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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-05
(45)【発行日】2025-09-16
(54)【発明の名称】生物排除装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/18 20110101AFI20250908BHJP
【FI】
A01M29/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2025062833
(22)【出願日】2025-04-06
【審査請求日】2025-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523216687
【氏名又は名称】株式会社テクノクラート
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】藤原 奨
(72)【発明者】
【氏名】小川 鉄夫
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174592(JP,A)
【文献】全方位型スピーカーの害獣対策への応用,技術的なことについて,日本,2021年03月28日,第1―2頁,https://yne-gaijyu.jp/blog/technology/20210328032005-536/
【文献】大澤慶嗣 外3名,シカ等忌避装置の研究開発(基礎研究編),エネルギー産業起業化研究会,日本,2018年04月16日,第1-25頁,https://www.tsuruga.or.jp/top/shika.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/16-29/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排除対象生物を排除する生物排除装置であって、
下面に開口部が形成されている外装部と、
前記外装部の前記開口部よりも下側に固定具を介して可動自在に設けられ、音放射を所定の角度で反射させる反射板と、
前記外装部の側面側に設置され、前記排除対象生物に直接的に音を放射する直接音放射スピーカと、
前記外装部の内部に設置され、前記反射板を介して前記排除対象生物に間接的に音を放射する間接音放射スピーカと、
前記外装部の内部の基板上に設けられた複数の空中超音波素子で構成され、前記反射板を介して前記排除対象生物に間接的に音を放射する超音波スピーカ段と、を有している、生物排除装置。
【請求項2】
前記間接音放射スピーカは、
前記間接音放射スピーカからの音放射が、前記超音波スピーカ段からの音放射と重ならない位置に設置されている、請求項1に記載の生物排除装置。
【請求項3】
前記直接音放射スピーカ、前記間接音放射スピーカ、及び、前記超音波スピーカ段の駆動を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記超音波スピーカ段からの音放射と同時に又は時間差を設けて、前記直接音放射スピーカ及び前記間接音放射スピーカから、可聴周波数帯域及び高周波帯域の音放射を実行する、請求項1又は2に記載の生物排除装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記排除対象生物が聞き取ることができる音圧レベルで、前記可聴周波数帯域及び高周波帯域の音放射をランダム再生する、請求項3に記載の生物排除装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記超音波スピーカからの音声放射時間を最長5秒、
前記直接音放射スピーカ及び前記間接音放射スピーカからの音放射時間を最長3分で駆動を制する、請求項3に記載の生物排除装置。
【請求項6】
前記固定具を介して前記外装部を上下に複数重ねて構成された、請求項1に記載の生物排除装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥類・哺乳類を含む動物類、特に野生動物(以下、「排除対象生物」とも称す)を近づかせたくない場所から排除する装置であって、特に音を利用した、生物用排除装置(以下、装置とも略す)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばゴキブリや蚊、ハエ、カメムシなどの虫類、ネズミなどの小動物類、カラスやムクドリなどの鳥類などの野生動物を対象にした『生物排除装置』は開示されている。なお、以下の説明において、「排除」には、「駆除」、「忌避」、「回避」が含まれるものとする。
【0003】
近年は、もともとペットとして飼育されていた犬や猫、その他外来動物が野生化して、人間の生活圏まで到来して来て、人間の生活環境を犯すことが発生している。また、そのような生物だけでなく、本来は野山で生息していた、熊や鹿、イノシシ、サルなどの野生動物も人間の生活圏まで到来してきている。
【0004】
一般的に、人間の生活圏にまで入ってきた野生動物は、「有害動物」とされ、捕獲されたり、射殺されたりすることで排除されることが多い。しかし、実際問題として、有害動物による被害が減っていない。特に元々野山に生活圏を持っていた野生動物については、効果的な排除対策が実行されているとはいいがたい。
一方、野生動物を追い払うことを目的としている生物排除装置においても、効果的に野生動物を排除できるものは現状でも存在していない。
つまり、野生動物の排除問題は、所定の地域社会において大きな課題になってきている。
【0005】
従来の生物排除装置の1つには、異なる超音波帯域の信号を周期的に変化させて、空中に放射する電気音響変換放射器(スピーカ)を備えたものが開示されている。また、生物そのものの侵入を防ぐための電気柵などが用いられることも多い。
