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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/02 20060101AFI20250909BHJP
   H01H 50/38 20060101ALI20250909BHJP
   H01H 50/54 20060101ALI20250909BHJP
【FI】
H01H50/02 Q
H01H50/38 H
H01H50/54 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021041699
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141414
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】川口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-243770(JP,A)
【文献】特開2014-165160(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002154(WO,A1)
【文献】特開2010-092829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/02
H01H 50/38
H01H 50/06
H01H 50/12
H01H 50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースを含むケースと、
前記ケースの内部で前記ベースと第1方向に離れて配置された第1固定接点と、前記第1固定接点と前記ベースの間に配置され前記第1固定接点を支持する接点支持部と、前記接点支持部から屈曲して前記ベースを前記第1方向に貫通する第1延伸部とを含み、前記ベースに保持される第1固定端子と、
前記第1固定接点と前記第1方向に対向する第1可動接点を含む可動接触片と、
前記ケースの内部で前記ベースと前記接点支持部の間に形成されたガス流入空間と、
前記ベースを前記第1方向に貫通し前記ガス流入空間と前記ケースの外部とを連通するガス通路と、
を備え、
前記第1固定端子は、前記第1方向と直交する第2方向に前記第1延伸部と対向して配置され、前記ベースを前記第1方向に貫通する第2延伸部をさらに含み、
前記接点支持部は、前記第1延伸部と前記第2延伸部の間に配置され、
前記ガス通路は、前記第1延伸部と前記第2延伸部の間に配置されている、
磁継電器。
【請求項2】
ベースを含むケースと、
前記ケースの内部で前記ベースと第1方向に離れて配置された第1固定接点と、前記第1固定接点と前記ベースの間に配置され前記第1固定接点を支持する接点支持部と、前記接点支持部から屈曲して前記ベースを前記第1方向に貫通する第1延伸部とを含み、前記ベースに保持される第1固定端子と、
前記第1固定接点と前記第1方向に対向する第1可動接点を含む可動接触片と、
前記ケースの内部で前記ベースと前記接点支持部の間に形成されたガス流入空間と、
前記ベースを前記第1方向に貫通し前記ガス流入空間と前記ケースの外部とを連通するガス通路と、
を備え、
前記ベースは、前記第1固定端子の前記接点支持部を支持する端子支持部を含み、
前記ガス流入空間は、前記端子支持部に形成されている、
電磁継電器。
【請求項3】
前記ガス流入空間は、前記端子支持部に隣接して配置されている、
請求項に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記第1固定接点は、前記第1固定端子にかしめ固定されるかしめ部を含み、
前記かしめ部は、前記ガス流入空間に配置されている、
請求項に記載の電磁継電器。
【請求項5】
ベースを含むケースと、
前記ケースの内部で前記ベースと第1方向に離れて配置された第1固定接点と、前記第1固定接点と前記ベースの間に配置され前記第1固定接点を支持する接点支持部と、前記接点支持部から屈曲して前記ベースを前記第1方向に貫通する第1延伸部とを含み、前記ベースに保持される第1固定端子と、
前記第1固定接点と前記第1方向に対向する第1可動接点を含む可動接触片と、
