(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-03
(45)【発行日】2025-09-11
(54)【発明の名称】伝熱管および熱交換器並びに排煙処理装置
(51)【国際特許分類】
F28F 19/00 20060101AFI20250904BHJP
F23J 15/08 20060101ALI20250904BHJP
F28F 19/04 20060101ALI20250904BHJP
F28F 19/06 20060101ALI20250904BHJP
【FI】
F28F19/00 511E
F23J15/08
F28F19/04 Z
F28F19/06 Z
(21)【出願番号】P 2025025079
(22)【出願日】2025-02-19
【審査請求日】2025-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 英治
(72)【発明者】
【氏名】平山 涼介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
(72)【発明者】
【氏名】北野 航平
(72)【発明者】
【氏名】岡本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山地 修平
(72)【発明者】
【氏名】宮地 剛之
(72)【発明者】
【氏名】徳重 信
(72)【発明者】
【氏名】荒若 宏人
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇雄
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第7221437(JP,B1)
【文献】実開昭58-077292(JP,U)
【文献】特開昭61-015044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 19/02-19/06
F23J 15/00-15/08
F16L 58/00-58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス通路に配置される伝熱管本体と、
前記排ガス通路に配置され、前記伝熱管本体と異なる材料で形成されて長手方向の一端部が前記伝熱管本体における長手方向の端部に溶接により接続される連結管と、
前記伝熱管本体と前記連結管との接続部の外側を被覆する金属製の第1被覆部と、
前記第1被覆部の外側を被覆する第2被覆部と、
を備
え、
前記第1被覆部は、長手方向の一端部が前記伝熱管本体に溶接により接続され、前記第2被覆部は、前記第1被覆部の一端部と前記伝熱管本体との接続部を覆う、
伝熱管。
【請求項2】
前記伝熱管本体は、前記連結管より電位の高い材料により形成され、前記第1被覆部は、前記連結管と同じ材料により形成される、
請求項1に記載の伝熱管。
【請求項3】
前記伝熱管本体は、ステンレス鋼により形成され、前記連結管および前記第1被覆部は、炭素鋼により形成される、
請求項2に記載の伝熱管。
【請求項4】
前記第2被覆部は、ライニングにより形成される、
請求項1に記載の伝熱管。
【請求項5】
前記第1被覆部の厚さが前記第2被覆部の厚さより厚い、
請求項1に記載の伝熱管。
【請求項6】
前記第1被覆部は、内周面が前記伝熱管本体の外周面に隙間なく密着す
る、
請求項1に記載の伝熱管。
【請求項7】
前記連結管は、長手方向の他端部がヘッダに連結され、前記第1被覆部は、長手方向の他端部が前記ヘッダに溶接により接続され、前記第2被覆部は、前記第1被覆部の他端部と前記ヘッダとの接続部を覆う、
請求項6に記載の伝熱管。
【請求項8】
前記連結管は、第2伝熱管本体であり、前記第1被覆部は、長手方向の他端部が前記第2伝熱管本体に溶接により接続され、前記第2被覆部は、前記第1被覆部の他端部と前記第2伝熱管本体との接続部を覆う、
請求項6に記載の伝熱管。
【請求項9】
排ガス通路を形成するダクトケーシングと、
熱媒体の入口部が設けられる入口ヘッダと、
前記熱媒体の出口部が設けられる出口ヘッダと、
前記排ガス通路に配置されて前記入口ヘッダと前記出口ヘッダとを連結する請求項1に記載の伝熱管と、
を備える熱交換器。
【請求項10】
排ガスの熱の一部を回収する熱回収装置と、
熱回収後の前記排ガスに含まれるばいじんを除去する集塵装置と、
集塵後の前記排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、
脱硫後の前記排ガスを再加熱する請求項9に記載の熱交換器が適用される再加熱装置と、
を備える排煙処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱管、熱交換器、排煙処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備などに設けられる排煙処理装置は、熱回収装置と、電気集塵装置と、脱硫装置と、再加熱装置などから構成される。ボイラから排出される排ガスは、電気集塵装置により含有するばいじんが除去され、脱硫装置により含有する亜硫酸ガスが除去される。このとき、熱回収装置は、排ガスから熱を回収する。再加熱装置は、熱回収装置が回収した熱により脱硫後の排ガスを再加熱し、白煙の排出を抑制する。
【0003】
熱回収装置や再加熱装置は、排ガス通路に配置される複数の伝熱管を有する。例えば、再加熱装置は、複数の伝熱管内に高温の熱媒体を流動させ、熱媒体と排ガス通路を流れる排ガスとの間で熱交換することで、排ガスを加熱して昇温する。従来の再加熱装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
再加熱装置に流入する排ガスは、腐食性不純物含有ミストが含まれる。そのため、再加熱装置の伝熱管は、腐食性不純物含有ミストの付着と蒸発の事象が繰り返し生じ、腐食してしまうおそれがある。そこで、伝熱管の材料として、ステンレス鋼を適用することが考えられる。この場合、炭素鋼により形成されるヘッダにステンレス鋼により形成される伝熱管を溶接により連結する必要がある。ところが、ヘッダを構成する炭素鋼と伝熱管を構成するステンレスとは、異なる材料であることから、電位差により腐食が発生する。
【0006】
このような課題を解決するため、従来の伝熱管は、異なる材料の溶接部を被覆部(樹脂ライニング)により外側から被覆している。しかし、高温の排ガスが流れる厳しい環境下で、樹脂ライニングの劣化が想定され、被覆部の耐久性の向上が望まれている。
