(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-22
(45)【発行日】2025-09-01
(54)【発明の名称】農業機械の通信システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250825BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20250825BHJP
B64U 101/40 20230101ALN20250825BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
B64U10/13
B64U101:40
(21)【出願番号】P 2022573053
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2021048159
(87)【国際公開番号】W WO2022145358
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020219875
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木下 知洋
(72)【発明者】
【氏名】森本 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 新之助
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/183906(WO,A1)
【文献】特開2019-040514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0325014(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0100309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B64U 10/13
B64U 101/40
G05D 1/221
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1情報を送信する情報端末と、
無人飛行体に設けられ且つ前記情報端末から送信された前記第1情報を受信する第1通信装置と、
農業機械に設けられ且つ前記第1通信装置
から送信された前記第1情報を受信する第2通信装置と、
を備え
、
前記第2通信装置は、前記農業機械の第2情報を前記第1通信装置に送信し、
前記第1通信装置は、前記第2情報を前記情報端末に送信し、
前記無人飛行体は、前記第1通信装置が前記情報端末から前記第1情報を受信し且つ当該第1情報を前記第2通信装置に送信可能な位置であって、前記第1通信装置が前記第2通信装置から前記第2情報を受信し且つ当該第2情報を前記情報端末に送信可能な位置に移動する農業機械の通信システム。
【請求項2】
前記無人飛行体は、前記情報端末から送信された前記第1情報の第1受信強度と、前記第2通信装置から送信された前記第2情報の第2受信強度に基づいて、
前記第1通信装置が前記情報端末から前記第1情報を受信し且つ当該第1情報を前記第2通信装置に送信可能な位置であって、前記第1通信装置が前記第2通信装置から前記第2情報を受信し且つ当該第2情報を前記情報端末に送信可能な位置に移動する請求項
1に記載の農業機械の通信システム。
【請求項3】
前記無人飛行体は、飛行を制御する第1制御装置を有し、
前記第1制御装置は、
前記第1通信装置が前記情報端末から受信した前記第1情報の第1受信強度が、前記第1通信装置が前記第2通信装置から受信した前記第2情報の第2受信強度よりも低く且つ、第1受信強度が閾値未満である場合に、前記無人飛行体を前記情報端末側に向けて移動させ、
前記第2受信強度が前記第1受信強度よりも低く且つ、前記第2受信強度が前記閾値未満である場合、前記無人飛行体を前記農業機械側に向けて移動させる請求項2に記載の農業機械の通信システム。
【請求項4】
前記農業機械は、車体と、前記車体を走行可能に支持する走行装置を有し、
前記無人飛行体は、飛行を制御する第1制御装置を有し、
前記第1制御装置は、前記第1通信装置が前記情報端末から受信した前記第1情報の第1受信強度、又は前記第1通信装置が前記第2通信装置から受信した前記第2情報の第2受信強度が閾値未満である場合に、前記無人飛行体を上昇させる請求項2に記載の農業機械の通信システム。
【請求項5】
前記情報端末は、前記第1情報として前記農業機械の走行の開始、又は、走行の停止を含む情報を送信する請求項1~4のいずれか1項に記載の農業機械の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業機械の通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業機械と携帯端末とを通信する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1では、走行可能な作業機の自動走行を制御可能な制御部と、制御部による自動走行に関する自動走行制御を停止させる停止部と含む制御装置と、制御装置に接続され且つ外部と通信可能な通信装置と、自動走行制御の停止を解除する解除信号を通信装置に送信する携帯端末と、を備え、携帯端末は、複数のスイッチと、複数のスイッチが操作された場合に解除信号を前記通信装置に送信する通信部と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特開2019-41593号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、携帯端末によって自動走行制御を停止させたり、自動走行制御の停止を解除させたりすることができるものの、農業機械及び携帯端末の状況によっては携帯端末から農業機械に対して送信した情報が到達しない可能性があるのが実情である。
