12とは略直交するように設けられている。同様に、レール部n1における前向面n11と内向面n13とは略直交するように設けられている。また、レール部n1における外向面n12と内向面n13とは略平行に設けられている。レール部n1には、ランバーベースRBに設けられたレール係合部r11が係合するようになっている。
【0043】
なお、レール部n1と外枠部分21との間には、前方に開放されランバーベースRBの外側端部に形成された後方に突出する外延出壁r112を受け入れる受入溝n4が形成されている。
【0044】
左のレール部n1及び右のレール部n1は、正面視において上方に向かって漸次相寄る方向に移動するように成形されている。換言すれば、左のレール部n1と右のレール部n1とは、上下方向に亘って平行に配されていないものとなっている。
【0045】
溝部n2は、レール部n1の先端すなわち前向面n11よりも後部に位置している。溝部n2は、後方を向く後向き部分たる後向面n21が形成されている。溝部n2は、レール部n1よりも後に形成されている。
【0046】
溝部n21は、レール部n1の前向面n11と略平行をなす後向面n21を有したV溝状をなしている。溝部n21には、ランバーベースRBに設けられた係合爪r12が係合するようになっている。
【0047】
ガイド溝n3は、ランバーサポートRの背凭れEに対する上下方向の移動範囲を規制する移動範囲規制機構Qを構成するものである。ガイド溝n3は、溝部n2と略平行に配設されている。ガイド溝n3は、溝部n2よりも上下方向に長く設定されている。ガイド溝n3には、ランバーベースRBに上下に離間して設けられた一対のガイド突起r13が係合するようになっている。ガイド溝n3は、先端が丸く形成されたガイド突起r13に対応する溝形状をなしている。
【0048】
[上枠材3]
上枠材3は左右方向に延びてなるものである。上枠材3は、張り部材Pを取り付けるための上方に開放された張り部材取付溝mzが形成された外枠部分31と、外枠部分31の下に配された内枠部分32とを備えている。
【0049】
[下枠材4]
下枠材4は、左右の側枠材2の下部間を繋ぐとともにねじ等の止着具を介して背支持体に連結する部分を有している。
【0050】
[中間連結枠材5]
中間連結枠材5は、左右方向に延びてなるものである。中間連結枠材5は、左右の側枠材2における側面視において前傾した部位間に架設されている。
中間連結枠材5は、平面視において後方に向けて凸をなすように湾曲した形状をなしている。中間連結枠材5には、下方に開口した張り部材取付溝mzが形成されている。
【0051】
<張り部材P>
張り部材Pは、背凭れ面pmを形成し得るメッシュ状の生地を主体に構成されたものである。
【0052】
張り部材Pは、その周縁部が背フレームMにおける上の枠状部waに設けられた張り部材取付溝mzに取り付けられるものとなっている。張り部材Pは、背フレームMにおける上の枠状部waの前面側に張設されている。
【0053】
<<ランバーサポートR>>
ランバーサポートRは、背凭れEに対して着脱可能に支持されている。
【0054】
ランバーサポートRは、左右の側枠材2間に上下方向に位置変更可能に架設されている。ランバーサポートRは、張り部材Pの後に位置し、着座者の腰部を支持し得るものである。
【0055】
ランバーサポートRは、背凭れEに取り付けられた部品、すなわち、背凭れEにおける左右の側枠材2間に上下方向に位置変更可能に架け渡された単一部品であるランバーベースRBと、ランバーベースRBに対して左右方向に位置変更可能に支持された一対すなわち左右のランバーパッドRPとを備えたものである。
【0056】
ランバーサポートRは、所定方向である左右方向に長手をなす貫通孔r211が設けられた第一部品であるランバーベースRBと、第一姿勢である準備姿勢(J)と当該準備姿勢(J)とは異なる第二姿勢である装着姿勢(S)とを採り得るものであり、装着姿勢(S)においてランバーベースRBに対する装着状態が保持される第二部品であるランバーパッドRPとを備えたものである。
【0057】
