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  • -モールドコイル及びリアクトル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-26
(45)【発行日】2025-09-03
(54)【発明の名称】モールドコイル及びリアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20250827BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20250827BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20250827BHJP
【FI】
H01F37/00 J
H01F37/00 M
H01F37/00 S
H01F27/32 170
H01F41/12 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024225751
(22)【出願日】2024-12-20
(62)【分割の表示】P 2021019353の分割
【原出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2025032386
(43)【公開日】2025-03-11
【審査請求日】2024-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍太
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-130410(JP,A)
【文献】特開2016-082047(JP,A)
【文献】特開2018-011019(JP,A)
【文献】特開2022-035571(JP,A)
【文献】実開昭58-158408(JP,U)
【文献】実開平03-085606(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/32、
H01F 30/00-38/12、38/16、41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のコイル端面と、当該一対のコイル端面と直交する4枚の平坦面及び4枚の湾曲面が交互に配された側面とにより外形が画成されている筒状のコイルと、
横辺壁とコの字状枠とを有し、当該横辺壁とコの字状枠とを矩形状に組み合わせて画成され、前記4枚の前記平坦面のうちの第一平坦面の一部又は全部を枠内に収めるように、前記コイルに配置される枠体と、
前記枠体の枠内を除いて前記コイルの一部又は全部を被覆するモールド樹脂と、
前記一対のコイル端面のうちの一方を被覆する平面と、前記横辺壁を有し、前記モールド樹脂が無い状態では前記コイルの筒軸方向に沿って可動なエッジ板と、
を備え、
前記コの字状枠は、
前記コイルの筒軸に沿って延び、当該コイルに密着する一対の縦辺部と、
当該一対の縦辺部の間に延びる一辺の横辺部と、
を有し、
前記横辺壁は、前記エッジ板の前記平面が被覆する前記コイル端面に密着し、
前記コの字状枠の前記横辺部は、前記エッジ板とは反対の前記コイル端面に密着し、
前記コの字状枠の前記一対の縦辺部と前記エッジ板の前記横辺壁は、当該横辺壁が、前記第一平坦面とは反対に位置する前記平坦面の方向への移動を規制する凹凸を有し、当該凹凸で嵌合し、
前記コイルは、前記横辺壁が密着する一方の前記コイル端面から前記横辺部が密着する他方の前記コイル端面までの全縦幅範囲に亘って、前記第一平坦面を前記モールド樹脂から露出させていること、
を特徴とするモールドコイル。
【請求項2】
前記一対の縦辺部は、前記第一平坦面を挟み、当該第一平坦面に隣接する2枚の前記湾曲面に密着し、
前記コイルは、前記一対の縦辺部が密着する一方の前記湾曲面から他方の前記湾曲面までの全横幅範囲に亘って、少なくとも前記第一平坦面を前記モールド樹脂から露出させていること、
を特徴とする請求項1記載のモールドコイル。
【請求項3】
前記縦辺部は、
前記第一平坦面に隣接する前記湾曲面と密着する密着面と、
前記密着面と隣接し、前記コイルの筒軸に沿って延び、前記密着面から離れる方向に拡がる、前記第一平坦面と直交する前記平坦面側の端面と、
前記端面と隣接し、前記密着面の反対面となる外面と、
を有し、
前記密着面と前記端面とが成す角度が概略直角であり、
前記端面と前記外面とが成す角度が概略直角であること、
を特徴とする請求項2記載のモールドコイル。
【請求項4】
前記密着面は、前記第一平坦面に隣接する前記湾曲面に加え、前記第一平坦面と直交する前記平坦面に及んで密着すること、
を特徴とする請求項3記載のモールドコイル。
【請求項5】
前記横辺壁は、前記一対の縦辺部の対向面間距離に等しく延び、
前記枠体は、前記一対の縦辺部間に前記横辺壁が嵌ることで画成されること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のモールドコイル。
【請求項6】
前記一対の縦辺部は、前記凹凸のうちの凹部と、当該凹部から続いて前記コイルの筒軸に沿って延びる溝部を有し、
前記横辺壁は、前記凹凸のうちの凸部を有し、
前記凸部は、前記凹部と嵌合すると共に、前記横辺壁の移動に伴って前記溝部内を摺動すること、
を特徴とする請求項1記載のモールドコイル。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のモールドコイルと、
前記モールドコイルが装着される磁性体を含むコアと、
を備えることを特徴とするリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを樹脂によってモールドして成るモールドコイル、及びこのモールドコイルを有するリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルはコイルとコアとを有する。コイルとコアとの電気的絶縁を図るべく、通常はコアを樹脂部材で被覆し、巻回されたコイルが樹脂部材の上からコアに装着される。このリアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する受動素子である。
