IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社J-QuAD DYNAMICSの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7737914道路勾配推定装置および道路勾配推定方法
<>
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図1
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図2
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図3
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図4
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図5
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図6
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図7
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図8
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図9
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図10
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図11
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図12
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図13
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図14
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図15
  • 特許-道路勾配推定装置および道路勾配推定方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-03
(45)【発行日】2025-09-11
(54)【発明の名称】道路勾配推定装置および道路勾配推定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20250904BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20250904BHJP
   G06V 20/56 20220101ALI20250904BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
G01B11/26 H
G06V20/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022011222
(22)【出願日】2022-01-27
(65)【公開番号】P2023109612
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2024-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(73)【特許権者】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山東 友樹
(72)【発明者】
【氏名】寺田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直広
【審査官】岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-254957(JP,A)
【文献】特開2016-172531(JP,A)
【文献】特開2017-090548(JP,A)
【文献】特開2019-147436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G01B 11/00-11/30
G06V 20/56-20/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中の道路の勾配を推定する道路勾配推定装置であって、
前記車両の現在位置を逐次取得する現在位置取得部(121)と、
前記道路の長手方向に沿って存在している長手方向存在物の座標を含む地図データから、前記車両の現在位置よりも前記車両の進行方向前方の所定範囲に存在する前記長手方向存在物の座標を抽出する座標抽出部(126)と、
前記座標抽出部が抽出した前記座標に基づいて前記道路の長手方向の形状を表す道路形状線を道路幅方向に複数決定できた場合、複数の前記道路形状線から決定される1対以上の前記道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値を、距離変化基準値として決定する基準決定部(127)と、
前記車両に搭載される物体検出センサが検出した前記長手方向存在物の位置に基づいて決定できる前記道路形状線である検出道路形状線(130)の座標を、道路勾配を互いに異ならせた複数種類の候補道路面(141)上の座標に変換する座標変換部(124)と、
前記距離変化基準値を決定した前記道路形状線に対応する1対以上の前記検出道路形状線がある場合に、前記座標変換部による座標変換後の前記検出道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値である距離変化検出値を、前記候補道路面別に決定する検出値決定部(125)と、
