(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-05
(45)【発行日】2025-09-16
(54)【発明の名称】作業機の油圧システム、及び作業機の油圧システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20250908BHJP
F15B 11/042 20060101ALI20250908BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20250908BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20250908BHJP
【FI】
E02F9/22 Q
F15B11/042
F15B11/08 A
F15B11/00 V
(21)【出願番号】P 2023570787
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2022045019
(87)【国際公開番号】W WO2023127436
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021214936
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 裕也
(72)【発明者】
【氏名】堀井 啓司
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-153091(JP,A)
【文献】特公平7-77957(JP,B2)
【文献】特開昭61-60931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/042
F15B 11/08
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部材と、前記可動部材を揺動させる油圧シリンダとを有する作業装置と、
前記油圧シリンダへ供給する作動油の流量を変更可能な電磁比例弁と、
前記電磁比例弁に供給する電流を制御して、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量を所定流量以下で制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記油圧シリンダの動作長が当該油圧シリンダのストロークエンドに近づくにつれて、前記可動部材の角速度を減速させるよう前記電磁比例弁を制御するために前記電磁比例弁へ供給する電流の電流値である第1電流値を演算する第1演算部と、
前記油圧シリンダの動作長が当該油圧シリンダのストロークエンドに近づくにつれて、前記油圧シリンダへの作動油の供給流量を減少させるよう前記電磁比例弁を制御するために前記電磁比例弁へ供給する電流の電流値である第2電流値を演算する第2演算部と、
前記油圧シリンダの現在の動作位置からストロークエンドまでの動作長である判定距離が、第1閾値より長い場合であって、当該第1閾値よりも長い値に設定される第2閾値以下である場合には、前記電磁比例弁に供給する電流を前記第2電流値で補正し、前記判定距離が前記第1閾値以下である場合には、前記電磁比例弁に供給する電流を前記第1電流値及び前記第2電流値のうちのいずれかを選択して補正する電流制限部と、
を有している作業機の油圧システム。
【請求項2】
前記第1演算部は、前記判定距離が前記第1閾値よりも長い場合に、前記第1電流値を演算せず、
前記第2演算部は、前記判定距離が前記第2閾値よりも長い場合に、前記第2電流値を演算しない請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項3】
前記判定距離が前記第1閾値である場合の前記第1電流値は、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量が前記所定流量である場合の前記角速度の最低値である基準角速度に対応する電流値であり、
前記判定距離が零である場合の前記第1電流値は、前記基準角速度よりも小さい所定の終端角速度に対応する電流値である請求項
1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項4】
前記判定距離が前記第2閾値である場合の前記第2電流値は、前記油圧シリンダに前記所定流量と略同等の流量の作動油を供給する電流値である請求項
1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項5】
前記電流制限部は、前記判定距離が前記第1閾値以下である場合には、前記第1電流値と前記第2電流値とのうち、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量が少ない方の電流値を選択する請求項
1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項6】
前記電流制限部は、前記判定距離が前記第1閾値以下である場合には、前記電磁比例弁に供給する電流を前記第1電流値で補正する請求項
1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項7】
操作信号を前記制御装置に出力する第1操作装置を備え、
前記制御装置は、前記操作信号に基づいて、前記電磁比例弁に供給する電流を、当該電磁比例弁の開度が最大になって、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量が前記所定流量となる基準電流値以下の範囲内で定義する定義部を有し、
前記電流制限部は、前記定義部によって定義された電流値を前記第1電流値又は前記第2電流値により補正する請求項1~6のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項8】
操作可能な第2操作装置と、
前記第2操作装置の操作に応じて、吐出するパイロット油の流量を制御する操作弁と、
前記操作弁から供給されるパイロット油によって切換位置を変更し、前記油圧シリンダへ供給する作動油の流量を変更して、当該油圧シリンダを制御する方向切換弁と、
前記方向切換弁と前記油圧シリンダとを接続する接続油路と、
を備え、
前記電磁比例弁は、前記接続油路に設けられ、前記制御装置から供給される電流に応じて開度を変更し、前記方向切換弁から前記油圧シリンダに供給される作動油の流量を、前記所定流量以下に変更する請求項1~6のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項9】
可動部材と、前記可動部材を揺動させる油圧シリンダとを有する作業装置と、前記油圧シリンダへ供給する作動油の流量を変更可能な電磁比例弁と、を備えた作業機の油圧システムにおける、前記電磁比例弁に供給する電流を制御して、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量を所定流量以下で制御する作業機の油圧システムの制御方法であって、
前記油圧シリンダの動作長が当該油圧シリンダのストロークエンドに近づくにつれて、前記可動部材の角速度を減速させるよう前記電磁比例弁を制御するために前記電磁比例弁へ供給する電流の電流値である第1電流値を演算する第1ステップと、
前記油圧シリンダの動作長が当該油圧シリンダのストロークエンドに近づくにつれて、前記油圧シリンダへの作動油の供給流量を減少させるよう前記電磁比例弁を制御するために前記電磁比例弁へ供給する電流の電流値である第2電流値を演算する第2ステップと、
前記油圧シリンダの現在の動作位置からストロークエンドまでの動作長である判定距離が、第1閾値より長い場合であって、当該前記第1閾値よりも長い値に設定される第2閾値以下である場合には、前記電磁比例弁に供給する電流を前記第2電流値で補正し、前記判定距離が前記第1閾値以下である場合には前記電磁比例弁に供給する電流を前記第1電流値及び前記第2電流値のうち前記油圧シリンダに供給される作動油の流量が少なくなる方の電流値で補正する第3ステップと、
を備えている作業機の油圧システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機の油圧システム、及び作業機の油圧システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された油圧シリンダの電子クッション制御装置が知られている。
【0003】
特許文献1の油圧シリンダの電子クッション制御装置は、シリンダ本体と当該シリンダ本体内を摺動するピストンを有し、建設機械の作業アタッチメントを駆動させるための油圧シリンダと、当該油圧シリンダへの作動油の給排量を変化させるための給排量調整手段と、当該給排量調整手段の作動を電気的に制御するコントローラとを備え、上記コントローラが上記給排量調整手段を作動させることで、上記油圧シリンダへの作動油の給排量を調整し、上記シリンダ本体のストロークエンドに近づく上記ピストンを減速させるクッション制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開特許公報「特開2010-261521号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の油圧シリンダの電子クッション制御装置では、コントローラ(制御ユニット)内のストロークエンド検出部は、ブームの回動角度に基づいて、ストロークエンドに近づいていることを検出し、制御ユニット内の作動制御部は、ストロークエンド検出部からの検出情報が入力されると、電磁比例弁を作動させて、ピストンロッドを減速させ、ゆっくりと停止させる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明のように、ストロークエンドの近傍からピストンロッドを減速させる場合、ピストンロッドの減速が不十分になったり、油圧シリンダを大きく減速させることによって、動作速度に段差が生じたりする場合がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、可動部材の揺動をスムーズに減速することができる作業機の油圧システム及び作業機の油圧システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る作業機の油圧システムは、可動部材と、前記可動部材を揺動させる油圧シリンダとを有する作業装置と、前記油圧シリンダへ供給する作動油の流量を変更可能な電磁比例弁と、前記電磁比例弁に供給する電流を制御して、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量を所定流量以下で制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記油圧シリンダの動作長が当該油圧シリンダのストロークエンドに近づくにつれて、前記可動部材の角速度を減速させるよう前記電磁比例弁を制御するために前記電磁比例弁へ供給する電流の電流値である第1電流値を演算する第1演算部と、前記油圧シリンダの動作長が当該油圧シリンダのストロークエンドに近づくにつれて、前記油圧シリンダへの作動油の供給流量を減少させるよう前記電磁比例弁を制御するために前記電磁比例弁へ供給する電流の電流値である第2電流値を演算する第2演算部と、前記油圧シリンダの現在の動作位置からストロークエンドまでの動作長である判定距離が、第1閾値より長い場合であって、当該第1閾値よりも長い値に設定される第2閾値以下である場合には、前記電磁比例弁に供給する電流を前記第2電流値で補正し、前記判定距離が前記第1閾値以下である場合には、前記電磁比例弁に供給する電流を前記第1電流値及び前記第2電流値のうちのいずれかを選択して補正する電流制限部と、を有している。
