(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-01
(45)【発行日】2025-09-09
(54)【発明の名称】空間価値評価システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20240101AFI20250902BHJP
【FI】
G06Q50/16
(21)【出願番号】P 2022033845
(22)【出願日】2022-03-04
【審査請求日】2024-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 遼平
(72)【発明者】
【氏名】沈 昊哉
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 昭信
(72)【発明者】
【氏名】川原 綾太朗
(72)【発明者】
【氏名】川本 高司
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-133469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の空間における環境情報を計測する環境センサと、
前記空間における人流又は人活動を示す人情報を計測する人流センサと、
前記環境センサの計測による前記環境情報又は前記人流センサの計測による前記人情報のうち少なくとも一方の情報を基に前記空間と人との相互作用を示す空間パフォーマンスを評価する空間評価指標を算出する空間価値評価部と、
を備え
、
前記環境センサとして、前記空間の内部の室温を計測する室温センサと、前記空間の外部の外気温を計測する外気温センサと、前記空間に設置された空調設備の消費電力を計測する電力計を備え、
前記人流センサとして、前記空間内に存在する人の人数を示す室内人数を計測する人感センサを備え、
前記空間価値評価部は、
前記空間における人の作業効率が温度に依存することを前提に定義された前記空間における作業パフォーマンスのうち、室内環境における作業パフォーマンスを前記室温センサの計測による前記室温に基づいて算出し、室外環境における作業パフォーマンスを前記外気温センサの計測による前記外気温に基づいて算出し、算出した前記室内環境における作業パフォーマンスと前記室外環境における作業パフォーマンスとの差に前記人感センサの計測による前記室内人数を乗算し、当該乗算により得られた値を、前記電力計の計測による前記消費電力で除算し、当該除算により得られた値を、前記空間評価指標に属する値であって、前記空調設備の消費電力当たりの作業パフォーマンス向上量を示す省エネ性として算出することを特徴とする空間価値評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空間価値評価システムであって、
前記環境センサの計測による前記環境情報は、前記空間の空気質、前記空間の空間環境、又は前記空間に設置された設備の状態のうち少なくとも一つを示す情報であり、
前記空間の空気質は、前記空間内の湿度、前記空間内の臭い、前記空間内のCO2濃度、前記空間内の有毒ガス濃度、又は前記空間内の浮遊微粒子濃度のうち少なくとも一つであり、
前記空間の空間環境は、前記空間内の温度、前記空間内の照度、前記空間内の色調、前記空間内の音、又は前記空間内の振動のうち少なくとも一つであり、
前記空間に設置された設備の状態は、前記空間に設置された空調機器の状態、前記空間に設置された防音機器の状態、又は前記空間に設置された制振機器の状態のうち少なくとも一つであり、
前記空間における人流は、前記空間における人座標、前記空間における人動線、前記空間における人数、又は前記空間における人密度のうち少なくとも一つであり、
前記空間における人活動は、前記空間における人距離、前記空間における人姿勢、前記空間における人動作、前記空間における人行動、又は前記空間における人運動量のうち少なくとも一つであることを特徴とする空間価値評価システム。
【請求項3】
建物内の空間における環境情報を計測する環境センサと、
前記空間における人流又は人活動を示す人情報を計測する人流センサと、
前記環境センサの計測による前記環境情報又は前記人流センサの計測による前記人情報のうち少なくとも一方の情報を基に前記空間と人との相互作用を示す空間パフォーマンスを評価する空間評価指標を算出する空間価値評価部と、
を備え、
前記環境センサとして、前記空間の温度を計測する温度センサと、前記空間の湿度を計測する湿度センサと、前記空間の臭いを計測する臭いセンサを備え、
前記空間価値評価部は、
前記温度センサと前記湿度センサ及び前記臭いセンサの計測値をそれぞれ順次取り込み、前記温度センサの計測による前記温度の分散の逆数または前記湿度センサの計測による前記湿度の分散の逆数または前記臭いセンサの計測値による前記臭いの分散の逆数の少なくとも一つを、前記空間評価指標に属する値であって、前記空間における空気の安定性を示す値として算出することを特徴とする空間価値評価システム。
【請求項4】
請求項3に記載の空間価値評価システムであって、
前記環境センサの計測による前記環境情報は、前記空間の空気質、前記空間の空間環境、又は前記空間に設置された設備の状態のうち少なくとも一つを示す情報であり、
前記空間の空気質は、前記空間内の湿度、前記空間内の臭い、前記空間内のCO2濃度、前記空間内の有毒ガス濃度、又は前記空間内の浮遊微粒子濃度のうち少なくとも一つであり、
前記空間の空間環境は、前記空間内の温度、前記空間内の照度、前記空間内の色調、前記空間内の音、又は前記空間内の振動のうち少なくとも一つであり、
前記空間に設置された設備の状態は、前記空間に設置された空調機器の状態、前記空間に設置された防音機器の状態、又は前記空間に設置された制振機器の状態のうち少なくとも一つであり、
前記空間における人流は、前記空間における人座標、前記空間における人動線、前記空間における人数、又は前記空間における人密度のうち少なくとも一つであり、
前記空間における人活動は、前記空間における人距離、前記空間における人姿勢、前記空間における人動作、前記空間における人行動、又は前記空間における人運動量のうち少なくとも一つであることを特徴とする空間価値評価システム。
【請求項5】
複数のセンサと、前記複数のセンサの各々の出力を処理するコンピュータとを含むシステムにおける方法であって、
前記複数のセンサのうち環境センサが、建物内の空間における環境情報を計測する環境計測ステップと、
前記複数のセンサのうち人流センサが、前記空間における人流又は人活動を示す人情報を計測する人流計測ステップと、
前記コンピュータが、前記環境計測ステップでの計測による前記環境情報又は前記人流計測ステップでの計測による前記人情報のうち少なくとも一方の情報を基に前記空間と人との相互作用を示す空間パフォーマンスを評価する空間評価指標を算出する空間価値評価ステップと、
を備え
、
前記複数のセンサは、前記空間の内部の室温を計測する室温センサと、前記空間の外部の外気温を計測する外気温センサと、前記空間に設置された空調設備の消費電力を計測する電力計と、前記空間内に存在する人の人数を示す室内人数を計測する人感センサを含み、
前記コンピュータは、
前記空間価値評価ステップでは、前記空間における人の作業効率が温度に依存することを前提に定義された前記空間における作業パフォーマンスのうち、室内環境における作業パフォーマンスを前記室温センサの計測による前記室温に基づいて算出し、室外環境における作業パフォーマンスを前記外気温センサの計測による前記外気温に基づいて算出し、算出した前記室内環境における作業パフォーマンスと前記室外環境における作業パフォーマンスとの差に前記人感センサの計測による前記室内人数を乗算し、当該乗算により得られた値を、前記電力計の計測による前記消費電力で除算し、当該除算により得られた値を、前記空間評価指標に属する値であって、前記空調設備の消費電力当たりの作業パフォーマンス向上量を示す省エネ性として算出することを特徴とする空間価値評価方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の空間価値評価方法であって、
前記環境センサの計測による前記環境情報は、前記空間の空気質、前記空間の空間環境、又は前記空間に設置された設備の状態のうち少なくとも一つを示す情報であり、
前記空間の空気質は、前記空間内の湿度、前記空間内の臭い、前記空間内のCO2濃度、前記空間内の有毒ガス濃度、又は前記空間内の浮遊微粒子濃度のうち少なくとも一つであり、
前記空間の空間環境は、前記空間内の温度、前記空間内の照度、前記空間内の色調、前記空間内の音、又は前記空間内の振動のうち少なくとも一つであり、
前記空間に設置された設備の状態は、前記空間に設置された空調機器の状態、前記空間に設置された防音機器の状態、又は前記空間に設置された制振機器の状態のうち少なくとも一つであり、
前記空間における人流は、前記空間における人座標、前記空間における人動線、前記空間における人数、又は前記空間における人密度のうち少なくとも一つであり、
前記空間における人活動は、前記空間における人距離、前記空間における人姿勢、前記空間における人動作、前記空間における人行動、又は前記空間における人運動量のうち少なくとも一つであることを特徴とする空間価値評価方法。
【請求項7】
複数のセンサと、前記複数のセンサの各々の出力を処理するコンピュータとを含むシステムにおける方法であって、
前記複数のセンサのうち環境センサが、建物内の空間における環境情報を計測する環境計測ステップと、
前記複数のセンサのうち人流センサが、前記空間における人流又は人活動を示す人情報を計測する人流計測ステップと、
前記コンピュータが、前記環境計測ステップでの計測による前記環境情報又は前記人流計測ステップでの計測による前記人情報のうち少なくとも一方の情報を基に前記空間と人との相互作用を示す空間パフォーマンスを評価する空間評価指標を算出する空間価値評価ステップと、
を備え、
前記複数のセンサは、前記空間の温度を計測する温度センサと、前記空間の湿度を計測する湿度センサと、前記空間の臭いを計測する臭いセンサを含み、
前記コンピュータは、
前記空間価値評価ステップでは、前記温度センサと前記湿度センサ及び前記臭いセンサの計測値をそれぞれ順次取り込み、前記温度センサの計測による前記温度の分散の逆数または前記湿度センサの計測による前記湿度の分散の逆数または前記臭いセンサの計測値による前記臭いの分散の逆数の少なくとも一つを、前記空間評価指標に属する値であって、前記空間における空気の安定性を示す値として算出することを特徴とする空間価値評価方法。
【請求項8】
請求項7に記載の空間価値評価方法であって、
前記環境センサの計測による前記環境情報は、前記空間の空気質、前記空間の空間環境、又は前記空間に設置された設備の状態のうち少なくとも一つを示す情報であり、
前記空間の空気質は、前記空間内の湿度、前記空間内の臭い、前記空間内のCO2濃度、前記空間内の有毒ガス濃度、又は前記空間内の浮遊微粒子濃度のうち少なくとも一つであり、
前記空間の空間環境は、前記空間内の温度、前記空間内の照度、前記空間内の色調、前記空間内の音、又は前記空間内の振動のうち少なくとも一つであり、
前記空間に設置された設備の状態は、前記空間に設置された空調機器の状態、前記空間に設置された防音機器の状態、又は前記空間に設置された制振機器の状態のうち少なくとも一つであり、
前記空間における人流は、前記空間における人座標、前記空間における人動線、前記空間における人数、又は前記空間における人密度のうち少なくとも一つであり、
前記空間における人活動は、前記空間における人距離、前記空間における人姿勢、前記空間における人動作、前記空間における人行動、又は前記空間における人運動量のうち少なくとも一つであることを特徴とする空間価値評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間価値評価システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルのオーナーやビル管理企業にとって、空間を有効に活用することは重要である。不動産の価値は、立地、広さ、築年数などの指標で定量化され、比較されている。しかし、ビル内部の空間と、その中で活動する居住者や従業員との相互作用に基づくパフォーマンスを定量化することは難しい。例えば、空間における賑わい度、混雑度、快適度、清潔度、省エネ性、集客性、などのパフォーマンスは、定量化する方法が定まっていない。そこで、空間のパフォーマンスを定量的に評価し、テナントの賃料を適切に設定したり、オフィス空間の改善効果を可視化したりすることが求められている。
