(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-26
(45)【発行日】2025-09-03
(54)【発明の名称】不織布及びその製造方法、ならびにワイパー
(51)【国際特許分類】
D04H 1/425 20120101AFI20250827BHJP
D04H 1/542 20120101ALI20250827BHJP
D04H 1/485 20120101ALI20250827BHJP
D04H 1/495 20120101ALI20250827BHJP
A47L 13/16 20060101ALI20250827BHJP
【FI】
D04H1/425
D04H1/542
D04H1/485
D04H1/495
A47L13/16 A
(21)【出願番号】P 2020135138
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2019145566
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(72)【発明者】
【氏名】森田 遼
(72)【発明者】
【氏名】京塚 渉
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-174036(JP,A)
【文献】特開2015-180789(JP,A)
【文献】特開2017-101341(JP,A)
【文献】特開2015-000277(JP,A)
【文献】特開平11-031495(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/
A47K 7/
A47L 13/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記接着工程が前記繊維ウェブに熱風を当てる熱風加工処理を含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含む、
不織布の製造方法。
【請求項2】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記接着工程の前または後であって、かつ、前記交絡工程の前に、前記繊維ウェブに前記基材シートを積層して、複合ウェブを得る基材シート積層工程を含み、
前記接着工程が前記繊維ウェブまたは前記複合ウェブに熱風を当てる熱風加工処理を含む、不織布の製造方法。
【請求項3】
前記基材シートが、長繊維不織布、湿式不織布または網状シートである、請求項2に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記接着工程の前または後であって、かつ、前記交絡工程の前に、前記繊維ウェブに前記基材シートを積層して、複合ウェブを得る基材シート積層工程を含み、
前記基材シートが
、湿式不織布または網状シートである、不織布の製造方法。
【請求項5】
前記接着工程の後であって、かつ、前記交絡工程の前に、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む別の繊維ウェブを前記繊維ウェブに積層して、積層ウェブを得るウェブ積層工程を含む、請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記接着工程の後であって、かつ、前記交絡工程の前に、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む別の繊維ウェブを、前記基材シートが前記繊維ウェブと前記別の繊維ウェブとの間に位置するように積層して、積層ウェブを得るウェブ積層工程をさらに含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
前記交絡工程が水流交絡処理を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項8】
前記交絡工程が、前記繊維ウェブ全体、前記複合ウェブ全体または前記積層ウェブ全体にわたって繊維同士を交絡させる全面交絡工程を含み、前記繊維ウェブ、前記複合ウェブまたは前記積層ウェブを前記全面交絡工程の後に前記部分交絡工程に付する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項9】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記交絡工程が、前記繊維ウェブ全体にわたって繊維同士を交絡させる全面交絡工程を含み、前記繊維ウェブを前記全面交絡工程の後に前記部分交絡工程に付し、
前記全面交絡工程及び前記部分交絡工程をともに水流交絡処理により実施し、前記全面交絡工程における水流交絡処理の水圧が、前記部分交絡工程における水流交絡処理の水圧よりも小さい、不織布の製造方法。
【請求項10】
前記全面交絡工程および前記部分交絡工程をともに、前記繊維ウェブの一方の面にのみ水流を噴射する水流交絡処理により実施し、前記部分交絡工程において水流を噴射する面が、前記全面交絡工程において水流を噴射する面とは反対の面である、請求項
9に記載の不織布の製造方法。
【請求項11】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記交絡工程が、前記繊維ウェブ全体にわたって繊維同士を交絡させる全面交絡工程を含み、前記繊維ウェブを前記全面交絡工程の後に前記部分交絡工程に付し、
前記全面交絡工程及び前記部分交絡工程をともに水流交絡処理により実施し、前記全面交絡工程における水流交絡処理の水圧が、前記部分交絡工程における水流交絡処理の水圧よりも小さく、
前記部分交絡工程において、前記高交絡部に開孔模様を形成する、不織布の製造方法。
【請求項12】
前記接着工程が前記繊維ウェブまたは前記複合ウェブの一方の面に熱風を当てる熱風加工処理を含み、
前記交絡工程が水流交絡処理を含み、
前記水流交絡処理は、前記繊維ウェブ、または前記複合ウェブの熱風を当てた面に先に水流を噴射すること、あるいは前記繊維ウェブ、または前記複合ウェブの熱風を当てた面に、熱風を当てていない面より先に水流を当てることを含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記接着工程と前記交絡工程との間、前記接着工程と前記基材シート積層工程との間、または前記接着工程と前記ウェブ積層工程との間に、前記繊維ウェブおよび/または前記複合ウェブを冷却する、ならびに/あるいは前記ウェブ積層工程と前記交絡工程との間に前記積層ウェブを冷却する冷却工程を含む、請求項1~
12のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項14】
前記接着工程後、前記交絡工程の前のいずれの時点においても、前記繊維ウェブ、前記複合ウェブまたは前記積層ウェブをロールに巻き取らない、請求項1~
13のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項15】
前記交絡工程の後に、前記接着性繊維で繊維同士を接着させる別の接着工程をさらに含む、請求項1~
14のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項16】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所及び/又は前記接着性繊維と前記セルロース系繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維同士の交絡箇所及び/又は前記セルロース系繊維と前記接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下であり、
以下の手順により求められる接着交点指数Aが1個/mm
2~60個/mm
2である、不織布。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
(接着交点指数A)
不織布の表面および裏面を走査電子顕微鏡(SEM、加速電圧:10.0kV、倍率:100倍)で観察する。撮影されたSEM画像について、面積当たりの繊維の接着交点の数を数える。不織布の表面および裏面についてそれぞれ3枚ずつ、合計で6枚のSEM画像について繊維の接着交点の数を数え、その平均値を繊維の接着交点数I(単位:個/mm
2)とする。
不織布を構成する非接着性繊維と接着性繊維の繊度(dtex)と不織布中の混率(質量%)から、接着交点割合P(0≦P≦1)を下記の式に従って求める。
【数1】
式中、
α
iは、i番目の非接着性繊維の混率(質量%)を表し、
x
iは、i番目の非接着性繊維の繊度(dtex)を表し、
β
jは、j番目の接着性繊維の混率(質量%)を表し、
y
jは、j番目の接着性繊維の繊度(dtex)を表す。
接着交点数Iと接着交点割合Pとから、接着交点指数A(単位:個/mm
2)を下記の式に従って求める。
接着交点指数A=I/(P
2)
【請求項17】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所及び/又は前記接着性繊維と前記セルロース系繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維同士の交絡箇所及び/又は前記セルロース系繊維と前記接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
以下の手順により求められる接着交点指数Aが1個/mm
2~60個/mm
2であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
(接着交点指数A)
不織布の表面および裏面を走査電子顕微鏡(SEM、加速電圧:10.0kV、倍率:100倍)で観察する。撮影されたSEM画像について、面積当たりの繊維の接着交点の数を数える。不織布の表面および裏面についてそれぞれ3枚ずつ、合計で6枚のSEM画像について繊維の接着交点の数を数え、その平均値を繊維の接着交点数I(単位:個/mm
2)とする。
不織布を構成する非接着性繊維と接着性繊維の繊度(dtex)と不織布中の混率(質量%)から、接着交点割合P(0≦P≦1)を下記の式に従って求める。
【数2】
式中、
α
iは、i番目の非接着性繊維の混率(質量%)を表し、
x
iは、i番目の非接着性繊維の繊度(dtex)を表し、
β
jは、j番目の接着性繊維の混率(質量%)を表し、
y
jは、j番目の接着性繊維の繊度(dtex)を表す。
接着交点数Iと接着交点割合Pとから、接着交点指数A(単位:個/mm
2)を下記の式に従って求める。
接着交点指数A=I/(P
2)
【請求項18】
前記基材シートが、長繊維不織布、湿式不織布または網状シートである、請求項
17に記載の不織布。
【請求項19】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所及び/又は前記接着性繊維と前記セルロース系繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維同士の交絡箇所及び/又は前記セルロース系繊維と前記接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で
CD方向において交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記基材シートが、長繊維不織布、湿式不織布または網状シートであり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
【請求項20】
前記基材シートが厚さ方向の断面において前記セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層により挟持されている、請求項
17~
19のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項21】
前記不織布が前記接着性繊維を55質量%以上80質量%以下含む、請求項
16~
20のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項22】
前記接着性繊維が芯鞘型複合繊維を含む、請求
16~
21のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項23】
前記低交絡部の幅が5mmより大きく50mm以下である、請求項
16~
22のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項24】
請求項
16~
23のいずれか1項に記載の不織布を含む、ワイパー。
【請求項25】
接着性繊維を含む不織布の製造方法であって、
前記接着性繊維を含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記接着工程が前記繊維ウェブに熱風を当てる熱風加工処理を含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含む、
不織布の製造方法。
【請求項26】
接着性繊維を含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布の製造方法であって、
前記接着性繊維を含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、 前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記接着工程の前または後であって、かつ、前記交絡工程の前に、前記繊維ウェブに前記基材シートを積層して、複合ウェブを得る基材シート積層工程を含み、
前記接着工程が前記繊維ウェブまたは前記複合ウェブに熱風を当てる熱風加工処理を含む、
不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不織布及びその製造方法、ならびに当該不織布を含むワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布の用途の一つとして、人の身体または物から汚れを拭き取るためのワイパーがある。ワイパーの構成は種々多様である。例えば、特許文献1には、不織布上に、不織布からなる突出部が畝状に固定された複合シートであって、畝に直交する複合シート断面でみて、該突出部の少なくとも一部はカギ状の断面構造を有しており、該カギ状の断面構造を有する突出部は畝に沿って3~20cm連続している、掃除用に適した複合シートが提案されている。また、特許文献2には、拭き取り材として用いる不織布として、ニードルパンチにより構成繊維を交絡させ、この状態で残存する部分を第1交絡部とし、さらに不織布の所定個所の構成繊維を交絡させて第2交絡部とし、第1交絡部と第2交絡部とは相互に離間して複数列存在しており、第1交絡部は第2交絡部に比較して相対的に繊維密度が低く、断面から観察したとき、第1交絡部は第2交絡部より少なくとも片面の表面に突出している不織布が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-212879号公報
【文献】特開2011-117095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばワイパーとして用いる場合には、汚れを取るために人の身体もしくは物を擦ったとき、又は冶具に取り付けるときに加わる力により、毛羽立ちや破れが生じにくく、かつ汚れの捕集性に優れた不織布を製造する方法及び該方法で製造される不織布を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、第一の要旨において、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含む、不織布の製造方法を提供する。
【0006】
本開示は、第二の要旨において、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所及び/又は前記接着性繊維と前記セルロース系繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維同士の交絡箇所及び/又は前記セルロース系繊維と前記接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布を提供する。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
【0007】
本開示は、第三の要旨において、上記第二の要旨に係る不織布を含む、ワイパーを提供する。
【0008】
本開示は、第四の要旨において、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記接着工程の前または後であって、かつ、前記交絡工程の前に、前記繊維ウェブに前記基材シートを積層して、複合ウェブを得る基材シート積層工程を含む、
不織布の製造方法を提供する。
【0009】
本開示は、第五の要旨において、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所及び/又は前記接着性繊維と前記セルロース系繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維同士の交絡箇所及び/又は前記セルロース系繊維と前記接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布を提供する。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
【0010】
本開示は、第六の要旨において、上記第五の要旨に係る不織布を含む、ワイパーを提供する。
【0011】
本開示は、第七の要旨において、接着性繊維を含む不織布の製造方法であって、
前記接着性繊維を含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含む、
