(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-02
(45)【発行日】2025-09-10
(54)【発明の名称】モータ主軸
(51)【国際特許分類】
H02K 5/173 20060101AFI20250903BHJP
F16C 35/073 20060101ALI20250903BHJP
F16C 35/12 20060101ALI20250903BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20250903BHJP
【FI】
H02K5/173 A
F16C35/073
F16C35/12
F16C19/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023001568
(22)【出願日】2023-01-10
【審査請求日】2024-03-22
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520255355
【氏名又は名称】マシーネンファブリーク・ベルトホルト・ハームレ・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・マッテス
(72)【発明者】
【氏名】アーイェト・アデミ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-クサーヴァー・ベルンハルト
【審査官】跡部 裕紀
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011116703(DE,A1)
【文献】特開2008-099491(JP,A)
【文献】特開平10-277819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
F16C 35/073
F16C 35/12
F16C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工工具を駆動するモータ主軸(1)であって、
ステータ軸線(3)に沿って延在するとともに、第1の磁石系(9)と、第1の連結装置保持部(11)と、第2の連結装置保持部(12)とを有する、スリーブ状のステータ(2)と、
ロータ軸線(6)に沿って延在するロータシャフト(5)と、第2の磁石系(10)と、第1の連結装置部分(41)と、第2の連結装置部分(42)とを有する、ロータ(4)と、を備え、
第1の連結装置部分(41)は、第1の連結装置保持部(11)に固定されるように構成されていて、軸方向の固定側軸受として構成された第1の回転軸受(7)でもって、ロータ軸線(6)を中心に回転自在にロータ
シャフト(5)に支持されていて、第2の連結装置部分(42)は、第2の連結装置保持部(12)に固定されるように構成されていて、軸方向の自由側軸受として構成された第2の回転軸受(8)でもって、ロータ軸線(6)を中心に回転自在にロータシャフト(5)に支持されていて、第2の回転軸受(8)は、ロータシャフト(5)上に固定された内輪(62)と、内輪(62)に対して同軸に配置されるとともに第2の連結装置部分(42)に固定された外輪(43)とを有し、外輪(63)は、内輪(62)と共に、円環状の軸受間隙(74)を画定し、軸受間隙(74)には、複数の転動体(65)が収容されていて、第2の連結装置部分(42)は、ロータ軸線(6)に対して平行に、変位距離(14)に沿って
アンロック位置と
ロック位置との間を軸方向移動可能にロータシャフト(5)に保持されている、モータ主軸(1)において、
変位距離(14)の全体にわたって、内輪(62)の第1の軸方向を向いた面(66)と第2の連結装置部分(42)との間に第1の間隔(58)が存在し、第1の軸方向を向いた面(66)から離反する側に位置する、内輪(62)の第2の軸方向を向いた面(67)と、第2の第2の連結装置部分(42)との間に第2の間隔(59)が存在することを特徴とする、モータ主軸(1)。
【請求項2】
第2の連結装置部分(42)の外側表面(50)に、特に径方向内方へ凹設された少なくとも1つのロック体凹部(52)が形成されていて、第2の連結装置保持部(12)には、内周面(29)に、特に一定の角度ピッチで配置された複数のロック体(36)が設けられていて、ロック体(36)は、特に径方向外側に位置する解放位置と特に半径方向内側に位置するロック位置との間で調整可能であり、ロック位置では、ロック体凹部(52)に形状接続式に係合するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のモータ主軸(1)。
【請求項3】
ロック体(36)は、ロック位置で、ロック体凹部(52)の傾斜面(60)に当接し、特にそこだけに当接し、傾斜面(60)は、ロータ軸線(6)に対して鋭角に向けられていて、これによりロータ軸線(6)に沿ってロック位置の方へ向けられた軸方向のロック力が、第2の連結装置保持部(12)から第2の連結装置部分(42)へ導入されることを特徴とする、請求項2に記載のモータ主軸(1)。
【請求項4】
第2の連結装置保持部の内側表面(29)と第2の連結装置部分(42)の外側表面(50)とが、少なくとも部分的に幾何学的に類似して、特にそれぞれ部分円錐側面状に形成されていて、これにより径方向にもロータ軸線(6)に沿っても向けられたロック方向で、第2の連結装置保持部(12)内での第2の連結装置部分(42)の形状接続式の保持が保証されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ主軸(1)。
【請求項5】
ロータシャフト(5)に第1のリニアストッパ(75)が形成されていて、第1のリニアストッパ(75)に、第2の連結装置部分(42)が、
アンロック位置で当接し、ロータシャフト(5)に第2のリニアストッパ(76)が形成されていて、第2のリニアストッパ(76)に、第2の連結装置部分(42)が、
ロック位置で当接することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ主軸(1)。
【請求項6】
第2の連結装置保持部(12)は、相対移動可能に、特に直線移動可能にステータ軸線(3)に沿って変位可能なロック体ガイド(26)を有し、ロック体ガイド(26)には、ガイド用空所(35)が設けられていて、ガイド用空所(35)に、ロック体(36)が、ステータ軸線(3)に対して横方向に移動可能に収容されていて、ロック体ガイド(26)は、ガイドスリーブ(25)に移動可能に支持されていて、ガイドスリーブ(25)には、制御面(57)が設けられていて、制御面(57)は、ガイドスリーブ(25)に対するロック体ガイド(26)の相対移動によって径方向にロック体(36)の変位がもたらされるように、ロック体(36)の移動を制御するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のモータ主軸(1)。
【請求項7】