本発明は、このような実情に鑑みて、農業機械と情報端末との通信を向上させることができる農業機械の通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
農業機械の通信システムは、第1情報を送信する情報端末と、無人飛行体に設けられ且つ前記情報端末から送信された前記第1情報を受信する第1通信装置と、農業機械に設けられ且つ前記第1通信装置から送信された前記第1情報を受信する第2通信装置と、を備え、前記第2通信装置は、前記農業機械の第2情報を前記第1通信装置に送信し、前記第1通信装置は、前記第2情報を前記情報端末に送信し、前記無人飛行体は、前記第1通信装置が前記情報端末から前記第1情報を受信し且つ当該第1情報を前記第2通信装置に送信可能な位置であって、前記第1通信装置が前記第2通信装置から前記第2情報を受信し且つ当該第2情報を前記情報端末に送信可能な位置に移動する。
また、前記無人飛行体は、前記情報端末から送信された前記第1情報の第1受信強度と、前記第2通信装置から送信された前記第2情報の第2受信強度に基づいて、前記第1通信装置が前記情報端末から前記第1情報を受信し且つ当該第1情報を前記第2通信装置に送信可能な位置であって、前記第1通信装置が前記第2通信装置から前記第2情報を受信し且つ当該第2情報を前記情報端末に送信可能な位置に移動する。
【0006】
また、前記無人飛行体は、飛行を制御する第1制御装置を有し、前記第1制御装置は、前記第1通信装置が前記情報端末から受信した前記第1情報の第1受信強度が、前記第1通信装置が前記第2通信装置から受信した前記第2情報の第2受信強度よりも低く且つ、第1受信強度が閾値未満である場合に、前記無人飛行体を前記情報端末側に向けて移動させ、前記第2受信強度が前記第1受信強度よりも低く且つ、前記第2受信強度が前記閾値未満である場合、前記無人飛行体を前記農業機械側に向けて移動させる。
また、前記農業機械は、車体と、前記車体を走行可能に支持する走行装置を有し、前記無人飛行体は、飛行を制御する第1制御装置を有し、前記第1制御装置は、前記第1通信装置が前記情報端末から受信した前記第1情報の第1受信強度、又は前記第1通信装置が前記第2通信装置から受信した前記第2情報の第2受信強度が閾値未満である場合に、前記無人飛行体を上昇させる。
また、前記情報端末は、前記第1情報として前記農業機械の走行の開始、又は、走行の停止を含む情報を送信する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、農業機械と情報端末との通信を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】農業機械の通信システムの制御ブロック図である。
【
図5】トラクタの自動走行を説明する説明図である。
【
図6】走行予定ラインL1を作成する画面を示す図である。
【
図7B】単位作業区画A1の変形例を示す図である。
【
図8A】無人飛行体がトラクタと連携(連動)しながら飛行している状態を示す平面図である。
【
図8B】第1の変形例において、無人飛行体がトラクタと連携(連動)しながら飛行している状態を示す側面図である。
【
図9A】無人飛行体が情報端末とトラクタとの情報通信の中継を行う処理を示すフローチャートである。
【
図9B】第1の変形例において、無人飛行体が情報端末とトラクタとの情報通信の中継を行う処理を示すフローチャートである。
【
図9C】第2の変形例において、無人飛行体が情報端末とトラクタとの情報通信の中継を行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1、
図2は、農業機械1の全体を示している。農業機械1は、トラクタ、コンバイン、田植機等である。以下、
図1及び
図2に示すトラクタを例にとり、農業機械1について説明する。
図1、
図2に示すように、トラクタ1は、車体(走行車体)3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3には、走行装置7が設けられている。走行装置7は、車体3を走行可能に支持しており、前輪7F及び後輪7Rを有している。前輪7F及び後輪7Rは、本実施形態の場合はタイヤ型であるが、クローラ型であってもよい。原動機4は、エンジン(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン)、又は、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切り換え可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切り換えが可能である。車体3には運転席10が設けられている。運転席10は、保護装置9により保護されている。保護装置9は、運転席10を保護するキャビン、又は、少なくとも運転席10の上方を覆うことにより運転席10を保護するロプス等である。
【0010】
図2に示すように、保護装置9は、車体3に固定された複数の支柱9aと、複数の支柱9aによって支持され且つ運転席10の上方に配置されたルーフ9bとを含んでいる。保護装置9がキャビンである場合、複数の支柱9aの間にガラス、ドア等が設けられ、ガラス及びドア等によって運転席10を覆っている。保護装置9の下方には、フェンダ13が取り付けられており、フェンダ13は後輪7Rの上部を覆っている。
【0011】