【0009】
前記第1演算部は、前記判定距離が前記第1閾値よりも長い場合に、前記第1電流値を演算せず、前記第2演算部は、前記判定距離が前記第2閾値よりも長い場合に、前記第2電流値を演算しないように構成してもよい。
【0010】
前記判定距離が前記第1閾値である場合の前記第1電流値は、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量が前記所定流量である場合の前記角速度の最低値である基準角速度に対応する電流値であり、前記判定距離が零である場合の前記第1電流値は、前記基準角速度よりも小さい所定の終端角速度に対応する電流値であってもよい。
【0011】
前記判定距離が前記第2閾値である場合の前記第2電流値は、前記油圧シリンダに前記所定流量と略同等の流量の作動油を供給する電流値であってもよい。
【0012】
前記電流制限部は、前記判定距離が前記第1閾値以下である場合には、前記第1電流値と前記第2電流値とのうち、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量が少ない方の電流値を選択してもよい。
【0013】
前記電流制限部は、前記判定距離が前記第1閾値以下である場合には、前記電磁比例弁に供給する電流を前記第1電流値で補正してもよい。
【0014】
前記作業機の油圧システムは、操作信号を前記制御装置に出力する第1操作装置を備え、前記制御装置は、前記操作信号に基づいて、前記電磁比例弁に供給する電流を、当該電磁比例弁の開度が最大になって、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量が前記所定流量となる基準電流値以下の範囲内で定義する定義部を有し、前記電流制限部は、前記定義部によって定義された電流値を前記第1電流値又は前記第2電流値により補正してもよい。
【0015】
前記作業機の油圧システムは、操作可能な第2操作装置と、前記第2操作装置の操作に応じて、吐出するパイロット油の流量を制御する操作弁と、前記操作弁から供給されるパイロット油によって切換位置を変更し、前記油圧シリンダへ供給する作動油の流量を変更して、当該油圧シリンダを制御する方向切換弁と、前記方向切換弁と前記油圧シリンダとを接続する接続油路と、を備え、前記電磁比例弁は、前記接続油路に設けられ、前記制御装置から供給される電流に応じて開度を変更し、前記方向切換弁から前記油圧シリンダに供給される作動油の流量を、前記所定流量以下に変更してもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る作業機の油圧システムの制御方法は、可動部材と、前記可動部材を揺動させる油圧シリンダとを有する作業装置と、前記油圧シリンダへ供給する作動油の流量を変更可能な電磁比例弁と、を備えた作業機の油圧システムにおける、前記電磁比例弁に供給する電流を制御して、前記油圧シリンダに供給する作動油の流量を所定流量以下で制御する作業機の油圧システムの制御方法であって、前記油圧シリンダの動作長が当該油圧シリンダのストロークエンドに近づくにつれて、前記可動部材の角速度を減速させるよう前記電磁比例弁を制御するために前記電磁比例弁へ供給する電流の電流値である第1電流値を演算する第1ステップと、前記油圧シリンダの動作長が当該油圧シリンダのストロークエンドに近づくにつれて、前記油圧シリンダへの作動油の供給流量を減少させるよう前記電磁比例弁を制御するために前記電磁比例弁へ供給する電流の電流値である第2電流値を演算する第2ステップと、前記油圧シリンダの現在の動作位置からストロークエンドまでの動作長である判定距離が、第1閾値より長い場合であって、当該前記第1閾値よりも長い値に設定される第2閾値以下である場合には、前記電磁比例弁に供給する電流を前記第2電流値で補正し、前記判定距離が前記第1閾値以下である場合には前記電磁比例弁に供給する電流を前記第1電流値及び前記第2電流値のうち前記油圧シリンダに供給される作動油の流量が少なくなる方の電流値で補正する第3ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の作業機の油圧システム及び作業機の油圧システム制御方法によれば、可動部材の揺動をスムーズに減速する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態における作業機の概略側面図である。
【
図2】第1実施形態における作業機の油圧システムを示す図である。
【
図3】第1実施形態における第1操作装置の操作量と供給電流との関係を示す図である。
【
図4】第1実施形態における油圧シリンダの動作長を説明する図である。
【
図5】第1実施形態における油圧シリンダの動作長と可動部材の角度との関係の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態において、電磁比例弁に基準電流値を供給した場合における可動部材の角度と角速度との関係を示す図である。
【
図7】第1実施形態における可動部材の角度と制限角速度との関係の一例を示す図である。
【
図8】第1実施形態における可動部材の角度と第1電流値との関係の一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態における可動部材の角度と第2電流値との関係の一例を示す図である。
【
図10】第1実施形態における第1電流値と第2電流値との対比を示す図である。
【
図11】第1実施形態におけるクッション制御の一連の流れを説明するフローチャートである。
【
図12】第2実施形態における作業機の油圧システムを示す図である。
【
図13】第2実施形態の変形例における第1電流値と第2電流値との対比を示す図である。
【
図14】第2実施形態におけるクッション制御の一連の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態における作業機1の概略側面図である。本実施形態では、作業機1として、旋回作業機であるバックホーが例示されている。
【0021】
図1に示すように、作業機1は、走行体1Aと、走行体1Aに装備された作業装置20とを備えている。走行体1Aは、走行装置3と、走行装置3に搭載された機体(旋回台)2とを有している。機体2には、運転者が着座する運転席6が搭載されている。
【0022】
以下、作業機1の運転席6に着座した運転者が向く方向(
図1の矢印A1方向)を前方といい、その反対方向(
図1の矢印A2方向)を後方という。また、運転者の左側(
図1の手前側)を左方といい、運転者の右側(
図1の奥側)を右方という。なお、機体2の前後方向K1に直交する方向を機体幅方向(幅方向)ということがある。
【0023】
図1に示すように、走行装置3は、機体2を走行可能に支持する装置である。走行装置3は、油圧モータ(油圧アクチュエータ)あるいは電動モータ等で構成される走行モータ11によって駆動される。なお、本実施形態ではクローラ式の走行装置3を用いているが、これに限らず、ホイール式等の走行装置3を用いてもよい。
【0024】
機体2は、走行装置3上に旋回ベアリング8を介して旋回軸心X1回りに旋回可能に支持されている。旋回軸心X1は、旋回ベアリング8の中心を通る上下方向に延伸する軸心である。
【0025】
機体2には、原動機5が搭載されている。原動機5は、ディーゼルエンジンである。なお、原動機5は、ガソリンエンジン又は電動モータであってもよいし、エンジン及び電動モータを有するハイブリッド型であってもよい。
【0026】
機体2は、前部に、後述のブーム装置30を支持する支持ブラケット15と、スイングブラケット16とを有している。支持ブラケット15は、機体2から前方に突出状に設けられている。支持ブラケット15の前部(機体2から突出した部分)には、スイング軸を介してスイングブラケット16が縦軸(上下方向に延伸する軸心)回りに揺動可能に取り付けられている。したがって、スイングブラケット16は、機体幅方向に(スイング軸を中心として水平方向に)回動可能である。
【0027】
作業装置20は、可動部材21と、可動部材21を揺動させる油圧シリンダ22とを有している。油圧シリンダ22は、供給された作動油によって、伸長又は収縮する直線駆動を行い、可動部材21を回転軸廻りに揺動させる。油圧シリンダ22は、筒状のシリンダ部22Aと、一端側がシリンダ部22Aに対して摺動可能に挿入されたピストンロッド22Bとを備えている。
【0028】
図1に示すように、本実施形態において、作業装置20は、ブーム装置30と、アーム装置40と、作業具装置50と、ドーザ装置60とを含んでいる。
【0029】
ブーム装置30は、可動部材21であるブーム31と、油圧シリンダ22であるブームシリンダ32とを有している。ブーム31は、スイングブラケット16の第1枢支部17に、機体幅方向に延伸する横軸(回転軸)35を中心として揺動可能(回動自在)に支持された基部31Aと、アーム41を揺動自在に支持する先端部31Bと、基部31Aと先端部31Bとの間に設けられた中間部31Cとを有している。中間部31Cは長手方向に沿って長尺状であって、中途部で下方に屈曲している。中間部31Cにおける屈曲部の一方(下部)には下部ブラケット33が設けられ、中間部31Cにおける屈曲部の他方(上部)には上部ブラケット34が設けられている。
【0030】
ブームシリンダ32は、伸長又は収縮することでブーム31を揺動できる。ブームシリンダ32は、筒状のシリンダ部32Aと、一端側がシリンダ部32Aに対して摺動可能に挿入されたピストンロッド32Bとを備えている。シリンダ部32Aの基端部は、スイングブラケット16の第2枢支部18に、横軸36を中心として揺動自在に支持されている。ピストンロッド32Bの先端部は、下部ブラケット33に、横軸37を中心として揺動自在に支持されている。