前記ケースの内部で前記ベースと前記接点支持部の間に形成されたガス流入空間と、
前記ベースを前記第1方向に貫通し前記ガス流入空間と前記ケースの外部とを連通するガス通路と、
を備え、
前記ガス流入空間は、前記可動接触片の長手方向に向かって開口している、
電磁継電器。
【請求項6】
ベースを含むケースと、
前記ケースの内部で前記ベースと第1方向に離れて配置された第1固定接点と、前記第1固定接点と前記ベースの間に配置され前記第1固定接点を支持する接点支持部と、前記接点支持部から屈曲して前記ベースを前記第1方向に貫通する第1延伸部とを含み、前記ベースに保持される第1固定端子と、
前記第1固定接点と前記第1方向に対向する第1可動接点を含む可動接触片と、
前記ケースの内部で前記ベースと前記接点支持部の間に形成されたガス流入空間と、
前記ベースを前記第1方向に貫通し前記ガス流入空間と前記ケースの外部とを連通するガス通路と、
を備え、
前記第1固定端子は、前記ケースの外部において前記第1延伸部に配置された外部接続部をさらに含み、
前記ベースは、前記外部接続部に向かって突出するスタンドオフ部を含む、
電磁継電器。
【請求項7】
ベースを含むケースと、
前記ケースの内部で前記ベースと第1方向に離れて配置された第1固定接点と、前記第1固定接点と前記ベースの間に配置され前記第1固定接点を支持する接点支持部と、前記接点支持部から屈曲して前記ベースを前記第1方向に貫通する第1延伸部とを含み、前記ベースに保持される第1固定端子と、
前記第1固定接点と前記第1方向に対向する第1可動接点を含む可動接触片と、
前記ケースの内部で前記ベースと前記接点支持部の間に形成されたガス流入空間と、
前記ベースを前記第1方向に貫通し前記ガス流入空間と前記ケースの外部とを連通するガス通路と、
を備え、
前記第1固定接点と前記第1可動接点との間で発生したアークを前記接点支持部から前記第1延伸部に向かう方向に伸長させる磁石をさらに備えた、
電磁継電器。
【請求項8】
第2固定接点を含む第2固定端子をさらに備え、
前記可動接触片は、前記第2固定接点と前記第1方向に対向する第2可動接点をさらに含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器は、電流の遮断時に接点にアークが発生する。このアークによって接点の温度が上昇すると、接点が溶融して、金属蒸気を含む高温のガスが発生する場合がある。この高温のガスが接点の近傍に滞留すると、接点間の絶縁性能が低下して、アークが再点弧する可能性がある。このアークの再点弧を防止するために、特許文献1に開示された電磁継電器は、アークを消弧する消弧空間と、消弧空間とは別のガス流入空間と、消弧空間からガス流入空間に高温のガスを逃がすガス通路とをケース内に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-24864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電磁継電器では、ガス通路の入口と出口とは、接点の近傍に配置されている。そのため、高温のガスは、ガス通路を通って接点に戻り易い。負荷容量が大きくなると、接点付近に戻る高温のガスの量も多くなるので、アークが再点弧するおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、電磁継電器において、接点に発生するアークの再点弧を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、ケースと、第1固定端子と、可動接触片と、ガス流入空間と、ガス通路とを備える。ケースは、ベースを含む。第1固定端子は、ベースに保持される。第1固定端子は、ケースの内部でベースと第1方向に離れて配置された第1固定接点と、第1固定接点とベースの間に配置され第1固定接点を支持する接点支持部と、接点支持部から屈曲してベースを第1方向に貫通する第1延伸部とを含む。可動接触片は、第1固定接点と第1方向に対向する第1可動接点を含む。ガス流入空間は、ケースの内部でベースと接点支持部の間に形成されている。ガス通路は、ベースを第1方向に貫通しガス流入空間とケースの外部とを連通する。
【0007】
