(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-28
(45)【発行日】2025-09-05
(54)【発明の名称】ワクチンおよび治療ツールとしてのネオ複合糖質
(51)【国際特許分類】
A61K 39/385 20060101AFI20250829BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20250829BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20250829BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20250829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250829BHJP
【FI】
A61K39/385 ZNA
A61K39/00 A
A61K39/00 H
A61K39/12
A61K39/02
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2022518356
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 CA2020051253
(87)【国際公開番号】W WO2021056098
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-11
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520363915
【氏名又は名称】コラネックス・キャピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ツェ・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】モフェット,サージ
(72)【発明者】
【氏名】ミニャーニ,サージ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,ルネ
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2016年,Vol.24, pp.915-920
【文献】Corbohydrare Research,1980年,Vol.78, C1-C3
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2002年,Vol.10, pp.11-17
【文献】Glycoconj J,2006年,Vol.23, pp.317-327
【文献】J. Mass Spectrom.,2014年,Vol.49, pp.1223-1233
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 38/00-38/58
A61K 31/00-31/80
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ネオ複合糖質およびアジュバントを含むワクチン組成物であって、
合成ネオ複合糖質は、以下の構造:
【化1】
を有し、担体タンパク質またはペプチドの1またはそれより多くのアミン基(CP-NH)にリンカーを介してコンジュゲートした1またはそれより多くの炭水化物抗原(CA)を含んでなり、ここで、pは、1つまたはそれより多くのアミン基で担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートした炭水化物抗原の総数に相当する整数である、上記組成物。
【請求項2】
炭水化物抗原が、腫瘍関連の炭水化物抗原(TACA)、ウイルスの多糖抗原または細菌の莢膜多糖体(CPS)であるか、またはそれを含
む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
炭水化物抗原が、Tn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH、PSA、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、フコシルGM1、Le
a、sLe
a、Le
x、sLe
x、Le
y、またはそれらのあらゆる組合せである、請求項1または2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
1またはそれより多くの炭水化物抗原が、シアル化されていないTF抗原、シアル化されていないTn抗原およびこれらの組み合わせを含んでなる、請求項1~3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項5】
担体タンパク質またはペプチドが、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌プロテインD(HiD)、サイトカイン、免疫原性ペプチド、破傷風毒素831~844(配列番号1または2)、アルブミン、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)またはそれらの免疫原性断片であるか、それ由来であるか、それを含んでなる、請求項1~4のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項6】
担体タンパク質またはペプチドが、TTまたはCRM197またはそれらの免疫原性断片であるか、それ由来であるか、それを含んでなる、請求項1~5のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項7】
シアル化されていないTF抗原、シアル化されていないTn抗原、または、シアル化されていないTF抗原とシアル化されていないTn抗原の両方に対する抗体の産生がワクチン組成物の投与によって誘発される、請求項1~6のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項8】
医薬的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項9】
TACAを発現するがんに対する抗がんワクチンである、請求項8に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
前記がんが、B細胞リンパ腫、乳がん、結腸がん、非小細胞肺がん、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、小細胞肺がんまたは胃がんである、請求項9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
pが1~50である、請求項1~10のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項12】
合成ネオ複合糖質およびアジュバントを含むワクチン組成物であって、
合成ネオ複合糖質は、以下の構造:
【化2】
を有し、担体タンパク質またはペプチドの1またはそれより多くのアミン基(CP-NH)にリンカーを介してコンジュゲートした1またはそれより多くの炭水化物抗原(CA)を含んでなり、ここで、pは、1つまたはそれより多くのアミン基で担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートした炭水化物抗原の総数に相当する整数で、pは1~50であり、
1またはそれより多くの炭水化物抗原が、シアル化されていないTF抗原を含み、
担体タンパク質またはペプチドが、破傷風トキソイド、交差反応性物質197またはそれらの免疫原性断片であるか、それ由来であるか、またはそれを含み、
シアル化されていないTF抗原に対する抗体の産生がワクチン組成物の投与によって誘発される、上記組成物。
【請求項13】
医薬的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記担体タンパク質またはペプチドが、交差反応性物質197(CRM197)またはそれらの免疫原性断片であるか、それ由来であるか、またはそれを含む、請求項12または13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
腫瘍関連の炭水化物抗原(TACA)を発現するがんに対する抗がんワクチンである、請求項12~14のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記がんが、B細胞リンパ腫、乳がん、結腸がん、非小細胞肺がん、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、小細胞肺がんまたは胃がんである、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
対象を免疫化すること、対象にワクチン接種をすること、
または、対象を処置することに使用するため
の、請求項1~16のいずれかに記載のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の記載は、免疫原として、および治療/診断ツールとして有用なネオ複合糖質に関する。より詳細には、本発明の記載は、炭水化物抗原と、担体材料(例えば、免疫原性および抗原性の担体ペプチドおよびタンパク質)の遊離アミン基とのコンジュゲーションに関する。本発明の記載はまた、抗原、免疫原、ワクチンとして、および診断法における用途に向けたネオ複合糖質を生産する改善された方法にも関する。さらに、本発明の記載は、がんやウイルス、例えばSARS-CoV-2に対するワクチン候補および他の治療ツールとしての、異常なグリコシル化に関連する複合糖質に関する。
【0002】
本発明の記載は、複数の文書に言及しており、それらの内容は、本明細書において参照によりそれら全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
免疫療法の最終的な目的は、細菌、ウイルス、およびがん細胞などの外来物質と戦うその能力を改善するために免疫系の自然および適応応答をモジュレートすることによって、感染症またはがんのような疾患を処置することである。自然免疫は、病原体への曝露の初期段階で作動する免疫防御の第1の選択肢と考えられている。関与する細胞としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞(DC)、マクロファージ、単球、γδT細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞が挙げられる。適応免疫は、自然免疫系とは異なり、外来抗原への最初の曝露後に遅く発生するが、高度に特異的な応答を生じさせ、長期の防御のための免疫記憶を生じさせる。これは、T細胞およびB細胞のクローン増殖、ならびにそれらの体液性および細胞性のメディエーター、サイトカインおよび抗体を含む。自然免疫応答と適応免疫応答間との主要な境界は、プロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC);マクロファージ、B細胞、特定には樹状細胞(DC)である。pAPCは、内因性および外因性の源からの抗原をプロセシングし、T細胞に提示することができる。これらは、Toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体(PRR)を介して微生物を認識する。微生物の表面決定基または異常な抗原や天然にはない抗原を認識すると、微生物または腫瘍およびそれらの関連する抗原性マーカーは、pAPCによりエンドサイトーシス経路を介して取り込まれ、そこで典型的にはペプチド断片に分解され、放出された抗原は、細胞内のMHCクラスIまたはクラスII分子(pMHC)上に結合することができる。pAPCは、成熟および活性化を経て、細胞内区画から細胞表面へのpMHC複合体の再分配、サイトカインおよびケモカインの分泌を引き起こす。pAPCに加えて、全ての有核細胞型が、内因性ペプチドのみを細胞膜上に提示する。pAPCとは対照的に、これらのペプチドは、ウイルスおよび細胞内病原体などの細胞それ自体の内部を起源とするものであり、b2-ミクログロブリンにカップリングされたMHCクラスI分子によって提示される。APCは、典型的にはMHCクラスIIを発現しない。
【0004】
MHCクラスII分子上に提示されるペプチドは、典型的には、CD4+Tヘルパー細胞上のT細胞抗原受容体(TCR)によって認識され、これは順に、共刺激シグナルをpAPCから受け取ったときに、異なるサブセット、例えばTh1またはTh2細胞への機能的な成熟を経る。Th1細胞は、優勢にIFN-γおよびTNF-αの分泌を伴う炎症促進性応答をもたらし、それに対してTh2細胞は、典型的なサイトカインを分泌する。Th1細胞は主として細胞媒介応答に関連するが、タイプの両方のTh細胞がB細胞による抗体の生産を維持し、これは順に、抗体のアイソタイプおよび機能に影響を与える。例えば、IL-12およびTNF-αは、Th1細胞の分化および1型IgGサブクラスの生産に関連し、それに対してIL-6および他のTh2サイトカインは、2型IgGサブクラス(IgG1)生産に寄与する。
【0005】
MHCクラスI分子上にペプチドを提示するAPCは、CD8+細胞傷害性T細胞のTCRによって認識される。2つの細胞型によって発現される共刺激因子分子間の数々の追加の相互作用が、細胞傷害性T細胞のエフェクター細胞への活性化を引き起こし、同時に、樹状細胞が活性化されたTヘルパー細胞および細胞傷害性T細胞の両方と相互作用すると、強く長期にわたり存続するメモリーT細胞が生成される。T細胞は、一度活性化されたら、クローン選択およびサイトカインの助けによる増殖を経る。これは、機能不全性の標的抗原に特異的な多数の細胞を増加させ、次いで機能不全性の抗原陽性体細胞のサーチにおいて全身に移動することができる。標的細胞上にドッキングすると、活性化された細胞傷害性T細胞は、パーフォリンおよびグランザイム(ganzymes)などの細胞毒素のペイロードを放出する。パーフォリンの作用を介して、グランザイムは標的細胞に浸透し、そのプロテアーゼが細胞死を開始させる。細胞傷害性T細胞はまた、FASシグナル伝達経路によって標的の細胞死を開始させることもできる。
【0006】
したがって、ワクチンで誘導された免疫性を、目的の病原体または腫瘍抗原に対処するのに適切な応答に合わせることが可能なことが望ましい。
【0007】
炭水化物は、タンパク質やペプチドとは対照的に、Th細胞の参加を開始させるように適切に取り付けられなかったT細胞とは無関係の抗原であり、したがって、免疫細胞増殖、抗体クラススイッチ、および親和性/特異性成熟を誘導することができない。主な初期の進歩は、早期に炭水化物ベースのワクチンと出会っており、これは、担体タンパク質に適切にコンジュゲートされると、T細胞依存性エピトープとして作用し、細菌の莢膜多糖体が、オプソニン食作用性抗体を生産する必要な免疫化学的能力を獲得することが可能になるという発見によって支持されてきた。
【0008】
従来、炭水化物抗原を担体タンパク質にコンジュゲートするための戦略は、リシン残基のε-アミノ基上へのアルデヒド由来の糖の還元的アミノ化、または単なるアミドカップリング反応のいずれかに頼っていた。どちらの場合も、一般的に、部分的でランダムな炭水化物抗原コンジュゲーションが起こる。さらに、炭水化物コンジュゲーションに全てのアミドパートナー(リシンからのアミンまたはグルタミン酸/アスパラギン酸からの酸)が使用される場合、多過ぎる炭水化物抗原が担体タンパク質に付着することになり、結果として、必須の可能性があるT細胞ペプチドエピトープのマスキングが起こり、免疫原性の生来の減少/排除が生じる。したがって、調製物が、その炭水化物の分布および再現性に関して必要な均一性を欠くため(すなわち、タンパク質上の糖の付着点がランダムに分布し、バッチ間で密度のばらつきがある)、複合糖質ワクチンを調製するための現在の戦略は不十分であり、著しい規制的および/または商業的な障害に直面している。したがって、より大きい炭水化物抗原の均一性、より正確に特徴付け可能な構造、およびバッチ間の再現性を有する複合糖質ワクチンが大いに望ましいと予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
SARS-CoV-2は、2019年後半に始まったCOVID-19パンデミックの原因因子であり、これは、地球規模の人間の健康に対する現代の脅威の一つであり、世界経済も不健全にする。初期のワクチン開発の努力の大部分が、SARS-CoV-2の細胞への侵入および宿主細胞への膜融合を媒介する、スパイク(S)糖タンパク質上に存在するタンパク質抗原およびエピトープに集中した。しかしながら、地球規模の健康問題の専門家は、科学者が平行して、単一の戦略で発生する可能性がある起こり得る失敗または合併症を和らげるために、SARS-CoV-2に対する治療的介入を開発する異なる戦略を調査することを強く推奨している。したがって、SARS-CoV-2のSタンパク質上に存在するタンパク質抗原に焦点を当てたものと平行して、SARS-CoV-2に対するワクチンおよび他の治療ツールを開発する必要が未だある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の形態において、ネオ複合糖質を生産するための方法であって、(a)第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含むネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体を提供するステップであって、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、遊離アミン基と反応可能な官能基を含み、官能基は、-COX、-SO2X、-O-C(O)-X、-N=C=O、または-N=C=Sであり、式中、Xは、脱離基である、ステップ;(b)1つまたはそれより多くの遊離アミン基を有する担体材料(例えば、担体タンパク質またはペプチド)を提供するステップ;および(c)カップリング反応を実行して、精製したネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体の1つまたはそれより多くを、担体材料(例えば、担体タンパク質またはペプチド)に、1つまたはそれより多くの遊離アミン基で、アミド、カルバメート、スルホンアミド、尿素、またはチオ尿素結合を介してコンジュゲートし、それによってネオ複合糖質を生産するステップを含む、上記方法が本明細書に記載される。
【0011】
一部の実施態様において、工程(a)の前に、(a)におけるネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体は、(i)末端のアルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された炭水化物抗原を提供するステップであって、末端のアルケンは、チオール-エン反応を介して、チオール基に直接コンジュゲート可能である、ステップ;(ii)第1の末端に第1の官能基および第2の末端に第2の官能基を含むチオリンカーを提供するステップであって、第1の官能基は、遊離チオール基であり、第2の官能基は、カルボキシル基、スルフィン酸基、炭酸基、イソシアネート基、またはチオシアネート基である、ステップ;(iii)光触媒作用によるチオール-エン反応を実行して、アルケニル炭水化物抗原を、チオリンカーに、第1の末端で直接コンジュゲートし、それによって第1の末端に炭水化物抗原および第2の末端に第2の官能基を含むネオ炭水化物抗原を生産するステップ;(iv)第2の官能基がカルボキシル基、スルフィン酸基、または炭酸基である場合、カルボキシル基の、スルフィン酸基の、または炭酸基の末端ヒドロキシル基を、ポリペプチドの遊離アミン基へのコンジュゲーションに関してより優れた脱離基で置き換えることによって、ネオ炭水化物抗原をネオ炭水化物抗原中間体に変換するステップ;および(v)ネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体を精製するステップを含む方法によって調製される。
【0012】
さらなる形態において、第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含むネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体であって、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、遊離アミン基と反応可能な官能基を含み、官能基は、-COX、-SO2X、-O-C(O)-X、-N=C=O、または-N=C=Sであり、式中、Xは、脱離基である、上記ネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体が本明細書に記載される。
【0013】
さらなる形態において、第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含む合成ネオ複合糖質であって、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、担体タンパク質またはペプチドに、そこの中にある1つまたはそれより多くの遊離アミン基で、アミド、カルバメート、スルホンアミド、尿素、またはチオ尿素結合を介してコンジュゲートしている、上記合成ネオ複合糖質が本明細書に記載される。
【0014】
さらなる形態において、リンカーを介して担体タンパク質またはペプチドの1つまたはそれより多くのアミン基(CP-NH)にコンジュゲートした1つまたはそれより多くの炭水化物抗原(CA)を含む合成ネオ複合糖質であって、以下の構造:
【0015】
【化1】
を有する合成ネオ複合糖質が本明細書に記載されるが、式中、Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;R
1は、H、COH(ホルムアミド)、COMe、またはCOEtであり;mは、1、2、3、4、または5であり;Yは、-(CH
2)
n-または-(OCH
2CH
2O)
n-であり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;oは、0、1、2、3、4、または5であり;またはoは、0であり、Zは、-CO-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;またはoは、0であり、Zは、-SO
2-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;Zは、-CO-、-NR
2SO
2-、-OCO-、-NR
2CO-、または-NR
2CS-であり、R
2は、H、Me、またはEtであり;pは、前記1つまたはそれより多くのアミン基で担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートした炭水化物抗原の総数に相当する整数、例えば、p=1~50である。ある実施態様において、合成ネオ複合糖質中の担体タンパク質またはペプチドは、天然の、または変性していないコンフォメーションを有し、炭水化物抗原の担体タンパク質またはペプチドへのコンジュゲーションが、対応するコンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較して、対象に投与されたときの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる。
【0016】
さらなる形態において、ネオ複合糖質ワクチンまたは免疫応答を誘発する組成物を生産するための方法が本明細書に記載される。本方法は、本明細書に記載されるネオ複合糖質または本明細書に記載される方法によって調製されたネオ複合糖質を、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを用いて製剤化することを含んでいてもよい。
【0017】
さらなる形態において、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンまたは適応免疫応答を誘発する組成物、および/または本明細書に記載されるネオ複合糖質、ならびに本明細書に記載される医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含むワクチンまたは組成物が本明細書に記載される。
【0018】
一部の形態において、対象を免疫化する、それにワクチン接種をする、またはそれを処置する方法であって、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンを対象に投与することを含む、上記方法が本明細書に記載される。
【0019】
一部の実施態様において、疾患を有する対象を免疫化すること、それにワクチン接種をすること、またはそれを処置することにおける使用のための、またはネオ複合糖質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための、または前記免疫化、ワクチン接種、または処置を検出するための(例えば、対象からの生物学的サンプルにおいて)、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンが本明細書に記載される。
【0020】
一部の実施態様において、疾患を有する対象を免疫化または処置するためのワクチンの製造のための、またはネオ複合糖質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための、または前記免疫化または処置を検出するための(例えば、対象からの生物学的サンプルにおいて)、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、または本明細書に記載される方法によって生産された適応免疫応答を誘発する組成物が本明細書に記載される。
【0021】
一部の実施態様において、前記炭水化物抗原の増加した発現に関連する疾患を有する対象の処置における使用のための、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンが本明細書に記載される。
【0022】
一部の実施態様において、炭水化物抗原または炭水化物抗原を含む腫瘍を循環する細胞に特異的に結合する抗体の存在を検出するかもしくはそれに関してスクリーニングするための、または炭水化物抗原での免疫化またはワクチン接種によって生じる抗体の存在を検出するための、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンが本明細書に記載される。
【0023】
さらなる形態において、対象を処置する方法であって、本明細書において規定された、または本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質またはネオ複合糖質免疫原を投与して、炭水化物抗原に対して前記対象における免疫応答を生じさせること、および任意選択で、前記対象からの生物学的サンプルを、炭水化物抗原に特異的に結合する抗体の存在に関してスクリーニングすることを含む、上記方法が本明細書に記載される。
【0024】
さらなる形態において、SARS-CoV-2に対して対象を免疫化することにおける使用のための、対象における抗SARS-CoV-2抗体の生産を誘発することにおける使用のための、または対象からのサンプルにおいて抗SARS-CoV-2抗体の存在を検出することにおける使用のための複合糖質であって、複合糖質は、好適な担体材料(例えば、担体タンパク質またはペプチド)にコンジュゲートした炭水化物抗原を含み、炭水化物抗原が、シアル化されたトムゼン-フリーデンライヒ(TF)抗原、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含むかまたはそれからなる、上記複合糖質が本明細書に記載される。