不織布の製造方法を提供する。
【0012】
本開示は、第八の要旨において、接着性繊維を含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布の製造方法であって、
前記接着性繊維を含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記接着工程の前または後であって、かつ、前記交絡工程の前に、前記繊維ウェブに前記基材シートを積層して、複合ウェブを得る基材シート積層工程を含む、
不織布の製造方法を提供する。
【0013】
本開示は、第九の要旨において、接着性繊維を含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所を含み、
前記接着性繊維同士の交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布を提供する。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
【0014】
本開示は第十の要旨において、接着性繊維を含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所を含み、
前記接着性繊維同士の交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布を提供する。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
【0015】
本開示は第十一の要旨において、上記第九の要旨または上記第十の要旨に係る不織布を含む、ワイパーを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の製造方法では、接着繊維により繊維同士を接着させてから、繊維ウェブを、部分交絡工程を含む交絡工程に付する。そのため、得られる不織布は、特に低交絡部において比較的嵩高であって、かつ繊維の自由度が比較的高いものとなり、高交絡部においては繊維同士が比較的強く交絡されるから、比較的強い強力を示す。さらに、繊維同士を接着させることにより、得られる不織布においては、毛羽立ちが生じにくい。本開示の製造方法により得られる不織布を含むワイパーは、比較的嵩高であって、かつ繊維の自由度が比較的高い低交絡部において、優れた汚れの捕集性を示し、繊維同士が比較的強く交絡された高交絡部において、ワイパー全体の強力が確保され、さらに、繊維同士が接着されているために、毛羽立ちが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ノズル1)を用いた水流交絡処理を部分交絡工程として実施して製造される不織布の一例を示す斜視図である。
【
図2】ノズル2)を用いた水流交絡処理を部分交絡工程として実施して製造される不織布の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本開示の製造方法に至った経緯)
本発明者らは、不織布をワイパーとして用いる場合には、不織布中の繊維の自由度を高めるとともに、不織布を嵩高とすることで、汚れの捕集性が向上するという知見を有していた。嵩高な不織布を得る一般的な方法としては、接着性繊維により繊維同士を圧力のかからない状態で接着処理(例えば熱風加工処理)に付する方法がある。しかしながら、当該方法で得た不織布において接着性繊維の割合が高いと、繊維が接着固定されるために繊維の自由度が小さくなり、汚れの拭き取り性および捕集性が十分とならない。不織布における繊維の自由度は、非接着性の繊維を混合することで高めることはできる。しかしながら、非接着性の繊維は不織布の強力を低下させ、また、物や身体を擦ったときに不織布表面に毛羽立ちを生じさせやすいため、非接着性の繊維を混合すると、実用的なワイパーを得にくい傾向となる。
【0019】
不織布を製造する方法としては、特許文献2に記載のように繊維同士を交絡させる方法もまた知られている。繊維同士が交絡している不織布においては、繊維が接着されていないため、繊維の自由度は比較的高く、交絡度合いを調節することによって、柔軟な不織布を得ることもできる。しかしながら、不織布の強力を向上させるために、繊維同士の交絡度合いを高くすると、不織布の嵩が小さくなり、汚れの捕集性が低下する。
【0020】
また、繊維同士が交絡されているだけの不織布においては毛羽立ちが生じやすく、これを抑制する方法としては、接着性繊維を繊維ウェブに混合しておき、繊維交絡の後、接着性繊維で繊維同士を接着させることも考えられる。しかしながら、その場合には、繊維の自由度が低下することは避けられず、汚れの拭き取り性又は捕集性がさらに低下する。
【0021】
そこで本発明者らは、嵩高性と、繊維の高い自由度とを両立させるための不織布の製造方法を検討した。そして、接着性繊維を含む繊維ウェブ、具体的には、接着性繊維と、非接着性のセルロース系繊維とを混合した繊維ウェブを接着工程に付して、繊維同士をある程度固定させておき、それから繊維ウェブを部分的な交絡工程に付す方法により不織布を製造した。その結果、先に交絡工程を実施してから、接着工程を実施して製造した不織布よりも、嵩高で、かつ繊維の自由度が高く、また、毛羽立ちも生じにくい不織布を得ることができた。
以下、本開示の不織布の製造方法を説明する。
【0022】
[実施形態1]
本開示の第1の実施形態の不織布の製造方法は、
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記帯状部または前記筋状部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含む、
不織布の製造方法である。
【0023】
この製造方法においては、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維ウェブが用いられる。そこで、以下においては、セルロース系繊維および接着性繊維についてまず説明する。
【0024】
(セルロース系繊維)
「セルロース系繊維」とは、繊維素繊維とも呼ばれ、一般的に、セルロースを原料とする繊維をいう。
セルロース系繊維には、例えば、
(1)綿(コットン)、麻、亜麻(リネン)、ラミー、ジュート、バナナ、竹、ケナフ、月桃、ヘンプ及びカポック等の植物に由来する天然繊維;
(2)ビスコース法で得られるレーヨン及びポリノジックレーヨン、銅アンモニア法で得られるキュプラ、及び溶剤紡糸法で得られるテンセル(登録商標)及びリヨセル(登録商標)等の再生繊維;
(3)溶融紡糸法で得られるセルロース繊維;及び
(4)アセテート繊維等の半合成繊維
が含まれる。セルロース系繊維の種類は特に限定されない。
【0025】
セルロース系繊維の繊度は、例えば0.6dtex~5.6dtexであってよく、特に1.0dtex~4.4dtexであってよく、より特には1.4dtex~3.3dtexであってよい。
セルロース系繊維の繊度が上述の範囲内にある場合、不織布の強力や毛羽立ちの抑制を適度なものとすることができ、また、不織布の嵩高性も良好となる。セルロース系繊維の繊度は繊維の交絡性に影響を及ぼし、セルロース系繊維の繊度が上述の範囲内にある場合、交絡の度合いが適度なものとなる。交絡の度合いが高すぎる場合、不織布の嵩高性が低下することがあり、また、交絡の度合いが低すぎる場合、強力の低下や毛羽立ちの発生が顕著となることがある。
【0026】
セルロース系繊維の繊維径は、例えば5μm~25μmであってよく、特に8μm~20μmであってよく、より特には10μm~17μmであってよい。
セルロース系繊維の繊維径が上述の範囲内にある場合、不織布の強力や毛羽立ちの抑制を適度なものとすることができ、また、不織布の嵩高性も良好となる。セルロース系繊維の繊維径は繊維の交絡性にも影響を及ぼし、セルロース系繊維の繊維径が上述の範囲内にある場合、交絡の度合いが適度なものとなる。交絡の度合いが高すぎる場合、不織布の嵩高性が低下することがあり、また、交絡の度合いが低すぎる場合、強力の低下や毛羽立ちの発生が顕著となることがある。
【0027】
セルロース系繊維の、繊維長は、例えば25mm~100mmであってよく、特に30mm~70mmであってよく、より特には35mm~60mmであってよい。
セルロース系繊維の繊維長が上述の範囲内にある場合、繊維の交絡性が好適となりやすい。特に本実施形態の製造方法では、繊維長が上述の範囲内にあることで、接着工程により、一つの繊維に、より適度な数の接着箇所を形成することができる。
【0028】
セルロース系繊維の断面(横断面、又は繊維の長さ方向と垂直方向の断面)は、円形であっても非円形であってもよい。非円形の形状として、例えば、楕円形、Y形、X形、井形、多葉形、多角形、星形、菊花形等が挙げられる。繊維の断面が円形である場合、接着性繊維との接着面積が比較的小さくなるので、非円形の形状のものを用いる場合よりも不織布の繊維の自由度を高くすることができる。繊維の断面が非円形である場合、接着性繊維との接着面積が比較的大きくなるので、不織布の毛羽立ちをより抑制でき、不織布の強力をより高くし得る。
【0029】
セルロース系繊維として、再生繊維または半合成繊維などの化学繊維を用いてよい。化学繊維の繊度及び/又は繊維径、ならびに繊維長のばらつきは、天然繊維のそれらよりも小さいので、不織布の交絡度合いをより調整しやすい。また、レーヨン及び溶剤紡糸セルロース繊維等の再生繊維は、繊維自体が有する湿潤時の柔らかさと強力のバランスが良好であり、不織布として好適な柔軟性及び強力を得ることがより容易であり好ましい。また溶剤紡糸セルロース繊維は単繊維強力が比較的高いため、不織布の毛羽立ちの抑制や不織布の強力の高さがより良好になる点で好ましい。
セルロース系繊維は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0030】
セルロース系繊維は表面処理が施されて、その表面の親水性又は疎水性の程度が変えられたものであってよい。表面処理は、一般的には、油剤(界面活性剤)を繊維表面に付着させる処理であり。セルロース系繊維の表面の親水性又は疎水性の程度は、例えば、繊維の沈降速度等の値を用いて評価することができる。表面処理は、表面の親水性をより高くするものであってよく(親水化処理)、あるいは表面の親水性を低下させるものであってよい(疎水化処理)。
【0031】
本実施形態で用いるセルロース系繊維の沈降速度(又は沈降時間(秒))の値は、例えば、30秒以下であってよく、特に20秒以下であってよく、より特には10秒以下であってよい。セルロース系繊維の沈降速度(又は沈降時間)が小さいほど、セルロース系繊維の交絡性がより高くなる傾向にある。
【0032】
繊維の沈降速度は、下記の方法で測定することができる。
沈降速度を測定する繊維を17g採取する。採取した繊維を(パラレルカード機を用いて)開繊し、カードウェブとする。カードウェブを5g秤量し、銅線(太さ0.55mm)製の籠(直径5cm、高さ8cmの円筒形、籠本体の質量3g)に充填する。
次に、恒温水槽を用意し、恒温水槽内に水道水を入れ、25℃になるよう設定する。水温が25℃になったら、恒温水槽の撹拌を止めて沈降速度の測定を開始する。上記の手順で繊維を充填した籠を水面上1cmの位置から静かに落下させ、水面に籠が落ちると同時にストップウォッチをスタートさせる。徐々に繊維が含水し、高さ8cmの籠が完全に水面下に沈むと同時にストップウォッチを停止させる。籠が水面に落下したときから籠が水面下に沈むまでの時間を沈降速度とし、2回測定した平均値をその繊維の沈降速度とする。
【0033】
上記沈降速度の測定において、5分以上籠が水面下に沈まない場合、繊維が撥水性であるとする。セルロース系繊維が撥水性である場合、不織布を液体と接触させる用途において好ましい場合がある。例えば、吸収性物品用のトップシート及びセカンドシートにおいて、液体をシート中に保持しすぎずに吸収体に液体を移動させやすいため、セルロース系繊維が撥水性であることが好ましい場合がある。不織布が積層構造を有する場合、撥水性であるセルロース系繊維を含む層と、撥水性ではないセルロース系繊維を含む層を有する積層不織布を用いると、吸収性物品用シートや化粧料等の液体を含浸させた液体含浸皮膚被覆材の用途において、不織布は液体を好適に移動または保持し得る。
【0034】
(接着性繊維)
次に接着性繊維を説明する。
「接着性繊維」とは、接着処理(例えば、熱接着処理、電子線照射、および超音波溶着(超音波ウェルダー)等)により接着性を示し、繊維同士を接着させて、接着箇所を形成することができる繊維をいい、本開示が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されない。
【0035】
接着性繊維には、例えば、熱可塑性樹脂からなる合成繊維が含まれる。
熱可塑性樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン-1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1-エチレン共重合体を含む)、エチレン-アクリル酸共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66等のポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等のエンジニアリングプラスチック、並びにそれらのエラストマー等を例示できる。合成繊維は、これらから任意に選択した一種または二種以上の熱可塑性樹脂を用いて製造してよい。
【0036】
合成繊維は、上記から選択される一または複数の熱可塑性樹脂から成る単一繊維であってよく、あるいは二以上の成分(「セクション」ともいえる)からなる複合繊維であってよい。複合繊維において、各成分は、一つの熱可塑性樹脂からなっていてよく、あるいは二以上の熱可塑性樹脂が混合されたものであってよい。複合繊維は、例えば、芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維、またはサイドバイサイド型複合繊維であってよい。芯鞘型複合繊維は、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致しない偏心芯鞘型複合繊維であってよく、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致する同心芯鞘型複合繊維であってよい。
【0037】
単一繊維であるか複合繊維であるかにかかわらず、合成繊維は異型断面を有していてよい。芯鞘型複合繊維および海島型複合繊維の場合、その繊維断面において、芯成分および/または島成分は異型断面を有していてよい。
合成繊維が異型断面を有する場合、その断面は、楕円形、多角形、星形、または複数の凸部が基部で接合した形状(例えば、クローバー形状)であってよい。
本実施形態においては、合成繊維として、二以上の合成繊維を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
合成繊維が、複合繊維である場合、融点のより低い熱可塑性樹脂が繊維表面の一部を構成するように、二以上の成分を配置してよい。低融点の熱可塑性樹脂(低融点成分)は不織布を生産する工程で熱が加わったときに溶融または軟化して、接着成分となる。低融点成分は、繊維同士の接着または他の部材への接着に寄与し、接着箇所を形成し得る。
合成繊維が、複合繊維である場合、低融点成分が、繊維断面において、繊維の周面の長さに対して40%以上の長さで露出していることが好ましく、50%以上の長さで露出していることがより好ましく、60%以上の長さで露出していることがさらに好ましく、80%以上の長さで露出していることがさらにより好ましく、繊維の周面全体にわたって露出していることが特に好ましい。
【0039】
本実施形態においては、接着工程を実施した後で交絡工程を実施して、不織布を製造する。接着性繊維の低融点成分が繊維断面において繊維周面に露出している長さ(以下、「露出長」という)の割合は、接着可能な領域の面積に影響を及ぼすとともに、交絡工程において繊維同士の接着が解消される程度にも影響を及ぼす。接着性繊維の低融点成分の露出が上記範囲内であると、接着可能な領域の面積が適度なものとなり、接着箇所の数を適度なものとし得る。さらに、その後の交絡において、繊維同士の接着が解消される程度を適切なものとして、最終的に得られる不織布において、毛羽立ちをより抑制し、その強力を十分なものとし得る。露出長の割合が小さすぎる場合、接着箇所の数が少なくなって、不織布の毛羽立ちが生じやすくなり、あるいは不織布の強力が低下することがある。
【0040】
接着性繊維の接着成分は、オレフィンと、不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体であってよい。そのような共重合体はセルロース系繊維に対して良好な接着性を示す。不飽和カルボン酸として、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、その誘導体として、不飽和カルボン酸の無水物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、または同様なアクリル酸エステル等、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ブテンカルボン酸エステル類、アリルグリシジルエーテル、3,4-エポキシブテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等が挙げられる。特に、オレフィンがエチレンであり、不飽和カルボン酸又はその誘導体がアクリル酸又はその誘導体であるエチレン-アクリル酸共重合体であることが好ましい。
【0041】
