(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-29
(45)【発行日】2025-09-08
(54)【発明の名称】搬送装置、および搬送方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20250901BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20250901BHJP
【FI】
G01N35/04 G
G01N35/04 B
B65G54/02
(21)【出願番号】P 2024502819
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2022040468
(87)【国際公開番号】W WO2023162340
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2022027567
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】東 信二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】矢野 茂
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-196171(JP,A)
【文献】特開2021-58052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/04
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石または磁性体を含む搬送容器を搬送する搬送装置であって、
コア、および巻線を含むコイルと、
前記巻線に電流を供給する駆動部と、
前記巻線に流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記搬送容器の位置を演算する位置検出部と、を備え、
前記位置検出部は、
前記電流検出部によって検出された電流値と予め求めておいた検量線とを基に前記搬送容器の位置を演算し、
前記駆動部による駆動電圧の印加の仕方によって用いる前記検量線を変える
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記位置検出部は、複数の前記コイルに駆動電圧を同時に印加する場合は、複数コイル同時励磁用の検量線を用いる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置において、
前記位置検出部は、複数の前記コイルに駆動電圧を同時に印加する場合に、印加する電流値により検量線を変える
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記位置検出部は、単一の前記コイルに駆動電圧を印加する場合は、単一コイル励磁時用の検量線を用いる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置において、
前記位置検出部は、単一の前記コイルに駆動電圧を印加する場合に、印加する電流値により検量線を変える
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項2に記載の搬送装置において、
前記複数コイル同時励磁用の前記検量線は、前記搬送容器がない状態で同じ数だけ前記コイルを励磁した条件で取得されたものを用いる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項2に記載の搬送装置において、
前記複数コイル同時励磁用の前記検量線は、
前記搬送容器が停止することが無いコイルから前記搬送容器が停止することが有るコイルへの移動は4パターン、
前記搬送容器が停止することが有るコイルから前記搬送容器が停止することが無いコイルへの移動は2パターン、
前記搬送容器が停止することが無いコイルから前記搬送容器が停止することが無いコイルへの移動は1パターン、存在する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
磁石または磁性体を具備する搬送容器に保持された検体容器に収容された検体の搬送方法であって、
コアおよび巻線を有する複数のコイルのうち、前記搬送容器を吸引または反発させるために選択されたコイルに電流を印加して励起し、
前記コイルに流れる電流値と予め求めておいた検量線とに基づいて前記搬送容器の位置を演算する際に、駆動電圧の印加の仕方によって用いる前記検量線を変える
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送方法において、
前記位置演算の際に、複数の前記コイルに駆動電圧を同時に印加する場合は、複数コイル同時励磁用の検量線を用いる