ガイドスリーブ(25)は、軸方向の一方の側で開いた円環状の環状空間(38)を有し、ロック体ガイド(26)には、環状プランジャ(34)が割り当てられていて、環状プランジャ(34)は、軸方向移動可能にシール作用をもって環状空間(38)に収容されているので、環状空間(38)と環状プランジャ(34)とは、可変サイズの作業空間(39)を画定し、これによりロック体ガイド(26)の軸方向の変位及びロック体(36)の作動のための流体アクチュエータが形成されることを特徴とする、請求項6に記載のモータ主軸(1)。
【請求項8】
ロック体ガイド(26)は、第2の連結装置部分(42)に対するロック位置と第2の連結装置部(42)に対するアンロック位置との間を移動可能にステータ(2)に支持されていて、ロック体ガイド(26)は、アンロック位置で、第2の連結装置保持部(12)の内側表面(29、30)によって設定された、第2の連結装置部分(42)を収容するように構成された連結装置領域(31)に作用し、これにより第2の連結装置部分(42)が押し退けられることを特徴とする、請求項7に記載のモータ主軸(1)。
【請求項9】
ロック体ガイド(26)に、少なくとも1つのばね(27)が割り当てられていて、ばね(27)は、ロック位置の方へロック体ガイド(26)に作用する軸方向力を提供するように構成されていることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載のモータ主軸(1)。
【請求項10】
第2の回転軸受(8)の転動体(65)は、ロータ軸線(6)に対して平行に整列された円筒ころとして構成されていて、第2の回転軸受(8)の内輪(62)に、周方向に延在する環溝(64)が設けられていて、環溝(64)の側壁は、円筒ころを軸方向でガイドするように構成されていて、第2の回転軸受(8)の外輪(63)は、円筒形に形成された内側表面(72)を有し、内側表面(72)に、円筒ころが当接することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ主軸(1)。
【請求項11】
第2の連結装置部分(42)の外側表面(50)は、ロック体凹部(52)と共に、ロック体(36)のための押し退け面を形成し、押し退け面は、ロック体ガイド(26)がロック位置からアンロック位置へ軸方向に変位されるときにロック体(36)を径方向外方へ向けて変位するように構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のモータ主軸(1)。
【請求項12】
第1の磁石系(9)が装着されたステータ(2)と、第2の磁石系(10)が装着されたロータ(4)とが、同期モータと非同期モータとの群のうちの電動モータを形成し、第1の磁石系(9)と第2の磁石系(10)とは、それぞれ、磁気コイルと短絡コイルと永久磁石との群のうちの少なくとも1つの構成要素を有することを特徴とする、請求項1に記載のモータ主軸(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具を駆動するモータ主軸であって、ステータ軸線に沿って延在するとともに、第1の磁石系と、第1の連結装置保持部と、第2の連結装置保持部とを有する、スリーブ状のステータと、ロータ軸線に沿って延在するロータシャフトと、第2の磁石系と、第1の連結装置部分と、第2の連結装置部分とを有する、ロータと、を備え、第1の連結装置部分は、第1の連結装置保持部に固定されるように構成されていて、軸方向の固定側軸受として構成された第1の回転軸受でもって、ロータ軸線を中心に回転自在にロータに支持されていて、第2の連結装置部分は、第2の連結装置保持部に固定されるように構成されていて、軸方向の自由側軸受として構成された第2の回転軸受でもって、ロータ軸線を中心に回転自在にロータシャフトに支持されていて、第2の回転軸受は、ロータシャフト上に固定された内輪と、内輪に対して同軸に配置されるとともに第2の連結装置部分に固定された外輪とを有し、外輪は、内輪と共に、円環状の軸受間隙を画定し、軸受間隙には、複数の転動体が収容されていて、第2の連結装置部分は、ロータ軸線に対して平行に、変位距離に沿って第1の機能位置と第2の機能位置との間を軸方向移動可能にロータシャフトに保持されている、モータ主軸に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102011116703号明細書において、モータ駆動式の工作機械ユニット、特にモータ主軸が公知である。工作機械ユニットは、回転軸線を中心に回転自在のロータシャフトを有するロータユニットを備え、この場合、少なくとも組み外された状態で、ロータユニットは、工具保持部及び/又は工作物保持部の端部領域に配置された少なくとも1つの第1の軸受ユニットと、組み付けられた状態でステータユニット内でロータシャフトを支持するための、逆向きに向けられた端部領域に配置された第2の軸受ユニットとを有し、この場合、第2の軸受ユニットは、ロータシャフトの自由側軸受として構成されていて、この場合、組み付けられた状態で自由側軸受の緊締を解除する少なくとも1つの緊締解除装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102011116703号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ロータの高精度で再現可能な交換を可能にするモータ主軸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する、冒頭で述べた形態のモータ主軸において解決される。この場合、変位距離の全体にわたって、内輪の第1の軸方向を向いた面と第2の連結装置部分との間に第1の間隔が存在し、第1の軸方向を向いた面から離反する側に位置する、内輪の第2の軸方向を向いた面と第2の第2の連結装置部分との間に第2の間隔が存在する、ことが想定されている。したがって、ロータシャフトに対する、第1の機能的位置と第2の機能的位置との間の調整距離に沿って移動可能である第2の連結装置部分の相対的な位置にかかわらず、常に、内輪の第1の軸方向を向いた面と第2の連結装置部分との間と、内輪の第2の軸方向を向いた面と連結装置部分との間との両方で、それぞれ、第1の間隔又は第2の間隔によって設定される第1の空隙又は第2の空隙が存在する、ことが想定されている。第1の間隔と第2の間隔との両方は、常に、変位距離の全体に沿って、ゼロよりも大きい値を有する。この特性によって、モータ主軸の作動中、第2の連結装置部分と第2の回転軸受の内輪との間に、第2の回転軸受の損傷を招いてしまうこともある接触が生じないことが保証される。さらに、この特性によって、ロータが取り外された状態で、第2の回転軸受が不意に分解され得ないことが保証される。
【0006】
ステータ内にロータを組み付けるために、第1の連結装置部分が第1の連結装置保持部に保持され、そこで固定されるので、軸方向の固定側軸受として構成された第1の回転軸受が第1の軸受箇所でステータに対するロータシャフトの回転支持を保証する、ことが想定されている。
【0007】