【0003】
特許文献1では、居住場所の環境情報を環境センサ(音センサ、振動センサ、温度センサ、湿度センサ、光センサ、UV(Ultraviolet)センサ、匂いセンサ、風センサを含む)で計測し、計測値を不動産物件ごとのデータベースに登録することで、ユーザの嗜好にあった環境情報を有する不動産物件を、手間をかけずに検索可能にするシステムが開示されている。
【0004】
特許文献2では、オフィスを人感センサで計測し、オフィスの利用状況を可視化したり、テナントの解約可能性を分析したり、するシステムが開示されている。このシステムによれば、利用状況の変化を早期に検知することで、検知内容を営業担当者とテナントのコミュニケーション機会として活用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-46854号公報
【文献】特開2019-109655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、空間とその中で活動する人の相互作用に基づく空間のパフォーマンスを評価することができない。例えば、特許文献1では、部屋そのものの匂いは評価できるが、部屋の中で従業員が活動することで生じる部屋の臭いを評価することはできない。特許文献2では、部屋内の人数を評価することはできるが、人の快適度を評価できない。さらに言えば、どちらの特許文献においても、部屋の収容人数に対して何%の人が活動しているときに部屋の臭いや快適度がどうなるか、といったことを評価ができない。
【0007】
本発明の目的は、建物内の空間と人との相互作用に基づく空間のパフォーマンスを定量化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、建物内の空間における環境情報を計測する環境センサと、前記空間における人流又は人活動を示す人情報を計測する人流センサと、前記環境センサの計測による前記環境情報又は前記人流センサの計測による前記人情報のうち少なくとも一方の情報を基に前記空間と人との相互作用を示す空間パフォーマンスを評価する空間評価指標を算出する空間価値評価部と、を備え、前記環境センサとして、前記空間の内部の室温を計測する室温センサと、前記空間の外部の外気温を計測する外気温センサと、前記空間に設置された空調設備の消費電力を計測する電力計を備え、前記人流センサとして、前記空間内に存在する人の人数を示す室内人数を計測する人感センサを備え、前記空間価値評価部は、前記空間における人の作業効率が温度に依存することを前提に定義された前記空間における作業パフォーマンスのうち、室内環境における作業パフォーマンスを前記室温センサの計測による前記室温に基づいて算出し、室外環境における作業パフォーマンスを前記外気温センサの計測による前記外気温に基づいて算出し、算出した前記室内環境における作業パフォーマンスと前記室外環境における作業パフォーマンスとの差に前記人感センサの計測による前記室内人数を乗算し、当該乗算により得られた値を、前記電力計の計測による前記消費電力で除算し、当該除算により得られた値を、前記空間評価指標に属する値であって、前記空調設備の消費電力当たりの作業パフォーマンス向上量を示す省エネ性として算出するようにした。
また本発明は、建物内の空間における環境情報を計測する環境センサと、前記空間における人流又は人活動を示す人情報を計測する人流センサと、前記環境センサの計測による前記環境情報又は前記人流センサの計測による前記人情報のうち少なくとも一方の情報を基に前記空間と人との相互作用を示す空間パフォーマンスを評価する空間評価指標を算出する空間価値評価部と、を備え、前記環境センサとして、前記空間の温度を計測する温度センサと、前記空間の湿度を計測する湿度センサと、前記空間の臭いを計測する臭いセンサを備え、前記空間価値評価部は、前記温度センサと前記湿度センサ及び前記臭いセンサの計測値をそれぞれ順次取り込み、前記温度センサの計測による前記温度の分散の逆数または前記湿度センサの計測による前記湿度の分散の逆数または前記臭いセンサの計測値による前記臭いの分散の逆数の少なくとも一つを、前記空間評価指標に属する値であって、前記空間における空気の安定性を示す値として算出するようにした。
さらに本発明は、複数のセンサと、前記複数のセンサの各々の出力を処理するコンピュータとを含むシステムにおける方法であって、前記複数のセンサのうち環境センサが、建物内の空間における環境情報を計測する環境計測ステップと、前記複数のセンサのうち人流センサが、前記空間における人流又は人活動を示す人情報を計測する人流計測ステップと、前記コンピュータが、前記環境計測ステップでの計測による前記環境情報又は前記人流計測ステップでの計測による前記人情報のうち少なくとも一方の情報を基に前記空間と人との相互作用を示す空間パフォーマンスを評価する空間評価指標を算出する空間価値評価ステップと、を備え、前記複数のセンサは、前記空間の内部の室温を計測する室温センサと、前記空間の外部の外気温を計測する外気温センサと、前記空間に設置された空調設備の消費電力を計測する電力計と、前記空間内に存在する人の人数を示す室内人数を計測する人感センサを含み、前記コンピュータは、前記空間価値評価ステップでは、前記空間における人の作業効率が温度に依存することを前提に定義された前記空間における作業パフォーマンスのうち、室内環境における作業パフォーマンスを前記室温センサの計測による前記室温に基づいて算出し、室外環境における作業パフォーマンスを前記外気温センサの計測による前記外気温に基づいて算出し、算出した前記室内環境における作業パフォーマンスと前記室外環境における作業パフォーマンスとの差に前記人感センサの計測による前記室内人数を乗算し、当該乗算により得られた値を、前記電力計の計測による前記消費電力で除算し、当該除算により得られた値を、前記空間評価指標に属する値であって、前記空調設備の消費電力当たりの作業パフォーマンス向上量を示す省エネ性として算出するようにした。
さらに本発明は、複数のセンサと、前記複数のセンサの各々の出力を処理するコンピュータとを含むシステムにおける方法であって、前記複数のセンサのうち環境センサが、建物内の空間における環境情報を計測する環境計測ステップと、前記複数のセンサのうち人流センサが、前記空間における人流又は人活動を示す人情報を計測する人流計測ステップと、前記コンピュータが、前記環境計測ステップでの計測による前記環境情報又は前記人流計測ステップでの計測による前記人情報のうち少なくとも一方の情報を基に前記空間と人との相互作用を示す空間パフォーマンスを評価する空間評価指標を算出する空間価値評価ステップと、を備え、前記複数のセンサは、前記空間の温度を計測する温度センサと、前記空間の湿度を計測する湿度センサと、前記空間の臭いを計測する臭いセンサを含み、前記コンピュータは、前記空間価値評価ステップでは、前記温度センサと前記湿度センサ及び前記臭いセンサの計測値をそれぞれ順次取り込み、前記温度センサの計測による前記温度の分散の逆数または前記湿度センサの計測による前記湿度の分散の逆数または前記臭いセンサの計測値による前記臭いの分散の逆数の少なくとも一つを、前記空間評価指標に属する値であって、前記空間における空気の安定性を示す値として算出するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建物内の空間と人との相互作用に基づく空間のパフォーマンスを定量化することができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの全体構成例を示すブロック図である。
【
図1B】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図1C】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの主要ブロックの構成例を示すブロック図である。
【
図1D】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの管理ブロックの第1構成例を示すブロック図である。
【
図1E】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの管理ブロックの第2構成例を示すブロック図である。
【
図1F】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの管理ブロックの第3構成例を示すブロック図である。
【
図1G】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの管理ブロックの第4構成例を示すブロック図である。
【
図1H】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの計測ブロックの第1構成例を示すブロック図である。
【
図1I】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの計測ブロックの第2構成例を示すブロック図である。
【
図1J】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの計測ブロックの第3構成例を示すブロック図である。
【
図1K】本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの計測ブロックの第4構成例を示すブロック図である。
【
図2A】本発明の実施例1に係る環境センサと人流センサを部屋に設置したときの設置例を示す説明図である。
【
図2B】本発明の実施例1に係る環境センサと人流センサを会議室に設置したときの設置例を示す説明図である。
【
図2C】本発明の実施例1に係る環境センサと人流センサをオフィスに設置したときの設置例を示す説明図である。
【
図2D】本発明の実施例1に係る環境センサと人流センサをビルに設置したときの設置例を示す説明図である。
【
図3A】本発明の実施例1に係るセンサが設置されたビルのフロア平面図である。
【
図3B】本発明の実施例1に係るセンサが設置されたショッピングモールのフロア平面図である。
【
図4A】本発明の実施例1に係る環境センサが出力するログデータを蓄積するデータベースの構成例を示す構成図である。
【
図4B】本発明の実施例1に係る複数の環境センサが非同期で出力するログデータを蓄積するデータベースの構成例を示す構成図である。
【
図5A】本発明の実施例1に係る人流センサが出力するログデータを蓄積したデータベースの構成例を示す構成図である。
【
図5B】本発明の実施例1に係る複数の人流センサが出力するログデータを集約したデータベースの構成例を示す構成図である。
【
図6A】本発明の実施例1に係る人流センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
【
図6B】本発明の実施例1に係る照度センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
【
図6C】本発明の実施例1に係る温度センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
【
図6D】本発明の実施例1に係る湿度センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
【
図6E】本発明の実施例1に係るCO
2濃度センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
【
図6F】本発明の実施例1に係る臭いセンサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
【
図7】本発明の実施例1に係るデータベースであって、空間評価指標のデータベースの構成例を示す構成図である。
【
図8A】本発明の実施例1に係る環境センサの構成例を示す構成図である。
【
図8B】本発明の実施例1に係る人流センサの構成例を示す構成図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る空間価値評価システムの概略構成例を示すブロック図である。
【
図10A】本発明の実施例2に係る空間価値評価システムの全体構成例を示すブロック図である。
【
図10B】本発明の実施例2に係る空間価値評価システムの他の全体構成例を示すブロック図である。
【
図11】本発明の実施例2に係る空間パフォーマンスの評価結果をユーザに提示する画面例の構成図である。
