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特許7739503バイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法及び洗浄装置
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  • 特許-バイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法及び洗浄装置 図1
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  • 特許-バイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法及び洗浄装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-05
(45)【発行日】2025-09-16
(54)【発明の名称】バイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   C23G 3/00 20060101AFI20250908BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20250908BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20250908BHJP
   C23G 1/14 20060101ALN20250908BHJP
【FI】
C23G3/00 Z
B08B3/04 Z
C10L3/10
C23G1/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024031293
(22)【出願日】2024-03-01
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000162593
【氏名又は名称】エクシオグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】524080449
【氏名又は名称】リガワット ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ReGaWatt GmbH
【住所又は居所原語表記】Kagrastr. 30, 93326 Abensberg, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】524080450
【氏名又は名称】ポリテクニック ルフト ウント フォイオルンステクニック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Polytechnik Luft- und Feuerungstechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Hainfelderstrasse. 69-71 A-2564 Weissenbach, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政広
(72)【発明者】
【氏名】野村 大介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洸一朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃康
(72)【発明者】
【氏名】クラウス レアーモーサー
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-067699(JP,A)
【文献】実公昭50-028210(JP,Y2)
【文献】中国特許出願公開第112683103(CN,A)
【文献】米国特許第04793834(US,A)
【文献】特開昭58-081493(JP,A)
【文献】特開2009-114225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G 1/00-5/06
C23F 14/00-14/02
C10K 1/00-3/06
C10L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスからバイオマスガスを生成するガス化炉と、前記バイオマスガスに含有されるタールを分離して精製するタール分離装置とを有し、精製された前記バイオマスガスを用いて発電を行うバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法であって、
前記タール分離装置は、前記バイオマスガスの流路と、前記バイオマスガスの流路を通過中の前記バイオマスガスを熱交換により冷却する冷却液の流路とを有するガスクーラを有しており、
前記タール分離装置への前記バイオマスガスの流入を停止する工程と、