【0003】
リアクトルは、多種多様の用途に使用されている。代表的なリアクトルとして、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等の車載用の昇圧回路に組み込まれる昇圧リアクトル、電動機回路に直列に接続し短絡時の電流を制限する直列リアクトル、並列回路間の電流分担を安定させる並列リアクトル、短絡時の電流を制限しこれに接続される機械を保護する限流リアクトル、電動機回路に直列に接続して始動電流を制限する始動リアクトル、送電線路に並列接続されて進相無効電力の補償や異常電圧を抑制する分路リアクトル、中性点と大地間に接続して電力系統の地絡事故時に流れる地絡電流を制限するために使用する中性点リアクトル、三相電力系統の1線地絡時に発生するアークを自動的に消滅させる消弧リアクトルなどがある。
【0004】
リアクトルには、コイルの外周を樹脂によって被覆したモールドコイルが使用される場合がある。この種のリアクトルでは、放熱性を確保するため、コイルの表面の一部をモールド樹脂で覆うことなく、露出させることがある。コイルの表面を露出させるために、コイル表面に金型を押し付けた状態でその周囲にモールド樹脂を充填させる案が提案されている(特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5869518号公報
【文献】特開2015-130410号公報
【文献】特開2018-011019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コイルは、巻軸に沿って1ターンごとに巻き位置をずらしながら導電線を螺旋状に巻回して筒状に作成され、4枚の平坦面と4枚の湾曲面とが交互に配された外形形状を有する。製造精度上の理由から、コイルの表面には凹凸が存在し、必ずしも表面が平滑面にはなっていない。そのため、金型にコイルを密着させようとしても、金型とコイルの表面の間に隙間が発生する。そうすると、この隙間から樹脂が侵入して、露出させようとした表面にバリが発生する虞がある。
【0007】
バリの発生を抑制するため、金型をコイルの表面に強く押し付けることが考えられる。金型をコイルの表面に強く押し付けることで、金型とコイル表面との隙間をなくしたり、金型によってコイル表面の捻れを矯正できる。しかし、金型をコイルの表面に強く押し付けると、コイルが傷ついたり、コイルの導電線の被覆を破損させて絶縁性を損なうなどの虞が生じる。そこで、コイルに予めカバーを配置し、カバーを介して金型でコイルを押圧し、コイルの表面の凹凸や捻れを解消することが考えられる。上型と下型を備える金型を用いる場合には、上型と対向するコイル上面にカバーを設置し、また下型と対向するコイル下面にカバーを設置すればよい。
【0008】
コイル下面を露出させる場合には、コイル下面に設置するカバーは矩形状の枠体となる。ここで、金型内のコイルは、樹脂の射出圧により、コイルの筒軸方向の長さを縮めるように圧縮される。コイルが圧縮されたとしても、コイル下面の端と枠と間に隙間が生じないように、コイル下面に設置する枠体は、太めの枠辺を有し、コイル下面の端から内部へ向けた縁領域を予め覆っておく必要がある。縁領域は、コイルの圧縮量相当にバッファを加えた範囲である。
【0009】
枠でコイル下面の縁領域を覆っておくことで、コイルが圧縮されたとしても、コイル下面の端は枠辺と重なりを維持する。従って、コイル下面の端と枠との間に隙間が生じず、隙間から樹脂漏れが発生し、バリが発生してしまう虞が抑制される。但し、枠体の枠辺で予め覆っておく縁領域の範囲としてバッファが必要なので、コイル下面と枠体との重なりは、樹脂の射出成型後も残ってしまう。コイル下面を筒軸方向全縦幅範囲に亘って、コイル下面を露出させることができない。
【0010】
このように、モールド樹脂でコイルの一部表面を被覆し、一部表面をモールド樹脂から露出させるリアクトルにおいては、コイルを傷付けることなく、しかもバリの発生を抑止することが要求されていたが、前記の従来技術では、このような要望に応えることはできなかった。
【0011】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、本発明の目的は、モールド樹脂のバリの発生を押さえつつ、コイルの露出範囲を拡げたモールドコイル、及びこのモールドコイルを備えるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のモールドコイルは、一対のコイル端面と、当該一対のコイル端面と直交する4枚の平坦面及び4枚の湾曲面が交互に配された側面とにより外形が画成されている筒状のコイルと、横辺壁とコの字状枠とを有し、当該横辺壁とコの字状枠とを矩形状に組み合わせて画成され、前記4枚の前記平坦面のうちの第一平坦面の一部又は全部を枠内に収めるように、前記コイルに配置される枠体と、前記枠体の枠内を除いて前記コイルの一部又は全部を被覆するモールド樹脂と、前記一対のコイル端面のうちの一方を被覆する平面と、前記横辺壁を有し、前記モールド樹脂が無い状態では前記コイルの筒軸方向に沿って可動なエッジ板と、を備え、前記コの字状枠は、前記コイルの筒軸に沿って延び、当該コイルに密着する一対の縦辺部と、当該一対の縦辺部の間に延びる一辺の横辺部と、を有し、前記横辺壁は、前記エッジ板の前記平面が被覆する前記コイル端面に密着し、前記コの字状枠の前記横辺部は、前記エッジ板とは反対の前記コイル端面に密着し、前記コイルは、前記横辺壁が密着する一方の前記コイル端面から前記横辺部が密着する他方の前記コイル端面までの全縦幅範囲に亘って、前記第一平坦面を前記モールド樹脂から露出させていること、を特徴とする。
【0013】
前記一対の縦辺部は、前記第一平坦面を挟み、当該第一平坦面に隣接する2枚の前記湾曲面に密着し、前記コイルは、前記一対の縦辺部が密着する一方の前記湾曲面から他方の前記湾曲面までの全横幅範囲に亘って、少なくとも前記第一平坦面を前記モールド樹脂から露出させているようにしてもよい。
【0014】
前記縦辺部は、前記コイルと密着する密着面と、前記密着面と隣接し、前記コイルの筒軸に沿って延び、前記密着面から離れる方向に拡がる、前記第一平坦面と直交する前記平坦面側の端面と、前記端面と隣接し、前記密着面の反対面となる外面と、を有し、前記密着面と前記端面とが成す角度が概略直角であり、前記端面と前記外面とが成す角度が概略直角であるようにしてもよい。
