(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-27
(45)【発行日】2025-09-04
(54)【発明の名称】長期保存できる転写シール、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20250828BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20250828BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250828BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20250828BHJP
B32B 37/02 20060101ALI20250828BHJP
【FI】
B44C1/17 N
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41J2/01 129
B41J2/01 101
B41J2/01 123
B41J2/21
B32B37/02
(21)【出願番号】P 2024167797
(22)【出願日】2024-09-26
【審査請求日】2024-12-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年9月27日、28日に東京池袋・サンシャインシティ展示ホールDで開催されたオーダーグッズビジネスショーOGBS2023にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年9月29日に株式会社トイテック、有限会社松崎加工にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年10月2日株式会社ミマキエンジニアリング北関東営業所にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年10月3日に株式会社グリムファクトリー、有限会社坂井にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年10月4日に株式会社万蔵にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年10月6日に有限会社福田印刷にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年10月18日に郵送によるダイレクトメールにてサンプルを公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月1日にJTB沖縄株式会社、プリントメモリアル株式会社プリント工場にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月2日にSCSK株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月6日に有限会社赤札堂印刷所にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月8日にブルーミング中西株式会社、粧美堂株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月9日にファナティクスジャパン合同会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月10日にベネリック株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月13日に西川株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月16日に株式会社海人工房、株式会社プロジェクト・コアにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月17に有限会社京屋旗店にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月27日に日本紙交易株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年11月30日に郵送によるダイレクトメールにてサンプルを公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年12月1日に株式会社アシダコーポレーション、株式会社トゥーザコア沖縄にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2023年12月14日に株式会社スペースエイジ東京支社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月9日に株式会社マリモクラフト、株式会社フォートプランサービスにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月10日に千葉ロッテマリーンズにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月11日に株式会社Cygamesにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月18日に郵送によるダイレクトメールでサンプルを公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月22日に株式会社イーステージにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月23日にファーロンズ合同会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月24日に株式会社ラピートにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月22日に郵送によるダイレクトメールにてサンプルを公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月25日に株式会社アドバンスにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年1月29日に株式会社若林製本工場にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年2月2日に株式会社協和テック、株式会社埼京印刷にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年2月29日に有限会社アド飯能工場にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年3月1日に株式会社GRIT GROUP ベストライフ、光文堂コミュニケーションズ株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年3月4日にanique株式会社、株式会社フロンティアにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年3月18日にクツワ株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年3月19日に富士株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年3月28日に株式会社大丸松坂屋、株式会社足利銀行佐野支店にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年4月1日に有限会社太平シール印刷にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年4月2日に沖縄ゴールデン開発株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年4月4日に株式会社テシゴトにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年4月30日に三毳不動尊にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年6月5日、6日に東京都立産業貿易センター浜松町館で開催された第38回東京ファッショングッズトレードショーにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年6月27日に日織商工株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年6月28日に内野株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年7月1日に株式会社リマープロにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年7月8日に株式会社セントラルリリーフにてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年7月12日にサンリオ株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年8月1日にジャパンエンターテインメント株式会社にてサンプルを配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2024年9月2日に株式会社ジョイント沖縄にてサンプルを配布
