(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-02
(45)【発行日】2025-09-10
(54)【発明の名称】空気清浄システム
(51)【国際特許分類】
B64D 13/06 20060101AFI20250903BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20250903BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20250903BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20250903BHJP
F24F 8/158 20210101ALI20250903BHJP
F24F 8/22 20210101ALI20250903BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20250903BHJP
【FI】
B64D13/06
A61L9/014
A61L9/16 F
A61L9/20
F24F8/158
F24F8/22
F24F8/80
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021099887
(22)【出願日】2021-06-16
【審査請求日】2024-05-29
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】ステファン エム.トレント
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アール.スペース
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-94053(JP,A)
【文献】特表2003-525801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0081369(US,A1)
【文献】特開2015-114095(JP,A)
【文献】国際公開第2008/065709(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0248827(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 13/00
A61L 9/00
F24F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機内の空気を清浄化するための空気清浄システムであって、
吸着濾材及び前記吸着濾材を再生する再生加熱素子を少なくとも含むフィルタ部材
と、前記フィルタ部材を通して空気流を引き込むよう構成されたファン
と、を含む空気清浄装置と、
前記空気清浄装置を支持するよう構成された航空機構造体と、を備え
、
前記空気清浄装置の少なくとも一部は乗客用座席の下のラックに設置されており、前記空気清浄装置は機内エンターテインメントパネルを介して操作可能である、空気清浄システム。
【請求項2】
前記航空機構造体は、側壁部材と、天井パネルと、
前記乗客用座席と、床板パネルと、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の空気清浄システム。
【請求項3】
前記空気清浄装置は、前記航空機のキャビンにおいて移動可能な可搬型である、請求項1又は2に記載の空気清浄システム。
【請求項4】
前記空気清浄装置は、フライトデッキと、乗務員用パネルと
、のうちの少なくとも1つから遠隔操作される、請求項1~3のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項5】
前記空気清浄装置は、内部電源を含む、請求項1~4のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項6】
前記空気清浄装置は、前記航空機から電力供給を受ける、請求項1~5のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項7】
前記空気清浄装置は、吐き出される呼気から離れた位置にある吸入口と、濾過された空気を乗客の顔に向けて送出する位置にある吹出口と、を含む、請求項1~6のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項8】
前記フィルタ部材は、粒子フィルタと、吸着材と、紫外光源と、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項9】