この電磁継電器では、ガス流入空間が、ベースと、第1固定接点を支持する接点支持部の間に形成されており、ガス通路によってベースからケースの外部に連通している。このため、第1固定接点の近傍にガス流入空間及びガス通路を形成できるので、第1固定接点と第1可動接点との間で発生したアークによる高温のガスを効率的にガス通路からケースの外部に逃がすことができる。これにより、第1固定接点と第1可動接点の間に発生するアークの再点弧を抑制することができる。
【0008】
第1固定端子は、第1方向と直交する第2方向に第1延伸部と対向して配置され、ベースを第1方向に貫通する第2延伸部をさらに含んでもよい。接点支持部は、第1延伸部と第2延伸部の間に配置されてもよい。ガス通路は、第1延伸部と第2延伸部の間に配置されてもよい。この場合においても、第1固定接点と第1可動接点との間で発生したアークによる高温のガスを効率的にガス通路からケースの外部に逃がすことができる。
【0009】
ベースは、第1固定端子の接点支持部を支持する端子支持部を含んでもよい。ガス流入空間は、端子支持部に形成されてもよい。この場合は、第1固定接点の近くにガス流入空間及びガス通路が形成されるので、第1固定接点と第1可動接点との間で発生したアークによる高温のガスを効率的にガス通路からケースの外部に逃がすことができる。
【0010】
ガス流入空間は、端子支持部に隣接して配置されていてもよい。この場合は、接点に発生するアークの再点弧をさらに抑制することができる。
【0011】
第1固定接点は、第1固定端子にかしめ固定されるかしめ部を含んでもよい。かしめ部は、ガス流入空間に配置されてもよい。この場合は、ガス流入空間をかしめ部を逃がす空間として用いることができる。
【0012】
ガス流入空間は、可動接触片の長手方向に向かって開口していてもよい。この場合は、アークによる高温のガスがガス流入空間に導かれ易くなる。
【0013】
第1固定端子は、ケースの外部において第1延伸部に配置された外部接続部をさらに含んでもよい。ベースは、外部接続部に向かって突出するスタンドオフ部を含んでもよい。この場合は、外部接続部を外部機器に接続したときに、ガス通路が塞がれることを防ぐことができる。
【0014】
電磁継電器は、第1固定接点と第1可動接点との間で発生したアークを接点支持部から第1延伸部に向かう方向に伸長させる磁石をさらに備えてもよい。この場合は、アークが第1延伸部に沿って移動するので、より効果的にアークによる高温のガスをガス通路からケースの外部に逃がすことができる。
【0015】
電磁継電器は、第2固定接点を含む第2固定端子をさらに備えてもよい。可動接触片は、第2固定接点と第1方向に対向する第2可動接点をさらに含んでもよい。この場合は、第2固定端子を備える電磁継電器において、接点に発生するアークの再点弧を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電磁継電器において、接点に発生するアークの再点弧を抑制することにある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電磁継電器の斜視図である。
図2】接点装置を前後方向と直交する平面で切断した断面図である。
図3】端子支持部周辺の斜視図である
図4】端子支持部周辺の断面図である。
図5】電磁継電器を上下方向と直交する平面で切断した部分断面図である。
図6】変形例に係る端子支持部周辺の斜視図である。
図7】変形例に係る端子支持部周辺の断面図である。
図8】変形例に係る端子支持部周辺の断面図である。
図9】変形例に係る端子支持部周辺を上方から見た図である。
図10】変形例に係る端子支持部周辺の斜視図である。
図11】変形例に係る電磁継電器を上下方向と直交する平面で切断した部分断面図である。
図12】変形例に係る端子支持部周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面において、X1方向を左方向、X2方向を右方向、Y1方向を前方向、Y2方向を後方向、Z2方向を上方向、Z1方向を下方向として説明する。本実施形態において、上下方向は、第1方向の一例であり、前後方向は、第2方向の一例である。なお、これらの方向は、説明の便宜上、定義されるものであって、電磁継電器の配置方向を限定するものではない。
【0019】
