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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-01
(45)【発行日】2025-09-09
(54)【発明の名称】蓄電セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/466 20210101AFI20250902BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20250902BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALI20250902BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20250902BHJP
   H01M 50/426 20210101ALN20250902BHJP
   H01M 50/414 20210101ALN20250902BHJP
【FI】
H01M50/466
H01M10/04 Z
H01M10/0583
H01M50/46
H01M50/426
H01M50/414
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023079351
(22)【出願日】2023-05-12
(65)【公開番号】P2024163598
(43)【公開日】2024-11-22
【審査請求日】2024-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 敦史
(72)【発明者】
【氏名】柿下 健一
(72)【発明者】
【氏名】和泉 潤
(72)【発明者】
【氏名】三村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】大畑 耕太
(72)【発明者】
【氏名】倉下 那奈
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0367918(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0024089(KR,A)
【文献】特開2019-145287(JP,A)
【文献】国際公開第2022/236736(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40 - 50/497
H01M 10/04 - 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を収容するセルケースと、
前記セルケース内に収容された電解液と、を備え、
前記電極体は、
一方向に並ぶように配置された複数の電極と、
つづら折り状に形成されており、前記複数の電極の各々の間を絶縁するセパレータと、を備え、
前記セパレータは、
前記一方向に互いに隣接する一対の電極間に介在する複数の介在部と、
前記複数の介在部のうちの一の介在部の上端部と、前記複数の介在部のうち前記一方向における一方側に前記一の介在部に隣接する介在部の上端部と、を互いに連結する上折返し部と、
前記複数の介在部のうちの前記一の介在部の下端部と、前記複数の介在部のうち前記一方向における他方側に前記一の介在部に隣接する介在部の下端部と、を互いに連結する下折返し部と、
前記一方向及び上下方向の双方と直交する幅方向における前記複数の電極の両端部と対向しており、前記下折返し部に接続された側面被覆部と、を含み、
前記複数の電極は、複数の正極電極及び複数の負極電極を有し、
前記下折返し部は、前記負極電極の下方に配置されており、
前記下折返し部の空隙率は、前記介在部の空隙率よりも小さく、
前記側面被覆部は、前記下折返し部とともに、前記負極電極の下方に電解液を貯留する貯留空間を形成している、蓄電セル。
【請求項2】
前記下折返し部には、前記セパレータの空隙を埋める空隙充填材が設けられている、請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記側面被覆部には、前記セパレータの空隙を埋める空隙充填材が設けられている、請求項に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記セパレータとは異なる部材であって、電解液を保持可能な液保持部材をさらに備え、
前記液保持部材は、上下方向における前記セパレータの端部、及び、前記幅方向における前記セパレータの端部の少なくとも一方に設けられている、請求項1に記載の蓄電セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-67619号公報には、複数の電極と各電極間に設けられたセパレータとを備える電極組立体と、電極組立体及び電解液を収容するケースと、を備える二次電池が開示されている。セパレータは、つづら折り状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-67619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2014-67619号公報に記載される二次電池では、充放電時等に負極電極から電解液が放出されるため、負極電極において電解液が不足する懸念がある。
