(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-21
(45)【発行日】2025-08-29
(54)【発明の名称】廃ケーブル処理システム
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20250822BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20250822BHJP
G21F 9/00 20060101ALI20250822BHJP
G21F 9/32 20060101ALI20250822BHJP
G01T 1/167 20060101ALN20250822BHJP
【FI】
G21F9/28 Z
G21F9/30 531E
G21F9/30 531M
G21F9/28 511C
G21F9/00 Z
G21F9/28 522A
G21F9/28 541A
G21F9/32 Z
G21F9/28 A
G01T1/167 C
(21)【出願番号】P 2021192293
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2024-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592031318
【氏名又は名称】富士電機E&C株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】神坐 圭介
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚伸
(72)【発明者】
【氏名】浅野 綾香
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩
(72)【発明者】
【氏名】登坂 健児
(72)【発明者】
【氏名】前園 伸也
(72)【発明者】
【氏名】河原 三郎
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-139893(JP,A)
【文献】特開2018-205082(JP,A)
【文献】特開2002-048896(JP,A)
【文献】特開昭62-138796(JP,A)
【文献】特開2008-197068(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0034531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00- 9/36
G01T 1/00- 1/16
1/167-1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅材を含む内蔵物とこの内蔵物の被覆とからなるケーブルを所定長に切断するケーブル切断装置と、
切断されたケーブルの表面を洗浄する表面洗浄装置と、
ケーブルを被覆と内蔵物に分別するケーブル被覆剥離装置を含むシステムであって、被覆を放射性廃棄物として処分する第1処理システムと、
処理対象物をチップ状に細断し、チップを銅材とその他の物質に分別するチップ化分別装置を含むシステムであって、銅材とその他の物質を分別して処分する第2処理システムと、
洗浄されたケーブルの汚染の有無を判別し、判別結果に基づいてケーブルを仕分け、汚染のあるケーブルを前記第1処理システムに供給し、汚染のないケーブルを前記第2処理システムに供給する第1の汚染判別・物品搬出モニタと、
を含む廃ケーブル処理システム。
【請求項2】
前記第1処理システムは、前記ケーブル被覆剥離装置により分別された内蔵物の汚染の有無を判別し、判別結果に基づいて内蔵物を仕分け、汚染のない内蔵物を前記チップ化分別装置に供給する第2の汚染判別・物品搬出モニタを有し、前記ケーブル被覆装置により分別された被覆と前記第2の汚染判別・物品搬出モニタにより汚染ありと判別された内蔵物とを放射性廃棄物として処分する請求項1に記載の廃ケーブル処理システム。
【請求項3】
前記第2処理システムは、前記チップ化分別装置により分別された銅材を有価物として処分するとともに、銅材以外の物質を焼却し、または一般産業廃棄物として処分する請求項1または2に記載の廃ケーブル処理システム。
【請求項4】
前記ケーブル切断装置および前記表面洗浄装置間のケーブルの搬送を行う第1の自動搬送装置と、
前記表面洗浄装置および前記第1の汚染判別・物品搬出モニタ間のケーブルの搬送を行う第2の自動搬送装置と、
前記第1の汚染判別・物品搬出モニタおよび前記ケーブル被覆剥離装置間のケーブルの搬送を行う第3の自動搬送装置と、