【
図12】本発明の実施例3に係る空間価値評価システムの省エネ性を説明するための説明図である。
【
図13A】本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための温度特性図である。
【
図13B】本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための作業パフォーマンス特性図である。
【
図13C】本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための室内人数特性図である。
【
図13D】本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための空調消費電力特性図である。
【
図13E】本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための省エネ性特性図である。
【
図14】本発明の実施例4に係る空間価値評価システムで適用される部屋内の空気の安定性の分布図である。
【
図15】本発明の実施例4に係る空間価値評価システムで採用される測定地点の温度の時系列変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0013】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0014】
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい
。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番
号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0015】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0016】
実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0017】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施形態において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【実施例1】
【0018】
実施例1は、ショッピングモールやオフィスなどの建物(以下、ビルと略記)内の屋内空間(以下、空間と略記)に、環境センサと人流センサを設置し、環境センサの計測値と人流センサの計測値を基に、空間と人との相互作用に基づく空間のパフォーマンス(以下、空間パフォーマンスと略記)を評価し、評価結果をユーザのユーザ端末に表示するものである。ユーザは、ビルを所有するオーナー、ビルの管理を請け負う不動産会社またはビル管理会社の責任者、ビルに入居するテナントの管理担当者またはCCO(Chief Comfort Officer)、ビル内で就業する従業員、ビルにショッピングなどの目的で一時的に滞在する訪問者や来店客等を含む。
【0019】
図1Aは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの全体構成例を示すブロック図である。
図1において、空間価値評価システム1は、ビル管理サーバ101、ネットワーク102、複数のエッジサーバ103、複数のローカルネットワーク104、複数の環境センサ105、複数の人流センサ106、複数のユーザ端末107を備える。ビル管理サーバ101は、ネットワーク102を介して各エッジサーバ103と各ユーザ端末107に接続される。各エッジサーバ103は、ローカルネットワーク104を介して各人流センサ106と各環境センサ105に接続される。
【0020】
ビル管理サーバ101は、データ蓄積部101a、空間価値評価部101b、空間評価指標蓄積部101cを備え、ネットワーク102を介して各エッジサーバ103からセンサデータを収集し、収集したセンサデータの蓄積と評価を行い、評価結果を、ネットワーク102を介して各ユーザ端末107にユーザが所望する形で提示する。
【0021】
データ蓄積部101aは、各エッジサーバ103から収集したセンサデータを蓄積する。空間価値評価部101bは、各エッジサーバ103から収集したセンサデータを基に空間評価指標を算出する。空間評価指標蓄積部101cは、空間価値評価部101bにより算出された空間評価指標を蓄積する。
【0022】
ビル管理サーバ101は、例えば、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、入力装置、出力装置、及び通信装置を備えるコンピュータ装置(図示せず)で構成される。
【0023】
プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を用いて構成される。
【0024】
主記憶装置は、コンピュータプログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び不揮発性半導体メモリ等である。
【0025】
補助記憶装置は、例えば、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、光学式記憶媒体(即ち、CD(Compact Disc)、及びDVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード(Integrated Circuit Card)、SD(Secure Digital)メモリカード、等の記録媒体の読取/書込装置、及びクラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置に格納されているコンピュータプログラムやデータは、主記憶装置に随時読み込まれる。
【0026】
補助記憶装置に格納されるコンピュータプログラムとしては、例えば、各エッジサーバ103から収集したセンサデータを基に空間評価指標を算出する空間価値評価プログラムがある。ビル管理サーバ101のCPUが、空間価値評価プログラムを補助記憶装置から読み出して実行することにより、空間価値評価部101bとしての機能が実現される。
【0027】
入力装置は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、音声入力デバイス等である。出力装置(表示装置)は、ユーザに処理経過や処理結果等の各種情報を提供するユーザインタフェースである。出力装置は、例えば、画面表示装置(即ち、液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、又はグラフィックカード等)、音声出力装置(即ち、スピーカ等)、又は印字装置等である。
【0028】
通信装置は、LAN(Local Area Network)やインターネット等の通信手段を介した他の装置との間の通信を実現する有線方式又は無線方式の通信インターフェースである。通信装置は、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB(Universal Serial Bus)モジュール、又はシリアル通信モジュール等である。
【0029】
ビル管理サーバ101は、ビルの内部に設置されたオンプレミスのサーバであってもよいし、クラウド上に構築された仮想サーバであってもよい。ビル管理サーバ101は、CPU、メモリ、ストレージ(SSD、HDDなど)を含むコンピュータ装置で構築されてもよい。ビル管理サーバ101は一棟のビルにつき複数が存在してもいいし、複数のビルを束ねる1台のビル管理サーバ101が存在してもよい。
【0030】
ネットワーク102は、広域インターネット回線であってもよいし、ビルの内部に構築されたプライベートネットワークであってもよい。
【0031】
エッジサーバ103は、CPU、メモリ、ストレージを含むコンピュータ装置で構築され、各ローカルネットワーク104を介して、各環境センサ105及び各人流センサ106からそれぞれ出力される各センサデータを収集し、収集した各センサデータを、ネットワーク102を介してビル管理サーバ101に送信する。エッジサーバ103は、ビル内の各階や各部屋に1台ずつ設置されることが考えられる。また、エッジサーバ103は、収集したセンサデータをエッジサーバ103内のストレージに蓄積することもできる。
【0032】
ローカルネットワーク104とネットワーク102が同一ネットワークである構成も考えられる。この場合は、エッジサーバ103が不要となり、各環境センサ105と各人流センサ106は、エッジサーバ103を仲介せず、ビル管理サーバ101と直接通信を行う。
【0033】
エッジサーバ103を設置する効果は主に二つある。一つ目の効果は、計算リソース上の効果である。環境センサ105と人流センサ106は、一つの空間に数十~数百個が設置される可能性がある。さらにビル内に空間が多数ある場合、センサ数は膨大となり、全ての通信をビル管理サーバ101が処理することになると、ビル管理サーバ101の計算リソースが逼迫し、通信遅延やデータ欠落のリスクが向上する。この際、エッジサーバ103を置くことで、計算リソースがエッジサーバ103とビル管理サーバ101に分散されるので、このようなリスクを低減できる。
【0034】
二つ目の効果は、セキュリティ上の効果である。環境センサ105と人流センサ106は、IOT(Internet of Things)で総称される機器で構成され、一般に強固なセキュリティ対策を施すことが難しい。このため、環境センサ105と人流センサ106を、外部からアクセスされる可能性のあるネットワーク102に接続することは、不正アクセス等のセキュリティリスクにつながる。このため、環境センサ105と人流センサ106は、外部との通信が遮断されたローカルネットワーク104の配下に設置することで、セキュリティリスクを軽減することができる。
【0035】
ローカルネットワーク104における通信は、有線でも無線でもよい。有線の場合には、USB接続、Ethernet接続、バスケーブル接続などが考えられ、シリアル通信、Modbus通信、I2C(Inter-Integrated Circuit)通信、SPI(Serial Peripheral Interface)通信、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)通信、などの通信方式が考えられる。無線の場合には、Bluetooth接続、WiFi接続、920MHz帯無線接続、Zigbee接続などが考えられる。
【0036】
環境センサ105は、1台ないし複数台が設置される。環境センサ105は、センサ素子として、温度センサ、湿度センサ、臭いセンサ、照度センサ、CO
2濃度センサ、有毒ガス濃度センサ、浮遊微粒子濃度センサ、色調センサ、照度センサ、騒音計、マイク、振動センサ、などのいずれか一つを含む。なお、環境センサ105の具体的構成は、
図8Aで後述する。
【0037】
環境センサ105は、その出力を定期的または非定期的にエッジサーバ103に送信する。例えば、環境センサ105は、10秒ごとに検知対象の出力を読み取り、読み取ったセンサデータを環境情報としてエッジサーバ103に送信することができる。ここで、環境情報とは、空間における空気質、例えば、湿度、臭い等を示す情報、空間における環境、例えば、湿度、照度等を示す情報、或いは、空間に設置された空調機器等の設備の情報を示す情報である。また、音や振動など高サンプリングレートで読み取る必要がある環境センサ105については、特徴量に換算した上でエッジサーバ103に送信してもよい。例えば、44.1ksPsのサンプリングレートでマイクの出力を読み取り、10秒ごとに平均値または実効値または最大値または標準偏差を算出し、各算出結果をエッジサーバ103に送信することが考えられる。特徴量の計算にあたっては、測定値にデジタル的にフィルタ処理を施してノイズを除去したり、平均値を引き算したりすることでゼロ点の補正を行ってもよい。
【0038】
環境センサ105とエッジサーバ103は、環境センサ105に属する各センサのキャリブレーションを行ってもよい。例えば、臭いセンサは原理上、臭いセンサごとの個体差が大きい。毎日午前1時に、定期的に、複数の環境センサ105で計測された臭いセンサの出力をエッジサーバ103に集約し、エッジサーバ103がそれぞれの臭いセンサの出力が一定となるような補正計算を行って補正係数を算出する。その後、エッジサーバ103が、算出した補正計数を各環境センサ105に送信し、各環境センサ105が臭いセンサのキャリブレーション補正を行うことが考えられる。キャリブレーションは、エッジサーバ103を介さず、環境センサ105自身が実行してもよい。
