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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-27
(45)【発行日】2025-09-04
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20250828BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20250828BHJP
【FI】
F04C18/02 311Y
F04C18/02 311F
F04C29/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024227122
(22)【出願日】2024-12-24
【審査請求日】2025-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 和行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓洋
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/255881(WO,A1)
【文献】特開2004-100609(JP,A)
【文献】特開2005-180296(JP,A)
【文献】特開平02-009973(JP,A)
【文献】特開平04-334701(JP,A)
【文献】特開平07-189964(JP,A)
【文献】特開平08-014181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、
前記密閉容器の内部に設置されるフレームと、
渦巻状の固定ラップを有し、前記フレームに固定される固定スクロールと、
前記固定ラップとの間に圧縮室を形成する渦巻状の旋回ラップを有するとともに、鏡板に対して前記旋回ラップの反対側に設けられる旋回軸を有する旋回スクロールと、
前記旋回軸に嵌合する偏心穴が設けられる偏心部を有するクランクシャフトと、
前記偏心部の挿通孔が設けられ、前記フレームの内側に嵌合するフレームプレートと、
前記フレームプレートに対して前記偏心部を回転自在に軸支する第1軸受と、
前記偏心穴の周面に対して前記旋回軸を回転自在に軸支する第2軸受と
前記旋回スクロールと前記フレームプレートとの間に介在するオルダムリングと、を備えるとともに、
前記フレームプレートと前記鏡板との間をシールするシールリングを備え、
前記シールリングの下端の高さ位置よりも前記第1軸受の上端の高さ位置の方が低
前記オルダムリングは、
前記旋回スクロールの第1キー溝を介して案内される第1キーと、
前記フレームプレートの第2キー溝を介して案内される第2キーと、を有し、
前記第2キー溝は、前記フレームプレートのオルダムリング支持面から下側に凹んでなる溝であり、
前記オルダムリング支持面の高さ位置よりも前記第1軸受の上端の高さ位置の方が低い、スクロール圧縮機。
【請求項2】
密閉容器と、
前記密閉容器の内部に設置されるフレームと、
渦巻状の固定ラップを有し、前記フレームに固定される固定スクロールと、
前記固定ラップとの間に圧縮室を形成する渦巻状の旋回ラップを有するとともに、鏡板に対して前記旋回ラップの反対側に設けられる旋回軸を有する旋回スクロールと、
前記旋回軸に嵌合する偏心穴が設けられる偏心部を有するクランクシャフトと、
前記偏心部の挿通孔が設けられ、前記フレームの内側に嵌合するフレームプレートと、
前記フレームプレートに対して前記偏心部を回転自在に軸支する第1軸受と、
前記偏心穴の周面に対して前記旋回軸を回転自在に軸支する第2軸受と、を備えるとともに、
前記フレームプレートと前記鏡板との間をシールするシールリングを備え、
前記シールリングの下端の高さ位置よりも前記第1軸受の上端の高さ位置の方が低
前記フレームプレートは、
前記挿通孔が設けられる環状のベース部と、
前記ベース部の内周縁から上側に突出している環状の突出部と、を有し、
前記突出部において前記鏡板に対向する面から下側に凹んでなる環状の溝に前記シールリングが設置される、又は、前記面の内周縁が切り欠かれてなる環状の切欠きに前記シールリングが設置され、
前記第1軸受の上端は、前記ベース部に径方向で重なる一方、前記突出部には径方向で重ならない、スクロール圧縮機。
【請求項3】
前記フレームプレートは、
前記挿通孔が設けられ、前記フレームの内側に嵌合する環状の嵌合部と、
前記嵌合部の内周縁から下側に延びる筒状の延伸部と、を備え、
前記第1軸受の下端が前記延伸部に径方向で重なっていること
を特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記嵌合部の外周面は、前記フレームの内周面に密接していること
を特徴とする請求項3に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記シールリングの下端と前記第1軸受の上端との間の軸方向の距離が、前記第1軸受の軸方向の長さよりも短いこと
を特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記フレームプレートは、
前記挿通孔が設けられる環状のベース部と、
前記ベース部の内周縁から上側に突出している環状の突出部と、を有し、
前記突出部の内周面は、前記ベース部の内周面よりも径方向内側に位置し、
前記突出部において前記鏡板に対向する面から下側に凹んでなる環状の溝に前記シールリングが設置される、又は、前記面の内周縁が切り欠かれてなる環状の切欠きに前記シールリングが設置され、
前記シールリングの内径は、前記第1軸受の内径よりも短いこと
を特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記フレームプレートは、
前記挿通孔が設けられる環状のベース部と、
前記ベース部の内周縁から上側に突出している環状の突出部と、を有し、
前記突出部において前記鏡板に対向する面の内周縁が切り欠かれてなる環状の切欠きに前記シールリングが設置され、
前記シールリングの径方向内側をガイドする断面L字状のガイドリングをさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
前記フレームプレートは、
前記挿通孔が設けられる環状のベース部と、
前記ベース部の下側に連なり、前記フレームの内側に嵌合する環状の嵌合部と、を備え、
前記ベース部の外径は、前記嵌合部の外径よりも長く、
前記ベース部において前記嵌合部よりも径方向外側に突出している部分に複数のボルト挿通孔が設けられ、
前記フレームプレートは、前記嵌合部が前記フレームの内側に嵌合した状態で、それぞれの前記ボルト挿通孔に挿通される複数のボルトによって前記フレームに締結されていること
を特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項9】
前記クランクシャフトに設置され、前記フレームと前記フレームプレートとの間の空間に配置されるバランスウェイトを備え、
前記クランクシャフトは、前記フレームの内部において片持ちで支持されること
を特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機を備えるとともに、