【0015】
前記密着面は、前記第一平面に隣接する前記湾曲面に加え、前記第一平面と直交する前記平坦面に及んで密着するようにしてもよい。
【0016】
前記横辺壁は、前記一対の縦辺部の対向面間距離に等しく延び、前記枠体は、前記一対の縦辺部間に前記横辺壁が嵌ることで画成されるようにしてもよい。
【0017】
前記第一平坦面とは反対に位置する前記平坦面を被覆する板体を備え、前記板体は、前記エッジ板が被覆する前記端面の位置を超えて延長された庇部を有し、前記枠体の前記庇部は、前記エッジ板の側面に接触しているようにしてもよい。
【0018】
前記コの字状枠の前記一対の縦辺部と前記エッジ板の前記横辺壁は、当該横辺壁が、前記第一平坦面とは反対に位置する前記平坦面の方向への移動を規制する凹凸を有し、当該凹凸で嵌合しているようにしてもよい。
【0019】
前記一対の縦辺部は、前記凹凸のうちの凹部と、当該凹部から続いて前記コイルの筒軸に沿って延びる溝部を有し、前記横辺壁は、前記凹凸のうちの凸部を有し、前記凸部は、前記凹部と嵌合すると共に、前記横辺壁の移動に伴って前記溝部内を摺動するようにしてもよい。
【0020】
このモールドコイルと、モールドコアが装着された磁性体を含むコアとを備えるリアクトルも、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コイルの露出領域を拡げてもバリの発生が抑制され、放熱性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】各部を被覆する部材を省いて示したリアクトルの斜視図である。
図2】被覆されたコイルを示す下部斜視図である。
図3】コイルの各被覆部材を示し、(a)はアッパーカバーを示し、(b)はエッジ板を示し、(c)はロアーカバーを示し、(d)はモールド樹脂を示す斜視図である。
図4】コイルとアッパーカバーの下部斜視図である。
図5】コイルとエッジ板の斜視図であり、(a)は正面を下方から見た斜視図であり、(b)は背面側方から見た斜視図である。
図6】コイルとロアーカバーの下部斜視図である。
図7】コイルと縦辺部の拡大部分断面図である。
図8】コイル被覆樹脂の形成を示す遷移図である。
図9】金型内でのコイルを示し、エッジ板側から見た正面図である。
図10】金型内でコイルと縦辺部に作用する力を示す拡大部分断面図である。
図11】金型内でのコイルの圧縮を示す遷移図である。
図12】金型内でのコイルの圧縮を示す下面図であり、(a)は圧縮前、(b)は本実施形態に係るモールドコイルの圧縮後、(c)は横辺壁とコの字状壁が繋がっている場合の圧縮後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本実施形態のリアクトルの主構成を示す斜視図であり、説明の都合上、各部を被覆する部材を省いて示してある。リアクトル100は、2個のコイル5,5と1個の環状のコア1を備えている。2個のコイル5,5はコア1に装着されている。コイル5,5は、通電により巻数に従って磁束を発生させる。コア1は、コイル5,5が発生させた磁束を真空よりも高い透磁率に従って通す閉磁路となる。即ち、このリアクトル100は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。
【0025】
コア1は、圧粉磁心、フェライト磁心、メタルコンポジットコア又は積層鋼板等の磁性体を含んでいる。圧粉磁心は、磁性粉末を押し固めた圧粉成形体を焼鈍したものである。磁性粉末は、鉄を主成分とし、純鉄粉、鉄を主成分とするパーマロイ(Fe-Ni合金)、Si含有鉄合金(Fe-Si合金)、センダスト合金(Fe-Si-Al合金)、アモルファス合金、ナノ結晶合金粉末、又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが挙げられる。メタルコンポジットコアは、磁性粉末と樹脂とが混練され成型されて成るコアである。
【0026】
コイル5は、銅線等の導電線59を筒状に巻いた巻回体である。コイル5は、巻き軸に沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に導電線59を巻回することで形成される。両コイル5,5は、巻き始めと巻き終わりから導電線59が引き出されている。各導電線59とバスバーとが電気的に接続されることによって、両コイル5,5は電気的に並列又は直列に接続されている。
【0027】
このコイル5は、第1端面55と第2端面57と、これら第1端面55と第2端面57とを繋ぐ側面とにより筒状に画成されている。第1端面55と第2端面57は、導電線59の巻き始め及び巻き終わりに位置し、筒軸と直交する。第1端面55と第2端面57は、導電線59の巻回態様に合わせて環形状を有する。
【0028】
コイル5の側面は、第1端面55と第2端面57と直交し、筒軸と平行な4枚の湾曲面及び4枚の平坦面を交互につなぎ合わせて成る。即ち、コイル5は、コア1の環状形状が現れる面と平行な平坦面である上面51を有し、また上面51とは反対側に平坦な下面52を有する。コイル5は、上面51と下面52に対して直交する平坦面である2枚の横面54を有する。コイル5は、下面52と横面54との間に下側湾曲面53を有し、上面51と横面54との間に上側湾曲面56を有する。
【0029】
尚、コイル5における平坦面とは、湾曲面との相対的な比較において平坦な面であり、導電線59の巻き膨らみによって緩やかな曲率で大きな弧を描いた面も平坦面に含まれる。上下は、モールド成型によってコイル5,5を被覆する際に、コイル5,5を収容する上型と下型に倣ったものであり、リアクトル100が設置対象の実機に搭載された際の位置関係や方向を指すものではない。
【0030】
以下、横方向とは、コイル5の下面52と平行で、コイル5の横面54と直交するY軸方向を指す。コイル5の筒軸から横面54への向きをコイル横方向における外側という。コイル横方向外側の反対をコイル横方向内側という。縦方向とは、横方向と直交し、下面52と平行で、筒軸に沿い、横面54と平行なX軸方向をいう。第1端面55と第2端面57に等距離の中心位置から第1端面55や第2端面57への向きをコイル縦方向における外側という。コイル縦方向外側の反対をコイル縦方向内側という。上下方向とは、上面51と下面52に対して直交するZ軸方向をいう。下面52から上面51に向かう方向を上側といい、上面51から下面52に向かう方向を下側という。