装着姿勢(S)とは、ランバーベースRBに対する適切な装着状態をなす姿勢である。詳しくは後述するが、ランバーパッドRPは、装着姿勢(S)においてのみ、操作体r4に対して使用者が左右方向の操作力を付与することによってランバーベースRBに対して無理なく左右方向にスライド移動できるものとなっている。装着姿勢(S)は、準備姿勢(J)に対して約90°の角度で連結軸部r5における軸心回りに回転したものである。
【0058】
<ランバーベースRB>
ランバーベースRBは、左右両端部に配設され左右の側枠材2に保持される左右の被保持部r1と、左右の被保持部r1間に配設されたベース本体r2とを備えている。
【0059】
ランバーベースRBは合成樹脂による一体成型品である。すなわち、左右の被保持部r1、及び、ベース本体r2は合成樹脂により一体に形成されている。
【0060】
[左右の被保持部]
左右の被保持部r1は、左右の側枠材2における屈曲部23の近傍に着脱可能、且つ、上下方向にスライド移動可能に取り付けられたものである。
【0061】
左右の被保持部r1は、ねじ等の止着具を用いることなく、ランバーサポート保持部Nに対して保持されている。使用者はベース本体r2を撓み変形させることにより、左右の保持部r1におけるランバーサポート保持部Nに対する左右方向の位置合わせを行う。そして、使用者は、左右の保持部r1を後方移動しランバーサポート保持部Nに接近させるだけで、左右の側枠材2に対して離脱し難い状態に取り付けられるようになっている。
【0062】
左右の被保持部r1は、左右の側枠材2に設けられたレール部n1に対して前側から抱くように係わり合うレール係合部r11と、左右の側枠材2に設けられた溝部n2に係わり合う前方移動規制部たる係合爪r12と、左右の側枠材2に設けられたガイド溝n3に係わり合う上下一対のガイド突起r13を備えている。
【0063】
レール係合部r11は、レール部n1の前側及び左右両側を覆う略コ字状の形状部分を有している。より具体的に言えば、レール係合部r11は、レール部n1の前側に配された後方移動規制部たる前壁r111と、前壁r111の外縁部から後方に延設された内方移動規制部たる外延出壁r112と、前壁r111の内縁部から後方に延設された外方移動規制部たる内延出壁r113とを備えたものである。
【0064】
レール係合部r11の前壁r111は、レール部n1の前向面n11を覆うものである。また、レール係合部r11の外延出壁r112は、レール部n1の外向面n12を覆うものである。そして、レール係合部r11の内延出壁r113は、レール部n1の内向面n13を覆うものである。
【0065】
外延出壁r112の上下方向の寸法は、前壁r111の上下方向の寸法よりも短く設定されている。内延出壁r113は、係合爪r12を支持するための基部をなしており外延出壁r112と比べて前壁r111から後方に長く延設されている。
【0066】
係合爪r12は、溝部n2の後向き部分である後向面n21に係合し得る前向き部分たる前向面r121を有したものである。係合爪r12は、レール係合部r11を構成する内延出壁r113における外側面よりも外側に突出したものである。
【0067】
係合爪r12は、背凭れEに対してランバーサポートRを着脱させる際に、一時的に姿勢変更し得るように構成されている。係合爪r12は、基端部たる後端部r122のみが内延出壁r113に連結されている。換言すれば、係合爪r12は、弾性変形による一時的な姿勢変更を無理なく実現し得るように内延出壁r113に対して片持ち的に支持されている。
【0068】
係合爪r12における後端部r122と前向面r121との間の外側には、ランバーサポートRを背凭れEに対して取り付ける際にレール部n1に押圧される被押圧傾斜面r123が設けられている。
【0069】
ランバーサポートRの背凭れEに対する取り付けは、左右の被保持部r1を左右の側枠材2におけるランバーサポート保持部Nに向かって後方に移動させることにより行われる。
【0070】
係合爪r12に設けられた被押圧傾斜面r123は、後方への移動に伴って、左右の側枠材2に設けられたレール部n1によって押圧されるようになっている。被押圧傾斜面r123が押圧された係合爪r12は、部材の弾性変形により一時的に姿勢変更されるため、左右の被保持部r1は所定の取付位置に至るまで後方への移動が許容されることになる。
