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特許7736021蓄電モジュールの製造方法および蓄電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-01
(45)【発行日】2025-09-09
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法および蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20250902BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20250902BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20250902BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20250902BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250902BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20250902BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20250902BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/193
H01M50/103
H01M50/121
H01M10/052
H01G11/84
H01M10/0585
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023022343
(22)【出願日】2023-02-16
(65)【公開番号】P2024116641
(43)【公開日】2024-08-28
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】丸山 康太
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】古村 佳貴
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-000059(JP,A)
【文献】特開2020-107491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/193
H01M 50/103
H01M 50/121
H01M 10/052
H01G 11/84
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体および活物質層を有する電極と、前記電極の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体と、を有する複数の電極シートが第1方向に積層された、積層体を準備する準備工程と、
前記第1方向から見て、前記積層体における前記枠体と重複する位置に、熱伝導率が1W/m・K以下である、一対の拘束部材を配置する配置工程と、
前記一対の拘束部材により前記積層体に拘束圧を付与しつつ、前記積層体における前記枠体と、前記一対の拘束部材とを加熱し、前記第1方向において隣り合う前記枠体を溶着させ、シール部を形成する加熱工程と、
を有し、
前記加熱工程においては、前記積層体における前記枠体部分にのみ前記拘束圧を付与する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記拘束部材の耐熱温度が、200℃以上である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記拘束部材の前記熱伝導率が、0.1W/m・K以下である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記拘束部材の材料が、無機材料である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記拘束部材の材料が、樹脂である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程において、前記積層体における前記シール部と、前記一対の拘束部材とを、放射加熱器により加熱する、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記放射加熱器が、赤外線ランプヒーターである、請求項6に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第1方向から見た前記積層体の形状は四角形であり、前記四角形を構成する各辺の長さが、それぞれ、30cm以上である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項9】
集電体および活物質層を有する複数の電極が第1方向に積層された電極体と、
前記電極体の外縁に沿って配置された樹脂製のシール部と、
を有する蓄電モジュールであって、
前記蓄電モジュールを側面視した場合、前記シール部において、前記第1方向において複数の溶着部が観察され、
