(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-25
(45)【発行日】2025-09-02
(54)【発明の名称】バリア性を有する易引き裂き性積層体、包装材料および包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20250826BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20250826BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20250826BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/32 E
B65D65/02 E
(21)【出願番号】P 2021102437
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2024-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】落合 信哉
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-075439(JP,A)
【文献】特開平08-142263(JP,A)
【文献】特開2005-199514(JP,A)
【文献】特開2021-020391(JP,A)
【文献】国際公開第2021/054384(WO,A1)
【文献】特開2013-123814(JP,A)
【文献】特開2020-164178(JP,A)
【文献】特開2012-011588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と無機蒸着層からなる積層体において、
前記基材層は、第1外層と、中間層と、第2外層とを有し、
前記中間層は、前記第1外層と前記第2外層の間に配置されており、
前記第1外層、前記中間層及び前記第2外層それぞれは、ポリエチレンを含み、
前記中間層は、環状オレフィン系樹脂を更に含み、
前記無機蒸着層は、前記第2外層に蒸着された層である、
ことを特徴とする、
バリア性を有する易引き裂き性積層体。
【請求項2】
前記第1外層、前記中間層及び前記第2外層それぞれに含まれるポリエチレンの密度が、0.925g/cm
3以上であることを特徴とする、請求項1に記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体。
【請求項3】
前記第1外層及び前記第2外層それぞれに含まれるポリエチレンが、高密度ポリエチレンである、請求項2に記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体。
【請求項4】
前記無機蒸着層が金属酸化物からなることを特徴とする、請求項1
~3のいずれかに記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体に、さらにヒートシール性のポリエチレンを積層したことを特徴とする、包装材料。
【請求項6】
密度0.925g/cm
3以上のポリエチレンからなる延伸フィルムに印刷層を設け、この印刷層面と、請求項1~
4のいずれかに記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体を積層し、さらに、バリア性を有する易引き裂き性積層体の反対の面に、さらにヒートシール性のポリエチレンを積層したことを特徴とする、請求項
5に記載の包装材料。
【請求項7】
ポリエチレンの含有率が90重量%以上である、請求項
5または
6に記載の包装材料。
【請求項8】
請求項
5~
7のいずれかに記載の包装材料を用いた、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性を有する易引き裂き性積層体、包装材料および包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料をリサイクルして使用することが試みられている。同じ種類のプラスチックを主に使用した包装材料は、使用済みの包装材料を回収し、再溶融し、プラスチックとして再使用するメカニカルリサイクル適性に優れている。
【0003】
特許文献1には、延伸したポリエチレンフィルムに酸化アルミを蒸着し、ポリエチレンからなるヒートシール層を積層した積層体が提案されている。
【0004】
また、ハサミなどの器具を用いずに開封可能なポリエチレンを主な素材とする包装材料の事例としては、特許文献2に、環状オレフィン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなる中間層を有する包装材料が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、ポリオレフィンからなる包装袋にポリウレタン層を設けて、引き裂き性を付与する提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-171861号公報
【文献】特許第5262134号公報
【文献】特表2020-535034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の延伸ポリエチレンは、未延伸ポリエチレンと比較し、透明性を有し、引き裂き性を有している。酸素などのガスバリア性と水蒸気に対するバリア性を付与する技術として、酸化アルミや酸化ケイ素などの蒸着層を基材表面に設けることは有効である。しかしながら、本発明者らの検討の結果、延伸ポリエチレン基材に蒸着した場合、包装袋としたときに、落下などの衝撃を受けると、延伸ポリエチレン基材と蒸着層との間が剥離し、包装袋として十分な強度が得られないことが明らかとなった。
【0008】
一方、密度が、0.925g/cm3以上の高密度ポリエチレン、および、中密度ポリエチレンの未延伸ポリエチレンに蒸着層を設けた場合、バリア性と包装袋として十分な強度が得られるものの、良好な引き裂き性が得られず、開封しにくい問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを基材とし、無機酸化物の蒸着層を設けた場合、良好な引き裂き性は得られたが基材フィルムの伸びなどにより蒸着層にクラックが生じ、ガスバリア性を得ることができなかった。