前記空気清浄装置の吹出口と流体連通して接続されており、殺菌済みの空気を乗客に直接供給するチューブ及びマスクをさらに備える、請求項1~8のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項10】
前記空気清浄装置は、乗客が呼吸によって吸い込む空気を殺菌するよう構成されている、請求項1~9のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項11】
前記空気清浄装置は、乗客が呼吸によって吐き出す空気を殺菌するよう構成されている、請求項1~10のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項12】
前記空気清浄装置は、ガス状化合物を除去するよう構成されている、請求項1~11のいずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項13】
航空機であって、
前記航空機内の空気を清浄化するための空気清浄システムを備え、前記空気清浄システムは、
吸着濾材及び前記吸着濾材を再生する再生加熱素子を少なくとも含むフィルタ部材
と、前記フィルタ部材を通して空気流を引き込むよう構成されたファン
と、を含む空気清浄装置と、
前記空気清浄装置を支持するよう構成された航空機構造体と、を備えるものであ
り、
前記空気清浄装置の少なくとも一部は乗客用座席の下のラックに設置されており、前記空気清浄装置は機内エンターテインメントパネルを介して操作可能である、航空機。
【請求項14】
航空機における乗客用座席の近傍の空気を清浄化する方法であって、
航空機構造体を用いて空気清浄装置を支持することと、
ファンを用いて、
前記空気清浄装置に空気流を引き込むことと、
前記空気清浄装置のフィルタ部材に前記空気流を通過させることと、
前記空気流を乗客の近傍に排出して、呼吸によって取り入れられるようにすることと、を含
み、
前記空気清浄装置の少なくとも一部は乗客用座席の下のラックに設置されており、前記空気清浄装置は機内エンターテインメントパネルを介して操作可能であり、
前記フィルタ部材は、吸着濾材、及び前記吸着濾材を再生する再生加熱素子を少なくとも含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、概して、空気清浄システムに関し、より具体的には、旅客機などの航空機に搭載された空気清浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気媒介性疾患の主要な感染経路には、例えば、密な状態で空気を吸入することによる感染の伝播が含まれる。感染の防止と安心の提供のため、航空機キャビンにおいて乗客の位置を分散させて、他の乗客との距離を確保できるようにする対策がある。
【0003】
航空機の環境制御システム(ECS)のうち、少なくともいくつかの既知のシステムには、機外から取り入れた空気をコンプレッサで調節してキャビン内部の空気と混合し、混合した空気を客室キャビンに送り込む再循環システムが設けられている。このようなシステムでは、フィルタを用いて、細菌やウィルスなどの汚染物質を捕集し、その上で、客室キャビンに空気を再循環させる。しかしながら、既知の再循環システムは、航空機内部の多くのスペースを必要とし、また、稼働時には、多くのエネルギーを消費する。加えて、既存の再循環システムでは、乗客が吸い込む空気が清浄であると安心させるには十分でない可能性がある。
【0004】
本セクションは、以下に説明及び/又は請求する本開示の様々な態様について、関連する技術の様々な側面を読み手に導入することを目的とする。本セクションの記載は、本開示の様々な態様を読み手が理解するために有用であると思われる背景知識を提供するものである。したがって、この記載は、そのような観点で解釈されるべきであって、先行技術を自認するものであると解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、航空機内の空気を清浄化するための空気清浄システムが提供されている。前記空気清浄システムは、フィルタ部材、及び、前記フィルタ部材を通して空気流を引き込むよう構成されたファンを含む空気清浄装置を備える。前記空気清浄システムは、さらに、前記空気清浄装置を支持するよう構成された航空機構造体を備える。
【0006】
別の態様において、航空機が提供されている。前記航空機は、当該航空機内の空気を清浄化するための空気清浄システムを備える。前記空気清浄システムは、フィルタ部材、及び、前記フィルタ部材を通して空気流を引き込むよう構成されたファンを含む空気清浄装置を含む。前記空気清浄システムは、さらに、前記空気清浄装置を支持するよう構成された航空機構造体を備える。
