(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】カード捌き装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/02 20060101AFI20250909BHJP
【FI】
B65H1/02 Z
(21)【出願番号】P 2021111490
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2024-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】林田 康
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-016528(JP,Y1)
【文献】特開平06-144625(JP,A)
【文献】特開昭52-017025(JP,A)
【文献】特開平09-169444(JP,A)
【文献】特開平06-048590(JP,A)
【文献】特開平06-100179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/02,3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能なアームと、
該アームの上方に向かって立設
され、作業者が掴んで動かすことで、前記アームが延びる方向にアームを動かす取手部と、
前記アームの両端の下方側に回動部を介して連結
され、カード束を挟み込むフラップと、
を有し、
前記フラップは、前記回動部を回転中心として、前記アームが延びる方向に沿って揺動可能であることを特徴とするカード捌き装置。
【請求項2】
前記アームが、平行に延びる互いに同等な長さの一対のアームで構成され、
前記一対のアームの間に設けられ、前記一対のアームを連結する連結板を有し、
該連結板に前記取手部が立設されていることを特徴とする請求項1に記載のカード捌き装置。
【請求項3】
前記アームが、スリーブと該スリーブ内で摺動可能な中軸とを有し、該中軸の摺動により伸縮可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のカード捌き装置。
【請求項4】
前記回動部がヒンジを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカード捌き装置。
【請求項5】
前記回動部が前記フラップを付勢する弾性部材を有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカード捌き装置。
【請求項6】
前記フラップが、内側面にカード保護部材を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカード捌き装置。
【請求項7】
装置を構成する各部材が、導電性を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のカード捌き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードプリンタにおけるカード捌き装置に関し、カード同士が静電気等により貼りついて搬送不良となることを防ぐことができる、簡易で取扱いの容易な捌き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックカードは、個人情報を記録したIDカード(社員証、学生証、セキュリティカード等)、銀行カード、クレジットカード、交通カードの他、健康保険カード、各種会員カード等、多岐にわたるカードが使用されている。これらのカードとしては、個別認識できるように、その一方の面に、所有者の住所や名前等の文字情報が記録され、更に所有者以外の不正使用を防止する目的で、所有者の顔写真等の画像情報が記録されて使用されている。これらの個人情報は、通常、カード形状とされた後でカード表面に記録される。
【0003】
この様な個人情報が記録されたカードは、画像情報の鮮明性や文字情報を印字する際の簡便性を考慮して、熱転写方式、インクジェット方式あるいはレーザープリント方式などの、デジタルプリント方式のカードプリンタでの製造が広く行われている。そしてこれらのカードプリンタでは、発行対象となる印刷前の多数のカード束を、カードホッパにカード面を水平または水平に近い角度となるように積み上げて置き、底部側のカードから一枚ずつカードプリンタに供給するような機構が採用されている。その場合、多数のカード束の自重により、底部側のカードを搬送するためのローラーと十分な摩擦抵抗が得られるようにし、カード搬送が円滑に行われるようにしている(例えば、特許文献1参照)。また排出しやすくなる様にホッパの最上部におもりを置くなどすることも行われる。
【0004】
あるいはまた、多数のカードを、カード面が垂直または垂直に近い角度に配列してカードホッパに置き、一端側のカードから一枚ずつカードプリンタに取り込むような機構も採用されている。その場合取り込み側と反対側の端部から、バネ等の力を利用したカード押さえ機構があり、カード束を取り込み口方向に押し付ける、というような機構によって、同様にカードを搬送するためのローラーと十分な摩擦抵抗が得られるようにし、カードプリンタに供給する方法が一般的である。