前記第1方向に直交する第2方向において、前記シール部の側面から前記電極側に延在する、前記シール部の長さをAとし、前記第1方向における前記シール部の一方の端部における前記シール部の長さをA1とし、前記第1方向における前記シール部の他方の端部における前記シール部の長さをA2とし、前記第1方向における前記シール部の中心における前記シール部の長さをA3とした場合に、前記A1および前記A2が、前記A3より大きい、蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールの製造方法および蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池等の蓄電モジュールの製造方法において、複数の電極シートが積層された積層体の側面を加熱し、積層体を密封する技術が知られている。例えば、特許文献1には、複数のバイポーラ電極の各電極板の周縁部に枠体が接合された複数のバイポーラ電極ユニットを、セパレータを介して積層する積層工程と、積層体の積層方向において隣り合う枠体の周端面で構成されたシール端面を熱溶着する熱溶着工程と、を有する蓄電モジュールの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-174079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電極シートが積層された積層体の側面を加熱する際に、体積エネルギー密度の観点に基づいて積層体の厚さを可能な限り小さくするため、一対の拘束部材を用いて、積層体に拘束圧を付与することが想定される。例えば、拘束部材の材料が金属材料である場合、金属材料は熱伝導率が高いことから、積層体の側面を加熱した際に、積層体の側面に印加された熱の一部が拘束部材側に伝導し、密封性が不十分になりやすい。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、密封性が良好な蓄電モジュールの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
集電体および活物質層を有する電極と、上記電極の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体と、を有する複数の電極シートが第1方向に積層された、積層体を準備する準備工程と、
上記第1方向から見て、上記積層体における上記枠体と重複する位置に、熱伝導率が1W/m・K以下である、一対の拘束部材を配置する配置工程と、
上記一対の拘束部材により上記積層体に拘束圧を付与しつつ、上記積層体における上記枠体と、上記一対の拘束部材とを加熱し、上記第1方向において隣り合う上記枠体を溶着させ、シール部を形成する加熱工程と、
を有する、蓄電モジュールの製造方法。
【0007】
[2]
上記拘束部材の耐熱温度が、200℃以上である、[1]に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0008】
[3]
上記拘束部材の上記熱伝導率が、0.1W/m・K以下である、[1]または[2]に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0009】
[4]
上記拘束部材の材料が、無機材料である、[1]から[3]までのいずれかに記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0010】
[5]
上記拘束部材の材料が、樹脂である、[1]から[3]までのいずれかに記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0011】
[6]
上記加熱工程において、上記積層体における上記シール部と、上記一対の拘束部材とを、放射加熱器により加熱する、[1]から[5]までのいずれかに記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0012】
[7]
上記放射加熱器が、赤外線ランプヒーターである、[6]に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0013】
[8]
上記第1方向から見た上記積層体の形状は四角形であり、上記四角形を構成する各辺の長さが、それぞれ、30cm以上である、[1]から[7]までのいずれかに記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0014】
[9]
集電体および活物質層を有する複数の電極が第1方向に積層された電極体と、
上記電極体の外縁に沿って配置された樹脂製のシール部と、
を有する蓄電モジュールであって、
上記第1方向に直交する第2方向において、上記シール部の側面から上記電極側に延在する、上記シール部の長さをAとし、上記第1方向における上記シール部の一方の端部における上記シール部の長さをAとし、上記第1方向における上記シール部の他方の端部における上記シール部の長さをAとし、上記第1方向における上記シール部の中心における上記シール部の長さをAとした場合に、上記Aおよび上記Aが、上記Aより大きい、蓄電モジュール。
【発明の効果】
【0015】
本開示における蓄電モジュールの製造方法は、密封性が良好な蓄電モジュールが得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示における積層体を例示する概略断面図である。
図2図1に示す積層体の分解図である。
図3】本開示における配置工程および加熱工程を例示する概略断面図である。
図4】本開示における効果を説明する概略断面図である。
図5】本開示における積層体を例示する概略平面図である。
図6】本開示における配置工程を例示する概略断面図である。
図7】本開示における加熱工程を例示する概略平面図である。
図8】本開示における蓄電モジュールを例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0018】
A.蓄電モジュールの製造方法
図1は本開示における積層体を例示する概略断面図であり、図2図1に示す積層体の分解図である。また、図3は本開示における配置工程および加熱工程を例示する概略断面図である。
【0019】
図1および図2に示すように、本開示においては、まず積層体Lを準備する(準備工程)。図2に示すように、積層体Lは、複数の電極シートESが、第1方向Dに積層された構造を有する。電極シートESは、集電体1と、集電体1上に配置された活物質層(正極活物質層2、負極活物質層3)と、を有する電極Eを備える。図2に示す積層体Lは、電極シートESとして、(i)電極Eとしてバイポーラ電極BPを有する電極シート、(ii)電極Eとして正極側端部電極CAを有する電極シート、および、(iii)電極Eとして負極側端部電極ANを有する電極シートを有する。また、図2に示すように、電極シートESは、電極E(集電体1)の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体5を有する。