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、伝熱管の耐久性の向上を図る伝熱管、熱交換器、排煙処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の伝熱管は、排ガス通路に配置される伝熱管本体と、前記排ガス通路に配置され、前記伝熱管本体と異なる材料で形成されて長手方向の一端部が前記伝熱管本体における長手方向の端部に溶接により接続される連結管と、前記伝熱管本体と前記連結管との接続部の外側を被覆する金属製の第1被覆部と、前記第1被覆部の外側を被覆する第2被覆部と、を備える。
【0009】
また、本開示の熱交換器は、排ガス通路を形成するダクトケーシングと、熱媒体の入口部が設けられる入口ヘッダと、前記熱媒体の出口部が設けられる出口ヘッダと、前記排ガス通路に配置されて前記入口ヘッダと前記出口ヘッダとを連結する前記伝熱管と、を備える。
【0010】
また、本開示の排煙処理装置は、排ガスの熱の一部を回収する熱回収装置と、熱回収後の前記排ガスに含まれるばいじんを除去する集塵装置と、集塵後の前記排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、脱硫後の前記排ガスを再加熱する前記熱交換器が適用される再加熱装置と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の伝熱管および熱交換器並びに排煙処理装置によれば、伝熱管の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態の排煙処理装置を表す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の熱回収装置および再加熱装置を表す概略構成図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の熱交換器を表す概略平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の熱交換器を表す概略側面図である。
【
図5】
図5は、ヘッダと伝熱管の連結部を表す断面図である。
【
図6】
図6は、ヘッダと伝熱管の連結部を表す拡大断面図である。
【
図7】
図7は、ヘッダに対する伝熱管の連結部を表す斜視図である。
【
図8】
図8は、伝熱管の連結部を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0014】
[排煙処理装置]
図1は、本実施形態の排煙処理装置を表す概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、排煙処理装置100は、各種の発電プラントや工場などにて、ボイラ111から排出される排ガス(排煙)Gが煙突112から放出される過程で、排ガスGに含まれるばいじんや硫黄酸化物(SOx)などの有害物質を除去するものである。
【0016】
排煙処理装置100は、熱回収装置101と、電気集塵装置102と、送風装置(誘引通風機)103と、脱硫装置104と、再加熱装置105と、送風装置(脱硫通風機)106とを備える。排煙処理装置100は、ボイラ111から排出される排ガスGを、熱回収装置101、電気集塵装置102、送風装置103を通して煙突112に送る第1処理系統と、ボイラ111から排出される排ガスGを、熱回収装置101、電気集塵装置102、送風装置103、脱硫装置104、再加熱装置105、送風装置(脱硫通風機)106を通して煙突112に送る第2処理系統とを有する。
【0017】
第1処理系統の場合、送風装置103が駆動することで、ボイラ111から排出される排ガスGが熱回収装置101と電気集塵装置102を通って煙突112に送られる。第2処理系統の場合、送風装置103,106が駆動することで、ボイラ111から排出される排ガスGが熱回収装置101と電気集塵装置102と脱硫装置104と再加熱装置105を通って煙突112に送られる。なお、各装置の配列は、上述した配列に限定されるものではない。
【0018】
ボイラ111は、2つの排ガス通路121a,121bが設けられる。排ガス通路121aは、熱回収装置101aと電気集塵装置102aと送風装置103aが設けられ、排ガス通路121bは、熱回収装置101bと電気集塵装置102bと送風装置103bが設けられる。2つの排ガス通路121a,121bは、下流側が排ガス通路121cに合流する。排ガス通路121cは、2つの排ガス通路121d,121eに分岐する。排ガス通路121dは、第1処理系統の一部を構成し、中途部に開閉弁122が設けられ、下流側が煙突112に連結される。
【0019】
排ガス通路121eは、第2処理系統を構成し、脱硫装置104と再加熱装置105が設けられる。排ガス通路121eは、下流側が2つの排ガス通路121f,121gに分岐する。排ガス通路121fは、送風装置106aが設けられ、排ガス通路121gは、送風装置106bが設けられる。2つの排ガス通路121f,121gは、下流側が排ガス通路121hに合流する。そして、第1処理系統の一部を構成する排ガス通路121dと、第2処理系統の一部を構成する排ガス通路121hは、下流側が排ガス通路121iに合流する。排ガス通路121iは、煙突112に連結される。
【0020】
熱回収装置101(101a,101b)は、ボイラ111から排出された排ガスG(約140℃)と熱媒体(水など)との間で熱交換することで、排ガスGから熱を回収する。熱回収装置101で熱回収された排ガスG(約90℃)は、電気集塵装置102(102a,102b)に導入される。電気集塵装置102は、排ガスGからばいじんを除去する。
【0021】
電気集塵装置102でばいじんが除去された排ガスGは、脱硫装置104に導入される。脱硫装置104は、石灰石(CaCO3)により、排ガスG中の硫黄酸化物を吸収除去し、副生成物として石膏(CaSO4.2H2O)を生成する。脱硫装置104は、ミストエリミネータ123を有する。ミストエリミネータ123は、脱硫後の排ガスGからミストを除去する。
【0022】
脱硫装置104により脱硫処理された排ガスG(約50℃)は、ガスガスヒータの再加熱装置105に導入される。再加熱装置105は、熱回収装置101との間で熱媒体を循環する過程で、熱回収装置101により回収された熱により排ガスGを再加熱する。熱回収装置101と再加熱装置105とは、第1熱媒体循環ラインL11および第2熱媒体循環ラインL12により連結される。第1熱媒体循環ラインL11は、循環ポンプ131が設けられる。循環ポンプ131が駆動することで、再加熱装置105の熱媒体を第1熱媒体循環ラインL11により熱回収装置101に戻す。第2熱媒体循環ラインL12は、ヒータ132が設けられる。循環ポンプ131により熱回収装置101の熱媒体を第2熱媒体循環ラインL12により再加熱装置105に供給する。この過程で、必要に応じてヒータ132を作動することで、熱媒体を加熱する。