前記検出値決定部が決定した複数の前記距離変化検出値のうち、前記距離変化基準値に最も近い前記距離変化検出値に対応する前記道路勾配を、前記車両が走行する道路の勾配であると推定する道路勾配推定部(128)と、を備える道路勾配推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の道路勾配推定装置であって、
前記長手方向存在物には、実線の車線区画線および破線の車線区画線が含まれる、道路勾配推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の道路勾配推定装置であって、
前記長手方向存在物に、前記道路の長手方向に沿って配置された立体物が含まれる、道路勾配推定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の道路勾配推定装置であって、
前記長手方向存在物に、前記車線区画線よりも前記道路の幅方向外側において、前記道路の長手方向に沿って存在する平面状物が含まれる、道路勾配推定装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の道路勾配推定装置であって、
前記基準決定部は、2対以上の前記道路形状線を用い、2つ以上の前記距離変化基準値を決定し、
前記検出値決定部は、前記距離変化基準値に対応する2つ以上の前記距離変化検出値を、前記候補道路面別に決定し、
前記道路勾配推定部は、2つ以上の前記距離変化基準値および前記距離変化検出値に基づいて、前記車両が走行する道路の勾配を推定する、道路勾配推定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の道路勾配推定装置であって、
前記基準決定部は、少なくとも1つの前記道路形状線を2つ以上の前記距離変化基準値の決定に用い、
前記検出値決定部は、少なくとも1つの前記検出道路形状線を2つ以上の前記距離変化検出値の決定に用いる、道路勾配推定装置。
【請求項7】
車両が走行中の道路の勾配を推定する道路勾配推定方法であって、
前記車両の現在位置を逐次取得し(S1)、
前記道路の長手方向に沿って存在している長手方向存在物の座標を含む地図データから、前記車両の現在位置よりも前記車両の進行方向前方の所定範囲に存在する前記長手方向存在物の座標を抽出し(S6)、
抽出した前記座標に基づいて前記道路の長手方向の形状を表す道路形状線を道路幅方向に複数決定できた場合、複数の前記道路形状線から決定される1対以上の前記道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値を、距離変化基準値として決定し(S8)、
前記車両に搭載される物体検出センサ(110)が検出した前記長手方向存在物の位置に基づいて決定できる前記道路形状線である検出道路形状線(130)の座標を、道路勾配を互いに異ならせた複数種類の候補道路面(141)上の座標に変換し(S91、S92)、
前記距離変化基準値を決定した前記道路形状線に対応する1対以上の前記検出道路形状線がある場合に、座標変換後の前記検出道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値である距離変化検出値を、前記候補道路面別に決定し(S93)、
複数の前記距離変化検出値のうち、前記距離変化基準値に最も近い距離変化検出値に対応する前記道路勾配を、前記車両が走行する道路の勾配であると推定する(S10、S11)、道路勾配推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
センサにより検出した情報を用いて道路の勾配を推定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている道路勾配推定装置は、車両前方の道路をカメラにより撮像し、撮像した画像に破線の車線区画線が含まれているとき、破線の端点を複数検出する。そして、道路長手方向に隣合う端点間の距離と、事前に求めた隣合う端点間の距離とに基づいて、端点間の勾配を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-255703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、道路勾配を求めるために、車線区画線の端点を検出する必要がある。したがって、車両が走行している位置には車線区画線がない場合、および、車線区画線はあるが、破線ではなく実線である場合には、特許文献1に開示された技術では道路勾配を推定できない。よって、特許文献1に開示された技術は、道路勾配を推定できない位置が多い。
【0005】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、道路勾配を推定できない位置を少なくできる道路勾配推定装置および道路勾配推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的態様との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するための道路勾配推定装置に係る1つの開示は、
車両が走行中の道路の勾配を推定する道路勾配推定装置であって、
車両の現在位置を逐次取得する現在位置取得部(121)と、
道路の長手方向に沿って存在している長手方向存在物の座標を含む地図データから、車両の現在位置よりも車両の進行方向前方の所定範囲に存在する長手方向存在物の座標を抽出する座標抽出部(126)と、
座標抽出部が抽出した座標に基づいて道路の長手方向の形状を表す道路形状線を道路幅方向に複数決定できた場合、複数の道路形状線から決定される1対以上の道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値を、距離変化基準値として決定する基準決定部(127)と、
車両に搭載される物体検出センサが検出した長手方向存在物の位置に基づいて決定できる道路形状線である検出道路形状線(130)の座標を、道路勾配を互いに異ならせた複数種類の候補道路面(141)上の座標に変換する座標変換部(124)と、