【0025】
さらなる形態において、本明細書に記載される1種またはそれより多くの複合糖質、ならびに医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含むSARS-CoV-2ワクチンが本明細書に記載される。
【0026】
さらなる形態において、対象にSARS-CoV-2に対するワクチン接種をするための方法または対象において抗SARS-CoV-2抗体の生産を誘発するための方法であって、本明細書に記載される複合糖質またはSARS-CoV-2ワクチンを投与することを含む、上記方法が本明細書に記載される。
【0027】
さらなる形態において、SARS-CoV-2ウイルスによる感染から対象を防御するための、またはCOVID-19を処置するための組成物であって、SARS-CoV-2Sタンパク質上に発現されたO結合型グリカンに結合する1種またはそれより多くのリガンド(例えば、抗体、抗体断片、またはレクチン)を含み、O結合型グリカンは、シアル化されたTF抗原(モノまたはジシアル化されたTF抗原)、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含む、上記組成物が本明細書に記載される。
【0028】
さらなる形態において、(a)シアル化されたTF抗原(モノまたはジシアル化されたTF抗原)、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含む、O結合型グリカンを発現するSARS-CoV-2Sタンパク質またはその断片;および(b)O結合型グリカンにおいてSARS-CoV-2Sタンパク質またはその断片に結合する、本明細書に記載されるリガンドを含む複合体が本明細書に記載される。
【0029】
一般的な定義
見出し、および他の識別子、例えば、(a)、(b)、(i)、(ii)などは、単に明細書および請求項を読みやすくするために提示される。明細書または請求項における見出しの使用または他の識別子は、工程または要素がアルファベットまたは数字の順番またはそれらが提示されている順番で実行されることを必ずしも必要としない。
【0030】
「1つの」(aまたはan)という語の使用は、請求項および/または明細書において用語「含む」と共に使用される場合、「1つの」を意味する場合があるが、「1つまたはそれより多くの」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは1つより多くの」という意味とも一致する。
【0031】
用語「約」は、値が、値を決定するために採用されるデバイスまたは方法ごとの誤差の標準偏差を含むことを示すのに使用される。一般的に、用語「約」は、最大10%の可能性のある変動を表示することを意味する。それゆえに、値の1、2、3、4、5、6、7、8、9および10%の変動は、用語「約」に含まれる。別段の指定がない限り、範囲の前の用語「約」の使用は、範囲の両末端に適用される。
【0032】
本明細書および請求項で使用される場合、「含む」(および、含むのあらゆる形態、例えば「含む」(comprise)および「含む」(comprises))、「有する」(および、有するのあらゆる形態、例えば「有する」(have)および「有する」(has))、「包含する」(および、包含するのあらゆる形態、例えば「包含する」(includes)および「包含する」(include))または「含有する」(および、含有するのあらゆる形態、例えば「含有する」(contains)および「含有する」(contain))という語は、包括的であるか、またはオープンエンドであり、追加の記載されていない要素または方法工程を排除しない。
【0033】
用語「タンパク質」(例えば、「担体タンパク質」という表現における)は、本明細書で使用される場合、あらゆるペプチド結合したアミノ酸の鎖を意味し、は、修飾が本明細書に記載されるネオ複合糖質免疫原およびネオ複合糖質ワクチンの免疫原性を破壊しない限り、あらゆるタイプの修飾(例えば、化学修飾または翻訳後修飾、例えばアセチル化、リン酸化、グリコシル化、硫酸化、SUMO化(sumoylation)、プレニル化、ユビキチン化など)を含んでいてもよいし、または含んでいなくてもよい。さらにわかりやすくするために、用語「タンパク質」および「担体タンパク質」は、本明細書で使用される場合、両方の実施態様が、例えば表現「担体タンパク質またはペプチド」のように一緒に列挙される場合でも、ペプチドとポリペプチドの両方を包含する。
【0034】
用語「ネオ複合糖質」は、本明細書で使用される場合、目的の対象における炭水化物抗原の免疫原性を強化するために担体タンパク質またはペプチドにカップリングされた炭水化物抗原(例えば、抗原性の単糖、二糖、オリゴ糖、または多糖、好ましくは天然の抗原)を指す。表現「炭水化物抗原」および「糖抗原」は、本明細書で使用されるのと同じ意味を有する。用語「免疫原」は、免疫系の構成要素によって(例えば、抗体および/またはリンパ球によって)特異的に結合して、目的の対象において体液性および/または細胞媒介性免疫応答を発生させることが可能な物質を指す。「ネオ複合糖質免疫原」などの表現における用語「免疫原」は、本明細書で使用される場合、ネオ複合糖質の、これに限定されないが、ネオ複合糖質それ自身の、特定の使用に対する(例えば、対象において免疫応答を発生させるための免疫原としての)能力(すなわち、物理的な特徴または特性)を指す。例えば、一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ複合糖質免疫原は、生物学的サンプル(例えば、対象からの)中のネオ複合糖質免疫原に結合する抗体の存在または非存在を検出するための診断アッセイまたは方法(例えば、インビトロの方法)において採用することができる。一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ複合糖質免疫原は、ネオ複合糖質免疫原に特異的に結合する抗体(例えば、診断的または治療的に適用できるモノクローナル抗体)のスクリーニング、同定、または評価に使用することができる。
【0035】
用語「合成」は、本明細書で使用される場合、人間の介入によって生産される天然の生成物ではない化合物を指す。
【0036】
用語「コンジュゲート可能な」は、本明細書で使用される場合、分子が互いに実際に共有結合で結合しているかどうかに関係なく、少なくとも2つの分子(例えば、炭水化物抗原とチオリンカー;またはネオ炭水化物抗原と担体タンパク質またはペプチド)の、化学反応を介して互いに共有結合で結合する能力または可能性を指す。対照的に、用語「コンジュゲートした」は、少なくとも2つの分子(例えば、炭水化物抗原とチオリンカー、またはネオ炭水化物抗原と担体タンパク質またはペプチド)が互いに共有結合で結合していることを指す。
【0037】
用語「投与」は、本明細書で使用される場合、投与経路が対象において免疫応答の発生をもたらす限り、例えば非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内)、経口、経皮、鼻腔内など投与経路を含んでいてもよい。
【0038】
用語「対象」は、一般的に、本明細書で使用される場合、本明細書に記載されるネオ複合糖質に対する免疫応答を開始させることができ、好ましくはネオ複合糖質および/またはネオ複合糖質を提示する細胞に特異的に結合する抗体および/またはリンパ球の生産を生じる生物(例えば、動物またはヒト)を指す。一部の実施態様において、本明細書に記載される対象は、治療的に処置しようとする患者(例えば、本明細書に記載されるネオ複合糖質免疫原でのワクチン接種を介して)であってもよいし、または調査、診断、および/または治療目的のためのツール(例えば、抗体)を生じさせるための手段として採用してもよい。
【0039】
本発明の説明の他の目的、利点および特色は、添付の図面を参照しながら、単なる一例として記載された以下のそれらの具体的な実施態様の非制限的な説明を読めばより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、例えばヒトムチン糖タンパク質(MUC)からの主要な腫瘍関連の炭水化物抗原(TACA)の典型的な化学構造の例を示す。
【
図2】
図2は、実施例2~6に記載されるアリルTn抗原およびアリルTF抗原中間体の合成のための反応スキームを示す。
【
図3A】
図3A、
図3Bは、アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)に関する
1H-NMR(
図3A)および
13C-NMR(
図3B)スペクトルを示す。
【
図3B】
図3A、
図3Bは、アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)に関する
1H-NMR(
図3A)および
13C-NMR(
図3B)スペクトルを示す。
【
図3C】
図3Cは、アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)に関する質量分析の結果(
図3Cおよび3D)を示す。
【
図3D】
図3Dは、アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)に関する質量分析の結果(
図3Cおよび3D)を示す。
【
図4A】
図4A~4Bは、アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)に関する
1H-NMR(
図4A)および
13C-NMR(
図4B)スペクトルを示す。
【
図4B】
図4A~4Bは、アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)に関する
1H-NMR(
図4A)および
13C-NMR(
図4B)スペクトルを示す。
【
図4C】
図4Cは、アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)に関する質量分析の結果(
図4Cおよび4D)を示す。
【
図4D】
図4Dは、アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)に関する質量分析の結果(
図4Cおよび4D)を示す。
【
図5A】
図5Aは、アリル2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物4)に関する
1H-NMR(
図5A)スペクトルを示す。
【
図5B】
図5Bは、アリル2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物4)に関する質量分析の結果(
図5Bおよび6C)を示す。
【
図5C】
図5Cは、アリル2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物4)に関する質量分析の結果(
図5Bおよび6C)を示す。
【
図6A】
図6A、
図6Bは、アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)に関する
1H-NMR(
図6A)および
13C-NMR(
図6B)スペクトルを示す。
【
図6B】
図6A、
図6Bは、アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)に関する
1H-NMR(
図6A)および
13C-NMR(
図6B)スペクトルを示す。
【
図6C】
図6Cは、アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)に関する質量分析の結果(
図6Cおよび6D)を示す。
【
図6D】
図6Dは、アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)に関する質量分析の結果(
図6Cおよび6D)を示す。
【
図8A】
図8A、
図8Bは、アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)に関する
1H-NMR(
図8A)および
13C-NMR(
図8B)スペクトルを示す。
【
図8B】
図8A、
図8Bは、アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)に関する
1H-NMR(
図8A)および
13C-NMR(
図8B)スペクトルを示す。
【
図8C】
図8Cは、アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)に関する質量分析の結果(
図8Cおよび8D)を示す。
【
図8D】
図8Dは、アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)に関する質量分析の結果(
図8Cおよび8D)を示す。
【
図9】
図9は、アリルTnからのネオ複合糖質免疫原の生産のための反応スキームを示す。
【
図10】
図10は、化合物8に関する
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルの結果を示す。
【
図12】
図12は、アリルTnからのネオ複合糖質免疫原の生産のための反応スキームを示す。
【
図13】
図13は、化合物12に関する
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルを示す。
【
図14】
図14は、化合物13に関する
1H-NMRおよび
13C-NMRスペクトルを示す。
【
図15】
図15A~15Eは、Tnを認識するレクチンであるナヨクサフジ(Vicia Villosa)(VVA)の、BSA-Tn(
図15A~15D)およびCRM197-Tn(
図15E)コンジュゲートへの反応性を示す。
図15Aは、pH6~10の範囲の緩衝液中で生産された異なるBSA-Tnコンジュゲートを示すウェスタンブロットを示す。
図15Bに、対応するELISA分析を示す。
図15Cは、最適なpH8でのBSAへのコンジュゲーションにおけるPFP-Tn(化合物9)の滴定を示すウェスタンブロットである。
図15Dに、対応するELISA分析を示す。
図15Eは、CRM197-Tnのウェスタンブロット分析を示す。ブロットから、試験されたPFP-Tnの3つのコンジュゲーション比率(すなわち、3.4、9.7、および15)につきCRM197の分子量(約58.4kDa)の範囲内に単一のVVA反応性バンドがあることが明らかになり、これら3種の最も反応性の種が、15当量の最も高いPFP-Tn比率で生じた。
【
図16】
図16Aおよび16Bは、TF特異的なレクチンであるピーナッツ凝集素(PNA)へのBSA-TFコンジュゲートの反応性およびコンジュゲートした二糖TF抗原からのガラクトース糖の投薬量を示す。
図16Aは、ウェスタンブロットが、TFのBSAへのカップリングを示すBSA単量体の期待される分子量の範囲内のPNAに反応性を有する優勢なバンドが明らかになったことを示す。
図16Bに、PNA-hrpを使用した対応するELISA分析を示す。TFのBSAへのコンジュゲーションはまた、デュボア(Dubois)の方法によりBSAに会合するガラクトースを測定することによっても実証された(
図16Bの棒グラフ)。
【
図17】
図17A~17Cは、COOH-TnおよびCOOH-TFの担体タンパク質CRM197およびdTTへのコンジュゲーションを示す。
図17Aは、クーマシー染色されたSDS-PAGEゲルを示し、それによれば、コンジュゲートしたタンパク質(「-Tn」および「-TF」)が、それらの対応するコンジュゲートしていないタンパク質(「crm」および「dTT」)と比べてわずかに増加した分子量を有すると考えられることが示される。
図17Bに示される対応するウェスタンブロットは、各-Tnおよび-TFタンパク質コンジュゲートの、それぞれVVAおよびPNAレクチンへの特異的な反応性を示す。レクチンへの特異的な反応性の同じパターンはELISAによっても観察された(
図17C)。
【
図18】
図18は、ELISAによる、dTT-TFで3回免疫化されたマウスからの血清の、様々なTFおよびTnスクリーニング抗原への正規化した反応性を示す。
【
図19】
図19A~19Bは、dTT-TFで5回免疫化されたマウス、加えて5回目の免疫化の6週間後のマウスからの血清の滴定のスクリーニング抗原BSA-TFへの反応性を示す。
図19Aは、マウス「A1」からの結果を示し、
図19Bは、マウス「A2」からの結果を示す。
【
図20】
図20は、高分解能LC-MS/MSによって分析された75kDAを超えるタンパク質におけるSARS-CoV-2の組換えS1タンパク質に対するペプチドVQPTESIVR(配列番号3)の全てのO-グリコシル化された形態の相対的な存在量を示す。
【
図21】
図21は、高分解能LC-MS/MSによって分析された75~100kDAのタンパク質におけるSARS-CoV-2の組換えS1タンパク質に対するペプチドVQPTESIVR(配列番号3)の全てのO-グリコシル化された形態の相対的な存在量を示す。
【
図22】
図22は、SARS-CoV-2S1タンパク質または全長Sタンパク質のいずれかでトランスフェクトされた哺乳類細胞からの培養上清への抗TF(JAA-F11 IgGおよびSPM320 IgM)および抗Tn(Tn218 IgM)モノクローナル抗体の反応性をELISAによって示す。結果は、空のベクターでトランスフェクトされた対応する哺乳類細胞からの培養上清に曝露された同じモノクローナル抗体に対する増加倍率として示される。
【
図23】
図23は、SARS-CoV-2S1タンパク質または全長Sタンパク質でトランスフェクトされた哺乳類細胞からの培養上清へのレクチンのパネルの反応性を示す。結果は、空のベクターでトランスフェクトされた対応する哺乳類細胞からの培養上清に曝露された同じモノクローナル抗体に対する増加倍率として示される。
【
図24】
図24は、シュードタイプ化レンチ-luc-SARS-CoV-2-Sウイルスの、ヒトアンジオテンシン変換酵素2を発現する宿主細胞への感染力を阻害する、異なる抗炭水化物リガンドの作用を示す。「PNA」および「AIA(jac)」は、異なる炭水化物抗原結合特異性を有するレクチンであり、後者は、そのシアル化されたまたはシアル化されていない形態のいずれかでTFおよびTn抗原の両方に結合特異性を有することがわかっている。「JAA-F11」は、TF抗原のシアル化されていない形態とのみ結合するモノクローナル抗体である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
配列表
本出願は、約12Kbのサイズを有する2020年9月17日に作成されたコンピューター読取り可能な形態の配列表を含有する。コンピューター読取り可能な形態は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
詳細な説明
本発明の説明は、例えば、例えば免疫原、ワクチンのための、診断における、または分析もしくは治療ツールを生成する(例えば、新規の抗ネオ複合糖質抗体を生成する)ための使用に好適なネオ複合糖質、加えてそれらを生産するための改善された方法に関する。
【0043】
末端の酸官能基で終わる炭水化物抗原を担体タンパク質のアミン基にコンジュゲートすることは、従来、スクシンイミドまたはカルボジイミド試薬でのランダムな活性化を介してなされる。このような炭水化物抗原-担体タンパク質コンジュゲーション方法の主な不利益の1つは、担体タンパク質それ自体の中で起こる制御不能な/望ましくない自己架橋形成であり、この場合、担体タンパク質自体のアスパラギン酸/グルタミン酸残基の側鎖は、担体タンパク質自体のリシン残基のε-アミン基にカップリングされることになる。このアプローチは、担体タンパク質の天然構造の変動または破壊を引き起こし、しばしば結果として、喪失されなければ高度に免疫原性であると予想される重要なペプチド配列の実質的な喪失、加えて担体タンパク質の起こり得る望ましくない架橋が生じる。加えて、当業界で説明されている炭水化物抗原-担体タンパク質コンジュゲーション方法は、例えばスクアリン酸などのリンカーを採用することが多く、これは、リンカーがカップリングされる炭水化物抗原に対してだけではなくリンカーそれ自体に対する免疫応答を誘発する可能性がある。さらに、当業界で説明されている炭水化物抗原-担体タンパク質コンジュゲーション方法は、担体タンパク質がグリコシル化される程度への十分な制御が不可能であり、結果として不均一な複合糖質種が生じることが多く、これは、ヒト治療剤生産に対する著しい障壁である。
【0044】
対照的に、本明細書に記載される炭水化物抗原-担体タンパク質コンジュゲーション戦略は、これまでに記載されたものとは異なる。第一に、一部の実施態様において、アルケニル官能基を有する炭水化物抗原は、試薬なしの光分解性チオール-エン反応によって非免疫原性リンカーにカップリングされて、本明細書に記載されるネオ炭水化物抗原を生産し、この上流工程は、担体タンパク質およびペプチドの構造に影響を与えない。第二に、本明細書に記載される一部の実施態様において、ネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体は、活性エステル基などのより優れた脱離基で終わるように作製され、担体タンパク質またはペプチドへのコンジュゲーションの前に精製され、したがってコンジュゲーション効能が改善され、同時に担体タンパク質またはペプチド内の自己架橋形成が回避される。第三に、本明細書に記載される炭水化物抗原-担体タンパク質コンジュゲーション戦略における反応パートナーの効能および化学量論は、担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートした炭水化物抗原の数のより正確な制御を可能にし、したがって主要な免疫原性ペプチド配列の起こり得るマスキングが回避される。
【0045】
第1の形態において、本発明の記載は、ネオ複合糖質を生産するための改善された方法に関する。本方法は、一般的に、末端のアルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された炭水化物抗原を提供するステップであって、末端のアルケンは、チオール-エン反応を介して、チオール基に直接コンジュゲート可能である、ステップを含む。本方法は、第1の末端に第1の官能基および第2の末端に第2の官能基を含むチオリンカーを提供するステップであって、第1の官能基は、遊離チオール基であり、第2の官能基は、カルボキシル基、スルフィン酸基、炭酸基、イソシアネート基、またはチオシアネート基などの基である、ステップをさらに含む。次いで光触媒作用によるチオール-エン反応を実行して、第1の末端でアルケニル炭水化物抗原をチオリンカーに直接コンジュゲートし、それによって第1の末端に炭水化物抗原および第2の末端に第2の官能基を含むネオ炭水化物抗原が生産される。第2の官能基が、カルボキシル基、スルフィン酸基、または炭酸基である場合、本明細書に記載される方法は、カルボキシル基の、スルフィン酸基の、または炭酸基の末端ヒドロキシル基を、ポリペプチドの遊離アミン基へのコンジュゲーションに関してより優れた脱離基で置き換えることによって、ネオ炭水化物抗原をネオ炭水化物抗原中間体に変換するステップをさらに含む。次いでネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体は、精製してもよく、その後、1つまたはそれより多くの遊離アミン基を有する担体材料(例えば、担体タンパク質またはペプチド)とのカップリング反応で採用される。カップリング反応は、精製したネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体の1つまたはそれより多くを、担体材料に、1つまたはそれより多くの遊離アミン基で(例えば、アミド、カルバメート、スルホンアミド、尿素、またはチオ尿素結合を介して)コンジュゲートし、それによってネオ複合糖質が生産される。
【0046】
さらなる形態において、ネオ複合糖質を生産するための方法であって、第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含むネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体を提供するステップであって、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、遊離アミン基と反応可能な官能基を含み、官能基は、-COX、-SO2X、-O-C(O)-X、-N=C=O、または-N=C=Sであり、Xは、脱離基である、ステップを含む、上記方法が本明細書に記載される。本方法は、1つまたはそれより多くの遊離アミン基を有する担体材料(例えば、担体タンパク質またはペプチド)を提供するステップ;およびカップリング反応を実行して、精製したネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体の1つまたはそれより多くを、担体材料に、1つまたはそれより多くの遊離アミン基で、アミド、カルバメート、スルホンアミド、尿素、またはチオ尿素結合を介してコンジュゲートし、それによって、ネオ複合糖質を生産するステップをさらに含む。
【0047】
さらなる形態において、新規のネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体が本明細書に記載される。一部の実施態様において、ネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体は、第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含み、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、遊離アミン基と反応可能な官能基を含み、官能基は、-COX、-SO2X、-O-C(O)-X、-N=C=O、または-N=C=Sであり、Xは、脱離基である。
【0048】
さらなる形態において、第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含む新規の合成ネオ複合糖質であって、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、担体材料(例えば、担体タンパク質またはペプチド)に、そこの中にある1つまたはそれより多くの遊離アミン基で、アミド、カルバメート、スルホンアミド、尿素、またはチオ尿素結合を介してコンジュゲートしている、合成ネオ複合糖質が本明細書に記載される。
【0049】
さらなる形態において、リンカーを介して担体タンパク質またはペプチドの1つまたはそれより多くのアミン基(CP-NH)にコンジュゲートした1つまたはそれより多くの炭水化物抗原(CA)を含む新規の合成ネオ複合糖質であって、以下の構造:
【0050】
【化2】
を有する合成ネオ複合糖質が本明細書に記載されるが、式中、Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;R
1は、H、COH(ホルムアミド)、COMe、またはCOEtであり;mは、1、2、3、4、または5であり;Yは、-(CH
2)
n-または-(OCH
2CH
2O)
n-であり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;oは、0、1、2、3、4、または5であり;またはoは、0であり、Zは、-CO-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であるまたはoは、0であり、Zは、-SO
2-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;Zは、-CO-、-NR
2SO
2-、-OCO-、-NR
2CO-、または-NR
2CS-であり;R
