(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-04
(45)【発行日】2025-09-12
(54)【発明の名称】フローセル
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20250905BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20250905BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20250905BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20250905BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/68
G01N35/08 A
G01N37/00 101
G01N37/00 102
(21)【出願番号】P 2020572464
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2020014771
(87)【国際公開番号】W WO2020159794
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ジェー クラフト
(72)【発明者】
【氏名】タルン クマール クラナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤー-シャン ウー
(72)【発明者】
【氏名】シージュン チェン
(72)【発明者】
【氏名】アーノード ライヴァル
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン フラートン
(72)【発明者】
【氏名】エム シェーン ボーエン
(72)【発明者】
【氏名】フイ ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エス フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ヤサマン ファーシチ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー レッサール ヴィガー
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-504864(JP,A)
【文献】国際公開第2018/119101(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/208561(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318016(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318017(US,A1)
【文献】特開2009-002956(JP,A)
【文献】特開2017-227646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
G01N 35/00-37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材上または基材内に画定された複数のチャンバと、
前記基材内および前記複数のチャンバの各々の周囲内に画定される複数の凹部であって、該複数の凹部は間質領域によって分離され、各前記凹部が底面を有する、複数の凹部と、
前記複数の凹部の各々の内部の前記底面に付着された増幅プライマーと、
前記複数のチャンバの各々の内部に配置された捕捉部位と、
を含み、該捕捉部位は、複合体または試料の局在化のために物理的および/または化学的に修飾されたフローセルの一部であり、かつ、
(i)基材内に画定されるウェルであり、該ウェルは、前記複数の凹部の各々の開口部寸法よりも大きい開口部寸法を有する、
(ii)その表面に化学捕捉剤を有する突起である、または
(iii)前記間質領域の一部に配置された化学捕捉剤を含み、
該化学捕捉剤は、複合体または試料に接着、保持、または結合するための材料、分子または部分である、フローセル。
【請求項2】
前記捕捉部位が基材内に画定されるウェルである場合、前記ウェル内に化学捕捉剤をさらに含む、請求項1に記載のフローセル。
【請求項3】
前記捕捉部位が基材内に画定されるウェルである場合、前記ウェル内に捕捉ビーズをさらに含み、前記捕捉ビーズが化学捕捉剤で被覆されている、請求項1に記載のフローセル。
【請求項4】
前記基材上に配置された疎水性材料をさらに含み、該疎水性材料が前記複数のチャンバの各々を画定する、請求項1、2、または3のいずれかに記載のフローセル。
【請求項5】
前記複数のチャンバの各々は、隣接するチャンバ間の放出されたライブラリフラグメントの横方向拡散を遮断するのに十分な高さを有する、請求項1、2、3、または4のいずれかに記載のフローセル。
【請求項6】
前記各凹部にポリマー層をさらに含み、前記
増幅プライマーが前記ポリマー層に付着している、請求項1、2、3、4、または5のいずれかに記載のフローセル。
【請求項7】
前記複数のチャンバの各々は、1μm~1000μmの範囲の開口部寸法を有し、
前記複数の凹部のそれぞれは、1nm~2μmの範囲の開口部寸法を有し、
前記チャンバの開口部寸法は、前記凹部の開口部寸法よりも大きい、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれかに記載のフローセル。
【請求項8】
前記複数のチャンバは、前記基材を横切る第1のパターンで配置され、
前記複数の凹部の各サブセットは、前記チャンバの各内部で第2のパターンで配置される、請求項1、2、3、4、5、6、または7のいずれかに記載のフローセル。
【請求項9】
前記複数のチャンバは、前記基材にパターニングされる、請求項1、2、3、4、5、6、7、または8のいずれかに記載のフローセル。
【請求項10】
複数のチャンバと、
該複数のチャンバの各々の内部の複数の凹部であって、該複数の凹部は間質領域によって分離され、各前記凹部が底面を有する、複数の凹部と、
該複数の凹部の各々の内部の前記底面に付着された増幅プライマーと、
前記複数のチャンバの各々における捕捉部位と、
を含むフローセルに、複数の複合体を導入することであって、
前記捕捉部位は、
(i)前記複数の凹部の各々の開口部寸法よりも大きい開口部寸法を有するウェルである、
(ii)その表面に化学捕捉剤を有する突起である、または
(iii)前記間質領域の一部に配置された化学捕捉剤を含み、
前記複合体の各々は、
担体と、
該担体に付着した、または該担体内に含有された配列決定可能な核酸フラグメントであって、これにより、前記複合体の1つが、前記複数のチャンバのうちの少なくともいくつかにおいて、前記捕捉部位のうちの各1つに付着する、配列決定可能な核酸フラグメントと、
を含む、複数の複合体の導入することと、
前記複合体の各々の担体に、前記配列決定可能な核酸フラグメントをそこから放出させ、これにより、各チャンバの壁が、前記配列決定可能な核酸フラグメントの輸送および播種を、各チャンバ内の各凹部に制限することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月29日に出願された米国仮出願第62/798,348号の利益を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
二本鎖DNA(dsDNA)標的分子からフラグメント化およびタグ化DNA分子のライブラリを作製することが望ましい様々な方法および用途がある。しばしば、目的は、DNA配列決定反応における鋳型として使用するために、より大きなdsDNA分子からより小さなDNA分子(例えば、DNAフラグメント)を生成することである。テンプレートは、取得される短い読み取り(リード)長であることとしてもよい。データ解析の間、オーバーラップする短い配列読み取りを整列させて、より長い核酸配列を再構成することができる。いくつかの例では、配列決定前のステップ(特定の核酸分子のバーコード化など)を使用して、データ解析を簡略化することができる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示される第1の態様は、基材と、基材上または基材内に画定される複数のチャンバと、基材内および複数のチャンバの各々の周囲内に画定される複数の凹部であって、凹部が間質領域(格子間領域)によって分離される複数の凹部と、複数の凹部の各々の内部に付着されるプライマーと、複数のチャンバの各々の内部に位置する捕捉部位とを含むフローセルである。
【0004】
第1の態様の一例では、捕捉部位は、基材内に画定されるウェルであり、ウェルは、複数の凹部の各々の開口部寸法よりも大きい開口部寸法を有する。一実施形態では、フローセルは、ウェル内に化学捕捉剤をさらに含む。別の例では、フローセルは、ウェル内に捕捉ビーズをさらに含み、捕捉ビーズは化学捕捉剤でコーティングされる。
【0005】
第1の態様の一例では、捕捉部位は、表面に化学捕捉剤を有する突出部である。
【0006】
第1の態様の一例では、捕捉部位は、間質領域の一部上に配置された化学捕捉剤を含む。
【0007】
第1の態様の一例では、フローセルは、基材上に配置された疎水性材料をさらに含み、疎水性材料は、複数のチャンバの各々を画定する。
【0008】
第1の態様の一例では、複数のチャンバの各々は、隣接するチャンバ間の放出されたライブラリフラグメントの横方向拡散を遮断するのに十分な高さを有する。
【0009】
第1の態様の一例では、フローセルは、凹部の各々にポリマー層をさらに含み、プライマーはポリマー層に付着される。
【0010】
第1の態様の一例では、複数のチャンバの各々は、約1μm~約1000μmの範囲の開口部寸法を有し、複数の凹部の各々は、約1nm~約2μmの範囲の開口部寸法を有し、チャンバ開口部寸法は、凹部開口部寸法よりも大きい。
【0011】
第1の態様の例では、複数のチャンバは、基材を横切る第1のパターンで配置され、複数の凹部の各のサブセットは、チャンバの各内で第2のパターンで配置される。
【0012】
第1の態様の例では、複数のチャンバは、基材内にパターン化される。
【0013】
本明細書に開示されるフローセルの任意の特徴は、任意の望ましい方法および/または構成で一緒に組み合わされ得ることを理解されたい。
【0014】
本明細書に開示される第2の態様は、複数のチャンバと、複数のチャンバの各々の内部の複数の凹部と、複数の凹部の各々の内部に付着されたプライマーと、複数のチャンバの各々の内部の捕捉部位とを含む、複数の複合体をフローセルに導入することを含む方法であり、ここで、前記複合体の各々は、担体と、前記担体に結合されるか、または前記担体内に含まれる配列決定可能な核酸フラグメントとを含み、前記複合体の1つは、前記複数のチャンバのうちの少なくともいくつかにおいて、前記捕捉部位のそれぞれの1つに結合し、前記複合体の前記担体は、前記配列決定可能な核酸フラグメントをそこから放出させ、それによって、前記それぞれのチャンバの壁は、前記配列決定可能な核酸フラグメントの輸送および播種(シーディング)を、前記それぞれのチャンバ内のそれぞれの凹部に制限する。
【0015】
この方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、この方法および/またはフローセルの特徴の任意の組み合わせは、一緒に、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わせることができることを理解されたい。
【0016】
本明細書に開示される第3の態様は、複合体の平均直径の少なくとも約50%である深さをそれぞれ有する複数のチャンバと、前記複数のチャンバのそれぞれ内に付着されたプライマーとを含むフローセルに複数の複合体を導入することを含み、前記複数の複合体のそれぞれは、担体と、前記担体に付着または内包された同じ鋳型核酸からの配列決定可能な核酸フラグメントとを含み、それにより、前記複合体の少なくともいくつかは、前記複数のチャンバの少なくともいくつかに捕捉され;前記フローセルから非捕捉複合体を洗い流し;前記フローセルに外部固定化剤を導入することなく、捕捉された複合体の担体が、各複合体が捕捉された前記各チャンバ内に前記配列決定可能な核酸フラグメントを放出させ、それにより、前記配列決定可能な核酸フラグメントの輸送および播種が、前記深さによって制限される、方法である。
【0017】
第3の態様の一例では、深さは、約10μm以上である。
【0018】
第3の態様の一例では、各チャンバは下面を有し、1つは以下のものである:プライマーは下面を横断するポリマー層に付着されている;またはプライマーはそれぞれ下面に位置する複数の空間的に分離されたポリマーアイランドに付着されている。
【0019】
第3の態様の一例では、各チャンバは、底面と、その中に画定された複数の凹部とを有し、プライマーは、凹部の各々の内部のポリマー層にそれぞれ付着される。
【0020】
第3の態様の一例では、担体は固体保持体であり、放出を生じさせるのは、切断剤をフローセルに導入すること、または配列決定可能な核酸フラグメントの第1の配列のアニーリング温度を超えるフローセルを加熱することを含む。
【0021】
第3の態様の一例では、担体はハイドロゲル保持体であり、放出を生じさせるのは、フローセルの加熱、フローセルへの切断剤の導入、またはそれらの組み合わせを含む。
【0022】
この方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、任意の方法および/またはフローセルの特徴の任意の組み合わせを、本明細書に開示される任意の実施例と一緒に、および/または組み合わせて使用することができることを理解されたい。
【0023】
本明細書に開示される第4の態様は、それぞれが約5μm以下の深さを有する複数のチャンバと、前記複数のチャンバのそれぞれの内部の捕捉部位と、前記複数のチャンバのそれぞれの内部に付着されたプライマーとを含むフローセルに複数の複合体を導入することを含み、前記複数の複合体のそれぞれは、担体ビーズと、前記担体ビーズに付着された同じ鋳型核酸からの配列決定可能な核酸フラグメントとを含み、それにより、前記複合体の少なくともいくつかは、それぞれの捕捉部位に固定化され;前記フローセルから非固定化複合体を洗い流し;前記複数のチャンバに外部固定化剤を導入し;前記捕捉された複合体の前記担体ビーズに、配列決定可能な核酸フラグメントを、それぞれの複合体が捕捉される前記それぞれのチャンバ内に放出させ、それにより、前記配列決定可能な核酸フラグメントの輸送および播種が、前記外部固定化剤によって制限される、方法である。
【0024】
第4の態様の一例では、外部固定化剤は、気体拡散バリア;鉱油およびシリコーンオイルからなる群から選択される液体拡散バリア;グリセロールおよびスクロースからなる群から選択される粘性媒体拡散バリア;またはそれらの組合せである。
【0025】
第4の態様の一例では、捕捉部位は捕捉部位プライマーであり、複合体の各々は、捕捉部位プライマーにハイブリダイズし得る相補的プライマーを含む。
【0026】
第4の態様の一例では、捕捉部位は、結合対の第1のメンバーを含み、複合体の各々は、結合対の第2のメンバーを含む。
【0027】
第4の態様の一例では、各チャンバには下面があり、次のうちの1つが挙げられる:プライマーは下面を横断するポリマー層に付着されている;またはプライマーはそれぞれ下面に位置する複数の空間的に分離されたポリマーアイランドに付着されている。
【0028】
第4の態様の一例では、各チャンバは、その中に画定された底面および複数の凹部を有し、プライマーは、凹部の各々の内部のポリマー層にそれぞれ付着される。
【0029】
第4の態様の一例では、放出を生じさせるのは、フローセルに切断剤を導入することを含む。
【0030】
この方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、この方法および/またはフローセルの特徴の任意の組み合わせは、一緒に使用され、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わせることができることを理解されたい。
【0031】
さらに、任意の方法および/または任意のフローセルの任意の特徴を、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができ、および/または少なくとも本明細書に記載されるような利益を達成するために本明細書に開示される任意の実施例と組み合わせることができることを理解されたい。
【0032】
本開示の実施例の特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかになり、ここでは、発明の同様に参照番号は、おそらく同一ではないが、同様の発明の構成要素に対応する。簡潔にするために、先に記載した機能を有する符号または特徴は、それらが現れる他の図面に関連して記載されてもなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、フローセルの一例の一部の斜視図である。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、フローセルのチャンバアーキテクチャ(構造)の異なる例を示す、それぞれ
図1の線2A~2Aおよび2B~2Bに沿った断面図である。
【
図3】
図3A~3Cは、フローセルにおいて使用され得る捕捉部位の異なる例を示す断面図である。
【
図4】
図4A~4Cは、本明細書に開示される複合体の異なる例の概略図である。
【
図5】
図5は、(i)から(iii)を含む概略的なフロー図であり、フローセルのチャンバ内にハイドロゲルマトリックスが形成される方法の一例を示す。
【
図6】
図6A~6Cは、それぞれ、
図6A)マイクロチャンバ内の複合体の顕微鏡写真、
図6B)
図6Aのマイクロチャンバ内の複合体からシードされたライブラリから生成されたクラスタの顕微鏡写真、および
図6C)第1の塩基配列決定走行中の
図6Bのマイクロチャンバのリアルタイム分析の蛍光顕微鏡写真を示す。
図6D)
図6Cに示すマイクロチャンバからの読み取りから得られたアイランドを示す図である。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、複合体導入後のフローセルa)(
図7A)、およびb)第1の塩基配列決定走行(
図7B)のリアルタイム分析中の5つの異なるセクションおよび2つの異なるレーンの部分の顕微鏡写真を示し、ここで、レーン1のセクション1-5内の部分は、それぞれ、(i)-(v)とラベル付けされ、レーン2のセクション1-5内の部分は、それぞれ、(vi)-(x)とラベル付けされる。
【
図8】
図8は、1)ハイドロゲル形成によるフローセルサンプルカプセル化、2)フローセルサンプル溶解、3)フローセルDNA抽出、および4)フローセルライブラリ調製を示すいくつかの顕微鏡写真を示す。
【
図9】
図9は、配列決定走行を行った後のフローセル上の異なるマイクロチャンバの元々はカラーの蛍光顕微鏡画像の白黒版である。
【
図10】