【0031】
図2は、被覆されたコイル5,5を示す下部斜視図である。図2に示すように、2つのコイル5,5は、各々がモールドコイル2である。モールドコイル2は、コイル5をコイル被覆樹脂3で覆って成る。コイル5,5は、コイル被覆樹脂3に被覆されることで、コア1と電気的に絶縁された上で、コア1に嵌っている。また、コイル被覆樹脂3で被覆されることにより、コイル5,5の振動が抑制される。
【0032】
このコイル被覆樹脂3は、絶縁性及び耐熱性を備えた樹脂が好ましく、例えば、PPS(Polyphenylene Sulfide)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合が挙げられる。コイル被覆樹脂3の材料に熱伝導性のフィラーを混入させてもよい。
【0033】
但し、コイル被覆樹脂3には、コイル5の放熱性の向上のために開口58が形成されている。開口58は、コイル5の表面のうち、コイル横方向においてはコイル5の下面52全域及び下側湾曲面53のうちの下面52に隣接する下側縁領域53aを露出させている。また、開口58は、コイル5の表面のうち、コイル縦方向においては、第1端面55との境界から第2端面57との境界までの下面52全域を露出させている。
【0034】
開口58は、コイル被覆樹脂3が備える枠体58aによって画成されている。枠体58aの枠内が開口58となる。枠体58aは、全周に亘って下面52よりも下方へ立ち上がっている。コイル被覆樹脂3は、最終的には樹脂の射出成型によって完成するが、枠体58aによって枠内への樹脂流入が阻まれ、開口58が形成される。
【0035】
図3は、このような枠体58aを備えるコイル被覆樹脂3の各構成要素を示す斜視図である。図2及び図3の(a)~(d)に示すように、コイル被覆樹脂3は、図2及び図3の(a)に示すアッパーカバー6、図2及び図3の(b)に示すエッジ板8、図2及び図3の(c)に示すロアーカバー7、及び図2及び図3の(d)に示すモールド樹脂9を組み合わせて構成されている。
【0036】
図3の(a)に示すように、アッパーカバー6は、上部板体61及びサイド湾曲板62を有する。上部板体61及びサイド湾曲板62は、一体成型等により継ぎ目無く一繋がりに連接している。上部板体61は、コイル5の上面51と平行に拡がる中実の平坦板であり、コイル5の上面51を覆う。サイド湾曲板62は、上部板体61のコイル横方向両外側縁から延出し、上側湾曲面56と、横面54のうちの上側湾曲面56に隣接する上側縁領域を覆う。
【0037】
図3の(b)に示すように、エッジ板8は、コイル5の第1端面55に現れる導電線59を覆う平面83を有する。エッジ板8の下端には、平面83と同一平面に拡がる横辺壁81が形成されている。平面83と横辺壁81は、一体成型等により継ぎ目無く一繋がりに連接している。横辺壁81は、コイル横方向においてはコイル5の下面52全領域、及び下側湾曲面53のうちの下面52に隣接する両下側縁領域53aに亘って延び、上下方向においては下面52よりも下方まで延びている。
【0038】
図3の(c)に示すように、ロアーカバー7は、コの字状枠71とエッジ環状板74を有する。コの字状枠71とエッジ環状板74は、一体成型等により継ぎ目無く一繋がりに連接している。コの字状枠71は、矩形の1辺を欠いたコの字の枠形状を有し、コイル5の下面52全領域、及び下側湾曲面53のうちの下面52に隣接する下側縁領域53aを三辺で囲んでいる。コの字状枠71は、下方向においては下面52よりも下方まで延びている。
【0039】
一方、上方向においては、コの字状枠71は、下側縁領域53a以外の下側湾曲面53、及び横面54のうちの下側湾曲面53に隣接する下側縁領域53aまで拡大し、これらを覆っている。エッジ環状板74は、コの字状枠71のコイル横方向に延びる辺から上方へ延出し、コの字状枠71と直交して上側へ延び、コイル5の第2端面57を覆っている。
【0040】
モールド樹脂9は、アッパーカバー6とロアーカバー7とエッジ板8が設置されたコイル5を金型に収容し、樹脂を金型内に射出して固化することで形成される。金型内では、エッジ板8のうちのコイル縦方向外側を向く外面と、ロアーカバー7のエッジ環状板74のうちのコイル縦方向外側を向く面とを除き、アッパーカバー6とロアーカバー7は金型と接触する。
【0041】
そのため、図3の(d)に示すように、このモールド樹脂9は、アッパーカバー6とロアーカバー7との間の隙間である横面54の残部、第1端面55、第2端面57及びコイル5の内周面を覆う。モールド樹脂9は、第1端面55をエッジ板8の上から覆い、第2端面57をロアーカバー7のエッジ環状板74の上から覆う。
【0042】
開口58を囲む枠体58aは、ロアーカバー7のコの字状枠71とエッジ板8の横辺壁81とが組み合わされて画成されている。横辺壁81がコの字状枠71に嵌まり込むことで、横辺壁81とコの字状枠71とにより四方に辺を有する矩形の枠体58aが画成されている。以下、アッパーカバー6、エッジ板8及びロアーカバー7について更に詳述する。
【0043】
図4は、コイル5とアッパーカバー6の拡大斜視図である。図4に示すように、アッパーカバー6は、庇部63を備えている。この庇部63は、上部板体61及びサイド湾曲板62の端部が、延び方向を変えずにコイル5の第1端面55を超えて延長されることで、コイル5の外側に張り出している。庇部63は、樹脂射出成型前はエッジ板8の平面83の厚み相当の長さで張り出している。但し、樹脂射出成形時にコイル5は圧縮されるので、樹脂射出成型後においては、庇部63は、コイル5の圧縮量相当が加わった長さで張り出している。
【0044】
尚、この庇部63は、端部がコイル5の筒軸と直交するように折り込まれており、コイル縦方向において第1端面55の一部の縁と重なっている。また、上部板体61は、第1端面55及び第2端面57の両側から上部板体61の中心縁部分を欠く切り込み64が形成されており、庇部63は、切り込み64によってコイル横方向に分断されている。