2は、H、Me、またはEtであり;pは、前記1つまたはそれより多くのアミン基で担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートした炭水化物抗原の総数に相当する整数である。
【0051】
さらなる形態において、リンカーを介して担体タンパク質またはペプチドの1つまたはそれより多くのアミン基(CP-NH)にコンジュゲートした1つまたはそれより多くの炭水化物抗原(CA)を含む新規の合成ネオ複合糖質であって、以下の構造:
【0052】
【化3】
有する合成ネオ複合糖質が本明細書に記載され、式中、pは、前記1つまたはそれより多くのアミン基で担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートした炭水化物抗原の総数に相当する整数である。
【0053】
一部の実施態様において、pは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50の整数であり、所与の担体タンパク質またはペプチドにおけるコンジュゲーションに利用可能なアミン基の総数(例えば、リシン残基、例えば溶媒が接近可能なリシン残基の総数)までである。
【0054】
一部の実施態様において、合成ネオ複合糖質中の担体タンパク質またはペプチドは、天然の、または変性していないコンフォメーションを有し、炭水化物抗原の担体タンパク質またはペプチドへのコンジュゲーションが、対応するコンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較して、対象に投与されたときの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる。
【0055】
一部の実施態様において、アルケニル炭水化物抗原をチオリンカーに直接コンジュゲートするための本明細書に記載されるチオール-エン反応は、炭水化物抗原の構造および/または抗原性の破壊または変動(例えば、望ましくない免疫反応および/または変動した構造を有する望ましくない炭水化物抗原に対する抗体の発生を引き起こす可能性がある)を最小化または回避する反応条件下で実行することができる。
【0056】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるチオール-エン反応は、紫外光下での放射線照射を含む光触媒作用によるチオール-エン反応であってもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒作用によるチオール-エン反応は、短波長の紫外光下での(例えば、約254nm)、または長波長の紫外光下での(例えば、約355nmまたは365nmでの)放射線照射を含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載されるチオール-エンコンジュゲーション反応は、短波長および長波長の紫外光の両方の下でのコンジュゲーションを可能にする多角性を有していてもよい。
【0057】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるチオール-エン反応は、触媒の存在下で実行することができる。例えば、一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒作用によるチオール-エン反応は、触媒の存在下で、長波長の紫外光下で実行してもよいし、または触媒の非存在下で、短波長の紫外光下で実行して、さらにプロセスを簡易化してもよい。本明細書で使用される場合、チオール-エン反応の文脈で、用語「触媒」、「光開始剤」、および「活性化剤」は、光触媒作用によるチオール-エン反応を介した遊離チオール基における炭水化物抗原のチオリンカーへのコンジュゲーションを促進する物質を指すのに同義的に使用することができる。一部の実施態様において、触媒は、水溶性触媒、例えば水溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(Vazo 44またはVA-044);2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH);リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP);光開始剤活性を有する金属または金属イオン;過酸化物;tert-ブチルヒドロペルオキシド;過酸化ベンゾイル;過硫酸アンモニウム;もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体であってもよい。一部の実施態様において、触媒は、水不溶性触媒、例えば水不溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ACHN)、ジアゼンジカルボン酸ビス(N,N-ジメチルアミド)(TMAD);アゾジカルボン酸ジピペリジド(ADD)、もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体であってもよい。
【0058】
一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒作用によるチオール-エン反応は、チオリンカーの遊離チオール基1つ当たり、1~200または1~100モル当量のアルケニル炭水化物抗原を反応させることを含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒作用によるチオール-エン反応は、10~300、10~270、10~240、10~210、10~180、10~150、10~120、10~90、10~60、または10~30分実行することができる。
【0059】
一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒作用によるチオール-エン反応は、約3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0から、約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10までの範囲のpHで実行することができる。一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒作用によるチオール-エン反応は、炭水化物抗原の変動または破壊を最小化または回避するpHで実行することができる。
【0060】
一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、末端のアルケンに連結されるように(直接に、またはリンカーもしくはスペーサーを介して間接的に)化学修飾されていてもよく(例えば、グリコシド結合または還元的アミノ化により得られた結合を介して、例えばアリルまたはアルケニルアミンと還元糖との間で、好ましくはNaBH4および/またはNaBH3CNを使用して)、その場合、アルケニル炭水化物抗原の末端のアルケン基は、チオール-エン反応(例えば、光触媒作用によるチオール-エン反応)を介して遊離のチオリンカーにコンジュゲート可能である。アルケニル炭水化物抗原の末端のアルケン基は、一置換されたアルケン、ビニル基、またはアリル基であってもよい。
【0061】
一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、例えばアリルアミンと還元糖(細菌のCPSなど)との間で、グリコシド結合、例えばO-グリコシド結合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または還元的アミノ化により得られた結合を介して、末端のアルケンに共有結合で連結されていてもよい。「グリコシド結合」は、本明細書で使用される場合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、O-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または還元糖の還元的アミノ化により得られた結合(例えば、NaBH4または好ましくはNaBH3CNを使用して)の1つまたはそれより多くを含んでいてもよい。一部の実施態様において、グリコシド結合は、投与されることになる対象の内因性酵素(例えば、グリコヒドロラーゼ)によって切断不可能なものであってもよい。このような切断不可能なグリコシド結合は、対象への投与後、より長い半減期を有するネオ複合糖質免疫原をもたらす可能性があり、これは順に、治療および/または抗体を生成する目的にとってより好都合な免疫応答を生じる可能性がある。一部の実施態様において、グリコシド結合は、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または例えばアリルアミンと還元糖との間における還元的アミノ化により得られた結合であってもよい。
【0062】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるチオリンカーは、下記の構造を含んでいてもよい。
【0063】
【化4】
(式中、Yは、-(CH
2)
n-または-(OCH
2CH
2O)
n-であり;Zは、-CO
2H、-SO
2H、-O-C(O)-H、-N=C=O、または-N=C=Sであり;Oは、0、1、2、3、4、または5であり;Oは、0であり、Zは、-CO-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;またはOは、0であり、Zは、-SO
2-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-である)
一部の実施態様において、本明細書に記載される方法およびネオ複合糖質は、好ましくは、保護されていない炭水化物抗原を採用し、これは、炭水化物抗原それ自体の水溶性を改善し、加えて後の炭水化物抗原の保護基を除去する工程を回避する。したがって、一部の実施態様において、炭水化物抗原、アルケニル炭水化物抗原、ネオ炭水化物抗原、ネオ炭水化物抗原中間体、および/またはネオ複合糖質の炭水化物部分は、本明細書に記載される方法にわたり保護されていないままである。
【0064】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ炭水化物抗原の第2の官能基が、カルボキシル基、スルフィン酸基、または炭酸基などの基である場合、本明細書に記載される方法は、カルボキシル基の、スルフィン酸基の、または炭酸基の末端ヒドロキシル基を、ポリペプチドの遊離アミン基へのコンジュゲーションに関してより優れた脱離基で置き換えることによって、ネオ炭水化物抗原をネオ炭水化物抗原中間体に変換するステップをさらに含んでいてもよい。表現「より優れた脱離基」は、本明細書で使用される場合、脱離基での置き換え前の対応する官能基と比較して、改善された反応効率および/または特異性(すなわち、ポリペプチドの遊離アミン基への改善されたコンジュゲーション)を提供する脱離基を指す。一部の実施態様において、本明細書において採用される脱離基は、活性エステル基(例えば、フルオロフェニル基(例えば、OPhF5、OPhF4(パラSO3Na)、またはスクシンイミジル基)であってもよい。次いでネオ炭水化物抗原中間体は、精製してもよいし、その後、1つまたはそれより多くの遊離アミン基を有する担体タンパク質またはペプチドとのカップリング反応で採用してもよい。カップリング反応は、精製したネオ炭水化物抗原中間体の1つまたはそれより多くを、担体タンパク質またはペプチドに、1つまたはそれより多くの遊離アミン基で(例えば、アミド、カルバメート、スルホンアミド、尿素、またはチオ尿素結合を介して)コンジュゲートし、それによって本明細書に記載されるネオ複合糖質が生産される。
【0065】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ炭水化物抗原-担体タンパク質カップリング反応は、有利なことに、アスパラギン酸/グルタミン酸残基の側鎖と担体タンパク質またはペプチドそれ自体中に存在するε-リシンアミンとの間の担体タンパク質またはペプチドの自己架橋を最小化または回避することができる。
【0066】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ炭水化物抗原-担体タンパク質カップリング反応は、担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートしたネオ炭水化物抗原の数を、反応物の効能および/または化学量論(例えば、担体タンパク質またはペプチドのネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体に対するモル比)によって制御することを可能にする。一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ炭水化物抗原-担体タンパク質カップリング反応は、担体タンパク質またはペプチド1つ当たり、1~500、1~400、1~300、1~200、5~500、5~400、5~300、または5~200モル当量のネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体を反応させることを含んでいてもよい。一部の実施態様において、本発明の記載は、炭水化物コンジュゲーション種に関して、約または少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の均一性を有するネオ複合糖質免疫原を含む組成物に関する(例えば、組成物中のネオ複合糖質種/分子の少なくとも90%が、同じ数の担体タンパク質にコンジュゲートした炭水化物抗原を有する)。
【0067】
一部の実施態様において、本明細書に記載される(ネオ)炭水化物抗原は、B細胞エピトープを含んでいてもよく、および/または対象において体液性免疫応答を誘導する。一部の実施態様において、本明細書に記載される(ネオ)炭水化物抗原は、T細胞エピトープを含んでいてもよく、および/または対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する。一部の実施態様において、本明細書に記載される(ネオ)炭水化物抗原は、B細胞エピトープとT細胞エピトープの両方を含んでもよく、および/または対象において体液性および細胞媒介性免疫応答の両方を誘導する。一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、腫瘍関連の炭水化物抗原(TACA)、例えばTn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF(
図1)、グロボH(Globo H)、PSA、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、フコシルGM1、Le
a、sLe
a、Le
x、sLe
x、Le
y、またはそれらのあらゆる組合せであってもよいし、またはそれを含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、ウイルスの多糖抗原、または細菌の莢膜多糖体(CPS)(例えば、肺炎球菌および/または連鎖球菌の多糖血清型、髄膜炎菌のCPS;インフルエンザ(例えばインフルエンザa型またはb型)CPS)を含んでいてもよい。
【0068】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ炭水化物抗原-担体タンパク質カップリング反応は、同じ炭水化物抗原の少なくとも2つ、または1つより多くのタイプの炭水化物抗原を、担体タンパク質またはペプチドに、1つまたはそれより多くのタイプのチオリンカーを介してコンジュゲートすることによって、多価性のネオ複合糖質を生産することができる。一部の実施態様において、多価性のネオ複合糖質は、担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートした同じまたは異なるタイプの炭水化物抗原のうち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15種、またはそれより多くを含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ複合糖質免疫原は、Tn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH、PSA、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、フコシルGM1、Lea、sLea、Lex、sLex、およびLeyから選択されるTACAのあらゆる組合せを含んでいてもよい。一部の実施態様において、シアル化されたまたはシアル化されていないTnおよびTF抗原(ならびにそれらのアナログ)は、本明細書に記載される通りに、または例えばRessら、2005;Wuら、2019;Thompsonら、2015;およびYangら、2010に記載される通りに合成してもよい。
【0069】
一部の実施態様において、各TACAの組合せにおける比率は、標的化された腫瘍に応じて様々であってもよく、1~20のモル比を含み得る。このようにして、本明細書に記載されるネオ複合糖質免疫原は、例えば以下の表に記載されたように、例えば、複数のTACAの特定の組合せの増加した発現に関連するがんの具体的な形態に合わせて調整することができる。
【0070】
【表1】
一部の実施態様において、本明細書に記載される多価性のネオ複合糖質免疫原は、担体タンパク質上の単一の遊離アミン基にコンジュゲートしている(例えば、分岐したリンカーを介して)1種より多くの(ネオ)炭水化物抗原を含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される多価性のネオ複合糖質免疫原は、デンドリマーとして担体タンパク質またはペプチド上に付着させる前に(例えば、大規模な分岐を有するリンカーを介して)、チオリンカーにコンジュゲートしている複数種(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15種、またはそれより多く)の(ネオ)炭水化物抗原を含んでいてもよい。
【0071】
一部の実施態様において、本明細書に記載される担体タンパク質またはペプチドは、1つまたはそれより多くの遊離アミン基を含む。「遊離アミン」または「遊離アミン基」は、本明細書で使用される場合、担体タンパク質またはペプチドが、化学修飾および/またはコンジュゲーション(例えば、本明細書に記載される炭水化物抗原、例えば、担体タンパク質の外面に露出する傾向がある溶媒接近可能なリシン残基への)に利用可能な1つまたはそれより多くのアミノ基を有することを指す。一部の実施態様において、担体タンパク質上の隣接する位置にコンジュゲートした複数の(ネオ)炭水化物抗原が多くなり過ぎることを回避することが有利な場合がある。一部の実施態様において、担体タンパク質またはペプチドは、好ましくはリシンリッチなドメイン(例えば、リシン残基が少なくとも50%を構成する少なくとも4、5、6、7、8、9、または10個の連続したアミノ酸のセグメント)を有してなくてもよい。
【0072】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100個の総リシン残基を含んでいてもよい。一部の実施態様において、担体タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の総遊離アミン残基を含んでいてもよい。
【0073】
一部の実施態様において、担体タンパク質またはペプチドは、1つまたはそれより多くの遊離アミン基を有する1つまたはそれより多くのリシン残基を含み、または任意選択で、例えば担体タンパク質またはペプチドの、アミノ末端、カルボキシ末端、または溶媒が接近可能な位置で、1つまたはそれより多くのさらなるリシン残基を付加するように操作されている。一部の実施態様において、担体タンパク質は、T細胞エピトープを含み、および/または対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する。一部の実施態様において、担体タンパク質またはペプチドは、B細胞エピトープを含み、および/または対象において体液性免疫応答を誘導する。一部の実施態様において、担体タンパク質は、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープの両方を含み、および/または対象において体液性および細胞媒介性免疫応答の両方を誘導する。
【0074】
好ましくは、本明細書に記載される担体タンパク質は、ヒト対象への投与(例えば、承認されたワクチンでの)に関してすでに規制当局(例えば、FDA)の承認受けたタンパク質であってもよい。一部の実施態様において、担体タンパク質は、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌(H. influenzae)プロテインD(HiD)、ウイルス様粒子(VLP)、サイトカイン、免疫原性ペプチド、例えば破傷風毒素831~844(配列番号1または2)、アルブミン(例えばウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、またはそれらの免疫原性断片であるか、それ由来であるか、またはそれを含む。
【0075】
一部の実施態様において、担体タンパク質またはペプチドは、投与されることになる対象にとって外因性であり、好ましくは、対象において相同分子種(近い相同分子種)を有さない。ヒトワクチン生産の文脈で、本明細書に記載される担体タンパク質は、「ヒトでの使用に好適な担体タンパク質」または単に「好適な担体タンパク質」を指し、これは、担体タンパク質がヒトにおいて「自己抗原」とみなされないように、抗原的にヒトタンパク質とは異なる担体タンパク質を意味する。抗原的に対応するヒトタンパク質に類似し過ぎている担体タンパク質の使用は、担体タンパク質が「自己抗原」とみなされることが起こる可能性があり、これは、ヒトワクチンにおいて理想的ではない場合がある。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)のリシン残基のε-アミノ基にランダムにコンジュゲートしたTF抗原からなるネオ複合糖質免疫原がこれまでに記載され、特徴付けられている(例えば、Demianら、2014;Rittenhouse-Diakunら、1998;Heimburgら、2006;Tatiら、2017)。しかしながら、BSAの59個のリシン残基における炭水化物のレベルはランダムであり非効率的であるだけでなく(BSA分子1個当たり4~6個以下のTF抗原がコンジュゲートされた)、BSAは、抗原的にヒトアルブミンに類似し過ぎているために、ヒトワクチンにおける担体タンパク質として好適ではないと予想される。一部の実施態様において、担体タンパク質は、アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン)ではない。
【0076】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるネオ複合糖質は、ネオ複合糖質免疫原であって、その場合、担体タンパク質またはペプチドが、対象に投与される場合、免疫原性であり、炭水化物抗原の担体タンパク質またはペプチドへのチオリンカーを介したコンジュゲーションが、対応するコンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較して、対象に投与されたときの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、ネオ複合糖質免疫原であってもよい。
【0077】
一部の実施態様において、対象へのネオ複合糖質免疫原の投与が、ネオ複合糖質免疫原中に含まれるチオリンカーに対する抗体を誘発させないように、本明細書に記載されるチオリンカーは、ネオ複合糖質が投与されることになる対象に対して非免疫原性である。一部の実施態様において、本明細書に記載されるチオリンカーは、合成的な化学基/官能基(すなわち、対象において天然に見出されない化学基/官能基)を有さない。一部の実施態様において、本明細書に記載されるチオリンカーは、天然の化学基/官能基のみ、すなわち、対象において天然に見出される官能基のみを含む。これに関して、当業界で採用される一部の炭水化物抗原-タンパク質リンカー、例えばスクアリン酸などは、リンカーがカップリングされる炭水化物抗原に対してというよりは、リンカーそれ自体に対する免疫応答を誘発する可能性があり、これは、その化学基/官能基の「外来」および/または抗原性の性質に関連する可能性がある。
【0078】
一部の実施態様において、炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原は、担体タンパク質またはペプチドへのカップリングの後、対象の内因性酵素によって担体タンパク質またはペプチドから切断不可能である。
【0079】
一部の実施態様において、本明細書に記載される担体タンパク質またはペプチドは、T細胞エピトープを含んでいてもよいし、および/または投与されると、対象において細胞媒介性免疫応答を誘導することができる。
【0080】
一部の実施態様において、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質免疫原は、対象に投与されると、(ネオ)炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導することができる。
【0081】
さらなる形態において、ネオ複合糖質ワクチンまたは免疫応答を誘発する組成物を生産するための方法が本明細書に記載される。本方法は、本明細書に記載されるネオ複合糖質または本明細書に記載される方法によって調製されたネオ複合糖質を、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを用いて製剤化することを含んでいてもよい。一部の実施態様において、アジュバントは、無機化合物、鉱油、微生物性の誘導体、植物性の誘導体、サイトカイン、スクアレン、アラム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化燐灰石、toll様受容体アゴニスト、免疫刺激性ポリヌクレオチド(例えば、CPG)、免疫刺激性脂質、フロイントアジュバント、RIBIアジュバント、QS-21、ムラミルジペプチド、TiterMax(商標)、Steviune(商標)、Stimune(商標)、またはそれらのあらゆる組合せであるか、またはそれを含む。
【0082】
ワクチン組成物は、レシピエント動物の年齢、性別、体重、種および状態、ならびに投与経路のような要因を考慮して、医療または獣医学分野における当業者周知の投薬量および技術によって投与することができる。投与経路は、粘膜投与(例えば、口腔、鼻、眼)を介した、または非経口経路(例えば、皮内、筋肉内、皮下)を介した経皮であってもよい。ワクチン組成物は、単独で投与してもよいし、または他の処置または療法と共に投与してもよいし、もしくはそれと逐次的に投与してもよい。投与剤形としては、非経口、皮下、皮内または筋肉内投与(例えば、注射可能な投与)のための懸濁剤および製剤、例えば滅菌懸濁液または乳剤を挙げることができる。ワクチンは、スプレーとして、または食物および/または水中に混合して投与してもよいし、または好適な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理的食塩水、グルコースなどと混和して送達してもよい。組成物は、望ましい投与経路および製剤に応じて、湿潤剤または乳化剤などの補助剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲル化または粘度を強化する添加剤、保存剤、矯味矯臭剤、色素などを含有していてもよい。余計な実験を行うことなく好適な製剤を調製するために、標準的な製薬の教本、例えば「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、1990を参照することができる。