室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、を備える空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクロール圧縮機及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機の構造に関して、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、クランクシャフトの上端部に偏心穴を設け、この偏心穴にスクロールピンが嵌め込まれた構成のスクロール圧縮機について記載されている。なお、偏心穴の外周側には主軸受が配置され、内周側には旋回軸受が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2923582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、主軸受と旋回軸受とが径方向で重なる二重軸受構造になっているが、スクロール圧縮機の性能や信頼性をさらに高める余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、性能や信頼性の高いスクロール圧縮機等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本開示に係るスクロール圧縮機は、密閉容器と、前記密閉容器の内部に設置されるフレームと、渦巻状の固定ラップを有し、前記フレームに固定される固定スクロールと、前記固定ラップとの間に圧縮室を形成する渦巻状の旋回ラップを有するとともに、鏡板に対して前記旋回ラップの反対側に設けられる旋回軸を有する旋回スクロールと、前記旋回軸に嵌合する偏心穴が設けられる偏心部を有するクランクシャフトと、前記偏心部の挿通孔が設けられ、前記フレームの内側に嵌合するフレームプレートと、前記フレームプレートに対して前記偏心部を回転自在に軸支する第1軸受と、前記偏心穴の周面に対して前記旋回軸を回転自在に軸支する第2軸受と、前記旋回スクロールと前記フレームプレートとの間に介在するオルダムリングと、を備えるとともに、前記フレームプレートと前記鏡板との間をシールするシールリングを備え、前記シールリングの下端の高さ位置よりも前記第1軸受の上端の高さ位置の方が低く、前記オルダムリングは、前記旋回スクロールの第1キー溝を介して案内される第1キーと、前記フレームプレートの第2キー溝を介して案内される第2キーと、を有し、前記第2キー溝は、前記フレームプレートのオルダムリング支持面から下側に凹んでなる溝であり、前記オルダムリング支持面の高さ位置よりも前記第1軸受の上端の高さ位置の方が低いこととした。なお、その他については実施形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、性能や信頼性の高いスクロール圧縮機等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
図2A】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、フレームプレートを上から見下ろした場合の斜視図である。
図2B】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、フレームプレートを下から見上げた場合の斜視図である。
図3】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、図1のフレームプレートを含む領域の部分拡大図である。
図4】第1実施形態に係るスクロール圧縮機の分解斜視図である。
図5】第1実施形態に係るスクロール圧縮機が備える旋回スクロールの下面図である。
図6A】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、フレームやクランクシャフトにフレームプレートが組み付けられる際の状態を示す断面図である。
図6B】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、フレームプレートがフレームに圧入される際の状態を示す断面図である。
図6C】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、フレームプレートの圧入が完了したときの状態を示す断面図である。
図7】第1実施形態に係るスクロール圧縮機から蓋チャンバや固定スクロール、旋回スクロール、及びオルダムリングを取り外した状態の平面図である。
図8】第2実施形態に係るスクロール圧縮機のフレームプレートを含む領域の縦断面図である。
図9】第2実施形態に係るスクロール圧縮機の分解斜視図である。
図10】第3実施形態に係るスクロール圧縮機のフレームプレートを含む領域の縦断面図である。
図11】第4実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
図12】第5実施形態に係る空気調和機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
<スクロール圧縮機の構成>
図1は、第1実施形態に係るスクロール圧縮機100の縦断面図である。
スクロール圧縮機100は、ガス状の冷媒を圧縮する機器である。図1に示すように、スクロール圧縮機100は、密閉容器1と、圧縮機構部2と、フレーム3と、スラスト受け部4と、フレームプレート5と、シールリング6と、を備えている。また、スクロール圧縮機100は、前記した構成の他に、クランクシャフト7と、オルダムリング8と、バランスウェイト9,10と、主軸受11(第1軸受)と、旋回軸受12(第2軸受)と、副軸受13(第3軸受)と、スラスト軸受14と、を備えている。さらに、スクロール圧縮機100は、電動機15と、返油パイプ16と、遠心ポンプ17と、脚18と、を備えている。
【0010】
密閉容器1は、圧縮機構部2やクランクシャフト7や電動機15といった部材を収容する金属製の容器であり、略密閉されている。密閉容器1には、各摺動部を潤滑するための油が封入され、密閉容器1の底部に油溜りR1として貯留されている。密閉容器1は、円筒状の筒チャンバ1aと、この筒チャンバ1aの上側を塞ぐ蓋チャンバ1bと、筒チャンバ1aの下側を塞ぐ底チャンバ1cと、を備えている。
【0011】
図1に示すように、密閉容器1の蓋チャンバ1bには、吸込パイプP1が差し込まれた状態で固定されている。吸込パイプP1は、圧縮機構部2の吸入室(図示せず)に冷媒を導くパイプである。また、密閉容器1の筒チャンバ1aには、吐出パイプP2が差し込まれた状態で固定されている。吐出パイプP2は、圧縮機構部2で圧縮された冷媒をスクロール圧縮機100の外部に導くパイプである。
【0012】
圧縮機構部2は、クランクシャフト7の回転に伴って冷媒を圧縮する機構である。圧縮機構部2は、固定スクロール21と、旋回スクロール22と、を備え、密閉容器1内の上部空間に配置されている。固定スクロール21は、旋回スクロール22とともに圧縮室C1を形成する部材であり、フレーム3の上側に複数のボルトで固定されている。図1に示すように、固定スクロール21は、台板21aと、支持部21bと、固定ラップ21cと、を備え、これらが一体的に形成されている。
【0013】
台板21aは、平面視で円形状を呈する肉厚の部分である。支持部21bは、台板21aを支持する筒状の部分であり、台板21aの周縁部から下側に延びている。なお、支持部21bの円環状の下面は、旋回スクロール22との間で摺動する鏡板面になっている。この鏡板面の高さ位置は、固定ラップ21cの歯先の高さ位置に略等しくなっている。固定ラップ21cは、渦巻状を呈し、台板21aから下側に延びている。