【0006】
スピーカを備えた装置として、「それぞれ異なる周波数帯域を有する複数の超音波送波器と、上記各超音波送波器別に駆動するドライブ回路とを備え、予め定められた複数の駆動モードのうちから1つの駆動モードを選択すると共に、上記駆動モードに基づいて上記ドライブ回路を制御する制御部を備え、上記各モードには上記複数の超音波送波器のうちから少なくとも1つの超音波送波器を不規則に選択し、上記ドライブ回路の駆動周波数、および駆動時間を不規則に制御するランダム帯を設けたことを特徴とする超音波を利用した有害動物駆除装置」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1には、放射器を備えた製品に搭載しているIC等の記憶装置に、予めプログラミングしていた時間と周期に応じて超音波信号を放射するようにしており、音放射を提示する対象物が音に対して慣れるなどの状態が講じないための信号処理を行っている。また、超音波送波器から放射される音は、前記送波器が向いている方向に対して直線的に音放射を行うことができるため、放射器前面にいる有害動物に対して直接的な音放射を行うことが可能である。
【0008】
有害動物の一例として、様々な業種から排除要求の多いものとして「鳥類」が挙げられる。「鳥類」としては、近年、カラスやムクドリなどが対象になっている。このうち、カラスは「鳥類」の中でも高い知能を持っているということは周知であり、専門の研究結果から、カラスはカラス同士によるコミュニケーション能力にも長けていることが判明している。
【0009】
更に近年は、外来種含む、熊、狸、鹿、猿などの哺乳類による農作物への食害的被害や、人間を襲うなどの直接的被害の報告が非常に多くなっている。
この理由には、野山が開拓され、住宅街へと変化していることや、住宅地での生ごみなどの出し方(処理方法)が悪く、動物にとっては簡単に餌が得られこととなり、野山から住宅街へ降りてくるということも背景にある。
【0010】
さらに、野生動物が本来生息している野山に人間が近づいていることも背景の一つにある。野生動物と人間の距離が近接すると、音による動物排除も、人間にとっては騒音として暴露してしまうために、音の利用も難しい環境下になってしまっている。
現状の音による動物排除は、周波数帯域に関係なく、高い音圧レベルを放射して、動物を脅すことを目的としているが、この高音圧レベルでの放射音が人間にも被害を及ぼしているのも事実である。
【0011】
従来の生物排除装置には、排除したい動物(例えばカラスなど)の音声を用いて、カラスの音声をスピーカから大きな音圧レベルで放射して直接的にカラスへ暴露させることで、カラスに対して回避行動をさせるようにしたものもあった。
また、鳥類含む生物の排除にスピーカからの大きな音圧レベルでの音放射を暴露させる以外に、超音波帯域の周波数を、間接的/又は直接的に提示していた(例えば、特許文献1~4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平7-107893号公報(例えば、2、3ページ)
【文献】特許第5135507号公報(例えば、実施例1)
【文献】特許第6139395号公報(例えば、実施例1)
【文献】特許第6072149号公報(例えば、実施例1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
動物の行動を見るに、人間の生活圏に近づいている現状があるが、動物側から人間に対して、ペットのよう好んで近づくことは殆どない。むしろ、人間の行動を、鋭い聴力や臭覚で常に検出して、人間を避けるように行動するのが野生動物の基本行動であり、それが動物行動学の基本となっている。
【0014】
特に聴力や臭覚は人間のそれとは数百倍の高い能力を有しており、聴力に関しては、可聴周波数帯域に至っては100kHz近くまで聞こえ、最低音圧レベルも何も音が聞こえないような環境下(暗騒音が非常に小さい環境で、例えば0~10dB環境など)から+3dB以上発現すると、確実に音の変化に対する動体変化が起こっていることを実験検証で確認している。
【0015】
これは、例えば暗騒音が50dBあったとしても、動物に対して任意の周波数帯域が+3dBの変化を起こしても、音の変化を音の変化の弁別量として捉えることが動物にはできることが背景にある(日本音響学会2021年春季研究発表会:『猫用低騒音被毛回収手段』で音響計測実験結果一部報告)。つまりは、暗騒音に、動物が不快と感じる任意の音波が、暗騒音よりも3dB高く到来するだけで、動物は弁別できることができ、嫌な音に対しては移動するなどの行動を起こすことが分かっている。
この弁別源は、周波数帯域に対しての依存性は少なく、低い周波数から高い周波数まで対応し、人間の弁別源とは全く異なり、動物は非常に高い弁別を有していることが分かる。
【0016】
屋外で音を使った従来の生物排除装置は使用環境の暗騒音を気にして、動物排除装置から放射される音波の出力音圧レベルは高くすることを基本としていた。しかし、排除すべき野生動物の多く、つまり人間が怖いと判断した動物のほとんどは、人間が寝静まった夜間に行動することを基本としている。このような野生動物は、暗騒音が下がる夜間に、昼間と同等の音圧レベルで排除用の音波を音放射した場合、動物以外の人間などに対しては騒音として認識されてしまう問題が生じていた。
【0017】
つまり、野生動物が支配的な郊外の夜間は、怖い人間や、同類とは異なる動物、同類であっても「縄張り争い」を避けるために、このような野生動物の聴力は、非常に研ぎ澄まされた能力を有しており、夜間の郊外の暗騒音(例えば、20dB以下)よりも低い音圧レベルの音を聞くことができることは容易に判断できる。
【0018】
