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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-22
(45)【発行日】2025-09-01
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/12 20060101AFI20250825BHJP
   G11B 33/14 20060101ALI20250825BHJP
【FI】
G11B33/12 313C
G11B33/12 313U
G11B33/14 501M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024028380
(22)【出願日】2024-02-28
【審査請求日】2024-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】園田 幸司
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-021029(JP,A)
【文献】特表2018-510205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0086460(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0039000(US,A1)
【文献】米国特許第11631436(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2024-0018514(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/12
G11B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられた回転可能なディスクと、
前記筐体の内部に設けられ、前記ディスクに情報を書き込み、読み出すことのできるヘッドと、
前記筐体の内部に設けられ、孔の平均直径が0.4nm以上、1.0nm以下である第1多孔質体を有するフィルタ構造と、
を有する磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記第1多孔質体は、骨格コードFAUに属するゼオライトである、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記フィルタ構造は、活性炭をさらに有する、
請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記フィルタ構造は、シリカゲルをさらに有する、
請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記フィルタ構造は、孔の平均直径が0.2nm以上、0.4nm以下であり骨格コードLTAに属するゼオライトを含む第2多孔質体をさらに有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記第1多孔質体は、粘度が4cP以上8cP以下の少なくとも1種のグリコールエーテル又はグリコールエステルを吸着する孔を有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記第1多孔質体は、沸点が120℃以上240℃以下の少なくとも1種のグリコールエーテル又はグリコールエステルを吸着する孔を有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記グリコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はジプロピレングリコールモノメチルエーテルから選択される、いずれか少なくとも1種類の分子を含む、
請求項6に記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
前記グリコールエーテルは、有効直径が0.4nm以上0.7nm以下である、
請求項8に記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
前記フィルタ構造は、前記第1多孔質体を覆う包囲体をさらに有しており、前記ディスクの側方に設けられる、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項11】
前記フィルタ構造は、前記第1多孔質体よりも前記フィルタ構造に流れる気流の上流に設けられ、前記ディスクが設けられる方向と同じ方向に曲率中心が位置する曲面を有する気流制御部をさらに有する、
請求項10に記載の磁気ディスク装置。
【請求項12】