【0039】
人流センサ106は、1台ないし複数台が設置される。人流センサ106は、センサ素子として、ToF(Time of Flight)カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサ、人感センサ、赤外線センサ、などのいずれか一つを含む。なお、人流センサ106の具体的構成は、
図8Bで後述する。
【0040】
人流センサ106は、読み取ったセンサデータを人流情報としてエッジサーバ103に定期的または非定期的に送信する。例えば、人流センサ106は、10秒ごとに、読み取ったセンサデータを人流情報としてエッジサーバ103に送信することができる。ここで、人流情報とは、例えば、空間における人の流れ・移動を示す人流から得られる情報、或いは空間における人の活動(人活動)から得られる情報である。人流センサ106は、複数の人流センサ106の出力を集約し、特定のエリアを通過した人の人数を算出し、この算出結果をエッジサーバ103に送信してもよい。例えば、部屋の複数の出入り口付近にそれぞれToFカメラを設置し、各出入り口を通過した人の人数(入室した人数と退室した人数)を集計し、この集計結果をエッジサーバ103に送信してもよい。
【0041】
ユーザ端末107は、表示装置、パーソナルコンピューター、タブレット端末、スマートフォン、サーバなどを含むコンピュータ装置で構成される。
【0042】
図1Bは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの主要部の構成例を示すブロック図である。
図1Bにおいて、空間価値評価システム1は、その主要部として、環境センサ105、人流センサ106、空間価値評価部101bを備える。環境センサ105は、ビル内の空間における環境情報を計測し、計測した環境情報を空間価値評価部101bに送信する。人流センサ106は、ビル内の空間の人流又は人活動を示す人流情報を計測し、計測した人流情報を空間価値評価部101bに送信する。空間価値評価部101bは、環境センサ105から送信された環境情報を受信すると共に、人流センサ106から送信された人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて空間評価指標を数値で算出する。ここで、空間評価指標とは、空間と人(空間における人)との相互作用に基づく空間パフォーマンスを評価するための指標である。
【0043】
図1Cは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの主要ブロックの構成例を示すブロック図である。
図1Cにおいて、空間価値評価システム1は、その主要ブロックとして、管理ブロック1001、計測ブロック1002を備える。管理ブロック1001は、空間価値評価部101bを有する。計測ブロック1002は、環境センサ105と人流センサ106を有する。計測ブロック1002内において、環境センサ105は、環境情報を計測し、計測した環境情報を空間価値評価部101bに送信し、人流センサ106は、人流情報を計測し、計測した人流情報を空間価値評価部101bに送信する。
【0044】
すなわち、計測ブロック1002から管理ブロック1001に環境情報と人流情報が送信される。管理ブロック1001内において、空間価値評価部101bは、環境センサ105から送信された環境情報を受信すると共に、人流センサ106から送信された人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて空間評価指標を数値で算出する。
【0045】
図1Dは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの管理ブロックの第1構成例を示すブロック図である。
図1Dにおいて、管理ブロック1001は、計測ブロック1002から送信される環境情報と人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて空間評価指標を数値で算出する空間価値評価部101bを備える。この際は、空間価値評価部101bが算出した空間評価指標をリアルタイムにモニタに表示することができる。モニタには、空間評価指標をグラフィカルに表示するダッシュボード方式を採用することができる。
【0046】
図1Eは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの管理ブロックの第2構成例を示すブロック図である。
図1Eにおいて、管理ブロック1001は、計測ブロック1002から送信される環境情報と人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて空間評価指標を数値で算出する空間価値評価部101bと、計測ブロック1002から送信される環境情報と人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報を蓄積するデータ蓄積部101aを備える。この際、環境情報と人流情報の測定データをセンサデータとしてデータ蓄積部101aに記録することで、過去のセンサデータを振り返ることができる。
【0047】
図1Fは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの管理ブロックの第3構成例を示すブロック図である。
図1Fにおいて、管理ブロック1001は、計測ブロック1002から送信される環境情報と人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報を蓄積するデータ蓄積部101aと、計測ブロック1002から送信される環境情報と人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて空間評価指標を数値で算出する空間価値評価部101bと、空間価値評価部101bの算出による空間評価指標を蓄積する空間評価指標蓄積部101cを備える。この際、空間価値評価部101bが算出した空間評価指標を空間評価指標蓄積部101cに記録することで、過去のセンサデータと過去の空間評価指標を振り返ることができる。
【0048】
図1Gは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの管理ブロックの第4構成例を示すブロック図である。
図1Gにおいて、管理ブロック1001は、計測ブロック1002から送信される環境情報と人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて空間評価指標を数値で算出する空間価値評価部101bと、空間価値評価部101bの算出による空間評価指標を蓄積する空間評価指標蓄積部101cを備える。この際、過去の空間評価指標を振り返るが、過去のセンサデータを振り返る必要が無い場合には、この構成が採用される。
【0049】
図1Hは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの計測ブロックの第1構成例を示すブロック図である。
図1Hにおいて、計測ブロック1002は、複数の環境センサ105と複数の人流センサ106を有する。計測ブロック1002において、各環境センサ105は、ビル内の空間における環境情報を計測し、計測した環境情報を管理ブロック1001に送信し、各人流センサ106は、ビル内の空間の人流又は人活動を示す人流情報を計測し、計測した人流情報を管理ブロック1001に送信する。
図1Hにおける計測ブロック1002のパターンは、各環境センサ105と各人流センサ106が直接管理ブロック1001に接続されるパターンである。このパターンは、計測ブロック1002と管理ブロック1001が物理的に近くにあり、各センサが有線または無線で管理ブロック1001の制御機器と通信できる場合に相当する。
【0050】
図1Iは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの計測ブロックの第2構成例を示すブロック図である。
図1Iにおいて、計測ブロック1002は、複数の環境センサ105と、複数の人流センサ106と、エッジサーバ103を有する。計測ブロック1002において、各環境センサ105は、ビル内の空間における環境情報を計測し、計測した環境情報をエッジサーバ103に送信し、各人流センサ106は、ビル内の空間の人流又は人活動を示す人流情報を計測し、計測した人流情報をエッジサーバ103に送信する。エッジサーバ103は、各環境センサ105から送信された環境情報を受信すると共に、各人流センサ106から送信された人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報を管理ブロック1001に送信する。
図1Iにおける計測ブロック1002のパターンは、各環境センサ105と各人流センサ106の検出による情報を集約して管理ブロック1001に送信するパターンである。環境センサ105と人流センサ106の個数が多く、管理ブロック1001の制御機器が、すべてのセンサの情報を受信することが難しい場合に相当する。
【0051】
図1Jは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの計測ブロックの第3構成例を示すブロック図である。
図1Jにおいて、計測ブロック1002は、複数の環境センサ105と、複数の人流センサ106と、ローカルネットワーク104を有する。計測ブロック1002において、各環境センサ105は、ビル内の空間における環境情報を計測し、計測した環境情報をローカルネットワーク104に送信し、各人流センサ106は、ビル内の空間の人流又は人活動を示す人流情報を計測し、計測した人流情報をローカルネットワーク104に送信する。ローカルネットワーク104は、各環境センサ105から送信された環境情報と各人流センサ106から送信された人流情報を受信し、受信した環境情報と人流情報を管理ブロック1001に送信する。
図1Jにおける計測ブロック1002のパターンは、環境センサ105と人流センサ106がローカルネットワーク104を介して管理ブロック1001と接続されるパターンである。ローカルネットワーク104の実装としてWiFiルータを設置し、各センサは、WiFiルータと接続することで通信経路を確保する場合に相当する。
【0052】
図1Kは、本発明の実施例1に係る空間価値評価システムの計測ブロックの第4構成例を示すブロック図である。
図1Kにおいて、計測ブロック1002は、複数の環境センサ105と、複数の人流センサ106と、ローカルネットワーク104と、エッジサーバ103を有する。計測ブロック1002において、各環境センサ105は、ビル内の空間における環境情報を計測し、計測した環境情報を、ローカルネットワーク104を介してエッジサーバ103に送信し、各人流センサ106は、ビル内の空間の人流又は人活動を示す人流情報を計測し、計測した人流情報を、ローカルネットワーク104を介してエッジサーバ103に送信する。エッジサーバ103は、各環境センサ105から送信された環境情報と各人流センサ106から送信された人流情報を、ローカルネットワーク104を介して受信し、受信した環境情報と人流情報を管理ブロック1001に送信する。
図1Kにおける計測ブロック1002のパターンは、各センサが、ローカルネットワーク104とエッジサーバ103を介して、管理ブロック1001と接続されるパターンである。
図1Iに示すエッジサーバ103と同様に、エッジサーバ103で情報(データ)を集約する場合、またはローカルネットワーク104を管理ブロック1001からネットワーク的に分離する場合に相当する。
【0053】
図2Aは、本発明の実施例1に係る環境センサと人流センサを部屋に設置したときの設置例を示す説明図である。
図2Aにおいて、人流センサ106は、部屋10の出入口10aの付近の天井10b、或いは壁10cの付近に設置されて、出入口10aの前のエリアが画角に入るように設置角度が調整される。ここで人流センサ106は、ToFカメラを想定している。人流センサ106は、出入口10aの前のエリアの略中心部に配置された入退室基準線201を通過した人の人数をカウントする。この際、出入口10aから入退室基準線201を通過して入室した人の人数と、入退室基準線201を通過して出入口10aから退室した人の人数を集計することで、部屋10の中の人数を算出することができる。