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項10】
請求項9に記載の搬送方法において、
前記位置演算の際に、印加する電流値により検量線を変える
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項11】
請求項8に記載の搬送方法において、
前記位置演算の際に、単一の前記コイルに駆動電圧を印加する場合は、単一コイル励磁時用の検量線を用いる
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項12】
請求項11に記載の搬送方法において、
前記位置演算の際に、印加する電流値により検量線を変える
ことを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の搬送を行うための搬送装置、および搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に柔軟であり高い搬送性能を与える、研究室試料配送システムおよび対応する動作方法の一例として、特許文献1には、いくつかのホルダであって、各々が少なくとも1つの磁気的活性デバイス、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備え、試料容器を運ぶように適合されたホルダと、ホルダを運ぶように適合された搬送平面と、搬送平面の下方に静止して配置されたいくつかの電磁アクチュエータであって、ホルダに磁力を印加することによって搬送平面の上でホルダを移動させるように適合された電磁アクチュエータとを備える、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療の高度化により、検体分析の重要性が高まっている。そして、検体分析システムの分析処理能力の向上のため、検体の高速搬送、大量同時搬送、複数方向への搬送が要望されている。
【0005】
このような技術の一例として特許文献1に記載の技術がある。
【0006】
特許文献1における搬送装置は、単位面積当たりの検体搬送能力を大きくするため、隣あう容器キャリア(ホルダ)の隙間が極力小さく設計されている。反面、ホルダに働く推力は、永久磁石がコイルシャフトに引き付けられる力やコイル励磁による電磁力などによりコイル間で脈動しており、この推力を制御しながらホルダを停止させなければならない。このため、高精度な停止位置精度とすることは困難であり、ホルダの停止精度によっては、最悪、隣のホルダと干渉してしまう虞がある。
【0007】
それを解決するために、通常、1つのコイルへの電流印加でホルダを制御するところ、停止位置直下に配置されたコイルと通過直後コイルの両方のコイルを同時刻に電流を印加させ、通過直後コイルによるブレーキ機能により停止位置精度を改善させることを行うことが考えられる。
【0008】
ここで、コイル電流を印加した際にコイルの巻線に流れる電流から磁性体を有するホルダの位置を検出する技術がある。
【0009】
しかし、1つのコイルに電流印加した場合と2つのコイルに同時刻で電流を印加した場合とでホルダの位置検出に用いる検量線に乖離が生じるため、ホルダの位置検出精度が悪化することが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0010】
そこで本発明は、ホルダの位置検出精度を従来に比べて改善することが可能な搬送装置、および搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、磁石または磁性体を含む搬送容器を搬送する搬送装置であって、コア、および巻線を含むコイルと、前記巻線に電流を供給する駆動部と、前記巻線に流れる電流値を検出する電流検出部と、前記搬送容器の位置を演算する位置検出部と、を備え、前記位置検出部は、前記電流検出部によって検出された電流値と予め求めておいた検量線とを基に前記搬送容器の位置を演算し、前記駆動部による駆動電圧の印加の仕方によって用いる前記検量線を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホルダの位置検出精度を従来に比べて改善することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例に係る搬送装置を備えた検体分析システム全体の構成を示す平面図である。
【
図2】実施例に係る搬送装置の構成の一例を示す上面図である。
【
図3】実施例に係る搬送装置における、印加する電圧波形と対応する電流波形のインダクタンスの大小による違いを模式的に表した図である。
【
図4】実施例に係る搬送装置における、励磁コイル(1コイル)とホルダの停止位置との関係を示す図。
【
図5】実施例に係る搬送装置における、励磁コイル(2コイル)とホルダの停止位置との関係を示す図。
【
図6】励磁コイルとホルダとの距離に対する電流振幅の関係を示す図。
【