【0023】
排ガスGは、脱硫装置104で脱硫処理されることで温度が低下し、低温のままでは拡散しにくく白煙になるおそれがある。再加熱装置105は、拡散および白煙低減を目的として排ガスGを再加熱することで昇温(約90℃)させ、煙突112から大気に放出する。なお、上述した排ガスGの温度は、一例であり、限定されない。
【0024】
[熱回収装置および再加熱装置の構成]
図2は、本実施形態の熱回収装置および再加熱装置を表す概略構成図である。
【0025】
図2に示すように、熱回収装置101および再加熱装置105は、完全向流方式の熱交換器である。但し、熱回収装置101および再加熱装置105は、高温予熱向流方式、高温予熱並流方式、中温予熱方式などの他の方式の熱交換器であってもよい。
【0026】
熱回収装置101は、高温熱回収部141と、中温熱回収部142と、低温熱回収部143とを備える。高温熱回収部141と中温熱回収部142と低温熱回収部143は、排ガス通路121a(121b)に配置される。なお、熱回収装置101は、この構成に限定されるものではない。熱回収装置101は、1つの熱回収部で構成したり、複数の熱回収部で構成したりしてもよい。
【0027】
高温熱回収部141は、複数の第1伝熱管151を有する。第1伝熱管151は、排ガス通路121a(121b)に排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第1伝熱管151は、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部151aが第1ヘッダ152に連結され、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部151bが第2ヘッダ153に連結される。
【0028】
中温熱回収部142は、高温熱回収部141より排ガスGの流れ方向の下流側に配置される。中温熱回収部142は、複数の第2伝熱管154を有する。第2伝熱管154は、排ガス通路121a(121b)に排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第2伝熱管154は、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部154aが第1ヘッダ155に連結され、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部154bが第2ヘッダ156に連結される。
【0029】
低温熱回収部143は、中温熱回収部142より排ガスGの流れ方向の下流側に配置される。低温熱回収部143は、複数の第3伝熱管157を有する。第3伝熱管157は、排ガス通路121a(121b)に排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第3伝熱管157は、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部157aが第1ヘッダ158に連結され、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部157bが第2ヘッダ159に連結される。
【0030】
再加熱装置105は、高温加熱部161と、中温加熱部162と、低温加熱部163とを備える。高温加熱部161と中温加熱部162と低温加熱部163は、排ガス通路121eに配置される。再加熱装置105は、この構成に限定されるものではない。再加熱装置105は、1つの加熱部で構成したり、複数の加熱部で構成したりしてもよい。
【0031】
高温加熱部161は、複数の第1伝熱管171を有する。第1伝熱管171は、排ガス通路121eに排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第1伝熱管171は、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部171aが第1ヘッダ172に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部171bが第2ヘッダ173に連結される。
【0032】
中温加熱部162は、高温加熱部161より排ガスGの流れ方向の上流側に配置される。中温加熱部162は、複数の第2伝熱管174を有する。第2伝熱管174は、排ガス通路121eに排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第2伝熱管174は、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部174aが第1ヘッダ175に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部174bが第2ヘッダ176に連結される。
【0033】
低温加熱部163は、中温加熱部162より排ガスGの流れ方向の上流側に配置される。低温加熱部163は、複数の第3伝熱管177を有する。第3伝熱管177は、排ガス通路121eに排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第3伝熱管177は、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部177aが第1ヘッダ178に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部177bが第2ヘッダ179に連結される。
【0034】
第1熱媒体循環ラインL11は、上流側の端部が再加熱装置105における低温加熱部163の第2ヘッダ179に接続され、下流側の端部が熱回収装置101における低温熱回収部143の第2ヘッダ159に接続される。また、第2熱媒体循環ラインL12は、上流側の端部が熱回収装置101における高温熱回収部141の第1ヘッダ152に接続され、下流側の端部が高温加熱部161の第1ヘッダ172に接続される。
【0035】