距離変化基準値を決定した道路形状線に対応する1対以上の検出道路形状線がある場合に、座標変換部による座標変換後の検出道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値である距離変化検出値を、候補道路面別に決定する検出値決定部(125)と、
検出値決定部が決定した複数の距離変化検出値のうち、距離変化基準値に最も近い距離変化検出値に対応する道路勾配を、車両が走行する道路の勾配であると推定する道路勾配推定部(128)と、を備える道路勾配推定装置である。
【0008】
この道路勾配推定装置は、物体検出センサで検出した長手方向存在物の位置に基づいて決定できる検出道路形状線の座標を、複数種類の候補道路面上の座標に変換する。複数種類の候補道路面は、道路勾配を互いに異ならせた面である。
【0009】
検出道路形状線間の距離の道路長手方向における変化の程度は、道路勾配により変化する。たとえば、2つの道路形状線が互いに平行に延びていても、道路が上り勾配であるほど、1つの検出道路形状線と他の検出道路形状線は、遠方において道路幅方向に互いに接近する。
【0010】
したがって、検出道路形状線を、車両が走行している道路と同じ道路勾配の候補道路面上に座標変換すれば、2つの検出道路形状線間の距離の道路長手方向変化は、実際の道路にある長手方向存在物から決定した道路形状線間の距離の道路長手方向変化と一致する。一方、検出道路形状線を、車両が走行している道路とは異なる道路勾配の候補道路面上に座標変換すると、2つの検出道路形状線間の距離の道路長手方向変化は、実際の道路にある長手方向存在物から決定した道路形状線間の距離の道路長手方向変化と一致しない。
【0011】
この道路勾配推定装置では、実際の道路のデータとして長手方向存在物の座標を含む地図データを用い、地図データから長手方向存在物の座標を抽出し、その座標に基づいて道路形状線を決定する。道路形状線が複数検出できた場合には、複数の道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値を距離変化基準値とする。
【0012】
検出値決定部は、距離変化基準値を決定した道路形状線に対応する1対以上の検出道路形状線がある場合に、座標変換後の検出道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値である距離変化検出値を候補道路面別に決定する。そして、複数の距離変化検出値のうち、距離変化基準値に最も近い距離変化検出値に対応する道路勾配を、車両が走行する道路の勾配であると推定する。
【0013】
このようにして道路勾配を推定するので、この道路勾配推定装置は、検出道路形状線を決定できる長手方向存在物を物体検出センサにより検出できれば、道路勾配を推定できる可能性がある。よって、この道路勾配推定装置は、道路勾配が推定できない位置を少なくできる。
【0014】
上記目的を達成するための道路勾配推定方法に係る1つの開示は、
車両が走行中の道路の勾配を推定する道路勾配推定方法であって、
車両の現在位置を逐次取得し(S1)、
道路の長手方向に沿って存在している長手方向存在物の座標を含む地図データから、車両の現在位置よりも車両の進行方向前方の所定範囲に存在する長手方向存在物の座標を抽出し(S6)、
抽出した座標に基づいて道路の長手方向の形状を表す道路形状線を道路幅方向に複数決定できた場合、複数の道路形状線から決定される1対以上の道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値を、距離変化基準値として決定し(S8)、
車両に搭載される物体検出センサ(110)が検出した長手方向存在物の位置に基づいて決定できる道路形状線である検出道路形状線(130)の座標を、道路勾配を互いに異ならせた複数種類の候補道路面(141)上の座標に変換し(S91、S92)、
距離変化基準値を決定した道路形状線に対応する1対以上の検出道路形状線がある場合に、座標変換後の検出道路形状線間の距離の道路長手方向変化を示す値である距離変化検出値を、候補道路面別に決定し(S93)、
複数の距離変化検出値のうち、距離変化基準値に最も近い距離変化検出値に対応する道路勾配を、車両が走行する道路の勾配であると推定する(S10、S11)、道路勾配推定方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両制御装置の構成を示す図。
図2】車線区画線を例示する図。
図3】ECUが実現する機能を示すブロック図。
図4】車線区画線をもとに決定した検出道路形状線を示す図。
図5】ポールをもとに決定した検出道路形状線を示す図。
図6】座標変換の概念図。
図7】座標変換に使用する式を示す図。
図8】道路面の高さzを表す式を示す図。
図9】道路面の高さzを表す式を示す図。
図10】座標変換において道路勾配の違いによるx軸方向の長さの違いを示す図。
図11】座標変換後の検出道路形状線を示す図。
図12】距離変化検出値の決定方法を説明する図。
図13】1対の検出道路形状線の成す角θを説明する図。
図14】地図道路形状線の一例を示す図。
図15】道路勾配を推定する処理の流れを示す図。
図16図15のS9の詳細処理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
〔全体構成〕
図1は、道路勾配推定装置として機能するECU120を含む車両制御装置100の構成を示す図である。車両制御装置100は車両10に搭載される。
【0018】
車両制御装置100は、GNSS受信機101、車速センサ102、加速度センサ103、通信装置104、地図データ記憶部105、物体検出センサ110、およびECU120を含んでいる。
【0019】