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524358728
【氏名又は名称】合同会社T&C
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【氏名又は名称】澤木 紀一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌史
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/021727(WO,A1)
【文献】特開平09-078039(JP,A)
【文献】特開2017-209931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/17
B41M 5/00
B41J 2/01
B41J 2/21
B32B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の剥離材と、該剥離材上に、剥離可能に設けられた、接着性を有する、紫外線の照射により硬化する第一樹脂層と、該第一樹脂層上に設けられた、酸化チタンを吸着可能な
シリコーンオイル層とよりなる転写ベースシート上に、
プリンター装置により、酸化チタンを含有する紫外線硬化インクを所望の形状に印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第一工程と、
上記紫外線硬化インク上に、プリンター装置により、所望の色の紫外線硬化インクを所望の形状に印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第二の工程と、
上記所望の形状の所望の色の紫外線硬化インク上に、プリンター装置により、紫外線硬化ニスを、所望の形状で印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第三工程と、
基材と、該基材の下面に一体化して設けられた、熱により流動化し、冷却により硬化する熱可塑材層と
を有する転写フィルムを、
上記画像及びニスが印刷された上記転写ベースシートに重ね合わせて、所望の圧力で加圧し、上記紫外線の照射により硬化した部分の第一樹脂層を破壊させると共に、上記熱可塑材層を流動化させる所望の熱で加熱する第四工程と、
冷却により、上記転写ベースシートの破壊された第一樹脂層部分と
シリコーンオイル層部分と上記転写フィルムの基材とを一体化する第五工程と
よりなることを特徴とする転写シールの製造方法。
【請求項2】
上記第一樹脂は、PVA(ポリビニールアルコール)で
あることを特徴とする請求項1に記載の転写シールの製造方法。
【請求項3】
上記酸化チタンを含有する紫外線硬化インクは、UV白インクであることを特徴とする請求項1に記載の転写シールの製造方法。
【請求項4】
上記第一の工程と上記第二の工程との間に、上記紫外線硬化インク上に、プリンター装置により、さらに、酸化チタンを含有する紫外線硬化インクを、所望の形状で印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する工程を追加することを特徴とする請求項1に記載の転写シールの製造方法。
【請求項5】
シート状の剥離材と、該剥離材上に、剥離可能に設けられた
紫外線の照射により硬化する第一樹脂層と、該第一樹脂層上に設けられた、酸化チタンを吸着可能な
シリコーンオイル層と、
上記
シリコーンオイル層のうちの、第一の部分に形成された
酸化チタンを含有する紫外線硬化インクにより形成される画像層と、
該画像層上に形成された所望の色の紫外線硬化インクにより形成される画像層と、これら画像層上を覆うように、上記
シリコーンオイル層上に設けられたニス層と、
上記ニス層上に、剥離自在に接して設けられると共に、上記ニス層に覆われた以外の第一樹脂層
部分と
シリコーンオイル層部分とが一体化された転写フィルムとよりなり、
上記第一樹脂のうちの上記第一の部分は粘着性を有し、上記第一の部分以外の上記第一樹脂は粘着力を有していないことを特徴とする転写シール。
【請求項6】
上記第一樹脂は、PVA(ポリビニールアルコール)で
あることを特徴とする請求項
5に記載の転写シール。
【請求項7】
上記酸化チタンを
含有する紫外線硬化インクは、UV白インクであることを特徴とする請求項
5に記載の転写シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着製品(画像シール)は次の工程で作られてきた。
【0003】
即ち、
図1(a)示すように、シート状の剥離材の上面に粘着材層(糊層)を設け、その上面に表面基材(例えば、紙、フィルム等)を設ける。そして、
図1(b)に示すように、該設けられた表面基材の上面に印刷を施す。
【0004】
そして、上記印刷された表面基材の上からラミネートフィルム等の粘着フィルムを被覆させる。
【0005】
次に、被覆されたラミネートフィルムの上から最下部の剥離材まで刃を入れて、印刷部分(画像部分)を切り取る。
【0006】
上記工程により、粘着製品の基本構成が形成される。
【0007】
上記表面基材に印刷すると、表面基材分だけ重くなる。また、最下部の剥離材まで刃を入れて、印刷部分を切り取るが、刃の余白を設けるために設けられた、印刷部分の周囲1mmほどに縁(フチ)が残る。この背景から、これまでも、表面基材に印刷をせず、粘着材層(糊層)に直接に印刷して、その印刷部分だけを刃で切り取るのではなく、別の手法で抜き出して、印刷部分(画像部分)だけをシール化できないか、は容易に発想されて来たと考えられる。
【0008】
しかし、粘着材層(糊層)へ直接に印刷するには粘着材層(糊層)を固める必要がある。粘着材層(糊層)が軟らかいままだと、インクが定着しない。ところが、粘着材(糊)自体を固形化すると、粘着材(糊)自体の接着性が失われて、粘着製品にならない。そのため、接着性を持つ、固まっていない粘着材層(糊層)の上に、液体状であるが、紫外線を照射することで固形化し易いUVインクを、非接触型印刷機(インクジェットプリンター)で噴き付けて画像を作れば可能である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、実際には、液体状のUVインクが糊層を侵食してしまう。UVインクを固形化するためには、インクジェットプリンターでUV(紫外線)を照射しなければならない。その時、紫外線は侵食した糊層までも固形化させて、糊自体の接着性を失わせてしまう。
【0011】
インクジェットプリンターで、ベースシート上の糊層にUVインクを噴出させて作った画像に、プリンターに備わる紫外線照射装置を使い、人工的に紫外線を照射して、UVインクを固形化させる。その後、ラミネーター(印刷された面にフィルムを被覆させる機械)へ、UVインクを固形化して作られた画像を残すシートを移して、固形化したUVインク画像にフィルムを被覆加工する。これがこれまでの、転写シールの製造工程であった。しかし、仕上がった転写シールへも太陽光からなど紫外線は自然照射される。結果、時間経過を伴って、UVインクに侵食され固形化した糊層は増々接着性が失われて、最後は粘着製品としては、殆ど使えなくなる。
【0012】
流動性に乏しい、所謂のドロドロのインクを使えば、糊は侵食されない。しかし、実際にはドロドロのインクはインクジェットプリンターのヘッドで噴出することができない、と障壁は残されたままであった。
【0013】
唯一、製作可能であったのはシルクスクリーン印刷方式であった。代表的な商品はネイルシールである。シルクスクリーン印刷は孔版印刷である。必要な部分だけに細かな孔を空けた網の版を作り、その上からインクを刷り込んで、孔からこぼれたインクで画像を作る。ネイルシールの場合、先ずは爪の形の孔版を作る。この孔版の上から、所定の剥離材の上面に、孔版によって指定された箇所だけに糊を刷り込み、最初に糊層を作る。その糊層の上面に、数種類の色のインクごとに作られた個々の孔版を被せ、各色のインクごとに孔版の上から刷り込む。この作業を繰り返して、糊の上に各色単体の層が積まれて画像層が作られ、最後に接着性ある転写フィルムを被覆させて、シール製品単体を完成させている。この場合、インクは所謂のドロドロのインクである。ドロドロのインクでも、手作業で網の版の上から、指定された局所に刷り込めば使える。逆に、こうした工法において流動性あるインクならば、インク自体が指定された居所に留まらず、使えない。このように手作業のシルクスクリーン印刷方式ならば製作可能であるが、工程(各色の孔版を作る、色ごとにインクを刷り込む、など)に手間と時間が掛かる。尚且つ、コストが高くなる。(孔版ひとつ作るのに数万円かかる。)拠って、シルクスクリーン印刷方式は必要数量が少ない場合には、コストの点から対応し難く、少量の様々なデザインを画像シールにするには障壁があった。
【0014】
本発明は、上記の欠点を除くようにしたものである。
【0015】