軸受スリーブとも称される第2の連結装置部分が軸受座とも称される第2の連結装置保持部に固定されるので、軸方向の自由側軸受として構成された第2の回転軸受がロータシャフトに対する第2の軸受箇所を形成する、ことが想定されている。軸方向の固定側軸受としての第1の回転軸受の構成と、軸方向の自由側軸受としての第2の回転軸受の構成とによって、ステータとロータとの異なる膨張を招いてしまうことがある、モータ主軸の作動中に生じる熱影響を、第2の回転軸受における変位によって補償できること、そして第1の回転軸受及び第2の回転軸受への所望されない力の導入がもたらされない、ことが達成される。
【0008】
例えば、第1の回転軸受は、複数の転がり軸受、好ましくは複数の玉軸受、特に複数のアンギュラ玉軸受の集合体として構成されていて、この場合、ころ軸受は、特に好ましくはアンギュラ玉軸受としてO型配列で配置可能である。
【0009】
第2の回転軸受は、軸方向の自由側軸受として構成されているので、ステータとロータとの異なる熱膨張を、第2の連結装置部分に固定された外輪に対する、ロータシャフト上に固定された内輪の軸方向の変位によって補償できる。この場合、第2の回転軸受の内輪と外輪との間の環状の軸受間隙内に配置された転動体は、内輪と外輪との間の軸方向の相対移動にも適合されている、ことが想定されている。好適には、ロータ軸線に沿って第2の連結装置部分が第1の機能位置と第2の機能位置との間を移動できる変位距離は、第2の回転軸受の構成によって決定される、転動体が軸受間隙から退出する前に外輪が内輪に対して移動できる最大変位距離よりも小さく選択されている、ことが想定されている。さらに、安全マージンが設けられた変位距離は、モータ主軸の特定の作動時に生じ得る、ロータとステータとの間の最大の膨張差よりも大きい、ことが想定されている。
【0010】
好適には、内輪が、円筒形に、場合によっては円錐の内周面を有して形成されていて、第1の軸方向の端面と称されてもよい、内輪の第1の軸方向を向いた面と、第2の軸方向の端面と称されてもよい、内輪の第2の軸方向を向いた面とは、それぞれ、円環状に形成されている、ことが想定されている。特に好適には、第1の軸方向を向いた面は、ロータシャフトのロータ軸線に対して横方向に整列された第1の軸方向を向いた平面内に配置されていて、第2の軸方向を向いた面は、同様にロータシャフトのロータ軸線に対して横方向に整列された第2の軸方向を向いた平面内に配置されているので、両軸方向を向いた平面は、互いに対して平行に整列されている、ことが想定されている。
【0011】
さらに、第1の機能位置と第2の機能位置との間の変位距離の全体にわたって、内輪の第1の軸方向を向いた面と第2の連結装置部分との間の第1の間隔と、内輪の第2の軸方向を向いた面と第2の連結装置部分との間の第2の間隔との両方がなくならない、ことが想定されている。その意味することによれば、軸方向で、第1の軸方向を向いた面と第2の軸方向を向いた面との両方に関して、第2の連結装置部分と内輪との間に、常に、第1の又は第2の空隙が存在し、したがって、第2の連結装置部分と内輪との間に接触が存在しない。
【0012】
例えば、第2の連結装置部分は、ロータシャフトのロータ軸線に対して少なくとも本質的に回転対称に構成されていて、ロータ軸線を含む断面でU字形の成形輪郭を有し、これにより、径方向内方へ開いた周方向溝が形成され、周方向溝には、第2の回転軸受の外輪が力接続式に及び/又は形状接続式に保持される、ことが想定されている。
【0013】
好適には、連結装置部分は、環状の2つの単一部分から構成されていて、これらの部分は、軸方向に互いに結合されていて、これにより、周方向溝において外輪の収容が可能となる。
【0014】
本発明の有利な発展形態は、従属請求項の対象である。
【0015】
有利には、第2の連結装置部分の外側表面に、特に径方向内方へ凹設された少なくとも1つのロック体凹部が形成されていて、第2の連結装置保持部には、内周面に、特に一定の角度ピッチで配置された複数のロック体が設けられていて、ロック体は、特に径方向外側に位置する解放位置と特に半径方向内側に位置するロック位置との間で調整可能であり、ロック位置では、ロック体凹部に形状接続式に係合するように構成されている。ステータの第2の連結装置保持部に属する少なくとも1つのロック体と、ロータに属する第2の連結装置部分の外側表面におけるロック体凹部との間の相互作用によって、第2の連結装置保持部における第2の連結装置部分の特に軸方向の固定をもたらすことができる。好ましくは、両連結装置保持部と両連結装置部分とは、ロータとステータとの連結が、第1の連結装置保持部における第1の連結装置部分のロック体と第2の連結装置保持部における第2の連結装置部分のロック体とによって保証されるように、構成されている。そのために、有利には、少なくとも1つのロック体又は複数のロック体は、径方向外側に位置する解放位置と径方向内側に位置するロック位置との間で調整できる。好適には、少なくとも1つのロック体又は複数のロック体は、ロック位置で、特にロータのロータ軸線の方へ向けられた、径方向内向きのロック力を、ステータの第2の連結装置保持部からロータの第2の連結装置部分へと伝達できる、ことが想定されている。特に有利には、第2の連結装置部分における垂直力と称されてもよい、各々のロック体から及ぼされるロック力に基づいて、径方向内向きに向けられた力成分と、ロータ軸線に沿って軸方向に向けられた力成分との両方がロータに加えられる。これにより、ロータは、径方向と軸方向との両方で確実にステータに固定される。
【0016】
好適には、ロック体は、ロック位置で、特にロック体凹部の傾斜面だけに当接し、傾斜面は、ロータ軸線に対して鋭角に向けられていて、これによりロータ軸線に沿ってロック位置の方へ向けられた軸方向のロック力が、第2の連結装置保持部から第2の連結装置部分に導入される、ことが想定されている。ロック体凹部は、選択的に、局所的に制限された孔として又は周方向に延在する溝として、第2の連結装置部分の外周面に形成され得る。ステータにロータを確実にロックするために、ロック体凹部が傾斜面を有し、傾斜面にロック体がロック位置で当接する、ことが重要である。この場合、傾斜面は、特に、ロック体とロック体凹部との間の接触面に一致してよい。接触面又は傾斜面について、接触面又は傾斜面がロータ軸線に対して鋭角に向けられているという条件を満たさなければならない、ことが重要である。このことは、ロック体と、傾斜面と、両連結装置保持部と、これに割り当てられた連結装置部分の幾何学的形状について考慮されるべき公差に鑑みて、有利には、ロック体とロック体凹部との間の接触が可能である接触領域の全体がロータ軸線に対して鋭角を成すことによって実現できる。ロック体が、径方向内向きにロータ軸線の方へ向けられていて、好ましくはロータ軸に対して横方向に延在するロック力を傾斜面に及ぼすと仮定すると、傾斜面の向きに基づいて、径方向内向きに向けられた力成分とロータ軸に対して平行に向けられた別の力成分との、このロック力の分割が生じる。これにより、ステータにおけるロータの所望の径方向及び軸方向のロックが保証される。
【0017】