【0005】
本開示の目的は、負極電極における電解液の不足を抑制することが可能な蓄電セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った蓄電セルは、電極体と、前記電極体を収容するセルケースと、前記セルケース内に収容された電解液と、を備え、前記電極体は、一方向に並ぶように配置された複数の電極と、つづら折り状に形成されており、前記複数の電極の各々の間を絶縁するセパレータと、を備え、前記セパレータは、前記一方向に互いに隣接する一対の電極間に介在する複数の介在部と、前記複数の介在部のうちの一の介在部の上端部と、前記複数の介在部のうち前記一方向における一方側に前記一の介在部に隣接する介在部の上端部と、を互いに連結する上折返し部と、前記複数の介在部のうちの前記一の介在部の下端部と、前記複数の介在部のうち前記一方向における他方側に前記一の介在部に隣接する介在部の下端部と、を互いに連結する下折返し部と、を含み、前記複数の電極は、複数の正極電極及び複数の負極電極を有し、前記負極電極は、前記下折返し部上に配置されており、前記下折返し部の空隙率は、前記介在部の空隙率よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、負極電極における電解液の不足を抑制することが可能な蓄電セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態における蓄電セルを概略的に示す斜視図である。
図2図1に示される蓄電セルの断面図である。
図3】電極体の断面図である。
図4】つづら折り状に形成される前の状態におけるセパレータの平面図である。
図5】電極タブと集電タブとの接続工程を概略的に示す斜視図である。
図6】電極タブ及び集電タブを折曲げる工程を概略的に示す斜視図である。
図7】電極体をケース本体の挿入する工程を概略的に示す斜視図である。
図8】電極体の変形例を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態における蓄電セルを概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示される蓄電セルの断面図である。
【0011】
図1及び図2に示されるように、蓄電セル1は、電極体100と、セルケース200と、電解液(図示略)と、一対の外部端子300と、一対の連結部材400と、絶縁部材500と、を備えている。
【0012】
図3は、電極体の断面図である。図3に示されるように、電極体100は、複数の電極110,120と、セパレータ130と、絶縁フィルム140(図7を参照)と、を備えている。
【0013】
図3に示されるように、複数の電極110,120は、一方向(図3における左右方向)に並ぶように配置されている。複数の電極110,120は、複数の正極電極110と、複数の負極電極120と、を有している。
【0014】
各正極電極110は、幅方向(一方向及び上下方向の双方と直交する方向)に長い長方形形状に形成されている。各正極電極110は、正極集電箔112と、正極集電箔112の両面に設けられた正極活物質層114と、を有している。図2及び図5等に示されるように、正極集電箔112は、正極活物質層114が設けられていない正極タブ112pを有している。正極タブ112pは、幅方向(図3において紙面と直交する方向)における一方側に向かって突出している。
【0015】
各負極電極120は、幅方向に長い長方形形状に形成されている。各負極電極120は、負極集電箔122と、負極集電箔122の両面に設けられた負極活物質層124と、を有している。図2及び図5等に示されるように、負極集電箔122は、負極活物質層124が設けられていない負極タブ122nを有している。負極タブ122nは、幅方向における他方側に向かって突出している。
【0016】
セパレータ130は、正極電極110及び負極電極120間を絶縁している。セパレータ130は、絶縁材料からなり、イオンの透過を許容する微小な空隙を有している。図3に示されるように、セパレータ130は、つづら折り状に形成されている。
【0017】
図4に示されるように、セパレータ130は、セパレータ本体132と、側面被覆部134と、を有している。
【0018】
セパレータ本体132は、つづら折り状に形成される前の状態では長方形形状を呈している。セパレータ本体132は、各電極110,120間につづら折り状に形成されながら配置される。セパレータ本体132は、複数の介在部132aと、複数の上折返し部132bと、複数の下折返し部132cと、最外被覆部132dと、を有している。
【0019】
各介在部132aは、一方向に互いに隣接する一対の電極110,120間に介在している。つまり、各介在部132aは、正極電極110及び負極電極120間を絶縁する機能を有している。各介在部132aは、矩形状の領域で構成されている。