図10Aおよび10Bは、a)カプセル化マトリックス前駆体のカプセル化後(
図10A)、およびb)ハイドロゲル形成後(
図10B)、の5つの異なるセクションおよび2つの異なるレーンのフローセルの顕微鏡写真を示し、ここで、レーン1のセクション1-5内の部分はそれぞれ(i)-(v)と標識され、レーン2のセクション1-5内の部分はそれぞれ(vi)-(x)と標識される。
【
図11】
図11Aおよび11Bは、異なるビーズ濃度および同じ空気流量を有する流体で調製されたフローセル表面の明視野画像を示す。
【
図12】
図12A~12Eは、異なるビーズ濃度を有し、同じ空気流量を有する流体で調製されたフローセル表面の明視野画像を示す。
【
図13】
図13は、水ドメインの直径(例えば、液滴、パドルアイランド、液層)(μm単位)対ビーズ密度(ビーズ/mm
2)のグラフであり、ここで、データは、
図12Aから12Eから外挿されたものである。
【
図14】
図14Aおよび14Bは、同じビーズ濃度および異なる空気流量を有する流体で調製されたフローセル表面の明視野像を描写する。
【
図15】
図15A~15Dは、同じビーズ濃度および異なる塩濃度を有し、同じ空気流量を有する流体で調製されたフローセル表面の明視野画像を示す。
【
図16】
図16は、水ドメインの直径(例えば、液滴、パドルアイランド、液層)(μm単位)対塩濃度(mM Na
+)のグラフであり、ここで、データは、
図15Aから15Dから外挿されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書に開示されるフローセルは、フローセル上の個々のライブラリの空間的分離を可能にする特定のアーキテクチャ(構造)を有する。個々のライブラリは、より大きな核酸試料の同じ大きさ(例えば、<1000bp)のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)フラグメントを含み、フラグメントはそれぞれの端部に結合したアダプタを有する。本明細書中に開示されるいくつかの例において、ライブラリは、フローセルに導入される担体上または担体中に含まれる。本明細書に開示された例のいくつかの他の例では、試料がフローセルに導入された後、ライブラリはフローセル上にその場で形成される。いくつかの例では、フローセルアーキテクチャは、個々のキャリアまたは試料を捕捉することができる個々の捕捉部位を含む。これらの捕捉部位は、個々のチャンバ内に位置し、したがって、個々のチャンバ内のフローセルを横切って担体(したがって、担体内または担体上のライブラリ)または試料を空間的に分離することができる。他の例では、フローセルアーキテクチャは、捕捉部位のないチャンバを含む。これらの他の例では、チャンバ自体は、1つ以上の担体または試料を物理的に閉じ込めることができる。
【0035】
キャリアの空間的分離および閉じ込めは、キャリア内またはキャリア上に含まれるライブラリの空間的分離および閉じ込めを達成するのに役立ち得る。試料の空間的分離および閉じ込めは、試料からフローセル上に生成されるライブラリの空間的分離および閉じ込めを達成するのに役立つ。これらの実施例のいずれにおいても、個々のキャリアから放出されるか、または個々の試料からフローセル上に形成されるライブラリは、特定のチャンバ内に含まれ得る。このように、チャンバ構造は、フローセル表面を横切るライブラリフラグメントのランダムな結合を減少させる。さらに、ライブラリフラグメントの輸送および播種、並びにその後のクラスタ生成も、各チャンバ内に閉じ込められ得る。このように、閉じ込めは、ライブラリフラグメントの実質的に均一な播種、および、したがって実質的に均質化されたクラスタ密度さえももたらし得る。配列決定の間、個々のクラスタは、ヌクレオチドがクラスタのそれぞれの鋳型鎖に組み込まれるときに、蛍光シグナルの「空間濁り(cloud)」を生成する。クラスタのチャンバへの閉じ込めは、少なくとも、空間的な濁りクロストークおよび/または重複を低減することができ、空間的な濁りの同定を改善することもできる。さらに、任意の個々のチャンバから得られた読み取りは、同じサンプルから生成され得るので、これらは、短い読み取りを一緒にバイオインフォマティクス的に縫合(stitch)することによってサンプルを再構成するために使用され得る。
【0036】
本明細書に開示されるフローセルアーキテクチャは、表面積の全体的な利用を改善することもできる。
定義
【0037】
本明細書中で使用される用語は、特に明記しない限り、関連技術におけるそれらの通常の意味をとるものと理解されるであろう。本明細書で使用されるいくつかの用語およびその意味は、以下に記載される。
【0038】
本明細書で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「前記(the)」は、文脈が別段の明確な指示をしない限り、単数形および複数形の両方を指し、本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含む(containing)」または「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、引用されていない要素または方法ステップを除外しない。
【0039】
「1つの例」、「別の例」、「実施例」などへの明細書全体にわたる言及は、例に関連して記載される特定の要素(例えば、特徴、構造、組成物、構成、および/または特性)が本明細書で記載される少なくとも1つの例に含まれ、他の例では存在してもしなくてもよい。また、任意の実施例について記載された要素は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、様々な実施例において任意の適切な方法で組み合わせることができることを理解されたい。
【0040】
特許請求の範囲を含め、本開示全体を通して使用される「実質的に」および「約」という用語は、処理の変動などによる小さな変動を説明し、説明するために使用される。例えば、これらの用語は、指定された値から±2%以下、例えば、指定された値から±1%以下、例えば、指定された値から±0.5%以下、例えば、指定された値から±0.2%以下、例えば、指定された値から±0.1%以下、例えば、指定された値から±0.05%以下などの、指定された値から±5%以下、を指すことができる。
【0041】
アダプタ:線状オリゴヌクレオチドシークエンスで、例えばライゲーションやタグメンテーションによって核酸分子に融合できるもの。いくつかの実施例では、アダプタは、フローセルに導入される任意の標的配列の3’末端または5’末端に対して実質的に非相補的である。適切なアダプタ長は、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、または約12ヌクレオチド~約60ヌクレオチド、または約15ヌクレオチド~約50ヌクレオチドの範囲であり得る。アダプタは、ヌクレオチドおよび/または核酸の任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの例では、アダプタは、1つ以上の位置に1つ以上の切断可能な基を含む。いくつかの例では、アダプタは、プライマーの少なくとも一部分に相補的な配列、例えば、ユニバーサルヌクレオチド配列(例えば、P5またはP7配列)を含むプライマーを含むことができる。いくつかの例では、アダプタは、下流側の誤り訂正、識別、または配列決定を支援するインデックスまたはバーコード配列を含むことができる。インデックスは、核酸分子の試料またはソース(例えば、フラグメント)に固有であってもよい。いくつかの例では、アダプタは、配列決定プライマー配列または配列決定結合部位を含むことができる。異なるアダプタの組み合わせは、DNAフラグメントのような核酸分子に組み込まれてもよい。
【0042】
捕捉部位:複合体または試料のいずれかの局在を可能にする物理的に修飾および/または化学的特性で修飾されたフローセル表面の一部。一実施例では、捕捉部位は化学捕捉剤を含むことができる。
【0043】
担体:その中に含まれる配列決定ライブラリを有することができるハイドロゲル保持体、またはその表面に結合された配列決定可能な核酸フラグメントを有することができる固形保持体。
【0044】
化学捕捉剤:標的分子(すなわち、複合体または試料)に接着、保持、または結合することができる材料、分子または部分。一実施例の化学捕捉剤は、標的分子の標的核酸の少なくとも一部に相補的であるか、または標的分子に結合した捕捉核酸(例えば、捕捉オリゴヌクレオチド)を含む。もう一つの例として、化学的捕捉剤はリンカーである。天然のDNAまたはRNA試料の場合、リンカーは、電荷または疎水性相互作用を介して結合するインターカレーターなどの、一方の末端上の核酸結合部分を含み得る。細胞試料の場合、リンカーは、細胞膜結合部分(例えば、表面タンパク質に対する抗原)または膜貫通部分(例えば、一方の末端のリン脂質)を含み得る。さらに別の例の化学捕捉剤は、標的分子(または標的分子に結合した連結部分)に結合することができるレセプター-リガンド結合対(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、レクチン、炭水化物、核酸結合タンパク質、エピトープ、抗体など)のメンバーを含む。化学捕集剤のもう一つの例は、標的分子と静電相互作用、水素結合、または同価結合を形成することができる化学試薬(例えば、チオール‐ジスルフィド交換、クリック化学、ディール‐アルダー等)である。
【0045】
複合体:ハイドロゲル保持体または固形保持体のような担体、および担体に結合した、または担体内に含まれる配列決定可能な核酸フラグメント。担体はまた、結合対の一方のメンバーを含み得、他方のメンバーは捕捉部位の一部である。
【0046】
外部固定化剤:フローセルチャンバに導入された複合体または試料と混和しない気体、液体または粘性媒体。ガス状の外部固定化剤を使用して、複合体または試料の周囲に液滴を生成することができる。ガス状の外部固定化剤の例は、フローセルを通る適切な流量に向けられる空気である。例えば、空気を用いて、複合体または試料を含有する液体の液滴を形成する複合体または試料を含有する流体をフローセルから吸引することができる。形成された液滴は拡散障壁として作用する。液体または粘性媒体は、複合体から放出されるか、または例えばフローセル表面上のチャンバ内で形成される配列決定ライブラリの拡散を防止するために使用される。外部固定化剤は、配列決定ライブラリまたは任意の他のポリヌクレオチドが外部固定化剤中にほとんど~まったく溶媒和しないので、拡散バリアを形成することができる。液体形態の外部固定化剤の例には、鉱油、シリコン油、ペルフルオロ化油、フッ素化炭素油(例えば、3MからのFLUORINERT(商標)FC40)、またはそれらの組み合わせのような疎水性油が含まれる。粘性媒体形成の外部固定化剤の例としては、重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなど)、デキストラン、スクロース、グリセリンなどを含有する緩衝剤が挙げられる。いくつかの例では、粘性媒体は温度応答性ゲルである。温度応答性ゲルは、不播種温度では非粘性であり、播種温度では粘性媒体となる。温度応答性ゲルの例としては、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)およびポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド(PEO-PPO-PEO)/ラポナイトナノ粒子複合体が挙げられる。
【0047】
フラグメント:遺伝物質の一部またはフラグメント(例:DNA、RNAなど)。
【0048】
ハイドロゲルまたはハイドロゲルマトリックス:共有結合、イオン結合、または水素結合を介して架橋され、水分子を取り込んでゲルを形成する三次元の開放格子構造を形成する有機高分子(天然または合成)を含むコロイド物質。一実施例では、ハイドロゲルは、水などの約60%~約90%の流体、および約10%~約30%の重合体を含む。ハイドロゲルは、多孔質、すなわち、開放/空隙を含むことができる。気孔率は、ハイドロゲルの体積分率(無次元)であり、すなわち、材料の空隙スペースを測定し、0から100%の間のパーセンテージとして、総体積に対する空隙の体積の分率(または0~1の分率)である。一実施例では、ハイドロゲルの気孔率は、約50%(0.5)~約99%(0.99)の範囲であり得る。気孔率は、試薬(例えば、酵素、化学物質、およびより小さなサイズのオリゴヌクレオチド(50塩基対未満、例えば、プライマー)の拡散を可能にするのに十分であり得るが、より大きなサイズの核酸分子(例えば、試料、フラグメントなど)の拡散を防止する
【0049】
ハイドロゲル保持体:その中に配列決定ライブラリを含むことができる少なくとも実質的に球形(例えば、ハイドロゲルビーズ)を有するハイドロゲル。
【0050】
核酸分子:任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態であって、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらの類似体、またはそれらの混合物を含むことができる。用語は、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドを意味することができる。
【0051】
「標的」または「鋳型」核酸分子は、分析されるべき配列を指し得る。
【0052】
核酸分子中のヌクレオチドは、天然に存在する核酸およびその機能的アナログを含み得る。機能的アナログの例は、配列特異的様式で核酸にハイブリダイズすることができ、または特定のヌクレオチド配列の複製のための鋳型として使用することができる。天然に存在するヌクレオチドは、一般にホスホジエステル結合を含む主鎖を有する。アナログ構造は、当該技術分野で公知の種々のいずれかを含む代替主鎖結合を有することができる。天然に存在するヌクレオチドは、一般に、デオキシリボース糖(例えば、DNA中に見出される)またはリボース糖(例えば、RNA中に見出される)を有する。アナログ構造は、当該技術分野で公知の種々のいずれかを含む代替の糖部分を有することができる。ヌクレオチドは、天然または非天然の塩基を含むことができる。天然DNSは、アデニン、チミン、シトシンおよび/またはグアニンの1つ以上を含むことができ、天然RNAは、アデニン、ウラシル、シトシンおよび/またはグアニンの1つ以上を含むことができる。ロックド核酸(LNA)およびブリッジ核酸(BNA)などの任意の非天然塩基を使用することができる。
【0053】
プライマー:目的の標的配列とハイブリダイズすることができる核酸分子。一例として、プライマーは、ヌクレオチドがポリメラーゼによって重合され得る基質として機能する。例えば、増幅プライマーは、テンプレート増幅およびクラスタ生成の出発点として機能する。さらに別の例では、プライマーはDNAまたはRNA合成の出発点として働くことができる。例えば、配列決定プライマーは、合成された核酸鋳型鎖に相補的な新しい鎖の合成を開始するために、合成された核酸鋳型鎖にハイブリダイズすることができる。プライマーは、ヌクレオチドまたはその類似体の任意の組合せを含むことができる。いくつかの例では、プライマーは一本鎖オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。
【0054】
試料:細胞、ミクロビオーム、核酸などの遺伝物質の源。いくつかの例において、細胞は、原核細胞または真核細胞を含む単一の細胞である。いくつかの例において、細胞は、哺乳動物細胞、ヒト細胞、または細菌細胞である。いくつかの例において、核酸は、ウイルス核酸、細菌核酸、または哺乳動物核酸を含む長鎖DNA分子である。いくつかの例では、試料は、固形保持体(例えば、ビーズ)の表面に結合したトランスポゾンの挿入を介して(フラグメントとして)結合される。
【0055】
配列決定可能な核酸フラグメント:3’および5’末端にアダプタを有する遺伝物質の一部(フラグメント)。配列決定可能な核酸フラグメントにおいて、各アダプタは、既知のユニバーサル配列(例えば、フローセル上のプライマーの少なくとも一部に相補的である)および配列決定プライマー配列を含む。両方のアダプタにインデックス(バーコードまたはタグ)配列を含めることもできる。一例では、P5側はビーズインデックスを含み得、P7側はサンプルインデックスを含み得る。配列決定可能な核酸フラグメントは、例えば、固形保持体(例えば、ビーズ)の表面に結合されたトランスポゾンに挿入を介して結合されてもよく、または結合対または他の切断可能なリンカーを介して直接的に固定されてもよい。配列決定可能な核酸フラグメントはまた、ハイドロゲル保持体内に含有されてもよい。
【0056】
播種(シーディング):本明細書中に開示されるフローセルの一例のチャンバにおける、適合されたフラグメント(例えば、配列決定可能な核酸フラグメント)の固定化。
【0057】
配列決定ライブラリ:1つ以上の標的核酸分子の核酸フラグメント、またはフラグメントのアンプリコンの集まり。いくつかの例では、そのフラグメントは、その3’および5’末端で1つ以上のアダプタに連結されている。いくつかの例において、配列決定ライブラリは、1つ以上の標的核酸分子から調製され、複合体の一部である。他の例では、配列決定ライブラリは、試料を用いてフローセル表面上に調製される。
【0058】
固体保持体:形状を有する剛体または半剛体でできた小体で、例えば、球体、楕円体、微小球体、または規則的または凹凸寸法を有するかにかかわらず、他の認識された微粒子形状として特徴づけられる。固形保持体は、それに結合された配列決定ライブラリを有することができる。固体保持体に有用な例示材料としては、限定されるものではないが、ガラス;プラスチック、例えばアクリル、ポリスチレンまたはスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタンまたはポリテトラフルオロエチレン(Chemours社製のTeflon(登録商標));多糖類または架橋多糖類、例えばアガロースまたはセファロース;ナイロン;ニトロセルロース;樹脂;シリカまたはシリカ系材料、例えばシリコンおよび変性シリコンを含む;炭素繊維、金属;無機ガラス;光ファイバー束、または様々な他の重合体が挙げられる。例示的な固形保持体は、制御された細孔ガラスビーズ、常磁性または他の磁気ビーズ、トリアゾル、セファロースビーズ、ナノ結晶、および、例えば、Bangs Laboratories, Fishers Indからのミクロスフェア検出ガイドに記載されている当該技術分野で公知の他のものを含む。
【0059】
タグメンテーション:核酸分子をフラグメント化するためのトランスポソームによる核酸分子(例えば、DNAまたはRNA試料)の修飾、および一段階でフラグメントの5’末端および3’末端にアダプタを連結する。タグメンテーション反応を用いて、配列決定ライブラリ、特に、固形保持体を含む複合体を調製することができる。タグメンテーション反応は、無作為なサンプルフラグメント化とアダプタ連結を組み合わせて単一工程とし、これにより配列決定ライブラリ調製プロセスの効率が高まる。
【0060】
トランスポソーム:積分酵素(例えば、インテグラーゼまたはトランスポザーゼ)と積分認識部位(例えば、トランスポザーゼ認識部位)を含む核酸との間で形成される複合体。
