(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-02
(45)【発行日】2025-09-10
(54)【発明の名称】2軸押出機、ペレット製造装置、および2軸押出機の使用方法
(51)【国際特許分類】
B01J 2/20 20060101AFI20250903BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20250903BHJP
B29C 48/76 20190101ALI20250903BHJP
B29B 9/00 20060101ALI20250903BHJP
【FI】
B01J2/20
B29C48/40
B29C48/76
B29B9/00
(21)【出願番号】P 2021085383
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2024-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】525221850
【氏名又は名称】株式会社ジャパンフォレストパワー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】保坂 稔明
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 聖太
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-278192(JP,A)
【文献】特開昭62-199423(JP,A)
【文献】特開2018-083876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00- 2/30
B29C 48/00-48/96
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の供給口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配置される2軸のスクリューと、を備える2軸押出機であって、
前記シリンダには、前記供給口よりも下流側に、シリンダ内部とシリンダ外部とを連通するベント孔が形成されており、
前記ベント孔に取り付けられるスタッファー装置であって、前記ベント孔内に配置されて前記ベント孔の連通方向に沿って往復移動可能に構成されたピストン部材を有するスタッファー装置を備え
、
前記ベント孔は、前記シリンダ内部から前記シリンダ外部に向かって鉛直上方に開口し、前記2軸のスクリューの軸中心の中間と、一方のスクリューの軸中心との間の鉛直上方に設けられる、
2軸押出機。
【請求項2】
前記ピストン部材に取り付けられたバネを更に備える、請求項1に記載の2軸押出機。
【請求項3】
前記ピストン部材を前記ベント孔内で往復運動させるための動力源を更に備える、請求項1または2に記載の2軸押出機。
【請求項4】
前記ピストン部材は、前記ベント孔の外形に対応した円柱状である、請求項1から
3の何れか1項に記載の2軸押出機。
【請求項5】
前記ピストン部材は、少なくとも前記シリンダ内部側の端部が、前記スクリューよりも柔らかい素材で形成されている、請求項1から
4の何れか1項に記載の2軸押出機。
【請求項6】
前記ピストン部材の側面には、前記ピストン部材の移動方向に沿った溝、または前記ピストン部材の移動方向に対して垂直な溝が形成されている、請求項1から
5の何れか1項に記載の2軸押出機。
【請求項7】
前記ピストン部材の側面には、らせん状の溝が形成されている、請求項1から
5の何れか1項に記載の2軸押出機。
【請求項8】
前記シリンダ内に供給された原料を60℃以上400℃以下に加熱するための加熱部を更に備える、請求項1から
7の何れか1項に記載の2軸押出機。
【請求項9】
原料の供給口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配置される2軸のスクリューと、を備える2軸押出機であって、
前記シリンダには、前記供給口よりも下流側に、シリンダ内部とシリンダ外部とを連通するベント孔が形成されており、
前記ベント孔に取り付けられるスタッファー装置であって、前記ベント孔内に配置されて前記ベント孔の連通方向に沿って往復移動可能に構成されたピストン部材を有するスタッファー装置を備え、
前記ピストン部材の側面には、前記ピストン部材の移動方向に対して垂直な溝が形成されている、
2軸押出機。
【請求項10】