高温熱回収部141の第2ヘッダ153と中温熱回収部142の第1ヘッダ155は、第1接続ラインL21よりに接続される。中温熱回収部142の第2ヘッダ156と低温熱回収部143の第1ヘッダ158は、第2接続ラインL22よりに接続される。また、高温加熱部161の第2ヘッダ173と中温加熱部162の第1ヘッダ65は、第1接続ラインL23よりに接続される。中温加熱部162の第2ヘッダ156と低温加熱部163の第1ヘッダ178は、第2接続ラインL24よりに接続される。
【0036】
また、第1熱媒体循環ラインL11は、循環ポンプ131とドレンタンク133が設けられ、第2熱媒体循環ラインL12は、ヒータ132が設けられる。そして、蒸気供給源(図示略)からヒータ132、ドレンタンク133に対して蒸気ラインL13が設けられ、ドレンタンク133に蒸気ドレンラインL14が設けられる。そして、蒸気ラインL13は、開閉弁134が設けられる。
【0037】
そのため、再熱された低温の熱媒体は、第1熱媒体循環ラインL11から熱回収装置101に供給される。熱回収装置101では、熱媒体が低温熱回収部143、中温熱回収部142、高温熱回収部141の順に流れ、各伝熱管151,154,157を流れるときに排ガスGの熱を回収する。排ガスGの熱を回収した熱媒体は、第2熱媒体循環ラインL12に排出される。熱回収された高温の熱媒体は、第2熱媒体循環ラインL12から再加熱装置105に供給される。再加熱装置105では、熱媒体が高温加熱部161、中温加熱部162、低温加熱部163の順に流れ、各伝熱管171,174,177を流れるときに排ガスGを再加熱する。排ガスGを再加熱した熱媒体は、第1熱媒体循環ラインL11に排出される。
【0038】
[熱交換器の構成]
本実施形態では、熱交換器が上述した排煙処理装置100における再加熱装置105(高温加熱部161、中温加熱部162、低温加熱部163)に適用されたものとして説明する。但し、熱交換器は、排煙処理装置100における再加熱装置105に限定されるものではない。熱交換器を排煙処理装置100における熱回収装置101や排煙処理装置100以外の熱交換器に適用してもよい。
【0039】
図3は、本実施形態の熱交換器を表す概略平面図、
図4は、本実施形態の熱交換器を表す概略側面図である。なお、本実施形態の熱交換器は、排ガスGが水平に流れ、伝熱管が排ガスGの流れ方向に対して交差する水平方向に沿って配置される横型形式のものである。但し、熱交換器は、この形式のものに限らず、例えば、排ガスGが水平に流れ、伝熱管が排ガスGの流れ方向に対して交差する鉛直方向に沿って配置される縦型形式のものであってもよい。また、排ガスGが鉛直方向に沿って流れるように構成してもよい。
【0040】
図3および
図4に示すように、熱交換器11(再加熱装置105)は、1つのバンドル12を備える。但し、熱交換器11は、複数のバンドル12を備えていてもよい。すなわち、バンドル12は、例えば、再加熱装置105を構成する高温加熱部161、中温加熱部162、低温加熱部163(いずれも
図1参照)に相当する。
【0041】
バンドル12は、ダクトケーシング13の内部に配置される。ダクトケーシング13は、水平方向に沿った四角筒形状をなし、内部に排ガス通路(ガスパス)14が区画される。排ガス通路14は、水平方向に沿って設けられ、排ガスGが水平方向に沿って流れる。バンドル12は、ケーシング21と、入口ヘッダ22と、出口ヘッダ23と、複数の伝熱管24とを有する。バンドル12は、ダクトケーシング13の内部に配置され、ダクトケーシング13の内壁部に支持される。
【0042】
入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、ダクトケーシング13の側壁部13aに固定されて支持される。入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、円筒管形状をなし、長手方向の各端部が閉塞される。入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、鉛直方向に沿って配置され、水平方向に間隔を空けて配置される。入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、ダクトケーシング13の側壁部13aに形成された開口部に配置され、固定されて支持される。入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、水平方向の一方側がダクトケーシング13に区画された排ガス通路14に面し、水平方向の他方側がダクトケーシング13(排ガス通路14)の外側に面する。
【0043】
ダクトケーシング13の側壁部13aは、入口ヘッダ22と出口ヘッダ23との間に位置して点検孔13bが設けられる。点検孔13bは、蓋13cが着脱自在に設けられる。作業者は、蓋13cにより点検孔13bを開放することで、ダクトケーシング13の内部にある伝熱管24などを点検することができる。
【0044】
複数の伝熱管24は、一部が水平方向に沿って配置される。複数の伝熱管24は、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23の長手方向に交差する水平方向に沿って配置される。入口ヘッダ22は、複数の伝熱管24における長手方向の一端部が連結され、出口ヘッダ23は、複数の伝熱管24における長手方向の他端部が連結される。複数の伝熱管24は、排ガス通路14に位置する。すなわち、複数の伝熱管24は、一端部が入口ヘッダ22における排ガス通路14に面する側に連結され、内部が入口ヘッダ22の内部に連通する。複数の伝熱管24は、他端部が出口ヘッダ23における排ガス通路14に面する側に連結され、内部が出口ヘッダ23の内部に連通する。
【0045】
バンドル12は、外側にケーシング21が配置される。ケーシング21は、複数の伝熱管24を取り囲むように配置され、長手方向の端部が入口ヘッダ22および出口ヘッダ23に連結されると共に、ダクトケーシング13の内壁部に支持される。ケーシング21は、排ガスGの流れ方向(水平方向)の上流側と下流側に開口部が設けられる。
【0046】
入口ヘッダ22は、側部に連結フランジ31を有するフランジ接手32が固定される。フランジ接手32は、円筒形状をなし、入口ヘッダ22における排ガス通路14に面しない側に連結されて内部が入口ヘッダ22の内部に連通する。フランジ接手32は、入口ヘッダ22における長手方向の一端部に配置される。出口ヘッダ23は、側部に連結フランジ33を有するフランジ接手34が固定される。フランジ接手34は、円筒形状をなし、出口ヘッダ23における排ガス通路14に面しない側に連結され、内部が出口ヘッダ23の内部に連通する。フランジ接手34は、出口ヘッダ23における長手方向の他端部に配置される。