前記フィルタ構造は、上面が前記筐体の内壁に接しており、
空洞部を有する枠体と、
前記枠体の下面であって前記空洞部の開口に設けられた通気膜と、
をさらに有し、
前記第1多孔質体は、前記枠体の前記空洞部に設けられる、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)は、高速に回転する磁気ディスクと、磁気ディスクから情報を読み出し、また、書き出すためのヘッドを備えている。HDDの筐体の内部にガス分子が多量に存在すると、ヘッドとディスクの間の距離の制御性を悪化させ、HDDの寿命を短くする恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第11631436号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、所定の有効直径を有するガス分子を除去する性能に優れた磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気ディスク装置は、筐体と、前記筐体の内部に設けられた回転可能なディスクと、前記筐体の内部に設けられ、前記ディスクに情報を書き込み、読み出すことのできるヘッドと、前記筐体の内部に設けられ、前記ヘッドを駆動するボイスコイルモータと、前記筐体の内部に設けられ、孔の平均直径が0.4nm以上、1.0nm以下である第1多孔質体を含む多孔質体を有するフィルタ構造と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る磁気ディスク装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る磁気ディスク装置を示す模式平面図である。
図3】第1実施形態に係る磁気ディスク装置の変形例を示す模式平面図である。
図4】第1フィルタの構造の一例を示す上面図である。
図5】第1フィルタの構造の一例を示す斜視図である。
図6】第1フィルタの構造の一例を示す模式平面図である。
図7】第2実施形態に係る磁気ディスク装置を示す模式断面図である。
図8】第2フィルタの構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0008】
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0009】
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
説明のために筐体10のベース11からトップカバー12へと向かう方向を「上」と呼び、トップカバー12からベース11へと向かう方向を「下」と呼ぶ。ただし、「上」、「下」の方向は、重力方向または磁気ディスク装置の実装時における方向に限定されない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る磁気ディスク装置100を示す斜視図である。
【0012】
磁気ディスク装置100は、筐体10を有しており、筐体10は、箱状のベース11とトップカバー12とを有する。ベースは、底面11bと、底面11bの縁に沿って立ち上がり、底面11bと一体形成された側面11wを有する。トップカバー12が複数の接合部品によりベース11と組み合わせられることで筐体10は封止される。例えば、接合部品はねじ等であってもよいし、接着剤やはめ込み機構を利用してもよい。図1には、複数のねじ13により接合する例を図示している。ベース11やトップカバー12の材料として、例えばAlやFeを含む金属が考えられる。
【0013】
ベース11には、データを記録するディスク20と、スピンドルモータ21と、アクチュエータ30が設けられる。スピンドルモータ21は、ディスク20を回転可能に保持している。また、アクチュエータ30は、ディスク20の表面を走査し、情報を読み取り、書き出すヘッド31を有する。アクチュエータ30は、ヘッド31が備え付けられたアーム32と、アーム32の位置の制御を行うボイスコイルモータ33をさらに有する。
【0014】
ベース11には、基板40が設けられる。基板40は、FPC(Frexible Printed Circuit)基板41を介してアクチュエータ30と電気的に接続されている。基板40はヘッド31及びボイスコイルモータ33の動作を制御する。
【0015】
ディスク20は、スピンドルモータ21に複数搭載されていてもよい。例えば2枚、3枚、又は4枚搭載されていてもよい。もしくは5枚以上搭載されていてもよい。
【0016】
ベース11の上であって、ディスク20の近傍に第1フィルタ51が設けられる。第1フィルタ51は、ディスク20の回転に伴って生じる気流が少なくとも一部を通る位置に設けられる。第1フィルタ51は、多孔質体PMを含む。多孔質体PMの詳細については後述する。