【0007】
さらに別の態様において、航空機における乗客用座席の近傍の空気を清浄化する方法が提供されている。前記方法は、航空機構造体を用いて空気清浄装置を支持することと、ファンを用いて、空気清浄装置に空気流を引き込むことと、前記空気清浄装置のフィルタ部材に前記空気流を通過させることと、前記空気流を乗客の近傍に排出して、呼吸によって取り入れられるようにすることと、を含む。
【0008】
上述した態様に関連する特徴は、様々な変形が可能である。また、上述の態様に付加的な特徴をさらに組み込むことも可能である。そのような変形例及び付加的な特徴は、個別に含まれる場合も、任意の組み合わせで含まれる場合もありうる。例えば、以下の例示的な実施例に関連して記載する様々な特徴は、単独又は組み合わせで、上述した態様のいずれにも組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2A-C】
図1に示す空気清浄装置に使用可能なフィルタ素子の組み合わせ例を示す概略図である。
【
図3】
図1に示す空気清浄装置を用いた空気清浄システムを、航空機の側壁部材に装着した例を示す概略図である。
【
図4】航空機の側壁部材に装着した空気清浄装置の第2の実施形態を示す概略図である。
【
図5】
図1に示す空気清浄装置を用いた他の空気清浄システムを、航空機キャビンの天井に装着した例を示す概略図である。
【
図6】
図1に示す空気清浄装置を用いた他の空気清浄システムを、航空機の座席に装着した例を示す概略図である。
【
図7】
図1に示す空気清浄装置の制御及び電力系統を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
複数の図面を通じて同じ参照符号が用いられている場合、これらは、同じ部材を表す。なお、様々な実施例における特定の特徴が、ある図面には示されているのに、他の図面には示されていない場合があるが、これはあくまでも便宜上の理由によるものである。図示した特徴は、いずれも他の図面に示した特徴と組み合わせて参照し、及び/又は、請求の範囲に盛り込むことが可能である。
【0011】
本開示の空気清浄システムは、各乗客の近くに配置される空気清浄装置を含む。前記装置は、可搬型であってもよいし、航空機キャビンの特定の位置に取り付けられてもよい。例えば、病人の隔離エリアを設けるために、航空機の最後尾列に取り付けられてもよい。前記装置は、粒子フィルタ(例えばHEPA)、吸着材、及び、殺菌用紫外光源を任意の組み合わせで用いて、空気を濾過することができる。前記装置は、側壁部材(sidewall assembly)、天井パネル、座席下の収納部、空き座席、又は床板パネルのうちのいずれに配置してもよい。航空機の機内で病人が発生した場合には、その呼気を空気清浄システムによって濾過及び消毒した上で、キャビンに循環させる。空気清浄装置は、航空機システムから電力の供給を受ける構成でもよいし、或いは、内部電源を有する構成でもよい。前記装置は、フライトデッキ、乗務員用パネル、乗客用機内エンターテインメントパネル、又は、装置自体に設けられた制御パネルから操作して、ファン及び適切なフィルタ素子を作動させることができる。
【0012】
図1は、空気清浄装置101を備える空気清浄システム100の例を示す概略図である。この実施態様の例では、空気清浄システム100は、吸入元(source)104から空気流を取り入れるための吸入口(inlet)102と、所定の排出先(location)108(例えば、仕切られた空間、客室キャビン、又は区画)に空気流を排出するための吹出口(outlet)106を有する。空気清浄システム100は、吸入口102と吹出口106の間に配置されたフィルタ部材(filter assembly)110とファン112を有する。この詳細については、後述する。稼働時には、ファン112によって吸入元104から空気流(airflow)114がフィルタ部材110を通して引き込まれ、次いで、空気清浄システム100のプレナム部(plenum)116を通過した空気流114が排出先108に排出される。より具体的には、空気流114は、フィルタ部材110を通過した上で排出先108に向けて排出されるので、吸入元104から空気清浄システム100に取り込まれた空気から汚染物質を除去することができる。汚染物質は、例えば、塵埃、花粉、細菌、及びウィルスなどの固体の粒子状物質、或いは、ガス状物質である。フィルタ部材110は、空気清浄システム100が本開示の機能を実現するためのフィルタ素子をいくつ含んでいてもよい。
【0013】