図1に示すように、車体3は、車体フレーム20を有している。車体フレーム20は、左側に設けられた車体フレーム20Lと、右側に設けられた車体フレーム20Rとを含む。車体フレーム20L及び車体フレーム20Rは、それぞれは変速装置5側から前方に延設されていて、原動機4の下部を支持している。車体フレーム20Lと車体フレーム20Rとは車体幅方向に離間している。車体フレーム20Lの前端部と車体フレーム20Rの前端部とは、前連結板20Fにより連結されている。車体フレーム20Lの中途部と車体フレーム20Rの中途部とは、中途連結板20Mにより連結されている。車体フレーム20L及び車体フレーム20Rは、前車軸ケース29を支持している。前車軸ケース29内には、前輪7Fを回転自在に支持する前車軸が収容されている。つまり、本実施形態の場合、車体フレーム20は、前車軸を支持する前車軸フレームである。なお、車体フレーム20は、前車軸ケース29以外の構造体を支持するフレーム(前車軸フレーム以外のフレーム)であってもよい。
【0012】
図1、
図2に示すように、車体フレーム20の上方にはボンネット25が設けられている。ボンネット25は、車体フレーム20に沿って前後方向に延設されている。ボンネット25は、保護装置9の幅方向の中央部の前方に配置されている。ボンネット25は、左側に設けられた左側壁25Lと、右側に設けられた右側壁25Rと、左側壁25Lと右側壁25Rとの上部を連結する上壁部25Uとを有している。左側壁25L、右側壁25R及び上壁部25Uによってエンジンルームが形成され、エンジンルームに原動機4、冷却ファン、ラジエータ、バッテリ等が収容されている。左側壁25Lの左側方と右側壁25Rの右側方には、それぞれ前輪7Fが配置されている。
【0013】
ボンネット25の前側、即ち、車体フレーム20L、20Rの前側には、ウエイト26が設けられている。ウエイト26は、車体3の前部に設けられたウエイトブラケット(ウエイト取付部)27に取り付けられている。ウエイトブラケット27は、車体フレーム20Lの前連結板20Fにボルト等の締結具により取り付けられている。
車体3の後部には、連結装置8が設けられている。連結装置8は、車体3に作業装置(インプルメント等)2を着脱可能に連結する装置である。連結装置8は、作業装置2と車体3とを連結し且つ昇降を行わないスイングドローバ、3点リンク機構等で構成されて昇降を行う昇降装置等である。なお、作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、畝立てをする畝立装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0014】
図3は、昇降装置で構成した連結装置8を示している。
図3に示すように、連結装置(昇降装置)8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁36を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁36は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0015】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0016】
図1、
図2に示すように、トラクタ1は、第2位置検出装置30を備えている。第2位置検出装置30は、保護装置9のルーフ9bの前方に装着体31を介して装着されている。但し、第2位置検出装置30の装着位置は、図示の位置には限定されず、保護装置9のルーフ9b上に装着してもよいし、車体3の別の場所に装着してもよい。また、第2位置検出装置30は、上述した耕耘装置等の作業装置2に装着されていてもよい。
【0017】
第2位置検出装置30は、衛星測位システムによって自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する装置である。即ち、第2位置検出装置30は、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信した信号に基づいて位置(緯度、経度)を検出する。第2位置検出装置30は、測位衛星からの信号を受信可能な基地局(基準局)からの補正等の信号に基づいて補正した位置を、自己の位置(緯度、経度)として検出してもよい。また、第2位置検出装置30がジャイロセンサや加速度センサ等の慣性計測装置を有し、慣性計測装置によって補正した位置を、自己の位置として検出してもよい。第2位置検出装置30によって、トラクタ1の車体3の位置(走行位置)P1を検出することができる。
【0018】
図1に示すように、トラクタ1は、複数の障害物検出装置45を備えている。複数の障害物検出装置45のそれぞれは、トラクタ1の周囲に存在する物体、即ち、障害物90を検出可能である。複数の障害物検出装置45のうち、少なくとも1つは、保護装置9の前方で且つボンネット25の外方に設けられている。即ち、少なくとも1つの障害物検出装置45は、トラクタ1の保護装置9の前方の領域において、ボンネット25の左側壁25Lよりも左側の領域、或いは、ボンネット25の右側壁25Rよりも右側の領域に配置されている。本実施形態の場合、複数の障害物検出装置45は、車体3の左側(ボンネット25の左側)に設けられた障害物検出装置45Lと、車体3の右側(ボンネット25の右側)に設けられた障害物検出装置45Rとを含む。
【0019】
障害物検出装置45は、レーザスキャナ45A、ソナー45B等である。レーザスキャナ45Aは、検出波としてレーザを照射することによって物体(障害物)90を検出する。レーザスキャナ45Aは、レーザの照射から受光までの時間に基づいて障害物90までの距離を検出する。ソナー45Bは、検出波として音波を照射することによって物体(障害物)90を検出する。なお、上述した実施形態の複数の障害物検出装置45は、ボンネット25の外方に設けられていなくてもよく、複数の障害物検出装置45の配置等は、限定されない。
【0020】
図4に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。