前記タール分離装置における前記バイオマスガスの流路中に洗浄液を供給する工程と、
前記バイオマスガスの流路を通過することで前記タールを含有した前記洗浄液を回収する工程と
を有しており、
前記冷却液に代えて、50℃以上の温水を前記冷却液の流路に流す工程をさらに有しており、これによって、前記ガスクーラにおける前記バイオマスガスの流路中に供給された前記洗浄液を前記温水との熱交換により加温して洗浄効果を高めるようになっている
バイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【請求項2】
前記ガス化炉の運転を継続しつつ、前記バイオマスガスの流路を切り替えることによって、前記タール分離装置への前記バイオマスガスの流入を停止するようになっている
請求項1に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄液は、40℃以上に加温されている
請求項1又は2に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄液としては、苛性ソーダの水溶液が用いられている
請求項1又は2に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【請求項5】
回収された前記洗浄液を循環させて前記バイオマスガスの流路中に前記洗浄液を再び供給する工程をさらに有する
請求項1又は2に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【請求項6】
バイオマスからバイオマスガスを生成するガス化炉と、前記バイオマスガスに含有されるタールを分離して精製するタール分離装置とを有し、精製された前記バイオマスガスを用いて発電を行うバイオマスガス化発電システムにおける洗浄装置であって、
前記ガス化炉は、前記タール分離装置への前記バイオマスガスの流入を停止可能な構成となっており、
前記タール分離装置は、前記バイオマスガスの流路と、前記バイオマスガスの流路を通過中の前記バイオマスガスを熱交換により冷却する冷却液の流路とを有するガスクーラを有しており、
前記タール分離装置における前記バイオマスガスの流路中に洗浄液を供給する洗浄液供給装置と、
前記バイオマスガスの流路中に供給された前記洗浄液を回収する洗浄液回収装置とを備えており、
さらに、前記冷却液を加温することにより、前記冷却液に代えて50℃以上の温水を前記冷却液の流路に流す冷却液加温装置を備えており、これによって、前記ガスクーラにおける前記バイオマスガスの流路中に供給された前記洗浄液を前記温水との熱交換により加温して洗浄効果を高める構成となっている
バイオマスガス化発電システムにおける洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法及び洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオマスガス化発電システムは、ガス化炉により、燃料であるバイオマス(例えば木質チップ)からバイオマスガスを発生させ、このガスをガスエンジン発電機に供給して発電するものである(例えば下記特許文献1参照)。バイオマスガスにはタールなどの不純物が含まれるため、この不純物をガスクーラや電気集じん器により除去して精製し、精製後のガスをガスエンジン発電機に供給するようになっている。
【0003】
ところで、バイオマスガスに含まれるタール分は粘性が高いので、このガスが通過する配管や機器(例えばガスクーラや電気集じん器)にタールが付着する。このため、適正な発電を継続させるためには、配管や機器に付着したタールを定期的に洗浄して除去する必要がある。
【0004】
しかしながら、洗浄時には、精製されたガスをガスエンジン発電機に供給することができないので、発電を停止する必要がある。発電停止時間が長くなると、発電システムにおける事業収入(売電収入)が減少してしまうという問題がある。
【0005】
下記特許文献2では、パージガスを電気集じん機に導入することにより付着物の付着を防止することが提案されているが、これは、一旦付着したタールを除去することを目的としておらず、高い除去効果は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-67699号公報
【文献】特開2009-1602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記した状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、付着したタールに対する高い洗浄効果を発揮することができ、洗浄時間の短縮あるいは洗浄頻度の減少を図ることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の項目に記載の発明として表現することができる。
【0009】
(項目1)
