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特許7732128レーザ照射装置、レーザ加工装置、レーザ加工方法、マスクの設置方法、レーザ加工装置の設置方法及びマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-22
(45)【発行日】2025-09-01
(54)【発明の名称】レーザ照射装置、レーザ加工装置、レーザ加工方法、マスクの設置方法、レーザ加工装置の設置方法及びマスク
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/066 20140101AFI20250825BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20250825BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250825BHJP
【FI】
B23K26/066
B23K26/36
G03F7/20 505
G03F7/20 521
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2025505524
(86)(22)【出願日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2024015412
(87)【国際公開番号】W WO2024219462
(87)【国際公開日】2024-10-24
【審査請求日】2025-01-29
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/015669
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190105
【氏名又は名称】信越エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】大谷 義和
(72)【発明者】
【氏名】山岡 裕
(72)【発明者】
【氏名】倉田 昌実
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 健人
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/002555(WO,A1)
【文献】特開2007-122027(JP,A)
【文献】特開平09-152567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0303454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/066
B23K 26/36
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置であって、
前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射装置。
【請求項2】
前記マスクは、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものである請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記第二光学機能部を通過したレーザビームは、進行方向を変えることなく前記被照射体に照射される請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記第二光学機能部を通過したレーザビームは、折り返しミラーを設けないことにより、進行方向を変えることなく前記被照射体に照射される請求項3に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
前記被照射体の表面にレーザビームの照射エネルギーによるアブレーション加工を行うレーザ加工装置であって、
前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部と、請求項1に記載のレーザ照射装置を備えるレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部は互いに分離可能なものである請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記第二光学機能部に対して前記マスクの設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャーをさらに備える請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記被照射体が表面にレジスト膜を有する基板であり、レーザビームの照射エネルギーにより前記レジストに露光処理を行う露光装置であって、
前記被照射体を保持するステージを備えた露光処理部と、請求項1に記載のレーザ照射装置を備える露光装置。
【請求項9】
請求項からのいずれか一項に記載のレーザ加工装置を用いて前記被照射体の表面のアブレーション加工を行う被照射体のレーザ加工方法。
【請求項10】
レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置に前記マスクを設置するマスクの設置方法であって、
前記マスクとして、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものを用い、前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように前記マスクを前記第二光学機能部に設置するマスクの設置方法。
【請求項11】
前記マスクとして、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものを用いる請求項10に記載のマスクの設置方法。
【請求項12】
前記マスクの設置を、マスクチェンジャーを用いて行う請求項10に記載のマスクの設置方法。
【請求項13】
前記レーザ照射装置と前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部とを有するレーザ加工装置の設置方法であって、
前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部を互いに分離可能なものとし、前記レーザ加工装置の設置個所まで前記第一光学機能部、前記第二光学機能部及び前記照射加工部をそれぞれ分離して搬送した後、前記レーザ加工装置の設置個所において一体の前記レーザ加工装置とし、
請求項10から12のいずれか一項に記載のマスクの設置方法により前記搬送する前又は前記搬送した後に前記第二光学機能部にマスクを設置するレーザ加工装置の設置方法。
【請求項14】
レーザ照射装置に縦置きに設置される四角形状のマスクであって、
被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、
前記四角形の4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上であるマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射装置、レーザ加工装置、レーザ加工方法、マスクの設置方法、レーザ加工装置の設置方法及びマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ基板は、“More Than Moore”の流れから、システムをワンチップ化したSoC(System on a Chip)へと流れが移り、この流れに沿って盛んに開発されている。
【0003】
また、半導体パッケージ基板の構成は複雑化・高密度化しており、そのベース基板製造にエキシマレーザを用いた装置が適用されてきている。
【0004】
半導体パッケージ基板の高密度化に伴い、半導体パッケージ基板の配線も高精細であることが求められ、配線も多層化している。このような配線の細線化及び多層化により、ラインアンドスペース(L&S)が狭く、複雑になってきている。配線幅が狭くなると、配線抵抗が大きくなる傾向がある。
【0005】
多層の配線間の接続を行う為に貫通穴(VIA)を設けたり、配線抵抗増大の問題を解決するために、半導体パッケージ基板の作製において、トレンチ(溝)を基板に設け、これらに沿って配線を形成することが行なわれている。このような配線を形成することにより、配線の断面積を増やすことができるので、配線抵抗の増大を抑えることができる。
【0006】
このような半導体パッケージ基板の工法の例を、以下に説明する。
まず、ガラスエポキシ樹脂材料を使用した内層基板(コア層)の両面に、専用真空ラミネータを使用してビルドアップフィルムを積層する。このようにして得られたビルドアップフィルム表面に上記貫通穴やトレンチを設ける加工をし、それにメッキで金属層を形成して、電極を形成する。
【0007】
さて、更なる高密度化の要求に応えるべく、必要とされる貫通穴の穴径そのものが小さくなってきている。また、Top径とBottom径との差が少ない寸胴形状の貫通穴(寸胴形状VIA)を形成することも求められている。トレンチも、寸胴形状トレンチとすることが求められている。
【0008】
基板に対してできるだけ真っ直ぐに加工を行って寸胴形状穴や寸胴形状トレンチを高精細に形成するには、高解像度且つ高エネルギー密度のレーザビームを用いることが有効である。このような加工には、固体レーザ装置よりも、エキシマレーザを用いることが好ましい。エキシマレーザは焦点深度が浅いものの、このレーザを用いれば、高解像度且つ高エネルギー密度で加工することができ、ぼやけがなく正確な位置で、寸胴形状VIAや寸胴形状トレンチを形成できる。
【0009】
特許文献1には、レーザ穴あけ加工方法及び装置に関する発明が記載されている。例えば、特許文献1の請求項1には、線状あるいは矩形状ビームをコンタクトマスクを通してコンタクトマスク法により被加工基板の加工領域に照射し、線状あるいは矩形状ビームをコンタクトマスクに対してスキャンすることが記載されている。
【0010】
特許文献2には、アブレーション加工用の加工装置および加工方法に関する発明が記載されている。特許文献2の請求項1のアブレーション加工用の加工装置は、ラインビーム形成光学系を内包するラインビーム形成部を装置本体に対して相対移動させ、ライン状の光を走査させる走査機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2001-79678号公報
【文献】特開2021-49560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年では加工装置や露光装置などに用いられるレーザ照射装置において、ますます大型のマスクが用いられるようになってきた。これらの従来技術において、マスクは、装置の設置面と同じ水平方向になるように横置きで配置されることが多い。そのため、マスクが大型化されるにつれ、マスクの自重によって大きく撓んでしまうという問題が発生する。そのため、露光では像性能が低下する恐れがあり、加工では加工精度が低下するという問題があった。特に、マスクのサイズが大きく、マスクの厚さが薄いほど、顕著な問題となる。この問題に対し、マスクの大型化にあわせ、マスクの厚みを厚くして、マスクの剛性を高めることで、横置き時の撓みをある程度抑制できる。しかしながら、マスクの厚みを厚くする方法では、マスク重量が著しく増加し、マスク設置等のハンドリング性の悪化が懸念される。
【0013】
また、材質や厚さなどの差によっては、マスクの撓みの程度にも差が生じる。そのため、異なるマスクを使用する場合には、光学系全体の複雑なアライメントを行わなければならず、調整に非常に手間がかかるという問題があった。
【0014】