GNSS受信機101は、衛星航法システムであるGNSS(Global Navigation Satellite System)が備える航法衛星が送信する航法信号を受信し、受信した航法信号に基づいて現在位置を逐次算出する。車速センサ102は、車両10の速度である車速を逐次検出する。加速度センサ103は、車両10に生じる加速度を逐次検出する。
【0020】
通信装置104は、データセンタ200に備えられた通信装置210と無線通信する。通信装置104は、データセンタ200から無線通信により高精度地図データを受信するための装置である。
【0021】
地図データ記憶部105は、書き込み可能な不揮発性の記憶部であり、高精度地図データが記憶されている。地図データ記憶部105に記憶された高精度地図データは、データセンタ200から送信される高精度地図データにより更新される。
【0022】
物体検出センサ110は、車両10の周辺に存在する種々の物体を検出するセンサである。物体検出センサ110は、長手方向存在物を検出できるセンサである。図1には、物体検出センサ110として、カメラセンサ111、ミリ波レーダ112、LiDAR113が示されている。ただし、これらのうちいずれか1つまたは2つが備えられていてもよい。また、これら以外の他の物体検出センサ110が備えられていてもよい。
【0023】
長手方向存在物は、道路の長手方向に沿って存在している物体である。ここでの物体には立体物だけでなく平面状物も含まれる。平面状物は、道路面140からほとんど突き出ていない物体を意味する。長手方向存在物かつ平面状物である物体には、車線区画線20が含まれる。
【0024】
車線区画線20は、路面に描かれており、車線の幅方向境界を示す線である。図2に車線区画線20を例示している。図2には、車線区画線20として、道路端を示す実線の車線区画線21、破線の車線区画線22、車線の増加に伴い道路幅方向に曲がっている実線の車線区画線23が示されている。実線である車線区画線21、破線である車線区画線22ともに、道路長手方向に沿っているので、これらは長手方向存在物である。また、部分的に道路幅方向に曲がっている車線区画線23も、全体としては、道路の長手方向に沿っており、長手方向存在物である。図2には示していないが、車線区画線20は、その色によらず、長手方向存在物である。
【0025】
車線区画線以外にも、長手方向存在物かつ平面状物である物体を図2に示している。道路端に配置された側溝31あるいは側溝31を塞いでいる蓋32も、ある程度、道路長手方向に連続すれば長手方向存在物である。どの程度、道路長手方向に連続する必要があるかは、道路勾配を推定する精度に基づいて適宜決定できる。舗装されている道路の境界33も長手方向存在物である。
【0026】
長手方向存在物である立体物の例を説明する。長手方向存在物である立体物は、たとえば、ガードレール、縁石である。長手方向存在物は、道路の長手方向に沿って存在していればよく、道路の長手方向に繋がって存在している必要はない。車道と歩道とを区別するため、あるいは、隣接する2つの車線を区別するために一定間隔で配置されているポール134(図5参照)も長手方向存在物である。
【0027】
物体検出センサ110は、具体的な長手方向存在物を全部検出できる必要はなく、少なくとも1種類の具体的な長手方向存在物が検出できればよい。ただし、物体検出センサ110は、複数種類の長手方向存在物を検出できることが好ましい。特に、車線区画線20を含む複数種類の長手方向存在物を検出できることが好ましい。車線区画線20は、多くの位置で存在している可能性が高いからである。
【0028】
カメラセンサ111、ミリ波レーダ112、LiDAR113は、いずれも、長手方向存在物が検出できれば、具体的な構成に限定はない。
【0029】
ECU120は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、ECU120は、プロセッサ、不揮発性メモリ、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。不揮発性メモリには、汎用的なコンピュータをECU120として作動させるための道路勾配推定プログラムが格納されている。プロセッサが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、不揮発性メモリに記憶された道路勾配推定プログラムを実行することで、ECU120は、後述する図3に示す各部として作動する。図3に示す各部の作動が実行されることは、道路勾配推定プログラムに対応する道路勾配推定方法が実行されることを意味する。
【0030】
データセンタ200は、通信装置210と、地図データ記憶部220と、地図データ取得部230とを備える。通信装置210は、車両10に備えられた通信装置104と無線通信する。通信装置210は、車両10へ高精度地図データを送信するための装置である。
【0031】
地図データ記憶部220は、高精度地図データを記憶している記憶部である。高精度地図データは、道路形状を示すデータに加えて、具体的な長手方向存在物の1種類、好ましくは2種類以上の座標を含んでいる。たとえば、高精度地図データは、車線区画線20を再現可能な程度に、所定間隔ごとの車線区画線20の座標を含んでいる。高精度地図データは、少なくとも一部の地域に対して三次元点群データを含んでいてもよい。また、少なくとも一部の地域を、座標と座標間を連結する連結線とを備えるベクトルデータにより表現していてもよい。
【0032】
高精度地図データは、側溝31の位置を示す複数の座標、側溝31の蓋32の位置を示す複数の座標、道路の境界33の位置を所定間隔ごとに示す複数の座標を含んでいてもよい。高精度地図データは、現実世界に存在する一部の立体物の座標を含んでいてもよい。立体物は地物と呼ばれることもある。
【0033】
地図データ取得部230は、地図データ記憶部220に記憶されている高精度地図データを逐次更新する。また、地図データ取得部230は、車両10の現在位置周辺の高精度地図データを地図データ記憶部220から取得し、取得した高精度地図データを、通信装置210から、車両10に搭載された通信装置104に送信する。
