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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-01
(45)【発行日】2025-09-09
(54)【発明の名称】寿命判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20250902BHJP
   H02P 31/00 20060101ALI20250902BHJP
【FI】
B60G17/015 Z
H02P31/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022200381
(22)【出願日】2022-12-15
(65)【公開番号】P2024085709
(43)【公開日】2024-06-27
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 渉悟
(72)【発明者】
【氏名】神田 亮
(72)【発明者】
【氏名】神田 征司
(72)【発明者】
【氏名】田中 量子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 太久麿
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118787(JP,A)
【文献】特開平06-307348(JP,A)
【文献】特開平07-248167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G1/00-99/00
H02P4/00
25/08-25/098
29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を供給する供給装置の動力源であるブラシモータの寿命を判定する寿命判定装置であって、
流体の温度および流体の圧力をパラメータとして電流を導出するためのマップを記憶する記憶部と、
前記マップを用いて前記ブラシモータの電流を推定する電流推定部と、
前記電流推定部により推定された電流での前記ブラシモータの作動時間を計測する作動時間計測部と、
記ブラシモータの寿命を判定する寿命判定部とを備え
前記マップの温度が高くなるほど前記マップの電流が小さくなるように設定され、かつ、前記マップの圧力が高くなるほど前記マップの電流が大きくなるように設定され、
前記記憶部には、作動履歴情報が記憶され、
前記作動履歴情報には、前記マップの各電流での前記ブラシモータの作動時間が蓄積され、
前記寿命判定部は、前記作動履歴情報に蓄積された各電流での作動時間を用いて電流二乗時間積を算出するとともに、その電流二乗時間積が閾値を超過した場合に前記ブラシモータの寿命が到来したと判定することを特徴とする寿命判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の寿命判定装置において、
前記供給装置は、車高調整システムのアクチュエータに流体を供給するように構成されていることを特徴とする寿命判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシモータの寿命を判定する寿命判定装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
寿命判定装置は、モータ電流に基づいて、ブラシモータの寿命を判定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-118787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記した従来の寿命判定装置では、モータ電流を測定する電流センサを設ける必要がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、電流センサを設けることなく、ブラシモータの寿命を判定することが可能な寿命判定装置および寿命判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による寿命判定装置は、流体を供給する供給装置の動力源であるブラシモータの寿命を判定する寿命判定装置であって、流体の温度および流体の圧力をパラメータとして電流を導出するためのマップを記憶する記憶部と、前記マップを用いて前記ブラシモータの電流を推定する電流推定部と、前記電流推定部により推定された電流での前記ブラシモータの作動時間を計測する作動時間計測部と、前記ブラシモータの寿命を判定する寿命判定部とを備え、前記マップの温度が高くなるほど前記マップの電流が小さくなるように設定され、かつ、前記マップの圧力が高くなるほど前記マップの電流が大きくなるように設定され、前記記憶部には、作動履歴情報が記憶され、前記作動履歴情報には、前記マップの各電流での前記ブラシモータの作動時間が蓄積され、前記寿命判定部は、前記作動履歴情報に蓄積された各電流での作動時間を用いて電流二乗時間積を算出するとともに、その電流二乗時間積が閾値を超過した場合に前記ブラシモータの寿命が到来したと判定することを特徴としている。
【0008】
このように、流体の温度と流体の圧力とに基づいてブラシモータの電流が推定されることにより、電流センサを設けることなく、ブラシモータの寿命を判定することができる。