【0031】
ブームシリンダ32は、ブーム31における、アーム41がアームクラウド方向D3に揺動した際にアーム41に対向する側に配置されている。つまり、ブームシリンダ32は、ブーム31の前面側の下部に設けられている。
【0032】
したがって、ブームシリンダ32(油圧シリンダ22)は、ブーム31(可動部材21)を、横軸(回転軸)35周りに揺動させることができる。つまり、
図1に示すように、ブーム31は、上方へ揺動するブーム上げ方向D1と、下方へ揺動するブーム下げ方向D2とに揺動可能である。
【0033】
なお、本実施形態では、ブームシリンダ32は、伸長動作することにより、ブーム31をブーム上げ方向D1に揺動させることができる。また、ブームシリンダ32は、収縮動作することにより、ブーム31をブーム下げ方向D2に揺動させることができる。
【0034】
アーム装置40は、可動部材21であるアーム41と、油圧シリンダ22であるアームシリンダ42とを有している。アーム41は、長手方向に沿って長尺状である。アーム41の基端部は、ブーム31の先端部31Bに、横軸(回転軸)43を中心として揺動自在に支持されている。また、アーム41の基端部の上面側には、上部ブラケット44が設けられている。
【0035】
アームシリンダ42は、伸長又は収縮することでアーム41を揺動できる。アームシリンダ42は、筒状のシリンダ部42Aと、一端側がシリンダ部42Aに対して摺動可能に挿入されたピストンロッド42Bとを備えている。シリンダ部42Aの基端部は、ブーム31の上部ブラケット34に、横軸38を中心として揺動自在に支持されている。ピストンロッド42Bの先端部は、上部ブラケット44に、横軸46を中心として揺動自在に支持されている。
【0036】
したがって、アームシリンダ42(油圧シリンダ22)は、アーム41(可動部材21)を横軸(回転軸)43周りに揺動させることができる。このため、アーム装置40(アーム41)は、上又は下方向(前方又は後方)に揺動自在である。つまり、
図1に示すように、アーム41は、ブーム31に近づくアームクラウド方向D3と、ブーム31から遠ざかるアームダンプ方向D4とに揺動可能である。
【0037】
なお、本実施形態では、アームシリンダ42は、伸長動作することにより、アーム41をアームクラウド方向D3に揺動させることができる。また、アームシリンダ42は、収縮動作することにより、アーム41をアームダンプ方向D4に揺動させることができる。
【0038】
作業具装置50は、可動部材21である作業具51と、油圧シリンダ22である作業具シリンダ52とを有している。本実施形態において、作業具51は、バケットであり、作業具シリンダ52は、バケットシリンダである。バケット51は、アーム41の先端部に、枢軸(回転軸)57を中心として揺動自在に支持されている。バケット51とアーム41の先端部との間にはリンク機構53が設けられている。バケット51は、土砂等を掬う部分であるバケット本体51aと、アーム41及びリンク機構53に取り付けられる部分である取付ブラケット51bとを有している。
【0039】
バケットシリンダ52は、伸長又は収縮することでバケット51を揺動できる。バケットシリンダ52は、筒状のシリンダ部52Aと、一端側がシリンダ部52Aに対して摺動可能に挿入されたピストンロッド52Bとを備えている。シリンダ部52Aの基端部は、アーム41の上部ブラケット44に、横軸48を中心として揺動自在に支持されている。ピストンロッド52Bの先端部は、リンク機構53に、横軸56を中心として揺動自在に支持されている。
【0040】
したがって、バケットシリンダ52(油圧シリンダ22)は、バケット51(可動部材21)を枢軸(回転軸)57周りに揺動させることができる。このため、バケット51は、アーム41の先端側にクラウド動作(スクイ動作)及びダンプ動作可能である。つまり、
図1に示すように、バケット51は、バケット51の先端部をブーム31(アーム41)に近づける方向であるバケットクラウド方向(作業具クラウド方向)D5と、バケット51の先端部をブーム31(アーム41)から遠ざける方向であるバケットダンプ方向(作業具ダンプ方向)D6に揺動可能である。クラウド動作(スクイ動作)とは、例えば、土砂等を掬う場合の動作である。また、ダンプ動作とは、例えば、掬った土砂等を落下(排出)させる場合の動作である。
【0041】
なお、本実施形態において、作業具51は、バケットであるが、作業機1は、バケットに代えて或いは加えて、油圧アクチュエータにより駆動可能な他の作業具(油圧アタッチメント)を装着することが可能である。他の作業具としては、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等が例示できる。
【0042】
ドーザ装置60は、可動部材21であるドーザ61と、油圧シリンダ22であるドーザシリンダ62とを有している。ドーザ61の基端部は、走行装置3のフレーム(トラックフレーム)に、揺動軸(回転軸)63を中心として上下に揺動可能に枢支されている。
【0043】
ドーザシリンダ62は、伸長又は収縮することでドーザ61を揺動させることができる。ドーザシリンダ62は、筒状のシリンダ部62Aと、一端側がシリンダ部62Aに対して摺動可能に挿入されたピストンロッド62Bとを備えている。シリンダ部62Aの基端部は、走行装置3のトラックフレームにおけるドーザ61の上方の位置に揺動自在に支持されている。ピストンロッド62Bの先端部は、ドーザ61の中途部に揺動自在に支持されている。
【0044】
したがって、ドーザシリンダ62(油圧シリンダ22)は、ドーザ61を揺動軸63周りに揺動させることができる。このため、ドーザ装置60(ドーザ61)は、上又は下方向に揺動自在である。つまり、
図1に示すように、ドーザ61は、上方へ揺動するドーザ上げ方向D7と、下方へ揺動するドーザ下げ方向D8とに揺動可能である。
【0045】
なお、本実施形態では、ドーザシリンダ62は、収縮動作することにより、ドーザ61をドーザ上げ方向D7に揺動させることができる。また、ドーザシリンダ62は、伸長動作することにより、ドーザ61をドーザ下げ方向D8に揺動させることができる。
【0046】
また、本実施形態において、作業装置20は、ブーム装置30と、アーム装置40と、作業具装置50と、ドーザ装置60とを含んでいる場合を例に説明したが、作業装置20は、可動部材21及び油圧シリンダ22を有していればよく、ブーム装置30、アーム装置40、作業具装置50、及びドーザ装置60に限定されない。例えば、作業装置20は、スイングブラケット16を有するスイング装置を含んでいてもよい。斯かる場合、スイング装置は、可動部材21としてスイングブラケット16と、油圧シリンダ22としてスイングシリンダ(図示略)と、から構成されている。スイングシリンダは、機体2内に備えられ、伸縮することでスイングブラケット16を機体幅方向に揺動させる。
【0047】
図2は、第1実施形態における作業機1の油圧システムSを示す図である。
図2に示すように、作業機1の油圧システムSは、電磁比例弁70と、制御装置80と、第1操作装置90と、を備えている。
【0048】
電磁比例弁70は、油圧シリンダ22へ供給する作動油の流量を変更可能な切換弁である。詳しくは、電磁比例弁70は、制御装置80から供給される電流によって切換位置を変更して、油圧シリンダ22に供給する作動油の流れ方向(供給方向)及び流量を変更する。本実施形態において、電磁比例弁70は、ソレノイド70a,70bによって直動スプール(以下、単にスプールという)を動かして作動油の流れを制御する直動式の電磁弁である。スプールは、切換位置である第1位置70A、第2位置70B、及び第3位置(中立位置)70Cに切換可能である。
【0049】
ソレノイド70a,70bは、供給される電流の大きさ(電流値I)に応じて、励磁及び消磁の切換が可能である。ソレノイド70a,70bのうち、第1ソレノイド70aは、スプールの一端部側に設けられ、第2ソレノイド70bは、スプールの他端部に設けられており、供給される電流値Iによって励磁の強さを変更して、スプールの位置を第1位置70A、第2位置70B、及び第3位置70Cの間で連続的に変更する。これにより、電磁比例弁70は、油圧ポンプPから油圧シリンダ22に供給される作動油の流量(出力)を連続的に変更し、且つ作動油の供給方向を切り換えることができる。
【0050】
なお、以下の説明において、第1ソレノイド70aに電流を供給して、第2ソレノイド70bに電流を供給しない場合、スプールの切換位置が第1位置70Aに切り換わり、油圧シリンダ22が収縮し、第1ソレノイド70aに電流を供給せず、第2ソレノイド70bに電流を供給する場合、スプールの切換位置が第2位置70Bに切り換わり、油圧シリンダ22が伸長する場合を例に説明する。
【0051】
また、ソレノイド70a,70bは、供給される電流の電流値Iに応じて、スプールの位置を第1位置70A、第2位置70B、及び第3位置70Cの間で段階的に変更してもよく、斯かる場合において、電磁比例弁70は、油圧ポンプPから油圧シリンダ22に供給される作動油の流量(出力)を段階的に変更し、且つ作動油の供給方向を切り換えることができる。
【0052】
また、電磁比例弁70は、上述した構成に限定されず、例えば、電磁弁が組み込まれ、且つ油圧ポンプPとは異なるポンプ(図示略)から供給された作動油(パイロット油)によって、スプールの位置が切り換わる電磁式の3位置切換弁であってもよい。また、電磁比例弁70は、電磁弁が組み込まれた構成に限定されず、直動式のスプール(方向切換弁)と電磁弁とが別体に構成されていてもよい。また、電磁比例弁70は、3位置切換弁以外の2位置切換弁、4位置切換弁等であってもよく限定されない。
【0053】
図2に示すように、本実施形態においては、電磁比例弁70として、ブーム制御弁71、アーム制御弁72、バケット制御弁73、及びドーザ制御弁74を備えている。ブーム制御弁71、アーム制御弁72、バケット制御弁73、及びドーザ制御弁74は、それぞれ油路を介して、ブームシリンダ32、アームシリンダ42、バケットシリンダ52、及びドーザシリンダ62に接続されている。また、ブーム制御弁71、アーム制御弁72、バケット制御弁73、及びドーザ制御弁74には、それぞれ油路を介して、作動油を吐出する油圧ポンプPが接続されている。
【0054】
電磁比例弁70(ブーム制御弁71、アーム制御弁72、バケット制御弁73、及びドーザ制御弁74)のソレノイド70a,70bに供給する電流は、制御装置80が制御する。
【0055】
