(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-05
(45)【発行日】2025-09-16
(54)【発明の名称】クリーンラベル澱粉組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/212 20160101AFI20250908BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20250908BHJP
【FI】
A23L29/212
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2022530861
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 US2020062351
(87)【国際公開番号】W WO2021108655
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-11-15
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ダーチ,ニコル マリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァマデヴァン,ヴァラサラジャン
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/098180(WO,A1)
【文献】特表平10-503803(JP,A)
【文献】国際公開第2019/089656(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/206722(WO,A2)
【文献】月刊フードケミカル,11月号,2019年,p.49-54
【文献】月刊フードケミカル,2月号,2010年,p.48-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/00 - 29/30
A23L 23/00 - 25/10
A23L 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉組成物であって、
当該澱粉組成物
の75か
ら85重量%に及ぶ第1の量の熱抑制された(TI)コーンスターチと、
当該澱粉組成物
の15か
ら25重量%に及ぶ第2の量のワキシースターチであり、
ワキシーコーンスターチ又はもち米スターチであって、天然のワキシースターチであるワキシースターチと、
を含み、
当該澱粉組成物が、120℃で300から900センチポアズのホットペースト粘度を有する、前記澱粉組成物。
【請求項2】
前記第1の量は、当該澱粉組成物
の75から85重量%である、請求項1に記載の澱粉組成物。
【請求項3】
前記ワキシースターチがもち米スターチであり、前記第2の量は、当該澱粉組成物
の15か
ら25重量%である、請求項1に記載の澱粉組成物。
【請求項4】
前記ワキシースターチがワキシーコーンスターチであり、前記第2の量は、当該澱粉組成物
の15か
ら25重量%である、請求項1に記載の澱粉組成物。
【請求項5】
請求項1記載の澱粉組成物を組み込んだ食品であって、前記澱粉組成物が当該食品
の5重量%以下である、食品。
【請求項6】
当該食品は熱滅菌され、将来の当該食品の消費前に室温で保存するように構成されている、請求項5に記載の食品。
【請求項7】
ラベルフレンドリーな澱粉を有する食品を作製する方法であって、
澱粉組成物を生成又は提供するステップであり、前記澱粉組成物は、前記澱粉組成物
の75か
ら85重量%に及ぶ第1の量の熱抑制された(TI)コーンスターチ、及び前記澱粉組成物
の15か
ら25重量%に及ぶ第2の量のワキシースターチを含み、前記ワキシースターチはワキシーコーンスターチ又はもち米スターチであり、
前記澱粉組成物が、120℃で300から900センチポアズのホットペースト粘度を有する、ステップと、
前記澱粉組成物を1つ以上のさらなる食品成分と組み合わせて、前記食品を形成するステップと、
前記食品を熱処理して滅菌された食品を形成するステップであり、前記滅菌された食品は、将来の消費者による消費前に室温で保存するのに適している、ステップと、
を含む方法。
【請求項8】
前記食品はスープである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ワキシースターチがワキシーコーンスターチであり、前記第2の量が前記澱粉組成物
の15か
ら25重量%に及ぶ、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ワキシースターチがもち米スターチであり、前記第2の量が前記澱粉組成物
の15か
ら25重量%に及ぶ、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記TIコーンスターチは、ワキシーコーンスターチ又は低アミロースコーンスターチである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記食品を熱処理することは、レトルト処理、超高温(UHT)処理、及び無菌包装のうち少なくとも1つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
70°Fにおける前記食品のレトルト処理後の粘度が500センチポアズを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記レトルト処理後の粘度は800センチポアズを超える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レトルト処理後の粘度は1000センチポアズを超える、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2019年11月27日に出願された米国仮特許出願第62/941,291号の利益を主張し、その優先権の利益が本明細書により主張され、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本特許出願は、食品において使用するための澱粉組成物の分野に関し、特に、熱抑制されたコーンスターチ及びワキシースターチのラベルフレンドリーな澱粉組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
