(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-02
(45)【発行日】2025-09-10
(54)【発明の名称】加工食品の製造方法及び加工食品
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20250903BHJP
【FI】
A23L17/00 E
(21)【出願番号】P 2024138924
(22)【出願日】2024-08-20
【審査請求日】2024-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524336900
【氏名又は名称】せとうちトレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 憲昭
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】釣りバカ男の手料理 太刀魚の巻焼き,個人ブログ,ガンさん,2017年10月01日,[online], [2024年9月11日検索], <https://gan-san.seesaa.net:80/article/444931290.html>
【文献】太刀魚巻 [愛媛いいもの図鑑],Youtube[online][video],ehimeiimono,2011年03月25日,[2024年9月11日検索]、<https://www.youtube.com/watch?v=8OS7Hv82Wy0>
【文献】太刀魚巻,日本,2024年03月21日,[online], [2025年2月25日検索], URL<https://tanimotokamabokoten.com/itemdetail/1213556>
【文献】穴子八幡巻10本入(冷凍),2016年06月13日,[online], [2025年2月25日検索], URL<https://gyosyoku.com/products/detail.php?product_id=10001179>
【文献】国産太刀魚八幡巻,2023年05月30日,[online], [2025年2月25日検索],URL<https://two-eight.net/item25.html>
【文献】「太刀魚巻」うまいもんファイル愛媛編,Youtube[online][video],日テレ「ZIP!」公式チャンネル,2021年02月09日,[2024年9月11日検索]、<https://www.youtube.com/watch?v=1A1jXedJlyc>
【文献】穴子の八幡巻き,Youtube[online][video],魚料理教室Fresh Kitchen海蓮丸,2021年03月01日,[2024年9月11日検索]、<https://www.youtube.com/watch?v=lFbIw3cLJzw>
【文献】釣りバカ男の手料理 太刀魚の巻焼き,個人ブログ,ガンさん,2017年10月01日,https://gan-san.seesaa.net:80/article/444931290.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00-17/00
A23L 17/10-17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材に魚類の半身と、前記半身と別体の副半身とを巻き付けて巻き付け加工食品を製造する方法であって、
前記半身の一端部を巻き付けの起点として前記棒材に当てる位置決め工程と、
前記半身を前記一端から前記棒材を軸としてらせん状に巻き付けらせん部を形成する巻き付け工程と、
前記半身の他端を前記らせん部の前記棒材側の面に差し込み、当接させて保持する保持工程と、
前記副半身の一端部を巻き付けの起点として前記棒材に当てる位置決め工程と、
前記副半身
の二周目のらせんが一周目のらせんと重複するように前記棒材に巻き付け、さらに前記半身に重複するように巻き付ける
副半身の巻き付け工程と、
前記半身及び前記副半身を前記棒材に巻き付けた状態で冷凍する冷凍工程と、を含む、加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記巻き付け工程は、
折り返し点まで前記半身を前記棒材に対して前進方向に巻き付け、
前記折り返し点から前記半身を前記棒材に対して後進方向に巻き付け、
前記保持工程は、前記他端部を前記らせん部の一周目と前記棒材の間に差し込み、
前記副半身の巻き付け起点である副巻き付け起点は、前記半身の一端部に隣接し、