【0054】
環境センサ105は、部屋10の天井10b、壁10c、床10d、部屋内の机11やキャビネットなどに設置されて、設置された周囲の環境情報を計測する。天井10bに設置された環境センサ105は、部屋内の全体的な温度、湿度、臭いなどを捉えることができる。床10dに設置された環境センサ105は、足音によって生じる振動を振動センサで捉えることで、環境センサ105の周囲を歩いた人に関する情報を得ることができる。机11の上に設置された環境センサ105は、会話によって生じる音をマイクで捉えることで、周囲で発生した人の会話に関する情報(会話の頻度、盛り上がり度、気分、機嫌、高揚度、賑わい度、など)を得ることができる。また、机上に設置された環境センサ105は、照明の明るさを照度センサで捉えることで、机上作業に適切な光量が与えられているかどうかに関する情報を得ることができる。環境センサ105は、設置された場所によらず、周囲に生じる臭い(食事、人、空調、香料、などに起因する臭い)を捉えることができる。また、周囲のCO2濃度を捉えることで、人の活動に適切なCO2濃度が維持されているかどうかに関する情報を得ることができる。
【0055】
図2Bは、本発明の実施例1に係る環境センサと人流センサを会議室に設置したときの設置例を示す説明図である。
図2Bにおいて、会議室15には、ホワイトボード16や会議机17が配置される。このため、会議室15では、ホワイトボード16や会議机17の周辺での空間評価指標を算出することを目的に、ホワイトボード16の周辺や会議机17の周辺に環境センサ105が設置される。例えば、環境センサ105は、ホワイトボード16の上部や会議机17の上、或いは会議机17上方の天井15aに設置される。人流センサ106は、会議室15の壁15bに設置される。すなわち、会議室内では、会議参加者18が自由に床15cの上を移動するため、会議室内全体の人流を捉えられるように、人流センサ106が壁15bに設置される。この際、人流センサ106は、ホワイトボード16付近の会議参加者18や会議机17付近の会議参加者18を含むエリアが画角に入るように設置角度が調整される。ここで人流センサ106は、ToFカメラを想定している。
【0056】
図2Cは、本発明の実施例1に係る環境センサと人流センサをオフィスに設置したときの設置例を示す説明図である。
図2Cにおいて、オープン会議スペースを有するオフィス20には、会議机21の上や作業デスク22の上に環境センサ105が設置される。オープン会議スペースを有するオフィス20では、会議机21の周囲で食事をとる人がいるため、会議机21の周囲や作業デスク22の周囲では、昼食時に食品臭が漂う。そこで、会議机21の上や作業デスク22の上に臭いセンサである環境センサ105をそれぞれ設置することで、各環境センサ105の出力を基に場所ごとの臭いの差異を評価することができる。なお、オープン会議スペースに類似のスペースとしては、コラボスペース、立ち話スペース、プレゼンスペース、マグネットスペース、オフィスキッチン、アイランドキッチンなどが挙げられる。
【0057】
図2Dは、本発明の実施例1に係る環境センサと人流センサをビルに設置したときの設置例を示す説明図である。
図2Dにおいて、ビル25の部屋26の床26aの上には、防音ブース27が設置され、部屋26の天井26bと壁26cには、天井26bと壁26cとを結ぶ制振ダンパー28が設置されている。防音機器の一種である防音ブース27の内側壁面に、騒音レベルを検出する環境センサ105xが設置され、防音ブース27の外側壁面に、騒音レベルを検出する環境センサ105yが設置されている。この際、環境センサ105xの出力と環境センサ105yの出力との差を比較することで、防音ブース27の防音性能や、防音ブース内外の騒音の大きさを評価することができる。制振機器の一種である制振ダンパー28には、環境センサ105zが設置される。地震発生時の制振ダンパー28の振動を環境センサ105zで捉えることで、制振ダンパー28が設置された部屋26の制振性能またはビル全体の制振性能を評価することができる。
【0058】
図3Aは、本発明の実施例1に係るセンサが設置されたビルのフロア平面図である。
図3Aにおいて、このフロア300は、廊下出入口301に連なる廊下302と、廊下302を間にして配置された、二つの部屋(Room1)303、部屋(Room2)304を有する。フロア300内における、廊下302と部屋303、304のそれぞれの室内人数を集計するために、廊下出入口301と各部屋303、304の各出入口の付近に人流センサ106が設置されている。この際、廊下出入口301と各部屋303、304の各出入口を人が通過する際に必ず通る線を入退室基準線201として定義する。これにより、人流センサ106は、入退室基準線201を通過する人を検知することで、廊下302と部屋303、304を行き来する人の人流情報を得ることができる。
【0059】
廊下302と部屋303、304のそれぞれの局所的な空間情報を環境情報として計測するために、環境センサ105が設置される。部屋304は、部屋303よりも比較的広い空間であり、部屋304の中においても環境が異なることが予想される。例えば、環境センサ105に属する環境センサ105aは、部屋304のうち窓305が二方向に面したエリアに設置されている。このエリアは、外気との熱交換が活発であるため、昼は暑くて夜は寒いなど、温度が不安定になると予想される。環境センサ105bは、部屋304の出入口の付近のエリアに設置されている。このエリアは、部屋304の出入口が開閉するたびに騒音が発生し、廊下302と室内の空気が混ざり合って臭いが変化することが予想される。環境センサ105cは、部屋304のうち付近に窓305や出入口が無いエリアに設置されている。このエリアは、環境が比較的安定していると予想される。
【0060】
図3Bは、本発明の実施例1に係るセンサが設置されたショッピングモールのフロア平面図である。
図3Bにおいて、ショッピングモールのフロア310は、屋外エリア311、北側エリア312、南側エリア313に区分けされており、各エリアの境界には、入退室基準線201が設定されている。各エリアの境界には、それぞれ人流センサ106が設置されている。各人流センサ106は、入退室基準線201を通過して各エリアに入った人の人数と、入退室基準線201を通過して各エリアから出て行った人の人数を集計することで、各エリア内の滞在人数を計測することができる。
【0061】
また、フロア310のうち南西出入口314、エスカレーター315、316、エレベータ317の近傍には、入退室基準線201が設定されていると共に、人流センサ106が設置されている。南西出入口314近傍に設置された人流センサ106は、南西出入口314から出入りした人の人数を計測することができる。エスカレーター315、316、エレベータ317近傍に設置された人流センサ106は、エスカレーター315、316、エレベータ317をそれぞれ利用した人の人数を計測することができる。
【0062】
また、フロア310の北側エリア312には、催事場318と店舗S1~S5、S8、S9、S12、S13が配置され、南側エリア313には、フードコート319と店舗S6、S7、S10、S11、S14、S15が配置されている。催事場318、フードコート319、及び店舗S1~S15には、それぞれ環境センサ105が設置されている。催事場318、フードコート319、及び店舗S1~S15に、それぞれ環境センサ105が設置することで、催事場318、フードコート319、及び各店舗S1~S15における環境情報を得ることができる。また、各店舗における環境情報を比較することで、店舗間の環境を比較することが可能となる。
【0063】
なお、フロア310のトイレ(WC)320やごみ収集場所に環境センサ105を設置することで、トイレ(WC)320やごみ収集場所からの臭いの漏れ具合を計測することができる。
【0064】
図4Aは、本発明の実施例1に係る環境センサが出力するログデータを蓄積するデータベースの構成例を示す構成図である。
図4Aにおいて、データベース400は、ビル管理サーバ101のデータ蓄積部101aが有することを想定しているが、エッジサーバ103が有してもよい。データベース400は、タイムスタンプ401、温度(℃)402、湿度(%RH)403、臭い(a.u.)404、照度(lx)405、CO
2濃度(ppm)406、騒音(dB)407、振動(m/S
2)408の項目(カラム)を備える。
【0065】
タイムスタンプ401には、複数の環境センサ105がそれぞれセンサデータを読み取った時刻(サンプリング時刻)の情報が記録される。タイムスタンプ401には、例えば、各環境センサ105が、それぞれ同期して10秒毎にセンサデータを読み取った場合、10秒毎の時刻の情報が記録される。温度402には、環境センサ105が検出した温度のセンサデータを示す情報が記録される。湿度403には、環境センサ105が検出した湿度のセンサデータを示す情報が記録される。臭い404には、環境センサ105が検出した臭いのセンサデータを示す情報が記録される。照度405には、環境センサ105が検出した照度のセンサデータを示す情報が記録される。CO2濃度406には、環境センサ105が検出したCO2濃度のセンサデータを示す情報が記録される。騒音407には、環境センサ105が検出した騒音のセンサデータを示す情報が記録される。振動408には、環境センサ105が検出した振動のセンサデータを示す情報が記録される。ここで、各環境センサ105の出力は、前述の通り、特徴量(平均値や最大値など)に換算した値を記録してもよい。これらの特徴量は一例で、特徴量の計算方法はこれに限らない。
【0066】
なお、各環境センサ105が、同期してセンサデータを読み取る例を説明したが、各環境センサ105は、異なるタイミング(サンプリング時刻)でセンサデータを読み取ることもできる。例えば、各環境センサ105が独立した機器で構成されている場合、機器ごとにRTC(Real Time Clock)モジュールを保有してタイムスタンプを生成することができる。また、例えば、照度やCO2濃度などの比較的長い時間スパンで変化するデータを計測する環境センサ105についは、その測定周期を長くし、蓄積されるデータ量を削減したい場合が考えられる。このような場合には、環境センサ105ごとに異なるタイミング(サンプリング時刻)でセンサデータを読み取る構成を採用することができる。
【0067】
図4Bは、本発明の実施例1に係る複数の環境センサが非同期で出力するログデータを蓄積するデータベースの構成例を示す構成図である。
図4Bにおいて、データベース402Aには、温度を検出する環境センサ105が、10秒毎にセンサデータを読み取ったときのログデータが蓄積されている。データベース403Aには、湿度を検出する環境センサ105が、温度を検出する環境センサ105とは非同期で、例えば、5秒毎にセンサデータを読み取ったときのログデータが蓄積される。
【0068】
図5Aは、本発明の実施例1に係る人流センサが出力するログデータを蓄積したデータベースの構成例を示す構成図である。
図5Aにおいて、データベース500は、ビル管理サーバ101のデータ蓄積部101aが有することを想定しているが、エッジサーバ103が有してもよい。
【0069】
データベース500は、タイムスタンプ501、出入口A502の項目(カラム)を備える。出入口A502は、入室数(人)503と退室数(人)504から構成される。
【0070】
タイムスタンプ501には、出入口Aに設置された人流センサ106がセンサデータを読み取った時刻の情報が、30秒毎に記録される。出入口A5012の入室数(人)503と退室数(人)504には、それぞれ各時刻に人流センサ106の検出による人数を示す情報が記録される。すなわち、入室数(人)503には、各時刻に入室した人数の情報が記録され、退室数(人)504には、各時刻に退室した人数の情報が記録される。
【0071】
図5Bは、本発明の実施例1に係る複数の人流センサが出力するログデータを集約したデータベースの構成例を示す構成図である。
図5Bにおいて、データベース510は、ビル管理サーバ101のデータ蓄積部101aが有することを想定しているが、エッジサーバ103が有してもよい。ここで、出入口が二つある部屋として、例えば、
図3Aに示す部屋303を想定している。
【0072】
データベース510は、タイムスタンプ511、出入口A512、出入口B513、室内人数514の項目(カラム)を備える。出入口A512は、入室数(人)515と退室数516から構成され、出入口B513は、入室数(人)517と退室数518から構成される。