このことから、動物行動を利用して、動物排除の音響装置から放射される音波の音圧レベルは、動物が聞き取れる非常に低い音圧レベルの音放射が行えれば、動物排除を十分に行えることができることになる。もちろん、昼間の暗騒音が高い状態もあり得るので、その場合は、屋外の暗騒音を測定して、暗騒音よりも高い音圧レベルで音放射できるように自動的に音圧レベル(理想的には+3dBで動物は音の分離が可能となる)を上げることで、昼間の暗騒音にも対応するようにすることが重要と言える。
【0019】
以上のことから、昼夜の暗騒音の音圧レベルを自動又は手動で検知(手動の場合は予測レベル)して、暗騒音よりも+3dB程度高い音圧レベルで、動物排除のための音圧レベルを放射することを基本とする、生物排除装置を提供することが望ましい。
【0020】
超音波帯域の周波数まで聞き取ることが可能な動物が多く存在することから、特許文献1に記載の技術では、超音波帯域の音放射を前記動物に暴露させることで、ある一定期間は排除の効果を発揮することができる。
【0021】
しかしながら、超音波帯域の音響的な信号よりも人間の可聴周波数帯域(20kHz以下)と同等の周波数帯域をコミュニケーション手段として利用しているカラス等の排除対象生物に対しては大きな影響を与えることができない等の問題点が有った。
また、超音波信号の発振周波数を変化させたとしても一定のリズムで変化していることには変わりないので、ある程度の時間暴露によって、排除対象生物に、音そのものへの「慣れ」が生じてしまうという問題点もあった。
【0022】
特許文献2に記載の技術では、排除等に必要な音響信号を、排除対象生物に必ず聞こえさせることを重要視している。そのために、スピーカからの放射音は排除対象生物の音声と同等、又はそれ以上の音圧レベルで音響信号を放射している。そのため、音放射させるためのスピーカなどからは終夜問わず、排除対象生物の音声以上の音圧レベルの音声が大音量で放射されることになる。よって、生物排除装置の設置環境周囲には排除対象生物の排除に必要な音声信号が音放射されていることになるので、周辺の住民にも同等に暴露されて、設置環境が引き起こす「騒音」という問題を発生させていた。
【0023】
特許文献3に記載の技術では、20kHz~32kHz付近の超音波信号を用いて、放射器の前方に対して音放射を行い、且つ、放射音の反射も利用して、超音波信号を空中に伝搬させている。しかしながら、前記超音波信号を放射するための手段は、電気-音響変換器、つまりは高周波帯域も再生できる一般的な動電型のスピーカであり、一般的なオーディオ用の高周波数帯域を受け持つスピーカ(ツイーターとも略す)を用いているために、このスピーカから放射される音圧レベルは、音響理論の原理原則に伴い、音の大きさ(デシベル)は距離の対数に比例して減衰することになる(距離×2倍で-6dB)。
【0024】
したがって、放射器の近傍にいる動物には音放射を提示することが行えたとしても、離れた場所にいる動物には高い音圧レベルの音を提示することができない。さらに、排除が必要なエリアは狭い範囲に限られてしまうこととなり、生物がどこから侵入してくるかわからないことや、動物の大きさもいろいろあるため、主種雑多な生物に対して音放射を提示することができず、結果的に、音放射を行える範囲が狭く、排除したいエリアに生物が入り込むなどの問題を招くことになる。
【0025】
また、このようなスピーカからの音放射の指向性は原理的(波長との関係)に狭いために、結果的に排除が必要なエリアは限られてしまい、排除エリアに動物が入り込む問題を解決できないことが発生する。
またさらに、このようなスピーカからの音放射を反射させる手段を行って音を飛ばすとしても、線形的な音響信号を持つ一般的な超音波信号放射だけでは、反射を起こさせる反射部分で音波が振動変換を行うことで音響減衰を招くために、結果として、放射音の伝搬を行わせることができない問題があった。
【0026】
特許文献4では、40kHzの搬送波に重畳した可聴音を伝搬するパラメトリックスピーカ方式を基本にしている。このスピーカは超音波帯域の周波数を用いていることから基本的に指向性が高く、一方向に対しての直線性に優れている。しかしながら、一方向のみのビームが絞られた音放射になることと、一方向先の離れたところにいる生物に音放射するために高い音圧レベルを確保する必要があるため、放射器そのものには非常に多くの超音波素子が必要となり、非常にコストの高い音放射装置構成となる。更に、一方向に対して指向性が高いことが災いして、スピーカの軸上から外れている動物に対してはスピーカ音が聞こえないという欠点があり、多くの動物に対して一斉に音提示が行いにくいという欠点がある。
【0027】
また、指向性が高いために、いろいろな方向から侵入することや、大小さまざまな体調高の動物などの多くの動物に適用することは、パラメトリックスピーカそのものの音響特性が影響して、設置条件が困難になる問題を生じていた。
【0028】
この発明は、上述の問題解決を背景になされたもので、排除対象生物に対し、動物の行動を基準として、設置環境の暗騒音を、動物排除に必要な音波の音圧レベルを制御して、最小限の音圧レベルでの音放射を可能とした生物排除装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために、本発明に係る生物排除装置は、排除対象生物を排除する生物排除装置であって、下面に開口部が形成されている外装部と、前記外装部の前記開口部よりも下側に固定具を介して可動自在に設けられ、音放射を所定の角度(最大360度の全周方向)で反射させる反射板と、前記外装部の側面に設置され、前記排除対象生物に直接的に音を放射する直接音放射スピーカと、前記外装部の内部に設置され、前記反射板を介して前記排除対象生物に間接的に音を放射する間接音放射スピーカと、前記外装部の内部の基板上に設けられた複数の空中超音波素子で構成され、前記反射板を介して前記排除対象生物に間接的に音を放射する超音波スピーカ段と、を有している、構成である。