制御装置80は、電気・電子回路、CPU、MPU等に格納されたプログラム等から構成された装置である。制御装置80は、作業機1が有する様々な機器を制御する。制御装置80は、第1操作装置90の操作に基づいて、作業装置20を制御することができる。具体的には、制御装置80は、第1操作装置90の操作に基づいて、ブーム制御弁71、アーム制御弁72、バケット制御弁73、及びドーザ制御弁74のソレノイド70a,70bに供給する電流の大きさ(電流値I)を制御することで、これら各制御弁の切換動作を制御する。これにより、制御装置80は、ブーム31、アーム4、バケット51、及びドーザ装置60の動作を制御できる。また、
図2に示すように、制御装置80は、記憶部81を有している。記憶部81は、不揮発性のメモリ等であり、制御装置80の制御に関する様々な情報等を記憶している。
【0056】
第1操作装置90は、作業装置20を操作する操作具である。第1操作装置90は、操作時に運転者が把持するレバー等で構成され、それぞれ運転席6の近傍に設けられている。第1操作装置90は、制御装置80と接続されており、制御装置80に操作方向及び操作量を表す操作信号を出力する。
【0057】
図2に示すように、第1操作装置90は、操縦装置91L,91Rと、ドーザ操作装置91Dと、を含んでいる。操縦装置91L,91Rは、それぞれ操作レバー92aと、ポジションセンサ92bとを有している。操作レバー92aは、中立位置から、前、後、右、左に揺動自在であり、ポジションセンサ92bは、操作レバー92aの前、後、右、左の中立位置からの揺動方向及び揺動量(操作量)を検出する。操作レバー92aは、ポジションセンサ92bが検出した揺動方向及び揺動量を表す電気信号(操作信号)を制御装置80に出力する。
【0058】
ドーザ操作装置91Dは、操作レバー93aと、ポジションセンサ93bとを有している。操作レバー93aは、中立位置から、前、後に揺動自在であり、ポジションセンサ93bは、操作レバー93aの前、後の中立位置からの揺動方向及び揺動量(操作量)を検出する。操作レバー93aは、ポジションセンサ93bが検出した揺動方向及び揺動量を表す電気信号(操作信号)を制御装置80に出力する。
【0059】
以下、第1操作装置90の操作に基づく、制御装置80による作業装置20の制御について説明する。制御装置80は、電磁比例弁70に供給する電流を制御して、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を所定流量以下で制御する。具体的には、制御装置80は、電磁比例弁70に供給する電流(供給電流)を所定の基準電流値IB以下の範囲で制御する。
【0060】
図2に示すように、制御装置80は、第1操作装置90から出力された操作信号に基づいて、供給電流を定義する定義部82を有している。定義部82は、操作信号と、記憶部81に予め記憶された制御マップ又は所定の演算式に基づいて、当該操作信号が示す操作対象に対応する電磁比例弁70に供給する電流の大きさ(電流値I)を、基準電流値IB以下の範囲内で定義する(I≦IB)。本実施形態においては、定義部82は、最小電流値IA以上、基準電流値IB以下の範囲内で定義する(IA≦I≦IB)。最小電流値IAは、電磁比例弁70の開度を調整できる最小の大きさの電流値Iである。基準電流値IBは、電磁比例弁70の開度を最大にする場合の電流の大きさ(最大電流値)であり、基準電流値IBの電流を供給された電磁比例弁70は、最大流量(所定流量)の作動油を油圧シリンダ22に供給する。
【0061】
図3は、第1実施形態における第1操作装置90の操作量と、供給電流との関係の一例について示している。第1操作装置90が中立位置周辺である場合、即ち操作量が第1操作量G1未満の場合、定義部82は、供給電流を零に定義する。
【0062】
また、第1操作装置90の操作量が第1操作量G1以上、第2操作量G2以下の場合、定義部82は、第1操作装置90の操作量に比例して、又は比例関係に近い対応関係(相関関係)で、供給電流を変更する。
【0063】
詳しくは、
図2に示すように、定義部82は、ブーム制御部82a、アーム制御部82b、バケット制御部82c、及びドーザ制御部82dを含んでいる。ブーム制御部82aは、操縦装置91Rのポジションセンサ92bから出力された操作信号に基づいて、ブーム制御弁71に供給する電流(供給電流)を定義する。これにより、制御装置80がブーム制御弁71の第1ソレノイド70a及び第2ソレノイド70bに当該定義した供給電流を供給することで、ブーム制御弁71の切換を行う。
【0064】
アーム制御部82bは、操縦装置91Lのポジションセンサ92bから出力された操作信号に基づいて、アーム制御弁72に供給する電流(供給電流)を定義する。これによって、制御装置80がアーム制御弁72の第1ソレノイド70a及び第2ソレノイド70bに当該定義した供給電流を供給することで、アーム制御弁72の切換を行う。
【0065】
バケット制御部82cは、操縦装置91Rの操作レバー92aから出力された操作信号に基づいて、バケット制御弁73に供給する電流(供給電流)を定義する。これによって、制御装置80がバケット制御弁73の第1ソレノイド70a及び第2ソレノイド70bに当該定義した供給電流を供給することで、バケット制御弁73の切換を行う。
【0066】
ドーザ制御部82dは、ドーザ操縦装置91Dの操作レバー93aから出力された操作信号に基づいて、ドーザ制御弁74に供給する電流(供給電流)を定義する。これによって、制御装置80がドーザ制御弁74の第1ソレノイド70a及び第2ソレノイド70bに当該定義した供給電流を供給することで、ドーザ制御弁74の切換を行う。
【0067】
制御装置80は、油圧シリンダ22がストロークエンド(終端)Eに近づくと、ピストンロッド22Bを減速させるクッション制御を行うことができる。制御装置80は、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づいた場合に、電磁比例弁70に供給する電流の大きさ(電流値I)を制限することで、油圧シリンダ22へ供給する作動油を減少させてクッション制御を行う。具体的には、制御装置80は、クッション制御において、油圧シリンダ22の現在の動作位置からストロークエンドEまでの動作長Lである判定距離Hに基づいて、電磁比例弁70に供給する電流を制限することで、油圧シリンダ22へ供給する作動油を減少させる。
【0068】
図4は、第1実施形態における油圧シリンダ22の動作長Lを説明する図である。油圧シリンダ22は、第1のストロークエンドE1まで収縮し、第2のストロークエンドE2まで伸長する。つまり、
図4に示す例においては、油圧シリンダ22の動作長Lは、当該油圧シリンダ22が最も収縮した場合(第1のストロークエンドE1)の最小動作長L1から、当該油圧シリンダ22が最も伸長した場合(第2のストロークエンドE2)の最大動作長L2まで伸長する。なお、以下の説明において、油圧シリンダ22が、第1のストロークエンドE1と第2のストロークエンドE2との中央である場合(中立位置N)の動作長Lを中央動作長L3という。最小動作長L1、最大動作長L2、及び中央動作長L3は、油圧シリンダ22ごとに、その形状及び構造等によって異なっている。
【0069】
本実施形態において、制御装置80は、動作長Lを可動部材21の揺動角度(角度)θに変換することで、判定距離Hに基づくクッション制御を行う。なお、制御装置80は、判定距離Hに基づいて、クッション制御を行うことができればよく、揺動角度θに変換せず、各種センサから油圧シリンダ22の動作長Lを演算してクッション制御を行う構成や、判定距離Hを油圧シリンダ22の動作位置を変換して、動作位置に基づくクッション制御を行う構成であってもよい。
【0070】
制御装置80は、作業機1が備える作業装置20のうち、少なくとも1つ以上の作業装置20でクッション制御を行う。本実施形態においては、制御装置80がブーム装置30、アーム装置40、作業具装置50、及びドーザ装置60に対してクッション制御を行う場合を例に説明する。
【0071】
図2に示すように、作業機1の油圧システムSは、可動部材21の揺動角度θを検出する角度検出装置95を備えている。角度検出装置95は、可動部材21の回転軸を中心とする揺動角度θを検出し、検出した揺動角度θを表す電気信号(検出信号)を制御装置80に出力する。角度検出装置95は、例えばポテンショメータによって構成されている。なお、角度検出装置95は、可動部材21の揺動角度θを検出することができればよく、慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)等の他の角度センサを用いてもよい。また、油圧シリンダ22の動作長Lを検出するシリンダストロークセンサを用いて揺動角度θを検出する構成であってもよい。
【0072】
本実施形態では、角度検出装置95として、ブーム31の揺動角度θa(揺動位置)を検出するブーム角度センサ95aと、アーム41の揺動角度θb(揺動位置)を検出するアーム角度センサ95bと、アーム41の先端部に対するバケット51の枢軸57周りの揺動角度θc(揺動位置)を検出する作業具角度センサ(バケット角度センサ)95cと、ドーザ61の揺動角度θd(揺動位置)を検出するドーザ角度センサ95dと、を備えている。
【0073】
以下、制御装置80のクッション制御について詳しく説明する。
図2に示すように、制御装置80は、角度演算部85と、第1演算部86と、第2演算部87と、電流制限部88と、を有している。
【0074】
角度演算部85は、角度検出装置95が検出した検出信号を取得して、可動部材21の揺動角度θを演算する。角度演算部85は、記憶部81に予め記憶されたマップや演算式に基づいて揺動角度θを演算する。
【0075】
図5は、第1実施形態における油圧シリンダ22の動作長Lと可動部材21の揺動角度θとの関係の一例を示す図である。
図5に示すように、油圧シリンダ22の動作長Lは、可動部材21の揺動角度θに略比例して増加する。
図5に示すように、最小動作長L1に対応する可動部材21の揺動角度θは、最小角度θ1であり、中央動作長L3に対応する可動部材21の揺動角度θは、中央角度θ3であり、最大動作長L2に対応する可動部材21の揺動角度θは、最大角度θ2である。
【0076】
このため、制御装置80は、角度演算部85が演算した可動部材21の実際の揺動角度θと最小角度θ1との差の変化に基づいて油圧シリンダ22が第1のストロークエンドE1に近づいていることを判断できる。また、制御装置80は、角度演算部85が演算した可動部材21の実際の揺動角度θと最大角度θ2との差の変化に基づいて油圧シリンダ22が第2のストロークエンドE2に近づいていることを判断することができる。
【0077】
なお、
図5に示す油圧シリンダ22の動作長Lと可動部材21の揺動角度θとの関係は、一例であって、可動部材21及び油圧シリンダ22を含む作業装置20の構造に応じてそれぞれ異なる演算式により定義される。
【0078】
また、角度演算部85は、演算した可動部材21の揺動角度θに基づいて、所定時間当たりの可動部材21の実際の角速度ω(実角速度ωr)を演算する。
【0079】