澱粉は、増粘、ゲル化、及び保湿を容易にするその特性と、糊料としてのその適性を考慮すると、一般的な食品成分である。インスタント澱粉は、加熱することなく溶液において膨張して粘度の増加を展開するものである。インスタント澱粉は、例えば、インスタントプディングにおいて使用される。澱粉は、炭水化物ポリマーであり、本質的にアミロース及び/又はアミロペクチンから成り得る。ほとんどの澱粉の主成分(約70~80%)はアミロペクチンであり、これは、数千から数十万のグルコース単位の分枝ポリマーである。アミロースは、ほとんどの澱粉の微量成分(約20~30%)である。しかし、アミロースを50~70%有する高アミロース澱粉が存在する。アミロースは、本質的に数百から数千のグルコース単位の線状グルコースポリマーである。ワキシーコーンスターチは、アミロペクチンをほぼ100%(又は95%以上)含有し得る。低アミロースのコーンスターチは、アミロースを10%未満含有し得る。
【0004】
澱粉源としては、穀類、塊茎、根、根茎、又は果実が含まれるが、これらに限定されない。一般的な澱粉源には、トウモロコシ、米、小麦、大麦、ソルガム、ソバ、雑穀、キノア、ジャガイモ、タピオカ/キャッサバ、アロールート、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモ、バナナ、クズ、オカイモ、及びサゴヤシが含まれるが、これらに限定されない。ソラマメ、レンズマメ、及び、エンドウマメ、ヒヨコマメ等の食用マメも澱粉が豊富である。
【0005】
一部の澱粉は、ワキシースターチとして分類される。ワキシースターチは、本質的にアミロペクチンから成り、すなわち、少なくとも約95重量%のアミロペクチンを含有している。一般的なワキシースターチには、ワキシーコーンスターチ、もち米、ワキシーポテト、ワキシーコムギ、ワキシータピオカ、及びワキシーキャッサバ澱粉が含まれる。
【0006】
天然澱粉は、その化学構造を変えることなく、その植物源から単離されたものである。加工澱粉は、その天然状態から変えられた構造を有し、結果として、その化学的又は物理的特性の1つ以上が改変されている。澱粉は、典型的には、化学的又は酵素的手段によって官能化される。化学的手段は、様々な化学化合物による架橋又は置換を含み得る。例えば、澱粉は、特に、安定性を増加させ、テクスチャを改善し、粘度を増加若しくは減少させ、及び/又は、溶解度を増加若しくは減少させるように改変することができる。一例において、加工澱粉は、例えば、安定性を改善するために架橋される。置換又は架橋によって改変されている澱粉は、異なる化学組成を有している。
【0007】
澱粉は、湿熱処理(HMT)、すなわち水の存在下での加熱、又は、熱抑制、すなわち本質的に水の非存在下での加熱等、熱処理を受けることができる。熱抑制された(TI)澱粉は、化工澱粉とはみなされない。そのようなものとして、TI澱粉を、クリーンラベル澱粉とみなすことができる。
【0008】
様々な食品において一般的に使用される化工食品澱粉に代わるものとして、天然又は物理的に改変されたもの等、クリーンラベル澱粉に対する食品消費者からの需要が増している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】EP2783583
【文献】EP1281721
【文献】EP2246365
【文献】EP1038882
【発明の概要】
【0010】
本発明者等は、特に、熱抑制された(TI)コーンスターチ及びワキシースターチを含むラベルフレンドリーな澱粉組成物の有利な状況を認識している。ワキシースターチの例としては、ワキシーコーンスターチ、もち米、ワキシーポテト、ワキシーコムギ、ワキシータピオカ、及びワキシーキャッサバ澱粉、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、ワキシースターチは、ワキシーコーン又はもち米である。この澱粉組成物は、食品における使用に適しており、TIコーンスターチのみを使用する場合と比較して、熱滅菌される食品において改善された性能を提供することができる。食品の熱滅菌は、レトルト、超高温(UHT)処理、及び無菌包装の1つ以上を含み得る。
【0011】
本発明は、熱抑制された(TI)コーンスターチとワキシースターチとを含む澱粉組成物であって、ワキシースターチは、澱粉組成物の約50重量%以下の量である、澱粉組成物も含み、ワキシースターチは好ましくはワキシーコーン又はもち米である。一例において、ワキシースターチはもち米であり、その量は澱粉組成物の約15から約50重量%に及ぶ。別の例において、ワキシースターチはワキシーコーンであり、その量は澱粉組成物の約15から約25重量%に及ぶ。食品は、本発明の澱粉組成物及び1つ以上のさらなる食品成分を含有することができる。一例において、食品はスープであってもよい。好ましくは、食品はレトルト処理プロセスを受け、好ましくは、このレトルト処理プロセスは、食品がその包装の中に入った後に実行されている。レトルト食品は、室温で保存し、将来消費することができる。一例において、レトルト食品は、長い保存可能期間を有することができる。一例において、レトルト食品は、任意的に、消費前に加熱されてもよい。一例において、食品は、超高温(UHT)処理を受けてもよい。一例では、無菌包装プロセスを食品に用いることができる。食品を熱的にレトルト処理するプロセスは、例えば、特許文献1から当技術分野において知られている。「レトルト処理プロセス」とは、食品が密封容器内で熱に曝されてそれを商業的に滅菌するプロセスを意味することを意図している。レトルト処理は、任意の密封容器におけるそのようなプロセスを含み、密封容器は、ガラス及び金属を含むがこれらに限定されない任意の材料の缶、パウチ、又はジャーを含むが、これらに限定されない。
【0012】
本発明は、熱抑制された(TI)コーンスターチを澱粉組成物の約50から約85重量%に及ぶ第1の量で、及び、ワキシースターチを澱粉組成物の約15から約50重量%に及ぶ第2の量で含む澱粉組成物にも関する。好ましくは、ワキシースターチは、ワキシーコーン又はもち米である。好ましくは、第1の量は、澱粉組成物の約75から85重量%である。一例において、ワキシースターチはもち米であり、第2の量は、澱粉組成物の約15から約25重量%である。別の例において、ワキシースターチはワキシーコーンであり、第2の量は、澱粉組成物の約15から約25重量%である。本発明は、上記の澱粉組成物を含有する食品にも関し、澱粉組成物は、食品の約5重量%以下であることが好ましい。一例では、食品を消費する前に、食品を室温で保存するように構成することができる。
【0013】
本願による例は、ラベルフレンドリーな澱粉組成物を作製する方法を含んでもよく、当該方法は、熱抑制された(TI)コーンスターチを生成又は提供するステップと、ワキシースターチを生成又は提供するステップと、TIコーンスターチ及びワキシースターチを混ぜ合わせて澱粉組成物を形成するステップとを含み得る。ワキシースターチは、澱粉組成物の50重量%以下、好ましくは澱粉組成物の約15から約50重量%に及んでもよい。好ましくは、ワキシースターチは、ワキシーコーン又はもち米である。好ましくは、ワキシースターチは、澱粉組成物の約15から約25重量%に及ぶ。好ましくは、TIコーンスターチは、澱粉組成物の約50から約85重量%に及ぶ。
【0014】