バイオマスからバイオマスガスを生成するガス化炉と、前記バイオマスガスに含有されるタールを分離して精製するタール分離装置とを有し、精製された前記バイオマスガスを用いて発電を行うバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法であって、
前記タール分離装置への前記バイオマスガスの流入を停止する工程と、
前記タール分離装置における前記タールの流路中に洗浄液を供給する工程と、
前記タールの流路を通過することで前記タールを含有した前記洗浄液を回収する工程と
を有する、バイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【0010】
(項目2)
前記ガス化炉の運転を継続しつつ、前記バイオマスガスの流路を切り替えることによって、前記タール分離装置への前記バイオマスガスの流入を停止するようになっている
項目1に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【0011】
(項目3)
前記洗浄液は、40℃以上に加温されている
項目1又は2に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【0012】
(項目4)
前記洗浄液としては、苛性ソーダの水溶液が用いられている
項目1又は2に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【0013】
(項目5)
回収された前記洗浄液を循環させて前記タールの流路中に前記洗浄液を再び供給する工程をさらに有する
項目1又は2に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【0014】
(項目6)
前記タール分離装置は、前記バイオマスガスの流路と、前記バイオマスガスを冷却する冷却液の流路とを有するガスクーラを有しており、
前記冷却液に代えて、50℃以上の温水を前記冷却液の流路に流す工程をさらに有しており、これによって、前記洗浄液を前記温水により加温して洗浄効果を高める構成となっている
項目1又は2に記載のバイオマスガス化発電システムにおける洗浄方法。
【0015】
(項目7)
バイオマスからバイオマスガスを生成するガス化炉と、前記バイオマスガスに含有されるタールを分離して精製するタール分離装置とを有し、精製された前記バイオマスガスを用いて発電を行うバイオマスガス化発電システムにおける洗浄装置であって、
前記ガス化炉は、前記タール分離装置への前記バイオマスガスの流入を停止可能な構成となっており、
前記タール分離装置における前記タールの流路中に洗浄液を供給する洗浄液供給装置と、
前記タールの流路中に供給された前記洗浄液を回収する洗浄液回収装置とを備えている
バイオマスガス化発電システムにおける洗浄装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の技術によれば、付着したタールに対する高い洗浄効果を発揮することができ、これにより、洗浄時間の短縮あるいは洗浄頻度の減少を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る洗浄装置が組み込まれたバイオマスガス化発電システムの概略的な構成を示すための説明図である。
図2図1のバイオマスガス化発電システムにおける、通常運転時の動作を説明するための流れ図である。
図3図1のバイオマスガス化発電システムにおける、洗浄時の動作を説明するための流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る洗浄装置が組み込まれたバイオマスガス化発電システムを、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図1は概略的な説明図であって、寸法比や縮尺は正確ではない。
【0019】
(バイオマスガス化発電システムの構成)
本実施形態のバイオマスガス化発電システム(以下単に「発電システム」又は「システム」と称することがある)は、燃料であるバイオマスからバイオマスガス(以下単に「ガス」と称することがある)を生成するガス化炉1と、バイオマスガスに含有されるタールを分離して精製するタール分離装置2と、付着したタールを洗浄するための洗浄装置3とを有している。さらにこのシステムは、ガスエンジン発電機5と焼却設備6とを有している。このシステムは、精製されたバイオマスガスをガスエンジン発電機5に送ることにより発電を行うものである。
【0020】
(ガス化炉)
ガス化炉1は、その稼働状態において、バイオマス燃料(例えば木質チップのように、バイオマスガスを発生しうる原料)を低酸素状態で高温とすることにより、バイオマスガスを発生させるものである。発生したバイオマスガスは、ガス化炉1からタール分離装置2に送られるようになっている。
【0021】