【0083】
さらなる形態において、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンまたは適応免疫応答を誘発する組成物、および/または本明細書に記載されるネオ複合糖質、ならびに本明細書に記載される医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含むワクチンまたは組成物が本明細書に記載される。実施態様において、ネオ複合糖質ワクチンは、予防ワクチンまたは治療ワクチンであってもよい。実施態様において、本明細書に記載されるワクチン組成物は、1種またはそれより多くのTACAを含んでいてもよく、ワクチン組成物は、TACAを発現するがんに対する抗がんワクチンであってもよい。実施態様において、がんは、B細胞リンパ腫、乳がん、結腸がん、非小細胞肺がん、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣、前立腺、肉腫、小細胞肺がん、または胃がんであり得る。
【0084】
一部の形態において、対象を免疫化する、それにワクチン接種をする、またはそれを処置する方法であって、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンを対象に投与することを含む、上記方法が本明細書に記載される。
【0085】
一部の実施態様において、疾患を有する対象を免疫化すること、それにワクチン接種をすること、またはそれを処置することにおける使用のための、またはネオ複合糖質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための、または前記免疫化、ワクチン接種、または処置を検出するための(例えば、対象からの生物学的サンプルにおいて)、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンが本明細書に記載される。
【0086】
一部の実施態様において、疾患を有する対象を免疫化または処置するためのワクチンの製造のための、またはネオ複合糖質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための、または前記免疫化または処置を検出するための(例えば、対象からの生物学的サンプルにおいて)、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、または本明細書に記載される方法によって生産された適応免疫応答を誘発する組成物が本明細書に記載される。
【0087】
一部の実施態様において、前記炭水化物抗原の増加した発現に関連する疾患を有する対象の処置における使用のための、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンが本明細書に記載される。
【0088】
一部の実施態様において、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質、本明細書に記載される合成ネオ複合糖質、本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンが本明細書に記載される。一部の実施態様において、検出またはスクリーニングは、免疫吸着測定法、ELISA、マイクロアレイ、または免疫ブロット分析などのあらゆる好適な検出方法を介して実行することができる。
【0089】
さらなる形態において、対象を処置する方法であって、本明細書において規定された、または本明細書に記載される方法によって生産されたネオ複合糖質またはネオ複合糖質免疫原を投与して、炭水化物抗原に対して前記対象における免疫応答を生じさせること、および任意選択で、前記対象からの生物学的サンプルを、炭水化物抗原に特異的に結合する抗体の存在に関してスクリーニングすることを含む、上記方法が本明細書に記載される。
【0090】
さらなる形態において、SARS-CoV-2に関する治療および/または診断ツールとして使用するための複合糖質が本明細書に記載される。より特定には、対象における抗SARS-CoV-2抗体の生産を誘発することにおける使用のための、対象においてSARS-CoV-2に対する細胞媒介性免疫応答を誘導することにおける使用のための、またはそれらのあらゆる組合せのための、SARS-CoV-2に対して対象を免疫化することにおける使用のための複合糖質が本明細書に記載される。また、SARS-CoV-2に関する検出/診断ツールにおける使用のための複合糖質も本明細書に記載される。例えば、対象からのサンプルにおいて抗SARS-CoV-2抗体の存在を検出することにおける使用のための複合糖質が本明細書に記載される。
【0091】
表現「抗SARS-CoV-2抗体」は、本明細書で使用される場合、その天然のコンフォメーションで、例えば、天然の組換えタンパク質上に発現された、および/または集合したビリオン粒子上に存在する状態で抗原(例えば、炭水化物抗原)に結合することができる抗体を指す。対照的に、変性した抗原とのみ結合するが(例えば、SDS-PAGE後などの変性条件下で)、その天然のコンフォメーションの同じ抗原には結合しない抗体は、表現「抗SARS-CoV-2抗体」から排除される。一部の実施態様において、本明細書に記載される複合糖質またはワクチンは、中和活性を有する抗体の生産を誘導することができる。表現「中和活性」は、本明細書で使用される場合、リガンド(例えば、抗体)が、SARS-CoV-2ビリオン粒子に結合し、感受性のある宿主細胞に感染するにその能力を阻害することを指す。
【0092】
一部の実施態様において、本明細書に記載される複合糖質は、好適な担体材料にコンジュゲートした炭水化物抗原(例えば、担体タンパク質またはペプチド、または非タンパク質様のポリマー材料)を含んでいてもよいし、炭水化物抗原が、シアル化されたトムゼン-フリーデンライヒ(TF)抗原、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含むかまたはそれからなる。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、モノシアル化されたTF抗原、例えば(2,3)-S-TF、および/またはジシアリル化されたTF抗原、例えばジシアリルコア1を含む。これらの炭水化物抗原は、定量的な高分解能質量分析によって、ペプチド断片VQPTESIVR(配列番号3)の4および/または6位に対応する位置で、組換え発現されたSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質および/またはそのS1断片上に検出された(実施例16;
図20および21)。さらに、実施例17ならびに
図22および23に示される結果は、これらの炭水化物抗原の少なくとも一部は、リガンド結合(例えば、レクチンおよび/または抗体との)に利用可能であることを実証し、実施例18および
図24に示される結果は、このような炭水化物抗原に結合するリガンドは、SARS-CoV-2のSタンパク質を発現するシュードタイプ化ウイルス粒子の、ヒトアンジオテンシン変換酵素2(ACE2、Sが結合して宿主細胞への侵入を高める受容体)を発現する宿主細胞に感染する能力を阻害することを実証する。SARS-CoV-2Sタンパク質は、大部分はN結合型グリカンによって過度に遮蔽されること、およびO結合型グリカン(報告が相反するため、検出される場合)は、病原性ビリオン粒子の状態でリガンド結合にとって接近可能ではない場合があるSARS-CoV-2のSタンパク質の全体的なグリコシル化プロファイルにとって重要ではない成分を表す(Watanabeら、2020;Shajahanら、2020;Grantら、2020)という複数の報告を考慮すれば、これらの結果は予測不可能である。
【0093】
一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、例えば体液性および細胞媒介性免疫応答を誘発することが望ましいかどうかに応じて、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープを含む担体材料にコンジュゲートしていてもよい。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、配列番号3または4のSARS-CoV-2Sタンパク質断片に、例えば配列番号3の4および/もしくは6位で、または配列番号4の323、325、および/もしくは678位で、共有結合でコンジュゲートしていてもよい。特定には、配列番号4の678位(R682におけるスパイクタンパク質のフューリン切断部位に近い)は、コア-1およびコア-2構造によってO-グリコシル化されることが報告されている。
【0094】
一部の実施態様において、担体タンパク質またはペプチドは、配列番号4のSARS-CoV-2Sタンパク質配列の免疫原性断片を含んでいてもよく、この断片は、配列番号4の323、325、および/または678位にコンジュゲートした1つまたはそれより多くの炭水化物抗原を含む。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、配列番号3のSARS-CoV-2Sタンパク質断片のバリアントに共有結合でコンジュゲートしていてもよく、このようなバリアントは、例えば、4および/または6位における残基がリシンおよび/またはシステイン残基で置き換えられている可能性があるバリアントであり、それにより炭水化物抗原への化学的コンジュゲーションを容易にすることができる。一部の実施態様において、担体タンパク質またはペプチドは、323、325、および/または678位にリシンまたはシステインを有する配列番号4のSARS-CoV-2Sタンパク質配列のバリアントの免疫原性断片を含んでいてもよく、このような断片は、配列番号4の323、325、および/または678位でリシンまたはシステイン残基にコンジュゲートした1つまたはそれより多くの炭水化物抗原を含む。リシン残基の場合、炭水化物抗原は、本明細書に記載されるコンジュゲーション方法を介して、または当業界で公知の他のコンジュゲーション方法を介して担体タンパク質にコンジュゲートされていてもよい。システイン残基の場合、炭水化物抗原は、例えばWO/2019/178699またはUS10,610,576に記載されるコンジュゲーション方法を介して、または当業界で公知の他のコンジュゲーション方法を介して担体タンパク質にコンジュゲートされていてもよい。したがって、一部の実施態様において、本明細書に記載される担体材料は、配列番号3のペプチド、または4および/または6位にシステインまたはリシンを含む配列番号3のペプチドのバリアントを含んでいてもよいし、またはそれからなっていてもよい。一部の実施態様において、配列番号3のペプチドまたはペプチドバリアントは、に含まれていてもよく(例えば、アミノ酸配列に組換えによって組み入れられてもよく)、または担体材料に融合されてもよい(例えば、融合タンパク質として)。
【0095】
一部の実施態様において、担体材料は、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌プロテインD(HiD)、ウイルス様粒子(VLP)、サイトカイン、免疫原性ペプチド、例えば破傷風毒素831~844(配列番号1または2)、アルブミン(例えばウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、またはそれらの免疫原性断片であるか、それ由来であるか、またはそれを含む。
【0096】
一部の実施態様において、複合糖質は、(i)本明細書に記載される方法によって、またはそこで規定された通りに生産されたネオ複合糖質;(ii)本明細書に記載されるネオ炭水化物抗原;(iii)本明細書に記載される合成ネオ複合糖質;または(iv)本明細書に記載されるネオ複合糖質ワクチンまたは適応免疫応答を誘発する組成物であり得る。
【0097】
一部の実施態様において、複合糖質は、WO/2019/178699またはUS10,610,576に記載される方法によって生産してもよい。簡単に言えば、一部の実施態様において、本方法は、(a)末端のアルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された水溶性炭水化物抗原を提供するステップであって、末端のアルケンは、チオール-エン反応を介して、チオール基に直接コンジュゲート可能であり、アルケニル炭水化物抗原は、保護されていない水溶性アルケニル炭水化物抗原である、ステップ;(b)1つまたはそれより多くの遊離チオール基を有する担体材料を提供するステップ;および(c)光触媒作用によるチオール-エン反応を実行して、1つまたはそれより多くの遊離チオール基で、炭水化物抗原を材料に直接コンジュゲートし、それによって複合糖質を生産するステップを含んでいてもよい。さらなる実施態様において、本方法は、以下に列挙した項目51~53に記載される1つまたはそれより多くの特色を含んでいてもよい。
【0098】
一部の形態において、本明細書において規定された1種またはそれより多くの複合糖質、ならびに医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含む、SARS-CoV-2またはCOVID-19ワクチンまたは適応免疫応答を誘導する組成物が本明細書に記載される。複合糖質は、一般的に、SARS-CoV-2ビリオン上に発現される1つまたはそれより多くの炭水化物抗原、例えばSARS-CoV-2のS(またはS1)タンパク質上に発現される炭水化物抗原などを含む。本明細書に記載されるSARS-CoV-2ワクチンに好適な炭水化物抗原は、ワクチンが投与されている対象における自己免疫応答を誘発するリスクを低減するために、異常なグリコシル化パターンの炭水化物抗原であり、すなわち、対象の正常または健康な細胞および組織上に発現されないものである。SARS-CoV-2Sタンパク質のN結合型およびO結合型グリコシル化プロファイルの分析の後、SARS-CoV-2Sタンパク質上に発現される結合型グリカンの大半が、それらがヒト対象における正常または健康な細胞および組織上に存在する炭水化物抗原と類似点を有する可能性があることから、複合糖質ワクチン開発にとって理想的な候補ではない可能性があることが見出された。対照的に、SARS-CoV-2Sタンパク質上のO結合型グリコシル化プロファイルの分析は、複合糖質ワクチン開発に好適な可能性がある数々の異常なO結合型グリカンを解明した。一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、実施例16ならびに
図20および21で同定されたO結合型グリカンの1つまたはそれより多くを含んでいてもよい。
【0099】
一部の実施態様において、本明細書に記載される複合糖質または本明細書に記載されるSARS-CoV-2ワクチンは、SARS-CoV-2ビリオン粒子に結合する抗体の生産を誘導し、好ましくは中和活性を有する(例えば、SARS-CoV-2ビリオン粒子が感受性のある宿主細胞に感染しないようにする)。
【0100】
一部の形態において、対象にSARS-CoV-2に対するワクチン接種をするための方法または対象において抗SARS-CoV-2抗体の生産を誘発するための方法であって、本明細書に記載される複合糖質またはSARS-CoV-2ワクチンの1つまたはそれより多くを投与することを含む、上記方法が本明細書に記載される。
【0101】
一部の形態において、SARS-CoV-2ウイルスによる感染から対象を防御するための(または重症度を低減させるための)、またはCOVID-19を処置するための(またはCOVID-19により生じる合併症を低減させるための)組成物であって、SARS-CoV-2Sタンパク質上に発現されたO結合型グリカンに結合する1つまたはそれより多くのリガンド(例えば、抗体、抗体断片、またはレクチン)を含む、組成物が本明細書に記載される。一部の実施態様において、O結合型グリカンは、シアル化されたTF抗原(モノまたはジシアル化されたTF抗原)、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含んでいてもよい。一部の実施態様において、1つまたはそれより多くのリガンドは、組換えモノクローナル抗体(例えば、JAA-F11またはヒト化JAA-F11)を含んでいてもよい。一部の実施態様において、リガンドは、シアル化されたTFおよび/またはシアル化されていないTnへの結合親和性を有していてもよい。一部の実施態様において、リガンドは、シアル化されたおよびシアル化されていないTFの両方への結合親和性を有していてもよい。一部の実施態様において、リガンドは、レクチン、例えばジャカリンであってもよいし、またはジャカリン関連のレクチンである。これに関して、実施例18および
図24は、SARS-CoV-2のSタンパク質を発現するシュードタイプ化ウイルス粒子の宿主細胞に感染する能力に最も強い阻害作用を有するリガンドが、レクチンであるジャカリンであったことを示し、パラミツ(Artocarpus integrifolia)のレクチン(AIA)が、ジャックフルーツの種子から単離されている(Sankaranarayananら、1996)。興味深いことに、ジャカリンは、TFおよびTn抗原の両方に、そのシアル化されたまたはシアル化されていない形態のいずれかで結合特異性を有することがわかっている(Jeyaprakashら、2002)。シュードウイルス感染力の阻害も、本明細書においてレクチンPNAなどの非シアリルTF抗原にのみ結合するリガンドおよび抗TFモノクローナル抗体JAA-F11に関して示される(
図24)。一部の実施態様において、前述の組成物は、鼻腔内用組成物として製剤化されてもよい。
【0102】
一部の形態において、(a)シアル化されたTF抗原(モノまたはジシアル化されたTF抗原)、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含む、O結合型グリカンを発現するSARS-CoV-2Sタンパク質またはその断片;および(b)O結合型グリカンにおいてSARS-CoV-2Sタンパク質またはその断片に結合する、本明細書において規定されたリガンドを含む複合体が本明細書に記載される。一部の実施態様において、複合体は、無傷のSARS-CoV-2ビリオン粒子中にSARS-CoV-2Sタンパク質を含んでいてもよい。一部の実施態様において、このような複合体は、インビトロまたはインビボで形成されてもよい。
【0103】
項目
以下の項目の1つまたはそれより多くが本明細書に記載される。
【0104】
1.ネオ複合糖質を生産するための方法であって、(a)第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含むネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体を提供するステップであって、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、遊離アミン基と反応可能な官能基を含み、官能基は、-COX、-SO2X、-O-C(O)-X、-N=C=O、または-N=C=Sであり、Xは、脱離基である、ステップ;(b)1つまたはそれより多くの遊離アミン基を有する担体タンパク質またはペプチドを提供するステップ;および(c)カップリング反応を実行して、精製したネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体の1つまたはそれより多くを、担体タンパク質またはペプチドに、1つまたはそれより多くの遊離アミン基で、アミド、カルバメート、スルホンアミド、尿素、またはチオ尿素結合を介してコンジュゲートし、それによって、ネオ複合糖質を生産するステップを含む、上記方法。
【0105】
2.工程(a)の前に、(a)におけるネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体が、(i)末端のアルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された炭水化物抗原を提供するステップであって、末端のアルケンは、チオール-エン反応を介して、チオール基に直接コンジュゲート可能であり;(ii)第1の末端に第1の官能基および第2の末端に第2の官能基を含むチオリンカーを提供するステップであって、第1の官能基は、遊離チオール基であり、第2の官能基は、カルボキシル基、スルフィン酸基、炭酸基、イソシアネート基、またはチオシアネート基である、ステップ;(iii)光触媒作用によるチオール-エン反応を実行して、アルケニル炭水化物抗原を、チオリンカーに、第1の末端で直接コンジュゲートし、それによって、第1の末端に炭水化物抗原および第2の末端に第2の官能基を含むネオ炭水化物抗原を生産するステップ;(iv)第2の官能基がカルボキシル基、スルフィン酸基、または炭酸基である場合、カルボキシル基の、スルフィン酸基の、または炭酸基の末端ヒドロキシル基を、ポリペプチドの遊離アミン基へのコンジュゲーションに関してより優れた脱離基で置き換えることによって、ネオ炭水化物抗原をネオ炭水化物抗原中間体に変換するステップ;および(v)ネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体を精製するステップを含む方法によって調製される、項目1に記載の方法。
【0106】
3.(iii)における光触媒作用によるチオール-エン反応が、炭水化物抗原の抗原性および/または構造を保持する反応条件下で実行される、項目2に記載の方法。
【0107】
4.前記光触媒作用によるチオール-エン反応が、触媒の存在下で実行され、触媒は、水溶性触媒、例えば水溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(Vazo 44またはVA-044);2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH);リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP);光開始剤活性を有する金属または金属イオン;過酸化物;tert-ブチルヒドロペルオキシド;過酸化ベンゾイル;過硫酸アンモニウム;もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体;または水不溶性触媒、例えば水不溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ACHN)、ジアゼンジカルボン酸ビス(N,N-ジメチルアミド)(TMAD);アゾジカルボン酸ジピペリジド(ADD)、もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体である、項目2または3に記載の方法。
【0108】
5.前記光触媒作用によるチオール-エン反応が、紫外光(例えば、短波長の紫外光、例えば約254nmの紫外光、または長波長の紫外光、例えば約355nmもしくは365nmの紫外光)下での放射線照射を含む、項目2~4のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
6.前記光触媒作用によるチオール-エン反応が、チオリンカーの遊離チオール基1つ当たり、1~200または1~100モル当量のアルケニル炭水化物抗原を反応させることを含むか;前記光触媒作用によるチオール-エン反応が、10~300、10~270、10~240、10~210、10~180、10~150、10~120、10~90、10~60、または10~30分実行されるか;約3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0から、約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10までの範囲のpHで実行されるか;またはそれらのあらゆる組合せである、項目2~5のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
7.前記炭水化物抗原が、好ましくはリンカーを使用して、例えばアリルアミンと還元糖との間で、グリコシド結合、例えば、O-グリコシド結合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合を介して、または還元的アミノ化により得られた結合を介して、末端のアルケンに連結されている、項目2~6のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
8.(ii)におけるチオリンカーが、構造:
【0112】
【化5】
(式中、Yは、-(CH
2)
n-または-(OCH
2CH
2O)
n-であり;Zは、-CO
2H、-SO
2H、-O-C(O)-H、-N=C=O、または-N=C=Sであり;Oは、1、2、3、4、または5であり;Oは、0であり、Zは、-CO-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;またはOは、0であり、Zは、-SO
2-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-である)
を含む、項目2~7のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
9.炭水化物抗原、アルケニル炭水化物抗原、ネオ炭水化物抗原、ネオ炭水化物抗原中間体、および/またはネオ複合糖質の炭水化物部分が、方法にわたり保護されていないままである、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
10.脱離基が、活性エステル基(例えば、フルオロフェニル基(例えば、OPhF5、OPhF4(パラSO3Na)、またはスクシンイミジル基)である、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
11.担体タンパク質またはペプチドが、同じ担体タンパク質またはペプチド中に存在するアスパラギン酸/グルタミン酸残基とε-リシンアミンとの間で自己架橋することを回避する、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
12.担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートしたネオ炭水化物抗原の数が、反応物(例えば、担体タンパク質またはペプチドのネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体に対するモル比)の効能および/または化学量論によって制御される、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
13.炭水化物抗原が、腫瘍関連の炭水化物抗原(TACA)(例えば、Tn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH、PSA、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、フコシルGM1、Lea、sLea、Lex、sLex、Ley、またはそれらのあらゆる組合せ);ウイルスの多糖抗原;または細菌の莢膜多糖体(CPS)(例えば、肺炎球菌および/または連鎖球菌の多糖血清型、髄膜炎菌のCPSであるか、それ由来であるか、またはそれを含むCPS)、もしくはインフルエンザのCPS(例えばインフルエンザa型またはb型のCPS)であるか、またはそれを含む、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