本願による例は、ラベルフレンドリーな澱粉組成物を含有する食品を作製する方法を含んでもよく、当該方法は、熱抑制された(TI)コーンスターチ及び澱粉組成物の約50重量%までの量のワキシースターチを含む澱粉組成物を生成又は提供するステップと、澱粉組成物を1つ以上のさらなる食品成分と組み合わせて、食品を形成するステップと、食品を熱処理又は熱滅菌して、消費者によって消費される前に室温で保存することができる無菌、滅菌、又はレトルト処理した食品を形成するステップとを含み得る。一例において、食品はスープである。食品がスープである例では、スープが缶の中に包装されると、スープはレトルト処理プロセスを経ることができる。スープ調合物におけるワキシースターチは、ワキシーコーン又はもち米であってもよい。一例において、ワキシースターチはワキシーコーンであり、その量は、澱粉組成物の約15から約25重量%に及ぶ。一例において、ワキシースターチはワキシーコーンであり、その量は、澱粉組成物の約15から約25重量%に及ぶ。
【0015】
この概要は、本特許出願の特定事項の概要を提供することを意図しており、本発明の排他的又は網羅的な説明を提供することを意図するものではない。詳細な説明が、本特許出願に関するさらなる情報を提供するために含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は必ずしも縮尺で描かれていないが、これらの図面において、同様の番号は類似の構成要素を異なる視点で記載し得る。異なる末尾の文字を有する同様の番号は、類似の構成要素の異なる例を表すことができる。図面は概して、例として、本明細書において論じられる様々な実施形態を例示しているが、限定するものではない。
【
図1】ワキシーコーン、もち米、及びタピオカについての、時間及び温度の関数としての粘度プロファイルのプロットである。
【
図2】TIコーンスターチについての、時間及び温度の関数としての粘度プロファイルのプロットである。
【
図3】TIコーンスターチ及び15%のレベルのもち米の組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図4】TIコーンスターチ及び25%のレベルのもち米の組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図5】TIコーンスターチ及び50%のレベルのもち米の組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図6】TIコーンスターチ及び15%のレベルのワキシーコーンの組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図7】TIコーンスターチ及び25%のレベルのワキシーコーンの組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図8】TIコーンスターチ及び50%のレベルのワキシーコーンの組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図9】TIコーンスターチ及び15%のレベルのタピオカの組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図10】TIコーンスターチ及び25%のレベルのタピオカの組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図11】TIコーンスターチ及び50%のレベルのタピオカの組成物についての粘度プロファイルのプロットである。
【
図12A】100%TIコーンスターチと比較した、澱粉組成物についての冷蔵時間の関数としてのシネレシスのプロットである。
【
図12B】100%TIコーンスターチと比較した、澱粉組成物についての冷蔵時間の関数としてのシネレシスのプロットである。
【
図13】TIコーンスターチを100%有する試料から、TIコーンスターチとワキシーコーン、もち米、及びタピオカとの85/15の割合の組成物を有する試料についての冷凍/解凍サイクルの関数としてのスープ試料の粘度のプロットである。
【
図14】TIコーンスターチを100%有する試料から、85/15、75/25、及び50/50の割合のTIコーンスターチとワキシーコーンとの組成物を有する試料についての冷凍/解凍サイクルの関数としてのスープ試料の粘度のプロットである。
【
図15】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチを100%有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図16】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図17】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図18】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図19】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図20】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図21】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図22】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図23】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図24】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての流動曲線のプロットである。
【
図25】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチを100%有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図26】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図27】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図28】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図29】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図30】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図31】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図32】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図33】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図34】5つの冷凍/解凍サイクルの各々に対するTIコーンスターチと別の澱粉の組成物を有するスープ試料についての温度掃引のプロットである。