【0034】
〔ECU120の機能〕
図3にECU120が実現する機能を示す。現在位置取得部121は、GNSS受信機101が検出した現在位置を逐次取得する。
【0035】
地図データ処理部122は、現在位置取得部121が取得した現在位置を参照して、現在位置を基準として定まる所定範囲の高精度地図データが地図データ記憶部105に記憶されているかを判断する。必要な範囲の高精度地図データが地図データ記憶部105に記憶されていない場合、必要な範囲の高精度地図データを要求する信号を通信装置104からデータセンタ200に送信する。データセンタ200から高精度地図データが送信されてきた場合、地図データ処理部122は、地図データ記憶部105に記憶されている高精度地図データを更新する。
【0036】
物体認識部123は、物体検出センサ110からセンサ信号を取得し、そのセンサ信号に基づいて、車両10の周辺に存在する種々の物体を認識する。認識する物体には、車両10の走行に障害となる障害物に加えて、長手方向存在物が含まれる。
【0037】
座標変換部124は、物体認識部123が認識した長手方向存在物の位置に基づいて道路形状線を決定する。ここで決定する道路形状線を検出道路形状線130とする。長手方向存在物が車線区画線20であれば、認識した車線区画線20に沿った線、たとえば、車線区画線20の幅方向中央を通る線を検出道路形状線130とする。図4には、検出道路形状線130を示している。図4は、カメラセンサ111により撮影した画像(以下、カメラ画像)を概念的に示す図である。図4では、検出道路形状線130と車線区画線20との関係を示すために、検出道路形状線130を示している。実際のカメラ画像に検出道路形状線130が表示されるわけではない。
【0038】
図4では、検出道路形状線130を、道路形状点131と、互いに隣接する道路形状点131を結ぶ線分とにより示している。検出道路形状線130は、このように、点と線とにより表現することができる。また、これとは異なり、図4に示す道路形状点131よりも密にして、道路形状点131の集合により検出道路形状線130を表してもよい。
【0039】
図5には、図4とは別の検出道路形状線130と道路形状点131を示している。図5では、ポール134を長手方向存在物として検出道路形状線130を決定している。図5には、ポール134の下端を道路形状点131とする検出道路形状線130と、ポール134の上端を道路形状点131とする検出道路形状線130とが示されている。長手方向存在物が立体物である場合、立体物のどの高さを検出道路形状線130が通ってもよい。
【0040】
座標変換部124は、さらに、検出道路形状線130の座標を、道路勾配を異ならせた複数種類の候補道路面141上の座標に変換する。候補道路面141は、車両10が走行している道路面140であると推定する候補である。図6に座標変換の概念図を示す。カメラセンサ111により検出道路形状線130を検出した場合、検出道路形状線130の座標はカメラ座標系になる。カメラ座標系は(u,v、1)と表すことができる。座標変換部124は、カメラ座標系すなわち物体検出センサ座標系の座標を、車両座標系(x,y,z)に変換する。車両座標系は、車両10の所定部位たとえば車両先端を原点とする座標系であり、車両10の上下方向をz軸方向、車両10の前後方向をx軸方向、車両10の幅方向をy軸方向とする。
【0041】
x軸およびy軸を含む平面を車両水平面とする。車両10が走行している道路面140は、車両水平面に平行とは限らない。図6に示す例では、道路面140の高さzは、z=ax+bにより変化するとしている。aは路面勾配を表す係数であり、bは道路面140から車両座標系の原点までの高さを表す定数である。
【0042】
図7に示す式は、カメラ座標系の座標(u,v,1)と車両座標系の座標(x,y,z)との関係を示す式である。この式において、右辺最初の行列は、カメラ内部パラメータであり、fはx軸方向の焦点距離、fはy軸方向の焦点距離、c、cは画像中心座標である。右辺の2番目の行列はカメラ座標系を車両座標系に変換する並進と回転のパラメータである。座標変換部124は、図7に例示したような事前に設定した変換式を用いて、検出道路形状線130の座標を、道路勾配を異ならせた複数種類の候補道路面141上の座標に変換する。道路勾配は、図7においてaにより示すことができる。したがって、座標変換部124は、aを事前に設定された所定値ずつ変化させつつ、検出道路形状線130の座標を車両座標系の座標に変換する。
【0043】
図6図7では、道路面140、候補道路面141を道路勾配が一定の1つの平面と仮定して、z=ax+bとしている。しかし、道路面140、候補道路面141の高さzを示す式は1つの一次式である必要はない。たとえば、図8に示す多項式により候補道路面141の高さzを表してもよい。また、図9に示すように、区間ごとに異なる式により候補道路面141の高さzを表してもよい。
【0044】
図10には、道路勾配の違いによる座標変換後のx軸方向の長さの違いを示している。図10では、道路勾配が異なる3つの候補道路面141a、141b、141cを示している。各候補道路面141において実線で示す部分は、座標変換後の検出道路形状線130を示す。図10から分かるように、道路勾配が上り勾配であって急であるほど、検出道路形状線130はx軸方向の長さが短くなり、道路勾配が下り勾配であって急であるほど、検出道路形状線130はx軸方向に広がる。道路勾配と検出道路形状線130の長さとの関係を示しやすいため、図10は、xz平面を示している。しかし、道路勾配が下り勾配であって急であるほど、座標変換後の検出道路形状線130が広がることはy座標についても同じである。
【0045】
図11には、座標変換後の検出道路形状線130を候補道路面141別に示している。図11に示すように、変換前の検出道路形状線130が同じであっても、座標変換後の1対の検出道路形状線130間の道路幅方向の距離が、道路長手方向に車両10から離れるに従って広がる程度は、路面勾配に応じて異なる。