図7】励磁コイルとホルダとの距離に対する電流振幅差の関係を示す図。
【
図8】コイルに流す電流値と電流振幅差との関係を示す図。
【
図9】実施例に係る搬送装置における、ホルダを停止する際に2コイルを励磁するパターンの一例を示す図。
【
図10】実施例に係る搬送装置における、ホルダを停止する際に2コイルを励磁するパターンの一例を示す図。
【
図11】実施例に係る搬送装置における、ホルダを停止する際に2コイルを励磁するパターンの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の検体の搬送装置、および搬送方法の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0015】
また、以下の実施例において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0016】
最初に、搬送装置を備えた検体分析システム全体の全体構成について
図1を用いて説明する。
図1は本実施例に係る搬送装置を備えた検体分析システム全体の構成を示す平面図である。
【0017】
図1に示した本実施例における検体分析システム1000は、血液、尿などの検体の成分を自動で分析するための分析装置を備えたシステムである。
【0018】
検体分析システム1000の主な構成要素は、検体が収容された検体容器101(
図2等参照)が搭載されたホルダ102(
図2参照)、もしくは検体容器101が搭載されていない空のホルダ102を所定の目的地まで搬送する複数の搬送装置100(
図1では12個)、複数の分析装置800(
図1では4個)、検体分析システム1000を統合管理する制御用コンピュータ900である。
【0019】
分析装置800は、搬送装置100により搬送された検体の成分の定性・定量分析を行うユニットである。このユニットにおける分析項目は特に限定されず、生化学項目や免疫項目を分析する公知の自動分析装置の構成を採用することができる。更に、複数設ける場合に、同一仕様でも異なる仕様でもよく、特に限定されない。
【0020】
各々の搬送装置100は、コイル107(
図2参照)とホルダ102に設けられた磁性体103(
図2参照)との相互作用によって搬送路上を滑走させることでホルダ102に搭載された、検体が収容された検体容器101を目的地(分析装置800や取り出し口など)まで搬送する装置である。その詳細は
図2以降を用いて詳細に説明する。
【0021】
制御用コンピュータ900は、搬送装置100や分析装置800を含めたシステム全体の動作を制御するものであり、液晶ディスプレイ等の表示機器や入力機器、記憶装置、CPU、メモリなどを有するコンピュータで構成される。制御用コンピュータ900による各機器の動作の制御は、記憶装置に記録された各種プログラムに基づき実行される。
【0022】
なお、制御用コンピュータ900で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0023】
なお、上述の
図1では、分析装置800が4つ設けられている場合について説明しているが、分析装置800の数は特に限定されず、1つ以上とすることができる。同様に、搬送装置100の数についても特に限定されず、1つ以上とすることができる。
【0024】
また、検体分析システム1000には、検体に対する前処理や後処理を実行する各種検体前処理・後処理部を設けることができる。検体前処理・後処理部の詳細な構成は特に限定されず、公知の前処理装置の構成を採用することができる。
【0025】
次に、本実施例の搬送装置100の構成について
図2以降を用いて説明する。
【0026】
まず、
図2を用いて、本発明の実施例に係る搬送装置について説明する。
図2は本発明における搬送装置の構成図である。
【0027】
図2において、ホルダ102には検体が収容された検体容器101が架設される。ホルダ102の底面には、磁性体103が設けられている。
【0028】
磁性体103は永久磁石や他の磁石、軟磁性体などで構成することが可能である。なお、磁性体103はホルダ102の下面に設けられている必要はないが、本発明での搬送方法における搬送力を効率的に作用させる観点から下面に設けられることが望ましい。
【0029】
ホルダ102は搬送面104の上を滑るように移動する。そのために搬送面104の下部には、円柱状のコア105と、そのコア105の外周に巻かれた巻線106と、を含むコイル107が複数配置されている。
【0030】
各々のコイル107を構成する巻線106には駆動部108が接続されていており、この駆動部108によりコイル107に対して所定の電圧を印加することで、巻線106に所定の電流を流すことができる。
【0031】
この時、コイル107は励磁されて電磁石として働き、搬送面104上のホルダ102下面に設けられている磁性体103を引き付ける。この手順を目標とする位置までの搬送路を構成する全てのコイル107に対して繰り返すことによって、ホルダ102に架設された検体容器101を、搬送面104上の目的地点まで搬送することができる。