【0014】
旋回スクロール22は、クランクシャフト7の回転に伴って旋回する部材であり、固定スクロール21とフレームプレート5との間に配置されている。また、旋回スクロール22は、その中心軸線が固定スクロール21の中心軸線に対して所定距離だけ偏心した状態で、固定スクロール21に対向するように配置されている。
【0015】
図1に示すように、旋回スクロール22は、鏡板22aと、旋回ラップ22bと、旋回軸22cと、を備え、これらが一体的に形成されている。鏡板22aは、固定スクロール21との間で摺動する部分であり、円板状を呈している。旋回ラップ22bは、渦巻状を呈し、鏡板22aから上側に延びている。旋回軸22cは、円柱状を呈し、鏡板22aの背面の中央部から下側に延びている。つまり、鏡板22aに対して旋回ラップ22bの反対側に旋回軸22cが設けられている。この旋回軸22cは、クランクシャフト7の偏心穴71bに嵌合している。
【0016】
そして、渦巻状の固定ラップ21cと、渦巻状の旋回ラップ22bと、の間に圧縮室C1が形成されるようになっている。圧縮室C1は、ガス状の冷媒を圧縮する空間であり、旋回ラップ22bの内線側・外線側のそれぞれに形成される。固定スクロール21の台板21aの中心付近には、圧縮室C1で圧縮された冷媒を圧縮機構部2の上側の吐出空間C2に導くための吐出口K1が設けられている。吐出口K1を介して吐出空間C2に吐出された冷媒は、密閉容器1と圧縮機構部2と間の所定の隙間を介して、圧縮機構部2の下側のモータ室C3に導かれる。
【0017】
フレーム3は、固定スクロール21を支持したり、副軸受13を固定したりするための金属製の部材である。フレーム3は、密閉容器1の内部に設置され、筒チャンバ1aの内周面に溶接等で固定されている。フレーム3は、概ね回転対称な形状を呈し、その下端に近いほど内周面や外周面の径が段階的に縮小している。なお、フレーム3の下部(副軸受13の設置箇所を含む部分)は、クランクシャフト7の中間部71aに近接している。フレーム3には、クランクシャフト7を挿通するための挿通孔3aが設けられている。また、フレーム3には、返油孔3bが横方向に設けられている。返油孔3bには、返油パイプ16が差し込まれている。
【0018】
図1に示すように、フレーム3の下端には、スラスト受け部4が設けられている。スラスト受け部4は、クランクシャフト7の段差面73aからスラスト軸受14を介して軸方向(スラスト方向)の力を受ける部分であり、平面視で環状を呈している。スラスト受け部4の内周縁の径は、クランクシャフト7の中間部71aの径よりも短くなっている。また、スラスト受け部4の内周縁は、クランクシャフト7の小径部72aの周面に径方向で近接している。図1の例では、スラスト受け部4がフレーム3とは別部材になっているが、フレーム3と一体的に形成してもよい。
【0019】
フレームプレート5は、フレーム3の内側に嵌合する金属部材である。このようなフレームプレート5を設けることで、フレーム3とフレームプレート5との間の空間(図1のバランスウェイト空間A2)にバランスウェイト9を配置できる。なお、フレームプレート5の詳細については後記する。
【0020】
シールリング6は、フレームプレート5と旋回スクロール22の鏡板22aとの間をシールするための環状の樹脂部材である。シールリング6は、フレームプレート5の上端面に設けられた環状の溝V1(図4参照)に設置されている。
【0021】
クランクシャフト7は、電動機15のロータ152と一体で回転する軸部材であり、上下方向に延びている。図1に示すように、クランクシャフト7は、主軸部7aと、偏心部7bと、を備えている。主軸部7aは、電動機15のロータ152に対して同軸で固定される部分であり、中間部71aと、小径部72aと、段差面73aと、を備えている。
【0022】
中間部71aは、偏心部7bの下側に連なっており、その周囲がフレーム3に囲まれている。小径部72aは、中間部71aよりも径が短い部分であり、中間部71aの下側に段差面73aを介して連なっている。小径部72aの大部分は、径方向においてフレーム3の外側に存在している。また、小径部72aの上端付近は、スラスト受け部4に径方向で重なっている。
【0023】
段差面73aは、中間部71aと小径部72aとの間の境目を形成している環状の面である。図1に示すように、段差面73aは、スラスト軸受14の上面に当接している。段差面73aの面方向は、クランクシャフト7の軸方向に対して略垂直になっている。
【0024】
偏心部7bは、上側に開口した有底円筒状を呈し、主軸部7aから上側に延びている。偏心部7bには、偏心穴71bが設けられている。偏心穴71bは、円柱状の旋回軸22cに嵌合する穴であり、上側に開口している。また、偏心穴71bの内部空間は、主軸部7aの貫通孔7cに連通している。偏心穴71bは、平面視で円形状を呈し、その中心軸線が主軸部7aの中心軸線に対して所定に偏心している。そして、電動機15の駆動に伴い、主軸部7aに対して旋回軸22cが偏心しながら移動するようになっている。その結果、固定スクロール21に対して旋回スクロール22が偏心しながら旋回運動を行う。
【0025】
図1に示すように、主軸部7aの内部には、油が通流する貫通孔7cが軸方向に設けられている。また、主軸部7aには、貫通孔7cに連通するように径方向の横孔7dが設けられている。そして、貫通孔7cを介して通流する油の一部が、横孔7dを介して、副軸受13に導かれるようになっている。
【0026】
オルダムリング8は、旋回スクロール22を自転させることなく旋回させるための金属製の輪状部材である。オルダムリング8は、旋回スクロール22とフレームプレート5との間に介在している。図1では、オルダムリング8の環状部8a(図4も参照)の断面が見えている。なお、オルダムリング8の詳細については後記する。
【0027】
バランスウェイト9は、スクロール圧縮機100の振動を抑制するための部材であり、クランクシャフト7に設置されている。より詳しく説明すると、クランクシャフト7の中間部71aにおいて、偏心部7bの直下にバランスウェイト9が設置されている。このように、クランクシャフト7の上端付近にバランスウェイト9を設置することで、バランスウェイト9の遠心力に伴うクランクシャフト7のたわみを抑制できる。
【0028】
図1に示すように、バランスウェイト9は、フレーム3とフレームプレート5との間の空間(バランスウェイト空間A2)に配置されている。そして、電動機15の駆動に伴い、クランクシャフト7とバランスウェイト9とが一体で回転するようになっている。
なお、バランスウェイト空間A2とモータ室C3とは、フレーム3を介して隔てられている。したがって、バランスウェイト空間A2に存在するミスト状の油がバランスウェイト9の回転で攪拌された場合でも、その攪拌の影響がモータ室C3の油に及ぶことはほとんどない。つまり、モータ室C3に存在する油が攪拌されにくいため、吐出パイプP2を介した油の流出を抑制できる。
【0029】
他方のバランスウェイト10は、電動機15のロータ152の下側に設置されている。そして、ロータ152とバランスウェイト10とが一体で回転するようになっている。また、バランスウェイト9,10は、その重心がクランクシャフト7を挟んで互いに反対側に位置している。これによって、スクロール圧縮機100の振動を効果的に抑制できる。なお、バランスウェイトの数や設置箇所は適宜に変更可能である。
【0030】
