(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-04
(45)【発行日】2025-09-12
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/08 20060101AFI20250905BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20250905BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20250905BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20250905BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20250905BHJP
【FI】
H01F27/08 101
H01F17/00 B
H01F17/04 F
H01F41/12 A
H01F27/28 K
H01F27/28 104
(21)【出願番号】P 2021120283
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2024-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】大久保 等
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-031416(JP,A)
【文献】特開2014-127717(JP,A)
【文献】特開2019-145768(JP,A)
【文献】特開2006-310716(JP,A)
【文献】特開2015-216341(JP,A)
【文献】特開2016-197624(JP,A)
【文献】特開2021-089936(JP,A)
【文献】特開平11-204337(JP,A)
【文献】特開2019-068048(JP,A)
【文献】特開2014-013815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H01F 41/12
H05K 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に設けられるとともに開口を有する絶縁基板と、
前記絶縁基板上において前記開口周りに互いに並行して巻回された一対の平面コイルと、前記開口に関して同じ側の縁において互いに隣り合う前記平面コイルの内側端部とそれぞれ重なるとともに前記絶縁基板を貫く一対の貫通導体とを有する一対のコイル部と、
前記絶縁基板に対して直交する断面において、前記平面コイルの内側端部の断面積が、該内側端部よりも外側部分の前記平面コイルの断面積より広く、且つ、前記貫通導体の断面積より広
く、前記一対の平面コイルのそれぞれの内側端部の厚さが互いに異なる、コイル部品。
【請求項2】
前記平面コイルの内側端部の高さが、該内側端部よりも外側部分の前記平面コイルの高さより低い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記平面コイルの内側端部の幅が、該内側端部よりも外側部分の前記平面コイルの幅より広い、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記平面コイルが絶縁材料で覆われており、前記平面コイルの内側端部を覆う絶縁材料の厚さが、該内側端部よりも外側部分の前記平面コイルを覆う絶縁材料の厚さより厚い、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記絶縁基板の厚さが、前記平面コイルの内側端部の厚さより薄い、請求項1~4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記絶縁基板の厚さが、該絶縁基板の延在方向に関する前記貫通導体の寸法より薄い、請求項1~
5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記絶縁基板に対して直交する断面における前記貫通導体の断面形状がくびれている、請求項1~
6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記貫通導体が、前記平面コイルの内側端部に対して外側に偏倚している、請求項1~
7のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素体内に複数のコイルが設けられたコイル部品が知られている。下記特許文献1には、素体内に2つのコイルが設けられた4端子のコイル部品が開示されており、絶縁基板の両面に設けられた平面コイル同士が貫通導体を介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなコイル部品では、駆動時において貫通導体周辺の温度が過剰に高くなることがあり、その場合には素子特性の安定性が損なわれ得る。発明者らは、貫通導体周辺の放熱について研究を重ね、放熱性を高めることができる技術を新たに見出した。
【0005】
本発明は、貫通導体周辺の放熱性の向上が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、素体と、素体内に設けられた絶縁基板と、絶縁基板上において互いに並行して巻回された一対の平面コイルと、互いに隣り合う平面コイルの内側端部とそれぞれ重なるとともに絶縁基板を貫く一対の貫通導体とを有する一対のコイル部と、絶縁基板に対して直交する断面において、平面コイルの内側端部の断面積が、該内側端部よりも外側部分の平面コイルの断面積より広く、且つ、貫通導体の断面積より広い。
【0007】
上記コイル部品においては、貫通導体の断面積が相対的に狭くなっており、貫通導体において、駆動時に平面コイルを流れる電流の電流密度が高くなるため、発熱しやすい。ただし、貫通導体と重なる平面コイルの内側端部の断面積が、その外側部分の平面コイルの断面積に比べて広くなっているため、貫通導体において生じた発熱は内側端部に伝わりやすい。このようにコイル部品においては、貫通導体から内側端部へ効率良く伝熱されるため、貫通導体周辺における高い放熱性を実現することができる。