次に、電磁比例弁70に基準電流値IBを供給した場合における、可動部材21の揺動角度θと角速度ωとの関係を説明する。
図6は、第1実施形態において、電磁比例弁70に基準電流値IBを供給した場合における可動部材21の揺動角度θと角速度ωとの関係を示している。
図6のグラフにおいて、横軸は、可動部材21の揺動角度θを示しており、縦軸は、可動部材21の角速度ωを示している。なお、上述したように、基準電流値IBは、電磁比例弁70の開口を最大にする電流値Iであるため、
図6に示す角速度ωは、それぞれの揺動角度θに対応する可動部材21の揺動位置おける最大の角速度(最大角速度)ωmaxである。なお、
図6の例では、最小角度θ1における最大角速度ωmaxと最大角度θ2における最大角速度ωmaxとが等しいが、両者が異なる場合もある。
【0080】
上述したように、油圧シリンダ22は、供給された作動油によって、伸長又は収縮する直線駆動を行い、可動部材21を回転軸27廻りに揺動させるため、
図6に示すように、それぞれの揺動角度θにおける最大角速度ωmaxは、揺動角度θに対して、下に凸の曲線を描くように変化する。具体的には、油圧シリンダ22の揺動角度θが中央角度θ3から最小角度θ1へ減少するにつれて、徐々に増加してから急激に増加するよう変化する。また、油圧シリンダ22の揺動角度θが中央角度θ3から最大角度θ2へ増加するにつれて、徐々に増加してから急激に増加するよう変化する。
【0081】
以下の説明では、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量が所定流量で一定である場合において、揺動角度θ1~θ2の範囲内における角速度ωの最低値のことを、「基準角速度ωB」という。
図6に示す例では、基準角速度ωBは、可動部材21の揺動角度θが中央角度θ3である場合の角速度である。なお、角速度ωの最低値となる揺動位置は、必ずしも中央角度θ3に対応する位置とは限らない。
【0082】
第1演算部86は、油圧シリンダ22の動作長Lが当該油圧シリンダ22のストロークエンドEに近づくにつれて、可動部材21の角速度ωを減速させるよう電磁比例弁70を制御するために電磁比例弁70へ供給する電流の電流値Iである第1電流値I1を演算する。第1演算部86は、判定距離Hが第1閾値T1以下である場合に、第1電流値I1を演算し、判定距離Hが第1閾値T1よりも長い場合に、第1電流値I1を演算しない。
【0083】
具体的には、第1演算部86は、油圧シリンダ22のストロークエンドEまでの長さである判定距離Hが第1閾値T1以下である場合に、判定距離Hが零に近づくにつれて減少して可動部材21の角速度ωを制限する制限角速度ωLを演算する。第1閾値T1は、電磁比例弁70に基準電流値IBを供給している場合にストロークエンドE付近で油圧シリンダ22を適切に減速するために要する距離に基づいて設定される任意の値である。第1閾値T1は、作業装置20の操作性を損なわないように、適切なクッション性能が得られる範囲内で可能な限り小さい(短い)値に設定することが好ましい。
【0084】
制限角速度ωLは、クッション制御を行う際の目標角速度ωであり、判定距離Hが第1閾値T1以下の場合、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づくにつれて減少し、当該油圧シリンダ22がストロークエンドEに達した際に、当該油圧シリンダ22の直線駆動が十分減速できる角速度ωに定義される。
【0085】
図7は、第1実施形態における可動部材21の揺動角度θと制限角速度ωLとの関係の一例を示す図である。
図7に示すように、制限角速度ωLは、基準角速度ωBから終端角速度ωEの範囲で定義されている。制限角速度ωLは、可動部材21の揺動角度θが後述する第1判定角度θ11から最小角度θ1まで減少するにつれて略比例して減少し、後述する第2判定角度θ21から最大角度θ2まで増加するにつれて略比例して減少する。
【0086】
なお、
図7に示す可動部材21の揺動角度θと制限角速度ωLとの関係は、例示に過ぎない。例えば、制限角速度ωLは、可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11から最小角度θ1まで減少するにつれて曲線を描くように減少してもよい。また、制限角速度ωLは、可動部材21の揺動角度θが第2判定角度θ21から最大角度θ2まで増加するにつれて曲線を描くように減少してもよい。また、可動部材21の揺動角度θと制限角速度ωLとの関係は、制御装置80のクッション制御の制御対象(作業装置20)に応じて、異ならせて定義してもよい。また、本実施形態では、最小角度θ1側のストロークエンドEと最大角度θ2側のストロークエンドEとで第1閾値T1の値を同じ値に設定しているが、これに限らず、異なる値を設定してもよい。
【0087】
図5に示すように、判定距離Hが第1閾値T1である場合の動作長Lは、第1のストロークエンドE1側の第1判定長L11と、第2のストロークエンドE2側の第2判定長L21である。
図5に示すように、第1判定長L11に対応する可動部材21の揺動角度θは、第1判定角度θ11であり、第2判定長L21に対応する可動部材21の揺動角度θは、第2判定角度θ21である。可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11である場合、及び第2判定角度θ21である場合の制限角速度ωLは基準角速度ωBである。
【0088】
また、終端角速度ωEは、油圧シリンダ22がストロークエンドEに達した際の角速度ωであり、油圧シリンダ22の直線駆動が十分減速できる角速度ωである。つまり、終端角速度ωEは、可動部材21の揺動角度θが最小角度θ1、又は最大角度θ2である場合の制限角速度ωLである。終端角速度ωEは、基準角速度ωBよりも小さい所定の角速度ωである。本実施形態においては、終端角速度ωEは、零に定義されている。なお、終端角速度ωEは、油圧シリンダ22の直線駆動が十分減速できる角速度ωであって、油圧シリンダ22がストロークエンドEに達した際のショックを低減できる角速度ωであればよく、零に限定されない。
【0089】
このため、基準角速度ωBは、可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11から最小角度θ1に減少するにつれて基準角速度ωBから終端角速度ωEに減少する。また、基準角速度ωBは、可動部材21の揺動角度θが第2判定角度θ21から最大角度θ2に増加するにつれて基準角速度ωBから終端角速度ωEに減少する。
【0090】
また、第1演算部86は、角度演算部85が演算した実角速度ωrと、制御装置80が電磁比例弁70に供給している電流(電流値I)と、に基づいて、制限角速度ωLに対応する第1電流値I1を演算する。例えば、第1演算部86は、フィードバック制御(PID制御)やフィードフォワード制御等によって、制限角速度ωLに対応する第1電流値I1を演算する。なお、第1演算部86は、第1電流値I1を演算することができればよく、記憶部81に記憶された演算式又は演算マップに基づいて、制限角速度ωLに対応する第1電流値I1を演算するような構成であってもよい。
【0091】
本実施形態では、供給電流が大きくなると、電磁比例弁70から油圧シリンダ22に供給する作動油の流量は増加し、角速度ωが大きくなる。また、供給電流が小さくなると、電磁比例弁70から油圧シリンダ22に供給する作動油の流量は減少し、角速度ωが小さくなる。
【0092】
図8は、第1実施形態における可動部材21の揺動角度θと第1電流値I1との関係の一例を示す図である。判定距離Hが第1閾値T1である場合、即ち可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11又は第2判定角度θ21である場合の第1電流値I1は、基準角速度ωBに対応している。上述したように、電磁比例弁70に基準電流値IBの電流を供給した場合、可動部材21の揺動角度θが中央角度θ3の最大角速度ωmax(基準角速度ωB)が最低値であるため、可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11又は第2判定角度θ21である場合の第1電流値I1(始端電流値Is)は、基準電流値IB未満となる(Is<IB)。
【0093】
図8に示すように、判定距離Hが第1閾値T1から零に減少するにつれて、第1電流値I1は、終端角速度ωEに対応する大きさ(第1終端電流値Ie)まで減少する。つまり、判定距離Hが零である場合の第1電流値I1は、基準角速度ωBよりも小さい所定の終端角速度ωEに対応する電流値であって、第1電流値I1は、第1終端電流値Ie以上、始端電流値Is以下の範囲で定義されている(Ie≦I1≦Is)。詳しくは、
図8に示すように、可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11から減少すると、第1電流値I1は、可動部材21の揺動角度θが減少するにつれて、徐々に減少したあと急激に減少する曲線状に減少し、揺動角度θが最小角度θ1に達すると第1終端電流値Ieに達する。本実施形態においては、第1ソレノイド70aに電流を供給して、第2ソレノイド70bに電流を供給しない場合、スプールの切換位置が第1位置70Aに切り換わり、油圧シリンダ22が収縮するため、可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11以下の場合、第1電流値I1は、第1ソレノイド70aに供給される電流値Iである。
【0094】
また、
図8に示すように、可動部材21の揺動角度θが第2判定角度θ21から増加すると、第1電流値I1は、可動部材21の揺動角度θが増加するにつれて、徐々に減少したあと急激に減少する曲線状に減少し、揺動角度θが最大角度θ2に達すると第1終端電流値Ieに達する。本実施形態においては、第1ソレノイド70aに電流を供給せず、第2ソレノイド70bに電流を供給する場合、スプールの切換位置が第2位置70Bに切り換わり、油圧シリンダ22が伸長するため、可動部材21の揺動角度θが第2判定角度θ21以上の場合、第1電流値I1は、第2ソレノイド70bに供給される電流値Iである。
【0095】
なお、第1閾値T1及び終端角速度ωEは、記憶部81に予め記憶された値であって、作業機1に備えられる操作部(図示せず)、或いは制御装置80と通信可能に接続された端末(表示装置、PC、及びスマートフォン等)を操作することで変更可能であってもよい。
【0096】
第2演算部87は、油圧シリンダ22の動作長Lが当該油圧シリンダ22のストロークエンドEに近づくにつれて、油圧シリンダ22への作動油の供給流量を減少させるよう電磁比例弁70を制御するために電磁比例弁70へ供給する電流の電流値Iである第2電流値I2を演算する。第2電流値I2は、判定距離Hが零に近づくにつれて、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を所定流量から減少させて油圧シリンダ22の動作速度を制限する電流値である。