【
図35】5つの冷凍/解凍サイクル後のTIコーンスターチを100%有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図36】5つの冷凍/解凍サイクル後の、15%のもち米の割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図37】5つの冷凍/解凍サイクル後の、25%のもち米の割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図38】5つの冷凍/解凍サイクル後の、50%のもち米の割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図39】5つの冷凍/解凍サイクル後の、15%のワキシーコーンの割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図40】5つの冷凍/解凍サイクル後の、25%のワキシーコーンの割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図41】5つの冷凍/解凍サイクル後の、50%のワキシーコーンの割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図42】5つの冷凍/解凍サイクル後の、15%のタピオカの割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図43】5つの冷凍/解凍サイクル後の、25%のタピオカの割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【
図44】5つの冷凍/解凍サイクル後の、50%のタピオカの割合の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願は、熱抑制された(TI)コーンスターチ及びワキシースターチを含む澱粉組成物を提供する。ワキシースターチの例として、ワキシーコーンスターチ、もち米、ワキシーポテト、ワキシーコムギ、ワキシータピオカ、及びワキシーキャッサバ澱粉、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。本願の澱粉組成物は、熱抑制された(TI)コーンスターチを天然のワキシースターチと組み合わせて含み得る。好ましくは、TIコーンスターチは、TIワキシーコーンスターチ、すなわち、熱処理によって物理的に官能化された低アミロース(10%未満)コーンスターチ又はワキシーコーンである。好ましくは、ワキシースターチは、ワキシーコーン又はもち米である。TI澱粉及び/又は化工澱粉は、そのような加工澱粉が膨張し、無傷のままであり、最終製品に対する増加した粘度を可能にすることができるため、レトルト処理プロセスを受ける食品において一般的に使用することができる。しかし、本発明者等は、TIコーンスターチ及びワキシーコーン又はもち米の澱粉組成物が、TIコーンスターチがレトルト食品において単独で使用される場合と比較して、レトルト食品において改善された性能を有し得るということを予想外に見出した。ワキシーコーン及びもち米は天然澱粉であり、従って、TIコーンスターチの一部をそのような天然澱粉に置き換えると、性能が改善されたことは驚くべきことであった。この発見は、レトルト処理プロセスにおいて等、高温に曝された場合には、天然澱粉自体が分解し、従って、性能の改善には寄与しないであろうと信じられている当技術分野における典型的な理解と矛盾する。そのような性能の改善は、以下において記載されるように、例えば、澱粉組成物が使用された食品の冷凍/解凍安定性の増大を含んでいた。
【0018】
TIコーンスターチ及びワキシースターチ、好ましくはワキシーコーン又はもち米の澱粉組成物は、食品、特にスープ又はパスタソース等のレトルト食品における使用に適し得る。TIコーンスターチ及びワキシーコーン又はもち米の組成物を含有するレトルト食品は、TIコーンスターチのみを含有する類似の製品と比較して、より高い安定性及び良好な性能を示した。本明細書において実証されているように、ワキシーコーン又はもち米を含有する澱粉組成物は、ユーザによって消費される前に冷凍/解凍サイクルを受け得るスープにおける使用によく適している。
【0019】
本明細書において開示される澱粉組成物は、その例が以下において提供される多くの異なる食品に適し得る。熱抑制されたコーンスターチは、化学的に改変されるのではなく、物理的に官能化されているため、本明細書において開示される澱粉組成物は、そのような組成物が使用される食品に対するラベルフレンドリーな澱粉溶液を提供することができる。熱抑制は、化学的改変に対する代替として消費者の間でより好ましく見られる物理的改変プロセスである。熱抑制を達成するために様々な技術、例えば、限定されるわけではないが、流動床反応器、パドルミキサー反応器、マイクロ波、及び高周波技術を使用することができるということが理解されるはずである。澱粉を熱抑制するプロセスは、例えば、特許文献2、3、及び4から当技術分野において知られている。
【0020】
一例において、本明細書において開示される澱粉組成物は、食品、好ましくは製品の保存可能期間を延ばすために熱滅菌されるものに使用することができる。さらに、そのようなレトルト処理された(又は他の方法で熱滅菌された)食品は、室温で保存することができる。そのような食品は、例えば、スープ、及び様々なタイプのソース、グレービー、及び飲料を含み得る。ソースには、トマトベースのソース、チーズソース、アジアンスタイルのソース、及びグレービーが含まれ得るが、これらに限定されない。本明細書の目的上、「ラベルフレンドリー」は、一般に、澱粉、又は澱粉が含有されている食品が化学的に改変されていないことを意味する。本明細書の目的上、「ソース」は、一般に、食品と共に供されて、水気及び風味を加える濃厚な液体を指す。典型的には、ソースは、小麦粉又は澱粉等のテクスチャライザーを含む。
【0021】
本発明は、TIコーンスターチ及びワキシースターチを含む澱粉組成物に関し、ワキシースターチは、澱粉組成物に対して少なくとも50重量%の量である。好ましくは、ワキシースターチは、ワキシーコーンスターチ又はもち米澱粉である。好ましくは、ワキシースターチ、例えばワキシーコーン及びもち米等は、天然のワキシースターチである。TIコーンスターチは、好ましくはTIワキシーコーンスターチである。本発明は、TIワキシーコーンスターチ及び天然のワキシースターチを含む澱粉組成物にも関し、天然のワキシースターチは、澱粉組成物に対して少なくとも50重量%の量である。好ましくは、ワキシースターチの量は、少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、さらにより好ましくは少なくとも7重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%である。ワキシースターチがワキシーコーンである場合、ワキシースターチの量は、10から50重量%、より好ましくは15から50重量%である。ワキシースターチがもち米である場合、ワキシースターチの量は、10から50重量%、より好ましくは15から50重量%である。
