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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-01
(45)【発行日】2025-09-09
(54)【発明の名称】表示装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/10 20200101AFI20250902BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20250902BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20250902BHJP
【FI】
G02B30/10
G02B26/08 J
G09F9/00 313
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021016715
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2021131535
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020026359
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰美
(72)【発明者】
【氏名】小池 崇文
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-176019(JP,A)
【文献】特開2008-015489(JP,A)
【文献】特開2007-114608(JP,A)
【文献】特開2010-060773(JP,A)
【文献】特開2015-144457(JP,A)
【文献】特表2009-515213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00-30/60
G02B 26/08
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルと、
前記パネルの表示面側に配置される第1マイクロレンズアレイであって、複数の開口が形成された第1電極、前記第1電極と対向する透明電極、及び前記第1電極と前記透明電極の間に配置される誘電性の透明な高分子材料を有する第1マイクロレンズアレイと、
前記第1マイクロレンズアレイの光出射側に配置され、複数の凸レンズの配列を有する第2マイクロレンズアレイと、
前記第1マイクロレンズアレイへの電圧印加を制御する制御装置と、
前記第1マイクロレンズアレイ及び前記第2マイクロレンズアレイに接続される駆動装置と、
を備え、
前記第1マイクロレンズアレイは、電圧の印加により前記開口に凹レンズを生成し、
前記制御装置は、前記第1マイクロレンズアレイに印加される前記電圧を制御して前記凹レンズの生成状態を制御することで、3次元表示と2次元表示を切り替え
前記駆動装置は、前記制御装置の制御の下で、前記第1マイクロレンズアレイに印加される前記電圧に応じて、前記第1マイクロレンズアレイと前記第2マイクロレンズアレイの少なくとも一つを駆動して、前記第1マイクロレンズアレイと前記第2マイクロレンズアレイの位置関係を調整することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1マイクロレンズアレイへの前記電圧の印加をオフにすることで3次元表示を行い、前記電圧の印加をオンにすることで、2次元表示することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1マイクロレンズアレイに印加される前記電圧を調整することで、前記第1マイクロレンズアレイの焦点距離を変えて、前記3次元表示の飛び出し量を変化させる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1マイクロレンズアレイに印加される前記電圧のレベルを上げることで、前記凹レンズの前記焦点距離を長くし、前記第1マイクロレンズアレイに印加される前記電圧のレベルを下げることで、前記凹レンズの前記焦点距離を短くすることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
パネルの表示面側に、第1マイクロレンズアレイと第2マイクロレンズアレイをこの順で配置し、前記第1マイクロレンズアレイは、複数の開口が形成された第1電極、前記第1電極と対向する透明電極、及び、前記第1電極と前記透明電極の間に配置される誘電性の透明な高分子材料で形成されており、前記第2マイクロレンズアレイは複数の凸レンズの配列を有し、