【0017】
さらに、トップカバー12には、孔12hが設けられていてもよい。孔12hに対応する位置で筐体10の内部にさらに第2フィルタ52が設けられていてもよい。第2フィルタ52については、後に図7及び7を参照して説明する。
【0018】
図2は、図1に示す磁気ディスク装置100の平面図である。
【0019】
ベース11には、第1フィルタ51が設けられる。図2には、ベース11が4つの角部を有する例を図示している。図1及び図2は第1フィルタ51がベース11の第1角部11c1とディスク20との間に配置される例を示している。角部とは、ベース11の側面11wのうち曲率を有している部分である。第1角部11c1は、ディスク20に対して、アクチュエータ―30又は基板40とは反対側に位置する角部の一つである。X方向において、第1角部11c1と、アクチュエータ―30又は基板40と、の間にディスク20が位置する。
【0020】
図3には第1実施形態に係る磁気ディスク装置100の変形例として、第1フィルタ51をディスク20とアクチュエータ30との間に設ける例を図示している。ベース11の複数の角部のうちでアクチュエータ30に最も近い角部を第2角部11c2と呼ぶ。図3は、第1フィルタ51が第2角部11c2の近傍に設けられる例を示している。近傍とは、他の角部と比べて近くであることを指す。
【0021】
また、第1フィルタ51は、例えばディスク20と基板40との間に設けられていてもよい。第1フィルタ51は、ベース11の複数の角部のいずれの近傍に設けられていてもよい。
【0022】
図2及び図3のいずれの場合でも、第1フィルタ51は、ディスク20の側方に設けられ、ディスク20の周囲に生まれる気流が第1フィルタ51の少なくとも一部を通過する。
【0023】
続いて、第1フィルタ51の構造の一例を、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0024】
図4は第1フィルタ51に含まれる多孔質体PMを保持する構造の例を表す平面図である。
【0025】
第1フィルタ51は、多孔質体PMを覆う包囲体60を有する。図4において多孔質体PMは露出しておらず、包囲体60に囲まれて保持されている。包囲体60は、通気性の材料によって形成される。包囲体60は、例えば不織布を含む。
【0026】
図5は、図4に示した包囲体60の斜視図である。包囲体60は内部に多孔質体PMを有しており、多孔質体PMを囲うように周縁部が封止される。包囲体60の第1主面60aから第1主面60aと対向する第2主面60bへと向かう方向、又は、その逆の方向に流れる気流が多孔質体PMを通過する。多孔質体PMが、気流に含まれるガス分子等を吸着し、除去する。
【0027】
包囲体60を気流が通過する際の抵抗を低減するためには、包囲体60の第1主面60a又は第2主面60bがディスク20に向く方向で設けられることが望ましい。
【0028】
第1フィルタ51に含まれる包囲体60をベース11に固定する構造は、例えば凹部を有する部品にはめ込むことによるものでもよいし、包囲体60を挟み込むような構造でもよい。
【0029】
さらに、第1フィルタ51は、気流の流路を制御する機構を備えていることが望ましい。図6には、第1フィルタ51に設けられる包囲体60と、気流制御部62と、を模式的に示した図を示す。ディスク20の側方に設けられた第1フィルタ51の構造を示す。第1フィルタ51は、多孔質体PMを含む包囲体60と、包囲体60よりもディスク20の回転に伴って生じる気流の上流に設けられた気流制御部62と、を有する。図6には包囲体60の第1主面60aがディスク20に向く方向で設けられる例を示している。気流制御部62の少なくとも一部は、包囲体60よりもディスク20から離れて設けられる。
【0030】
気流制御部62は、曲面62cを有する。曲面62cの少なくとも一部は弧に沿って設けられる。ここで、弧は円弧であってもよいし、楕円弧であってもよい。例えば、所定の曲率半径を有する曲率円Ccに沿って設けられる。曲率円Ccの曲率中心Ocは、気流制御部62に対してディスク20が設けられる方向と同じ方向に位置する。言い換えると、曲面62cは、円形のディスク20の縁の形状である円弧と同じ方向に屈曲している。
【0031】
第1フィルタ51に設けられる多孔質体PMは、少なくとも第1多孔質体を含む。第1多孔質体の孔の平均直径は、活性炭又はシリカゲルの孔の平均直径未満であることが望ましい。ここで、孔の平均直径とは、少なくとも2つ以上の孔について直径を測定して平均をとったものである。また、少なくとも2つ以上の孔について直径を測定した中央値又は最頻値であってもよい。活性炭又はシリカゲルの孔の平均直径は、例えば1.0nmより大きい。
【0032】