原料の供給口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配置される2軸のスクリューと、を備える2軸押出機であって、
前記シリンダには、前記供給口よりも下流側に、シリンダ内部とシリンダ外部とを連通するベント孔が形成されており、
前記ベント孔に取り付けられるスタッファー装置であって、前記ベント孔内に配置されて前記ベント孔の連通方向に沿って往復移動可能に構成されたピストン部材を有するスタッファー装置を備え、
前記ピストン部材の側面には、らせん状の溝が形成されている、
2軸押出機。
【請求項11】
植物由来の原料を圧縮成形または加熱圧縮成形するためのペレット製造装置であって、
請求項1から10の何れか1項に記載の2軸押出機と、
ペレットを成形するための成形モジュールと、
を備えるペレット製造装置。
【請求項12】
原料の供給口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配置される2軸のスクリューと、を備え、前記シリンダには前記供給口よりも下流側にシリンダ内部とシリンダ外部とを連通するベント孔が形成されている2軸押出機を使用する方法であって、
前記供給口から原料を供給するステップと、
前記2軸のスクリューを回転させることにより、前記供給口から供給された原料を前記シリンダ内で移動させるステップと、
前記ベント孔に取り付けられたスタッファー装置において、前記ベント孔内に配置されたピストン部材を、前記ベント孔の連通方向に沿って往復移動させるステップと、
を含
み、
前記ベント孔は、前記シリンダ内部から前記シリンダ外部に向かって鉛直上方に開口し、前記2軸のスクリューの軸中心の中間と、一方のスクリューの軸中心との間の鉛直上方に設けられる、2軸押出機の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2軸押出機、ペレット製造装置、および2軸押出機の使用方法に関し、詳しくは、原料の供給口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配置される2軸のスクリューと、を備え、一例として植物由来の原料を圧縮成形または加熱圧縮成形するための2軸押出機、ペレット製造装置、および2軸押出機の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木質燃料ペレットは、カーボンニュートラルな資源からできているバイオマス原料として注目されている。木質燃料ペレットの製造手法として、トレファクション(torrefaction)(熱処理)技術が知られている。トレファクション技術は、「無酸素雰囲気下の200~300℃で行う熱処理として定義されるものであり、日本では、「低温炭化」または「半炭化」と訳されることもある。トレファクション技術は、従来の木質ペレットにおける弱耐水性や低発熱量などの欠点を改善させ、高性能化された木質燃料ペレットを提供できる製造方法である。
【0003】
また、従来、木質燃料ペレットの製造装置としては、2軸のスクリューを有する押出機が知られている(特許文献1参照)。この押出機は、投入口からシリンダ内に原料が投入され、シリンダ内で原料を加熱しながらスクリューによって混錬して、ペレットを製造するように構成されている。また、シリンダには、原料から生じたガス成分を大気に排出するためのベントが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリュー式押出機にて、上記したトレファクション技術を適用する場合、原料の含水量(含水率)が多く、原料からの揮発成分がシリンダ内に留まると処理効率が低下する。また、揮発成分の脱揮のためにベント孔を設けると、木質バイオマス原料がベント内に侵入するベントアップ現象が生じやすい。原料が侵入してベントが閉塞した場合、ペレット成形の収率が悪化してしまう。また、ベントのメンテナンス作業は製造工程全体の遅延を招くとともに、原料から生じるガスには身体へ悪影響を及ぼす成分が含まれるため、ベントの閉塞によるメンテナンス作業は回避または低減したいという要望がある。こうしたベントアップ現象を抑制するために、ベントをシリンダの側面に設けることや、スクリューの形状を調整すること、及び、ベント内に原料の侵入を抑制するための専用金具を設けることなどが考えられる。しかしながら、ベントアップは、押出機の可動条件や、原料の状態によって発生が異なり、上記した対応方法では、ベント内への原料の侵入を十分に抑制することができない場合があった。
【0006】