【0011】
上記寿命判定装置において、供給装置は、車高調整システムのアクチュエータに流体を供給するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の寿命判定装置によれば、電流センサを設けることなく、ブラシモータの寿命を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の車高調整システムの構成を示した概略図である。
図2図1の車高調整システムのECUを示したブロック図である。
図3図2のECUのマップの一例を示した図である。
図4図2のECUの作動履歴情報の一例を示した図である。
図5図2のECUによるブラシモータの作動履歴の蓄積動作を説明するためのフローチャートである。
図6図2のECUによるブラシモータの寿命判定動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態によるECU4が適用される車高調整システム100の構成について説明する。
【0017】
車高調整システム100は、車両における車輪に対する車体(図示省略)の高さ位置を調整するように構成されている。図1に示すように、車輪は、左側の前輪50FLと、右側の前輪50FRと、左側の後輪50RLと、右側の後輪50RRとを含んでいる。前輪50FLが前輪保持部材51FLに回転可能に保持され、前輪50FRが前輪保持部材51FRに回転可能に保持され、後輪50RLが後輪保持部材51RLに回転可能に保持され、後輪50RRが後輪保持部材51RRに回転可能に保持されている。
【0018】
車高調整システム100は、4つの油圧シリンダ1と、作動油給排装置2と、油圧回路3と、ECU4(図2参照)とを備えている。4つの油圧シリンダ1は、油圧シリンダ1FL、1FR、1RLおよび1RRを含んでいる。なお、油圧シリンダ1FL、1FR、1RLおよび1RRは、本発明の「アクチュエータ」の一例である。また、ECU4は、本発明の「寿命判定装置」の一例である。
【0019】
油圧シリンダ1FLは、前輪保持部材51FLと車体との間に設けられている。油圧シリンダ1FLは、ショックアブソーバとして機能する。油圧シリンダ1FLは、伸縮することによって前輪保持部材51FLと車体との間の距離を調整可能に構成されている。なお、前輪保持部材51FLと車体との間には、油圧シリンダ1FLと並列にサスペンションスプリング(図示省略)が設けられている。
【0020】
具体的に、油圧シリンダ1FLは、ハウジング11と、ピストン12と、ピストンロッド13とを含んでいる。ハウジング11が内部空間を有し、その内部空間にピストン12が移動可能に収容され、ピストン12にピストンロッド13が連結されている。ハウジング11が前輪保持部材51FLと連結され、ピストンロッド13が車体と連結されている。ハウジング11の内部空間がピストン12によって仕切られ、油室14および15が形成されている。ピストン12には連通路16が形成され、連通路16により油室14および15が連通されている。連通路16には、絞りが設けられている。このため、油圧シリンダ1FLは、ピストン12のハウジング11に対する移動速度に応じた減衰力を発生させるように構成されている。
【0021】
油圧シリンダ1FRは、前輪保持部材51FRと車体との間に設けられている。油圧シリンダ1RLは、後輪保持部材51RLと車体との間に設けられている。油圧シリンダ1RRは、後輪保持部材51RRと車体との間に設けられている。油圧シリンダ1FR、1RLおよび1RRのその他の構成は、上記した油圧シリンダ1FLと同様である。
【0022】
作動油給排装置2は、油圧回路3を介して4つの油圧シリンダ1に作動油を給排するために設けられている。作動油給排装置2は、オイルポンプ21と、ブラシモータ22と、リザーバタンク23と、チェックバルブ24と、リターンバルブ25とを含んでいる。なお、オイルポンプ21は本発明の「供給装置」の一例であり、作動油は本発明の「流体」の一例である。
【0023】
リザーバタンク23には、作動油が貯留されている。オイルポンプ21は、リザーバタンク23の作動油を汲み上げて油圧回路3の後述する共通通路31に供給するために設けられている。ブラシモータ22は、オイルポンプ21の動力源であり、オイルポンプ21を作動させるために設けられている。ブラシモータ22は、ブラシおよび整流子を用いて機械的な仕組みで動作するモータである。チェックバルブ24およびリターンバルブ25は、オイルポンプ21の吐出口側に並列に配置されている。
【0024】
チェックバルブ24は、オイルポンプ21から共通通路31に向かう作動油の流れを許容するとともに、共通通路31からオイルポンプ21に向かう作動油の流れを阻止するように構成されている。リターンバルブ25は、オイルポンプ21から共通通路31への作動油の供給と、共通通路31からリザーバタンク23への作動油の排出とを切り替えるために設けられている。具体的には、オイルポンプ21が停止している場合に、リターンバルブ25により、オイルポンプ21の吐出口側と共通通路31とが遮断されるとともに、共通通路31がリザーバタンク23側と連通される。一方、オイルポンプ21が作動している場合に、リターンバルブ25により、リザーバタンク23側と共通通路31とが遮断されるとともに、共通通路31がオイルポンプ21の吐出口側と連通される。