14.(c)におけるカップリング反応が、同じネオ炭水化物抗原のうち少なくとも2つ、または1つより多くのタイプのネオ炭水化物抗原を、担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートし、それによって、多価性のネオ複合糖質(例えば、担体タンパク質またはペプチドにコンジュゲートした同じまたは異なるタイプのネオ炭水化物抗原のうち2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15種、またはそれより多くを含む多価性のネオ複合糖質)を生産する、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
15.担体タンパク質またはペプチドが、例えば、担体タンパク質またはペプチドのアミノ末端、カルボキシ末端、または溶媒が接近可能な位置に、1つまたはそれより多くのさらなるリシン残基を付加するように操作されたタンパク質またはペプチドである、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
16.担体タンパク質またはペプチドが、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌プロテインD(HiD)、サイトカイン、免疫原性ペプチド、例えば破傷風毒素831~844(配列番号1または2)、アルブミン(例えばウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、またはそれらの免疫原性断片であるか、それ由来であるか、またはそれを含む、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
17.ネオ複合糖質が、構造:
【0122】
【化6】
(式中、CAは、炭水化物抗原であるかまたはそれを含み;CP-NHは、1つまたはそれより多くのアミン基を有する担体タンパク質またはペプチドであり;Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;R
1は、H、COH(ホルムアミド)、COMe、またはCOEtであり;mは、1、2、3、4、または5であり;Yは、-(CH
2)
n-または-(OCH
2CH
2O)
n-であり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;oは、0、1、2、3、4、または5であり;またはoは、0であり、Zは、-CO-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;またはoは、0であり、Zは、-SO
2-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;Zは、-CO-、-NR
2SO
2-、-OCO-、-NR
2CO-、または-NR
2CS-であり、R
2は、H、Me、またはEtであり;pは、1~50である)
を有する、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
18.ネオ複合糖質が、ネオ複合糖質免疫原であり、担体タンパク質またはペプチドが、対象に投与される場合、免疫原性であり、炭水化物抗原の担体タンパク質またはペプチドへのチオリンカーを介したコンジュゲーションが、対応するコンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較して、対象に投与されたときの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
19.対象へのネオ複合糖質免疫原の投与が、ネオ複合糖質免疫原中に含まれるチオリンカーに対する抗体を誘発させないように、チオリンカーが対象に対して非免疫原性である、項目18に記載の方法。
【0125】
20.前記ネオ炭水化物抗原が、担体タンパク質またはペプチドへのコンジュゲーションの後、対象の内因性酵素によって担体タンパク質またはペプチドから切断不可能である、項目18または19に記載の方法。
【0126】
21.ネオ炭水化物抗原が、B細胞エピトープを含み、および/もしくは対象において体液性免疫応答を誘導し;ならびに/またはT細胞エピトープを含み、および/もしくは対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する、項目18~20のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
22.担体タンパク質またはペプチドが、ヒトT細胞エピトープを含み、および/または対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
23.ネオ複合糖質免疫原が、対象に投与されたとき、炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する、項目18~22のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
24.第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含むネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体であって、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、遊離アミン基と反応可能な官能基を含み、官能基は、-COX、-SO2X、-O-C(O)-X、-N=C=O、または-N=C=Sであり、Xは、脱離基である、上記ネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体。
【0130】
25.炭水化物抗原が、保護されていないか;脱離基が、項目10で規定された通りであるか;炭水化物抗原が、項目13で規定された通りであるか;またはそれらのあらゆる組合せである、項目24に記載のネオ炭水化物抗原またはネオ炭水化物抗原中間体。
【0131】
26.第1の末端および第2の末端を有するリンカーを含む合成ネオ複合糖質であって、第1の末端は、チオエーテル結合を介して炭水化物抗原にコンジュゲートしており、第2の末端は、担体タンパク質またはペプチドに、そこの中にある1つまたはそれより多くの遊離アミン基で、アミド、カルバメート、スルホンアミド、尿素、またはチオ尿素結合を介してコンジュゲートしている、上記合成ネオ複合糖質。
【0132】
27.リンカーを介して担体タンパク質またはペプチドの1つまたはそれより多くのアミン基(CP-NH)にコンジュゲートした1つまたはそれより多くの炭水化物抗原(CA)を含む合成ネオ複合糖質であって、以下の構造:
【0133】
【化7】
(式中、Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;R
1は、H、COH(ホルムアミド)、COMe、またはCOEtであり;mは、1、2、3、4、または5であり;Yは、-(CH
2)
n-または-(OCH
2CH
2O)
n-であり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;oは、0、1、2、3、4、または5であり;またはoは、0であり、Zは、-CO-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;またはoは、0であり、Zは、-SO
2-であり、Yは、-(OCH
2CH
2O)
n-であり;Zは、-CO-、-NR
2SO
2-、-OCO-、-NR
2CO-、または-NR
2CS-であり;R
2は、H、Me、またはEtであり;pは、1~50である)
を有する、上記合成ネオ複合糖質。
【0134】
28.炭水化物抗原が、保護されていないか;炭水化物抗原が、項目13で規定された通りであるか;ネオ複合糖質が、項目14で規定された多価のネオ複合糖質であるか;担体タンパク質またはペプチドが、項目15、16、18、または22で規定された通りであるか;ネオ複合糖質が、項目17で規定された構造を有するか;リンカーが、項目19で規定された通りであるか;ネオ炭水化物抗原が、項目20または21で規定された通りであるか;合成ネオ炭水化物が、項目1~25のいずれか一項に記載の方法によって生産されるか;またはそれらのあらゆる組合せである、項目26または27に記載の合成ネオ複合糖質。
【0135】
29.ネオ複合糖質ワクチンまたは適応免疫応答を誘発する組成物を生産するための方法であって、項目1~23のいずれか一項に記載の方法または項目24~28のいずれか一項に記載の方法によって調製されたネオ複合糖質を、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを用いて製剤化することを含む、上記方法。
【0136】
30.アジュバントが、無機化合物、鉱油、微生物性の誘導体、植物性の誘導体、サイトカイン、スクアレン、アラム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化燐灰石、toll様受容体アゴニスト、免疫刺激性ポリヌクレオチド(例えばCPG)、免疫刺激性脂質、フロイントアジュバント、RIBIアジュバント、QS-21、ムラミルジペプチド、TiterMax、Steviune、Stimune、またはそれらのあらゆる組合せであるか、またはそれを含む、項目29に記載の方法。
【0137】
31.項目29または30に記載の方法によって生産された、および/または項目1~28のいずれか一項に記載のネオ複合糖質、ならびに医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含む、ネオ複合糖質ワクチンまたは適応免疫応答を誘発する組成物。
【0138】
32.予防ワクチンまたは治療ワクチン(例えば、腫瘍関連の炭水化物抗原を発現するがん、例えば乳がん、前立腺がん、胃がん、B細胞リンパ腫、結腸がん、肺がん、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、肉腫、小細胞肺がんに対する;または炭水化物抗原を発現するウイルスもしくは細菌に対する)である、項目31に記載のネオ複合糖質ワクチン。
【0139】
33.対象を免疫化する、それにワクチン接種をする、またはそれを処置する方法であって、項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質、項目26~28のいずれか一項に記載の合成ネオ複合糖質、項目29または30に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または項目31または32に記載のネオ複合糖質ワクチンを対象に投与することを含む、上記方法。
【0140】
34.疾患(例えば、腫瘍関連の炭水化物抗原を発現するがん、例えば乳がん、前立腺がん、胃がん、B細胞リンパ腫、結腸がん、肺がん、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、肉腫、小細胞肺がん;または炭水化物抗原を発現するウイルスもしくは細菌)を有する対象を免疫化すること、それにワクチン接種をすること、またはそれを処置することにおける使用のための、またはネオ複合糖質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための、または前記免疫化、ワクチン接種、または処置を検出するための(例えば、対象からの生物学的サンプルにおいて)、項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質、項目26~28のいずれか一項に記載の合成ネオ複合糖質、項目29または30に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または項目31または32に記載のネオ複合糖質ワクチン。
【0141】
35.疾患(例えば、腫瘍関連の炭水化物抗原を発現するがん、例えば乳がん、前立腺がん、胃がん、B細胞リンパ腫、結腸がん、肺がん、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、肉腫、小細胞肺がん;または炭水化物抗原を発現するウイルスもしくは細菌)を有する対象を免疫化する、それにワクチン接種をする、またはそれを処置するための、またはネオ複合糖質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための、または前記免疫化、ワクチン接種、または処置を検出するための(例えば、対象からの生物学的サンプルにおいて)、項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質、項目26~28のいずれか一項に記載の合成ネオ複合糖質、項目29または30に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または項目31または32に記載のネオ複合糖質ワクチンの使用。
【0142】
36.疾患(例えば、腫瘍関連の炭水化物抗原を発現するがん、例えば乳がん、前立腺がん、胃がん、B細胞リンパ腫、結腸がん、肺がん、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、肉腫、小細胞肺がん;または炭水化物抗原を発現するウイルスもしくは細菌)を有する対象を免疫化または処置するための、またはネオ複合糖質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための、または前記免疫化または処置を検出するための(例えば、対象からの生物学的サンプルにおいて)ワクチンの製造のための、項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質、項目26~28のいずれか一項に記載の合成ネオ複合糖質、項目29または30に記載の方法によって生産された適応免疫応答を誘発する組成物の使用。
【0143】
37.前記炭水化物抗原の増加した発現に関連する疾患(例えば、乳がん、前立腺がん、胃がん、B細胞リンパ腫、結腸がん、肺がん、黒色腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、肉腫、小細胞肺がんなどのがん;または炭水化物抗原を発現するウイルスもしくは細菌)を有する対象の処置のための、項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質、項目26~28のいずれか一項に記載の合成ネオ複合糖質、項目29または30に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または項目31または32に記載のネオ複合糖質ワクチンの使用。
【0144】
38.ネオ複合糖質に特異的に結合する抗体を生産するための、またはネオ複合糖質免疫原に特異的に結合する抗体を検出するための、項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質、項目26~28のいずれか一項に記載の合成ネオ複合糖質、項目29または30に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または項目31または32に記載のネオ複合糖質ワクチンの使用。
【0145】
39.炭水化物抗原または炭水化物抗原を含む腫瘍を循環する細胞に特異的に結合する抗体の存在を検出するかもしくはそれに関してスクリーニングするための、または炭水化物抗原での免疫化またはワクチン接種によって生じる抗体の存在を検出するための、項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質、項目26~28のいずれか一項に記載の合成ネオ複合糖質、項目29または30に記載の方法によって生産されたネオ複合糖質ワクチンもしくは適応免疫応答を誘発する組成物、または項目31または32に記載のネオ複合糖質ワクチンの使用。
【0146】
40.検出またはスクリーニングが、免疫吸着測定法、ELISA、マイクロアレイ、または免疫ブロット分析などのあらゆる好適な検出方法を介して実行される、項目39に記載の使用。
【0147】
41.対象を処置する方法であって、いずれかの前記項目で規定された、またはいずれかの前記項目で規定された方法によって生産されたネオ複合糖質またはネオ複合糖質免疫原を投与して、炭水化物抗原に対して前記対象における免疫応答を生じさせること、および任意選択で、前記対象からの生物学的サンプルを、炭水化物抗原に特異的に結合する抗体の存在に関してスクリーニングすることを含む、上記方法。
【0148】
42.SARS-CoV-2に対して対象を免疫化することにおける使用のための、対象における抗SARS-CoV-2抗体の生産を誘発することにおける使用のための、または対象からのサンプルにおいて抗SARS-CoV-2抗体の存在を検出することにおける使用のための複合糖質であって、複合糖質は、好適な担体材料(例えば、担体タンパク質またはペプチド)にコンジュゲートした炭水化物抗原を含み、炭水化物抗原が、シアル化されたトムゼン-フリーデンライヒ(TF)抗原、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含むかまたはそれからなる、上記複合糖質。
【0149】
43.炭水化物抗原が、シアル化されたTF抗原(例えば、(2,3)-S-TFおよび/またはジシアリルコア1)を含むかまたはそれからなる、項目42に記載の使用のための複合糖質。
【0150】
44.炭水化物抗原が、Tn(例えば、シアル化されたおよび/またはシアル化されていないTn)を含むかまたはそれからなる、項目42または43に記載の使用のための複合糖質。
【0151】
45.担体材料が、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープであるペプチドを含む、項目42~44のいずれか一項に記載の使用のための複合糖質。
【0152】
46.炭水化物抗原が、配列番号3のペプチドの4および/もしくは6位に、または4および/もしくは6位にシステインまたはリシンを含む配列番号3のペプチドのバリアントに共有結合でコンジュゲートしている、項目42~45のいずれか一項に記載の使用のための複合糖質。
【0153】
47.配列番号3のペプチドまたはペプチドバリアントが、担体材料に含まれるかまたはそれに融合している、項目46に記載の使用のための複合糖質。
【0154】
48.担体材料が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌プロテインD(HiD)、ウイルス様粒子(VLP)、サイトカイン、免疫原性ペプチド、例えば破傷風毒素831~844(配列番号1または2)、アルブミン(例えばウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、またはそれらの免疫原性断片であるか、それ由来であるか、またはそれを含む、項目42~47のいずれか一項に記載の使用のための複合糖質。
【0155】
49.複合糖質が、(i)項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって、またはそこで規定された通りに生産されたネオ複合糖質;(ii)項目24または25に記載のネオ炭水化物抗原;(iii)項目27または28に記載の合成ネオ複合糖質;または(iv)項目29または30に記載の方法で規定された、もしくはそれによって生産された、または項目31または32で規定された、ネオ複合糖質ワクチンまたは適応免疫応答を誘発する組成物である、項目42~48のいずれか一項に記載の複合糖質。
【0156】
50.(a)末端のアルケンに共有結合で連結された水溶性炭水化物抗原(アルケニル炭水化物抗原)を提供するステップであって、末端のアルケンは、チオール-エン反応を介して、チオール基に直接コンジュゲート可能であり、アルケニル炭水化物抗原は、保護されていない水溶性アルケニル炭水化物抗原である、ステップ;(b)1つまたはそれより多くの遊離チオール基を有する担体材料を提供するステップ;および(c)光触媒作用によるチオール-エン反応を実行して、1つまたはそれより多くの遊離チオール基で、炭水化物抗原を材料に直接コンジュゲートし、それによって複合糖質を生産するステップを含む方法によって生産される、項目42~48のいずれか一項に記載の複合糖質。
【0157】
51.前記光触媒作用によるチオール-エン反応が、担体材料の変性を回避する、および/または担体材料の活性、抗原性、および/または構造を保持する反応条件下で実行され;光触媒作用によるチオール-エン反応が、いずれの有機溶媒の非存在下で実行されるか、または光触媒作用によるチオール-エン反応が、担体材料の変性を回避する程度に低い濃度での有機溶媒の存在下で実行され;前記光触媒作用によるチオール-エン反応が、触媒の存在下で実行され、触媒は、水溶性触媒、例えば水溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(Vazo 44またはVA-044);2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH);リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP);光開始剤活性を有する金属または金属イオン;過酸化物;tert-ブチルヒドロペルオキシド;過酸化ベンゾイル;過硫酸アンモニウム;もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体;または水不溶性触媒、例えば水不溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ACHN)、ジアゼンジカルボン酸ビス(N,N-ジメチルアミド)(TMAD);アゾジカルボン酸ジピペリジド(ADD)、もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体であり;光触媒作用によるチオール-エン反応が、紫外光下での放射線照射を含み;前記光触媒作用によるチオール-エン反応が、担体材料の遊離チオール基1つ当たり1~200モル当量のアルケニル炭水化物抗原を反応させることを含み;および/または前記光触媒作用によるチオール-エン反応が、10~300、10~270、10~240、10~210、10~180、10~150、10~120、10~90、10~60、もしくは10~30分、および/または担体材料中の総遊離チオール濃度における少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50分の1の低減を達成するのに十分な時間にわたり実行され;光触媒作用によるチオール-エン反応が、担体材料の変性を回避するpHで実行され;光触媒作用によるチオール-エン反応が、担体材料へのコンジュゲーションの後、対象の内因性酵素によって担体材料から切断不可能な炭水化物抗原を生産し;アルケニル炭水化物抗原が、末端のアルケンに共有結合で連結されており、および/または炭水化物抗原が、アリルアミンと還元糖との間で、O-グリコシド結合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または還元的アミノ化により得られた結合を介して、担体材料にコンジュゲートされており;光触媒作用によるチオール-エン反応が、1つより多くのタイプの炭水化物抗原を担体材料にコンジュゲートし;(a)における炭水化物抗原は、リンカーを介して末端のアルケンに連結されており;および/または工程(b)で提供された担体材料が、である:(i)1つまたはそれより多くの遊離チオール基を有する1つまたはそれより多くのシステイン残基を含む担体材料、(ii)担体材料の溶媒が接近可能な位置に1つまたはそれより多くのさらなるシステイン残基を付加するように操作された担体材料;(iii)チオール化剤で処理された担体材料;(iv)還元剤で処理された担体材料;または(v)(i)~(iv)のあらゆる組合せである、項目50に記載の複合糖質。
【0158】
52.(a)構造:
【0159】
【化8】
(式中、CAは、炭水化物抗原であり;S-CMは、コンジュゲーションに利用可能なz個の硫黄原子を有する担体材料であり、zは、少なくとも1であり;Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;R1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeである)
を有する合成複合糖質もしくはその立体異性体;または
(b)構造:
【0160】
【化9】
(式中、CAは、炭水化物抗原であり;S-CMは、コンジュゲーションに利用可能なz個の硫黄原子を有する担体材料であり、zは、少なくとも1であり;Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeであり;qは、1、2、3、4、または5であり;R
3およびR
4は、それぞれ水素原子であり、mは、1、2、3、4または5であるか、またはR
3およびR
4は一緒に、カルボニルが窒素原子に連結されたラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1である)
を有する合成複合糖質もしくはその立体異性体;または
(c)構造:
【0161】
【化10】
(式中、CAは、炭水化物抗原であり;yは、少なくとも1であり;yが1より大きい場合、CAは、同一であるかまたは異なっており;[S]
z-CMは、コンジュゲーションに利用可能なz個の硫黄原子を有する担体材料であり、zは、少なくともyに等しく;Lは、構造:
【0162】
【化11】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;R
1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeであり;yが1より大きい場合、Lは、同一であるかまたは異なっている)
を有する合成複合糖質もしくはその立体異性体;または
(d)構造:
【0163】
【化12】
(式中、CAは、炭水化物抗原であり;yは、少なくとも1であり;yが1より大きい場合、CAは、同一であるかまたは異なっており;S-CMは、コンジュゲーションに利用可能なz個の硫黄原子を有する担体材料であり、zは、少なくとも1であり、少なくともyに等しく;Lは、構造:
【0164】
【化13】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeであり;qは、1、2、3、4、または5であり;R
3およびR
4は、それぞれ水素原子であり、mは、1、2、3、4または5であるか、またはR
3およびR
4は一緒に、カルボニルが窒素原子に連結されたラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1であり;yが1より大きい場合、Lは、同一であるかまたは異なっている)
を有する合成複合糖質もしくはその立体異性体;または
(e)構造:
【0165】
【化14】
(式中、CAは、炭水化物抗原であり;yは、少なくとも1であり;yが1より大きい場合、CAは、同一であるかまたは異なっており;[S]
z-CMは、コンジュゲーションに利用可能なz個の硫黄原子を有する担体材料であり、zは、少なくともyに等しく;Lは、構造:
【0166】
【化15】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeであり;qは、1、2、3、4、または5であり;rは、1、2、3、4または5であり;R
5は、S-CM、共有結合、または構造:
【0167】
【化16】
のラジカルであり、R
3およびR
4は、それぞれ水素原子であり、mは、1、2、3、4または5であるか、またはR
3およびR
4は一緒に、カルボニルが窒素原子に連結されたラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1であり;yが1より大きい場合、Lは、同一であるかまたは異なっている)
を有する合成複合糖質またはその立体異性体
である、項目42~48のいずれか一項に記載の複合糖質。
【0168】
53.