また、本実施形態のガス化炉1は、バイオマスガスの流路を切り替えることにより、焼却設備6にバイオマスガスを送ることができるようになっている。流路の切り替えは、例えば適宜なバルブの開閉により行うことができる。これにより、本実施形態のガス化炉1を稼働させながら、タール分離装置2へのバイオマスガスの流入を停止することができるようになっている。
【0022】
(タール分離装置)
タール分離装置2は、第1ガスクーラー21と、第2ガスクーラー22と、電気集じん器23と、第1冷却水経路24と、第2冷却水経路25とを有している。さらに、本実施形態のタール分離装置2は、分離タンク26と、フラッシュタンク27と、蒸発器28とを有している。
【0023】
第1ガスクーラー21は、第1冷却水経路24から送られた冷却水を通過させる冷却水流路と、ガス化炉1から送られたバイオマスガス及びそれに含まれるタール分を通過させるタール流路とを有している。冷却水流路とタール流路とは分離しているとともに隣接しており、冷却水とバイオマスガスとの間で熱交換して、ガスを冷却できるようになっている。ガスの冷却に伴って生成されるタール混合水(タール分を含む水)は、分離タンク26に送られるようになっている。
【0024】
第2ガスクーラー22は、第2冷却水経路25から送られた冷却水を通過させる冷却水流路と、第1ガスクーラー21から送られたバイオマスガス及びそれに含まれるタール分を通過させるタール流路とを有している。第1ガスクーラー21と同様に、冷却水流路とタール流路とは分離しているとともに隣接しており、冷却水とバイオマスガスとの間で熱交換して、ガスを冷却できるようになっている。第1ガスクーラー21と同様に、ガスの冷却に伴って生成されるタール混合水は、分離タンク26に送られるようになっている。
【0025】
電気集じん器23は、第2ガスクーラー22から送られたバイオマスガスを受け入れ、電気的に集じんを行ってガスを精製し、精製したガスをガスエンジン発電機5に送るようになっている。電気集じん器23で生成されたタール混合水も、分離タンク26に送られるようになっている。
【0026】
第1冷却水経路24は、第1ガスクーラー21から戻った冷却水を冷却する冷却塔241と、冷却水を一時的に蓄積する冷却水タンク242と、冷却水を下流側に送り出す冷却水ポンプ243・244とを有している。この構成により、第1冷却水経路24は、第1ガスクーラー21の冷却水流路に冷却水を送り込んで循環させることができるようになっている。
【0027】
第2冷却水経路25は、第2ガスクーラー22から戻った冷却水を冷却するチラー251と、冷却水を下流側に送り出す冷却水ポンプ252とを有している。この構成により、第2冷却水経路25は、第2ガスクーラー22の冷却水流路に冷却水を送り込んで循環させることができるようになっている。
【0028】
分離タンク26は、第1ガスクーラー21、第2ガスクーラー22及び電気集じん器23からのタール混合水を一旦蓄積して、タール分を分離するためのものである。分離タンク26で分離されたタールは焼却設備6に送られるようになっている。
【0029】
フラッシュタンク27は、分離タンク26でタールが分離された残りのタール混合水を蓄積するものである。フラッシュタンク27内のガスは焼却設備6に送られるようになっている。また、フラッシュタンク27内のタール混合水は、最終的には焼却設備6に送られるようになっている。
【0030】
蒸発器28は、フラッシュタンク27に蓄積されたタール混合水を、サーマルオイルボイラ281により加熱されたサーマルオイルにより加熱して、タール混合水の水分を蒸発させるものである。
【0031】
(洗浄装置)
洗浄装置3は、洗浄液供給装置31と、冷却水加温装置32と、リサイドタンク33とを有している。
【0032】
洗浄液供給装置31は、タール分離装置2におけるタールの流路(つまりガスの流路)中に洗浄液を供給するものである。この洗浄液供給装置31は、薬液タンク311と、洗浄液タンク312と、薬液ポンプ313と、洗浄液ポンプ314と、温水供給装置315とを有している。
【0033】
薬液タンク311は、希釈前の洗浄液を貯めておくタンクである。洗浄液としては、本実施形態では、苛性ソーダ(NaOH)の水溶液が用いられている。
【0034】
洗浄液タンク312は、薬液ポンプ313により薬液タンク311から送られた洗浄液を貯めておくタンクである。洗浄液タンク312には、温水供給装置315から温水も供給されるようになっている。したがって、洗浄液タンク312は、所定濃度まで希釈された洗浄液を貯めることができるようになっている。ここで本実施形態では、温水供給装置315から送られる温水の温度を、例えば40℃以上、好ましくは50℃以上としている。これにより、洗浄液タンク内の洗浄液の濃度を、40℃近傍あるいはそれ以上とすることができる。洗浄液ポンプ314は、洗浄液タンク312内の希釈された洗浄液を、適宜な配管を介して、第1ガスクーラー21、第2ガスクーラー22、及び電気集じん器23におけるそれぞれのタール流路(つまりガス流路)に送ることができるようになっている。さらに、本実施形態では、洗浄液ポンプ314は、洗浄液タンク312内の洗浄液を、配管経路を切り替えることによって、フラッシュタンク27に送ることができるようになっている。
