(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-02
(45)【発行日】2025-09-10
(54)【発明の名称】亜鉛・クロム合金を含むコーティングを有する管状要素のねじ端部
(51)【国際特許分類】
F16L 15/04 20060101AFI20250903BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20250903BHJP
C25D 3/06 20060101ALI20250903BHJP
C25D 3/56 20060101ALI20250903BHJP
C22C 18/00 20060101ALI20250903BHJP
【FI】
F16L15/04 A
C25D7/00 C
C25D3/06
C25D3/56 Z
C22C18/00
C25D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2024521036
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022077856
(87)【国際公開番号】W WO2023057594
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-06-05
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ,アレクサンドル
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044961(WO,A1)
【文献】特開平06-025887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0400255(US,A1)
【文献】特開平11-302862(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102676900(CN,A)
【文献】米国特許第05510196(US,A)
【文献】米国特許第06153079(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00-59/22
C25D 1/00-3/66
C25D 5/00-7/12
C22C 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための管状要素のねじ端部(1,2)であって、その外周面上または内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山(3,4)を備え、前記ねじ山(3,4)は、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層(15)でコーティングされ、ここで、亜鉛(Zn)は、前記亜鉛・クロム合金の総重量に対して重量%で優勢な元素であ
り、混合物中に主に存在する卑金属としての合金金属元素を表し、クロムは、混合物中に添加される主な添加合金金属元素を表す、
ことを特徴とする、管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項2】
前記亜鉛・クロム合金の総重量に対して、亜鉛(Zn)の含有量が
50重量%超であることを特徴とする、請求項1に記載の管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項3】
前記亜鉛・クロム合金の総重量に対して、クロム(Cr)の含有量が
3重量%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項4】
前記亜鉛・クロム合金の総重量に対して、クロム(Cr)の含有量が20重量%~
30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項5】
前記層(15)が電着されていることを特徴とする、請求項1に記載の管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項6】
前記層(15)の厚さは、4μm~
20μmであることを特徴とする、請求項1に記載の管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の前記層(15)でコーティングされた少なくとも1つの非ねじ部分をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項8】
前記非ねじ部分は、止め部(7,8)および/またはシーリング座部(5,6)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項9】
鋼製であることを特徴とする、請求項1に記載の管状要素のねじ端部(1,2)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の管状要素のねじ端部(1,2)を調製するためのプロセスであって、前記ねじ端部のねじ山(3,4)の表面を、1種または複数種の亜鉛塩、1種または複数種のクロム塩、1種または複数種の電解質、および1種または複数種の
界面活性剤を含む水性組成物で少なくとも1回電着するステップを含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項11】
コーティングされる前記表面を、
機械的処理で調製するステップを含むことを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための管状要素であって、請求項1~9のいずれか1項に記載のねじ端部(1,2)を備える、管状要素。
【請求項13】
雄型であり、前記管状要素の外周面上に延在する少なくとも1つのねじ山(3)を有することを特徴とする、請求項12に記載の管状要素。
【請求項14】
雌型であり、前記管状要素の内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山(4)を有することを特徴とする、請求項12に記載の管状要素。
【請求項15】
雄型管状要素のねじ端部(1)と雌型管状要素のねじ端部(2)とを備える管状ねじ接合部であって、前記雄型管状要素のねじ端部(1)は、その外周面上に延在するねじ山を有し、前記雌型管状要素のねじ端部(2)は、その内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有し、前記雄型管状要素のねじ端部(1)のねじ山と前記雌型管状要素のねじ端部(2)のねじ山は互いにねじ込まれ、前記ねじ端部の少なくとも一方が請求項1~9のいずれか1項に記載のねじ端部であることを特徴とする、管状ねじ接合部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための管状要素のねじ端部に関する。このねじ端部は、少なくとも1つのねじ山を備える。その表面には、後述するように、亜鉛およびクロムベースのコーティングが施される。
【0002】
また、本発明は、1種または複数種の亜鉛塩、1種または複数種のクロム塩、1種または複数種の界面活性剤、および1種または複数種の電解質をベースとする水性組成物を、上記ねじ端部のねじ山の表面上に少なくとも1回電着するステップを含む、管状要素のねじ端部を準備するためのプロセスに関する。
【0003】
また、本発明は、管状要素の少なくとも1つのねじ端部を含む管状ねじ接合部に関する。ねじ山の表面は、以下に説明するような亜鉛およびクロムベースのコーティングで覆われている。
【背景技術】
【0004】
本発明の目的において、管状要素とは、炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送および/または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための、任意に同じタイプの別の要素に接合可能な実質的に管状の形状を有するあらゆる要素または付属品を意味することに留意されたい。