【0097】
具体的には、第2演算部87は、判定距離Hが第2閾値T2以下である場合に、第2電流値I2を演算し、判定距離Hが第2閾値T2よりも長い場合に、第2電流値I2を演算しない。第2閾値T2は、第1閾値T1よりも長い値で定義される。
【0098】
判定距離Hが第2閾値T2である場合の動作長Lは、
図5に示すように、第1のストロークエンドE1側の第3判定長L12と、第2のストロークエンドE2側の第4判定長L22である。
【0099】
図5に示すように、第3判定長L12に対応する可動部材21の揺動角度θは、第3判定角度θ12であり、第4判定長L22に対応する可動部材21の揺動角度θは、第4判定角度θ22である。つまり、第2演算部87は、可動部材21の揺動角度θが第3判定角度θ12以下である場合、及び第4判定角度θ22以上である場合に、第2電流値I2を演算する。
【0100】
第2電流値I2は、基準電流値IB以下であり、判定距離Hが零に近づくにつれて減少する。第2演算部87は、記憶部81に記憶された演算式や演算マップに基づいて、可動部材21の揺動角度θに対応する第2電流値I2を演算する。
図9は、第1実施形態における可動部材21の揺動角度θと第2電流値I2との関係の一例を示す図である。
図9に示すように、第2電流値I2は、第2終端電流値IE以上、基準電流値IB以下の範囲で定義されている(IE≦I2≦IB)。
【0101】
なお、
図9に示す可動部材21の揺動角度θと第2電流値I2との関係は、例示に過ぎず、可動部材21の揺動角度θが第3判定角度θ12から最小角度θ1まで減少するにつれて減少し、可動部材21の揺動角度θが第4判定角度θ22から最大角度θ2まで増加するにつれて減少すればよく、その関係は
図9の例に限定されない。例えば、第2電流値I2は、可動部材21の揺動角度θの増減に応じて曲線状に増減してもよい。また、可動部材21の揺動角度θと第2電流値I2との関係は、制御装置80のクッション制御の制御対象(作業装置20)に応じて、異ならせて定義してもよい。
【0102】
判定距離Hが第2閾値T2である場合、即ち可動部材21の揺動角度θが第3判定角度θ12又は第4判定角度θ22である場合の第2電流値I2は、基準電流値IBと同値である。また、判定距離Hが零である場合の第2電流値I2は、第2終端電流値IEである。なお、判定距離Hが第2閾値T2である場合の第2電流値I2は、油圧シリンダ22に所定流量と略同等の流量の作動油を供給する電流値Iであればよく、必ずしも基準電流値IBと一致しなくてもよい。つまり、判定距離Hが第2閾値T2である場合の第2電流値I2は、油圧シリンダ22に所定流量の作動油を確実に供給するため、基準電流値IBよりも高い電流値Iで定義されていてもよい。
【0103】
図9に示すように、判定距離Hが第2閾値T2から零に減少するにつれて、第2電流値I2は、基準電流値IBから第2終端電流値IEまで略比例して減少する。第2終端電流値IEは、第1終端電流値Ieよりも大きい電流値Iに定義されている(Ie<IE)。なお、判定距離Hが零である場合の第2電流値I2は、基準電流値IB以下であればよく、その大きさは特に限定されない。
【0104】
本実施形態においては、第1ソレノイド70aに電流を供給して、第2ソレノイド70bに電流を供給しない場合、スプールの切換位置が第1位置70Aに切り換わり、油圧シリンダ22が収縮するため、可動部材21の揺動角度θが第3判定角度θ12以下の場合、第2電流値I2は、第1ソレノイド70aに供給される電流値Iである。
【0105】
また、本実施形態においては、第1ソレノイド70aに電流を供給せず、第2ソレノイド70bに電流を供給する場合、スプールの切換位置が第2位置70Bに切り換わり、油圧シリンダ22が伸長するため、可動部材21の揺動角度θが第4判定角度θ22以上の場合、第2電流値I2は、第2ソレノイド70bに供給される電流値Iである。
【0106】
なお、第2閾値T2は、記憶部81に予め記憶された値であって、作業機1に備えられる操作具、或いは制御装置80と通信可能に接続された端末(表示装置、PC、及びスマートフォン等)を操作することで変更可能であってもよい。
【0107】
図10は、第1実施形態における第1電流値I1と第2電流値I2との対比を示す図である。
図10においては、第1電流値I1を一点鎖線で表記し、第2電流値I2を二点鎖線で表記している。また、供給電流の電流値Iを実線で表記し、且つ表示の都合上、第1電流値I1及び第2電流値I2とずらして表記している。
【0108】
電流制限部88は、判定距離Hが、第1閾値T1より長く、第2閾値T2以下である場合には、電磁比例弁70に供給する電流を第2電流値I2で補正し、判定距離Hが第1閾値T1以下である場合には、電磁比例弁70に供給する電流を第1電流値I1及び第2電流値I2のうちのいずれかを選択して補正する。本実施形態において、電流制限部88は、定義部82が定義した供給電流を第1電流値I1又は第2電流値I2で補正することによって、供給電流を制限する。本実施形態においては、ブーム装置30、アーム装置40、作業具装置50、及びドーザ装置60に対してクッション制御を行うため、電流制限部88は、ブーム制御部82a、アーム制御部82b、バケット制御部82c、及びドーザ制御部82dが定義した供給電流を補正する。
【0109】
図10に示すように、判定距離Hが、第1閾値T1より長く、第2閾値T2以下である場合、即ち可動部材21の揺動角度θが第3判定角度θ12以下且つ第1判定角度θ11を超過している場合、及び第4判定角度θ22以上且つ第2判定角度θ21未満である場合、電流制限部88は、第2電流値I2を選択する。また、電流制限部88は、定義部82が定義した供給電流が、選択した第2電流値I2(選択電流値Ic)を超過している場合、供給電流を第2電流値I2で補正する。
【0110】
一方、
図10に示すように、判定距離Hが第1閾値T1以下である場合、即ち可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11以下である場合、及び第2判定角度θ21以上である場合、電流制限部88は、第1演算部86が演算した第1電流値I1と、第2演算部87が演算した第2電流値I2とのうち、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量が少ない方の電流値Iを選択する。また、電流制限部88は、定義部82が定義した供給電流が、選択した電流値I(選択電流値Ic)を超過している場合、供給電流を選択電流値Icで補正する。
【0111】
このため、例えば第1操作装置90を操作して、定義部82が供給電流として基準電流値IBを定義している状態において、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づき、判定距離Hが第2閾値T2に達すると、まず供給電流は、第2電流値I2によって補正され、基準電流値IBから徐々に減少する。また、油圧シリンダ22がさらにストロークエンドEに近づき、判定距離Hが第1閾値T1に達すると、供給電流は、第1電流値I1及び第2電流値I2のうち、いずれか小さい方の選択電流値Icによって補正される。
【0112】
これにより、第1電流値I1のみで補正する場合は、基準電流値IBから始端電流値Isに電流値の急激な変動が生じる場合があるが、予め第2電流値I2で補正しておくことで、電流値の急激な変動を抑制して電流値Iを減少させることができる。これにより、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づいたときに可動部材21の揺動速度をスムーズにより減速することができる。
【0113】
なお、本実施形態では、電流制限部88が、判定距離Hが第2閾値T2から零まで減少する区間において、第1電流値I1及び第2電流値I2のいずれか一方の電流値Iを選択するものとしたが、選択方法は上述した方法に限るものではない。例えば、判定距離Hが第1閾値T1より長く第2閾値T2以下である場合には、第2電流値I2を選択し、判定距離Hが第1閾値T1以下である場合には、第1電流値I1を選択するようにしてもよい。
【0114】
以下、
図11を用いて、クッション制御における供給電流の制限について説明する。
図11は、第1実施形態におけるクッション制御の一連の流れを説明するフローチャートである。まず、定義部82は、第1操作装置90から揺動方向及び揺動量を表す電気信号(操作信号)を取得し(S1)、取得した操作信号に基づいて操作対象の供給電流を定義する(S2)。
【0115】
次に、角度演算部85が可動部材21の揺動角度θと実角速度ωrを演算する(S3)。
【0116】
次に、電流制限部88は、判定距離Hが第2閾値T2以下であるか否かを判断する(S4)。
【0117】
電流制限部88が、判定距離Hは第2閾値T2以下であると判断した場合(S4,Yes)、第2演算部87は、第2電流値I2を演算する(S5,第2ステップ)。
【0118】
次に、電流制限部88は、判定距離Hが第1閾値T1を超過しているか否かを判断する(S6)。
【0119】
電流制限部88が、判定距離Hは第1閾値T1を超過していると判断した場合(S6,Yes)、電流制限部88は、第2演算部87が演算した第2電流値I2を選択電流値Icとして選択する(S7)。
【0120】
電流制限部88が、判定距離Hが第1閾値T1を超過していないと判断した場合(S6,No)、第1演算部86は、制限角速度ωLを演算し、当該制限角速度ωLに対応する第1電流値I1を演算する(S8,第1ステップ)。
【0121】
次に、電流制限部88は、第1演算部86が演算した第1電流値I1と、第2演算部87が演算した第2電流値I2とのうち、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量が少ない方の電流値Iを選択電流値Icとして選択する(S9)。本実施形態においては、電流制限部88は、第1電流値I1と第2電流値I2とのうち、小さい方の電流値Iを選択電流値Icとして選択する。
【0122】
電流制限部88は、選択電流値Icを選択すると(S7又はS9)、定義部82によって定義された供給電流が選択電流値Icを超過しているか否かを判断する(S10)。
【0123】
電流制限部88は、供給電流の電流値Iが選択電流値Icを超過していると判断した場合(S10,Yes)、供給電流の電流値Iを選択電流値Icで補正する(S11)。次に、制御装置80は、当該補正後の供給電流を電磁比例弁70に供給する(S12)。なお、S7、S9~S12を第3ステップという。
【0124】