特に、高NA(=高解像度)、高倍率露光において、レーザ加工で許容されるマスクの撓みの許容値が厳しい。
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、大型マスクを使用する場合であっても、マスクの自重による撓みなどの問題を抑制することが可能なレーザ照射装置及びそのようなレーザ照射装置とするためのマスクの設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置であって、
前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射装置を提供する。
【0017】
このようなレーザ照射装置によれば、マスクの自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低いものとすることができる。
【0018】
本発明は、マスクを縦置きにすることにより、マスクを大型化したとしてもマスク設置時の撓みを抑制することができる。より具体的には、上記目的を達成するためになされたものであり、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置であって、前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射装置を提供する。
【0019】
このようなレーザ照射装置によれば、マスクの自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低いものとすることができる。
【0020】
このとき、前記マスクは、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものであるレーザ照射装置とすることができる。
【0021】
マスクの厚さが薄いため、取り扱いが容易で低コストでありながら、安定してマスクの自重による撓みなどの問題が抑制されたレーザ照射装置となる。
【0022】
本発明は、前記被照射体の表面にレーザビームの照射エネルギーによるアブレーション加工を行うレーザ加工装置であって、前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部と、上記のレーザ照射装置を備えるレーザ加工装置とすることができる。
【0023】
これにより、マスクの自重によるマスクの撓みやマスクへのごみの付着などの問題が抑制されたレーザ加工装置となる。
【0024】
このとき、前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部は互いに分離可能なものであるレーザ加工装置とすることができる。
【0025】
これにより、分割輸送が容易であり、設置コストを削減できるものとなる。
【0026】
このとき、前記第二光学機能部に対して前記マスクの設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャーをさらに備えるレーザ加工装置とすることができる。
【0027】
これにより、様々なパターンを容易に加工できるものとなる。
【0028】
本発明は、上記のレーザ加工装置を用いて前記被照射体の表面のアブレーション加工を行う被照射体のレーザ加工方法を提供することができる。
【0029】
これにより、マスクの変形やマスクへのごみの付着を防止しつつ、高精度の加工処理を行うことができる。
【0030】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置に前記マスクを設置するマスクの設置方法であって、
前記マスクとして、外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものを用い、前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように前記マスクを前記第二光学機能部に設置するマスクの設置方法を提供する。
【0031】
このようなマスクの設置方法によれば、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であり、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能なレーザ照射装置とすることができる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることができる。
【0032】
このとき、前記マスクとして、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものを用いるマスクの設置方法とすることができる。
【0033】
本発明に係るマスクの設置方法であれば、マスクが薄いため取り扱いが容易で低コストのものとしつつ、安定してマスクの自重による撓みなどの問題が抑制されたレーザ照射装置とすることができる。
【0034】
このとき、前記マスクの設置を、マスクチェンジャーを用いて行うマスクの設置方法とすることができる。
【0035】
これにより、様々なパターンを容易に形成できるレーザ照射装置とすることができる。
【0036】
本発明は、前記レーザ照射装置と前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部とを有するレーザ加工装置の設置方法であって、前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部を互いに分離可能なものとし、前記レーザ加工装置の設置個所まで前記第一光学機能部、前記第二光学機能部及び前記照射加工部をそれぞれ分離して搬送した後、前記レーザ加工装置の設置個所において一体の前記レーザ加工装置とし、上記のマスクの設置方法により前記搬送する前又は前記搬送した後に前記第二光学機能部にマスクを設置するレーザ加工装置の設置方法を提供することができる。
【0037】
これにより、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であり、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能であり、更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることを可能としつつ、レーザ加工装置の設置コストを削減することができる。
【0038】
本発明は、また、レーザ照射装置に縦置きに設置される四角形状のマスクであって、
被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、
前記四角形の4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上であるマスクを提供する。
【0039】
本発明に係るマスクによれば、自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低いものとすることができる。
【0040】
本発明は、マスクを縦置きにすることにより、マスクを大型化したとしてもマスク設置時の撓みを抑制することができる。より具体的には、上記目的を達成するためになされたものであり、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置であって、前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射装置を提供する。
【0041】
このようなレーザ照射装置によれば、マスクの自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低いものとすることができる。
【0042】
このとき、前記マスクは、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものであるレーザ照射装置とすることができる。
【0043】
マスクの厚さが薄いため、取り扱いが容易で低コストでありながら、安定してマスクの自重による撓みなどの問題が抑制されたレーザ照射装置となる。
【0044】
本発明は、前記被照射体の表面にレーザビームの照射エネルギーによるアブレーション加工を行うレーザ加工装置であって、前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部と、上記のレーザ照射装置を備えるレーザ加工装置とすることができる。
【0045】
これにより、マスクの自重によるマスクの撓みやマスクへのごみの付着などの問題が抑制されたレーザ加工装置となる。
【0046】
このとき、前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部は互いに分離可能なものであるレーザ加工装置とすることができる。
【0047】
これにより、分割輸送が容易であり、設置コストを削減できるものとなる。
【0048】
このとき、前記第二光学機能部に対して前記マスクの設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャーをさらに備えるレーザ加工装置とすることができる。
【0049】
これにより、様々なパターンを容易に加工できるものとなる。
【0050】
本発明は、上記のレーザ加工装置を用いて前記被照射体の表面のアブレーション加工を行う被照射体のレーザ加工方法を提供することができる。
【0051】
これにより、マスクの変形やマスクへのごみの付着を防止しつつ、高精度の加工処理を行うことができる。
【0052】
本発明は、前記被照射体の表面にレーザビームの照射エネルギーによる露光処理を行うレーザ露光装置であって、前記被照射体を保持するステージを備えた露光部と、上記のレーザ照射装置を備えるレーザ露光装置を提供することができる。
【0053】
これにより、マスクの自重によるマスクの撓みやマスクへのごみの付着などの問題が抑制された露光装置となる。
【0054】
このとき、前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記露光部は互いに分離可能なものであるレーザ露光装置とすることができる。
【0055】
これにより、分割輸送が容易であり、設置コストを削減できるものとなる。
【0056】
このとき、前記第二光学機能部に対して前記マスクの設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャーをさらに備えるレーザ露光装置とすることができる。
【0057】
これにより、様々な露光パターンを容易に形成できるものとなる。
【0058】
本発明は、上記のレーザ露光装置を用いて前記被照射体の表面の露光処理を行う被照射体のレーザ露光方法を提供することができる。
【0059】
これにより、マスクの変形やマスクへのごみの付着を防止しつつ、高精度の露光処理を行うことができる。
【0060】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置に前記マスクを設置するマスクの設置方法であって、前記マスクとして、外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものを用い、前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように前記マスクを前記第二光学機能部に設置するマスクの設置方法を提供する。
【0061】
このようなマスクの設置方法によれば、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であり、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能なレーザ照射装置とすることができる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることができる。