前記副半身の巻き付け工程は、前記他端部と重複するように棒材に前進方向に巻き付ける請求項1に記載の加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記巻き付け工程は、
前記折り返し点から前記半身を前記棒材に対して後進方向に、前進方向のらせんと後進方向のらせんが交差するように巻き付け、前記一端部の全体が後進方向のらせんと重複する請求項2に記載の加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記位置決め工程の前に、
前記半身を凍結する凍結工程と、
凍結した前記半身を解凍する解凍工程と、を含む
請求項1に記載の加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記棒材は、竹である請求項1に記載の加工食品の製造方法。
【請求項6】
前記棒材の両端を保持して加熱する加熱工程を含む請求項1に記載の加工食品の製造方法。
【請求項7】
棒材と、前記棒材に巻き付けて保持されている魚類の半身と、前記半身と別体の副半身とを備える巻き付け加工品であって、
前記半身は、巻き付けの起点として前記棒材と当接する一端部と、前記一端部の逆側に位置する他端部と、前記一端部と前記他端部の間で、前記棒材を軸とするらせんを形成して巻き付けられているらせん部と、を有し、
前記他端部は、前記らせん部の前記棒材側の面に差し込まれ当接して保持され、
前記副半身は、巻き付けの起点として前記棒材と当接する副一端と、前記副一端の逆側に位置する副他端と、前記副一端と前記副他端の間で、前記棒材を軸として前記棒材及び前記半身と重複するように、
かつ、二周目のらせんが一周目のらせんと重複するように巻き付けられている副らせん部と、を有し、
前記半身及び前記副半身を前記棒材に巻き付けた状態で冷凍されている加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に魚類の切身を用いた巻き付け加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国四国地方愛媛県南予地域には、タチウオの切身を棒材にらせん状に巻き付けて味付けした食品が「太刀魚巻」として親しまれている。詳細については、例えば非特許文献1に記載されている。また、特許文献1には、魚の切身をゴボウに巻き付けた食品が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】農林水産省、“うちの郷土料理 太刀魚巻 愛媛県”、[令和6年8月6日検索]、インターネット<URL: https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/tachiuo_maki_ehime.html>
【文献】特公昭55-25829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻き付け加工食品は、棒材に食品が強固に保持されていなければ、食品を焼く際や食す際に意図せず巻き付けが解除され、取り扱いがしにくくなる。
これに対し非特許文献1や特許文献1に記載の食品では、魚の切り身を強固に保持するために、棒材の切れ目や、複数の棒材の隙間に切身の端部を差込む。
しかしながら、棒材の断面に切り込みを入れたり、棒材を束ねたりした場合、棒材の両端の形状が不均一になり、その後に工業的な処理を行うことが難しいという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、棒材の両端を所望の形状に保ちながら、強固に食品を棒材に保持する取り扱いやすい巻き付け加工食品の製造方法及びこのような食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、棒材に魚類の半身を巻き付けて巻き付け加工食品を製造する方法であって、前記半身の一端を巻き付けの起点として棒材に当てる位置決め工程と、前記半身を前記一端から前記棒材を軸としてらせん状に巻き付け、らせん部を形成する巻き付け工程と、前記半身の他端を前記らせん部の棒材側の面に差し込み、当接させて保持する保持工程と、を含む製造方法である。
また、棒材と、前記棒材に巻き付けて保持されている魚類の半身と、を備える巻き付け加工品であって、前記半身は、巻き付けの起点として棒材と当接する一端部と、前記一端部の逆側に位置する他端部と、前記一端部と前記他端部の間で、前記棒材を軸とするらせんを形成して巻き付けられているらせん部と、を有し、前記他端部は、前記らせん部の棒材側の面と当接して保持されている巻き付け加工品である。