【0025】
油圧回路3は、4つの油圧シリンダ1と作動油給排装置2との間に設けられている。油圧回路3は、共通通路31と、4つの個別通路32と、4つの車高調整弁33とを含んでいる。4つの個別通路32は、個別通路32FL、32FR、32RLおよび32RRを有する。4つの車高調整弁33は、車高調整弁33FL、33FR、33RLおよび33RRを有する。
【0026】
共通通路31は、作動油給排装置2と4つの個別通路32との間に配置されている。すなわち、共通通路31が作動油給排装置2と接続され、共通通路31から4つの個別通路32に分岐されるようになっている。共通通路31には、温度センサ34および圧力センサ35が設けられている。
【0027】
個別通路32FLは、油圧シリンダ1FLを共通通路31と接続するために設けられている。個別通路32FLには、車高調整弁33FLが設けられている。車高調整弁33FLは、たとえば常閉の電磁開閉弁であり、油圧シリンダ1FLを共通通路31と連通または遮断させるために設けられている。車高調整弁33FLは、油圧シリンダ1FLの作動油の給排の際に開弁されるように構成されている。
【0028】
個別通路32FRは、油圧シリンダ1FRを共通通路31と接続するために設けられている。個別通路32FRには、車高調整弁33FRが設けられている。車高調整弁33FRは、たとえば常閉の電磁開閉弁であり、油圧シリンダ1FRを共通通路31と連通または遮断させるために設けられている。車高調整弁33FRは、油圧シリンダ1FRの作動油の給排の際に開弁されるように構成されている。
【0029】
個別通路32RLは、油圧シリンダ1RLを共通通路31と接続するために設けられている。個別通路32RLには、車高調整弁33RLが設けられている。車高調整弁33RLは、たとえば常閉の電磁開閉弁であり、油圧シリンダ1RLを共通通路31と連通または遮断させるために設けられている。車高調整弁33RLは、油圧シリンダ1RLの作動油の給排の際に開弁されるように構成されている。
【0030】
個別通路32RRは、油圧シリンダ1RRを共通通路31と接続するために設けられている。個別通路32RRには、車高調整弁33RRが設けられている。車高調整弁33RRは、たとえば常閉の電磁開閉弁であり、油圧シリンダ1RRを共通通路31と連通または遮断させるために設けられている。車高調整弁33RRは、油圧シリンダ1RRの作動油の給排の際に開弁されるように構成されている。
【0031】
図2に示すように、ECU4は、演算部41と、記憶部42と、入出力部43とを含んでいる。記憶部42には、車高調整システム100を制御するためのプログラムなどが記憶されている。演算部41は、記憶部42に記憶されたプログラムを実行することにより、車高調整システム100を制御するように構成されている。入出力部43には、温度センサ34、圧力センサ35、車高センサ(図示省略)、ブラシモータ22、および、4つの車高調整弁33などが接続されている。
【0032】
温度センサ34は、共通通路31の作動油の温度(油温)を検出するために設けられている。圧力センサ35は、共通通路31の作動油の圧力(油圧)を検出するために設けられている。車高センサは、車輪と車体との間の距離を検出するために設けられている。ECU4は、車高センサなどからの入力に基づいて、ブラシモータ22および4つの車高調整弁33を制御するように構成されている。
【0033】
-車高の昇降動作-
次に、車高調整システム100の車高の昇降動作の一例について説明する。
【0034】
[車高上昇時]
車高が高くされる場合には、ECU4により、ブラシモータ22を駆動してオイルポンプ21が作動されるとともに、4つの車高調整弁33が開弁される。このため、オイルポンプ21から吐出された作動油が、油圧回路3を介して4つの油圧シリンダ1に供給される。これにより、4つの油圧シリンダ1が伸びて車高が高くなる。その後、車高が目標値に到達すると、ECU4により、4つの車高調整弁33が閉弁され、オイルポンプ21の作動が停止される。
【0035】
[車高下降時]
車高が低くされる場合には、ECU4により、オイルポンプ21を停止させた状態のまま、4つの車高調整弁33が開弁される。このため、4つの油圧シリンダ1の作動油が、油圧回路3およびリターンバルブ25を介してリザーバタンク23に戻される。これにより、4つの油圧シリンダ1が縮んで車高が低くなる。その後、車高が目標値に到達すると、ECU4により、4つの車高調整弁33が閉弁される。
【0036】
-ブラシモータの寿命判定-
ここで、ブラシモータ22の作動時には、ブラシが摺動して摩耗する。このため、ブラシモータ22においてはブラシが劣化しやすい。そこで、ECU4は、ブラシの劣化度合いを推定して、ブラシモータ22の寿命を判定するように構成されている。
【0037】
ECU4は、温度センサ34の検出結果と圧力センサ35の検出結果とに基づいて、ブラシモータ22の電流(モータ電流)を推定するように構成されている。また、ECU4は、推定されたモータ電流でのブラシモータ22の作動時間を計測するように構成されている。さらに、ECU4は、推定されたモータ電流と、そのモータ電流での作動時間とに基づいて、ブラシモータ22の寿命を判定するように構成されている。なお、記憶部42に記憶されたプログラムが演算部41によって実行されることにより、本発明の「電流推定部」、「作動時間計測部」および「寿命判定部」が実現される。