【0062】
このとき、前記マスクとして、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものを用いるマスクの設置方法とすることができる。
【0063】
本発明に係るマスクの設置方法であれば、マスクが薄いため取り扱いが容易で低コストのものとしつつ、安定してマスクの自重による撓みなどの問題が抑制されたレーザ照射装置とすることができる。
【0064】
このとき、前記マスクの設置を、マスクチェンジャーを用いて行うマスクの設置方法とすることができる。
【0065】
これにより、様々なパターンを容易に形成できるレーザ照射装置とすることができる。
【0066】
本発明は、前記レーザ照射装置と前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部とを有するレーザ加工装置の設置方法であって、前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部を互いに分離可能なものとし、前記レーザ加工装置の設置個所まで前記第一光学機能部、前記第二光学機能部及び前記照射加工部をそれぞれ分離して搬送した後、前記レーザ加工装置の設置個所において一体の前記レーザ加工装置とし、上記のマスクの設置方法により前記搬送する前又は前記搬送した後に前記第二光学機能部にマスクを設置するレーザ加工装置の設置方法を提供することができる。
【0067】
また、前記レーザ照射装置と前記被照射体を保持するステージを備えた露光部とを有するレーザ露光装置の設置方法であって、前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記露光部を互いに分離可能なものとし、前記レーザ露光装置の設置個所まで前記第一光学機能部、前記第二光学機能部及び前記露光部をそれぞれ分離して搬送した後、前記レーザ露光装置の設置個所において一体の前記レーザ露光装置とし、上記のマスクの設置方法により前記搬送する前又は前記搬送した後に前記第二光学機能部にマスクを設置するレーザ露光装置の設置方法を提供することができる。
【0068】
これにより、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であり、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能であり、更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることを可能としつつ、レーザ加工装置/露光装置の設置コストを削減することができる。
【0069】
本発明は、また、レーザ照射装置に縦置きに設置される四角形状のマスクであって、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記四角形の4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上であるマスクを提供する。
【0070】
本発明に係るマスクによれば、自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低いものとすることができる。
【0071】
本発明は、また、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射システムであって、前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射システムを提供する。
【0072】
本発明に係るレーザ照射システムによれば、マスクの自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、レーザ照射システムの高さを低くすることができる。
【発明の効果】
【0073】
以上のように、本発明のレーザ照射装置、レーザ照射システムであれば、マスクの自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低いものとすることができる。
【0074】
また、本発明のレーザ加工装置/露光装置であれば、マスクの自重によるマスクの撓みやマスクへのごみの付着などの問題が抑制されたものとなる。本発明のレーザ加工方法/露光処理方法であれば、マスクの変形やマスクへのごみの付着を防止しつつ、高精度の加工処理/露光処理を行うことができる。
【0075】
また、本発明のマスクの設置方法であれば、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であり、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能なレーザ照射装置とすることができる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることができる。本発明のレーザ加工装置/露光装置の設置方法であれば、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であり、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能であり、更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることを可能としつつ、装置の設置コストを削減することができる。
【0076】
また、本発明のマスクによれば、自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】本発明に係るレーザ照射装置を含むレーザ照射処理装置(レーザ加工装置、露光装置)の一例を示す図である。
図2】本発明に係るマスクの配置を示す概念図である。
図3】マスクの一例を示す概略図である。
図4】被照射体の被加工領域と照射エリアとの関係の一例を示す図である。
図5】一軸方向における重畳照射の一例を説明する図である。
図6】一列目から三列目までの重畳照射の一例を説明する図である。
図7】成形光学系の一例におけるレーザビームの照射形状の成形の概念図である。
図8】本発明に係るレーザ照射装置を含むレーザ照射処理装置(レーザ加工装置、露光装置)の構成例を示す概略図である。
図9】縦型マスクチェンジャーの一例を説明するための概略図である。
図10】縦型マスクチェンジャーの一例が具備できるカセット収納装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
上述のように、大型マスクを使用する場合であっても、マスクの自重による撓みなどの問題を抑制することが可能なレーザ照射装置及びそのようなレーザ照射装置とするためのマスクの設置方法が求められていた。
【0079】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置であって、
前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射装置により、マスクの自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射できること、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくくなること、更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0080】
本発明者らは、また、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置に前記マスクを設置するマスクの設置方法であって、
前記マスクとして、外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものを用い、前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように前記マスクを前記第二光学機能部に設置するマスクの設置方法により、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であること、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能なレーザ照射装置とすることができ、更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0081】
本発明者らは、また、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置であって、前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射装置により、マスクの自重による撓みの影響を抑え、高い精度でレーザ照射でき、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良が発生しにくいものとなること、更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低いものとすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0082】
本発明者らは、また、レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置に前記マスクを設置するマスクの設置方法であって、前記マスクとして、外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものを用い、前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように前記マスクを前記第二光学機能部に設置するマスクの設置方法により、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であり、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能なレーザ照射装置とすることができ、更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0083】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
[レーザ照射装置]
図1は、本発明に係るレーザ照射装置を含むレーザ処理装置の一例を示す概略図である。図1に示すレーザ照射装置100は、レーザ光源(レーザ発振器)11を備える第一光学機能部10と、被照射体80のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部20とを備えている。そして、レーザ光源11からのレーザ1を第二光学機能部20に設置されたマスク21を介して被照射体80に照射するためのレーザ照射装置である。
【0085】
マスク21は、被照射体80のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリア22を含んでいる。本発明に係るマスクの一実施形態は、被照射体80のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリア22を含み、マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺(図3のL1及びL2のうちの長い方)の長さが800mm以上の四角形のものである。本発明に係るマスクは、四角形のマスク21の外縁である4辺のうちの最長の辺の長さと有効エリアのレーザ透過方向の厚さとの比(長さ/厚さ)が100以上のものであってもよい。この比は、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましい。上限は、特に制限はないが、取扱容易性の観点から250程度である。なお、マスクが正方形の場合には、4辺のうちの最長の辺の長さとは正方形の1辺の長さを意味する。