【0071】
その後、係合爪r12は、溝部n2に到達することにより、レール部n1との係わり合いが解かれて元の姿勢に復帰する。元の姿勢に復帰した係合爪r12の前向面r121は、溝部n2の後向面n21に対面することになる。
【0072】
ランバーサポートRに対して後方から前方に向かう方向の外力が及んだ場合には、係合爪r12の前向面r121と左右の側枠材2の後向面n21が面的に係合することになり左右の被保持部r1が前方に移動し難いものとなる。このため、左右の被保持部r1は、適切にランバーサポート保持部Nに保持された後において、ランバーサポート保持部Nから外れることが好適に抑制されたものとなっている。
【0073】
なお、左右の被保持部r1をランバーサポート保持部Nから積極的に離脱させる場合には、工具等を用いて、係合爪r12の被押圧傾斜面r123を押圧しつつ、溝部n2との係わり合いを解除すればよい。
【0074】
ガイド突起r13は、レール係合部r11の内延出壁r113に外側方に向かって突設されている。ガイド突起r13は、内延出壁r113の上部及び下部に対をなして配設されている。ガイド突起r13は、先端が丸く形成されている。ガイド突起r13は、ランバーサポートRの背凭れEに対する上下方向の移動範囲を規制する移動範囲規制機構Qを構成するものである。
【0075】
換言すれば、背凭れEとランバーサポートRとの間には、ランバーサポートRの背凭れEに対する上下方向の移動範囲を規制する移動範囲規制機構Qが設けられている。
【0076】
[ベース本体r2]
ベース本体r2は、左の被保持部r1と右の被保持部r1との間に配設された正面視において略横長矩形状をなしたものである。ベース本体r2の左右両端部は、左右の被保持部r1に対して一体に連結されている。ベース本体r2は、後方に向かって凸をなすように湾曲した形状をなしている。
【0077】
ベース本体r2は、起立姿勢をなし上下方向中央部に配設された横長矩形状をなす板状部分r21と、板状部分r21の上下及び左右の周縁部を取り囲んでおり後方に向かって凸をなすように凹んだ形状をなした周縁部分r22とを備えている。
【0078】
板状部分r21は、リブ等の突起状部分を有しないフラットな起立板状をなしている。板状部分r21は、周縁部分r22と比較して厚み方向に撓み変形し易いものとなっている。板状部分r21は、左右のランバーパッドRPを装着及び離脱する際に一時的に弾性変形し得るように構成されている。
【0079】
詳しくは後述するように、ランバーパッドRPは、ランバーベースRBのベース本体r2に設けられた板状部分r21の一時的な弾性変形によって、準備姿勢(J)から装着姿勢(S)への姿勢変更が許容されたものとなっている。板状部分r21は、少なくとも、ランバーパッドRPが準備姿勢(J)から装着姿勢(S)に回転する際に連結軸部r5に押圧されて一時的に厚み方向に弾性変形し得るものとなっている。
【0080】
板状部分r21の上下方向中央部には、前後方向に貫通し左右方向に延びてなる左右の貫通孔r211が設けられている。左右の貫通孔r211は、左右方向に長手をなし前後方向に貫通したものであり、且つ、上下幅寸法w1が略一定に設定されたものである。左右の貫通孔r211は、左右のランバーパッドRPに対応して設けられている。左の貫通孔r211と右の貫通孔r211は、板状部分r21の左右に離間して穿設されている。換言すれば、板状部分r21における左の貫通孔r211と右の貫通孔r211との間には非穿孔部が設けられている。左右の貫通孔r211は、装着姿勢(S)をなす左右のランバーパッドRPにおける左右方向の移動可能範囲を規定するものとなっている。
【0081】
周縁部分r22は、その全域にリブとして機能し得る凹み部hkを有している。周縁部分r22は、凹み部hkの存在に起因して板状部分r21と比較して厚み方向に撓み変形し難い構造をなしている。
【0082】
周縁部分r22は、板状部分r21の上に位置する上の周縁部分形成部r221と、板状部分r21の下に位置する下の周縁部分形成部r222と、板状部分r21の左右に位置する左右の周縁部分形成部r223とを備えている。