図1に示す主軸受11(第1軸受)は、フレームプレート5に対して偏心部7bを回転自在に軸支するものであり、フレームプレート5の内周面に圧入等で固定されている。このような主軸受11として、例えば、円筒状の滑り軸受が用いられる。なお、フレームプレート5の内周面に代えて、偏心部7bの外周面に主軸受11が固定されるようにしてもよい。
【0031】
旋回軸受12(第2軸受)は、偏心穴71bの周面に対して旋回軸22cを回転自在に軸支するものであり、主軸受11(第1軸受)の径方向内側に配置されている。このような旋回軸受12として、例えば、円筒状の滑り軸受が用いられる。旋回軸受12は、偏心穴71bの周面に圧入等で固定されている。なお、偏心穴71bの周面に代えて、旋回軸22cの周面に旋回軸受12が固定されるようにしてもよい。
【0032】
副軸受13(第3軸受)は、フレーム3に対してクランクシャフト7の中間部71aを回転自在に軸支するものである。副軸受73は、フレーム3の挿通孔3aの周面に圧入等で固定されている。なお、副軸受13の高さ位置は、主軸受11や旋回軸受12よりも低い一方、電動機15の高さ位置よりも高くなっている。このような副軸受13として、例えば、円筒状の滑り軸受が用いられる。主軸受11や旋回軸受12や副軸受13に滑り軸受を用いることで、各軸受の低コスト化を図りつつ、高速運転時の耐久性を確保できる。
【0033】
スラスト軸受14は、クランクシャフト7から軸方向(スラスト方向)の荷重を受ける軸受であり、薄板の円環状を呈している。図1に示すように、スラスト軸受14は、スラスト受け部4に載置されている。スラスト軸受14の上面は、クランクシャフト7の段差面73aから軸方向の力を受けるスラスト受け面になっている。スラスト軸受14は、副軸受13に対して上下方向で若干離れた状態で、副軸受13の下側に配置されている。
【0034】
電動機15は、クランクシャフト7を回転させる駆動源である。このような電動機15として、例えば、永久磁石同期モータが用いられるが、他の種類のモータが用いられてもよい。電動機15は、ステータ151と、ロータ152と、を備え、圧縮機構部2の下側に配置されている。
【0035】
ステータ151は、ステータコア151a及び巻線151bを有し、筒チャンバ1aの内周面に固定されている。ステータコア151aは、磁性体で構成された円筒状の部材である。ステータコア151aには、巻線151bが所定に巻回されている。
【0036】
ロータ152は、クランクシャフト7の中心軸線周りに回転するものであり、ステータ151の径方向内側に配置されている。ロータ152は、例えば、電磁鋼板が積層された円筒状の鉄心に複数の永久磁石(図示せず)が埋設された構成になっている。前記した複数の電磁鋼板は、リベットT1で固定されている。そして、巻線151bを介して所定に電流が流れることで、ステータ151とロータ152との間に磁気的な吸引力・反発力が生じて、ロータ152が回転するようになっている。
【0037】
返油パイプ16は、主軸受11や旋回軸受12や副軸受13を潤滑した油を油溜りR1に戻すためのパイプである。返油パイプ16は、側面視で逆L字状を呈し、前記したように、フレーム3の返油孔3bに差し込まれている。また、返油パイプ16の上流端は、バランスウェイト空間A2に臨んでいる。
【0038】
遠心ポンプ17は、密閉容器1の底部の油溜りR1から油を吸い上げるためのポンプであり、クランクシャフト7の下端付近に設置されている。複数の脚18は、密閉容器1を支持する部材であり、底チャンバ1cに設置されている。
【0039】
<二重軸受構造について>
図1の例では、主軸受11の上部と、旋回軸受12の下部と、が径方向で重なっているが、これに限定されるものではない。すなわち、主軸受11と旋回軸受12の軸方向の設置領域が少なくとも部分的に重なっている構成であればよい。このような構成を「二重軸受構造」という。
【0040】
二重軸受構造にすることで、ガス荷重に伴う力が旋回軸22cから作用したとき、旋回軸受12での作用点と、主軸受11での作用点と、の軸方向の高さ位置が略等しくなる。したがって、クランクシャフト7を傾斜させるようなモーメントの発生を抑制し、ひいては、クランクシャフト7の片当たりを抑制できる。さらに、スクロール圧縮機100を高速運転させた場合でも、クランクシャフト7のたわみを抑制できる。
【0041】
<片持ち支持構造について>
図1に示すように、クランクシャフト7は、フレーム3の内部において片持ちで支持されている。ここで、「片持ち」とは、クランクシャフト7の下部を軸支するためのサブフレーム(図示せず)を特に設けることなく、クランクシャフト7の上部をフレーム3の内部で軸支することを意味している。図1の例では、クランクシャフト7が主軸受11及び副軸受13によってフレーム3の内部で軸支されている。このように片持ち支持構造にすることで、サブフレーム(図示せず)を別途設ける必要がなくなるため、低コスト化を図ることができる。
【0042】
なお、仮にサブフレームを設けた場合には、組付段階においてフレーム3とサブフレームとの間で軸芯を合わせる工程が必要になる。しかしながら、フレーム3とサブフレームの軸芯を合わせようとしても、2つの部材の組付けでは同軸度の改善に限界があり、また、フレーム3の溶接等に伴う熱変形の影響もあるため、主軸受11と副軸受13との間の軸芯の誤差が大きくなる可能性がある。
【0043】
これに対して第1実施形態では、サブフレーム(図示せず)を設ける必要が特にないため、サブフレームとフレームの間で軸芯を合わせる場合に比べて同軸度を大幅に改善できる。その結果、クランクシャフト7の傾きを抑制し、ひいては、クランクシャフト7の振れ回りや片当たりを抑制できる。また、サブフレームの組付工程が特にないため、生産効率を高めることができる。
【0044】
図2Aは、フレームプレート5を上から見下ろした場合の斜視図である。
図2Aに示すように、フレームプレート5の中央付近には、クランクシャフト7(図1参照)の偏心部7b(図1参照)を挿通するための挿通孔5hが設けられている。フレームプレート5は、ベース部51と、突出部52と、一対の支持部53と、嵌合部54と、を備え、これらが一体的に形成されている。
【0045】
ベース部51は、複数のボルトB2(図4参照)でフレーム3(図4参照)に締結される部分である。ベース部51は、平面視で環状を呈し、その中央付近に挿通孔5hが設けられている。ベース部51の上面における外周縁の付近には、計4個のボルト挿通孔51kが周方向で略等間隔に設けられている。別の観点から説明すると、ベース部51において嵌合部54よりも径方向外側に突出している部分51a(図2B参照)に複数のボルト挿通孔51kが設けられている。それぞれのボルト挿通孔51kの周囲には、ボルトB2(図4参照)の頭部に対応した形状のザグリ穴(符号は図示せず)が設けられている。
【0046】
突出部52は、ベース部51の内周縁から上側に突出している部分であり、平面視で環状を呈している。突出部52には、その上面(旋回スクロール22の鏡板22aに対向する面:図1参照)から下側に凹んでなる環状の溝V1が設けられている。溝V1には、板ばね19(図4参照)及びシールリング6(図4参照)が順次に設置される。
【0047】
一対の支持部53は、オルダムリング8(図4参照)の環状部8a(図4参照)を支持しつつ、第2キー溝53bを介してオルダムリング8の第2キー8c(図4参照)を案内する部分である。一対の支持部53は、環状の突出部52を挟んで互いに反対側に配置され、径方向においてベース部51よりも外側に一直線状に延びている。それぞれの支持部53の上面は、オルダムリング8の環状部8a(図4参照)を支持するためのオルダムリング支持面53aになっている。すなわち、オルダムリング支持面53aが環状部8a(図4参照)の下面に接触し、この環状部8aを支持するようになっている。したがって、オルダムリング8がフレームプレート5に設置された状態では、環状部8aの下面の高さ位置が、オルダムリング支持面53aの高さ位置に略一致する。