【0005】
上記の様な従来のカード供給機構において、カード一枚一枚が最適なコンディションであれば問題は少ないが、カードプリンタの設置環境や使用環境などにより、カードの静電気帯電やカード表面の吸湿などの影響により、束のカード同士が互いに貼り付いてしまうことがある。カード束内で貼り付きが起きた場合、印刷対象のカード一枚をプリンタに搬送する際に、貼り付きの力が抵抗になってしまい、取り込み力よりも貼り付き力が強くなってしまうとカードが取り込めず、搬送エラー(いわゆるジャム)が起きてしまう。
【0006】
実際のカードプリンタの運用では、カード束収納部にカードを入れたままにするケースもあり、そのような場合、長期間カード束が圧力を受け続ける事で貼り付きの力が強まってしまうこともある。
【0007】
この対策として従来は、カード束をカード収納部から取り出して手作業でカード束を捌くことによってカードの貼り付きを解消していたが、その際に、
(1)カードを人の手で触れることになるためカード表面に手の脂などが付着してカードが汚損したり、表面の品質やその後の印字品質を損なったりする恐れがある。
(2)カードを出し入れする際にカードを紛失する恐れがある。
といったリスクがあった。
また、操作者によっては自身の判断で、ジャムが発生したカードを書損として廃棄しているケースもあるため、カードの無駄も発生していた。
【0008】
他の対策として、カードをバキューム装置で吸引して1枚ずつ取り出すようにする機構や(例えば、特許文献2参照)、エアブロー装置などをカード収納部に設置してカード束を剥がす機構も考えられているが、装置が大型化しコスト増となるため、大型の装置でないと適用が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平8-026518号公報
【文献】特開平8-279023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来技術の課題に鑑み、本発明は、簡易な機構で、容易に、かつ効果的にカード捌き作業を行うことができ、また既存のカード処理装置に取り付けることもできるカード捌き装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、
伸縮可能なアームと、
該アームの上方に向かって立設され、作業者が掴んで動かすことで、前記アームが延びる方向にアームを動かす取手部と、
前記アームの両端の下方側に回動部を介して連結され、カード束を挟み込むフラップと、
を有し、
前記フラップは、前記回動部を回転中心として、前記アームが延びる方向に沿って揺動可能であることを特徴とするカード捌き装置である。
【0012】
上記カード捌き装置において、
前記アームが、平行に延びる互いに同等な長さの一対のアームで構成され、
前記一対のアームの間に設けられ、前記一対のアームを連結する連結板を有し、
該連結板に前記取手部が立設されていて良い。
【0013】
上記カード捌き装置において、
前記アームが、スリーブと該スリーブ内で摺動可能な中軸とを有し、該中軸の摺動により伸縮可能であって良い。
【0014】
上記カード捌き装置において、
前記回動部がヒンジを有していて良い。
【0015】
上記カード捌き装置において、
前記回動部が前記フラップを付勢する弾性部材を有していて良い。
【0016】
上記カード捌き装置において、
前記フラップが、内側面にカード保護部材を有していて良い。
【0017】
上記カード捌き装置において、
装置を構成する各部材が、導電性を有していて良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカード捌き装置によれば、カードをフラップで挟んだ状態で揺動させてカード同士の貼り付きを解消でき、カード貼り付きによるカードジャム発生を抑制できてカード印刷の効率低下を抑制できる。またその際に、カード束をホッパから取り出す必要がないため、カード汚れ、埃等の付着、紛失などの恐れがなく、カードの損失も抑制できる。また既存のカード処理装置に容易に取り付けて使用できるため、大規模な機構を別途用意する必要がなく、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のカード捌き装置の一形態の外観斜視図である。
【
図2】本発明のカード捌き装置の一形態をホッパ内のカード束にセットした状態の側面図である。
【
図3】本発明のカード捌き装置の一形態でカード束を捌く様子の側面図である。
【
図5】本発明のカード捌き装置の別形態の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。また、図面等において同等の部材には同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0021】
図1は、本発明のカード捌き装置の一形態の外観斜視図である。カード捌き装置10は、平行に延びる一対のアーム11が連結板12で連結され、連結板12にはカード捌き装置10を保持し、持ち運ぶなどするための取手部13が上方に向かって立設されている。なお上方および下方は