【0020】
図3に示すように、第1方向Dから見て、積層体Lにおける枠体5と重複する位置に、一対の拘束部材20(20a、20b)を配置する(配置工程)。本開示においては、拘束部材20の熱伝導率が低いことを一つの特徴とする。次に、一対の拘束部材20により積層体Lに拘束圧を付与しつつ、放射加熱器30を用いて、積層体Lにおける枠体5と、一対の拘束部材20とを加熱し、第1方向Dにおいて隣り合う枠体5を溶着させ、シール部SPを形成する。
【0021】
本開示においては、熱伝導率が低い拘束部材を用い、枠体および拘束部材を加熱することで、密封性が良好な蓄電モジュールが得られる。上述したように、複数の電極シートが積層された積層体の側面を加熱する際に、体積エネルギー密度の観点に基づいて積層体の厚さを可能な限り小さくするため、一対の拘束部材を用いて、積層体に拘束圧を付与することが想定される。積層体に拘束圧を付与することで、第1方向において隣り合う枠体が潰され、積層体の厚さを小さくできる。
【0022】
例えば、拘束部材の材料が金属材料である場合、金属材料は熱伝導率が高いことから、積層体の側面を加熱した際に、積層体の側面に印加された熱の一部が拘束部材側に伝導し、密封性が不十分になりやすい。ここで、図4(a)に示すように、第1方向Dに直交する第2方向Dにおいて、シール部SPの側面SSから電極E側に延在する、シール部SPの長さをAとする。また、第1方向Dにおけるシール部SPの一方の端部tにおけるシール部SPの長さをAとし、第1方向Dにおけるシール部SPの他方の端部tにおけるシール部SPの長さをAとし、第1方向Dにおけるシール部SPの中心cにおけるシール部SPの長さをAとする。図4(a)に示すように、拘束部材の材料が金属材料である場合、金属材料は熱伝導率が高いことから、積層体Lの側面SSに印加された熱の一部が拘束部材側に伝導する。その結果、AおよびAがAより小さくなり、端部tおよび端部tにおける密封性が不十分になりやすい。
【0023】
これに対して、本開示においては、熱伝導率が低い拘束部材を用い、枠体および拘束部材を加熱する。これにより、積層体の側面に印加された熱の一部が拘束部材側に伝導することを抑制でき、密封性が良好な蓄電モジュールが得られる。また、加熱条件を調整することで(例えば、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりすることで)、拘束部材の側面に印加された熱の一部を、積層体側に伝導させることができる。これにより、例えば図4(b)に示すように、AおよびAをAより大きくすることができる。端部tおよび端部tは、外部からの応力が加わりやすい位置であるため、その密封性を高くすることで、耐久性に優れた蓄電モジュールが得られる。
【0024】
1.準備工程
本開示における準備工程は、集電体および活物質層を有する電極と、上記電極の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体とを有する、複数の電極シートが、第1方向に積層された、積層体を準備する工程である。
【0025】
(1)電極シート
電極シートは、集電体および活物質層を有する電極と、上記電極の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体とを有する。電極は、集電体と、集電体の一方の表面に形成された活物質層と、を少なくとも有する。活物質層は、正極活物質層であってもよく、負極活物質層であってもよい。また、電極は、集電体の両面に、それぞれ活物質層を有していてもよい。
【0026】
図2に示すように、電極シートESは、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面に配置された正極活物質層と、集電体1の一方の面に配置された負極活物質層と、を有するバイポーラ電極を有していてもよい。また、特に図示しないが、電極シートは、電極として、集電体の両面に、それぞれ正極活物質層が配置された電極を有していてもよく、集電体の両面に、それぞれ負極活物質層が配置された電極を有していてもよい。
【0027】
図2に示すように、電極シートESは、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面に配置された正極活物質層2と、を有する正極側端部電極CAを有していてもよい。また、電極シートESは、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面に配置された負極活物質層3と、を有する負極側端部電極ANを有していてもよい。
【0028】
図2に示すように、電極シートESは、電極Eの外縁に沿って配置された樹脂製の枠体5を有する。枠体5に用いられる樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。電極シートESを第1方向Dから見た場合に、枠体5は、通常、電極E(集電体1)の外縁全周に沿って配置される。枠体5は、後述するシール部を形成するために用いられ、シール部により、電解液の漏れを防止する。例えば、電極E(集電体1)の外縁形状が四角形である場合、その四角形の外縁全周に沿って、枠体5が配置される。また、図2に示すように、枠体5は、集電体1の一方の主面pの一部と、集電体1の他方の主面qの一部と、集電体1の外縁を構成する側面rの全体と、を覆うことが好ましい。
【0029】
(2)積層体
図1および図2に示すように、積層体Lは、第1方向Dに積層された、複数の電極シートESを有する。また、図1に示すように、積層体Lは、第1方向Dに積層された、複数の発電単位U(U、U、U)を有していてもよい。発電単位は、通常、正極活物質層、セパレータおよび負極活物質層を有する単位である。後述するように、発電単位に電解液が供給されることで、電池として機能する。図1に示すように、複数の発電単位U(U、U、U)は、互いに、直列接続されていてもよい。また、特に図示しないが、複数の発電単位は、互いに、並列接続されていてもよい。
【0030】