【0030】
このような構成によれば、動物の本能に直接又は間接に訴えて害獣を、排除させるべき空間よりも離れたところで「排除/回避」させることできる。
【0031】
本発明に係る生物排除装置において、前記間接音放射スピーカは、前記間接音放射スピーカからの音放射が、前記超音波スピーカ段からの音放射と重ならない位置に設置されている、構成とすることができる。
【0032】
このような構成によれば、間接音放射スピーカからの音放射と超音波スピーカ段からの音放射が、それぞれ邪魔することはない。
【0033】
本発明に係る生物排除装置において、前記直接音放射スピーカ、前記間接音放射スピーカ、及び、前記超音波スピーカ段の駆動を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記超音波スピーカ段からの音放射と同時に又は時間差を設けて、前記直接音放射スピーカ及び前記間接音放射スピーカから、可聴周波数帯域及び高周波帯域の音放射を実行する、構成とすることができる。
【0034】
このような構成によれば、最小限の音圧レベルでの音放射を基本とすることができるので、必要最小限の電力を使うだけでよい。また、最小限の音圧レベルを使うために、騒音問題も解決できる。
【0035】
本発明に係る生物排除装置において、前記制御部は、前記排除対象生物が聞き取ることができる音圧レベルで、前記可聴周波数帯域及び高周波帯域の音放射をランダム再生する、構成とすることができる。
【0036】
このような構成によれば、排除対象生物の音に対する慣れを抑制することが可能になる。
【0037】
本発明に係る生物排除装置において、前記制御部は、前記超音波スピーカからの音声放射時間を最長5秒、直接音放射スピーカ及び前記間接音放射スピーカからの音放射時間を最長3分で駆動を制する、構成とすることができる。
【0038】
このような構成によれば、電源の浪費を抑制することができる。また、装置や音放射素子の寿命を延ばすことができ、長期間に亘って、排除対象生物の排除が行える。
【0039】
本発明に係る生物排除装置において、前記固定具を介して前記外装部を上下に複数重ねて構成された、構成にできる。
【0040】
このような構成によれば、複雑な構成とすることがなく、様々な用途に応じた生物排除装置を提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、音放射だけで排除効果を発揮することができる生物排除装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施の形態に係る生物排除装置の外観を模式的に示す外観模式図である。
図2】本発明の実施の形態に係る生物排除装置の内部構成を概略的に示す内部模式図である。
図3】本発明の実施の形態に係る生物排除装置を下面から見た状態を概略的に示す下面視模式図である。
図4】本発明の実施の形態に係る生物排除装置の超音波スピーカ段の基板と反射板の角度を説明するための説明図である。
図5】本発明の実施の形態に係る生物排除装置の超音波スピーカ段の基板と反射板の角度を説明するための説明図である。
図6】周波数特性に示す再生帯域を説明するためのグラフである。
図7】音放射の指向性の測定結果を模式的に示す説明図である。
図8】音放射の指向性の測定結果を模式的に示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態に係る生物排除装置の別の構成例を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態について説明する。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。さらに、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
【0044】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る生物排除装置1の外観を模式的に示す外観模式図である。図2は、生物排除装置1の内部構成を概略的に示す内部模式図である。図3は、生物排除装置1を下面から見た状態を概略的に示す下面視模式図である。図1図3に基づいて、生物排除装置1の構成について説明する。生物排除装置1の基本的な内部構成については、図2に基づいて説明する。
【0045】
生物排除装置1は、装置外部に居る排除対象生物に対して、超音波重畳した音声と、スピーカからの音声を単独又は同時に暴露させるようにしたものである。
生物排除装置1は、外装部2と動体検知センサ3を有している。外装部2は、任意の材料で形成され、生物排除装置1の外郭を構成するものである。動体検知センサ3は、生物排除装置1の外部に存在する生物(排除対象生物を含む)の動きを検知するものであり、外装部2の周囲に複数個設けられている。
【0046】
なお、本図面での外装部2は、角形(直方体形状)を成しているが、外観形状は角形だけに限らず、円筒形や多角形構造体でも同じ排除効果を発揮することを付け加える。また、動体検知センサ3の設置個数を特に限定するものではないが、生物排除装置1の周囲を幅広く検知できる個数を設置するとよい。例えば、外装部2が角形の場合は、4つの面に1個ずつ動体検知センサ3を設置するとよい。
【0047】
外装部2の上部上面には、生物排除装置1を駆動させるための電源確保用の充電用パネル4を設置している。充電用パネル4は、太陽光パネルであり、昼間の時間に太陽光が照射されて、熱-電力変換によって、生物排除装置1の内部に設けている蓄電池(図示せず)を充電する役目を果たす。
【0048】