【0083】
この実施形態では、ランバーパッドRPの装着姿勢Sを安定させるために、すなわち、装着姿勢(S)のランバーパッドRPが準備姿勢(J)側に回転し難いようにするために、上の周縁部分形成部r221及び下の周縁部分形成部r222に、ランバーパッドRPに設けられた上下の位置決め突起r33の突出端t1が接するように構成されている。
【0084】
<ランバーベースRBの左右の側枠材2に対する取り付け方法>
ランバーベースRBの左右の側枠材2に対する取り付け方法の一例を説明すれば次の通りである。
【0085】
ランバーベースRBは、背凭れEに対してねじ等の止着具を用いることなく、左右の側枠材2に装着することができるとともに左右の側枠材2から離脱させることができるものとなっている。
【0086】
なお、ランバーパッドRPがランバーベースRBに対して取り付けられていない状態でも、当該ランバーベースRBを左右の側枠材2に対して取り付けることができるようになっている。
【0087】
また、ランバーパッドRPがランバーベースRBに対して取り付けられた状態であっても、到来ランバーベースRBを左右の側枠材2に対して取り付けることができるようになっている。
【0088】
まず、ランバーベースRBの左右両側部に設けられた左右の被保持部r1を、左右の側枠材2におけるランバーサポート保持部Nの前に位置させる。背凭れEを構成する左右の側枠材2間には、あらかじめ張り部材Pが張設されている。
【0089】
そのため、左右の被保持部r1をランバーサポート保持部Nの前に位置させる際には、ランバーベースRBを上の枠状部waにより形成された上側の空洞saを後側から通過させた上で、当該ランバーベースRBにより張り部材Pを一時的に前方に押圧しつつ、左右の被保持部r1をランバーサポート保持部Nの前に位置させることになる。
【0090】
なお、ランバーサポート保持部Nの位置は、上側に向かって漸次背凭れEの左右方向中央部方向に向かって傾斜している。換言すれば、上下方向に延びてなる左のランバーサポートN及び右のランバーサポートNは、上下方向に亘って常に同じ距離で離間していない構成をなしている。
【0091】
そのため、左右の被保持部r1をランバーサポート保持部Nに係わり合わせる際には、ランバーベースRBにおけるベース本体r2を弾性変形(ベース本体r2の湾曲度合いが小さくなるように変形、又は、ベース本体r2の湾曲度合いが大きくなるように変形)させることにより、左右の被保持部r1の左右位置をランバーサポート保持部Nの位置に合致するように微調整することになる。
【0092】
次に、左右の被保持部r1を後方に押圧しつつ移動することにより、レール係合部r11、係合爪r12、及び、ガイド突起r13を、左右の側枠材2におけるレール部n1、溝部n2、及び、ガイド溝n3に係わり合わせる。先に詳述したように、係合爪r12は、左右の被保持部r1が後方に移動する際に一時的にレール部n1から退避した姿勢に姿勢変更し、その後、元の姿勢に復帰して溝部n2内に位置することになる。
【0093】
<左右のランバーパッドRP>
複数すなわち左右(二つ)のランバーパッドRPは、ランバーベースRBに対して左右に対をなして配設されている。左右のランバーパッドRPは、図33及び図34に示すように、それぞれ、ランバーベースRBに対して左右方向にスライド移動可能に装着されている。左のランバーパッドRPと右のランバーパッドRPは同じ構造をなしている。左のランバーパッドRPと右のランバーパッドRPは、別個独立にランバーベースRBに対して左右方向に移動可能なものとなっている。
【0094】
なお、明細書において左右のランバーパッドRPの上下及び左右は、特に明示しない限り、上下方向に長手をなしている第二姿勢である装着姿勢Sに基づいて説明する。
【0095】
左右のランバーパッドRPは、張り部材PとランバーベースRBとの間に配設され張り部材Pを後側から押圧し得る通過不能部であるパッド本体r3と、ランバーベースRBの背面側に位置し使用者が把持可能な通過可能部である操作体r4と、パッド本体r3と操作体r4との間に介設され左右の貫通孔r211に対して係わり合う連結軸部r5とを備えている。