【0005】
また、本発明の目的において、管状要素のねじ端部とは、上記で定義したように、管状要素のあらゆる端部要素を意味する。その表面には、少なくとも1つのねじ部分、すなわちねじ山が設けられており、これにより、管状要素を、任意に同タイプの別の要素に接合または接続して、接合部または接続部を形成することができる。
【0006】
したがって、本発明の意味において、管状要素のねじ端部は、少なくとも1つのねじ表面を備える管状要素の端部要素に相当する。これは、管状要素と他の類似または異なる要素との接続に関与する。
【0007】
管状要素の各々は、少なくとも1つの雄ねじ領域、すなわち外周面上に延在するねじ山が設けられた端部、および/または少なくとも1つの雌ねじ領域、すなわち内周面上に延在するねじ山が設けられた端部と、を有する。これらは、類似する要素または異なる要素の対応する端部にねじ込まれることで接合されて接合部または接続部を形成するように意図されている。
【0008】
接続部の管状ねじ要素は、通常、使用条件によって課される締め付けおよびシーリングの要件を満たすために、決められた制約の下で接合される。より詳細には、定義されたトルクがターゲットとなる。また、管状ねじ要素は、特に使用中に複数回ねじ込みや取り外しを繰り返す必要がある場合がある。
【0009】
このような管状ねじ要素の使用条件は、様々なタイプの応力を生じさせる。その一方で、特に、これらの要素を接続するために使用される繊細な部分、例えばねじ領域、当接領域、または金属間シーリング面に膜やグリースを使用することで、その応力を低減させるか最小限に抑えることができる。
【0010】
誘発される応力には、特に、保管安全性応力があり、保管用グリース(使用前に塗布されるねじ込み用グリースとは異なる)の塗布が必要となる。しかしながら、有機コーティングや金属コーティングを使用する解決策もある。
【0011】
ねじ込みおよび取り外し作業は、一般に、高い軸方向負荷の下で、例えばねじ接合部によって垂直に接合される長さ数メートル、典型的には10メートル~13メートルのパイプの重量の下で実施され、接合されるねじ要素の軸のわずかなずれによってこれは悪化する場合もある。これは、パイプの接続要素、特にねじ領域や当接領域および/または金属間シーリング面において凝着摩耗の発生のリスクをもたらす。そのため、これらの接続要素、特にねじ領域を、特に潤滑剤で覆うことで凝着摩耗から保護することが重要である。
【0012】
また、管状ねじ要素は、しばしば過酷な環境下で保管されてから使用される。例えば、塩水噴霧が生じる「海上」の場合や、砂、埃、および/またはその他の汚染物質が存在する「陸上」の場合が挙げられる。そのため、ねじ領域や密に接触する表面、金属間シーリング面、および当接領域において生じるねじ込み時に負荷がかかる表面には、様々な種類の防食コーティングを施すのが一般的である。
【0013】
しかしながら、API RP5A3(米国石油協会)の規格に準拠したグリースは、管状要素から押し出され、環境または例えば坑井に放出され、特定の洗浄作業を必要とする閉塞を引き起こすので、その使用は、環境基準に関して長期的な解決策にならない可能性がある。
【0014】
耐食性や耐凝着摩耗性を持続させ、環境にも配慮するという問題に対処するため、先行技術ではグリースの代用品が使用されてきた。
【0015】
そのため、亜鉛(Zn)およびニッケル(Ni)ベースの金属コーティングが、管状要素の接続要素、特にねじ領域を腐食や凝着摩耗から保護するために開発された。
【0016】
しかしながら、この金属コーティングは、耐食性や耐凝着摩耗性という点では優れた性能を発揮するものの、人体に有害な化学物質であるニッケル塩から調製されるという大きな欠点がある。具体的には、ニッケル塩は、「CMR」物質、すなわち発がん性、変異原性、および生殖毒性があるとされる物質に分類される。
【0017】
したがって、亜鉛およびニッケルベースの金属コーティングは、腐食性や凝着摩耗に強いという特性から産業界で一般的に使用されているが、同時に、その毒性は常に多くの作業者の健康に長期的で深刻なリスクを与えるという結果をもたらしている。
【0018】
また、管状要素の接続要素を腐食や凝縮磨耗から保護するために、その他の亜鉛ベースの金属コーティングが開発されてきた。
【0019】
しかしながら、このように想定される金属コーティングは、様々な理由から実行可能な解決策にならないことが確認されている。
【0020】
例えば、亜鉛(Zn)およびコバルト(Co)コーティング、典型的にはコバルトの含有量が約1重量%のものは、「CMR」物質に分類されるコバルト塩の使用にその調製プロセスが基づいているので、有毒である。
【0021】
同様に、亜鉛(Zn)およびカドミウム(Cd)コーティングには、人体に有害な物質であるカドミウム塩を使用するという欠点がある。
【0022】
錫(Sn)および亜鉛(Zn)ベースのコーティング、特に錫の含有量が70重量%~80重量%で亜鉛の含有量が20重量%~30重量%のものは、有利な耐食性を提供するが、耐熱性が低く、特に高温に対する耐熱性が低く、製造コストも高い。これらの欠点は、特にこのタイプのコーティングの調製に使用される高い錫の含有量に関連している。
【0023】
亜鉛(Zn)およびマグネシウム(Mg)ベースのコーティングは、それ自体、亜鉛塩およびマグネシウム塩を溶媒の存在下で典型的には約100℃の高温で電着することによって得られるものであり、その調製プロセスを工業的規模で実施するのは困難である。
【0024】
亜鉛(Zn)および鉄(Fe)ベースのコーティング、特に鉄の含有量が10重量%超のものは、基材である鉄の赤色酸化と混同されるような赤錆を形成して酸化するという欠点がある。
【0025】
一般に、亜鉛(Zn)およびマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)および鉄(Fe)、あるいは亜鉛(Zn)およびマンガン(Mn)ベースのコーティングは、亜鉛(Zn)およびニッケル(Ni)ベースのコーティングよりもカソード保護性能が低く、したがって腐食保護性能も低い。これは、合金元素(マグネシウム、マンガン、鉄)の標準酸化還元電位がニッケルよりも低いためである。
【0026】
したがって、炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための管状要素のねじ端部を腐食および凝着磨耗から効果的に保護することができる一方で、上述した欠点を克服することができる、すなわち毒性が低減されるか最小限に抑えられたコーティングを提供する真の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、本発明の目的は、毒性が低減されるか無毒であり、合金元素の性質によって耐食および耐凝着磨耗の性能に悪影響を及ぼさないコーティングを提供することである。これにより、管状要素を別の同様のまたは異なる管状要素に接合するために使用される管状要素のねじ要素を効果的に保護することができる。
【課題を解決するための手段】
【0028】
したがって、本発明は、特に、炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための管状要素のねじ端部に関する。これは、その外周面上または内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を備える。このねじ山は、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層でコーティングされる。ここで、亜鉛(Zn)は、合金の総重量に対して重量%で優勢な元素である。
【0029】
つまり、亜鉛(Zn)が合金の総重量に対して重量%で優勢な金属元素である亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含むコーティングは、上述したような管状要素のねじ端部の少なくとも1つのねじ山を覆う。