【0086】
また、本発明に係るマスクの他の実施形態では、被照射体80のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリア22を含み、マスクの外縁である4辺のうちの最短の辺(図3のL1及びL2のうちの短い方)の長さが1000mm以上の四角形のものである。本発明に係るマスクは、四角形のマスク21の外縁である4辺のうちの最短の辺の長さと有効エリアのレーザ透過方向の厚さとの比(長さ/厚さ)が100以上のものであってもよい。この比は、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましい。上限は、特に制限はないが、取扱容易性の観点から250程度である。なお、マスクが正方形の場合には、4辺のうちの最短の辺の長さとは正方形の1辺の長さを意味する。
本発明において、四角形とは厳密な四角形を意味するものではなく、4つの角部が直線や曲線によって面取りされていてもよいし、固定冶具やハンドリング冶具の受け部分となる切り欠き部分や突起部分を辺の途中などに有してもよい。
【0087】
そして、図2のマスクの配置を示す概念図に示すように、本発明に係るマスクは、第二光学機能部20において、パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものである。なお、図2中のθは鉛直方向と水平方向の角度を示している(θ=90°)。言い換えると、マスク21の外縁である4辺のうちの向かい合う2辺21A、21Bが、レーザ照射装置100が設置される面100Aに対して略垂直方向となるようにマスク21が配置されたものということができる。あるいは、第二光学機能部20において、マスク21は、第二光学機能部においてパターンが形成された面の法線が面100Aの面内方向を向くように配置されたものということもできる。本明細書中では、上記のように配置することを、単に「縦」に配置するということもある。
【0088】
前述の通り、被照射体の照射サイズは大型のものが要求されており、それに伴いマスクが大型になってきている。更に、縮小投影光学系を行う場合にはマスクサイズは更に大型になる。一方で、基板などの被照射体に対する照射処理の精細度は上がっており、マスクの像に歪みがあると照射処理の精度に影響が出る。
【0089】
特許文献2のように、マスクを装置が設置される面と同じ水平方向に設置する場合、マスクを単独で設置すると、その重力で歪みが発生し照射処理の精度が悪化する。
【0090】
マスクの下部にサポートを入れて撓みの発生を抑える場合、サポートは光学的に透過するものである必要があるが、マスクが大型になるとサポート材の厚さを厚くする必要があり、コスト的に問題になるばかりでなく、レーザエネルギーの吸収がこのサポート材の中で大きくなり、レーザ照射のエネルギー効率が悪くなる。
【0091】
また、マスクを装置が設置される面に平行に設置した場合にはマスクにゴミが載るリスクが大きくなり、ゴミが載ったまま生産を行った場合には大量の製品に対しての品質不良を引き起こす。
【0092】
更に、マスクの下部のサポート材とマスクとの間にゴミが入った場合には、ゴミの影響による製品不良やマスクが傷つくばかりでなく、サポート材とマスクの間に部分的に発生する僅かな隙間では屈折率が異なることから光学的な不均一が発生する。その為、不均一なレーザビームが照射されることになる。
【0093】
更に、レーザ光源から基板に至るまでの光路長が長いため、マスクを水平にすると装置の高さが高くなる。マスクを立てることにより、装置高さを低くすることが可能になる。
【0094】
本発明に係るレーザ照射処理装置のように、マスク21のパターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置すれば、マスク21が撓むことが抑制される。そして、光学的透明材によるたわみ防止のサポートが不要であることから、レーザエネルギーの使用効率が高く、高精度で非常に均一性の高い照射処理を行うことが出来る。また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能なレーザ照射装置とすることができる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることができる。これにより、ペリクルレスを実現することも可能となる。
【0095】
なお、レーザ照射装置100が設置される面100Aは水平面とすることができる。また、マスク21のパターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置するとは、設計上水平方向を向くように配置されることを意味しており、製造上、設置上の誤差の範囲で水平方向からのずれの範囲を含む。もちろん、マスクは、パターンが形成された面の法線が水平方向を向くように配置されること、言い換えると、レーザ照射装置100が設置される水平面に対し垂直(図2中でθ=90°)に配置されることが最も好ましい。
【0096】
また、上記のようなレーザ照射システムを提供することができる。
【0097】
以下、さらに詳しく説明する。
【0098】
(第一光学機能部)
第一光学機能部10はレーザ光源11を備える。レーザ光源11は、例えばパルス状にレーザビーム1を照射(出射)するレーザ光源(レーザ発振器)であってもよい。
【0099】
レーザ光源11から照射されるレーザビーム1はエキシマレーザであることが好ましい。エキシマレーザは、従来の固体レーザ、例えばLD励起固体(DPSS)レーザに対して波長が短いことから、その分解能が高い。そのため、レーザ照射処理装置200においてはエキシマレーザを用いることにより、より高精細なレーザ照射処理加工が可能である。また、例えば、エポキシ系の基板材料に対して、エキシマレーザは非常に大きな吸収性があり、レーザ照射処理能力が高い。
【0100】
さらに、レーザ光源11からレーザビーム1を照射される成形光学系12とを備えていてもよい。成形光学系12は、レーザビーム1の例えば図1(a)に示す照射形状を、例えば図1(b)に示す矩形状の照射形状に成形するものであってもよい。例えば、成形光学系12は、複数のシリンドリカルレンズを備え、レーザ光源11からのレーザビーム1を、照射形状が矩形形状であり且つ照射エネルギー密度が均一であるレーザビーム、特にはトップハット型のレーザビームに成形する光学システムであることが好ましい。
【0101】
図7に、複数のシリンドリカルレンズを備えた成形光学系におけるレーザビームの照射形状の成形の概念図を示す。図7に示す成形光学系12は、X1シリンドリカルレンズ13、Y1シリンドリカルレンズ14、X2シリンドリカルレンズ15及びY2シリンドリカルレンズ16からなる複数のシリンドリカルレンズと、集光レンズ17とを具備する。X1シリンドリカルレンズ13及びX2シリンドリカルレンズ15は、図7の下段に示すように、これらの焦点距離f1の2倍の間隔で配置されている。Y1シリンドリカルレンズ14及びY2シリンドリカルレンズ16も、これらの焦点距離の2倍の間隔で配置されている。
【0102】
図1に示すレーザ光源11により発振したレーザビーム1は、図7に示すように、不均一な照射形状(ビームプロファイル)を有する。このような照射形状を有するレーザビーム1が成形光学系12に入射すると、レーザビーム1の各成分が、それらのX方向及びY方向の位置に応じて成形される。図7の下段では、例えば、「2」で示した成分が、シリンドリカルレンズ14及び16を通って成形される様子を概略的に示している。レーザビーム1の各成分は、シリンドリカルレンズ13~16によって成形され、集光レンズ17から焦点距離f2だけ離れた位置に集光される。各成分が集光されることにより、図7に示すように、トップハットビーム形状を有するレーザビーム2となり、出射光として成形光学系12から出射される。
【0103】
X方向及びY方向のシリンドリカルレンズの構成を組み替えることにより、正方形、長方形などのビーム形状に成形が可能となる。
【0104】
このような複数のシリンドリカルレンズ13~16を用いてレーザビーム1の照射形状を成形することにより、エネルギー密度が極めて均一な矩形形状、特にはトップハット型のビームプロファイルを持った高品質なレーザビーム2を成形することが可能となる。
【0105】
また、このような矩形形状のビームプロファイルを用いて重畳照射を行うことにより、照射されない領域である死点が無く、目的のレーザ照射処理の許容範囲内で平均化されたレーザ照射処理ができ、極めて高精度かつ効率の良い被照射体80のレーザ照射処理が可能である。
【0106】
(第二光学機能部)
上述のように、第二光学機能部20にはマスクが設置される。本発明は、マスクの厚さが薄い場合に効果的である。そのため、マスク21は、有効エリア22のレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものであることが好ましい。最長の辺の長さが800mm以上である一実施形態では、この厚さは、8mm以下がより好ましい。下限は、特に制限はないが、例えば2mmとすることができる。通常使用されるものの厚さは、取扱容易性の観点から5mm程度である。また、最短の辺の長さが1000mm以上である他の実施形態では、この厚さは、8mm以下がより好ましく、6mm以下がさらに好ましい。下限は、特に制限はないが、取扱容易性の観点から5mm程度である。なお、マスクの大きさによっては、厚さの上限が20mmや15mm程度と厚くなる場合もある。このようにマスクの厚さが薄いと、取り扱いが容易で低コストとなる。本発明に係るレーザ照射装置では、このような薄いマスクの場合であっても、安定してマスクの自重による撓みなどの問題が抑制されたものとできる。
【0107】
なお、本発明の一実施形態では、マスク21の大きさは、マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものであれば特に限定されない。本発明では、例えば、厚さ方向に垂直な横及び縦方向のうちの長い方の寸法(それぞれ図3の寸法L1及びL2)が800mm以上、より好ましくは1000mm以上であり、有効エリア22の厚さ方向に垂直な横及び縦方向の寸法(それぞれ図3の寸法L3及びL4)が500mm以上、より好ましくは700mm以上であるマスク21を用いることができる。寸法L1及びL2の上限は、特に限定されないが、例えば2500mmとすることができ、2000mmであってもよい。また、寸法L3及びL4の上限は、特に限定されないが、例えば2350mmとすることができ、1850mmであってもよい。なお、本発明は、マスクの大きさが大きい場合により効果的であり、そのような寸法L1及びL2は1500mm以上であり、1700mm以上であると更に効果的である。これらの寸法の条件はL1及びL2の双方が満たしてもよいし、いずれか一方のみが満たしてもよい。
【0108】
また、本発明の他の実施形態では、マスク21の大きさは、マスクの外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものであれば特に限定されない。本発明では、例えば、厚さ方向に垂直な横及び縦方向のうちの短い方の寸法(それぞれ図3の寸法L1及びL2)が1000mm以上、より好ましくは1100mm以上であり、有効エリア22の厚さ方向に垂直な横及び縦方向の寸法(それぞれ図3の寸法L3及びL4)が700mm以上、より好ましくは900mm以上であるマスク21を用いることができる。寸法L1及びL2の上限は、特に限定されないが、例えば2500mmとすることができ、2000mmであってもよい。また、寸法L3及びL4の上限は、特に限定されないが、例えば2350mmとすることができ、1850mmであってもよい。なお、本発明は、マスクの大きさが大きい場合により効果的であり、そのような寸法L1及びL2は1500mm以上であり、1700mm以上であると更に効果的である。これらの寸法の条件はL1及びL2の双方が満たしてもよいし、いずれか一方のみが満たしてもよい。