【0096】
パッド本体r3は、正面視において四つの角部分が丸く形成された縦長矩形状をなしている。パッド本体r3は、貫通孔r211を通過できない通過不能部を構成するものである。パッド本体r3の上下寸法w2は、ランバーベースRBにおけるベース本体r2の上下寸法w3と略同じ寸法に設定されている。
【0097】
パッド本体r3は、縦長矩形板状をなすパッド基部r31と、パッド基部r31の上端部及び下端部からそれぞれ後方に向かって鍔状に延設された鍔部r32と、パッド本体r3における上半部及び下半部における各上下方向中央部に後方に向かって突設され突出端t1がランバーベースRBのベース本体r2の前向面に当接し得る上下の位置決め突起r33と、パッド本体r3における左右方向中央部から後方に突設され上下の位置決め突起r33と連結軸部r5の間を繋ぐ上下方向に延びた縦補強リブr34と、パッド本体r3における上下方向中央部から後方に突設され連結軸部r5に接続した横補強リブr35を備えている。
【0098】
操作体r4は、ランバーパッドRPをランバーベースRBに対して左右方向にスライド移動させるために、使用者が指で摘み持つことができる形状のものとなっている。
【0099】
操作体r4は、全体として上下方向に延びたブロック状をなしている。操作体r4は、準備姿勢(J)を採る場合にのみランバーベースRBに設けられた貫通孔r211を拡開させつつ通過し得る通過可能部を構成するものである。操作体r4における長手方向である上下方向の寸法w4は、パッド本体r3の長手方向である上下方向の寸法w2よりも短く設定されている。操作体r4における長手方向である上下方向の寸法w4は、板状部分r21に設けられた左右の貫通孔r211の長手寸法よりも短く設定されている。
【0100】
操作体r4における後端部すなわち先端部t2の幅寸法(短手方向の寸法)w4は、操作体r4における前端部すなわち連結軸部r5との接続部分である基端部t3の幅寸法(短手方向の寸法)w5よりも短く設定されている。
【0101】
換言すれば、操作体r4における幅寸法は先端部t2から基端部t3に向かって漸次長くなるように(先端部t2から基端部t3に向かって漸次幅広になるように)設定されている。なお、操作体r4における先端部t2の幅寸法w4は、ベース本体r2の板状部分r21に設けられた貫通孔r211の上下幅寸法w1と略合致する寸法に設定されている。
【0102】
連結軸部r5は、矩形柱状をなしたものである。連結軸部r5は、パッド本体r3における上下方向及び左右方向の中央部と操作体r4における上下方向中央部とを繋ぐように前後方向に延びたものである。連結軸部r5は、パッド本体r3と操作体r4との間を連結するとともに一部分が貫通孔r211内に配設されるものとなっている。
【0103】
連結軸部r5は、貫通孔r211の短手寸法である上下幅寸法w1と略合致する値に設定された上下寸法w7部分を有した略角柱状のものである。装着姿勢Sにおける連結軸部r5の上下寸法w7は、ベース本体r2の板状部分r21に設けられた貫通孔r211の上下幅寸法w1と略合致する寸法に設定されている。
【0104】
一方で、装着姿勢Sにおける連結軸部r5の左右寸法w8は、装着姿勢Sにおける連結軸部r5の上下寸法w7よりも長く設定されている。なお、操作体r4の基端部t3の幅寸法w5と連結軸部r5の左右寸法w8は略合致した寸法に設定されている。
【0105】
<ランバーパッドRPのランバーベースRBに対する取り付け方法>
左右のランバーパッドRPを、ランバーベースRBに対して取り付ける方法についてその一例を説明する。なお、左右のランバーパッドRPは、背凭れEに取り付けられていない状態のランバーベースRBに対しても装着することができるし、背凭れEに取り付けられた状態のランバーベースRBに対しても装着することができるものとなっている。
【0106】
左右のランバーパッドRPは、ランバーベースRBに対して取り付ける際の姿勢すなわちランバーベースRBの貫通孔r211に操作体r4を挿脱可能な姿勢である準備姿勢(J)と、準備姿勢(J)とは異なる姿勢でありランバーベースRBに対して装着された装着姿勢(S)とを採り得るものとなっている。