【0047】
伝熱管24は、複数の直線部24aと、複数の第1湾曲部24bと、複数の第2湾曲部24cとを有する。複数の直線部24aは、素管の周囲に螺旋形状をなすフィンが固定されて構成される。複数の第1湾曲部24bと複数の第2湾曲部24cは、素管だけで構成され、フィンが設けられていない。複数の直線部24aは、隣接するもの同士の各一端部が第1湾曲部24bにより連結され、隣接するもの同士の各他端部が第2湾曲部24cにより連結される。伝熱管24は、排ガスGの流れ方向の下流側の直線部24aの一端部が入口ヘッダ22に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側の直線部24aの一端部が出口ヘッダ23に連結される。
【0048】
1つの伝熱管24は、直線部24aと第1湾曲部24bと第2湾曲部24cが排ガスGの流れ方向である水平方向に間隔を空けて配置される。複数の伝熱管24は、排ガスGの流れ方向に直交する鉛直方向に間隔を空けて配置されることで、伝熱管群を構成する。すなわち、複数の伝熱管24は、一端部が入口ヘッダ22における長手方向(鉛直方向)に間隔を空けて連結され、他端部が出口ヘッダ23における長手方向(鉛直方向)に間隔を空けて連結される。
【0049】
熱媒体供給ラインL31は、配管により構成され、端部にフランジ接手を有する。熱媒体供給ラインL31は、配管のフランジ接手がバンドル12における入口ヘッダ22のフランジ接手32に連結される。熱媒体排出ラインL32は、配管により構成され、端部にフランジ接手を有する。熱媒体排出ラインL32は、配管のフランジ接手がバンドル12における出口ヘッダ23のフランジ接手34に連結される。
【0050】
ケーシング21は、内部に複数の支持板41が配置される。複数の支持板41は、ケーシング21の長手方向(水平方向)に間隔を空けて配置され、ケーシング21に固定される。支持板41は、複数の支持孔が形成され、伝熱管24は、直線部24aが支持孔に挿通されて支持される。また、ケーシング21は、内部に共鳴防止板42が配置される。共鳴防止板42は、水平方向に沿って配置され、複数の伝熱管24の間に位置し、周囲がケーシング21に固定される。共鳴防止板42は、複数の伝熱管24が配置されたケーシング21の内部を2つの空間部に区画する。共鳴防止板42は、複数の伝熱管24が振動することで発生する音の共鳴を抑制する。
【0051】
[熱交換器の作動]
熱交換器11は、排ガスGと熱媒体との間で熱交換することで、熱媒体の熱により排ガスGを加熱する。
【0052】
すなわち、熱媒体は、熱媒体供給ラインL31からバンドル12に供給され、入口ヘッダ22から複数の伝熱管24に流れる。バンドル12は、熱媒体が複数の伝熱管24を流れるとき、熱媒体と排ガス通路14を流れる排ガスGとの間で熱交換を行う。つまり、伝熱管24を流れる熱媒体により伝熱管24の外側の排ガス通路14を流れる排ガスGを加熱する。排ガスGとの間で熱交換した熱媒体は、複数の伝熱管24から出口ヘッダ23に流れ、熱媒体排出ラインL32に排出される。
【0053】
図3および
図4に示すように、伝熱管24は、直線部24aと第1湾曲部24bと第2湾曲部24cとを有し、排ガス通路14に配置される。排ガス通路14を流れる排ガスGは、腐食性不純物含有ミストが含まれる。そのため、伝熱管24は、ステンレス鋼により形成される。一方、伝熱管24の各端部が溶接により連結される入口ヘッダ22、出口ヘッダ23および連結管(スタブ61)は、炭素鋼により形成される。この場合、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23に適用される炭素鋼と、伝熱管24に適用されるステンレス鋼とは、異なる材料であることから、従来のように、入口ヘッダ22、出口ヘッダ23および連結管(スタブ61)に伝熱管24とを直接連結すると、電位差により腐食が発生しやすい。
【0054】
そこで、本実施形態の伝熱管24は、ステンレス鋼により形成され、炭素鋼により形成された入口ヘッダ22および出口ヘッダ23との溶接部(接続部)に被覆部50が設けられる。伝熱管24は、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23との連結管(スタブ61)や溶接部が外側から被覆部50に覆われることで、溶接部と水分との接触が抑制され、溶接部の電位差による腐食を抑制することができる。
【0055】
[伝熱管]
図5は、ヘッダと伝熱管の連結部を表す断面図である。
【0056】
図5に示すように、伝熱管24の溶接部(接続部)を覆う被覆部50は、第1被覆部51と、第2被覆部52とを有する。すなわち、本実施形態の伝熱管24は、直線部(伝熱管本体)24aと、スタブ(連結管)61と、第1被覆部51と、第2被覆部52とを備える。第1被覆部51は、保護機能または犠牲機能を有する。
【0057】
直線部24aは、ステンレス鋼により形成される。直線部24aは、素管24a1の外周部に螺旋形状をなすフィン24a2が固定されて構成される。但し、直線部24aは、入口ヘッダ22(出口ヘッダ23)に連結される端部24a3は、フィン24a2が設けられておらず、素管24a1と同形状である。スタブ61は、直線部24aと異なる材料である炭素鋼により形成される。スタブ61は、直線部24aの端部24a3と外径および内径が同径の円筒形状をなす。スタブ61は、長手方向の一端部が直線部24aの端部24a3に溶接により接続され、長手方向の他端部が入口ヘッダ22に接続される。
【0058】
第1被覆部51は、金属製で配管である。第1被覆部51は、円筒形状をなし、直線部24aとスタブ61との接続部の外側を被覆する。第2被覆部52は、第1被覆部51の外側を被覆する。
【0059】
伝熱管24の直線部24aは、炭素鋼で形成されたスタブ61より電位の高い材料であるステンレス鋼により形成される。第1被覆部51は、スタブ61と同じ材料である炭素鋼により形成される。第2被覆部52は、ライニングにより形成される。
【0060】
以下、伝熱管24における直線部24aの端部24a3および被覆部50について詳細に説明する。
図6は、ヘッダと伝熱管の連結部を表す拡大断面図、
図7は、ヘッダに対する伝熱管の連結部を表す斜視図である。
【0061】
図6および