以上の実情に鑑みて、本願は、含水量が多い原料を2軸押出機に供給する場合に、原料からの揮発成分による処理効率の低下を抑制し、且つ、原料の侵入によるベントの閉塞を低減できる2軸押出機、ペレット製造装置、および2軸押出機の使用方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、原料の供給口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配置される2軸のスクリューと、を備える2軸押出機が提案される。前記シリンダには、前記供給口よりも下流側に、シリンダ内部とシリンダ外部とを連通するベント孔が形成されており、2軸押出機は、前記ベント孔に取り付けられるスタッファー装置であって、前記ベント孔内に配置されて前記ベント孔の連通方向に沿って往復移動可能に構成されたピストン部材を有するスタッファー装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のペレット製造装置の全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1中のA-A方向から見たペレット製造装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、変形例のペレット製造装置における
図2に対応する図である。
【
図4】
図4は、変形例のピストン部材を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、変形例のピストン部材を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、変形例のピストン部材を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態のペレット製造装置の全体構成を示す図である。本実施形態におけるペレット製造装置は、2軸押出機を備え、一例として半炭化処理を伴って木質原料からペレットを製造するために用いられる。ここで、原料としては、植物由来のもの、例えば種々の木材を利用することができ、バインダなどの添加剤が含まれてもよい。なお、本実施形態のペレット製造装置(2軸押出機)は、含水量(率)の高い材料(例えば、10重量%以上の水分を有する材料)を原料とする場合に好適であり、植物由来によらない原料に使用することもできる。
【0011】
図1に示すように、ペレット製造装置10は、原料の供給口22を有するシリンダ20と、シリンダ20の内部に収容された2軸のスクリュー30(一方のスクリューは不図示)と、シリンダ20に接続された圧縮成形モジュール(成形モジュール)40と、を備える。ここで、シリンダ20と2軸のスクリュー30とは、「2軸押出機」を構成する。
【0012】
シリンダ20は、中空に形成されており、原料を送るための案内路を内部に画定する。シリンダ20の内部には、スクリュー30が配置される。なお、本実施形態では、一例として、案内路およびスクリュー30の長手方向が水平に配置されている。シリンダ20の一方の端部(
図1では、右端)付近には、原料を供給するための供給口22が設けられている。本実施形態では、一例として、供給口22は、シリンダ20の上方に開口するように設けられている。また、シリンダ20には、供給口22よりも下流側(
図1中、左側)に、原料から分離した揮発成分をシリンダ20から排出するためのベント孔24が設けられている。さらに、シリンダ20には、ベント孔24よりも下流側に、調湿用の液添口26が設けられている。なお、液添口26は、シリンダ20に設けられていなくてもよい。また、シリンダ20は、液添口26よりも下流に当たる、供給口22とは反対側の端部(
図1では、左端)に、ペレットを成形して製造するための圧縮成形モジュール40が接続されている。圧縮成形モジュール40は、スクリュー30を回転させるためのモータや、ペレットを所望の寸法に切断するためのミルを備える(不図示)。圧縮成形モジュール40としては、リングダイ方式またはフラットダイ方式の造粒装置を採用してもよい。
【0013】
ここで、
図1に示すように、シリンダ20は、複数のピースが長手方向に連結されることによって構成されるとよい。一例として、シリンダ20は、供給口22が形成された第1のピース20Aと、スクリュー30が収容される複数の第2のピース20Bと、ベント孔24が形成された第3のピース20Cと、を接続することによって形成される。さらに、シリンダ20は、調湿用の液添口26が形成された第4のピース20Dを備えてもよい。こうした構成により、特に第2のピース20Bの数を変更することで、所望の長さのシリンダ20を容易に構成することができる。