【0022】
本発明は、組成物の全重量に対して第1の重量のTIコーンスターチ、及び組成物の全重量に対して第2の重量のワキシースターチを含む澱粉組成物であって、第1の重量は、第2の重量と等しいか又はそれ以上である澱粉組成物にも関する。好ましくは、第1の重量は、第2の重量よりも大きい。好ましくは、第1の重量は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55重量%、さらにより好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも65重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%である。好ましくは、第2の重量は、最大50重量%、より好ましくは最大45重量%、より好ましくは最大40重量%、さらにより好ましくは最大35重量%、最も好ましくは最大30重量%である。好ましくは、第1の重量は、少なくとも55重量%であり、第2の重量は、最大で45重量%、より好ましくは最大で40重量%、さらにより好ましくは最大で35重量%、最も好ましくは最大で30重量%である。好ましくは、第1の重量は、少なくとも60重量%であり、第2の重量は、最大で40重量%、より好ましくは最大で35重量%、最も好ましくは最大で30重量%である。
【0023】
本願の澱粉組成物は、TIコーンスターチ及びワキシースターチを含んでもよく、ワキシースターチは、澱粉組成物の約50重量%までの量であり得る。一例において、ワキシースターチはもち米であってもよく、もち米の量は、好ましくは澱粉組成物の約15から約50重量%、より好ましくは澱粉組成物の約15から約25重量%である。一例において、ワキシースターチはワキシーコーンであってもよく、その量は、好ましくは澱粉組成物の約15から約25重量%である。澱粉組成物は、食品において使用された場合に、TIコーンスターチのみの場合と比較して、多数の冷凍解凍サイクル後に優れた性能を示しながら、TIコーンスターチと類似の粘度プロファイルを有するということが分かった。本明細書において使用される場合、優れた性能は、粘度、テクスチャ、及び貯蔵安定性の1つ以上を指し得る。
【0024】
ラピッドビスコアナライザー(RVA)のPerkins Elmer 4800を使用して、澱粉組成物の粘度を測定することができる。組成物を、120℃まで加熱し、2.6分(156秒)保持し、次に、50℃まで冷却し、2分(122秒)保持することができる。RVAは、160回転/分で動作させることができる。(120℃まで加熱することは、本明細書において記載される澱粉試料を含有する食品の典型的なレトルト処理プロセスに関連する。)本明細書において使用される場合、組成物又は試料の最終粘度は、RVA実行の終了時の粘度を指す。本明細書において使用される場合、組成物又は試料のホットペースト粘度(a hot paste viscosity)は、120℃での保持時間終了時の粘度を指す。一例において、澱粉組成物は、500から1200センチポアズ、600から1000センチポアズ、又は600から900センチポアズの最終粘度を有する。一例において、澱粉組成物は、120℃で300から900センチポアズ、400から800センチポアズ、又は500から800センチポアズのホットペースト粘度を有する。
【0025】
澱粉組成物がもち米を含有する例において、もち米は、ワキシー白米粉又は低アミロース白米粉であり得る。ワキシー白米粉及び低アミロース白米粉のいずれも、高澱粉含有量(80%以上)によって特徴付けることができ、タンパク質、例えば少なくとも5重量%のタンパク質、好ましくは少なくとも10重量%のタンパク質を含有し得る。白米粉は、缶詰食品又はレトルト用途において米澱粉の代替物として使用することができる。
【0026】
本明細書において開示される澱粉組成物は、スープ等のレトルト食品用途において使用することができる。ラベルフレンドリーな澱粉を含有する食品を作製する方法は、TIコーンスターチ及び澱粉組成物の約50重量パーセントまでの量のワキシースターチを含む澱粉組成物を生成又は提供するステップを含み得る。当該方法は、澱粉組成物を1つ以上のさらなる成分と組み合わせて食品を形成するステップ、及び、食品を熱処理して滅菌食品を形成するステップを含み得る。一例において、食品のレトルト処理後の粘度は、70°Fで測定され、200センチポアズを超えるか、又は、500センチポアズを超えるか、800センチポアズを超えるか、若しくは1000センチポアズを超える。
【0027】
澱粉組成物を含有するチキンスープレシピの例が、以下において実施例のセクションで提供される。1つ以上の冷凍/解凍サイクル後に、一般的に滲出又はシネレシスがなく、滑らかなテクスチャを含む好ましい特性を観察した。以下において提供される顕微鏡検査の結果は、スープにおいてワキシーコーン又はもち米を有する澱粉組成物を使用すると、スープ調合物においてTIコーンスターチのみを使用した場合と比較して、多数の冷凍/解凍サイクル後に、より多くの無傷の澱粉粒が生じたことを示している。
【0028】
本願の澱粉組成物は、任意のレトルト食品において使用されてもよい。食品には、糖尿病食品及びサプリメント、ダイエット食品、血糖反応を制御するための食品、嚥下障害のための食品、又はスポーツドリンク等、医薬製品又は栄養製品としても分類され得るものも含まれる。一部の例において、レトルト食品は、液体又は半液体等の高水分食品である。
【0029】
任意の所与の食品において添加及び使用することができる澱粉組成物の量は、食品の消費者により許容され得る量によって大部分は決定することができる。言い換えると、使用される澱粉組成物の量は、一般に、食品の官能評価において受け入れ可能な量までであってもよい。好ましくは、澱粉組成物は、食品の重量で約0.1から約20%、好ましくは食品の重量で約0.5から約16%、より好ましくは食品の重量で約1から約12%の量で使用される。
【0030】
TIコーンスターチ及び異なる量のタピオカ澱粉を含有する澱粉組成物も、TIコーンスターチ及びワキシーコーン又はもち米を含有する組成物と同じ特性について評価した。以下において示されているように、ワキシーコーン又はもち米を有する組成物は、タピオカを有する組成物と比較して全体的により良好に機能した。
【0031】