【0010】
また、特許文献3で提案された包装袋外表面上にポリウレタン層をコート層として設けた場合、外表面に塗工する工程が増えるのみならず、充填工程や輸送工程で、擦れなどによる脱落を生じ、所望の効果を得られない恐れがあった。
【0011】
以上の問題を解決する方法として、本発明は環状オレフィンを添加した高密度ポリエチ
レン、および、中密度ポリエチレンからなる未延伸フィルムを基材として無機蒸着層を設けることにより、引き裂き性があり、包装材料へ適用可能な強度とバリア性を有する積層体、包装材およびそれを用いた包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に於いて上記課題を解決するために、本発明の第一の態様は、
少なくとも、基材層と無機蒸着層からなる積層体において、
前記基材層がポリエチレンと環状オレフィン系樹脂からなることを特徴とする、バリア性を有する易引き裂き性積層体である。
【0013】
また、本発明の第二の態様は、
前記基材層を形成するポリエチレンの密度が、0.925g/cm3以上であることを特徴とする、請求項1に記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体である。
【0014】
また、本発明の第三の態様は、
前記無機蒸着層が金属酸化物からなることを特徴とする、請求項1または2に記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体である。
【0015】
また、本発明の第四の態様は、
請求項1~3のいずれかに記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体に、さらにヒートシール性のポリエチレンを積層したことを特徴とする、包装材料である。
【0016】
また、本発明の第五の態様は、
密度0.925g/cm3以上のポリエチレンからなる延伸フィルムに印刷層を設け、この印刷層面と、請求項1~3のいずれかに記載のバリア性を有する易引き裂き性積層体を積層し、さらに、バリア性を有する易引き裂き性積層体の反対の面に、さらにヒートシール性のポリエチレンを積層したことを特徴とする、請求項4に記載の包装材料である。
【0017】
また、本発明の第六の態様は、
ポリエチレンの含有率が90重量%以上である、請求項4または5に記載の包装材料である。
【0018】
また、本発明の第七の態様は、
請求項4~6のいずれかに記載の包装材料を用いた、包装袋である。
【発明の効果】
【0019】
上記手段により、環状オレフィンを添加した高密度ポリエチレン、および、中密度ポリエチレンからなる未延伸フィルムを基材として無機蒸着層を設けることにより、引き裂き性があり、包装材料へ適用可能な強度とバリア性を有する積層体、包装材およびそれを用いた包装袋を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の一例に使用される包装材30の概略断面図である。
<基材層>
基材層1は、密度が、0.925g/cm
3以上である高密度ポリエチレン(HDPE)、および、環状オレフィン系樹脂(COC)が添加された中密度ポリエチレン(MDPE)からなる。環状オレフィン系樹脂は、中密度ポリエチレンに対して、海島構造を形成する。引き裂き時に、島状に分布した環状オレフィン系樹脂を伝わって、容易に裂けるので、易引き裂き性が得られる。
【0022】
密度や分岐の異なる各ポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得ることができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0023】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調製される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であり、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
【0024】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基などである。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基などから選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体などを形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0025】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウムなどが挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基などの置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基などの置換ゲルミレン基などが挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種または二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0026】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物などが挙げられる。
【0027】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または
有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイトなどのイオン交換性層状珪酸塩、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2、およびこれらの混合物等が挙げられる。必要に応じて使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物などが例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0028】