【0020】
各上折返し部132bは、複数の介在部132aのうちの一の介在部132aの上端部と、複数の介在部132aのうち一方向における一方側に前記一の介在部132aに隣接する介在部132aの上端部と、を互いに連結している。本実施形態では、上折返し部132bは、正極電極110の上方に配置されている。
【0021】
各下折返し部132cは、複数の介在部132aのうちの前記一の介在部の下端部と、複数の介在部132aのうち一方向における他方側に前記一の介在部に隣接する介在部132aの下端部と、を互いに連結している。本実施形態では、下折返し部132cは、負極電極120の下方に配置されている。換言すれば、負極電極120は、下折返し部132c上に配置されている。下折返し部132cの空隙率は、介在部132aの空隙率よりも小さい。例えば、下折返し部132cの空隙率は、10%~30%であり、介在部132aの空隙率は、40%~60%である。なお、空隙率は、例えば、水銀圧入法によって測定される。
【0022】
本実施形態では、下折返し部132cには、セパレータ130の空隙を埋める空隙充填材136が設けられている。空隙充填材136は、電解液をはじく性質(撥液性)を有していることが好ましい。空隙充填材136として、例えば、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ポリイミドが挙げられる。なお、図3では、空隙充填材136にドット模様が付されている。上下方向における空隙充填材136の寸法は、1mm以上に設定されることが好ましい。
【0023】
セパレータ本体132のうちつづら折り状に形成された際に下折返し部132cとなる部位に予めグラビア塗布(間欠塗布)にて空隙充填材136が塗布され、乾燥されることによって下折返し部132cに空隙充填材136が設けられてもよい。あるいは、セパレータ本体132がつづら折り状に形成された後、空隙充填材136を収容する容器に各下折返し部132cが浸された後、乾燥されることによって下折返し部132cに空隙充填材136が設けられてもよい。
【0024】
最外被覆部132dは、各上折返し部132b及び各下折返し部132cをまとめて被覆している。より詳細には、最外被覆部132dは、全ての電極110,120、全ての介在部132a、全ての上折返し部132b及び全ての下折返し部132cを、幅方向と平行な中心軸まわりに巻回しながらまとめて被覆している。最外被覆部132dの終端132e(図3及び図4を参照)は、一方向に正極活物質層114及び負極活物質層124と重ならない範囲に設定されている。本実施形態では、最外被覆部132dの終端132eは、各電極110,120の下方に設けられている。
【0025】
側面被覆部134は、幅方向における複数の電極110,120の両端部と対向している。なお、図3では、側面被覆部134が二点鎖線で示されている。側面被覆部134は、下折返し部132cに接続されている。本実施形態では、図4に示されるように、側面被覆部134は、セパレータ本体132の長手方向における当該セパレータ本体132の端部から、前記長手方向と直交する方向に突出している。側面被覆部134は、一方向に並ぶ全ての下折返し部132cにつながっている。側面被覆部134は、下折返し部132cとともに、負極電極120の下方に電解液を貯留する貯留空間S(図3を参照)を形成している。側面被覆部134には、セパレータ130の空隙を埋める空隙充填材が設けられてもよい。
【0026】
絶縁フィルム140は、複数の電極110,120及びセパレータ130の周面と底面とをまとめて被覆している。なお、図7では、絶縁フィルム140にドット模様が付されている。
【0027】
セルケース200は、電極体100を収容している。セルケース200には、図示略の電解液が収容されている。セルケース200は、密封されている。セルケース200は、ケース本体210と、蓋220と、を有している。
【0028】
ケース本体210は、上向きに開口する開口部を有している。ケース本体210は、アルミニウム等の金属からなる。図2に示されるように、ケース本体210は、底壁212と、周壁214と、を有している。底壁212は、矩形かつ平板状に形成されている。周壁214は、底壁212から起立している。周壁214は、四角筒状に形成されている。幅方向における周壁214の長さは、厚さ方向における周壁214の長さよりも長い。高さ方向における周壁214の長さは、厚さ方向における周壁214の長さよりも長い。
【0029】
蓋220は、ケース本体210の開口部を閉塞している。蓋220は、溶接等によって開口部に接続されている。蓋220は、平板状に形成されている。蓋220は、アルミニウム等の金属からなる。蓋220は、圧力解放弁222と、封止部材224と、を有している。
【0030】
圧力解放弁222は、蓋220の中央部に形成されている。圧力解放弁222は、セルケース200の内圧が所定圧以上となると破断するように形成されている。圧力解放弁222が破断することで、セルケース200内のガスが当該圧力解放弁222を通じてセルケース200外に放出されるため、セルケース200の内圧が低下する。