澱粉組成物について本明細書において提供される全ての割合は、(乾燥固体ベースの)澱粉組成物全体の重量パーセントである。
【0032】
TIコーンスターチ、及び、TIコーンスターチとワキシーコーン又はもち米との組成物のRVA比較
TIコーンスターチの粘度プロファイルと、TIコーンスターチ及び天然澱粉を含む澱粉組成物の粘度プロファイルとを比較するために分析を行った。具体的には、澱粉試料に使用される天然澱粉には、ワキシーコーン(5.5%固体)、もち米(5%固体)、及びタピオカ(5%固体)が含まれる。天然澱粉の各々の粘度プロファイルが、
図1において示されている。澱粉の粘度を、RVA Perkins Elmer 4800を使用し、95℃まで天然澱粉の各々を加熱し、2.7分間保持し、次に、50℃まで冷却し、2分間保持して測定した。RVAは、160回転/分で動作させた。
【0033】
以下の表1は、澱粉試料の各々における成分を示している。
【0034】
【表1】
成分1に対して使用したTIコーンスターチは、高度に改変された熱抑制されたワキシーコーンスターチであった。成分2に対して使用したもち米は、未改変の天然のもち米澱粉であった。成分2に対して使用したワキシーコーンは、未改変の天然のワキシーコーンスターチであった。成分2に対して使用したタピオカは、未改変の天然のタピオカ澱粉であった。(天然のもち米、天然のワキシーコーン、及び天然のタピオカの粘度プロファイルに対する
図1を参照されたい)。
【0035】
RVA Perkins Elmer 4800を使用し、表1における各試料の粘度を測定して、粘度プロファイルを比較した。試料の各々は5.5%固体であり、120℃まで加熱し、2.6分(156秒)保持し、次に、50℃まで冷却し、2分(122秒)保持した。RVAは、160回転/分で動作させた。120℃まで加熱することは、本明細書において記載される澱粉試料を含有する食品の典型的なレトルト処理プロセスに関連している。
【0036】
図2~11は、上記のように120℃まで加熱した表1の試料1~10に対するRVA曲線プロファイルを示している。
図2は、時間及び温度の関数としてのTIコーンスターチの粘度プロファイルを示している。TIコーンスターチは連続的に増加し、(終了時の)最大粘度は800から900センチポアズ(cP)であった。
【0037】
図3及び4(それぞれ、もち米を15%及び25%有する組成物)は各々、約400秒後に粘度が減少し、次に、粘度が増加し、終了時には最大になることを示している。
図5(もち米を50%有する組成物)は、200から300秒の間の最大又はピーク粘度(約1000センチポアズ)と、次に、大きな減少及び800から900センチポアズの最終粘度を示している。
【0038】
図6(ワキシーコーンを15%有する組成物)は、最大粘度が終了時に800から900センチポアズであったことを示している。
図7(ワキシーコーンを25%有する組成物)は、
図6における粘度プロファイルと類似の粘度プロファイルを示しているが、最後の最大粘度は、比較的やや小さい(が、800センチポアズを超えている)。
図8(ワキシーコーンを50%有する組成物)は、200から400秒の間の最大又はピーク粘度(約1200センチポアズ)に続き、急降下及び900センチポアズを超える最終粘度を示している。
【0039】
図9(タピオカを15%有する組成物)は、粘度の低下に続き、最後に(800センチポアズに近い)最大粘度の増加を示している。
図10(タピオカを25%有する組成物)は、
図9における粘度プロファイルと類似の粘度プロファイルを示している。
図11(タピオカを50%有する組成物)は、200から400秒の間の最大又はピーク粘度(約900センチポアズ)に続き、大きな減少及び約800センチポアズの最終粘度を示している。
【0040】
図3~11における結果は、組成物の15%及び25%での天然澱粉の添加が組成物の50%での天然澱粉の添加よりも好ましいことを示している。組成物が天然澱粉を50%含む場合、組成物のピーク粘度は対照(
図2、100%TIコーンスターチ)より有意に高い。6F
Oまで製品をレトルト処理するのにより長い時間がかかり、従ってより多くのエネルギー及び処理時間が必要となるため、50%で見られるこのピーク粘度の増加は、レトルト処理プロセスにおいて望ましくない可能性がある。レトルト処理プロセスの初期においてより粘度が高い澱粉は、熱伝達がより低く、従って、澱粉は、レトルト処理において必要な温度まで加熱するのにより多くの時間がかかる。
図3~11における試料全ての最終粘度は概ね類似していると仮定すると、各試料についてピークに達した粘度が、その特定の試料を評価する際の主要な要因である。
【0041】
冷蔵安定性:表1の澱粉試料を、RVA比較の下で上記の方法を使用して、120℃でRVAにおいて実行した。次に、各試料を10の別々の25ml遠心管に分割した。管を4℃の冷蔵庫において最長36日間保存した。0日目から始まり、その後9日毎に、各試料の2つの試験管を冷蔵庫から取り出し、室温との平衡を保たせ、5000 RPMで10分間遠心分離し、さらに、各々からの遊離液体の重さを量った。シネレシスを、試料の総質量で割った、遊離液体の量からその試料の0日目における遊離液体の量を引いた量であると決定した。2つの試料に対するシネレシスの平均を計算した。
【0042】
図12A及び12Bは、120℃でRVAを使用した澱粉糊化後の冷蔵時間の関数としてのシネレシスを示している。
図12A及び12Bは、TIコーンスターチと比較して澱粉組成物がより低いシネレシスを有したことを例示している。具体的には、
図12Aにおいて、TIコーンスターチは約35日後にほぼ5%のシネレシスを有したが、コーンを15%有する組成物は約2%のシネレシスであり、米を15%有する組成物は1%未満のシネレシスであった。コーンを25%有する組成物、米を25%有する組成物、及び米を50%有する組成物に対するシネレシスは、
図12Aのグラフにおいて見えさえしない。
図12Bは、タピオカを25%有する組成物に対するシネレシスが
図12Bのグラフにおいてほとんど見えないことを例示している。
図12A及び12Bにおける結果は、水が澱粉から漏れ出すのを防ぐのにもち米及びワキシーコーンが寄与したことを実証している。
【0043】
本願は、特許請求の範囲における本発明の範囲を限定することのない以下の実施例においてさらに記載される。
【0044】
実施例
異なる量のワキシーコーン又はもち米を有するTIコーンスターチの澱粉組成物をチキンスープ調合物において使用し、その性能をTIコーンスターチのみと比較した。以下に記載されるように、チキンスープ調合物(表2を参照)は一連の冷凍/解凍サイクルを受けた。
【0045】
【表2】
異なる澱粉組成物を用いたチキンスープレシピの様々な試料が以下の表3において示されている。使用した澱粉製品は、表1において示されたものと同じであった。
【0046】
【表3】
レトルト処理:スープ試料は、256°F及び20 RPMでロータリーレトルトとして動作するAllpax 2402モデルを使用して熱処理/レトルト処理を受けて、6F