本発明の特性を損なわない範囲において、エチレンと他のモノマーとの共重合体を使用することもできる。エチレン共重合体としては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとからなる共重合体が挙げられる。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3ーメチルー1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテンなどが挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、酢酸ビニルまたはアクリル酸エステルなどとの共重合体であってもよい。
【0029】
本発明においては、上記ポリエチレンなどを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンを用いてもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンはカーボニュートラルな材料であるため、より一層、環境負荷の少ない包装材料とすることができる。
【0030】
メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンを基材層に使用することもできる。ここで、メカニカルリサイクルとは、一般に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、ポリエチレンからなるフィルムの汚れを取り除き、溶融して、再びポリエチレン樹脂ペレットに戻す方法である。
【0031】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン共重合体(COC)と、開環重合水添樹脂(COP)に分類されるが、どちらも選択可能である。環状オレフィン共重合体は、環状オレフィンとα-オレフィンの付加重合により合成される。開環重合水添樹脂は、環状オレフィンを開環重合し、精製した二重結合に水素を添加することで合成される。
【0032】
基材層10全体に添加されてもよいが、環状オレフィン系樹脂が表層に出て、表面粗さが大きくなってしまい、蒸着層に孔が生じてしまう可能性があるため、多層押出技術を用いて、中間層のみに添加したほうが、蒸着適性の点から好ましい。
【0033】
また、ポリエチレン樹脂への添加率は、添加する層のポリエチレンに対して、50重量%以下である。50重量%を超えると、環状オレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂中に島状に分布するのではなく、海状となってしまうため、易引き裂き性が得られなくなる。また、10重量%を下回ると、海島構造の島状に分布した環状オレフィン系樹脂同士が離れてしまうため、良好な引き裂き性が得られなくなる。
【0034】
後述するシーラント層8は、包装袋としたときの、内容物の重量で厚みを変える必要がある。そのため、シーラント層8が厚くなる場合には、易引き裂き性を確保するために、環状オレフィン系樹脂の添加量を増やす必要がある。一方、シーラント層8が薄い場合には、環状オレフィン系樹脂の添加率が高いと、包装袋全体としてのポリエチレンの割合が90重量%を下回り、良好なリサイクル性が得られない。
【0035】
基材層10の成膜は、インフレーション法やTダイ法など既存の方法を用いることができる。ポリエチレンと環状オレフィンは、ドライブレンドされ、成膜機に供給され、加熱
溶融され、膜状に押し出され、冷却され、フィルムとなる。ポリエチレン中に環状オレフィンが島状に点在することにより、引き裂き性を有するフィルムとなる。
【0036】
基材層10の厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上35μm以下であることがより好ましい。基材層10の厚さを10μm以上とすることにより、積層体20の強度を向上できる。基材層10の厚さを50μm以下とすることにより、積層体20の加工適性を向上できる。
【0037】
また、基材層10は添加剤を含むことができる。添加剤として、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料および改質用樹脂などを例示できる。
【0038】
基材層10は、テンターと呼ばれる延伸装置による延伸処理を行われないため、基材層10のポリエチレンは、ランダムに折りたたまれた分子鎖により構成された10~100μm程度の球状の結晶(球晶)が、非結晶性分子で繋ぎあった構造を有している。基材層10は、アンカーコート層4との密着性を向上させるために、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。
【0039】
<アンカーコート層>
基材層10の無機蒸着層5が形成される側の面に公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層4を形成してもよい。これにより、金属酸化物からなる無機蒸着層5の密着性を向上させることができる。アンカーコート剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等を例示できる。
【0040】
<蒸着層>
ガスバリア層となる無機蒸着層5は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫等の金属酸化物からなる蒸着層が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。さらに、コストを考慮すると、酸化アルミニウム、酸化珪素から選択される。バリア層に金属酸化物からなる蒸着層を用いることにより、積層体20のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0041】
金属酸化物からなる無機蒸着層5は、透明性を有するため、金属からなる蒸着層と比べて、積層体20からなる包装材料30を手にする使用者に、金属箔が使用されているとの誤認を生じさせにくいという利点がある。
【0042】