を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の廃ケーブル処理システム。
【請求項5】
前記第2処理システムは、前記チップ化分別装置により分別された銅材がクリアランスレベル以下であることを確認するクリアランス検認装置を有し、クリアランスレベル以下である銅材を有価物として処分する請求項3に記載の廃ケーブル処理システム。
【請求項6】
汚染の可能性があるケーブル、あるいは汚染ありと判定されたケーブルを扱う装置、搬送装置を自動装置または半自動装置とした請求項1に記載の廃ケーブル処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所において発生する廃ケーブルを処理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃止措置段階の原子力発電所に敷設されているケーブルは、総延長2,000km以上と言われている。それらの中には、長期の運転期間中に雰囲気中の放射能を帯びた塵などにより表面が汚染されたものが含まれている。ここで、ケーブルをそのまま廃棄処分すればその全てが放射性廃棄物となり、ドラム缶に詰める場合、数万本の量となる。一方、汚染されているケーブルのうち大半のものは被覆のみが汚染されており、ケーブルの内部、特に銅線は放射性物質の付着はなく再利用可能な有価物である。
【0003】
そこで、特許文献1は、ケーブルを自動搬送しつつケーブルから被覆を剥離する装置を開示している。この特許文献1に開示された装置によれば、ケーブルから被覆を剥離し、この剥離した被覆を放射性廃棄物として廃棄することができるので、放射性廃棄物の量を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された装置を利用したとしても、放射性廃棄物の量は依然として多く、さらなる減容が望まれる。
【0006】
この発明は以上に説明した課題に鑑みてなされたものであり、放射性廃棄物の量のさらなる減容を可能にする技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による廃ケーブル処理システムは、銅材を含む内蔵物とこの内蔵物の被覆とからなるケーブルを所定長に切断するケーブル切断装置と、切断されたケーブルの表面を洗浄する表面洗浄装置と、ケーブルを被覆と内蔵物に分別するケーブル被覆剥離装置を含むシステムであって、被覆を放射性廃棄物として処分する第1処理システムと、処理対象物をチップ状に細断し、チップを銅材とその他の物質に分別するチップ化分別装置を含むシステムであって、銅材とその他の物質を分別して処分する第2処理システムと、洗浄されたケーブルの汚染の有無を判別し、判別結果に基づいてケーブルを仕分け、汚染のあるケーブルを前記第1処理システムに供給し、汚染のないケーブルを前記第2処理システムに供給する第1の汚染判別・物品搬出モニタと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ケーブルの表面が洗浄され、洗浄後のケーブルの汚染の有無が判別され、汚染のあるケーブルのみが第1処理システムに供給され、そのケーブルの被覆が放射性廃棄物として処分されるので、放射性廃棄物の量を格段に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の一実施形態である廃ケーブル処理システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1はこの発明の一実施形態である廃ケーブル処理システムの構成を示すブロック図である。本実施形態による廃ケーブル処理システムでは、まず、全ケーブルの表面の洗浄を行い、洗浄後の全ケーブルにおける汚染の有無を判別し、汚染のあるケーブルの被覆を剥離し、放射性廃棄物として処分する。従って、安全性を確保しつつ放射性廃棄物の量を格段に減らすことができる。また、本実施形態による廃ケーブル処理システムでは、被覆剥離後のケーブルの内蔵物についても汚染の有無を判別し、汚染のある内蔵物については放射性廃棄物として処分する。従って、安全性をさらに高めることができる。
図1において、ケーブル切断装置1、表面洗浄装置2、汚染判別・物品搬出モニタ3および16、ケーブル被覆剥離装置11、圧縮減容装置13、チップ化分別装置21、クリアランス検認装置22の各手段は、自動装置または半自動装置であり、他の手段は手作業である。また、