上記の目的を果たすために、本発明においては、今までの粘着製品の基本構成(
図1参照)に沿って考え、紙やフィルムと言った固体化されている表面基材の代替にと、シリコーンオイル層を設ける事を着想した。
【0016】
一般的にシリコーン層と言うと、剥離紙を思い浮かべる。今までの粘着製品の基本構成(
図1参照)にある最下部の層である。剥離紙は、基材になる紙上に、溶剤で希釈されたシリコーン化合物を塗布して、その表面を平滑にして、更に乾燥させて作られる。
【0017】
しかし、本発明でのシリコーン層は、所定のシリコーンオイルの所定量を、糊層の上に積層させて設けられる。積層させたシリコーンオイル層は平滑化も乾燥化もされない。糊層とは混合させぬ様に積層させる。インクジェットプリンターで印刷する前に、シリコーンオイル層と糊層を混合させてはいけない。(この理由は後述する)。この積層されたシリコーンオイル層によって、インクが直接に糊層に接触することはない。(
図2(B)参照)
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の転写シールの製造方法は、シート状の剥離材と、該剥離材上に、剥離可能に設けられた、接着性を有する、紫外線の照射により硬化する第一樹脂層と、該第一樹脂層上に設けられた、酸化チタンを吸着可能なシリコーンオイル層とよりなる転写ベースシート上に、プリンター装置により、酸化チタンを含有する紫外線硬化インクを所望の形状に印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第一工程と、上記紫外線硬化インク上に、プリンター装置により、所望の色の紫外線硬化インクを所望の形状に印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第二の工程と、上記所望の形状の所望の色の紫外線硬化インク上に、プリンター装置により、紫外線硬化ニスを、所望の形状で印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第三工程と、基材と、該基材の下面に一体化して設けられた、熱により流動化し、冷却により硬化する熱可塑材層とを有する転写フィルムを、上記画像及びニスが印刷された上記転写ベースシートに重ね合わせて、所望の圧力で加圧し、上記紫外線の照射により硬化した部分の第一樹脂層を破壊させると共に、上記熱可塑材層を流動化させる所望の熱で加熱する第四工程と、冷却により、上記転写ベースシートの破壊された第一樹脂層部分とシリコーンオイル層部分と上記転写フィルムの基材とを一体化する第五工程とよりなることを特徴とする。
【0019】
また、上記第一樹脂は、PVA(ポリビニールアルコール)であることを特徴とする。
【0020】
また、上記酸化チタンを含有する紫外線硬化インクは、UV白インクであることを特徴とする。
【0021】
また、上記第一の工程と上記第二の工程との間に、上記紫外線硬化インク上に、プリンター装置により、さらに、酸化チタンを含有する紫外線硬化インクを、所望の形状で印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する工程を追加することを特徴とする。
【0022】
また、上記水分吸着層は、シリカゲルを含むシリコーンオイルであることを特徴とする特徴とする。
【0023】
また、本発明の転写シールは、シート状の剥離材と、該剥離材上に、剥離可能に設けられた紫外線の照射により硬化する第一樹脂層と、該第一樹脂層上に設けられた、酸化チタンを吸着可能なシリコーンオイル層と、上記シリコーンオイル層のうちの、第一の部分に形成された酸化チタンを含有する紫外線硬化インクにより形成される画像層と、該画像層上に形成された所望の色の紫外線硬化インクにより形成される画像層と、これら画像層上を覆うように、上記シリコーンオイル層上に設けられたニス層と、上記ニス層上に、剥離自在に接して設けられると共に、上記ニス層に覆われた以外の第一樹脂層部分とシリコーンオイル層部分とが一体化された転写フィルムとよりなり、上記第一樹脂のうちの上記第一の部分は粘着性を有し、上記第一の部分以外の上記第一樹脂は粘着力を有していないことを特徴とする。
【0024】
また、上記第一樹脂は、PVA(ポリビニールアルコール)であることを特徴とする。
【0025】
また、上記酸化チタンを含有する紫外線硬化インクは、UV白インクであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の転写シートの製造装置は、プリンター装置と、該プリンター装置に、転写ベースシートを供給する転写ベースシート供給手段と、転写フィルムを供給する転写フィルム供給手段と、上記プリンター装置により画像が印刷された上記転写ベースシート上に、上記転写フィルム供給手段から供給された転写フィルムを重ね合わせると共に、該転写ベースシートと上記転写フィルムとを加圧し加熱する加圧加熱手段と、該加圧加熱手段により一体化された上記画像が印刷された転写ベースシートと上記転写フィルムとよりなる転写シールを、巻き取る転写シール巻取手段とよりなることを特徴とする。
【0027】
また、上記転写ベースシートの接着面をカバーするカバーシートを巻き取るカバーシート巻取手段を更に、有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、画像層を設けた転写シールを長期保存できる。また、支障なく、転写対象物に転写できる工程が得られ、画像以外に糊残りもなく綺麗に転写できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2(A)】本発明の転写シールの製造方法の第1工程の説明図を示す。
【
図2(B)】本発明の転写シールの製造方法の第1工程における転写ベースシートの説明用縦断側面図である。
【
図2(C)】本発明の転写シールの製造方法の第1工程における転写ベースシートの説明用縦断側面図である。
【
図3】本発明の転写シールの製造方法の第2工程と第3工程における転写ベースシートの説明用縦断側面図である。
【
図4(A)】本発明の転写シールの製造方法の第4工程説明図を示す。
【
図4(B)】本発明の転写シールの製造方法の第5工程における転写ベースシートの説明用縦断側面図である。
【
図5(A)】本発明の転写シールの製造方法の第6工程の説明図である。
【
図5(B)】本発明の転写シールの製造方法の第6工程における転写ベースシートの説明用縦断側面図である。
【
図6】本発明の転写シールの製造方法の第7工程における転写ベースシートの説明用縦断側面図である。
【
図7】本発明の転写シールの製造方法の第8工程の説明図である。
【
図8(A)】本発明の転写シールの製造方法の第9工程の説明図である。
【
図8(B)】本発明の転写シールの製造方法の第9工程における転写ベースシートの説明用縦断側面図である。
【
図9】本発明の転写フィルムの層構成の説明用縦断側面図である。
【
図10(A)】本発明の転写シールの製造方法の第9工程における転写ベースシートaと転写フィルムbの接合体(転写シール)の説明用縦断側面図である。
【
図10(B)】本発明の転写シールの製造方法の第9工程における転写ベースシートaと転写フィルムbの接合体(転写シール)の説明用縦断側面図である。
【
図10(C)】本発明の転写シールの製造方法の第9工程における転写ベースシートaと転写フィルムbの接合体(転写シール)の説明用縦断側面図である。
【
図10(D)】本発明の転写シールの概略縦断側面図である。
【
図11】
図10の樹脂層を上から見た説明用平面図、並びに本発明の転写シールの使用方法の第10工程の説明図である。
【
図12(A)】本発明の転写シールの使用方法の第11工程の説明図である。
【
図12(B)】本発明の転写シールの使用方法の第11工程における転写シールの説明用縦断側面図である。
【
図13】本発明の転写シールの使用方法の第12工程における転写シールの説明用縦断側面図である。
【
図14】本発明の転写シールの使用方法の第12工程における転写シールの説明用縦断側面図である。
【
図15】本発明の転写シールの使用方法の第13工程における転写シールの説明用縦断側面図である。
【
図16】本発明の転写シールの使用方法の第14工程における転写シールの説明用縦断側面図である。
【
図17】本発明の転写シールの製造機械のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0031】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【0032】
A.使用素材について
【0033】
以下、まず、使用素材(1)~(4)について説明する。
【0034】
(1)UV(紫外線硬化)インク(塗料)
【0035】
色は、例えば、W(ホワイト/白)インクと、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、黒)インクの5色を使用する。なお、CMYKとは、C、M、Y、Kのいずれかの単色、又は、これらの色幾つか、又はCMYKすべてを混ぜ合わせた色を意味する。
【0036】
なお、上記色(インク)は一例であり、他の色を使用してもよく、また、CMYKインクのうち、一部の色のみを使用するようにしてもよい。