ロック体の代替的な一実施形態では、ロック体は、それぞれ解放位置とロック位置との間でロック経路に沿って調整可能であり、この場合、ロック経路は、ロータ軸に対して鋭角に向けられている、ことが想定されている。好適には、この場合、第2の連結装置保持部に収容された複数のロック体のロック経路が、部分円錐状に成形された包絡面上に配置されている、ことが想定され得る。
【0018】
本発明の別の実施形態では、第2の連結装置保持部の内側表面と第2の連結装置部分の外側表面とが、少なくとも部分的に幾何学的に類似して、特にそれぞれ部分円錐側面状に形成されていて、これにより径方向にもロータ軸線に沿っても向けられたロック方向で、第2の連結装置保持部内での第2の連結装置部分の形状接続式の保持が保証される。第2の連結装置保持部及び第2の連結装置部分のこのような幾何学的形状によって、一方では、第2の連結装置保持部に対する第2の連結装置部分の高精度のセンタリングをもたらすことができる。他方では、第2の連結装置部分と第2の連結装置部分とがそれぞれ部分的に有する円錐形状によって、第2の連結装置保持部からの第2の連結装置部分の有利な分解動作が補助される。このことは、既に第2の連結装置保持部に対する第2の連結装置部分の僅かな軸方向の変位で、対向する、第2の連結装置保持部の内側表面と第2の連結装置部分の外側表面との完全な離脱が生じる、ことに起因する。好適には、部分円錐側面状の表面の円錐角は、17度から19度の範囲で設定されていて、これにより、一方では、第2の連結装置保持部と第2の連結装置部分との間の有利なセンタリング作用が実現され、他方では、所望されないセルフロックが回避される。
【0019】
本発明の一形態では、ロータシャフトに第1のリニアストッパが形成されていて、第1のリニアストッパに、第2の連結装置部分が、第1の機能位置で当接し、ロータシャフトに第2のリニアストッパが形成されていて、第2のリニアストッパに、第2の連結装置部分が、第2の機能位置で当接する、ことが想定されている。第1のリニアストッパ及び第2のリニアストッパの役割は、ロータが取り外された状態で、第2の連結装置部分と、第2の連結装置部分に収容された、第2の回転軸受の外輪との軸方向の摺動を、所定の変位距離に制限することにある。この場合、変位距離は、第2の回転軸受の転動体が内輪と外輪との間の軸受間隙内に留まることが常に保証されるように選択されている。さらに、変位距離は、場合によっては生じるロータとステータとの間の長さ変化によって、第2の連結装置部分が第1の機能位置に又は第2の機能位置に移されないように選択されている。したがって、第2の連結装置部分と第1のリニアストッパと第2のリニアストッパとは、互いに、モータ主軸の作動状態とも称される、ステータ内にロータが組み付けられた状態で、個々の構成要素の全ての公差及び長さの伸長にも鑑みて、第1のリニアストッパと第2のリニアストッパとの両方における第2の連結装置部分の当接が排除されるように、調整されている。
【0020】
本発明の有利な一発展形態では、第2の連結装置保持部は、相対移動可能に、特に直線移動可能にステータ軸線に沿って変位可能なロック体ガイドを有し、ロック体ガイドには、ガイド用空所が設けられていて、ガイド用空所に、ロック体が、ステータ軸線に対して横方向に移動可能に収容されてていて、ロック体ガイドは、ガイドスリーブに移動可能に支持されていて、ガイドスリーブには、制御面が設けられていて、制御面は、ガイドスリーブに対するロック体ガイドの相対移動によって径方向にロック体の変位がもたらされるように、ロック体の移動を制御するように構成されている。したがって、ロック体ガイドの役割は、一方では、個々のロック体の相対運動について同期を保証することであり、この場合、ロック体は、そのために、ロック体ガイドのガイド用空所に収容されている。この場合、ガイド用空所は、ステータ軸線に沿ってロック体ガイドが相対移動するとき、ロック体が少なくともほとんど遊びなく、ひいてはロック体ガイドの相対移動に対して同期して移動するように、寸法設定されている。ロック体の径方向の位置決めは、ガイド用空所によってではなく、むしろ制御面によって行われ、制御面には、ロック体が好ましくは半径方向外側に位置する端部領域でもって当接し、この場合、この制御面は、ガイドスリーブに形成されている。ロック体ガイドは、相対移動可能に、特に直線移動可能にガイドスリーブに収容されているので、ガイドスリーブに対してロック体ガイドが変位するとき、制御面に沿ったロック体ガイドの転動運動又は摺動運動が生じ、これにより、ロック体の径方向位置を変更できる。
【0021】
有利には、ガイドスリーブは、軸方向の一方の側で開いた円環状の環状空間を有し、ロック体ガイドには、環状プランジャが割り当てられていて、環状プランジャは、軸方向移動可能にシール作用をもって環状空間に収容されているので、環状空間と環状プランジャとは、可変サイズの作業空間を画定し、これにより、ロック体ガイドの軸方向の変位及びロック体の作動のための流体アクチュエータが形成される。環状空間は、ガイドスリーブ内の周方向に延在する溝と称されてもよく、ガイドスリーブは、径方向内側に位置する第1の内壁と、径方向外側に位置する、第1の内壁とは反対側に位置する第2の内壁と、軸方向に向けられた、円環状に形成された底部領域とを有し、この場合、環溝の、軸方向に向けられた開口は、円環状に形成された、例えば正方形又は長方形の断面を有するように実現された環状プランジャによって閉じられる。したがって、この環状プランジャは、環状空間と共に、可変サイズの流体作業空間を形成し、流体作業空間には、圧力が加えられた流体、特に圧縮空気又は作動油が供給され得る。これにより、ガイドスリーブに対する環状プランジャの軸方向の相対移動を伴う、圧力に依存する作業空間の増大をもたらすことができる。環状プランジャのこの軸方向の相対移動中、ロック体ガイドのガイド用空所に収容されたロック体は、ガイドスリーブに形成された制御面の構成に依存して、少なくとも径方向に又は半径方向と軸方向との両方の重畳された相対移動で変位され、これにより、第2の連結装置部分がロックされる又は解放される。
【0022】
本発明の別の形態では、ロック体ガイドは、第2の連結装置部分に対するロック位置と第2の連結装置部分に対するアンロック位置との間を移動可能にステータに支持されていて、ロック体ガイドは、アンロック位置で、第2の連結装置保持部の内側表面によって設定された、第2の連結装置部分を収容するように構成された連結装置領域に作用し、これにより、第2の連結装置部分が押し退けられる、ことが想定されている。連結装置領域は、ロータがステータに収容されていて、モータ主軸が作動状態にあるときに、第2の連結装置部分が占める空間体積と称されてもよい。特に、連結装置領域は、第2の連結装置保持部に属する閉鎖環の内側表面と、第2の連結装置保持部に属するロック体ガイドの内側表面とによって、径方向外側で画定される。
【0023】
ロック体ガイドは、アンロック位置で、この連結装置領域に少なくとも部分的に作用するように構成されているので、ロック体ガイドがロック位置からアンロック位置へ移されると、連結装置領域からの第2の連結装置部分の押し退けを及ぼすことができる。これにより、第2の連結装置部分は、ロック体によってロックが既に解消されているが、場合によっては第2の連結装置部分と第2の連結装置保持部との間の静止摩擦が依然として存在する時点で、ステータ軸線に沿ったロック体ガイドの相対移動によって所定の値だけ軸方向に変位され、これにより、第2の連結装置部分と第2の連結装置保持部との間の静止摩擦が解消される、ことが達成される。特に、ガイドスリーブ内の環状空間とロック体ガイドの環状プランジャとから形成される流体アクチュエータによって提供されるべき軸方向力が、解消動作のために使用される。