【0046】
説明を図3に戻す。検出値決定部125は、検出道路形状線130が1対以上ある場合、座標変換後の1対または2対以上の検出道路形状線130に対し、検出道路形状線130の間の道路幅方向の距離が道路長手方向において変化する程度を示す値を決定する。以下、この値を距離変化検出値とする。
【0047】
図12を用いて距離変化検出値を説明する。図12は、図11の候補道路面141cに示した1対の検出道路形状線130である。ただし、1対の検出道路形状線130が交差するように、それら1対の検出道路形状線130を延長している。検出道路形状線130の間の道路幅方向の距離は、1対の検出道路形状線130間のy軸方向の距離dyである。x軸座標が変化すると、この距離dyがどのように変化するかを示す値が、距離変化検出値である。
【0048】
距離変化検出値の一例は、図12に示す、1対の検出道路形状線130の成す角θである。検出道路形状線130の形状が分かり、この成す角θが分かれば、距離dyの変化が分かる。したがって、成す角θは距離変化検出値である。
【0049】
図13に示すように、成す角θは、x座標に対する距離dyの関係を示す関係線の傾きである。現実の道路は直線ばかりではない。したがって、検出道路形状線130は、曲線であったり、複数の直線と曲線の組み合わせであったりする。検出道路形状線130が、曲線であったり、複数の直線と曲線の組み合わせであったりしても、x座標と距離dyとの組み合わせを離散的に抽出することはできる。離散的に抽出したx座標と距離dyとの組み合わせをx-dy平面にプロットし、プロットした点を直線で近似すれば、その直線の傾きを決定できる。したがって、検出道路形状線130が、曲線であったり、複数の直線と曲線の組み合わせであったりしても、1対の検出道路形状線130の成す角θを決定できる。なお、距離変化検出値は、1対の検出道路形状線130の成す角θに限られない。距離dyのx座標別の数値群を距離変化検出値としてもよい。
【0050】
距離変化検出値は、後述する距離変化基準値と比較する値である。したがって、検出値決定部125は、対応する距離変化基準値が算出できる場合に限り、距離変化検出値を決定するようにしてもよい。距離変化検出値と距離変化基準値との対応については、後述する。
【0051】
説明を図3に戻す。座標抽出部126は、地図データ記憶部105に記憶されている高精度地図データから、車両10の現在位置よりも車両10の進行方向前方の所定範囲に存在する長手方向存在物の座標を抽出する。所定範囲は、物体検出センサ110が物体を認識できる範囲の少なくとも一部を含む。所定範囲は、物体検出センサ110が物体を認識できる範囲をできるだけ多く含むことが好ましい。所定範囲は、物体検出センサ110が物体を認識できる範囲をできるだけ多く含むようにしつつ、処理負荷を考慮して予め設定する。
【0052】
座標を抽出する長手方向存在物は、物体認識部123が認識した長手方向存在物であって、その長手方向存在物により検出道路形状線130および距離変化検出値が決定された長手方向存在物を含むことが好ましい。したがって、たとえば、座標抽出部126は、物体認識部123から、具体的に、どこにある長手方向存在物を認識したかを示す情報を取得し、その情報に基づいて、座標を抽出する長手方向存在物を決定することができる。あるいは、上記所定範囲に含まれる全部の長手方向存在物の座標を抽出してもよい。
【0053】
基準決定部127は、座標抽出部126が抽出した座標に基づいて、道路形状線を決定する。ここで決定する道路形状線を地図道路形状線150とする。図14には、地図道路形状線150の一例を示す。図14に示す地図道路形状線150は、道路形状線として車線区画線20を用いている。
【0054】
さらに、基準決定部127は、地図道路形状線150を道路幅方向に複数決定できた場合に、それら複数の地図道路形状線150から1対または2対以上の地図道路形状線150の組み合わせを決定する。そして、決定した各対の地図道路形状線150に対して、地図道路形状線150間の道路幅方向の距離が道路長手方向において変化する程度を示す値(以下、距離変化基準値)を決定する。
【0055】
距離変化基準値は、距離変化検出値と同じ手法で決定する。したがって、距離変化基準値の一例は、1対の地図道路形状線150の成す角θである。図14の例では、3本の地図道路形状線150a、150b、150cがある。これら3本の地図道路形状線150a、150b、150cにより、地図道路形状線150の対を3つ作ることができる。1つ目の対は地図道路形状線150a、150bである。2つ目の対は地図道路形状線150a、150cである。3つ目の対は、地図道路形状線150b、150cである。3つ目の対に示すように、対をなす地図道路形状線150は、互いに隣接している地図道路形状線150同士である必要はない。図14の3本の地図道路形状線150は互いに平行である。この場合、1対の地図道路形状線150の成す角θは0度である。
【0056】
また、この例に示すように、基準決定部127は、1つの地図道路形状線150を2つ以上の対に使うこともできる。つまり、1つの地図道路形状線150を2つ以上の距離変化基準値の算出に用いることもできる。基準決定部127と同様、検出値決定部125も、1つの検出道路形状線130を2つ以上の対に使うこともできる。つまり、1つの検出道路形状線130を2つ以上の距離変化検出値の算出に用いることもできる。
【0057】
図3に戻り、道路勾配推定部128は、検出値決定部125が決定した複数の距離変化検出値のうち、距離変化基準値に最も近い距離変化検出値に対応する道路勾配を、車両10が走行する道路の勾配であると推定する。
【0058】
道路勾配推定部128において、値を比較するのは、互いに対応する距離変化検出値と距離変化基準値である。距離変化検出値および距離変化基準値ともに、車線区画線20などの長手方向存在物をもとに決定する値である。互いに同じ長手方向存在物から決定している距離変化検出値と距離変化基準値は互いに対応する値である。加えて、ほぼ平行に配置されている長手方向存在物から決定できる道路形状線をもとにした距離変化検出値と距離変化基準値も互いに対応している値である。