このような構成によって、棒材の両端に加工を加えることなく、半身の両端が保持され、強固な巻き付けの巻き付け加工品を提供できる。
【発明の効果】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、棒材の両端を所望の形状に保ちながら、強固に食品を棒材に保持する取り扱いやすい巻き付け加工食品の製造方法及びこのような食品の提供ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る、巻き付け加工品の位置決め工程の説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、巻き付け加工品の巻き付け工程の説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、巻き付け加工品の巻き付け工程及び保持工程の説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、巻き付け加工品の副半身についての位置決め工程及び巻き付け工程の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る、巻き付け加工品の副半身についての巻き付け工程及び保持工程の説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、巻き付け加工品の製造工程の説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る、巻き付け加工品の加熱工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る巻き付け加工食品の製造方法について説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、変更例の順に詳述する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。また、出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また形状を構成する要素がその構成の目的や効果を阻害しない範囲内で変形や長さ変更されているものを含むことを意味する概念である。
【0010】
<実施形態>
本発明の巻き付け加工食品Xは、
図3(b)に示すように、棒材1と、棒材1に巻き付けて保持されている魚類の半身2と、を備え、半身2は、巻き付けの起点として棒材1と当接する一端部21と、一端部21の逆側に位置する他端部22と、一端部21と他端部22の間で、棒材1を軸とするらせんを形成して巻き付けられているらせん部2Aと、を有し、他端部22は、らせん部2Aの棒材1側の面と当接して保持されている。これによって、他端部22を強固に保持することができる。さらに、巻き付け加工食品Xは、らせん部2Aの上に巻き回される副半身3を備える。
ここで、
図1~
図5は、巻き付け加工食品Xが完成するまでの過程を模式した図を表し、
図1(a)は半身2が巻付けられる棒材1のみを表し、
図5(b)が完成した食品を表す。
【0011】
棒材1は、長さと外径の比が5:1~15:1程度に設けられる丸棒材であり、実施形態においては長さ約20cm、外径約2cmの円筒である。棒材1としてはどのような材を用いてもよいが植物性の棒材を用いることが好ましく、例えば、竹材、スギやヒノキ等の木材、サトウキビやパイナップルの芯等の果実を用いることができ、断熱性及び耐熱性の高いプラスチックの棒を用いてもよい。最も好ましい材は竹であり、香りにより嗜好性を高め、また加熱しても変形等が起こりにくい。
【0012】
棒材1は、棒本体10と、棒本体10の両端である棒端11とを有する。ここで、棒本体10における半身2の巻き付けの起点を巻き付け起点101とし、後述するらせん部2Aが折り返す位置を折り返し点102とする。同様に、副半身3の巻き付けの起点を副巻き付け起点103とする。
【0013】
巻き付け起点101と折り返し点102は、いずれも棒端11から離れた位置に配置されている。詳述すると、巻き付け起点101は棒端11から棒材1全体の25%~40%離れた位置に配置され、折り返し点102は、巻き付け起点101と反対側の端部から15%~30%程度離れた位置に配置され、折り返し点102の方が棒端11に近く配置される。また、副巻き付け起点103は、巻き付け起点101側の端部から15%~30%程度離れた位置に配置され、半身2及ぶ副半身3が巻き付く領域は全体として左右対称となる。折り返し点102及び副巻き付け起点103が、棒材1の全体に対して15%以上離れているため、使用者は手に持ちやすく、又製造者は加熱しやすい。