図4は、農業機械の通信システムの制御ブロック図を示している。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21から吐出した作動油が供給される制御弁22と、制御弁22により作動するステアリングシリンダ23とを含む。制御弁22は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁22は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁22は、操舵軸11bの操舵によっても切り換え可能である。ステアリングシリンダ23は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)に接続されている。
【0021】
したがって、ハンドル11aを操作すれば、ハンドル11aに応じて制御弁22の切換位置及び開度が切り換わり、制御弁22の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ23が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、操舵装置11の構成は上述した構成に限定されない。
【0022】
図4に示すように、トラクタ1は、第2制御装置40と表示装置50と、通信装置(第2通信装置)51とを備えている。言い換えると、農業機械の通信システムは、トラクタ1に設けられた通信装置(第2通信装置)51を備えている。第2制御装置40は、CPU、電気回路、電子回路等で構成されていて、トラクタ1の様々な制御を行う。表示装置50は、液晶パネル、有機ELパネル等を有していて様々な情報を表示する。第2通信装置51は、外部との通信を行う装置である。第2通信装置51は、外部機器に対して直接通信及び間接通信のいずれかを行う通信装置(通信モジュール)であって、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、LPWA(Low Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)等により無線通信を行うことができる。また、第2通信装置51は、携帯電話通信網又はデータ通信網などにより無線通信を行う通信装置(通信モジュール)であってもよい。
【0023】
図4に示すように、第2制御装置40は、トラクタ1における走行系、作業系の制御を行う。第2制御装置40は、走行制御部40Aと、昇降制御部40Bとを備えている。走行制御部40A及び昇降制御部40Bは、第2制御装置40に設けられた電気電子回路、第2制御装置40に格納されたプログラム等から構成されている。
図5に示すように、走行制御部40Aは、自動走行制御を行う。
図5は、トラクタ1の自動走行を説明する説明図である。走行制御部40Aは、自動走行制御において、少なくとも車体3の走行位置(第2位置検出装置30で検出された位置)P1と、予め設定された走行予定ライン(走行経路)L1が一致するように、制御弁22の切換位置及び開度を設定する。言い換えれば、第2制御装置40は、トラクタ1の走行位置P1と走行予定ラインL1とが一致するように、ステアリングシリンダ23の移動方向及び移動量(前輪7Fの操舵方向及び操舵角)を設定する。
【0024】
詳しくは、走行制御部40Aは、車体3の走行位置P1と、走行予定ラインL1とを比較し、走行位置P1と走行予定位置とが一致している場合は、操舵装置11におけるハンドル11aの操舵角及び操舵方向(前輪7Fの操舵角及び操舵方向)を変更せずに保持する(制御弁22の開度及び切換位置を変更せずに維持する)。走行制御部40Aは、走行位置P1と走行予定ラインL1とが一致していない場合、当該走行位置P1と走行予定ラインL1との偏差(ズレ量)が零となるように、操舵装置11におけるハンドル11aの操舵角及び/又は操舵方向を変更する(制御弁22の開度及び/又は切換位置を変更する)。
【0025】
なお、上述した実施形態では、走行制御部40Aは、自動走行制御において、走行位置P1と走行予定ラインL1との偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更するものであるが、走行予定ラインL1の方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)とが異なる場合、走行制御部40Aは、車体方位が走行予定ラインL1の方位に一致するように操舵角を設定してもよい。また、走行制御部40Aは、自動走行制御において、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位偏差に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動走行制御における最終の操舵角を設定してもよい。また、上記した自動走行制御における操舵角の設定方法とは異なる方法で操舵角を設定してもよい。
【0026】
また、走行制御部40Aは、自動走行制御において、トラクタ1(車体3)の実際の車速が、予め設定された走行予定ラインL1に対応する車速に一致するように、走行装置7、即ち、前輪7F及び/又は後輪7Rの回転数を制御してもよい。
また、走行制御部40Aは、障害物検出装置45による障害物の検出結果に基づいて自動走行を制御する。例えば、障害物検出装置45が障害物90を検出していない場合は自動走行を継続して行い、障害物検出装置45が障害物90を検出した場合に自動走行を停止する。より具体的には、障害物検出装置45が障害物90を検出した場合に、走行制御部40Aは、障害物90とトラクタ1との距離が予め定められた閾値(停止閾値)以下である場合に、トラクタ1の走行を停止することで自動走行を停止する。
【0027】
上述した実施形態では、走行制御部40Aは、障害物90とトラクタ1との距離が予め定められた閾値(停止閾値)以下である場合に、トラクタ1の走行を停止していたが、障害物90を回避するように自動走行を行ってもよい。