【0045】
図5は、コイル5とエッジ板8の拡大斜視図であり、(a)は正面を下方から見た斜視図であり、(b)は背面側方から見た斜視図である。エッジ板8の平面83は、コイル5の導電線59の巻回態様に倣って環形状を有しており、筒軸領域が開いている。横辺壁81は、平面83を延長するように方向を変えずに延び、コイル5の下面52を超えて下方に延びている。即ち、横辺壁81は、開口58に収める一方の下側縁領域53aの上限又はこの上限よりも上側から、開口58に収まる下面52よりも下方まで拡がっている。
【0046】
横辺壁81のコイル横方向に沿った長さは、開口58に収まる一方の下側縁領域53aの外端から他方の下側縁領域53aの外端に亘る。横辺壁81の最下端縁は高さ一定でコイル横方向に直線的に延びている。この横辺壁81には、コイル横方向の両側部に凸部82が形成されている。凸部82は、横辺壁81からコイル横方向に突出している。
【0047】
図6は、コイル5とロアーカバー7の拡大斜視図である。図6に示すように、ロアーカバー7のコの字状枠71は、一対の縦辺部72と一辺の横辺部73とによりコの字形状を有する。一対の縦辺部72が平行に並び、一辺の横辺部73が一対の縦辺部72の並び合う端部同士を繋いでいる。
【0048】
縦辺部72は垂直部722を有する。この垂直部722は、開口58の周囲に立ち上がる枠体58aの壁の一部である。垂直部722は、上下方向においては、開口58から露出させる下側縁領域53aの上限位置に密着して始まり、コイル5の下面52が拡がる平面に対して垂直に立ち上がり、下面52よりも下方まで拡がっている。即ち、一対の縦辺部72のうちの両垂直部722間は、コイル5の下面52全横幅に加え、開口58から露出させる両下側湾曲面53のうちの下側縁領域53aを加えた距離分離間している。
【0049】
また、垂直部722は、コイル縦方向、換言するとコイル5の筒軸方向に沿って延び、垂直部722の最下端縁は、コイル縦方向に高さ一定で直線的に延びている。垂直部722の第1端面55側の端部は、モールド樹脂9の射出圧によって圧縮される前のコイル5よりも、エッジ板8の横辺壁81の厚みと同一か、厚み以上に突出している。
【0050】
横辺部73は、コイル横方向、換言するとコイル5の筒軸方向と直交し、且つコイル5の下面52と平行に延び、コイル5の第2端面57に沿って当該第2端面57を完全に横断して延びている。横辺部73のコイル横方向に沿った長さは、開口58に収まる一方の下側縁領域53aの外端から他方の下側縁領域53aの外端に及ぶ。また、横辺部73は、下面52を開口58内に収められるように、下面52よりも下方まで拡がっている。横辺部73の最下端縁は垂直部722と同一高さで直線的に延びている。
【0051】
このようなコの字状枠71において、縦辺部72の垂直部722間にエッジ板8の横辺壁81が入り込み、エッジ板8の横辺壁81と横辺部73が対向辺になることにより、縦辺部72の垂直部722と横辺壁81と横辺部73とにより矩形の枠体58aが形成される。
【0052】
図7は、コイル5と縦辺部72の拡大部分断面図である。図6及び図7に示すように、縦辺部72は、垂直部722に加えて密着部721を備えている。密着部721は、垂直部722の上端に継ぎ目無く一繋ぎに延設され、縦辺部72は、この密着部721で下側湾曲面53に密着する。この密着部721は、垂直部722との接続域及び横辺部73との接続域を除き、密着面721aと上側端面721bと外面721cとによって画成されている。縦辺部72周りに一周すると、密着面721a、密着面721aに続き上側端面721b、上側端面721bに続き外面721c、外面721cに続き垂直部722、垂直部722に続き密着面721aとなる。
【0053】
密着面721aは、密着部721の内周面である。密着面721aは、コイル5の下側縁領域53aの上限から下側湾曲面53の上限までの円弧範囲と一致して湾曲し、更にコイル5の横面54に沿って直線的に延びている。この密着面721aは、下側湾曲面53のうちの下側縁領域53aの上限から上側と、横面54の下方領域に密着する。
【0054】
上側端面721bは、密着面721aと隣接する上側の端面である。上側端面721bは、密着面721aと隣接し、横面54から離れる方向に拡がる。上側端面721bは、密着面721aや横面54に対して概略直角となる方向に拡がる。外面721cは、上側端面721bと隣接し、密着部721の外周面を構成する。外面721cは密着面721aの反対面である。外面721cは、上側端面721bとの成す角度が概略直角に拡がり、横面54及び密着面721aと平行である。
【0055】
これら概略直角は、上側端面721bと外面721cとの境界部に作用する外力が、密着面721aと上側端面721bとの境界部に効率良く伝達される角度である。即ち、概略直角とは、コイル5の下側湾曲面53が矯正され、モールド樹脂9の射出圧によって、縦辺部72の上端がコイル横方向外側に曲がらなければよく、90度を挟んだ所定の角度範囲を意味する。
【0056】
図6に戻り、縦辺部72は、垂直部722の第1端面55側の端部に凹部75を備えている。凹部75は、縦辺部72のうち、垂直部722のコイル横方向内側の側面、即ちコの字状枠71の枠内に面する側面に形成され、コイル横方向外側の方向に深い。凹部75は、上下及びコイル横方向外側に壁を有する。凹部75と、エッジ板8の横辺壁81に形成されている凸部82とは形状が一致している。更に、縦辺部72には、溝部76が形成されている。溝部76は、凹部75から続いて、垂直部722のコイル横方向内側の側面をコイル縦方向に沿って延びる。溝部76の各位置の断面は、凹部75と一致する。
【0057】
そのため、凹部75と凸部82とは嵌合可能となっている。また、凹部75に嵌った凸部82は、凹部75がコイル横方向に深く、上下に壁があり、凸部82がコイル横方向に突出しているため、コイル5の上下方向の位置が規制されることになる。一方、凹部75に嵌まり込んだ凸部82が溝部76内をコイル縦方向に沿って摺動可能になっている。
【0058】