【0032】
一般的に、コイル107に電圧を印加して電流を流すと、その周りに磁場が発生し、生じる磁束の大きさは流した電流値に比例する。この比例定数はインダクタンスとよばれる。
【0033】
コイル107の付近にホルダ102がある場合、磁性体103が作る磁束(磁場)がコア105に生じる。したがって、磁性体103による磁束(磁場)と、コイル107に流した電流によって生じる磁束(磁場)とが、コア105に発生する。特に、磁性体103とコイル107の相対位置によってコア105に発生する磁束の大きさが変わることになる。
【0034】
一方、コア105は磁性体で構成されており、コア105を通る磁束は、磁束が大きくなると通りにくくなる性質がある。この特性は磁気飽和として知られている。このためコア105などの磁性体を有した磁気回路では、コア105に発生した磁束が大きくなってコア105の飽和が発生すると、インダクタンスが小さくなる。つまり、磁性体103からの磁場が大きくなって、コア105に磁気飽和が起こると透磁率が小さくなるため、巻線106(コイル107)に流れる電流に変化が生じることになる。
【0035】
図3は、搬送装置がコイル107に印加する電圧波形201とそれに対応する電流波形を説明するための波形図である。
図3の(a)は、コイル107に印加する電圧波形201と、ホルダ102がコイル107の近傍に存在しない時にコイル107に流れる電流波形202aを示している。
図3の(b)は、コイル107に印加する電圧波形201と、ホルダ102の磁性体103がコイル107に接近し、コア105が磁気飽和した時にコイル107に流れる電流波形202bを示している。
【0036】
すなわち、コイル107がホルダ102の磁性体103の影響を受けない場合、
図3の(a)に示す電流振幅となる。一方、コイル107の近傍にホルダ102の磁性体103が存在し、その影響を受ける場合は、
図3の(b)に示すように電流振幅は
図3の(a)よりも大きくなる。
【0037】
これらのことから、ホルダ102とコイル107との距離に応じて電流振幅が変わる、といえ、電流振幅の違いからホルダ102とコイル107との距離、すなわちホルダ102の位置を推定できるといえる。
【0038】
この搬送中のコイル107の巻線106を流れる電流は、電流検出部109によって検出される。電流検出部109で検出されたコイル107の巻線106を流れる電流は、制御部110で数値化される。
【0039】
本実施例の制御部110は、この電流検出部109で検出されたコイル107の巻線106を流れる電流に基づいてホルダ102の位置を演算するが、本実施例では、特に、その際に電流検出部109によって検出された電流値と予め求めておいた検量線とを基にホルダ102の位置を演算し、駆動部108による駆動電圧の印加の仕方によって用いる検量線を変える処理を実行する。
【0040】
この制御部110は、上述の制御用コンピュータ900の一部でも良いし、独立していてもよい。
【0041】
次いで制御部110での制御処理の詳細について以下
図4以降を用いて説明する。
【0042】
まず、本発明が成された背景について
図4乃至
図8を用いて説明する。
図4は、励磁コイル(1コイル)とホルダの停止位置との関係を示す図、
図5は、励磁コイル(2コイル)とホルダの停止位置との関係を示す図である。
図6は励磁コイルとホルダとの距離に対する電流振幅の関係を示す図、
図7は励磁コイルとホルダとの距離に対する電流振幅差の関係を示す図、
図8はコイルに流す電流値と電流振幅差との関係を示す図である。
【0043】
上述のように、電磁搬送では、ホルダ102を介して検体容器101を搬送する。具体的には、これからその直上をホルダ102が通り過ぎようとしている、進行方向の直下に存在するコイル107を励磁する。これにより、ホルダ102は搬送面104に接触した状態で移動する。停止位置となるコイル107の直上でホルダ102を停止させる場合も、同様にこれからその直上でホルダ102を停止させようとしている、進行方向の直下に存在する停止コイル107aを励磁する(
図4参照)。
【0044】
ここで、ホルダ102の移動時は、ホルダ102の底と搬送面104の上面とが摺動していることになる。そのため、摺動時に発生するホルダ102の底と搬送面104の上面との摩擦を軽減することで、省エネルギーでのホルダ102搬送が可能となる。
【0045】
しかし、低摺動摩擦では、ホルダ102の減速時にエネルギーが必要になる。これは、摩擦による減速ブレーキが働かなくなった分だけ減速用のエネルギーを与える必要があるためである。
【0046】
電磁搬送では、エネルギーに相当するのはコイル107への印加電流である。
【0047】
そこで、ホルダ102を減速させるため、通り過ぎたホルダ102を搬送面104下側に働く引力を加えるべくコイル107に電流を印加する。これがブレーキ機能の役割をはたす(