図1及び図2に示すように、電磁継電器1は、ケース2と、接点装置3と、駆動装置4とを備えている。ケース2は、樹脂などの絶縁材で形成されている。ケース2は、ケース本体20(図5参照)と、ベース21とを含む。ケース本体20は、下方に向かって開口する略四角形の箱型であり、ベース21を上方から覆うようにベース21に取り付けられている。ベース21は、上下方向から見て矩形状である。ベース21は、接点装置3及び駆動装置4を支持している。
【0020】
図2は、接点装置3を前後方向と直交する平面で切断した断面図である。図1及び図2に示すように、ベース21は、底部22と、端子支持部23,24とを含む。底部22は、略板状であり、左右方向及び前後方向に延びている。端子支持部23,24は、底部22から上方に突出して形成されている。端子支持部23は、端子支持部24と左右方向に離れて配置されている。端子支持部23,24の上面は、上下方向に直交する平坦面を含む。
【0021】
図3は、端子支持部23周辺の斜視図である。図4は、端子支持部23周辺の断面図である。図3及び図4に示すように、端子支持部23は、第1支持部23aと、第2支持部23bと、接続部23cとを含む。第1支持部23a及び第2支持部23bは、底部22から上方向に延びている。第1支持部23a及び第2支持部23bは、接続部23cよりも上方向に延びている。第1支持部23aは、第2支持部23bと前後方向に対向する。接続部23cは、第1支持部23aと第2支持部23bの間で底部22から上方に延びている。接続部23cは、第1支持部23aの下端と第2支持部23bの下端とに接続されている。
【0022】
端子支持部24は、端子支持部23と左右対称形状であり、端子支持部23の第1支持部23a、第2支持部23b及び接続部23cに相当する構成を含む。端子支持部24の詳細な説明は省略する。
【0023】
接点装置3は、第1固定端子6と、第2固定端子7と、可動接触片8と、可動部材9と、接点バネ10とを含む。第1固定端子6、第2固定端子7及び可動接触片8は、板状の端子であり、銅などの導電性を有する材料で形成されている。
【0024】
第1固定端子6及び第2固定端子7は、断面がU字状であり、左右方向から見て、U字状に屈曲した形状を有している。第1固定端子6及び第2固定端子7は、ベース21に保持されている。第1固定端子6及び第2固定端子7は、例えば、ベース21に圧入固定されている。
【0025】
第1固定端子6は、第1固定接点6aと、接点支持部6bと、第1延伸部6cと、第2延伸部6dと、1対の外部接続部6eと、を含む。第1固定接点6aは、ケース2の内部でベース21と上下方向に離れて配置されている。第1固定接点6aは、接点支持部6bの上部に配置されている。第1固定接点6aは、第1固定端子6にかしめ固定されるかしめ部6fを含む。かしめ部6fは、接点支持部6bから下方に突出する。
【0026】
接点支持部6bは、第1延伸部6cと第2延伸部6dの間に配置されている。接点支持部6bは、端子支持部23において、第1支持部23aの上面と第2支持部23bの上面に支持されている。接点支持部6bは、上下方向と直交する方向に延びている。接点支持部6bは、第1固定接点6aを支持する。接点支持部6bは、第1固定接点6aがかしめ固定されている。なお、第1固定接点6aは、第1固定端子6と一体であってもよい。
【0027】
第1延伸部6c及び第2延伸部6dは、ベース21の底部22に圧入固定されている。第1延伸部6cは、接点支持部6bに接続され、ケース2から外部に突出する。第1延伸部6cは、接点支持部6bの前端から下方に屈曲し、ベース21の底部22を上下方向に貫通している。第1延伸部6cと接点支持部6bとの接続部分は、R形状に形成されている。第1延伸部6cは、端子支持部23の前面に接触している。
【0028】
第2延伸部6dは、第1延伸部6cと前後方向に対向する。第2延伸部6dは、接点支持部6bに接続され、ケース2から外部に突出する。第2延伸部6dは、接点支持部6bの後端から下方に屈曲し、ベース21の底部22を上下方向に貫通している。第2延伸部6dと接点支持部6bとの接続部分は、R形状に形成されている。第2延伸部6dは、端子支持部23の後面に接触している。
【0029】
1対の外部接続部6eは、第1延伸部6cの下端及び第2延伸部6dの下端に配置されており、図示しない外部機器と電気的に接続される。
【0030】