【0109】
また、マスクの厚さ方向に垂直な縦及び横方向の寸法の比(L1/L2、L3/L4)は、1/2以上、2/1以下、より好ましくは4/5以上、5/4以下のものとすることができる。
【0110】
マスクの重量は特に限定されないが、例えば5kg以上、70kg以下、より好ましくは5kg以上、20kg以下、さらに好ましくは5kg以上、15kg以下のものとすることができる。
これらマスクは、例えば、レーザ光を透過させる透明基板に、クロムなどの遮光薄膜が形成され、この遮光薄膜にパターンが形成されることにより開口が形成されている。前記透明基板は、ガラス材料で形成されることが好ましく、例えば、合成石英ガラス基板、石英ガラス基板、アルミノシリケートガラス基板、ソーダライムガラス基板、低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)基板等が挙げられる。これらの中でも、合成石英ガラスは、透過率、剛性、入手容易性の観点から好適である。
【0111】
本発明では、このような大型のマスク21を用いることができる。そして、大型のマスク21と縮小投影光学系31とを併用することにより、基板に照射するレーザビームのエネルギー密度を高めることができる。より具体的な例としては、一実施形態の例として外形が800mm×920mmであり、有効エリア22の大きさが500mm×500mmのマスクが挙げられる。また、他の実施形態の例として外形が1000mm×1150mmであり、有効エリア22の大きさが700mm×700mmのマスクが挙げられる。
【0112】
マスク21は、第一光学機能部10を通ったレーザビーム2が照射されるマスク照射エリアを含んでもよい。この場合、マスク照射エリアはマスク21の有効エリア22の一部分である。
【0113】
第二光学機能部20は、マスク21を保持し、且つマスク21を掃引するマスクステージを更に含むことが好ましい。マスク21が保持されるマスクステージに掃引軸を取り付けることによって、効率よくマスクの掃引動作が可能となる。
【0114】
また、マスクステージに補正機能(チルト軸、θ軸)を取り付けることによって、マスクの設置角度(垂直)の調整が容易になり、また、照射する被照射体80の表面形状に対して容易に補正ができるため正確な照射を行うことが可能となる。
【0115】
第二光学機能部20は、第一光学機能部10を通ったレーザビーム2の照射形状をマスク21を通して更に成形するものとすることができる。第二光学機能部20は、矩形状に成形されたレーザビーム2の照射形状を、例えば、被照射体80の照射領域81に対応するパターンに応じて、更に成形することができる。
【0116】
本発明に係るレーザ照射装置100において、第二光学機能部20を通り、例えば図1(c)に示す照射形状を有するレーザビーム3は、任意の折り返しミラー50により図1(d)に示すように進行方向が変えられ、任意の第三光学機能部30(後で説明する)に入射するように構成されてもよい。図1に示すレーザ照射装置100の例では、第三光学機能部30から出たレーザビーム3が、ステージ40に保持された被照射体80の一部分に照射されるように構成されている。
【0117】
(第三光学機能部)
本発明に係るレーザ照射装置100では、図1に示すように、第二光学機能部20と被照射体を保持するステージ40との間に、縮小投影光学系31を備えた第三光学機能部30を更に含むことが好ましい。マスク21を通ったレーザビーム3の照射面積を以下で説明する任意の縮小光学系31を通して縮小し、基板に照射するレーザビーム4のエネルギー密度を高めることができる。そのため、大面積のマスク21を大きくしても、それに合わせた縮小光学系31を併用することで、目的の微細な照射処理を実施することができる。
【0118】
近年では基板の加工や露光などのレーザ照射処理の微細化が進んでおり、そのレーザ照射最小幅として数μmが要求されてきている。これは微細なゴミに対しても影響してしまい、特にマスク部分に付着した微細ゴミは、大量の不良を引き起こす。そのため、マスク21を実際の照射サイズよりも拡大しておき、マスク21を通ったレーザビーム3をその後段の縮小投影光学系31で縮小投影露光することで、微細ゴミに対しての影響を最小化できる。これにより、ペリクルレスもさらに容易に実現できる。
【0119】
また、マスク21を実際のレーザ照射パターンよりも拡大化しておくことで、マスク21に当たるレーザビーム2のエネルギーをレーザ照射処理エネルギーよりも小さくすることが出来る。縮小投影光学系31の縮小倍率をNとすると、被照射体80の面のレーザ照射エネルギーに比べてマスク面に当たるレーザビームのエネルギーは1/(N)となる。これにより、レーザビーム2のエネルギーによる熱ドリフトを抑えることが出来るため、マスク21の熱膨張を抑制でき、長時間のレーザ照射動作後でも高精度のレーザ照射処理を行うことが可能となる。
【0120】
更に、レーザビームの熱による光学部材(例えば、成形光学系12及びマスク21)の劣化も抑えることが出来ることから、光学部材の寿命を長くすることが可能である。
【0121】
そして、先に説明した、レーザビームの照射位置を固定した状態での同期掃引照射を行うように構成されたレーザ照射装置100では、レーザビームの照射位置を動かす例えば特許文献2に記載の方法に比べて、非常に小さい口径の縮小投影レンズを使用することが出来る。その為、金額面で有利であることに加え、レンズの歪みが少ないことや、レンズによる収差が小さくできるため、レーザ照射精度を非常に高くすることが出来る。
【0122】
縮小投影光学系31は、1対の縮小投影レンズを備えることができる。縮小投影光学系31が無限遠光学系である場合、縮小投影光学系31による倍率は、例えば、縮小投影レンズの焦点距離の比と、縮小投影レンズ間の距離とによって調整することができる。なお、この縮小倍率Nは、例えば、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上とすることができる。上限は、特に制限はないが、マスクの耐レーザ性と必要な加工対象物の加工に必要なレーザエネルギー密度の観点から5程度である。
【0123】
縮小投影レンズは、高NA(開口数)のものであることが好ましい。高NAの縮小投影レンズを用いることにより、寸胴形状により近いVIAやトレンチを形成できる。
【0124】
縮小投影レンズのNAは、被照射体80のレーザ照射処理に必要なエネルギー密度に合わせて選択することが好ましい。縮小投影レンズのNAは、0.12以上であることが好ましい。
【0125】
第三光学機能部30は、縮小投影光学系31を冷却する冷却手段を更に備えるものであることが好ましい。冷却手段を備えることにより、更に縮小投影光学系30でのレーザビームエネルギーによる熱の影響を抑えることが出来る。縮小投影光学系30では、マスク21を通ったレーザビーム3が1/Nの縮小投影をされるため、対物先端のレンズ部分を通るレーザビームのエネルギーは、マスク21に照射されるレーザビームエネルギーに比べてN倍になり、この部分での熱影響が出やすい。そのため、この熱エネルギーを抑えるべく、縮小投影光学系30に冷却機能を付与することで、レーザビームのエネルギーによる熱ドリフトを抑えることが出来、長時間のレーザ照射動作後でも高精度のレーザ照射を行うことが可能となる。
【0126】
そして、先に説明した、レーザビームの照射位置を固定した状態での同期掃引照射を行うように構成されたレーザ照射装置100では、特許文献2の方法に比べて、非常に小さい口径の縮小投影レンズを使用することが出来る。縮小投影レンズの冷却手段は、レンズそのものに冷却手段を直接付与できるわけではなく、レンズを保持するジャケット部を冷却するため、レンズ口径が大きくなると、レンズの周囲部分では温度管理ができるものの、肝心な中央部分付近では冷却効果が行き渡りにくく、熱管理がしにくい。その為、長時間のレーザビーム照射によるレンズ内への僅かなエネルギー吸収でも、熱による歪みが発生しやすくなる。第三光学機能部30が冷却機能を有し、口径が小さいレンズを使用することで、このような不具合を抑えることが出来る。更に、縮小投影光学系31へのレーザビーム照射による不良を抑制し、寿命を延ばすことも可能となる。
【0127】
[レーザ照射処理装置]
図8に本発明に係るレーザ照射処理装置200の構成を示す。本発明に係るレーザ照射処理装置200は、上述のレーザ照射装置100と、基板などの被照射体を載置するステージ40を含むレーザ照射処理部110を備えたものである。
【0128】
[掃引機構]
レーザ照射処理装置200は、少なくとも1つの方向での掃引照射において、マスク21及び基板ステージ40にレーザビーム2及び4をそれぞれパルス照射しながら、マスク21及び基板ステージ40を非停止で掃引するように構成されたものであることも好ましい。
【0129】
非停止での掃引照射を行うことによって、走行と停止とを繰り返すステップ&リピート動作に比べて掃引の時間を大幅に減少することが可能となる。特に、走行状態から停止する際の位置決めを行わなくてよいことから、その加減速による位置精度の悪化を防止することができる。
【0130】
また、これらの動作は頻繁に起こるため、走行と停止を繰り返す場合、走行軸やモータに負荷が大きくなる。非停止での掃引照射動作を行うことで、軸にかかる負担を減らし、走行軸部分での発熱も抑制できるため、熱ドリフトによる位置精度の悪化を更に防止することが出来、非常に高精度なレーザ照射処理を行うことが可能となる。
【0131】
[撮像手段及びアライメント機構]
本発明のレーザ照射処理装置200は、被照射体80の特徴部分を読み取る撮像手段と、マスク21の特徴部分を読み取る撮像手段と、被照射体の特徴部分及びマスクの特徴部分の位置情報に基づいて、被照射体とマスクとの相対位置を合せるアライメント機構とを更に含むことが好ましい。
【0132】
図1に示すレーザ照射処理装置200は、マスク21の特徴部分を読み取る撮像手段としてのマスク用アライメントカメラ23と、被照射体80の特徴部分を読み取る撮像手段としての被照射体用アライメントカメラ60と、図示しないアライメント機構とを含んでいる。マスク用アライメントカメラ23は、アライメント機構にマスク21の特徴部分の位置情報を送るように構成されている。被照射体用アライメントカメラ60は、アライメント機構に被照射体80の特徴部分の位置情報を送るように構成されている。アライメント機構は、これら位置情報に基づいて、被照射体80とマスク21との相対位置を合わせるように構成されている。
【0133】
マスク21の位置と被照射体80の位置とを撮像手段によって合わせることで、被照射体80面の正確な位置にマスクパターンを投影したレーザ照射処理を行うことが可能である。
【0134】
特に、被照射体を加工する場合は複数層に亘ってレーザ照射することが多く、各層のレーザ照射処理位置が正確に目的の位置に合っていないと、各層の回路が繋がらなかったり、繋がったとしても導通抵抗が大きいなどの品質不良が発生する。これを抑えるために、レーザ照射処理位置の正確さが必要である。
【0135】
この場合、アライメント機構の情報に基づき、マスク21のパターンに対して被照射体80のレーザ照射形状を補正する手段を更に含むことが好ましい。
【0136】
被照射体80のレーザ照射形状に対して、マスク21のパターンの投影像の形状が正確に相似形状であるとは限らず、また、熱膨張などの影響により倍率も常に同一であるとは限らない。また、被照射体80の微小な歪みや変形などによっても、被照射体80へのレーザ照射形状をマスク21の投影像に対して変形させる必要が出てくる場合がある。
【0137】