【0037】
なお、最初に噴出されるW(白)インクは、その上に形成される画像を明瞭に表示できるようにするための下地層として利用される。
なお、この下地層として使用できるのは、W(白)インクの他、製造工程に適合する品質特性を持ち、且つ酸化チタンを含有するUVインキであれば、特に限定はない。
【0038】
また、色画像自体を塑型させる必要性からUV(紫外線硬化)インクを使用する。
【0039】
(以下、UVインクに含まれる成分の説明)
【0040】
なお、これらの成分は、あくまでも一例であり、一般のUVインクであっても良いが、製造工程に適合するUVインクが選択される。適合しない性質のインクを使用すると、インクの生乾き、や早乾きなど、品質不良に繋がる。
【0041】
・顔料:色の成分
・THFA(アクリル酸テトラヒドロフルフリル):UV(紫外線)に重合反応する樹脂ではあるが、重合反応が遅い。希釈剤としての役割もあり、非常に低粘度である。
・アクリレートオリゴマー:UVに硬化する樹脂。画像を塑型する樹脂重合体。
・アクリレートモノマー:UVに重合反応する樹脂単合体。オリゴマーを補完する機能を持つ。インクの流動性はモノマー(樹脂単合体)の配合比率に左右される。
・光重合開始剤
本実施例のUVインクには、通常のUVインクよりも重合速度/硬化速度が遅い性質を持たせている。
【0042】
(2)UV(紫外線硬化)ニス
【0043】
(以下、UVニスに含まれる成分)
【0044】
なお、これらの成分は、あくまでも一例であり、一般のUVニスであっても良いが、UVインクと同じく、製造工程に適合するUVインクが選択される。
【0045】
・THFA(アクリル酸テトラヒドロフルフリル):希釈剤。非常に低粘度。
・HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート):アクリレートモノマーの一種で、UVに重合反応する樹脂。基材浸透性、柔軟性、密着性、に優れ、耐候性も有する。
・光重合開始剤
本実施例においては、ニスにも重合速度が遅い性質を持たせている。オリゴマーを含まないため、可塑化に時間を要する。
【0046】
なお、上記UVニスは、下方の画像が見えるように、透明である。
【0047】
なお、上記UVニスの代わりに、印刷した際に、上面が平滑化し、後述する熱可塑性樹脂によっても、転写フィルムと一体化しないUVインクであってもよい。
【0048】
(3)転写ベースシートa(例えば、回転ドラムにロール状に巻かれて設置されている)
【0049】
本実施例において、
図2に示すように、該転写ベースシートaは、シート状の剥離材と、該剥離材上に、剥離可能に設けられた(積層された)接着性を有する、紫外線の照射により硬化する第一樹脂層(糊層)と、該第一樹脂層上に設けられた
、例えば、シリコーンオイル
層から構成される。
【0050】
上記剥離材には限定はないが、一般の剥離紙よりも表面平滑性が高いPP(ポリプロピレン)フィルムを剥離材にすれば、上記第一樹脂層から、かなり容易に剥離できる。
【0051】
特に、水分を含む第一樹脂層(糊層)ならば、剥離紙よりもPPフィルムを使う必要がある。素材が紙ならば、水分を吸着し、糊材剥離に支障が出る蓋然性がある。また、PPフィルムには剥離紙よりも高い柔軟性と高い弾性がある。「0165」にて後述するが、剥離層には単に第一樹脂層を剥離する役割だけでなく、柔軟性と弾性をも求められる。
但し、柔軟性と弾性を有していなくても良い。
【0052】
また、上記シリコーンオイル層としては、酸化チタンに吸着する物質を有する樹脂であれば、特に限定はないが、後述するように、珪素(Si)を含むシリコーンオイルが好ましい。また、液体状が好ましい。また、上記転写ベースシートaは、必要に応じて、上記転写ベースシートaを構成する樹脂層を省略してもよい。
【0053】
上記剥離材の基材を弾性ある紙1にする。該紙1上面にはPP(ポリプロピレン)フィルムを圧着する。PPフィルム層2表面はかなり平滑度が高く、また、PP層2自体が剥離紙の剥離層よりも弾性値も高く、柔軟性もある。
【0054】
そして、該PPフィルム層2の上に、第一樹脂層/糊材としてゲル状(水分を有する状態)の、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)が塗布される(紫外線照射で硬化する樹脂系糊材(紫外線硬化樹脂)でも良い)。塗布されたPVAはゲル状である。また、下層のPPフィルムは表面の平滑度が高いため、PVAとPPフィルム層2表面の間では摩擦力が余り働かない。
【0055】
PVA層3の上面にシリコーンオイル層4を設ける。シリコーンオイル層4に含まれるシリコーン自体は難接着性である。PVAはゲル状のものを使い、シリコーンオイル層4はPVA層3に積層されているだけであり、シリコーンオイル層4はPVA層3と混合しない。まとめると、PPフィルム層2の上に第一樹脂層/糊材であるPVA層3、そのPVA層3の上にシリコーンオイル層4が積層しているだけの構造になっている。
【0056】
なお、積層される上記シリコーンオイル層の厚みは、あまりに厚いと、後述する上記W(白)インクの下方への浸潤が進まない。使うW(白)インクによって、流動性など品質特性が違う。使うインクに品質特性に適合する厚みが求められる。
【0057】
なお、上記剥離材上に形成される第一樹脂層には、PVA以外に、当初は、接着性を有するが、紫外線により硬化し、最後には接着力を失う樹脂であれば、特に限定はない。
【0058】
シリコーンオイル層4の成分であるシリコーン自体は難接着性であるが、W(白)インクの成分顔料には吸着する。
【0059】
即ち、W(白)インクの顔料は酸化チタンであり、シリコーンの構成元素である珪素(Si)が酸化チタンには吸着するから、である。
製造工程と最後の総括で説明するが、シリコーンオイル層4はW(白)インクとPVAが結合しようとする働きをコントロールする役割や、インクが積層されて作られる画像層に柔軟性とバランスを供与する役割も受け持つ。
【0060】
酸化チタンに吸着する物質は他に、シリカゲル(SiO2・nH2O)と水酸化アルミニウム(AlOH3) 等がある。珪素はシリカゲルにも存在するが、画像層下のPVAの水分を奪ってしまう。画像層下の水分が少なくなると糊材であるのPVAの粘着性が失われ、転写対象物への接着力が弱くなる。水酸化アルミニウムはPVA水分に含まれるミネラル成分と反応して黒くなる「黒変化現象」が発生する可能性があり、使用できない。以上から、本製品の品質を満足させるにはシリコーンオイルが最も好ましい。
【0061】
(4)転写フィルムb(例えば、回転ドラムにロール状に巻かれて設置されている)
【0062】
本発明においては、該転写フィルムbは、基材12と、該基材12の下層として熱可塑材層11、その熱可塑材の下層に設けられた、水分を吸着させる、接着性ない樹脂層10等の水分吸着層とから成る。(
図9参照)
【0063】
なお、基材12に熱可塑材を塗布すると、その熱可塑材が基材12/PETフィルムの表面孔に入り込み、可塑材に含まれる溶剤成分が蒸発して可塑材が固まり、熱可塑材は基材12/PETフィルムと接合一体化される。更に、こうして作られた接合体の熱可塑材層11上に接着性ない樹脂層10を積層して、転写フィルムbは作られる。
【0064】
この接着性ない樹脂層10は、シリコーンオイルにシリカゲル(SiO2・nH2O)を含む、シリコーンオイルコンパウンドである。シリコーンオイルコンパウンドは上記転写ベースシートの第一樹脂層(糊層)/PVA層3の水分を喪失させる役割を持つ。PVA層に水分が残っている場合に、PVA層3の水分が喪失されることにより、第一樹脂層(糊層)/PVA層3の接着性を喪失させることができる。
【0065】
これにより、水分吸着層を設け、PVA中の水分を吸着させることにより、上記熱可塑材との一体化が確実になると共に、粘着性を無くし、後述する糊残りを防ぐことができる。
なお、紫外線硬化性が強いPVAを使うならば、水分吸収層を設けなくてよい。
【0066】
熱可塑材は、熱によって流動化して、常温までの自然冷却により硬化することにより、上記基材12と、接着性を喪失された第一樹脂層と、元々接着性ないシリコーンオイル層を取り込み一体化させる。
【0067】
この時、熱可塑材は画像層を覆うUVニス層を侵食しない。UVニス層9を侵食しないので、熱が冷めると、固まった熱可塑材とUVニス層9は容易に剥離できる。(
図10(B)参照)
【0068】
基材12は、PETフィルム等の樹脂フィルムである。熱による伸縮性も求められるが、且つ光透過性も求められる。光透過性が高い素材でなければ、UVインク、UVニスは求める働きができない。例えば、基材12を伸縮性ある塩化ビニールでは代用できない。塩化ビニールは光透過性が劣るからである。
【0069】
なお、上記転写フィルムbは、後述するように、転写フィルムbと上記転写ベースシートaとを、所定の部分で一体化でき、他の部分においては、一体化しないように結合できる素材を用いてもよい。
【0070】
B.製造装置について
【0071】
図17は、本発明の転写シールを製造するための転写シール製造装置14を示す。
【0072】