複合繊維を構成する熱可塑性樹脂の組み合わせは、例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、およびプロピレン共重合体/ポリエチレンテレフタレート等のポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂との組み合わせ(ポリオレフィン系樹脂/ポリエステル系樹脂)、ならびにポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレン共重合体/ポリプロピレン、エチレン-アクリル酸共重合体/ポリプロピレン等の二種類のポリオレフィン系樹脂の組み合わせ、および融点の異なる二種類のポリエステル系樹脂の組み合わせを含む。
【0042】
接着性繊維が、融点のより低い熱可塑性樹脂が鞘部を構成する芯鞘型複合繊維である場合、芯/鞘の組み合わせは、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/プロピレン共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル(例えば、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン/エチレン-アクリル酸共重合体、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネートを含む。これらの組み合わせは、芯鞘型複合繊維以外の複合繊維にも適用されえる。鞘がポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、もしくは直鎖状低密度ポリエチレン)または共重合ポリエステルである芯鞘型複合繊維は、前記鞘を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度で熱処理することで鞘が溶融又は軟化して、繊維同士を接着して、接着箇所を形成する性質を有する。
【0043】
なお、単一繊維または複合繊維の構成成分として例示した熱可塑性樹脂は、具体的に示された熱可塑性樹脂を50質量%以上含む限りにおいて他の成分を含んでよい。例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせにおいて、「ポリエチレン」はポリエチレンを50質量%以上含んでいれば、他の熱可塑性樹脂および添加剤等を含んでいてよい。このことは以下の例示においてもあてはまる。
【0044】
接着性繊維が芯鞘型複合繊維である場合、芯と鞘の複合比(体積比、芯/鞘)は、例えば80/20~20/80であってよく、特に60/40~40/60であってよい。芯/鞘の複合比がこの範囲内にあると、繊維同士の接着が適度なものとなって、適度な強力および毛羽立ち抑制を得られる不織布において実現できる。また、芯/鞘の複合比がこの範囲内にあると、交絡工程における接着箇所の剥離が過度に生じない。また、芯/鞘の複合比がこの範囲内にあると、芯成分によって繊維形状が維持されやすく、不織布の強力を好適なものとし得る。
【0045】
接着性繊維として、二以上の繊維が含まれてよい。その場合、これらの繊維の接着成分の融点は相互に異なってよい。例えば、二種類の接着性繊維を含む場合、これらの繊維の接着成分の融点の差は10℃以上40℃以下であってよく、特に15℃以上30℃以下であってよい。
【0046】
接着性繊維の繊度は、例えば、1.0dtex~7.8dtexであってよく、特に1.4dtex~6.7dtexであってよく、より特には2.2dtex~4.5dtexであってよい。
接着性繊維の繊度が上述の範囲内にあると、得られる不織布において、適度な強力、毛羽立ちの抑制及び嵩高性を実現しやすい。
【0047】
接着性繊維の繊維径は、例えば、10μm~33μmであってよく、特に12μm~30μmであってよく、より特には15μm~25μmであってよい。
接着性繊維の繊維径が上述の範囲内にあると、得られる不織布において、適度な強力、毛羽立ちの抑制及び嵩高性を実現しやすい。
【0048】
接着性繊維の繊維長は、例えば、25mm~100mmであってよく、特に30mm~70mmであってよく、より特には35mm~60mmであってよい。
接着性繊維の繊維長が上述の範囲内にある場合、繊維の交絡性が好適となりやすい。特に本実施形態の製造方法では、繊維長が上述の範囲内にあることで、接着工程により、一つの繊維に、より適度な数の接着箇所を形成することができる。
【0049】
接着性繊維は、最終的に得られる不織布において、立体捲縮を有してよい。接着性繊維が立体捲縮を有する場合、得られる不織布がより嵩高なものとなりやすい。また、接着性繊維が立体捲縮を有すると、後述する不織布の接着交点指数A、および接着交点角度(不織布の厚さ方向において3等分したときの上部および下部のいずれか一方または両方における繊維接着交点の角度)等が特定の範囲内にある不織布をより容易に得ることができる。本明細書で、「立体捲縮」という用語は、捲縮の山(または山頂部)が鋭角である機械捲縮と区別されるために用いられる。立体捲縮は、例えば、山部が湾曲した捲縮(波形状捲縮)、山部が螺旋状に湾曲した捲縮(螺旋状捲縮)、波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮、機械捲縮の鋭角の捲縮と波形状捲縮および螺旋状捲縮の少なくとも一つとが混在した捲縮をいう。
あるいは、接着性繊維は機械捲縮のみを有してもよい。
【0050】
接着性繊維が複合繊維である場合、顕在捲縮性複合繊維でもあってもよい。「顕在捲縮性複合繊維」とは、繊維の段階で立体捲縮を発現している繊維を指し、熱処理により立体捲縮を発現する潜在捲縮性複合繊維とは異なる。
【0051】
立体捲縮を有する接着性繊維は、偏心芯鞘型複合繊維であってよい。この場合、偏心率は例えば5%~50%であってよく、特に7%~30%であってよい。ここでいう「偏心率」は、次式で定義される。
偏心率(%)=(単繊維の中心と芯成分の中心との間の距離)×100/(単繊維半径)
【0052】
本実施形態において、接着性繊維として、いわゆる分割型複合繊維に由来する繊維が含まれていなくてもよい。分割型複合繊維は、繊維断面において構成成分のうち少なくとも1成分が2個以上に区分されてなり、構成成分の少なくとも一部が繊維表面に露出し、その露出部分が繊維の長さ方向に連続的に形成されている繊維断面構造を有する。分割型複合繊維は、例えば、楔形のセクションが菊花状に並べられたものであり、あるいは繊維断面において各セクションが層状に並べられたものである。分割型複合繊維は、交絡処理の際に加わる外力によって、一または複数の成分(セクション)が分割して、極細繊維を与える。そのような分割型複合繊維が接着性繊維として含まれない場合、繊維同士の接着性が良好であり、不織布において適度な強力と毛羽立ちの抑制を実現しやすい。また、分割型複合繊維が接着性繊維として含まれない場合、低交絡部を畝部とする際に、畝部の嵩を高くしやすい。
【0053】
(繊維ウェブの準備)
次に、上述のセルロース系繊維と接着性繊維を含む繊維ウェブの準備について説明する。
繊維ウェブは、セルロース系繊維と接着性繊維を混合することにより作製する。セルロース系繊維と接着性繊維との混率(セルロース系繊維:接着性繊維)(質量比)は、例えば、10:90~90:10であってよく、特に20:80~80~20であってよく、より特には20:80~60:40であってよく、さらにより特には20:80~55:45であってよく、さらにより特には20:80~45:55であってよく、さらにより特には25:75~35:65であってよい。セルロース系繊維と接着性繊維との混率が上記の範囲内にある場合、得られる不織布を嵩高なものとしつつ、不織布において適度な強力と毛羽立ちの抑制を実現しやすい。
【0054】
セルロース系繊維は、非接着性繊維として用いられ、不織布における繊維の自由度をある程度高いものとする。また、セルロース系繊維は、交絡工程を特に水流交絡処理として実施する場合に高い交絡性を示し、低い水圧であっても良好に交絡して、不織布の強力を確保する役割をする。したがって、セルロース系繊維の割合が小さすぎると、不織布の強力が低下することがあり、あるいはワイパーとして用いる場合には良好な汚れの捕集性が示されないことがある。
【0055】
接着性繊維は繊維同士を接着させることで、得られる不織布の嵩高性を確保する役割をし、また、毛羽立ちを抑制する。後述するとおり、本実施形態においては、繊維同士の交絡が極めて弱い繊維ウェブがまず接着工程に付されるため、接着工程後の繊維ウェブは比較的嵩の高い状態にて、繊維同士が接着されたものとなる。そして、これを交絡処理に付すと、繊維ウェブをそのまま交絡処理に付す場合と比較して、接着繊維による接着箇所が交絡処理による嵩減少に対して抵抗し、嵩高な不織布が得られる。また、接着性繊維は、繊維同士を固定することで、毛羽立ち抑制の役割をする。したがって、接着性繊維の割合が小さすぎると、良好な嵩高性を不織布に付与できないことがある。また、接着性繊維の割合が小さすぎると、交絡工程前の繊維ウェブの強力が小さくなるとともに、伸長しやすくなり、繊維ウェブの加工性が不十分なものとなることがある。さらに、接着性繊維の割合が小さすぎると、毛羽立ちが生じやすくなることがある。
【0056】
繊維ウェブには、セルロース系繊維および接着性繊維以外の繊維(以下、「他の繊維」)が含まれていてよい。他の繊維は、例えば、セルロース系繊維でない天然繊維(例えば羊毛、シルク等)、接着性繊維ではない合成繊維(例えば、接着性繊維の接着成分を溶融させるときに溶融または軟化せず、接着性を示さない合成繊維等)であり、特に限定されない。
【0057】
他の繊維は、繊維ウェブを構成する繊維全体を100質量%としたときに、35質量%以下の割合で含まれてよく、特に25質量%以下、より特には10質量%以下の割合で含まれてよい。
本実施形態において、繊維ウェブは他の繊維を含まず、セルロース系繊維と接着性繊維とのみからなっていてよい。
【0058】
あるいは、繊維ウェブは、接着性繊維とセルロース系繊維でない他の繊維とから主に構成されるもの、または接着性繊維のみで構成されるものであってよい。そのような繊維ウェブにおいて、他の繊維と接着性繊維との混率(他の繊維:接着性繊維)(質量比)は、例えば、0:100~90:10であってよく、特に0:100~80:20であってよく、より特には0:100~60:40であってよい。他の繊維と接着性繊維との混率が上記の範囲内にある場合、得られる不織布を嵩高なものとしつつ、不織布において適度な強力と毛羽立ちの抑制を実現しやすい。この繊維ウェブには、他の繊維と接着性繊維以外にセルロース系繊維が含まれてよく、セルロース系繊維は繊維ウェブを構成する繊維全体を100質量%としたときに、10質量%以下の割合で含まれてよい。
【0059】
繊維ウェブは、公知の方法で作製することができる。繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブのようないずれの形態であってもよい。繊維ウェブの形態は、パラレルウェブであると不織布の表面がより滑らかとなるため好ましい。
【0060】
繊維ウェブは、例えば10g/m2~150g/m2の目付を有してよく、特に15g/m2~120g/m2の目付を有してよく、より特には30g/m2~100g/m2の目付を有してよく、さらにより特には40g/m2~80g/m2の目付を有してよい。繊維ウェブの目付は得られる不織布の目付とほぼ同じとなるので、繊維ウェブの目付が上記範囲内にあると、嵩高性および毛羽立ち抑制に優れ、柔軟な不織布を得ることができる。目付が小さすぎると、嵩高な不織布を得にくいことがあり、目付が大きすぎると、不織布の強力が低下することがあり、あるいは毛羽立ちが生じやすくなることがある。
【0061】
繊維ウェブの準備は、例えば、繊維ウェブAと繊維ウェブBを別に準備することを含んでよい。その場合、後述するように、例えば、繊維ウェブAを接着工程に付した後、これに繊維ウェブBを積層し、積層した状態の二枚の繊維ウェブを交絡工程に付してよい。このような方法で不織布を製造する場合、繊維ウェブAと繊維ウェブBはまったく同じものであってよい。あるいは繊維ウェブAと繊維ウェブBは、セルロース系繊維および/もしくは接着性繊維の種類、セルロース系繊維と接着性繊維の割合、形態ならびに目付のうち、少なくとも一つが互いに異なるものであってよい。あるいはまた、繊維ウェブBは接着性繊維を含まず、セルロース系繊維のみを含んでもよい。繊維ウェブAおよびBは、これらを合わせた全体がセルロース系繊維および接着性繊維を含む限りにおいて、各々の繊維ウェブにおけるセルロース系繊維および接着性繊維の割合は特に限定されない。例えば繊維ウェブAとは別の繊維ウェブである繊維ウェブBは、接着性繊維を20質量%以上80質量%以下含んでもよい。
【0062】
例えば、繊維ウェブAを、レーヨン繊維と接着性繊維を70:30(質量比)の割合で混合してなるパラレルウェブとし、繊維ウェブBを溶剤紡糸セルロース繊維と接着性繊維を80:20(質量比)の割合で混合してなるランダムウェブとしてよい。このとき、繊維ウェブAおよびBは同じ目付を有していてよく、互いに異なる目付を有してよい。二以上の繊維ウェブを積層する場合、得られる不織布の目付が所望のものとなるように、それぞれの繊維ウェブの目付を決定する。
【0063】
繊維ウェブAおよび/または繊維ウェブBは、接着性繊維のみ、または接着性繊維とセルロース系繊維以外の他の繊維とから主に構成されるものであってよい。接着性繊維と他の繊維とから主に構成される繊維ウェブAおよびBの具体的な構成の説明は、上記において「セルロース系繊維」を「他の繊維」に置き換えた説明となる。
また、繊維ウェブAおよびBの一方を、接着性繊維のみ、または接着性繊維とセルロース系繊維とから主に構成されるウェブとし、他方を接着性繊維とセルロース系繊維とを含む繊維ウェブとしてもよい。
【0064】
繊維ウェブAと繊維ウェブBを別に準備する場合は、1つの繊維ウェブが、例えば5g/m2~75g/m2の目付を有してよく、特に10g/m2~60g/m2の目付を有してよく、より特には15g/m2~50g/m2の目付を有してよく、さらにより特には20g/m2~40g/m2の目付を有してよい。
繊維ウェブの準備は、三以上のウェブ製造ラインにて、三以上の繊維ウェブを別に準備することを含んでよい。
【0065】
また、繊維ウェブとは別に他の繊維及び/又はセルロース系繊維を含む他の不織布を準備して積層してもよい。あるいは、繊維ウェブとは別に網状シートを準備して積層してよい。繊維ウェブとは別に準備される他の不織布または網状シート(以下、これらをまとめて「基材シート」と呼ぶ)は、それ自体独立したシートとして存在し、あらかじめ繊維同士が交絡または接着等によって一体化しているものであってよい。基材シートは、繊維ウェブと繊維の交絡により一体化可能であり、後述のように二つの繊維ウェブで基材シートを挟む場合には、基材シートを介して二つの繊維ウェブ間で繊維同士の交絡を生じさせるようなものである。したがって、基材シートは、繊維の交絡を可能にする空隙ないしは開口を有するものであることが好ましい。
【0066】
基材シートとして、長繊維不織布(例えば、スパンボンド不織布)、メルトブロー不織布、エアレイ不織布、及び湿式不織布等の不織布、および網状シートを例示できる。
長繊維不織布として、縦方向に糸を引きそろえたシートと横方向に糸を引きそろえたシートを複合させたシート、及びフィルムを割繊および延伸してなるネット状ウェブを二以上積層して一体化させたシート等も使用できる。このようなシートとしては、例えば、JX ANCI株式会社製のミライフ(登録商標)、JX ANCI株式会社製のワリフ(登録商標)等を使用してよい。
基材シートが長繊維不織布であると、上記例示した長繊維不織布の密度が比較的小さい、つまり不織布の空隙が比較的大きいため、繊維同士の交絡性と不織布の機械的特性が両立する傾向にある。
【0067】
不織布は、二種以上の不織布が積層されてなるものであってよい。例えば、不織布は、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とが積層され一体化された積層不織布であってよい。スパンボンド不織布は、例えば、繊度0.5dtex以上7.0dtex以下、特に1.0dtex以上4.0dtex以下の合成繊維(合成繊維を構成し得る熱可塑性樹脂の種類は先に説明したとおりである)からなるものであってよい。メルトブロー不織布は、例えば、繊度0.005dtex以上1.0dtex以下、特に0.007dtex以上0.7dtex以下の合成繊維からなるものであってよい。
【0068】
網状シートには、スクリム、熱可塑性樹脂の二軸延伸により作成されたネット等が含まれる。網状シートとしては、例えば、米国CONWED GLOBAL NETTING SOLUTIONS社製のコンウェッドネット(登録商標)等を使用してよい。網状シートは空隙の大きさと機械的特性の高さのバランスが特によく、繊維ウェブとの間または基材シートを介した繊維ウェブ間で繊維同士を、他の基材シートを用いる場合に比して、より穏やかな条件での交絡工程の実施を可能にしやすい。より穏やかな条件とは、例えば、交絡工程が液体流を用いた高圧液体流処理である場合には、液体流の圧力をより低くすることである。
【0069】
湿式不織布には、パルプ繊維を含み、繊維同士がバインダーおよび/または水素結合により結合したティッシュ(ティッシュペーパーとも呼ばれる)等が含まれる。パルプ繊維には、機械パルプ、再生パルプおよび化学パルプも含まれる。パルプ繊維として、木材パルプや非木材パルプを用いてよく、木材パルプとしては針葉樹木材または広葉樹木材を用いて常套の方法で製造されたものを任意に使用できる。湿式不織布は、繊維ウェブと湿式不織布との間、および二つの繊維ウェブとの間での繊維同士の交絡を阻害しにくく、かつ不織布の機械的特性を向上させる。
【0070】
繊維ウェブに基材シートを積層することで、不織布の機械的特性、特に10%伸長時応力を向上させることができる傾向にある。そのため、所定の機械的特性を得るために、繊維ウェブのみを使用して不織布を構成する場合に必要とされる交絡処理後の接着工程を、基材シートを用いる場合には省略できることがある。
【0071】