無機蒸着層5として酸化アルミニウムを選択した場合のO/Al比は1.4以上であることが望ましい。O/Al比が1.4以上であるとアルミニウム元素の含有割合が抑制されて良好な透明性が得られ易い。また、O/Al比は1.7以下であることが好ましい。O/Al比が1.7以下であるとAlOの結晶性が高くなって蒸着層が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。積層体20を用いた包装袋においては、ボイル処理時の熱により基材10が収縮することがあるが、無機蒸着層5のO/Al比が1.7以下であると、この収縮に追従しやすく、無機蒸着層5にクラック等が生じることによるバリア性の低下を抑制できる。これらの効果をより十分に得る観点から、無機蒸着層5のO/Al比は1.4以上1.7以下であることが好ましく、1.5以上1.55以下であることがより好ましい。
【0043】
無機蒸着層5として酸化珪素を選択した場合のO/Si比は1.7以上であることが望ましい。O/Si比が1.7以上であるとケイ素元素の含有割合が抑制されて良好な透明
性が得られ易い。また、O/Si比は2.0以下であることが好ましい。O/Si比が2.0以下であるとSiOの結晶性が高くなって蒸着層が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。また、無機蒸着層5のO/Si比が2.0以下であると、上述した収縮にも追従しやすく、バリア性の低下を抑制することができる。これらの効果をより十分に得る観点から、無機蒸着層5のO/Si比は1.75以上1.9以下であることが好ましく、1.8以上1.85以下であることがより好ましい。
【0044】
酸化アルミニウムからなる無機蒸着層5の膜厚は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。膜厚が5nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が30nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が30nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、無機蒸着層5の膜厚は、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0045】
酸化珪素からなる無機蒸着層5の膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が50nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が50nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、無機蒸着層5の膜厚は、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0046】
無機蒸着層5は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。ただし、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0048】
<オーバーコート層>
無機蒸着層5を覆うオーバーコート層6を備えてもよい。オーバーコート層6は、無機蒸着層5を保護するとともに、無機蒸着層5とは独立してバリア性を発揮する。オーバーコート層6は、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、シランカップリング剤、及び、それらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするガスバリア性被覆層形成用組成物(以下、コーティング剤ともいう)を用いて形成できる。
【0049】
コーティング剤は、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリア性をより十分に維持する観点から、少なくともシランカップリング剤又はその加水分解物を含有することが好ましく、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、シランカップリング剤又はその加水分解物とを含有することがより好ましく、水酸基含有高分子化合物又はその加水分解物と、金属アルコキシド又はその加水分解物と、シランカップリング剤又はその加水分解物とを含有することが更に
好ましい。コーティング剤は、例えば、水溶性高分子である水酸基含有高分子化合物を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液に、金属アルコキシドとシランカップリング剤とを直接、或いは予め加水分解させるなどの処理を行ったものを混合して調製することができる。
【0050】
上述したコーティング剤に含まれる各成分について詳細に説明する。コーティング剤に用いられる水酸基含有高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。PVAをコーティング剤に用いると、オーバーコート層6のガスバリア性が特に優れるため好ましい。
【0051】
オーバーコート層6は、優れたガスバリア性を得る観点から、下記一般式(I)で表わされる金属アルコキシド及びその加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物から形成されることが好ましい。
M(OR1)m(R2)n-m ・・・(I)
なお、上記一般式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~8の1価の有機基であり、メチル基、エチル基等のアルキル基であることが好ましい。MはSi、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは1~nの整数である。R1又はR2が複数存在する場合、R1同士又はR2同士は同一でも異なっていてもよい。
【0052】
金属アルコキシドとして具体的には、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C3H7)3〕などが挙げられる。テトラエトキシシラン及びトリイソプロポキシアルミニウムは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0053】