【0048】
一対の支持部53には、それぞれ、第2キー溝53bが設けられている。第2キー溝53bは、フレームプレート5のオルダムリング支持面53aから下側に凹んでなる径方向の溝である。第2キー溝53bは、オルダムリング8(図4参照)の第2キー8c(図4参照)を案内する機能を有している。
【0049】
図2Bは、フレームプレート5を下から見上げた場合の斜視図である。
図2Bに示す嵌合部54は、フレーム3(図3参照)の内側に嵌合する部分であり、ベース部51の下側に連なっている。第1実施形態では、前記した「嵌合」の例として、嵌合部54がフレーム3の内周面に圧入される場合について説明する。嵌合部54は、平面視で環状を呈し、その中央付近に挿通孔5hが設けられている。
【0050】
なお、ベース部51の外径は、嵌合部54の外径よりも長くなっている。したがって、フレームプレート5がフレーム3(図3参照)に圧入されると、ベース部51において嵌合部54よりも径方向外側に突出している部分51aが、フレーム3の内側の水平面3c(図3参照)に当接する。これによって、圧入時にフレームプレート5の下側への移動が規制される。また、フレームプレート5がフレーム3(図3参照)に圧入されると、嵌合部54の外周面がフレーム3の内周面に密接した状態になる。ここで、「密接」とは、2つの部材が隙間なく接触していることを意味しているが、隙間を一切許容しないというものでは特にない。なお、「密接」の手法として、圧入の他に、焼嵌めが挙げられる。
【0051】
図2Bに示すように、フレームプレート5は、延伸部55を備えている。延伸部55は、嵌合部54の内周縁から下側に延びる筒状の部分である。なお、ベース部51と、突出部52(図2A参照)と、嵌合部54と、延伸部55とは、その内周面(つまり、挿通孔5hの周面)が面一になっている。挿通孔5hの周面には、主軸受11(図3参照)が設置される。
【0052】
<主軸受と他の部材との位置関係について>
図3は、図1のフレームプレート5を含む領域の部分拡大図である。
図3に示すシールリング6は、クランクシャフト7の貫通孔7cに連通する高圧空間と、所定の中間圧力の背圧室A1と、を仕切るための環状の樹脂部材である。このようなシールリング6として、例えば、断面が矩形状の角リングが用いられる。シールリング6に角リングを用いることで、旋回スクロール22からの下向きの荷重に対する耐久性を確保するようにしている。
【0053】
なお、シールリング6の径方向内側の空間は、吐出圧力に略等しい高圧空間になっている。一方、シールリング6の径方向外側の空間は、吐出圧力よりも低い所定の中間圧力の背圧室A1になっている。そして、背圧室A1の圧力で旋回スクロール22が上側に適度に押し上げられる。
【0054】
板ばね19(図4も参照)は、シールリング6を上向きに(つまり、旋回スクロール22側に)押し上げるための板状のばね部材である。板ばね19は、平面視で環状を呈し、フレームプレート5の溝V1(図4も参照)に設置されている。具体的には、溝V1の底に板ばね19が設置され、この板ばね19の上側にシールリング6が設置される。そして、板ばね19と、旋回スクロール22の鏡板22aの下面と、の間でシールリング6が上下方向に圧縮されるようになっている。なお、板ばね19を適宜に省略することも可能である。
【0055】
図3に示すように、シールリング6の下端の高さ位置よりも主軸受11(第1軸受)の上端の高さ位置の方が低くなっている。このような構成によれば、主軸受11に作用する径方向の軸受荷重の影響がシールリング6に及ぶことを抑制できる。つまり、主軸受11に作用する大きな軸受荷重でフレームプレート5の突出部52が変形するといったことを抑制できる。その結果、シールリング6におけるシール性能の悪化が抑制されるため、シールリング6の径方向内側の高圧空間から背圧室A1への冷媒の流入を抑制できる。これによって、背圧室A1の圧力が高くなりすぎることを抑制し、ひいては、旋回ラップ22b(図1参照)の歯先の摩耗を抑制できる。
【0056】
また、シールリング6の下端と主軸受11(第1軸受)の上端との間の軸方向の距離L1が、主軸受11(第1軸受)の軸方向の長さL2よりも短くなるようにするとよい(L1<L2)。このような構成によれば、上下方向において主軸受11がシールリング6の近くに配置されるため、主軸受11と旋回軸受12とが径方向で重なりやすくなる。その結果、前記した二重軸受構造の利点が生かされ、クランクシャフト7のたわみを抑制できる。また、主軸受11と旋回軸22cとが径方向で重なる領域を確保できるため、旋回軸22cのたわみも抑制できる。また、スクロール圧縮機100の上下方向の寸法が長くなることを抑制できる。
【0057】
フレームプレート5との位置関係で説明すると、主軸受11の上端は、フレームプレート5のベース部51に径方向で重なっている。このような構成によれば、主軸受11に作用する径方向の軸受荷重が突出部52(ベース部51の上側)を介して、シールリング6に作用することを抑制できる。
【0058】
また、主軸受11(第1軸受)の下端が、フレームプレート5の延伸部55に径方向で重なるようにするとよい。図3の例では、主軸受11の下端の高さ位置が、延伸部55の下端の高さ位置に略等しくなっている。別の観点から説明すると、主軸受11の下端の高さ位置が、フレームプレート5の嵌合部54の下端の高さ位置よりも低くなるようにするとよい。このような構成によれば、フレームプレート5をフレーム3に対して圧入する過程で、まず、延伸部55に固定された主軸受11の内側に偏心部7bが入り込み(図6A図6B参照)、その後に嵌合部54がフレーム3に対して圧入される(図6C参照)。その結果、主軸受11と偏心部7bの外周面との間で軸芯が合った状態で圧入が行われるため、主軸受11が圧入時のプレス荷重で損傷するといったことを防止できる。
【0059】
図4は、スクロール圧縮機100の分解斜視図である。
なお、図4では、オルダムリング8と、シールリング6と、板ばね19と、フレームプレート5と、複数のボルトB2と、フレーム3(一部)と、クランクシャフト7の偏心部7b(一部)と、を図示している(残りの各部材については図示を省略)。図4に示すシールリング6は、前記したように、フレームプレート5の突出部52の溝V1に設置される。板ばね19は、溝V1においてシールリング6の下側に設置される。
【0060】
オルダムリング8は、環状部8aと、一対の第1キー8bと、一対の第2キー8cと、を備え、これらが一体的に形成されている。環状部8aは、平面視で環状を呈する部分である。一対の第1キー8bは、旋回スクロール22の第1キー溝22d(図5参照)を介して案内される部分であり、環状部8aから上側に延びている。図4に示すように、一対の第1キー8bは、環状部8aの中心を基準として対称な位置に設けられている(一対の第2キー8cも同様)。
【0061】
一対の第2キー8cは、前記したように、フレームプレート5の第2キー溝53bを介して案内される部分であり、環状部8aから下側に延びている。なお、環状部8aの周方向において、第1キー8bと第2キー8cとが90°毎(環状部8aの中心を基準とする円周角での90°毎)に交互に設けられている。
【0062】