また、外装部2は、任意長の固定具5によって、固定されている。固定具5は、外装部2の中央部を上下方向に貫くように、外装部2に挿入され、外装部2を固定するようになっている。固定具5が外装部2に挿入されているとは、固定具5の上端及び下端が、外装部2の上面及び下面から突出するように設置されているということである。そして、固定具5の一方の終端部11(上端部)に、充電用パネル4が装着されている。
なお、充電以外に、直接的に外部からの直流および交流のどちらの電源仕様でも、生物排除装置1を駆動することができる。
【0049】
外装部2の下面6は、開口されている。開口されている部分を開口部7と称する。外装部2に収納されている各種音放射手段から、開口部7を経由して外装部2の外部に音放射が行われる。
【0050】
外装部2の開口部7の下側には反射板8が設置されている。反射板8は、後述する基板35の個数と同じ個数が設置されている。反射板8は、一端を支持部9として固定具5に可動自在に装着されている。反射板8は、支持部9を支点に、開口部7を塞ぐための0度から、下側に最大45度の範囲で上下に可動可能である。反射板8の角度が0度の場合は、開口部7を塞ぐことになるので、生物排除装置1を使わなくてもよい時期(例えば動物の行動が少ない冬など)は、外装部2の内部への虫の侵入やいたずら防止などの対策を施すことができる。こうすることで、生物排除装置1の意図しない損傷を防ぐことが可能になる。なお、反射板8の角度を0度~45度に限定するものではなく、多少のずれはあってもよい。
【0051】
固定具5は、他方の終端部12(下端部)が台座10に固定される。台座10は、生物排除装置1の支持台となるものであり、屋外などに設置される。終端部12は、充電用パネル4が装着される上端と反対側の端部であり、インチねじを装着することが可能なネジ受け(図示せず)が設けられており、例えば市販されている種々の三脚(図示せず)を装着することができるようになっている。更には、固定具5を複数本接続するようにしておくことも可能である。このようにしておけば、複数の生物排除装置1を上下に重ねて使用することもできる(他の実施例で説明)。
【0052】
図2に示すように、外装部2の内部には、一つ以上の直接音放射スピーカ20が設けられている。直接音放射スピーカ20は、動体検知センサ3とは重ならない位置に直接的に固定設置されている。
また、外装部2の内部には、一つ以上の間接音放射スピーカ21が設けられている。間接音放射スピーカ21は、直接音放射スピーカ20と異なり、外装部2の内部において、開口部7の方向を向いて設置される。
【0053】
また、外装部2の内部には、超音波スピーカ段25が設置されている。超音波スピーカ段25は、複数の空中超音波素子26が近接された状態で基板35に固定され、構成されている。複数の空中超音波素子26を同時に、且つ同位相条件で共振させることで、単一の超音波帯域の周波数を発振することができる(例えば、40kHz)。このように空中超音波素子26を発振することで、振動-音放射変換を行い、空中超音波の駆動周波数(例えば40kHz)が放射音として放射される。
【0054】
この駆動周波数は2つの周波数発振回路を介している。例えば、元々の空中超音波素子26の駆動周波数である40kHzの駆動信号と、43kHz前後での駆動周波数による駆動信号も発信させると、主発振周波数の大きな音圧レベルを有する40kHzと同時に、約3~6dB前後の音圧レベル低下を起こした、副発振周波数43kHzも同時に発生し、2つの周波数で変調状態となった音波が伝搬することを示している。
【0055】
このような2つの周波数が混在することで、空気中では超音波特有の和差分現象を発生する。差分信号として、0Hz~3kHzの帯域を持つこととなり、この帯域を利用して、超音波発振回路に可聴帯域の音声を加算させる。差分信号は0~3kHzまでの揺らぎを持つ音響信号が発生しており、この揺らぎ成分が可聴周波数帯域の周波数となって、且つ前記超音波信号に重畳して、空中を搬送する。
【0056】
空中超音波素子26を複数備えた超音波スピーカ段25の軸上には、超音波信号に重畳した可聴帯域の音声と超音波信号が同時に空間を伝搬するが、搬送先の任意の場所に衝突した場合に、変調波が復調する。復調した際に、超音波と可聴帯域の音波の両方が音として存在するが、人間には20kHz以上の超音波帯域は聞こえないために、可聴帯域の音波だけが聞こえて、聴覚的な現象としては、可聴帯域の音が超音波に乗って、離れたところに伝搬されたように聞こえる。
【0057】
超音波スピーカ段25は、上記のように動作をおこない、一般的にはパラメトリックスピーカと呼ばれた公知の音響現象として動作するものである。
【0058】
但し、人間には可聴帯域の音声しか聞こえないが、動物には搬送波として使われている超音波信号も聞こえている。つまりは、動物は、人間の可聴帯域の音以外に、超音波信号も同時に聞こえている。そのために、広い周波数帯域の音が同時に暴露しているとともに、動物に対しては離れたところから音が伝搬してくるために、超音波スピーカ段25からの音波が動物に衝突したときには、動物そのもので復調現象による音変換が行われ、動物の体で音が発生=動物の体自身から音が出ている錯覚が起こる。
【0059】
可聴帯域の音声には、動物が危険を察知したときに発する忌避音、動物を脅かすための可聴帯域の音(例えば、発破音や衝撃音などの過渡音)があり、これらを動物に暴露することで動物を排除することに効果を発揮する。
また、本来の野生動物は人間を嫌うために人間以上の聴力を有しているので、人間の話し声や叫び声などの音声を利用することで、搬送されてきた音が復調した際には、動物のすぐ傍に人間が居ると錯覚して、動物がパニック状態を起こすことになり、その場から逃避する行動を起こさせることができる。
音声には、排除対象生物の原音声あるいは原音声の特徴的な音響特性を用いた擬似音声を利用することができる。
【0060】