特定の実施態様において、空気清浄システム100は、例えば航空機(図示せず)に搭載されており、また、航空機の環境制御システム(ECS)から独立したシステムである。より具体的には、空気清浄装置101は、ECSと連動して動作し、客室キャビンや乗組員エリアの空気浄化をさらに促進する。そのような実施態様においては、吸入元104と排出先108は同じであって、例えば、いずれも客室キャビンであり、いずれも操縦室であり、いずれも乗務員用コンパートメントである。空気清浄システム100は、航空機に使用可能であるだけでなく、空気清浄システム100は、空気の流れがある任意の構造体、例えば、ビル、プラットフォーム、又はビークルなどに使用可能である。さらに、空気清浄装置101は、空気から汚染物質を濾過することが望ましい任意のシステムで使用可能である。
【0014】
図2A~
図2Cは、空気清浄装置101のフィルタ部材110に使用可能なフィルタ素子の組み合わせ例を示す概略図である。フィルタ部材110に含まれるフィルタ素子の例には、限定するものではないが、高性能空気粒子(即ち、(HEPA:high-efficiency particulate air)濾材)、吸着濾材、並びに、例えば再生加熱素子、紫外光照射素子、及び/又はオゾン変換素子などの機能性フィルタリング部材が含まれる。粒子濾材は、空気流114(
図1を参照)から粒子状汚染物質を除去する機能を有する。より具体的には、「高い粒子捕集機能を有する」HEPAフィルタは、99%超の効率で細菌及びウィルスを捕捉する(Mil Std 282規格)フィルタである。粒径0.3μmの粒子に関する最低捕捉効率が99.97%のHEPAフィルタであれば、当該フィルタを通過する空気流から基本的にすべての病原菌及び粒状物質が除去される。
【0015】
吸着濾材は、限定するものではないが、例えば活性炭であり、空気流114からガス状汚染物質を除去する機能を有する。これらのフィルタは、航空機において選択的に使用可能であり、HEPAフィルタでは捕捉されない有機ガスを吸着することができる。再生加熱素子は、吸着濾材を再生する機能を有する。紫外光照射素子は、空気流114に含まれるウィルス及び細菌を無力化する機能を有する。オゾン変換素子は、例えば、オゾンを豊富に含む外気から酸素を生成する触媒コンバータとして機能する。
【0016】
図2A~
図2Cに示す様に、フィルタ部材110に含まれる複数のフィルタ素子は、各フィルタ素子の種類に基づいて、所定の組み合わせ又は配置順で接続されている。さらに、フィルタ部材110が粒子濾材と吸着濾材を含む場合、粒子濾材は、吸着濾材よりも上流に配置される。このような配置により、粒子濾材によって空気流114の粒子状汚染物質が除去されるので、吸着濾材への付着物を減少させることができる。同様に、フィルタ部材110が吸着濾材と再生加熱素子を含む場合、再生加熱素子は、吸着濾材よりも上流に配置される。このような配置により、吸着濾材を通過する前の空気流114が加熱されるので、吸着濾材に含まれる吸着物質の再生を促進することができる。
【0017】
図2Aを参照すると、あくまでも例示であるが、第1の組み合わせのフィルタ部材120は、所定の配置順で接続された第1HEPAモジュール122及び第2HEPAモジュール124を含む。いくつかの実施態様においては、第1HEPAモジュール122と第2HEPAモジュール124は、互いに異なる濾過機能を有しており、よって、フィルタ部材全体としての濾過効率が向上する。
【0018】
図2Bを参照すると、第2の組み合わせのフィルタ部材126は、所定の配置順で接続されたHEPAモジュール128及び吸着モジュール130を含む。HEPAモジュール128と吸着モジュール130の間には、必須ではないが、再生ユニット132(点線で示す)が配置されている。
【0019】
図2Cを参照すると、第3の組み合わせのフィルタ部材134は、所定の配置順で接続されたHEPAモジュール136及び紫外光ユニット138を含む。
【0020】
図2A~
図2Cに示すフィルタ部材は、あくまでも例示を目的とするものであって、フィルタ部材110は、異なるフィルタ素子を含むもの、同一種類のフィルタ素子を複数含むもの、又は上述したフィルタ素子のうちのいずれか1つのみを含むものなど、任意の構成が可能である。例えば、
図2A~
図2Cでは、いずれの組み合わせのフィルタ部材にも複数のフィルタ素子が含まれているが、フィルタ部材110は、記載のフィルタ素子のうちの1つのみを含むものでもよい。
【0021】