【0061】
ユニバーサルヌクレオチド配列:2つ以上の核酸分子に共通する配列の領域であって、分子が互いに異なる領域をも有する領域。分子のコレクションの異なるメンバーに存在するユニバーサル配列は、ユニバーサル捕捉核酸の集団(すなわち、プライマーの少なくとも一部に相補的な配列を有するアダプタ)を用いて、いくつかの異なる核酸の捕捉を可能にすることができる。同様に、分子のコレクションの異なるメンバーに存在するユニバーサル配列は、ユニバーサル配列決定結合部位(sequencing primer sequence)の集団を用いて、いくつかの異なる核酸の増幅または複製を可能にすることができる。
フローセルアーキテクチャ
【0062】
フローセル10の例の一部を
図1に示す。フローセル10は、基材12、基材12上または基材12内に画定された複数のチャンバ14、基材12内および複数のチャンバ14の各々の周辺内に画定された複数の凹部16、凹部16の各々の内部に付着されたプライマー20、および複数のチャンバ14の各々の内部に位置する捕獲部位22を含む。
【0063】
基材12は、一般に剛性であり、水性液体に不溶性である。基材12は、単層または多層構造であってもよい。適切な基材12の例としては、エポキシシロキサン、多面体オリゴマーシルセキオキサン(POSS)またはその誘導体、ガラス、変性ガラス、変性ガラス、プラスチック、ナイロン、セラミックス/セラミック酸化物、シリカ(酸化ケイ素(SiO2))、溶融シリカ、シリカ系材料、ケイ酸AL、ケイ素、変性ケイ素(例えば、ホウ素ドープp+ケイ素)、窒化珪素(Si3N4)、五酸化タンタル(TaO5)または他の酸化タンタル(TaOX)、酸化ハフニウム(HaO2)、無機ガラスなどが挙げられる。基材12に好適なプラスチックのいくつかの例には、アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、Chemours Co.からのTEFLON(登録商標))、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(COP)(例えば、ZeonからのZEONOR(登録商標))、ポリイミドなどが含まれる。基材12はまた、表面に酸化タンタルまたは別のセラミック酸化物のコーティング層を有するガラスまたはシリコンまたはPOSSであってもよい。基材12はまた、表面にPOSSのコーティング層を有するガラスまたはシリコンであってもよい。適切な基材12の別の例は、絶縁体上シリコン基材である。
【0064】
基材12の形態は、ウェハ、パネル、矩形シート、ダイ、または任意の他の好適な構成であってもよい。一実施形態では、基材12は、約2mm~約300mmの範囲の直径を有する円形のウェハまたはパネルであってもよい。より具体的な例として、基材12は、約200mmから約300mmの範囲の直径を有するウェハである。別の例では、基体12は、約10フィート(~3メートル)までの最大寸法を有する長方形の薄板またはパネルであってもよい。具体例として、基材12は、約0.1mmから約10mmの範囲の幅を有するダイである。例示的な寸法が提供されているが、任意の適切な寸法を有する基材12を使用することができることを理解されたい。
【0065】
複数のチャンバ14は、基材12上または基材12内に画定されてもよい。
【0066】
基材12上に画定されたチャンバ14の一例を
図2Aに示す。本明細書に開示される実施例では、チャンバ14は、i)基材表面S
12がチャンバ14の底面を画定し、ii)セパレート材18が基材12上に配置され、チャンバ14の壁W
18を画定するとき、基材12上に「画定される」と考えられる。絶縁体上シリコン基材がセパレート材18と共に使用される場合、チャンバ14の壁W
18は、基材の最も外側のシリコン層とセパレート材18とによって部分的に画定されてもよい。
【0067】
セパレート材18は、フッ素化重合体、パーフルオロ化ポリマー、シリコンポリマー、またはこれらの混合物などの疎水性材料であってもよい。疎水性物質の重合体主鎖は、カーボンもしくはケイ素、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの例では、フッ素化ポリマーは、非晶質フルオロポリマー(市販されているものの中には、以下の末端官能基:Aタイプ:-COOH、Mタイプ:-CONH-Si(OR)nまたはSタイプ:-CF3におけるものが含まれる)、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、テフロン(登録商標)Chemours社製)、パリレン(例えばグレードA、F、HT)、フッ素化炭化水素、フルオロアクリルコポリマー(例えば、Fluoropel(商標)、Cytonix製)、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン(FOTS)、フルオロシラン、もしくはプラズマ蒸着フルオロカーボン、またはこれらの混合物の1つを有する、AGC Chemicals社製のCYTOP(登録商標)シリーズであってもよい。別の例として、疎水性ポリマーまたは疎水性ポリマー層は、1-ヘプタデシンなどの疎水性炭化水素を含むことができる。いくつかの例では、シリコン重合体は、ポリジメチルシロキサンまたは別のシロキサンである。凹部16内の材料が親水性である/である場合、セパレート材18のために疎水性材料を利用することが特に望ましい場合がある。得られた構造が、構造を横切って移動する液体の真珠化を誘発することができる限り、セパレート材18として他の重合体を使用することができる。あるいは、凹部16内の材料が疎水性である/である場合、セパレート材18のために親水性材料を使用することが望ましい。セパレート材18の疎水性または親水性特性は、試薬を凹部16に向かって案内するのに役立つ。
【0068】
一例では、セパレート材18は、基材12上に堆積され、次いで、フォトリソグラフィを使用してパターニングされてもよい。基材12がシリコンオンインシュレータ基材である例では、フォトリソグラフィを用いてセパレート材18と最も外側のシリコン層をパターンすることができる。一例として、マスク(例えば、フォトレジスト)を使用して、セパレート材18が堆積される空間/位置を画定することができる。次いで、セパレート材18を堆積し、マスクを除去することができる(例えば、リフトオフ、溶解、または別の適切な技術を介して)。別の例として、セパレート材18を堆積させ、次いでマスクをセパレート材18上に堆積させてもよい。マスクは、フォトリソグラフィを用いてパターニングすることができ、セパレート材18の任意の露出部分は、プラズマエッチングまたは酸素ガスによるドライエッチングを介して除去することができる。次いで、マスクを除去して、残りのセパレート材18を明らかにすることができる。さらに別の例では、セパレート材18は、基材12に積層されてもよく、または金型または犠牲層から基材12に転写されてもよい。さらに別の例では、セパレート材18は、マイクロ接触印刷(スタンプを使用)、エアロゾル印刷、またはインクジェット印刷を使用して印刷することができる。
【0069】
基材12に画定されたチャンバ14の一例を
図2Bに示す。ここに開示される実施例では、チャンバ14は、i)基材表面S
12がチャンバ14の周りの間隙領域を画定し、ii)別の基材表面S’
12がチャンバ14の底面を画定し、iii)基材12がチャンバ14の壁W
12も画定する場合、基材12に「画定される」と考えられる。
【0070】
この実施例では、チャンバ14は、基材内にパターニングされてもよい。パターン形成は、チャンバ14を基材12内にエッチングすること、および/またはインプリントリソグラフィを使用することを含んでもよい。
【0071】
基材12上に形成されるか、あるいは基材内に形成されるかにかかわらず、チャンバ14は、任意の適当なパターンまたはレイアウトで基材12全体に分布され得る。規則的、反復的、非規則的なパターンを含む、チャンバ14の多くの異なるレイアウトを想定することができる。一例では、チャンバ14は、密充填および密度向上のために、六角形グリッド内に配置される。他のレイアウトは、例えば、平行四辺形レイアウト(すなわち、矩形、正方形など)、三角形レイアウト、円形レイアウトなどを含むことができる。いくつかの例では、レイアウトまたはパターンは、(
図1に示されるように)行および列にあるチャンバ14のx-yフォーマットであり得る。
【0072】
チャンバ14は、円(
図1に示されるようである)、楕円、多角形(例えば、三角形、四角形、五角形など)などの任意の適切な形状を有することができる。
【0073】
それぞれのチャンバ14の大きさは、その開口部面積、直径、および/または長さおよび幅によって特徴付けられてもよい。
図1に示されるように、フローセル10は、チャンバ14のそれぞれの内部に位置する複数の凹部16を有する。このように、チャンバ14のサイズは、各凹部16のサイズよりも大きい。言い換えると、チャンバ14の寸法(単数または複数を含む)は、各凹部16の寸法よりも大きい。本実施例では、「寸法」は、各チャンバ開口部または凹部が占める面積、および/またはチャンバ14または凹部16の直径、および/または各チャンバ14または凹部16の長さおよび幅を指す。
図1に示す例では、チャンバ14の各開口部面積および直径は、凹部16の各開口部面積および直径よりも大きい。開口部領域、および各チャンバ14の直径または長さおよび幅は、チャンバ14内に配置される凹部16の数、およびチャンバ14内に配置される捕捉部位22のサイズに依存する。
【0074】
各々のチャンバ開口部が占める面積は、複合体(その例が
図4A~4Cに示されている)がチャンバ14に入り、チャンバ14内の捕獲部位22に付着されるように選択することができる。例えば、各チャンバ開口部の面積は、少なくとも約1μm
2、少なくとも約10μm
2、少なくとも約100μm
2、あるいはそれ以上とすることができる。各チャンバ開口部の占有面積は、上記で指定された数値より大きくても、またはその間であってもよい。
【0075】
いくつかの例では、各チャンバ14の直径または長さおよび幅は、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約20μm、少なくとも約30μm、少なくとも約40μm、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、またはそれ以上であり得る。チャンバ直径の一例は、約1μm~約1000μmの範囲である。チャンバ直径の別の例は、約10μm~約50μmの範囲である。チャンバ14が長さおよび幅を有する場合、長さおよび幅は同じであっても異なっていてもよいことを理解されたい。
【0076】
チャンバ14はまた、チャンバ14を形成するために使用される技術に依存する深さを有してもよい。例えば、各チャンバ14の深さは、マイクロ接触、エアロゾル、またはインクジェットプリントがチャンバ壁W18を形成するために使用される場合、単層厚さとすることができる。他の例では、各チャンバ14の深さは、約1μm、約10μm、約50μm、またはそれ以上であり得る。別の例では、深さは、チャンバ14に導入される複合体の平均直径の少なくとも約50%である。一例では、この深さは、約10μm~約30μmの範囲であり得る。この深さは、隣接するチャンバ14間の放出されたライブラリフラグメントの側方拡散を遮断するのに十分であり、したがって、放出されたライブラリフラグメントを外部固定化剤なしでチャンバ14内に維持する。他の例では、深さは5μm以下である。各チャンバ14の深さは、上記で指定された値よりも大きくてもよく、より小さくてもよく、またはその間であってもよいことを理解されたい。
【0077】
隣接するチャンバ14は、追加材料18の表面S
18(
図2Aに示される)によって、または基材12の表面S
12(
図2Bに示される)によって分離されてもよい。平均チャンバピッチは、1つのチャンバ14の中心から隣接するチャンバ14の中心まで(中心から中心までの間隔)または1つのチャンバ14の縁から隣接するチャンバ14の縁までの間隔(縁から縁までの間隔)を表す。チャンバ14のレイアウトまたはパターンは、平均ピッチの周囲の変動係数が小さいように、規則的であってもよく、またはレイアウトまたはパターンは、非規則的であってもよく、その場合、変動係数は比較的大きくなり得る。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、少なくとも約1μm、少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、またはそれ以上であり得る。一例では、平均ピッチは、チャンバ14の直径の2倍である。チャンバ14の特定のパターンの平均ピッチは、下側値の1つと、上の範囲から選択された上側値の1つとの間であり得る。平均チャンバピッチ値の例が提供されているが、他の平均チャンバピッチ値を使用してもよいことを理解されたい。
【0078】
複数の凹部16は、基材12内に画定されてもよい。ここに開示される実施例では、凹部16は、i)基材表面S12またはS’12が、凹部16を分離する間隙領域24を画定し、ii)別の基材表面S’’12が凹部16の底面を画定し、iii)基材12が凹部16の壁も画定する場合に、基材12内に’’画定される’’と見なされる。
【0079】
凹部16は、基材12にパターン化されてもよい。パターン形成は、凹部16を基材12内にエッチングすること、および/またはインプリントリソグラフィを使用することを含み得る。
【0080】
凹部16の各サブセットは、任意の適切なパターンまたはレイアウトでチャンバ14の各々にわたって分配されてもよい。各チャンバ14内の凹部16のパターンは、同じであってもよく、または、異なるパターンの凹部16が異なるチャンバ14内で使用されてもよい。凹部16の多くの異なるパターン/レイアウトが、規則的、反復的、および非規則的パターンを含めて、想定され得る。一例では、凹部16は、密集して密度を向上させるために、六角形の格子状に配置されている。他のレイアウトは、例えば、平行四辺形レイアウト(すなわち、矩形、正方形など)、三角形レイアウト、円形レイアウトなどを含むことができる。
図1に図示例では、各チャンバ14内の凹部16は、捕捉部位22の周囲に円形パターンで配置されている。
図1に示されるように、複数のチャンバ14は、基材12を横切る第1のパターン(例えば、2x2)で配置されてもよく、各サブセットの凹部は、チャンバ14の各内部で第2のパターン(例えば、円形)で配置される。
【0081】
各凹部16は、円(
図1に示される)、楕円、多角形(例えば、三角形、四角形、五角形など)などの任意の適切な形状(および該当する3次元形状)を有することができる。
【0082】
各々の凹部16の大きさは、その開口部面積、直径、並びに/または長さおよび幅によって特徴付けられ得る。
図1に示されるように、フローセル10は、チャンバ14のそれぞれの内部に位置する複数の凹部16を有する。このように、各凹部16のサイズは、それが配置されているチャンバ14のサイズよりも小さい。
【0083】
それぞれの凹部開口部が占める面積は、複合体が凹部16に入ることができないように選択することができる。例えば、それぞれの凹部開口部の面積は、少なくとも約1×10-4μm2、少なくとも1×10-3μm2、少なくとも約1×10-2μm2、少なくとも約0.1μm2、少なくとも約0.5μm2、少なくとも約1μm2、または少なくとも約4μm2とすることができる。それぞれの凹部開口部が占める面積は、上記の数値よりも小さくてもよいし、または上記の数値の間であってもよい。
【0084】
いくつかの例では、各凹部16の直径または長さおよび幅は、寸法がチャンバの直径または長さおよび幅より小さい限り、少なくとも約1nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約500nm、またはそれ以上であり得る。凹部直径の一例は、約1nm~約500nmの範囲である。凹部直径の別の例は、約300nm~約2μmの範囲である。
【0085】
凹部16はまた、深さを有してもよい。例として、各凹部16の深さは、少なくとも約10nm、少なくとも約50nm、少なくとも約1μm、最大約2μmであり得る。いくつかの例では、深さは約0.4μmである。各凹部16の深さは、上記で指定された値よりも大きくてもよく、より小さくてもよく、またはその間であってもよいことを理解されたい。
【0086】
一実施形態では、凹部16のアスペクト比(直径:深さ)は、約1:1~約1:2、または約1:1.25~約1:1.75の範囲であってよい。
【0087】
隣接する凹部16は、所与のチャンバ14内の間質領域24によって分離されてもよい。平均凹部ピッチは、1つの凹部16の中心から隣接する凹部16の中心までの間隔(中央から中央までの間隔)、または1つの凹部16の縁から隣接する凹部16の縁までの間隔(縁から縁までの間隔)を表す。凹部16のレイアウトまたはパターンは、平均ピッチの周りの変動係数が小さくなるように規則的なものとすることができ、またはレイアウトまたはパターンを非規則的なものとすることができ、その場合、変動係数を比較的大きくすることができる。いずれの場合も、平均ピッチは、チャンバ14の寸法に応じて、例えば、少なくとも約10nm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、またはそれ以上とすることができる。これに代えて、またはこれに加えて、平均ピッチは、例えば、最大約0.5μm、または最大約0.1μm以下とすることができる。凹部16の特定のパターンの平均ピッチは、上の範囲から選択された、下側値の1つと、上側値の1つとの間にあり得る。
【0088】
また、各凹部16内にプライマー20が付着されている。プライマー20は、各々の凹部16の少なくとも底部(すなわち、表面S’’12)に存在する層26に結合することができる官能基を含む、任意の順方向増幅プライマーまたは逆方向増幅プライマーであってもよい。プライマー20は、各凹部16内に、配列決定可能な核酸フラグメントのアダプタに結合することができる捕捉オリゴヌクレオチドの芝生を形成することができる。
【0089】
一実施形態では、プライマー20は、プライマー20の5’末端またはその近傍での一点共有結合によって層26に固定化され得る。この結合により、i)プライマー20のアダプタ特異的部分は、その同族配列決定可能な核酸フラグメントにアニーリングすることができ、ii)プライマー伸長のための3’水酸基がない。任意の適切な共有結合をこの目的のために使用することができる。使用され得る末端プライマーの例としては、アルキン末端プライマー、テトラジン末端プライマー、アジド末端プライマー、アミノ末端プライマー、エポキシまたはグリシジル末端プライマー、チオリン酸末端プライマー、チオール末端プライマー、アルデヒド末端プライマー、ヒドラジン末端プライマー、ホスホラミダイト末端プライマー、およびトリアゾリンジオン末端プライマーが挙げられる。別の例では、プライマー20は、非共有結合相互作用を介して層26に固定化され得る。一実施形態では、各プライマー20は、層26に非共有結合することができる連結分子(例えば、ビオチン)を含むことができる。いくつかの例では、2つの異なるプライマー20が使用される。好適なプライマー20の具体例としては、Illumina Inc.がHISEQ(商標)、HISEQX(商標)、MISEQ(商標)、MISEQDX(商標)、MINISEQ(商標)、NEXTSEQ(商標)、NEXTSEQDX(商標)、NOVASEQ(商標)、GENOME ANALYZER(商標)、ISEQ(商標)、および他の装置プラットホーム上の配列決定のために販売する市販のフローセルの表面に使用するP5およびP7プライマーが挙げられる。