シランカップリング剤としては、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
Si(OR11)p(R12)3-pR13 ・・・(II)
なお、上記一般式(II)中、R11はメチル基、エチル基等のアルキル基を示す。R12はアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、又は、メタクリロキシ基で置換されたアルキル基等の1価の有機基を示す。R13は1価の有機官能基を示す。pは1~3の整数を示す。R11又はR12が複数存在する場合、R11同士又はR12同士は同一でも異なっていてもよい。R13で示される1価の有機官能基としては、グリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、イソシアネート基を含有する1価の有機官能基が挙げられる。
【0054】
シランカップリング剤として具体的には、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0055】
シランカップリング剤においては、上記一般式(II)で表される化合物が重合した多量体であってもよい。多量体としては三量体が好ましく、より好ましくは1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。これは、3-イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮重合体である。この1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、イソシア部には化学的反応性はなくなるが、ヌレート部の極性により反応性は確保されることが知られている。一般的には、3-イソシアネートアルキルアルコキシランと同様に接着剤などに添加され、接着性向上剤として知られている。よって1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル
)イソシアヌレートを、水酸基含有高分子化合物に添加することにより、水素結合によりガスバリア性被覆層の耐水性を向上させることができる。3-イソシアネートアルキルアルコキシランは反応性が高く、液安定性が低いのに対し、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、ヌレート部はその極性により水溶性ではないが、水系溶液中に分散しやすく、液粘度を安定に保つことができる。また、耐水性能は3-イソシアネートアルキルアルコキシランと1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートとは同等である。
【0056】
1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3-イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱縮合により製造されるものもあり、原料の3-イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、特に問題はない。さらに好ましくは、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートであり、より好ましくは1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。このメトキシ基は加水分解速度が速く、またプロピル基を含むものは比較的安価に入手し得ることから1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートは実用上有利である。
【0057】
コーティング剤には、ガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、あるいは、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えてもよい。
【0058】
オーバーコート層6の厚さは、50~1000nmであることが好ましく、100~500nmであることがより好ましい。オーバーコート層6の厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0059】
オーバーコート層6を形成するためのコーティング液は、例えば、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等により塗布できる。このコーティング液を塗布してなる塗膜は、例えば、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、高周波照射法、赤外線照射法、UV照射法、またはそれらの組み合わせにより乾燥させることができる。
【0060】
上記塗膜を乾燥させる際の温度は、例えば、温度50~150℃とすることができ、温度70~100℃とすることが好ましい。乾燥時の温度を上記範囲内とすることで、無機蒸着層5やガスバリア性被覆層にクラックが発生することをより一層抑制でき、優れたバリア性を発現することができる。
【0061】
オーバーコート層6は、ポリビニルアルコール系樹脂及びシラン化合物を含むコーティング剤を用いて形成されてもよい。このコーティング剤には、必要に応じて酸触媒、アルカリ触媒、光重開始剤等を加えてもよい。
【0062】
ポリビニルアルコール系樹脂は上述したものを使用できる。シラン化合物としては、シランカップリング剤、ポリシラザン、シロキサン等が挙げられ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0063】
<印刷層>
無機蒸着層5上、またはオーバーコート層6上には、印刷層を設けることができる。印刷層は、内容物に関する情報の表示、内容物の識別、あるいは包装袋の意匠性向上を目的
として、積層体20の外側から見える位置に設けられる。印刷方法及び印刷インキは特に制限されず、既知の印刷方法及び印刷インキの中からフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮して適宜選択される。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。中でもグラビア印刷法は生産性や絵柄の高精細度の観点から、好ましく用いることができる。