前記第1マイクロレンズアレイに印加される電圧を制御して、前記開口における凹レンズの生成を制御することで、3次元表示と2次元表示を切り替え
前記第1マイクロレンズアレイに印加される前記電圧に応じて、前記第1マイクロレンズアレイと前記第2マイクロレンズアレイの少なくとも一つを駆動して、前記第1マイクロレンズアレイと前記第2マイクロレンズアレイの位置関係を調整する、
ことを特徴とする表示方法。
【請求項6】
前記電圧の印加をオンにすることで、前記パネル上の画像を2次元表示し、
前記電圧の印加をオフにすることで、前記第2マイクロレンズアレイの出射側の空間に画像を3次元表示する、ことを特徴とする請求項5に記載の表示方法。
【請求項7】
前記第1マイクロレンズアレイに印加される前記電圧のレベルを調整することで、前記凹レンズの焦点距離を変えて、前記3次元表示の前記第2マイクロレンズアレイからの飛び出し量を変化させる、ことを特徴とする請求項5または6に記載の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示方法に関し、特に、三次元表示と二次元表示の切り替えが可能な表示装置と表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲーム、映画、テレビ放送などに三次元(以下、適宜「3D」とする)画像の表示が取り入れられている。3D画像とは、観察者から物体が立体的に見える画像、または物体が飛び出して見えたり奥行が感じられるような画像を指す。従来からのメガネ方式の3D表示だけではなく、バーチャルリアリティコンテンツを立体表示するヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)も普及している。
【0003】
一方で、メガネやHMDなどを装着せずに、裸眼で観察者に立体感を与える裸眼方式の3D表示も提案されている。自己組織化膜(SAM:self-assembled monolayer)の表面に液滴を置いて液体レンズの曲率を変えるマイクロレンズアレイを利用した3Dディスプレイ(たとえば、特許文献1参照)や、指向性の発光素子を画素とする表示パネルを形成する構成(たとえば、特許文献2)が知られている。開口を有する電極に印加される電圧を調整して開口内に形成される光学散乱体の光学特性を変化させるマイクロレンズアレイが知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平11-513129号公報
【文献】特許第5767531号
【文献】特開2019-120947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、レンズアレイのレンズを除くことで3D観察から二次元(以下、適宜「2D」とする)観察に切り替える構成が示唆されているが、レンズアレイのレンズを除くための具体的な手段は開示されていない。特許文献2は、指向性の発光素子を画素に用いることでレンズアレイを不要にしているが、あらかじめ所定の方向に指向性を有する発光素子が表示パネルの画素として組み込まれており、3D表示と2D表示の切り替えは予定されていない。
【0006】
本発明は、簡単な構成で3D表示と2D表示を切り替えることのできる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様では、表示装置は、
パネルと、
前記パネルの表示面側に配置される第1マイクロレンズアレイであって、複数の開口が形成された第1電極、前記第1電極と対向する透明電極、及び前記第1電極と前記透明電極の間に配置される誘電性の透明な高分子材料を有する第1マイクロレンズアレイと、
前記第1マイクロレンズアレイの光出射側に配置され、複数の凸レンズの配列を有する第2マイクロレンズアレイと、
前記第1マイクロレンズアレイへの電圧印加を制御する制御装置と、
を備え、
前記第1マイクロレンズアレイは、電圧の印加により前記開口に凹レンズを生成し、
前記制御装置は、前記第1マイクロレンズアレイに印加される前記電圧を制御して前記凹レンズの生成状態を制御することで、3D表示と2D表示を切り替える。
【発明の効果】
【0008】
簡単な構成で3D表示と2D表示を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の表示装置の模式図である。