図1において、ケーブル切断装置1および表面洗浄装置2間の区間と、表面洗浄装置2および汚染判別・物品搬出モニタ3間の区間と、汚染判別・物品搬出モニタ3およびケーブル被覆剥離装置11間の区間では、物品を自動搬送するが、他の区間では物品を手動搬送する。
【0011】
原子力発電所内のケーブルは、ケーブル切断装置1により、作業性や搬送性を考慮した長さ、具体的には1~2m程度の長さに切断される。さらに詳述すると、ケーブル切断装置1では、ケーブルを、自動搬送装置、具体的にはモータによって駆動される2対のローラに挟んで前方に送りながら、センサによってケーブルの移動量を計測する。そして、所定の長さでケーブルの送りを一旦停止し、ケーブルを自動で切断する。切断のための手段は、せん断、回転刃、レーザカッタ等である。2対のローラからなる自動搬送装置は、ケーブルの太さに合わせて間隔が調整され、ケーブルに適度な推力を与える。また、2対のローラからなる自動搬送装置は搬送距離に応じて複数セット設けられる。この自動搬送装置は、次に説明する他の装置内でのケーブルの搬送に利用される場合があり、また、各装置間のケーブルの搬送に利用される場合もある。
【0012】
切断された1~2m単位長のケーブルは、表面洗浄装置2に自動搬送される。自動搬送の方法は、2対のローラでケーブルを挟んで送り出す方法であってもよく、コンベアに搭載して送る方法であってもよい。表面洗浄装置2では、モータにより駆動される2対のローラによりケーブルを挟み送りながら、高圧水、乾式ブラシなどによってケーブル表面の塵や異物を自動で洗浄し除去する。洗浄されたケーブルは、汚染判別・物品搬出モニタ3に自動搬送される。
【0013】
汚染判別・物品搬出モニタ3は、ケーブルの表面の汚染密度を計測する放射線検出部を含む。この放射線検出部は、例えば4個の板状の放射線検出器からなる4面箱型の部材と、この部材を外部からの放射線の影響を少なくするために囲む箱型の遮へい板とにより構成されている。そして、放射線検出部は、4面箱型の部材の中をケーブルが通過するときの放射能の値を計測する。この放射線検出部は、必要な検出速度に応じて複数ユニットがケーブル送り方向に並べて設けられる。ケーブルの搬送手段は、2対のローラでケーブルを挟み送る手段であってもよく、底面が細い金属のメッシュ構造になったトレイにケーブルを搭載しトレイごと送るコンベアシステムであってもよい。
【0014】
汚染判別・物品搬出モニタ3では、放射線検出部により計測されたケーブル表面の汚染密度を閾値と比較することにより汚染の有無を判別する。ここで、閾値は、規制値である40Bq/cm2であってもよく、雰囲気線量率、放射能検出器の誤差などを勘案して安全側(例えば規制値の1/10)に設定してもよい。汚染判別・物品搬出モニタ3では、汚染の有無の判別結果に基づいてケーブルを仕分け、汚染のあるもの(すなわち、汚染密度が閾値より高いもの)は第1処理システム10に自動搬送し、汚染のないもの(すなわち、汚染密度が閾値より低い)は第2処理システム20に手動搬送する。
【0015】
以下、第1処理システム10について説明する。第1処理システム10は、ケーブル被覆剥離装置11を含む。このケーブル被覆剥離装置11には、汚染が有りと判別されたケーブルが汚染判別・物品搬出モニタ3から自動搬送される。
【0016】
ケーブル被覆剥離装置11では、回転刃或いは超音波カッタ、レーザカッタ等の切断部により、ケーブルの被覆の円周上の対向位置に1対もしくは複数対の切れ目をケーブル全長に亘って入れる。その際、ケーブルをモータによって駆動される2対のローラによって挟んで送り、被覆に切れ目を入れる刃物の切断抵抗に抗する推進力を与える。
【0017】
ケーブル被覆剥離装置11では、切断部を通過したケーブルから被覆を剥離し、ケーブルを被覆と内蔵物に分別する剥離処理が施される。この剥離処理のための手段には、各種の態様があり得る。例えば切断部において被覆に入れられた1対の切れ目に対し、ケーブル搬送方向の逆方向から先端部を挿入し、被覆を切れ目の両側の第1部分及び第2部分に引き離す1対の楔等を用いてもよい。
【0018】
分離された被覆の第1部分及び第2部分は、汚染物としてケーブル被覆剥離装置11の外側に設けた汚染物トレイに収容される。一方、内蔵物は、内蔵物トレイに収納される。内蔵物は、汚染判別・物品搬出モニタ16に送られる。汚染判別・物品搬出モニタ16では、ケーブルの内蔵物の汚染密度を計測して閾値と比較し、内蔵物の汚染の有無を判別する。そして、汚染判別・物品搬出モニタ16において、汚染がないと判別された内蔵物は、非汚染物(産業廃棄物相当)として発電所の非管理区域である第2処理システム20に搬送される。一方、汚染があると判別された内蔵物は、ドラム詰め部12に搬送される。