これらアッパーカバー6、ロアーカバー7、エッジ板8及びモールド樹脂9を用いたコイル被覆樹脂3の形成方法は次の通りである。図8は、コイル被覆樹脂3の形成を示す遷移図である。図8の(a)に示すように、下型内にロアーカバー7が載置された状態で、コイル5を下型内に収容し、ロアーカバー7にコイル5を載置する。コイル5は、ロアーカバー7の密着部721に挟まれるように載置され、密着部721の密着面721aに、コイル5の横面54と下側湾曲面53を沿わせる。また、ロアーカバー7のエッジ環状板74にコイル5の第2端面57を沿わせる。
【0059】
ロアーカバー7は、垂直部722で下型に着地している。下面52よりも下方に延びる垂直部722を有するロアーカバー7に載置されたコイル5は、下面52が下型から浮いた状態になっている。また、コの字状枠71は、コイル横方向において、下面52全域と下側湾曲面53の下側縁領域53aを枠内に収めている。
【0060】
図8の(b)に示すように、コイル5をロアーカバー7上に載置した後、エッジ板8を第1端面55に平面83が接触するように設置する。このとき、横辺壁81のコイル横方向両外側に突出している凸部82を、ロアーカバー7の縦辺部72に形成され、コイル横方向両外側に向けて深くなっている凹部75に嵌め込む。横辺壁81は、コイル横方向両外側の端面が、縦辺部72のコイル横方向両内側の側面に接触するように、コの字状枠71の内部に嵌め込まれる。
【0061】
これにより、横辺壁81がコの字状枠71の横辺部73の対向辺に位置し、横辺壁81とコの字状枠71とにより、矩形の枠体58aが画成される。この枠体58aは、コイル横方向において、下面52全域と下側湾曲面53の下側縁領域53aを枠内に収めている。また、横辺壁81が第1端面55に接触し、横辺部73が第2端面57に接触するため、枠体58aは、コイル縦方向において、第1端面55との境界から第2端面57との境界に亘って、下面52全域を枠内に収めている。そして、横辺壁81とコの字状枠71の最下端は同一の高さになるように、下方への延設量が設定されているため、枠体58aは全周に亘って下型に隙間無く着地している。
【0062】
図8の(c)に示すように、エッジ板8をコイル5の第1端面55に沿わせて設置した後、アッパーカバー6をコイル5に設置する。アッパーカバー6の上部板体61をコイル5の上面51に一致させ、サイド湾曲板62をコイル5の上側湾曲面56に一致させる。このとき、庇部63は、エッジ板8の上側面83aに被さる。エッジ板8の上側面83aと庇部63の内面は、各々が第1端面55の外形に一致した位置及び形を有するため、庇部63は、エッジ板8の上側面83aに接触する。
【0063】
尚、下型へのコイル5、アッパーカバー6、ロアーカバー7及びエッジ板8の収容手順は、これに限らない。例えば、ロアーカバー7、エッジ板8及びアッパーカバー6を装着したコイル5を下型に収容するようにしてもよい。装着手順もロアーカバー7、エッジ板8、アッパーカバー6の順番に装着するようにしてもよいし、異なる装着手順であってもよい。コイル5にモールド樹脂9を除くコイル被覆樹脂3を装着してから下型に収容するようにすると、コイル5はモールド樹脂9を除くコイル被覆樹脂3で保護され、金型に入れる際に誤ってコイル5が金型に衝突してしまうことを防止できる。
【0064】
モールド樹脂9を除くコイル被覆樹脂3でコイル5を保護してから金型に装着する場合、アッパーカバー6の庇部63は、エッジ板8やエッジ環状板74に被さり、ロアーカバー7とエッジ板8が脱落を抑制する機能も果たし、金型へのコイル5の運搬性を向上させている。
【0065】
下型内にコイル5、アッパーカバー6、ロアーカバー7及びエッジ板8を収めた後、上型をアッパーカバー6の上から被せ、モールド樹脂9が金型内に注入される。図9は、金型内でのコイルを示し、エッジ板側から見た正面図である。図9に示すように、金型内では、上型がアッパーカバー6の上部板体61を押圧し、アッパーカバー6には下方への力P1が作用する。アッパーカバー6により被覆されているコイル5もアッパーカバー6を介して下方に押圧される。
【0066】
このコイル5は、金型内でロアーカバー7に載置されている。そのため、ロアーカバー7には、コイル5を介して下型の方向への力P2が作用し、ロアーカバー7のコの字状枠71は下型に密着する。従って、金型内では、コの字状枠71と下型との間からモールド樹脂9の樹脂が枠体58a内に侵入することが阻止されている。
【0067】
また、ロアーカバー7とエッジ板8とは、ロアーカバー7側の凹部75とエッジ板8側の凸部82とが嵌合しており、ロアーカバー7からエッジ板8へ、凹部75と凸部82を介して下方への力P3が伝達し、エッジ板8の横辺壁81には下型へ押し付けられる力P4が発生する。この力P4により、エッジ板8の横辺壁81は下型に密着する。そのため、横辺壁81はコの字状枠71と分離しているが、横辺壁81には、凹部75と凸部82の嵌合部経由で、下型へ押し付けられる力P4が発生する。従って、横辺壁81と下型との間からモールド樹脂9の樹脂が枠体58a内に侵入することが阻止されている。
【0068】
更に、エッジ板8にはアッパーカバー6の庇部63が被さっており、庇部63がエッジ板8の上側面83aを下方へ押圧する力P5が発生する。この力P5は、横辺壁81が下型に押し付けられる力P4に加わり、横辺壁81を更に確実に下型へ押し付けることができる。
【0069】
図10は、金型内でコイル5と縦辺部72に作用する力を示す拡大部分断面図である。金型内では、ロアーカバー7の縦辺部72の外面721cが下型に当接している。上型がアッパーカバー6を加圧したことによって、コイル5の下側湾曲面53には、縦辺部72の密着面721aに押し付けられる力P6が発生する。この縦辺部72は、外面721cで下型に支えられている。そのため、コイル5の下側湾曲面53は、コイル5と縦辺部72の密着部721との間で押し潰される。
【0070】
ここで、製造精度上の理由から、コイル5の表面には捻れや凹凸が存在し、必ずしも表面が平滑面にはなっていない。特に、コイル5の下側湾曲面53には、1ターン中に一定の曲率を維持し、また全ターンで同じ曲率とする必要があるため、捻れや凹凸が発生し易く、凹凸も大きくなり易い。しかし、コイル5の下側湾曲面53は、密着部721に押し付けられて捻れや凹凸が矯正され、縦辺部72と隙間無く密着する。従って、縦辺部72とコイル5との間を伝ってモールド樹脂9の樹脂が枠体58a内に侵入することが阻止されている。