一方、電流制限部88は、判定距離Hが第2閾値T2以下でないと判断した場合(S4,No)、及び供給電流の電流値Iが選択電流値Icを超過していないと判断した場合(S10,No)、制御装置80は、定義部82が定義した供給電流を選択電流値Icで補正することなく電磁比例弁70に供給する(S13)。
【0125】
上述した作業機1の油圧システムSは、可動部材21と、可動部材21を揺動させる油圧シリンダ22とを有する作業装置20と、油圧シリンダ22へ供給する作動油の流量を変更可能な電磁比例弁70と、電磁比例弁70に供給する電流を制御して、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を所定流量以下で制御する制御装置80と、を備え、制御装置80は、油圧シリンダ22の動作長Lが当該油圧シリンダ22のストロークエンドEに近づくにつれて、可動部材21の角速度ωを減速させるよう電磁比例弁70を制御するために電磁比例弁70へ供給する電流の電流値Iである第1電流値I1を演算する第1演算部86と、油圧シリンダ22の動作長Lが当該油圧シリンダ22のストロークエンドEに近づくにつれて、油圧シリンダ22への作動油の供給流量を減少させるよう電磁比例弁70を制御するために電磁比例弁70へ供給する電流の電流値Iである第2電流値I2を演算する第2演算部87と、油圧シリンダ22の現在の動作位置からストロークエンドEまでの動作長Lである判定距離Hが、第1閾値T1より長い場合であって、当該第1閾値T1よりも長い値に設定される第2閾値T2以下である場合には、電磁比例弁70に供給する電流を第2電流値I2で補正し、判定距離Hが第1閾値T1以下である場合には、電磁比例弁70に供給する電流を第1電流値I1及び第2電流値I2のうちのいずれかを選択して補正する電流制限部88と、を有している。
【0126】
上記構成によれば、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づくと、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を徐々に減少させることができ、可動部材21の揺動をスムーズに減速することができる。
【0127】
また、第1演算部86は、判定距離Hが第1閾値T1よりも長い場合に、第1電流値I1を演算せず、第2演算部87は、判定距離Hが第2閾値T2よりも長い場合に、第2電流値I2を演算しない。
【0128】
上記構成によれば、電流制限部88は、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づくにつれて、第2電流値I2から順に電流を制限することで、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を所定流量から徐々に減少させることができ、可動部材21の揺動をよりスムーズに減速することができる。
【0129】
また、判定距離Hが第1閾値T1である場合の第1電流値I1は、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量が所定流量である場合の角速度ωの最低値である基準角速度ωBに対応する電流値Iであり、判定距離Hが零である場合の第1電流値I1は、基準角速度ωBよりも小さい所定の終端角速度ωEに対応する電流値Iである。
【0130】
上記構成によれば、判定距離Hが第1閾値T1となったとき、即ち油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づく当初から減速を行うことができる。これにより、電流制御部が電磁比例弁70に供給する電流を制限することで、より確実に油圧シリンダ22を減速させることができる。
【0131】
また、判定距離Hが第2閾値T2である場合の第2電流値I2は、油圧シリンダ22に所定流量と略同等の流量の作動油を供給する電流値Iである。
【0132】
上記構成によれば、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づき、判定距離Hが第2閾値T2となったとき、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を所定流量から徐々に減少させることができ、可動部材21の揺動をよりスムーズに減速することができる。
【0133】
また、電流制限部88は、判定距離Hが第1閾値T1以下である場合には、第1電流値I1と第2電流値I2とのうち、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量が少ない方の電流値Iを選択する。
【0134】
上記構成によれば、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づくと、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を確実に減少させることができ、可動部材21の揺動をよりスムーズに減速することができる。
【0135】
また、電流制限部88は、判定距離Hが第1閾値T1以下である場合には、電磁比例弁70に供給する電流を第1電流値I1で補正する。
【0136】
上記構成によれば、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づくにつれて、第2電流値I2から第1電流値I1に切り換えて補正することで、ストロークエンドEの近傍においては、角速度ωに応じた可動部材21のスムーズな減速を実現できる。
【0137】
また、作業機1の油圧システムSは、操作信号を制御装置80に出力する第1操作装置90を備え、制御装置80は、操作信号に基づいて、電磁比例弁70に供給する電流を、当該電磁比例弁70の開度が最大になって、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量が所定流量となる基準電流値IB以下の範囲内で定義する定義部82を有し、電流制限部88は、定義部82によって定義された電流値Iを第1電流値I1又は第2電流値I2により補正する。
【0138】
上記構成によれば、操作信号によって油圧シリンダ22を制御する場合に、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づくと、第1電流値I1又は第2電流値I2を電磁比例弁70に供給することで、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を徐々に減少させることができる。これにより、可動部材21の揺動をスムーズに減速することができる。
【0139】
また、作業機1の油圧システムSの制御方法は、可動部材21と、可動部材21を揺動させる油圧シリンダ22とを有する作業装置20と、油圧シリンダ22へ供給する作動油の流量を変更可能な電磁比例弁70と、を備えた作業機1の油圧システムSにおける、電磁比例弁70に供給する電流を制御して、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を所定流量以下で制御する作業機1の油圧システムSの制御方法であって、油圧シリンダ22の動作長Lが当該油圧シリンダ22のストロークエンドEに近づくにつれて、可動部材21の角速度ωを減速させるよう電磁比例弁70を制御するために電磁比例弁70へ供給する電流の電流値Iである第1電流値I1を演算する第1ステップと、油圧シリンダ22の動作長Lが当該油圧シリンダ22のストロークエンドEに近づくにつれて、油圧シリンダ22への作動油の供給流量を減少させるよう電磁比例弁70を制御するために電磁比例弁70へ供給する電流の電流値Iである第2電流値I2を演算する第2ステップと、油圧シリンダ22の現在の動作位置からストロークエンドEまでの動作長Lである判定距離Hが、第1閾値T1より長い場合であって、当該第1閾値T1よりも長い値に設定される第2閾値T2以下である場合には、電磁比例弁70に供給する電流を第2電流値I2で補正し、判定距離Hが第1閾値T1以下である場合には電磁比例弁70に供給する電流を第1電流値I1及び第2電流値I2のうち油圧シリンダ22に供給される作動油の流量が少なくなる方の電流値Iで補正する第3ステップと、を備えている。
【0140】
上記構成によれば、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づくと、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を徐々に減少させることができ、可動部材21の揺動をスムーズに減速することができる。
【0141】
[第2実施形態]
図12は、作業機1の油圧システムSの別の実施形態(第2実施形態)を示す。以下、第2実施形態の作業機1の油圧システムSについて、上述した実施形態(第1実施形態)と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。第1実施形態では、電磁比例弁70が、ブーム制御弁71、アーム制御弁72、バケット制御弁73、及びドーザ制御弁74を含んでいる場合、言い換えると、ブーム制御弁71、アーム制御弁72、バケット制御弁73、及びドーザ制御弁74が電磁比例弁70である場合を例に説明したが、第2実施形態では、ブーム制御弁171、アーム制御弁172、バケット制御弁173、及びドーザ制御弁174は、切換位置を変更し、油圧シリンダ22へ供給する作動油の流量を変更して、当該油圧シリンダ22を制御する方向切換弁170であって、電磁比例弁160は、方向切換弁170とは別体である。
【0142】
図12に示すように、作業機1の油圧システムSは、第2操作装置190と、パイロットバルブ191と、方向切換弁170と、接続油路175と、を備えている。第2操作装置190は、操作可能な操作具である。第2操作装置190は、例えば運転席6の周囲に配置された操作レバーやペダル等から構成されている。
【0143】
パイロットバルブ191は、第2操作装置190の操作に応じて、吐出するパイロット油の流量を制御する。パイロットバルブ191は、第2操作装置190の操作方向、及び操作量に応じて出力するパイロット油の圧力(パイロット圧)を変更可能な弁であり、当該パイロット圧を方向切換弁170に出力する。
【0144】
方向切換弁170は、直動スプール形切換弁であり、パイロットバルブ191から供給される作動油によって切換位置を変更することができる。方向切換弁170は、パイロットバルブ191から供給される作動油の流量に比例してスプールが動かされて、該スプールの動かされた量に比例する量の作動油を操作対象の油圧シリンダ22に供給する。スプールは、切換位置である第1位置170A、第2位置170B、及び第3位置(中立位置)170Cに切換可能である。なお、方向切換弁170は、3位置切換弁以外の2位置切換弁、4位置切換弁等であってもよく限定されない。また、方向切換弁170(ブーム制御弁171、アーム制御弁172、バケット制御弁173、及びドーザ制御弁174)の切換位置に対する作業装置20の動作は、第1実施形態におけるブーム制御弁71、アーム制御弁72、バケット制御弁73、及びドーザ制御弁74が電磁比例弁160である場合と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0145】