【0090】
一実施形態では、層26は、プライマー20に結合された連結分子に非共有結合的に結合することができる物質である。一例として、連結分子はビオチンであり、層26はアビジン、ストレプトアビジンなどである。本実施例では、層26は、マイクロ接触プリンティングまたはエアロゾルプリンティング、堆積および研磨、または別の適切な選択的堆積技術によって適用することができる。
【0091】
別の例では、層26は、プライマー20に共有結合することができる重合体である。凹部16の底面(例えば、S’’12)が活性化され、次いで、重合体が層26を形成するために適用されてもよい。
【0092】
いくつかの例において、活性化は、シランまたはシラン誘導体(例えば、ノルボルネンシラン)を適用することを含み得る。他の例では、活性化は、層26を形成するために使用されるポリマーに付着し得る表面活性化剤(例えば、-OH基)を生成するためのプラズマアッシングを含むことができる。
【0093】
層26を形成するために使用され得るポリマーの例は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-co-アクリルアミド、PAZAM)などのアクリルアミドコポリマーを含む。PAZAMおよびアクリルアミドコポリマーのいくつかの他の形態は、以下の構造(I):
【化1】
によって表され、
ここで、
R
Aは、アジド、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヒドラジン、置換されていてもよいヒドラジン、カルボキシル、水酸基、置換されていてもよいテトラゾール、置換されていてもよいテトラジン、酸化物ニトリル、ニトロン、およびチオールからなる群から選択され、
R
Bは、Hまたは置換されていてもよいアルキルであり、
R
C、R
D、およびR
Eは、それぞれ、Hおよび置換されていてもよいアルキルからなる群から独立して選択され、
-(CH
2)
p-のそれぞれは、置換されていてもよく、
pは1~50の範囲の整数であり、
nは1~50,000の範囲の整数であり、
mは1~100,000の範囲の整数である。
当業者は、構造(I)における繰り返しの「n」および「m」特徴の配列が代表的であり、モノマーサブユニットがポリマー構造中の任意の順序(例えば、ランダム、ブロック、パターン化、またはそれらの組み合わせ)で存在し得ることを認識するであろう。
【0094】
いくつかの例では、PAZAMは直鎖状重合体である。他のいくつかの例では、PAZAMは軽架橋高分子である。
【0095】
他の例では、層26を形成するために使用され得るポリマーは、構造(I)の変形であり得る。
一例において、アクリルアミド単位は、N,N-ジメチルアクリルアミド
【化2】
で置換されてもよい。本実施例では、構造(I)のアクリルアミド単位は、
【化3】
で置換することができ、ここで、R
D、R
E、およびR
FがそれぞれHまたはC1-C6アルキルであり、R
GおよびR
Hは、それぞれC1-C6アルキルである(アクリルアミドの場合のようにHの代わりに)。本実施例では、qは1~100,000の範囲の整数であることとしてもよい。別の例では、N,N-ジメチルアクリルアミドは、アクリルアミド単位に加えて使用されてもよい。本実施例では、構造(I)は、繰り返し発生する「n」および「m」の特徴に加えて、
【化4】
を含むことができ、ここで、R
D、R
E、およびR
FがそれぞれHまたはC1~C6アルキルであり、R
GおよびR
HがそれぞれC1~C6アルキルである。本実施例では、qは1~100,000の範囲の整数あることとしてもよい。
【0096】
他の重合体または分子が、それらが表面S’’12およびその後適用されるプライマー20と相互作用するように官能化されている限り、層26を形成するために使用されてもよいことを理解されたい。層26のための好適な重合体の他の例としては、アガロースのようなコロイド構造を有する重合体;またはゼラチンのような重合体メッシュ構造;またはポリアクリルアミド重合体および共重合体、シランフリーアクリルアミド(SFA)、もしくはアジドリザイド型のSFAのような架橋高分子構造が挙げられる。適切なポリアクリルアミドポリマーの例は、アクリルアミドおよびアクリル酸またはビニル基を含有するアクリル酸から、または[2+2]光-環状付加反応を形成するモノマーから合成することができる。層26に好適なポリマーのさらに他の例としては、アクリルアミドとアクリレートとの混合共重合体が挙げられる。
【0097】
層26を形成するポリマーと共に凹部16を機能化するために使用される方法は、チャンバ14が基材12上または中に画定されるか否かに依存し得る。
【0098】
例えば、チャンバ14がセパレート材18によって基材12上に画定される場合、基材表面S12およびS’’12は、凹部16を機能化するように処理され得、次いで、セパレート材18は、チャンバ14を画定するために、表面S12に付着され得ることを理解されたい。一実施例では、シランまたはシラン誘導体は、蒸着、スピンコーティング、または他の蒸着方法を使用して、基材表面S12およびS’’12上に堆積され得る。別の実施形態では、基材表面S12およびS’’12は、プラズマアッシングに曝されてもよい。次いで、重合体(層26を形成する)は、スピンコーティング、浸漬もしくは浸漬コーティング、または正圧もしくは負圧下での物質の流動、または別の好適な技術を用いて、活性化された基材表面S12およびS’’12に塗布されてもよい。1つの例において、ポリマーは混合物(例えば、水またはエタノールと水)中に存在してもよい。ポリマーに応じて、塗布された混合物を硬化工程に曝して、表面S12およびS’’12を横切って(共有結合した)層26を形成することができる。一実施形態では、硬化は、約1ミリ秒~約数日の範囲の時間、室温(例えば、約25℃)~約95℃の範囲の温度で起こることができる。次いで、表面S12から層26を除去するために研磨を行い、一方、層26を表面S’’12に少なくとも実質的に無傷のままにすることができる。これらの実施例では、セパレート材18は、次に、本明細書に記載されるように、表面S12上に形成されてもよい(例えば、フォトリソグラフィ、プリンティング、フィルム転写または積層など)。
【0099】
別の例について、チャンバ14が基材12内に画定される場合、選択的堆積技術が凹部16を機能化するために使用され得ることを理解されたい。本実施例では、シランまたはシラン誘導体、次いでポリマー混合物をマイクロ接触プリンティング、エアロゾルプリンティング、またはインクジェットプリンティングによって堆積させることができる。
【0100】
グラフティング処理は、凹部16内の層26にプライマー20をグラフトするために実行されてもよい。一実施例では、グラフト化は、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、パドルティスペンシング、または凹部16内の層26にプライマー20を付着させる別の適切な方法を含むことができる。これらの実施例技術の各々は、プライマー溶液または混合物を使用することができ、これは、プライマー、水、緩衝液、および触媒を含むことができる。いずれのグラフト法でも、プライマー20は、凹部16内のポリマー層26の反応性基と反応し、間質領域24、他の基質面S12もしくはS’12、またはセパレート材18に対して親和性を有さない。したがって、プライマー20は、凹部16内のポリマー層26に選択的にグラフトする。
【0101】
本明細書に開示されるフローセル10の実施例は、複数のチャンバ14の各々の内部に位置する捕捉部位22を含む。捕捉部位22の一例を
図1、2Aおよび2Bに示し、捕捉部位22の他の例を
図3A~3Cに示す。
【0102】
捕捉部位22は、複合体または試料を特定のチャンバ16内に固定化することができる物理的および/または化学的に可能である。
図3Aに示す例では、物理的固定化が可能である。化学的固定化は、本明細書に定義される化学的捕捉剤28を含む。捕捉部位22は、化学的固定化が可能である場合、使用される化学捕捉剤28は、部分的には、フローセル10に導入される複合体または試料に依存し得る。
【0103】
本明細書に開示される例のいくつかでは、捕捉部位22は、フローセル10に導入される複合体を捕捉することができる。本明細書に開示される他の例では、捕捉部位22は、次いで、ライブラリを生成するためにフローセル表面上でさらなる処理を受ける試料を捕捉することができる。
【0104】
図1、
図2Aおよび
図2Bにおいて、捕獲部位22は、チャンバ14の中心に形成される。捕捉部位22は、チャンバ14内の任意の望ましい位置に配置することができ、これは、凹部16の配置に依存することができることを理解されたい。基材12を横切る捕捉部位22の位置は、均一であってもよく(例えば、各捕捉部位22は、各チャンバ14内の実質的に同じ位置(例えば、中心、遠い左など)にあってもよく)、または不均一であってもよい(例えば、捕捉部位22は、異なるチャンバ24内の異なる位置にあってもよい)。
【0105】
捕捉部位22は、捕捉部位22の構造(例えば、パッチ、ウェル、突起など)、捕捉部位22が形成されるチャンバ14の寸法、および捕捉部位22によって捕捉される複合体または試料の種類に少なくとも部分的に依存し得る、任意の適切な形状、幾何学的形状および寸法を有し得る。
【0106】
図1、
図2Aおよび
図2Bに示される例では、捕捉部位22は、間質領域24の一部に適用される化学捕捉剤28である。本明細書中に開示される化学捕捉剤28の任意の例が使用され得る。一実施形態では、化学捕捉剤28は、マイクロ接触プリンティング、エアロゾルプリンティングなどを使用して、望ましい位置に堆積されてもよい。別の例では、マスク(例えば、フォトレジスト)を使用して、化学捕捉剤28が堆積される空間/位置を画定することができる。次いで、化学捕捉剤28を堆積し、マスクを除去することができる(例えば、リフトオフ、溶解、または別の適切な技術を介して)。この実施形態では、化学捕捉剤28は、化学捕捉剤28の単層または薄層を形成することができ、これをパッチと呼ぶことができる。
【0107】
捕捉部位22の他の例を
図3A、3B、および3Cに示す。捕捉部位22のいずれかは、基材12上に画定されたチャンバ14(および追加の材料18を含む)を有するもの、または基材12内に画定されたチャンバ14を有するものを含む、フローセル10の任意の例において使用され得ることを理解されたい。
【0108】
図3Aおよび
図3Bでは、捕獲部位22は、基材12内に画定されたウェル30を含む。ウェルは、凹部16と同じ方法で基材12内に「画定」されてもよい。ウェル30は、使用される基材12に応じて、エッチング、フォトリソグラフィ、および/またはインプリントを用いて形成されてもよい。一実施例では、ウェル30は、凹部16と同時に形成されてもよい。
【0109】
ウェル30は、凹部16について本明細書に記載されるもののいずれかを含む、任意の適切な形状および幾何学的形状を有することができる。
【0110】
図3Aに図示例では、ウェル30は、複数の凹部16の各々の開口部寸法よりも大きい開口部寸法を有する。この実施例では、「開口部寸法」は、各ウェル開口部および各凹部開口部によって占有される面積、および/または各ウェル開口部および各凹部開口部の直径、および/または各ウェル開口部および各凹部開口部の長さおよび幅を指す。ウェル30の開口部寸法は、導入される複合体または試料の寸法に依存し得る。
図3Aに図示例では、凹部16は、部分的には、複合体または試料を物理的に収容することができないように、ウェル30よりも小さい。
図3Aでは、凹部16の深さは、ウェル30の深さよりも小さいが、直径または長さおよび幅も、より小さくてもよいことが理解されるべきである。他の例では、ウェル30は、凹部16と同様の大きさまたは同じ大きさであってもよい。一例では、化学捕捉剤28はプライマー20を含み、したがって、凹部16のいずれかは、複合体または試料を捕捉するウェル30として機能し得る。
【0111】
いくつかの例では、ウェル30は、そこに添加される付加的な化学捕捉剤28を有していない。これらの実施例では、開口部寸法は、複合体または試料が、サイズ排除により凹部16ではなく、ウェル30に自己集合することを可能にする。
【0112】
他の例では、ウェル30は、(
図3Aにファントムで示されるように)添加される追加の化学捕捉剤28を有する。本明細書中に開示される化学捕捉剤28の任意の例が使用され得る。一実施例では、化学捕捉剤28は、マイクロ接触プリンティングを使用してウェル30内に堆積されてもよい。別の例では、マスク(例えば、フォトレジスト)を使用して、ウェル30内に化学捕捉剤28を堆積させることができる。これらの実施例では、開口部寸法は、サイズ排除によって、および化学捕捉剤28とフローセル10に導入された複合体または試料との間の結合親和性によって、凹部16ではなく、複合体または試料がウェル30に自己集合することを可能にする。
【0113】
図3Bの捕捉部位22は、ウェル30と、その表面に化学捕捉剤28を有する捕捉ビーズ32とを含む。捕捉ビーズ32は、凹部16内にではなく、ウェル30内に適合するようなサイズにすることができる。いくつかの例では、捕捉ビーズ32は、隣接する間質領域24と同一平面であってもよく、またはそれよりわずかに上方に延在してもよく、それにより、それに最終的に付着する複合体または試料がウェル30内に閉じ込められないようにする。一実施例では、捕捉ビーズ32は、二酸化ケイ素、超常磁性材料、ポリスチレン、およびアクリレートからなる群から選択される。本明細書中に開示される化学捕捉剤28の任意の例は、捕捉ビーズ32の表面上で使用されてもよく、ウェル30に導入される前に捕捉ビーズ32上にコーティングされてもよい。
【0114】
ウェル30の深さ(
図3Aまたは3B)は、化学捕捉剤28がそこに導入されるかどうか、および捕捉ビーズ32がそこに導入されるかどうかに応じて変化し得る。深さは、これらの材料を収容するために少なくとも選択され得る(すなわち、材料はウェル30内に収容される)。一実例では、ウェル30の深さは、約1nm~約5μmの範囲である。他の実施例では、ウェル30の深さは、約1nm~約100nm、または約1μm~約5μmの範囲である。他の深さも可能である。
【0115】
図3Cにおいて、捕捉部位22は、基材12または基材12の表面S
12に画定される突起34を含む。突出部34は、隣接する表面から外側(上方)に延在する三次元構造である。突出部34が基材12内に形成されると、基材12は、隣接する周囲の間質領域24の上方に延びるように(例えば、ビアエッチング、フォトリソグラフィ、インプリントなどによって)パターン化される。基材12上に突起部34が形成されると、追加の材料18は、隣り合う周囲の基材表面S
12の上方に延在するようにパターニングされる(例えば、エッチング、フォトリソグラフィ、インプリンティング等を介して)。
【0116】
突出部34には、任意の適切な三次元形状を使用することができるが、少なくとも実質的に平坦な上面を有する形状が望ましい。例示的な凸形状は、球体、円柱、立方体、多角形プリズム(例えば、長方形プリズム、六角形プリズムなど)などを含む。
【0117】
図3Cに示すように、突出部34の上面に化学捕捉剤28が塗布される。本明細書に開示される化学捕捉剤28の任意の例を使用することができ、任意の堆積技術を使用して、化学捕捉剤28を突出部34の上面に適用することができる。
【0118】
いくつかの例では、チャンバ14ごとに1つの捕捉部位22を有することが望ましい場合がある。他の例では、チャンバ14ごとに複数の分離された捕捉部位22を有することが望ましい場合がある。個々のチャンバ14内の捕捉部位22の数は、所与のチャンバ14内に捕捉される複合体の数を制御するのに役立ち得る。
【0119】
図2Aおよび2Bを再び参照すると、フローセル10は、セパレート材18または基材12に接合された蓋36を含むこともできる。蓋36は、単一の流路(複数のチャンバ14と流体連通する)または複数の流体分離流路(それぞれが複数のチャンバ14のサブセットと流体連通する)を画定するように配置されてもよい。
【0120】
蓋36は、凹部16に向かう励起光に対して透明な任意の材料であってもよい。例として、蓋は、ガラス(例えば、ホウケイ酸塩、溶融シリカなど)、プラスチックなどであってもよい。好適なホウケイ酸ガラスの市販の例は、Schott North America, Inc.から入手可能なD263(登録商標)である。適切なプラスチック材料、すなわちシクロオレフィンポリマーの商業的に入手可能な例は、Zeon Chemicals L.P.から入手可能なZEONOR(登録商標)製品である。
【0121】
蓋36は、レーザー結合、拡散接合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、または当技術分野で公知の他の方法のような任意の適切な技術を用いて結合することができる。一実施形態では、スペーサ層を使用して、蓋36をセパレート材18または基材12の部分に結合することができる。スペーサ層は、セパレート材18または基材12および蓋36の少なくとも一部を互いにシールする任意の材料とすることができる。
【0122】
図示されていないが、基材12と蓋36との間、または基材12と凹部16との間に、1つ以上の追加の層を組み込むことができることを理解されたい。これらの追加層は、エバネッセントフィールドを有する凹部16の励起のための平面導波路として機能するように選択され得る。
【0123】
他のフローセルアーキテクチャもまた、本明細書において企図されることを理解されたい。一例として、フローセル10は、チャンバ14および捕捉部位22を含むことができるが、凹部16は含まないこととしてもよい。これらの例では、プライマー20は、個別の凹部16ではなく、チャンバ14の底面に付着することができる。チャンバ14の底面は、層26およびプライマー20で機能化されてもよい。いくつかの例では、層26は、(捕捉部位22が形成される場合を除いて)底面全体に適用されてもよい。これらの実施例では、少なくとも実質的に均一なプライマー20がチャンバ14の底面を横切って形成されてもよい。他の例では、層26は、チャンバ14内で互いに空間的に分離されたアイランド(例えば、形状が円形、三角形、長方形など)として適用されてもよい。フローセル10上に捕捉された特定の複合体から放出されたライブラリフラグメント、またはフローセル10上にその場で形成されたライブラリフラグメントは、(チャンバ14内の凹部16内に制限される(閉じ込め)のとは対照的に)チャンバ14内にランダムに分布し得る。このフローセルアーキテクチャの例を
図5(i)~5(iii)に示す。
【0124】