基材シートは、例えば5g/m2~30g/m2の目付を有してよく、特に7g/m2~25g/m2の目付を有してよく、より特には10g/m2~20g/m2の目付を有してよい。上記に例示の基材シートは、一般に薄くて嵩の小さいものであるため、その目付が大きくなると、所定の目付の不織布に占めるセルロース系繊維および接着性繊維を含む繊維層の割合が小さくなり、不織布の嵩が小さくなり、拭き取り性が低下することがある。また、基材シートの目付が大きすぎると、特に不織布を基材シートの上下にセルロース系繊維と接着性繊維を含む繊維層を配置させる構成とする場合に、上下の繊維層同士の交絡が不十分となることがある。
【0072】
基材シートの密度(1.96kPa荷重時)は、例えば0.005g/cm3以上0.20g/cm3以下の密度を有してよく、特に0.010g/cm3以上0.15g/cm3以下の密度を有してよい。
基材シートが長繊維不織布である場合、長繊維不織布は、例えば0.050g/cm3以上0.20g/cm3以下の密度(1.96kPa荷重時)を有してよく、特に0.070g/cm3以上0.15g/cm3以下の密度を有してよい。
【0073】
基材シートが、網状シートであって、規則的な開口部(例えば、フィラメントにより規定された長方形ないしは正方形)を有するものである場合、開口部の寸法は例えば、3mm以上であってよく、特に4mm以上、より特には5mm以上であってよい。開口部の寸法の上限は、例えば15mm、特に12mmであってよい。開口部の寸法は、開口部を規定する輪郭の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さである。開口部の寸法が小さすぎると、特に不織布を基材シートの上下にセルロース系繊維と接着性繊維を含む繊維層を配置させる構成とする場合に、上下の繊維層同士の交絡が不十分となることがある。その結果、層間剥離が起こりやすくなることがあり、あるいは高交絡部に模様を形成する場合には模様が不鮮明になることがある。規則的な開口部を有する網状シートは、50%以上99%以下の開口率、特に60%以上98%以下、より特には70%以上97%以下の開口率を有してよい。開口率がこの範囲であると、繊維との交絡性がよくなる傾向にあり、また、その両面に繊維層が位置する場合に繊維層間で繊維同士の良好な交絡を確保しやすい。
【0074】
基材シートは、例えば、その10%伸長時応力が、MD方向において2.0N/5cm以上、CD方向において0.5N/5cm以上であるものであってよい。基材シートの10%伸長時応力は、特に、MD方向において2.2N/5cm以上、CD方向において0.7N/5cm以上、より特にはMD方向において2.5N/5cm以上、CD方向において1.0N/5cm以上であってよい。基材シートの10%伸長時応力の上限は、例えば、MD方向において20N/5cm、CD方向において20N/5cmであってよい。10%伸長時応力が上記の範囲内にある基材シートは、不織布の取り扱い性を向上させ得る。
【0075】
基材シートを含む不織布の製造に際し、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維ウェブに基材シートを積層する工程は、後述する接着工程の前または後に実施してよい。また、繊維ウェブに基材シートを積層した複合ウェブには、接着工程後、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む他の繊維ウェブを積層してよい。本明細書では、基材シートを繊維ウェブに積層する工程を、便宜的に「基材シート積層工程」と呼び、繊維ウェブまたは複合ウェブに他の繊維ウェブを積層する工程を、便宜的に「ウェブ積層工程」と呼ぶ。例えば、上記で説明したように繊維ウェブAと繊維ウェブBとを準備し、繊維ウェブAに繊維ウェブBを積層する工程、および繊維ウェブAに基材シートを積層した後で繊維ウェブBを積層する工程はウェブ積層工程に相当する。
【0076】
基材シート積層工程を接着工程の前に実施すると、接着工程において繊維ウェブと基材シートとの間が接着されることがあり、その場合、機械的特性がより向上した不織布が得られる傾向にある。基材シート積層工程を接着工程の後に実施すると、後の交絡工程において繊維同士の交絡がより進行する傾向にある。また、基材シート積層工程の後にウェブ積層工程を実施すると、得られる不織布の表裏面のいずれにも基材シートが露出しないため、風合いおよび触感等が基材シートを含まない不織布のそれらから大きく変化しないようにし得る。
【0077】
(接着工程)
次に、接着工程を説明する。
接着工程は、繊維ウェブ(複合ウェブの場合は複合ウェブ。以下、接着工程に関して「繊維ウェブ」というときは、繊維ウェブまたは複合ウェブを指す)に含まれる接着性繊維によって、繊維同士を接着して、接着箇所を形成する工程である。
【0078】
接着工程は、例えば熱接着工程であってよい。熱接着工程は、繊維ウェブを熱処理することによって、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分(熱接着成分)を溶融または軟化させて、繊維ウェブを構成する繊維同士を接着させる方法で接着箇所を形成する工程である。
【0079】
熱処理は、例えば、熱風を吹き付ける熱風加工処理、熱ロール加工(例えば、熱エンボスロール加工)、または赤外線を使用したものであってよい。得られる不織布を嵩高なものとするためには、熱風加工処理が好ましい。熱風加工処理は、所定の温度の熱風を繊維ウェブに吹き付ける装置、例えば、熱風貫通式熱処理機、および熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。これらの装置を用いた熱風加工処理においては、繊維ウェブの厚さ方向に圧力が加わりにくいため、得られる不織布が嵩高なものとなりやすい。
【0080】
接着工程が熱風加工処理である場合、熱風を複数回吹き付けることが好ましい。また熱風を複数回吹き付ける場合、最初の熱風の温度よりも2回目の熱風の温度が高いことが好ましい。セルロース系繊維と接着性繊維との接着性は、接着性繊維同士の接着性よりも高くないため、セルロース系繊維と接着性繊維との接着性をより高めるために、熱風を複数回吹き付けることが有効である。
【0081】
接着工程が熱風加工処理である場合、熱風の風速は、毛羽立ちの抑制および嵩高性の確保の点から、例えば、0.1m/min~3.0m/minであってよく、特に0.2m/min~2.5m/minであってよく、より特には0.3m/min~2.0m/minであってよい。熱風の風速が小さすぎると、繊維ウェブ全体で繊維同士を良好に接着できないことがあり、大きすぎると、嵩高性が損なわれることがある。
【0082】
熱処理の温度は、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分(熱接着成分)が軟化または溶融する温度としてよく、例えば、当該成分の融点以上の温度としてよい。例えば、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分が高密度ポリエチレンである場合に、熱風加工を実施するときには、130℃~150℃の温度の熱風を吹き付けてよい。例えば、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分がエチレン-アクリル酸共重合体である場合、熱風加工を実施するときに、90℃~140℃の温度の熱風を吹き付けてよく、特には95℃~130℃の温度の熱風を吹き付けてよく、より特には100℃~120℃の熱風を吹き付けてよい。また、熱処理の温度は、毛羽立ちの抑制および繊維の自由度の観点から、熱接着成分の融点または軟化点よりも0℃以上5℃以下高い温度とすることが好ましく、1℃以上4℃以下高い温度とすることがより好ましく、2℃以上3℃以下高い温度とすることがさらに好ましい。
【0083】
接着工程は、電子線等の照射、または超音波溶着によるものであってよい。これらの接着加工によっても、接着性繊維を構成する樹脂成分で繊維同士を接着させることができる。
【0084】
接着工程後の繊維ウェブは、例えばMD方向の破断強力(引張強さ)が1.0N/5cm以上であると、接着が十分であり、毛羽立ちが良好に抑制される不織布を与えやすい。MD方向の破断強力(引張強さ)は、特に2.0N/5cm以上であってよく、より特には3.0N/5cm以上であってよい。接着工程後の繊維ウェブのMD方向の破断強力(引張強さ)は、上限が100N/5cmであってよく、特に70N/5cmであってよく、より特には40N/5cmであってよい。また、接着工程後の繊維ウェブは、例えばJIS L 1096:2010 8.21.5 E法(ハンドルオメータ法)に準じた方法で測定される剛軟度が100g以下であってよい。その場合、嵩高性が高く、繊維の自由度が高い不織布を最終的に得やすくなる。剛軟度は特に80g以下であってよく、より特には60g以下であってよい。接着工程後の繊維ウェブの剛軟度は、下限が5gであってよく、特に10gであってよく、より特には15gであってよい。接着工程後の繊維ウェブは、例えば294Pa荷重時の厚さが0.90mm以上であると、嵩高性が高く、繊維の自由度が高い不織布を最終的に得やすくなり、また、高交絡部および低交絡部を良好に形成しやすい。294Pa荷重時の厚さは、特に1.1mm以上であってよく、より特には1.3mm以上であってよい。接着工程後の繊維ウェブの294Pa荷重時の厚さの上限は、6.0mmであってよく、特に5.0mmであってよく、より特には4.0mmであってよい。例えば、後述する交絡工程の前における繊維ウェブの294Pa荷重時の厚さ(T1)と、交絡工程の後における繊維ウェブ(不織布)の294Pa荷重時の厚さ(T2)の比(T1/T2)は、1.2以上であると、嵩高性が高く、繊維の自由度が高い不織布を最終的に得やすくなり、また、高交絡部および低交絡部を良好に形成しやすい。T1/T2は特に1.3以上であってよく、より特には1.4以上であってよい。T1/T2の上限は、5.0であってよく、特に4.0であってよく、より特には3.0であってよい。
【0085】
(冷却工程)
接着工程に付された繊維ウェブ(複合ウェブもしくは積層ウェブ。以下、冷却工程に関して「繊維ウェブ」というときは、繊維ウェブ、複合ウェブまたは積層ウェブを指す)は、交絡工程に付される前に冷却工程に付してよい。より具体的には、接着工程と交絡工程との間、接着工程と基材シート積層工程との間、または接着工程とウェブ積層工程との間に、繊維ウェブまたは複合ウェブを冷却する冷却工程に付してよい。あるいは、積層工程の後、繊維ウェブまたは複合ウェブがなお熱いために、積層ウェブ全体が熱い場合には、積層工程と交絡工程との間に積層ウェブを冷却工程に付してよい。積層ウェブの冷却工程は、繊維ウェブまたは複合ウェブの冷却工程とともに実施してよく、または積層ウェブとした後にのみ冷却工程を実施してもよい。
【0086】
接着工程後の繊維ウェブを、その接着性繊維の一部が軟化または溶融した状態で次の交絡工程に付すると、接着箇所の剥離が生じることがあり、得られる不織布において毛羽立ちが生じやすくなるからである。したがって、冷却工程においては、接着成分が固化されるまで、繊維ウェブを冷却してよい。冷却工程は、自然冷却(放冷)であってよく、あるいは冷却装置を使用した積極的な冷却であってよい。また、冷却の方式は、空冷であっても、水冷であってもよい。自然冷却は、接着工程後の繊維ウェブが十分に冷却されるまで、繊維ウェブをベルト上、またはロール間で走行させて実施してよい。
【0087】
(交絡工程)
次に、交絡工程を説明する。
交絡工程は、接着工程後の繊維ウェブにおいて、繊維同士を交絡させる処理を実施する工程である。本実施形態においては、接着工程の後、繊維ウェブをロールに巻き取ることなく、繊維ウェブを交絡工程に付することが好ましい。複合ウェブまたは積層ウェブを交絡工程に付する場合も同様に、複合ウェブまたは積層ウェブをロールに巻き取ることなく、交絡工程に付することが好ましい。すなわち、接着工程後、交絡工程前のいずれの時点においても、繊維ウェブ、複合ウェブまたは積層ウェブをロールに巻き取ることなく交絡工程に付することが好ましい。これにより、繊維同士の交絡が進行しやすくなるとともに、得られる不織布の嵩をより高くすることができる。
また、高交絡部を溝部、低交絡部を畝部とする凹凸を形成する場合は、接着工程後の繊維ウェブをロールに巻き取らずに交絡工程に付することで、畝部の嵩を高くしやすく、交絡の度合いをより高くして溝部をより高密度にすることができる。その結果、畝部と溝部とが、それらを明確に見分けられる程度に形成された不織布を得ることができる。
【0088】
交絡工程は、例えば、ニードルパンチ処理、または高圧流体流(特に水流)交絡処理である。高圧流体流処理において、高圧流体は、例えば、圧縮空気等の高圧気体、および高圧水等の高圧液体である。不織布の製造においては、高圧流体として高圧水を用いた水流交絡処理を用いることが多く、本実施形態においても、実施の容易性等の点から、水流交絡処理が好ましく用いられる。以下においては、高圧流体として高圧水(以下においては、単に「水流」とも呼ぶ)を用いた場合の交絡工程を説明する。
【0089】
本実施形態において、交絡工程は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、高交絡部と低交絡部とが平面視で交互に配置されるように形成する、部分交絡工程を含む。部分交絡工程は低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように行う。部分交絡工程は低交絡部の幅が3mm以上となるように行ってよく、特に低交絡部の幅が4mm以上となるように行ってよく、より特には低交絡部の幅が5mmより大きくなるように行ってよい。部分交絡工程は低交絡部の幅が25mm以下となるように行ってよく、特に低交絡部の幅が20mm以下となるように行ってよく、より特には低交絡部の幅が10mm以下となるように行ってよい。部分交絡工程を、水流交絡処理として実施する場合には、例えば、
1)水流が噴出する微細なオリフィスが、例えば数mmの間隔をあけて配置されたノズル、または
2)水流が噴出する微細なオリフィスが間隔をあけて配置されたオリフィス集合部と、オリフィスが穿たれていない無オリフィス部とが交互に配置されたノズル
を用いることができる。
【0090】
ノズル1)を用いる場合には、オリフィスからの水流が当たる箇所が筋状となって、高交絡部を形成し、水流が当たらない部分が低交絡部を形成する。高交絡部の厚さは低交絡部の厚さよりも小さくなる傾向にある。用いる繊維ウェブの種類や接着工程/交絡工程の条件にもよるが、ノズル1)を用いる場合には、
図1に示すように、高交絡部の間で低交絡部が盛り上がって畝部を形成し、高交絡部が溝部を形成した不織布を得ることが可能である。なお
図1においては図の上部側の不織布表面(上面)が部分交絡工程の際に水流が噴射された面である。
【0091】
ノズル1)において、オリフィスは、例えば、0.05mm以上、0.5mm以下の孔径を有してよく、オリフィス間の間隔は、例えば、2mm以上20mm以下としてよく、特に3mm以上15mm以下としてよく、より特には4mm以上10mm以下としてよく、さらにより特には5mmより大きく10mm以下としてよい。オリフィス間の間隔が狭すぎると、高交絡部間の距離が狭くなる、すなわち低交絡部の幅が狭くなり、低交絡部を形成することによる効果(例えば、ワイパーとして用いる場合の汚れの捕集性の向上)を得られないことがある。オリフィス間の間隔が大きすぎると、得られる不織布において高交絡部の数ないしは割合が少なくなり、不織布の強力が不十分となることがある。
ノズル1)を用いる場合、水流の水圧は、例えば、1MPa~10MPaであってよく、特に1MPa~7MPaであってよい。
【0092】
水流交絡処理は、支持体に繊維ウェブ(または複合ウェブもしくは積層ウェブ。以下、水流交絡処理に関して「繊維ウェブ」というときは繊維ウェブ、複合ウェブまたは積層ウェブを指す)を載せて、柱状水流を噴射することにより実施することができる。支持体は、不織布表面を平坦し、かつ凹凸を有しないものとするならば、1つあたりの開孔面積が0.2mm2を超える開孔を有さず、また、突起またはパターンが形成されていない支持体を用いるとよい。例えば、支持体は、80メッシュ以上、100メッシュ以下の平織の支持体を用いるとよい。
【0093】
ノズル2)を用いる場合には、オリフィス集合部のオリフィスからの水流があたる箇所が帯状の高交絡部を形成し、無オリフィス部の下に位置する箇所が低交絡部を形成する。高交絡部の厚さは低交絡部の厚さよりも小さくなる傾向にある。用いる繊維ウェブの種類や接着工程/交絡工程の条件にもよるが、ノズル2)を用いる場合には、
図2に示すように、高交絡部の間で低交絡部が盛り上がって凸部を形成した不織布を得ることが可能である。また、ノズル1)を用いる場合と比較して、幅の広い高交絡部を形成できるので、水流を噴射している間、不織布を支持する支持体を選択することにより、高交絡部に開孔模様のような模様を形成することができる。なお
図2においては図の上部側の不織布表面(上面)が部分交絡工程の際に水流が噴射された面である。
【0094】
ノズル2)において、オリフィスは、例えば、0.05mm以上、0.5mm以下の孔径を有してよく、オリフィス集合部におけるオリフィス間の間隔は0.3mm以上、1.5mm以下であってよい。オリフィス集合部間の無オリフィス部の幅は、例えば、2mm以上50mm以下としてよく、特に3mm以上25mm以下としてよく、より特には4mm以上20mm以下としてよく、さらにより特には4mm以上10mm以下としてよく、さらにより特には5mmより大きく10mm以下としてよい。オリフィス集合部の幅は、例えば、2mm以上50mm以下としてよく、特に3mm以上25mm以下としてよく、より特には4mm以上20mm以下としてよく、さらにより特には4mm以上10mm以下としてよい。また、ノズル2)を用いる場合、水流の水圧は、例えば、1MPa~10MPaであってよく、特に1MPa~7MPaであってよい。
【0095】