【0014】
半身2は、魚類を3枚下ろしすることによって得られる切身であり、その原料は、タチウオ(Trichiurus lepturus)ないしタチウオ科の魚である。変更例として、半身2は、代替として細長い体躯を持つ魚や大型の魚を用いてもよく、例えばウナギ、アナゴ、ハモ、サヨリ、カジキ等を用いてもよい。また、豚肉や鶏肉等を加工して、半身の形に成形したものを利用してもよい。
半身2は、タチウオを用いる場合、幅(短手方向の長さ)が5cm以下のものを用いることが好ましく、これにより骨の影響を少なくして巻き付け作業を容易にする。
【0015】
副半身3は、半身2と同様に、魚類を3枚下ろしすることによって得られる切身であり、半身2と同種の魚が用いられる。特に、半身2と、副半身3は、3枚下ろしした際の右側と左側の半身であってもよい。副半身3は、半身2と同様に、頭側の端部を副一端31とし、尾側の端部を副他端部32とし、らせん状に巻かれる副らせん部3Aとを有する。
【0016】
一端部21は、半身2における頭側の端部であり、他端部22は半身2における尾側の端部である。これにより一端部21は、他端部22よりも幅広に設けられ巻き付け起点における保持性能が高まる。らせん部2Aは、半身2同士の一部が重複するように設けられ、これにより半身2の端部が表出しないため保持性能がより高まる。
【0017】
実施形態において、らせん部2Aは前進方向にらせんを進めた後、折り返し点102において折り返され、後進方向に向けてらせんが進むようにしている。このとき、前進方向のらせんと後進方向のらせんが直角に近い角度で交差して保持性能が高まる。また、棒材1には半身2の皮側が当接する。
【0018】
他端部22は、一端部21から形成されるらせんの一周目まで延び、このらせん部2Aの一周目と棒材1の間に棒端11側から差し込まれる。これにより、他端部22を棒端11から離れた位置に保持し、他端部22が意図せず脱落することを防ぐ。
【0019】
副半身3は、副一端31が副巻き付け起点103において棒本体10と当接して、前進方向に向けて、半身2と重複するように巻き回されることで副らせん3Aを形成する。副巻き付け起点103は、巻き付け起点101の棒端11側に隣接している。
副らせん3Aは、半身2の全体に重複するように設けられ、副他端部32は、隣接する副らせん部3Aの棒材1側の面とその下にあるらせん部2Aの外側を向く面の間に差し込まれることで保持される。
【0020】
<製造方法>
以下に、本発明の実施形態に係る巻き付け加工食品Xの製造方法について詳述する。巻き付け加工食品Xは、
図6に示す工程に従って、製造者によって製造される。
本発明は、半身2の一端部21を巻き付けの起点として棒材1に当てる位置決め工程と、半身2を一端部21から棒材1を軸としてらせん状に巻き付け、らせん部2Aを形成する巻き付け工程と、半身2の他端をらせん部2Aの棒材1側の面に差し込み、当接させて保持する保持工程と、を含む巻き付け加工食品の製造方法である。
【0021】
まず、製造者は、フィーレ製造工程として、魚を三枚に下ろす。詳述すると、タチウオの頭と内蔵が含まれている部分を切り落とし、頭側から包丁を入れることで右側半身、左側半身、中骨の三枚に下ろす。このうち、右側半身又は左側半身を、半身2や副半身3として用いる。その後、半身2、副半身3を殺菌・消毒する。
【0022】
次に、製造者は、凍結工程として、半身2及び副半身3を凍結する。この際の温度は―18℃以下とし、3時間以上の冷却を行い、完全に凍結させることが好ましい。細胞内部の水分が氷結晶を形成して膨張し、細胞を破壊することで解凍時に身を柔らかくすることで、後述のように巻き付ける作業や差し込む作業を容易にできる。また、製造者は凍結工程で凍結された半身2及び副半身3を輸送してもよい。
【0023】
次に、製造者は、解凍工程として、半身2及び副半身3を解凍する。解凍は、例えば+8℃の環境下で5~6時間で行い、少なくとも半身2又は副半身3の内部の氷晶が完全になくなるまで行うことが好ましい。
【0024】
次に、製造者は、塩漬け工程として、半身2及び副半身3を、塩水に5分以上漬け込む。この時、塩水の塩分は海水魚の浸透圧よりも高い3%以上とすることが好ましい。これにより、臭みを抜くとともに解凍工程で流出した水分が抜けるため、食味が向上する。
なお、解凍工程は、塩漬け工程と併せて塩水に漬けることによって行ってもよい。
【0025】
次に製造者は、位置決め工程として
図1(b)に示すように、半身2の一端部21の皮側を巻き付け起点101に当接させ、この状態で一端部21を押さえつける。
【0026】
続いて製造者は、巻き付け工程として