【0008】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、平面コイルの内側端部の高さが、該内側端部よりも外側部分の平面コイルの高さより低い。
【0009】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、平面コイルの内側端部の幅が、該内側端部よりも外側部分の平面コイルの幅より広い。
【0010】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、平面コイルが絶縁材料で覆われており、平面コイルの内側端部を覆う絶縁材料の厚さが、該内側端部よりも外側部分の平面コイルを覆う絶縁材料の厚さより厚い。
【0011】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、絶縁基板の厚さが、平面コイルの内側端部の厚さより薄い。
【0012】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、一対の平面コイルのそれぞれの内側端部の厚さが互いに異なる。
【0013】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、絶縁基板の厚さが、該絶縁基板の延在方向に関する貫通導体の寸法より薄い。
【0014】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、絶縁基板に対して直交する断面における貫通導体の断面形状がくびれている。
【0015】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、貫通導体が、平面コイルの内側端部に対して外側に偏倚している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貫通導体周辺の放熱性の向上が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコイル部品の概略斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すコイル部品のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すコイル部品のV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
実施形態に係るコイル部品1は、一例としてバランコイルである。バランコイルは、たとえば近距離無線通信回路(NFC回路)をセルラー端末に搭載する際に利用される。バランコイルがアンテナの不平衡信号とNFC回路の平衡信号との間の変換をおこなうことで、不平衡回路と平衡回路との接続が実現される。コイル部品1は、コモンモードフィルタまたはトランスにも用いることができる。
【0020】
図1に示すように、コイル部品1は、素体10と、素体10内に埋設されたコイル構造体20と、素体10の表面に設けられた二対の外部端子電極60A、60B、60C、60Dとを備えて構成されている。
【0021】
素体10は、直方体状の外形を有し、6つの面10a~10fを有する。素体10は、一例として、長辺2.0mm、短辺1.25mm、高さ0.65mmの寸法で設計される。素体10の面10a~10fのうち、端面10a(第1の端面)と端面10b(第2の端面)とが互いに平行であり、上面10cと下面10dとが互いに平行であり、側面10eと側面10fとが互いに平行である。素体10の上面10cは、コイル部品1が実装される実装基板の実装面と平行に対向する面である。
【0022】
素体10は、磁性材料の一種である金属磁性粉含有樹脂12で構成されている。金属磁性粉含有樹脂12は、金属磁性粉体がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。金属磁性粉含有樹脂12の金属磁性粉は、たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等で構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。金属磁性粉含有樹脂12の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。
【0023】
素体10の金属磁性粉含有樹脂12は、後述するコイル構造体20を一体的に覆っている。具体的には、金属磁性粉含有樹脂12は、コイル構造体20を上下方向から覆うとともに、コイル構造体20の外周を覆っている。また、金属磁性粉含有樹脂12は、コイル構造体20の内周領域を充たしている。
【0024】
コイル構造体20は、絶縁基板30と、絶縁基板30の上側に設けられた上側コイル構造体40Aと、絶縁基板30の下側に設けられた下側コイル構造体40Bとを備えて構成されている。
【0025】
絶縁基板30は、平板状の形状を有し、素体10の端面10a、10b間に亘って延在しており、端面10a、10bに対して直交するように設計されている。また、絶縁基板30は、素体10の上面10cおよび下面10dに対して平行に延在している。
図3に示すように、絶縁基板30は、素体10の長辺方向に沿って延びる楕円環状のコイル形成部31と、素体10の短辺方向に沿って延びるとともにコイル形成部31を両側から挟む一対のフレーム部34A、34Bとを有する。コイル形成部31の中央部分には、素体10の長辺方向に沿って延びる楕円状の開口32が設けられている。
【0026】
絶縁基板30は、非磁性の絶縁材料で構成されている。絶縁基板30の厚さは、たとえば10~60μmの範囲に設計することができる。本実施形態では、絶縁基板30はガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸した構成を有する。絶縁基板30を構成する樹脂は、エポキシ系樹脂に限られず、BTレジン、ポリイミド、アラミド等であってもよい。絶縁基板30の構成材料は、セラミックやガラスであってもよい。絶縁基板30の構成材料は、大量生産されているプリント基板材料であってもよい。絶縁基板30の構成材料は、BTプリント基板、FR4プリント基板、またはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料であってもよい。