ノズル1)および2)のいずれを用いる場合でも、繊維ウェブをノズルの下を連続的に通過させて水流交絡処理を実施することで、平面視で、高交絡部と低交絡部とが得られる不織布のCD方向において交互に配置した構成を得ることができる。また、ノズル1)および2)のいずれを用いる場合でも、水流が噴射されていない部分では繊維同士の交絡が実質的に進行せずに低交絡部を形成することがある。そのような低交絡部は繊維同士が接着性繊維の接着により一体化している。
【0096】
ノズル1)および2)のいずれを用いる場合でも、ノズルは、全面にわたって水流を当てるように設計されたノズルにおいて、低交絡部に相当する区間のオリフィスに栓をしたものであってよい。
【0097】
ノズル1)および2)のいずれを用いる場合でも、部分交絡工程における水流交絡処理は、支持体に繊維ウェブを載せて、柱状水流を、繊維ウェブの一方の面に1回のみ噴射して実施することが好ましい。部分交絡工程では、高交絡部と低交絡部を形成し、それらの境界が明確となるように水流交絡処理を実施することが好ましいことによる。一方の面に複数回水流を噴射すると、あるいは両方の面に水流を噴射すると、高交絡部と低交絡部を形成することが難しくなる。
【0098】
支持体は、例えば、1つあたりの開孔面積が0.2mm2を超える開孔を有さず、また、突起またはパターンが形成されていないものであってよい。このような支持体として、例えば、80メッシュ以上、100メッシュ以下の平織の支持体を用いてよい。このような支持体を用いて、ノズル2)から水流を噴射すると、高交絡部は比較的平坦であって、模様ないしは開口部のないものとなる。
【0099】
あるいは支持体は、板状またはロール状の支持体であってよく、特にロール状の支持体であってよい。支持体がロール状であると、繊維ウェブが湾曲し、繊維ウェブの厚さ方向(又は通常湾曲したウェブの外側方向)において繊維密度がより小さくなる。柱状水流を外側から噴射すると、柱状水流による交絡が比較的進みやすくなる。本実施形態の製造方法においては、接着工程に付した接着箇所を含む繊維ウェブが交絡工程に付されるため、繊維の交絡が比較的進みにくい。そのため、交絡工程においては、より交絡が進みやすい状態で水流交絡処理を行うことが好ましい。
【0100】
ノズル2)を用いる場合には、支持体を適宜選択することにより、高交絡部に模様を形成することができる。模様を形成する場合に用いる支持体(以下、「パターン形成支持体」)は、天然樹脂、合成樹脂、または金属からなる、織物、パンチング加工が施された板状部材、またはスパイラルネットであってよい。また、パターン形成支持体は、凸部、凹部および開口部から選択される一つまたは複数が規則的に配置されて、規則的な模様を有するものであってよい。そのようなパターン形成支持体を用いると、密度が他の部分より低い領域(以下、「低密度領域」)が複数集合して規則的な模様を形成することができる。低密度領域は開孔部として形成してよい。
【0101】
具体的には、パターン形成支持体は、例えば、繊維径が0.1mm~1.2mm程度のモノフィラメントを、経糸密度10本/インチ~30本/インチ、緯糸密度10本/インチ~30本/インチで織成した平織物、杉綾織物、綾織物、および朱子織物であってよい。比較的太いフィラメントの織物から成る支持体は、緯糸と経糸との交点が凸部となって、低密度領域の形成を可能にする。このような織物を用いる場合には、織物を構成する糸の太さよって、低密度領域の一つあたりの面積が決定され、織物の経/緯糸密度によって、低密度領域の間隔およびピッチが決定される。
【0102】
経糸および緯糸がそれぞれ一本のモノフィラメントである平織物においては、経糸と緯糸の交差点のうち、最も高い部分が凸部となって、千鳥状に配置されている。そのため、そのような平織物を用いれば、当該部分に対応して千鳥状に配置された低密度領域を形成することができる。
【0103】
あるいは、パターン形成支持体は、凸部および/または凹部、例えば、円錐台形、円錐形、角錐台形、または角錐形の突起、あるいは金属板の表面を切削加工等に付して形成された凹部を有し、凸部および/または凹部以外の部分は、例えば寸法の小さな開口部が形成されていて透水性が確保された板状部材(例えば、金属板)であってよい。
あるいはまた、パターン形成支持体は、スパイラルネットであってよい。
【0104】
(全面交絡工程)
本実施形態の製造方法において、交絡工程は、繊維ウェブ(または複合ウェブもしくは積層ウェブ。以下、全面交絡工程に関して「繊維ウェブ」というときは繊維ウェブ、複合ウェブまたは積層ウェブを指す)全体にわたって繊維同士を交絡させる工程である全面交絡工程をさらに含んでよい。全面交絡工程は、部分交絡工程の前に実施してよい。全面交絡工程は、部分交絡工程による繊維の交絡だけでは、不織布の強力や毛羽立ち・毛羽抜けの抑制が十分でない場合等に実施される。全面交絡工程を実施することで、得られる不織布において、特に低交絡部の嵩高性はやや低下するものの、不織布全体の強力を高めることができ、毛羽立ちもより抑制される。
【0105】
全面交絡工程は水流交絡処理であってよい。全面交絡工程として実施する水流交絡処理において用いる支持体は、部分交絡工程において、高交絡部に模様を形成しない場合に用いる支持体として説明したものである。そのような支持体を用いると、交絡処理後の繊維ウェブ表面が平坦となり、かつ凹凸を有しないものとなる。
【0106】
水流交絡処理は、例えば、孔径0.05mm以上、0.5mm以下のオリフィスが0.3mm以上、1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上、15MPa以下の水流を、繊維ウェブの表面及び裏面の各々に、1~5回ずつ噴射することにより実施することができる。水圧は、好ましくは、1MPa以上、10MPa以下であり、より好ましくは、1MPa以上、7MPa以下である。
【0107】
全面交絡工程は、その水流の水圧が、部分交絡工程のそれよりも小さくなるように実施してよい。全面交絡工程での水圧を部分交絡工程のそれと同じかそれよりも高くすると、不織布の嵩高性が低下することがある。すなわち、全面交絡工程は、不織布の嵩を極端に減少させず、かつ繊維間の一体化に必要な限度で、なるべく低い水圧の水流を用いて実施することが好ましい。これに対し、部分交絡工程では、不織布の強力を確保するために、全面交絡工程で用いる水圧よりも高い水圧の水流を用いてよい。部分交絡工程では、水流の当たる部分が限られるため、水圧を高くしても、不織布全体の嵩の減少はある程度抑制される。なお全面交絡工程の水流が複数回噴射される場合は、各回における水流の水圧が部分交絡工程のそれよりも小さくなるように実施してよい。
【0108】
全面交絡工程の水流交絡処理は、繊維ウェブの一方の面にのみ水流を噴射して実施してよい。この場合、部分交絡工程は、全面交絡工程において水流を噴射した面とは反対の側の面に水流を噴射して実施してよい。より具体的には、全面交絡工程および部分交絡工程をともに、繊維ウェブ、複合ウェブまたは積層ウェブの一方の面にのみ水流を噴射する水流交絡処理により実施し、部分交絡工程において水流を噴射する面が、全面交絡工程において水流を噴射する面とは反対の面であってよい。部分交絡工程において、全面交絡工程において水流を噴射した面と反対側の面に水流を噴射することにより、繊維の自由度をより高い状態にできる場合がある。したがって、不織布をワイパーとして使用する場合に、部分交絡工程にて水流を噴射した面を拭き取り面とすることによって、汚れの捕集性を向上させることが可能となる。また、高交絡部を溝部、低交絡部を畝部とする凹凸を形成する場合には、全面交絡工程と部分交絡工程とで水流を噴射する面を異なるようにすることで、畝部と溝部とが明瞭に形成されやすい。
【0109】
接着工程が熱風加工処理である場合、水流交絡処理は、熱風加工処理において熱風を吹き付けた面(以下、「熱風吹き付け面」)に対して先に柱状水流を噴射することが好ましく、その後、さらに反対の面に対して柱状水流を噴射することが好ましい。したがって、交絡工程が全面交絡工程を含む場合には、柱状水流を熱風吹き付け面に対してまず噴射し、それから反対の面に上記ノズル1)または2)を用いて部分的に水流を噴射することが好ましい。あるいは、熱風吹き付け面の全体に柱状水流を噴射した後、その反対の面の全体に柱状水流を噴射した後、ノズル1)または2)を用いて、水流交絡処理を実施してよい。この場合、ノズル1)または2)からの水流は、熱風吹き付け面に対して噴射してよく、あるいはその反対面に対して噴射してよい。
【0110】
熱風吹き付け面は、その反対の面(一般的に、熱風加工処理の間、支持体に接触している面)よりも繊維密度が小さくなる傾向があり、柱状水流による交絡が比較的進みやすい。水流交絡処理による不織布の強力や毛羽立ちの抑制の程度は、最初の交絡処理における交絡度合いに左右されやすい。そのため、比較的交絡が進みやすい、繊維ウェブの繊維密度が比較的小さい側から柱状水流を噴射することが好ましい。
【0111】
なお、例えば繊維ウェブAと繊維ウェブBを別に準備し、繊維ウェブAを接着工程に付した後、これに繊維ウェブBを積層し、交絡工程で積層ウェブに水流交絡処理を実施する場合、繊維ウェブAの熱風吹き付け面の側から先に柱状水流を噴射することが好ましい。したがって、例えば繊維ウェブAの熱風吹き付け面の上に繊維ウェブBを積層した場合は、繊維ウェブBの側から先に柱状水流を噴射することが好ましい。また、繊維ウェブの熱風吹き付け面の上に他の不織布を積層した場合は、他の不織布側から先に柱状水流を噴射することが好ましい。
【0112】
(乾燥工程)
本実施形態の製造方法においては、交絡工程の後、繊維ウェブ(または複合ウェブもしくは積層ウェブ)を乾燥工程に付してよい。特に交絡工程が水流交絡処理を含む場合、乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥処理は熱風を吹き付ける熱風加工処理等により行うことができる。乾燥処理の温度は、接着性繊維の接着成分(熱接着成分)の軟化または溶融する温度よりも低い温度であることが好ましい。乾燥処理の温度は、熱接着成分の融点または軟化点よりも10℃以上低い温度とすることが好ましく、15℃以上低い温度とすることがより好ましく、20℃以下低い温度とすることがさらに好ましい。本実施形態の製造方法においては、交絡工程の後に、後述するとおり再度の接着工程に付してもよく、再度の接着工程に付さなくてもよい。再度の接着工程に付する場合は、乾燥工程を省略してもよい。
【0113】
(交絡後接着工程)
本実施形態の製造方法においては、交絡工程後の繊維ウェブ(または複合ウェブもしくは積層ウェブ。以下、交絡後接着工程に関して「繊維ウェブ」というときは繊維ウェブ、複合ウェブまたは積層ウェブを指す)をさらに接着工程に付してよい。この接着工程は、交絡工程前に実施される接着工程と区別するために、「交絡後接着工程」という。交絡後接着工程で用いる条件等は、接着工程に関連して説明したとおりである。
【0114】
交絡工程では、水流の噴射による衝撃等のために、接着箇所が破壊されることがある。その破壊が顕著なものとなると、繊維同士の接着による不織布の強力向上および毛羽立ち抑制効果を得られないことがある。交絡後接着工程は、そのような破壊による強力低下等を補償するために実施してよい。したがって、交絡後接着工程の条件等は、交絡工程での接着箇所の破壊の度合いや最終的に得ようとする不織布の物性等に応じて、適宜選択される。例えば、交絡後接着工程は、接着工程の温度と比較して、より低い温度で実施してよいし、又はより高い温度で実施してよい。あるいは、交絡後接着工程は、接着工程と同じ条件で実施してよい。
一般に、交絡後接着工程を含む製造方法で実施した不織布は、これを含まない製造方法で製造した不織布と比較して、毛羽立ち又は毛羽抜けが生じにくくなる。また、交絡処理後の繊維ウェブは嵩が減少した状態にあるが、その後で接着工程を特に熱風加工として実施することで、繊維ウェブの嵩が回復することがある。そのため、交絡後接着工程を含む製造方法によれば、より嵩高な不織布を得られることがある。特に交絡工程が水流交絡処理を含む場合、交絡後の接着処理において水が蒸発することによって、水の重さによる「へたり」が無くなり、繊維ウェブの嵩がより回復しやすくなると考えられる
【0115】
[実施形態2]
(積層工程を含む製造方法)
本開示の実施形態2の製造方法は、繊維ウェブAと繊維ウェブBとを別に準備し、繊維ウェブAのみを接着工程に付し、接着工程に付した後の繊維ウェブAに繊維ウェブBを積層して積層ウェブを得る積層工程を含む。この製造方法によれば、不織布全体で多種類の繊維を含ませることが容易となる。実施形態2の製造方法では、積層ウェブが交絡工程に付される。交絡工程に付される繊維ウェブは、その一部分(繊維ウェブB)において接着箇所が形成されていないものであるため、これに水流を噴射すると交絡がより進行する傾向にある。したがって、交絡工程で用いる水流の水圧を低くしても、あるいはセルロース系繊維の割合を少なくしても、十分な交絡が達成されやすい。また、実施形態2の製造方法においては高交絡部に模様を形成する場合に、明瞭な模様が形成されやすい。一方、実施形態2の製造方法では、交絡工程後の繊維ウェブにおける接着箇所の数は、繊維ウェブ全体を接着工程に付してから、交絡工程を実施する場合と比較して少なくなる。そのため、実施形態2の製造方法では、交絡後接着工程を実施することが好ましい。
【0116】
あるいは、本開示の実施形態2の製造方法は、繊維ウェブAを接着工程に付した後、基材シートを積層する基材シート積層工程を含むものであってよく、または基材シート積層工程の後にさらに繊維ウェブBを積層するウェブ積層工程を含むものであってよい。基材シートが積層されている不織布は、一般に、その機械的特性(特に10%伸長時応力)が基材シートを含まない不織布のそれよりも高くなる傾向にある。したがって、基材シートを用いることで、交絡後接着工程を実施しない場合でも、毛羽立ちまたは毛羽抜けが生じにくく、ある用途で必要とされる機械的特性を満たす不織布を得ることができる。
【0117】
基材シートを積層する場合には、基材シートと繊維ウェブとの間で剥離が生じないように、基材シートを積層しない場合と比較して、より高い水圧を用いて交絡処理を実施してよい。基材シートが特に長繊維不織布である場合には繊維ウェブとの間で剥離が生じやすいので、より高い水圧を用いてよい。
【0118】
実施形態2の製造方法において、接着工程、交絡工程、交絡後接着工程および乾燥工程の条件等は実施形態1の製造方法において、またはこれに関連して説明したとおりであるから、ここではその説明を省略する。尤も、これらの工程の条件等は、繊維ウェブAおよびBに含まれる繊維の種類および割合、ならびにこれらの目付に応じて、適宜調整される。
【0119】
[実施形態3]
(本開示の製造方法で得られる不織布)
次に、上記において説明した実施形態1または2の製造方法で得られる不織布を、本開示の実施形態3として説明する。
【0120】
本実施形態の不織布は、接着工程、部分交絡工程を含む交絡工程、および場合により交絡後接着工程を含む方法で製造されたものであるため、繊維同士が接着されている接着箇所を含むとともに、繊維同士が比較的緊密に交絡されている部分を含む。特に部分交絡工程において、水流が噴射された箇所においては、繊維同士がより緊密に交絡して、高交絡部が形成されている。部分交絡工程において、水流が噴射されていない部分においては、高交絡部より繊維同士の交絡の度合いが低い、低交絡部が形成されている。
【0121】
高交絡部と低交絡部は、不織布の一つの方向において交互に配置されており、上記のノズル1)または2)を用いて製造された不織布においては、不織布のCD方向において交互に配置される。また、高交絡部と低交絡部は、高交絡部の厚さが低交絡部のそれよりも小さくなりやすく、高交絡部を溝部、低交絡部を畝部とする凹凸を形成することがある。凹凸は、上記実施の形態2として説明した、積層工程を含む製造方法を採用した場合に特に形成されやすい。
【0122】
また、凹凸の形成されやすさはセルロース系繊維と接着性繊維との混合割合によっても変化する。例えば、セルロース系繊維の割合が多くなるほど、接着工程で形成される接着箇所の数が小さくなるため、不織布の強力を確保するために、部分交絡工程の前に全面交絡工程を実施する必要があるところ、全面交絡工程で不織布の嵩が全体的に減少してしまい、部分交絡工程を実施しても、凹凸が形成されにくくなる。一方、接着性繊維の割合が多くなるほど、接着工程で形成される接着箇所の数が多くなり、また、繊維の交絡に寄与するセルロース系繊維の割合が少なくなる。そのため、部分交絡工程を施しても、高交絡部と低交絡部との間で交絡の度合いに差が生じにくく、凹凸が形成されにくくなる。
【0123】
高交絡部は、繊維同士がより緊密に交絡している部分であり、不織布の強力をある程度高くすることに寄与し、低交絡部は、繊維同士の交絡の度合いが低いために、繊維の自由度が比較的高く、不織布の嵩をある程度高くすることに寄与する。また、低交絡部においては、繊維の自由度が比較的高いものの、繊維同士が接着された接着箇所が形成されているため、毛羽立ちが生じにくくなっている。さらに、本実施形態の不織布において、低交絡部は2mm以上50mm以下の幅を有してよく、そのような幅の低交絡部を有することで、不織布全体として、繊維の自由度を比較的高くできる。低交絡部の幅は、特に3mm以上25mm以下としてよく、より特には4mm以上20mm以下としてよく、さらにより特には4mm以上10mm以下としてよく、さらにより特には5mmより大きく10mm以下としてよい。
【0124】
したがって、本実施形態の不織布は、例えばワイパーとして使用される場合には、高交絡部がワイパーの強力を確保する役割をし、低交絡部が汚れを拭き取り、これを捕集する役割をする。また、本実施形態の不織布をワイパーとして用いる場合、人の身体または物から汚れを拭き取るために、不織布でこれらに擦っても、毛羽立ちが生じにくい。
【0125】