そこで、上記の通りマスク21の位置と被照射体80の位置とを撮像手段(マスク用アライメントカメラ23及び被照射体用アライメントカメラ60)によって取得し、それらの情報に基づいてマスク21の投影像を被照射体のレーザ照射処理すべき形状に合わせることで、正確な被照射体へのレーザ照射処理が可能となる。
【0138】
具体的には、例えば、マスク21の投影像の投影位置を、ビーム像検出カメラ70によって取得し、この投影位置の情報に基づいて補正して、第三光学機能部30による投影倍率を最適化し、また、掃引照射時の掃引速度を前記情報に基づいて最適化する。これによって、マスク21の像に対する被照射体80の縦方向倍率、横方向倍率をある程度の範囲で任意に変更することが出来、最適なレーザ照射処理形状を適用することが出来る。
【0139】
被照射体80は、マスク21(及び任意の第三光学機能部30)を通ったレーザビーム2~4いずれかによりパターンが投影される照射エリアを含んでいてもよい。図4は、ステージ40上に被照射体80が載置された状態を示しており、被照射体80のレーザビーム3が照射される照射エリア90と、被照射体80の被照射領域81との関係の一例を示す。図4に示すように、照射エリア90は、被照射体80の被照射領域81よりも小さい。
【0140】
図4に示す照射エリア90は、パルス状のレーザビーム4の1ショットによる照射エリアである。また、照射エリア90は、マスク21を通ったレーザビームによりパターンが投影されるので、マスク21の有効エリア22の一部分であるマスク照射エリアに対応する。
【0141】
図1の例で示すように、マスク21は、図1に示す掃引軸21X及び21Yに沿ってスキャン(掃引)されるように構成されている。また、ステージ40は、図1に示す掃引軸80X及び80Yに沿ってスキャンされるように構成されている。
【0142】
そして、本発明のレーザ照射処理装置200は、レーザビーム2及び4によりマスク21とステージ40とを掃引照射し、被照射体80の被照射領域81のレーザ照射処理を行うように構成されている。
【0143】
[マスクチェンジャー]
本発明に係るレーザ照射処理装置200はマスクチェンジャーを備えることが好ましく、マスクの設置を、マスクチェンジャーを用いて行うことが好ましい。例えば、複数のマスクを交換するように構成された縦型マスクチェンジャーを更に備えることができる。このような縦型マスクチェンジャーを備えた加工装置であれば、様々なパターンを容易に形成できるレーザ照射処理装置とすることができる。
【0144】
図9に、縦型マスクチェンジャーの一例及びそれを用いたマスクの交換の例の概略図を示す。この例では、図9(A)に概略的に示すマスクホルダ25に設置するマスク21を設置及び交換する例を示している。また、この例では、縦型マスクチェンジャーの一部としてのマスクストッカー26を用いる。マスクストッカー26は、複数のマスクを格納するように構成されている。
【0145】
まず、図9(B)に示すように、マスクストッカー26から、マスククランプ27を用いて、マスク21を取り出す。マスククランプ27によるマスク21の把持(クランプ)の態様は、特に限定されない。マスクストッカー26及びマスククランプ27が、複数のマスク21を交換するように構成された縦型マスクチェンジャー28を構成する。
【0146】
図9(C)に示すように、マスク21は縦向きのままでマスクホルダ25に設置される。設置後、図9(D)に示すように、マスククランプ27による把持を開放する(アンクランプ)。
【0147】
交換の際には、図9(E)に示すようにマスクホルダ25に設置されたマスク21を、マスククランプ27で把持し、次いで、図9(F)に示すようにマスク21をマスクホルダ25から引き離す。引き離したマスク21は、図9(G)に示すように、マスクストッカー26内に仕舞う。次いで、次に使用したいマスク21を図9(B)に示したのと同様にしてマスクストッカー26から取り出し、先に説明した手順でマスク21をマスクホルダ25に設置する。これにより、複数のマスク21を、垂直配置を維持して、交換することが可能となる。このように、様々なパターンを容易に形成できるレーザ照射装置とすることができる。さらに、垂直配置を維持してマスク21を交換することにより、マスク21の交換中の、マスク21の有効エリア上への埃等の異物の堆積や、マスク21の撓み等を防ぐことができる。
【0148】
本発明に係るレーザ照射処理装置200は、図10に示すマスクキャビネット29を備えることもできる。マスクキャビネット29は、複数のマスクストッカー26を格納及び搬出するように構成されている。例えば、マスクキャビネット29は、開口部29Aを含み、マスクキャビネット29内で、マスク21を垂直配置に維持したまま、目的のマスク21を格納したマスクストッカー26を開口部29Aの位置に移動できるように構成されている。
【0149】
[マスクの設置方法]
次に、本発明に係るマスクの設置方法について説明する。本発明に係るマスクの設置方法は、レーザ光源11を備える第一光学機能部10と、被照射体80のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスク21を設置するための第二光学機能部20とを備え、被照射体80に対し第二光学機能部20に設置されたマスク21を介してレーザを照射するためのレーザ照射装置100にマスク21を設置するマスクの設置方法である。
【0150】
本発明に係るマスクの設置方法の一実施形態では、マスク21として、外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものを用い、パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くようにマスク21を第二光学機能部20に設置する。マスク21として、四角形の前記マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺の長さと有効エリア22のレーザ透過方向の厚さとの比(長さ/厚さ)が100以上のものを用いることも好ましい。
【0151】
本発明に係るマスクの設置方法の他の実施形態では、マスク21として、外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものを用い、パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くようにマスク21を第二光学機能部20に設置する。マスク21として、四角形の前記マスクの外縁である4辺のうちの最短の辺の長さと有効エリア22のレーザ透過方向の厚さとの比(長さ/厚さ)が100以上のものを用いることも好ましい。
【0152】
このようなマスクの設置方法によれば、マスクの自重による撓みの影響を抑えつつ高い精度でレーザ照射可能であり、また、マスク面へのゴミの付着も抑制できるためゴミによる不良を抑制可能なレーザ照射装置とすることができる。更に、長い光路の大部分を水平面に沿わせることができるため、装置の高さを低くすることができる。
【0153】
マスク21としては、上述のように有効エリア22のレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものを用いることができる。これにより、マスクが薄いため取り扱いが容易で低コストのものとしつつ、安定してマスクの自重による撓みなどの問題が抑制されたレーザ照射装置とすることができる。
【0154】
[レーザ加工装置]
図8に示すように、本発明に係るレーザ照射装置100と、レーザ照射処理部110としての被照射体80を保持するステージ40を備えたレーザ照射加工部110Aとを組み合わせることで、レーザ照射処理装置200として被照射体80にレーザビーム4の照射エネルギーによるアブレーション加工で微細な凹凸を形成するレーザ加工装置200Aを提供することができる。本発明に係るレーザ加工装置であれば、マスクの自重によるマスクの撓みやマスクへのごみの付着などの問題が抑制されたものとなる。
【0155】
本発明に係るレーザ加工装置200Aでは、第二光学機能部20、第一光学機能10及びレーザ照射加工部110Aは互いに分離可能なものであることが好ましい。これにより、分割輸送が容易であり、設置コストを削減できるものとなる。例えば、図8に示すように、第二光学機能部20と第一光学機能10の間に着脱部300A、第二光学機能部20とレーザ照射加工部110Aの間に着脱部300Bを設けるなどして分離可能なものとすることができる。
【0156】
第二光学機能部20に対してマスク21の設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャー28をさらに備えることが好ましい。これにより、様々なパターンを容易に加工できるレーザ加工装置となる。マスクチェンジャー28については、上述の説明を参照されたい。
【0157】
更に、本発明のレーザ照射装置100を備えたレーザ加工装置200Aを用いたレーザ加工の具体例について、以下に詳細に説明する、重畳照射を行うように(第1の態様)、及び/又は、レーザビームの照射位置を固定した状態での同期掃引照射を行うように(第2の態様)構成されていてもよい。
【0158】
(第1の態様)
第1の態様のレーザ加工装置200Aは、被照射体80への照射処理動作時に、照射エリア90の一部分を重畳させながら、マスク21とステージ40とを掃引照射し、被照射体80の被照射領域81のレーザ照射処理を行うように構成されている。以下、照射エリア90の一部分を重畳させながらレーザビームの照射を行うことを、重畳照射と呼ぶ。
【0159】
次に、図5及び図6を参照しながら、重畳照射の例を説明する。
【0160】
図5(a)は、パルス状の1ショットのレーザビームによる被照射体80上の基照射エリア90を示している。この例の重畳照射では、マスク21とステージ40とを掃引し、図5(b)に示すように、1ショット目の照射エリア91と2ショット目の照射エリア92とが、掃引軸80Xに沿った矢印の方向で一部分重畳するように、レーザビームを照射する。続いて、3ショット目の照射エリア93が、1ショット目の照射エリア91及び2ショット目の照射エリア92と一部分重畳するように、レーザビームを照射する。4ショット目以降もこのような重畳照射を繰り返すことにより、掃引軸80Xに沿って加工領域が広がっていく。
【0161】
図6(a)は、図5(b)に示した重畳照射により、被照射領域81の1行目を掃引軸80Xに沿ってアブレーション加工する工程を示している。次いで、図6(b)に示すように、図6(a)で重畳照射を行った領域の一部部分と掃引軸80Y(掃引軸80Xに直交する)の方向に重畳するように、掃引軸80Xに沿って重畳照射をし、被照射領域81の2行目を掃引軸80Xに沿ってアブレーション加工する。次いで、図6(c)に示すように、図6(a)及び(b)で重畳照射を行った領域の一部部分と掃引軸80Yの方向に重畳するように、掃引軸80Xに沿って重畳照射をし、被照射領域81の3行目を掃引軸80Xに沿ってアブレーション加工する。被照射領域81の4行目以降もこのような重畳照射を繰り返すことにより、加工領域が被照射領域81に亘って広がっていく。その結果、掃引軸80X及び80Yの2方向で夫々に一定の間隔で重畳照射を行うことができる。
【0162】
照射エリアの重畳した部分は、複数回のレーザビームの照射を受ける。その結果、その部分はマスクのパターン形状に応じた深いアブレーション加工を受け、被照射領域81に求められるマスクのパターン形状に応じた目的の深さの加工を達成することができる。
【0163】
このような第1の態様のレーザ加工装置200Aでは、照射エネルギー密度が均一な、パルス状であり且つ矩形状のレーザビームをマスク21を通して加工形状に変換したレーザビーム4が被照射体80の照射エリア90に照射される。そのため、マスク21の有効エリア22の一部分であるマスク照射エリアに対応する被照射体80内の照射エリア90の加工深さを均一化して複数回の照射を行うことができ、被照射体80の被照射領域81に亘ってほぼ均一な凹凸加工を精度よく行うことが可能である。そのため、このレーザ加工装置200Aであれば、被照射体80の被照射領域81に亘って微細な凹凸加工を精度よく行うことができる。