【0027】
上側コイル構造体40Aは、絶縁基板30のコイル形成部31における基板上面30aに設けられている。上側コイル構造体40Aは、
図2、3に示すように、第1の平面コイル41と、第2の平面コイル42と、上側絶縁体50Aとを備えて構成されている。第1の平面コイル41と第2の平面コイル42とは、絶縁基板30の上面30a上において並行するように隣り合った状態で巻回されている。
【0028】
第1の平面コイル41は、絶縁基板30の上面30aにおいて、同一層内で、コイル形成部31の開口32の周りに巻かれた略長円形の渦巻状空芯コイルである。第1の平面コイル41のターン数は、1ターンであってもよく複数ターンであってもよい。本実施形態では、第1の平面コイル41のターン数は3~4である。第1の平面コイル41は、外側端部41aと、内側端部41bとを有する。外側端部41aは、フレーム部34Aに設けられており、素体10の端面10aから露出する。内側端部41bは、開口32の縁に設けられている。絶縁基板30には、第1の平面コイル41の内側端部41bと重なる位置に、絶縁基板30の厚さ方向に延びる第1の貫通導体41cが絶縁基板30を貫くように設けられている。第1の平面コイル41は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0029】
第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41同様、絶縁基板30の上面30aにおいて、同一層内で、コイル形成部31の開口32の周りに巻かれた略長円形の渦巻状空芯コイルである。第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41の内周側において、第1の平面コイル41と隣り合うように巻回されている。第2の平面コイル42のターン数は、1ターンであってもよく複数ターンであってもよい。本実施形態では、第2の平面コイル42のターン数は、第1の平面コイル41のターン数と同じである。第2の平面コイル42は、外側端部42aと、内側端部42bとを有する。第2の平面コイル42の外側端部42aは、第1の平面コイル41の外側端部41a同様、フレーム部34Aに設けられており、素体10の端面10aから露出する。第2の平面コイル42の内側端部42bは、開口32の縁に設けられており、第1の平面コイル41の内側端部41bに隣接している。絶縁基板30には、第2の平面コイル42の内側端部42bと重なる位置に、絶縁基板30の厚さ方向に延びる第2の貫通導体42cが絶縁基板30を貫くように設けられている。第2の貫通導体42cは、第1の貫通導体41cと隣り合っている。第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41同様、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0030】
上側絶縁体50Aは、絶縁基板30の上面30a上に設けられている。上側絶縁体50Aは、公知のフォトリソグラフィによってパターニングされた厚膜レジストを含む。上側絶縁体50Aの厚膜レジストは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42のめっき成長領域を画定している。本実施形態では、
図4に示すように、上側絶縁体50Aは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を一体的に覆っており、より具体的には第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の側面と上面を覆っている。本実施形態では、上側絶縁体50Aは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の上面を覆う絶縁樹脂フィルムを含む。上側絶縁体50Aの一部は、
図5、6に示すように、素体10の内部から外側端部41aと外側端部42aとの間を通って素体10の端面10aまで延び、端面10aに露出している。また、上側絶縁体50Aの一部は、
図5、6に示すように、基板上面30aに沿って素体10の内部から端面10bまで延びて、端面10bに露出している。上側絶縁体50Aの厚さは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の厚さより厚い。上側絶縁体50Aは、たとえばエポキシ樹脂で構成される。
【0031】
下側コイル構造体40Bは、絶縁基板30のコイル形成部31における基板下面30bに設けられている。下側コイル構造体40Bは、
図2、3に示すように、第1の平面コイル41と、第2の平面コイル42と、下側絶縁体50Bとを備えて構成されている。第1の平面コイル41と第2の平面コイル42とは、絶縁基板30の下面30b上において並行するように隣り合った状態で巻回されている。
【0032】
下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42は、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42と対称性を有する。より具体的には、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42は、素体10の短辺に平行な軸周りに、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を反転させた形状を有する。
【0033】
下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aは、フレーム部34Bに設けられており、素体10の端面10bから露出する。下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の内側端部41bは、絶縁基板30に設けられた第1の貫通導体41cと重なっている。そのため、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の内側端部41bは、第1の貫通導体41cを介して、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の内側端部41bと電気的に接続されている。下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0034】