【0014】
シリンダ20内は、上流側から下流側に向けて、機能的に複数の領域に分けて捉えることができる。つまり、供給口22の下流側に、原料を入熱させて半炭化させる半炭化領域82、ベント孔24が形成されていて原料の調圧および脱揮が行われる調圧・脱揮領域84、液添口26が形成されていて原料の調湿および冷却が行われる調湿・冷却領域86と連続し、圧縮成形モジュール40へと接続される。一例として、半炭化領域82では、原料は60℃~400℃に加熱される。また、一例として、調圧・脱揮領域84では、シリンダ20内の圧力は0.1~0.2Mpaである。
【0015】
スクリュー30は、螺旋方向が同一である2軸のスクリューが互いに平行に配置されて構成される。スクリュー30は、回転することにより、上流から下流に向かって(
図1中、右側から左側に向かって)原料を押し出して混錬するように構成されている。
【0016】
液添口26には、液添ノズル28が設けられている。液添ノズル28は、例えばポンプ28aなどを通じて、シリンダ20内の原料に調湿用液を供給できるように構成される。ここで、液添口26から供給する液は、限定するものではないが、ベント孔24より排出された揮発成分から作成される木酢液を利用することができる。
【0017】
ベント孔24には、シリンダ内の圧力を調整すると共にシリンダ内の揮発成分を脱揮するための脱揮調圧モジュール50としてスタッファー装置が設けられている。なお、「ベント孔」は、シリンダ20に形成されたベント用の孔を指すが、当該孔に、金具または台座などが取り付けられている場合には、その金具または台座などに形成されたベント用の孔も「ベント孔」に含まれ得る。本実施形態では、シリンダ20にベント金具25が取り付けられており、ベント金具25に形成されたベント用の孔が「ベント孔」に当たる。ベント孔から外部に排出された揮発成分は、上記したように液添口26からシリンダ20内へと再度供給されてもよい。
【0018】
図2は、
図1中のA-A方向から見たペレット製造装置の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態では、ベント孔24は、シリンダ20の上方に向けて開口するように形成されている。しかしながら、こうした例に限定されず、ベント孔24は、シリンダ20の側方または下方に向けて開口するように形成されてもよい。本実施形態では、ベント孔24は、具体的には、2軸のスクリュー30の上方であって、2軸のスクリュー30の中央からはズレた位置に形成されている。ベント孔24は、好ましくは、2軸のスクリュー30の軸中心Cs1、Cs2の中間Csmと、一方のスクリュー30の軸中心Cs1との間の鉛直上方に設けられる。こうした配置によれば、ベント孔24から原料や凝固物が脱落したときに2軸のスクリュー30の間に直接に落ちて噛み込みが生じるのを抑制することができる。また、ベント孔24がシリンダ20の中央に近い領域の上方に設けられることにより、揮発成分をベント孔24に好適に案内することができる。
【0019】
本実施形態では、脱揮調圧モジュール50(スタッファー装置)は、ベント孔24内に設けられてベント孔24の連通方向に沿って往復移動可能に構成されたピストン部材60を備えている。ここで、ベント孔24の連通方向は、ベント孔24によってシリンダ20内とシリンダ20外とが接続される方向を意味し、
図1および
図2においては上下方向を意味する。本実施形態では、ベント孔24の少なくとも一部分が、円形の横断面(
図1および
図2中、上下方向から見た断面)を有し、ピストン部材60は、ベント孔24の外径に対応した円柱状の部材とされている。ピストン部材60は、ベント孔24の内壁に対して、例えば1mmまたは数mmのギャップを有した形状とされることが好ましい。
【0020】
ピストン部材60は、少なくともシリンダ内部側の端部(
図1および
図2中、下端)が、スクリュー30よりも柔らかい素材で形成されることが好ましい。言い換えれば、スクリュー30は、ピストン部材60よりも硬い素材で形成されることが好ましい。一例として、スクリュー30は鉄や鋼などで形成され、ピストン部材60はアルミニウムなどの軟質金属で形成されてもよい。こうすれば、万一ピストン部材60とスクリュー30とが接触した場合にも、スクリュー30が損傷してしまうことを抑制できる。なお、「硬さ」については、一例として、ロックウェル硬さ試験、またはショア硬さ試験による測定結果を基準とすることができる。
【0021】