図1において、発電単位Uは、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2と、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。また、発電単位Uは、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2と、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。このように、隣り合う2つのバイポーラ電極により、一つの発電単位が構成されていてもよい。また、発電単位Uは、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2と、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。
【0031】
第1方向から見た積層体の形状(平面視形状)は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形等の四角形が挙げられる。例えば、図5に示す積層体Lの平面視形状は、四角形である。積層体の平面視形状を構成する各辺の長さは、特に限定されないが、それぞれ、例えば30cm以上であり、50cm以上であってもよく、100cm以上であってもよい。一方、上記各辺の長さは、それぞれ、例えば200cm以下である。積層体が大型化するほど、密封性の管理が難しくなる。本開示においては、積層体が大型化した場合であっても、熱伝導率が低い拘束部材を用い、枠体および拘束部材を加熱することで、密封性が良好な蓄電モジュールが得られる。
【0032】
図5に示すように、積層体Lは、入れ子6を有していてもよい。入れ子6の一方の端部は、積層体Lの内部(発電単位の空間)に存在し、入れ子6の他方の端部は、積層体Lの外部に存在している。また、入れ子6は、第1方向Dに直交する第2方向Dに延在するように配置される。後述する加熱工程の後に、入れ子6を抜くことで、各発電単位に電解液を供給するための貫通孔が形成される。また、特に図示しないが、積層体は、第2方向Dに延在し、各発電単位の電圧を検出するための電圧検出用端子を有していてもよい。
【0033】
積層体の作製方法は、特に限定されない。図2に示すように、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BPにおける枠体5と、バイポーラ電極BPにおける枠体5との間に、別の枠体5(スペーサ51)を配置する。同様に、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2と、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BPにおける枠体5と、負極側端部電極ANにおける枠体5との間に、別の枠体5(スペーサ51)を配置する。同様に、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BPにおける枠体5と、正極側端部電極CAにおける枠体5との間に、別の枠体5(スペーサ51)を配置する。このようにして、積層体Lが得られる。
【0034】
2.配置工程
本開示における配置工程は、上記第1方向において、上記積層体における上記枠体と重複する位置に、熱伝導率が1W/m・K以下である、一対の拘束部材を配置する工程である。具体的には、図6に示すように、第1方向Dから見て、積層体Lにおける枠体5と重複する位置に、一対の拘束部材20(20a、20b)を配置する。
【0035】
拘束部材の熱伝導率は、通常、1W/m・K以下であり、0.5W/m・K以下であってもよく、0.3W/m・K以下であってもよく、0.1W/m・K以下であってもよい。例えば、拘束部材の材料が金属である場合、熱伝導率は1W/m・Kより大きくなる。例えば、ステンレス鋼の熱伝導率は16W/m・Kであり、アルミニウムの熱伝導率は236W/m・Kである。
【0036】
拘束部材の熱伝導率は、樹脂製の枠体の熱伝導率より低くてもよい。例えば、枠体がポリエチレン製である場合、枠体の熱伝導率は、例えば、0.33W/m・K(低密度PE)~0.52W/m・K(高密度PE)である。
【0037】
拘束部材の耐熱温度は、通常、樹脂製の枠体の融点より高い。また、拘束部材の耐熱温度は、後述する加熱工程における加熱温度より高い。拘束部材の耐熱温度が、樹脂製の枠体の融点、または、加熱工程における加熱温度より低いと、十分な加熱を行うことができないからである。拘束部材の耐熱温度とは、拘束部材が焼損しない温度をいう。すなわち、拘束部材が、拘束機能を維持できる温度をいう。例えば、拘束部材の材料が無機材料である場合、その融点を耐熱温度と見做してもよい。また、例えば、拘束部材の材料が樹脂である場合、その荷重たわみ温度を、耐熱温度と見做してもよい。
【0038】
拘束部材の耐熱温度は、例えば200℃以上であり、250℃以上であってもよく、350℃以上であってもよい。拘束部材の耐熱温度が高いことで、枠体を十分に加熱することができる。また、拘束部材の耐熱温度の上限は、特に限定されない。
【0039】
拘束部材の材料としては、無機材料、樹脂が挙げられる。無機材料としては、例えば、アルミナ、シリカ等のセラミックス、ガラス、石膏、煉瓦、ケイ酸カルシウム、コンクリートが挙げられる。また、上記樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系樹脂、ポリアミドイミド(PAI)系樹脂、ポリイミド(PI)系樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)系樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)系樹脂、ポリベンゾイミダゾール(PBI)系樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)系樹脂、ポリアリレート(PAR)系樹脂が挙げられる。
【0040】
3.加熱工程
本開示における加熱工程は、上記一対の拘束部材により上記積層体に拘束圧を付与しつつ、上記積層体における上記枠体と、上記一対の拘束部材とを加熱し、上記第1方向において隣り合う上記枠体を溶着させ、シール部を形成する工程である。
【0041】