【0030】
好ましくは、上述したような管状要素のねじ端部は、その外周面上または内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山と、好ましくは止め部および/またはシーリング座部を含む少なくとも1つの非ねじ部分と、を備える。ねじ山と非ねじ部分は、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含むコーティングで覆われている。ここで、亜鉛(Zn)は、合金の総重量に対して重量%で優勢な金属元素である。
【0031】
つまり、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、上述したような管状要素のねじ端部の少なくとも1つのねじ山を覆い、好ましくは、管状要素のねじ端部の少なくともねじ山と、好ましくは止め部および/またはシーリング座部を含む少なくとも1つの非ねじ部分とを覆う。
【0032】
本発明の意味において、本文の残りの部分では、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層は、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含むコーティングと、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの両方に対応する。したがって、本明細書において、「層」および「コーティング」という用語は、管状要素のねじ端部の少なくともねじ山を覆う、本発明による亜鉛・クロム合金堆積物を示すために、交換可能に使用されてもよい。
【0033】
本発明によれば、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層は、亜鉛(Zn)層とクロム(Cr)層の重ね合わせとは異なる。
【0034】
本発明の目的において、「亜鉛・クロム(Zn-Cr)」合金とは、亜鉛とクロムを含む混合物を意味することに留意されたい。ここで、亜鉛は卑金属、すなわち混合物中に主に存在する金属元素を表し、クロムは合金金属元素、すなわち混合物中に意図的に存在するか、または混合物に添加される金属元素を表す。
【0035】
つまり、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金中のクロムは、合金中の不純物や不要な金属元素ではない。
【0036】
すなわち、クロムは、混合物中に存在すると思われるすべての合金金属元素の中で、重量%で優勢な合金金属元素を表す。
【0037】
本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、調製プロセスで使用されるクロム塩が「CMR」物質に分類されないため、毒性がなく、作業者が深刻な健康リスクに曝されることが少ないという利点を有する。
【0038】
亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金中に存在するクロムは、三価クロムCr(III)に相当するか、三価クロムCr(III)である。
【0039】
さらに、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングによって、海洋環境、工業環境、多量の降水を受ける環境、および/または大きな温度変化を経験する環境のような非常に過酷な環境を含む、管状要素のねじ端部の腐食および凝着磨耗に対する効果的な保護を保証することができる。
【0040】
したがって、本発明に従って使用される亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、基材のカソード保護性能を効果的に提供して、良好なレベルの耐食性を付与する。
【0041】
具体的には、本発明による亜鉛・クロム金属コーティングに含まれるクロムは、自然に不動態化し、酸化クロムを形成する。これにより、腐食に対する効果的な保護を保証することができる。したがって、酸化クロムの自然な形成により、基材の腐食保護性能を強化することを目的とした追加の不動態化ステップの実施を省略することができ、工業的観点から時間の節約を提供することができる。
【0042】
また、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、優れた潤滑特性を有し、管状要素のねじ込みおよび取り外しの連続的な作業において、ねじ端部の凝着摩耗に対する効果的な保護を保証することができる。
【0043】
また、本発明に従って使用される亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、連続的なねじ込み作業中に摩耗しにくいという利点を有する。これにより、追加の耐食および防凝着摩耗保護を必要とすることなく、数回のねじ込み/取り外しサイクルの後でも、耐食および耐凝着摩耗性能を保証し続けることができる。
【0044】
つまり、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、過酷な環境下での管状要素の数回のねじ込みおよび取り外し作業を含む、長期にわたる腐食および凝着摩耗に対する保護を提供することができる。
【0045】
特に、耐摩耗性は、スクラッチ試験のような圧痕試験によって決定されてもよい。この試験は、特に負荷、特にボールをコーティングの表面上に圧力を増加させながら、コーティングの剥離、すなわちコーティングの接着破壊が生じるまで移動させることで行われる。特に、接着破壊が生じる臨界負荷量が測定される。
【0046】
したがって、本発明によるねじ端部は、上述した過酷な環境下においても、上記端部が設けられた管状要素の数回のねじ込みおよび取り外しサイクルの後を含めて、腐食および凝着摩耗に対する増大した耐性を示す。
【0047】
さらに、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、赤錆の出現に対して亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングと少なくとも同程度の性能を有する。
【0048】
また、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、白錆の出現に対して亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングよりも優れた性能を有する。
【0049】
特に、コーティングの不動態化なしで実施した塩水噴霧試験から、亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングでは白錆の出現が早く、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングではコーティングの厚さを半分にしても白錆の出現が遅いことが明らかになった。
【0050】
本発明の意味において、「亜鉛(Zn)は、合金の総重量に対して重量%で優勢な元素である」という表現は、合金の元素の中で亜鉛が重量%で最も高い含有量を有することを意味する。
【0051】
一実施形態によれば、ねじ山は、二元亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層でコーティングされる。ここで、亜鉛(Zn)は、合金の総重量に対して重量%で優勢な元素である。
【0052】
本発明によれば、「含有量」という用語は、合金中に存在するすべての元素の濃度に対する対象金属元素の重量濃度に対応する。
【0053】
つまり、「含有量」とは、混合物の全濃度に対する対象金属元素の重量濃度である。
【0054】
一実施形態によれば、亜鉛(Zn)の含有量は、亜鉛・クロム合金の総重量に対して50重量%超、好ましくは60重量%以上、より好ましくは65重量%以上である。