図1に矢印で示した方向を指す。アーム11は、スリーブ11aと中軸11bを有している。中軸11bはスリーブ11a内を矢印Aが示す方向に摺動可能とされ、中軸11bが摺動することでアーム11は伸縮可能となっている。
【0022】
アーム11の両端には、それぞれ回動部を構成するヒンジ16を介して、カードを直接挟み込む部材となるフラップ15が下方に向かって連結されている。フラップ15はヒンジ16で連結されているので、ヒンジ16を回転中心として、曲線矢印B、Cに示す様にアーム11に対してアーム11が延びる方向に沿って揺動が可能である。回動部を構成する部材は、フラップ15が揺動可能な構造を有すればヒンジ16に限られず、公知の構造を適宜適用できる。
【0023】
連結板12および取手部13はそれぞれ複数設けられても良い。また取手部13には、特に図示していないが、保持しやすいような形状としたり、適宜条溝を設けたり、滑り止め用の部材を表面に設けたりしても良い。
【0024】
またカード捌き装置10を構成する各部材の材質は、十分な強度や加工性を有すれば特に限定はなく、金属、木材、プラスチック樹脂などの公知の材料をいずれも適用できるが、取り扱う対象のカードが静電気を帯びやすい場合があるので、静電気を例えば装置を扱う作業者の手を伝って逃がしやすいように導電性の部材とするとより好ましい。例えばプラスチック樹脂であれば、カーボンなどの導電性の材料を混入したものなどとすることができる。
【0025】
またフラップ15の内面側には、カードへのキズ付きを防ぐためのカード保護部材17
を設けることができる。カード保護部材17は公知の比較的柔軟な素材が適用でき、例えばゴム、軟質プラスチック樹脂、発泡プラスチック樹脂、紙、布、不織布などが例示できるが、これらに限定されない。カード保護部材17も、上述の様に導電性を有するものとするとより好ましい。
【0026】
図2は、カード捌き装置10をホッパ18内のカード束にセットした状態の側面図である。ホッパ18内のカード束を側面から見ると、図の様に四角形を形成している。アーム11は前述の様に伸縮可能とされているので、ホッパ18に収納されているカードの枚数すなわちカード束の幅に合わせて長さを適宜調整して、フラップ15でカード束を挟み込むことができる。そしてこのカード束を左右に揺すって四角形を変形させるような動きを加える事で、密着しているカード同士の貼り付きが緩和され、捌かれた状態になる。
【0027】
図3にカード束を捌く様子の側面図を示す。作業者は取手部13を掴み、カード捌き装置10を
図3(a)の様に右側に動かすと、カード束はホッパ18の底面との摩擦もあるので束全体としては移動しにくく、右に傾いて平行四辺形状に変形する。このときアーム11の両端にヒンジ16を介して連結された揺動可能なフラップ15は、ヒンジ16の効果によりカード束の傾きに応じて揺動して傾く。
【0028】
次いで、作業者はカード捌き装置10を
図3(b)の様に左側に動かし、カード束を左に傾いた平行四辺形状に変形させる。作業者はこの様にカード束を左右に揺すって傾ける作業を適当な回数繰り返すことで、
図4に示す様に、最初はカード束30で隣り合うカード31、32が貼り付いた状態であったとしても、隣り合ったカード31、32が互いに反対方向にずれる動きが、ずれの方向を交代しながら交互に加えられることで、貼り付きが解消され、ホッパ18からのカードのフィードがスムーズに行えるようになる。
【0029】
上記の様な捌き作業を定期的に行うことにより、ホッパ内で常時密着方向に力のかかるカード束の貼り付きを予防することが出来る。
【0030】
図5は本発明のカード捌き装置の別形態の外観斜視図である。基本的な構造と動作は前述の実施形態と同様であるが、本実施形態のカード捌き装置20ではアーム11は1本の構成である。またアーム11の両端の回動部にはヒンジ16を有するとともに、フラップ15が揺動する方向において付勢する弾性部材である板バネ14が装着されている。
【0031】
図6に示す様に、板バネ14は、フラップ15が直立した状態を中立点として、フラップ15が傾いたときにまた直立した状態に戻る様に付勢する。板バネ14を設けた場合、
図3の様にカード束を左右に揺すったときにフラップを直立した状態に戻す力が作用するため、左右に揺する動作がしやすくなる。
【0032】
このようにフラップを付勢する弾性部材としては、板バネ14以外にも、例えばコイルバネをヒンジ16と組み合わせて取り付けても良い。板バネ14を構成する部材は、バネ材などの金属、硬質プラスチック、ゴム板など、適当な弾性を有するものであれば特に制限はない。
【0033】
プリンタ装置のホッパは、一般にカードを収納するためにその幅がカードの幅と同等以上となっている。従って、フラップ15の幅をカードと同等以下にすれば、容易にホッパに装着することができる。このように本発明のカード捌き装置10は、単体で機能するため、既存のプリンタ装置に対して改造などを加えることなく使用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10、20・・・カード捌き装置
11・・・アーム
11a・・・スリーブ
11b・・・中軸
12・・・連結板
13・・・取手部
14・・・板バネ
15・・・フラップ
16・・・ヒンジ
17・・・保護部材
18・・・ホッパ