また、
図4に示すように、第2制御装置40には、運転席10に運転者が着座しているか否かを検出する着座検出装置43が接続されており、走行制御部40Aは、自動走行時において着座検出装置43が着座していると検出している場合は自動走行を継続し且つ、着座検出装置43が着座していないと検出した場合は自動走行を停止する。
【0028】
昇降制御部40Bは、昇降制御を行う。昇降制御部40Bは、手動昇降機能が有効である場合、昇降操作部材が上昇させる方向(上昇側)に操作された場合、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。昇降制御では、手動昇降機能が有効である場合、昇降操作部材が下降させる方向(下降側)に操作された場合、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを収縮させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を下降させる。連結装置(昇降装置)8によって作業装置2を上昇させている場合に、当該作業装置2の位置、即ち、リフトアーム8aの角度が高さ設定ダイヤルで設定された上限(高さ上限値)に達すると、連結装置(昇降装置)8における上昇動作を停止する。
【0029】
昇降制御では、バックアップ機能が有効である場合、車体3が後進した場合に自動的に制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。昇降制御では、オートアップ機能が有効である場合、操舵装置11の操舵角が所定以上になると、自動的に制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。
【0030】
また、表示装置50は、ライン作成部50Aを備えている。ライン作成部50Aは、予め表示装置50等に登録された圃場マップMPを参照して、当該圃場マップMP上に車体3の走行ライン(走行予定ライン)L1を作成する。
図6に示すように、表示装置50に対して所定の操作を行うと、ライン作成部50Aによって、表示装置50にはライン設定画面Q1が表示される。
図6は、走行予定ラインL1を作成する画面(ライン設定画面Q1)を示す図である。
【0031】
ライン設定画面Q1は、走行予定ラインL1を表示するライン表示部85と、幅入力部86とを含んでいる。
図7Aは、単位作業区画A1の一例を示す図であり、幅入力部86に作業装置2の幅(作業幅)W1が入力されると、ライン作成部50Aは、
図7Aに示すように、圃場マップMP上の圃場H1を作業幅W1で縦方向又は横方向に区切ることによって、作業装置2で作業を行う複数の単位作業区画A1を圃場マップMP上に作成する。即ち、ライン作成部50Aは、作業幅W1と同一の幅の単位作業区画A1を圃場マップMP上に複数作成する。
【0032】
なお、
図7Bに示すように、ライン作成部50Aは、作業幅W1からオーバラップ幅W2を除した幅W3の単位作業区画A1を圃場マップMPに複数作成してもよい。
図7Bは、単位作業区画A1の変形例を示す図である。オーバラップ幅W2は、ライン設定画面Q1で入力することが可能である。即ち、ライン作成部50Aは、作業装置2を連結した車体3を走行させた場合に、当該作業装置2によって圃場H1に対して作業が行われる最小単位の領域を、単位作業区画A1として設定する。
【0033】
ライン作成部50Aは、圃場マップMPの単位作業区画A1毎に、車体3が直進する直進部(直進ライン)L1aの作成を行う。即ち、ライン作成部50Aは、例えば、単位作業区画A1の幅方向中央部に、当該単位作業区画A1の長手方向の両端部を結ぶ直線状の直進部L1aを作成する。また、ライン作成部50Aは、車体3が旋回する旋回部(旋回ライン)L1bを作成する。即ち、ライン作成部50Aは、隣接する直進部L1aの端部同士を円弧状に結ぶことのよって旋回部L1bを作成する。
【0034】
また、
図4に示すように、第2制御装置40には、トラクタ1の駆動状態等を検出する状態検出装置41が接続されており、第2通信装置51は、当該状態検出装置41が検出した情報を第2情報として送信することができる。
状態検出装置41は、例えば、走行系の状態を検出する装置等であって、例えば、クランクセンサ、カムセンサ、エンジン回転センサ、アクセルセンサ、車速センサ、操舵角センサ、第2位置検出装置30、自動走行の有無等の状態を検出する。状態検出装置41は、走行系の状態以外を検出する装置、例えば、昇降操作部材の操作方向、操作量等を検出する昇降操作検出センサ、PTO回転検出センサ等も含んでいる。
【0035】
なお、第2通信装置51が送信する第2情報は、例えばトラクタ1が自動走行を継続中、又は自動走行の停止中であるかの情報を含み、本実施形態において第2情報は、第2位置検出装置30が検出した走行位置P1を含んでいる。このため、第2通信装置51は、トラクタ1の位置を送信することができる。
図4に示すように、農業機械の通信システムは、情報端末110を備えている。情報端末110は、トラクタ1、即ち、通信装置(第2通信装置)51に様々な情報(第1情報)を送信可能な端末である。情報端末110は、例えば、トラクタ1等を監視する管理者等が携帯する端末であって、持ち運びが容易な端末である。情報端末110は、リモコン装置、スマートフォン(多機能携帯電話)、タブレット等で構成されている。この実施形態では、情報端末110として、リモコン装置が採用されている。
【0036】
情報端末110は、複数のスイッチ111を有している。複数のスイッチ111は、ON/OFFを切り換え可能なスイッチであり、第1スイッチ111A、第2スイッチ111B、第3スイッチ111C、第4スイッチ111Dを含んでいる。第1スイッチ111Aは、自動走行の開始を指令するスイッチである。第2スイッチ111Bは、自動走行の中断を指令するスイッチである。第3スイッチ111Cは、ロックの解除を指令するスイッチである。第4スイッチ111Dは、緊急停止を指令するスイッチである。