第2固定端子7は、第1固定端子6と左右方向に離れて配置されている。第2固定端子7は、第1固定端子6と同様の形状である。第2固定端子7は、第2固定接点7aと、接点支持部7bと、第1延伸部7cと、第2延伸部7dと、1対の外部接続部7eと、を含む。第2固定接点7aは、図示しないかしめ部を含む。第2固定端子7の各構成は、第1固定端子6の各構成と同様であるため説明を省略する。
【0031】
可動接触片8は、左右方向に延びている。可動接触片8の長手方向は、左右方向と一致する。可動接触片8の短手方向は、前後方向と一致する。可動接触片8は、第1固定端子6及び第2固定端子7の上方に配置されている。
【0032】
可動接触片8は、第1可動接点8aと、第2可動接点8bとを含む。第1可動接点8aは、第1固定接点6aと上下方向に対向し、第1固定接点6aに接触可能である。第2可動接点8bは、第2固定接点7aと上下方向に対向し、第2固定接点7aに接触可能である。なお、本実施形態では、第1可動接点8a及び第2可動接点8bは、可動接触片8にかしめ固定されているが、第1可動接点8a及び第2可動接点8bは、可動接触片8と一体であってもよい。
【0033】
可動接触片8は、第1可動接点8aから第1固定接点6aに向かうZ1方向と、第1固定接点6aから第1可動接点8aに向かうZ2方向とを含む移動方向に移動可能である。本実施形態では、可動接触片8は、上下方向に移動可能である。可動接触片8は、可動部材9に連結されている。可動接触片8は、可動部材9を左右方向に貫通している。可動接触片8は、可動部材9に対して上下方向に相対移動可能である。
【0034】
可動部材9は、可動接触片8を保持する。可動部材9は、上下方向に延びている。可動部材9は、左右方向における可動接触片8の中央に配置されている。可動部材9は、樹脂などの絶縁材で形成されている。可動部材9は、上端が駆動装置4に連結されている。可動部材9は、上下方向に移動可能である。
【0035】
接点バネ10は、コイルバネであり、可動接触片8を接触方向(ここでは、下方向)に付勢する。接点バネ10は、可動部材9の内部に収容されている。
【0036】
駆動装置4は、接点装置3の後方に配置されている。駆動装置4は、可動部材9を介して可動接触片8を上下方向に移動させる。駆動装置4は、コイル4aと、スプール4bと、固定鉄心4cと、ヨーク4dと、可動鉄片4eと、ヒンジバネ4f、復帰バネ4gとを含む。
【0037】
コイル4aは、スプール4bの外周に巻回されている。スプール4bは、上下方向に延びている。固定鉄心4cは、スプール4bの内周部に配置されている。ヨーク4dは、コイル4aの後方を覆うように配置されている。ヨーク4dは、左右方向から見て略L字状である。ヨーク4dは、固定鉄心4cの下端に接続されている。
【0038】
可動鉄片4eは、ヒンジバネ4fを介してヨーク4dに回動可能に支持されている。可動鉄片4eは、ヨーク4dの上端を支点として回動する。可動鉄片4eは、前端が可動部材9の上部に配置されている。可動鉄片4eは、固定鉄心4cの上方に配置されている。ヒンジバネ4fは、可動鉄片4eを固定鉄心4cから離れる方向に付勢する。復帰バネ4gは、ベース21と可動部材9との間に配置されている。復帰バネ4gは、可動部材9を開離方向(ここでは、上方向)に付勢する。
【0039】
ここで、電磁継電器1の動作について説明する。コイル4aに電圧が印加されていない状態では、ヒンジバネ4f及び復帰バネ4gの弾性力によって可動部材9が開離方向に押圧されている。このため、第1可動接点8aは、第1固定接点6aから開離しており、第2可動接点8bは、第2固定接点7aから開離している。
【0040】
コイル4aに電圧が印加されて駆動装置4が励磁されると、可動鉄片4eが固定鉄心4cに吸引されて回動し、可動鉄片4eによって可動部材9が接触方向に押圧される。これにより、可動部材9がヒンジバネ4f及び復帰バネ4gの弾性力に抗して接触方向に移動する。可動部材9の接触方向の移動に伴い、接点バネ10が接触方向に移動する。これにより、可動接触片8が接触方向に移動して、第1可動接点8aは、第1固定接点6aに接触し、第2可動接点8bは、第2固定接点7aに接触する。コイル4aの電圧の印加が停止されると、可動部材9は、ヒンジバネ4f及び復帰バネ4gの弾性力によって開離方向に移動する。
【0041】