高交絡部および低交絡部の幅は、部分交絡において用いるノズルの種類、およびノズルにおけるオリフィスの間隔(ノズル1)の場合)またはオリフィス集合部の幅および間隔(ノズル2)の場合)によって決定される。ノズル1)を用いる場合には、高交絡部は実質的に線状となり、オリフィス間の間隔に相当する幅を有する低交絡部が形成される。ノズル2)を用いる場合には、オリフィス集合部の幅に相当する幅を有する高交絡部が形成され、オリフィス集合部とオリフィス集合部の間隔(オリフィス集合部の端部から隣り合うオリフィス集合部の端部までの距離)に相当する幅を有する低交絡部が形成される。
【0126】
ノズル2)を用いる場合には、上記のとおり、高交絡部に低密度領域を規則的に形成して、模様を形成することができる。高交絡部に模様が形成された不織布は、意匠効果を発揮するものとなる。また、高交絡部において低密度領域が形成されることで、得られた不織布をワイパーとして利用した際に、低密度領域によって汚れの捕集性を向上させることができる。
低密度領域は一つあたり、例えば、0.03mm2~20mm2の面積を有してよく、特に、0.1mm2~10mm2の面積を有してよく、より特には、0.7mm2~5.0mm2の面積を有してよい。低密度領域が小さすぎると、低密度領域が十分に認識されず、意匠効果が十分に発揮されないことがある。低密度領域が大きすぎると、不織布において伸び、ヨレ、破れ等の変形または破損が生じやすくなって、取扱い性が低下する。また、低密度領域が大きすぎると、かえって低密度領域として認識されにくくなることがあり、意匠効果が十分に発揮されないことがある。
【0127】
低密度領域は、繊維が存在しない開孔部であってよく、または開孔部でなくてもよい。あるいは、一つの不織布において、開孔部と開孔部でない低密度領域とがともに存在して模様を形成していてよい。
【0128】
本実施形態の不織布の目付は、例えば10g/m2~150g/m2の目付を有してよく、特に15g/m2~120g/m2の目付を有してよく、より特には30g/m2~100g/m2の目付を有してよく、さらにより特には40g/m2~80g/m2の目付を有してよい。
【0129】
本実施形態の不織布は全体として、乾燥時において、例えば、0.0100g/cm3~0.100g/cm3の繊維密度を有してよく、0.0125g/cm3~0.0600g/cm3の繊維密度を有することが好ましく、0.0180g/cm3~0.0500g/cm3の繊維密度を有することがより好ましい。不織布全体の繊維密度は、目付と厚さ(1.96kPaの荷重を加えて測定される厚さ)から求めることができる。
【0130】
本実施形態の不織布は、接着性繊維による接着箇所が解消された接着剥離痕が接着性繊維に形成されていることが好ましい。接着剥離痕は主に接着工程の後の交絡工程によって形成され得る。接着剥離痕では、通常の接着性繊維の繊維表面と比較して、接着成分(例えば、芯鞘型複合繊維であれば鞘成分)が薄く存在することとなる。この接着剥離痕によって繊維が屈曲しやすくなり、不織布の柔軟性が向上し得るので、接着剥離痕が適宜含まれることが好ましい。接着剥離痕は電子顕微鏡を用いて不織布の表面や断面を観察することにより確認できる。
【0131】
本実施形態の不織布は、以下の実施例で説明する不織布の接着交点指数Aが1個/mm2~63個/mm2であってよい。接着交点指数Aの上限は、特に60個/mm2であってよく、より特には55個/mm2であってよく、さらにより特には50個/mm2であってよい。接着交点指数Aの下限は、特に3個/mm2であってよく、より特には5個/mm2であってよく、さらに特には10個/mm2であってよく、さらにより特には25個/mm2であってよい。不織布の接着交点指数Aが上述の範囲内である場合、不織布の毛羽立ちが抑制されるとともに、繊維の自由度が適度に確保される。不織布の接着交点指数は、高交絡部と低交絡部とでは異なることがあり、その場合、低交絡部における接着交点指数を不織布の接着交点指数とする。尤も、高交絡部および低交絡部の両方において、接着交点指数Aは上記の範囲内にあることが好ましい。
【0132】
本実施形態の不織布は、以下の実施例で説明する不織布を厚さ方向に3等分したときの、不織布の上部および下部のいずれか一方または両方における繊維接着交点の角度が35度~90度であることが好ましく、35度~70度であることがより好ましく、40度~60度であることが更により好ましい。
本実施形態の不織布は、不織布の上部および下部のいずれか一方または両方、すなわち不織布の表面の一方または両方に近い部分において繊維接着交点の角度が上述の範囲内である場合、不織布の嵩高性が高い傾向にある。繊維接着交点の角度は、高交絡部と低交絡部とで異なる場合があるが、その場合、低交絡部における繊維接着交点の角度を、不織布の繊維接着交点の角度とする。尤も、高交絡部および低交絡部の両方において、繊維接着交点の角度は上記の範囲内にあることが好ましい。
【0133】
本実施形態の不織布が、高交絡部と低交絡部とがそれぞれ溝部および畝部を形成していて、一方の面に凹凸を有するものである場合、当該凹凸を有する面の側において、繊維接着交点の角度が上記範囲内にあってよい。凹凸のある面の側において、繊維接着交点の角度が上記範囲内にあると、当該面の繊維の自由度が比較的高くなるため、当該凹凸のある面を例えばワイパーの拭き取り面としたときには、凸部(畝部)での繊維密度が低いことと相俟って良好な汚れの捕集性が示される。
【0134】
本実施形態の不織布は、少なくとも一方の面について以下の実施例で説明する毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下であるような不織布であってよい。本実施形態の不織布は、両方の面について毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下であるような不織布であってよい。少なくとも一方の面について毛羽抜け量が上記の範囲内にあると、当該一方の面では繊維の自由度が高く、また、毛羽立ちが生じにくい。したがって、不織布をワイパーとして用いる場合に、当該面を拭き取り面としたときに汚れの捕集性が良好であるとともに、拭き取り中の毛羽立ちが抑制され、使用者に清潔な印象を与える。少なくとも一方の面の毛羽抜け量は、特に2.0mg以上15mg以下であってよい。
【0135】
毛羽抜け量が上記範囲内となる不織布の面は、高交絡部と低交絡部とがそれぞれ溝部および畝部を形成している面(すなわち、凹凸のある面)であってよい。凹凸のある面の毛羽抜け量が上記範囲内にあると、当該凹凸のある面を、例えばワイパーの拭き取り面としたときに、毛羽立ちが生じにくく、かつ凹凸において汚れを良好に捕集できる。
【0136】
本実施形態の不織布は、以下の実施例で説明する破断強力(引張強さ)について、MD方向の破断強力(引張強さ)が、例えば、10N~200Nであってよく、特に30N~150Nであってよい。CD方向の破断強力(引張強さ)は、例えば、1N~30Nであってよく、特に2N~20Nであってよい。本実施形態の不織布は、不織布の強力が上述の範囲内である場合、取扱い性がより向上する傾向にある。
【0137】
本実施形態の不織布は、繊維同士の接着により形成された接着箇所を含むとともに、繊維の自由度がある程度確保され、かつ嵩高な低交絡部を有するために、ワイパーとして好ましく用いられる。ワイパーとして用いる場合には、ワイパーは洗浄液を含侵させた湿潤タイプのワイパーであってよい。本実施形態の不織布はセルロース系繊維を含むので、洗浄液を含浸させやすい。
【0138】
あるいは、本実施形態の不織布は、吸収性物品の表面シート、セカンドシート、及びバックシート等の各種シート、フィルター、衛生マスク、ガーゼ、化粧料を含浸させたフェイスマスク、貼付剤、包装材、マット、クッション材、テーブルクロス、カーペットの裏材、壁紙等として用いることもできる。
【0139】
[実施形態4]
本開示の第4の実施形態の不織布の製造方法は、
接着性繊維を含む不織布の製造方法であって、
前記接着性繊維を含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含む、
不織布の製造方法である。
【0140】
実施形態4の製造方法において、使用される接着性繊維、接着工程、交絡工程、交絡後接着工程および乾燥工程の条件等は実施形態1の製造方法において説明した条件等を適宜適用することができる。
【0141】
[実施形態5]
本開示の第5の実施形態の不織布の製造方法は、
接着性繊維を含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布の製造方法であって、
前記接着性繊維を含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記接着工程の前または後であって、かつ、前記交絡工程の前に、前記繊維ウェブに前記基材シートを積層して、複合ウェブを得る基材シート積層工程を含む、
不織布の製造方法である。
【0142】
実施形態5の製造方法において、使用される接着性繊維、基材シート、接着工程、交絡工程、交絡後接着工程および乾燥工程の条件等は実施形態1の製造方法において説明した条件等を適宜適用することができる。
【0143】
[実施形態6]
実施形態4の製造方法で得られる不織布を、本開示の実施形態6の不織布として説明する。すなわち本開示の実施形態6の不織布は、
接着性繊維を含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所を含み、
前記接着性繊維同士の交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布である。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
【0144】
実施形態6の不織布において、接着性繊維、接着箇所、交絡箇所、高交絡部、低交絡部、低交絡部の幅、不織布の毛羽抜け量などの条件については、実施形態1または実施形態3において説明した条件等を適宜適用することができる。
【0145】
[実施形態7]
実施形態5の製造方法で得られる不織布を、本開示の実施形態7の不織布として説明する。すなわち本開示の実施形態7の不織布は、
接着性繊維を含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所を含み、
前記接着性繊維同士の交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布である。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
【0146】
実施形態7の不織布において、接着性繊維、基材シート、接着箇所、交絡箇所、高交絡部、低交絡部、低交絡部の幅、不織布の毛羽抜け量などの条件については、実施形態1または実施形態3において説明した条件等を適宜適用することができる。
【0147】
実施形態6の不織布または実施形態7の不織布は、繊維同士の接着により形成された接着箇所を含むとともに、繊維の自由度がある程度確保され、かつ嵩高な低交絡部を有するために、ワイパーとして好ましく用いられる。ワイパーとして用いる場合には、ワイパーは洗浄液を含侵させた湿潤タイプのワイパーであってよい。
【実施例】
【0148】
実施例及び比較例の不織布を製造するために使用した繊維を以下に示す。
繊維1(接着性繊維):ポリエチレンテレフタレートが芯であり、高密度ポリエチレン(融点:約133℃)が鞘である、繊度2.6dtex、繊維長51mm、偏心率25%の立体捲縮を有する偏心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(SH)V(商品名))。
繊維2(セルロース系繊維):繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)製のコロナCD(商品名))。
【0149】
<実施例1の不織布の製造>
繊維1と繊維2を7:3(質量比)の混率で混合し、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブAを製造した。繊維ウェブAの目付(狙い目付)は、30g/m2であった。
[接着工程/冷却工程]
繊維ウェブAを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱した。これにより、繊維1の鞘成分により繊維同士を熱接着(接着処理)した。熱接着(接着処理)の後、繊維ウェブを室温20℃の雰囲気下で自然冷却による冷却工程に付した。
[ウェブ積層工程]
繊維1と繊維2を7:3(質量比)の混率で混合し、パラレルカード機を使用して、狙い目付が30g/m2である繊維ウェブBを製造し、冷却後の繊維ウェブAに積層して積層ウェブを得た。
【0150】
[全面交絡工程]
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述の積層ウェブを載置した。積層ウェブを速度4m/minで進行させながら、積層ウェブの繊維ウェブBの表面に対して、水供給器を用いて、水圧1.5MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。積層ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmであった。なお、接着工程後の繊維ウェブA、積層ウェブは、ロールに巻き取らずに、全面交絡工程に付した。
【0151】
[部分交絡工程]
全面交絡工程の後、線径0.7mmのモノフィラメントからなる25メッシュ平織りの支持体(経糸および緯糸密度ともに25本/インチ)に載せ、積層ウェブの繊維ウェブAの表面に対して、柱状水流を噴射した。この交絡工程により、水流が噴射された箇所が不織布のMD方向に沿って延びる高交絡部が溝部として形成された。水流が噴射されなかった箇所は低交絡部となり、畝部を形成していた。高交絡部と低交絡部は、不織布のCD方向において交互に配置されていた。水供給機のノズルは全面交絡工程を行う時に用いたノズルを用いたが、複数のオリフィスのうちの一部のオリフィスについては水流が出ないように塞ぎ、形成される畝部と溝部の幅がそれぞれ6mmとなるようにした。積層ウェブを進行させる速度は4m/minとし、柱状水流の水圧は3.0MPaとし、積層ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。溝部には開孔が千鳥状に配列された模様が形成された。各開孔面積は1.05mm2、相互に最も近接した開孔の中心間の距離は1.5mmであった。
【0152】
[交絡後接着工程]
交絡工程後の積層ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱して、積層ウェブを乾燥させるとともに、繊維1の鞘成分により繊維同士を熱接着させて、実施例1の不織布を得た。
【0153】
<実施例2の不織布の製造>
実施例1において、部分交絡工程を以下に変更したこと以外は、実施例1の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例2の不織布を得た。
[部分交絡工程]
全面交絡工程で用いた平織りネットに載せ、積層ウェブの繊維ウェブAの表面に対して、柱状水流を噴射した。この交絡工程により、水流が噴射された箇所は、不織布のMD方向に沿って延びる高交絡部が線状の溝部として形成された。水流が噴射されなかった箇所は低交絡部となり、畝部を形成していた。水供給機のノズルは孔径0.2mmのオリフィスが7mm間隔で設けられているノズルを用いた。積層ウェブを進行させる速度は4m/minとし、柱状水流の水圧は3.0MPaとし、積層ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。
【0154】
<実施例3の不織布の製造>
実施例1において、繊維ウェブAおよびBにおける繊維1と繊維2の混率を、6:4(質量比)としたこと以外は、実施例1の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例3の不織布を得た。
【0155】
<実施例4の不織布の製造>
実施例2において、繊維ウェブAおよびBにおける繊維1と繊維2の混率を、6:4(質量比)としたこと以外は、実施例2の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例4の不織布を得た。
【0156】
<実施例5の不織布の製造>
[接着工程/冷却工程]
繊維1と繊維2を7:3(質量比)の混率で混合し、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブを製造した。繊維ウェブの狙い目付は、60g/m2であった。
この繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱した。これにより、繊維1の鞘成分により繊維同士を、熱接着(接着処理)した。熱接着(接着処理)の後、繊維ウェブを室温20℃の雰囲気にて自然冷却による冷却工程に付した。
【0157】
[全面交絡工程]
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述の繊維ウェブを載置した。繊維ウェブを速度4m/minで進行させながら、繊維ウェブの熱風を吹き付けた側の表面に対して、水供給器を用いて、水圧1.5MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmであった。なお、接着工程後の繊維ウェブは、ロールに巻き取らずに交絡工程に付した。
【0158】
[部分交絡工程]