【0073】
タイムスタンプ511には、出入口Aと出入口Bにそれぞれ設置された人流センサ106がセンサデータを読み取った時刻の情報が、30秒毎に記録される。出入口A512の入室数(人)515と退室数516には、それぞれ出入口A付近に設置された人流センサ106の検出による人数を示す情報が記録される。出入口B513の入室数(人)517と退室数(人)518には、それぞれ出入口B付近に設置された人流センサ106の検出による人数を示す情報が記録される。例えば、入室数(人)515と入室数(人)517には、30秒の間に入室した人数の情報が記録され、退室数516と退室数518には、30秒の間に退室した人数の情報が記録される。室内人数514には、二つの出入口A、Bの入室数515、517に記録された人数と退室数516、518に記録された人数とを集計し、部屋内に滞在している人数を示す情報が記録される。なお、他の部屋、例えば、部屋304についても、データベース510と同様のデータベースが構築される。
【0074】
図6Aは、本発明の実施例1に係る人流センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
図6Aにおいて、縦軸は、人流センサのセンサデータから算出された室内人数であり、横軸は、0時から24時までの1日の時間である。室内人数は、0時から6時頃までは0であるが、6時過ぎ頃から徐々に増加し、9時から21時頃まで、人の出入りによって増減する特性を示している。
【0075】
図6Bは、本発明の実施例1に係る照度センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
図6Bにおいて、縦軸は、照度センサの検出値を示す照度であり、横軸は、0時から24時までの1日の時間である。ある部屋に設置された照度センサの検出によるセンサデータ(照度)は、0時から6時前までは0であるが、6時頃に照明器具のスイッチがオンになると徐々に増加し、その後、一定の値に維持され、22時頃、照明器具のスイッチがオフになると、急激に低下する特性を示している。
【0076】
図6Cは、本発明の実施例1に係る温度センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
図6Cにおいて、縦軸は、温度センサの検出値を示す温度であり、横軸は、0時から24時までの1日の時間である。ある部屋に設置された温度センサの検出によるセンサデータ(温度)は、0時から6時頃までは略一定の値であるが、6時過ぎから22時頃まで、人の出入りによって僅かに増減する特性を示している。
【0077】
図6Dは、本発明の実施例1に係る湿度センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
図6Dにおいて、縦軸は、湿度センサの検出値を示す湿度であり、横軸は、0時から24時までの1日の時間である。ある部屋に設置された湿度センサの検出によるセンサデータ(湿度)は、0時から6時頃までは略一定の値であるが、6時過ぎから22時頃まで、人の出入りによって増減する特性を示している。
【0078】
図6Eは、本発明の実施例1に係るCO
2濃度センサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
図6Eにおいて、縦軸は、CO
2濃度センサの検出値を示すCO
2濃度であり、横軸は、0時から24時までの1日の時間である。ある部屋に設置されたCO
2濃度センサの検出によるセンサデータ(CO
2濃度)は、0時から6時頃までは略一定の値であるが、6時過ぎから22時頃まで、人の出入りによって増減する特性を示している。
【0079】
図6Fは、本発明の実施例1に係る臭いセンサのセンサデータの時系列変化を示す特性図である。
図6Fにおいて、縦軸は、臭いセンサの検出値を示す臭いであり、横軸は、0時から24時までの1日の時間である。ある部屋に設置された臭いセンサの検出によるセンサデータ(臭い)は、0時から6時頃までは略一定の値であるが、6時過ぎから22時頃まで、人の出入りによって増減する特性を示している。
【0080】
図7は、本発明の実施例1に係るデータベースであって、空間評価指標のデータベースの構成例を示す構成図である。
図7において、データベース700は、ビル管理サーバ101のデータ蓄積部101aが有することを想定しているが、エッジサーバ103が有してもよい。
【0081】
データベース700は、部屋701、空間種別702、賑わい度703、混雑度704、快適度705、清潔度706、省エネ性707、集客性708の項目(カラム)を備える。これらの項目のうち、賑わい度703、混雑度704、快適度705、清潔度706、省エネ性707、集客性708は、それぞれ空間の価値を定量的に評価するための指標である、空間評価指標として構成される。これらの空間評価指標は、環境センサ105の計測による環境情報又は人流センサ106の計測による人情報のうち少なくとも一方の情報を基に空間価値評価部101bにより算出される。
【0082】
部屋701には、ビル管理サーバ101が管理するビル内の部屋名の情報が記録される。例えば、部屋303の部屋名として「Room1」が記録され、部屋304の部屋名として「Room2」が記録される。空間種別702には、部屋の使用用途や特徴に関する情報、例えば、部屋がオフィスとして使用される場合、「オフィス」が記録される。空間種別702に記録される情報は、環境センサ105や人流センサ106を設置する際に、ビル管理サーバ101から入力することができ、また、ユーザ端末107から、ビル管理サーバ101を介して更新することができる。
【0083】
賑わい度703には、空間の賑わいを表す空間評価指標が、数値で記録される。この際、人の会話の量を賑わい度として捉える場合、マイクで計測した騒音(dB)の一日当たりの平均値や標準偏差を賑わい度として定義することができる。
【0084】
他の賑わい度としては、会議室内で、ホワイトボードの前での会話の盛り上がりを賑わいと捉える場合、ホワイトボード前の騒音計で計測した騒音(dB)の会議中の平均値や標準偏差を賑わい度として定義することができる。
【0085】
また、他の賑わい度としては、会議室内で、座席とホワイトボードの前を行き来するなど、部屋の中を歩き回る量を賑わいと捉える場合、人流センサ106で計測した会議中の人の移動量を、部屋内の人数で除した値を賑わい度として定義することができる。
【0086】
混雑度704には、空間の混雑度を表す空間評価指標が、数値で記録される。この際、部屋の収容人数あたりの滞在人数の割合を混雑度として捉える場合、人流センサ106で計測した部屋内人数を部屋の収容人数で除した割合(%)の一日当たりの平均値を賑わい度として定義することができる。
【0087】
快適度705には、空間の快適度を表す空間評価指標が、数値で記録される。この際、平均予想温冷感申告PMV(Predicted Mean Vote)を快適度として捉える場合、温度センサと湿度センサの出力から算出したPMVの一日当たりの平均値を快適度として定義することができる。
【0088】
他の快適度としては、会議室内で、CO2濃度が上昇しないことを快適度と捉える場合、会議中に環境センサで計測したCO2濃度の平均値や標準偏差を、会議室に人がいないときに計測したCO2濃度の平均値で除して得られた値の逆数をとった値を快適度として定義することができる。
【0089】
清潔度706には、空間の清潔度を表す空間評価指標が、数値で記録される。この際、空気の臭いの安定度を清潔度として捉える場合、臭いセンサの出力の分散の逆数の一日当たりの平均値を清潔度として定義することができる。
【0090】
省エネ性707には、空間の省エネ性(省エネルギー性)を表す空間評価指標が、数値で記録される。この際、部屋内に人が在室していないときに照明器具がオフにされていることを省エネ性として捉える場合、一日の中で、人流センサ106で計測した部屋内人数が0人の時間帯において、照度センサの出力が小さい値を示した時間帯の割合を省エネ性として定義することができる。
【0091】
集客性708には、空間の集客性を表す空間評価指標が、数値で記録される。この際、部屋への出入り回数の多さを集客性として捉える場合、人流センサ106で計測した1日当たりの入室数と退室数の総和を、部屋内人数の一日当たりの平均値で除した値を集客性として定義することができる。
【0092】
賑わい度703~集客性708に対応した各空間評価指標は、ビル管理サーバ101の空間価値評価部101bで計算してもよいし、エッジサーバ103が計算してビル管理サーバ101に算出結果を送信してもよい。この際、ビル管理サーバ101の空間価値評価部101bは、計算して得られた各空間評価指標(賑わい度703~集客性708)の情報を、ネットワーク102を介して各ユーザ端末107に送信し、各ユーザ端末107の表示画面に表示することで、各ユーザに各空間評価指標(賑わい度703~集客性708)の情報を提示することができる。なお、ユーザ端末107の表示装置は、空間価値評価部101bの算出による空間評価指標を画面上に表示する表示部として構成される。
【0093】
図8Aは、本発明の実施例1に係る環境センサの構成例を示す構成図である。
図8Aにおいて、環境センサ105は、センサ素子105aとして、温度を検出する温度センサ105a1、湿度を検出する湿度センサ105a2、臭いを検出する臭いセンサ105a3、CO
2濃度を検出するCO
2濃度センサ105a4、有毒ガス濃度を検出する有毒ガス濃度センサ105a5、浮遊微粒子濃度を検出する浮遊微粒子濃度センサ105a6、検出対象の色調を検出する色調センサ105a7、照度を検出する照度センサ105a8、騒音を検出する騒音計105a9、音(音声)を検出するマイク105a10、振動を検出する振動センサ105a11のうちいずれか一つを備える。
【0094】
環境センサ105は、センサ素子105aの他に、マイクロコントローラー105b、通信モジュール105c、ADC(Analog Digital Converter)105d、バッテリー105eを含んで構成される。環境センサ105が出力するものは、空気質108または空間環境109または設備の状態110である。空気質108は、湿度108a、臭い108b、CO2濃度108c、有毒ガス濃度108d、浮遊微粒子濃度108eのうちいずれか一つを含む。空間環境109は、温度109a、照度109b、色調109c、音109d、振動109eのうちいずれか一つを含む。設備の状態110は、空調機器の状態110a、防音機器の状態110b、制振機器の状態110cのうちいずれか一つを含む。
【0095】
図8Bは、本発明の実施例1に係る人流センサの構成例を示す構成図である。
図8Bにおいて、人流センサ106は、センサ素子106aとして、ToF(Time of Flight)カメラ106a1、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサ106a2、人感センサ106a3、赤外線センサ106a4のうちいずれか一つを含んで構成される。
【0096】
人流センサ106は、センサ素子106aの他に、マイクロコントローラー106b、制御PC106c、通信モジュール106d、バッテリー106eを含んで構成される。人流センサ106が出力するものは、人流情報111または人活動情報112である。人流情報111は、人座標111a、人動線111b、人数111c、人密度111dのうちいずれか一つを含む。人座標とは、空間における人の地図上の位置を示す座標(x,y)である。人動線とは、空間における人の移動を示す軌跡或いは経路である。人数とは、空間に存在する人の人数である。人密度とは、空間に存在する人の単位面積当たりの人数である。人活動情報112は、人距離112a、人姿勢112b、人動作112c、人行動112d、人運動量112eのうちいずれか一つを含む。人距離とは、空間において人が移動した長さである。人姿勢とは、空間において人が身体を保つ様子である。人動作とは、空間における人の立ち居・振る舞いである。人行動とは、空間における人の目的を有する動きである。人運動量とは、空間における人の運動の状態を示す物理量である。
【0097】