オルダムリング8は、前記したように、旋回スクロール22(図3参照)とフレームプレート5との間に介在している。なお、フレームプレート5のオルダムリング支持面53aの高さ位置(つまり、環状部8aの下面の高さ位置:図3参照)よりも主軸受11(第1軸受:図3参照)の上端の高さ位置の方が低くなるようにするとよい。このような構成によれば、主軸受11に作用する径方向の軸受荷重の影響がオルダムリング8の環状部8aに及ぶことを抑制できる。その結果、環状部8aの変形を抑制し、ひいては、高速運転時の信頼性を高めることができる。
【0063】
さらに好ましくは、フレームプレート5における第2キー溝53bの底の高さ位置よりも、主軸受11(第1軸受:図3参照)の上端の高さ位置の方が低くなるようにするとよい。このような構成によれば、主軸受11に作用する径方向の軸受荷重の影響がオルダムリング8の環状部8aや第2キー8cに及ぶことを抑制できる。
【0064】
図4に示す複数のボルトB2は、フレームプレート5をフレーム3に固定するものであり、それぞれのボルト挿通孔51kに軸方向(クランクシャフト7の軸方向)に挿通される。なお、フレーム3の内側の水平面3cにも、ボルトB2に対応した形状のボルト穴3dが複数設けられている。フレームプレート5は、嵌合部54がフレーム3の内側に嵌合した状態で、複数のボルトB2によってフレーム3に締結される。
【0065】
なお、フレーム3の上端面に設けられた複数のボルト穴3eは、固定スクロール21(図1参照)との締結に用いられる。また、偏心部7bの上端面には、一対の端面溝72bが径方向に設けられている。一対の端面溝72bは、旋回軸受12(図1参照)を潤滑した油を主軸受11(図1参照)に導くための溝である。
【0066】
図5は、旋回スクロール22の下面図である。
図5に示すように、旋回スクロール22の鏡板22aの下面には、一対の第1キー溝22dが設けられている。第1キー溝22dは、鏡板22aの下面からから上側に凹んでなる径方向の溝である。第1キー溝22dは、オルダムリング8(図4参照)の第1キー8b(図4参照)を案内する機能を有している。なお、第1キー溝22dの延在方向は、フレームプレート5(図4参照)の第2キー溝53b(図4参照)の延在方向に対して平面視で略垂直になっている。図5に示す複数のバランス穴22eは、旋回スクロール22の重心の位置を調整するための穴であり、鏡板22aの下面に設けられている。
【0067】
図6Aは、フレーム3やクランクシャフト7にフレームプレート5が組み付けられる際の状態を示す断面図である。
図6Aに示すように、フレームプレート5の組付時には、このフレームプレート5の内周面に主軸受11が設置され、また、クランクシャフト7の偏心穴71に旋回軸受12が設置された状態になっている。クランクシャフト7は、その段差面73a(図1参照)がスラスト受け部4(図1参照)で係止されている。作業員(又はロボット)は、フレームプレート5を下方に移動させ、主軸受11の径方向内側にクランクシャフト7の偏心部7bを挿通する。
【0068】
前記したように、フレームプレート5の延伸部55に対して主軸受11が径方向で重なっている。したがって、フレームプレート5にプレス荷重がかかっていない状態で、主軸受11の径方向内側に偏心部7bを挿通できる。
【0069】
図6Bは、フレームプレート5がフレーム3に圧入される際の状態を示す断面図である。
図6Bに示すように、フレームプレート5の嵌合部54の下端がフレーム3の内周面に接触するときには、主軸受11の径方向内側に偏心部7bが既に挿通された状態になっている。つまり、主軸受11と偏心部7bの周面との間で中心軸線が一致した状態であるため、偏心部7bとの接触で主軸受11の内周面(摺動面)が損傷を受けるおそれはほとんどない。また、主軸受11及び偏心部7bは、嵌合部54の圧入時におけるガイドとしても機能する。
【0070】
作業員(又はロボット)は、ハンドプレス等の圧入機(図示せず)を用いて、常温の環境下でフレームプレート5に下向きの圧力を加えて強く押し込むことで、フレームプレート5の嵌合部54をフレーム3の内周面に圧入する。
【0071】
図6Cは、フレームプレート5の圧入が完了したときの状態を示す断面図である。
フレームプレート5がフレーム3に圧入されると、ベース部51において嵌合部54よりも径方向外側に延びている部分51aがフレーム3の水平面3cに当接し、フレームプレート5の下向きの移動が規制される。この状態において、嵌合部54とフレーム3の内周面とは径方向に押圧し合っている。したがって、ボルトB2(図4参照)の本数が少ない場合でも、フレーム3に対してフレームプレート5を強固に固定できる。
【0072】
図7は、スクロール圧縮機100から蓋チャンバや固定スクロール、旋回スクロール、及びオルダムリングを取り外した状態の平面図である。
図7に示すボルトB2は、前記したように、フレームプレート5をフレーム3に固定するものである。このようにフレームプレート5が複数のボルトB2で固定されるため、主軸受11(図1参照)から作用する径方向の剪断力への耐久性が高められる。また、フレームプレート5の圧入に加えてボルト締結も行うことで、フレームプレート5の圧入時の圧入代を小さくして、例えば、10[μm]程度にすることができる。このように軽めの圧入にすることで、圧入に伴うフレームプレート5の変形を抑制できる。その結果、フレームプレート5の挿通孔5h(図2A参照)に設置される主軸受11(図1参照)と、フレーム3に設置される副軸受13(図1参照)と、の間で同軸度が確保されやすくなる。
【0073】
<効果>
第1実施形態によれば、主軸受11と旋回軸受12とが径方向で重なる二重軸受構造であるため、クランクシャフト7を傾斜させるようなモーメントの発生を抑制できる。したがって、高速運転時でもクランクシャフト7のたわみや片当りを抑制できる。また、二重軸受構造にすることで、スクロール圧縮機100の上下方向の長さを短くし、その小型化を図ることができる。
【0074】
また、シールリング6の下端の高さ位置よりも主軸受11の上端の高さ位置の方が低いため(図3参照)、主軸受11に作用する軸受荷重の影響がシールリング6に及ぶことを抑制できる。その結果、シールリング6におけるシール性能の悪化を抑制できる。
また、フレームプレート5のオルダムリング支持面53a(図4参照)の高さ位置よりも主軸受11の上端の高さ位置の方が低いため、主軸受11の軸受荷重の影響がオルダムリング8の環状部8aに及ぶことを抑制できる。その結果、環状部8aの変形が抑制されるため、高速運転時の信頼性が高められる。
【0075】
また、第1実施形態では、クランクシャフト7を片持ちで支持する片持ち支持構造であるため、クランクシャフト7の下部を支持するためのサブフレーム(図示せず)を別途設ける必要が特にない。したがって、材料費の削減や組付工程の簡素化・高効率化を図ることができる他、主軸受11と副軸受13との間の同軸度を改善できる。
【0076】
また、フレーム3とフレームプレート5との間の空間にバランスウェイト9(図1参照)が配置されるため、バランスウェイト9の遠心力に伴うクランクシャフト7のたわみを抑制できる。このように第1実施形態によれば、性能や信頼性の高いスクロール圧縮機100を提供できる。
【0077】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、フレームプレート5A(図8参照)の突出部52A(図8参照)に切欠きN1(図8参照)が設けられ、この切欠きN1に板ばね19(図9参照)やガイドリング20(図9参照)やシールリング6(図9参照)が設置される点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0078】