【0037】
また、情報端末110は、通信部(第3通信装置)112を有している。通信部112は、複数のスイッチ111のうち、少なくとも1つのスイッチが操作された場合に、操作されたスイッチに対応した情報をトラクタ1(通信装置)51に送信可能である。通信部112は、例えば、電波を発信する無線装置であって、通信部112は、リモコン装置の筐体内に格納されている。通信部112は、第2通信装置51から送信された情報も受信可能である。つまり、情報端末110、通信部112は、トラクタ1と無人飛行体70とも送受信が可能である。
【0038】
第3スイッチ111CがOFFからONに操作した状態(第3スイッチ111CをONに保持した状態)、即ち、第3スイッチ111Cを操作してロックの解除を維持した状態で、第1スイッチ111AをOFFからONに操作すると、通信部112は、自動走行の開始を示す開始信号を送信する。
第2スイッチ111BをOFFからONに操作すると、通信部112は、自動走行の中断を示す中断信号を送信に出力する。第4スイッチ111DをOFFからONに操作すると、通信部112は、トラクタ1を緊急停止する停止信号を送信する。
【0039】
したがって、通信部112は、第1スイッチ111A、第2スイッチ111B、第3スイッチ111C、第4スイッチ111Dの操作に基づいて、開始信号、中断信号、緊急停止信号を出力する。即ち、情報端末110は、トラクタ1の自動走行の開始、又は、自動走行の停止を第1情報として送信する。
つまり、情報端末110によって、トラクタ1(第2通信装置51)に当該トラクタ1の制御に関する情報を第1情報として送信することができる。
【0040】
なお、情報端末110を上述した構成に加えて、自己の位置(端末位置P2)を検出可能な測位装置113を備えていてもよい。また、斯かる場合において、通信部112が送信する第1情報には、当該端末位置P2の情報が含まれており、情報端末110は、自己の位置(端末位置P2)を送信することができる。
さて、
図4に示すように、農業機械の通信システムは、無人飛行体(飛行体)70に設けられた通信装置(第1通信装置)75を備えている。無人飛行体70は、例えば、マルチコプターである。
【0041】
以下、マルチコプターを例にとり、無人飛行体70について説明する。
無人飛行体(マルチコプター)70は、本体70aと、本体70aに設けられたアーム70bと、アーム70bに設けられた複数の回転翼70cと、本体70aに設けられたスキッド70dとを有している。複数の回転翼70cは、飛行するための揚力を発生させる装置である。無人飛行体70には、少なくとも2以上、好ましくは、4以上の回転翼70cが設けられている。複数の回転翼70cのそれぞれは、回転力を付与するロータとロータの駆動によって回転するブレード(プロペラ)とを含んでいる。
【0042】
無人飛行体70は、蓄電装置71と、センシング装置72と、第1位置検出装置73と、記憶装置74と、第1通信装置75と、第1制御装置76とを有している。蓄電装置71は、バッテリ、コンデンサ等であって電力を蓄電する装置である。蓄電装置71は、例えば、本体70aの内部、又は、本体70aに取り付けられている。
センシング装置72は、CCDカメラ、赤外線カメラ等で構成され、本体70aの下部に着脱自在、或いは、本体70aにブラケット(図示省略)を介して設けられている。センシング装置72は、ブラケットに対して垂直方向又は水平方向に揺動自在であって、センシングする方向を変更することができる。なお、センシング装置72の水平方向、垂直方向の揺動の制御は、第1制御装置76によって行うことができる。例えば、遠隔操縦装置によって無人飛行体70を操縦する場合、第1制御装置76は、遠隔操縦装置から送信された制御信号を、第1通信装置75を介して取得すると、取得した制御信号に応じてセンシング装置72を水平方向又は垂直方向に揺動させる。
【0043】
例えば、無人飛行体70を圃場H1上に飛行させると、センシング装置72によって圃場をセンシングすることができる。センシング装置72がCCDカメラである場合、例えば、圃場H1の上空約100mの高さから、当該圃場H1を空撮することによって、圃場H1の断片画像を数十枚~数百枚撮像する。空撮した複数枚の画像、即ち、センシング装置72で撮像した複数枚の画像(空撮画像)は、無人飛行体70に設けられた記憶装置74に記憶される。無人飛行体70の記憶装置74に記憶された複数枚の空撮画像は第1通信装置75によって外部に出力することができる。
【0044】
また、第1位置検出装置73は、第2位置検出装置30と同様に、衛星測位システムによって自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)P3を検出する装置であり第2位置検出装置30と同様の構成である。第1位置検出装置73で検出した自己の位置P3のことを「飛行位置」ということがある。また、第1位置検出装置73によって、高さ情報、即ち、高度を検出することができる。
【0045】
通信装置(第1通信装置)75は、トラクタ1の通信装置(第2通信装置51)、情報端末110等の外部機器に対して直接通信及び間接通信のいずれかを行う通信装置(通信モジュール)であって、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、LPWA(Low Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)等により無線通信を行うことができる。また、第1通信装置75は、携帯電話通信網又はデータ通信網などにより無線通信を行う通信装置(通信モジュール)であってもよい。
【0046】