【0024】
本発明の有利な発展形態では、ロック体ガイドに、少なくとも1つのばねが割り当てられていて、ばねは、ロック位置の方へロック体ガイドに作用する軸方向力を提供するように構成されている、ことが想定されている。1つのばねによって、又は常にプリロードが掛けられているようにロック体ガイドとステータに形成された支持面との間に配置されたそのような複数のばねの集合体によって、ロック体ガイドが、流体アクチュエータに圧力が加えられていないとき、ロック体ガイドに対するロック位置と同一である有利な位置で保持されることをもたらすことができる。したがって、ばねによってプリロードが掛けられたロック体ガイドは、通常ロック式又は通常閉鎖式と称されてもよい。この場合、このロックの解消は、流体アクチュエータの加圧によって行われる。ばねのプリロード及びロック体ガイドの軸方向の変位に必要なばねの変形エネルギを提供するように、流体アクチュエータが寸法設定されている、かつ流体アクチュエータに、圧力が加えられた流体が供給され得る。
【0025】
有利には、第2の回転軸受の転動体は、ロータ軸線に対して平行に整列された円筒ころとして構成されていて、第2の回転軸受の内輪に、周方向に延在する環溝が設けられていて、環溝の側壁は、円筒ころを軸方向でガイドするように構成されていて、第2の回転軸受の外輪は、円筒形に形成された内側表面を有し、内側表面に、円筒ころが当接する。この種の回転軸受は、フランジレス外輪を有する円筒ころ軸受とも称され、軸方向の自由側軸受として、ロータシャフトに対する、第2の連結装置部分のための、高い荷重を加えることが可能な回転軸受を実現する。この円筒ころ軸受の所望されない分解を阻止するために、第2の回転軸受の外輪は、第2の連結装置部分に収容されていて、第2の連結装置部分は、第ロータ軸線に沿って第1の機能位置と第2の機能位置との間を変位可能であるが、ただし、各々の第1のリニアストッパと第2のリニアストッパとによって、内輪と外輪との間の軸受間隙からの転動体の離脱が阻止されるように、軸方向の変位が制限される。
【0026】
有利には、第2の連結装置部分の外側表面は、ロック体凹部と共に、ロック体のための押し退け面を形成し、押し退け面は、ロック体ガイドがロック位置からアンロック位置へ軸方向に変位されるときにロック体を径方向外方へ向けて変位させるように構成されている。この押し退け面は、好ましくは、ロック体と、ガイドスリーブに形成された制御面とに適合されていて、ロック体に対して強制ガイドが得られ、その際、ガイドスリーブに対するロック体ガイドのあらゆる軸方向の位置で、各々のロック体の少なくとも本質的に予測可能な径方向及び軸方向の位置決めが保証されるようになっている。例えば、ロック体凹部によって画定される傾斜面が、第2の連結装置部分の円筒形の外側表面に移行し、これにより、ロック体に対して相対的に第2の連結装置部分が軸方向に変位されるとき、傾斜面の幾何学的形状に基づく径方向外方へのロック体の所望の強制変位が保証され、これに続いて、第2の連結装置部分の円筒形の外周面によるロック体の径方向外側の位置決めの確保が保証される。
【0027】
有利には、第1の磁石系が装着されたステータと、第2の磁石系が装着されたロータとが、同期モータと非同期モータとの群のうちの電動モータを形成し、第1の磁石系と第2の磁石系とは、それぞれ、磁気コイルと短絡コイルと永久磁石との群のうちの少なくとも1つの構成要素を有する。
【0028】
本発明の有利な実施形態が、図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】
図1によるモータ主軸の断面図であって、機能領域が概略的に記入されている。
【
図3】
図1及び
図2によるモータ主軸のステータの断面図を示す。
【
図4】
図1及び
図2によるモータ主軸用のロータの断面図を示す。
【
図5】ロータの第2の連結装置部分についてロック位置で第2の連結装置保持部の部分断面図を示す。
【
図6】第2の連結装置保持部に保持された第2の連結装置部分のアンロック位置において
図5による部分断面図を示す。
【
図7】第2の連結装置保持部に保持された第2の連結装置部分の解放位置において
図5による部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び
図2に示されたモータ主軸1は、加工センタ内で使用するために設けられていて、例えばフライスなどの図示されていない切削工具を緊締する及び回転駆動するのに用いられる。やはり図示されていない加工センタの、図示されていないモータ主軸保持部に連結するために、モータ主軸は、固定環15を有する。固定環15によって、モータ主軸1は、高い精度及び/又は再現正確性をもって、モータ主軸保持部に取り付けることができる。
【0031】
モータ主軸1は、スリーブ状に構成されたステータ2を有し、この場合、ステータ2の略円筒形の幾何学的形状は、ステータ軸線3を設定する。ステータ2内で、
図4に詳しく示されたロータ4が、回転自在に収容されている。ロータ4は、ロータシャフト5を有し、ロータシャフト5は、略管状に構成されていて、ロータ軸線6に沿って延在する。
図2に示されているように、作動状態で、ロータ4は、ロータ軸線6がステータ軸3と同一となるように、回転自在にステータ2内に収容されている。
【0032】
図2の描画は、単なる概略的な概観図として用いられ、
図2では、モータ主軸1の、全部で5つの異なる機能領域が、記号としての異なる破線の四角で囲んで記入されている。
【0033】
第1の機能領域は、本質的に、軸方向の固定側軸受である第1の回転軸受7によって設定される。
【0034】
第2の機能領域は、ステータ2に割り当てられた第1の磁石系9と、ロータ4に割り当てられた第2の磁石系10とを有し、したがってモータ主軸1の電動モータコア部材を形成する。というのも、この機能領域では、第1の磁石系9と第2の磁石系10との間の磁気的な相互作用によって、ロータシャフト5へのトルクの提供がもたらされるからである。
【0035】
第3の機能領域は、第2の回転軸受8を有し、
図4から
図7との関連において後で詳説する。
【0036】
第4の機能領域は、アクチュエータ16を有する。アクチュエータ16は、第5の機能領域に配置された緊締装置17に導入される、ロータ軸線6に沿って方向付けられた直線移動を提供するように構成されている。緊締装置17の役割は、詳細には図示されていない切削工具、例えばフライス又はドリルを、コレットチャック18に保持することにある。コレットチャック18は、第1の機能領域においてロータシャフト5に配置されている。
【0037】