なお、野生動物の聴力は人間よりも優れていることを利用して、夜間や郊外などの暗騒音が小さい場所では、小さい音圧レベルで十分な排除効果を得ることが可能となる。暗騒音と可聴音との音圧レベル差は3dB前後で十分な効果が得られる実験結果を得ており、夜間で且つ動物が多く生息する郊外では、暗騒音は20dB以下となるので、可聴帯域の音声は23dB前後で音波を発生させればよいことになり、無駄な増幅段の出力回路などは必要ない。
【0061】
また、人間の存在を疑似的に分からせるために、超音波スピーカ段25による音波発振以外に、直接音放射スピーカ20と間接音放射スピーカ21を使っての音放射で動物排除の効果を得ることができる。
直接音放射スピーカ20は、外装部2の側面に一つ以上設置され、間接音放射スピーカ21は外装部2の内部に開口部7の方向に向けて設置されている。それぞれのスピーカを単体又は複合的に駆動させることで、それぞれに又は同時に音放射することができる。
なお、間接音放射スピーカ21は、超音波スピーカ段25の基板35の裏側となる部分に設置しており、超音波スピーカ段25の音響放射現象を邪魔することはない。
【0062】
基板35は、平面視が台形形状で構成されている。図3に示すように、外装部2が角形の場合は、短い方の辺が互いに向かうように、4個を設置可能としている。この設置により、一つの生物排除装置1の外装部2から、外装部2の全周となる4つの方向にそれぞれ音放射行うことが可能となる。つまり、超音波スピーカ段25からの音放射は、開口部7から外装部2の外部に出て、反射板8で反射され、外装部2の全周となる4つの方向にそれぞれ向かうようになる。
【0063】
また、生物排除装置1の設置環境によっては、4方向に音放射させる必要がない場合もあり、例えば外装部2を壁などに固定設置する場合は、壁面側となる放射スピーカそれぞれを外して、3方向だけのスピーカ設置だけで良い。つまりは、生物排除装置1の設置環境に応じたスピーカ設置数の選択が行える。開口部7には、音放射を反射させるための反射板8を設置しており、超音波スピーカ段25、及び間接音放射スピーカ21の音を、反射板8を介して反射させ、外装部2の外部に放射させる。なお、開口部7と反射板8との間には、放射音用開口部50が存在する。
【0064】
外装部2の内部には、生物排除装置1の動作を適正に行わせるための制御部100が設置されている。制御部100では、各種スピーカの駆動条件、各種スピーカを駆動するための生物を排除させるために必要な音声の再生手順、動体検知センサ3で検知した動物移動に伴うセンシング結果の処理、電源の管理などを行うほか、超音波スピーカ段25の基板35上に設けたMEMSマイク102での外部暗騒音の測定結果に伴う再生音圧の制御なども行う。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、ROM又は記憶部(図示せず)に記憶された各種プログラムに従って各種制御を実行する。
【0065】
動体検知センサ3は、動物の動きを検知するものであり、外装部2の最大4面それぞれに個々に設けている。動体検知センサ3は、水平/垂直方向で軸上0度を境に30度ずつの広域な検知範囲を持っているもので構成するとよい。例えば、赤外線や焦電効果によるセンシング手段を基本として構成されたものを動体検知センサ3として適用することができる。動体検知センサ3の検知距離は、見通しの良い場所であれば、30m前後まで検知可能とする。
【0066】
なお、生物排除装置1では、各種スピーカのうち、超音波スピーカ段25からの音声放射時間は最長5秒程度、可聴周波数/高周波用スピーカからの放射時間は最大3分を基本の初期設定時間としている。人間の居ることを想定させるために、可聴周波数帯域からのスピーカからの音声を長く放射させる手段を講じる。特に、動物は高周波帯域までも聞くことができるとの見解が多くあることから、センサ検知時には、先に超音波帯域だけを放射して、動物の行動を確認する手段も行うことができる。イノシシなどは石などが擦れるときに発生する5kHz以上の高周波音を嫌うなどの動物行動がみられるために、動物の種類によっては高周波再生だけでも排除可能な場合もある。
【0067】
超音波スピーカ段25からの放射音は、対象動物の大きさ=排除したい環境の範囲に応じて効率的に放射させる必要がある。例えば、広く放射したい場合や背の高い動物(例えば、鹿など)などの場合は、超音波スピーカ段25からの放射音の伝搬範囲を広くしたい場合が存在する。音が空中を伝搬するときは光と同様に、入射角と反射角とは90度の角度を持った反射が行われる。
【0068】
図4及び図5は、生物排除装置1の超音波スピーカ段25の基板35と反射板8の角度を説明するための説明図である。図4に示すように、超音波スピーカ段25の基板35が開口部7に対して平行になっている場合、超音波スピーカ段25からの音は反射板8で45度方向に反射させることとなり、開口部7から放射音が減衰することなく、反射=放射することができる。つまり、超音波スピーカ段25のそれぞれの空中超音波素子26の振動音は、放射音用開口部50から反射板8を介して直線的に放射することができる。
【0069】
ここで、基板長L1と開口部の長さL2は略同じ長さを有し、反射板8は、45度開いたときに基板の外装部2の外面側の空中超音波素子26からの放射音が確実に伝搬させることができる長さ(反射板長)L3が存在し、反射板8の端部53は、外装部2の外面56と同等の位置関係になる寸法長で形成するとよい。
【0070】
外装部2の外面に反射板8が出てしまうと、雪などの場合には積雪などで反射板8に障害物ができてしまい、音放射が阻害されるなどの問題が生じる。そのため、そのような問題が発生しないような長さとする。なお、図4は、比較的広い範囲に超音波スピーカ段25からの音声が伝搬させることができるが、図5に示すように基板35に角度を設ければ、超音波からの音声を絞って伝搬させることが可能となり、音声を集中的に提示する、ビーム収束的な音声伝搬手段を実現できる。
【0071】