図2】印加電圧の制御による2D表示と3D表示の切り替えを説明する図である。
図3】印加電圧の制御による凹レンズの曲率の変更を示す図である。
図4】パネルの画素とマイクロレンズの配置関係の例を示す図である。
図5】第1電極に形成された開口パターンの一例を示す図である。
図6】凹レンズと凸レンズの複合レンズ系を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態の表示装置1の模式図である。表示装置1は、ディスプレイ10、及び、ディスプレイに接続されて3D表示と2D表示の切り替え制御を行う情報処理装置50を有する。
【0011】
ディスプレイ10は、パネル11と、パネル11の表示面103側に配置される第1マイクロレンズアレイ20と、第1マイクロレンズアレイ20の光出射面203側に配置される第2マイクロレンズアレイ30を含む。第1マイクロレンズアレイ20は、焦点距離が可変の可変焦点レンズアレイである。第2マイクロレンズアレイ30は、各マイクロレンズの形状、すなわち焦点距離が固定のレンズアレイであるが、第2マイクロレンズアレイ30の位置は適宜調整可能である。
【0012】
パネル11は、電子ペーパー、サイネージ(電子看板)など、画像を表示する任意の媒体であり、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。
【0013】
第1マイクロレンズアレイ20には複数の開口24が形成されており、電圧印加のオン・オフに応じて、その光出射面203側で、開口24に後述する凹レンズの配列を出現させる。印加される電圧のレベルに応じて、形成される凹レンズの曲率が変化することで焦点距離が変化する。
【0014】
第2マイクロレンズアレイ30は、第1マイクロレンズアレイ20と反対側の面に、複数の凸レンズ35の配列を有する。第1マイクロレンズアレイ20の凹レンズと異なり、第2マイクロレンズアレイ30の凸レンズ35は固定であり、所定の曲率とピッチに設計されている。
【0015】
第1マイクロレンズアレイ20の開口24の配列と、第2マイクロレンズアレイ30の凸レンズ35の配列は対応しており、開口径、個数、配列位置等は、同じである。
【0016】
パネル11と第1マイクロレンズアレイ20の間の距離と、第1マイクロレンズアレイ20と第2マイクロレンズアレイの間の距離の少なくとも一方が可変となるように、パネル11、第1マイクロレンズアレイ20、第2マイクロレンズアレイのうちの少なくともひとつの位置を制御してもよい。
【0017】
情報処理装置50は、ユーザインタフェース51と制御装置52を有する。ディスプレイ10が情報処理装置の表示画面に組み込まれている場合は、情報処理装置50が駆動装置53を有していてもよい。
【0018】
ディスプレイ10が組み込まれた情報処理装置50は、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット端末、電子書籍リーダー、ATM、発券機など、表示画面と情報処理機能を有する任意の電子機器である。
【0019】
情報処理装置50は、必ずしも、ディスプレイ10と一体的に構成されていなくてもよい。たとえば、情報処理装置50は、ディスプレイ10を遠隔操作するリモートコントローラであってもよい。この場合、駆動装置53をディスプレイ10に組み込んで、情報処理装置50とディスプレイ10に無線通信機能を持たせてもよい。
【0020】
ユーザインタフェース51は、ユーザからのコマンド入力を受け付ける。コマンド入力は、2D表示と3D表示の切り替え指示、あるいは観察者が認識する3D画像の飛び出し量の変更指示を含む。
【0021】
制御装置52は、第1マイクロレンズアレイ20に印加される電圧のオン・オフを制御して開口24での凹レンズの生成を制御することで、3D表示と2D表示を切り替える。また、第1マイクロレンズアレイ20に印加される電圧のレベルを制御して、凹レンズの形成状態を制御し、3D画像の飛び出し量を制御する。制御装置52は、メモリ内蔵のマイクロプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のロジックデバイスなどで実現される。駆動装置53として、たとえば圧電アクチュエータを用いてもよい。
【0022】
図2は、第1マイクロレンズアレイ20への印加電圧の制御による2D表示と3D表示の切り替えを説明する図である。図2の(A)は、電圧が印加されない(V=0)状態、図2の(B)は、電圧V1が印加された(V=V1)状態である。
【0023】