下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aは、フレーム部34Bに設けられており、素体10の端面10bから露出する。下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の内側端部42bは、絶縁基板30に設けられた第2の貫通導体42cと重なっている。そのため、下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の内側端部42bは、第2の貫通導体42cを介して、上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の内側端部42bと電気的に接続されている。下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0035】
下側絶縁体50Bは、絶縁基板30の下面30b上に設けられている。下側絶縁体50Bは、公知のフォトリソグラフィによってパターニングされた厚膜レジストを含む。下側絶縁体50Bの厚膜レジストは、上側絶縁体50Aの厚膜レジスト同様、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42のめっき成長領域を画定している。本実施形態では、
図4に示すように、下側絶縁体50Bは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を一体的に覆っており、より具体的には第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の側面と上面を覆っている。本実施形態では、下側絶縁体50Bは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の上面を覆う絶縁樹脂フィルムを含む。下側絶縁体50Bの一部は、上側絶縁体50A同様、素体10の内部から外側端部41aと外側端部42aとの間を通って素体10の端面10bまで延び、端面10bに露出している。また、下側絶縁体50Bの一部は、基板下面30bに沿って素体10の内部から端面10aまで延びて、端面10aに露出している。下側絶縁体50Bの厚さは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の厚さより厚い。下側絶縁体50Bの厚さは、上側絶縁体50Aの厚さと同一であってもよい。下側絶縁体50Bは、たとえばエポキシ樹脂で構成される。
【0036】
素体10には、二重コイル構造を構成する一対のコイル部C1、C2を備える。第1のコイル部C1は、絶縁基板30の上面30aに設けられた上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41と、絶縁基板30の下面30bに設けられた下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41と、両面の第1の平面コイル41同士を接続する第1の貫通導体41cとにより構成されている。第1のコイル部C1において、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の外側端部41aが第1端部を構成しており、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aが第2端部を構成している。第2のコイル部C2は、絶縁基板30の上面30aに設けられた上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42と、絶縁基板30の下面30bに設けられた下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42と、両面の第2の平面コイル42同士を接続する第2の貫通導体42cとにより構成されている。第2のコイル部C2において、上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の外側端部42aが第1端部を構成しており、下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aが第2端部を構成している。
【0037】
二対の外部端子電極60A、60B、60C、60Dは、素体10の互いに平行な端面10a、10bに一対ずつ設けられている。
【0038】
端面10aに設けられた一対の外部端子電極60A、60Bのうち、外部端子電極60Aは上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の外側端部41aと接続され、外部端子電極60Bは上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の外側端部42aと接続されている。
図6に示すように、端面10a側から見て、外部端子電極60Aは、側面10f側に偏倚しており、端面10aにおける側面10f近傍まで覆っている。また、外部端子電極60Bは、側面10e側に偏倚しており、端面10aにおける側面10e近傍まで覆っている。端面10a側から見て、外部端子電極60Aと外部端子電極60Bとは所定の均一幅で離間している。
【0039】
端面10bに設けられた一対の外部端子電極60C、60Dのうち、外部端子電極60Cは下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aと接続され、外部端子電極60Dは下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aと接続されている。外部端子電極60Cは、側面10f側に偏倚しており、端面10bにおける側面10f近傍まで覆っている。また、外部端子電極60Dは、側面10e側に偏倚しており、端面10bにおける側面10e近傍まで覆っている。端面10b側から見て、外部端子電極60Cと外部端子電極60Dとは所定の均一幅で離間している。
【0040】