第1多孔質体は、孔の平均直径が、例えば0.4nm以上1.0nm以下である。有効直径が例えば0.4―0.7nmのガス分子を吸着するには、望ましくは、孔の平均直径が0.7nm以上1.0nm以下である。ここで、気体分子の有効直径は、例えば球形を仮定した気体分子同士が衝突する際の実質的な直径として推定される。
【0033】
第1多孔質体は、例えばゼオライトを含む多孔質体である。以下で、ゼオライトというときには、合成ゼオライトを含む。第1多孔質体は、例えば骨格コードFAUに属するゼオライトである。第1多孔質体は、例えばX型のゼオライトである。第1多孔質体は、例えば13X型のゼオライトである。
【0034】
また、第1フィルタ51は、第1多孔質体に加えて、活性炭を有していてもよい。また、シリカゲルを有していてもよい。
【0035】
第1フィルタ51は、第1多孔質体に加えて、第2多孔質体P2を有していてもよい。第2多孔質体は、孔の平均直径が、例えば0.1nm以上0.4nm以下である。望ましくは、0.2nm以上0.4nm以下であってもよい。第2多孔質体は、例えばゼオライトを含む多孔質体である。第2多孔質体は、例えば骨格コードLTAに属するゼオライトである。第2多孔質体は、例えばA型のゼオライトである。第2多孔質体は、例えば3A型のゼオライトである。
【0036】
磁気ディスク装置100の動作について説明する。
【0037】
スピンドルモータ21によって、ディスク20が回転する。基板40から伝達される信号に基づいて、ボイスコイルモータ33が駆動され、回転するディスク20に対してヘッド31の位置を制御する。ヘッド31の位置を様々に変えながら、ディスク20上の様々な位置において、磁気の情報を書き込み、又は、読み取ることで磁気ディスク装置100は動作する。
【0038】
なお、ディスク20の回転に引きずられる形で、ディスク20の周辺には空気の流れが生じる。ここで、空気とは、大気中の組成に等しいものに限られず、多種のガス分子を含んでいてもよい。ディスク20の表面の空気の流れにより、ディスク20とヘッド31の間の間隔が制御される。
【0039】
一方、ディスク20側面にも円を描くように空気の流れが生じる。第1フィルタ51はディスク20の側方に位置しており、ディスク20の周囲を流れる空気の少なくとも一部は第1フィルタ51を通過する。第1フィルタ51を空気が通過することで、所定の大きさの有効直径を有するガス分子は多孔質体PMに吸着される。
【0040】
図6を参照しつつ、第1フィルタ51を通過する気流の流路の例について説明する。ディスク20の回転に伴って、第1フィルタ51には気流AF0が流入する。気流AF0の少なくとも一部は、気流AF1として気流制御部62に沿って流れる。気流AF0の少なくとも一部は、気流AF2として示したように包囲体60の第1主面60aの側を流れていてもよい。
【0041】
気流AF1の流れる方向は、気流制御部62の曲面62cに沿って変化する。気流AF1が包囲体60の第2主面60bに流入する際の角度は、気流制御部62の曲面62cの形状によって制御される。気流AF1が第2主面60bから第1主面60aの方向に包囲体60を通過する際に、包囲体60に含まれる多孔質体PMが気流に含まれるガス分子を吸着する。
【0042】
有効直径が1.0nm以下のガス分子は、活性炭やシリカゲルでは孔の平均直径が大きいため、除去が難しいことが知られている。さらに、ガス分子の粘度が大きいほどディスク等に付着した際に除去し難く、ガス分子の沸点が高く揮発しにくいほど熱による脱離が難しい。活性炭やシリカゲルのみを使用する場合には、有効直径が1.0nm以下であり、かつ、粘度や沸点が大きいガス分子により磁気ディスク装置の寿命が低下する恐れがあった。
【0043】
有効直径が1.0nm以下のガス分子は、例えばグリコールエーテルやグリコールエステルが挙げられる。グリコールエーテルやグリコールエステルは、例えばエタノールよりも分子量が大きく、分子間力も大きい。グリコールエーテルやグリコールエステルは、エタノール等よりも粘度及び沸点が高いことで、ディスク等に付着した際に、より除去し難いことが判明している。
【0044】
グリコールエーテルは、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル(2―メトキシエタノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(2-(2-メトキシエトキシ)エタノール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(2-エトキシエタノール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2-(2-エトキシエトキシ)エタノール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(2-ブトキシエタノール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(2- (2-ブトキシエトキシ)エタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)、又はジプロピレングリコールモノメチルエーテル((2-メトキシメチルエトキシ)プロパノール)等を含む。グリコールエーテルは、有効直径が0.4nm以上0.7nm以下のものを含む。