【0055】
好ましくは、亜鉛(Zn)の含有量は、亜鉛・クロム合金の総重量に対して70重量%~80重量%、より好ましくは70重量%~75重量%である。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、クロム(Cr)の含有量は、亜鉛・クロム合金の総重量に対して3重量%以上、好ましくは20重量%以上である。
【0057】
好ましくは、クロムは、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金中に存在する唯一の合金金属元素である。
【0058】
好ましくは、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金は、合金の総重量に対して重量%で優勢な金属元素である亜鉛と、合金金属元素であるクロム、好ましくは唯一の合金金属元素であるクロムと、任意選択で1種または複数種の金属または非金属不純物とを含む混合物である。
【0059】
本発明の目的において、「合金金属元素」とは、合金中に意図的に存在するか合金に添加された合金元素を意味することに留意されたい。
【0060】
つまり、合金金属元素は、不純物ではない。
【0061】
すなわち、本発明による合金中に存在するクロムは、不純物ではない。
【0062】
具体的には、クロムの含有量が3重量%以上である本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、Cr-Zn-17相タイプの少なくとも1つの結晶相を含み、亜鉛のみからなるコーティングと比較して耐食性が著しく向上している。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、クロム(Cr)の含有量は、亜鉛・クロム合金の総重量に対して20重量%~30重量%である。
【0064】
亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金の総重量に対してクロムの含有量が20重量%~30重量%である本発明による亜鉛・クロムコーティングは、特に亜鉛ベースのコーティング、特に亜鉛およびニッケルベースのコーティングと同等かそれ以上の優れた耐食特性を有する一方で、特に表面に密着し、首尾一貫して均質であるという利点を有する。
【0065】
したがって、本発明によるコーティングの品質は、合金の総重量に対してクロムの含有量が20重量%~30重量%の場合、クロムの含有量が厳密に20重量%未満(<20重量%)または厳密に30重量%超(>30重量%)である亜鉛およびクロムベースのコーティングと比較して、特に付着性、凝集性および耐摩耗性の点で著しく改善される。
【0066】
特に、クロムの含有量が20重量%~30重量%である亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、亜鉛のみからなるコーティング(すなわち、コーティングの総重量に対して亜鉛の含有量が100重量%であるコーティング)の5倍の耐食特性を付与するガンマ相タイプの少なくとも1つの結晶相を含む。
【0067】
この結晶相の利点は、中心が立方晶であるため、基材として使用されるある種の鋼のオーステナイト結晶格子と共通する対称性の要素をもつという事実にある。これにより、エピタキシャル成長が促進され、基材へのコーティングの密着性が向上する。
【0068】
したがって、クロムの含有量が20重量%~30重量%である本発明による亜鉛・クロムコーティングは、クロムの含有量が厳密に20重量%未満(<20重量%)または厳密に30重量%超(>30重量%)である亜鉛およびクロムベースのコーティングよりも、基材に対してより良好な密着性を示す。
【0069】
つまり、クロムの含有量が20重量%~30重量%である本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、より良質な構造を有し、強度が向上している。
【0070】
さらに、合金の総重量に対してクロムの含有量が20重量%~30重量%である亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、白錆に対して亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングよりも14倍優れた耐食特性を有する。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、クロム(Cr)の含有量は、亜鉛・クロム合金の総重量に対して25重量%~30重量%である。
【0072】
亜鉛・クロム合金の総重量に対してクロムの含有量が25重量%~30重量%である本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、亜鉛およびニッケルベースのコーティングと少なくとも同程度の負荷に耐え、同時に、特に過酷な環境において優れた耐食特性を有する。
【0073】
亜鉛・クロム合金の総重量に対してクロムの含有量が25重量%~30重量%である本発明による亜鉛・クロムコーティングは、亜鉛およびニッケルベースのコーティングよりも優れた長期耐摩耗性を有し、同時に、優れた耐食特性を有する。
【0074】
有利には、クロム(Cr)の含有量は、亜鉛・クロム合金の総重量に対して27重量%である。
【0075】
本発明の好ましい実施形態によれば、亜鉛・クロム合金の総重量に対して、亜鉛(Zn)の含有量は70重量%~80重量%であり、クロム(Cr)の含有量は20重量%~30重量%である。
【0076】
本発明の好ましい実施形態によれば、上述したような亜鉛・クロム合金を含む層は、二元亜鉛・クロム合金からなる層である。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によれば、ねじ山は、二元亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金からなる層でコーティングされ、ここで、亜鉛(Zn)は、合金の総重量に対して重量%で優勢な元素であり、クロム(Cr)の含有量は、合金の総重量に対して20重量%~30重量%である。
【0078】
本発明の好ましい実施形態によれば、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層は、電着される。
【0079】
有利には、電着(電気めっき)により、非常に高い電流密度、特に毎分7μm程度の堆積速度で、亜鉛とクロムを基板上に堆積させることができる。この堆積速度は、亜鉛・ニッケル合金から形成された層の堆積速度の3倍である。
【0080】
一実施形態によれば、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層は、厚さが4μm~20μmである。このような厚さにより、亜鉛・クロム層を、管状要素のねじ端部の少なくともねじ山に、より最適に適用することができる。つまり、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)層の堆積は、4μm~20μmの範囲の厚さの場合、より良好にねじ山に分布し、腐食性および凝着摩耗に対して改善された保護を提供する。このような厚さにより、管状要素の端部のねじ山の形状に最適に適合させることができるようになる。
【0081】
有利には、4μmから腐食保護性能が完全に達成され、20μmまで層は脆さを許容することなく緻密なままである。20μmを超えると、接続部の加工クリアランスに対して層が厚くなりすぎる恐れがある。
【0082】
有利には、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層は、亜鉛・クロム合金の総重量に対してクロムの含有量が20重量%~30重量%、好ましくは25重量%~30重量%であり、厚さが4μm~20μm、好ましくは10μm~20μmである。
【0083】