図7に示すように、伝熱管24は、直線部24aの端部24a3にスタブ61の一端部が全周溶接され、溶接部71により接続される。溶接部71は、リング形状をなす。この場合、直線部24aの端部24a3は、ステンレス鋼であり、スタブ61は、炭素鋼であることから、異材接合となる。伝熱管24は、直線部24aの端部24a3がスタブ61を介して入口ヘッダ22に連結される。この場合、スタブ61は、他端部が入口ヘッダ22に対して拡管により連結される。入口ヘッダ22は、鉛直方向に沿って配置され、所定の位置に水平方向に貫通する連結孔22aが設けられる。連結孔22aは、円柱形状をなし、内周面に溝部22bが形成される。溝部22bは、連結孔22aの周方向に連続するリング形状をなす。溝部22bは、連結孔22aの内周面に対して凹部形状をなす。
【0062】
スタブ61は、外径が入口ヘッダ22の連結孔22aの内径より若干小さい。スタブ61は、他端部が連結孔22aに挿入される。このとき、スタブ61の他端部の端面が入口ヘッダ22の内周面と段差なく連続することが好ましい。このとき、入口ヘッダ22は、連結孔22aの溝部22bがスタブ61の外周面により覆われる。この状態で、まず、入口ヘッダ22における連結孔22aとの反対側に設けられた作業孔から図示しない拡管用工具をスタブ61に挿入する。次に、拡管用工具の加圧部を、スタブ61を介して連結孔22aの溝部42bに対向する位置に位置決めする。そして、加圧部をスタブ61の径方向の外側に移動させることで、スタブ61の他端部を拡径させる。
【0063】
すると、スタブ61は、端部に一部が拡径した拡径部61aが形成され、拡径部61aが入口ヘッダ22における連結孔22aの溝部22bに係止する。スタブ61は、他端部に形成された拡径部61aが連結孔22aの溝部22bに係止することで、入口ヘッダ22に連結される。その後、スタブ61は、他端部が入口ヘッダ22の内周面にシール溶接がなされ、リング形状をなすシール溶接部72が形成される。
【0064】
第1被覆部51は、円筒形状をなし、炭素鋼により形成される。第1被覆部51は、内径がスタブ61の外径より若干大きい。但し、第1被覆部51の内径は、第1被覆部51がスタブ61の外側に装着されたとき、第1被覆部51の内周面がスタブ61の外周面に隙間なき密着する寸法であることが好ましい。また、第1被覆部51は、厚さがスタブ61の厚さより厚いことが好ましい。さらに、第1被覆部51は、軸方向の長さが規定される。第1被覆部51がスタブ61および伝熱管24における直線部24aの端部24a3の外側に装着されたとき、直線部24aとスタブ61との溶接部71を外側から覆い、一端部が直線部24aの端部24a3に接触し、他端部が入口ヘッダ22に接触する長さであることが好ましい。
【0065】
第1被覆部51は、内周面が伝熱管24における直線部24aの端部24a3の外周面に隙間なく密着する。第1被覆部51は、長手方向の一端部が直線部24aの端部24a3の外周面に全周溶接され、溶接部73により接続される。溶接部73は、リング形状をなす。また、第1被覆部51は、長手方向の他端部が入口ヘッダ22の外周面に全周溶接され、溶接部74により接続される。溶接部74は、リング形状をなす。
【0066】
第1被覆部51は、スタブ61の他端部が入口ヘッダ22に連結される前に、スタブ61および伝熱管24における直線部24aの端部24a3の外側に配置しておく。つまり、まず、伝熱管24における直線部24aの端部24a3にスタブ61の一端部を溶接により接続する。次に、スタブ61の他端部側から第1被覆部51をスタブ61の外側に挿入して軸方向に移動し、直線部24aの端部24a3側に位置させる。この状態で、スタブ61の他端部を入口ヘッダ22の連結孔22aに挿入し、拡径して連結する。なお、伝熱管24を炭素鋼からステンレスに改造する場合などは、拡管挿入されている炭素鋼を、拡管部を一部残したまま切断除去し、新たなステンレス製の伝熱管24を取り付ける。そのとき、ステンレス製の伝熱管24側に第1被覆部51を挿入し、入口ヘッダ22とは反対側へ移動した状態で、入口ヘッダ22に残存している炭素鋼とステンレス製の伝熱管24を溶接する。その後、第1被覆部51を入口ヘッダ22側へ移動し、第1被覆部51を固定する。
【0067】
スタブ61の他端部が入口ヘッダ22の連結孔22aに連結されると、直線部24aの端部24a3側にある第1被覆部51をスタブ61側に移動する。第1被覆部51は、溶接部71を外側から覆い、他端部が入口ヘッダ22に当接した位置で位置決めされる。そして、第1被覆部51は、一端部が直線部24aの端部24a3に溶接部73を介して固定され、他端部が入口ヘッダ22の外周面に溶接部74を介して固定される。第1被覆部51は、直線部24aの端部24a3とスタブ61の一端部との溶接部71を外側から覆うことで、溶接部71を周囲の腐食環境から保護することができる。
【0068】
第2被覆部52は、第1被覆部51の全体を外側から被覆する。すなわち、第2被覆部52は、第1被覆部51の一端部と伝熱管24における直線部24aの端部24a3との溶接部(接続部)73を覆う。このとき、溶接部73は、第2被覆部52と同じ被覆部75または別の被覆部により隙間なく被覆される。また、第2被覆部52は、第1被覆部51の他端部と入口ヘッダ22との溶接部(接続部)74を覆う。第2被覆部52は、ライニングであり、特に、溶接部73の外表面を電位差腐食から守るために、溶接部73の外表面を直線部24aの端部24a3、スタブ61、第1被覆部51とは異なる材料により所定の厚さだけ被覆する。第2被覆部52としてのライニングを設ける方法は、例えば、塗覆装がある。ライニングの材料としては、例えば、耐食FRP(強化プラスチック)、樹脂(例えば、王子ゴム化成株式会社のHF281など)、ゴムシート(硬質ゴム、クロロプレンなど)、ガラス、フッ素樹脂などが適用される。
【0069】
第2被覆部52は、第1被覆部51だけを被覆するものではなく、溶接部73,74をも被覆する。第2被覆部52の被覆膜厚は、400μm以上とすることが好ましい。この場合、第1被覆部51の厚さが第2被覆部52の厚さより厚いことが好ましい。例えば、第1被覆部51の厚さt1、第2被覆部52の厚さt2としたとき、t2<t1とすることが好ましい。第2被覆部52は、直線部24aの端部24a3と第1被覆部51の一端部との溶接部73を周囲の腐食環境から保護することができる。また、第2被覆部52は、第1被覆部51や、溶接部74の劣化を抑制することができる。
【0070】
伝熱管24は、第1被覆部51が直線部24aの端部24a3とスタブ61の一端部との溶接部71の外側を被覆し、第2被覆部52が第1被覆部51の外側を被覆する。そのため、ステンレス鋼と炭素鋼とを異材溶接する溶接部71を第1被覆部51により被覆し、周囲の腐食環境から保護することができる。また、第2被覆部52により第1被覆部51の劣化(減肉)を抑制することができる。
【0071】