【0107】
装着姿勢(S)は、準備姿勢(J)に対して約90°の角度で連結軸部r5における軸心回りに回転したものである。装着姿勢(S)は、ランバーベースRBの貫通孔r211に操作体r4を挿脱不能なランバーパッドRPの姿勢である。この実施形態では、準備姿勢(J)において、パッド本体r3及び操作体r4が横長になる姿勢をなしており、装着姿勢(S)において、パッド本体r3及び操作体r4が縦長になる姿勢をなしている。
【0108】
まず、図24に示すように、ランバーパッドRPを準備姿勢(J)にした上で、ランバーベースRBの前側に位置させる。
【0109】
次に、図25に示すように、ランバーパッドRPにおける操作体r4の先端部t2を、準備姿勢(J)のままで、貫通孔r211に前側から後側に向かって挿入する。操作体r4は、準備姿勢(J)を採る場合にのみ、貫通孔r211を前方から後方に向かって通過し得るものとなっている。
【0110】
なお、貫通孔r211の上下幅寸法w1は、操作体r4における先端部t2の幅寸法w5と略合致しているが、基端部t3の幅寸法w6及び連結軸部r5の幅寸法w8よりも短いものとなっている。
【0111】
このため、準備姿勢(J)におけるランバーパッドRPの操作体r4及び連結軸部r5が貫通孔r211内を通過する際は、貫通孔r211が設けられた板状部分r21が操作体r4及び連結軸部r5によって押し広げられるように弾性変形することになる。
【0112】
換言すれば、板状部分r21は、準備姿勢(J)をなす操作体r4及び連結軸部r5が貫通孔r211に前方から後方に向かって挿入される際に、当該操作体r4及び連結軸部r5に押圧されてその通過を許容するべく一時的に弾性変形し得るものとなっている。
【0113】
続いて、図26及び図27に示すように、作業者は、操作体r4又はパッド本体r3を把持しつつこれらを略90°回転させて、ランバーパッドRPを準備姿勢(J)から装着姿勢(S)に姿勢変更する。すなわち、貫通孔r211に操作体r4を通過させて当該貫通孔r211内に連結軸部r5を位置させた後に、ランバーパッドRPを連結軸部r5の軸心回りに回転させて準備姿勢(J)から装着姿勢(S)に姿勢変更する。
【0114】
詳述すれば、作業者は、準備姿勢(J)をなすランバーパッドRPを、操作体r4、連結軸部r5の順で貫通孔r211に通過させた後に、当該ランバーパッドRPを連結軸部r5の軸心回りに右方向又は左方向に回転させて準備姿勢(J)から装着姿勢(S)に姿勢変更する。
【0115】
連結軸部r5が貫通孔r211内において準備姿勢(J)から装着姿勢(S)に約90°回転する時に、板状部分r21が連結軸部r5の対角線上にある角部によって一時的に外方に押し広げられるため、最も貫通孔r211が拡開されることになる。このようにして、ランバーパッドRPは、板状部分r21の一時的な弾性変形によって、準備姿勢(J)から装着姿勢(S)への姿勢変更が許容されている。
【0116】
ランバーパッドRPが準備姿勢(J)から装着姿勢(S)に遷移すると、装着姿勢(S)における連結軸部r5の上下寸法w7は、貫通孔r211の上下幅寸法w1と略合致することになり、ベース本体r2の板状部分r21は押し広げられた状態から比較的フラットな元の状態に復帰することになる。
【0117】
なお、この実施形態では、ランバーベースRBとランバーパッドRPとの間に、ランバーパッドRPにおける装着姿勢(S)から準備姿勢(J)への逆戻りを抑制する逆戻り抑制手段Gが設けられている。逆戻り抑制手段Gは、ランバーパッドRP側に設けられ、装着姿勢(S)における上下寸法w7が左右寸法w8よりも短く設定された連結軸部r5と、ランバーベースRB側に設けられ左右方向に延びてなるとともに上下幅寸法w1が連結軸部r5の上下寸法w7と略同じに設定された貫通孔r211とによって構成されている。
【0118】
以上を経て、ランバーパッドRPがランバーベースRBに対して装着されることになる。ランバーベースRBに対して装着された左右のランバーパッドRPは、使用者が操作体r4を把持しつつ左右方向に操作することにより、使用者の任意でランバーベースRBに対して左右方向に移動させることができるようになっている。