【0035】
冷却水加温装置32は、第1熱交換器321と、第2熱交換器322とを有している。第1熱交換器321は、第1冷却水経路24を流れる冷却水を加温できるようになっている。具体的には、第1冷却水経路24の経路を切り替えて、第1熱交換器321に冷却水を送ることによって、冷却水を加温できるようになっている。第2熱交換器322は、第2冷却水経路25を流れる冷却水を加温できるようになっている。具体的には、第1熱交換器321の場合と同様に、第2冷却水経路25の経路を切り替えて、第2熱交換器322に冷却水を送ることによって、冷却水を加温できるようになっている。第1熱交換器321及び第2熱交換器322の熱源としては、例えば、システム内で生成された温水を用いることができる。
【0036】
リサイドタンク33は、フラッシュタンク27での洗浄に用いられた洗浄水を一時的に貯め、適宜、焼却設備6において燃焼処理できるものである。
【0037】
ガスエンジン発電機5は、電気集じん器23から送られた精製後のバイオマスガスを用いて発電を行う構成となっている。ガスエンジン発電機5は従来と同様の構成とすることができるので、これについての詳しい説明は省略する。
【0038】
焼却設備6は、ガスやタール分を焼却処理するものである。本実施形態の焼却設備6では、焼却により発生した熱を用いて、このシステム内で用いる温水を得ることができるようになっている。
【0039】
本実施形態におけるリサイドタンク33と、フラッシュタンク27と、蒸発器28とは、タールの流路中に供給された洗浄液を回収する洗浄液回収装置の具体例に相当する。
【0040】
本実施形態の発電システムのさらに詳しい内容は、発電システムの動作として後述する。
【0041】
(発電システムの動作)
つぎに、前記した発電システムの動作について、さらに図2及び図3を参照しながら説明する。
【0042】
(通常運転時)
通常運転時には、ガス化炉1の運転に伴い、バイオマスを燃料としてバイオマスガスを生成できる(図2のステップSA-1)。生成されたガスは、第1ガスクーラー21中のタール流路(つまりガス流路)に送られる。タール流路中のガスは、第1冷却水経路24により第1ガスクーラー21の冷却水流路に送られた冷却水によって冷却される(図2のステップSA-2)。これによりタールの一部がガスから分離されて、タール混合水として分離タンク26に送られる。第1ガスクーラー21を通過したガスは、第2ガスクーラー22に送られて、第2冷却水経路25によって、第1ガスクーラー21の場合と同様にして冷却される。これによりタールの一部がさらに回収されて、タール混合水として分離タンク26に送られる。
【0043】
第2ガスクーラー22を通過したガスは、電気集じん器23に送られ、ここでもタール分が分離されてタール混合水として分離タンク26に送られる。以上の工程により精製されたガスは、電気集じん器23からガスエンジン発電機5に送られる。これにより発電を行うことができる(図2のステップSA-3)。
【0044】
分離タンク26では、タール混合水から粘性の高いタール分を分離させて、このタール分を焼却設備6に送り焼却することができる。残りのタール混合水はフラッシュタンク27に送られる。フラッシュタンク27に送られたタール混合水は、蒸発器28により加熱され、得られた蒸気は焼却設備6に送られる。加熱の結果濃縮されたタール混合水は、最終的には焼却設備6に送られる。
【0045】
以上の通常動作自体は従来の発電システムと基本的に同様なので、これ以上詳しい説明は省略する。
【0046】
(洗浄時)
洗浄時にはまず、タール分離装置2へのバイオマスガスの流入を停止する(図3のステップSB-1)。ここで本実施形態では、ガス化炉1の運転を継続しつつ、バイオガスマスガスの流路を切り替えてこのガスを焼却設備6に送ることによって、タール分離装置2へのバイオマスガスの流入を停止することができる。この流路の切り替えは適宜にバルブを開閉することで行うことができる。焼却設備6では、ガスを焼却することにより、本実施形態のシステムで利用するための熱を、例えば温水として得ることができる。
【0047】
ついで、タール分離装置2におけるタールの流路中に洗浄液を供給する(図3のステップSB-2)。具体的には、洗浄液タンク312内の洗浄液を、洗浄液ポンプ314により、第1ガスクーラー21と、第2ガスクーラー22と、電気集じん器23とにおける、それぞれのタール流路(つまりガスの流路)に供給する。その結果、第1ガスクーラー21、第2ガスクーラー22、及び電気集じん器23におけるタール流路には、ほぼ同時に(つまり並列的に)洗浄液が通過することになる。本実施形態によれば、タール流路に送り込んだ洗浄液により、付着したタールに対する高い洗浄効果を発揮することができる。したがって、洗浄時間の短縮あるいは洗浄頻度の減少を図ることが可能となる。
【0048】