図4の広帯域での伝搬の場合、各々の空中超音波素子26からの音波が空中を伝搬するときに距離減衰による音圧レベルの低下を招くために、暴露範囲は広げられるが、搬送波的な役目を成す超音波が空中伝搬するときに距離減衰を起こしやすくなる。
より遠くまで排除音声を伝搬する場合は、距離減衰が起きにくくするために、超音波に音波が広がらないように収束させることが必要である。その手段の一つが図5のような、空中超音波素子26を装着する基板35を短冊状の基盤60のように複数枚で構成し、それぞれの基板35の設置角度を任意に振り、反射板8に対してそれぞれの基板35に装着した空中超音波素子26からの音波を反射板8に対して45度で屈折/反射するように基板角度を調整することである。
【0072】
これにより、超音波からの音波を収束させることができるために、空中伝搬するときの距離減衰が広帯域搬送よりも伸びる結果を招くことができる。
【0073】
反射板8には、外装部2の内部の間接音放射スピーカ21の音も反射して、外装部2の外部に音伝搬を行う。45度に開いた反射板8の効果で、間接音放射スピーカ21の音は外装部2の外部に伝搬することができる。間接音放射スピーカ21及び直接音放射スピーカ20は、人間の存在や、動物の嫌がる音を放射させるもので、暗騒音よりも+3dB前後で放射する。
【0074】
但し、間接音放射スピーカ21及び直接音放射スピーカ20は、一般的な電気音響変換のスピーカであり、1m/6dBで音響レベルが減衰する(距離×2倍で-6dB)。よって、放射音の伝搬距離は、超音波スピーカ段25の伝搬距離よりも短いこととなる。そのため、排除可能とする位置を離れた位置で行う場合は、超音波スピーカ段25からの音放射が有効であるが、間接音放射スピーカ21及び直接音放射スピーカ20では離れた場所への音伝搬が行いにくいことになるが、人間の存在を聞かせるという点での働きを成す(図6で説明する)。
【0075】
図6は、周波数特性に示す再生帯域を説明するためのグラフである。図6の測定位置は、外装部2から5m離れた位置での周波数特性の分析結果である。
図6においては、以下の3つの特性を示す。
・可聴域用スピーカの再生帯域と高周波用スピーカの再生帯域、
・広帯域用パラメトリックスピーカ、及びビーム収束型スピーカの再生帯域、
・超音波素子そのものの駆動の主及び副発振周波数
【0076】
図6に示すように、間接音放射スピーカ21及び直接音放射スピーカ20からは、200Hz~5kHz、及び5kHz~70kHz以上と広い再生帯域を有することが分かる。
高周波用スピーカとは、再生する音放射のうち、人間は認識できないが動物は認識できる超音波帯域の音を発生させるものであり、外装部2に設けている制御部100内のメモリー部でランダム再生するときの排除用音声の一つである。広い周波数帯域での再生ができるために、人間の生活習慣の音を再生することや、いろいろな周波数特性を有する脅しの音を確実に再生できる。
【0077】
このスピーカから再生する音声は、いかにも人間が近くにいると動物に対して聴覚上の錯覚を与えることができるため、暗騒音が低い郊外の夜間などでは、夜間を利用して移動する動物にとっては、人間が近くに居る/人間が寝てない、などを与えることができる。そのため、音声のする方向に近づくなどの行動をやめさせることが可能となる。且つ、夜間の郊外は暗騒音も低いために、スピーカから低い音圧レベル再生しても、広い周波数帯域による再生音であれば、聴力の優れた動物に対しては有効な音声伝達手段になる。
【0078】
図6に示すように、広帯域用パラメトリックスピーカ、及びビーム収束型スピーカの再生帯域は、広い再生帯域を有しているが、パラメトリックスピーカの再生帯域は800Hz~3kHz前後の狭い帯域での再生でしかないことが分かる。パラメトリックスピーカは再生音の再生手段を変調によるものであることから、狭い周波数帯域になってしまうために、人間と同様の可聴力を動物も有するとしたら、1kHz前後の周波数が最も聞こえやすいと考えることができ、聞こえやすい=必ず聞くことができると想定して、800Hz~3kHzの帯域の周波数を出すように排除用音声の周波数特性が一致するように構成する。
【0079】
図7及び図8は、音放射の指向性の測定結果を模式的に示す説明図である。図7及び図8では、放射音用開口部50の方向を変化させたときの特性分析結果を示している。この特性は1kHzの単体音を再生させたときの5m先での指向特性を測定した結果である。なお、高周波用スピーカの特性測定は、20kHzの単体周波数を用いている。なお、図7は、開口部7の長手方向の中心の左右方向に伝搬する指向特性の測定結果を示している。図8は、開口部7の上下方向に対しての音伝搬の指向特性を示している。
【0080】
図7図8を比較すると、超音波スピーカ段25の音伝搬は、開口部7の開口面の面長範囲で、音声が直線状に伝搬していることが分かる。但し、音波の収束条件によって音波の広がり感が異なることが分かるとともに、広帯域用の音圧レベルが低いことも確認できる。
対して、間接音放射スピーカ21及び直接音放射スピーカ20からは、開口部7を境に広い指向性を有して、空中伝搬していることが分かる。
【0081】
スピーカ間で比較すると、高周波用スピーカ=高周波帯域ではスピーカそのものの振動板の空気振動力が弱いために、必然的に同じスピーカを用いているために、音圧レベルは可聴周波数帯域を再生する場合よりも音圧レベルは低くなる。
しかし、超音波スピーカよりも音放射方向は、可聴域用スピーカからの放射音同様に広い指向性を持つために、開口部からは広い指向特性による、広範囲への音響伝搬が可能となっている。
【0082】
図9は、生物排除装置1の別の構成例を模式的に示す模式図である。図9に基づいて、生物排除装置1の別の構成について説明する。図9に示す生物排除装置1は、外装部2を上下に2段重ねた構成となっている。固定具5にはネジ穴を形成しているために、縦方向に複数個の外装部2の重ね合わせが行える。それぞれの外装部2の角度を細かく振ることで、1台よりも細かい音放射を行うことや、高さ方向を必要とする場合の、例えば、放射音を縦方向に、空間的なカーテン状の音放射も形成することが可能となる。