図3は、空気清浄装置101を用いた空気清浄システム100を、航空機142の側壁部材140に装着した例を示す概略図である。側壁部材140は、側壁144及び窓146を含む。側壁144には、空気流114の吸入口102及び吹出口106に対応する吸入口及び吹出口が設けられており、空気清浄装置101の動作が可能である。空気清浄装置101は、側壁144に取り付けられており、側壁144において、吸入口102が乗客の足元に近い低い位置に配置され、吹出口106が窓146の近くに配置されている。このような構成によれば、空気流114は、吐き出されたばかりの呼気が含まれない吸入元104から取り込まれ、吹出口106から送出される空気流114が乗客の顔に向かって流れるような位置を排出先108とする。したがって、汚染物質が濾過により除去されたばかりの空気が乗客に供給される。
【0022】
図4は、空気清浄装置101aを用いた第2の空気清浄システム100aを、航空機142の側壁部材140に装着した例を示す概略図である。この例示的な実施形態では、空気清浄装置101aは、空気清浄装置101と同じ部材を含むが、その構成が異なる。空気清浄装置101aが有するプレナム部116aでは、L字型のプレナム部116とは異なり、空気流114が90度の角度で曲がる経路を含まない。さらに、空気清浄装置101aは、装置101とは異なるフィルタ素子を含むことができ、これに応じて構成の変更が必要な場合がありうる。側壁144には、空気流114の吸入口102a及び吹出口106aに対応する吸入口及び吹出口が設けられており、空気清浄装置101aの動作が可能である。空気清浄装置101aは、側壁144に取り付けられており、側壁144において、吸入口102aが乗客の足元に近い低い位置に配置され、吹出口106aが窓146の近くに配置されている。このような構成によれば、空気流114は、吐き出されたばかりの呼気が含まれない吸入元104から取り込まれ、吹出口106aから送出される空気流114が乗客の顔に向かって流れるような位置を排出先108とする。したがって、汚染物質が濾過により除去されたばかりの空気が乗客に供給される。
【0023】
図5は、空気清浄装置101を用いた空気清浄システム100bを、航空機142のキャビンの天井部材148に装着した例を示す概略図である。図示の実施例では、キャビンの天井部材148は、天井パネル150、互いに対向する一対の収納棚152、及び、ECSの空気分配ダクト154を含む。天井パネル150には、空気流114の吸入口102及び吹出口106に対応する吸入口及び吹出口が設けられており、空気清浄装置101の動作が可能である。空気清浄装置101は、通路部分156に近い位置に吸入口102が配置され、収納棚152に近い位置に吹出口106が配置されるようにして、天井パネル150に取り付けられている。このような構成によれば、空気流114は、吐き出されたばかりの呼気が含まれない吸入元104から取り込まれ、吹出口106から送出される空気流114が乗客の顔に向けて流れるような位置を排出先108とする。したがって、汚染物質が濾過により除去されたばかりの空気が乗客に供給される。
【0024】
図6は、空気清浄装置101を用いた空気清浄システム100cを、航空機142の座席156に装着した例を示す概略図である。一実施形態では、航空機142は、複数の空気清浄装置101を含み、これらは、
図3~
図6に示すシステム100、100a、100b、及び100cの任意の組み合わせのように、任意の位置に設置することができる。
図6に示す実施形態では、空気清浄装置101は、座席156下のラック158に設置される。上述の構成の代替として、或いは、組み合わせにおいて、空気清浄装置101(任意の構成として点線で示す)は、航空機142の床板パネル160の下に設置される。上述の構成の代替として、或いは、組み合わせにおいて、空気清浄装置101は、任意の座席の隣又は後方に位置する空き座席156に設置される。概して、空気清浄装置101は、システム100、100a、100b、及び100cが本明細書に記載したように動作可能であれば、航空機142の任意の位置に設置することができる。さらに、空気清浄装置101は、可搬型であって、航空機124における任意の位置に空気清浄装置101を設置することが可能である。
【0025】
図6に示す様に、空気清浄システム100cは、吹出口106と流体連通するように接続された長状のチューブ162、及び、当該チューブ162と流体連通するように接続されたマスク164を含む。稼働時には、乗客は、マスク164を収納位置(図示せず)から取り出して顔に装着して、マスク164で鼻と口を覆う。このような構成によれば、空気流114は、吐き出されたばかりの呼気が含まれない座席156下の吸入元104から取り込まれる。また、排出先108がマスク164であるので、吹出口106から排出された空気流114がチューブ162を通って乗客に直接供給される。したがって、乗客は、汚染物質が濾過により除去されたばかりの空気の供給を受けることになり、航空機キャビンにおいて、濾過されていない空気に晒されることはない。