【0071】
また、密着面721aと上側端面721bとが成す角度及び上側端面721bと外面721cとが成す角度は、共に直角である。このため、下型が外面721cを支える力によって、上側端面721b側で、横面54と縦辺部72が密着する力P7が効率良く発生している。この力P7によって、モールド樹脂9の樹脂が枠体58a内に侵入する入口となり得る縦辺部72とコイル5の上側境界が強固に塞がれている。尚、密着面721aと上側端面721bとが成す角度及び上側端面721bと外面721cとが成す角度が共に直角であることが、最もバランスが採れて望ましいが、モールド樹脂9の射出圧に応じて、厳密な直角から鈍角側又は鋭角側としてもよい。
【0072】
しかも、縦辺部72は、上側端面721bが横面54に掛かるまで延長されている。ここで、アッパーカバー6を押圧する力P1が伝達して、コイル5がロアーカバー7を押す力が下側湾曲面53から縦辺部72に伝わるとき、コイル横方向外側への成分が発生する。しかし、横面54は、アッパーカバー6を押圧する力P1の方向と直交している。従って、横面54から縦辺部72には、コイル横方向外側への力は作用していない。従って、下型が外面721cを支える力は、上側端面721b付近において、コイル横方向外側への力成分によって減殺されることはなく、更に効率良く横面54と縦辺部72とが密着する力P7に変わっている。
【0073】
図11は、金型内でのコイルの圧縮を示す遷移図である。金型内にコイル5が収容され、上型でアッパーカバー6が押圧されると、金型内にモールド樹脂9の樹脂が注入される。モールド樹脂9の樹脂注入口は、コイル5の第1端面55と対向する位置に少なくとも設けられており、モールド樹脂9の樹脂は、コイル5の筒軸方向に沿ってコイル5の第1端面55に向かって射出させる。即ち、コイル5にはコイル縦方向内側へ向かう射出圧P8がかかる。
【0074】
コイル縦方向内側へ向かう射出圧P8によりコイル5は長さD1分圧縮され、コイル5のコイル縦方向の長さは、圧縮前の長さL1から圧縮後の長さL2へ減少にする。ここで、コイル5の第1端面55にはエッジ板8が被さっており、射出圧P8はエッジ板8の平面83にかかり、コイル5はエッジ板8を介して射出圧P8を受ける。
【0075】
エッジ板8は、アッパーカバー6やロアーカバー7と分離した独立した部材であり、コイル縦方向については可動である。即ち、凸部82と凹部75の嵌合は、エッジ板8の上下方向の移動を規制するが、エッジ板8のコイル縦方向への移動については規制していない。そのため、エッジ板8を介してコイル5が射出圧P8を受け、この射出圧P8によりコイル5が長さD1分圧縮されたとき、エッジ板8もコイル縦方向内側に長さD1分移動し、コイル5の第1端面55に密着し続ける。
【0076】
このとき、横辺壁81に延設された凸部82は、凹部75から続く溝部76を摺動する。このため、エッジ板8の横辺壁81は、射出圧P8によるコイル縦方向への移動中も上下方向への規制を受け続け、下型との密着を保つ。従って、横辺壁81と下型との間からモールド樹脂9の樹脂が枠体58a内に侵入することが、射出圧P8による横辺壁81のコイル縦方向への移動中においても阻止されている。
【0077】
図12は、金型内でのコイル5の圧縮を示す下面図であり、(a)は圧縮前、(b)は本実施形態に係るモールドコイルの圧縮後、(c)は横辺壁とコの字状壁が繋がっている場合の圧縮後を示す。
【0078】
図12の(a)及び(b)に示すように、横辺壁81がコの字状枠71から分離して独立して移動可能となっているため、コイル5の圧縮後の長さに合わせて枠体58aのコイル縦方向の長さが変わり、コイル5と枠体58aの全周が密着し続ける。そのため、コイル5の縦方向長さの変化が生じたとしても、開口58内にモールド樹脂9の樹脂が入ってバリが生じることが抑制される。
【0079】
即ち、図12の(a)及び(c)に示すように、仮に、横辺壁81とコの字状枠71が一体であり、横辺壁81の位置が不動であるものとする。この場合、コイル5の圧縮後の長さが変化しても、枠体58aのコイル縦方向の長さが不変である。そうすると、コイル5の第1端面55と横辺壁81との間に隙間58bが生じてしまい、コイル5と枠体58aの全周が密着し続けることができない。
【0080】
この隙間58bの発生を阻止するため、横辺壁81の位置が不動である場合には、横辺壁81の下方をコイル5の下面52に沿って隙間58b分以上の長さで折り返しておき、隙間58bが発生しても、横辺壁81で隙間58bを覆い隠す必要がある。但し、隙間58bの長さには個体差があるため、横辺壁81の下面52に沿った折り返しにはバッファが必要である。そのため、コイル5の圧縮後も、この折り返しがコイル5の下面52に掛かる。従って、コイル縦方向においてコイル5の下面52全域を開口58に露出させることができない。
【0081】
一方、横辺壁81がコの字状枠71から分離して独立して移動可能となっている場合、隙間58bは生じないため、横辺壁81の下方を下面52に沿って折り返しておく必要はなく、下面コイル縦方向においてコイル5の下面52全域を開口58に露出させている。これにより、このモールドコイル2では、モールド樹脂9とアッパーカバー6とロアーカバー7とエッジ板8とにより成るコイル被覆樹脂3から、コイル縦方向においては下面52全域、コイル横方向においては下面52全域と両下側湾曲面53の両下側縁領域53aが、バリの発生が抑制されつつ露出する。
【0082】
以上のように、このモールドコイル2及びリアクトル100は、コイル5に配置される枠体58aと、この枠体58aの枠体を除いてコイル5を被覆するモールド樹脂9とを備えるようにした。枠体58aは、横辺壁81とコの字状枠71とを有し、当該横辺壁81とコの字状枠71とを矩形状に組み合わせて画成され、4枚の平坦面のうちの第一平坦面として例えば下面52を枠内に収める。
【0083】
横辺壁81は、エッジ板8に設けられるようにし、このエッジ板8は、第1端面55を被覆する平面83を有し、モールド樹脂9が無い状態ではコイル5の筒軸方向に沿って可動とした。一方、コの字状枠71は、コイル5の筒軸に沿って延び、当該コイル5に密着する一対の縦辺部72と、一対の縦辺部72の間に延びる一辺の横辺部73とを有する。
【0084】