合金の層重量に対してクロムの含有量が20重量%~30重量%、好ましくは25重量%~30重量%であり、厚さが4μm~20μm、好ましくは10μm~20μmである亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、ねじ山に最適に分布し、特に付着性が良好であるという利点を有し、優れた腐食特性を有しながら、首尾一貫して均質であり、耐摩耗性を有するという利点を有する。
【0084】
有利には、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層は、三価クロム(Cr(III))を含む不動態化層でコーティングされない。
【0085】
具体的には、コーティングに含まれるクロムから酸化クロムが自然に形成されるため、腐食保護性能を強化するための追加の不動化ステップを省略することができる。
【0086】
したがって、有利には、亜鉛・クロムコーティングは、三価クロム(Cr(III))を含む不動態化層で覆われていない。
【0087】
好ましくは、管状要素のねじ端部は、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層でコーティングされた少なくとも1つの非ねじ部分をさらに備える。
【0088】
好ましくは、非ねじ部分は、止め部を備える。
【0089】
好ましくは、非ねじ部分は、シーリング座部を備える。
【0090】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層でコーティングされた非ねじ部分は、止め部および/またはシーリング座部を備える。
【0091】
好ましくは、管状要素のねじ端部は、鋼製である。
【0092】
好ましくは、上述したような管状要素の鋼製ねじ端部は、その外周面上または内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を備える。そのねじ山は、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む少なくとも1つの層でコーティングされる。ここで、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金は、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金の総重量に対してクロムの含有量が20重量%~30重量%、好ましくは25重量%~30重量%である。
【0093】
好ましくは、上述したような管状要素の鋼製ねじ端部は、その外周面上または内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を備える。そのねじ山は、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む少なくとも1つの層でコーティングされる。ここで、亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金は、亜鉛・クロム合金の総重量に対してクロムの含有量が20重量%~30重量%、好ましくは25重量%~30重量%であり、厚さが4μm~20μmである。
【0094】
一実施形態によれば、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングでコーティングされた上述したようなねじ山の表面、および任意選択で非ねじ部分の表面は、表面粗さを有してもよく、特に1.6μm~3.2μmの表面粗さ(Ra)を有してもよい。
【0095】
一実施形態によれば、好ましくは止め部および/またはシーリング座部を備え、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングでコーティングされたねじ山の表面および非ねじ部分の表面は、表面粗さを有してもよく、特に1.6μm~3.2μmの表面粗さ(Ra)を有してもよい。
【0096】
表面粗さは、サンドブラスト処理で得ることができる。
【0097】
つまり、ねじ山の表面、および場合によっては非ねじ部分の表面は、機械的処理、好ましくはサンドブラスト処理で事前に処理され得る。
【0098】
表面を粗くすることで、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの密着性と耐摩耗性を向上させることができる。
【0099】
本発明の好ましい実施形態によれば、好ましくは止め部および/またはシーリング座部を備えるねじ山の表面、および任意選択で非ねじ部分は、サンドブラスト処理によって前処理され、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、クロムの含有量が20重量%~30重量%であり、好ましくは厚さが4μm~20μmである。
【0100】
また、本発明は、上述したような管状要素の少なくとも1つのねじ端部を腐食および凝着摩耗から保護するための、上述したような亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層の使用に関する。
【0101】
また、本発明は、炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための管状要素の、上述したようなねじ端部を調製するためのプロセスに関する。このプロセスは、端部のねじ山の少なくとも表面上に、1種または複数種の亜鉛塩、1種または複数種のクロム塩、1種または複数種の電解質、および1種または複数種の界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を含む水性組成物を少なくとも1回電着するステップを含む。
【0102】
本発明によるプロセスにより、上述したような少なくとも1つの亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層を堆積することができる。これは、均質且つコンパクトであり、ねじ端部のねじ山の上に均一に分布されることができる。
【0103】
一実施形態によれば、本発明によるプロセスは、機械的処理、より好ましくはサンドブラスト処理による、コーティングされる表面の調製ステップを含んでもよい。
【0104】
機械的処理、好ましくはサンドブラスト処理によってコーティングされる表面を調製することで、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの密着性を向上させることができ、コーティングが脆くなるリスクを最小限に抑えることができる。
【0105】
一実施形態によれば、本発明によるプロセスは、機械的処理、好ましくはサンドブラスト処理による、好ましくは止め部および/またはシーリング座部を備えるねじ山の表面および非ねじ部分の表面の調製ステップを含んでもよい。
【0106】
一実施形態によれば、本発明によるプロセスは、ねじ端部のコーティングされる表面をサンドブラストするステップを含んでもよく、好ましくは、止め部および/またはシーリング座部を備えるねじ山の表面および非ねじ部分の表面をサンドブラストするステップを含んでもよい。
【0107】
一実施形態によれば、本発明によるプロセスは、コーティングされる表面をサンドブラストするステップと、ねじ山の少なくともサンドブラストされた表面上、好ましくはねじ山のサンドブラストされた表面、および好ましくは止め部および/またはシーリング座部を備える非ねじ部分のサンドブラストされた表面上に、上述した水性組成物を電着するステップを含む。
【0108】
さらに、得られる亜鉛・クロムコーティングは、均質な美的外観を有する表面を有する。
【0109】
本発明の好ましい実施形態によれば、コーティングされる表面への水性組成物の堆積速度は、毎分4μm~20μm、好ましくは毎分5μm~7μmである。
【0110】
亜鉛塩およびクロム塩は、水性組成物に可溶である。
【0111】
本発明によれば、クロム(Cr)塩は、三価クロムCr(III)塩である。