第1制御装置76は、複数の回転翼70cを制御する装置であり、CPU等から構成されている。第1制御装置76は、無人飛行体70が、少なくとも2つの回転翼70cを有している場合、ロータに制御信号を出力することにより、一方側のブレードの回転数を、他方のブレードの回転数よりも小さくすることによって、一方側のブレード側に無人飛行体70を進行させたり、他方側のブレードの回転数を、一方のブレードの回転数よりも小さくすることによって、他方側のブレード側に無人飛行体70を進行させる。即ち、第1制御装置76は、複数のブレードのうち、進行方向側のブレードの回転数を、進行方向とは反対側のブレードの回転数よりも小さくすることによって、無人飛行体70の進行方向を制御する。また、第1制御装置76は、複数のブレードの回転数を一定にすることによって、無人飛行体70をホバリングさせる。
【0047】
なお、無人飛行体70は、遠隔操縦装置によって操縦される飛行体であっても、自立して飛行する飛行体であってもよく、限定されない。
図8Aに示すように、無人飛行体70は、トラクタ1と連携(連動)しながら飛行することができる。
図8Aは、無人飛行体70がトラクタ1と連携しながら飛行している状態を示す平面図である。具体的には、トラクタ1が自動走行を行っている場合に、無人飛行体70は、当該トラクタ1の周囲、又は、圃場H1の周囲等を飛行する。無人飛行体70は、情報端末110と、トラクタ1との情報通信を中継する。例えば、無人飛行体70の第1通信装置75は、情報端末110から送信されたトラクタ1の自動走行の開始、自動走行の停止等の第1情報を受信し、受信した第1情報(トラクタ1の自動走行の開始、自動走行の停止)をトラクタ1の第2通信装置51に送信する。つまり、第1通信装置75は、受信した第1情報を一時的に保持しておき、その後保持していた第1情報を第2通信装置51に送信(中継)する。
【0048】
また、無人飛行体70の第1通信装置75は、トラクタ1の第2通信装置51から送信された第2情報(トラクタ1の自動走行を継続中、自動走行の停止中)を受信し、受信した第2情報(トラクタ1の自動走行を継続中、自動走行の停止中)を情報端末110に送信する。つまり、第1通信装置75は、受信した第2情報を一時的に保持しておき、その後保持していた第2情報を情報端末110に送信(中継)する。
さらに、無人飛行体70は、情報端末110とトラクタ1との情報通信の中継が行えるように飛行を行う。
【0049】
より詳しくは、無人飛行体70の第1通信装置75は、情報端末110から送信された第1情報の第1受信強度と、トラクタ1の第2通信装置51から送信された第2情報の第2受信強度とを監視する。
図8Aに示すように、第1制御装置76は、第1受信強度が第2受信強度よりも低く且つ、第1受信強度が閾値未満である場合は、無人飛行体70を現在位置P30よりも情報端末110側に向けて飛行させる。一方、第1制御装置76は、第2受信強度が第1受信強度よりも低く且つ、第2受信強度が閾値未満である場合は、無人飛行体70を現在位置P30よりもトラクタ1側に向けて飛行させる。なお、第1受信強度及び第2受信強度の判定方法は、RSSI(Received signal strength indication)等の既存の技術を適用可能である。また、上述した閾値は、第1制御装置76に予め記憶されている値であって、第1通信装置75と通信可能に接続された端末(例えば情報端末110)を操作することによって、任意に変更可能であってもよい。
【0050】
本実施形態において、無人飛行体70が、情報端末110側に向けて飛行したり、トラクタ1側に向けて飛行するときに、当該無人飛行体70(第1制御装置76)は、情報端末110が有する測位装置113が検出した端末位置P2や、第2位置検出装置30が検出した走行位置P1に基づいて情報端末110又はトラクタ1の位置の確認を行う。なお、無人飛行体70が情報端末110又はトラクタ1の位置の確認する方法は、一例であって上記方法に限定されず、例えば、情報端末110及びトラクタ1を上空からセンシング装置72によってセンシングすることによって、情報端末110又はトラクタ1の位置の確認を行ってもよい。
以下、
図9Aを用いて、無人飛行体70が情報端末110とトラクタ1との情報通信の中継が行えるように飛行を行う一連の流れを説明する。
図9Aは、無人飛行体70が情報端末110とトラクタ1との情報通信の中継を行う処理を示すフローチャートである。
【0051】
まず、第1制御装置76は、第1通信装置75が第1情報を受信しているか否かを確認する(S1)。第1制御装置76は、第1通信装置75が第1情報を受信していると確認すると(S1,Yes)、当該第1通信装置75が受信した第1情報の受信強度(第1受信強度)を判定する(S2)。
第1制御装置76は、第1受信強度を判定すると(S2)、第1通信装置75が受信している第2情報の受信強度(第2受信強度)を判定する(S3)。第1制御装置76は、第2受信強度を判定すると(S3)、S2で判定した第1受信強度がS3で判定した第2受信強度よりも低いか否かを確認する(S4)。
第1制御装置76は、第1受信強度が第2受信強度よりも低いことを確認すると(S4,Yes)、第1受信強度が閾値未満であるか否かを判定する(S5)。
【0052】
第1制御装置76は、第1受信強度が閾値未満であると判定すると(S5,Yes)、第1位置検出装置73が検出した飛行位置P3と、測位装置113が検出した端末位置P2に基づいて、無人飛行体70を現在位置P30よりも情報端末110側に向けて飛行させる(S6)。具体的には、第1制御装置76は、第1位置検出装置73が検出した飛行位置P3が、測位装置113が検出した端末位置P2に接近するように、無人飛行体70を飛行させる。
【0053】
第1制御装置76は、第1受信強度が第2受信強度よりも高いことを確認すると(S4,No)、第2受信強度が閾値未満であるか否かを判定する(S7)。