図8は、第2実施形態に係るスクロール圧縮機100Aのフレームプレート5Aを含む領域の縦断面図である。
図8に示すように、フレームプレート5Aの突出部52Aには、切欠きN1が設けられている。切欠きN1は、突出部52Aの上面(旋回スクロール22の鏡板22aに対向する面)の内周縁が切り欠かれた部分であり、平面視で環状を呈している(図9も参照)。そして、この切欠きN1に板ばね19、ガイドリング20、及びシールリング6が順次に設置される(図9も参照)。
【0079】
このような切欠きN1を設けることで、第1実施形態のような溝V1(図4参照)を設ける場合に比べて、シールリング6の内周面の位置(径方向の位置)を挿通孔5hの周面に近づけることができる。つまり、シールリング6として内径の短いものを使用できる。その結果、シールリング6の内側の円の面積を狭くすることができる。つまり、クランクシャフト7の貫通孔7cに連通する高圧空間の圧力が旋回スクロール22の背面(下面)に作用する際の面積が狭くなる。つまり、旋回スクロール22を固定スクロール21側に押し上げようとする力が低減されるため、旋回ラップ22bの歯先の摩耗を抑制できる。
【0080】
ガイドリング20は、シールリング6の径方向内側をガイドする断面L字状の部材であり、平面視で環状を呈している(図9も参照)。このようなガイドリング20を設けることで、シールリング6の径方向内側への移動が規制される。板ばね19は、ガイドリング20やシールリング6を上側(旋回スクロール22側)に押圧するものである。板ばね19は、平面視で環状を呈し(図9も参照)、切欠きN1の底に配置される。
【0081】
図9は、スクロール圧縮機100Aの分解斜視図である。
なお、図9では、シールリング6と、ガイドリング20と、板ばね19と、フレームプレート5Aと、クランクシャフト7の偏心部7b(一部)と、旋回軸受12と、を図示している(残りの各部材については図示を省略)。前記したように、板ばね19と、ガイドリング20と、シールリング6と、が切欠きN1に順次に設置される。
【0082】
<効果>
第2実施形態によれば、突出部52の切欠きN1にシールリング6を設け、さらに、シールリング6の径方向内側の移動をガイドリング20で規制するようにしている。これによって、径方向においてシールリング6の内周面を主軸受11の外周面の付近まで近づけることができる。その結果、シールリング6の内側の円の面積(高圧空間の圧力が作用する面積)が狭くなるため、旋回スクロール22を固定スクロール21側に押し上げようとする力を低減できる。その結果、旋回ラップ22bの歯先の摩耗を抑制し、ひいては、スクロール圧縮機100Aの信頼性を高めることができる。
【0083】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、フレームプレート5B(図10参照)において、突出部52B(図10参照)の内周面がベース部51(図10参照)の内周面よりも径方向内側に位置する点が、第1実施形態とは異なっている。また、第3実施形態は、シールリング6(図10参照)の内径が主軸受11(図10参照)の内径よりも短い点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0084】
図10は、第3実施形態に係るスクロール圧縮機100Bのフレームプレート5Bを含む領域の縦断面図である。
図10に示すように、フレームプレート5Bは、ベース部51の内周縁から上側に突出してなる突出部52Bを備えている。突出部52Bは、平面視で環状を呈し、その内周面がベース部51の内周面よりも径方向内側に位置している。また、突出部52Bには、その上面から下側に凹んでなる環状の溝V1が設けられている。溝V1の内周面は、径方向においてベース部51の挿通孔5hの周面よりも内側に位置している。そして、この溝V1Bにシールリング6が設置されている。
【0085】
図10に示すように、シールリング6の内径Φ1は、主軸受11(第1軸受)の内径Φ2よりも短くなっている(Φ1<Φ2)。このような構成によれば、シールリング6の内側の円の面積(高圧空間の圧力が作用する面積)が狭くなるため、旋回スクロール22を固定スクロール21側に押し上げようとする力を低減できる。
【0086】
<効果>
第3実施形態によれば、シールリング6の内径Φ1が主軸受11(第1軸受)の内径Φ2よりも短いため、旋回スクロール22を固定スクロール21側に押し上げようとする力が低減できる。その結果、旋回ラップ22bの歯先の摩耗を抑制し、ひいては、スクロール圧縮機100Bの信頼性を高めることができる。
【0087】
≪第4実施形態≫
第4実施形態は、スクロール圧縮機100C(図11参照)がサブフレーム81(図11参照)を備える点が第1実施形態とは異なっている。また、第4実施形態は、クランクシャフト7の下部が副軸受82(図11参照)で軸支される点が第1実施形態とは異なっている。なお、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0088】
図11は、第4実施形態に係るスクロール圧縮機100Cの縦断面図である。
図11に示すスクロール圧縮機100Cは、クランクシャフト7の下部を軸支するためのサブフレーム81を備えている。サブフレーム81は、電動機15の下側に配置され、密閉容器1の筒チャンバ1aに固定されている。サブフレーム81の中心付近には、クランクシャフト7の挿通孔81aが設けられている。この挿通孔81aの周面に副軸受82が設置されている。副軸受82は、クランクシャフト7の下部を軸支するための軸受である。このような副軸受82として、例えば、滑り軸受が用いられる。そして、クランクシャフト7の貫通孔7c及び横穴7eを順次に介して、副軸受82に油が導かれるようになっている。
【0089】
<効果>
第4実施形態によれば、サブフレーム81に固定された副軸受82によってクランクシャフト7の下部が軸支される。これによって、スクロール圧縮機100Cの駆動中、クランクシャフト7のたわみや傾きが抑制されるため、スクロール圧縮機100Cの信頼性が高められる。
【0090】
≪第5実施形態≫
第5実施形態では、第1実施形態で説明した構成のスクロール圧縮機100(図1参照)を備える空気調和機W1(図12参照)について説明する。
【0091】
図12は、第5実施形態に係る空気調和機W1の構成図である。
なお、図12の実線矢印は、暖房サイクルにおける冷媒の流れを示している。
一方、図12の破線矢印は、冷房サイクルにおける冷媒の流れを示している。
空気調和機W1は、冷房運転や暖房運転等の空調を行う機器である。図12に示すように、空気調和機W1は、スクロール圧縮機100と、室外熱交換器91と、室外ファン92と、膨張弁93と、四方弁94と、室内熱交換器95と、室内ファン96と、を備えている。図12の例では、スクロール圧縮機100、室外熱交換器91、室外ファン92、膨張弁93、及び四方弁94が、室外機U1に設けられている。また、室内熱交換器95及び室内ファン96は、室内機U2に設けられている。
【0092】
スクロール圧縮機100は、ガス状の冷媒を圧縮する機器であり、第1実施形態(図1参照)と同様の構成を備えている。室外熱交換器91は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室外ファン92から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室外ファン92は、室外熱交換器91に外気を送り込むファンである。室外ファン92は、駆動源である室外ファンモータ92aを備え、室外熱交換器91の付近に設置されている。