但し、第2被覆部52は、例えば、樹脂ライニングであり、長期の使用により劣化するおそれがある。しかし、第2被覆部52が劣化しても、ステンレス鋼と炭素鋼とを異材溶接する溶接部71は、第1被覆部51により被覆されており、溶接部71の腐食を抑制し、伝熱管24の耐久性を向上し、寿命を延長することができる。
【0072】
ステンレス鋼と炭素鋼とを異材溶接する溶接部71を、従来技術のように、第2被覆部52だけで被覆していた場合、長期の使用により第2被覆部52が劣化し、溶接部71が露出して腐食環境にさらされる可能性がある。そのため、再加熱装置105の定期点検作業で、伝熱管24における第2被覆部52の劣化状態を把握する必要があり、必要に応じて樹脂ライニングを再施工する必要が生じる。伝熱管24を点検する場合、作業者は、点検孔13b(
図3参照)から第2被覆部52を目視点検することになる。しかし、点検孔13bは、小さく、すべての伝熱管24における第2被覆部52を目視点検することは、困難であり、また、作業に長時間を要してしまう。定期点検作業が長期間におよぶと、再加熱装置105の停止期間が長くなり、排ガスGの処理に支障をきたしてしまう。
【0073】
本実施形態では、第1被覆部51が異材接合の溶接部71を被覆し、第2被覆部52が第1被覆部51を被覆することから、第2被覆部52が劣化しても、第1被覆部51が露出するだけで、異材接合の溶接部71が露出することはない。そのため、長期間にわたって、溶接部71を周囲の腐食環境から保護することができる。
【0074】
なお、さらなる長期間の使用により、第1被覆部51も劣化した場合、第1被覆部51を交換することができる。第1被覆部51は、溶接部73,74により固定されていることから、溶接部73,74を除去することで第1被覆部51を撤去し、新しい第1被覆部51を固定することができる。一方、従来技術のように、溶接部71が第2被覆部52だけで被覆されていた場合、第2被覆部52が劣化すると、溶接部71が腐食し、スタブ61を交換する必要が生じる。しかし、スタブ61は、拡管処理により入口ヘッダ22や出口ヘッダ23に連結されていることから、撤去が難しく、作業に長時間を要してしまう。
【0075】
また、
図3に示すように、伝熱管24と入口ヘッダ22と出口ヘッダ23との接続部に被覆部50(第1被覆部51と第2被覆部52)が配置されると、この部分の開口面積が小さくなり、排ガスGの流れ量が減少する。すなわち、被覆部50が抵抗となり、伝熱管24におけるフィンが設けられた直線部24aに流れる排ガスGの流量が増加し、熱交換効率を向上させることができる。
【0076】
[他の実施形態]
上述の実施形態では、伝熱管本体を直線部24aとし、連結管をスタブ61としたが、この構成に限定されるものではない。
図8は、伝熱管の連結部を表す断面図である。
【0077】
図8に示すように、伝熱管24の直線部24aは、第1直線部24aaと、第2直線部24abとを有し、排ガス通路14(
図3参照)に配置される。第1直線部24aaは、ステンレス鋼により形成される。一方、第2直線部24abは、炭素鋼により形成される。この場合、第2直線部24abに適用される炭素鋼と、第1直線部24aaに適用されるステンレス鋼とは、異なる材料であることから、電位差により腐食が発生しやすい。
【0078】
そこで、本実施形態の伝熱管24は、ステンレス鋼により形成された第1直線部24aaと、炭素鋼により形成された第2直線部24abとの溶接部(接続部)に被覆部80が設けられる。伝熱管24は、第1直線部24aaと第2直線部24abとの溶接部が外側から被覆部80に覆われることで、溶接部と水分との接触が抑制され、溶接部の電位差による腐食を抑制することができる。
【0079】
被覆部80は、第1被覆部81と、第2被覆部82とを有する。すなわち、本実施形態の伝熱管24は、第1直線部(伝熱管本体)24aaと、第2直線部(連結管)24abと、第1被覆部81と、第2被覆部82とを備える。
【0080】
第1直線部24aaは、ステンレス鋼により形成される。第2直線部24abは、炭素鋼により形成される。第1直線部24aaおよび第2直線部24abは、少なくとも接続される各端がフィンの設けられていない素管であり、同形状をなす。第1直線部24aaと第2直線部24abは、端部同士が全周溶接され、溶接部91により接続される。溶接部91は、リング形状をなす。この場合、第1直線部24aaは、ステンレス鋼であり、第2直線部24abは、炭素鋼であることから、異材接合となる。
【0081】
第1被覆部81は、円筒形状をなし、炭素鋼により形成される。第1被覆部81は、内周面が伝熱管24における直線部24aの端部24a3の外周面に隙間なく密着する。第1被覆部81は、長手方向の一端部が第1直線部24aaの外周面に全周溶接され、溶接部92により接続される。また、第1被覆部81は、長手方向の他端部が第2直線部24abの外周面に全周溶接され、溶接部92により接続される。
【0082】
第2被覆部82は、第1被覆部81の一端部と第1直線部24aaとの溶接部92を覆う。また、第2被覆部82は、第1被覆部81の他端部と第2直線部24abとの溶接部92を覆う。このとき、溶接部92は、第2被覆部82と同じ被覆部93または別の被覆部により隙間なく被覆される。第2被覆部82は、ライニングであり、特に、溶接部92の外表面を電位差腐食から守るために、溶接部92の外表面を第1直線部24aa、第2直線部24ab、第1被覆部81とは異なる材料により所定の厚さだけ被覆する。
【0083】
第2被覆部82は、第1被覆部81だけを被覆するものではなく、溶接部92をも被覆する。第2被覆部82は、第1直線部24aaと第1被覆部81の一端部との溶接部92を周囲の腐食環境から保護することができる。また、第2被覆部82は、第1被覆部81や、溶接部92の劣化を抑制することができる。
【0084】
なお、上述した実施形態にて、第1被覆部51,81を円筒形状としたが、第1被覆部51,81を周方向に複数分割された分割体とし、複数の分割体を伝熱管24の外側に配置した後、溶接により連結することで円筒形状としてもよい。
【0085】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る伝熱管は、排ガス通路に配置される伝熱管本体としての直線部24aまたは第1直線部24aaと、排ガス通路14に配置され、直線部24aまたは第1直線部24aaと異なる材料で形成されて長手方向の一端部が直線部24aまたは第1直線部24aaにおける長手方向の端部に溶接により接続される連結管としてのスタブ61または第2直線部24abと、直線部24aとスタブ61との溶接部(接続部)71または第1直線部24aaと第2直線部24abとの溶接部(接続部)91の外側を被覆する金属製の第1被覆部51,81と、第1被覆部51,81の外側を被覆する第2被覆部52,82とを備える。