全面交絡工程の後、線径0.7mmのモノフィラメントからなる25メッシュ平織りの支持体(経糸および緯糸密度ともに25本/インチ)に載せ、全面交絡工程において水流を噴射した面とは反対の表面に対して、柱状水流を噴射した。この交絡工程により、水流が噴射された箇所は、不織布のMD方向に沿って延びる高交絡部が溝部として形成された。水流が噴射されなかった箇所は低交絡部となり、畝部を形成していた。高交絡部と低交絡部は、不織布のCD方向において交互に配置されていた。水供給機のノズルは全面交絡工程を行う時に用いたノズルを用いたが、複数のオリフィスのうちの一部のオリフィスについては水流が出ないように塞ぎ、形成される畝部と溝部の幅がそれぞれ6mmとなるようにした。繊維ウェブを進行させる速度は4m/minとし、柱状水流の水圧は3.0MPaとし、繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。溝部には開孔が千鳥状に配列された模様が形成された。各開孔面積は1.05mm2、相互に最も近接した開孔の中心間の距離は1.5mmであった。
【0159】
[乾燥工程]
交絡工程後の繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて80℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱して、乾燥処理を行い、実施例5の不織布を得た。
【0160】
<実施例6の不織布の製造>
実施例5において、部分交絡工程を以下に変更したこと以外は、実施例5の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例6の不織布を得た。
[部分交絡工程]
全面交絡工程で用いた平織りネットに載せ、全面交絡工程において水流を噴射した面とは反対の表面に対して、柱状水流を噴射した。この交絡工程により、水流が噴射された箇所は、不織布のMD方向に沿って延びる高交絡部が線状の溝部として形成された。水流が噴射されなかった箇所は低交絡部となり、畝部を形成していた。水供給機のノズルは孔径0.2mmのオリフィスが7mm間隔で設けられているノズルを用いた。繊維ウェブ布を進行させる速度は4m/minとし、柱状水流の水圧は3.0MPaとし、繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。
【0161】
<実施例7の不織布の製造>
実施例5において、交絡工程後の乾燥工程に代えて、交絡後接着工程を実施したこと以外は、実施例5の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例7の不織布を得た。交絡後接着工程は、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱して実施した。交絡後接着工程により、繊維1の鞘成分により繊維同士が熱接着(接着処理)された。
【0162】
<実施例8の不織布の製造>
実施例6において、交絡工程後の乾燥工程に代えて、交絡後接着工程を実施したこと以外は、実施例6の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例8の不織布を得た。交絡後接着工程は、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱して実施した。交絡後接着工程により、繊維1の鞘成分により繊維同士が熱接着(接着処理)された。
【0163】
<実施例9の不織布の製造>
繊維1と繊維2を7:3(質量比)の混率で混合し、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブAを製造した。繊維ウェブAの目付(狙い目付)は、30g/m2であった。
[接着工程/冷却工程]
繊維ウェブAを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱した。これにより、繊維1の鞘成分により繊維同士を熱接着(接着処理)した。熱接着(接着処理)の後、繊維ウェブを室温20℃の雰囲気下で自然冷却による冷却工程に付した。
[基材シート積層工程]
ポリプロピレンからなる、目付約5.2g/m2、開口部の寸法11.3mmおよび開口率96%のスクリム(JX ANCI(株)製、商品名コンウェッドネット)を、接着工程および冷却工程後の繊維ウェブAの熱風を吹き付けた面に積層し、複合ウェブを得た。このスクリムの10%伸長時応力はMD方向が12.8N/5cmであり、CD方向が13.7N/5cmであり、密度(1.96kPa荷重時)は0.017g/cm3であった。
[ウェブ積層工程]
繊維1と繊維2を7:3(質量比)の混率で混合し、パラレルカード機を使用して、狙い目付が25g/m2である繊維ウェブBを製造し、前記複合ウェブにスクリムが繊維ウェブAおよびBで挟まれるように積層して、積層ウェブを得た。
【0164】
[全面交絡工程]
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述の積層ウェブを載置した。積層ウェブを速度4m/minで進行させながら、積層ウェブの繊維ウェブBの表面に対して、水供給器を用いて、水圧2.0MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。積層ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmであった。なお、接着工程後の繊維ウェブA、複合ウェブ、積層ウェブは、ロールに巻き取らずに、全面交絡工程に付した。
【0165】
[部分交絡工程]
全面交絡工程の後、線径0.7mmのモノフィラメントからなる25メッシュ平織りの支持体(経糸および緯糸密度ともに25本/インチ)に載せ、積層ウェブの繊維ウェブAの表面に対して、柱状水流を噴射した。この交絡工程により、水流が噴射された箇所が不織布のMD方向に沿って延びる高交絡部が溝部として形成された。水流が噴射されなかった箇所は低交絡部となり、畝部を形成していた。高交絡部と低交絡部は、不織布のCD方向において交互に配置されていた。水供給機のノズルは全面交絡工程を行う時に用いたノズルを用いたが、複数のオリフィスのうちの一部のオリフィスについては水流が出ないように塞ぎ、形成される畝部と溝部の幅がそれぞれ6mmとなるようにした。積層ウェブを進行させる速度は4m/minとし、柱状水流の水圧は4.5MPaとし、積層ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。溝部には開孔が千鳥状に配列された模様が形成された。各開孔面積は1.05mm2、相互に最も近接した開孔の中心間の距離は1.5mmであった。
【0166】
[乾燥工程]
交絡工程後の積層ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて80℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱して、乾燥処理を行い、実施例9の不織布を得た。
【0167】
<実施例10の不織布の製造>
実施例9において、部分交絡工程を以下に変更したこと以外は、実施例9の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例10の不織布を得た。
[部分交絡工程]
全面交絡工程で用いた平織りネットに載せ、積層ウェブの繊維ウェブAの表面に対して、柱状水流を噴射した。この交絡工程により、水流が噴射された箇所は、不織布のMD方向に沿って延びる高交絡部が線状の溝部として形成された。水流が噴射されなかった箇所は低交絡部となり、畝部を形成していた。水供給機のノズルは孔径0.2mmのオリフィスが7mm間隔で設けられているノズルを用いた。積層ウェブを進行させる速度は4m/minとし、柱状水流の水圧は4.5MPaとし、積層ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。
【0168】
<実施例11の不織布の製造>
基材シートとして、ポリエチレンテレフタレートからなる目付約10.8g/m2のスパンボンド不織布(東洋紡(株)製、商品名エクーレ)を用いたこと、および繊維ウェブBの目付を20g/m2としたこと以外は、実施例9の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例11の不織布を得た。このスパンボンド不織布の10%伸長時応力はMD方向が6.8N/5cmであり、CD方向が1.9N/5cmであり、密度(1.96kPa荷重時)は0.098g/cm3であった。
【0169】
<実施例12の不織布の製造>
基材シートとして、ポリエチレンテレフタレートからなる目付約10.8g/m2のスパンボンド不織布(東洋紡(株)製、商品名エクーレ)を用いたこと、および繊維ウェブBの目付を20g/m2としたこと以外は、実施例10の不織布を製造した方法と同じ方法で実施例12の不織布を得た。このスパンボンド不織布の10%伸長時応力はMD方向が6.8N/5cmであり、CD方向が1.9N/5cmであり、密度(1.96kPa荷重時)は0.098g/cm3であった。
【0170】
<比較例1の不織布の製造>
実施例5において、繊維ウェブを製造した後、接着工程及び冷却工程を行わなかったこと以外は、実施例5の不織布を製造した方法と同じ方法で比較例1の不織布を得た。
【0171】
<比較例2の不織布の製造>
実施例6において、繊維ウェブを製造した後、接着工程理及び冷却工程を行わなかったこと以外は、実施例6の不織布を製造した方法と同じ方法で比較例2の不織布を得た。
【0172】
<比較例3の不織布の製造>
実施例5において、繊維ウェブを製造した後、接着工程及び冷却工程を実施せず、かつ交絡工程の後の乾燥工程に代えて、交絡後接着工程を実施したこと以外は、実施例5の不織布を製造した方法と同じ方法で比較例3の不織布を得た。交絡後接着工程の条件は、実施例7のそれと同じとした。
【0173】
<比較例4の不織布の製造>
実施例6において、繊維ウェブを製造した後、接着工程及び冷却工程を実施せず、かつ交絡工程の後の乾燥工程に代えて、交絡後接着工程を実施したこと以外は、実施例6の不織布を製造した方法と同じ方法で比較例4の不織布を得た。交絡後接着工程の条件は、実施例8のそれと同じとした。
【0174】
<実施例13の不織布の製造>
[接着工程/冷却工程]
繊維1のみを使用し、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブを製造した。繊維ウェブの狙い目付は、60g/m2であった。
この繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱した。これにより、繊維1の鞘成分により繊維同士を、熱接着(接着処理)した。熱接着(接着処理)の後、繊維ウェブを室温20℃の雰囲気にて自然冷却による冷却工程に付した。
【0175】
[全面交絡工程]
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述の繊維ウェブを載置した。繊維ウェブを速度4m/minで進行させながら、繊維ウェブの熱風を吹き付けた側の表面に対して、水供給器を用いて、水圧1.5MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmであった。なお、接着工程後の繊維ウェブは、ロールに巻き取らずに交絡工程に付した。
【0176】
[部分交絡工程]
全面交絡工程で用いた平織りネットに載せ、全面交絡工程において水流を噴射した面とは反対の表面に対して、柱状水流を噴射した。この交絡工程により、水流が噴射された箇所は、不織布のMD方向に沿って延びる高交絡部が線状の溝部として形成された。水流が噴射されなかった箇所は低交絡部となり、畝部を形成していた。水供給機のノズルは孔径0.2mmのオリフィスが7mm間隔で設けられているノズルを用いた。繊維ウェブを進行させる速度は4m/minとし、柱状水流の水圧は3.0MPaとし、繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。
【0177】
[乾燥工程]
交絡工程後の繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて80℃の熱風を吹き付ける方法で約5秒間加熱して、乾燥処理を行い、実施例13の不織布を得た。
【0178】
<比較例5の不織布の製造>
実施例13において、繊維ウェブを製造した後、接着工程及び冷却工程を実施せず、かつ交絡工程の後の乾燥工程に代えて、交絡後接着工程を実施したこと以外は、実施例13の不織布を製造した方法と同じ方法で比較例5の不織布を得た。交絡後接着工程の条件は、実施例8のそれと同じとした。
【0179】
不織布の評価は、下記のように行った。
<繊維接着交点の角度>
不織布を縦方向(MD方向、より具体的には、不織布を処理した熱処理機及び水流処理機のベルトコンベアの進行方向と平行方向)に切断して、その切断面を走査電子顕微鏡(SEM、倍率:60倍)で観察して、不織布を厚さ方向に3等分したときの不織布の上部及び下部近傍と真ん中付近(中部)について、接着交点を形成する二つの繊維のみかけのなす角を調べた。少なくとも15箇所のみかけのなす角を調べてその平均値を求めた。なお、部分交絡工程の際に水流を噴射した面の側を上部とし、その反対側の面の側を下部とした。
【0180】
<接着交点指数A>
不織布の表面および裏面を走査電子顕微鏡(SEM、加速電圧:10.0kV、倍率:100倍)で観察した。撮影されたSEM画像について、面積当たりの繊維の接着交点の数を数えた。不織布の表面および裏面についてそれぞれ3枚ずつ、合計で6枚のSEM画像について繊維の接着交点の数を数え、その平均値を繊維の接着交点数I(単位:個/mm
2)とした。
実施例および比較例の不織布を構成する非接着性繊維(繊維2)と接着性繊維(繊維1)の繊度(dtex)と不織布中の混率(質量%)から、接着交点割合P(0≦P≦1)を下記の式に従って求めた。
【数1】
式中、
α
iは、i番目の非接着性繊維の混率(質量%)を表し、
x
iは、i番目の非接着性繊維の繊度(dtex)を表し、
β
jは、j番目の接着性繊維の混率(質量%)を表し、
y
jは、j番目の接着性繊維の繊度(dtex)を表す。
接着交点数Iと接着交点割合Pとから、接着交点指数A(単位:個/mm
2)を下記の式に従って求めた。
接着交点指数A=I/(P
2)
【0181】
尚、2層構造の場合、表面又は裏面の接着交点割合Pは、表面又は裏面の混綿状態に則して、各々計算する。接着交点指数Aの計算は、表面3つ、裏面3つの平均値であることに変わりはない。
【0182】
<不織布の厚さと密度>
厚み測定機((株)大栄科学精器製作所製のTHICKNESS GAUGE モデル CR-60A(商品名))を用い、不織布に294Pa又は1.96kPaの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定した。
不織布の密度は、不織布の目付と、1.96kPaの荷重を加えて得た不織布の厚さに基づいて算出した。
【0183】
<強伸度>
強伸度は、JIS L 1913:2010 6.3に準じて測定した。定速緊張形引張試験機を用いて、試料片(不織布)の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で、引張試験を行った。切断時の荷重値(引張強さ)、伸び率、10%伸長時応力を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)および横方向(CD方向)を引張方向として実施した。評価結果は、いずれも3点の試料について測定した値の平均で示した。
【0184】
<毛羽指数>
マーチンデール毛羽試験機(James Heal社製、商品名「Martindale Abrasion and Pilling Tester No.1309」)を用いて摩擦テスト(Abrasion Test)により評価した。
実施例、比較例の不織布について2枚のサンプル(直径140mm及び直径38mmを1枚ずつ)を用意した。摩擦テーブル(Abrading Table)に直径140mmのフェルトを設置し、SM25摩擦布(SM25 Abrasice Cloth)上に直径140mmのサンプルを積層してクランピングリング(Clamp Ring)でサンプルを固定した。次にサンプルホルダー(Sample Holder)に直径38mmのサンプルと直径38mmのポリウレタンを設置した。測定条件は、サンプルホルダーにローディングウェイト(Loading Weight)を設置せずに、サンプルホルダーをテーブル(Abrading Tables)に設置した。摩擦回数を8回転とし、モーションを60.5mmリサージュに設定して摩擦テストを行った。なお熱風貫通式熱処理機により加工を行った実施例及び比較例については、熱風を当てた側と反対側の面同士が接触するように摩擦テストを行った。測定終了後、サンプルホルダー側の不織布を観察し、毛羽状態を以下の二つの判断基準(測定後の不織布を真上から見た時の状態(表面状態)と測定後の不織布を真横から見た時の状態(毛羽立ち具合))の合計値(10点満点)を毛羽指数とした。合計6点以上が、毛羽が抑制されていると考えられ、また合計9点未満が、繊維の自由度が高いと考えられる。各実施例または比較例につき、2回ずつ評価試験を行い、2回の点数の平均値を各実施例または比較例の毛羽指数とした。
表面状態
5:非常に良い(表面の乱れが無い)
4:良い(表面の乱れは極めて少ない)
3:普通(表面の乱れは少なく、気にならない)
2:悪い(表面の乱れが気になる程度ある)
1:非常に悪い(表面に穴が開いている)
毛羽立ち具合
5:非常に良い(毛羽立ちは無い)
4:良い(毛羽立ちは極めて少ない)
3:普通(毛羽立ちは気にならない程度ある)
2:悪い(毛羽立ちが気になる程度ある)
1:非常に悪い(毛羽立ちが多い)
【0185】
<毛羽抜け量測定試験>
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
【0186】
<汚れの捕集性>
[ダスト捕集性]
白色アクリル板の表面の略中央にJIS Z 8901に準ずる試験用粉体(7種)を縦5cm×横15cmの長方形の領域(以下、「ダスト分散領域」)に、均一に0.20g分散し、実施例及び比較例の不織布(縦26cm、横16cm)をワイパーとして用いて試験用粉体(ダスト)を拭き取った。
【0187】