別の例として、フローセル10は、チャンバ14または凹部16のない捕捉部位22を含むことができる。これらの例において、捕捉部位22は、基材を横切る望ましい幾何学的形状に配置され得、プライマー20は、捕捉部位22の周囲の基材12の表面に付着され得る。フローセル10上に捕捉された特定の複合体から放出されたライブラリフラグメント、またはフローセル10上にin situ(その場)で形成されたライブラリフラグメントは、基材12上にランダムに分布し得、放出されたライブラリフラグメントの閉じ込めは、反応-拡散を制御することによって達成され得る。
【0125】
さらに別の例として、フローセル10は、凹部16および捕捉部位22を含むことができるが、チャンバ14は含まない。これらの例では、捕捉部位22は、基材12を横切る望ましい幾可学的形状に配置することができ、プライマー20は、本明細書に記載されるように、凹部16の各々の内部に付着させることができる。フローセル10上に捕捉された特定の複合体から放出されたライブラリフラグメント、またはフローセル10上にin situで形成されたライブラリフラグメントは、複合体近傍の凹部16にランダムに分布し得、放出されたライブラリフラグメントの制限(閉じ込め)は、反応-拡散を制御することによって達成され得る。
【0126】
さらに他の例では、チャンバ14の壁は、フローセル10に導入された複合体または試料の1つ以上を捕捉するのに十分な高さを有するので、捕捉部位22は含まれない。複合体または試料の1つ以上を捕捉するのに十分な高さは、フローセル10に導入される複合体または試料の平均直径の少なくとも約50%であるチャンバ深さに対応する。一実施例では、チャンバ14の壁の高さまたは深さは、10μm以上である。本実施例では、所与のチャンバ14内の複合体または試料の数/量はランダムであり、ポアソン分布によって決定される。
【0127】
本明細書に開示される実施例のいずれにおいても、プライマー20は、部分的には層26が側壁上に位置していない可能性があるため、凹部16および/またはチャンバ14側壁上に位置していなくてもよいことを理解されたい。これは、ライブラリフラグメントが側壁に播種するのを防ぐのに役立つ。
【0128】
本明細書に開示されるフローセルアーキテクチャは、配列決定技術、例えば、リンクロングリード配列決定用途、ハイスループットタンパク質バイオマーカー検討、マイクロビオーム検討、または単一細胞オミクスを含む、様々な用途において使用され得る。例えば、本明細書に開示されるフローセルアーキテクチャおよび方法は、DNAで標識された抗体の結合を分析するために使用され得る。本実施例では、抗体標識は、フローセルアーキテクチャに導入される、P5/P7アダプタを有するユニークDNA配列に結合される。抗体を切断することができ、放出されたP5/P7プライマーをフローセル上に播種する。シードされたプライマーは、どの抗体が結合されたかの識別を可能にする。
フローセルアーキテクチャで使用する複合体
【0129】
フローセルアーキテクチャは、本明細書に開示される複合体の例と共に使用するのに特に好適であり得る。本明細書に記載されるように、複合体は、担体(例えば、ハイドロゲル保持体または固形保持体)と、担体に結合するかまたは担体内に含まれる配列決定可能な核酸フラグメントとを含む。適当な複合体の例を
図4A~4Cに示す。複合体を作製するためのいくつかの例示的な方法が記載されているが、担体に付着した、または担体内に含まれる、配列決定可能な核酸フラグメントである限り、他の方法を使用してもよいことが理解されるべきである。
【0130】
図4Aは、固形保持体42と、固形保持体42に結合された配列決定可能な核酸フラグメント44とを含む複合体40Aを示す。
【0131】
一例では、この複合体40Aを形成するために、アダプタ配列(52、52’)が、結合対の1つのメンバー46を介して固体保持体42に結合される。一実施形態では、このアダプタ配列は、フローセル10A~10I上のプライマー20のうちの1つの少なくとも一部に相補的な第1の配列(例えば、P5’配列)、第1の配列決定プライマー配列(例えば、読み取り1配列決定プライマー配列)を含む。前述のように、このアダプタ配列は、結合対の一方のメンバー46(例えば、ビオチン)に結合され、それにより、(結合対の他方のメンバー(例えば、アビジン、ストレプトアビジンなど)を含む)固形保持体42の表面に結合され得る。このアダプタシーケンスには、インデックスシーケンスも含まれる場合がある。
【0132】
Yアダプタをトランスポザーゼ酵素(例えば、2つのTn5分子)と混合して、トランスポソームを形成してもよい。Y-アダプタは、互いにハイブリダイズする2つのモザイク末端配列を含むことができる。モザイク末端配列のうちの1つは、フローセル10A~10I上のプライマー36のうちの1つの少なくとも一部に相補的な第2の配列(例えば、P5’配列)、第2の配列決定プライマー配列(例えば、読み取り2配列決定プライマー配列)、および任意選択的にインデックス/バーコード配列に結合され得る。第2の配列決定プライマー配列と第2の配列は合わせて、アダプタ配列48、48’を構成する。
【0133】
次いで、タグ付け(標識化)処理を実施することができる。試料(例えば、DNA)を含む液体(例えば、標識緩衝液)を、トランスポソームおよびそれに結合したアダプタ配列を有する固形保持体42に添加することができる。試料がトランスポソームに接触すると、DNAにタグが付けられ(固形保持体42上のアダプタ配列52、52’でフラグメント化され、タグが付けられ)、Yアダプタに結合され(例えば、遊離モザイク末端配列のライゲーションによって)、試料を連続的にタグ付けすると、トランスポソーム間に複数の架橋分子が生じる。配列決定可能なフラグメントを完成させるために、さらなる伸長およびライゲーションが行われ、フラグメント50、50’が配列48および48’に確実に結合される。次いで、トランスポザーゼ酵素は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)処理または加熱またはプロテイナーゼK消化によって除去され得る。
【0134】
得られた複合体40Aを
図4Aに示す。架橋された分子は、配列決定可能な核酸フラグメント44であり、その各々は、フラグメント50、50’およびいずれかの端部に結合したアダプタ配列48、52または48’および50’を含む。アダプタ配列52、52’は、最初に固体支持体42に結合されたものであり、第1の配列決定プライマー配列、フローセルプライマーに相補的な第1の配列、および結合複合体の1つのメンバー46を含む。アダプタ配列48、48’はY-アダプタ由来であり、別のフローセルプライマーおよび第2の配列決定プライマー配列に相補的な第2の配列を含む。それぞれの配列決定可能な核酸フラグメント44は、増幅(例えば、ブリッジ増幅)および配列決定のための適当なアダプタを含むので、PCR増幅は行われない。このように、これらのフラグメント44は配列決定可能である。さらに、ライブラリフラグメント44は同じサンプルからのものであるため、フラグメント44はリンクされた長い読み取りアプリケーションに適している可能性がある。
【0135】
図4Bは、固形保持体42と、固形保持体42に結合された配列決定可能な核酸フラグメント44’とを含む別の複合体40Bを示す。一実施形態では、PCRを含まないヌクレオチドライブラリが管内に作成され、次いでライブラリが管内の固形保持体42にハイブリダイズされる。
図4Bに図示例では、結合対の1つのメンバーを有するプライマーが、管中のライブラリフラグメントに添加され、次いで、配列決定可能な核酸フラグメント44’が、固形保持体42に結合される。別の実施形態では、固形保持体42は、結合対(例えば、保持体42上のアビジンおよびプライマーに結合されたビオチン)を介してそれらに結合されたプライマーを有してもよい。これらのプライマーはライブラリフラグメントにハイブリダイズする(したがって、プライマーと結合対のメンバーはフラグメントの一方の端部にあり、もう一方の端部にはない)。別の例では、伸長は、鎖置換酵素を用いて行うことができる。これは、完全に二本鎖ライブラリ(例えば、
図4Bに示すように、フォークまたはYアダプタなし)をもたらす。配列決定可能な核酸フラグメント44’は、変性を介してフローセル上に放出され得る。ライブラリフラグメント44’は、中実保持体42に付着される前に作成されるので、フラグメント44’は、同じ試料からでなくてもよく、したがって、リンクされた長い読み取りアプリケーションには適さない場合がある。
【0136】
図4Cは、ハイドロゲル保持体70およびハイドロゲル保持体70内に含まれる配列決定可能な核酸フラグメント44’’を含む複合体40Cの一例を示す。
【0137】
この複合体40Cを形成するために、ハイドロゲルモノマーおよび/または重合体および/または架橋剤を含有する流体を、試料(例えば、遺伝物質)の存在下で混合する。この流体は、鉱油または別の適切な疎水性流体に装填され、乳化されて液滴を生成することができる。ハイドロゲルモノマーおよび/またはポリマーを重合および/または架橋し、ハイドロゲル保持体70を形成するために、ラジカル開始剤を添加してもよい。適切なモノマー、ポリマー、架橋剤、および開始剤の例は、
図5(i)~(iii)を参照して記載される。
【0138】
試料は、その大きさがハイドロゲルビーズの細孔を通過することができないほど十分であるので、ハイドロゲル保持体内に封入されるようになる。いくつかの例において、試料はDNAまたはRNAであり、少なくとも約100ヌクレオチド長(例えば、1000ヌクレオチド以上、10,000ヌクレオチド以上、500,000ヌクレオチド以上など)である。いくつかの例では、ハイドロゲル保持体70の細孔サイズは、複数の細孔の測定に基づいて、平均直径または細孔の断面の平均有効直径を指す。円形でない断面の有効直径は、非円形断面の同一の断面積を有する円形断面の直径に等しい。一実施例では、細孔径は、約10nm~約100nmの範囲である。
【0139】
次いで、ライブラリ調製は、ハイドロゲル保持体70内で行うことができる。多数の試薬交換は、ハイドロゲル保持体70の細孔を通って行われてもよい。試料およびそこから生成された任意のライブラリフラグメントは、ハイドロゲルマトリックス内に維持される。ライブラリ調製は、試料をフラグメント化し、配列決定可能なフラグメント44’’をもたらすアダプタを加えることを含むことができる。
【0140】
一実施例では、ライブラリ調製は、ハイドロゲル保持体70内で行われるタグ付けを介して行われ得る。得られた複合体40Cを
図4Cに示す。アダプタ配列は、ブリッジ増幅および配列決定のための適当なアダプタを含み、したがって、得られたフラグメント44’’は配列決定可能である。別の例では、ポリメラーゼ伸長を用いてライブラリ調製を行ってもよく、これにより二本鎖ライブラリが生じる。この実施例のライブラリは、ハイドロゲル保持体70を形成して播種する前に変性される必要がある。
複合体を含む方法
【0141】
本明細書に開示される方法のいくつかの例は、本明細書に開示されるフローセル10の例、および複合体40A、40B、または40Cのいずれか1つを利用する。上述のように、複合体40A、40B、または40Cの各々は、遺伝物質の同じ試料から得られた配列決定可能なフラグメントを含む。1つまたは数個の複合体がそれぞれのチャンバ内で単離されると、同じ試料からのライブラリの空間的共局在化が達成される。
【0142】
第1の例の方法では、フローセル10は、複数のチャンバ14を含むが、捕捉部位22は含まない。むしろ、チャンバ14自体は、フローセルに導入される複合体40A、40B、または40Cの捕捉部位として機能する。各チャンバ14は、例えば、その深さが、導入される複合体40A、40B、または40Cの平均直径の少なくとも約50%である場合、捕捉部位として機能することができる。一実施例では、深さは、少なくとも約10μm(約10μm以上)である。本実施例では、フローセル10は、チャンバ14の底面に付着されたプライマー20を有してもよく、またはプライマー20が内部に含まれた凹部16を含んでもよい。これらの実施例では、任意の所与のチャンバ14内にトラップされる複合体40A、40B、または40Cの数は、ランダムであってよく、ポアソン分布によって決定されてよい。
【0143】
この第1の例の方法では、複合体40A、40B、または40Cは、例えば、1つ以上の入力ポートを介してフローセル10に導入される。複合体40A、40B、または40Cは、Tris-HCl緩衝液または0.5x生理食塩水クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液などの流体に導入され得る。流体からの少なくともいくつかの複合体40A、40B、または40Cは、チャンバ14の少なくともいくつかに沈降する。いくつかの複合体40A、40B、または40Cは沈降せず、これらの複合体40A、40B、または40Cは、さらなるプロセスが実行される前にフローセルから除去されることを理解されたい。いくつかのチャンバ14は、複合体40A、40B、または40Cのうちの1つまたは複数を受け入れてもよく、一方、チャンバ14の他のものは、複合体40A、40B、または40Cを受け入れなくてもよいことも理解されたい。この例における複合体40A、40B、または40Cの分布は、部分的には、捕捉部位22の欠如のために、ランダムである。
【0144】
次いで、この第1の例の方法は、非捕捉複合体40A、40B、または40Cをフローセルから洗い流すことを含む。洗浄は、流体をフローセル10に導入することを含むことができる。フローは、フローセルの出口ポートを通って沈降していない任意の複合体40A、40B、または40Cを押し出すことができる。深いチャンバ14は、沈降した複合体40A、40B、または40Cが出口流の一部になることを防止することができる。
【0145】
次いで、この方法の例は、捕捉された複合体40A、40B、または40Cの担体(例えば、固形保持体42またはハイドロゲル保持体70)に、それぞれの複合体40A、40B、または40Cが捕捉されているそれぞれのチャンバ14内に配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を放出させることを含み、本実施例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の運搬および播種は、それぞれのチャンバ14の深さによって制限され、したがって、外部固定化剤はフローセルに導入されない。
【0146】
使用される複合体40A、40B、または40Cに応じて、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を放出させる担体(すなわち、保持体42または70)を、変化させることができる。一実施例では、担体は、固形保持体42であり、その原因は、フローセルに開裂剤を導入することを含む。切断剤は、固形保持体42からの配列決定可能な核酸フラグメント44、44’の化学的、酵素的、または光化学的放出を開始することができる。これらの例示では、別の刺激、例えば、熱または光線は、開裂剤をトリガ(誘発)して、ライブラリフラグメント44または44’を固形保持体42から放出することができる。一例として、遊離ビオチンを切断剤として導入し、約92℃に加熱して、固形保持体42からのビオチン-オリゴ放出を誘導することに使用することができる。
【0147】
他の例では、複合体40Cが使用され、したがって担体はハイドロゲル保持体70である。これらの他の例では、ライブラリ放出を引き起こすことは、フローセル10を加熱すること、フローセル10に開裂剤を導入すること、またはそれらの組み合わせを含むことができる。ハイドロゲル保持体70からライブラリフラグメント44’’を放出するための加熱は、約90℃の温度までの加熱を含むことができる。フローセル10全体を加熱することができ、複合体40Cが加熱されると、ハイドロゲル保持体70は分解してフラグメント44’’を放出することができる。いくつかの例において、切断剤は、ハイドロゲル保持体70を解重合し、そこから配列決定可能なフラグメント44’’を放出することができる1つ以上の成分を含むことができる。例として、切断剤には、ジチオスレイトール(DTT)、トリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、またはトリス-(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)が含まれる。他の例では、切断剤は光である。これらの例において、ハイドロゲル保持体70を形成するために使用される架橋剤は、光開裂可能部分を含むことができ、適切な波長の光へのチャンバ14中の複合体40Cの曝露は、この部分を開裂し、ハイドロゲル保持体70を分解することができる。
【0148】
前述のように、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の輸送および播種は、それぞれのチャンバ14の深さによって制限され、したがって、任意の特定の複合体40A、40B、または40Cのフラグメント44、44’、または44’’は、特定の複合体40A、40B、または40Cが閉じ込められているチャンバ14に限定される。
【0149】
本明細書中に開示されるフローセル構造を用いて、フローセル10の表面上のプライマー20は、放出された配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を播種することができる。一例において、播種は、フラグメント44、44’、または44’’の第1または第2の配列と、プライマー20の相補的なものと、チャンバ14との間のハイブリダイゼーションを介して達成される。播種は、フラグメント44、44’、または44’’およびプライマー20に対して適切なハイブリダイゼーション温度で行うことができる。
【0150】
各チャンバ14内の配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’シードの位置は、プライマー20がチャンバ14内でどのように付着されるかに部分的に依存する。フローセル10のいくつかの例では、各チャンバ14は底面を有し、プライマー20は底面を横切ってポリマー層26に付着されるか、またはプライマー20は底面上に配置された複数の空間的に分離されたポリマーアイランドにそれぞれ付着される。これらの例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’は、チャンバ14の底面にわたって、またはアイランドの各々にわたって播種される。他の例では、各チャンバ14は、底面と、その中に画定された複数の凹部16とを有し、プライマー20は、凹部16の各々の内部のポリマー層26にそれぞれ付着されている。これらの実施例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’は、凹部16の各々の内部のポリマー層26にわたって播種される。
【0151】
別の例示的な方法(第2の例示的な方法)では、フローセル10は、複数のチャンバ14と、複数のチャンバ14の各々の内部の捕捉部位22と、複数のチャンバ14の各々の内部に付着されたプライマー20とを含む。本実施例では、フローセル10は、凹部16を含んでも含まなくてもよい。