第1マイクロレンズアレイ20は、開口24の配列を有する第1電極23と、第1電極23と対向する透明電極21と、第1電極23と透明電極21の間に配置される誘電性の高分子材料22の三層構造を有する。第1マイクロレンズアレイ20は、透明電極21がパネル11と対向し、第1電極23が第2マイクロレンズアレイ30と対向するように配置される。
【0024】
第1電極23と透明電極21は、可変電圧源26に接続されている。第1電極23と透明電極21の間に印加される電圧のオン・オフ、または印加される電圧のレベルを制御することで、誘電性の高分子材料22の電歪特性を利用して開口24に光散乱体を形成することができる。開口24に形成される個々の光散乱体は、凹レンズ25として機能する。
【0025】
凹レンズ25は、開口24の内部に形成されてもよいし、凹レンズ25の一部が開口24の外へ突出していてもよい。たとえば、レンズ外周が開口24から突出し、レンズ中心部が外周よりもくぼんだ凹形状であってもよい。
【0026】
高分子材料22は、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:polymethylmethacryrate)、ポリウレタン(polyurethan)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリ酢酸ビニル(polyvinylacetate)、ポリビニルアルコール(polyvinylalchol)、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylenetelephtalate)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)、シリコーンゴム(silicone elastomer)等、可視光に対して透明で電圧応答性の良好な材料を適宜選択することができる。実施形態では、電場の作用による変形が大きく、取扱いが容易なPVCを用いる。
【0027】
高分子材料22に、可塑剤とイオン液体またはイオン性界面活性剤の少なくとも一方を添加してもよい。可塑剤は高分子材料22に柔軟性を与える。イオン液体またはイオン性界面活性剤は高分子材料22の変形を促進し、印加電圧を低減することができる。
【0028】
高分子材料22の厚さは、開口24のサイズ、形成したい凹レンズの形状、第1電極23と透明電極21の厚さ等に応じて適宜決定されるが、一例として、1mm以下、好ましくは0.1mm~0.5mmである。微細な多数の凹レンズ25を有する第1マイクロレンズアレイ20を作製する場合は、高分子材料22の厚さが0.1mm以下になる場合もあり得る。
【0029】
第1電極23は金属材料または導電性材料で被覆した絶縁材料で形成されている。第1電極23に形成される開口24は、電圧が印加されたときに開口24に凹レンズ25が形成され得るサイズと形状を有する。開口24の平面形状は、円、楕円、長円、矩形など、レンズの用途に応じて設計可能である。開口24の大きさは、開口24内で高分子材料22が変形することができる。開口24の平面形状が円のときは、径が1mm以下である。開口24の平面形状が楕円または長円のときは、短径が1mm以下で、開口24の平面形状が矩形のときは、幅が1mm以下である。開口24の平面的な配列は格子配列やハニカム配列など自由に設定される。表示画像の画質は開口24に形成されるレンズ25を通して入る光量に依存しており、開口が占める面積を表す開口率を高くなるような配列にすることで高画質を得ることができる。好ましくは開口率50%以上である。
【0030】
第2マイクロレンズアレイは、全ての凸レンズの位置が第1マイクロレンズアレイの開口位置と合致していれば、厚さは限定されない。また凸レンズ自体が透明であればその他の非レンズ部分は透明でも不透明でもよい。
【0031】
透明電極21は、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム-スズ酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide:インジウム-亜鉛酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)等の透明な酸化物半導体材料で形成してもよいし、透明な導電性ポリマーを用いてもよい。
【0032】