【0026】
図7は、空気清浄装置101の制御及び電力系統を示す概略図である。一実施態様において、空気清浄装置101は、バッテリなどの内部電源166を含み、必要に応じてファン112及びフィルタ部材110に電力が供給される。例えば、フィルタ部材110が再生ユニット又は紫外光ユニットを含む場合は、内部電源166は、当該ユニットが動作するための電力を供給する。上述の構成の代替として、或いは、組み合わせにおいて、空気清浄装置101は、外部電源168に電気的に接続される構成でもよい。そのような実施形態では、空気清浄装置101は、航空機142に設けられた電源コンセント(図示せず)に接続されてもよい。概して、空気清浄装置101は、本明細書に記載の動作を行うための電力を、任意の態様で供給される。
【0027】
一実施態様において、空気清浄装置101の動作は、操縦士又は副操縦士によってフライトデッキ170から適切に操作される。上述の構成の代替として、或いは、組み合わせにおいて、空気清浄装置101の動作は、航空機キャビン内部の乗務員用パネル172から適切に操作される。上述の構成の代替として、或いは、組み合わせにおいて、空気清浄装置101の動作は、乗客により、例えば機内エンターテインメントパネル174から操作可能である。概して、空気清浄装置101の動作は、オペレータがファン112を作動させたり、フィルタ部材のうちの適切なフィルタ素子を作動させたりするように空気清浄装置101を制御可能な任意の場所から操作される。航空機124は、複数の空気清浄装置101を備えるので、空気清浄装置101がフライトデッキ170又は乗務員用パネルから制御される実施形態では、各空気清浄装置は、操縦士又は乗務員によって個別に操作可能である。
【0028】
本開示の空気清浄システムは、各乗客の近くに配置される空気清浄装置を含む。前記装置は、可搬型であってもよいし、航空機キャビンの特定の位置に取り付けられてもよく、例えば、航空機の最後尾列に取り付けて、病人の隔離エリアを設けることができる。前記装置は、粒子フィルタ(例えばHEPA)、吸着材、及び、殺菌用紫外光源の任意の組み合わせを用いて、空気を濾過することができる。前記装置は、側壁部材、天井パネル、座席下の収納部、空き座席、又は床板パネルのうちのいずれに配置してもよい。航空機の機内で病人が発生した場合には、その呼気を空気清浄システムによって濾過及び消毒した上で、キャビンに循環させる。空気清浄装置は、航空機システムから電力の供給を受ける構成でもよいし、或いは、内部電源を有する構成でもよい。前記装置は、フライトデッキ、乗務員用パネル、乗客用機内エンターテインメントパネル、又は、装置自体に設けられた制御パネルから操作して、ファン及び適切なフィルタ素子を作動させることができる。空気清浄装置は、ある乗客を他の乗客から隔離する場合に使用して、感染症の拡大防止に効果を発揮することができる。例えば、航空機の後方に離れた座席、航空機内の乗組員又は乗務員の休憩スペースなどに隔離する場合に、有用である。
【0029】
本開示のシステム及び方法は、本明細書に記載した特定の実施形態に限定されるものではなく、当該システムの部材、及び/又は、当該方法のステップは、本明細書に記載した他の部材及び/又はステップとは独立して別個に使用することができる。
【0030】
なお、様々な実施例における特定の特徴が、ある図面には示されているのに、他の図面には示されていない場合があるが、これはあくまでも便宜上の理由によるものである。本開示の原理によれば、図示した特徴は、いずれも他の図面に示した特徴と組み合わせて参照し、及び/又は、請求の範囲に盛り込むことが可能である。
【0031】
本明細書において、単数形で記載されている要素又はステップは、特段の記載がない限り、複数の要素又はステップを必ずしも排除するものではない。加えて、本発明の「一実施形態」又は「例示的な実施形態」に言及することは、その実施形態に記載した特徴を取り入れた別の実施形態の存在を排除することを意図するものではない。
【0032】
本明細書の記載は、例を使って、ベストモードを含む様々な実施形態を開示し、また、任意の装置又はシステムの作製及び使用、並びに、組み入れられた方法の実行を含む様々な実施形態を当業者にとって実施可能にするものである。本開示における特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定されるものであり、当業者が想定しうる他の例を含みうる。そのような他の例は、それらが、特許請求の範囲の文言と相違のない構成要素を有する場合、又は、特許請求の範囲の文言に対して非本質的な相違を有するだけの均等の構成要素を含む場合、特許請求の範囲に包含されると考えられるべきである。