Oの致死率を達成した。レトルト処理プロセスは、ボツリヌス菌(C. Botulinum)毒素の形成を防ぎ、スープ(又は他のタイプの食品)がその意図された保存可能期間の間に室温で保存されるのを可能にするために、食品産業において一般的に使用することができる。
【0047】
Brookfield DV1 Digital Viscometer(Middleboro, USA)を使用して、スープ試料の粘度をレトルト処理後に測定した。以下の表4は、試験条件及びレトルト処理後の粘度を示している。
【0048】
【表4】
表4における結果は、もち米を15%有する澱粉組成物を有するスープ及びワキシーコーンを15%有する澱粉組成物を有するスープが、TIコーンスターチのみを有するスープに最も近いレトルト処理後の粘度を有したことを示している。表4は、50/50のT1コーンスターチ及び天然澱粉の組成を有するスープが最も低いレトルト処理後の粘度を有したことも例示している。
【0049】
低速冷凍/解凍法:(表3の8つの澱粉調合物の各々を含有する)各レトルト処理したスープ試料を、6つの5.5オンスのプラスチックカップに分配し、蓋で覆った。各調合物に対する6つのカップのうち1つを、後の分析のために冷蔵庫に置いた(これらの試料は、冷凍/解凍サイクルを受けなかった)。各調合物に対する残りの5つのカップを断熱材ボックスに置き、3日間冷凍した。3日後、各調合物に対する試料を冷凍庫から取り出し、3日間室温にてフォームボックス内で解凍し、次に、分析のために取り出した(1つの冷凍/解凍サイクル)。このプロセスを5つの冷凍/解凍サイクル繰り返した。
【0050】
粘度:粘度を、Brookfield DV1 Digital Viscometerを使用して、各冷凍/解凍サイクル後にスープ試料ごとに測定した。
図13は、TIコーンスターチのみを有するスープ試料と、85/15のTIコーンスターチとワキシーコーン、もち米、又はタピオカとの組成を有するスープ試料の粘度を比較している。
図14は、TIコーンスターチのみを有するスープ試料と、組合せの各々においてTIコーンスターチ/ワキシーコーンの組成(85/15、75/25、50/50)を有するスープ試料の粘度を比較している。
【0051】
図13は、いかなる冷凍/解凍サイクルも受ける前に、TIコーンスターチのみを有するスープと85%TIコーンスターチ及び15%ワキシーコーンの組成物を有するスープとの間に最大の粘度差があったことを例示している。しかし、5つの冷凍/解凍サイクルの後で、これら2つのスープ試料の粘度は概ね同じであった。他の2つの組成物(85%TIコーンスターチ及び15%もち米;85%TIコーンスターチ及び15%タピオカ)を有するスープについては、TIコーンスターチ及びもち米の組成物を有するスープは5つの冷凍/解凍サイクル後に最も低い粘度を有したけれども、粘度は概ねTIコーンスターチのみを有するスープの跡をたどった。
【0052】
図14は、いかなる冷凍/解凍サイクルも受ける前に、TIコーンスターチのみを有するスープの粘度は、TIコーンスターチ並びに15%、25%、及び50%のワキシーコーンの澱粉組成物を有するスープよりも高い粘度を有したことを例示している。しかし、5つの冷凍/解凍サイクル後に、TIコーンスターチのみを有するスープと、TIコーンスターチ並びに15%、25%、及び50%のワキシーコーンの澱粉組成物を有するスープとの間に粘度差は無いかそれに近かった。
【0053】
レオロジー:流動曲線及び温度掃引に対するデータも、各冷凍/解凍サイクル後にスープ試料ごとに収集した。
【0054】
図15~24は、上記の表3の澱粉調合物1~10の各々を含有するスープ試料に対する流動曲線である。
図15~24のグラフは、せん断速度の関数として粘度を示している。各試料を回転式レオメータ(Model:Anton Paar,Make:Physica MCR)上に置き、測定した粘度をせん断速度に対してプロットした。
【0055】
図25~34は、上記の表3の澱粉調合物1~10の各々を含有するスープ試料に対する温度掃引である。
図25~34のグラフは、温度の関数として粘度を示している。各試料を、加熱したプラットホーム上に置き、測定した粘度を温度に対してプロットした。
【0056】
図15及び25において示されているように、100%TIコーンスターチに対するせん断速度及び温度掃引は、2つの冷凍/解凍サイクルのあたりで変化を示し、結果として粘度の変化をもたらしている。対照的に、TIコーンスターチ及びもち米の組成物に対するせん断速度及び温度掃引は、第4又は第5の冷凍/解凍サイクルまで互いに類似していた。従って、もち米を有する澱粉組成物を含有するスープ試料は、粘度の変化が生じる前に、より多くの冷凍/解凍サイクルに耐えることができた。これは、TIコーンスターチのみを含有するスープ試料と比較して改善である。同様に、TIコーンスターチ及びワキシーコーンの組成物に対するせん断速度及び温度掃引は互いに類似しており、少なくとも第3の冷凍/解凍サイクルまで変化し始めなかった。そのようなものとして、ワキシーコーンを有する澱粉組成物を含有するスープ試料は、TIコーンスターチのみを含有するスープ試料と比較して改善を示した。
図16~21及び26~31における結果は、粘度が変化したポイントが
図15及び25と比較してより多くの冷凍/解凍サイクルであることを例示しており、TIコーンスターチ及びワキシーコーン又はもち米の組み合わせが、1つ以上の冷凍/解凍サイクルに耐えるためのスープ試料の復元性を提供し得るということを示している。
【0057】
顕微鏡検査:冷凍/解凍サイクルの各々の後、スープ試料を顕微鏡下で観察して、1つ以上の冷凍/解凍サイクルを受けた後、どのように澱粉粒が持ちこたえているかを評価した。
【0058】
図35は、5つの冷凍/解凍サイクルを受けた後のTIコーンスターチを100%有するスープ試料の顕微鏡画像である。
図35は、大きな塊を示しており、個々の澱粉粒の分解を示している。
【0059】
図36~38は、5つの冷凍/解凍サイクルを受けた後の様々な割合のもち米(15%、25%、及び50%)の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。いくつか小さな凝集又は塊が存在し得るけれども、個々の澱粉粒の多くは依然として無傷であることを
図36(もち米を15%有する澱粉組成物)は示している。
図37及び38(それぞれもち米を25%及び50%有する澱粉組成物)は、
図36に対して類似の又はわずかに多くの凝集を示しているが、それにもかかわらず、
図35(100%TIコーンスターチ)と比較して澱粉の安定性の改善を示している。
【0060】
図39~41は、5つの冷凍/解凍サイクルを受けた後の、様々な割合のワキシーコーン(15%、25%、及び50%)の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