拘束部材により積層体に付与される拘束圧は、特に限定されないが、例えば1kPa以上30MPa以下であり、0.1MPa以上10MPa以下であってもよい。また、拘束圧は、例えば、一対の拘束部材に接続されたクランプにより調節できる。
【0042】
加熱工程においては、積層体における枠体と、一対の拘束部材とを加熱し、第1方向において隣り合う枠体を溶着させる。すなわち、枠体のみならず、拘束部材も加熱する。拘束部材の焼損を防止する観点から、従来は、拘束部材を避けつつ枠体を加熱していた。これに対して、本開示においては、耐熱温度が高い拘束部材を用いることで、枠体のみならず、拘束部材も加熱する。第1方向に直交する第2方向からみて、枠体の単位面積当たりに印加される熱量をQとし、拘束部材の単位面積当たりに印加される熱量をQとした場合、Qに対するQの割合(Q/Q)は、例えば0.3以上であり、0.5以上であってもよく、0.7以上であってもよく、0.9以上であってもよい。
【0043】
本開示においては、通常、枠体の側面(第1方向に延在する面)に対して、加熱を行うことで、第1方向において隣り合う枠体を溶着させ、シール部を形成する。加熱温度は、枠体の材料に応じて適宜選択されるが、例えば、120℃以上300℃以下であり、150℃以上250℃以下であってもよい。加熱は、例えば、赤外線ランプヒーター等の放射加熱器を用いて行われる。例えば、図3に示すように、放射加熱器30を用いて、枠体5の側面SSと、一対の拘束部材20(20a、20b)を加熱する。赤外線ランプの出力は、1本あたり、例えば100W以上であり、150W以上であってもよく、300W以上であってもよい。
【0044】
図7に示すように、放射加熱器30を基準として、積層体Lの反対側に配置された送風装置40を用いて、積層体Lに向けて風を送ってもよい。送風することで、例えば、枠体の側面において、複数の入れ子が突出している場合であっても、複数の入れ子の間に空気が滞留することを防止でき、加熱ムラの発生を抑制できる。送風装置40から吐出される風温は、常温であってもよく、50℃以上であってもよく、100℃以上であってもよく、150℃以上であってもよい。
【0045】
図4(b)に示すように、第1方向Dに直交する第2方向Dにおいて、シール部SPの側面SSから電極E側に延在する、シール部SPの長さをAとする。シール部SPの長さAは、例えば、シール部SPの断面を観察することにより求められる。また、第1方向Dにおけるシール部SPの一方の端部tにおけるシール部SPの長さをAとし、第1方向Dにおけるシール部SPの他方の端部tにおけるシール部SPの長さをAとし、第1方向Dにおけるシール部SPの中心cにおけるシール部SPの長さをAとする。図4(b)に示すように、AおよびAは、Aより大きいことが好ましい。
【0046】
に対するAの割合(A/A)は、例えば1.05以上であり、1.2以上であってもよく、1.5以上であってもよい。同様に、Aに対するAの割合(A/A)は、例えば1.05以上であり、1.2以上であってもよく、1.5以上であってもよい。また、図4(b)に示すように、シール部SPにおける電極E側の側面αは、電極Eの外側(電極Eの中心とは反対側)を凸とする湾曲状であってもよい。
【0047】
4.その他の工程
図5に示すように、積層体Lが入れ子6を有する場合、本開示における蓄電モジュールの製造方法は、上述した加熱工程後に、積層体Lから入れ子6を除くことにより貫通孔を形成する貫通孔形成工程を有していてもよい。
【0048】
本開示における蓄電モジュールの製造方法は、上述した貫通孔形成工程の後に、上記貫通孔を介して、上記積層体の内部に、電解液を供給する電解液供給工程を有していてもよい。電解液の供給方法は、特に限定されず、公知の方法が用いられる。
【0049】
本開示における蓄電モジュールの製造方法は、上述した電解液供給工程の後に、上記貫通孔を封止する封止工程を有していてもよい。貫通孔の封止方法は特に限定されないが、例えば、フィルムを用いて貫通孔を封止する方法が挙げられる。
【0050】
5.蓄電モジュール
本開示における蓄電モジュールの具体例としては、二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)、電気二重層キャパシタが挙げられる。また、蓄電デバイスの用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における蓄電デバイスは、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0051】
B.蓄電モジュール
図8は、本開示における蓄電モジュールを例示する概略断面図である。図8に示す蓄電モジュール100は、複数の電極Eが第1方向Dに積層された電極体10と、電極体10の外縁に沿って配置された樹脂製のシール部SPと、を有する。また、シール部SPにより密封された、電極体10の内部には、電解液7が充填されている。また、図4(b)に示すように、第1方向Dに直交する第2方向Dにおいて、シール部SPの側面SSから電極E側に延在する、シール部SPの長さをAとする。また、第1方向Dにおけるシール部SPの一方の端部tにおけるシール部SPの長さをAとし、第1方向Dにおけるシール部SPの他方の端部tにおけるシール部SPの長さをAとし、第1方向Dにおけるシール部SPの中心cにおけるシール部SPの長さをAとする。図4(b)に示すように、AおよびAが、Aより大きい。
【0052】
本開示によれば、AおよびAが、Aより大きいため、良好な密封性および耐久性を有する蓄電モジュールとなる。本開示における蓄電モジュールについては、上記「A.蓄電モジュールの製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0053】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0054】
1…集電体
2…正極活物質層
3…負極活物質層
4…セパレータ
5…枠体
10…電極体
20…拘束部材
30…放射加熱器
100…蓄電モジュール
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8