【0031】
封止部材224は、蓋220に形成された注液口hを封止している。注液口hは、蓄電セル1の製造過程において、セルケース200内に電解液を注入するための貫通孔である。注液口hは、当該注液口hを通じてケース本体210に電解液が注入された後、封止部材224によって封止される。
【0032】
一対の外部端子300は、セルケース200上に固定されている。一対の外部端子300の一方は、正極の外部端子であり、他方は、負極の外部端子である。各外部端子300は、後述の上絶縁部510を介して蓋220の上面に固定されている。各外部端子300は、アルミニウム等の金属からなる。各外部端子300は、例えば、直方体形状に形成される。各外部端子300には、図示略のバスバーが溶接等によって接続される。
【0033】
一対の連結部材400は、複数の電極タブ112p,122nと外部端子300とを連結している。一方の連結部材400は、複数の正極タブ112pと正極の外部端子300とを連結しており、他方の連結部材400は、複数の負極タブ122nと負極の外部端子300とを連結している。一対の連結部材400の各々は、実質的に互いに同じ構造を有しているため、以下では一方の連結部材400について説明する。
【0034】
連結部材400は、集電タブ410と、サブタブ420と、連結ピン430と、を有している。
【0035】
集電タブ410は、側方部412と、上方部414と、を有している。側方部412は、幅方向における電極体100の側方に位置している。上方部414は、電極体100の上方に位置している。上方部414は、側方部412の上端から幅方向における内側に向かって延びている。
【0036】
サブタブ420は、複数の正極タブ112pを集電タブ410に接続している。サブタブ420の一端部422は、溶接等によって複数の正極タブ112pに接続されており、サブタブ420の他端部424は、溶接等によって集電タブ410の側方部412に接続されている。
【0037】
連結ピン430は、集電タブ410と外部端子300とを連結している。連結ピン430は、上方部414と外部端子300とを連結している。具体的に、連結ピン430の下端部は、上方部414設けられた貫通孔に挿入された状態で上方部414に溶接等によって接続されており、連結ピン430の上端部は、外部端子300に設けられた貫通孔に挿入された状態で溶接やカシメ等によって外部端子300に接続されている。
【0038】
絶縁部材500は、セルケース200と連結部材400との間を絶縁している。絶縁部材500は、上絶縁部510と、下絶縁部520と、インシュレータ530と、絶縁板540と、を有している。
【0039】
上絶縁部510は、蓋220の上面に固定されている。上絶縁部510は、蓋220と外部端子300との間に配置されている。上絶縁部510には、連結ピン430を挿通させる挿通孔が設けられている。
【0040】
下絶縁部520は、蓋220の下面に固定されている。下絶縁部520は、蓋220と、上方部414及び連結ピン430の下部と、の間に配置されている。下絶縁部520には、連結ピン430を挿通させる挿通孔が設けられている。
【0041】
インシュレータ530は、連結ピン430と蓋220との間に配置されている。インシュレータ530は、筒状に形成されており、連結ピン430を包囲している。
【0042】
絶縁板540は、上方部414の下面に固定されている。絶縁板540は、電極体100の上方に配置されている。絶縁板540のうち圧力解放弁222の下方に位置する部位、及び、注液口hの下方に位置する部位には、貫通孔が設けられている。
【0043】
次に、図5図7等を参照しながら、蓄電セル1の製造工程について説明する。
【0044】
まず、セパレータ本体132をつづら折り状に形成しながら、一対の介在部132a間に各電極110,120を交互に配置する。そして、セパレータ本体132の最外被覆部132dを巻回した後、側面被覆部134をセパレータ本体132に対して折り曲げるとともに下折返し部132cに接続する。
【0045】
次に、図5に示されるように、サブタブ420の一端部422を複数の電極タブ112p,122nに溶接等によって接続する。その後、図6において矢印で示されるように、サブタブ420の一端部422が集電タブ410の側方部412に接するように、一端部422及び複数の電極タブ112p,122nを折り曲げる。
【0046】
続いて、図7に示されるように、複数の電極110,120及びセパレータ130の周面と底面とをまとめて絶縁フィルム140で被覆した後、電極体100をケース本体210に挿入する。そして、蓋220の周縁部をケース本体210の開口部に溶接等によって接続する。
【0047】
その後、注液口hを通じてセルケース200内に電解液を供給し、注液口hを封止部材224で封止する。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態における電極体100では、下折返し部132c上に負極電極120が配置されており、下折返し部132cの空隙率が介在部132aの空隙率よりも小さいため、充放電時等に負極電極120から放出された電解液は、下折返し部132c上に有効に保持される。よって、その電解液を負極電極120が再び吸収することにより、負極電極120での電解液の不足が抑制される。