【0086】
第1の態様に係る伝熱管によれば、伝熱管24は、第1被覆部51が直線部24aの端部24a3とスタブ61の一端部との溶接部71の外側を被覆することで、ステンレス鋼と炭素鋼とを異材溶接する溶接部71が腐食環境にさらされることがない。また、伝熱管24は、第2被覆部52が第1被覆部51の外側を被覆することで、第1被覆部51の劣化を抑制することができる。その結果、伝熱管24の耐久性の向上を図ることができる。
【0087】
第2の態様に係る伝熱管は、第1の態様に係る伝熱管であって、さらに、直線部24aおよび第1直線部24aaは、スタブ61および第2直線部24abより電位の高い材料により形成され、第1被覆部51,81は、スタブ61および第2直線部24abと同じ材料により形成される。これにより、第1被覆部51,81とスタブ61または第2直線部24abとの溶接部73,92の腐食を抑制することができる。
【0088】
第3の態様に係る伝熱管は、第2の態様に係る伝熱管であって、さらに、直線部24aおよび第1直線部24aaは、ステンレス鋼により形成され、スタブ61および第2直線部24abと第1被覆部51,81は、炭素鋼により形成される。これにより、第1被覆部51,81とスタブ61または第2直線部24abとの溶接部73,92の腐食を抑制することができる。
【0089】
第4の態様に係る伝熱管は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る伝熱管であって、さらに、第2被覆部52,82は、ライニングにより形成される。これにより、異材接合による腐食を防止することができる。
【0090】
第5の態様に係る伝熱管は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る伝熱管であって、さらに、第1被覆部51,81の厚さが第2被覆部52,82の厚さより厚い。これにより、異材接合の溶接部71,91を長期間にわたって保護することができる。
【0091】
第6の態様に係る伝熱管は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る伝熱管であって、さらに、第1被覆部51,81は、内周面が伝熱管24の直線部24aの外周面に隙間なく密着し、長手方向の一端部が直線部24aまたは第1直線部24aaに溶接により接続され、第2被覆部52,82は、第1被覆部51,81の一端部と直線部24aまたは第1直線部24aaとの溶接部73,92を覆う。これにより、第2被覆部52,82により異材接合である第1被覆部51,81の溶接部73,92を周囲の腐食環境から保護することができる。
【0092】
第7の態様に係る伝熱管は、第6の態様に係る伝熱管であって、さらに、連結管としてのスタブ61は、長手方向の他端部が入口ヘッダ22や出口ヘッダ23に連結され、第1被覆部51は、長手方向の他端部が入口ヘッダ22または出口ヘッダ23に溶接により接続され、第2被覆部52は、第1被覆部51の他端部と入口ヘッダ22または出口ヘッダ23との溶接部74を覆う。これにより、第2被覆部52により溶接部74の劣化を抑制することができる。
【0093】
第8の態様に係る伝熱管は、第6の態様に係る伝熱管であって、さらに、第1被覆部81は、長手方向の他端部が連結管および第2伝熱管本体としての第2直線部24abに溶接により接続され、第2被覆部82は、第1被覆部81の他端部と第2直線部24abとの溶接部92を覆う。これにより、第2被覆部82により溶接部92の劣化を抑制することができる。
【0094】
第9の態様に係る熱交換器は、排ガス通路14を形成するダクトケーシング13と、熱媒体の入口部が設けられる入口ヘッダ22と、熱媒体の出口部が設けられる出口ヘッダ23と、排ガス通路14に配置されて入口ヘッダ22と出口ヘッダ23とを連結する伝熱管24とを備える。これにより、伝熱管24の耐久性の向上を図ることができる。
【0095】
第10の態様に係る排煙処理装置は、排ガスGの熱の一部を回収する熱回収装置101と、熱回収後の排ガスGに含まれるばいじんを除去する電気集塵装置102と、集塵後の排ガスGに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置104と、脱硫後の排ガスGを再加熱する熱交換器11が適用される再加熱装置105とを備える。これにより、伝熱管24の耐久性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0096】
11 熱交換器
12 バンドル
13 ダクトケーシング
14 排ガス通路
21 ケーシング
22 入口ヘッダ
23 出口ヘッダ
24 伝熱管
24a 直線部(伝熱管本体)
24a1 素管
24a2 フィン
24a3 端部
24aa 第1直線部(伝熱管本体)
24ab 第2直線部(連結管)
31,33 連結フランジ
32,34 フランジ接手
41 支持板
42 共鳴防止板
50,80 被覆部
51,81 第1被覆部
52,82 第2被覆部
61 スタブ(連結管)
71,73,74,91,92 溶接部
72 シール溶接部
100 排煙処理装置
101 熱回収装置
102 電気集塵装置
103 送風装置
104 脱硫装置
105 再加熱装置
106 送風装置
111 ボイラ
112 煙突
121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g,121h,121i 排ガス通路
122 開閉弁
123 ミストエリミネータ
131 循環ポンプ
132 ヒータ
133 ドレンタンク
134 開閉弁
L11 第1熱媒体循環ライン
L12 第2熱媒体循環ライン
L13 蒸気ライン
L14 蒸気ドレンライン
L21,L23 第1接続ライン
L22,L24 第2接続ライン
L31 熱媒体供給ライン
L32 熱媒体排出ライン
G 排ガス
【要約】
【課題】伝熱管および熱交換器並びに排煙処理装置において、伝熱管の耐久性の向上を図る。
【解決手段】排ガス通路に配置される伝熱管本体と、排ガス通路に配置され、伝熱管本体と異なる材料で形成されて長手方向の一端部が伝熱管本体における長手方向の端部に溶接により接続される連結管と、伝熱管本体と連結管との接続部の外側を被覆する金属製の第1被覆部と、第1被覆部の外側を被覆する第2被覆部と、を備える。
【選択図】
図5