本実施例によれば、建物内の空間と人との相互作用に基づく空間パフォーマンスを空間評価指標によって定量化することができ、結果として、ショッピングモールやオフィスビルなどの空間の価値を空間評価指標で比較することが可能になる。また、本実施例によれば、ショッピングモールやオフィスビルなどの空間の価値を空間評価指標で表示することで、空間の価値を可視化することができる。さらに、本実施例によれば、ショッピングモールやオフィスビルなどの空間に、空間評価指標に応じてテナント賃料を設定することができる。また、本実施例によれば、環境センサや人流センサとして、それぞれ各種のセンサを用意することで、賑わい度703~集客性708に対応した各空間評価指標を算出することができる。
【実施例2】
【0098】
実施例2は、複数のビルのうち一方のビル内の空間に環境センサと人流センサを設置し、他方のビル内の空間に第二環境センサと第二人流センサを設置し、一方のビル内の空間における環境センサの計測値と人流センサの計測値を基に空間評価指標(一方のビル内の空間と人との相互作用に基づく空間パフォーマンスを評価するための指標)を算出し、他方のビル内の空間における第二環境センサの計測値と第二人流センサの計測値を基に第二空間評価指標(他方のビル内の空間と人との相互作用に基づく第二空間パフォーマンスを評価するための指標)を算出し、算出した空間評価指標と第二空間評価指標とを比較し、比較結果をユーザのユーザ端末に表示するものである。
【0099】
図9は、本発明の実施例2に係る空間価値評価システムの概略構成例を示すブロック図である。
図9において、空間価値評価システム2は、実施例1と同様に、環境センサ105、人流センサ106、空間価値評価部101bを備え、更に、実施例2では、第二環境センサ2105、第二人流センサ2106、第二空間価値評価部2101b、空間評価指標比較部101dを備える。
【0100】
環境センサ105は、計測した環境情報を空間価値評価部101bに送信し、人流センサ106は、計測した人流情報を空間価値評価部101bに送信する。空間価値評価部101bは、環境情報と人流情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて空間評価指標を計算し、計算で得られて空間評価指標を空間評価指標比較部101dに送信する。
【0101】
第二環境センサ2105は、ビル内の第二空間における第二環境情報を計測し、計測した第二環境情報を第二空間価値評価部2101bに送信し、第二人流センサ2106は、ビル内の第二空間の人流又は人活動を示す第二人流情報を計測し、計測した第二人流情報を第二空間価値評価部2101bに送信する。第二空間価値評価部2101bは、第二環境情報と第二人流情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて第二空間評価指標を計算し、計算で得られた第二空間評価指標を空間評価指標比較部101dに送信する。空間評価指標比較部101dは、空間評価指標と第二空間評価指標とを比較し、比較結果を出力する。
【0102】
図10Aは、本発明の実施例2に係る空間価値評価システムの全体構成例を示すブロック図である。ここでは空間としてビルを想定している。ビルは2棟であってもよいし、3棟以上であってもよい。
【0103】
図10Aにおいて、空間価値評価システム2は、構成要素がビルA、B、中央管理棟CTに分散して配置されている。ビルA内の空間には、複数の環境センサ105と、複数の人流センサ106、及び空間価値評価部101bが配置されている。ビルB内の第二空間には、複数の第二環境センサ2105と、複数の第二人流センサ2106、及び第二空間価値評価部2101bが配置されている。中央管理棟CTには、ユーザ端末107と情報の送受信を行う空間評価指標比較部101dが配置されている。
【0104】
ビルAにおける各環境センサ105は、それぞれ計測した環境情報を空間価値評価部101bに送信する。ビルAにおける各人流センサ106は、それぞれ計測した人流情報を空間価値評価部101bに送信する。ビルAにおける空間価値評価部101bは、各環境情報と各人流情報に基づいて空間評価指標を計算し、計算で得られて空間評価指標を空間評価指標比較部101dに送信する。例えば、ビルAにおける空間価値評価部101bは、ビルAにおける空間評価指標として、「賑わい度」「混雑度」「快適度」「清潔度」「省エネ性」「集客性」をそれぞれ数値で算出し、算出した各空間評価指標の情報を空間評価指標比較部101dに送信する。
【0105】
ビルBにおける各第二環境センサ2105は、それぞれ計測した第二環境情報を第二空間価値評価部2101bに送信する。ビルBにおける各第二人流センサ2106は、それぞれ計測した第二人流情報を第二空間価値評価部2101bに送信する。第二空間価値評価部2101bは、各第二環境情報と各第二人流情報に基づいて第二空間評価指標を計算し、計算で得られた第二空間評価指標を空間評価指標比較部101dに送信する。例えば、ビルBにおける第二空間価値評価部2101bは、ビルBにおける第二空間評価指標として、「賑わい度」「混雑度」「快適度」「清潔度」「省エネ性」「集客性」をそれぞれ数値で算出し、算出した各第二空間評価指標の情報を空間評価指標比較部101dに送信する。
【0106】
空間評価指標比較部101dは、空間価値評価部101bからの空間評価指標と第二空間価値評価部2101bからの第二空間評価指標とを比較し、比較結果をユーザ端末107に送信し、比較結果をユーザ端末107の表示装置の画面に表示してユーザに提示する。例えば、空間評価指標比較部101dは、ビルAにおける空間評価指標(「賑わい度」「混雑度」「快適度」「清潔度」「省エネ性」「集客性」)の中の一つと、ビルBにおける第二空間評価指標(「賑わい度」「混雑度」「快適度」「清潔度」「省エネ性」「集客性」)の中の一つとをそれぞれ比較し、各比較結果をユーザ端末107に送信する。
【0107】
この際、ユーザ端末107を操作するユーザは、ビルAにおける空間評価指標、例えば、賑わい度と、ビルBにおける第二空間評価指標、例えば、賑わい度とを比較することで、ビルAにおける空間の価値とビルBにおける空間の価値とを比較したり、ビルAにおける空間の価値とビルBにおける空間の価値を評価したりすることが可能になる。なお、ユーザ端末107の表示装置は、空間評価指標比較部101dの出力による比較結果を画面上に表示する表示部として構成される。また、複数の第二環境センサ2105と、複数の第二人流センサ2106、及び第二空間価値評価部2101bを、ビルB(第二建物)内の第二空間に配置する代わりに、ビルA内の第二空間(複数の環境センサ105と複数の人流センサ106が配置されている空間とは異なる空間)に配置することもできる。
【0108】
図10Bは、本発明の実施例2に係る空間価値評価システムの他の全体構成例を示すブロック図である。
図10Bにおいて、空間価値評価システム2は、中央管理棟CTに、空間評価指標比較部101dの他に、空間評価指標蓄積部101cを配置したものであり、他の構成は、
図10Aにおける空間価値評価システム2と同様である。
【0109】
空間評価指標蓄積部101cには、ビルAにおける空間評価指標であって、空間価値評価部101bの算出による空間評価指標(「賑わい度」「混雑度」「快適度」「清潔度」「省エネ性」「集客性」)の情報と、ビルBにおける第二空間評価指標であって、第二空間価値評価部2101bの算出による第二空間評価指標(「賑わい度」「混雑度」「快適度」「清潔度」「省エネ性」「集客性」)の情報がそれぞれ算出時間に対応づけて順次時系列に従って蓄積される。この際、空間評価指標比較部101dは、空間評価指標蓄積部101cに蓄積された空間評価指標と第二空間評価指標のうち算出時間が同一のもの同士を比較するか、又は算出時間が互いに異なるもの同士を比較することができる。例えば、空間評価指標比較部101dは、空間評価指標蓄積部101cに蓄積された情報を参照し、算出時間が最新の空間評価指標と算出時間が最新よりも過去の第二空間評価指標とを比較し、比較結果をユーザ端末107に送信したり、過去の空間評価指標と最新の第二空間評価指標とを比較し、比較結果をユーザ端末107に送信したり、或いは過去の空間評価指標と過去の第二空間評価指標とを比較し、比較結果をユーザ端末107に送信したりすることができる。この場合、ビルAにおける空間の価値とビルBにおける空間の価値を、同一の算出時間又は異なる算出時間で評価することができる。また、各比較結果をユーザ端末107の表示装置の画面に表示することで、各比較結果を可視化することができる。
【0110】
図11は、本発明の実施例2に係る空間パフォーマンスの評価結果をユーザに提示する画面例の構成図である。
図11において、画面1100は、不動産のオーナーがユーザ端末107で閲覧することを想定している。この際、オーナーは、
自身が所有する不動産の評価結果を、ユーザ端末107の画面1100で確認することができる。
【0111】
ユーザ端末107の画面1100は、ユーザ端末107の表示装置の画面であって、オーナー名表示エリア1101、不動産選択メニュー1102、空間選択メニュー1103、空間種別表示エリア1104、比較種別選択ボタン1105、比較地域選択ボタン1106、空間評価チャート1107、改善提案エリア1108を備える。
【0112】
オーナーが、IDとパスワード等の認証を通して本システムにログインすると、画面1100のオーナー名表示エリア1101にオーナーの名前が表示される。不動産選択メニュー1102には、オーナーが所有していて本システムに登録している不動産の一覧がプルダウンメニューとして表示される。オーナーは、不動産選択メニュー1102に表示された不動産の一覧の中から、任意のメニューを選択することができる。空間選択メニュー1103には、不動産選択メニュー1102で選択したメニュー(不動産)に登録された空間の一覧がプルダウンメニューとして表示される。オーナーは、空間選択メニュー1103に表示された空間の一覧の中から、任意のメニューを選択することができる。空間種別表示エリア1104には、空間選択メニュー1103で選択した空間に登録された空間種別702として、例えば、「オフィス」が表示される。比較種別選択ボタン1105ボタンとして、「オフィス」「会議室」「カフェテリア」「ラウンジ」「エントランス」「喫煙室」が表示される。オーナーは、これら比較種別選択ボタン1105の中から、空間選択メニュー1103で選択した空間と比較したい空間種別を選択する。なお、本例では、空間種別表示エリア1104に表示された空間種別(部屋303に相当する「Room1」の空間種別)は「オフィス」なので、比較種別選択ボタン1105として、「オフィス」がデフォルトで選択されている。
【0113】
比較地域選択ボタン1106ボタンとして、「アジア」「ヨーロッパ」「北米」「アフリカ」が表示される。オーナーは、これら比較地域選択ボタン1106の中から、空間選択メニュー1103で選択した空間と比較したい空間地域を選択する。なお、本例では、比較地域選択ボタン1106として、「ヨーロッパ」「北米」が選択されている。
【0114】
空間評価チャート1107の周囲には、空間評価指標として、「賑わい度」「混雑度」「快適度」「清潔度」「省エネ性」「集客性」が環状に略等間隔に並んで表示されている。空間評価チャート1107には、空間選択メニュー1103で選択した空間、例えば、「Room1」の各空間評価指標の値1107Aが表示される。
【0115】
また、比較種別選択ボタン1105で選択したオフィスの空間種別702を有する他の空間を集計し、オフィスにおける平均値を業界平均1107Bとして、オフィスにおける最高値を最高水準1107Cとして表示している。オーナーは、空間評価チャート1107に表示された各空間評価指標の値を確認することで、自分が保有する空間のパフォーマンスを多角的な視野から評価することができる。
【0116】
ここで、オーナーが「Room1」を「オフィス」ではなく「ラウンジ」として活用するように部屋の用途変更することを考えた場合、比較種別選択ボタン1105で「ラウンジ」を選択することができる。この際、空間評価チャート1107には、「ラウンジ」における業界平均や最高水準が表示される。この仕組みにより、オーナーは、「Room1」を別の用途に使用した方が空間を有効に活用できるのではないか、といった検討が可能となる。
【0117】
改善提案エリア1108には、空間評価チャート1106の結果を元に、空間に対して改善すべき要素が自動で表示される。例えば、「Room1」が、清潔度において業界平均よりも下回っている場合、清潔の向上を促すメッセージ「清潔度を向上すると良いでしょう」が表示される。