【0064】
<ヒートシール層>
前述のようにして得られたバリア性を有する易引き裂き性積層体20に、さらにヒートシール層8を設け、包装材料とすることができる。ヒートシール層8は、ポリエチレンにより構成されており、積層体20を用いて包装袋等の包装材料30を形成する際に熱融着(ヒートシール)により接合される。ヒートシール層8を構成するポリエチレンは、ヒートシール性という観点からは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超低密度ポリエチレン(VLDPE)が好ましい。また、環境負荷の観点から、バイオマス由来のポリエチレンまたはリサイクルされたポリエチレンがヒートシール層に使用されることが好ましい。
【0065】
低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満のポリエチレンを使用することができる。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満のポリエチレンを使用することができる。超低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3未満のポリエチレンを使用することができる。ヒートシール層には、バリア性を有する易引き裂き性積層体の特性を損なわない範囲において、エチレンとその他のモノマーとの共重合体を使用することができる。
【0066】
ヒートシール層8は単層でもよいし、多層構造を有してもよい。多層構造を有する場合は、MDPEおよびHDPEの少なくとも一方を含む層を備えてもよい。例えば、LDPE、LLDPE、およびVLDPEの少なくともいずれかを含む層/MDPEおよびHDPEの少なくともいずれかを含む層/LDPE、LLDPE、およびVLDPEの少なくともいずれかを含む層からなる3層構成とすることができる。このような構成とすることにより、ヒートシール性を維持しつつ、製袋適性および強度をより向上することができる。
【0067】
また、本発明における包装材料のポリエチレンの比率が、90重量%を下回らない範囲で、環状オレフィン系樹脂を添加してもよい。この場合、ヒートシール性、易引き裂き性積層体20との接着性から、多層構造として、中間層に添加することが好ましい。
【0068】
ヒートシール層8の厚さは、作製される包装材料に充填する内容物の重量等に応じて適宜変更できる。例えば、1g以上、200g以下の内容物を充填する包装袋を作製する場合、ヒートシール層8の厚さは、20μm以上、60μm以下であることが好ましい。厚さを20μm以上とすることにより、充填された内容物が、ヒートシール層8の破損により漏れてしまうことを防止できる。厚さを60μm以下とすることにより、加工適性を向上できる。
【0069】
他の例として、50g以上、2000g以下の内容物を充填するスタンディングパウチを作製する場合、ヒートシール層8の厚さは、50μm以上、200μm以下であることが好ましい。厚さを50μm以上とすることにより、充填された内容物が、ヒートシール層8の破損により漏れてしまうことを防止することができる。また、厚さを200μm以下とすることにより、加工適性を向上できる。
【0070】
前述の易引き裂き性積層体20と、ヒートシール層8とを積層する手段としては、一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤等の接着剤で貼りあわせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼りあわせるノンソルベントドライラミネート法、ポリエチレン樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼りあわせるエクストルージョンラミネート法等、いずれも公知の方法を採用することができる。
【0071】
硬化後にガスバリア性を発現し得る接着剤を用いて接着層7を形成することもできる。これにより、積層体20のガスバリア性能をさらに向上できる。このようなガスバリア性接着剤としては、エポキシ系接着剤、ポリエステル・ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。具体例としては、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」、DIC社製の「Paslim」等が挙げられる。
【0072】
接着層7の厚さは、0.5μm以上6μm以下であることが好ましく、0.8μm以上5μm以下であることがより好ましく、1μm以上4.5μm以下であることがさらに好ましい。接着層7の厚さを0.5μm以上とすることにより、接着層7の接着性を向上することができる。接着層7の厚さを6μm以下とすることにより、加工適性を向上することができる。
【0073】
<包装袋>
包装袋は、このようにして得られたバリア性を有する易引き裂き性積層体20とヒートシール層8からなる包装材30の、ヒートシール層8同士を合わせてヒートシールすることにより得ることができる。
【実施例】
【0074】
本実施形態のバリア性を有する易引き裂き性積層体20、包装材30および包装袋について、実施例および比較例を用いてさらに説明する。
(基材層の製膜)
密度0.930g/cm3の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度0.950g/cm3の高密度ポリエチレン(HDPE)、密度1.01g/cm3の環状オレフィン樹脂(COC)を用意した。Tダイから、HDPE/MDPEとCOCの混合層/HDPEとなるように溶融押出して、総厚30μの基材フィルム3種類を製膜した。MDPEとCOCは、所望の混合比となるように樹脂ペレットをドライブレンドして使用した。層比は1:3:1とした。
基材1 中間層中のCOCの比率:30重量%、基材層中のCOCの比率:約19重量%基材2 中間層中のCOCの比率:10重量%、基材層中のCOCの比率:約6重量%
基材3 中間層中のCOCの比率:5重量%、基材層中のCOCの比率:約3重量%
上記基材の構成とポリエチレン含有率(%)を表1に示す。