端面10aの外部端子電極60Aと端面10bの外部端子電極60Cとは、素体10の長辺方向において互いに対応する位置に設けられている。同様に、端面10aの外部端子電極60Bと端面10bの外部端子電極60Dとは、素体10の長辺方向において互いに対応する位置に設けられている。
【0041】
外部端子電極60A、60B、60C、60Dはいずれも、L字状に屈曲しており、端面10a、10bと上面10cとを連続的に覆っている。本実施形態では、外部端子電極60A、60B、60C、60Dは、樹脂電極で構成されており、たとえばAg粉を含有する樹脂で構成されている。
【0042】
続いて、
図7を参照しつつ、平面コイル41、42の内側端部41b、42bおよび貫通導体41c、42cの構成について説明する。
図7は、絶縁基板30に対して直交する断面であって貫通導体41c、42cを通る断面を示しており、
図4の断面図の要部を拡大した図である。以下の説明では、上側コイル構造体40Aにおける平面コイル41、42の構成について説明するが、下側コイル構造体40Bの平面コイル41、42の構成についても同一または同様である。
【0043】
図7に示すように、第1の平面コイル41の内側端部41bの断面積S1および第2の平面コイル42の内側端部42bの断面積S2はいずれも、その内側端部41b、42bよりも外側のターンの平面コイル41、42の断面積sより広くなるように設計されている。
図7に示した形態では、第1の平面コイル41の内側端部41bの幅W1および第2の平面コイル42の内側端部42bの幅W2はいずれも、その内側端部41b、42bよりも外側のターンの平面コイル41、42の幅wより広くなっている。さらに、
図7に示した形態では、第1の平面コイル41の内側端部41bを覆う部分の絶縁材料の厚さD1および第2の平面コイル42の内側端部42bを覆う部分の絶縁材料の厚さD2はいずれも、その内側端部41b、42bよりも外側のターンの平面コイル41、42を覆う部分の絶縁材料の厚さdより厚くなっている。
【0044】
また、第1の平面コイル41の内側端部41bの断面積S1と第2の平面コイル42の内側端部42bの断面積S2とが互いに異なるように設計されている。なお、断面積S1、S2は同じになるように設計してもよい。
図7に示した形態では、第1の平面コイル41の内側端部41bの断面積S1が、第2の平面コイル42の内側端部42bの断面積S2より広くなっている。また、第1の平面コイル41の内側端部41bの厚さH1と、第2の平面コイル42の内側端部42bの厚さH2とが互いに異なるように設計されている。
図7に示した形態では、第1の平面コイル41の内側端部41bの厚さH1が、第2の平面コイル42の内側端部42bの厚さH2より厚くなっている。上側絶縁体50Aの厚さに関しては、第1の平面コイル41の内側端部41bを覆う部分の絶縁材料の厚さD1が、第2の平面コイル42の内側端部42bを覆う部分の絶縁材料の厚さD2より薄くなっている。なお、厚さD1、D2は同じであってもよい。第1の平面コイル41の内側端部41bの幅W1は、第2の平面コイル42の内側端部42bの幅W2と異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0045】
第1の平面コイル41の内側端部41bと重なる第1の貫通導体41cおよび第2の平面コイル42の内側端部42bと重なる第2の貫通導体42cは、絶縁基板30の厚さtと同じ厚さを有する。第1の貫通導体41cおよび第2の貫通導体42cは、絶縁基板30の厚さ方向に関し、円形断面を有する。絶縁基板30の厚さは、第1の貫通導体41cおよび第2の貫通導体42cの直径(すなわち、絶縁基板30の延在方向に関する寸法)より薄くなるように設計されている。第1の貫通導体41cの断面積s1は第1の平面コイル41の内側端部41bの断面積S1より狭い。また、第2の貫通導体42cの断面積s2は第2の平面コイル42の内側端部42bの断面積S2より狭い。第1の貫通導体41cおよび第2の貫通導体42cはいずれも、断面形状がくびれており、絶縁基板30の上下面30a、30bから内側に向かうに従って幅狭になっている。また、第1の貫通導体41cおよび第2の貫通導体42cはいずれも、平面コイル41、42の内側端部41b、42bに対してコイル外周側(
図7における右側)に偏倚している。なお、第1の貫通導体41cおよび第2の貫通導体42cは、コイル外周側に偏倚していない態様(たとえば、内側端部41b、42bの中心位置に対して位置合わせされた態様)であってもよい。
【0046】
以上において説明したとおり、貫通導体41c、42cの断面積s1、s2が、相対的に狭くなっており(たとえば平面コイル41、42の内側端部41b、42bの断面積S1、S2に比べて狭くなっており)、コイル部品1の駆動時に平面コイル41、42を流れる電流の電流密度が貫通導体41c、42cにおいて高くなるため、貫通導体41c、42cにおいて発熱しやすい。特に、コイル部品1のように貫通導体41c、42cが隣り合う構成の場合には過剰な発熱が生じやすい。また、貫通導体41c、42cの断面形状がくびれている場合には、電流密度がより高くなり、発熱しやすい。
【0047】
コイル部品1においては、平面コイル41、42の内側端部41b、42bの断面積S1、S2が、相対的に広くなる(たとえばその外側部分の平面コイル41、42の断面積sに比べて広くなる)ように設計されているため、貫通導体41c、42cにおいて生じた発熱は内側端部41b、42bに伝わりやすい。このようにコイル部品1においては、貫通導体41c、42cから内側端部41b、42bへ効率良く伝熱されるため、貫通導体41c、42c周辺における高い放熱性が実現されている。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、様々な態様をとり得る。
【0049】
たとえば、第1のコイル部の巻数および第2のコイル部の巻数は適宜増減することができる。また、コイル部の素体に、3つ以上のコイル部が含まれる態様であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…コイル部品、10…素体、12…金属磁性粉含有樹脂、30…絶縁基板、41…第1の平面コイル、42…第2の平面コイル、41b、42b…内側端部、41c、42c…貫通導体、C1…第1のコイル部、C2…第2のコイル部。