【0038】
具体的に、ECU4の記憶部42には、マップ42aおよび作動履歴情報42bが記憶されている。マップ42aは、油温および油圧をパラメータとしてモータ電流を導出するためのものである。すなわち、ECU4は、マップ42aを用いてモータ電流を推定するように構成されている。なお、マップ42aは、実験やシミュレーション等によって予め作成されている。
【0039】
図3に例示するマップ42aでは、油温Tのパラメータが三段階で設定され、油圧Pのパラメータが四段階で設定されており、十二パターンのモータ電流MCが推定されるようになっている。たとえば、油温Tが閾値Tta未満であり、かつ、油圧Pが閾値Pta未満である場合には、モータ電流MCaaが設定されている。
【0040】
マップ42aでは、油温Tが高くなるほどモータ電流MCが小さくなるように設定されている。このため、たとえば、モータ電流MCabがモータ電流MCaaよりも小さく、モータ電流MCacがモータ電流MCabよりも小さい。また、マップ42aでは、油圧Pが高くなるほどモータ電流MCが大きくなるように設定されている。このため、たとえば、モータ電流MCbaがモータ電流MCaaよりも大きく、モータ電流MCcaがモータ電流MCbaよりも大きく、モータ電流MCdaがモータ電流MCcaよりも大きい。したがって、マップ42aでは、モータ電流MCdaが最も大きく、モータ電流MCacが最も小さい。
【0041】
図4に示すように、作動履歴情報42bには、各モータ電流MCでのブラシモータ22の作動時間OTが蓄積されている。たとえば、モータ電流MCaaでの作動時間OTaaなどが作動履歴情報42bには含まれている。作動時間OTは、ブラシモータ22の駆動時にECU4によって積算されるようになっている。
【0042】
そして、ECU4は、作動履歴情報42bに蓄積された各モータ電流MCでの作動時間OTを用いて電流二乗時間積I2tを算出するように構成されている。電流二乗時間積I2tは、以下の式(1)を用いて算出される。
【0043】
【数1】
【0044】
また、ECU4は、電流二乗時間積I2tが閾値を超過した場合に、ブラシモータ22の寿命が到来したと判定するように構成されている。この閾値は、実験やシミュレーション等に基づいて予め設定された値である。
【0045】
[作動履歴の蓄積動作]
次に、図5を参照して、ECU4によるブラシモータ22の作動履歴の蓄積動作について説明する。
【0046】
まず、図5のステップST1において、ブラシモータ22が始動されたか否かがECU4によって判断される。たとえば、車高上昇動作の開始時に、ブラシモータ22が始動される。そして、ブラシモータ22が始動されたとECU4によって判断された場合には、処理がステップST2に移る。その一方、ブラシモータ22が始動されていないとECU4によって判断された場合には、ステップST1が繰り返し行われる。すなわち、ブラシモータ22が始動されるまで処理が待機される。
【0047】
次に、ステップST2において、ECU4により、温度センサ34および圧力センサ35を用いて油温および油圧が取得される。なお、油温は、共通通路31の作動油の温度であり、油圧は、共通通路31の作動油の圧力である。そして、ステップST3において、ECU4により、マップ42aを用いてモータ電流が推定される。この推定は、ステップST2で取得された油温および油圧に基づいて行われる。
【0048】
次に、ステップST4において、ECU4により、推定されたモータ電流での作動時間が計測される。
【0049】
次に、ステップST5において、ECU4により、温度センサ34および圧力センサ35を用いて油温および油圧が取得される。そして、ステップST6において、ECU4により、マップ42aを用いてモータ電流が推定される。この推定は、ステップST5で取得された油温および油圧に基づいて行われる。
【0050】
次に、ステップST7において、推定されたモータ電流が遷移したか否かがECU4によって判断される。すなわち、ステップST6で推定されたモータ電流が、それ以前に推定されたモータ電流から変化したか否かがECU4によって判断される。そして、モータ電流が遷移したとECU4によって判断された場合には、処理がステップST8に移る。その一方、モータ電流が遷移していないとECU4によって判断された場合には、処理がステップST9に移る。
【0051】
ステップST8では、ECU4により、遷移前のモータ電流での作動時間が蓄積される。すなわち、ステップST4で計測された作動時間が、作動履歴情報42bにおける対応するモータ電流の作動時間に積算される。たとえば、モータ電流MCaaからモータ電流MCbaに遷移した場合に、遷移前のモータ電流MCaaで一秒間作動していたときには、作動履歴情報42bの対応するモータ電流MCaaの作動時間OTaaに一秒が加算される。その後、処理がステップST4に戻る。
【0052】
また、ステップST9では、ブラシモータ22が停止されたか否かがECU4によって判断される。たとえば、車高上昇動作の終了時に、ブラシモータ22が停止される。そして、ブラシモータ22が停止されたとECU4によって判断された場合には、処理がステップST10に移る。その一方、ブラシモータ22が停止されていないとECU4によって判断された場合には、処理がステップST4に戻る。