【0075】
【0076】
(アンカーコート剤の調製)
アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートとを、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように混合し、全固形分(アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量)が5質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。希釈後の混合液に、さらにβ-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量100質量部に対して5質量部となるように添加し、これらを混合することでアンカーコート剤を調製した。
【0077】
(オーバーコート剤の調製)
下記のA液、B液及びC液を、それぞれ70/20/10の質量比で混合することで、オーバーコート剤を調製した。
A液:テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)17.9gとメタノール10gに0.1N塩酸72.1gを加えて30分間攪拌して加水分解させた固形分5質量%(SiO2換算)の加水分解溶液。
B液:ポリビニルアルコールの5質量%水/メタノール溶液(水:メタノールの質量比は95:5)。
C液:1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを水/イソプロピルアルコールの混合液(水:イソプロピルアルコールの質量比は1:1)で固形分5質量%に希釈した加水分解溶液。
【0078】
(バリア性を有する易引き裂き性積層体の作成)
基材1、基材2、基材3それぞれの片面にコロナ処理を行った。このコロナ処理面に、上記アンカーコート剤をグラビアコート法により塗布して乾燥し、厚さ0.1μmのアンカーコート層を設けた。電子線加熱方式による真空蒸着装置により、厚さ10nmの酸化アルミニウムからなる透明な無機蒸着層(アルミナ蒸着層)を形成した。アルミナ蒸着層のO/Al比は1.5であった。アルミナ蒸着層上に、オーバーコート剤をグラビアコート法により塗布して乾燥し、厚さ0.3μmのオーバーコート層を形成した。オーバーコート層上に、ウレタン系接着剤を用いたドライラミネート法により、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる厚さ40μmのシーラントフィルムを積層し、バリア性を有する易引き裂き性積層体1、2、3をそれぞれ得た。
【0079】
また、基材1、基材2、基材3を用いて、蒸着層を酸化アルミニウムから、厚さ30nmの酸化ケイ素に変更したバリア性を有する易引き裂き性積層体4、5、6をそれぞれ得た。シリカ蒸着膜のO/Si比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。構成、およびモコン法による酸素バリア性と水蒸気バリア性の評価結果を表2に示した。全ての積層体が、良好な酸素バリア性と水蒸気バリア性を有する。
【0080】
【0081】
[実施例1]
積層体2と、ヒートシール層として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm)のコロナ処理面とをウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ、実施例1による包装材料を作成した。接着層の厚みは3.5μmであった。
【0082】
[実施例2]
積層体を積層体5に変更したほかは、実施例1と同様に処理し、実施例2による包装材料を作成した。
【0083】
[比較例1]
積層体を積層体1に変更したほかは、実施例1と同様に処理し、比較例1による包装材料を作成した。
【0084】
[比較例2]
積層体を積層体3に変更したほかは、実施例1と同様に処理し、比較例2による包装材料を作成した。
【0085】
[比較例3]
積層体を積層体4に変更したほかは、実施例1と同様に処理し、比較例3による包装材料を作成した。
【0086】
[比較例4]
積層体を積層体6に変更したほかは、実施例1と同様に処理し、比較例4による包装材料を作成した。
【0087】
[実施例3]
積層体1と、ヒートシール層として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み120μm)のコロナ処理面とをウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ、実施例3による包装材料を作成した。接着層の厚みは3.5μmであった。
【0088】
[実施例4]
積層体を積層体4に変更したほかは、実施例3と同様に処理し、実施例4による包装材料を作成した。
【0089】
[比較例5]
積層体を積層体2に変更したほかは、実施例3と同様に処理し、比較例5による包装材料を作成した。
【0090】
[比較例6]
積層体を積層体3に変更したほかは、実施例3と同様に処理し、比較例6による包装材料を作成した。
【0091】
[比較例7]
積層体を積層体5に変更したほかは、実施例3と同様に処理し、比較例7による包装材料を作成した。
【0092】
[比較例8]
積層体を積層体6に変更したほかは、実施例3と同様に処理し、比較例8による包装材料を作成した。
【0093】
[評価1]
包装材料のポリエチレンの含有量を求め、90重量%以上のものを、リサイクル性ありと評価した。
【0094】
[評価2]
各例に係る包装材料を用いて、周縁部がヒートシールされた100mm×150mmの包装袋を作製した。ノッチからの引き裂き性を官能評価した。結果を表3に示す。
【0095】
【0096】
表3を見てわかるように、実施例1~4の包装袋は、バリア性を有する積層体を用いて作成されており、リサイクル適正、易引き裂き性に優れることがわかった。
【符号の説明】
【0097】
1・・・高密度ポリエチレン(HDPE)
2・・・中密度ポリエチレン(MDPE)/環状オレフィン樹脂(COC)
3・・・高密度ポリエチレン(HDPE)
4・・・アンカーコート層
5・・・無機蒸着層
6・・・オーバーコート層
7・・・接着層
8・・・ヒートシール層
10・・・基材
20・・・積層体
30・・・包装材