【0112】
好ましくは、電着は、少なくとも30アンペア/dm2超の電流密度で行われる。
【0113】
特に、水性組成物の十分な撹拌速度、例えばカソードにおける0.23m/sの速度により、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの外観の劣化を生じさせる可能性が高い焼き付きを引き起こすリスクなしに、電流密度を有利に増加させることができる。
【0114】
より好ましくは、電着は、30アンペア/dm2~50アンペア/dm2の電流密度で行われる。
【0115】
30アンペア/dm2を下回ると、クロムの取り込みが減少するか抑制され、得られるコーティングにはクロムを含まない領域を示す濃い灰色の斑点が生じる。
【0116】
一実施形態によれば、クロム塩と亜鉛塩の重量比は、0.8~1.4である。
【0117】
好ましくは、界面活性剤は、複数の非イオン性界面活性剤からなる群から選択される。
【0118】
好ましくは、非イオン性界面活性剤は、(ポリ)アルコキシル化脂肪アルコール、特に(ポリ)アルコキシル化C8~C40脂肪アルコール、特にポリ(エチレングリコール)オクチルエーテル、およびオキシラン、2-メチル-、オキシランとポリマー、モノ(2-ナフトニル)エーテルからなる群から選択される。
【0119】
水性組成物中に界面活性剤が存在することにより、亜鉛と共にクロムを堆積することができる。
【0120】
実際、界面活性剤を使用しない場合、得られた堆積物にはクロムが含まれないことが確認されている。これは特に、二水素の放出によってカソードのpHが上昇した結果、亜鉛の水酸化物が形成され、クロムのカソードへの拡散が阻害されるためである。このクロムの堆積がないことは、還元電位のシフト(クロムが亜鉛還元電位および/または水還元電位より低くなる)の存在によって説明できる。
【0121】
したがって、少なくとも1種の界面活性剤の存在により、拡散層におけるクロムの拡散を促進すること、および/またはクロムのカソード過電圧を低下させること、および/または水の電気分解のカソード過電圧を上昇させることができる。これにより、二水素の放出および水酸化亜鉛の生成を最小限に抑えることができる。
【0122】
好ましくは、界面活性剤の濃度は、0.3mmol/l~3mmol/lである。
【0123】
界面活性剤の濃度により、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの輝度を調整することができる。
【0124】
好ましくは、界面活性剤の濃度を増加させることにより、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの輝度を増加させることができる。
【0125】
好ましくは、亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、およびスルファミン酸亜鉛から選択されてもよい。好ましくは、亜鉛塩は、硫酸亜鉛である。
【0126】
好ましくは、クロム塩は、亜鉛塩の性質に基づいて選択され得る。硫酸亜鉛が好ましい場合、硫酸クロムが優先的に選択される。
【0127】
導電性塩/キャリア塩は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、および硫酸アンモニウム、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され得、好ましくは硫酸ナトリウムである。導電性塩/キャリア塩により、プロセス中の導電性を確保することができる。
【0128】
好ましくは、水性組成物は、1つまたは複数のアミノ酸、好ましくはグリシンをさらに含む。
【0129】
グリシンにより、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングに光沢、半光沢、または艶消しをもたらすことができる。
【0130】
水性組成物中のグリシンの含有量は、組成物の全濃度に対して50g/l~75g/lであってもよい。
【0131】
グリシンの含有量により、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの艶消し外観を調製することができる。
【0132】
好ましくは、グリシンの含有量を増加させて、界面活性剤の含有量を減少させると、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、艶消し外観になる。
【0133】
好ましくは、グリシンの含有量を減少させて、界面活性剤の含有量を増加させると、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、光沢の外観になる。
【0134】
亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングがサンドブラストされていない表面で光沢がある場合、あるいはサンドブラストされた表面で半光沢がある場合、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの機械的特性は、艶消し外観をもつ亜鉛・クロム(Zr-Cr)コーティングよりも優れている。
【0135】
水性組成物のpHは、1.5~3.5、好ましくは2~2.5であってもよい。
【0136】
実際、水性組成物のpHが特に3.5を超えると、浴中でクロム塩が析出するリスクが増大し、pH1.5~3.5の間であればそのリスクを最小限に抑えることができる。
【0137】
本発明によるプロセスは、35℃~45℃の温度で実施される。35℃を下回ると、組成物の効果が不十分な場合があり、45℃を超えると化学成分が劣化する場合がある。
【0138】
好ましくは、水性組成物は、
・ 1種または複数種の亜鉛塩、
・ 1種または複数種のクロム塩、
・ 1種または複数種の導電性塩/キャリア塩、好ましくは硫酸ナトリウム、
・ 1種または複数種の界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤、および
・ 任意選択で1種または複数種のアミノ酸、好ましくはグリシン
を含む。
【0139】
有利には、本発明によるプロセスは、三価クロム(Cr(III))を含む不動態化耐食化成層を形成する追加のステップを含まない。
【0140】
つまり、有利には、本発明によるプロセスは、亜鉛・クロム合金を含む層の堆積後に、三価クロム(Cr(III))を含む不動態化耐食化成層を形成するステップを含まない。
【0141】
本発明の別の主題は、炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための管状要素に関する。これは、その外周面上または内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を含む本発明によるねじ端部を備える。ねじ山は、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層で覆われている。ここで、亜鉛(Zn)は、合金の総重量に対して重量%で優勢な元素である。
【0142】
ねじ端部は、上述したとおりである。
【0143】
亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層は、上述したとおりである。
【0144】
管状要素は、耐食性および耐凝着摩耗が向上している。
【0145】
好ましくは、管状要素は、雄型であり、その外周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有する。
【0146】
より好ましくは、管状要素は、雄型であり、その外周面上に延在する少なくとも1つのねじ山と、好ましくは止め部および/またはシーリング座部から選択される少なくとも1つの非ねじ部分と、を有する。
【0147】
好ましくは、管状要素は、雌型であり、その内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有する。