電磁継電器1は、第1磁石31と、第2磁石32と、ガス流入空間34と、ガス通路36とをさらに備えている。
【0042】
第1磁石31及び第2磁石32は、永久磁石である。第1磁石31及び第2磁石32は第1固定接点6aと第1可動接点8aとの間、並びに第2固定接点7aと第2可動接点8bとの間に左右方向に磁束が流れるように配置されている。第1磁石31及び第2磁石32は、左右方向に異極が対向するように配置されている。本実施形態では、第1磁石31及び第2磁石32は、第1磁石31から第2磁石32に向かって磁束が流れるように異極が対向して配置されている。第1磁石31及び第2磁石32は、ケース2の外周面に装着されている。
【0043】
例えば、第1可動接点8aから第1固定接点6aに向かって電流が流れる場合は、第1固定接点6aと第1可動接点8aの間で発生したアークに前方向のローレンツ力が作用して、アークが接点支持部6bから第1延伸部6cに向かう方向に伸長される。一方、第1固定接点6aから第1可動接点8aに向かって電流が流れる場合は、アークに後方向のローレンツ力が作用する。
【0044】
ガス流入空間34は、ケース2の内部において、ベース21と第1固定端子6の接点支持部6bとの間に形成されている。ガス流入空間34は、端子支持部23に形成されている。本実施形態では、ガス流入空間34は、端子支持部23の第1支持部23aと第2支持部23bの間で端子支持部23を左右方向に貫通するとともに、上方に向かって開口する凹部によって形成される空間である。ガス流入空間34は、端子支持部23と上下方向に隣接して配置されている。ガス流入空間34は、端子支持部23の下部に配置されており、上方が端子支持部23によって覆われている。ガス流入空間34は、端子支持部23及び第1固定接点6aと上下方向に重なる。ガス流入空間34には、第1固定接点6aのかしめ部6fが配置されており、ガス流入空間34は、かしめ部6fを逃がす空間を兼ねている。
【0045】
ガス通路36は、ベース21を上下方向に貫通し、ガス流入空間34とケース2の外部とを連通する。ガス通路36は、第1固定接点6aと第1可動接点8aとの間で発生したアークによる高温のガスをケース2の外部に逃がすための通路である。本実施形態では、ガス通路36は、ベース21の端子支持部23及び底部22を上下方向に貫通する円形の貫通孔によって構成されている。ガス通路36は、第1固定接点6a及び接点支持部6bと上下方向に重なる。ガス通路36は、第1固定接点6a及び接点支持部6bの下方に配置されている。ガス通路36は、前後方向において、第1固定端子6の第1延伸部6cと第2延伸部6dの間に配置されている。
【0046】
ガス通路36は、流入口36aと、流出口36bとを含む。流入口36aは、端子支持部23の接続部23cに形成されており、上方に向かって開口している。流出口36bは、ベース21の底部22に形成されており、下方に向かって開口している。
【0047】
なお、電磁継電器1は、図2に示すように、第2固定端子7側に配置されるガス流入空間44と、ガス通路46とをさらに備えている。ガス通路46は、第2固定接点7aと第2可動接点8bとの間で発生したアークによる高温のガスをケース2の外部に逃がすための通路である。ガス流入空間44及びガス通路46の構成については、第2固定端子7側に配置されていることを除いてガス流入空間34及びガス通路36と類似した構成であるため説明を省略する。
【0048】
この電磁継電器1では、ガス流入空間34は、ベース21と、第1固定接点6aを支持する接点支持部6bの間に形成されており、ガス通路36によってベース21からケース2の外部に連通している。このため、第1固定接点6aの近傍にガス流入空間34及びガス通路36が形成できるので、第1固定接点6aと第1可動接点8aとの間で発生したアークによる高温のガスを効率的にガス通路36からケース2の外部に逃がすことができる。これにより、第1固定接点6aと第1可動接点8aの間に発生するアークの再点弧を抑制することができる。なお、第2固定接点7aと第1可動接点8aとの間に発生するアークについては、ガス流入空間44及びガス通路46によって再点弧を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、第1延伸部6c及び第2延伸部6dがアークが伸長される方向に配置されているので、アークが第1延伸部6c又は第2延伸部6dに沿って移動する。そして、ガス流入空間34は、第1延伸部6c及び第2延伸部6dの近傍に配置されているので、より効果的にアークによる高温のガスをガス通路36からケース2の外部に逃がすことができる。