本実施形態では、ピストン部材60には、ベント孔24の連通方向に沿って伸縮するバネ62が取り付けられている。バネ62は、一端がピストン部材60に取り付けられ、他端がシリンダ20または脱揮調圧モジュール50の筐体などに固定されている。バネ62としては、一例として、コイルバネや板バネなどを使用することができる。なお、ピストン部材60には、バネが取り付けられなくてもよい。また、本実施形態では、ピストン部材60には、ペレット製造装置10の使用者またはメンテナンス作業員などが把持可能な把持部64が取り付けられている。こうした構成により、使用者等が把持部64を把持して、ピストン部材60をベント孔24内で移動させることができる。
【0022】
なお、ピストン部材60は、スクリュー30と接触しないように可動領域が定められているとよい。一例として、ピストン部材60は、例えば10mmなど、数mm~数十ミリの距離までスクリュー30に接近可能に構成されるとよい。また、ピストン部材60には、その可動領域を調整するための調整機構が取り付けられるとよい。一例として、調整機構は、バネ62の固定端の位置を上下方向に調整することにより、ピストン部材60の可動領域を調整することができる。さらに、一例として、本実施形態のピストン部材60には、シリンダ20または脱揮調圧モジュール50の筐体と接触することでピストン部材60の下端側への移動を制限するストッパー部材66が取り付けられている。
【0023】
このように、本実施形態のペレット製造装置10は、ベント孔24内で往復移動可能なピストン部材60を備えており、ピストン部材60をベント孔24内で移動させることにより、原料がベント孔24内に侵入したり堆積したりすることを抑制できる。なお、使用者などによるピストン部材60の操作は、ペレット製造装置10の動作中に行われてもよいし、所定のメンテナンスタイミングにて行われるものとしてもよい。本実施形態では、ピストン部材60にバネ62が取り付けられており、ピストン部材60の往復運動を容易に行うことができる。このように、本実施形態のペレット製造装置10によれば、ベント孔24の閉塞を抑制することができ、ペレット製造の効率向上を図ることができる。
【0024】
<変形例>
図3は、変形例のペレット製造装置における
図2に対応する図である。変形例のペレット製造装置において、上記した実施形態のペレット製造装置10と重複する内容については説明を省略する。変形例のペレット製造装置10Aは、ピストン部材60をベント孔24内で往復運動させるための動力源68を備えている。動力源68としては、空圧シリンダ、ソレノイド、モータなど、種々の機構を採用することができる。
図3に示す例では、動力源68としてDCモータが採用されている。具体的な一例として、
図3に示す例では、DCモータの回転軸Amに偏心して取り付けられるリンク部材68aが設けられている。なお、リンク部材68aにおける回転軸Amからの偏心距離が調整できるように構成されることにより、ピストン部材60の可動領域が調整できるようになっていてもよい。動力源68は、ペレット製造装置10の動作中にピストン部材60を往復運動させるように構成されてもよい。また、所定のメンテナンスタイミングにて、メンテナンス作業員等が操作することによりピストン部材60を往復運動させるものとしてもよい。変形例のペレット製造装置によれば、動力源68による動力を用いて、ベント孔24の閉塞を自動で抑制することができる。
【0025】
図4~
図6は、変形例のピストン部材を模式的に示す図である。ピストン部材60には、側面に溝60aが形成されていてもよい。
図4に示す例では、ピストン部材60の側面に、ピストン部材60の移動方向(
図4中、上下方向)に沿って溝60aが形成されている。また、
図5に示す例では、ピストン部材60の側面に、ピストン部材60の移動方向に対して垂直な溝60aが形成されている。さらに、
図6に示す例では、ピストン部材60の側面に、らせん状の溝60aが形成されている。なお、溝60aは、
図4および
図6に示す例においては、ピストン部材60の下端から上端まで連続するように形成されることが好ましい。また、一例として、溝60aの横断面は、U字状またはV字状などとすることができる。このように、ピストン部材60の側面に溝60aが形成されることにより、ベント孔が閉塞することをより抑制することができると考えられる。
【0026】