【0119】
なお、ランバーベースRBから、ランバーパッドRPを離脱させるときには、上述した手順の逆を経れば実行することができる。
【0120】
上述した実施形態であれば、少なくとも、第一部品であるランバーベースRBに対して第二部品であるランバーパッドRPを容易に取り付ける設計の自由度に優れた椅子を提供することができるものとなる。
【0121】
また、上述した実施形態であれば、少なくとも、ランバーサポートRを背凭れEに対して止着具を着脱させることなく着脱させることができ、当該ランバーサポートSが後方からの外力を受けた場合でも背凭れEから外れに難い構成を有した椅子を提供することができるものとなる。
【0122】
また、上述した実施形態であれば、少なくとも、着座者の体格や好みに合わせて着座者の腰部を支持する強弱度合いを柔軟に調整可能なランバーサポートRを有した椅子を提供することができるものとなる。
【0123】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子は、左右方向に長手をなす貫通孔r211が設けられた第一部品であるランバーベースRBと、第一姿勢である準備姿勢(J)と当該準備姿勢(J)とは異なる第二姿勢である装着姿勢(S)とを採り得るものであり装着姿勢(S)においてランバーベースRBに対する装着状態が保持される第二部品であるランバーパッドRPとを備えたものである。
【0124】
そして、ランバーパッドRPが、準備姿勢(J)を採る場合にのみ貫通孔r211を通過し得る通過可能部である操作体r4と、貫通孔r211を通過できない通過不能部であるパッド本体r3と、操作体r4とパッド本体r3との間に介設され少なくとも一部が貫通孔r211内に配設される連結軸部r5とを備えたものである。
【0125】
貫通孔r211に操作体r4を通過させた後に、ランバーパッドRPを連結軸部r5の軸心回りに回転させて準備姿勢(J)から装着姿勢(S)に姿勢変更することにより、当該ランバーパッドRPがランバーベースRBに対して装着されている。
【0126】
このため、第一部品であるランバーベースRBに対して第二部品であるランバーパッドRPを容易に取り付ける設計の自由度に優れた椅子を提供することができるものとなる。
【0127】
つまり、貫通孔r211に操作体r4を通過させた後に、ランバーパッドRPを回転させるだけで、ランバーパッドRPがランバーベースRBに対して離脱し難い状態に装着されるため、ランバーパッドRPの装着を極めて簡単に実行し得るものとなっている。
【0128】
貫通孔r211が、左右方向に長手をなし前後方向に貫通したものであり、且つ、上下幅寸法w1が略一定に設定されたものである。
【0129】
このため、ランバーベースRBは、ランバーパッドRPを左右方向に移動させ得る好適な構成を備えたものとなっている。
【0130】
第二姿勢である装着姿勢(S)が、第一姿勢である準備姿勢(J)に対して約90°の角度で連結軸部r5における軸心回りに回転したものである。
【0131】
このため、ランバーパッドRPに対して比較的簡単な回転操作を実行するのみで、装着姿勢(S)を採り得るものとなっている。
【0132】
連結軸部r5が、貫通孔r211の短手寸法たる上下幅寸法w1と略合致する値に設定された寸法w7部分、すなわち装着姿勢(S)における上下寸法w7を構成する部分を有した略角柱状のものである。
【0133】
このため、ランバーパッドRPの連結軸部r5は、装着姿勢(S)において、ランバーベースRBの貫通孔r211に対して、がたつき難く、且つ、左右方向の移動を損ね難いように適切に係わり得る構成をなしている。
【0134】
第一部品であるランバーベースRBが、貫通孔r211が形成された板状部分r21を備えたものである。板状部分r21は、少なくとも、第二部品であるランバーパッドRPが回転する際に連結軸部r5に押圧されて一時的に弾性変形し得るものとなっている。ランバーパッドRPは、板状部分r21の一時的な弾性変形によって、第一姿勢である準備姿勢(J)から第二姿勢である装着姿勢(S)への姿勢変更が許容されている。