そして、横辺壁81は、エッジ板8の平面83が被覆する第1端面55に密着し、コの字状枠71の横辺部73は、エッジ板8とは反対の第2端面57に密着し、コイル5は、横辺壁81が密着する第1端面55から横辺部73が密着する第2端面57までの全縦幅範囲に亘って、例えば下面52等の第一平坦面をモールド樹脂9から露出させているようにした。
【0085】
これにより、コイル5が射出圧P8によりコイル縦方向に圧縮しても横辺壁81が追従して第1端面55に密着し続けるため、バリを発生させることなく、コイル縦方向においては下面52等の第一平坦面全域を開口58に収めることができ、モールドコイル2やリアクトル100の放熱効果を高めることができる。
【0086】
また、一対の縦辺部72は、例えば下面52等の第一平坦面を挟み、当該第一平坦面に隣接する下側湾曲面53等の2枚の湾曲面に密着するようにした。そして、コイル5は、一対の縦辺部72が密着する一方の湾曲面から他方の湾曲面までの全横幅範囲に亘って、少なくとも第一平坦面をモールド樹脂9から露出させているようにした。これにより、コイル5に生じる捻れや凹凸を矯正して、コイル5と縦辺部72とを密着させることができる。従って、バリが発生することなく更に広い露出領域をコイル5に形成することができ、放熱効果を更に高めることができる。
【0087】
また、縦辺部72においては、密着面721aと上側端面721bとが成す角度が概略直角であり、上側端面721bと外面721cとが成す角度が概略直角であるようにした。密着面721aは、第一平面に隣接する湾曲面と密着する。上側端面721bは、密着面721aと隣接し、コイル5の筒軸に沿って延び、密着面721aから離れる方向に拡がり、第一平坦面と直交する。外面721cは、上側端面721bと隣接し、密着面721aの反対面となる。これにより、密着面721aをコイル5に強く押し付けることができ、コイル5に生じる捻れや凹凸を更に精度良く矯正し、コイル5と縦辺部72とを更に密着させることができる。従って、バリの発生を更に抑制できる。
【0088】
また、密着面721aは、例えば下面52等の第一平面と直交する横面54等の平坦面に及んで密着するようにした。これにより、下型が縦辺部72を支える力は、効率良く密着面721aをコイル5に押し付ける力になり、コイル5と縦辺部72とを更に効率良く密着させることができる。即ち、コイル5の下側湾曲面53から縦辺部72へ生じるコイル横方向の力成分によっては減殺されない。しかも、コイル5と縦辺部72との隙間の入口を塞ぐことができる。
【0089】
また、第一平坦面とは反対に位置する平坦面を被覆する板体、例えば上面51を被覆する上部板体61を備え、この板体は、エッジ板8が被覆する第1端面55の位置を超えて延長された庇部63を有するようにした。これにより、庇部63は、エッジ板8の上側面83aに接触し、アッパーカバー6が上型によって押圧されるときに、このエッジ板8の上側面83aを介して、横辺壁81を有するエッジ板8を押圧する。そのため、横辺壁81は、コの字状枠71と分離していても下型に密着し続け、横辺壁81と下型との間からモールド樹脂9の樹脂が枠体58aの枠内に漏れることを抑制できる。
【0090】
また、コの字状枠71の一対の縦辺部72とエッジ板8の横辺壁81は、当該横辺壁81が、第一平坦面とは反対に位置する平坦面の方向への移動を規制する凹部75及び凸部82を有し、当該凹部75と凸部82で嵌合しているようにした。これにより、凹部75及び凸部82は、横辺壁81が上下方向へ移動しようともしても、下方へ押し止める。そのため、横辺壁81は、コの字状枠71と分離していても下型に密着し続け、横辺壁81と下型との間からモールド樹脂9の樹脂が枠体58aの枠内に漏れることを抑制できる。
【0091】
この凹部75からは、コイル5の筒軸に沿って延びる溝部76が続き、横辺壁81は、凸部82で溝部76内を摺動するようにした。これにより、横辺壁81がコイル5の圧縮に追従して移動中も下型に密着し続け、横辺壁81と下型との間からモールド樹脂9の樹脂が枠体58aの枠内に漏れることを抑制できる。
【0092】
以上の本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【0093】
まず、コイル5は、アッパーカバー6を除くコイル被覆樹脂3によって被覆されるようにしてもよい。即ち、アッパーカバー6を排除してもよい。この場合、エッジ板8とコイル5の上面51に上型を直接押し付けるようにすればよい。例えば、コイル5の下面52は金属製の冷却板等に放熱シートを介して接触させるために、コイル5の下方表面の傷は絶縁不良を発生させる虞がある一方、コイル5の上面51の近くには金属部材等が配置されず、コイル5の上面51に対する傷防止対策を下面52のように施す必要がない場合などにおいて、アッパーカバー6は必須ではない。
【0094】
また、エッジ板8の凸部82、並びにロアーカバー7の縦辺部72の凹部75及び溝部76を排除してもよい。エッジ板8に上型からの押圧する力P1が直接又は間接的に伝えることできれば、横辺壁81を下型に密着させることができる。凸部82、凹部75及び溝部76の嵌合により、横辺壁81をより確実に下型に密着させたり、射出圧によって移動している場合でも下方へより確実に押し止めることができる。一方、凸部82、凹部75及び溝部76が無い場合には、横辺壁81がコイル5に追従して移動し易くなる。
【符号の説明】
【0095】
100 リアクトル
1 コア
2 モールドコイル
3 コイル被覆樹脂
5 コイル
51 上面
52 下面
53 下側湾曲面
53a 下側縁領域
54 横面
55 第1端面
56 上側湾曲面
57 第2端面
58 開口
58a 枠体
58b 隙間
59 導電線
6 アッパーカバー
61 上部板体
62 サイド湾曲板
63 庇部
64 切り込み
7 ロアーカバー
71 コの字状枠
72 縦辺部
721 密着部
721a 密着面
721b 上側端面
721c 外面
722 垂直部
73 横辺部
74 エッジ環状板
75 凹部
76 溝部
8 エッジ板
81 横辺壁
82 凸部
83 平面
83a 上側面
9 モールド樹脂
図1
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