【0053】
ステップST10では、ECU4により、停止前のモータ電流での作動時間が蓄積される。すなわち、ステップST4で計測された作動時間が、作動履歴情報42bにおける対応するモータ電流の作動時間に積算される。たとえば、ブラシモータ22の停止前にモータ電流MCcbで二秒間作動していたときには、作動履歴情報42bの対応するモータ電流MCcbの作動時間OTcbに二秒が加算される。その後、処理がリターンに移る。
【0054】
[寿命判定動作]
次に、図6を参照して、ECU4によるブラシモータ22の寿命判定動作について説明する。
【0055】
まず、図6のステップST11において、所定期間が経過したか否かがECU4によって判断される。この所定期間は、予め設定された期間であり、たとえば1日である。そして、所定期間が経過したとECU4によって判断された場合には、処理がステップST12に移る。その一方、所定期間が経過していないとECU4によって判断された場合には、ステップST11が繰り返し行われる。すなわち、所定期間が経過するまで処理が待機される。つまり、後述するステップST12およびST13が所定期間毎に行われるようにされている。
【0056】
次に、ステップST12において、ECU4により、作動履歴情報42bを用いて電流二乗時間積が算出される。電流二乗時間積は、上記した式(1)を用いて算出される。
【0057】
次に、ステップST13において、電流二乗時間積が閾値を超過するか否かがECU4によって判断される。そして、電流二乗時間積が閾値を超過するとECU4によって判断された場合には、処理がステップST14に移る。その一方、電流二乗時間積が閾値を超過しないとECU4によって判断された場合には、処理がステップST11に戻る。
【0058】
ステップST14では、ECU4により、ブラシモータ22の寿命が到来したと判定される。この場合には、ECU4が図示省略した報知装置を用いて、ブラシモータ22の寿命が到来したことをユーザに報知する。これにより、寿命の到来したブラシモータ22の交換をユーザに促すことが可能である。
【0059】
-効果-
本実施形態では、上記のように、油温および油圧に基づいてモータ電流が推定され、推定されたモータ電流での作動時間が計測され、モータ電流および作動時間に基づいてブラシモータ22の寿命が判定される。このように、油温および油圧に基づいてモータ電流が推定されることにより、モータ電流を測定する電流センサを設けることなく、ブラシモータ22の寿命を判定することができる。すなわち、車高調整システム100に既存の温度センサ34および圧力センサ35を用いてモータ電流が推定されることにより、電流センサを追加する必要がないので、部品点数の増加を抑制することができる。そして、ブラシモータ22の寿命が判定されることにより、ブラシモータ22を適切に使い切ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、マップ42aを用いてモータ電流が推定されることによって、モータ電流を適切に推定することができる。
【0061】
また、本実施形態では、電流二乗時間積に基づいて寿命の到来が判定されることによって、寿命の到来を適切に判定することができる。
【0062】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0063】
たとえば、上記実施形態では、油圧シリンダ1が設けられる例を示した。これに限らず、油圧シリンダに代えてエアシリンダが設けられていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、寿命判定動作(図6参照)がECU4によって実行される例を示した。これに限らず、作動履歴情報をECUがサーバ装置(図示省略)に送信することにより、寿命判定動作がサーバ装置によって実行されるようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、マップ42aの油温のパラメータが三段階で設定され、マップ42aの油圧のパラメータが四段階で設定される例を示した。これに限らず、マップの油温のパラメータの段数はいくつであってもよいし、マップの油圧のパラメータの段数はいくつであってもよい。すなわち、十二パターンのモータ電流が推定される例を示したが、推定されるモータ電流のパターン数はこれに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、流体を供給する供給装置の動力源であるブラシモータの寿命を判定する寿命
判定装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1FL 油圧シリンダ(アクチュエータ)
1FR 油圧シリンダ(アクチュエータ)
1RL 油圧シリンダ(アクチュエータ)
1RR 油圧シリンダ(アクチュエータ)
4 ECU(寿命判定装置)
21 オイルポンプ(供給装置)
22 ブラシモータ
42 記憶部
42a マップ
42b 作動履歴情報
100 車高調整システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6