【0164】
また、このようなレーザ加工装置200Aは、高いレーザエネルギーを使用する必要がなく、使用するレーザ光源や光学部材が高価なものを使用せずに安価に構成できるうえ、レーザビームの熱ドリフトによる精度の悪化を抑えることが出来、高精度の加工を行うことが出来る。
【0165】
そして、レーザ加工装置200Aは、パルス状にレーザビーム4を被照射体に照射できるので、上記重畳照射を高速で行うことができる。
【0166】
つまり、本発明の第1の態様のレーザ加工装置200Aであれば、高速で深いVIA加工及び/又はトレンチ加工を行うことができるものとなる。
【0167】
更に、本発明の第1の態様のレーザ加工装置200Aであれば、重複照射を行うので、1ショットでの基板照射エリアを小さくできる。その結果、高密度照射が可能になる。
【0168】
(第2の態様)
第2の態様のレーザ加工装置200Aは、マスク21及びステージ40が、レーザビーム2及び4が照射される方向と略垂直な面方向において同期して動作することによって、相対的に対応する位置関係を保つように構成されている。
【0169】
図1の例では、掃引軸21Xに沿ったマスク21の動作が掃引軸80Xに沿ったステージ40の動作と同期し、且つ掃引軸21Yに沿ったマスク21の動作が掃引軸80Yに沿ったステージ40の動作と同期し、マスク21とステージ40とが相対的に対応する位置関係を保つように、これらが構成されている。
【0170】
また、第2の態様のレーザ加工装置200Aは、被照射体80への加工動作時に、レーザビーム4の照射位置を固定した状態で、マスク21とステージ40とを同期して動作させて、マスク21及びステージ40とを掃引照射し、被照射体80の被照射領域81の表面凹凸加工を行うように構成されている。第2の態様のレーザ加工装置200Aで行うことができるこのような掃引照射を、以下、「レーザビームの照射位置を固定した状態での同期掃引照射」と呼ぶ。
【0171】
このような同期掃引照射によれば、レーザビームを走査する場合よりも高い精度でレーザ照射処理を行うことができる。また、このようなレーザ加工装置200Aであれば、マスク21として大面積マスクを用いることもでき、大面積マスクと後段で説明する第三光学機能部30とを併用することにより、より高いエネルギー密度でレーザ照射処理を行うこともできる。
【0172】
また、このような第2の態様のレーザ加工装置200Aでは、第1の態様のレーザ加工装置200Aと同様に、照射エネルギー密度が均一な、パルス状であり且つ矩形状のレーザビームをマスク21を通して加工形状に変換したレーザビーム4が被照射体80の照射エリア90に照射される。そのため、第2の態様のレーザ加工装置200Aでも、第1の態様と同様に、マスク21の有効エリア22の一部分であるマスク照射エリアに対応する被照射体80内の照射エリア90の加工深さを均一化して複数回の照射を行うことができ、被照射体80の被照射領域81に亘ってほぼ均一な凹凸加工を精度よく行うことが可能である。そのため、このレーザ加工装置200Aでも、被照射体80の被照射領域81に亘って微細な凹凸加工を精度よく行うことができるものとなる。
【0173】
また、このようなレーザ加工装置200Aは、高いレーザエネルギーを使用する必要がなく、使用するレーザ光源や光学部材が高価なものを使用せずに安価に構成できるうえ、レーザビームの熱ドリフトによる精度の悪化を抑えることが出来、高精度の加工を行うことが出来る。また、光学部品に小型のものが使える為、安価で精度が高いものを使用することができる。
【0174】
なお、第1の態様のレーザ加工装置200Aは、先に説明した重畳照射に加え、第2の態様と同様の、レーザビームの照射位置を固定した状態での同期掃引照射を行うように構成されていることが好ましい。
【0175】
[レーザ加工方法]
上述の本発明に係るレーザ加工装置200Aを用いて、被照射体80の表面のアブレーション加工を行うことができる。これにより、マスクの変形やマスクへのごみの付着を防止しつつ、高精度の加工を行うことができる。
【0176】
本発明に係る第1の態様の加工方法は、上記第1の態様のレーザ加工装置200Aを用いて、先に説明した重畳照射を行う方法である。したがって、本発明に係る第1の態様の加工方法によれば、基板の被加工領域に亘って微細な凹凸加工を精度よく行うことができる。また、高エネルギー密度での照射を行うことができ、高速で深いVIA加工及び/又はトレンチ加工を行うことができる。
【0177】
本発明に係る加工方法は、上記第1の態様のレーザ加工装置200Aを用いる方法に限られない。
【0178】
例えば、本発明に係る第2の態様の加工方法は、被照射体80としての基板の表面にレーザビームの照射エネルギーによるアブレーション加工で微細な凹凸を形成する加工方法であって、矩形状に成形されたレーザビームをマスクに通すことで、基板の被加工領域よりも小さい基板照射エリアになるように基板にレーザビームを照射し、基板への加工動作時に、基板照射エリアの一部分を重畳させながら、基板の被加工領域の表面凹凸加工を行う加工方法である。
【0179】
このような加工方法であれば、基板の被加工領域よりも小さい基板照射エリアになるように基板にレーザビームを照射し、基板照射エリアの一部分を重畳させながら、前記基板の被加工領域の表面凹凸加工を行う、即ち重畳照射を行うので、基板の被加工領域に亘ってほぼ均一な凹凸加工を精度よく行うことが可能である。そのため、この態様の加工装置であれば、基板の被加工領域に亘って微細な凹凸加工を精度よく行うことができる。
【0180】
なお、本発明の第2の態様の加工方法では、エキシマレーザを用いることにより、より高精細な凹凸加工が可能となる。
【0181】
或いは、本発明に係る第3の態様の加工方法は、上記第2の態様のレーザ加工装置200Aを用いて、先に説明したレーザビームの照射位置を固定した状態での同期掃引照射を行う方法である。したがって、本発明の第3の態様の加工方法によれば、基板の被加工領域に亘って微細な凹凸加工を精度よく行うことができる。また、第3の態様の加工方法によれば、レーザビームを走査する場合よりも高い精度で加工を行うことができる。また、このような加工方法であれば、マスク21として大面積マスクを用いることもでき、大面積マスクと先に説明した第三光学機能部30とを併用することにより、より高いエネルギー密度で加工を行うこともできる。
【0182】
基板への加工動作時に、上記重畳照射と、レーザビームの照射位置を固定した状態での上記同期掃引照射との両方を行うことが特に好ましい。
【0183】
本発明に係る第1の態様又は第3の態様の加工方法では、先に説明した任意事項のうちの1つ又は複数を満たすレーザ加工装置200Aを用いることが好ましい。
【0184】
また、本発明の第1の態様又は第3の態様の加工方法では、少なくとも1つの方向での掃引照射において、マスク21及び基板ステージ40にレーザビーム2又は4のそれぞれをパルス照射しながら、マスク21及び基板ステージ40を非停止で掃引することが好ましい。
【0185】
このような掃引を行うことにより、先に説明した理由により、走行と停止を繰り返すステップ&リピート動作に比べて掃引の時間を大幅に減少することが可能となる。
【0186】
また、本発明の第1の態様又は第3の態様の加工方法において、被照射体80の被照射領域81ごとに、掃引照射を複数回繰り返し行うことが好ましい。
【0187】
前記の通り、基板の凹凸加工は高精細を要求されているにも関わらず、その深さは深くしたいという、高アスペクト加工の要求がある。
【0188】
しかし、1回の掃引(1Pass)で加工できる深さは限られており、特に上記非停止掃引での加工では、1回の加工部分に対して複数回照射することが出来ない。
【0189】
そのため、掃引しながらレーザパルス照射を行い、それを被照射体80の被照射領域81ごとに複数回行うことで、目的の深さまで加工することができ、高速な加工を行うことが出来る。
【0190】
なお、各掃引動作(1回目掃引、2回目掃引、・・・)の間では、例えば図4及び図5を参照しながら説明したように、照射エリア90をずらしながら回数ごとにずらして照射を行うことで、加工深さが平均化され、均一な深さの加工を行うことが可能となる。
【0191】
第1の態様又は第3の態様の加工方法では、被照射体80の特徴部分及びマスク21の特徴部分を読み取ることと、被照射体80の特徴部分及びマスク21の特徴部分の位置情報に基づいて、アライメント機構を用いて、被照射体80とマスク21との相対位置を合せることとを更に含むことが好ましい。
【0192】
被照射体80の特徴部分は、例えば、基板用アライメントカメラ60により読み取ることができる。マスク21の特徴部分は、例えばマスク用アライメントカメラ23を用いて読み取ることができる。
【0193】
マスク21の位置と被照射体80の位置とを上記マスク用アライメントカメラ23及び基板用アライメントカメラ60で得られた情報に基づいてアライメント機構によって合わせることで、被照射体80の面の正確な位置にマスクパターンを投影した凹凸加工を行うことが可能となる。
【0194】
この場合、アライメント機構の情報に基づき、マスク21のパターンに対して被照射体80の加工形状を補正することを更に含むことが好ましい。
【0195】
このような加工方法であれば、より正確な基板への凹凸加工が可能となる。このような補正は、例えば、第三光学機能部30、ビーム像検出カメラ70、マスク21の掃引機構、基板ステージ80の掃引機構などを組み合わせて行うことができる。
【0196】
[基板の製造方法]
本発明に係る基板の製造方法では、本発明に係るレーザ加工方法によって基板の加工を行う。このような基板の製造方法であれば、マスクの有効エリアの一部分であるマスク照射エリアに対応する基板内の基板照射エリアの加工深さを均一化して複数回の照射を行うことが出来るため、基板の被加工領域に亘ってほぼ均一な凹凸加工を精度よく行うことが可能である。そのため、この態様の基板の製造方法であれば、基板の被加工領域に亘って微細な凹凸加工が精度よく形成された基板を製造することができる。
【0197】
また、このような基板の製造方法は、高いレーザエネルギーを使用する必要がなく、使用するレーザ光源や光学部材が高価なものを使用せずに安価に構成できるうえ、レーザビームの熱ドリフトによる精度の悪化を抑えることが出来、高精度に加工が行なわれた基板を製造することが出来る。
【0198】
特に、上記第1の態様の加工方法を行う基板の製造方法であれば、基板への加工動作時に、上記重畳照射を行うので、高速で深いVIA加工及び/又はトレンチ加工を行うことができる。また、1ショットでの基板照射エリアを小さくできるので、高密度照射が可能になる。
【0199】
また、上記第3の態様の加工方法を行う基板の製造方法であれば、基板への加工動作時に、レーザビームの照射位置を固定した状態での上記同期掃引照射を行うので、レーザビームを走査する場合よりも高い精度で加工を行うことができる。また、このような加工方法であれば、大面積マスクを用いることもできるため、より高いエネルギー密度で加工を行うこともできる。
【0200】
本発明の基板の製造方法は、半導体パッケージの製造に特に有利に適用できる。
【0201】
[レーザ加工装置の設置方法]