- (e)で規定された構造を有し、リンカーが、構造:
【0169】
【化17】
(式中、Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeであり;qは、1、2、3、4、または5であり;rは、1、2、3、4または5である)
を有するか;
- (e)で規定された構造を有し、リンカーが、構造:
【0170】
【化18】
(式中、Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;nは、0、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeであり;qは、1、2、3、4、または5であり;rは、1または2である)
を有するか;
- 担体材料が、光触媒作用によるチオール-エン反応を介した炭水化物抗原へのコンジュゲーションに好適な、ポリマー、ポリペプチド、担体タンパク質、固体支持体、粒子、または少なくとも1つまたはそれより多くの遊離チオール基を有する他のあらゆる材料であるか、またはそれを含むか;
- コンジュゲート材料が、同じ炭水化物抗原の少なくとも2つに、または1つより多くのタイプの炭水化物抗原にカップリングされ、それによって、多価性の合成複合糖質が生産されるか;
- 炭水化物抗原が、対象の内因性酵素によって担体タンパク質から切断不可能であるか;または
- それらのあらゆる組合せである、項目52に記載の複合糖質。
【0171】
54.項目42~53のいずれか一項に記載の1種またはそれより多くの複合糖質、ならびに医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含むSARS-CoV-2ワクチン。
【0172】
55.少なくとも2つの異なる複合糖質を含み、各複合糖質は、シアル化されたTF抗原(モノまたはジシアル化されたTF抗原)、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、およびシアル化されていないTn抗原から選択される少なくとも2つの異なる炭水化物抗原にコンジュゲートした担体材料を含む、項目54に記載のSARS-CoV-2ワクチン。
【0173】
56.複合糖質またはワクチンが、SARS-CoV-2ビリオン粒子に結合する抗体の生産を誘導し、好ましくは中和活性を有する、項目42~53のいずれか一項に記載の複合糖質、または項目54もしくは55に記載のSARS-CoV-2ワクチン。
【0174】
57.対象にSARS-CoV-2に対するワクチン接種をするための方法または対象において抗SARS-CoV-2抗体の生産を誘発するための方法であって、項目42~53または56のいずれか一項に記載の複合糖質、または項目54~56のいずれか一項に記載のSARS-CoV-2ワクチンを投与することを含む、上記方法。
【0175】
58.SARS-CoV-2ウイルスによる感染から対象を防御するための、またはCOVID-19を処置するための組成物であって、SARS-CoV-2Sタンパク質上に発現されたO結合型グリカンに結合する1種またはそれより多くのリガンド(例えば、抗体、抗体断片、またはレクチン)を含み、O結合型グリカンは、シアル化されたTF抗原(モノまたはジシアル化されたTF抗原)、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含む、上記組成物。
【0176】
59.1つまたはそれより多くのリガンドが、組換えモノクローナル抗体(例えば、JAA-F11またはヒト化JAA-F11)を含む、項目58に記載の使用のための組成物。
【0177】
60.1つまたはそれより多くのリガンドが、レクチン(例えば、シアル化されたおよびシアル化されていないTF抗原の形態の両方に結合するもの)を含む、項目58に記載の使用のための組成物。
【0178】
61.レクチンが、ジャカリンであるか、またはジャカリン関連のレクチンである、項目58~60のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【0179】
62.鼻腔内用組成物として製剤化される、項目58~61のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【0180】
63.(a)シアル化されたTF抗原(モノまたはジシアル化されたTF抗原)、シアル化されていないTF抗原、シアル化されたTn抗原、シアル化されていないTn抗原、またはそれらのあらゆる組合せを含む、O結合型グリカンを発現するSARS-CoV-2Sタンパク質またはその断片;および(b)O結合型グリカンにおいてSARS-CoV-2Sタンパク質またはその断片に結合する、項目58~61のいずれか一項に記載のリガンドを含む複合体。
【0181】
64.SARS-CoV-2Sタンパク質またはその断片が、無傷のSARS-CoV-2ビリオン粒子に含まれる、項目63に記載の複合体。
【実施例】
【0182】
実施例1:一般的な方法
反応を、アルゴン雰囲気下で、商業的に入手可能なHPLCグレードの試薬を使用して行った。商業的に入手可能な試薬(Sigma Aldrich)をそれ以上精製せずに使用した。N-アセチル-D-ガラクトサミンおよびN-アセチルノイラミン酸は、ローズ・サイエンティフィック社(Rose Scientific Ltd.、アルバータ、カナダ)から提供された。Fmoc-β-Ala-Wang樹脂およびFmocアミノ酸は、ペプチド・テクノロジー社(Peptide Technologies Ltd、ピエールフォン、ケベック州、カナダ)から商業的に入手可能であった。反応の進行を、シリカゲル60 F254でコーティングされたプレート(E. Merck)を使用した薄層クロマトグラフィーによってモニターした。クリックチオール-エン光化学反応によるコンジュゲーションを、2つの手持ち式のUV365nmランプ(UV-ACハンドランプ、二重の254/365nmのUV;115V-60Hz、0.16amp、VWRカナダ(VWR Canada)、カタログ番号89131-492)の間に置いた石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー・サイエンティフィック・カナダ(Fisher Scientific Canada)、カタログ番号14-958-130)中で行った。フラッシュクロマトグラフィーを、カナディアンライフサイエンス(Canadian Life Science)からのZEOprep(商標)シリカゲル60(40~63μm)を使用して実行した。検出を、紫外線下で、または20%硫酸またはモリブデン酸塩またはKMnO4のエタノール溶液を噴霧し、続いて加熱することによって行った。NMRスペクトルを、ブルカー(Bruker)のULTRASHIELD(商標)300MHzおよびブルカーのAvance(商標)III HD600MHz分光計で記録した。プロトンおよび炭素化学シフト(δ)は、7.26ppm(1H)および77.16ppm(13C)に設定された残留したCHCl3の化学シフトに対するppmで報告される。結合定数(J)は、ヘルツ(Hz)で報告され、ピーク多重度に関しては以下の略語が使用される:シングレット(s)、ダブレット(d)、ダブレットのダブレット(dd)、等しい結合定数のダブレットのダブレット(tap)、トリプレット(t)、マルチプレット(m)。分析および割り当てを、COSY(相関分光法)およびHSQC(異核単一量子干渉)実験を使用して作製した。高分解能質量スペクトル(HRMS)を、UQAMの分析プラットフォームによって、ポジティブおよび/またはネガティブエレクトロスプレーモードで、アジレント・テクノロジーズ(Agilent technologies)からのLC-MS-TOF(液体クロマトグラフィー飛行時間型質量分析)機器を用いて、測定した。実験式の確認のために、プロトン化イオン(M+H)+またはナトリウム付加物(M+Na)+のいずれかを使用した。天然のTTおよびTT-コンジュゲートを、2000KDaのベンゾイル化された透析管(シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(オンタリオ州、カナダ)を使用して透析した。天然およびコンジュゲートしたTTの両方のチオール含量を、412nmでのエルマン試験によって決定した(Ellman, G. L. Arch. Biochem. Biophys.1959、82、70~77)。TT-コンジュゲートの全糖含量を、UV/VIS分光分析による492nmで測定された比色デュボア試験によって決定した(Dubois, M.; Gilles, K. A.; Hamilton, J. K.; Rebers, P. A.; Smith, F. Colorimetric Method for Determination of Sugars and Related Substances. Anal. Chem.、1956、28、350~356)。動的光散乱法(DLS)、粒度分布を、マルバーン(Malvern)からのゼータサイザーナノS90(Zetasizer Nano S90)を使用して、PBS中で測定した。マウスモノクローナルIgG3抗体JAA-F11を、これまでにRittenhouse-Diakunら、1998に記載されたようにして生産した。
【0183】
一般的な固相ペプチド合成(SPPS)手順
固相ペプチド合成(SPPS)の手順は、文献の手順(Papadopoulosら、2012)に従い、Fmoc-β-Ala-Wang樹脂(650mg、0.34mmol、1.0当量;100~200メッシュ、ローディング=0.52mmol/g)から開始した。反応を、Econo-Pac使い捨てカラム1.5×14cm(20mL)(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(Bio-Rad Laboratories)、オンタリオ州、カナダ)での回転撹拌によって実行した。樹脂を、1時間の間にCH2Cl2で膨潤させ、次いでろ過し、i1の間にDMFで再び調整した。市販の樹脂またはアミノ酸のFmoc保護基を、DMF中の20%ピペリジン溶液(5mL、2×5分、次いで1×10分)を用いて除去した。溶媒および試薬をろ過によって除去し、樹脂を、DMF、CH2Cl2およびMeOHで洗浄した(各溶媒で3回)。遊離のアミノ基の存在を、カイザー試験またはTNBS試験によって検証した。樹脂上の遊離アミンを、DMF中の、予め活性化させたFmocアミノ酸:3当量のアミノ酸、3当量のHBTU(N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート)および触媒的な量のHOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)の溶液で、4℃で(10分)処理した。次いでDIPEA(ジイソプロピルアミン、9当量)を混合物に添加し、室温で1時間30分撹拌した。カップリングの完了を、カイザーまたはTNBS比色試験を使用して決定した。ろ過の後、樹脂を洗浄し、Fmoc除去手順を再び繰り返した。合成配列の末端における最後の遊離アミンをアセチル化によってキャッピングした(1:1:8のAc2O/DIPEA/DMF、1時間)。ろ過の後、溶液を流して除去し、樹脂を真空中で乾燥させ、切断を、トリフルオロ酢酸/水/エタンジチオール/トリイソプロピルシラン(triisopropysilane)(94.0/2.5/2.5/1.0)を3時間使用して行った。得られたペプチドをメチルtert-ブチルエーテルで沈殿させ、遠心分離(20分、2000rpm、3回)によって樹脂ビーズから単離した。沈殿をエアジェット流を用いて慎重に乾燥させた。粗製ペプチドをH2O中で可溶化して、それを樹脂から分離した。次いで溶液を凍結乾燥して、望ましいペプチドを得た。
【0184】
破傷風トキソイド単量体の精製
破傷風トキソイド(TT)単量体を、コンジュゲーションの前にゲルろ過クロマトグラフィーによって得た。4.5mg/mlタンパク質(改変ローリータンパク質アッセイによって決定した場合)を含有する1ミリリットルの液体調製物を、PBS(20mMのNaHPO4[pH7.2]、150mMのNaCl)で平衡化したSuperdex(登録商標)200Prepグレード(GEヘルスケア・ライフサイエンス(GE Healthcare Life Sciences)、ウプサラ、スウェーデン)で充填したXK16-100カラムにローディングし、同じ緩衝液で溶出させた。タンパク質が2つのピークでカラムから溶出した:先に溶出したピークは、オリゴマー化したトキソイドを含有し、後に溶出した150,000のMrに相当するピークは、TT単量体を含有していた。後の(単量体)ピークに対応する画分をプールし、脱イオン水に対して脱塩し、Centricon(登録商標)プラス-70遠心フィルターデバイス(30KのUltracel PLメンブレン;ミリポア(Millipore)、マサチューセッツ州ビレリカ)を使用して濃縮し、次いで凍結乾燥した。
【0185】
複合糖質のHPLC分析
アリルネオ複合糖質調製物のHPLC分析を、サイズ排除クロマトグラフィーによって行った。クロマトグラフ分離を、SB-807Gガードカラム(昭和電工)が先行する直列に連結された3つの8mm×300mmのShodex OHpakゲルろ過カラム(2つのSB-804および1つのSB-803)で実行した。ネオ複合糖質免疫原を、0.4mL/分の流速で、280nmの波長で示差屈折計(RI)検出器モデル2300およびUV検出器モデル2600を備えたクナウアー・スマートライン(Knauer Smartline)システムを使用して、0.1MのNaNO3で溶出させた。コンジュゲート調製物(移動相中の8mg/mL溶液)を、50-μΛの注入ループを使用して注入した。選択された実験において、空隙容量に溶出した画分は、コンジュゲート画分に相当し、これをプールし、スペクトラ/ポア(Spectra/Por);分子量カットオフ(MWCO)、12,000~14,000[スペクトラム・ラボラトリーズ(Spectrum Laboratories)])を用いて水に対して透析し、凍結乾燥した。これは、2:1の分画されたコンジュゲートに相当する。
【0186】
実施例2:アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)
【0187】
【化19】
図2を参照すると、塩化アセチル(2.76mL、38.80mmol、3.43当量)を、アルゴン雰囲気下で、0℃で、アリルアルコール(20.8mL)に一滴ずつ添加した。室温で、N-アセチル-D-グルコサミン(化合物1)(2.50g、11.3mmol、1.00当量)を添加した。反応混合物を70℃で3時間撹拌し、次いでpH7まで固体NaHCO
3を添加することによってクエンチした。懸濁液をセライトのパッドに通過させてろ過し、MeOHで数回洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、粗製アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-D-グルコサミンをEt
2O/エタノールでの粉砕によって沈殿させた。次いで粉砕の後に溶媒を減圧下で数回除去した。次いで、乾燥ジクロロメタン-ピリジン(45mL、v/v、1:2)の混合物中の粗製アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド中間体の懸濁液に、窒素雰囲気下で、-15℃で、塩化ピバロイル(3.90mL、31.64mmol、2.80当量)をを一滴ずつ添加した。反応混合物を2時間撹拌し、室温に温めて、望ましいα-アノマー(化合物2)(Rf=0.32)を一部のβ-アノマー(Rf=0.18)と共に得た;1:1のヘキサン/EtOAc)。次いで混合物をCH
2Cl
2で希釈し、有機相を、HCl(1M)で数回、飽和KHSO
4水溶液、飽和NaHCO
3溶液、およびブラインで連続的に洗浄した。有機相をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させた。黄色がかった油状物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(6:4~1:1のヘキサン-EtOAc)で精製して、望ましい化合物アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)を白色の固体として得た(4.85g、6.78mmol、60%)。Rf=0.32;ヘキサン/EtOAc 1:1;
図3Aおよび3B:
1H NMR (CDCl
3, 600 MHz): δ 5.87 (dddd, 1H, J
H,H = 16.8, 10.5, 6.2, 5.3 Hz, OCH
2CH=CH
2), 5.77 (d, 1H, J
NH,H2 = 9.7 Hz, NH), 5.31-5.25 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.22 (dd, 1H, J
H,H = 10.4, 1.3 Hz, OCH
2CH=CH
2), 5.09 (dd, 1H, J
3,4 = 10.7, J
2,3 = 9.3 Hz, H-3), 4.83 (d, 1H, J
1,2 = 3.7 Hz, H-1), 4.39 (m, 1H, H-6a), 4.35-4.25 (m, 2H, H-6bおよびH-2), 4.19 (m, 1H, OCH
2), 4.02-3.93 (m, 1H, OCH
2), 3.85 (m, 1H, H-5), 3.59-3.48 (m, 1H, H-4), 3.03 (d, 1H, J
4,OH = 5.1 Hz, OH-4), 1.93 (s, 3H, NHCOCH
3), 1.23 (s, 9H, tert-ブチル)および1.19 ppm (s, 9H, tert-ブチル);
13C NMR (CDCl
3,
150 MHz): δ 179.8, 179.1 (tert-BuCO), 169.7 (NHCO), 133.2 (OCH
2CH=CH
2), 118.1 (OCH
2CH=CH
2), 96.4 (C-1), 73.4 (C-3), 70.5 (C-5), 69.1 (C-4). 68.2 (OCH
2), 63.1 (C-6), 51.4 (C-2), 39.0, 38.9 (2×C(CH
3)
3), 27.2, 27.0 (2×C(CH
3)
3)および23.2 ppm (CH
3)。
図3Cおよび3D:ESI
+-HRMS: [M+H]
+ C
21H
36O
8Nの計算値、430.2435;実測値、430.2445。β-アノマーを白色の固体として単離した(971mg、2.26mmol、20%)。Rf=0.18;1:1のヘキサン/EtOAc;
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): δ 6.00 (d, 1H, J
NH,H2=9.3 Hz, NH), 5.95-5.75 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.35-5.03 (m, 3H, OCH
2CH=CH
2およびH-3), 4.55 (d, 1H, J
1,2=8.4 Hz, H-1), 4.47-425 (m, 3H, H-6a, 6bおよびOCH
2), 4.14-3.90 (m, 2H, OCH
2およびH-2), 3.65-3.43 (m, 2H, H-5およびH-4), 3.23 (sb, 1H, OH-4), 1.92 (s, 3H, NHCOCH
3), 1.23 (s, 9H, tert-ブチル)および1.20 ppm (s, 9H, tert-ブチル)。
【0188】
実施例3:アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)
【0189】
【化20】
図2を参照すると、乾燥ジクロロメタン-ピリジン(126mL、20:1v/v)の混合物中のジO-ピバロイル化合物(化合物2)(5.50g、12.80mmol、1.0当量)をアルゴン雰囲気下で-35℃に冷却した。次いでトリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.58mL、15.36mmol、1.2当量)を添加し、混合物をこの温度で撹拌した。温度を2時間にわたり室温に温めた。次いでこの溶液に水(12mL)を添加した。混合物を加熱し、一晩(12時間)還流しながら(約50℃)撹拌した。室温に到達した後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、1MのHCl水溶液で数回洗浄した。有機層を、H
2O、飽和NaHCO
3、およびブラインで洗浄した。有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させた。粗生成物をZemplen条件下(メタノール中の1Mナトリウムメトキシド溶液、40mL、pH9)で処理した。溶液を50℃で一晩撹拌した。室温に冷却した後、溶液をイオン交換樹脂(Amberlite(登録商標)IR120、H
+)への添加によって中和し、ろ過し、MeOHで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。凍結乾燥の後、アリルT
Nを、MeOH/EtOAc/ヘキサン中での沈殿によって白色の固体として単離した(2.36g、9.10mmol、71%)。Rf=0.32;4:1のEtOAc/MeOH;
図4Aおよび4B:
1H NMR(CD
3OD, 600 MHz): δ 5.99-5.88 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.31 (dd, 1H, J
trans=17.3, J
gem=1.3 Hz, OCH
2CH=CH
2), 5.17 (dd, 1H, J
cis=10.5 Hz, OCH
2CH=CH
2), 4.86 (d, 1H, J
1,2=3.8 Hz, H-1), 4.27 (dd, 1H, J
2,3=11.0 Hz, H-2), 4.20 (m, 1H, OCH
2), 4.00 (m, 1H, OCH
2), 3.89 (dd, J
3,4=J
4,5=2.6 Hz, H-4), 3.85-3.77 (m, 2H, H-3およびH-5), 3.72 (m, 2H, H-6aおよびH-6b)および1.99 ppm (s, 3H, CH
3);
13C NMR(CD
3OD, 150 MHz): δ 172.5 (NHCO), 134.2 (OCH
2CH=CH
2), 116.1 (OCH
2CH=CH
2), 96.6 (C-1), 71.2 (C-3), 69.0 (C-4), 68.3 (C-5)。67.8 (OCH
2), 61.4 (C-6), 50.2 (C-2)および21.2 ppm (CH
3)。
図4Cおよび4D:ESI
+-HRMS:[M+H]
+ C
11H
20O
6Nの計算値、262.1285;実測値、262.1294。
【0190】
手順B:アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシドは、文献の手順に従ってN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)から直接調製することもできる(Fengら、2004)。アリルアルコール(8mL)中のN-アセチルガラクトサミン(442mg、2mmol、1.0当量)の溶液に、BF3.Et2O(250μL、2mmol、1.0当量)を室温で添加し、混合物を70℃で2時間撹拌した。溶液を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。乾燥粗生成物を最小限のEtOH(5mL)に溶解させた。望ましいアリルTN生成物をジイソプロピルエーテル中で沈殿させ、白色の固体として単離した(417mg、1.60mmol、80%)。
【0191】
C-アリルGalNAcアナログ(
図2)[1-(2’-アセトアミド-2’-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)-2-プロペン]を、文献の手順に従って調製した(Cipollaら、2000)。3-(2-アセトアミド-3,4,6-トリ-O-アセチル-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)-1-プロペン(Cuiら、1998)(371mg、1.00mmol、1.0当量)をZemplen条件下で(メタノール中の1Mナトリウムメトキシド溶液、5mL、pH8~9)処理した。溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物をイオン交換樹脂(Amberlite(登録商標)IR120、H
+)への添加によって中和し、ろ過し、MeOHで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。C-アリルT
Nをシリカゲルでのクロマトグラフィー(9:1~4:1のEtOAc/MeOH)によって精製し、続いてEtOH中で白色の固体として結晶化した(213mg、0.87mmol、87%)。Rf=0.28;EtOH 4:1;mp 230℃(文献値215~217℃、EtOAc/EtOH);文献のNMRデータに従って:
1H NMR(CD
3OD, 600 MHz): δ 5.81 (m, 1H,
1CH
2CH=CH
2), 5.08 (dd, 1H, J
trans=17.2, J
gem=1.7 Hz,
1CH
2CH=CH
2), 5.02 (dd, 1H, J
cis=10.2 Hz,
1CH
2CH=CH
2), 4.22 (dd, 1H, J=9.3、5.0 Hz, H-2’), 4.14 (dt, 1H, J=10.0、5.0 Hz, H-1’), 3.91 (dd, 1H, J=3.0 Hz, H-4’), 3.82-3.64 (m, 4H, H-3’, H-5’およびH-6’ab), 2.45 (m, 1H, H-1a), 3.17 (m, 1H, H-1b)および1.97 ppm (s, CH
3);
13C NMR(CD
3OD, 150 MHz): δ 173.6 (NHCO), 136.2 (
1CH
2CH=CH
2), 117.1 (
1CH
2CH=CH
2), 72.9 (C-1’), 69.7 (C-4’), 69.5 (C-3’およびC-5’), 61.8 (C-6’), 52.0 (C-2’), 32.4 (
1CH
2)および22.5 ppm (CH
3)。ESI
+-LCMS: [M+H]
+ C
11H
20O
5Nの計算値、246.1336;実測値、246.1332; CAN/H
2O 5~95% 1.4分。
【0192】
S-アリルGalNAcアナログ(
図2)を文献に従って調製した:Knappら、2002。
【0193】
実施例4:アリル2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物4)