【0148】
より好ましくは、管状要素は、雌型であり、その内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山と、好ましくは止め部および/またはシーリング座部から選択される少なくとも1つの非ねじ部分と、を有する。
【0149】
本発明によれば、管状要素には、回転軸が設けられる。
【0150】
本発明による管状要素は、特に鋼製であり、特にAPI 5CT規格に記載されている鋼、例えば0.25%未満の比率で炭素を含む鋼、および/または好ましくはISO11960およびISO13680規格に従って定義されたグレードを有する鋼、および/またはH40、J55、K55、M65、L80、C90、C95、T95、P110またはQ125炭素鋼、またはマルテンサイト系13CrまたはS13Cr鋼、または二相22Cr+25Cr鋼、または超二相25Cr鋼、またはオーステナイト系Fe27Cr鋼である。
【0151】
また、本発明は、炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための、上述したような管状要素の使用に関する。
【0152】
好ましくは、本発明は、炭化水素井を掘削および/または作業するための、上述した管状要素の使用に関連する。
【0153】
また、本発明は、炭化水素井の掘削および/または作業、石油およびガスの輸送、水素の輸送または貯蔵、炭素の回収または地熱エネルギーの回収のための管状ねじ接合部に関する。管状ねじ接合部は、その外周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有する雄型管状要素のねじ端部と、その内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有する雌型管状要素のねじ端部と、を備える。これらは互いにねじ込まれる。少なくとも1つのねじ端部は、上述したとおりである。特に、そのねじ山は、上述したような亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層で覆われている。
【0154】
特に、本発明による管状ねじ接合部は、上述したような過酷な環境下などにおいて耐食性および耐凝着摩耗が特に優れている。
【0155】
好ましくは、2つのねじ端部は、上述したとおりである。
【0156】
本発明の一態様によれば、雄型管状要素のねじ端部は、その外周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有し、これは、上述したような本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層で覆われている。
【0157】
本発明の一態様によれば、雌型管状要素のねじ端部は、その内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有し、これは、上述したような本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層で覆われている
本発明のさらに別の態様によれば、雄型管状要素のねじ端部は、その外周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有し、これは、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層で覆われており、雌型管状要素のねじ端部は、その内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山を有し、これは、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層で覆われている。
【0158】
好ましくは、管状ねじ接合部は、その外周面上に延在する少なくとも1つのねじ山および金属間干渉をもつ少なくとも1つの非ねじ部分を有する雄型管状要素のねじ端部と、その内周面上に延在する少なくとも1つのねじ山および金属間干渉をもつ止め部および/またはシーリング座部から選択される少なくとも1つの非ねじ部分を有する雌型管状要素のねじ端部と、を備える。ねじ山および非ねじ部分は、上述したような本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む層で覆われている。
【0159】
本明細書の文脈において、範囲を表す用語は、特に明示されない限り、示されている範囲の値を含むものとする。
【0160】
また、本明細書で使用される「少なくとも1つ」という表現は、「1つまたは複数」と同等の表現である。
【図面の簡単な説明】
【0161】
以下、添付の図面を参照して、本発明の特徴を詳細に説明する。
【
図1】2つの管状要素のねじ込みによる接合から生じる接合部の模式図である。
【
図3】組み立てられた2つの管状要素のねじ山の協働関係を詳細に示す図である。
【
図4】本発明による亜鉛・クロムコーティングで覆われている本発明による接続要素(ねじ山)を詳細に示す図である。
【
図5】塩水噴霧試験に曝した後の、亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングの表面および本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの表面への強度2および強度3の白錆の層の出現時間を比較した図である。
【
図6】塩水噴霧試験に曝した後、亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングの表面および本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングの表面を、強度2の白錆の層が完全に覆うまでの時間を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0162】
図1に示すねじ接合部は、回転軸9および雄端部1を有する第1の管状要素と、回転軸9および雌端部2を有する第2の管状要素と、を備える。2つの端部1および2の各々は、ねじ接合部の軸9に対して半径方向に向いた端部面で終端しており、2つの要素のねじ込みによる相互組立てのために互いに協働するねじ部分3および4をそれぞれ有する。ねじ部分3および4は、台形タイプのねじ山であってもよく、別のタイプのねじ山であってもよい。図に示す実施例において、ねじ部分は、ねじ部分のそれぞれの端部において先細り形状のねじ山を有する。これらの先細り形状は、ねじ部分の軸方向範囲の一部にわたって延在している。特に、先細り形状を有するねじ部分の一部10は、相補的なねじ山と協働しない。
【0163】
さらに、
図2に示すように、2つのねじ要素が互いにねじ込まれて組み立てられた後に互いに液密に密着するように意図された金属間シーリング面(座部)5,6が、ねじ部分3,4の近傍の雄端部および雌端部にそれぞれ形成される。最後に、雄端部1は、2つの端部が互いにねじ込まれたときに雌端部2に形成された対応する表面8に当接する端部面7で終端する。表面7および8は、止め部と呼ばれる。
【0164】
図3には、ねじ部分のねじ山が詳細に示されている。ねじ山の各々は、接続軸10の法線Nに対して-5°~+5°の範囲の角度12をなす負荷フランク11を備える。負荷フランクは、頂部13を介して組立てフランク14に接続される。特に、図に示すように、雄ねじ部分3の負荷フランクは、組み立ての最終的な位置において雌ねじ部分4の対応する負荷フランクと接触するように接続される。
【0165】
図4は、管状要素の雄端部1を示している。ここで、ねじ部分3およびシーリング面5(座部)は、本発明によるコーティング15、すなわち、亜鉛(Zn)が合金の総重量に対して重量%で優勢な元素である亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む亜鉛・クロムコーティングで覆われている。