図2(a)に示すように、半身2を前進方向にらせん状に巻き付け、折り返し点102までらせん部2Aを形成する。このとき、隣接する半身が前後方向で重複するため、半身2の境界が抑えつけられ棒本体10が露出せず、強固な巻き付けを可能としている。
【0027】
次に製造者は、巻き付け工程として
図2(b)に示すように、半身2を後進方向にらせん状に巻き付け、
図3(a)に示すように一端部21の付近まで巻き付ける。このとき、下側の半身2と上側の副半身3が交差することで保持力が高まる。
【0028】
次に製造者は、保持工程として
図3(b)に破線で示すように、他端部22を差し込みらせん部2Aと棒材1の間に保持する。差し込む個所は、らせん部2Aの一周目の周回における、半身2の棒本体10側の面と、棒本体10の間であり、少なくとも1cm以上差し込むことが好ましい。これにより一端部21を含む一周目の巻き付けと、他端部22が同時に強固に保持される。
【0029】
製造者は、巻き付け加工食品Xの重量が十分ではなかった場合、副半身3について、位置決め工程、巻き付け工程、保持工程を行う。
製造者は、副半身3の位置決め工程として
図4(a)に示すように、副一端31の皮側を副巻き付け起点103に当接させる。副巻き付け起点103は、一端部21ないし他端部22と隣接する位置に設けられているため、半身2と副半身3の間で棒本体10を露出させず、強固な巻き付けにできる。
【0030】
次に製造者は、副半身3の巻き付け工程として
図4(b)、
図5(a)に示すように、前進方向に向けて巻き付けを行う。巻き付けの方向を半身2と同一とすることで、直下の半身2と副半身3が交差するように配置され、強固に巻き付けできる。
巻き付けの方法は半身2の方法と略同様であるが、
図4(b)に示すように、副らせん部3Aの二周目のらせんは、他の部分よりも先の周回のらせん(一周目のらせん)との重複が大きくなるように設けられる。これにより、らせん部2Aの一周目のらせんを強固に固定するとともに、端に生じる段の差を軽減する。
上記によれば中心が盛り上がり端部に向けて薄くなるように半身が巻かれた意匠性の高い巻き付け加工食品が形成される。
【0031】
次に製造者は、副半身3の保持工程として、
図5(b)に破線で示すように、副他端部32を差し込む。差し込む個所は、副他端部32を含む副らせん部3Aの先の周回のらせんにおける、副半身3の棒本体10側の面と、その直下にある半身2との間であり、少なくとも1cm以上差し込むことで、副他端部32を固定する。これにより巻き付け加工食品Xが形成される。
【0032】
次に製造者は、冷凍工程として、半身2等を巻き付けた棒本体10をその状態で冷凍する。冷凍は―18℃以下の環境で少なくとも3時間以上行い、完全に凍結させることが好ましい。巻き付けた状態で冷凍することで、多少の衝撃があっても型崩れしにくくなる。
【0033】
最後に製造者は、梱包工程として、冷凍された巻き付け加工食品Xの真空包装を行う。このとき、棒材に切り込み等が設けられていないため包装が内側から破れにくく、冷凍で固体となってされているため形を崩さずに梱包できる。
上記によって、棒材1の両端を円筒形状に保ちながら、強固に食品(2,3)を棒材1に保持する巻き付け加工食品Xの製造方法及びこのような食品の提供ができる。
【0034】
なお、上記の巻き付け工程では、いずれも棒材1が固定され、半身2を持つ把持手が棒材1の周りを旋回するようにしている。巻き付けの方向は右側面視で常に時計回りであり、回転方向を一定とすることで構造を単純化して巻き付けの品質を高める。
【0035】
上記の製造方法によって得られた巻き付け加工食品Xを食べられる状態にする際、製造者は、加熱工程として巻き付け加工食品Xの加熱を行う。加熱の方法としては、フライヤーによって揚げることや、炭火やヒーターなどで焼くこと、電子レンジによる加熱など種々の方法が適用できる。
【0036】
巻き付け加工食品Xを炭火などで焼く場合、製造者は均一な加熱のために棒材1を回転させることが好ましく、
図7に示すような自動回転装置Pを用いてもよい。自動回転装置Pは、棒材1の両端を保持する第一保持部P1及び第二保持部P2と、下方から棒材1を支持する、支持部P3と、加熱部P4を備える。
【0037】
第一保持部P1及び第二保持部P2は、棒本体10の内径と略同一か少し小さい突起部を有し、この突起部がそれぞれ棒本体10の両端に挿入して、棒材1を中空に保持する。一方、これらの保持部の構造はこれに限らず、例えばクリップのように挟持する構成でもよく、棒本体10の両端を外側から篏合する構成であってもよい。棒本体10の両端が円筒形であることで、安定して保持することができる。