【0194】
【化21】
図2を参照すると、乾燥DMF(20mL)中のアリルGalNAc(Tn)(2.35g、9.0mmol、1.0当量)およびベンズアルデヒドジメチルアセタール(6.75mL、45.0mmol、5.0当量)の溶液に、触媒的な量のp-トルエンスルホン酸一水和物を添加した。混合物を室温で撹拌した。5時間後、混合物をCHCl
3で希釈し、飽和NaHCO
3水溶液で洗浄した。有機層を分離し、水で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮して、白色の固体を得た。ベンジリデンアセタール(化合物4)を、EtOAc/ヘキサン中での沈殿によって白色の固体として単離した(2.64g、7.56、84%)。Rf=0.21;9.0:0.5のDCM/MeOH;
図5A:
1H NMR(CDCl
3, 300 MHz): δ 7.59-7.46 (m, 2H, H-ar), 7.43-7.31 (m, 3H, H-ar), 5.91 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.75 (d, 1H, J
NH,H2=9.0 Hz, NH), 5.58 (s, 1H, PhCH), 5.34-5.17 (m, 2H, OCH
2CH=CH
2), 5.01 (d, 1H, J
1,2=3.5 Hz, H-1), 4.56-4.42 (ddd, 1H, J
2,3=10.9 Hz, J
2,OH=9.1 Hz, H-2), 4.34 (dd, 1H, J
5,6a=1.5 Hz, J
6a,6b=12.5 Hz, H-6a), 4.19 (m, 2H, H-4およびOCH
2), 4.04 (m, 1H, dd, 1H, J
5,6b=1.6 Hz, J
6a,6b=12.5 Hz, H-6b), 4.01 (m, OCH
2), 3.86 (dd, 1H, J
3,4=10.9 Hz, H-3), 3.71 (sb, 1H, H-5), 2.80 (d, 1H, J
3,OH=10.7 Hz, OH-3)および2.05 ppm (s, 3H, CH
3);
図5Bおよび5C: ESI
+-HRMS: [M+H]
+C
18H
24O
6Nの計算値、350.1598;実測値、350.1608 。
【0195】
実施例5:アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)
【0196】
【化22】
図2を参照すると、化合物4(2.0g、5.72mmol、1.0当量)およびシアン化第二水銀(2.17g、8.60mmol、1.5当量)を、アルゴン雰囲気下で4Åの分子篩を含有する無水ニトロメタン-トルエン(100mL、3:2、v/v)の混合物中に溶解させた。混合物を室温で30分撹拌した。2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-α-D-ガラクトピラノシルブロミド(化合物5)(5.66g、8.58mmol、1.5当量)を混合物に添加した。溶液を70℃で5時間撹拌し、次いで室温で一晩(8時間)撹拌を維持した。TLC(9.0:0.5のDCM/MeOH)によって示されるように出発材料(化合物4)を全て消費した後、溶媒を減圧下で除去した。残留物をEtOAc中に溶解させ、続いてセライトのパッドを介してろ過した。ろ液を連続して10%ヨウ化カリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄し、次いでNa
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて、白色の発泡体を得た。粗生成物を、100%ヘキサンから1:2のヘキサン/EtOAcの勾配を使用したシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製して、望ましい二糖(化合物6)を白色の固体として得た(4.98、5.38mmol、94%)。mp:110~111℃、Rf=0.20;1:2のヘキサン/EtOAc;
図6Aおよび6B:
1H NMR(CDCl
3, 600 MHz): δ 8.06-7.19 (m, 5H, H-ar), 5.98 (dd, 1H, J
3,4’=3.3 Hz, J
4,5’=1.0 Hz, H-4
II), 5.85-5.78 (m, 2H, OCH
2CH=CH
2およびH-2
II), 5.60 (dd, 1H, J
2,3’=10.2 Hz, J
3,4’=3.4 Hz, H-3
II), 5.48 (sb, 1H, NH), 5.23 (m, 3H, OCH
2CH=CH
2およびH-1), 4.68 (dd, 1H, J
5’,6a’=6.9 Hz, J
6a’,6b’=11.4 Hz, H-6a
I), 4.63-4.58 (m, 1H, H-2), 4.46-4.36 (m, 3H, H-4.H-5およびH-6b
II), 4.14-4.07 (m, 3H, H-6a, OCH
2およびH-3), 3.96 (m, 1H, OCH
2), 3.75 (m, 1H, H-6b), 3.51 (m, 1H, H-5)および1.40 ppm (s, 3H, CH
3);
13C NMR(CDC
13, 150 MHz): δ 170.0 (NHCO), 166.0, 165.5, 165.4, 165.2 (CO), 137.6-126.2 (multi, 30 C-arom), 133.2 (OCH
2CH=CH
2), 117.8 (OCH
2CH=CH
2), 102.0 (C-1
II), 100.9 (CPhCH), 97,3 (C-1
I), 76.1 (C-3), 75.4 (C-4), 71.7 (C-3
IIおよびC-5
II), 70.2 (C-2
II), 69.1 (C-6), 68.6 (OCH
2), 68.1 (C-4
II), 62.9 (C-5), 62.6 (C-6
I), 48.2 (C-2)および22.5 ppm (CH
3)。
図6Cおよび6D: ESI
+-HRMS: [M+H]
+ C
52H
50O
15Nの計算値、928.3175;実測値、928.3133 。
【0197】
実施例6:アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)
【0198】
【化23】
図2を参照すると、メタノール中の1Mナトリウムメトキシド(12mL、pH8-9)中の化合物6の溶液(1.12g、1.20mmol、1.0当量)を、出発材料が消費されるまで室温で撹拌した。1時間30分後、溶液をイオン交換樹脂(Amberlite IR120、H
+)の添加によって中和し、ろ過し、MeOHで洗浄し、溶液をシリカゲルと共に懸濁し、ろ過し、溶媒を減圧下で除去した。シリカゲルを、100%EtOAcで数回洗浄し、続いて第2の溶液(1:1:0.1のEtOAc/MeOH/H
2O)で洗浄した。合わされたろ液を減圧下で蒸発させて、中間体(化合物7)を白色の固体として得た。Rf=0.20;11:6:1のCHCl
3/MeOH/H
2O;
図7Aおよび7B:
1H NMR(D
2O, 600 MHz): δ 7.47-7.39 (m, 2H, H-ar), 7.37-7.26 (m, 3H, H-ar), 5.82 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.61 (s, 1H, PhCH), 5.20-5.09 (m, 2H, OCH
2CH=CH
2), 4.88 (d, 1H, J
1,2=3.4 Hz, H-1), 4.47 (dd, H-4), 4.37-4.25 (m, 2H, H-2およびH-1
II), 4.13-3.98 (m, 4H, H-3, H-6a, H-6b, OCH
2), 3.96-3.88 (m, 1H, H-5), 4.56-4.42 (ddd, 1H, J
2,3=10.9 Hz, J
2,OH=9.1 Hz, H-2), 4.34 (dd, 1H, J
5,6a=1.5 Hz, J
6a,6b=12.5 Hz, H-6a), 4.19 (m, 2H, H-4 および OCH
2), 4.04 (m, 1H, dd, 1H, J
5,6b=1.6 Hz, J
6a,6b=12.5 Hz, H-6b), 4.01 (m, OCH
2), 3.86 (dd, 1H, J
3,4=10.9 Hz, H-3), 3.71 (sb, 1H, H-5), 2.80 (d, 1H, J
3,OH=10.7 Hz, OH-3)および2.05 ppm (s, 3H, CH
3); 3.83 (s, 1H, OCH
2), 3.72 (d, 1H, J
3’,4’=J
4’,5’=3.2 Hz, H-4
II), 3.65-3.55 (m, 2H, H-6a,b), 3.49, (m, 1H, H-5
II), 3.43 (dd, 1H, J
2’,3’=10.0 Hz, J
3’,4’=3.3 Hz, H-3
II), 3.33-3.24 (m, 1H, H-2
II)および1.86 ppm (s, 3H, CH
3);
13C NMR(D
2O, 150 MHz): δ 174.6 (NHCO), 136.8 (C-arom), 133.6 (OCH
2CH=CH
2), 129.9, 128.7, 126.5 (C-arom), 118.0 (OCH
2CH=CH
2), 104.9 (C-1
II), 101.3 (CHPh), 97.0 (C-1), 76.0 (C-4), 75.0 (C-3), 75.0 (C-5
II), 72.4 (C-3
II), 70.4 (C-2
II), 69.0 (C-6), 68.7 (OCH
2CH=CH
2), 68.6 (C-4
II), 63.0 (C-5), 61.0 (C-6
II), 48.6 (C-2)および22.0 ppm (CH
3)。Rf=0.38;EtOAc/MeOH/H
2O 7:3:0.1;Rf=0.46;ACN/MeOH/H
2O 7:2:1。
図7Cおよび7D: ESI
+-HRMS: [M+H]
+ C
24H
34O
11Nの計算値、512.2126;実測値、512.2119。
【0199】
次いで白色の固体中間体を、10mLの60%酢酸水溶液中に溶解させ、得られた溶液を60℃で1.5時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を凍結乾燥して、最終的なアリルTFを白色の固体として得た(427mg、1.0mmol、84%)。mp=230~232℃;Rf=0.53;11:6:1のCHCl
3/MeOH/H
2O;
図8Aおよび8B:
1H NMR(D
2O, 600 MHz): δ 5.80 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.19 (dd, 1H, J
trans=17.3 Hz, OCH
2CH=CH
2), 5.09 (dd, 1H, J
cis=10.4 Hz, OCH
2CH=CH
2), 4.77 (d, 1H, J
1,2=3.7 Hz, H-1), 4.29 (d, 1H, J
1,2=3.7 Hz, H-1), 4.29 (d, 1H, J
1,2=7.8 Hz, H-1
II), 4.16 (dd, 1H, J
2,3=11.2 Hz, J
1,2=3.7 Hz, H-2), 4.08-4.01 (m, 2H, H-4およびOCH
2), 3.92-3.82 (m, 3H, H-3, H-5およびOCH
2), 3.73 (dd, 1H, H-4
II), 3.63-3.52 (m, 4H, H-6a,bおよびH-6’a,b), 3.47 (m, 2H, H-3
IIおよびH-5
II), 3.39 (dd, 1H, J
2’,3’=10.0 Hz, J
1’,2’=7.7 Hz, H-2
II)および1.85 ppm (s, 3H, CH
3);
13C NMR(150 MHz, CDC
13): δ 174.6 (NHCO), 133.7 (OCH
2CH=CH
2), 117.9 (OCH
2CH=CH
2), 104.7 (C-1
II), 96.4 (C-1), 77.2 (C-3), 75.0 (C-5
II), 72.5 (C-3
II), 70.7 (C-5), 70.6 (C-2
II), 68.8 (C-4), 68.6 (C-4
II), 68.4 (OCH
2), 61.2 (C-6
II), 61.0 (C-6), 48.6 (C-2)および22.0 ppm (CH
3)。
図8Cおよび8D: ESI
+-HRMS: [M+Na]
+ C
17H
29O
11NNaの計算値、446.1633;実測値、446.1613。
【0200】
実施例7:3-{[3-(2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)オキシプロピル]チオ}プロパン酸(化合物8)
【0201】
【化24】
図9を参照すると、脱気したH
2O/MeOH(3mL、1:1、v/v)中のアリルTn(392mg、1.50mmol、1.0当量)および3-メルカプトプロピオン酸(392μL、4.50mmol、3.0当量)の溶液を、254nmの放射線照射下で、室温で一晩撹拌するか(A)、または365nmの放射線照射下で、DMPAP(23mg、0.03mmol、0.06当量)と共に15分撹拌した(B)。次いで混合物を減圧下でシリカゲルを用いて濃縮し、次いで勾配(100%のEtOAcから3:1:0.01のEtOAc/MeOH/AcOH)によるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、望ましい化合物8を白色の発泡体として得た(Aから:536mg、1.46mmol、97%);(Bから:82%)。
1H NMR(CD
3OD, 600 MHz): δ 4.82 (d, 1H, J=3.7 Hz, H-1), 4.25 (dd, 1H, J=11.0, 3.7 Hz, H-2), 3.89 (d, 1H, J=3.2 Hz, H-4), 3.85-3.72 (m, 5H, H-3, H-5, H-6a, H-6b, OCH
2), 3.49 (dt, 1H, J=10.0, 6.0 Hz, OCH
2), 2.77 (t, 2H, J=7.1 Hz, CH
2), 2.68 (t, 2H, J=7.2 Hz, CH
2), 2.58 (t, 2H, J=7.1 Hz, CH
2), 2.00 (s, 3H, CH
3), 1.95-1.83 (m, 2H, CH
2);
13C NMR(CD
3OD, 150 MHz): δ 174.6 (NHCO), 172.5 (CO), 97.5 (C-1), 71.1 (C-3), 69.0 (C-4), 68.3 (C-5), 66.1 (OCH
2), 61.4 (C-6), 50.3 (C-2), 34.5, 29.1, 28.3, 26.6 (4×CH
2)および21.3 ppm (CH
3)。ESI
+-HRMS: [M+H]
+ C
14H
26O
8NSの計算値、368.1374;実測値、368.1377。(
図10)。
【0202】
実施例8:ペンタフルオロフェニル3-{[3-(2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)オキシプロピルチオ}プロパノエート(化合物9)
【0203】
【化25】
図9を参照すると、化合物8の粗製反応物(522.54mg、2.0mmol、1.0当量)、3-メルカプトプロピオン酸(522μL、6.0mmol、3.0当量)およびDMPAP(31mg、0.12mmol、0.06当量)から、まったく精製せずに、エステル化物を、THF/H
2O(10mL、4:1、v/v)中のペンタフルオロフェノール(2.210g、12.0mmol、6.0当量)およびEDC・HCl(1.725g、9.0mmol、4.5当量)で、室温で1時間処理した。混合物を減圧下で濃縮した。粗製物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(9:1のEtOAc/MeOH)で精製して、エステル化合物9を白色の固体として得た(320mg、0.60mmol、30%)。
【0204】
水(1.0mL)中の化合物8の精製した酸(100mg、0.27mmol、1.0当量)を、THF(4mL)およびEDC・HCl(104mg、0.55mmol、2.0当量)中のペンタフルオロフェノール(200mg、1.09mmol、2.0当量)で、室温で1時間処理した。混合物を減圧下で濃縮した。粗製物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(9:1のEtOAc/MeOH)で精製して、エステル化合物9を白色の固体として得た(49mg、0.09mmol、34%)。Rf=0.18;9:1のEtOAc/MeOH;
1H NMR(CD
3OD, 600 MHz): δ 4.73 (d, 1H, J=3.7 Hz, H-1), 4.25 (dd, 1H, J=11.0, 3.7 Hz, H-2), 3.79 (d, 1H, J=3.2 Hz, H-4), 3.74-3.54 (m, 5H, H-3, H-5, H-6a, H-6b, OCH
2), 3.41 (dt, 1H, J=10.0, 6.0 Hz, OCH
2), 2.95 (t, 2H, J=6.9 Hz, CH
2), 2.81 (t, 2H, J=6.9 Hz, CH
2), 2.64 (t, 2H, J=7.2 Hz, CH
2), 1.89 (s, 3H, CH
3), 1.80 (q, 2H, J=6.7 Hz, CH
2);
13C NMR(CD
3OD, 150 MHz): δ 172.5 (NHCO), 168.1 (CO), 97.5 (C-1), 71.1 (C-3), 69.0 (C-4), 68.3 (C-5), 66.0 (OCH
2), 61.4 (C-6), 50.3 (C-2), 33.6, 29.0, 28.3, 26.0 (4×CH
2)および21.2 ppm (CH
3);
19F NMR(CD
3OD, 564 MHz): δ -(154.86-156.03, m), -(160.90-161.58, m), -(165.33-166.16, m); ESI
+-LC-MS: [M+H]
+ C
20H
25O
8NSF
5の計算値、534.1216;実測値、534.1222, 6.69分。(
図11Aおよび11B)。
【0205】
実施例9:3-{[3-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)オキシプロピル]チオ}プロパン酸(化合物10)
【0206】
【化26】
図12を参照すると、脱気したTHF(3mL)中の保護されたアリルTF(化合物6)(659mg、0.71mmol、1.0当量)および3-メルカプトプロピオン酸(186μL、2.13mmol、3.0当量)の溶液を、365nmの放射線照射下で、室温で、DMPAP(11mg、0.43mmol、0.06当量)と共に、15分間撹拌した。次いで混合物を減圧下で濃縮し、次いでシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(98:2:0.01のDCM/MeOH/AcOH)によって精製して、望ましい化合物10を白色の発泡体として得た(712mg、0.69mmol、97%);Rf=0.25;98:2:0.01のMeOH/MeOH/AcOH;
1H NMR(CDCl
3, 600 MHz): δ 8.05-7.14 (m, 25H), 5.92 (t, 1H, J=7.2 Hz, 1H), 5.85-5.76 (m, 1H), 5.75-5.65 (m, 1H), 5.53-5.47 (m, 1H), 5.45 (d, 1H, J=9.5 Hz), 5.16 (dd, 1H, J=19.2, 11.5 Hz), 5.10-5.02 (m, 1H), 4.71 (d, 1H, J=3.5 Hz), 4.69-4.65 (m, 1H), 4.65-4.60 (m, 1H), 4.50 (m, 1H), 4.43-4.29 (m, 1H), 4.12-3.97 (m, 1H), 3.88 (td, 1H, J=10.7, 3.3 Hz), 3.67 (ddd, 1H, J=19.3, 12.1, 5.3 Hz), 3.40-3.38 (m, 1H), 3.25 (td, 1H, J=9.5, 2.7 Hz), 2.91-2.82 (m, 1H), 2.73-2.45 (m, 1H)および1.64 ppm (s, 1H);
13C NMR(CDC
13, 150 MHz): δ 177.07, 175.59, 170.46, 137.73, 133.51, 133.47, 133.41, 133.21, 133.17, 129.90, 129.64, 129.61, 128.57, 128.50, 128.19, 128.03, 125.99, 102.57, 100.45, 98.87, 76.44, 75.58, 72.02, 71.38, 69.41, 69.01, 68.17, 66.82, 63.15, 62.45, 52.49, 36.62, 31.48, 29.54, 28.68, 25.96, 22.55, 20.05および14.03 ppm; ESI
+-HRMS: [M+Na]
+ C
55H
55O
17NSNaの計算値、1056.3083;実測値、1056.3116。
【0207】
実施例10:3-{[3-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)オキシプロピル]チオ}プロパン酸(化合物12)
【0208】
【化27】
図12を参照すると、脱気したH
2O/MeOH(3mL、1:2、v/v)中のアリルTF(化合物11)(85mg、0.2mmol、1.0当量)および3-メルカプトプロピオン酸(52μL、0.6mmol、3.0当量)の溶液を、254nmの放射線照射下で、室温で一晩撹拌した。次いで混合物を減圧下でシリカゲルを用いて濃縮し、次いで勾配(100%のEtOAcから7:2:1のEtOAc/MeOH/H
2O)によるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、望ましい化合物12を白色の発泡体として得た(87mg、0.16mmol、82%)。
【0209】
メタノール中の1Mナトリウムメトキシド(6mL、pH8-9)中の化合物10(672mg、0.65mmol、1.0当量)の溶液を、出発材料が消費されるまで室温で撹拌した。1時間30分後、溶液をイオン交換樹脂(Amberlite IR120、H
+)の添加によってpH4まで中和し、メタノールで洗浄し、溶液を減圧下で濃縮した。次いで白色の発泡体である中間粗製物を、6mLの60%酢酸水溶液中で60℃で1.5時間処理した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を、勾配(100%のEtOActoから7:2:1のEtOAc/MeOH/H
2O)によるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーで精製して、望ましい化合物13を白色の発泡体として得た(306mg、0.58mmol、89%)。Rf=0.34;3:1:0.01のEtOAc/MeOH/AcOH;
1H NMR(CD
3OD, 600 MHz): δ 4.83 (d, 1H, J=3.7 Hz, H-1), 4.43 (d, 1H, J=7.6 Hz, H-1’), 4.41 (dd, 1H, J=11.0, 3.7 Hz, H-2), 4.18 (d, 1H, J=2.0 Hz, H-4’), 3.91 (dd, 1H, J=11.1, 3.1 Hz, H-3), 3.87-3.67および3.58-3.43 (m, 11H, H-2’, H-3’, H-4, H-5, H-5’, H-6a, H-6a’, H-6b, H-6b’, OCH
2), 2.92 (t, 2H, J=7.2 Hz, CH
2), 2.77 (t, 2H, J=7.4 Hz, CH
2), 2.68 (t, 2H, J=7.2 Hz, CH
2), 2.53 (t, 2H, J=7.4 Hz, CH
2), 1.98 (s, 3H, CH
3), 1.89 (m, 2H, CH
2);
13C NMR(CD
3OD, 150 MHz): δ 174.0 (CO), 106.2 (C-1’), 98.9 (C-1), 78.9, 76.7, 74.7, 72.49, 72.0 (C-3), 70.2 (C-4), 70.0, 67.4 (C-5), 62.7 (OCH
2), 62.5 (C-6), 50.3 (C-2), 37.4, 35.1, 30.5, 29.5, 28.6 (CH
2)および22.8 ppm (CH
3)。ESI
+-HRMS: [M+H]
+ C
20H
36O
13NSの計算値、530.1902;実測値、530.1909。(
図13)。
【0210】
実施例11:ペンタフルオロフェニル3-{[3-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)オキシプロピル]チオ}プロパノエート(化合物13)
【0211】
【化28】
水(1.0mL)中の精製した酸化合物12(159mg、0.30mmol、1.0当量)を、アセトニトリル(4mL)およびEDC・HCl(259mg、1.35mmol、4.5当量)中のペンタフルオロフェノール(331mg、1.80mmol、6.0当量)で室温で1時間処理した。混合物を、減圧下で、シリカゲルで濃縮した。粗製物を、勾配(100%のEtOAcから6:4のEtOAc/MeOH)によるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーで精製して、エステル化合物13を白色の固体として得た(62mg、0.09mmol、30%)。Rf=0.50;6:4のEtOAc/MeOH;
1H NMR(CD
3OD, 600 MHz): δ 4.45 (d, 1H, J=7.5 Hz, H-1’), 4.41 (ddd, 1H, J=12.6, 6.1, 2.8 Hz), 4.19 (d, 1H, J=3.0 Hz), 3.92 (dd, 1H, J=11.0, 3.1 Hz), 3.89-3.77 (m, 3H), 3.74 (m, 4H), 3.68 (s, 1H), 3.52 (m, 4H), 3.06 (t,1H, J=6.9 Hz), 2.91 (t, 1H, J=6.9 Hz), 2.77 (dt, 2H, J=15.0, 7.1 Hz), 2.68 (t, 1H, J=7.1 Hz), 2.63 (t, 1H, J=7.0 Hz), 1.99 (s, 1H)および1.95-1.84 ppm (m, 2H);
13C NMR(CD