【0166】
好ましくは、コーティング15は、合金の総重量に対して、クロムの含有量が20重量%~30重量%、より好ましくは25重量%~30重量%であり、亜鉛の含有量が70重量%~80重量%、より好ましくは70重量%~75重量%である。
【0167】
[例示的な実施形態]
L80グレードの炭素鋼製のねじ山に、上述したように、合金の総重量に対してクロムの含有量が27重量%である亜鉛・クロム(Zn-Cr)合金を含む半光沢金属コーティングを電気めっきした。
【0168】
半光沢亜鉛・クロムコーティングを、グリシンを75g/l含む水性組成物から得た。
【0169】
亜鉛・クロムコーティングと、亜鉛が重量%で優勢な元素である亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングとを比較した。ここで、ニッケルの含有量は、10重量%~18重量%であった。重量%を、合金の総重量に対して計算した。
【0170】
コーティングの剥離(塑性変形)が観察される臨界負荷量、初期の摩擦係数、およびコーティングが耐えることができるサイクル数を決定するために、トライボロジー試験(スクラッチ試験およびバウデン式試験)をコーティングに実施した。
【0171】
また、コーティングの耐食性能を決定するために、塩水噴霧試験をコーティングに実施した。
【0172】
[スクラッチ試験]
実験条件としては、タングステンカーバイトボールを使用し、10Nから260Nの範囲で負荷を増加させながら、ボールの移動速度4.20mm/s、移動時間2.38秒、ボールサイズ5mm、軌道長さ10mmでコーティングに適用した。
【0173】
スクラッチ試験の結果を表1に示す。
【0174】
【0175】
表1に示すスクラッチ試験の結果は、半光沢亜鉛・クロムコーティングが、合金の総重量に対してニッケルの含有量が10重量%~18重量%の亜鉛・ニッケルコーティングが耐えられる負荷と少なくとも同程度の負荷に耐えたことを示している。
【0176】
[バウデン式試験]
コーティングの表面の潤滑特性(摩擦係数)を評価するために、市販のバウデン摩擦試験機(神鋼造機株式会社)を使用した。バウデン摩擦試験機は、鋼板上に形成されたコーティング上を、タングステンカーバイトボールを直線状に往復運動させながら、ボールに負荷を加えるものである。
【0177】
摩擦係数を、そのときの摩擦力と圧力負荷で測定した。
【0178】
[手順]
タングステンカーバイトボールをコーティングに当て、30Nと100Nの押し付け負荷で、ボールの移動速度4.20mm/s、持続時間2.38秒、ボールサイズ5mm、軌道長さ10mmで移動させた。
【0179】
コーティングの潤滑特性を評価するために、初期摩擦係数を決定した。
【0180】
各コーティングの耐摩耗性を評価するために、各コーティングについてサイクル数(ボールが表面を通過する回数)を測定した。
【0181】
その結果を表2および表3に示す。
【0182】
【0183】
表2に示すバウデン式試験の結果は、30Nの負荷について、本発明による亜鉛・クロムコーティングが、亜鉛・ニッケルコーティングよりも初期摩擦係数が低いことを示している。
【0184】
また、亜鉛・クロムコーティングは、30Nの負荷について、亜鉛・ニッケルコーティングと同程度の耐久性を示した。
【0185】
[100Nの負荷でのバウデン式試験結果]
【表3】
【0186】
表3に示す、100Nの負荷で実施されたバウデン式試験の結果は、本発明による亜鉛・クロムコーティングが、亜鉛・ニッケルコーティングよりも耐久性が高いことを示している。
【0187】
その結果、本発明による亜鉛・クロムコーティングは、ニッケルの含有量が10重量%~18重量%である亜鉛・ニッケルコーティングよりも良好な耐摩耗性を有していた。
【0188】
すなわち、負荷が増加するほど、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングと比較して、改善された耐久性、すなわち高い耐摩耗性を示していた。
【0189】
[塩水噴霧試験]
腐食性試験では、気候室内で次の条件で中性塩水噴霧試験を実施した:35℃、25℃で密度1.029~1.036、25℃でpH6.5~7.2の50g/l食塩水を用い、平均速度1.5ml/hで採取した。
【0190】
この試験では、赤錆と白錆の出現を評価した。
【0191】
[耐食性能:赤錆の出現]
赤錆の出現を、全表面積に対する錆びた表面積の割合に対応する錆の度合いReを昇順に決定することで評価した。
【0192】
この場合、赤錆のない無傷のサンプルは、ISO9227規格のクラスRe0を満たす必要がある。
【0193】
その結果を表4に示す。
【0194】
【0195】
試験後の錆の度合いは、Re0~Re2の昇順で、全表面積に対する錆びた表面積に対応する。
【0196】
この錆の度合いによれば、
・ Re0=全表面積の0%の錆、
・ Re1=全表面積の0.05%の錆、
・ Re2=全表面積の0.5%の錆、
・ Re6=全表面積の40%~50%の錆
となった。
【0197】
表4は、亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングが、亜鉛・ニッケルコーティングと少なくとも同程度に赤錆の出現を抑制できることを示している。
【0198】
[耐食性能:白錆の出現]
白錆の存在は、コーティングの酸化、特に亜鉛の酸化に対応しており、塩水噴霧に曝した後、その出現時間とコーティングの表面を完全に覆うまでの時間とを測定して、白錆を評価した。
【0199】
塩水噴霧に曝した後、コーティングを覆う白錆の層の強度を、昇順で以下のように分類した。
・ 強度1の白錆:薄くて軽い白錆の層に相当し、ブルームとも呼ばれる。
・ 強度2の白錆:結晶の形状をもつ白錆の層に相当する。
・ 強度3の白錆:非常に緻密な白錆の層に相当する。
【0200】
[白錆の出現時間]
図5は、塩水噴霧試験に曝した後の、亜鉛・ニッケルコーティング[Zn-Ni、ニッケル含有量14重量%、厚さ10μm]の表面および亜鉛・クロムコーティング[Zn-Cr、クロム含有量27重量%、厚さ5μm]の表面への強度2および強度3の白錆の層の出現時間を比較する図である。
【0201】
図5は、亜鉛・ニッケルコーティング[Zn-Ni、ニッケル含有量14重量%、厚さ10μm]の表面では、24時間後から強度2の白錆の層が急速に出現したのに対し、亜鉛・クロムコーティング[Zn-Cr、クロム含有量27重量%、厚さ5μm]の表面では、170時間後に初めて強度2の白錆の層が出現したことを示している。
【0202】
また、
図5は、亜鉛・ニッケルコーティング[Zn-Ni、ニッケル含有量14重量%、厚さ10μm]では、24時間後から強度3の白錆の層が急速に出現したのに対し、亜鉛・クロムコーティング[Zn-Cr、クロム含有量27重量%、厚さ5μm]では、336時間後に初めて強度3白錆の層が出現したことを示している。
【0203】
[コーティングの表面を白錆が完全に覆うまでの時間]
図6は、亜鉛・ニッケルコーティング[Zn-Ni、ニッケル含有量14重量%、厚さ10μm]および亜鉛・クロムコーティング[Zn-Cr、クロム含有量27重量%、厚さ5μm]の表面を、強度2の白錆の層が完全に覆うまでの時間を比較した結果を示している。
【0204】
図6は、亜鉛・ニッケルコーティング[Zn-Ni、ニッケル含有量14重量%、厚さ10μm]の表面を強度2の白錆の層が完全に覆うまでの時間が24時間であったのに対し、亜鉛・クロムコーティング[Zn-Cr、クロム含有量27重量%、厚さ5μm]の表面を同じ層が完全に覆うまでの時間が336時間であったことを示している。
【0205】
[結論]
以上、本発明による亜鉛・クロム(Zn-Cr)コーティングは、亜鉛・ニッケル(Zn-Ni)コーティングと比較して、白錆の外観の点でより優れた性能を有することが示された。
【0206】
その結果、亜鉛・クロムコーティングの後に堆積された層の密着性が向上した。