【0045】
グリコールエーテルには、沸点が120℃以上240℃以下のものが含まれていてもよい。エタノール等のアルコールよりも沸点の高いグリコールエーテルが含まれる。
【0046】
グリコールエーテルには、常温常圧における粘度が4cP以上8cP以下のものが含まれていてもよい。エタノール等のアルコールよりも粘度の大きいグリコールエーテルが含まれる。
【0047】
また、グリコールエステルは、例えばエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、又はジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を含む。グリコールエステルは、有効直径が0.4nm以上0.7nm以下のものを含む。
【0048】
グリコールエステルには、沸点が120℃以上240℃以下のものが含まれていてもよい。エタノール等のアルコールよりも沸点の高いグリコールエステルが含まれる。
【0049】
グリコールエステルには、常温常圧における粘度が4cP以上8cP以下のものが含まれていてもよい。エタノール等のアルコールよりも粘度の大きいグリコールエステルが含まれる。
【0050】
本実施形態に係る磁気ディスク装置100によれば、第1フィルタ51に設けられた第1多孔質体を含む多孔質体PMが、後述するように所定の汚染物質を吸着する性能に優れており、磁気ディスク装置の寿命を伸長することが可能である。第1多孔質体は、例えば平均直径が0.4nm以上1.0nm以下の孔を有しており、有効直径が1.0nm以下のガス分子を吸着して除去する性能に優れている。例えば、グリコールエーテルやグリコールエステルを除去する性能に優れている。筐体10の内部の汚染を抑制し、磁気ディスク装置100の寿命を伸長することができる。
【0051】
エタノール等のアルコールよりも沸点及び粘度の高いグリコールエーテル又はグリコールエステルは、HDDに付着しやすく、かつ、除去し難いため、HDDの寿命を短くする恐れがある。本実施形態に係る磁気ディスク装置100によれば、グリコールエーテルやグリコールエステルをはじめとする有効直径が1.0nm以下のガス分子を除去する性能に優れ、磁気ディスク装置100の寿命を伸長することができる。
【0052】
さらに、第1フィルタ51に設けられる多孔質体PMは第1多孔質体に加えて活性炭を有していることが望ましい。第1多孔質体が吸着できない大きさの分子、例えば有効直径が1.0nmよりも大きい分子を活性炭が吸着することができる。したがって、さらに幅広い種類の汚染物質を除去して、磁気ディスク装置100の寿命を伸長することができる。活性炭は例えばシリカゲルで代用してもよい。
【0053】
第1多孔質体の孔の平均直径が1.0nm以下であることによって、活性炭等が吸着することが困難なほど小さいガス分子を、第1多孔質体が主なターゲットとして吸着の効率を向上できる。活性炭等が吸着できる大きさのガス分子が第1多孔質体の吸着サイトを占有することを抑制することで、活性炭等が吸着できない小さいガス分子を第1多孔質体がより多く吸着することができる。したがって、第1多孔質体の孔の平均直径がより大きい場合と比べて、例えば0.4nm以上0.7nm以下の有効直径を有するガス分子を効率よく吸着することができる。
【0054】
なお、第1フィルタ51に設けられる多孔質体PMは第2多孔質体をさらに有していてもよい。第2多孔質体は、例えば平均直径が0.2nm以上0.4nm以下の孔を有しており、第1多孔質体よりも水分子を吸着する性能に優れている。したがって、筐体10内の湿度をさらに低減することができる。
【0055】
また、ディスク20の側方に第1フィルタ51が設けられることで、ディスク20の回転に伴ってディスク20の側方に発生する気流に含まれるガス分子を効率的に吸着することができる。さらに、ディスク20を回転させるスピンドルモータ21が仮にガス分子の発生源である場合に、発生源の近くに第1フィルタ51を設けることで、効率よくガス分子を除去することができる。
【0056】
筐体10の内部において、ガス分子の発生源を特定した場合に、第1フィルタ51をガス分子の発生源の近くに設けることで、効率よくガス分子を除去することができる。