本発明は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、原料の供給口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配置される2軸のスクリューと、を備える2軸押出機であって、前記シリンダには、前記供給口よりも下流側に、シリンダ内部とシリンダ外部とを連通するベント孔が形成されており、前記ベント孔に取り付けられるスタッファー装置であって、前記ベント孔内に配置されて前記ベント孔の連通方向に沿って往復移動可能に構成されたピストン部材を有するスタッファー装置を備える、ペレット製造装置が提案される。
形態1によれば、含水量が多い原料を処理する場合にベント孔から揮発成分の脱揮を行うことができ、且つ、ピストン部材によって、ベント孔の閉塞を抑制できる。
【0027】
[形態2]形態2によれば、形態1において、前記ピストン部材に取り付けられたバネを更に備える。
形態2によれば、バネによってピストン部材を好適に往復運動させることができる。
【0028】
[形態3]形態3によれば、形態1または2において、前記ピストン部材を前記ベント孔内で往復運動させるための動力源を更に備える。
形態3によれば、動力源によってピストン部材を往復運動させることができる。
【0029】
[形態4]形態4によれば、形態1から3において、前記ベント孔は、前記シリンダ内部から前記シリンダ外部に向かって鉛直上方に開口する。
形態4によれば、原料から生じる気体や水分を好適に脱揮することができる。
【0030】
[形態5]形態5によれば、形態4において、前記ベント孔は、前記2軸のスクリューの軸中心の中間と、一方のスクリューの軸中心との間の鉛直上方に設けられる。
形態5によれば、原料から生じる気体や水分を好適に脱揮することができる。
【0031】
[形態6]形態6によれば、形態1から5において、前記ピストン部材は、前記ベント孔の外形に対応した円柱状である。
【0032】
[形態7]形態7によれば、前記ピストン部材は、少なくとも前記シリンダ内部側の端部が、前記スクリューよりも柔らかい素材で形成されている。
形態7によれば、ピストン部材によってスクリューが損傷することを抑制できる。
【0033】
[形態8]形態8によれば、形態1から7において、前記ピストン部材の側面には、前記ピストン部材の移動方向に沿った溝、または前記ピストン部材の移動方向に対して垂直な溝が形成されている。
形態8によれば、ベント孔が閉塞することをより抑制することができる。
【0034】
[形態9]形態9によれば、形態1から8において、前記ピストン部材の側面には、らせん状の溝が形成されている。
形態9によれば、ベント孔が閉塞することをより抑制することができる。
【0035】
[形態10]形態10によれば、形態1から9において、前記シリンダ内に供給された原料を60℃以上400℃以下に加熱するための加熱部を更に備える。
形態10によれば、原料を半炭化させることができる。
【0036】
[形態11]形態11によれば、植物由来の原料を圧縮成形または加熱圧縮成形するためのペレット製造装置が提案され、かかるペレット製造装置は、形態1から10の何れかの2軸押出機と、ペレットを成形するための成形モジュールと、を備える。
形態11によれば、上記した2軸押出機と同様の効果を奏することができる。
【0037】
[形態12]形態12によれば、原料の供給口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配置される2軸のスクリューと、を備え、前記シリンダには前記供給口よりも下流側にシリンダ内部とシリンダ外部とを連通するベント孔が形成されている2軸押出機の使用方法が提案され、前記供給口から原料を供給するステップと、前記2軸のスクリューを回転させることにより、前記供給口から供給された原料を前記シリンダ内で移動させるステップと、前記ベント孔に取り付けられたスタッファー装置において、前記ベント孔内に配置されたピストン部材を、前記ベント孔の連通方向に沿って往復移動させるステップと、を含む2軸押出機の使用方法が提案される。
形態11によれば、含水量が多い原料を処理する場合にベント孔から揮発成分の脱揮を行うことができ、且つ、ピストン部材によって、ベント孔の閉塞を抑制できる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10、10A…ペレット製造装置
20…シリンダ
22…供給口
24…ベント孔
26…液添口
28…液添ノズル
30…スクリュー
40…圧縮成形モジュール(成形モジュール)
50…脱揮調圧モジュール(スタッファー装置)
60…ピストン部材
60a…溝
62…バネ
64…把持部
68…動力源
82…半炭化領域
84…調圧・脱揮領域
86…調湿・冷却領域
10A…ペレット製造装置