図2の(A)で、電圧の印加が無い状態では、第1マイクロレンズアレイ20の高分子材料22は変形せず、パネル11の上の各画素から出射する光線は、第1マイクロレンズアレイ20をそのまま透過して、第2マイクロレンズアレイ30に入射する。第2マイクロレンズアレイ30の凸レンズ35を介して、入射した光線群は光点を形成し観察者の目に入射する。観察者は、それを3D画像として認識する。なお光点とは複数の光線が集まることで仮想的に光源、広義での画像として認識される点のことである。
【0033】
ディスプレイ10では、第1マイクロレンズアレイ20への印加電圧がオフの状態で、3D表示が行われる。なお、パネル11に表示されている画像は、一例として、第2マイクロレンズアレイ30と同様のマイクロレンズアレイを用いた立体カメラで撮影された画像である。
【0034】
図2の(B)で、第1マイクロレンズアレイ20に電圧V1が印加されると、高分子材料22が変形して、第1電極23の開口24に凹レンズ25が形成される。凹レンズ25は、パネル11上の各画素から出射された光束を拡散する。拡散された光線は、第2マイクロレンズアレイ30に入射し、凸レンズ35で屈折して平行光に変換される。観察者は、パネル11に表示されている画像を、2D画像として認識する。
【0035】
図3は、印加される電圧レベルの制御による凹レンズ25の曲率の変更を示す。図3の(A)で、第1マイクロレンズアレイ20に印加される電圧VがV1のときは(V=V1)、高分子材料22は印加される電圧に応答して変形し、開口24に凹レンズ25が形成される。
【0036】
一例として、透明電極21を陰極、開口24を有する第1電極23を陽極とする。透明電極21から高分子材料22に電子が注入され、負荷電種が形成される。その荷電種を含む高分子材料22は、電気的なクリープ変形により、陽極である第1電極23の開口24の内壁を沿うように開口24の外部に隆起し、第1電極23の表面に光散乱体が形成される。一方で、開口24の内壁に比べ開口24の中心部分は電界分布が低いため高分子材料22の変形は小さい。これにより、開口24に、比較的曲率の大きい凹レンズ25が形成される。
【0037】
凹レンズ25によって拡散された光を入射側に向かってたどったときに光軸OAと交わる点が、この凹レンズ25の光入射側の焦点fである。
【0038】
図3の(B)で、V1よりも大きい電圧V2が印加されると、高分子材料22の変形が図3の(A)よりも大きくなる。高分子材料22の弾性により、開口24の側面だけではなく、開口24の中心の近傍でも高分子材料22がせりあがる。開口24の中心の窪みが浅くなって、曲率が小さくなり、焦点距離が図3の(A)よりも長くなる。
【0039】
図3の(C)で、V1よりも小さい電圧V3が印加されると、高分子材料22の変形が図3の(A)よりも小さくなる。印加される電圧が小さいので、高分子材料22の変形も小さい。高分子材料22は、開口24の側面に沿ってわずかに引き上げられるが、開口24内の中心領域での高分子材料22の変位は非常に小さい。
【0040】
この場合も凹レンズ25の曲率が小さくなって、焦点距離が図3の(A)よりも長くなる。消費電力低減の観点からは、図3の(C)のように、印加電圧を小さくすることで焦点距離を長くするのが望ましい。印可電圧は高分子材料22の厚さにもよるが100~1,000Vの範囲であり、好ましくは100~800Vである。
【0041】
高分子材料22の変形は可逆的であり、電圧の印加により、凸レンズ35の出射光をほぼ平行光にする形状の凹レンズ25を形成した後に、電圧をオフにすることで、図2の(A)の3D表示に戻すことができる。
【0042】
図4は、パネル11の画素Pと凹レンズ25の配置関係の一例を示す。図4(A)は、平面形状が円形の凹レンズ25Aを用いる例である。一つの凹レンズ25Aは複数の画素Pをカバーしている。各画素Pは、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)などのカラーフィルタもしくは発光素子を含む。
【0043】
凹レンズ25Aによってカバーされる画素Pの数は4個に限定されず画素Pをカバーするように開口24を設計することができる。カラーフィルタの配列は図3の例に限定されず、たとえば、RGGBのベイヤ配列であってもよい。
【0044】
図4の(B)は、平面形状が矩形の凹レンズ25Bを用いる例である。一つの凹レンズ25Aは、4つの画素Pをカバーしているが、この例に限定されず、の画素Pをカバーするように開口24を設計することができる。
【0045】
実施形態は以下の仕様である。
(ディスプレイ10)
・方式:液晶ディスプレイ
・解像度:750×1300
・画素密度:330dpi
(第1マイクロレンズアレイ20)
(1) 第1電極23
・開口サイズ:150μm×500μm
・ピッチ:50μm