【0093】
室内熱交換器95は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室内ファン96から送り込まれる室内空気(空調室の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室内ファン96は、室内熱交換器95に室内空気を送り込むファンである。室内ファン96は、駆動源である室内ファンモータ96aを備え、室内熱交換器95の付近に設置されている。
【0094】
膨張弁93は、「凝縮器」(室外熱交換器91及び室内熱交換器95の一方)で凝縮した冷媒を減圧する弁である。なお、膨張弁93によって減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器91及び室内熱交換器95の他方)に導かれる。
【0095】
四方弁94は、空気調和機W1の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。例えば、冷房運転時(図12の破線矢印を参照)には、スクロール圧縮機100、室外熱交換器91(凝縮器)、膨張弁93、及び室内熱交換器95(蒸発器)を順次に介して、冷媒が循環する。また、暖房運転時(図12の実線矢印を参照)には、スクロール圧縮機100、室内熱交換器95(凝縮器)、膨張弁93、及び室外熱交換器91(蒸発器)を順次に介して、冷媒が循環する。
【0096】
<効果>
第5実施形態によれば、性能や信頼性の高いスクロール圧縮機100を空気調和機W1が備えているため、空気調和機W1の全体としての性能や信頼性を高めることができる。
【0097】
≪変形例≫
以上、本開示に係るスクロール圧縮機100や空気調和機W1について各実施形態で説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、フレームプレート5(図4参照)の嵌合部54がフレーム3の内周面に圧入される場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、嵌合部54の外周面から径方向内側に凹んでなる環状の溝(図示せず)を設け、この溝にOリング等を設置するようにしてもよい。この場合において嵌合部54は、フレーム3に対して隙間嵌め等で嵌め込まれる。
【0098】
また、各実施形態では、スクロール圧縮機100が副軸受13(図1参照)を備える場合について説明したが、これに限らない。例えば、副軸受13を適宜に省略することも可能である。また、各実施形態では、スクロール圧縮機100がバランスウェイト9(図1参照)を備える場合について説明したが、これに限らない。例えば、バランスウェイト9を適宜に省略することも可能である。この場合において、フレーム3とフレームプレート5とを一体化するようにしてもよい。
また、各実施形態では、フレームプレート5を圧入及びボルト締結でフレーム3に固定する場合について説明したが、これに限らない。例えば、フレームプレート5を圧入する際の圧入代を大きめに設定する場合には、ボルト締結を省略することも可能である。
【0099】
また、第2実施形態では、環状の切欠きN1(図9参照)に板ばね19、ガイドリング20、及びシールリング6が順次に設置される場合について説明したが、これに限らない。例えば、板ばね19及びガイドリング20のうちの一方又は両方を適宜に省略することも可能である。
【0100】
また、各実施形態では、スクロール圧縮機100(図1参照)が縦置きである場合について説明したが、これに限らない。例えば、スクロール圧縮機100は横置きや斜め置きであってもよい。この場合には、クランクシャフト7において偏心部7bが設けられる側を「上側」とみなし、小径部72aが設けられる側を「下側」とみなすものとする。
【0101】
また、第5実施形態では、空気調和機W1(図12参照)が四方弁94を備える場合について説明したが、これに限らない。すなわち、四方弁94を適宜に省略し、冷房専用又は暖房専用の空気調和機にしてもよい。
また、第5実施形態で説明した空気調和機W1(図12参照)は、ビル用マルチエアコンやパッケージエアコンやルームエアコンといったさまざまな種類の空気調和機に適用できる。また、第5実施形態では、スクロール圧縮機100を備える空気調和機W1について説明したが、これに限らない。例えば、冷凍機、給湯機、空調給湯装置、チラー、冷蔵庫といった他の冷凍サイクル装置にも第5実施形態を適用できる。
【0102】
また、各実施形態は、適宜に組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態(図8参照)と第3実施形態(図10参照)とを組み合わせ、フレームプレート5Aの突出部52Aの内周面がベース部51の内周面よりも径方向内側に位置する構成において(第3実施形態)、この突出部52Aに切欠きN1を設けるようにしてもよい(第2実施形態)。これによって、切欠きN1に配置されるシールリング6の内径が短くなるため、旋回スクロール22を押し上げる圧力を低減できる。
また、第2~第4実施形態のいずれかと、第5実施形態(図12参照)と、を組み合わせて、スクロール圧縮機を備える空気調和機とすることも可能である。
【0103】
また、各実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換を適宜に行うことが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0104】
1 密閉容器
3 フレーム
5,5A,5B フレームプレート
5h 挿通孔
6 シールリング
7 クランクシャフト
7b 偏心部
8 オルダムリング
8a 環状部
8b 第1キー
8c 第2キー
9 バランスウェイト
11 主軸受(第1軸受)
12 旋回軸受(第2軸受)
20 ガイドリング
21 固定スクロール
21c 固定ラップ
22 旋回スクロール
22a 鏡板
22b 旋回ラップ
22c 旋回軸
22d 第1キー溝
51 ベース部
51a 部分(嵌合部よりも径方向外側に突出している部分)
51k ボルト挿通孔
52,52A,52B 突出部
53 支持部
53a オルダムリング支持面
53b 第2キー溝
54 嵌合部
55 延伸部
71b 偏心穴
91 室外熱交換器
93 膨張弁
95 室内熱交換器
100,100A,100B,100C スクロール圧縮機
A2 バランスウェイト空間(空間)
B2 ボルト
C1 圧縮室
N1 切欠き
W1 空気調和機
【要約】
【課題】性能や信頼性の高いスクロール圧縮機等を提供する。
【解決手段】スクロール圧縮機100は、密閉容器1と、フレーム3と、固定スクロール21と、鏡板22aに対して旋回ラップ22bの反対側に設けられる旋回軸22cを有する旋回スクロール22と、旋回軸22cに嵌合する偏心穴71bが設けられる偏心部7bを有するクランクシャフト7と、偏心部7bの挿通孔が設けられ、フレーム3の内側に嵌合するフレームプレート5と、フレームプレート5に対して偏心部7bを回転自在に軸支する主軸受11と、偏心穴71bの周面に対して旋回軸22cを回転自在に軸支する旋回軸受12と、を備えるとともに、フレームプレート5と鏡板22aとの間をシールするシールリング6を備え、シールリング6の下端の高さ位置よりも主軸受11の上端の高さ位置の方が低い。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12