該転写シール製造装置14は、プリンター装置15と、該プリンター装置15に、転写ベースシートaを供給する転写ベースシート供給手段16と、転写フィルムbを供給する転写フィルム供給手段17と、上記プリンター装置15により画像が印刷された上記転写ベースシートa上に、上記転写フィルム供給手段17から供給された転写フィルムbを重ね合わせると共に、該転写ベースシートaと上記転写フィルムbとを加圧し加熱する加圧加熱手段18と、該加圧加熱手段18により一体化された上記画像が印刷された転写ベースシートaと上記転写フィルムとよりなる転写シールを、巻き取る転写シール巻取手段19とよりなる。
【0073】
なお、20は、上記転写ベースシートaの粘着面を保護(カバー)するために設けられたカバーシートを剥がし、巻き取るカバーシート巻取手段を示す。
【0074】
上記プリンター装置15は、例えば、上記転写ベースシート供給手段16から供給された、カバーシートが剥がされた転写ベースシートbが載置される、シート吸引部を有する載置台(suction plate)15aと、該載置台15a上に載置された転写ベースシートb上の所定の箇所に印刷するための、Wインクや、CMYKインクや、ニスインクを噴出させるWインクヘッド部15b、CMYKインクヘッド部15c、ニスインクヘッド部15dなどの印刷ヘッド部と、UVランプ部15eとよりなる。
【0075】
なお、転写ベースシートbの進行方向に向かって、Wインクヘッド部15b、CMYKインクヘッド部15c、ニスインクヘッド部15dの順で、配置され、この順で、印刷されるように形成される。
【0076】
なお、上記印刷ヘッド部は、複数設けられる以外に、一つのヘッド部により、各インクを噴出させるなど、様々なインク噴出手段がある。
【0077】
また、上記転写ベースシート供給手段16は、例えば、転写ベースシートが巻かれた転写ベースシート巻取回転ドラム16aと、該転写ベースシート巻取ドラム15aから上記プリンター装置15まで、転写ベースシートをガイドするガイド部(図示せず)とよりなる。
【0078】
また、上記転写フィルム供給手段17は、例えば、転写フィルムaが巻かれた転写フィルム巻取回転ドラム17aと、該転写フィルム巻取回転ドラム16aから、上記加圧加熱手段17まで、上記転写フィルムをガイドするガイド部(図示せず)とよりなる。
【0079】
また、上記加圧加熱手段18は、例えば、挿通されたシートを加圧する、対向する2つの加圧ローラー18a、18aと、少なくとも一方の加圧ローラーに設けた加熱手段18bと、上記転写フィルム供給手段17からの転写フィルムと、上記プリンター装置15からの画像が印刷された転写ベースシートとを重ね合わせた状態で、上記2つのローラー間に挿通させるガイド部(図示せず)とよりなり、上記ローラー間に挿通されたシートが、所望の圧力で加圧され、また、加熱手段により加熱されるように形成されている。
【0080】
なお、該加圧加熱手段は、一対のローラーにより形成されているが、他の手段であってもよく、加圧手段と、加熱手段が別々であってもよい。
また、一方が省略される場合や、転写ベースシートと転写フィルムとを一体化できれば、加圧加熱手段を省略してもよい。
【0081】
また、上記転写シール巻取手段19は、例えば、上記一体した転写シールを巻き取る転写シール巻取回転ドラム19aと、上記加圧加熱手段18からの転写シールを上記巻取ドラム19aまでガイドするガイド部(図示せず)とよりなる。
【0082】
C.製作工程について
【0083】
次に、製作工程について説明する。
【0084】
以上の素材を、
図17に示すように、専用の上記転写フィルム製造装置14にセットする。
【0085】
次に、この1台の転写フィルム製造装置を使って、以下の1から14の工程で進める。
【0086】
なお、本実施例においては、例えば、プリンター装置を、インクジェットプリンターにより、三日月画像を描く場合として説明する。
【0087】
工程1
【0088】
図2(A)に示すように、上記専用機械/プリンター15、例えば、インクジェットプリンターにおいて、上記転写ベースシートa上に、所望の形状に、例えば、三日月状の画像となるように、下地層として、液体状の酸化チタンを含有する紫外線硬化するUV-W(白)インクを噴出し、印刷する。該噴出されたWインクは、
図2(B)に示すように、転写ベースシートa最上層にあるシリコーンオイル層4と接触する。
【0089】
このとき、シリコーンオイル層4にあるシリコーンは、Wインクの成分である顔料の酸化チタンに吸着する。シリコーンが吸着し、シリコーンに纏われた上記Wインクは、その下層部分が、つらら状となって、PVA3層を浸潤する。
図2(C)に示すように、シリコーンがWインクに吸着し、該Wインクがシリコーンオイル層4に留まる第一の層6と、WインクがPVA3層まで届き、該WインクがPVA層3に留まる第二の層7ができる。(
図2(C)参照)
【0090】
なお、上記第一の層6と上記第二の層7の境目に留まるWインクも存在する。(
図2(C)参照)
【0091】
この時、Wインクはシリコーンに纏われて、直接にPVAと接触しない。即ち、シリコーンはWインクの外皮となり、WインクをPVAと直接に接触させない働きをする。
【0092】
WインクをPVAへ直接に接触させてはならない必要があるが、シリコーンによって、これを満たしてくれる。この理由は最後の総括で後述する。
【0093】
シリコーンはWインクに吸着するので、Wインクの多くは、上記転写ベースシートaのシリコーンオイル4層に定着し、これにより、Wインク5とシリコーンオイル4とからなる第一の層6が形成される。そして、定着した多くのWインク5は、後工程で積層されるWインク層5、CMYK層8、ニス層9の土台になる(
図3参照)。
【0094】
PVA層3まで届いたWインクは、シリコーンを纏ってPVA層3に浸潤するが、顔料に吸着したシリコーンが防壁になって、Wインク自体はPVAと直接に接触できない。
【0095】
PP層2は、Wインクを全く吸収しない。従って、Wインクが届くのはPVA層3までである(
図2(C))。
【0096】
工程2
【0097】
上記Wインク層5に上塗りするように、上記インクジェットプリンター13により、Wインクを更に、所望の形状に、例えば、上記三日月状に、噴出させ、印刷する。(
図3参照)
【0098】
なお、上塗りするのは、PVA層3とシリコーンオイル4層に浸潤するWインク自体の分量が少ないからである。PVA層3とシリコーンオイル4層には、浸潤するWインクの分量に対して限度がある。PVA層3とシリコーンオイル4層に残るWインク自体の分量が少ないと、色としての“白”が弱くなる。色“白”が弱いと、転写シールを貼り付ける転写対象物13の色の影響を受ける。例えば、転写対象物13が黒の場合、黒の上に設けられる“白”が弱いと転写対象物13の黒色が透けて見えて、白の上に設けられるC/青、M/赤、Y/黄によって作られる各色が黒ずんで見える。拠って、上記Wインク層5に上塗りして、色としての“白”を確立する必要がある。
【0099】
なお、転写対象物13の色によっては、上記Wインク5層上に、Wインク5の上塗りを省略してもよい。
【0100】
なお、上記工程1から工程2において、人工的に、上記UVランプ部15eにより、紫外線は、所望量で、連続照射される。また、後に続く工程7まで、人工的に、上記UVランプ部15eにより、紫外線は所望量、連続照射される。
なお、連続した照射でなく、必要な際に、所望時間、照射するようにしてもよい。
【0101】
工程3
【0102】
図3に示すように、上塗りされたWインク層5にUV(紫外線)を引き続き照射して、Wインクに含まれる樹脂/オリゴマーの重合硬化を始めさせる。このとき、照射されたUVはWインク層5下の第一の層6へも届く。
【0103】
但し、Wインク層5、その上に築かれるCMYK色層8、そのCMYK色層の上に築かれるニス層9によって、層6はUV照射からは隠れた位置になる。従って、自然とUV照射量は、かなり少なくなる。少量のUV照射は層6の硬化を遅らせる。
【0104】
その上、層6、層7のWインクを取り囲む外皮のシリコーンは紫外線によっても、その性質は殆ど変化しない。性質を変化させず、むしろ紫外線吸収による耐紫外線性を備え持つ。以上から、層6は自体の硬化が遅れて柔軟性が維持される。まさしくシリコーンオイル層4は後の工程で積層されるWインク層5、CMYK層8、ニス層9の、柔軟性ある土台を作る役目を持つ(
図3参照)。
【0105】
また、第二の層7にまで、Wインクは到達するが、UV(紫外線)は殆ど届かない。極僅かのUV(紫外線)も外皮のシリコーンに吸収される。また、層7底部にはPP2と基材11の紙が存在する。基材の紙は透明ではないので紫外線透過も少ない。拠って、層7底部から透過するUV(紫外線)の影響も殆どない。結果として、第二の層7に到達したWインクの硬化度合は弱い。
【0106】
なお、上記第二の層7まで届いた、つらら状のWインクは、Wインク層5、第一の層6、第二の層7を繋ぐ根となり、結果として第一の層6に難接着性のシリコーンがあっても、Wインク5がUV照射により硬化することにより、Wインク5層、第一の層6、第二の層7は、一体化して、これらの層は剥離しない(
図3参照)。
【0107】
この工程3はUV(紫外線)照射すると硬化するUVインクを使うことでのみ、可能になる。
【0108】