拭き取りは、拭き取りに寄与する面積が縦方向26cm、横方向16cmとなり、不織布を上面(部分交絡工程の際に水流を噴射した面)が拭き取り面となるように、ワイパー治具(商品名:クイックルワイパー[道具本体]のヘッド部、花王(株)製)に取付け、400gの加重をかけた状態で行った。拭き取りは、ワイパーを、白色アクリル板の表面で1往復させて実施した。
【0188】
より具体的には、
・ワイパーの縦方向がダスト分散領域の縦方向と一致するように、ワイパーをダスト分散領域の中央部に置き、
・そこからダスト分散領域の左端に向かう方向に250mmだけワイパーを移動させて、ダスト(白色アクリル板)を擦り、
・それからダスト分散領域の右端に向かう方向にワイパーを500mm移動させた後、
・さらにダスト分散領域の左端に向かう方向にワイパーを250mm移動させて
ワイパーを1往復させた。
【0189】
ワイパーを1往復させた後、予め測定した不織布の質量と、拭き取り後に測定した不織布の質量とから、ダスト捕集性を求めた。各不織布について、拭き取りは、不織布の拭き取り面を新しくした状態で3回測定し、その平均値をダストの捕集率とした。
【0190】
[毛髪捕集性(湿潤状態)]
フローリング上に毛髪(長さ約5cm)を横向きに3本、縦向きに2本、合計5本を、間隔を空けて配置し、実施例及び比較例の不織布で、毛髪を拭き取った。
【0191】
拭き取りは、不織布100質量部に対して蒸留水を300質量部含浸させて、湿潤状態で実施した。また、拭き取りは、拭き取りに寄与する面積が縦方向26cm、横方向16cmとなるように、不織布を上面(部分交絡工程の際に水流を噴射した面)が拭き取り面となるようにワイパー治具(商品名:クイックルワイパー[道具本体]のヘッド部、花王(株)製)に取付け、400gの加重をかけた状態で行った。拭き取りは、上記ダスト捕集性の評価で採用した方法と同じ方法で、ワイパーを毛髪上で1往復させて実施した。拭き取り後、フローリングから拭き取られた毛髪の本数から捕集率(%)を求めた。各不織布について、拭き取りは、不織布の拭き取り面を新しくした状態で3回測定し、その平均値を毛髪の捕集率とした。
【0192】
各実施例および各比較例の評価結果を表1~5に示す。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
実施例の不織布はいずれも、比較例の不織布と比較して、優れたダスト捕集性および湿潤状態での毛髪捕集性を示した。また、実施例の不織布は、いずれも比較的毛羽立ちが生じにくいものであった。
【0199】
比較例3および4の不織布は、接着工程を実施せずに交絡工程を実施し、それから交絡後接着工程を実施して製造したため、交絡工程において繊維間の距離が相当に短くなり、その状態で繊維同士が接着されたと推察される。その結果、接着交点指数Aが大きく、毛羽立ちも生じにくかったものと考えられる。
比較例1および2の不織布は、接着工程をまったく含まない方法で製造されたために、不織布の強力が小さく、毛羽立ちも生じやすいものであった。
比較例1~4の不織布は交絡工程の前に接着工程が実施されていないため、交絡工程において繊維の交絡が実施例と比較して進行しやすく、不織布の厚さが小さくなった。そのため、全体として嵩が小さく、ダスト捕集性および毛髪捕集性ともに実施例よりも低いものになったと考えられる。
【0200】
実施例5と実施例7を比較すると、交絡後接着工程を含む方法で製造された実施例7の方が、接着交点指数Aが大きく、毛羽立ちが生じにくかった。同様に、実施例6と実施例8を比較すると、交絡後接着工程を含む方法で製造された実施例8の方が、毛羽立ちが生じにくかった。また、実施例5と実施例7を比較すると、実施例7がより大きい厚さを有していて、より小さい繊維密度を有し、嵩高であった。これは、実施例7は交絡工程の後で熱風により乾燥と再度の接着を実施して製造されたために、水の重さによる「へたり」が無くなったこと、及び熱風が当てられたことにより嵩が回復したことによるものと考えられる。すなわち、実施例7では、嵩が回復した状態にて繊維同士が再度接着されたため、比較的高い嵩を維持したまま、繊維同士が固定されて、嵩高な不織布が得られたと考えられる。実施例6と実施例8を比較した場合も同様である。
【0201】
実施例1と実施例7を比較すると、実施例1の不織布はより嵩が小さく、実施例1においてはMD方向の不織布強力がより小さかった。これは、実施例1においては、繊維ウェブBが接着工程を経ることなく、繊維ウェブAに積層されて交絡処理に付されたため、繊維ウェブBの繊維がより緊密に交絡したことによると考えられる。実施例2と実施例8を比較した場合も同様である。
【0202】
実施例1と実施例3を比較すると、実施例1の不織布はより嵩が大きかった。これは、実施例3においては、水流交絡処理により交絡しやすいセルロース系繊維の割合がより高かったことによると考えられる。実施例3においては、繊維同士の交絡がより進行し、繊維同士の距離がより短くなったため、接着箇所の数も増え、接着交点指数Aは実施例1よりも大きいものであったが、毛羽立ちは実施例1よりも生じやすかった。これは、実施例3においては、接着性繊維の割合が少ないために、毛羽立ちの防止により効果的な接着性繊維同士の接着箇所が少ないことによると推察される。尤も、この推察は、本開示を何ら限定するものではない。実施例2と実施例4を比較した場合も同様である。
【0203】
スクリムを含む実施例9を、スクリムを含まず交絡後接着工程を実施して製造した実施例1および7と比較すると、実施例9の不織布は、いずれの実施例よりも高い10%伸長時応力をMD方向およびCD方向において示した。スパンボンド不織布を含む実施例11を、スパンボンド不織布を含まず交絡後接着工程を実施して製造した実施例1および7と比較すると、実施例11の10%伸長時応力は実施例7のそれよりも高く、実施例1のそれよりやや小さいものの、実用できるものであった。同様の傾向は、実施例10と、実施例2および8との比較、および実施例12と、実施例2および8との比較においても見られた。また、スクリムまたはスパンボンド不織布を含む実施例9~12の他の特性(捕集性、毛羽指数、毛羽抜け量等)は、他の実施例と同等であった。これらのことから、スクリムおよびスパンボンド不織布等の基材シートを用いることで、交絡後接着工程を実施せずとも、10%伸長時応力およびその他の性能において、交絡後接着工程を実施した基材シート無しの不織布と同等以上のものが得られることがわかった。
【0204】
実施例13は接着性繊維のみを含む不織布であるため、実施例6と比べて毛羽立ちが生じにくいものであった。一方、実施例13には、接着性繊維以外の繊維が含まれていないために繊維の自由度は低下しており、ダスト捕集性および毛髪捕集性においては実施例6と比べて多少低下していた。交絡工程の前に接着工程を実施せずに作製した比較例5は、全体として嵩が小さく、ダスト捕集性および毛髪捕集性はともに実施例13よりも低いものになった。
【0205】
[ゴマ捕集性(湿潤状態)]
各実施例および比較例の不織布について、湿潤状態でのゴマ捕集性を評価した。ゴマ捕集性は、フローリング上にゴマ10個を3列(3個-4個-3個の列)に間隔を空けて配置し、毛髪捕集性(湿潤状態)の評価と同様の方法で不織布による拭き取りを実施し、拭き取り後、フローリングから拭き取られたゴマの個数から捕集率(%)を求めた。各不織布について、拭き取りは、不織布の拭き取り面を新しくした状態で3回測定し、その平均値をゴマの捕集率とした。
各実施例および比較例のゴマ捕集性を表6に示す。
【0206】
【0207】
表6に示すとおり、スクリムないしはスパンボンド不織布を含む実施例9~12の不織布は、湿潤状態にて比較的高いゴマ捕集性を示した。ゴマ捕集性は、日常生活で生じる食べかす等、ダストや毛髪と比較して、少し寸法の大きい汚れを拭き取る指標となるものである。スクリムないしはスパンボンド不織布を含む不織布は、接着工程が1度のみであり繊維の自由度が比較的高いこと、また、湿潤時のヨレが起こりにくいことから、そのような少し寸法の大きい汚れの拭き取りに優れ、そのダスト捕集性および毛髪捕集性と相俟って、拭き取り性に優れたワイパーとして提供できる。
【0208】
本実施形態には以下の態様が含まれる。
(態様1)
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含む、
不織布の製造方法。
(態様2)
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布の製造方法であって、
前記セルロース系繊維と前記接着性繊維とを含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記接着工程の前または後であって、かつ、前記交絡工程の前に、前記繊維ウェブに前記基材シートを積層して、複合ウェブを得る基材シート積層工程を含む、
不織布の製造方法。
(態様3)
前記基材シートが、長繊維不織布、湿式不織布または網状シートである、態様2の不織布の製造方法。
(態様4)
前記接着工程の後であって、かつ、前記交絡工程の前に、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む別の繊維ウェブを前記繊維ウェブに積層して、積層ウェブを得るウェブ積層工程を含む、態様1の不織布の製造方法。
(態様5)
前記接着工程の後であって、かつ、前記交絡工程の前に、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む別の繊維ウェブを、前記基材シートが前記繊維ウェブと前記別の繊維ウェブとの間に位置するように積層して、積層ウェブを得るウェブ積層工程をさらに含む、態様2または3の不織布の製造方法。
(態様6)
前記別の繊維ウェブが、前記接着性繊維を20質量%以上80質量%以下含む、態様4または5の不織布の製造方法。
(態様7)
前記高交絡部と前記低交絡部とが不織布のCD方向において交互に配置される、態様1~6のいずれかの不織布の製造方法。
(態様8)
前記交絡工程が水流交絡処理を含む、態様1~7のいずれかの不織布の製造方法。
(態様9)
前記交絡工程が、前記繊維ウェブ全体、前記複合ウェブ全体または前記積層ウェブ全体にわたって繊維同士を交絡させる全面交絡工程を含み、前記繊維ウェブ、前記複合ウェブまたは前記積層ウェブを前記全面交絡工程の後に前記部分交絡工程に付する、態様1~8のいずれかの不織布の製造方法。
(態様10)
前記全面交絡工程及び前記部分交絡工程をともに水流交絡処理により実施し、前記全面交絡工程における水流交絡処理の水圧が、前記部分交絡工程における水流交絡処理の水圧よりも小さい、態様9の不織布の製造方法。
(態様11)
前記全面交絡工程および前記部分交絡工程をともに、前記繊維ウェブ、前記複合ウェブまたは前記積層ウェブの一方の面にのみ水流を噴射する水流交絡処理により実施し、前記部分交絡工程において水流を噴射する面が、前記全面交絡工程において水流を噴射する面とは反対の面である、態様10の不織布の製造方法。
(態様12)
前記部分交絡工程において、前記高交絡部に開孔模様を形成する、態様1~11のいずれかの不織布の製造方法。
(態様13)
前記接着工程が前記繊維ウェブまたは前記複合ウェブの一方の面に熱風を当てる熱風加工処理を含み、
前記交絡工程が水流交絡処理を含み、
前記水流交絡処理は、前記繊維ウェブ、または前記複合ウェブの熱風を当てた面に先に水流を噴射すること、あるいは前記繊維ウェブ、または前記複合ウェブの熱風を当てた面に、熱風を当てていない面より先に水流を当てることを含む、態様1~12のいずれかの製造方法。
(態様14)
前記接着工程と前記交絡工程との間、前記接着工程と前記基材シート積層工程との間、または前記接着工程と前記ウェブ積層工程との間に、前記繊維ウェブおよび/または前記複合ウェブを冷却する、ならびに/あるいは前記ウェブ積層工程と前記交絡工程との間に前記積層ウェブを冷却する冷却工程を含む、態様1~13のいずれかの不織布の製造方法。
(態様15)
前記接着工程後、前記交絡工程の前のいずれの時点においても、前記繊維ウェブ、前記複合ウェブまたは前記積層ウェブをロールに巻き取らない、態様1~14のいずれかの不織布の製造方法。
(態様16)
前記部分交絡工程において、前記低交絡部を前記低交絡部の幅が5mmより大きく50mm以下となるように形成する、態様1~15のいずれかの不織布の製造方法。
(態様17)
前記繊維ウェブが前記接着性繊維を55質量%以上80質量%以下含む、態様1~16のいずれかの不織布の製造方法。
(態様18)
前記接着性繊維が芯鞘型複合繊維を含む、態様1~17のいずれかの不織布の製造方法。
(態様19)
前記交絡工程の後に、前記接着性繊維で繊維同士を接着させる別の接着工程をさらに含む、態様1~18のいずれかの不織布の製造方法。
(態様20)
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所及び/又は前記接着性繊維と前記セルロース系繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維同士の交絡箇所及び/又は前記セルロース系繊維と前記接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
(態様21)
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所及び/又は前記接着性繊維と前記セルロース系繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維同士の交絡箇所及び/又は前記セルロース系繊維と前記接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
(態様22)
前記基材シートが、長繊維不織布、湿式不織布または網状シートである、態様21に記載の不織布。
(態様23)
前記基材シートが厚さ方向の断面において前記セルロース系繊維と接着性繊維とを含む繊維層により挟持されている、態様21または22に記載の不織布。
(態様24)
前記不織布が前記接着性繊維を55質量%以上80質量%以下含む、態様20~23のいずれか1項に記載の不織布。
(態様25)
前記接着性繊維が芯鞘型複合繊維を含む、態様20~24のいずれか1項に記載の不織布。
(態様26)
前記低交絡部の幅が5mmより大きく50mm以下である、態様20~25のいずれか1項に記載の不織布。
(態様27)
態様20~26のいずれか1項に記載の不織布を含む、ワイパー。
(態様28)
接着性繊維を含む不織布の製造方法であって、
前記接着性繊維を含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含む、
不織布の製造方法。
(態様29)
接着性繊維を含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布の製造方法であって、
前記接着性繊維を含む繊維ウェブにおいて、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含み、
前記交絡工程が、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、前記高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、前記高交絡部と前記低交絡部とが平面視で交互に配置され、かつ、前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下となるように形成する、部分交絡工程を含み、
前記接着工程の前または後であって、かつ、前記交絡工程の前に、前記繊維ウェブに前記基材シートを積層して、複合ウェブを得る基材シート積層工程を含む、
不織布の製造方法。
(態様30)
接着性繊維を含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所を含み、
前記接着性繊維同士の交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
(態様31)
接着性繊維を含む繊維層、および前記繊維層と繊維同士の交絡により一体化された基材シートを含む不織布であって、
前記接着性繊維同士の接着箇所を含み、
前記接着性繊維同士の交絡箇所を含み、
前記不織布は、繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、繊維同士の交絡の度合いがより低い低交絡部とを含み、
前記高交絡部と前記低交絡部とは平面視で交互に配置されており、
前記低交絡部の幅が2mm以上50mm以下であり、
前記不織布の少なくとも一方の面について、以下の試験による毛羽抜け量が1.5mg以上20mg以下である、不織布。
(毛羽抜け量測定試験)
a)ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、3セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)3セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集める。
f)前記a)~e)の操作をn=3枚の不織布について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量とする。
(態様32)
態様30または31に記載の不織布を含む、ワイパー。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本開示の不織布の製造方法は、所定の繊維を含む繊維ウェブを接着工程に付した後、部分交絡工程を含む交絡処理に付するものであるため、繊維が緊密に交絡した高交絡部と繊維の自由度の高い低交絡部を含む不織布を与える。したがって、本開示の製造方法によれば、汚れの捕集性に優れ、かつ交絡工程のみで製造した不織布よりも大きな強力を有していて取り扱いやすく、毛羽立ちも生じにくい、ワイパーとして好適に使用できる不織布を得ることができる。
【符号の説明】
【0210】
10 高交絡部
20 低交絡部
100 不織布