したがって、モータ主軸1を用いて、電気エネルギを第1の磁石系9及び/又は第2の磁石系10に供給することによって、ステータ2に対するロータ4の相対回転運動の導入をもたすことができ、その際、この回転運動は、コレットチャック18に保持された図示されていない切削工具へ伝達でき、そのとき、切削工具によって、例えば分離動作、特にフライス動作又は穿孔動作を実施できる。
【0038】
図3に詳細に示されているステータ2は、単なる例としてステータ軸線3に対して回転対称に構成された管状のステータハウジング20を有する。ステータハウジング20には、第1の端部領域に、第1の連結装置保持部11が備わっていて、第1の端部領域から離反する側の第2の端部領域に、第2の連結装置保持部12が備わっている。単なる例として、第1の連結装置保持部11は、それぞれ円筒形に形成された複数の孔部分を有する段付き孔21として実現されている。段付き孔21の、軸方向に整列された端面22に、単なる例として2つのダボ23が配置されていて、ダボ23は、ステータ軸線3に対して平行に整列されていて、
図4との関連において後で詳説する、ロータ4の第1の連結装置部分41の相対回動不能でセンタリングされた保持のために設けられている。
【0039】
ステータハウジング20の第2の端部領域に設けられた第2の連結装置保持部12は、詳細には図示されていない形でステータハウジング20に定位置に結合された閉鎖環24を有する。閉鎖環24に、ガイドスリーブ25が固定されている。ガイドスリーブ25には、ロック体ガイド26が、直線移動可能に収容されている。ロック体ガイド26は、圧縮ばね27によって、後で詳説するロック位置に保持される。そのために、圧縮ばね27は、端面側で閉鎖環24に加工された穴28に収容されている。
【0040】
図4に詳細に示されているロータ4は、軸方向の固定側軸受として構成された第1の回転軸受7と、軸方向の自由側軸受として構成された第2の回転軸受8とを有する。この場合、第1の回転軸受7には、第1の連結装置保持部11に組み付けるために設けられた第1の連結装置部分41が割り当てられている。第2の回転軸受8は、第2の連結装置部分42を有し、第2の連結装置部分42は、ステータ2の第2の連結装置保持部12に組み付けるために設けられている。
【0041】
第1の連結装置部分41とロータシャフト5との間に、第1の回転軸受7が設けられていて、これにより第1の連結装置部分41に対するロータシャフト5の低摩擦の回転運動が可能となる。単なる例として、第1の回転軸受7は、第1のアンギュラ玉軸受43と第2のアンギュラ玉軸受44とを有する。両アンギュラ玉軸受43、44は、それぞれ、ロータシャフト5に固定された内輪45と、第1の連結装置部分41に固定された外輪46とを有する。各々の内輪45と各々の外輪46との間の軸受間隙47には、単なる例として球状に形成された複数の転動体48が配置されている。第1の連結装置部分に保持された残りの構成要素は、本質的に各々の内輪45又は外輪46を締め付けるため、及び両アンギュラ玉軸受43、44のシールを保証するために用いられ、後で詳細することはしない。
【0042】
ロータシャフト5の、第1の回転軸受7から離反する側の端部領域には、第2の回転軸受8が配置されていて、第2の回転軸受8は、軸方向の自由側軸受として構成されていて、これによりステータ2内でのロータ4の支持について静的不安定又は不静定が回避される。さらに、第1の回転軸受7と第2の回転軸受8との間で、第2の磁石系10が、ロータシャフト5上に配置されている。第2の磁石系10は、例えば詳細には示されていない短絡コイルであってよい。
【0043】
図5から
図7の描画から看取されるように、第2の回転軸受8は、単なる例として円筒ころ軸受61を有する。円筒ころ軸受61によって、ロータシャフト5は、第2の連結装置部分42に対して回転運動自在に支持されている。
【0044】
円筒ころ軸受61は、内輪62を有し、内輪62は、その内周面70でもって、ロータシャフトの外周面80に当接し、内輪62は、ロータシャフト5に支持された支持環81と、圧縮スリーブ82と、ロータシャフト5に螺合されたねじ環83とによって定位置にロータシャフト5に固定されている。円筒ころ軸受61の外輪63は、内輪62及びロータ軸線6に対して同軸に配置されていて、単なる例として2つの部分から構成された第2の連結装置部分42に固定されている。
【0045】
例えば、第2の連結装置部分42は、第1の環部91と第2の環部92とを有し、この場合、第1の環部91は、軸方向の端面93でもって、第2の環部92の軸方向の端面94に当接し、軸方向に整列された複数の固定ねじ95によって、第2の環部92に結合されている。それぞれロータ軸線6に対して回転対称に構成された第1及び第2の環部91、92は、径方向内方へ開いた周方向に延在する環溝96を画定し、環溝96には、外輪63が収容されている。例えば、第1の環部91、第2の環部92及び外輪63の幾何学的形状は、外輪63が軸方向と径方向との両方で環溝96に形状接続式に収容されるように、互いに対して調整されている。
【0046】
内輪62と外輪63との間に軸受間隙74が形成されていて、軸受間隙74は、径方向内側で、内輪62に形成された、径方向外方へ開いた溝64の溝面71によって、かつ径方向外側で、外輪63の内周面72によって設定されている。この軸受間隙74に、円筒ころとして構成された複数の転動体65が配置されていて、転動体65は、内輪62に対して外輪63が相対回転運動するとき、それぞれ、溝面71と外輪63の内周面72とに対して転動運動を行う。
【0047】
さらに、外輪63の内周面72は、円筒形に形成されているので、転動体65に対する外輪63の軸方向の変位が可能である、ことが想定されている。内輪62に対する外輪63の軸方向の相対移動は、第1の環部91と支持環81との間に形成された第1のリニアストッパ75と、第2の環部92と圧縮スリーブ82との間に形成された第2のリニアストッパ76とによって制限される。
【0048】
例えば、支持環81は、
図5から
図7による断面図でL字形の成形輪郭を有し、この場合、この成形輪郭によって、径方向外方へ突出する環状カラー84が、第1の環部91に対向して配置されるとともに軸方向に向けられたストッパ面が提供され、ストッパ面に、逆向きに向けられた軸方向端面97が、第2の連結装置部分42の図示されていない第1の機能位置で当接でき、これにより第1のリニアストッパ75が形成される、ことが想定されている。
【0049】
同様の形で、圧縮スリーブ82に、周方向に延在する環状カラー86が設けられていて、環状カラー86の、円筒ころ軸受61へ向けて形成されたストッパ面87は、第2の環部92の、逆向きに向けられた軸方向端面98に対向して配置されていて、これにより第2のリニアストッパ76が形成される。したがって、ロータ軸線6に沿った第2の連結装置部分42の変位距離14は、第1のリニアストッパ75と第2のリニアストッパ76とによって制限されている。
【0050】
詳細には示されていない、支持環81の外径と圧縮スリーブ82の外径とは、それぞれ対向する構成要素の間に常に径方向に延在する空隙が存在するように、図示されていない、第1の環部91の内径と第2の環部92の内径とに合わせて調整されているので、ロータ軸線6を中心とするロータシャフト5の回転中、支持環81と第1の環部91との間又は圧縮スリーブ82と第2の環部92との間に接触が生じない。