【0057】
また、第1フィルタ51に含まれる包囲体60の第1主面60a又は第2主面60bがディスク20の方向を向くことで、気流が通過する際の抵抗を低減しディスク20の回転への影響を低減することができる。包囲体60による空気抵抗を低減することで、ディスク20の回転速度の低下を抑制することができる。
【0058】
また、包囲体60の第1主面60a又は第2主面60bがディスク20の方向を向くことで、第1主面60a又は第2主面60bに対して直角に気流が流れる場合と比べて、多孔質体PMを通過する流路を長くしてガス分子を除去する効率を向上することができる。
【0059】
さらには、第1フィルタ51は例えば図6に示す気流制御部62を有することで、気流AF1を制御して、包囲体60の第2主面60bに対して90度よりも小さい角度で流入させる。気流制御部62によって第2主面60bに流入する気流AF1の角度を制御することができる。第2主面60bに対して浅い角度で流入するほど、気流AF1が包囲体60を通過する長さをより長くすることができる。したがって、包囲体60に含まれる多孔質体PMによるガス分子の除去の効率をさらに高めることができる。
【0060】
さらには、気流制御部62の曲面62cが気流制御部62に対してディスク20が設けられる方向と同じ方向に曲率中心Ocが位置しており、気流AF1の方向を徐々に変化させながら第2主面60bへと向かわせることで、気流制御部62による空気抵抗を低減することができる。
【0061】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る磁気ディスク装置200を表す模式断面図である。
【0062】
磁気ディスク装置200は、筐体10の内部に、ディスク20、スピンドルモータ21、アクチュエータ30を有する。アクチュエータ30は、ヘッド31及びアーム32を含む。
【0063】
さらに筐体10のトップカバー12には、孔12hが設けられる。孔12hは、円形である場合に限らず、矩形や楕円形、長円形などでもよい。また、孔12hは、ディスク20の上方に設けられることに限られず、第1実施形態に係る半導体装置1を示す図1においても例示したように基板40の上方、又はアクチュエータ30の上方に位置していてもよい。
【0064】
筐体10の内壁であって、孔12hを覆う領域に、第2フィルタ52が設けられる。第2フィルタ52の上面(ベース11を向く面を下面とする)が筐体10の内壁に接している。第2フィルタ52には、第1多孔質体を含む多孔質体PMが設けられる。なお、多孔質体PMは、活性炭、シリカゲル、又は第2多孔質体のうち少なくともいずれか1種類をさらに含んでいてもよい。
【0065】
続いて、図8は、第2フィルタ52の構造の一例を表した模式図である。第2フィルタ52は、空洞部70vを有する枠体70と、枠体70の空洞部70vに設けられた多孔質体PMと、枠体70の下面であって空洞部70vの開口に設けられた通気膜80と、を有する。
【0066】
枠体70は、上面に孔70hを有する。孔70hは、図7に示した孔12hと対応する位置に設けられる。孔70hは、孔12hと相似の形状であってもよい。また、孔70hは、孔12hと同一の形状であってもよい。
【0067】
第1多孔質体を含む多孔質体PMは、上方及び側方は枠体70に覆われ、下方の少なくとも一部において、通気膜80に覆われる。
【0068】
第2フィルタ52は、孔70hと多孔質体PMとの間を流れる気流を制御する機構をさらに備えていてもよい。
【0069】
枠体70は、例えばプラスチック樹脂を含む。通気膜80は通気性の膜であり、例えば不織布を含む。また、第2フィルタ52に設けられる多孔質体PMは、第1多孔質体に加えて、活性炭、シリカゲル、第2多孔質体のいずれか少なくとも1種類を含んでいてもよい。
【0070】
本実施形態に係る磁気ディスク装置200によれば、筐体10の内部に所定の気体を封入するとともに、有効直径1.0nm以下のガス分子を効率的に除去することができる。例えば、筐体10の内部にHeを封入する場合には、Heは、第1多孔質体の孔の平均直径より十分小さいため、吸着されずに通過することができるため筐体10の内部は主にHeにより満たされる。一方、第1多孔質体はHeよりも有効直径の大きなガス分子、例えばグリコールエーテルやグリコールエステル等を除去することができる。したがって、筐体10の内部で粘度及び沸点の高いガス分子の濃度を低減してHDDの寿命を伸長することができる。
【0071】
まず、第2フィルタ52と孔12hについて説明する。まずは例として、筐体内部にHeが封入される場合について述べる。一般的に、Heを封入することで、筐体内部のガス分子による空気抵抗を低減し、ヘッドの上下動を抑えることができる。
【0072】