【0019】
ドラム詰め部12には、ケーブル被覆剥離装置11において汚染物トレイに収納された被覆と、汚染判別・物品搬出モニタ16において汚染ありと判別された内蔵物が搬送される。ドラム詰め部12では、この被覆と内蔵物がドラム缶に詰められる。圧縮減容装置13は、ドラム缶に詰められた内蔵物または被覆が圧縮機によりドラム缶ごと減容される。ドラム詰め部14では、この減容されたドラム缶がさらにドラム缶に詰められ、圧縮機によりドラム缶ごと減容される。そして、放射性廃棄物処分部15では、この減容されたドラム缶を低レベル放射性廃棄物として保管する。
【0020】
次に第2処理システム20について説明する。第2処理システム20は、チップ化分別装置21を含む。このチップ化分別装置21には、汚染判別・物品搬出モニタ3において汚染がないと判別されたケーブルと、汚染判別・物品搬出モニタ16において汚染がないと判別された内蔵物が搬送される。チップ化分別装置21では、ケーブルまたはケーブルの内蔵物をチップ状に細断し、風選など素材の比重差を利用した分別方法によりチップを銅材とその他の物質に分別する。そして、銅材は、クリアランス検認装置22において、クリアランスレベル以下であることの確認が行われ、銅材処分部23において有価物として処分される。また、その他の物質は、廃プラスチックとして焼却炉24において焼却され、あるいは一般産廃処分部25において産業廃棄物として処分される。廃プラスチック材は、焼却炉24によって焼却処理した場合、減容率を90%程度に高めることができる。減容率が高まれば、処分するまでの期間に保管に要する敷地面積を少なくできる。しかし、この要求がない場合には、廃プラスチック材を焼却せずに、一般産廃処分部25においてそのまま産業廃棄物として処分することも可能である。
【0021】
以上説明した実施形態によれば、全ケーブルの表面を洗浄し、洗浄後の全ケーブルの汚染の有無を判別し、汚染のあるケーブルの被覆を剥離して放射性廃棄物(放射性廃棄物処分部15の処理対象)として処分するので、安全性を確保しつつ放射性廃棄物の量を大幅に減じることができる。また、汚染されたケーブルから被覆を剥離して放射性廃棄物とするための処理に掛かるコストを大幅に減じることができる。また、放射性廃棄物の保管スペースを大幅に減じることができる。また、本実施形態によれば、減容のためにケーブルを構成する銅線を取り出すので、有価物として売却できる。また、本実施形態では、特にケーブルを切断してからケーブルを被覆と内蔵物に分別するまでの工程を自動化装置により実行するので、大幅に作業人数を減じることができ、また、大幅に作業被爆リスクを減じることができる。さらに汚染の可能性があるケーブル、あるいは汚染があると判定されたケーブルを装置、搬送装置は、自動装置または半自動装置としており、これにより作業員の被爆の低減が図れる。
【0022】
<他の実施形態>
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0023】
(1)上記実施形態では、ドラム詰め部12を廃ケーブル処理システムに設けたが、このドラム詰め部12を省略し、圧縮減容装置13がドラム詰め部12を兼ねてもよい。すなわち、ケーブル被覆剥離装置11から搬出される被覆および汚染判別・物品搬出モニタ16から搬出される汚染ありの内蔵物をドラム詰め部12に集めることなく、直接、圧縮減容装置13に集め、圧縮減容を行ってもよい。
【0024】
(2)上記実施形態において、ケーブル切断装置1,表面洗浄装置2、汚染判別・物品搬出モニタ3および16、ケーブル被覆剥離装置11、圧縮減容装置13、チップ化分別装置21、クリアランス検認装置22の各手段は、自動装置または半自動装置とし、他の手段は手作業としたが、他の手段を自動装置または半自動装置としてもよい。また、上記実施形態において、ケーブル切断装置1および表面洗浄装置2間の区間と、表面洗浄装置2および汚染判別・物品搬出モニタ3間の区間と、汚染判別・物品搬出モニタ3およびケーブル被覆剥離装置11間の区間では、物品を自動搬送し、他の区間では物品を手動搬送したが、他の区間において物品を自動搬送してもよい。
【符号の説明】
【0025】
10……第1処理システム、20……第2処理システム、1……ケーブル切断装置、2……表面洗浄装置、3,16……汚染判別・物品搬出モニタ、11……ケーブル被覆剥離装置、12,14……ドラム詰め部、13……圧縮減容装置、15……放射性廃棄物処分部、21……チップ化分別装置、22……クリアランス検認装置、23……銅材処分部、24……焼却炉、25……一般産廃処分部。