【0051】
図5から
図7の描画からさらに看取されるように、第2の連結装置部分42は、少なくとも部分的に部分円錐状に形成された外側表面50を有し、外側表面50は、閉鎖環24の、部分円錐状の内側表面29に対して幾何学的に類似して、特に同一に形成されている。さらに、閉鎖環24の内側表面29は、ロック体ガイド26の内側表面30と支持環81と圧縮スリーブ82と共に、連結装置領域31を画定する。連結装置領域31は、その大きさが、
図5の描画を起点とする、後で詳説する、ロック体ガイド26の軸方向の変位によって減少可能である。
【0052】
例えば、ロック体ガイド26は、円環状に形成された支持環32を有し、支持環32に、軸方向にステータ軸線3に沿って、円筒状に形成されたロック体スリーブ33が続き、ロック体スリーブ33自体は、環状プランジャ34に結合されている。原則として、ロック体ガイド26は、ステータ軸線3に対して回転対称に構成された構成部材であり、ロック体として用いられるロックボール36を収容するために設けられた、ロック体スリーブ33に加工されていて径方向外方へ向いた孔35だけが、ロック体ガイド26の回転対称の幾何学的形状から逸脱する。
【0053】
例えば、環状プランジャ34は、ロータ軸線3に対して回転対称に構成された、ガイドスリーブ25の軸方向溝37内に直線移動可能にかつシール作用をもって収容されていて、したがって、軸方向溝37によって画定される環状空間38を可変サイズの作業空間39として利用可能にする、ことが想定されている。この場合、作業空間39のサイズは、ガイドスリーブ25に対するロック体ガイド26の軸方向の位置に依存する。
【0054】
図5から
図7の描画からさらに看取されるように、作業空間39に圧力が加えられ、その結果として環状プランジャ34の軸方向端面40に力が作用すると、
図5によるロック位置から
図7によるアンロック位置へのロック体ガイド26の軸方向の変位が行われる。ロック位置とアンロック位置との間のロック体ガイド26のこのような変位移動の間に、一方では、圧縮ばね27の圧縮がもたらされ、その際、弾性変形がもたらされる。他方では、ロックボール36は、ステータ軸線3に沿って軸方向に変位され、これにより、後で詳説するように、ロックボール36と第2の連結装置部分42との間のアンロック動作がもたらされる。
【0055】
図5から分かるように、例示的に示されたロックボール36は、ロック位置で、ガイドスリーブ25の、円筒形に形成された内側表面51と、ロック体ガイド26のロック体スリーブ33における、これに属する孔35と、第2の連結装置部分42の外側表面50に加工されたロック体凹部52との間に形状接続式に収容されている。これにより、ステータ2内での第2の連結装置部分42の確実なロックが保証される。このロック位置では、第1の環部91と、内輪62の、これに対向して配置された第1の軸方向を向いた面66との間に第1の間隔58が存在し、そして第2の環部92と、内輪62の、これに対向して配置された第2の軸方向を向いた面67との間に第2の間隔59が存在する。
【0056】
作業空間39に圧力が加えられると、軸方向にシール作用をもって滑動可能にガイドスリーブ25内に収容された、ロック体ガイド26の環状プランジャ34は、
図6に示されているように、圧縮ばね27が圧縮されると同時に、第1の回転軸受7の方へ変位される。その際、支持環32とガイドスリーブ25との間に、ガイドスリーブ25の軸方向を向いた面55と、これに対向して配置された、支持環32の軸方向を向いた面56との間の、径方向外方へ向いた退避間隙53が開く。ロックボール36が退避間隙53に退避できるよりも以前に、径方向外方への、ロックボール36の早期の退避運動を可能にするために、ガイドスリーブ25の、円筒形に形成された内側表面51と軸方向を向いた面55との間の移行領域に、単なる例として部分円錐状に形成された面取り部57が設けられている。この(制御面とも称される)面取り部57は、既に退避間隙53が完全に開かれる前に、ロックボール36の径方向外方への変位を可能にする。
【0057】
さらに、退避間隙へのロックボール36の変位は、ロック体凹部52の幾何学的形状によって補助される。ロック体凹部52は、単なる例として、径方向内方へ凹設された溝として、第2の連結装置部分42の外側表面50に加工されていて、ロック体凹部52は、ロックボール36の幾何学的形状に適合された溝壁60を有する。例えば、溝壁60は、四分の一円形の成形輪郭を有するように構成されていて、これにより、一方では、ロック位置で、ロックボール36の面状の当接を可能にし、他方では、ガイドスリーブ25に対してロック体ガイド26が軸方向に相対移動するときにロックボール36の押し退けを可能にする。
【0058】
ロックボール36のこのような押し退けによって、第2の連結装置部分42とのロックが解消されるので、
図6の描画において左方へ向けられた引張力がロータ4に加えられると、ステータ2からのロータ4の取り外しが可能となる。
【0059】
しかし典型的には、ロック状態で、特に溝壁60の領域でロックボール36から第2の連結装置部分42へ伝達される、軸方向と径方向との両方の力成分を生じさせる力によって、第2の連結装置部分42の外側表面50と閉鎖環24の内側表面29との間に著しい静止摩擦が生じることが前提となっている。この静止摩擦は、付加的に、汚染及び/又はフレッチングなどの影響によって増大されるので、ステータ2からのロータ4の簡単な手動の取り外しは予期されていない。したがって、ステータ2からのロータ4の分解を容易にするために、ロック体ガイド26の最大の調整距離79に至る前に、ガイドスリーブ25と共に流体アクチュエータを形成するロック体ガイド26が、単なる例として環状プランジャ34に形成された端面77でもって、第2の連結装置部分42の端面78に当接する、ことが想定されている。したがって、環状プランジャ34の端面77が第2の連結装置部分42の端面78に当接すると、ロック体ガイド26から第2の連結装置部分42へ力が導入され、これにより、
図7に示されているように、第2の連結装置部分42は、ロック位置からアンロック位置へ変位できる。
【0060】
これにより、内輪62に保持された転動体65と共に内輪62に対して相対的に、第2連結装置部分42及び第2の連結装置部分42の内側に収容された外輪63の軸方向の変位が行われ、その際、第2の連結装置部分42は、第1のリニアストッパ75と第2のリニアストッパ76とによって、常に外輪63による転動体65のガイド作用が保証されたままであるように、ロータシャフト5に対する相対移動が制限されている。さらに、第1の環部91及び第2の環部92は、円筒ころ軸受61の内輪62に合わせて、変位距離14の全体にわたって常に第1の間隔58及び第2の間隔59がゼロにはならない又はなくならず、これによりステータ2の外側に取り外された状態でもロータ4の問題のない操作が保証されるように、調整されている。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.