第一保持部P1又は第二保持部P2は、少なくともいずれか一方が駆動して回転可能に設けられ、これにより巻き付け加工食品Xが棒材1を軸として回転する。より好ましくは他方は従動回転するように設けられ、棒材1の軸方向に摺動可能として取付・取り外しを容易にしていてもよい。
【0038】
支持部P3は、第一保持部P1及び第二保持部P2から離れた位置に立設する薄板部材であって、一部に凹部を含み、この部分で棒本体10を回転可能に支持することで、保持部の回転をサポートする。
【0039】
加熱部P4は、第一保持部P1と第二保持部P2の間に設けられているヒーターであって、棒材1の中心に巻き付けられる半身2の加熱を行う。製造者は保持部による回転速さと、加熱部P4を調整することで、食品の加熱の具合を調整できる。
【0040】
実際に製造者が自動回転装置Pを使用する際には、棒材1の一部を支持部P3に載置し、第一保持部P1に棒材1の一端を差込んだ後、他端を第二保持部P2に貫入させることで巻き付け加工食品Xを保持させ、回転させながら加熱を行うことができる。
【0041】
ある程度焼き目がついたら、製造者は醤油や砂糖を含む調味液を、刷毛等を用いて巻き付け加工食品Xに塗り込むか、焼きあがった後に調味液に漬けこんで味付けを行う。なお、この調味液は加熱する前に、巻き付け加工食品Xにつけてもよい。
【0042】
変更例として、棒材1にさらに追加半身3’を巻き付けてもよい。このとき、追加半身3’について、位置決め工程、巻き付け工程、保持工程を行う。追加半身3’の一端部を巻き付ける起点は副半身3の副一端31が設けられる部分に対し、棒端11側に隣接する。追加半身3’は副半身3と同様に前進方向に巻き付けることによって、直下の魚肉と重複するらせんを形成する。また、追加半身3’の他端部は、追加半身3’が形成するらせんの棒材1側の面とその下にある副らせん部3Aの外側を向く面の間に差し込まれることで保持される。
このようにすることで、製造者は巻き付けられる半身を追加してより重量のある巻き付け加工食品Xを提供できる。製造者は同様の操作を帰納的に続けることで、任意の重量の巻き付け加工食品Xを提供できる。好ましくは、巻き付け加工食品Xの重量が120g~150g程度となるまで巻き付けを行うことで、流通の利便性を確保しつつ、自動回転装置Pに設置しやすくする。
【0043】
また、巻き付け工程では、折り返し点102まで半身2を棒材1に対して前進方向に巻き付け、折り返し点102から半身2を棒材1に対して後進方向に巻き付けることで、巻き付けた半身が交差して強固に固定され、さらに一端部21を他端部22が近接させて固定しやすくする。
【0044】
また、位置決め工程の前に、半身2を凍結する凍結工程と、凍結した半身2を解凍する解凍工程と、を含むことで、半身2を柔らかくして巻き付け工程や保持工程の操作を容易にできる。
【0045】
また、半身2と別体の副半身3を有し、副半身3の一端を巻き付けの起点として棒材に当てる位置決め工程と、副半身3を半身2に重複するように巻き付ける巻き付け工程と、を含むことで、半身2と副半身3を同時に強固に固定できる。
【0046】
また、前記棒材は、竹であることで、冷凍や加熱しても変形しにくく、取り扱いやすい巻き付け加工食品Xを提供できる。また、円筒形であることで取り扱い性がさらに高まる。
【0047】
また、棒材1の両端を保持して加熱する加熱工程を含むことで、工業的に取り扱うことで巻き付け加工食品Xの大量生産ができる。特に、巻き付け加工食品Xの両端は円筒形であるので、食品をより取り扱いやすくできる。
【符号の説明】
【0048】
X 巻き付け加工食品
1 棒材
10 棒本体
101 巻き付け起点
102 折り返し点
103 副巻き付け起点
11 棒端
2 半身
20 半身本体
21 一端部
22 他端部
2A らせん部
3 副半身
30 副半身本体
31 副一端
32 副他端
3A 副らせん部
3’ 追加半身
P 自動回転装置
P1 第一保持部
P2 第二保持部
P3 支持部
P4 加熱部
【要約】
【課題】
棒材の両端を所望の形状に保ちながら、強固に食品を棒材に保持する取り扱いやすい巻き付け加工食品の製造方法及びこのような食品のことを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決する本発明は、半身2の一端21を巻き付けの起点として棒材1に当てる位置決め工程と、半身2を一端21から棒材1を軸としてらせん状に巻き付け、らせん部2Aを形成する巻き付け工程と、半身2の他端をらせん部2Aの棒材1側の面に差し込み、当接させて保持する保持工程と、を含む巻き付け加工食品の製造方法である。
【選択図】
図3