接続油路175は、方向切換弁170と油圧シリンダ22とを接続する油路である。接続油路175の一端は、方向切換弁170の給排ポート170a,170bに接続され、接続油路175の他端部は、油圧シリンダ22に接続される。詳しくは、接続油路175は、方向切換弁170の第1給排ポート170aと油圧シリンダ22の第1ポート(ピストンロッド22B側のポート)22bとを接続する第1接続油路175aと、方向切換弁170の第2給排ポート170bと油圧シリンダ22の第2ポート(シリンダ部22A側のポート)22aとを接続する第2接続油路175bと、を含んでいる。
【0146】
つまり、方向切換弁170を作動させることによって、当該方向切換弁170から第1接続油路175aに向けて作動油を流したり、方向切換弁170から第2接続油路175bに向けて作動油を流したりすることができる。詳しくは、方向切換弁170の切換位置を変更し、第1接続油路175aを流れる作動油の流量が増加すると、油圧シリンダ22は、収縮する。また、方向切換弁170の切換位置を変更し、第2接続油路175bを流れる作動油の流量が増加すると、油圧シリンダ22は、伸長する。
【0147】
図12に示すように、第2実施形態において、電磁比例弁160は、接続油路175に設けられている。本実施形態において、制御装置80は、第1のストロークエンドE1と第2のストロークエンドE2の両方においてクッション制御を行うため、電磁比例弁160は、第1接続油路175aと、第2接続油路175bとの両方に設けられている。なお、第1のストロークエンドE1と第2のストロークエンドE2のいずれか一方においてクッション制御を行う場合、電磁比例弁160は、第1接続油路175a及び第2接続油路175bのいずれか一方に設けられていればよい。
【0148】
電磁比例弁160は、油圧シリンダ22へ供給する作動油の流量を変更可能な切換弁である。詳しくは、電磁比例弁160は、方向切換弁170から油圧シリンダ22へ至る作動油の供給量を途中で変更する開度調整弁である。
【0149】
図12に示すように、電磁比例弁160は、バネによって抑制位置に切り換えられる方向に付勢されており、ソレノイド160aが消磁されることで抑制位置に切り換えられ、制御装置80から供給電流を供給されて、ソレノイド160aが励磁されることにより供給位置に切り換えられる。つまり、供給電流が大きくなると、方向切換弁170から油圧シリンダ22に供給する作動油の流量は増加し、角速度ωが大きくなる関係にある。
【0150】
制御装置80が電磁比例弁160に供給する供給電流は、基準電流値IBに予め定義されている。本実施形態において、基準電流値IBは、電磁比例弁160の開度を最大にする電流値Iである。
【0151】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、電流制限部88は、判定距離Hが零に近づくと、第1電流値I1及び第2電流値I2のいずれか一方の電流値Iを選択し、予め定義された供給電流の電流値I(基準電流値IB)を選択した電流値Iで補正することによって、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量を所定流量から減少させるよう、電磁比例弁160に供給する電流を制限する。
【0152】
なお、上述した実施形態において、例えば、第2操作装置190の操作量を検出する検出センサを設け、操作量が所定以上である場合にのみクッション制御を行うようにしてもよい。また、パイロットバルブ191と方向切換弁170とを接続する油路、又は接続油路175に作動油の圧力を検出する圧力センサを設け、作動油(パイロット油)の圧力が所定以上の場合にのみクッション制御を行うようにしてもよい。
【0153】
また、上述した実施形態において、電磁比例弁160が、ソレノイド160aが消磁されることで抑制位置に切り換えられ、制御装置80から供給電流を供給されて、ソレノイド160aが励磁されることにより供給位置に切り換えられる構成を例に説明したが、これとは逆に、変形例として、電磁比例弁160は、ソレノイド160aが消磁されることで供給位置に切り換えられ、制御装置80から供給電流を供給されて、ソレノイド160aが励磁されることにより抑制位置に切り換えられる構成であってもよい。
【0154】
この変形例の場合、供給電流が大きくなると、方向切換弁170から油圧シリンダ22に供給する作動油の流量は減少し、角速度ωが小さくなる。
【0155】
このため、本変形例においては、可動部材21の揺動角度θと、第1演算部86が演算する第1電流値I1、及び第2演算部87が演算する第2電流値I2は、
図13に示すような関係になる。
図13においては、第1電流値I1を一点鎖線で表記し、第2電流値I2を二点鎖線で表記している。また、供給電流の電流値Iを実線で表記し、且つ表示の都合上、第1電流値I1及び第2電流値I2とずらして表記している。
【0156】
図13に示すように、判定距離Hが第1閾値T1から零に減少するにつれて、第1電流値I1は、終端角速度ωEに対応する大きさ(第1終端電流値Ie)まで増加する。つまり、可動部材21の揺動角度θが第1判定角度θ11以下の場合、第1電流値I1は、可動部材21の揺動角度θが減少するにつれて増加し、可動部材21の揺動角度θが最小角度θ1に達すると、第1終端電流値Ieとなる。可動部材21の揺動角度θが第2判定角度θ21以上の場合、第1電流値I1は、可動部材21の揺動角度θが増加するにつれて増加し、可動部材21の揺動角度θが最大角度θ2に達すると、第1終端電流値Ieとなる。
【0157】
また、
図13に示すように、判定距離Hが第2閾値T2から零に減少するにつれて、第2電流値I2は、基準電流値IBから第2終端電流値IEまで略比例して増加する。つまり、可動部材21の揺動角度θが第3判定角度θ12以下の場合、第2電流値I2は、可動部材21の揺動角度θが減少するにつれて増加し、可動部材21の角度θが最小角度θ1に達すると、第2終端電流値IEとなる。可動部材21の角度θが第4判定角度θ22以上の場合、第2電流値I2は、可動部材21の揺動角度θが増加するにつれて増加し、可動部材21の揺動角度θが最大角度θ2に達すると、第2終端電流値IEとなる。
【0158】
以下、
図14を用いて、クッション制御における供給電流の制限について説明する。
図14は、第2実施形態におけるクッション制御の一連の流れを説明するフローチャートである。まず、角度演算部85は、角度検出装置95が検出した検出信号に基づいて可動部材21の揺動角度θと実角速度ωrを演算する(S21)。
【0159】
次に、電流制限部88は、判定距離Hが第2閾値T2以下であるか否かを判断する(S22)。
【0160】
電流制限部88が、判定距離Hは第2閾値T2以下であると判断した場合(S22,Yes)、第2演算部87は、第2電流値I2を演算する(S23,第2ステップ)。
【0161】
次に、電流制限部88は、判定距離Hが第1閾値T1を超過しているか否かを判断する(S24)。
【0162】
電流制限部88が、判定距離Hは第1閾値T1を超過していると判断した場合(S24,Yes)、電流制限部88は、第2演算部87が演算した第2電流値I2を選択電流値Icとして選択する(S25)。
【0163】
電流制限部88が、判定距離Hが第1閾値T1を超過していないと判断した場合(S24,No)、第1演算部86は、制限角速度ωL、及び当該制限角速度ωLに対応する第1電流値I1を演算する(S26,第1ステップ)。
【0164】
次に、電流制限部88は、第1演算部86が演算した第1電流値I1と、第2演算部87が演算した第2電流値I2とのうち、油圧シリンダ22に供給する作動油の流量が少ない方の電流値Iを選択電流値Icとして選択する(S27)。第2実施形態においては、電流制限部88は、第1演算部86が演算した第1電流値I1と、第2演算部87が演算した第2電流値I2とのうち、小さい電流値Iを選択する。なお、
図13のような変形例の場合は、電流制限部88は、第1演算部86が演算した第1電流値I1と、第2演算部87が演算した第2電流値I2とのうち、大きい電流値Iを選択する。
【0165】
電流制限部88は、選択電流値Icを選択すると(S25又はS27)、供給電流の電流値Iを選択電流値Icで補正し(S28)、制御装置80は、当該補正後の供給電流を電磁比例弁160に供給する(S29)。
【0166】
一方、電流制限部88は、判定距離Hが第2閾値T2以下でないと判断した場合(S22,No)、制御装置80は、基準電流値IBの電流を選択電流値Icで補正することなく電磁比例弁70に供給する(S30)。なお、S25、S27~S29を第3ステップという。
【0167】
また、作業機1の油圧システムSは、操作可能な第2操作装置190と、第2操作装置190の操作に応じて、吐出するパイロット油の流量を制御するパイロットバルブ191と、パイロットバルブ191から供給されるパイロット油によって切換位置を変更し、油圧シリンダ22へ供給する作動油の流量を変更して、当該油圧シリンダ22を制御する方向切換弁170と、方向切換弁170と油圧シリンダ22とを接続する接続油路175と、を備え、電磁比例弁160は、接続油路175に設けられ、制御装置80から供給される電流に応じて開度を変更し、方向切換弁170から油圧シリンダ22に供給される作動油の流量を、所定流量以下に変更する。
【0168】
上記構成によれば、パイロット油によって油圧シリンダ22を制御する場合に、油圧シリンダ22がストロークエンドEに近づくと、接続油路175を流れる作動油の流量を減少することで、可動部材21の揺動をスムーズに減速することができる。
【0169】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0170】
1 作業機
20 作業装置
21 可動部材
22 油圧シリンダ
70 電磁比例弁
80 制御装置
82 定義部
86 第1演算部
87 第2演算部
88 電流制限部
90 第1操作装置
160 電磁比例弁
170 方向切換弁
175 接続油路
190 第2操作装置
191 パイロットバルブ
E ストロークエンド
H 判定距離
I 電流値
I1 第1電流値
I2 第2電流値
IB 基準電流値(最大電流値)
S 油圧システム
T1 第1閾値
T2 第2閾値
ω 角速度
ωr 実角速度
ωB 基準角速度
ωE 終端角速度
ωL 制限角速度