【0059】
たとえば、図5において、複数のポール134が配置されている方向と、車線区画線21が延びる方向は平行である。したがって、複数のポール134から決定した道路形状線と、車線区画線21をもとに決定した道路形状線は互いに対応する。そして、距離変化検出値と距離変化基準値の一方が、複数のポール134から決定した道路形状線をもとに決定した値であり、他方が車線区画線21から決定した道路形状線をもとに決定した値であるとき、距離変化検出値と距離変化基準値は互いに対応する。どの長手方向存在物と、どの長手方向存在物とが対応するかは、高精度地図データをもとに決定できる。
【0060】
なお、検出道路形状線130および地図道路形状線150が、直線など、曲率が一定である場合には、検出道路形状線130と地図道路形状線150の車両前後方向の位置および範囲は、一致する必要はない。検出道路形状線130および地図道路形状線150が一定の曲率である場合に、それらの車両前後方向の位置および範囲が少し変化しても、距離変化検出値および距離変化基準値は変化しないからである。
【0061】
車両制御部129は、車両10を速度および操舵方向の一方または両方を少なくとも一時的に制御する。車両制御部129は、車両10の制御に、車速センサ102が検出した車速、加速度センサ103が検出した加速度、地図データ記憶部105に記憶されている高精度地図データ、および、道路勾配推定部128が推定した道路勾配を用いる。
【0062】
〔道路勾配を推定する処理の流れ〕
図15に、ECU120が道路勾配を推定する処理の流れを示す。ECU120は、図15に示す処理を、車両10が走行している間、周期的に実行する。S1では、現在位置取得部121が車両10の現在位置を取得する。S2では、物体認識部123がセンサ信号を取得し、そのセンサ信号に基づいて車両10の周辺に存在する物体を認識する。
【0063】
S3では、座標抽出部126が、車両10の現在位置により定まる所定範囲の高精度地図データを取得する。S4は座標抽出部126が実行する。S4では、センサ信号をもとに存在を認識した物体と、S3で取得した高精度地図データに、同じあるいは対応する長手方向存在物が1対以上あるか否かを判断する。S4の判断結果がNOであればS1に戻る。S4の判断結果がYESであればS5に進む。
【0064】
S5では、座標変換部124が、センサ信号から認識した長手方向検出物体をもとに、1対以上の検出道路形状線130を決定する。
【0065】
S6では、座標抽出部126が、S3で取得した高精度地図データから、S5で決定した検出道路形状線130に対応する地図道路形状線150を決定するための長手方向存在物の座標を抽出する。
【0066】
S7では、基準決定部127が、S6で抽出した座標をもとに1対以上の地図道路形状線150を決定する。S8では、基準決定部127が、S7で決定した1対以上の地図道路形状線150をもとに、各対の距離変化基準値を決定する。
【0067】
S9では、勾配候補別に距離変化検出値を決定する。S9では、詳しくは、図16に示す処理を実行する。図16において、S91では、座標変換部124が、候補道路面141の勾配を決定する。S91~S94は複数回繰り返す。初回のS91の実行時は、事前に設定された初期値を候補道路面141の勾配とする。
【0068】
S92では、座標変換部124が、S91で勾配を決定した候補道路面141の面上に、S5で決定した検出道路形状線130を座標変換する。S93では、検出値決定部125が、S92で座標変換した後の各対の検出道路形状線130をもとに、距離変化検出値を決定する。
【0069】
S94では、検出値決定部125が、全部の候補道路面141において距離変化検出値を決定したか否かを判断する。S94の判断結果がNOであればS91に戻る。2回目以降のS91の実行時は、事前に設定された角度だけ、前回の候補道路面141から道路勾配が変化した候補道路面141を決定する。そして、新たに決定した候補道路面141に対してS92、S93、S94を実行する。S94の判断結果がYESであれば図15のS10へ進む。
【0070】
S10では、道路勾配推定部128が、S9において決定した複数の距離変化検出値のうちで、S8で決定した距離変化基準値に最も近い距離変化検出値を決定する。
【0071】
S11では、道路勾配推定部128が、S10で決定した距離変化検出値を決定したときの候補道路面141が表す道路勾配を、車両10が今から走行する道路面140の道路勾配であると推定する。
【0072】
〔実施形態のまとめ〕
以上、説明した実施形態では、座標変換部124は、物体検出センサ110で検出した長手方向存在物の位置に基づいて決定できる検出道路形状線130の座標を、複数種類の候補道路面141上の座標に変換する。
【0073】
検出道路形状線130間の距離の道路長手方向における変化の程度は、道路勾配により変化する。したがって、検出道路形状線130を、車両10が走行している道路と同じ道路勾配の候補道路面141に座標変換すれば、座標変換後の2つの検出道路形状線130間の距離の道路長手方向変化は、実際の道路にある長手方向存在物から決定した変化と一致する。一方、検出道路形状線130を、車両10が走行している道路とは異なる道路勾配の候補道路面141に座標変換すると、座標変換後の2つの検出道路形状線130間の距離の道路長手方向変化は、実際の道路にある長手方向存在物から決定した変化と一致しない。
【0074】
そこで、基準決定部127は、実際の道路のデータとして長手方向存在物の座標を含む高精度地図データを用い、高精度地図データから長手方向存在物の座標を抽出し(S6)、その座標に基づいて地図道路形状線150を決定する(S7)。地図道路形状線150が複数検出できた場合には、複数の地図道路形状線150間の距離の道路長手方向変化を示す値を距離変化基準値とする(S8)。