図39及び40(それぞれワキシーコーンを15%及び25%有する澱粉組成物)は、
図35(100%TIコーンスターチ)と比較して、依然として良好な安定性を示しながら、いくつか凝集を示した。
図41(ワキシーコーンを50%有する澱粉組成物)は大きな塊を示しており、澱粉の分解を示している。
【0061】
図42~44は、5つの冷凍/解凍サイクルを受けた後の、様々な割合のタピオカ(15%、25%、及び50%)の組成物を有するスープ試料の顕微鏡画像である。
図42及び43(それぞれタピオカを15%及び25%有する澱粉組成物)は、100%TIコーンスターチと比較して改善された安定性を示した。しかし、タピオカを有する組成物は、15%及び25%のワキシーコーンと比較して、より多くの凝集でないとしても、少なくとも同等の凝集を示した。
図44(タピオカを50%有する澱粉組成物)は、かなりの凝集を示し、いかなる無傷の澱粉粒も欠如していた。
【0062】
図35~44における顕微鏡画像のうち、15から50に及ぶ割合でもち米を有する組成物を含有する試料は、5つの冷凍/解凍サイクル後の澱粉分子の最も高い安定性を示した。
【0063】
また、
図35~44において試験した試料を、1から5の尺度を使用して各冷凍/解凍サイクル後に視覚的に評価した。評価尺度は:1=滑らか;2=わずかに塊状;3=塊状;4=大きな塊状;及び5=非常に大きな塊状;であった。視覚的観察の結果が、以下の表5に示されている。顕微鏡下で無傷の澱粉粒を示した試料を、顕微鏡画像においてかなりの塊を示した試料と比較して、テクスチャがより滑らかであるとして観察した。
【0064】
【表5】
表5において示されているように、TIコーンスターチを100%有するスープ試料は、冷凍/解凍サイクルの数が増加するに従い、段階評価で増加(すなわち、テクスチャ品質の低下)を示した。対照的に、TIコーンスターチ及びもち米の組成物を有するスープ試料は、全ての冷凍/解凍サイクルにわたって全ての試験したレベル(15%、25%、及び50%のもち米)において一定の1の評価を有した。TIコーンスターチ並びに15%及び25%でのワキシーコーンの組成物を有するスープ試料は、5つの冷凍/解凍サイクルまで1の評価を有した。ワキシーコーンを50%有する澱粉組成物を有するスープ試料は、3つの冷凍/解凍サイクル後に2以上の評価を有した。TIコーンスターチ及びタピオカの組成物を有するスープ試料は、TIコーンスターチを100%有する試料と比較して視覚的改善を示したけれども、タピオカを有する試料は、ワキシーコーンを有する試料及びもち米を有する試料と比較してより低いテクスチャ品質を示した。
【0065】
上記の実施例における食品は、スープ等のレトルト食品内での使用に対する澱粉組成物の実行可能性を実証するために提供される。本明細書において開示される澱粉組成物は、本明細書において特に注目したものに加えて、他の食品における使用にも適し得るということが認識されたい。
【0066】
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部をなす添付の図面への言及を含む。図面は、本発明を実施することができる特定の実施形態を例として示している。これらの実施形態は、本明細書において「実施例」とも呼ばれ、そのような実施例は、示されているか又は記載されているもの以外の要素を含み得る。しかし、本発明者等は、示されているか又は記載されているそれらの要素のみが提供される実施例も熟考している。さらに、本発明者等は、特定の実施例(又はその1つ以上の態様)に関して、或いは、本明細書において示されているか又は記載されている他の実施例(又はその1つ以上の態様)に関して、示されているか又は記載されているそれらの要素(又はその1つ以上の態様)の任意の組み合わせ又は並べ替えを使用した実施例も熟考している。
【0067】
本明細書と、参照により援用する任意の文献との間で一貫性のない使用法がある場合、本明細書における使用法が優先される。本明細書において、不定冠詞は、特許文献において一般的であるように、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」のいかなる他の例又は使用法とも無関係に、1つ又は2つ以上を含むように使用される。本明細書において、「又は」という用語は、別段の指示がない限り、非排他的なものを指すために使用されるか、又は、「A又はB」が、「BではなくA」、「AではなくB」、及び「A及びB」を含むように使用される。本明細書において、「含む(including)」及び「その中で(in which)」という用語は、それぞれ「含む(comprising)」及び「ここで(wherein)」という用語の平易な英語の等価物として使用される。また、添付の特許請求の範囲において、「含む(including)」及び「含む(comprising)」という用語は、オープンエンドであり、すなわち、請求項においてそのような用語の後に列挙されたものに加えて要素を含むシステム、装置、物品、組成物、調合物、又は、プロセスが、依然として、その請求項の範囲に含まれるものとみなされる。さらに、添付の特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、及び「第3」等の用語はラベルとして使用されるに過ぎず、その対象に数的要件を課すことを意図しない。
【0068】
上記の説明は、例示的であり限定的ではないことを意図している。例えば、上記の実施例(又はその1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用されてもよい。他の実施形態を、例えば当業者が上記の説明を検討することによって使用することもできる。要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認するのを可能にするために提供されている。要約は、特許請求の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されることはないという理解が提起される。また、上記の詳細な説明において、開示を合理化するために様々な特徴は共にグループ化されていることもある。これは、請求されていない開示された特徴が任意の請求項に必須であることを意図するものと解釈されるべきではない。正しくは、発明特定事項は、特定の開示された実施形態の全ての特徴以内に存在し得る。従って、以下の特許請求の範囲は、実施例又は実施形態として本明細書の詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別々の実施形態としてそれ自体が位置し、そのような実施形態は、様々な組み合わせ又は並べ替えで互いに組み合わせることができると熟考される。本発明の範囲は、そのような請求項が権利を有する等価物の完全なる範囲と共に、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。