次に、本発明に係るレーザ照射装置と被照射体を保持するステージを備えた照射加工部とを有するレーザ加工装置の設置方法について説明する。例えば、図8に示すように、第二光学機能部20と第一光学機能10の間に着脱部300A、第二光学機能部20とレーザ照射加工部110Aの間に着脱部300Bを設けるなどして分離可能なものとすることができる。そして、レーザ加工装置200Aの設置場所まで第一光学機能部10、第二光学機能部20及びレーザ照射加工部110Aをそれぞれ分離して搬送する。その後、レーザ加工装置200Aの設置場所において一体のレーザ加工装置200Aとする。そして、上述のマスクの設置方法により搬送する前又は搬送した後に第二光学機能部20にマスクを設置する。このようなレーザ加工装置の設置方法であれば、設置コストを削減することができる。
【0202】
[露光装置]
また、被照射体80を表面にレジスト膜を有する基板とし、図1のレーザ照射処理部110において、被照射体80としての表面にレジスト膜を有する基板を保持するステージを備えた露光処理部110Bとすることで、レーザ照射処理装置200としてレーザビームの照射エネルギーによりレジストに露光処理を行う露光装置200Bを提供することができる。これにより、マスクの自重によるマスクの撓みやマスクへのごみの付着などの問題が抑制された露光装置となる。
【0203】
本発明に係る露光装置200Bにおいても、上述のレーザ加工装置と同様に、第二光学機能部20、第一光学機能10及び露光処理部110Bは互いに分離可能なものであることが好ましい。これにより、分割輸送が容易であり、設置コストを削減できるものとなる。第二光学機能部20に対してマスク21の設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャー28をさらに備えることが好ましい。これにより、様々な露光パターンを容易に形成できるものとなる。
【0204】
[露光処理方法]
上述の本発明に係る露光装置200Bを用いて、被照射体80の表面の露光処理を行うことができる。これにより、マスクの変形やマスクへのごみの付着を防止しつつ、高精度の露光処理を行うことができる。
【0205】
[露光装置の設置方法]
次に、本発明に係るレーザ照射装置と被照射体を保持するステージを備えた露光処理部とを有する露光装置の設置方法について説明する。本発明に係る露光装置の設置方法は、上述のレーザ加工装置の設置方法と同様に、図8に示すように着脱部300A、着脱部300Bを設けるなどして、第二光学機能部20、第一光学機能部10及び露光処理部110Bを互いに分離可能なものとし、露光装置200Bの設置個所まで第一光学機能部10、第二光学機能部20及び露光処理部110Bをそれぞれ分離して搬送する。その後、露光装置200Bの設置場所において一体の露光装置200Bとする。そして、上述のマスクの設置方法により搬送する前又は搬送した後に第二光学機能部20にマスクを設置する。このような露光装置の設置方法であれば、設置コストを削減することができる。
【0206】
以上説明したように、大型のマスクの歪を抑制するという観点では、大型のマスクを縦に配置することが重要であり、他の構成部品や工程は任意である。
【0207】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置であって、
前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射装置。
[2]:前記マスクは、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものである上記[1]に記載のレーザ照射装置。
[3]:前記被照射体の表面にレーザビームの照射エネルギーによるアブレーション加工を行うレーザ加工装置であって、
前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部と、上記[1]又は上記[2]に記載のレーザ照射装置を備えるレーザ加工装置。
[4]:前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部は互いに分離可能なものである上記[3]に記載のレーザ加工装置。
[5]:前記第二光学機能部に対して前記マスクの設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャーをさらに備える上記[3]又は上記[4]に記載のレーザ加工装置。
[6]:上記[3]から上記[5]のいずれか一つに記載のレーザ加工装置を用いて前記被照射体の表面のアブレーション加工を行う被照射体のレーザ加工方法。
[7]:レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置に前記マスクを設置するマスクの設置方法であって、
前記マスクとして、外縁である4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上の四角形のものを用い、前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように前記マスクを前記第二光学機能部に設置するマスクの設置方法。
[8]:前記マスクとして、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものを用いる上記[7]に記載のマスクの設置方法。
[9]:前記マスクの設置を、マスクチェンジャーを用いて行う上記[7]又は上記[8]に記載のマスクの設置方法。
[10]:前記レーザ照射装置と前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部とを有するレーザ加工装置の設置方法であって、
前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部を互いに分離可能なものとし、前記レーザ加工装置の設置個所まで前記第一光学機能部、前記第二光学機能部及び前記照射加工部をそれぞれ分離して搬送した後、前記レーザ加工装置の設置個所において一体の前記レーザ加工装置とし、
上記[7]から上記[9]のいずれか一つに記載のマスクの設置方法により前記搬送する前又は前記搬送した後に前記第二光学機能部にマスクを設置するレーザ加工装置の設置方法。
[11]:レーザ照射装置に縦置きに設置される四角形状のマスクであって、
被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、
前記四角形の4辺のうちの最長の辺の長さが800mm以上であるマスク。
[12]:レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置であって、
前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射装置。
[13]:前記マスクは、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものである上記[12]に記載のレーザ照射装置。
[14]:前記被照射体の表面にレーザビームの照射エネルギーによるアブレーション加工を行うレーザ加工装置であって、
前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部と、上記[12]又は上記[13]に記載のレーザ照射装置を備えるレーザ加工装置。
[15]:前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部は互いに分離可能なものである上記[14]に記載のレーザ加工装置。
[16]:前記第二光学機能部に対して前記マスクの設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャーをさらに備える上記[14]又は上記[15]に記載のレーザ加工装置。
[17]:上記[14]から上記[16]のいずれか一つに記載のレーザ加工装置を用いて前記被照射体の表面のアブレーション加工を行う被照射体のレーザ加工方法。
[18]:前記被照射体の表面にレーザビームの照射エネルギーによる露光処理を行うレーザ露光装置であって、
前記被照射体を保持するステージを備えた露光部と、上記[12]又は上記[13]に記載のレーザ照射装置を備えるレーザ露光装置。
[19]:前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記露光部は互いに分離可能なものである上記[18]に記載のレーザ露光装置。
[20]:前記第二光学機能部に対して前記マスクの設置及び取り出しが可能なマスクチェンジャーをさらに備える上記[18]又は上記[19]に記載のレーザ露光装置。
[21]:上記[18]から上記[20]のいずれか一つに記載のレーザ露光装置を用いて前記被照射体の表面の露光処理を行う被照射体のレーザ露光方法。
[22]:レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射装置に前記マスクを設置するマスクの設置方法であって、
前記マスクとして、外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものを用い、前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように前記マスクを前記第二光学機能部に設置するマスクの設置方法。
[23]:前記マスクとして、前記有効エリアのレーザ透過方向の厚さが10mm以下のものを用いる上記[22]に記載のマスクの設置方法。
[24]:前記マスクの設置を、マスクチェンジャーを用いて行う上記[22]又は上記[23]に記載のマスクの設置方法。
[25]:前記レーザ照射装置と前記被照射体を保持するステージを備えた照射加工部とを有するレーザ加工装置の設置方法であって、
前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記照射加工部を互いに分離可能なものとし、前記レーザ加工装置の設置個所まで前記第一光学機能部、前記第二光学機能部及び前記照射加工部をそれぞれ分離して搬送した後、前記レーザ加工装置の設置個所において一体の前記レーザ加工装置とし、
上記[22]から上記[24]のいずれか一つに記載のマスクの設置方法により前記搬送する前又は前記搬送した後に前記第二光学機能部にマスクを設置するレーザ加工装置の設置方法。
[26]:前記レーザ照射装置と前記被照射体を保持するステージを備えた露光部とを有するレーザ露光装置の設置方法であって、
前記第二光学機能部、前記第一光学機能部及び前記露光部を互いに分離可能なものとし、前記レーザ露光装置の設置個所まで前記第一光学機能部、前記第二光学機能部及び前記露光部をそれぞれ分離して搬送した後、前記レーザ露光装置の設置個所において一体の前記レーザ露光装置とし、
上記[22]から上記[24]のいずれか一つに記載のマスクの設置方法により前記搬送する前又は前記搬送した後に前記第二光学機能部にマスクを設置するレーザ露光装置の設置方法。
[27]:レーザ照射装置に縦置きに設置される四角形状のマスクであって、
被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、
前記四角形の4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上であるマスク。
[28]:レーザ光源を備える第一光学機能部と、被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有するマスクを設置するための第二光学機能部とを備え、被照射体に対し前記第二光学機能部に設置された前記マスクを介してレーザを照射するためのレーザ照射システムであって、
前記マスクは、前記被照射体のレーザ照射領域に対応するパターンを有する有効エリアを含み、前記マスクの外縁である4辺のうちの最短の辺の長さが1000mm以上の四角形のものであり、前記第二光学機能部において前記パターンが形成された面の法線が略水平方向を向くように配置されたものであるレーザ照射システム。
【0208】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10