【0049】
さらに、セパレータ130は、下折返し部132cとともに貯留空間Sを形成する側面被覆部134を有しているため、負極電極120での電解液の不足がより確実に抑制される。さらに、側面被覆部134によって各下折返し部132c同士のズレが抑制され、これにより介在部132a同士のズレが抑制されるため、セパレータ130を固定する専用部材(テープ等)の省略が可能となる。
【0050】
なお、図8に示されるように、電極体100は、電解液を保持可能な液保持部材150をさらに備えていてもよい。液保持部材150は、セパレータ130とは異なる部材である。液保持部材150は、例えば多孔材からなる。液保持部材150は、幅方向における複数の電極110,120及びセパレータ130の端部に設けられている。液保持部材150は、複数の電極110,120及びセパレータ130の上端部又は下端部に設けられてもよい。
【0051】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0052】
[態様1]
電極体と、
前記電極体を収容するセルケースと、
前記セルケース内に収容された電解液と、を備え、
前記電極体は、
一方向に並ぶように配置された複数の電極と、
つづら折り状に形成されており、前記複数の電極の各々の間を絶縁するセパレータと、を備え、
前記セパレータは、
前記一方向に互いに隣接する一対の電極間に介在する複数の介在部と、
前記複数の介在部のうちの一の介在部の上端部と、前記複数の介在部のうち前記一方向における一方側に前記一の介在部に隣接する介在部の上端部と、を互いに連結する上折返し部と、
前記複数の介在部のうちの前記一の介在部の下端部と、前記複数の介在部のうち前記一方向における他方側に前記一の介在部に隣接する介在部の下端部と、を互いに連結する下折返し部と、を含み、
前記複数の電極は、複数の正極電極及び複数の負極電極を有し、
前記負極電極は、前記下折返し部上に配置されており、
前記下折返し部の空隙率は、前記介在部の空隙率よりも小さい、蓄電セル。
【0053】
この蓄電セルの電極体では、下折返し部上に負極電極が配置されており、下折返し部の空隙率が介在部の空隙率よりも小さいため、充放電時等に負極電極から放出された電解液は、下折返し部上に有効に保持される。よって、その電解液を負極電極が吸収することにより、負極電極での電解液の不足が抑制される。
【0054】
[態様2]
前記下折返し部には、前記セパレータの空隙を埋める空隙充填材が設けられている、態様1に記載の蓄電セル。
【0055】
この態様では、下折返し部上により確実に電解液が保持される。
【0056】
[態様3]
前記セパレータは、前記一方向及び上下方向の双方と直交する幅方向における前記複数の電極の両端部と対向しており、前記下折返し部に接続された側面被覆部をさらに有し、
前記側面被覆部は、前記下折返し部とともに、前記負極電極の下方に電解液を貯留する貯留空間を形成している、態様1又は2に記載の蓄電セル。
【0057】
この態様では、下折返し部と側面被覆部とによって電解液を貯留する貯留空間が形成されるため、負極電極での電解液の不足がより確実に抑制される。さらに、各下折返し部同士のズレが抑制されることで介在部同士のズレが抑制されるため、セパレータを固定する専用部材(テープ等)の省略が可能となる。
【0058】
[態様4]
前記側面被覆部には、前記セパレータの空隙を埋める空隙充填材が設けられている、態様3に記載の蓄電セル。
【0059】
[態様5]
前記セパレータとは異なる部材であって、電解液を保持可能な液保持部材をさらに備え、
前記液保持部材は、上下方向における前記セパレータの端部、及び、前記一方向及び上下方向の双方と直交する幅方向における前記セパレータの端部の少なくとも一方に設けられている、態様1から4のいずれかに記載の蓄電セル。
【0060】
この態様では、負極電極から放出された電解液が液保持部材に保持されるため、その電解液を負極電極が吸収することにより、負極電極での電解液の不足が抑制される。
【0061】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 蓄電セル、100 電極体、110 正極電極、112 正極集電箔、112p 正極タブ、114 正極活物質層、120 負極電極、122 負極集電箔、122n 負極タブ、130 セパレータ、132 セパレータ本体、132a 介在部、132b 上折返し部、132c 下折返し部、132d 最外被覆部、134 側面被覆部、136 空隙充填材、140 絶縁フィルム、150 液保持部材、200 セルケース、210 ケース本体、220 蓋、300 外部端子、400 連結部材、410 集電タブ、420 サブタブ、430 連結ピン、500 絶縁部材、510 上絶縁部、520 下絶縁部、530 インシュレータ、540 絶縁板、S 貯留空間。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8