図5参照)。
【0048】
また、ホルダ102の停止には、定めたコイル107の直上からの位置ずれを小さくすることも求められ、精度の高い停止制御が必要となる。
【0049】
特に高精度な停止位置のためには、
図4に示すように停止コイル107aのみを励磁するのではなく、
図5に示すように停止コイル107aと通過直後コイル107bとの2つのコイル107に対して同時に電流を印加することが望まれる。
【0050】
この場合、ホルダ102の前方に位置している停止コイル107aの役割は、ホルダ102の前方を停止位置まで引っ張ることである。これに対し、ホルダ後方に位置している通過直後コイル107bの役割は、ホルダ102にブレーキをかけることである。
【0051】
しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、単一のコイル107のみを励磁したときと、2つのコイル107を同時に励磁したときと、では検量線の特性が異なることが明らかとなった。
【0052】
より具体的には、
図7に示すように、2つのコイル107を同時に励磁する場合と単一のコイル107を励磁する場合とで、励磁コイルとホルダの距離に対する電流振幅が異なることが明らかとなった。
【0053】
例えば、コイル107の励磁電流が0.09[A]の場合、2コイル同時励磁の際の電流振幅は1コイル励磁の際の電流振幅に比べて電流振幅値が大きい。これはコイル107の励磁電流が0.11[A]の場合や0.20[A]の場合も同様である。これは、磁気飽和による影響によるものであり、3つ以上のコイルを同時に励磁したときも同様に特性が異なることが容易に想像される。
【0054】
ここで検量線とは、事前に測定して取得した、検出電流値とホルダ102の位置との対応関係を示すグラフのことを意味し、例えば
図7に示すような関係である。
【0055】
そこで、本実施例では、制御部110は、駆動電圧の印加時に流れる電流値によりホルダ位置を推定するにあたって、駆動電圧の印加の仕方によって検量線を変えるが、複数のコイル107に駆動電圧を同時に印加する場合は、複数コイル同時励磁用の検量線を用いる。
【0056】
この際、複数コイル同時励磁用の検量線は、ホルダ102がない状態で同じ数だけコイル107を励磁した条件で取得されたものを用いることとする。例えば、隣接する2コイル同時励磁の場合の検量線は、ホルダ102がない状態で隣接する2コイルを同時に励磁する条件で取得するものとする。この理由について
図8を用いて以下説明する。
【0057】
図8中、破線はホルダ102あり(1コイル励磁)-ホルダ102なし(1コイル励磁)の条件、実線は2コイル励磁(ホルダあり)-ホルダなし(2コイル励磁)を上下左右(
図9参照)の4方向の条件、一点鎖線はホルダ102あり(2コイル励磁)-ホルダ102なし(1コイル励磁)を上下左右の4方向の条件で求めた電流振幅値の差を示している。なお、2コイル同時励磁で上下左右(
図9参照)の4方向の条件としたのは、上下左右のコイル位置による電流特性が異なるためである。
【0058】
図8に示すように、ホルダ102あり(2コイル励磁)-ホルダ102なし(1コイル励磁)の条件で求めた電流振幅値の差である一点鎖線では、4本での乖離が大きい。
【0059】
それに比べて、2コイル励磁(ホルダあり)-ホルダなし(2コイル励磁)の条件で求めた電流振幅値の差である実線は、2コイル同時励磁にもかかわらず4本の乖離が小さく、コイル位置による異なる電流特性を相殺することができることが判る。
【0060】
そのため、2コイル同時励磁の際に用いる検量線は、ホルダ102がない状態で同じ数だけコイル107を励磁した条件で取得されたものを用いることが望ましい。
【0061】
ここで、搬送装置100では、コイル107を敷き詰めるが、1つのコイル107を励磁する際に、そのコイル107の上下左右に隣接するコイル107上にホルダ102が存在する場合、そのホルダ102が引き寄せされる。すなわち、複数載置されたホルダ102同士が衝突しやすくなる虞がある。
【0062】
これをより確実に防ぐために、コイル107を密に敷き詰めずに、
図9等に示すようにコイル107は1列飛びおよび1行飛びの格子状に配置する方が望ましい。この場合は、特には、
図9等の上下左右のいずれの方向にも隣接するコイル107が存在する位置のコイルをホルダ102が停止することが有るコイル107d、上下または左右のいずれかの方向に隣接するコイル107が存在する位置のコイルをホルダ102が停止することが無いコイル107cとする。
【0063】
これにより、搬送経路外の領域ではコイル107を省略することができ、部品コストを削減したり、軽量化したりすることができる、との追加の効果も得られる。
【0064】
この場合、2コイル同時励磁の励磁パターンは、以下の
図9乃至
図11に示すように、合計で7パターンとなる。
図9乃至