【0075】
検出値決定部125は、距離変化基準値を決定した地図道路形状線150に対応する1対以上の検出道路形状線130がある場合に、距離変化検出値を候補道路面141別に決定する。そして、複数の距離変化検出値のうち、距離変化基準値に最も近い距離変化検出値に対応する道路勾配を、車両10が走行する道路の勾配であると推定する。
【0076】
このようにして道路勾配を推定するので、物体検出センサ110が、検出道路形状線130を決定できる長手方向存在物を検出できれば、道路勾配を推定できる可能性がある。よって、道路勾配が推定できない位置を少なくできる。
【0077】
加えて、本実施形態の手法は次の効果も奏する。本実施形態の手法では、長手方向存在物から決定する検出道路形状線130および地図道路形状線150の曲率が一定である場合、検出道路形状線130と地図道路形状線150の車両前後方向の位置および範囲は一致する必要がない。
【0078】
特許文献1に開示された手法では、破線の端点が車両10から遠方にある場合や、下り坂である場合に、破線の端点間の検出距離が短くなるので、道路勾配の推定精度が低下する。
【0079】
本実施形態においても、検出道路形状線130と地図道路形状線150が車両10から遠方にある場合も生じ得る。また、下り坂で検出道路形状線130の車両前後方向の位置精度が低下する可能性もある。しかし、本実施形態の手法では、検出道路形状線130と地図道路形状線150の車両前後方向の位置および範囲がずれてしまっても、検出道路形状線130および地図道路形状線150が一定の曲率であれば、距離変化検出値および距離変化基準値は変化しない。よって、本実施形態の手法では、道路勾配の推定精度が低下してしまうことを抑制できる。
【0080】
長手方向存在物は道路の長手方向形状を決定できればよい。したがって、実線の車線区画線21、23も破線の車線区画線22も、長手方向存在物に含ませることができる。また、ガードレール、縁石、ポール134など、道路の長手方向に沿って配置された立体物も、長手方向存在物に含ませることができる。また、側溝31、側溝31の蓋32など、車線区画線20よりも道路の幅方向の外側において道路の長手方向に沿って存在する平面状物も、長手方向存在物に含ませることができる。多くの種類の長手方向存在物をもとに距離変化検出値を決定できるようにするほど、道路勾配が推定できない位置を少なくできる。
【0081】
基準決定部127は、2対以上の地図道路形状線150を用い、2つ以上の距離変化基準値を決定することができる。また、検出値決定部125は、距離変化基準値に対応する2つ以上の距離変化検出値を候補道路面141別に決定することができる。道路勾配推定部128は、2つ以上の距離変化基準値および距離変化検出値がある場合には、それら2つ以上の距離変化基準値および距離変化検出値に基づいて、車両10が走行する道路の勾配を推定する。このようにすることで、1つ距離変化基準値と1つの距離変化検出値とに基づいて、車両10が走行する道路の勾配を推定するよりも、道路の勾配を推定する精度が向上する。
【0082】
さらに、基準決定部127は、少なくとも1つの地図道路形状線150を2つ以上の距離変化基準値の決定に用いることができる。検出値決定部125も、少なくとも1つの検出道路形状線130を2つ以上の距離変化検出値の決定に用いることができる。
【0083】
基準決定部127が、少なくとも1つの地図道路形状線150を2つ以上の距離変化基準値の決定に用いると、2つ以上の距離変化基準値を決定するために決定する地図道路形状線150の数を少なくできる。また、検出値決定部125が、少なくとも1つの検出道路形状線130を2つ以上の距離変化検出値の算出に用いると、2つ以上の距離変化検出値を決定するために決定する130の数を少なくできる。よって、ECU120は演算量を低減できる。
【0084】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0085】
<変形例1>
本開示に記載のECU120およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のECU120およびその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のECU120およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。ハードウエア論理回路は、たとえば、ASIC、FPGAである。
【0086】
また、コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体はROMに限られず、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていればよい。たとえば、フラッシュメモリに上記プログラムが記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10:車両 20、21,22,23:車線区画線(長手方向存在物) 31:側溝(長手方向存在物) 32:蓋(長手方向存在物) 33:境界(長手方向存在物) 100:車両制御装置 105:地図データ記憶部 110:物体検出センサ 111:カメラセンサ 112:ミリ波レーダ 120:ECU 121:現在位置取得部 122:地図データ処理部 123:物体認識部 124:座標変換部 125:検出値決定部 126:座標抽出部 127:基準決定部 128:道路勾配推定部 129:車両制御部 130:検出道路形状線 131:道路形状点 134:ポール(長手方向存在物) 140:道路面 141:候補道路面 150:地図道路形状線 200:データセンタ 210:通信装置 220:地図データ記憶部 230:地図データ取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16