【0083】
なお、外装部2を3段以上、重ねてもよい。また、1つの固定具5で複数の外装部2を重ねてもよいし、固定具5を分離可能にしておき、段数を可変に調整可能にしてもよい。角度を細かく振るとは、角形の外装部2の場合、上から見た状態において、外装部2が完全に重なり合わないようにすることを意味している。また、複数の外装部2を重ねる場合、それぞれの外装部2の形状、大きさ、性能を全部同じとする必要はない。
【0084】
以上のように、生物排除装置1は、排除対象生物を排除するものであって、下面に開口部7が形成されている外装部2と、外装部2の開口部7よりも下側に固定具5を介して可動自在に設けられ、音放射を所定の角度で反射させる反射板8と、外装部2の側面側に設置され、排除対象生物に直接的に音を放射する直接音放射スピーカ20と、外装部2の内部に設置され、反射板8を介して排除対象生物に間接的に音を放射する間接音放射スピーカ21と、外装部2の内部の基板35上に設けられた複数の空中超音波素子26で構成され、反射板8を介して排除対象生物に間接的に音を放射する超音波スピーカ段25と、を有している、構成である。
【0085】
このような構成によれば、動物の本能に直接又は間接に訴えることができ、害獣(排除対象生物)を、排除させるべき空間よりも離れたところで「排除/回避」させることができる。
【0086】
生物排除装置1において、間接音放射スピーカ21は、間接音放射スピーカ21からの音放射が、超音波スピーカ段25からの音放射と重ならない位置に設置されている、構成とすることができる。
【0087】
このような構成によれば、間接音放射スピーカ21からの音放射と超音波スピーカ段25からの音放射が、それぞれ邪魔することはない。
【0088】
生物排除装置1において、直接音放射スピーカ20、間接音放射スピーカ21、及び、超音波スピーカ段25の駆動を制御する制御部100を備え、制御部100は、超音波スピーカ段25からの音放射と同時に又は時間差を設けて、直接音放射スピーカ20及び間接音放射スピーカ21から、可聴周波数帯域及び高周波帯域の音放射を実行する、構成とすることができる。
【0089】
このような構成によれば、最小限の音圧レベルでの音放射を基本とすることができるので、必要最小限の電力を使うだけでよい。また、最小限の音圧レベルを使うために、騒音問題も解決できる。
【0090】
生物排除装置1において、制御部100は、排除対象生物が聞き取ることができる音圧レベルで、可聴周波数帯域及び高周波帯域の音放射をランダム再生する、構成とすることができる。
【0091】
このような構成によれば、排除対象生物の音に対する慣れを抑制することが可能になる。
【0092】
生物排除装置1において、制御部100は、超音波スピーカ段25からの音声放射時間を最長5秒、直接音放射スピーカ20及び間接音放射スピーカ21からの音放射時間を最長3分で駆動を制する、構成とすることができる。
【0093】
このような構成によれば、電源の浪費を抑制することができる。また、装置や音放射素子の寿命を延ばすことができ、長期間に亘って、排除対象生物の排除が行える。
【0094】
生物排除装置1において、固定具5を介して外装部2を上下に複数重ねた構成にできる。
【0095】
このような構成によれば、複雑な構成とすることがなく、様々な用途に応じた生物排除装置1を提供することが可能になる。
【0096】
以上のように、生物排除装置1は、動物の人間に対する行動様式と、動物の持つ人間よりも高い聴力特性を利用して、動物の排除に必要な音圧レベルによる音放射と、伝搬したい場所に復調による可聴音の音声を再生可能な超音波スピーカ段による音放射手段と、間接音放射スピーカ21及び直接音放射スピーカ20を用いた可聴帯域及び高周波帯域の音放射を組み合わせたり、いずれか1つの音放射単独であったり、且つ様々な方向に対して音放射を行うようにしたことで、人間の生活環境に入り込もうとしている生物/動物に対して、必要最小限の音圧レベルでの音放射によって、生活環境下にいる人間に対して不快な音声を暴露させることなく、生活環境に近づく野生動物の排除を行わせることができる。
【0097】
以上、本発明のいくつかの実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 生物排除装置
2 外装部
3 動体検知センサ
4 充電用パネル
5 固定具
6 下面
7 開口部
8 反射板
9 支持部
10 台座
11 終端部(上端部)
12 終端部(下端部)
20 直接音放射スピーカ
21 関節音放射スピーカ
25 超音波スピーカ段
26 空中超音波素子
35 基板
50 放射音用開口部
53 反射板の端部
56 外装部の外面
60 短冊状の基盤
100 制御部
102 MEMSマイク
【要約】
【課題】動物の行動を基準として、設置環境の暗騒音を、動物排除に必要な音波の音圧レベルを制御して、最小限の音圧レベルでの音放射を可能とした生物排除装置を提供する。
【解決手段】生物排除装置は、下面に開口部が形成されている外装部と、外装部の開口部よりも下側に固定具を介して可動自在に設けられ、音放射を所定の角度で反射させる反射板と、外装部の側面側に設置され、排除対象生物に直接的に音を放射する直接音放射スピーカと、外装部の内部に設置され、反射板を介して排除対象生物に間接的に音を放射する間接音放射スピーカと、外装部の内部の基板上に設けられた複数の空中音波素子で構成され、反射板を介して排除対象生物に間接的に音を放射する超音波スピーカ段と、を有している。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9