即ち、インクジェットプリンター15により、液体状のWインクを噴出させることにより、このインクの浸潤性を利用して、上記PVA層3まで届かせ、該UVインクのUVによる硬化により、上記Wインク層5、第一の層6、第二の層7を接合一体化することができるようになる。
【0109】
なお、UV照射されたWインク層5表面は凹凸化する(UVインクは表面が凹凸化する性質を持つ)(
図3参照)。
【0110】
工程4
【0111】
重合硬化され始めたWインク層5の上に、
図4に示すように、プリンター装置15の上記CMYKインクヘッド部15cから、所望の色の紫外線硬化樹脂であるCMYKインクを噴出させて、例えば、三日月状の画像層を印刷する。
この際、紫外線が照射されているが、連続した照射でなく、必要な際に、所望時間、照射するようにしてもよい。
なお、上記CMYKインクヘッド部15cにより、上記転写ベースシートa上の所望の位置に、画像を形成できるように、必要に応じて、上記各ドラムを回転させて、上記転写ベースシートaを移動させるようにする。
【0112】
工程5
【0113】
このCMYKインク層8へも、
図4(B)に示すように、紫外線が照射されている。結果、CMYKインクに含まれる樹脂/オリゴマーも重合硬化が始まる。このとき、紫外線照射されたCMYKインク層8表面も凹凸化する(
図4(B)参照)。
【0114】
工程6
【0115】
重合硬化が始まったUV・CMYKインク画像層8を被覆させるように、
図5(A)に示すように、プリンター14のニスインクヘッド部15dから、UVニスを噴出させる。このとき、ニスはWインク層5とその上にあるCMYK層8とを、例えば、完全に被覆する。(
図5(B)参照)
なお、上記UVニスも液体状である。
【0116】
なお、上記ニスインクヘッド部15dにより、上記転写ベースシートa上の所望の位置に、ニスを形成できるように、必要に応じて、上記各ドラムを回転させて、上記転写ベースシートaを移動させるようにする。
【0117】
上記ニスは、つらら状に延び、画像層外縁部(断面で見ると傘部分)のシリコーンオイル層
4とPVA層3(第
一樹脂層)を浸潤する(
図5(B)参照)。
【0118】
工程7-1
【0119】
図6に示すように、上記ニス層9にも紫外線が照射されている。この際、紫外線が照射されているが、連続した照射でなく、必要な際に、所望時間、照射するようにしてもよい。
【0120】
なお、上記工程1~工程2に引き続いて上記工程3~工程7においても、人工的に紫外線照射を連続で行う。
なお、連続した照射でなく、必要な際に、照射するようにしてもよい。
【0121】
この画像層外縁部(断面で見ると傘部分)のシリコーンオイル層4とPVA層3を浸潤したニスにもUV(紫外線)は届き、この部分のニスも硬化する。シリコーンオイル層4まで届き硬化したニスは、ニス層9とシリコーンオイル層4とPVA層3を繋ぐ根となり、結果としてシリコーンオイル層4とPVA層3をニス層9は接合する。
【0122】
シリコーンオイル層4とニス層9は上記工程3と同じく、ニスはUV(紫外線)照射すると硬化するUVニスを使うことでのみ、この工程7-1が可能になる。
【0123】
工程7-2
【0124】
ニス層9も重合硬化が始まるが、ニスにはオリゴマー樹脂を含まず、塑型反応が乏しいため、硬化速度は遅い。
【0125】
UVニスの主成分樹脂は、紫外線照射により、気泡を発生させる性質を持つ。
【0126】
ここで、UVインクとUVニスについて説明する。
【0127】
(1)UVインクの特徴
【0128】
UVインクには必ず樹脂/オリゴマーを含む。樹脂/オリゴマーによって、画像を塑型する必要があるからである。この樹脂/オリゴマーはUV照射により、塑型された表面が凹凸状になる特徴がある。
【0129】
(2)ニス層9の必要性
【0130】
Wインク層5表面もUV照射により、表面が凹凸状になるが、CMYKインクで上塗りされる。しかし、上塗りされたCMYKインク層8表面もUV照射により、表面が凹凸状になる。表面が凹凸状になる欠点を補完する目的でニス層9を設ける。UVニスにも樹脂成分は含まれるが、塑型作用が小さい樹脂/オリゴマーを含めないUVニスを使う。樹脂/オリゴマーを含まなければ、UVニス自体に流動性が高くニス層9にUV照射しても、表面は凹凸状に成り難く、表面平滑性が高くなる。
【0131】
また、後述するが、上記UVニスは上記転写フィルムに設けられた熱可塑材には侵食されないようにするためのものでもある。紫外線照射により、表面が凹凸状になったCMYK層8表面ならば、その凹凸部分に熱可塑材が入り込み、画像層と転写フィルムの剥離性が下がる。上記UVニスの表面は凹凸状に成り難く、平滑性が高いため、ニス層に覆われた画像層と転写フィルムの剥離性は下がらない。(
図6参照)
【0132】
(3)UVニスの成分(透明性が非常に高い)
【0133】
ニス9の主成分はTHFAとHDDAである。THFAは希釈剤の役割があり、W(白)インク、CMYKインクにも含まれる。HDDAは柔軟性・密着性・基材浸潤性に優れる。後述するが、画像層全体として柔軟性・密着性が求められる。HDDAは画像層の柔軟性・密着性に貢献する。
【0134】
(4)気泡の発生
【0135】
Wインク、CMYKインク、UVニスともにUV(紫外線)を浴びると、気泡を発生させる。そして、該画像に入り込んだ気泡は、画像を不鮮明にするため、画像の障害となり、邪魔な存在である。なお、ニス層9の気泡発生は少ない。
【0136】
なお、後述する加圧手段により、気泡は、画像層の外側に押しやられ、画像中の気泡を排除することができる。
【0137】
工程8
【0138】
UV照射を続けた結果、上方に画像のない部分のPVA層3が架橋化する(
図7参照)。また、PP層2表面の平滑度は高く、PP層2表面とゲル状PVAとの間には摩擦力が余り働かないので、上方に画像のない部分のPVA層3は、容易に架橋化する。
【0139】
架橋化されると、
図7に示すように、断面で見ると、PVA自体がシリコーンオイル層4に向けて凹凸状になる。また、紫外線が連続で照射されるため、架橋化されたPVAは硬化が進む。硬化が進むとPVAの水分率は低下する。水分率が低下したPVAは自体の接着力が低下する。UVを連続で照射し続けると、最後にはPVAはPVA自体の接着性が喪失されていく。
【0140】
なお、ここでいう接着性があるとは、完全に粘着性の有無により判断されるものではなく、上記転写ベースフィルムに、単に重ね合わせた転写フィルムを、引きはがしたときに、上記転写フィルムに上記PVA樹脂も一緒に接着して引きはがされるほどの強い接着性を持たないような弱い接着力は含まない意味である。
【0141】
画像層ない部分で、ニス被覆部分の下部のPVA層3では、浸潤したUVニスがPVA層内部に入り込み、架橋化(PVA分子の結合)をさせ難くする。拠って、同部分のPVAの架橋化は進まない。(
図7参照)
【0142】
工程9
【0143】
上記工程8までの工程が進んだ転写ベースシートaを、上記各回転ドラムを回転させて、上記加圧加熱手段18まで、移動させると共に、上記転写ベースシートaの上から転写フィルムbを重ね合わせる(
図8(A)参照)。詳細には、転写フィルムbの基材12下面に設けられた、接着性ない樹脂層/シリコーンオイルコンパウンド10(「0064」、
図9参照)を、画像層を含む転写ベースシートaに接触させる。
【0144】
そして、更に、上記各回転ドラムを回転させて、重ね合わされた上記転写ベースシートaと上記転写フィルムbとを、上記一対の加圧ローラー間に挿入し、接触直後に転写フィルムb基材12の上から、所定の圧力、例えば、5kg/cm
2の圧力をかける。この高圧によって、先ずは画像層ない部分で、ニス被覆部分よりも外側の、硬化が進んでいたPVAが、上面から破壊される。破壊されたPVA層3はシリコーンオイル層4と混合する。(
図10(A)参照)
【0145】
なお、ここでいう破壊とは、硬化したPVAを完全に壊すことを意味するのではなく、硬化したPVA中に、流動化した熱可塑材が浸透できる隙間やクラック等が形成できる範囲の破壊であれば、足りる。
従って、上記所定の圧力とは、上記範囲の破壊ができる程度であれば足りる。
【0146】
この混合層/3+4にシリコーンオイルコンパウンド10の成分であるシリカゲル(SiO
2・nH
2O)が、上記破壊された隙間を通って、PVA中に高圧で押し込まれる。押し込まれたシリカゲルは、破壊されたPVAに残っていた水分を奪う。これに拠って、破壊されたPVAとシリコーンオイル層との混合層/3+4には接着性が殆ど喪失される。(
図10(B)参照)
【0147】
同時に、加熱されたローラー間を通すことにより、上記転写フィルムbの熱可塑材を可塑化できる所望の温度、例えば、80℃の熱を、この混合層に与える。80℃の熱によって、シリコーンオイルコンパウンド層10の裏に設けられていた熱可塑材11が流動化される。流動化された熱可塑材11は破壊されたPVA層3とシリコーンオイル層4との混合層/3+4に流れ込み、混合層を取り込んで可塑一体化させる。この時、流動化された熱可塑材11は、上述したように、平滑性の高い画像層を覆うUVニス層9を侵食しない。(
図10(C)参照)
【0148】
また、「0063」で述べたが、転写フィルムbが作られた段階で基材12/PETフィルムと熱可塑材11は既に一体化されており、厳密に言うと、工程9によって混合層/3+4とPETフィルム/9+10+11が一体化される。