3OD, 150 MHz): δ 172.7 (NHCO), 168.1 (CO), 104.7 (C-1’), 97.6 (C-1), 77.5, 75.3, 73.3, 71.1, 70.6, 69.0, 68.7, 66.0, 61.4, 61.2, 50.9, 48.9, 34.2, 33.6, 29.0, 28.2, 28.2, 26.4, 26.1, 21.5および21.5 ppm;
19F NMR(CD
3OD, 564 MHz): δ -155.12 (m), -161.21 (m), -165.63 (m); ESI
+-HRMS: [M+H]
+ C
26H
35O
13NSF
5の計算値、696.1744;実測値、696.1739。(
図14)。
【0212】
実施例12:BSAおよびCRM197へのPFP-Tnコンジュゲーション
図9を参照すると、PFP-Tn(化合物9)のタンパク質へのコンジュゲーションをBSAおよびCRM197を用いて実証した。BSA(脂肪酸非含有、低エンドトキシン;シグマ(Sigma)を、それぞれpHを増加させた5種の緩衝液:(1)0.1MのMESおよび150mMのpH6のNaCl;(2)リン酸緩衝食塩水(PBS)pH7;(3)pH8のPBS;(4)150mMのpH9のNaClを含む0.1Mの炭酸ナトリウム;および(5)150mMのpH10のNaCl含む0.1Mの炭酸ナトリウムのそれぞれで1mg/mLの濃度で可溶化した。TnのBSAへのコンジュゲーションを、400μL(6nmol)のBSA溶液を、5、15、50、または200当量のPFP-Tn(化合物9)(水中の20mM)を含有する60μLのそれぞれの緩衝液と合わせ、穏やかなボルテックス混合によって90分かき混ぜることによって開始させた。次いで得られたBSA-Tnコンジュゲートを、pH7.4のPBSで、遠心ろ過(MWCO10KDa、アミコン(Amicon))によって洗浄した。タンパク質の濃度をブラッドフォードアッセイによって測定した。コンジュゲートCRM197-Tnを、類似の条件で、最大15モル当量のPFP-Tn(化合物9)を、pH7.2の0.4Mのリン酸ナトリウム緩衝液中の4mg/mLの精製したCRM197と共に2時間インキュベートすることによって得た。
【0213】
タンパク質-Tnコンジュゲートを、ウェスタンブロットおよび/またはELISAによってTn特異的なレクチンであるナヨクサフジ(VVA)への反応性に関して分析した。
【0214】
図15は、pH6~10の緩衝液中で、BSAに対して50当量のPFP-Tnの比率で生じたBSA-TnコンジュゲートのVVAへの反応性を描写する。
図15Aのウェスタンブロットは、BSAの分子量(約66.5kDa)の領域における優勢の反応性バンドを示し、これは、TnコンジュゲーションがpH6からの10の範囲の全ての5種の緩衝液で生じたことを示す。pH8条件でより高い強度およびよりわずかに遅い移動のバンドが検出されたことから、より高いレベルのTnのBSAへのコンジュゲーションが、試験された他のpHよりpH8でより有効な反応をもたらしたことが示唆される。pH8におけるBSA-TFのVVAへのより高い反応性もELISAによって確認された(
図15B)。
【0215】
図15Cは、最適な8のpHにおけるBSAへのコンジュゲーションに対するPFP-Tn(化合物9)の滴定を示す。ウェスタンブロットによって、BSAに対して最小限の15モル当量のPFP-Tnを用いて生成したVVA反応性BSA-Tn種を検出した。BSAに対するPFP-Tnの比率を50および200モル当量に増加させたところ、BSAにコンジュゲートしたTnのより高いレベルのために起こるバンド強度の対応する増加およびゲルにおけるより遅い移動がみられた。PFP-Tnの量と得られたBSA-Tnコンジュゲートの反応性との相関もELISAによって観察された(
図15D)。ELISAはさらに、この相関が、5から200当量のPFP-Tnにかけて直線的であることを実証したことから、BSA上のPFP-Tnコンジュゲーション部位が飽和していなかったことが示唆される。
【0216】
図15Eは、 CRM197-Tnのウェスタンブロット分析を示す。ブロットから、試験されたPFP-Tnの3つのコンジュゲーション比率(すなわち、3.4、9.7、および15)につきCRM197の分子量(約58.4kDa)の範囲に単一のVVA反応性バンドがあることが明らかになり、これら3種のうち最も反応性の種が、15当量の最も高いPFP-Tn比率で生じた。
【0217】
15当量のPFP-TnとコンジュゲートしたCRM197の質量分析を質量分析によってさらに分析し、コンジュゲーション確認した(データは示されない)。
【0218】
実施例13:BSAへのPFP-TFコンジュゲーション
PFP-TF(化合物13)のタンパク質へのコンジュゲーションを、BSAを用いて実証した。BSA(脂肪酸非含有、低エンドトキシン;シグマ)を、pH8のPBS中の1mg/mLの濃度で可溶化し、400μL(6nmol)を、5、15、50、または200当量のPFP-TF(水中の20mM)を含有する60μLのpH8のPBSと混合し、次いで穏やかなボルテックス混合によって90分かき混ぜた。得られたBSA-TFコンジュゲートを、pH7.4のPBSで、遠心ろ過(MWCO10kDa、アミコン)によって洗浄した。タンパク質の濃度をブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0219】
図16は、TF特異的なレクチンであるピーナッツ凝集素(PNA)に対する得られたBSA-TFコンジュゲートの反応性およびコンジュゲートした二糖TF抗原からのガラクトース糖の投薬量を示す。
図16Aに示されるウェスタンブロットから、BSA単量体の期待される分子量の範囲内のPNAに反応性を有する優勢なバンドが明らかになったことから、TFのBSAへのカップリングが示される。ゲルもまた、BSAに対するPFP-TFの比率を50および200モル当量に増加させたところ、より高いレベルのTFのBSAへのコンジュゲートの結果起こる、それに対応するバンド強度における増加およびゲルにおけるより遅い移動をもたらしたことを示した。15~200当量のPFP-TFと得られたBSA-Tnコンジュゲートの反応性との間の直線状の相関もELISAによって観察されたことから(
図16B)、BSA上のPFP-TFコンジュゲーション部位がこれらの条件下で飽和していないことが示唆される。デュボアの方法によりBSAに会合するガラクトースを測定することによって、TFのBSAへのコンジュゲーションも実証された。
図16Bの棒グラフは、BSA-TFのPNA反応性に応じてガラクトースの量が増加すること、およびコンジュゲーションが200当量のPFP-TFを用いて実行される場合、BSAに対して45の比率が達成されることを示す。
【0220】
実施例14:COOH-TnおよびCOOH-TFのCRM197およびdTTへのコンジュゲーション
COOH-TnおよびCOOH-TFのタンパク質へのコンジュゲーションを、CRM197およびdTTを用いて実証した。まず、COOH-Tn(化合物8)およびCOOH-TF(化合物12)を、0.1Mで水中に溶解した糖抗原を、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチル-カルボジイミド(EDC、シグマ-アルドリッチおよびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、シグマ-アルドリッチ)の2当量の0.1Mの水溶液のそれぞれと合わせ、室温で最低限30分ボルテックス混合することによってスクシンイミド化した。次いで得られた化学的に反応性の抗原を、pH8のPBSで最大4回希釈し、pH8のPBS中のタンパク質溶液に50当量を10mg/mLの濃度で添加することによって、タンパク質へのカップリングを開始させた。この溶液を30~120分ボルテックス混合し、その後、得られたタンパク質-抗原コンジュゲートを、pH7.4のPBSを用いて膜ろ過(アミコン、MWCO30,000Da)によって洗浄した。タンパク質濃度をブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0221】
図17は、ゲル電気泳動によるタンパク質単独および得られたコンジュゲートの移動、ならびにウェスタンブロットおよびELISAによるレクチンVVA(Tn特異的)およびPNA(TF特異的)へのそれらの反応性を示す。コンジュゲートのクーマシー染色されたSDS-PAGEゲル(
図17A)は、コンジュゲートしたタンパク質が天然のコンジュゲートしていないタンパク質と同様に移動することを示し、これは、TnまたはTFへのタンパク質コンジュゲーションの結果として凝集または分解が存在しないことを示す。ウェスタンブロット(
図17B)は、タンパク質コンジュゲートのVVAまたはPNAレクチンへの特異的な反応性を示し、これは、TnまたはTFのカップリングを示す。レクチンへの特異的な反応性の同じパターンもELISAによって観察された(
図17C)。
【0222】
実施例15:ネオ複合糖質dTT-TFで免疫化されたマウスからの血清の免疫反応性の特徴付け
複合糖質dTT-TFを実施例14に記載されたように調製し、pH7.4のPBSで1mg/mLに希釈し、等しい体積のTiterMax(商標)ゴールド(シグマアルドリッチ)で乳化した。合計12匹のマウスに、5回の免疫化にわたり2週毎に、8週齢の雌BALB/cマウスの左および右大腿部に25μLの調合物を筋肉内注射した。マウスから事前に採血して免疫前の血清のサンプルを収集し、次いで各免疫化の1週間後に採血した。
【0223】
血清をELISAによって試験して、抗TFまたは抗Tn抗体の力価を評価した。96-ウェルプレート(ヌンク(Nunc)、Maxisorp(商標))を、pH7.4のPBS中1μg/100μLの濃度で、指定されたスクリーニング抗原:BSA-TnおよびBSA-TF(実施例14に記載された通り)、またはポリアクリルアミド[PAA]-TnおよびPAA-TF(グリコテック(GlycoTech)、米国)でコーティングした。室温で1時間のインキュベーションの後、コーティングされたウェルを、PBS-トウィーン(PBS-T)0.05%で洗浄し、PBS-T0.05%+1%BSAで30分ブロックした。PBS-トウィーン(Tween)0.05%で洗浄した後、ウェルを、PBS-トウィーン0.05%での血清の1/200希釈物と共に1時間インキュベートした。次いでウェルを洗浄し、PBS-トウィーン0.05%で1/1000希釈したヤギ抗マウスIgG-HRPと共に30分インキュベートした。マウス抗体の結合を、HRP比色基質ウルトラ-TMB(サーモ(Thermo))、続いて反応を止めるための等しい体積の0.5M硫酸を添加することによって測定した。プレートリーダーで、OD450でプレートを読んだ。dTT-TFでの少なくとも5回の免疫化受けた12匹のマウスのうち、6匹のマウスの血清で著しいレベルの抗TF抗体がELISAによって検出された。
【0224】
【表2】
表1および
図18は、dTT-TFでの3回の免疫化後の2種のマウス(A1およびA2)からの血清のELISAの結果、加えてそれらそれぞれの免疫前血清に従って正規化したデータを示す。結果は、マウスA1からの血清が、TFおよびTnスクリーニング抗原の全てと反応したことを示し(対応する免疫前血清に対して6.5倍~32.5倍の増加の範囲)、最も高い反応性はBSA-TFで観察された(対応する免疫前血清に対して32.5倍の増加)。マウスA2からの血清は、TFスクリーニング抗原(BSA-TFおよびPAA-TF)の両方と反応性を示したが、担体タンパク質にコンジュゲートしたTn抗原は一方のみであった(Tn-BSA)。これらの結果は、ネオ複合糖質dTT-TFでの免疫化は、担体とは無関係に、TF炭水化物抗原に対する抗体の生産をうまく誘導したことを示す。さらにこれらの結果は、生産された抗TF抗体の少なくとも一部は、TF抗原内の潜在的なエピトープであるTn抗原と交差反応性を有することを示唆する(
図1)。
【0225】
図19Aおよび19Bは、スクリーニング抗原としてBSA-TFを使用したdTT-TFでの5回目の免疫化の後および5回目の免疫化の6週後に採取された2種のマウスからの連続的に希釈した血清(1:100~1:1,000,000)のELISAを示す。曲線は、最後の免疫化から6週間後に抗体力価が低減しないことを示し、長期の抗体半減期が示される。スクリーニング抗原としてPAA-TFを使用して類似の結果が観察された(データは示されない)。
【0226】
実施例16:高分解能質量分析によって特徴付けられたSARS-CoV-2スパイクタンパク質サブユニットS1の定量的なO-グリコシル化プロファイル
S1タンパク質の調製
還元サンプル緩衝液中のトランスフェクトされたHEK293細胞(レイバイオテック(RayBiotech)、米国)の無血清細胞培養上清からの、27μLのC末端にHisタグを有する組換えSARS-CoV-2S1サブユニットを、10%SDS-PAGEでの電気泳動によって分離した。ゲルをクーマシーブルーG-250で染色した。75kDa以上に相当するレーンの区画を清潔なベンチで10個の断片に切断し、各断片をさらに1mm3の断片に切断した。
【0227】
ゲル断片の調製
ゲル断片をまず水で5分洗浄し、脱色緩衝液(100mMのチオ硫酸ナトリウム、30mMのフェリシアン化カリウム)で15分間、2回脱色した。脱色の後、炭酸水素アンモニウム緩衝液(50mM)で追加の5分の洗浄を実行した。次いでゲル断片をアセトニトリル(ACN)で脱水した。タンパク質のシステインのジスルフィド基を、40℃で30分にわたり還元緩衝液(10mMのジチオスレイトール(Dithiothreiol)(DTT)、100mMの炭酸水素アンモニウム)を添加することによって還元した。次いで生成した遊離スルフヒドリル基を、暗所で、40℃で20分にわたりアルキル化緩衝液(55mMのヨードアセトアミド、100mMの炭酸水素アンモニウム)を添加することによってアルキル化してS-カルボキシアミドメチルにした。次いでゲル断片を脱水し、5分にわたりアセトニトリルを添加することによって40℃で洗浄し、その後、試薬の全てを捨てた。
【0228】
タンパク質分解消化およびペプチド抽出工程
ゲル断片を40℃で5分乾燥させ、次いでトリプシン溶液(プロメガ(Promega)からの6ng/μLのトリプシン[シーケンシンググレード]、25mMの炭酸水素アンモニウム)で、4℃で40分再水和した。タンパク質消化を58℃で1時間実行し、15μLの1%ギ酸/2%アセトニトリルを添加することによって止めた。次いで上清を96-ウェルプレートに移し、抽出緩衝液(1%ギ酸/50%ACN)を使用した2回の室温で30分の抽出工程を用いてペプチド抽出を実行した。全てのペプチド抽出物を真空遠心分離機中で十分に乾燥させた。
【0229】
LC-MS/MS分析
LC-MS/MSの前に、タンパク質消化物を、10μLの1%ACN/0.5%ギ酸中で15分かき混ぜながら再可溶化した。長さ15cm、内径75μmのSelf-Pack PicoFrit(商標)石英ガラスキャピラリーカラム(ニューオブジェクティブ(New Objective)、マサチューセッツ州ウォバーン)に、C18 Jupiter(商標)(5μm、300Å)逆相材料(フェノメネックス(Phenomenex)、カリフォルニア州トランス)を充填した。このカラムをEasy-nLC(商標)IIシステム(プロキセオン・バイオシステムズ(Proxeon Biosystems)、オーデンセ、デンマーク)に取り付け、Nanospray Flex(商標)イオンソース(サーモフィッシャー・サイエンティフィック(Thermo-Fisher Scientific))を備えたOrbitrap Fusion(商標)(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ブレーメン、ドイツ)に連結した。クロマトグラフィーに使用した緩衝液は、0.2%ギ酸(緩衝液A)および100%アセトニトリル/0.2%ギ酸(緩衝液B)であった。ペプチドを、2つの傾きの勾配で、250nL/分の流束で溶出させた。まず溶媒Bを75分で1から35%に増加させ、次いで15分で35からの86%に増加させた。ナノスプレーおよびS-レンズ電圧を、それぞれ1.3~1.7kVおよび50Vに設定した。キャピラリー温度を、225℃に設定した。プロファイルモードでのフルスキャンMSサーベイスペクトル(360~1560m/z)を、Orbitrapで、8e5に設定された標的値を用いて、120000の解像度で捕捉した。データ依存性MS/MS分析のために3秒のサイクル時間を使用した。この場合、選択された前駆体イオンをHCD(高エネルギーC-トラップ解離)衝突セルで断片化し、30000に設定された解像度を用いて、7e4における標的値および28Vにおける正規化した衝突エネルギーを用いたOrbitrapで分析した。オキソニウムイオンの検出において、それに続くCID(衝突誘導解離)を使用したMS/MS分析をOrbitrapで実行した。SARS-Cov-2のペプチド320~328の全ての公知の形態に対して組入れリストも使用した。SIM(単一イオンモニタリング)および標的化MS2方法を使用することによって、これらのペプチドに第2系列の分析を実行した。
【0230】
データ分析
タンパク質データベース検索を、Uniprotタンパク質データベース(2017-04-11)に対して、Mascot2.6(マトリックスサイエンス(Matrix Science))を用いて実行した。前駆体および断片イオンの質量許容差を、それぞれ10ppmおよび0.6Daに設定した。指定された酵素はトリプシンであり、切断され損ねたものが許容された。固定された修飾としてシステインのカルバミドメチル化が指定され、可変の修飾としてメチオニン酸化が指定された。Mascot2.6およびByos3.8(プロテインメトリクス(Protein Metrics))を使用してSARS-CoV-2配列に対して第2系列の検索を実行した。指定された酵素はセミトリプシンであり、切断され損ねたものが許容された。固定された修飾として、システインのカルバミドメチル化が指定された。可変の修飾として、ペプチド320~328のメチオニン酸化および全ての公知のO-グリコシル化形態を使用した。
【0231】
図20は、75kDaを超えるタンパク質の高分解能LC-MS/MSによって特徴付けられたSARS-CoV-2S1タンパク質からのペプチドVQPTESIVR(配列番号3)の定量的なO-グリコシル化プロファイルを示す。
図21は、75~100kDaのタンパク質の高分解能LC-MS/MSによって行われた同じ分析を示す。個々のグリカンのグラフ表示の記号名称は以下の通りである(Varkiら、2015):黄色の四角=GalNAc、黄色の丸=Gal、紫色のひし形=Neu5Ac(シアル酸)。TFは、二糖Gal-GalNAcによって形成される。この図は、グリコシル化されたペプチドの異なるパターンを示し、優勢種はジシアリル-TFであり、2番目の最も豊富な種はTFである。
【0232】
実施例17:ELISAおよびウェスタンブロットによる組換えSARS-CoV-2S1およびSタンパク質への抗Tnおよび抗TFリガンドの反応性
96ウェルプレートのウェルを、空のベクター、またはC末端His-タグを有する組換えSARS-CoV-2S1(スパイクタンパク質のS1サブドメイン;レイバイオテック、米国、カタログ番号230-20407)もしくはS(全長スパイクタンパク質;NRC、カナダ)のいずれかをコードするDNAのいずれかでトランスフェクトされた哺乳類細胞の無血清培養上清10μLを含有する100μLのPBS、pH7.4で1時間コーティングした。次いでウェルをPBS-トウィーン0.05%で洗浄し、PBS-T0.05%+1%BSAで30分ブロックした。次いでウェルをPBS-T0.05%で洗浄し、PBS-T0.01%中の指定された抗TF(JAA-F11 IgG、1μg/mL;SPM320 IgM、アブノヴァ(Abnova)、カタログ番号MAB13207、0.2mg/mL、1:100の希釈物)または抗Tn(Tn218 IgM、アブノヴァ、カタログ番号MAB6198、1:100の希釈物)抗体と共にさらに1時間インキュベートし、それに続いて、PBS-T中のそれらの適切なHRP結合二次抗体(ヤギ抗マウスIgG-HRPまたはヤギ抗マウスIgM-HRP;ジャクソン・イムノ(Jackson Immuno)、1/1000)と共に30分インキュベートした。HRP比色基質であるウルトラTMB(サーモ(Thermo))を用いてリガンドの結合を明らかにした。等しい体積の0.5M硫酸を添加することによって反応を止め、光学密度を、プレートリーダー(バイオテック(Biotek))において、450nmで測定した。
図22に示される結果は、各抗体についての、空のベクターでトランスフェクトされたHEK細胞からの上清のOD
450に対する、組換えS1またはSタンパク質を発現するHEK細胞からの上清のOD
450の増加倍数である。示される増加倍率は、少なくとも6つの別々の実験の平均を表し、エラーバーは、標準誤差を表す。昆虫(Sf9)細胞(S1-His、シノバイオロジカル(SinoBiological)、カタログ番号40591-V08B1)から発現された組換えS1タンパク質を使用して実験を繰り返し、結果から、JAA-F11で3.32±1.35、SPM320で5.50±1.80、およびTn218で1.77±0.64の平均増加倍率を得た(3つの実験の平均±SEM)。
【0233】
上記のものと類似したELISA実験を、空のベクター、SARS-CoV-2のS1タンパク質をコードするDNA、または全長Sタンパク質をコードするDNA(上記を参照)でトランスフェクトされたHEK293細胞の無血清培養上清を使用したHRP結合レクチンのパネルを用いて実行した。レクチンパネルは、以下:ラッカセイ(Arachis hypogaea)(PNA;カタログ番号:H-2301-1)、ナヨクサフジ(VVA;カタログ番号:H-4601-1)、オニサルビア(Salvia sclarea)(SSA;カタログ番号:H-3501-1)、イヌエンジュ(Maackia amurensis)(MAA;カタログ番号:H-7801-1)、マクルラ・ポミフェラ(Maclura pomifera)(MPA;カタログ番号:H-3901-1)からのレクチンを含んでいた。全てのレクチンをEYラボラトリーズ(EY Laboratories)(米国カリフォルニア州;1mg/mL、HRP結合)から購入し、PBS-トウィーン0.01%中の10μg/mLで使用した。
図23に示される結果は、各レクチンについての、空のベクターでトランスフェクトされたHEK細胞からの上清のOD
450に対する、組換えS1またはSタンパク質を発現するHEK細胞からの上清のOD
450の増加倍数である。示される増加倍率は、少なくとも7つの別々の実験の平均を表し、エラーバーは、標準誤差を表す。昆虫(Sf9)細胞(S1-His、SinoBiological、カタログ番号40591-V08B1)から発現された組換えS1タンパク質を使用して実験を繰り返し、結果から、PNAで22.67±12.52、VVAで22.51±9.71、SSAで3.97±1.09、MAAで4.30±1.23、およびMPAで7.51±3.64の平均増加倍率を得た。
【0234】
ウェスタンブロッティングのために、還元サンプル緩衝液中の、C末端にHisタグを有するSARS-CoV-2S1をコードするDNAでトランスフェクトされたHEK293細胞の2μLの無血清培養上清を、10%ポリアクリルアミドゲルでのSDS-PAGEによって分離した。次いで、抗グリカンレクチン、抗体、および血清を用いたウェスタンブロットによる分析のために、タンパク質をPVDF膜に移した。抗グリカンの反応性を、対照として対応する条件下における抗Hisタグ抗体の反応性と比較した。PNA、VVA、およびJAA-F11 mAbで検出されたバンドは、対照抗HisタグAbで検出されたものと類似していたことから、それらが同じS1タンパク質を認識することが示唆される(データは示されない)。マウスA1免疫血清(実施例15)も、免疫前の血清のプールと比較してS1を強く検出した。
【0235】
まとめると、この実施例における結果は一貫して、炭水化物抗原TnおよびTFが、異なる発現系によって生産された組換えSARS-CoV-2S1およびSタンパク質上に存在すること、およびこれらの抗原が、抗Tnおよび抗TFリガンドによる結合のために接近可能であることを示す。
【0236】
実施例18:O-グリカンリガンドによるSARS-CoV-2Sを発現するシュードタイプ化ウイルスの感染力の細胞阻害
図24は、Sが結合する受容体であるヒトアンジオテンシン変換酵素2(293T-ACE2)を発現する293T細胞に対するシュードタイプ化レンチ-luc-SARS-CoV-2-Sウイルスの相対的な感染力を示す。ウイルスをまず、抗グリカンレクチンPNA、AIA(jac)[ジャカリンレクチン(パラミツ)、およびモノクローナル抗TF抗体JAA-F11を含む連続希釈物と共に37℃で1時間プレインキュベートした。次いで混合物を、96-ウェルプレートにシーディングした293T細胞に添加し、2時間インキュベートした。次いで培地を新鮮な培地と交換し、さらに2日インキュベートした。次いでルシフェラーゼ活性を測定した。
図24は、レクチンPNAおよびAIAが、濃度依存性の方式で、シュードタイプ化レンチ-luc-SARS-CoV-2-Sウイルスの293T-ACE2細胞に感染する能力を阻害したことを示す。JAA-F11の最大濃度のみがある程度の感染力阻害を示した。
【0237】
興味深いことに、AIA(ジャカリン)レクチンは、それらのシアル化されたまたはシアル化されていない形態のいずれかでTFおよびTn抗原の両方に結合特異性を有することがわかっており、一方でPNAレクチン(末端ベータ-ガラクトースに結合親和性を有する)は、そのシアル化されていない形態でのみTF抗原と結合することがわかっている(Liら、2010)。同様に、JAA-F11抗体は、TF抗原のシアル化されていない形態にのみ結合することがわかっている。したがって、
図23に示されるPNAおよびJAA-F11と比較してAIAのより有効な阻害作用は、
図20および
図21に示されるSARS-CoV-2S1タンパク質上で検出されたO-グリコシル化された形態の分布、加えて
図22および
図23に示される異なる抗Tnおよび抗TFリガンドの相対的な反応性と一致する。
【0238】
この実施例における結果は、シュードタイプ化ウイルス粒子の状態で発現されるSARS-CoV-2-Sタンパク質が、実際に、抗TFおよび/または抗Tnリガンドによる結合に接近可能な表面TFおよびTn炭水化物抗原を含有することを示唆する。この実施例における結果はさらに、生存可能なシュードウイルス粒子の状態で発現されるSタンパク質の表面上のO-グリカンのリガンド結合、さらに特定にはレクチンPNAおよびAIAによる結合が、COVID-19に対する予防的および/または治療的介入にとって見込みのある戦略であり得ることを示唆する。
【0239】
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