【0135】
このため、ランバーパッドRPは、準備姿勢(J)から装着姿勢(S)に好適に姿勢変更し得るものとなっているだけでなく、装着姿勢(S)において、貫通孔r211に対して好適に係わり得るものとなっている。
【0136】
ランバーベースRBとランバーパッドRPとの間に、ランバーパッドRPにおける装着姿勢(S)から準備姿勢(J)への逆戻りを抑制する逆戻り抑制手段Gが設けられている。すなわち、逆戻り抑制手段Gは、ランバーパッドRP側に設けられ、装着姿勢(S)における上下寸法w7が左右寸法w8よりも短く設定された連結軸部r5と、ランバーベースRB側に設けられ左右方向に延びてなるとともに上下幅寸法w1が連結軸部r5の上下寸法w7と略同じに設定された貫通孔r211とによって構成されている。
【0137】
このため、ランバーパッドRPは、装着姿勢(S)から準備姿勢(J)への逆戻りが好適に抑制されたものとなるため、ランバーベースRBに対するランバーパッドRPの装着状態が好適に維持され得るものとなる。
【0138】
通過可能部である操作体r4が、第一姿勢である準備姿勢(J)において貫通孔r211を前側から後側に向かって通過し得るものである。
【0139】
このため、通過不能部であるパッド本体r3が、ランバーベースRBと張り部材Pとの間に位置することになるため、使用者の腰部を押圧し得る機能を適切に発揮することができるものとなる。
【0140】
第一部品であるランバーベースRB及び第二部品である複数すなわち左右二つのランバーパッドRPが、着座者の腰部を直接又は他の部材を介して間接的に支持し得るランバーサポートRを構成するものである。そのため、本発明である部材の取付構造を利用することにより、一方の部品であるランバーベースRBに対して他方の部品である左右方向にスライド移動可能なランバーパッドRPを簡単に装着し、ランバーサポートRを構成し得るものとなっている。
【0141】
背凭れEが、左右の側枠材2間にメッシュ状の張り部材Pが張設されたものである。そして、ランバーベースRBが、左右の側枠材2間に架設されたものである。ランバーパッドRPが、張り部材PとランバーベースRBとの間に配設され張り部材Pを後側から押圧し得るパッド本体r3と、ランバーベースRBの背面側に位置し使用者が把持可能な操作体r4とを備えている。
【0142】
このため、ランバーベースRBに対してランバーパッドRPを簡単に取り付けることができるとともに、パッド本体r3と操作体r4とによって、着座者の腰部分を好適の押圧する機能及びその左右方向の位置調整を柔軟に調整し得る機能を実現できるものとなっている。
【0143】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0145】
第一部品に対して装着された第二部品は左右方向や上下方向にスライド移動しないものであってもよい。
【0146】
第一部品に対して、第二部品を装着した後に、第一部品や第二部品に対して別の異なる部品を装着したものであっても構わない。
【0147】
第一部品に設けられた貫通孔は、所定方向に長手をなしたものであればよく、上述した実施形態に示されたように左右方向に長手をなしたものに限られるものではない。
【0148】
第二部品の第二姿勢は、第一姿勢と異なる姿勢であればよく、上述した実施形態のような約90°回転させた姿勢に限られるものではない。
【0149】
第二部品の通過可能部、通過不能部、及び、連結軸部は、上述した実施形態に示されたものに限られないのはもちろんのことである。
【0150】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0151】
RB…ランバーベース(第一部品)
RP…ランバーパッド(第二部品)
r211…貫通孔
J…準備姿勢(第一姿勢)
S…装着姿勢(第二姿勢)
r3…パッド本体(通過不能部)
r4…操作体(通過可能部)
r5…連結軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34