【0149】
なお、上記所望の温度とは、上記熱可塑材11が、流動性を持つ温度を言う。
【0150】
なお、上記の熱可塑材11は、例えば、トリエチレングリコールジビニルである。
【0151】
なお、熱可塑材を使っての方法ではなく、膨潤剤を使って、上記転写ベースシートaと、転写フィルムbとを一体化させる方法もある。PVA層の硬化は進んだが、PVA内部に残った少ない接着性を利用する方法である。つまり、転写フィルムbに熱可塑材に代わる膨潤剤を塗布して、PVAに接触させて水分を保持させて、その上で高圧をかけると、PVAが壊れて内部に残った少ない接着力ある糊材が現出する。その接着力で、破壊された残存PVAを転写フィルムに転移させる方法である。しかし、この方法では、転写フィルムの画像層がない部分に、若干、接着性が残る場合があり、転写対象物に、画像を転写させる際、該転写対象物に、糊残りという不良発生の危険を孕む場合がある。
【0152】
そこで、本願発明では、転写フィルムbを、熱可塑材とシリコーンオイルコンパウンドとにより構成させて、両素材を転写ベースシートaに送り込み、反応させる。先ず、シリコーンオイルコンパウンドによってPVA内に残った水分を喪失させて、接着性を無くす。その上で熱可塑性材により、基材11と接着性を失ったPVAとを一体化させて、糊残りの発生を回避させる。
【0153】
また、上記転写フィルムと上記第二の樹脂部分とは一体化でき、上記UVニス層(または、これに該当する層)とは一体化しないような手段があれば、この手段を用いて、一体化させても良い。
【0154】
転写フィルムbには、
ア)下面(転写ベースシートaとの接触面)にはシリコーンオイルコンパウンド層10、シリコーンオイルコンパウンドの裏には、熱可塑材層11を設ける
イ)シリコーンオイル層4とニス層9の表面形状に合わせる柔軟性(熱伸縮性)を持つ
ウ)フィルム基材には高い光透過性を持つ
以上の三点が求められるものが望ましい。
【0155】
高圧高熱をかける目的はもう一つある。画像層を覆う転写フィルムの上から圧力をかけると、立体状になった画像層と転写フィルムは凹凸の関係になる。インクとニスを厚く盛って立体性が増した画像層に、熱伸縮性ある転写フィルムを被せて、その上から高圧高熱をかけると凹凸の高低差が大きい状態で、画像層と転写フィルムは密着する。その後、上記各回転ドラムを回転させることにより、上記転写フィルムが、回転ローラーから引き出されて、自然に常温まで冷却し、熱が冷めて転写フィルムが収縮されると、転写フィルムが画像層を増々に掴まえることになる。掴まえ度合を強めた凹凸の関係は画像層と転写フィルムの接合度を高める。接合度が高い凹凸関係下では、画像層と転写フィルムの剥離性は弱くなる。
【0156】
画像を転写対象物に貼り付けるにあたり、先ずはシートaを剥離材から剥がして、画像層下の糊層を剥き出しする工程が必要である。画像層と転写フィルム接合性が弱くなると、この工程時に、画像層下の粘着層を剥き出しするよりも、先に画像層が転写フィルムから剥離してしまう。
【0157】
こうした障害を回避するために、画像層と転写フィルムの剥離性を弱く、つまり、画像層と転写フィルムの接合性を強める必要がある。
【0158】
画像層と転写フィルムの接合性を強くするため、転写フィルム自体に粘着性を持たせる考えもあるが、同意できない。粘着性が強過ぎれば、今度は画像層と転写フィルムの剥離し難くなる。また、粘着性弱い糊材は劣化し易く、劣化した糊材は凝集破壊が起こり、破壊された糊材が糊残りという不良を発生させる蓋然性を残す。
【0159】
UVインク、UVニスはともに、紫外線を照射すると、気泡を発生させる。
なお、この高圧工程は、この気泡を排除するためにも、UVインク等が完全に硬化する前に行う。発生した気泡を画像層に縁(フチ)に追いやるためである。
(
図11参照)
【0160】
圧力は、
ア)架橋化され硬化されたPVAを破壊できる
イ)転写フィルムに設けたシリコーンオイルコンパウンドに含まれる
シリカゲルを、破壊されたPVA層に押し込める
ウ)上記「0156」の障害を回避する程度
以上の三条件を充足できるレベルならば、5kg/cm2に拘らなくて良い。
【0161】
熱は、
ア)熱可塑材を流動化できる
イ)転写フィルムを熱膨張できる
ウ)シートaの剥離材であるPPを溶かさない
以上の三条件を充足できるレベルならば、80℃に拘らなくて良い。
【0162】
インクジェットプリンターからの紫外線照射はシートaとフィルムbを重ね合わせて、熱と圧力を加えた時点で終了する。
【0163】
工程1/インク噴出から、工程 /シートaとフィルムbを重ね合わせて、熱と圧力を加えるまで、
ア)プリンターから照射される紫外線の分量
イ)インクとニスの品質特性
ウ)シートaのシリコーンオイルの分量
エ)各工程の時間
以上、互いに計算されての分量・品質特性・時間が決められている。この関係が崩れると品質は保証されない。拠って、プリンターがやる工程とラミネーターでやる工程は一貫連続でやらねばならない。従って、平台プリンターとラミネーターの分業制ではなく、ラミネーター機能が備わった巻取プリンターが必要になる。(
図17参照)
【0164】
第二の層7での、PVAは架橋化・硬化しない。積層されたニス層9、CMYK層8、W層5、第一の層6によってUV(紫外線)も届く分量が余りにも少ない。熱も伝わり難く、高圧を与えてもPVA自体の性質は変わらない。
高圧により、ニス層9表面が更に平滑化する。ニス層9は流動性が高く、UV硬化が遅いため、更なる平滑化が充分に可能である。ニス層9表面が平滑化されると、転写フィルムbとの密閉性が高くなる。
【0165】
高圧を与えたところ、先ずはシートaの基材1の上層にある剥離材PP(ポリプロピレンフィルム)層2が、「0051」で述べたようにクッションの役割を請け負う。
【0166】
次に第一の層6がクッションの役割を請け負う。層6に含まれるシリコーン自体に柔軟性がある。また、W(白)インクに纏わりついたシリコーンは紫外線を吸収して、層6のW(白)インクの固形化を遅らせる。固形化が遅れたW(白)インクは柔軟性を持つ。
【0167】
PP(ポリプロピレンフィルム)層2と、シリコーンによって柔軟性が備わったW(白)インク層6の存在に拠って、上から高圧5kg/cm2を与えてもWインク層5、CMYKインク層8、ニス層9は壊れない。壊れないので、「画像層が割れる」「画像層にひびが入る」こともない。
【0168】
工程1~9の各工程時間は一定でなければならない。繰り返すが、時間、インクの品質特性、紫外線の照射分量などの条件すべてが揃わなければ、品質不良を発生させる蓋然性が生まれる。拠って、各工程の時間間隔を正確に守るためにも、専用機械での一貫工程が必要になる。(
図17参照)
【0169】
なお、上記転写フィルムと、樹脂とが一体化すれば、他の一体化手段を用いても良い。
【0170】
また、高圧工程を省略してもよい。また、一体化できれば、他の方法を用い、高温工程も省略してもよい。
【0171】
工程10
【0172】
上記工程1~10で作られ接合された、転写フィルムbと転写ベースシートaからなる転写シールは、各回転ドラムを回転させることにより、移動し、上記転写シール巻取ドラムにより巻き取られて、
図10(D)に示すように、製品が完成される。
【0173】
そして、実際に、転写対象物に転写シールの画像を転写させるために、
図11に示すように、上記転写シールから、画像を含む、必要部分を切り取る。
【0174】
工程11
【0175】
図12(A)及び
図12(B)に示すように、必要部分だけになった上記転写シールから、剥離材を剥離する。このとき、PVA層3、シリコーンオイル層4、第二の層7、第一の層6、W層5、CMYK層8、ニス層9がフィルムbへ転籍する。
【0176】
即ち、PP層2の表面の平滑性はとても高い。拠ってPP層2とPVA層3にある架橋PVA体は反発し合っており、お互い剥離されたがっている。
【0177】
また、紫外線が通り届きづらい第二の層7に含まれるPVAは架橋化・硬化しない。また、元々、PVAはゲル化されており、剥離材がPP(ポリプロピレンフィルム)ならば、第二の層7底部での、PVAの剥離は容易である。剥離材が紙であれば、ゲルの水分が紙に吸着され、PVAの剥離が難しくなる蓋然性がある。
【0178】
また、画像層がない部分の、硬化破壊された、粘着力を失ったPVA層3とシリコーンオイル層4との混合層は、転写フィルムの熱可塑剤によって可塑一体化している。転写フィルムのシリコーンコンパウンドにより接着性も喪失されている。拠って、この混合層とPVA層3底部での剥離材PP(ポリプロピレンフィルム)との剥離は容易である。(
図12(B)参照)
【0179】
また、同混合層は接着性が完全喪失された上で可塑一体化されているので、転写対象物に「糊残り」という不良発生の恐れはない。
【0180】
工程12
【0181】
図13及び
図14に示すように、画像を接着させる転写対象物13の対象部分へ、上記工程12で得られた転写フィルムbをあてがい、フィルムbの上から押圧する。
【0182】
上記画像を接着させる転写対象物13は硬いもので、貼り付けられる表面が特殊加工されていないものならば、接着可能である。(例えば、Apple社製携帯電話iphoneの背面の表面は特殊加工されており、接着維持できない。)
【0183】