【0152】
この第2の例示的な方法では、各チャンバ14の深さは5μm以下である。このような浅い深さでは、捕捉部位22は、単一のチャンバ14内に単一の複合体40A、40B、または40Cを固定化するために含まれてもよい。各チャンバ14は捕捉部位22を有するが、チャンバ14のいくつかは、本方法の所与の走行中に複合体40A、40B、または40Cを受け入れないことができることを理解されたい。
【0153】
この第2の例示的な方法では、複合体40A、40B、または40Cは、例えば、1つ以上の入力ポートを介してフローセル10に導入される。複合体40A、40B、または40Cは、本明細書に開示される緩衝液のような流体に導入され得る。本実施例では、各の捕捉部位22および複合体40A、40B、または40Cは結合対のメンバーであり、したがって、1つの複合体40A、40B、または40Cは、チャンバ14の各内の1つの捕捉部位22に結合する。より具体的には、捕捉部位22は、結合対の第1のメンバーを含み得、複合体40A、40B、または40Cの各々は、結合対の第2のメンバーを含み得る。1つの具体的な例として、捕捉部位22は、捕捉部位プライマー(例えば、捕捉オリゴヌクレオチド)であり、複合体40A、40B、または40Cの各々は、捕捉部位プライマーにハイブリダイズし得る相補的プライマーを含む。別の具体例として、捕捉部位22は、アビジンを含むことができ、ビオチンは、複合体40A、40B、または40Cの表面に付着することができる。
【0154】
次いで、この第2の例示的な方法は、フローセル10から非固定化複合体40A、40B、または40Cを洗い流すことを含む。洗浄は、フローセル10に任意の適切な緩衝液を導入することを含むことができる。流れは、捕捉部位22に付着していない任意の複合体40A、40B、または40Cを、フローセル10の出口ポートを通って押し出すことができる。
【0155】
次いで、この第2の例示的な方法は、フローセル10、具体的には複数のチャンバ14に外部固定化剤を導入することを含む。一実例では、外部固定化剤は、空気、またはフローセルチャンバ14に導入された流体の複合体40A、40B、または40Cと混和しない液状媒体もしくは粘性媒体である。
【0156】
空気を使用してフローセル10から洗浄流体を吸引することにより、複合体40A、40B、または40Cを取り囲み、拡散バリアを形成する液滴を生成することができる。液体または粘性の外部固定化剤は、チャンバ14内に付着された複合体40A、40B、または40Cを少なくとも部分的に取り囲んでいる。複合体40A、40B、または40Cを少なくとも部分的に取り囲むことによって、外部固定化剤は、フラグメント44、44’、または44’’が放出されるときに、チャンバ14の外側の配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の拡散を阻害する。外部固定化剤が温度応答性材料である場合、播種温度まで温度を上昇させると、薬剤がより粘性になり、ライブラリ拡散を防止することができる形態となり得る。
【0157】
ここに開示される外部固定化剤のいずれを使用してもよいが、一例では、外部固定化剤は、鉱油およびシリコーンオイル、グリセロールおよびスクロースからなる群から選択される粘性媒体拡散バリア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される液体拡散バリアであることを理解されたい。
【0158】
次いで、この例示的な方法は、捕捉された複合体40A、40B、または40Cの担体(例えば、固形保持体42またはハイドロゲル保持体70)に、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を、それぞれ固定化された40A、40B、または40Cが捕捉されたそれぞれのチャンバ14内に放出させることを含み、本実施例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の運搬および播種は、外部固定化剤によって制限される。
【0159】
担体(すなわち、保持体42または70)を配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を放出させることは、使用される複合体40A、40B、または40Cに応じて変化し得る。一実施形態では、担体は固体保持体42であり、その原因は(第1の実施形態で説明したように)切断剤をフローセル10に導入し、別の刺激を用いて切断剤をトリガし、固体保持体42からライブラリフラグメント44または44’を放出することを含む。他の例では、複合体40Cが使用され、したがって担体はハイドロゲル保持体70である。これらの他の例では、ライブラリ放出を引き起こすことは、フローセルを加熱すること、フローセルに切断剤を導入すること、またはそれらの組み合わせ(第1の例の方法に記載されるように)を含み得る。
【0160】
前述のように、この第2の例示的な方法における配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、44’’の輸送および播種は、外部固定化剤によって制限される。したがって、任意の特定の複合体40A、40B、または40Cのフラグメント44、44’、または44’’は、外部固定化剤が複合体40A、40B、または40Cを少なくとも部分的に取り囲んでいるため、特定の複合体40A、40B、または40Cが閉じ込められているチャンバ14に限定される。
【0161】
本明細書に開示されるフローセルアーキテクチャを用いて、フローセル10の表面上のプライマー20は、放出された配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を播種することができ、播種は、フラグメント44、44’、または44’’の第1または第2の配列と、チャンバ14との相補的なプライマー20の1つとの間のハイブリダイゼーションを介して達成される。播種は、フラグメント44、44’、または44’’およびプライマー20に対して適切なハイブリダイゼーション温度で行うことができる。
【0162】
各チャンバ14内の配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’播種(シード)の位置は、プライマー20がチャンバ14内でどのように付着されるかに部分的に依存する。フローセルのいくつかの例では、各チャンバ14は底面を有し、プライマー20は底面を横切ってポリマー層26に付着されるか、またはプライマー20は底面上に配置された複数の空間的に分離されたポリマーアイランドにそれぞれ付着される。これらの例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’播種は、チャンバ14の底面にわたる(横切る)か、またはアイランドの各々にわたる。他の例では、各チャンバ14は、底面と、その中に画定された複数の凹部とを有し、各凹部16内のポリマー層26にプライマーがそれぞれ付着されている。これらの実施例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’シードは、凹部16の各々の内部のポリマー層26にわたる。
【0163】
本方法のさらに別の例(第3の例として参照される方法)では、
図1、2A、2B、および3A~3Cに示されるフローセル10の任意の例を使用することができる。この第3の例示的な方法では、捕捉部位22は、単一の複合体40A、40B、または40Cを単一のチャンバ14内に固定化するために含まれ得、各チャンバ14の深さは、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の、それぞれのチャンバ14内のそれぞれの凹部16への輸送および播種を制限するのに十分であり得る。
【0164】
この第3の例示的な方法では、複合体40A、40B、または40Cは、例えば、1つ以上の入力ポートを介してフローセル10内に導入される。複合体40A、40B、または40Cは、本明細書に開示される緩衝液のような流体に導入され得る。本実施例では、それぞれの捕捉部位22および複合体40A、40B、または40Cは結合対のメンバーであり、したがって、1つの複合体40A、40B、または40Cは、少なくともいくつかのチャンバ14内の1つの捕捉部位22に結合する。各チャンバ14は、捕捉部位22を有するが、チャンバ14のいくつかは、本方法の任意の所与の走行中、複合体40A、40B、または40Cを受け入れないことがあることを理解されたい。
【0165】
この第3の例示的な方法は、次いで、フローセル10から非捕捉複合体40A、40B、または40Cを洗い流すことを含む。洗浄は、フローセルに緩衝液を導入することを含むことができる。流れは、捕捉部位22に固定化されていない任意の複合体40A、40B、または40Cを、フローセル10の出口ポートを通って押し出すことができる。
【0166】
次いで、この例示的な方法は、捕捉された複合体40A、40B、または40Cの担体(例えば、固形保持体42またはハイドロゲル保持体70)に、それぞれの複合体40A、40B、または40Cが捕捉されているそれぞれのチャンバ14内に配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を放出させることを含み、本実施例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の運搬および播種は、それぞれのチャンバ14の深さによって制限され、したがって、外部固定化剤はフローセル10に導入されない。
【0167】
使用される複合体40A、40B、または40Cに応じて、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を担体(すなわち、保持体42または70)に放出させることは、変化し得る。一実施例では、担体は固体保持体42であり、その原因は、(第1の例示的な方法で説明したように)開裂剤をフローセル10に導入させ、フローセル10を外部刺激に曝すことを含む。他の例では、複合体40Cが使用され、したがって担体はハイドロゲル保持体70である。これらの他の例では、ライブラリ放出を引き起こすことは、フローセルを加熱すること、フローセルに切断剤を導入すること、またはそれらの組み合わせ(第1の例示的な方法に記載されるように)を含み得る。
【0168】
前述のように、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の輸送および播種は、それぞれのチャンバ14の深さによって制限され、したがって、任意の特定の複合体40A、40B、または40Cのフラグメント44、44’、または44’’は、特定の複合体40A、40B、または40Cが閉じ込められているチャンバ14に制限される。この特定の例では、フローセル10は、凹部16内にプライマー20を含むので、フラグメント44、44’、または44’’の播種は、凹部16内で行われ、間質領域24上では行われない。
【0169】
別の例示的な方法(第4の例示的な方法)では、フローセル10は、本明細書に開示されるアーキテクチャのいずれであってもよく、少なくとも捕捉部位22およびプライマー20を含む。
【0170】
本明細書に開示される他の方法と同様に、複合体40Aまたは40B(中実保持体42を含む)は、例えば、1つ以上の投入口を介してフローセル10に導入される。複合体40Aまたは40Bは、本明細書に開示される緩衝液のような流体に導入されてもよい。本実施例では、それぞれの捕捉部位22および複合体40Aまたは40Bは結合対のメンバーであり、その結果、1つの複合体40Aまたは40Bが1つの捕捉部位22に結合する。より具体的には、捕捉部位22は、結合対の第1のメンバーを含み得、複合体40Aまたは40Bの各々は、結合対の第2のメンバーを含み得る。1つの具体的な例として、捕捉部位22は、捕捉部位プライマー(例えば、捕捉オリゴヌクレオチド)であり、複合体40Aまたは40Bの各々は、捕捉部位プライマーにハイブリダイズし得る相補的プライマーを含む。別の具体例として、捕捉部位22は、アビジンを含むことができ、ビオチンは、複合体40Aまたは40Bの表面に付着することができる。
【0171】
次いで、この第4の例示的な方法は、フローセル10に外部固定化剤を導入することを含む。
【0172】
一例では、外部固定化剤は空気である。フローセル10に空気を導入することは、(複合体40Aまたは40Bが導入された)流体の大部分を吸引し、また、非固定化複合体40Aまたは40Bをフローセル10から押し出す。固定化複合体40Aまたは40Bは、流体ピン止め中心として働き、したがって、流体からの液体の一部をそれぞれの表面に保持する。保持された流体は、各複合体40Aまたは40Bを取り囲む液滴を形成する。いくつかの例では、液滴は、テントに似た形状(例えば、その高さが播種粒子によって設定される中心にあり、メニスカスプロファイルが液体の強い表面張力によって設定される)を有する液体フィルムである。この液滴は、複合体40Aまたは40Bから放出されるライブラリフラグメント44、44’に対する拡散バリアを作り出す。
【0173】
いくつかの例では、複合体40Aまたは40Bの周囲に形成される液滴は、隣接していてもよく、したがって、フローセル表面を横切る浅い液層を形成していてもよい。他の例では、複合体40Aまたは40Bの周囲に形成される液滴は、互いに空間的に隔離されてもよい。さらに他の例では、液滴のいくつかは隣接しており、隣接する液滴の他のアイランドから空間的に隔離された液体アイランドを形成する。フローセル表面の複合体40Aまたは40Bの密度が増加すると、浅い液体層が形成されやすくなる。
【0174】
液滴の構成は、望ましい直径を有する中実保持体42を選択し、複合体40Aまたは40Bを特定の表面密度で適用し、フローセル10を通る空気の流量および/または速度を調整し、所望の物理的特性(例えば、粘性、表面張力など)を有するように流体を選択することによって制御することができる。例えば、フローセル10内に固定化されたより多くの複合体40Aまたは40B(例えば、より高い表面密度)は、より均一な厚さを有する浅い液体層をもたらす。対照的に、フローセル10内に固定化される複合体40Aまたは40Bがより少ない場合、液滴は、互いに単離されるか、または液体のアイランド(例えば、複合体10Aまたは10Bのそれぞれのグループを取り囲む小さな分離されたパドル)を形成する傾向がある。
【0175】
空気は、所定の流量でフローセル10に導入されてもよい。一実施形態では、流量は、約100μL/分~約2000μL/分の範囲である。前述のように、液滴の構成を変えるために空気流を調節することができる。例えば、空気流量は、複合体40Aまたは40Bの周りの液体のサイズおよび/または直径に影響を与え得る。一例として、より高い空気流量は、連続的な浅い液体層をもたらし得るが、一方、より低い空気流量は、互いに隔離されるか、または液体のいくつかのアイランドを形成する液体液滴をもたらし得る。
【0176】
流体の物理的性質はまた、液滴の構成を変えることができる。例えば、より高い表面張力流体は、複合体40Aまたは40Bの表面に付着する親和性がより高く、これは、より大きな濡れおよびより大きなメニスカスをもたらす。いくつかの例では、複合体40Aまたは40Bを導入するために使用される液体は、約20mN・m-1~約90mN・m-1の範囲の表面張力を有するように選択され得る。例えば、6MのNaCl溶液は約83mN・m-1の表面張力を有し、55%のショ糖水溶液は約76mN・m-1の表面張力を有し、水は72.86mN・m-1の表面張力を有し、界面活性剤を添加した水は20mN・m-1から約72mN・m-1の範囲の表面張力を有し、エタノールは22.39mN・m-1の表面張力を有する。しかしながら、表面張力は、複合体40Aまたは40Bを導入するために使用される流体に応じて変化し得る。
【0177】
(孤立した液滴、パドルアイランド、または液体層の形態の)いずれかの液滴のピーク高さは、複合体40Aまたは40Bの高さ未満である。一実施形態では、いずれかの液滴のピーク高さ(孤立した液滴、パドルアイランド、または液体層の形態)は、約3μm以下である。液滴の浅い高さは、放出されたライブラリフラグメントを、フローセル10のX-Y平面に沿って拡散させるが、むしろそれは、表面プライマー20によって捕捉されるようになる流路全体にわたってではない。これにより、複合体40A、40B近傍のライブラリフラグメントの局在性が改善され、そこから遊離される。
【0178】
別の例では、外部固定化剤は、フローセル10に導入された複合体40Aまたは40Bと混和しない液体媒体または粘性媒体である。本実施例では、液体または粘性媒体を導入する前に、非固定化複合体10Aまたは10Bをフローセル10から洗い流すことができる。洗浄は、フローセル10に任意の適切な緩衝液を導入することを含むことができる。流れは、捕捉部位22に付着していない任意の複合体40Aまたは40Bを、フローセル10の出口ポートを通って押し出すことができる。
【0179】
液体または粘性の外部固定化剤は、フローセル10内に付着された複合体40Aまたは40Bを少なくとも部分的に取り囲む浅い層(例えば、約3μm以下)を形成する量で導入することができる。複合体40Aまたは40Bを少なくとも部分的に取り囲むことによって、外部固定化剤は、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の浅い層の外側への拡散を阻害する。外部固定化剤が温度応答性材料である場合、播種温度まで温度を上昇させると、薬剤がより粘性になり、ライブラリ拡散を防止することができる形態になる可能性がある。
【0180】
次いで、この例示的な方法は、固定化された複合体40Aまたは40Bの担体(例えば、固形保持体42)に、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を放出させることを含む。一例として、切断剤をフローセル10に導入して(第1の例示的な方法に記載されるように)、別の刺激を加えて、切断剤をトリガして、ライブラリフラグメント44または44’を固形保持体42から放出させることができ、本実施例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’の運搬および播種は、複合体40Aまたは40Bの周囲に形成された液滴によって制限される。
【0181】
本明細書中に開示されるフローセルアーキテクチャを用いて、フローセル10の表面上のプライマー20は、本明細書中に記載されるように、放出された配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’を播種することができる。
【0182】
複合体40A、40B、または40C(例えば、本明細書に記載の第1、第2、第3または第4の方法)を含む方法の実施例のいずれにおいても、シード配列決定ライブラリを、クラスタ生成を用いて増幅することができる。
【0183】