ここで本実施形態では、温水供給装置315から供給される洗浄液として、40℃以上に加温された温水を用いる。このように温水を用いることにより、洗浄液による、タールに対する洗浄効率を向上させることができる。さらに本実施形態では、洗浄液として、苛性ソーダの水溶液を用いている。このため、付着したタールが溶解しやすくなり、洗浄効率をさらに向上させることができる。
【0049】
タール分離装置2に供給された洗浄液は、洗浄液タンク312に回収される。本実施形態では、回収された洗浄液を、洗浄液ポンプにより循環させてタールの流路中に再び供給するようになっている。本実施形態では、加温されている洗浄水を循環して利用できるので、洗浄水の加温に要するエネルギーを削減でき、エネルギー効率が良いという利点もある。
【0050】
さらに本実施形態では、第1ガスクーラー21に用いられている冷却水を、第1熱交換器321により加温する。同様に、第2ガスクーラー22に用いられている冷却水を、第2熱交換器322により加温する。これにより冷却水を例えば50℃以上の温水とすることができる。そしてこの温水を、各冷却液の流路に流すことができる。これにより、本実施形態では、第1ガスクーラー21及び第2ガスクーラー22に送られた洗浄液を温水との熱交換により加温して洗浄効率をさらに高めることができる。ここで、第1冷却水経路24では、洗浄時に冷却水の経路を切り替えて、冷却塔241及び冷却水タンク242には冷却水を送らず、配管323に冷却水を送る(つまりバイパスする)ことで、冷却水の温度低下を防ぐことができる。
【0051】
タール分離装置2に送られた洗浄液の循環により洗浄液中のタール濃度が高くなったら、洗浄液の流路を切り替えて、第1ガスクーラー21、第2ガスクーラー22、電気集じん器23ではなく、フラッシュタンク27に洗浄液を送る。タール濃度の判定は、計器によって自動的に判断しても良いし、作業者の判断によってもよい。これにより、タールの流路を通過することによってタールを含有した洗浄液を回収することができる(図3のステップSB-3)。
【0052】
フラッシュタンク27に送られた洗浄液は、蒸発器28により加熱され、得られた気体は焼却設備6に送られて焼却される。加熱によりタール濃度が高くなった洗浄液は最終的に焼却設備6に送られて焼却される。このように本実施形態では、回収した洗浄液を産業廃棄物とするのではなく、システム内で焼却処理して熱エネルギーに変換し、再利用することができるという利点もある。
【0053】
また本実施形態では、リサイドタンク33を設置したので、洗浄に用いられた洗浄水を貯留しておき、適宜、焼却設備6において燃焼処理できる。
【0054】
フラッシュタンク27等に送られた洗浄液は、その過程において、フラッシュタンク27等や途中の配管の内部を洗浄する機能も発揮する。
【0055】
さらに本実施形態では、タール分離装置2へのバイオマスガスの流入を停止することにより、ガス化炉1の運転を停止させずにタール分離装置2の洗浄を行うことができる。ガス化炉1を一旦停止させると再起動のためのエネルギー損失が大きい。本実施形態では、洗浄時にガス化炉1の運転を停止させる必要がないので、システム全体としてのエネルギー効率を向上させることができる。しかも、洗浄時にバイオマスガスを焼却設備6に送るようにしたので、バイオマスガスの焼却処理により得られた温水を洗浄のために用いることもできる。
【0056】
洗浄が完了したら、システムを前記した通常運転の状態に戻して、通常運転を行う。
【0057】
なお、前記実施形態の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。
【符号の説明】
【0058】
1 ガス化炉
2 タール分離装置
23 電気集じん器
24 第1冷却水経路
241 冷却塔
242 冷却水タンク
243・244 第1冷却水経路の冷却水ポンプ
25 第2冷却水経路
251 チラー
252 第2冷却水経路の冷却水ポンプ
26 分離タンク
27 フラッシュタンク(洗浄液回収装置)
28 蒸発器(洗浄液回収装置)
281 サーマルオイルボイラ
3 洗浄装置
31 洗浄液供給装置
311 薬液タンク
312 洗浄液タンク
313 薬液ポンプ
314 洗浄液ポンプ
315 温水供給装置
32 冷却水加温装置
321 第1熱交換器
322 第2熱交換器
323 配管
33 リサイドタンク(洗浄液回収装置)
5 ガスエンジン発電機
6 焼却設備
【要約】
【課題】バイオマスガス化発電システムの運転中に付着したタールに対する高い洗浄効果を発揮することができ、洗浄時間の短縮あるいは洗浄頻度の減少を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】タール分離装置2へのバイオマスガスの流入を停止する工程と、タール分離装置2におけるタールの流路中に洗浄液を供給する工程と、タールの流路を通過することでタールを含有した洗浄液を回収する工程とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3