加工工具を駆動するモータ主軸(1)であって、
ステータ軸線(3)に沿って延在するとともに、第1の磁石系(9)と、第1の連結装置保持部(11)と、第2の連結装置保持部(12)とを有する、スリーブ状のステータ(2)と、
ロータ軸線(6)に沿って延在するロータシャフト(5)と、第2の磁石系(10)と、第1の連結装置部分(41)と、第2の連結装置部分(42)とを有する、ロータ(4)と、を備え、
第1の連結装置部分(41)は、第1の連結装置保持部(11)に固定されるように構成されていて、軸方向の固定側軸受として構成された第1の回転軸受(7)でもって、ロータ軸線(6)を中心に回転自在にロータシャフト(5)に支持されていて、第2の連結装置部分(42)は、第2の連結装置保持部(12)に固定されるように構成されていて、軸方向の自由側軸受として構成された第2の回転軸受(8)でもって、ロータ軸線(6)を中心に回転自在にロータシャフト(5)に支持されていて、第2の回転軸受(8)は、ロータシャフト(5)上に固定された内輪(62)と、内輪(62)に対して同軸に配置されるとともに第2の連結装置部分(42)に固定された外輪(63)とを有し、外輪(63)は、内輪(62)と共に、円環状の軸受間隙(74)を画定し、軸受間隙(74)には、複数の転動体(65)が収容されていて、第2の連結装置部分(42)は、ロータ軸線(6)に対して平行に、変位距離(14)に沿って第1の機能位置と第2の機能位置との間を軸方向移動可能にロータシャフト(5)に保持されている、モータ主軸(1)において、
変位距離(14)の全体にわたって、内輪(62)の第1の軸方向を向いた面(66)と第2の連結装置部分(42)との間に第1の間隔(58)が存在し、第1の軸方向を向いた面(66)から離反する側に位置する、内輪(62)の第2の軸方向を向いた面(67)と、第2の第2の連結装置部分(42)との間に第2の間隔(59)が存在することを特徴とする、モータ主軸(1)。
2.
第2の連結装置部分(42)の外側表面(50)に、特に径方向内方へ凹設された少なくとも1つのロック体凹部(52)が形成されていて、第2の連結装置保持部(12)には、内周面(29)に、特に一定の角度ピッチで配置された複数のロック体(36)が設けられていて、ロック体(36)は、特に径方向外側に位置する解放位置と特に半径方向内側に位置するロック位置との間で調整可能であり、ロック位置では、ロック体凹部(52)に形状接続式に係合するように構成されていることを特徴とする、上記1のモータ主軸(1)。
3.
ロック体(36)は、ロック位置で、ロック体凹部(52)の傾斜面(60)に当接し、特にそこだけに当接し、傾斜面(60)は、ロータ軸線(6)に対して鋭角に向けられていて、これによりロータ軸線(6)に沿ってロック位置の方へ向けられた軸方向のロック力が、第2の連結装置保持部(12)から第2の連結装置部分(42)へ導入されることを特徴とする、上記2のモータ主軸(1)。
4.
第2の連結装置保持部の内側表面(29)と第2の連結装置部分(42)の外側表面(50)とが、少なくとも部分的に幾何学的に類似して、特にそれぞれ部分円錐側面状に形成されていて、これにより径方向にもロータ軸線(6)に沿っても向けられたロック方向で、第2の連結装置保持部(12)内での第2の連結装置部分(42)の形状接続式の保持が保証されることを特徴とする、上記1、2又は3のモータ主軸(1)。
5.
ロータシャフト(5)に第1のリニアストッパ(75)が形成されていて、第1のリニアストッパ(75)に、第2の連結装置部分(42)が、第1の機能位置で当接し、ロータシャフト(5)に第2のリニアストッパ(76)が形成されていて、第2のリニアストッパ(76)に、第2の連結装置部分(42)が、第2の機能位置で当接することを特徴とする、上記1から4のいずれか一つのモータ主軸(1)。
6.
第2の連結装置保持部(12)は、相対移動可能に、特に直線移動可能にステータ軸線(3)に沿って変位可能なロック体ガイド(26)を有し、ロック体ガイド(26)には、ガイド用空所(35)が設けられていて、ガイド用空所(35)に、ロック体(36)が、ステータ軸線(3)に対して横方向に移動可能に収容されていて、ロック体ガイド(26)は、ガイドスリーブ(25)に移動可能に支持されていて、ガイドスリーブ(25)には、制御面(57)が設けられていて、制御面(57)は、ガイドスリーブ(25)に対するロック体ガイド(26)の相対移動によって径方向にロック体(36)の変位がもたらされるように、ロック体(36)の移動を制御するように構成されていることを特徴とする、上記1から5のいずれか一つのモータ主軸(1)。
7.
ガイドスリーブ(25)は、軸方向の一方の側で開いた円環状の環状空間(38)を有し、ロック体ガイド(26)には、環状プランジャ(34)が割り当てられていて、環状プランジャ(34)は、軸方向移動可能にシール作用をもって環状空間(38)に収容されているので、環状空間(38)と環状プランジャ(34)とは、可変サイズの作業空間(39)を画定し、これによりロック体ガイド(26)の軸方向の変位及びロック体(36)の作動のための流体アクチュエータが形成されることを特徴とする、上記6のモータ主軸(1)。
8.
ロック体ガイド(26)は、第2の連結装置部分(42)に対するロック位置と第2の連結装置部(42)に対するアンロック位置との間を移動可能にステータ(2)に支持されていて、ロック体ガイド(26)は、アンロック位置で、第2の連結装置保持部(12)の内側表面(29、30)によって設定された、第2の連結装置部分(42)を収容するように構成された連結装置領域(31)に作用し、これにより第2の連結装置部分(42)が押し退けられることを特徴とする、上記7のモータ主軸(1)。
9.
ロック体ガイド(26)に、少なくとも1つのばね(27)が割り当てられていて、ばね(27)は、ロック位置の方へロック体ガイド(26)に作用する軸方向力を提供するように構成されていることを特徴とする、上記6、7又は8のモータ主軸(1)。
10.
第2の回転軸受(8)の転動体(65)は、ロータ軸線(6)に対して平行に整列された円筒ころとして構成されていて、第2の回転軸受(8)の内輪(62)に、周方向に延在する環溝(64)が設けられていて、環溝(64)の側壁は、円筒ころを軸方向でガイドするように構成されていて、第2の回転軸受(8)の外輪(63)は、円筒形に形成された内側表面(72)を有し、内側表面(72)に、円筒ころが当接することを特徴とする、上記1から9のいずれか一つのモータ主軸(1)。
11.
第2の連結装置部分(42)の外側表面(50)は、ロック体凹部(52)と共に、ロック体(36)のための押し退け面を形成し、押し退け面は、ロック体ガイド(26)がロック位置からアンロック位置へ軸方向に変位されるときにロック体(36)を径方向外方へ向けて変位するように構成されていることを特徴とする、上記1のモータ主軸(1)。
12.
第1の磁石系(9)が装着されたステータ(2)と、第2の磁石系(10)が装着されたロータ(4)とが、同期モータと非同期モータとの群のうちの電動モータを形成し、第1の磁石系(9)と第2の磁石系(10)とは、それぞれ、磁気コイルと短絡コイルと永久磁石との群のうちの少なくとも1つの構成要素を有することを特徴とする、上記1のモータ主軸(1)。