図11はホルダを停止する際に2コイルを励磁するパターンの一例を示す図である。
【0065】
複数コイル同時励磁用の検量線は、
図9に示すように、ホルダ102が停止することが無いコイル107cからホルダ102が停止することが有るコイル107dへの移動は4パターン存在するものとする。
【0066】
また、
図10に示すように、ホルダ102が停止することが有るコイル107dからホルダ102が停止することが無いコイル107cへの移動では2パターン存在するものとする。
【0067】
更に、
図11に示すように、ホルダ102が停止することが無いコイル107cからホルダ102が停止することが無いコイル107cへの移動では1パターン、存在するものとする。
【0068】
図6に戻り、複数コイルの同時励磁に限らず、1つのコイル107を励磁する場合にも、コイル107に印加する電流値の絶対値が異なると電流振幅差が異なることが明らかとなった。
【0069】
具体的には、1コイル励磁の場合でも、印加する電流値が0.09[A]の場合と0.11[A]の場合、0.20[A]の場合で電流振幅差が異なる。このことは複数コイル同時励磁の場合も同じで、同じ数だけ複数コイル同時に励磁する場合でも印加電流値の絶対値が異なると電流振幅値が異なることが判る。
【0070】
そこで、本実施例の制御部110は、単一のコイル107に駆動電圧を印加する場合は、単一コイル励磁時用の検量線を用いるが、特には、単一のコイル107に駆動電圧を印加する場合に、印加する電流値により検量線を変えることとする。
【0071】
同様に、本実施例の制御部110は、複数のコイル107に駆動電圧を同時に印加する場合に、複数コイル励磁時用の検量線を用いるが、印加する電流値により検量線を変えることとする。
【0072】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0073】
上述した本実施例の搬送装置100は、コア105、および巻線106を含むコイル107と、巻線106に電流を供給する駆動部108と、巻線106に流れる電流値を検出する電流検出部109と、ホルダ102の位置を演算する制御部110と、を備え、制御部110は、電流検出部109によって検出された電流値と予め求めておいた検量線とを基にホルダ102の位置を演算し、駆動部108による駆動電圧の印加の仕方によって用いる検量線を変えることによって、ホルダの位置検出精度を従来に比べて改善することができる。
【0074】
また、制御部110は、複数のコイル107に駆動電圧を同時に印加する場合は、複数コイル同時励磁用の検量線を用いることにより、ホルダ102の位置検出精度を維持し、ホルダ102を停止する際にも高い精度で狙いの位置に停止させることができる。その効果は印加する電流値にもよっても変動するが、30%程度の位置検出の乖離をなくすことが可能である。
【0075】
特に、複数のコイル107に駆動電圧を同時に印加する場合に、印加する電流値により検量線を変えることにより、その効果を高めることができる。
【0076】
更に、制御部110は、単一のコイル107に駆動電圧を印加する場合は、単一コイル励磁時用の検量線を用いる、特には制御部110は、単一のコイル107に駆動電圧を印加する場合に、印加する電流値により検量線を変えることでも、ホルダ102の位置検出精度を維持しつつ、ホルダ102を停止する際にも高い精度で狙いの位置に停止させることができる。
【0077】
また、複数コイル同時励磁用の検量線は、ホルダ102がない状態で同じ数だけコイル107を励磁した条件で取得されたものを用いることにより、より高い精度での検量線の作成が可能となり、ホルダ102の位置検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0078】
更に、複数コイル同時励磁用の検量線は、ホルダ102が停止することが無いコイル107cからホルダ102が停止することが有るコイル107dへの移動は4パターン、ホルダ102が停止することが有るコイル107dからホルダ102が停止することが無いコイル107cへの移動は2パターン、ホルダ102が停止することが無いコイル107cからホルダ102が停止することが無いコイル107cへの移動は1パターン、存在することで、必要なパターンを全て網羅することができる。
【0079】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0080】
100…搬送装置
101…検体容器
102…ホルダ
103…磁性体
104…搬送面
105…コア
106…巻線
107…コイル
107a…停止コイル
107b…通過直後コイル
107c…ホルダが停止することが無いコイル
107d…ホルダが停止することが有るコイル
108…駆動部
109…電流検出部
110…制御部
201…電圧波形
202a…電流波形
202b…電流波形
800…分析装置
900…制御用コンピュータ
1000…検体分析システム