孔12hを介して筐体10外部から筐体10内部へとHeを注入する際に、同時に異種のガス分子が紛れ込む恐れがある。筐体10外部から筐体10内部へと封入されるガス分子の流路に、第1多孔質体を含む多孔質体PMを有する第2フィルタ52を設けることで、He封入時の異種のガス分子の混入を抑制することができる。
【0073】
なお、第1多孔質体は、第1実施形態に係る場合と同様に、例えば平均直径が0.4nm以上1.0nm以下の孔を有している。したがって、有効直径1.0nm以下のガス分子を吸着する性能に優れている。さらに、孔の平均直径が0.7nm以上1.0nm以下である場合には、有効直径が0.4nm―0.7nm程度のガス分子の混入をより抑制することができる。例えばグリコールエーテルやグリコールエステル等の混入を抑制することができる。
【0074】
なお、筐体10の内部に空気が存在する場合についても、第2フィルタ52の多孔質体PMに吸着されたガス分子が、孔70hを介して、孔12hから筐体10外部へと排出され、第2フィルタ52がさらに汚染物質を吸着することが可能になる。
【0075】
以上、トップカバー12に接するように第2フィルタ52が設けられる例について説明した。第2フィルタ52が設けられる位置についてはトップカバー12に接する位置に限定されず、筐体10の内壁に接する位置で種々の配置をとることが可能である。ただし、筐体10の内壁に接する面とは反対側の面に空洞部70vの開口及び通気膜80が設けられる。
【0076】
当然ながら、第1実施形態において説明した第1フィルタ51と、本実施形態において説明した第2フィルタ52の両者を有する磁気ディスク装置であってもよい。第1フィルタ51と第2フィルタ52の両者を有することで、さらに所定のガス分子を除去する性能を向上することができる。
【0077】
以上説明した第1から第2のうちの少なくとも一つの実施形態の半導体装置によれば、第1多孔質体を含む多孔質体PMを有する第1フィルタ51又は第2フィルタ52を含むフィルタ構造を有することで、有効直径が1.0nm以下であり、粘度及び沸点が高い分子、例えばグリコールエーテルやグリコールエステル等の除去の性能に優れた磁気ディスク装置を提供することができる。磁気ディスク装置の寿命を伸長することができる。
【0078】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明した。しかし、実施形態はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、実施形態の特徴を備えている限り、実施形態の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、直径などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0079】
また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて複合させることができ、これらを組み合わせたものも実施形態の特徴を含む限り実施形態の範囲に包含される。その他、実施形態の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても実施形態の範囲に属するものと了解される。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
100、200・・・磁気ディスク装置
10・・・筐体
11・・・ベース
11c1・・・第1角部
11c2・・・第2角部
12・・・トップカバー
12h・・・孔
13・・・ねじ
20・・・ディスク
21・・・スピンドルモータ
30・・・アクチュエータ
31・・・ヘッド
32・・・アーム
33・・・ボイスコイルモータ
40・・・基板
41・・・FPC基板
51・・・第1フィルタ
52・・・第2フィルタ
60・・・包囲体
60a・・・第1主面
60b・・・第2主面
62・・・気流制御部
62c・・・曲面
PM・・・多孔質体
70・・・枠体
70h・・・孔
80・・・通気膜
【要約】
【課題】所定の有効直径を有するガス分子を除去する性能に優れた磁気ディスク装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の磁気ディスク装置は、筐体と、前記筐体の内部に設けられた回転可能なディスクと、前記筐体の内部に設けられ、前記ディスクに情報を書き込み、読み出すことのできるヘッドと、前記筐体の内部に設けられ、前記ヘッドを駆動するボイスコイルモータと、前記筐体の内部に設けられ、孔の平均直径が0.4nm以上、1.0nm以下である第1多孔質体を含む多孔質体を有するフィルタ構造と、を有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8