クラスタ発電の一例では、配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’は、ハイブリダイズしたプライマー20から、高忠実度(ハイファイ)DNAポリメラーゼを用いて3’伸長によりコピーされ、元の配列決定可能な核酸フラグメント44、44’、または44’’は変性され、そのコピーはチャンバ14内に固定化されたままである。等温ブリッジ増幅またはいくつかの他の形態の増幅を用いて、固定化コピーを増幅することができる。例えば、コピーされた鋳型は、隣り合う相補的プライマー20にハイブリダイズするようにループオーバーし、ポリメラーゼは、コピーされた鋳型をコピーして二本鎖ブリッジを形成し、これは変性されて二本鎖の鎖を形成する。これらの2つの鎖は、隣接する相補的なプライマー20上をループし、ハイブリダイズし、再び伸長されて2つの新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスは、等温変性および増幅のサイクルによって各テンプレートコピー上で繰り返され、密なクローンクラスタを作り出す。二本鎖ブリッジのそれぞれのクラスタは変性している。一実施形態では、リバース鎖は、特定の塩基切断によって除去され、前方鋳型ポリヌクレオチドトランドを残す。クラスタ化は、例えば、各チャンバ14内、いくつかの例では、各チャンバ14内の各凹部16内で、いくつかの鋳型配列決定可能な核酸フラグメントの形成をもたらすことを理解されたい。このクラスタ化の例は、ブリッジ増幅であり、実施され得る増幅の1つの例である。除外増幅(ExAmp)ワークフロー(Illumina Inc.)など、他の増幅技術を使用してもよいことを理解されたい。
【0184】
クラスタ生成後、配列決定を実施することができる。本明細書に開示されるフローセル10の任意の例は、合成による配列決定(SBS)、サイクリックアレイ配列決定、ライゲーションによる配列決定、ピロ配列決定などとしばしば呼ばれる技術を含む、様々なシークエンスアプローチまたは技術で使用されてもよい。
【0185】
一つの例として、合成による配列決定(SBS)反応は、HISEQ(商標)、HISEQX(商標)、MISEQ(商標)、MISEQDX(商標)、MINISEQ(商標)、NOVASEQ(商標)、NEXTSEQDX(商標)、ISEQ(商標)、NEXTSEQ(商標)、またはIllumina(CA、San Diego)からのその他の配列決定システムのようなシステム上で実行することができる。
【0186】
鋳型ポリヌクレオチド鎖上の相補的配列にハイブリダイズする配列決定プライマーを導入することができる。この配列決定プライマーは、鋳型ポリヌクレオチド鎖を配列決定の準備をする。SBSでは、鋳型配列決定可能な核酸フラグメント(鋳型ポリヌクレオチド鎖)に沿った配列決定プライマーの伸長をモニターして、鋳型中のヌクレオチドの配列を決定する。テンプレートの3’末端および任意のフローセル結合プライマー20(コピーに結合していない)は、シーケンシング反応との干渉を防ぎ、特に望ましくないプライミングを防ぐためにブロックされ得る。基礎となる化学的処理は、重合(例えば、ポリメラーゼ酵素によって触媒される)またはライゲーション(例えば、リガーゼ酵素によって触媒される)であり得る。
【0187】
特定のポリメラーゼベースのSBSプロセスにおいて、蛍光標識ヌクレオチドが、配列決定プライマーに添加されるヌクレオチドの順序およびタイプの検出が、テンプレートの配列を決定するために使用され得るように、テンプレート依存的な様式で、配列決定プライマーに添加される(それによって、配列決定プライマーを延長する)。より詳細には、ヌクレオチドの1つは、それぞれのポリメラーゼによって、配列決定プライマーを伸長し、鋳型ポリヌクレオチド鎖に相補的な新生鎖に組み込まれる。例えば、第1のSBSサイクルを開始するために、1つ以上の標識ヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどをフローセル10等内に/フローセル10等を通して送達することができ、ここで、配列決定プライマー伸長は標識ヌクレオチドを取り込ませる。この取り込みは、イメージングイベントを通して検出することができる。イメージングイベントの間、照明システム(図示せず)は、フローセル10に励起光を提供してもよい。
【0188】
いくつかの例において、蛍光標識されたヌクレオチドは、ヌクレオチドがテンプレートに付加されると、さらなるプライマー伸長を終結させる可逆的終結特性をさらに含むことができる。例えば、可逆的ターミネーター部分を有するヌクレオチドアナログは、残基(部分)を除去するためにデブロッキング剤が送達されるまでその後の伸長が起こり得ないように、鋳型に添加することができる。したがって、可逆的ターミネーションを使用する例では、デブロッキング試薬をフローセル等に送達することができる(検出が起こった後)。
【0189】
洗浄は、種々の流体送達工程の間で行われ得る。次いで、SBSサイクルをn倍繰り返すことにより、テンプレートをn個のヌクレオチドだけ伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。
【0190】
SBSは、詳細な説明に記載されているが、本明細書に記載されるフローセル10は、遺伝子型決定のために、または他の化学的および/または生物学的用途において、他の配列決定プロトコルと共に利用され得ることを理解されたい。
フローセル構造上の複合体形成を含む方法
【0191】
本明細書に開示される方法の他の例は、
図4A~4Cに示される複合体40A、40B、または40Cを利用しない。むしろ、ハイドロゲルマトリックスは、フローセルのチャンバ14内にその場で形成される。この例は、
図5(i)~5(iii)を参照して説明する。
【0192】
本実施例では、フローセル10’は、フローセル10’と、フローセル10’のチャンバ14内にハイドロゲルマトリックス74を形成するための種々の試薬とを含む配列決定キットの一部であってもよい。配列決定キットの一例は、複数のチャンバ14(例えば、
図1、2Aおよび2Bに参照されるように基材12内またはその上に形成される)と、複数のチャンバ14の各々の内部に付着されたプライマー20とを含むフローセル10’を含む。
図5(i)~5(iii)に図示例では、各チャンバは底面を有し、プライマー20は底面を横切ってポリマー層26に付着される。図示されていないが、ポリマー層26(底部チャンバ表面上)は、代替的に、複数の空間的に分離されたポリマーアイランドの形態であってもよく、プライマー20は、それぞれ、アイランドの各々に付着されてもよい。フローセル10’のさらに別の例では、複数の凹部16(フローセル10について本明細書で定義される)がチャンバの底面内に画定されてもよく、プライマー20は凹部16のそれぞれにおいてポリマー層26に付着されてもよい。
【0193】
図5(i)に示すように、フローセル10’はまた、捕捉部位22’の一例を含み、ここで、捕捉部位22’は、試料72を捕捉するように構成される。
【0194】
捕捉部位22’は、フローセル10’に導入される試料72に付着することができる、本明細書に開示される化学捕捉剤の任意の例であり得る。天然DNAまたはRNA試料72の場合、捕捉部位22’は、電荷または疎水性相互作用を介して結合するインターカレーター、または結合対の1つのメンバー(試料72が他のメンバーを含む場合)、または試料72にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドなどの、一方の末端に核酸結合部分を有するリンカーを含み得る。細胞試料72の場合、リンカーは、細胞膜結合部分(例えば、表面タンパク質に対する抗原)または膜貫通部分(例えば、一方の末端のリン脂質)を含み得る。
【0195】
図5(i)~5(iii)には示されていないが、フローセル10’は、チャンバ14の各々の内部に凹部16を含むことができ、プライマー20は、凹部16の各々の内部に取り付けることができる。
【0196】
また、配列決定キットは、流体、ラジカル生成および鎖伸長官能基を含むモノマーまたはポリマー、ラジカル源、および架橋剤からなるカプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物を含む。カプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物は、試料72を含まない。一例において、カプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物は、モノマーまたは重合体の約2%(w/v)~約20%(w/v)、架橋剤の約1wt%~約10wt%、およびラジカル源の約0.1%(w/v)~約10%(w/v)を含む。組成物中に含まれる場合、ラジカル開始剤は、約0.1%(w/v)~約10%(w/v)の量で存在し得る。
【0197】
カプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物の流体は、水(例えば、イオン交換水)であってもよい。
【0198】
モノマーがカプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物に使用される場合、モノマーは、アクリルアミド、N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン、ビスアクリルアミド、ジアクリレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジビニルスルホン、エチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアクリレート、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、エトキシル化トリメチロールジアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラクリレート、コラーゲンモノマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ポリマーがカプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物に使用される場合、ポリマーは、ポリエチレングリコール-チオール、ポリエチレングリコール-アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(例えば、約100~約200,000の範囲の重量平均分子量を有する)、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(L-アスパラギン酸)、ポリ(L-アスグルタミン酸)、ポリリジン、寒天、アガロース、アルギン酸、ヘパリン、硫酸アルギン、硫酸デキストラン、ヒアルロン酸、ペクチン、カラギーナン、ゼラチン、キトサン、セルロース、コラーゲンポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。モノマーおよび重合体のいずれもまた、カプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物内で組み合わせて使用され得る。
【0199】
ラジカル源は、分解されるとラジカルを生成する分子である。一例では、ラジカル源は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、過酸化物、リボフラビン、3-(ジメチルアミノ)プロピオニトリル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0200】
架橋剤は、ハイドロゲルマトリックスの重合体中に結合、例えばジスルフィド結合を形成する。架橋剤は、それが曝露される化学物質に応じて、架橋および未架橋であり得るという点で、可逆的であり得る。例えば、可逆的架橋剤は、ジスルフィド結合を含有するビスアクリルアミド架橋剤であり、これは、DTT、TCEP、またはTHP(ホスフィン)などの還元剤で分解することができる。一実施形態では、架橋剤は、アクリルアミド、N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン、ビスアクリルアミド、1,4-ジアロイルピペラジン、N-N’-ジアリルL-タルジアミド、およびN-N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)-ビス-アクリルアミドからなる群から選択される。
【0201】
配列決定キットはまた、カプセル化(封入)マトリックス前駆体組成物の一部として、または別個の構成要素として、ラジカル開始剤を含む。一実施形態では、ラジカル開始剤は光重合開始剤であってもよい。光重合開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、エオシン-5-イソチオシアネートが挙げられる。このタイプのラジカル開始剤は、適切な波長の光にさらされるまで架橋を開始しないので、カプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物に含まれ得る。別の例では、ラジカル開始剤は、カプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物中のラジカル源に曝露されると、架橋を開始し得る。これらの例では、ラジカル開始剤は、フローセル10’上にハイドロゲルマトリックスを形成することが望ましいまで、カプセル化(ハイドロゲル)マトリックス前駆体組成物から分離して維持される。このタイプのラジカル開始剤の例は、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)である。
【0202】
一実施形態では、配列決定キットは、水および試料72(例えば、遺伝物質)を含む試料流体をさらに含むことができる。
【0203】
一実施形態では、配列決定キットは、アダプタ配列およびトランスポソームを含むライブラリ調製溶液をさらに含むことができる。
【0204】
配列決定キットを使用する方法の例では、試料流体(遺伝物質の試料72を含む)は、例えば、入力ポートを介してフローセル10’に導入される(
図5(i))。それぞれのチャンバ14内の捕捉部位22’を通して、遺伝物質(試料72)の少なくともいくつかは、複数のチャンバ14の少なくともいくつかに入る。試料72は捕捉部位22’に固定化される。
【0205】
次いで、任意の未結合試料72を含む試料流体の液体を除去することができる。除去は、フローセル10’に洗浄緩衝液(例えば、TRIS HCl)を導入することを含むことができる。フローは、フローセル10’の出口ポートを通って、任意の未結合試料72を押し出すことができる。
【0206】
この方法の例は、カプセル化マトリックス前駆体組成物76をフローセル10’に導入することを含む(
図5(ii))。カプセル化マトリックス前駆体組成物76の少なくともいくつかは、試料72を含むチャンバ14の少なくともいくつかに入る。
【0207】
次いで、この方法は、少なくともいくつかのチャンバ14内に含まれるカプセル化マトリックス前駆体組成物76の架橋または架橋および重合を開始することによって、試料72(すなわち、遺伝物質)をハイドロゲルマトリックス74内に少なくともいくつかのチャンバ14内にカプセル化することを含む(
図5(iii))。
【0208】
カプセル化の前に、外部固定化剤をフローセル10’に導入することができる。この薬剤は、チャンバに入った組成物76を除いて、フローセル10’からカプセル化マトリックス前駆体組成物76を除去することができる。これにより、ハイドロゲルマトリックス形成中にバリアが形成される。本明細書に開示される外部固定化剤の任意の例を使用することができる。
【0209】
カプセル化マトリックス前駆体組成物76が光開始剤(例えば、紫外線照射ラジカル開始剤)を含む場合、カプセル化は、フローセル10’を紫外線照射に暴露することを含む。この露光は、ラジカル生成を開始し、次いで、チャンバ14内に残るカプセル化マトリックス前駆体組成物76内の成分の架橋または架橋および重合を開始する。架橋または架橋および重合は、チャンバ14内にハイドロゲルマトリックス74を形成する。これは、チャンバ14内のハイドロゲルマトリックス74内に試料72を封入する。
【0210】
ラジカル源に曝されたときに架橋を開始するラジカル開始剤が使用される場合、ラジカル開始剤は、カプセル化マトリックス前駆体組成物76とは別に導入される。これらの例では、カプセル化は、フローセル10’をラジカル開始剤に曝露することを含む。本実施例では、ラジカル開始剤は、外部固定化剤と共に導入されてもよい。外部固定化剤中のラジカル開始剤は、カプセル化マトリックス前駆体組成物76中のラジカル生成を開始し、これは、次に、チャンバ14内に残るカプセル化マトリックス前駆体組成物76中の成分の架橋または架橋および重合を開始する。架橋、または架橋および重合は、チャンバ14内でハイドロゲルマトリックス74を形成する。これは、チャンバ14内のハイドロゲルマトリックス74内に試料72を封入する。
【0211】
ライブラリ調製は、フローセル10’表面上で行われ得る。外部固定化剤を除去し、緩衝液をライブラリ調製溶液と共にフローセル10’に導入することができる。
図4Cを参照して説明したように、ライブラリの調製を行うことができる。
【0212】
次いで、播種およびクラスタ並びに配列決定を、本明細書に開示される実施例に従って実施することができる。
【0213】
本開示をさらに説明するために、実施例を本明細書に示す。これらの実施例は、説明のために提供され、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
非限定的実施例
実施例1
【0214】
疎水性層(CYTOP(登録商標)S)をシリコンオンインシュレータ基材の最外側シリコン層上に堆積させ、疎水性層上にポジ型フォトレジストを堆積させた。フォトリソグラフィを用いて、直径50μmのマイクロチャンバをフォトレジスト中にパターン化した。次に、フォトレジストパターンに続いて、疎水性層および最も外側のシリコン層をエッチングした。次いで、フォトレジストをリフトオフした。
【0215】
基質中の微小チャンバをシリル化し、その上にPAZAMを沈着させた。非付着PAZAMを洗い流し、次いでP5およびP7プライマーをマイクロチャンバ中のPAZAMに移植した。基材に蓋を取り付けた。
【0216】
図4Aに示されるものと同様の複合体を、平均直径3μmを有するように調製した。特定のビーズ上のフラグメントは、同じ長いDNA分子(PhiXゲノム由来)由来であった。ライブラリフラグメントは、ビーズ表面上のストレプトアビジンに対するビオチンよりも弱い親和性を有するデシオビオチンオリゴを介して固形保持体に結合した。ライブラリフラグメントは、インデックス配列と共にP5およびP7’配列、読み取り1および読み取り2配列を含む。この複合体はマイクロチャンバにロードされた。
【0217】
図6Aは、1つのマイクロチャンバ内の複合体の1つを示す顕微鏡写真である。
【0218】
播種は、複合体からライブラリフラグメントを放出することによって開始され、クラスタ化はブリッジ増幅を用いて行われた。
図6Bは、
図6Aの複合体からのシードされたライブラリに由来するクラスタの蛍光顕微鏡写真である。
【0219】
第1の塩基配列決定を行い、
図6Bのマイクロチャンバのリアルタイム分析(RTA)を
図6Cに示す。
図6Dは、