【0050】
以上、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、接点装置3或いは駆動装置4の構成が変更されてもよい。
【0051】
第1固定端子6の形状は、変更されてもよい。第1固定端子6は、断面がL字状であってもよい。例えば、第1延伸部6c又は第2延伸部6dのいずれかが省略されてもよい。第1延伸部6c及び第2延伸部6dがベース21の底部22から下方に突出していたが、第1延伸部6c又は第2延伸部6dの一方のみがベース21の底部22から下方に突出していてもよい。
【0052】
ガス通路36の形状は、変更されてもよい。例えば、ガス通路36は、矩形の貫通孔によって構成されてもよい。ガス通路36は、必ずしも第1固定接点6aと上下方向に重ならなくてもよい。図6に示すように、ガス通路36が複数形成されていてもよい。図7に示すように、ガス通路36は、流入口36aから流出口36bに向かって先細る形状、或いは、流出口36bから流入口36aに向かって先細るを形状を有していてもよい。また、図8に示すように、流出口36bの外径が流入口36aの外径よりも大きく形成されてもよい。
【0053】
端子支持部23の形状は、変更されてもよい。図9に示すように、端子支持部23は、接点支持部6bの左右方向の端部まで延びていなくてもよい。図9に示す例では、接点支持部6bが端子支持部23よりも左方に突出している。また、図10に示すように、端子支持部23の接続部23cは、省略されてもよい。この場合、ガス通路36の流入口36aは、ベース21の底部22に形成してもよい。
【0054】
ガス流入空間34の形状は、変更されてもよい。例えば、端子支持部23は、上方に向かって開口していなくてもよい。また、端子支持部23は、左右方向に貫通していなくてもよく、例えば、左方に向かってのみ開口していてもよい。
【0055】
第1磁石31及び第2磁石32は、前後方向に対向して配置されてもよいし、同極が対向するように配置されてもよいし、またアークを伸長させるための磁石は、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。第1磁石31及び第2磁石32は、磁石の一例である。
【0056】
図11に示すように、電磁継電器1は、第1固定接点6aと第1可動接点8aとの間で発生したアークが伸長される空間において、アークによる高温ガスをガス流入空間34に導く案内部材48をさらに備えていてもよい。案内部材48は、ケース2と一体でもよいし、別体であってもよい。案内部材48は、第1案内部48aと、第2案内部48bとを含んでもよい。第1案内部48a及び第2案内部48bは、ケース本体20の内側から第1固定端子6に向かって突出している。第1案内部48a及び第2案内部48bは、ケース本体20に対して傾斜している。第1固定接点6aと第1可動接点8aの間で発生したアークに前方向のローレンツ力が作用する場合は、アークによる高温のガスが第1案内部48aの斜面と第2案内部48bの斜面とによってガス流入空間34に案内される。
【0057】
図12に示すように、ベース21にスタンドオフ部26が形成されていてもよい。スタンドオフ部26は、ベース21の底部22から外部接続部6eに向かって突出して形成されている。スタンドオフ部26は、下端が基板50の表面に接触して配置される。スタンドオフ部26は、1対の外部接続部6eを外部機器に接続したときに、ガス通路36の流出口36bが塞がれることを防ぐ。
【符号の説明】
【0058】
1 電磁継電器
2 ベース
6 第1固定端子
6a 第1固定接点
6b 接点支持部
6b 第1延伸部
6d 第2延伸部
6e 1対の外部接続部(外部接続部の一例)
6f かしめ部
7 第2固定端子
7a 第2固定接点
8 可動接触片
8a 第1固定接点
8b 第2固定接点
26 スタンドオフ部
34 ガス流入空間
36 ガス通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12