図14に示すように、押圧すると、第二の層7の中にある硬化されず、接着性が保持されたPVAが押し出され、転写対象物13に画像のみが接着する。画像層下部のPVA自体は、紫外線が届きにくいため、架橋化も硬化もしておらず、強い接着力を有するので転写対象物と強く接着する。
これに対し、画像層のない部分のPVA部分は、上述したように、接着力を殆ど失っており、転写対象物に対して、強い接着力はない。
【0184】
工程13
【0185】
転写対象物13へ宛がって押圧された転写フィルムbを剥がせば、
図15に示すように、第二の層7、第一の層6、W層5、CMYK層8、ニス層9とニス9の根に守られたPVA層3とシリコーンオイル層4の一部(ニス9の根の内側)が転写対象物13へ転籍される。
【0186】
硬化したニスはその表面の平滑性が高く、その平滑性によって、侵食しようとする熱可塑材を弾き返す。「0121」で述べた、ニス層9からシリコーンオイル層4とPVA層3を浸潤し、ニス層9とリコーンオイル層4とPVA層3を接合させた、ニス9の根も表面の平滑性は高い。この根は防壁となり、熱可塑材は根を含む根の内側を侵食できない。拠って、根から外側のみが、硬化して破壊されて接着性を喪失したPVA層3とシリコーンオイル層4の混合層が熱可塑材11によって、転写フィルムbと可塑一体化されている。従って、ニス層9+ニス9の根に守られたPVA3とシリコーンオイル層4の一部(ニス9の根の内側)との剥離は容易である。
【0187】
工程14
【0188】
そして、ニス層9と転写フィルムbとの接合は、上記「0155」の通り、凹凸関係が強い圧着状態のみである。これに対して第二の層7と転写対象物13との接着状況は、「0183」の通り、強い粘着状態である。第二の層7から押し出された、接着力が保持されたPVAは第二の層7直下部だけでなく第二の層7縁部の下部にも広がる。後者の粘着力は前者の圧着力を圧倒的に上回る。拠って、転写フィルムbと転写対象物へ転籍される第二の層7、第一の層6、W層5、CMYK層8、ニス層9、ニス9の根に守られたPVA3+シリコーンオイル層4一部(ニス9の根の内側)との剥離は容易になっている。(
図15参照)
【0189】
以上から、転写対象物からフィルムbは剥がし易くなっている。
【0190】
剥がす部分の接着力比較を要約すると、
(ニス9の根の内側と転写対象物13)>(ニス9の根から外側と転写対象物13)>(上記混合層を可塑一体化したフィルムbと転写対象物13)になる。
【0191】
接着力の弱い順に剥離が進み、結果として、画像層として必要な層=第二の層7、第一の層6、W層5、CMYK層8、ニス層9、ニス9の根に守られたPVA層3+シリコーンオイル4層の一部(ニス9の根の内側)のみが転写対象物13に転籍する事が可能になる(
図16参照)。
【0192】
以上の工程を、
・必要な決められた時間間隔で正確に進める必要があること
・特定の高温・高圧を恒常的に連続で与える必要があること
・UV照射分量を均一に維持する必要があること
・利益を確保する生産性を維持すること
【0193】
以上の四点から、一台の専用機械にて一貫工程で行うことが、より好適である。(
図17参照)
【0194】
また、この工程を通じての品質が正確に得られる各使用素材/インク、ニス、シートが必要である(UV照射分量に正確に反応して時間通りに硬化するインクやニス、UV照射分量に正確に反応して架橋化・硬化するPVAとシリコーンオイルを積層したシート、熱可塑材とシリコーンオイルコンパウンドが設けられたPETフィルムなど、機械、工程、各素材のどれか一つでも欠けると、品質が充足される最終目的物は得られない。
【0195】
最後にシリコーンオイル層4の役割を総括する。
【0196】
先ず、「0104」で説明した通り、画像層であるWインク層5、CMYKインク層8、ニス層9の、柔軟性ある土台を作る役割がある。この役割が無ければ、画像層は全体として硬く、転写フィルムbを被せてから与えられる高圧5kg/cm2画像層は破壊されてしまう。破壊された画像層は割れる、画像層にひびが入る、と言った症状が出る蓋然性が高まる。(「0059」「0166」「0167」で述べた通り)
【0197】
次にW(白)インクとPVAを接触させない役割も大きい。UVインクに侵食されないPVAの接着性は保持される。接着性ある糊材(PVA)が存在するので、画像層として必要な層=第二の層7、第一の層6、W層5、CMYK層8、ニス層9、ニス9の根に守られたPVA3+シリコーンオイル層4の一部(ニス9の根の内側)を転写対象物13へ強く長く粘着することが可能になる。シリコーンオイル層4を設けず、直接にPVA層3へWインクを噴出させ、上記工程で運良く、画像層が出来上がり転写対象物13へ貼り付けても、転写対象物13への接着力はかなり弱く、接着維持できる時間も短い。
【0198】
直接にPVA層3へ噴出されたW(白)インクはPVAと結合する→結合したWインクはUV照射によって硬化する→Wインク硬化の過程で、結合したPVAの粘着性までも硬化させる。結果として、転写対象物13への接着力を喪失させる、からである。
【0199】
上記工程1→10で作られたシートa・シートbは接合されたままの状態で、太陽光など自然にUV(紫外線)を浴び続けている。UVを浴び続けていると、最終的には画像層を形成するUVインクは完全硬化する。この時点で結合されたPVAの接着力も完全喪失する。接着力を喪失したシートaとシートbの接合体(転写シール)は全く使い物にならない。作られたシートa・シートbを接合されたままの状態で長期間保存し、且つ、転写対象物13への強い接着力を失わないためには、画像層下部の糊材の粘着力を失わせないことである。
【0200】
シリコーンを糊材と混ぜて一層にしてベースシートaに塗布する事も認められない。糊材の中でシリコーンが分散して、酸化チタンを含むUVインクとの吸着量が不足する。シリコーン吸着が不足するUVインクは糊材と結合し易い。混ぜるシリコーンの分量を増やせば、糊材の中で分散するシリコーンが増えて、PVAの架橋化を阻害する。また、PVAなど糊材を混入させたUVインクを使うことも認められない。UVインク自体が紫外線に反応して硬化するため、混入された糊材の接着性は喪失される。
【0201】
シリコーンオイル層4は以下の機能においても欠かせない。
【0202】
必要品質を確立させるためには、画像層以外の部分の糊材を架橋化・硬化させることが不可欠である。(「0138」から「0146」で述べた通り)PVA層3の上にシリコーンオイル層4を設けなければ、転写フィルムbとPVAは直接に触れ合った時に即座に接着する。即座に接着されてしまうと、架橋化・硬化が進み難くなる。転写フィルムbに糊材/PVAが先に貼り付いてしまうと、貼り付いた力が勝り、PVA層3でのPVA自体の架橋化が難しくなるからである。架橋化・硬化させるためにも、シリコーンオイル層4は不可欠である。
【0203】
結論として、PVA層3の上に独立したシリコーンオイル層4を設ける事は、必要不可欠である。
【0204】
上記の重要な役割を担っており、シリコーンオイル層4を糊層(PVA層3)の一部、または、シリコーンオイル層4も糊層(PVA層3)と同じである、と捉えるには無理がある。
【符号の説明】
【0205】
1 基材(紙)層
2 PP層
3 PVA層
4 シリコーンオイル層
5 W(白)インク層
6 第一の層
7 第二の層
8 CMYKインク層
9 ニス層
10 シリコーンオイルコンパウンド層
11 熱可塑材/トリエチレングリコールジビニル層
12 基材(PETフィルム)層
13 転写対象物
14 転写シール製造装置
15 プリンター装置
15a 載置台
15b Wインクヘッド部
15c CMYKインクヘッド部
15d ニスインクヘッド部
15e UVランプ部
16 転写ベースシート供給手段
16a 転写フィルム巻取回転ドラム
17 転写フィルム供給手段
17a 転写フィルム巻取回転ドラム
18 加圧加熱手段
18a 加圧ローラー
18b 加熱手段
19 転写シール巻取手段
19a 転写シール巻取回転ドラム
20 カバーシート巻取手段
a 転写ベースシート(紙1+PPフィルム2+PVA3+シリコーン
オイル4)
b 転写フィルム(PETフィルム12+熱可塑材/トリエチレングリコール
ジビニル11+シリコーンオイルコンパウンド10
【要約】 (修正有)
【課題】画像のみを綺麗に転写対象物に転写し、長期間(1年以上)の保存性が可能な転写シールの提供。
【解決手段】本発明の転写シールの製造方法は、転写ベースシート上に、酸化チタンを含有する紫外線硬化インクを所望の形状に印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第一工程と、上記紫外線硬化インク上に、所望の色の紫外線硬化インクを所望の形状に印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第二の工程と、上記所望の形状の所望の色の紫外線硬化インク上に、紫外線硬化ニスを、所望の形状で印刷すると共に、紫外線を所望量、所望時間、照射する第三工程と、転写フィルムを、上記画像及びニスが印刷された上記転写ベースシートに重ね合わせて加熱する第四工程と、冷却により、上記転写ベースシートの破壊された第一樹脂層部分と上記転写フィルムの基材とを一体化する第五工程とよりなることを特徴とする。
【選択図】
図15