図6Cのマイクロチャンバ内部の読み取り値から得られたアイランドの一例を示す図である。
図6Dの結果は、すべての読み取りが同じ長鎖DNAフラグメントから生じたことを示す。
実施例2
【0220】
2レーンのガラス基材を用いてフローセルを作製した。疎水性材料をガラス基材上に堆積した。疎水性材料にポジ型フォトレジストを塗布した。ポジ型フォトレジストは、2つのレーンそれぞれの異なるマイクロチャンバの輪郭を描く円形パターンを定義するために露出され、現像された。現像されていないレジストの下の疎水性材料をエッチング除去した。これにより、各マイクロチャンバの表面が露出した。現像したフォトレジストを所定の位置に置いて、マイクロチャンバをシリル化し、その上にPAZAMを堆積した。非付着PAZAMをリフトオフ技術を用いてフォトレジストで除去した。次いで、P5およびP7プライマーをマイクロチャンバ内のPAZAMにグラフトした。UV硬化型接着剤を用いて蓋を基材に接着した。
【0221】
この実施例のマイクロチャンバは、異なる直径およびピッチを有し、フローセルの長さに沿って2つの異なるレーンで調製された。表1に各レーンの直径とピッチを示す。
【0222】
【0223】
本実施例で使用した複合体は、固形保持体と、アビジン-ビオチンリンカーを介して固形保持体に結合した配列決定可能な核酸フラグメントとを含んでいた。複合体のライブラリフラグメントは
図4Bに示したものと類似していた。PCRフリーライブラリは、TruSeq(商標)プラットホーム(Illumina、Inc.)プロトコルに従ってチューブ内で調製した。ライブラリを、P7プライマーへのハイブリダイゼーションを介してビーズに結合し、これをビオチンを介してビーズに結合した。
【0224】
複合体(ハイブリダイゼーション緩衝液中で200μL)を含むハイブリダイゼーション緩衝液をフローセルチャネルに流すことにより、複合体をフローセルに導入した。
図7Aは、複合導入後のフローセルレーンの各セクションの拡大部分を示す顕微鏡写真である。レーンとセクションの識別は、表1に対応している。図示されるように、1つ以上の複合体が、少なくともいくつかのマイクロウェル内で単離された。
【0225】
播種は、複合体からライブラリフラグメントを放出することによって開始された。ライブラリ放出は、フローセルをP7プライマーの融解温度以上に加熱することによって開始した。フラグメントをハイブリダイズし、第1の鎖伸長を行った。固形保持体および非ハイブリダイズフラグメントを0.2Mナトリウム水溶液で除去した。次いで、ブリッジ増幅法を用いてクラスタ化を行った。第1の塩基配列決定を行い、マイクロチャンバのリアルタイム分析(RTA)を
図7Bに示す。これらの結果は、複合体を受け取ったマイクロチャンバと複合体を受け取らなかったマイクロチャンバとの間にクロストークがないことを示している。
実施例3
【0226】
フローセルは、実施例2に記載されるのと同様の方法で形成された。
【0227】
E.Sytoxグリーンで染色し、TRIS HCl洗浄緩衝液(pH8.1)中に分散した大腸菌をカプセル化マトリックス前駆体と混合し、フローセルに導入した。次いで、フローセルを洗浄した。カプセル化マトリックス前駆体組成物は、アクリルアミド単量体、過硫酸カリウム(KPS)、およびビスアクリルアルミドを含んでいた。ラジカル開始剤(TEMED)を含む鉱油を導入した。オイルはカプセル化マトリックスを少なくともいくつかのマイクロチャンバに押し込み、架橋を開始した。
図8の1)は、ハイドロゲルが形成された後のいくつかのマイクロチャンバの顕微鏡写真である。図に示されているように、ハイドロジェルはほとんどのマイクロチャンバで形成されていた。
【0228】
ハイドロゲルマトリックスは、試薬がマトリックスから自由に交換することを可能にしたが、その中にバクテリアを保持した。これを実証するために、洗浄を行い、その後、フローセルにリゾチームを導入して細胞溶解を行った。フローセルを約37℃に約30分間加熱し、リゾチームを活性化した。
図8の2)は、細胞溶解後の(
図8の1)の)顕微鏡チャンバの顕微鏡写真である。
【0229】
DNA抽出は、汚染タンパク質を消化するプロテイナーゼK(ProK)の存在下で行った。
図8の3)は、DNA抽出後の(
図8の2)の)顕微鏡チャンバの顕微鏡写真である。
【0230】
ライブラリ調製は、P7-ME(モザイク端部)/ME’およびP5-ME/ME’アダプタ混合物を用いたトランスポゾン(Illumina社製NEXTERA(商標)DNAライブラリプレップキット)を用いて行った。標識後、SDSを用いてタンパク質を除去し、PCR酵素を用いて伸長反応を行い、二本鎖ライブラリを作製した。
【0231】
図8の4)は、ライブラリ調製後の(
図8の3)の)顕微鏡チャンバの顕微鏡写真である。これらの結果は、in situ試料カプセル化とハイドロゲル形成がフローセル表面で行われることを示す。
実施例4
【0232】
ガラス基材を利用し、その中に円形ナノ凹部をエッチングした。CYTOP(登録商標)Sを疎水性ポリマー(セパレート材18)として使用し、ナノ凹部内を含めてガラス基材を横切って堆積させた。疎水性高分子にフォトレジスト(Shipley S‐1805)を適用し、疎水性高分子の円形パターンを決定するために開発した。疎水性高分子をフォトレジストで覆われていないナノ凹部からプラズマエッチングにより除去した。次いで、露出したナノ凹部をシリル化し、ゲル材料で被覆した。ゲル材料はPAZAMであった。次いで、リフトオフプロセスを用いて、フォトレジストおよびフォトレジスト上の任意のゲル材料を除去した。これにより下層の疎水性高分子を露出させた。疎水性高分子は間質領域の上のZ方向に約1μmから約2μmまで伸びた。Z方向とは、3次元空間のデカルト座標系のZ軸を指す。本実施例では、疎水性ポリマーは、直径50μmの円形のチャンバを画定した。プライマーグラフトを行い、P5およびP7プライマーをPAZAMにナノ凹部で付着させた。
【0233】
図4Aに示すものと同様の複合体を調製した。特定のビーズ上のフラグメントは、同じ長さのDNA分子由来のものであった。ライブラリフラグメントは、ビーズ表面上のストレプトアビジンに対するビオチンよりも弱い親和性を有するデシオビオチンオリゴを介して固形保持体に結合した。この複合体はマイクロチャンバにロードされた。マイクロチャンバ表面への複合体の結合は、アンカーで達成された(例えば、ゲル材料に結合したP5プライマーにハイブリダイズしたビオチンを有する相補的プライマーまたはアルキン-PEG-ビオチンリンカーを、クリック化学を用いてゲル材料上の遊離アジドに共有結合させた)。ドデシル硫酸ナトリウムを含む生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液中の遊離ビオチンを導入し、フローセルを約80℃に加熱して、それぞれの複合体からライブラリを放出させた。フローセルを通して空気を吸引し、遊離ビオチン溶液を押し出した。疎水性/親水性表面構造により、液体が空気により押し出されたときに、液滴がマイクロチャンバ内に形成された。液滴は、ライブラリフラグメントが隣接するマイクロチャンバに拡散するのを防止した。
【0234】
次いで、放出されたライブラリフラグメントをマイクロチャンバ内の表面プライマーにハイブリダイズさせ、伸長工程を行って相補的コピーを作製した。クラスタ生成はブリッジ増幅により行った。次いで、フローセル上で配列決定を行った。
【0235】
図9は、配列決定走行のデータ解析後のフローセルの一部を示す。オリジナルの色は、参照ゲノム上のそれらの近接性に基づいてグループ化されたアイランドまたは短い読み取りを表していた。それぞれの色は特定のマイクロチャンバに単離されたので、所与のマイクロチャンバにおける短い読み取りは、同じゲノムDNAフラグメントから、したがって同じ複合体からであると結論付けられた。これらの結果は、マイクロチャンバが複合体と放出されたライブラリフラグメントをそれぞれのチャンバ内に閉じ込めることができることを示している。
実施例5
【0236】
本日例は、ハイドロゲルのフローセル形成を示す。
【0237】
2レーンのガラス基材を利用した。異なるサイズのマイクロチャンバをスライドガラスにエッチングした。各レーンのマイクロチャンバの直径およびピッチは、表1に示すものと同じであった。疎水性材料をガラス基材上に堆積した。疎水性材料にポジ型フォトレジストを塗布した。ポジ型フォトレジストを露光し、現像して、マイクロチャンバ間の間質(格子間)上の疎水性材料を被覆することを定義づけた。現像されていないレジストの下(したがってマイクロチャンバ内)の疎水性材料は、エッチング除去された。これにより、各マイクロチャンバの表面が露出した。現像したフォトレジストを所定の位置に置いて、マイクロチャンバをシリル化し、その上にPAZAMを堆積した。非付着PAZAMをリフトオフ技術を用いてフォトレジストで除去した。次いで、P5およびP7プライマーをマイクロチャンバ内のPAZAMにグラフトした。UV硬化型接着剤を用いて蓋を基材に接着した。
【0238】
カプセル化マトリックス前駆体をフローセルに導入した。次いで、フローセルを洗浄した。カプセル化マトリックス前駆体組成は、N,N’‐ビス(アクリロイル)シスタミン、アクリルアミド、および2,2’‐アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を含んだ。次にエヴァンチェンオイルをフローセルに導入した。オイルは、カプセル化マトリックスを少なくとも一部のマイクロチャンバに押し込んだ。
図10Aは、封入(カプセル化)後の2つのレーンの異なるセクション(1~5)における、異なるサイズのマイクロチャンバ(直径およびピッチについては表1を参照)の顕微鏡写真である。各画像10A(i)~10A(x)のより明るい領域は、マイクロチャンバを示し、より暗い領域は、間質を示す。
図10A(i)~10A(x)は、間質がマイクロチャンバのサイズにかかわらず、カプセル化マトリックスから比較的(相対的に)透明であることを示している。次いで、フローセルを紫外線に曝露し、ハイドロゲル形成を開始した。次いで、フローセルをTRISHCl洗浄緩衝液(pH8.1)で洗浄した。
図10Bは、ハイドロゲル形成後の2つのレーンの異なるセクション(1~5)における、異なるサイズのマイクロチャンバの顕微鏡写真である。各画像10B(i)~10B(x)のより明るい領域は、マイクロチャンバを示し、より暗い領域は、間質を示す。
図10B(i)~10B(x)は、マイクロチャンバのサイズにかかわらず、少なくともいくつかのマイクロチャンバ中にハイドロゲルが形成されたことを示す。
実施例6
【0239】
この実施例では、2つの単一レーンガラス基材フローセルを使用した。PAZAMとP5とP7プライマーは基材表面に存在した。
【0240】
図4Aに示すものと同様の複合体を調製した。特定のビーズ上のフラグメントは、同じ長いDNA分子由来のものであった。ライブラリフラグメントを、デスチオビオチンオリゴを介して固形保持体に結合させた。複合体をフローセルレーンに装填した。レーン表面への複合体の結合は、アンカーで達成された(例えば、ゲル材料に結合したP5プライマーにハイブリダイズしたビオチンを有する相補的プライマーまたはアルキン-PEG-ビオチンリンカーを、クリック化学を用いてゲル材料上の遊離アジドに共有結合させた)。
【0241】
ドデシル硫酸ナトリウムを含む生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液中の遊離ビオチンを各フローセルに導入した。比較フローセルにおいて、緩衝液は流路を満たした。フローセルの例では、流量100μL/分の空気を流路に導入して、緩衝液を吸引し、複合体の周りに浅い液体層を形成した。フローセルを約72℃~約77℃の範囲の温度に加熱して、それぞれの複合体からライブラリを放出させた。
【0242】
ライブラリリリースおよび播種後に、クラウドプロファイルのイメージを取得した。本明細書では再現しないが、これらの画像は、ライブラリ放出および播種がバルク液中で起こったとき(比較例)、ライブラリの一部が放出された固形保持体から離れ、流路内で上方に移動することを示した。これらのライブラリフラグメントは、嵩体積中で失われたか、またはそれらが放出されたチャネルの反対面に播種されたかのいずれかであり、したがって、クラスタの濁り(クラウド)当たりのライブラリフラグメント数、および播種された全体の数(総数=1229)を減少させた。対照的に、浅い液体層では、固体表面から離れたすべてのライブラリフラグメントは浅い液体層によって閉じ込められ、より多くの2D局在播種および播種されたライブラリフラグメントのより多くの数(総数=2017)をもたらした。
【0243】
本実施例のフローセルはまた、フローセルの一方の表面からフローセルの反対側の表面へのライブラリフラグメントの顕著に減少した断面表面コンタミネーションを示した。
【0244】
液滴/パドルアイランド/浅い液層形成に及ぼす複合体の表面密度の効果を試験するために、ビオチンで被覆した単一レーンガラス基材フローセルに3μm直径ストレプトアビジン被覆磁気ビーズを導入した。2つの異なるビーズ濃度を有する流体(ドデシル硫酸ナトリウムを有する生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液)をフローセルに導入した。一方の流体は約30,000ビーズ/μLというより高いビーズ濃度を有し、他方の流体は約6000ビーズ/μLというより低いビーズ濃度を有した。
【0245】
流量100μL/分の空気を各流路に導入し、緩衝液を吸引し、磁気ビーズの周りに液滴を形成した。明視野画像は、各フローセルについて撮影され、
図11Aおよび11Bに示されている。
図11Aは、より高いビーズ濃度を有する流体の吸引後のフローセル表面を示し、
図11Bは、より低いビーズ濃度を有する流体の吸引後のフローセル表面を示す。
【0246】
図11Aは、固定化されたビーズのより密な集団、および隣接する液滴から形成されるいくつかのパドルアイランドを示す。
図11Bは、固定化されたビーズのより密度の低い集団、およびより少ないパドルアイランドおよびいくつかの単離液滴を示す。
図11Aおよび
図11Bを比較すると、フローセル表面上のより多数のビーズ(または複合体)が、液体液滴が合流(マージ)し、フローセル表面にわたってより均一な液体層を形成することを可能にすることが明らかである。
【0247】
同様の実験を、異なるビーズ濃度を有する5つの流体で行った。5つの流体は、同じ初期流体、すなわち、10mg/mL(約700,000ビーズ/μL)のビーズ濃度を有するドデシル硫酸ナトリウムを有する生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液から調製した。当初の液体はそれぞれ異なって希薄化され、例えば流体1=250x希薄化、流体2=500x希薄化、流体3=2,000x希薄化、流体4=8,000x希薄化、流体5=32,000x希薄化の5つの流体のそれぞれを生成した。流量100μL/分の空気を各流路に導入し、緩衝液を吸引し、磁気ビーズの周りに液滴を形成した。各フローセルに光場画像をとり、
図12A(流体1=250x希薄化)、
図12B(流体2=500x希薄化)、
図12C(流体3=2,000x希薄化)、
図12D(流体4=8,000x希薄化)、
図12E(流体5=32,000x希薄化)に示す。図に示すように、ビーズの表面密度の増加は、流体中のビーズの濃度の増加と相関していた。
図13に示すように、個々のビーズの周りの流体(液体)ドメインの平均直径は、ビーズの表面密度が減少するにつれて、徐々に増加した。
【0248】
液滴/パドルアイランド/浅い液層形成に及ぼす空気流速の影響を試験するために、ビオチンで被覆した単一レーンガラス基材フローセルに3μm直径ストレプトアビジン被覆磁気ビーズを導入した。異なるビーズ濃度を有する流体(ドデシル硫酸ナトリウムを有する生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液)をフローセルに導入した。流体の一方は、約7200ビーズ/μLというより低いビーズ濃度を有し、他方、流体の他方は、約14,100ビーズ/μLというより高いビーズ濃度を有した。
【0249】
2つの異なる空気流速、すなわち2,000μL/minの流速と200μL/minの流速を用いた。明視野画像は、各フローセルについて撮影され、
図14Aおよび14Bに示されている。
図14Aは、より高い空気流量で流体を吸引した後のフローセル表面を示し、
図14Bは、より低い空気流量で流体を吸引した後のフローセル表面を示す。流速が高いとき(2000μL/min)は、
図14Aに示すように液体層はより連続的であったが、流速が低いとき(200μL/min)は、より分離されたパドルアイランドを形成した。
【0250】
同じビーズ濃度と異なる塩濃度を有する4つの流体を用いて、別の実験を行った。各流体は、10mg/mL(約700,000ビーズ/μL)のビーズ濃度を有するドデシル硫酸ナトリウムを有する生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液であった。それぞれの溶液中のナトリウム濃度は異なっており、例えば、流体6=750mM Na
+、流体7=375mM Na
+、流体8=127.5mM Na
+、および流体9=93.8mMNa
+であった。流量100μL/分の空気を各流路に導入し、緩衝液を吸引し、磁気ビーズの周りに液滴を形成した。各フローセルについて明視野画像を撮影し、
図15A(流体6=750mM Na
+)、
図15B(流体7=375mM Na
+)、
図15C(流体8=127.5mM Na
+)、および
図15D(流体9=93.8mMNa
+)に示す。図示したように、塩濃度の増加は、形成された液滴に影響を及ぼさないようであった。個々のビーズの周りの流体ドメインの平均直径は、
図16に示されるように、異なる塩濃度にわたって実質的に一致したままであった(例えば、10μM以内)。
注記事項
【0251】
さらに、本明細書に提供される範囲は、明示的に記載されたかのように、記載された範囲と、記載された範囲内の任意の値またはサブ範囲とを含むことを理解されたい。例えば、約2mm~約300mmで表される範囲は、約2mm~約300mmの明示的に列挙された範囲だけでなく、約15mm、22.5mm、245mmなどの個々の値、および約20mm~約225mmなどのサブ範囲を含むと解釈されるべきである。
【0252】
前述の概念のすべての組合せおよび以下に詳述する追加の概念(そのような概念が相互に矛盾しない場合)は、本明細書に開示される発明の主題の一部として考えられることを理解されたい。特に、本開示の最後に記載されるクレームに係る主題のすべての組合せは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると考えられる。同様に当然のことながら、本明細書に明示的に用いられ、参照として組み込まれている任意の開示にも現れるであろう専門用語は、本明細書に開示された特定の概念と最も整合する意味を有するものとする。
【0253】
いくつかの実施例が詳細に記載されているが、開示された実施例は変更されてもよいことを理解されたい。したがって、上記の説明は、非限定的であるとみなされるべきである。