第1制御装置76は、第2受信強度が閾値未満であると判定すると(S7,Yes)、第1位置検出装置73が検出した飛行位置P3と、第2位置検出装置30が検出した走行位置P1に基づいて、無人飛行体70を現在位置P30よりもトラクタ1側に向けて飛行させる(S8)。具体的には、第1制御装置76は、第1位置検出装置73が検出した飛行位置P3が、第2位置検出装置30が検出した走行位置P1に接近するように、無人飛行体70を飛行させる。
【0054】
なお、第1制御装置76は、S5において第1受信強度が閾値未満でないと判定した場合(S5,No)、S
7において第2受信強度が閾値未満でないと判定した場合(S7,No)、処理を終了して、STARTに戻り、処理を再開する。
また、
図8Bに示すように、第1制御装置76は、第1受信強度が第2受信強度よりも低く且つ、第1受信強度が閾値未満である場合、又は、第1制御装置76は、第2受信強度が第1受信強度よりも低く且つ、第2受信強度が閾値未満である場合は、無人飛行体70の高度を高くしてもよい。
図9Bは、
図8Bに示す第1の変形例における、無人飛行体70が情報端末110とトラクタ1との情報通信の中継を行う処理を示すフローチャートである。
図9Bに示すように、当該第1の変形例では、S6に代えてS6Aの処理を行い、S8に代えてS8Aの処理を行う点で異なる。このため、第1の変形例において、S1~S4の説明を省略する。
【0055】
つまり、当該第1の変形例において、第1制御装置76は、第1受信強度が閾値未満であると判定すると(S5,Yes)、第1位置検出装置73が検出した飛行位置P3に基づいて、現在位置P30よりも飛行位置P3を上昇させる(S6A)。また、第1制御装置76は、第2受信強度が閾値未満であると判定すると(S7,Yes)、第1位置検出装置73が検出した飛行位置P3に基づいて、現在位置P30よりも飛行位置P3を上昇させる(S8A)。これにより、無人飛行体70が障害物90よりも上方へ上昇することで、第1情報又は第2情報を受信することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態と変形例を組み合わせ、第1制御装置76は、
図9Cに示すような処理を行ってもよい。
図9Cは、第2の変形例における、無人飛行体70が情報端末110とトラクタ1との情報通信の中継を行う処理を示すフローチャートである。
図9Cに示すように、当該第2の変形例では、S6及びS6Aに代えてS6Bを行い、S8及びS8Aに代えてS8Bを行う点で異なる。このため、第2の変形例において、S1~S4の説明を省略する。
【0057】
つまり、当該第2の変形例において、第1制御装置76は、第1受信強度が閾値未満であると判定すると(S5,Yes)、無人飛行体70を現在位置P30よりも情報端末110側に向けて飛行させつつ、現在位置P30よりも飛行位置P3を上昇させる(S6B)。また、当該変形例において、第1制御装置76は、第2受信強度が閾値未満であると判定すると(S7,Yes)、無人飛行体70を現在位置P30よりもトラクタ1側に向けて飛行させつつ、現在位置P30よりも飛行位置P3を上昇させる(S8B)。
【0058】
上述したように、無人飛行体70は、第1情報又は第2情報が送受信可能な位置に移動する。上述した実施形態では、無人飛行体70を情報端末110側又はトラクタ1側に飛行させたり、高度を変更することで、通信を行いやすくしているが、情報端末110側又はトラクタ1側への飛行と高度の変更との両方を行ってもよい。
また、情報端末110は、トラクタ1の自動走行の開始、又は、自動走行の停止を送信する端末であったが、これに限定されず、トラクタ1に関する様々な情報(稼働情報、走行位置P1等)を受信したり、トラクタ1に対して自動走行以外の指令を行う端末であってもよく限定されない。
【0059】
農業機械の通信システムは、農業機械(トラクタ1)に第1情報を送信する情報端末110と、無人飛行体70に設けられ且つ情報端末110から送信された第1情報を受信する第1通信装置75と、農業機械(トラクタ1)に設けられ且つ第1通信装置75が送信された第1情報を受信する第2通信装置51と、を備えている。これによれば、情報端末110から送信された第1情報を無人飛行体70の第1通信装置75が受信した後に、農業機械(トラクタ1)の第2通信装置51を送信するため、無人飛行体70が無線の中継局として機能させることができ、農業機械(トラクタ1)と情報端末110との通信を向上させることができる。
【0060】
第2通信装置51は、農業機械(トラクタ1)の第2情報を第1通信装置75に送信し、第1通信装置75は、第2情報を情報端末110に送信する。これによれば、農業機械(トラクタ1)から送信された第2情報も、無人飛行体70を介して情報端末110に送信することができる。
無人飛行体70は、第1情報又は第2情報が送受信可能な位置に移動する。これによれば、情報端末110と農業機械(トラクタ1)との間に、建物、電柱、木などの障害物90があったとしても、無人飛行体70が移動することで第1情報又は第2情報を受信することができる。
【0061】
無人飛行体70は、情報端末110から送信された第1情報の第1受信強度と、第2通信装置51から送信された第2情報の第2受信強度に基づいて、第1情報又は第2情報が送受信可能な位置に移動する。これによれば、受信強度(第1受信強度、第2受信強度)に基づいて、無人飛行体70を情報通信が行いやすい場所に移動させることができる。
情報端末110は、第1情報として農業機械(トラクタ1)の走行の開始、又は、走行の停止を含む情報を送信する。これによれば、情報端末110から送信した第1情報によって、農業機械(トラクタ1)の走行の開始、又は、走行の停止を確実に行うことができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 :農業機械(トラクタ)
51 :第2通信装置
70 :無人飛行体
75 :第1通信装置
110 :情報端末