【0118】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果を奏することができると共に、ビルAにおける空間の価値とビルBにおける空間の価値とを比較することが可能になる。また、本実施例によれば、オフィス空間の改善効果を可視化することができる。さらに、本実施例によれば、ビルAにおける空間の価値とビルBにおける空間の価値との比較結果を画面上に表示することで、ビルAにおける空間の価値とビルBにおける空間の価値との比較結果を可視化することができる。
【実施例3】
【0119】
実施例3は、ビルの空間内の空調を制御する空調設備の電力を計測する電力計の計測値と、ビルの空間の内外の温度をそれぞれ計測する各環境センサの計測値を基に、ビルの空間における省エネ性を評価するものである。この際、省エネ性は、空調設備が単位消費電力当たり、人の作業パフォーマンスをどれだけ向上させることができたか、として捉える。
【0120】
図12は、本発明の実施例3に係る空間価値評価システムの省エネ性を説明するための説明図である。
図12において、ビル30は、エントランス31、機械室32、執務室33を備える。機械室32には、分電盤34が設置され、執務室33には、空調設備(エアコン)35が設置されている。エントランス31の外には、外気温を検出する環境センサ105eが設置される。分電盤34には、電力を計測する電力計としての環境センサ105gが設置される。執務室33には、室内の温度を検出する環境センサ105dが設置される。エアコン35には、電力を計測する電力計としての環境センサ105fが設置される。
【0121】
環境センサ105eの検出による外気温と環境センサ105dの検出による室内温度との差は、空調設備(エアコン)35の稼働によって得られた効果として捉えることができる。この際、空調設備(エアコン)35の消費電力は、環境センサ105fで測定することができる。なお、電力計としては、例えばコンセントに取り付けて電化製品の消費電力を測定するワットチェッカーを用いることができる。また、空調設備(エアコン)35の消費電力を測定する別の方法としては、分電盤34に取り付けるタイプの環境センサ105gを用いることができる。この場合の電力計としては、例えば、ケーブルを流れる電流を測定するクランプ型電流センサやクランプ型電圧計がある。他の電力計としては、電力測定機能を有するブレーカーや、スマートメーターがある。
【0122】
図13Aは、本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための温度特性図である。ここで、測定場所はオフィス、例えば、
図12に示す執務室33を想定している。
【0123】
図13Aにおいて、縦軸は、環境センサ105の検出による温度であり、横軸は、1日の時間である。環境センサ105の計測値である外気温曲線1301は、室外の温度に応じて変化する特性を示している。これに対して、環境センサ105の計測値である室内温度曲線1302は、0時から7時ごろまでは、外気温曲線1301より僅かに高い状態で変化し、8時から19時頃までは、空調設備35の稼働によって、26℃程度に維持される特性を示している。
【0124】
図13Bは、本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための作業パフォーマンス特性図である。ここで、測定場所はオフィス、例えば、
図12に示す執務室33を想定している。
【0125】
図13Bにおいて、縦軸は、作業パフォーマンスであり、横軸は、1日の時間である。ここで、作業パフォーマンスは、人の作業効率が温度に依存することを想定して定義している。この際、温度が26℃のときに作業パフォーマンスが100%、温度が33℃のときに作業パフォーマンスが20%になると仮定している。室外環境による作業パフォーマンス曲線1303は、外気温(
図13Aの外気温曲線1301で示す温度)の変化に応じて変化し、外気温が高くなると低下する特性を示している。室内環境による作業パフォーマンス曲線1304は、室内温度(
図13Aの室内温度曲線1302で示す温度)の変化に応じて変化し、室内温度が一定に維持されているときには、100%になる特性を示している。温度から算出した作業パフォーマンスによると、8~20時に作業パフォーマンスは、屋外環境より室内環境の方が向上している。作業パフォーマンス向上分(矢印1305で示す向上分)は、
図12に示す空調設備35の稼働によって向上したパフォーマンス効率であると捉えることができる。
【0126】
図13Cは、本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための室内人数特性図である。ここで、測定場所はオフィス、例えば、
図12に示す執務室33を想定している。
【0127】
図13Cにおいて、縦軸は、人流センサ106によって計測された室内人数であり、横軸は、1日の時間である。室内人数曲線1306は、従業員が7時頃から出社し始めるために増加し、12時頃にピークになり、17時頃から退社し始めるために減少する特性を示している。
【0128】
図13Dは、本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための空調消費電力特性図である。ここで、環境センサ105として、空調設備35の消費電力を測定する電力計を用いている。測定場所はオフィス、例えば、
図12に示す執務室33を想定している。
【0129】
図13Dにおいて、縦軸は、電力計の計測による空調設備35の消費電力であり、横軸は、1日の時間である。空調消費電力曲線1307は、空調設備35が7時頃から稼働することによって漸次増加し、その後、8時から19時までは、室内温度(
図13Aの室内温度曲線1302で示す温度)を一定に維持するために、略最大になる特性を示している。
【0130】
図13Eは、本発明の実施例3に係る空間価値評価システムにおける省エネ性の時系列変化を説明するための省エネ性特性図である。ここで、環境センサ105として、空調設備35の消費電力を測定する電力計を用いている。測定場所はオフィス、例えば、
図12に示す執務室33を想定している。
【0131】
図13Eにおいて、縦軸は、省エネ性であり、横軸は、1日の時間である。省エネ性曲線1308は、7時頃から室内人数が漸次増加すると共に、空調設備35の消費電力が漸次増加することに合わせて漸次増加し、12時頃最大になり、その後、室内人数の増減に応じて変化する特定を示している。
【0132】
省エネ性は、空調設備35による消費電力あたりの作業パフォーマンス向上量であり、次の式で算出される。
【0133】
省エネ性 = (室内環境における作業パフォーマンス-屋外環境における作業パフォーマンス)×室内人数/空調消費電力 ・・・(1)
【0134】
上記(1)式の計算によると、8時頃は、空調設備35の消費電力は大きいが、室内人数は少ないので、空調設備35によって向上した作業パフォーマスが小さくなり、省エネ性が低いことが分かる。一方、12時時頃には、空調設備35の消費電力は大きいが、室内人数も多いので、省エネ性が高く、空調設備35によって多くの作業パフォーマンス向上が得られていることが分かる。
【0135】
本実施例において、環境センサ105として、空間内部(執務室内部)の室温を計測する室温センサと、空間外部(執務室外部)の外気温を計測する外気温センサと、空間に設置された空調設備の消費電力を計測する電力計を備え、人流センサ106として、空間内に存在する人の人数を示す室内人数を計測する人感センサを備える。この際、空間価値評価部101bは、空間における人の作業効率が温度に依存することを前提に定義された空間における作業パフォーマンスのうち、室内環境における作業パフォーマンスを室温センサの計測による室温に基づいて算出し、室外環境における作業パフォーマンスを外気温センサの計測による外気温に基づいて算出し、算出した室内環境における作業パフォーマンスと室外環境における作業パフォーマンスとの差に人感センサの計測による前記室内人数を乗算し、この乗算により得られた値を、電力計の計測による消費電力で除算し、この除算により得られた値を、空間評価指標に属する値であって、空調設備の消費電力当たりの作業パフォーマンス向上量を示す省エネ性として算出する。
【0136】
本実施例によれば、空調設備の電力を計測する電力計の計測値と、ビルの空間の内外の温度をそれぞれ計測する各環境センサの計測値を基に、ビルの空間における省エネ性を評価することができる。
【実施例4】
【0137】
実施例4は、ビルの空間内に設置された環境センサの計測値を基に空間内の空気の安定性を評価するものである。
【0138】
図14は、本発明の実施例4に係る空間価値評価システムで適用される空間内の空気の安定性の分布図である。ここで、空気の安定性は、温度または湿度または臭いの分散の逆数であるとして定義する。
【0139】
図14において、ビルの空間内のフロア300は、廊下出入口301、廊下302、部屋303、304を備え、廊下302及び部屋303、304には、それぞれ複数の環境センサ105が設置されている。フロア300を対象としたヒートマップMは、各環境センサ105の計測による温度を基に生成された、空気の安定性を示すヒートマップである。このヒートマップMでは、色が濃いほど安定性が低い、つまり温度の変化が激しいことを示している。
【0140】
例えば、部屋304において、周囲に二つの窓305が存在するエリアであって、環境センサ105aが設置されたエリアA1の温度の変化が最も激しく、空気の安定性が最も低い。環境センサ105b、105c、105gがそれぞれ設置されたエリアA2、A3、A7の温度の変化は、2番目に激しく、環境センサ105dが設置されたエリアA4の温度の変化は3番目に激しく、環境センサ105iが設置されたエリアA9の温度変化は4番目に激しい。一方、部屋304において、環境センサ105e、105f、105hがそれぞれ設置されたエリアA5、A6、A8の温度変化が最も低く、これらのエリアの空気の安定性が1番高い。すなわち、空気の安定性を示すヒートマップMを生成することで、同一の部屋内においても、空気の安定性にムラがあることが明らかになる。このため、空気の安定性を示すヒートマップMは、オフィスの座席ごとの不平等感の可視化や、空気の滞留を解消する空調アセットの新規導入の提案に繋げることができる。
【0141】
本実施例において、環境センサ105として、空間の温度を計測する温度センサと、空間の湿度を計測する湿度センサと、空間の臭いを計測する臭いセンサを備え、空間価値評価部101bは、温度センサと湿度センサ及び臭いセンサの計測値をそれぞれ順次取り込み、温度センサの計測による温度と、湿度センサの計測による湿度、及び臭いセンサの計測による臭いがそれぞれ時系列に変化しないことを条件に、温度センサの計測による温度の分散の逆数を、空間評価指標に属する値であって、空間における空気の安定性を示す値として算出する。
【0142】
図15は、本発明の実施例4に係る空間価値評価システムで採用される測定地点の温度の時系列変化を示す特性図である。
図15において、縦軸は、環境センサ105の計測による温度であり、横軸は、8時から18時までの時間である。曲線1501は、部屋の中央に配置された環境センサ105の計測による温度の時系列変化であり、曲線1502は、部屋の中央とは空気の安定性が異なるエリア、例えば、窓の近辺に配置された環境センサ105の計測による温度の時系列変化である。部屋の中央における曲線1501は、26℃前後で安定している特性を示しているのに対して、窓の近辺における曲線1502は時間帯ごとに変動する特性を示している。これは、窓の開放時に外気温が流入し、室内温度が空調設備の稼働だけでは設定温度に維持できないことがあるためである。このような空気の安定性の違いを、曲線1501、1502の値を基に空間価値評価システムでは定量化することができる。
【0143】
本実施例によれば、ビルの空間内に設置された環境センサの計測値を基に空間内の空気の安定性を評価することができる。
【0144】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。
【0145】
また、前述した各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0146】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【符号の説明】
【0147】
1 空間価値評価システム、101 ビル管理サーバ、101a データ蓄積部、101b 空間価値評価部、101c 空間評価指標蓄積部、101d 空間評価指標比較部、102 ネットワーク、103 エッジサーバ、104 ローカルネットワーク、105 環境センサ、106 人流センサ、107 ユーザ端末