・開口率:50%
・厚さ:30μm
(2) 高分子材料22
・組成:可塑剤アジピン酸ジブチル83wt%添加PVC
・厚さ:0.3mm
(3) 透明電極21
・材質:ITOフィルム
・厚さ:0.1mm
・表面抵抗:30Ω/sq以下
・光線透過率(波長550nm):85%以上
(4) レンズ特性
・印加電圧:300V
・焦点距離(f):1.0mm
(第2マイクロレンズアレイ30)
・レンズサイズ:150μm×500μm
・ピッチ:50μm
・焦点距離(f):0.5mm
・第1マイクロレンズアレイとの間隔(d):0.8mm
【0046】
図5は、第1電極23に形成された開口パターンの画像である。開口24の短辺は、10~500μm、長辺は500~2000μm、短辺のピッチは、50~550μmの範囲とすることが可能である。第1電極23の材料にステンレス、アルミなどの金属を用い、厚さは10~100μmである。
【0047】
図6は、凹レンズ25と凸レンズ35の複合レンズ系を説明する図である。凹レンズ25は、電圧に応答して第1マイクロレンズアレイ20に形成される可変焦点のレンズである。凸レンズ35は、第2マイクロレンズアレイ30に形成されている第2焦点のレンズである。凹レンズ25と凸レンズ35の中心間の距離はdである。
【0048】
光軸OA上で、fは凹レンズ25の焦点、fは凸レンズ35の焦点、SとSは複合レンズの主面である。主点S及びSは、複合レンズの主面P及びPが光軸OAと直交する点である。
【0049】
パネル11上の物体(例えば画像)Aから凹レンズ25までの距離はa、凹レンズ25から、虚光源Aまでの距離はbである。虚光源Aから凸レンズ35までの距離はa、凸レンズ35から複合レンズによって形成される実像Aまでの距離はbである。
【0050】
物体Aから出射する光線のうち、光軸OAと平行な光線(i)は、凹レンズ25で屈折されて、レンズ前方の焦点fを虚光源とする方向に進み、その後、凸レンズ35で光軸OAに向かう方向に屈折される。
【0051】
凹レンズ25の中心を通る光線(ii)はそのまま直進し、凸レンズ35で光軸OAに向かう方向に屈折する。
【0052】
レンズ後方の焦点fに向かう光線(iii)は、凹レンズ25を通った後、光軸OAと平行に進み、凸レンズ35で屈折されて凸レンズ35の後ろ側の焦点fを通過する。
【0053】
凸レンズ35の前側の焦点f2を通る光線と同じ位置で凸レンズ35に入射する光線(iv)は、凸レンズ35を通った後、光軸OAと平行に進む。
【0054】
光線(i)~(iv)の交わる位置に、複合レンズにより実像Aが形成される。複合レンズの前側で光線(iv)が光軸OAと交わる点が、複合レンズの前側の焦点(図中で「左側の焦点位置」と表記されている)である。複合レンズの主点S1から、前側の焦点までの距離が複合レンズの焦点距離fである。
【0055】
複合レンズの後ろ側で光線(i)が光軸OAと交わる点が、複合レンズの後ろ側の焦点(図中で「右側の焦点位置」と表記されている)である。複合レンズの主点S2から、後ろ側の焦点までの距離も、同様に、複合レンズの焦点距離fである。
【0056】
凹レンズ25から複合レンズの主点S1までの距離σ1は、(f×d)/fである。凸レンズ35から複合レンズの主点S2までの距離σ2は、(f×d)/fである。f1が無限大のときが、図2(A)の初期状態である。
【0057】
図5の条件を満たすように、第1マイクロレンズアレイ20と、第2マイクロレンズアレイ30を組み合わせ、第1マイクロレンズアレイ20に印加する電圧条件を決定することで、2D表示に変更することができる。なお、2D表示を行う際に、パネル11に供給される元画像のデータの上下を逆にするように制御してもよい。
【0058】
このように、第1マイクロレンズアレイ20に印加される電圧のオン・オフを制御することで、2D表示と3D表示を切り替えることができる。また、印加する電圧のレベルを制御することで、観察者が認識する3D画像の飛び出し量を変えることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 表示装置
10 ディスプレイ
11 パネル
20 第1マイクロレンズアレイ
21 透明電極
22 高分子材料
23 第1電極
24 開口
25、25A、25B 凹レンズ
30 第2マイクロレンズアレイ
35 凸レンズ
50 情報処理装置
51 ユーザインタフェース
52 制御装置
53 駆動装置
103 表示面
203 光出射面
P 画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6